JP2015098553A - ゴム組成物の製造方法 - Google Patents

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Narukuni Hirata
成邦 平田
大輔 小山
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大輔 小山
大場 丈司
Takeshi Oba
丈司 大場
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Abstract

【課題】スコーチ安定性や加工性に悪影響を及ぼすことなく、シランカップリング剤とゴム成分の反応をより促進させ、低発熱性と耐摩耗性とを両立させたゴム組成物の製造方法を提供すること。【解決手段】天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種からなるゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、及び特定のチオシアネート構造を有する化合物(D)を配合してなるゴム組成物の製造方法であって、該ゴム組成物を複数段階で混練し、該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.05〜1.50kWh/kgであることを特徴とするゴム組成物の製造方法である。[比エネルギーの測定方法該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置の電動機消費電力量を該ゴム組成物全質量で除して求める。]【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物の製造方法に関し、更に詳しくは、低転がり抵抗性・スコーチ安定性・加工性に優れるゴム組成物の製造方法に関するものである。
近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出の規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に関する要求が高まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤには転がり抵抗の低減が求められている。タイヤの転がり抵抗を低減する手法として、低発熱性のゴム組成物をタイヤに適用する手法が挙げられる。
発熱性の低いゴム組成物を得る手法としては、合成ジエン系ゴムの場合では、ゴム組成物として、カーボンブラック及びシリカとの親和性を高めた重合体を使用する方法(例えば、特許文献1参照)が挙げられる。また、天然ゴムの場合では、天然ゴムを変性させた変性天然ゴムに反応性の高いカーボンブラックを配合する方法(例えば、特許文献2参照)が挙げられる。
特許文献1及び2によれば、カーボンブラックなどの充填材とゴム成分との親和性を高めることにより、ゴム組成物の発熱性を低くすることができ、これにより、ヒステリシスロスの低いタイヤを得ることができる。
また、特許文献3によれば、混練の第一段階でゴム成分と、該無機充填材の全部又は一部と、シランカップリング剤の全部又は一部と、特定の加硫促進剤とを加えて混練し、且つ第一段階における混練の比エネルギーを特定の範囲にすることにより低発熱でかつ耐摩耗性の良好なゴム組成物を得る製造方法も試みられている。
しかしながら、自動車の低燃費化が一層進むにつれて、タイヤにも低発熱性の更なる改良が望まれていた。
特開2003−514079号公報 国際公開第2007/066689号 国際公開第2012/147746号
本発明は、スコーチ安定性や加工性に悪影響を及ぼすことなく、シランカップリング剤とゴム成分の反応をより促進させ、低発熱性と耐摩耗性とを両立させたゴム組成物の製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、チオシアネート構造を有する化合物を用い、且つ特定の条件で混練することにより、スコーチ安定性や加工性に悪影響を及ぼすことなく、シランカップリング剤とゴム成分の反応をより促進することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種からなるゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、及び下記一般式(1)で示されるチオシアネート構造を有する化合物(D)を配合してなるゴム組成物の製造方法であって、該ゴム組成物を複数段階で混練し、該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.05〜1.50kWh/kgであることを特徴とするゴム組成物の製造方法である。
[比エネルギーの測定方法
該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置の電動機消費電力量を該ゴム組成物全質量で除して求める。]
Figure 2015098553
(式中、Xn+は、ナトリウムイオン、リチウムイオン、1価の銅イオン、カリウムイオン、グアニジウムイオン及びNR4 +で表される4級アンモニウムイオン(Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の1価の陽イオン、又はカルシウムイオン、バリウムイオン、コバルトイオン、2価の銅イオン及び亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の陽イオンであり、nは1又は2であり、チオシアネート構造を有する化合物(D)は水和物でもよい。)
本発明によれば、スコーチ安定性や加工性に悪影響を及ぼすことなく、シランカップリング剤とゴム成分の反応をより促進させ、低発熱性と耐摩耗性とを両立させたゴム組成物の製造方法を提供することができる。
[ゴム組成物の製造方法]
本発明の製造方法は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種からなるゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、及び下記一般式(1)で示されるチオシアネート構造を有する化合物(D)を配合してなるゴム組成物の製造方法であって、該ゴム組成物を複数段階で混練し、該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.05〜1.50kWh/kgであることを特徴とする。
ここで、比エネルギーの測定方法は、該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置の電動機消費電力量を該ゴム組成物全質量で除して求める方法である。
比エネルギーとは、混練の特定の段階又はその段階の中の特定の過程において加えられる原材料の合計量であるゴム組成物全質量に対し、混練のその段階で行った仕事を単位ゴム組成物質量当たりで表した値、又はその過程で行った仕事を単位ゴム組成物質量当たりで表した値である。
Figure 2015098553
一般式(1)中、Xn+は、ナトリウムイオン、リチウムイオン、1価の銅イオン、カリウムイオン、グアニジウムイオン及びNR4 +で表される4級アンモニウムイオン(Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の1価の陽イオン、又はカルシウムイオン、バリウムイオン、コバルトイオン、2価の銅イオン及び亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の陽イオンであり、nは1又は2であり、上記一般式(1)で示されるチオシアネート構造を有する化合物(D)は水和物でもよい。
上記の一般式(1)で示されるチオシアネート構造を有する化合物(D)は、「チオシアネート構造を有する化合物(D)」又は単に「化合物(D)」ということがある。
本発明において、チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えて混練するのは、シランカップリング剤(C)のカップリング機能(シランカップリング剤と、ゴム成分及び/又は無機充填材との反応)の活性を高めるためである。
チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において、チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.05kWh/kg以上であることを要するのは、0.05kWh/kg未満であるとフィラーが十分にゴム中に分散されず、エネルギーロス(tanδ)及び摩耗が悪化してしまうからであり、1.50kWh/kg以下であることを要するのは、1.50kWh/kgを超えるとゴムが劣化し摩耗が悪化してしまうからである。
これらの観点から、好ましい比エネルギーは0.07〜1.00kWh/kgである。
上記のチオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階は、加硫剤を含む混練の最終段階以外であることが好ましく、混練の第一段階、又は混練の第一段階と混練の最終段階との間の混練の中間段階であることが更に好ましい。混練段階を2段階にして生産性を向上せんとする場合は、チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階が混練の第一段階であることが好ましく、混練段階を3段階以上にしてゴム組成物の加工性等を向上せんとする場合は、チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階が混練の中間段階、又は混練の第一段階であることが好ましい。
混練の第一段階でゴム成分(A)、無機充填材(B)の全部又は一部、シランカップリング剤(C)の全部又は一部及びチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えて混練し、且つ該第一段階においてチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.05〜1.50kWh/kgであることを特徴とするゴム組成物の製造方法が好ましい。ここで、比エネルギーの測定方法は、混練の第一段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置の電動機消費電力量を該ゴム組成物全質量で除して求める。
混練の第一段階でチオシアネート構造を有する化合物(D)を加える場合は、無機充填材(B)の全部又は一部、シランカップリング剤(C)の全部又は一部及びチオシアネート構造を有する化合物(D)を同時に加えて混練しても良いが、前記ゴム成分(A)、前記無機充填材(B)の全部又は一部及び前記シランカップリング剤(C)の全部又は一部を混練した後に該第一段階の途中でチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えて、さらに混練することが好ましい。この場合、混練の第一段階で、該ゴム成分(A)、該無機充填材(B)の全部又は一部、及び該シランカップリング剤(C)の全部又は一部を加えた後、該第一段階の途中でチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えるまでの時間を10〜180秒とすることが好ましい。この時間の下限値は30秒以上であることがより好ましく、上限値は150秒以下であることがより好ましく、130秒以下であることが更に好ましい。この時間が10秒以上であれば(B)と(C)の反応を十分に進行させることができる。この時間が180秒を超えても(B)と(C)の反応は既に十分に進行しているので、更なる効果は享受しにくく、上限値を180秒とすることが好ましい。ただし、0秒{(C)と(D)との同時投入}であっても上述のように本発明の効果を享受することができる。また、シランカップリング剤を事前にシリカをはじめとするフィラー表面に処理することで、より効率的に効果を発揮することができる。
本発明の製造方法において、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種からなるゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、及び下記一般式(1)で示されるチオシアネート構造を有する化合物(D)を配合してなるゴム組成物を3段階以上の混練段階で混練し、混練の第一段階(X)でゴム成分(A)、無機充填材(B)の全部又は一部、及びシランカップリング剤(C)の全部又は一部を混練し、混練の第二段階以降でかつ最終段階より前の段階(Y)でチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.05〜1.50kWh/kgの範囲内にて混練することが好ましい。混練の第一段階でチオシアネート構造を有する化合物(D)を加える場合と同様に、混練の中間段階(Y)でチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.07〜1.00kWh/kgであることがより好ましい。
ここで、混練の段階(Y)でチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えて混練するのは、シランカップリング剤(C)のカップリング機能の活性を高めるためである。
上記のシランカップリング剤(C)のカップリング機能(特に、シランカップリング剤(C)とゴム成分(A)との反応)の活性をより好適に高めるためには、チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階、特に混練の第一段階及び中間段階(Y)の少なくとも一方、において、チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置のブレード回転速度が、25〜100rpmであることが好ましい。混練装置のブレードは、混練装置のローターの回転翼とも呼称される。
本発明に係る混練装置は、特に限定されるものではないが、ロール、単軸及び二軸混練機、インターナルミキサー及び加圧ニーダーが好ましく、インターナルミキサーが更に好ましい。
インターナルミキサーの代表的例として、米国ファーレル社のバンバリーミキサー(接線式)や英国フランシス・ショウ社のインターミックス(噛合式)が挙げられる。
インターナルミキサー及び加圧ニーダーのいずれにおいてもローターにブレード(回転翼)が設置されており、このブレード(回転翼)がゴム組成物を混練する。
ブレード回転速度が、25rpm以上であれば、フィラーの分散が良好となるので好ましく、100rpm以下であれば、ゴムの劣化をより好適に抑制できるので好ましい。
更に好ましい回転速度は、30〜90rpmである。
チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において、該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練時間が、30秒〜40分であることが好ましい。シランカップリング剤(C)のカップリング機能の活性をより好適に高めるためである。混練時間が、30秒以上であれば、フィラーの分散が良好になるので好ましく、30分以下であればゴムの劣化をより好適に抑制できるので好ましい。より好ましい混練時間は、1〜35分であり、更に好ましい混練時間は、1〜30分である。
上記のシランカップリング剤(C)のカップリング機能の活性をより好適に高めるためには、チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階、特に混練の第一段階及び中間段階(Y)の少なくとも一方、におけるゴム組成物の最高温度が、120〜190℃であることが好ましく、130〜180℃であることがより好ましく、140〜175℃であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法のゴム組成物の混練工程は、加硫剤を含まない混練の第一段階と、加硫剤を含む混練の最終段階の少なくとも2つの段階を含むものであり、上述ように、加硫剤を含まない混練の中間段階を含んでもよい。
尚、通常、最終段階での最高温度は80〜120℃程度であり、混練時間は10秒から20分であることが好ましく、10秒から10分であることがより好ましく、20秒から8分であることが更に好ましく、30秒から6分であることが更に好ましい。
なお、本発明における混練の第一段階とは、ゴム成分(A)と無機充填材(B)とシランカップリング剤(C)とを混練する最初の段階をいい、最初の段階でゴム成分(A)と無機充填材(B)以外の充填材とを混練する場合やゴム成分(A)のみを予備練りする場合の段階は含まれない。
上記の一般式(1)で示されるチオシアネート構造を有する化合物(D)は、下記式(1−a)で示されるチオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム及びビス(チオシアン酸)亜鉛から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、シランカップリング剤とゴム成分の反応をより促進させてより低発熱性を改良し、かつ耐摩耗性をより向上させるので好ましい。
Figure 2015098553
本発明のゴム組成物の製造方法におけるチオシアネート構造を有する化合物(D)の配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.02〜10質量部であることがより好ましく、0.05〜8質量部であることが更に好ましく、0.1〜8質量部であることが特に好ましい。
また、本発明のゴム組成物の製造方法におけるチオシアネート構造を有する化合物(D)のシランカップリング剤(C)に対する配合質量比{チオシアネート構造を有する化合物(D)/シランカップリング剤(C)}が、(2/100)〜(100/100)であることが好ましい。(2/100)以上であれば、シランカップリング剤(C)の活性化が十分に起こり、(100/100)以下であれば、加硫速度に大きな影響は与えないからである。更に好ましくは、ゴム組成物中のチオシアネート構造を有する化合物(D)のシランカップリング剤(C)に対する配合質量比{チオシアネート構造を有する化合物(D)/シランカップリング剤(C)}は、(4/100)〜(80/100)であり、特に好ましくは、(4/100)〜(50/100)である。
チオシアネート構造を有する化合物(D)は、通常、常温で固体であるので、粉体、造粒体、シリカ等に担持させた担持体、例えばシリカ担持体として用いられる。
混練時に、効率よくゴム組成物に分散させる観点からは、シリカ担持体として用いられることが好ましい。
[ゴム成分(A)]
本発明のゴム組成物の製造方法に用いられるゴム成分(A)は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種からなる。ここで、合成ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Cl−IIR、Br−IIR等)、エチレン-プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム、プロピレン−ブタジエン共重合体ゴム等を用いることができ、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムは、1種単独でも、2種以上のブレンドとして用いてもよい。
[無機充填材(B)]
本発明のゴム組成物の製造方法に用いられる無機充填材(B)としては、シリカ及び下記一般式(2)で表される無機化合物を用いることができる。
dM1・xSiOy・zH2O ・・・(2)
ここで、一般式(VIII)中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、d、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。
尚、一般式(2)において、x、zがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。
(シリカ)
本発明においては、上述の無機充填材(B)の内、低転がり性と耐摩耗性の両立の観点からシリカが好ましい。シリカとしては市販のあらゆるものが使用でき、なかでも湿式法シリカ、乾式法シリカ、コロイダルシリカを用いるのが好ましく、湿式法シリカを用いるのがより好ましく、湿式法シリカの内、沈降法シリカを用いるのが特に好ましい。シリカのBET比表面積(ISO 5794/1に準拠して測定する)は40〜350m2/gであるのが好ましい。BET表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性とゴム成分中への分散性とを両立できるという利点がある。この観点から、BET表面積が80〜350m2/gの範囲にあるシリカが更に好ましく、BET表面積が120〜350m2/gの範囲にあるシリカが特に好ましい。このようなシリカとしては東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニプシルAQ」(BET比表面積 =205m2/g)、「ニプシルKQ」、デグッサ社製商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積 =175m2/g)等の市販品を用いることができる。
前記一般式(2)で表わされる無機化合物としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。また、前記一般式(2)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
一般式(2)で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの無機化合物の平均粒径は、混練作業性、耐摩耗性及びウェットグリップ性能のバランスなどの観点から、0.01〜10μmの範囲が好ましく、0.02〜10μmの範囲がより好ましく、0.02〜5μmの範囲がより好ましく、0.02〜0.20μmの範囲が好ましい。
本発明における無機充填材(B)は、シリカ単独で使用してもよいし、シリカと一般式(2)で表される無機化合物の1種以上とを併用してもよい。
本発明のゴム組成物の製造方法に用いられる無機充填材(B)は、ゴム成分(A)100質量部に対して、20〜120質量部使用することが好ましい。20質量部以上であれば、ウエット性能を確保する観点から好ましく、120質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。更には、30〜100質量部使用することがより好ましい。
(カーボンブラック)
本発明のゴム組成物の製造方法に用いられる充填材は、所望により、上述の無機充填材(B)に加えてカーボンブラックを含有してもよい。カーボンブラックを含有することにより、電気抵抗を下げて帯電を抑止する効果を享受できる。このカーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック、特にSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEFグレードのカーボンブラックを用いるのが好ましい。窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)が30〜250m2/gであることが好ましい。このカーボンブラックは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において、カーボンブラックは無機充填材(B)に含まれない。
[充填材]
本発明のゴム組成物の製造方法に用いられる充填材は、ゴム成分(A)100質量部に対して、20〜150質量部使用することが好ましい。20質量部以上であれば、ゴム組成物の補強性向上の観点から好ましく、150質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。
前記充填材中、無機充填材(B)が30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
なお、無機充填材(B)としてシリカを使用する場合は、前記充填材中におけるシリカが30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
[シランカップリング剤(C)]
本発明のゴム組成物の製造方法に用いられるシランカップリング剤(C)は、下記一般式(I)〜(IV)で表わされる化合物からなる群から1種以上選択される化合物であることが好ましい。
本発明のゴム組成物の製造方法において、このようなシランカップリング剤(C)を用いることにより、ゴム加工時の作業性に更に優れると共に、より耐摩耗性の良好なタイヤを与えることができる。
以下、下記一般式(I)〜(IV)を順に説明する。
Figure 2015098553
式中、R1は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の、直鎖、環状又は分枝のアルキル基、炭素数2〜8の、直鎖又は分枝のアルコキシアルキル基及びシラノール基から選ばれる置換基であり、R2は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の、直鎖、環状又は分枝のアルキル基であり、R3は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の、直鎖又は分枝のアルキレン基である。aは平均値として2〜6であり、p及びrは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として0〜3である。但しp及びrの双方が3であることはない。
上記一般式(I)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。
Figure 2015098553
式中、R4は−Cl、−Br、R9O−、R9C(=O)O−、R910C=NO−、R910CNO−、R910N−、及び−(OSiR910h(OSiR91011)から選択される一価の基(R9、R10及びR11は各々水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、hは平均値として1〜4である。)であり、R5はR4、水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、R6はR4、R5、水素原子又は−[O(R12O)j0.5 −基(R12は炭素数1〜18のアルキレン基、jは1〜4の整数である。)であり、R7は炭素数1〜18の二価の炭化水素基であり、R8は炭素数1〜18の一価の炭化水素基である。x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。
上記一般式(II)において、R8、R9、R10及びR11は同一でも異なっていてもよく、好ましくは各々炭素数1〜18の、直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R5が炭素数1〜18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R12は直鎖、環状又は分枝のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R7は例えば炭素数2〜18のアルキレン基、炭素数2〜18のアルケニレン基、炭素数5〜18のシクロアルキレン基、炭素数6〜18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数7〜18のアラルキレン基を挙げることができる。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状、枝分かれ状のいずれであってもよく、前記シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよい。このR7としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基を好ましく挙げることができる。
上記一般式(II)におけるR5、R8、R9、R10及びR11の炭素数1〜18の一価の炭化水素基の具体例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基,フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記一般式(II)におけるR12の例としては、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,オクタメチレン基,デカメチレン基,ドデカメチレン基等が挙げられる。
前記一般式(II)で表されるシランカップリング剤(C)の具体例としては、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials社製、商標「NXTシラン」)が特に好ましい。
Figure 2015098553
式中、R13は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の、直鎖、環状又は分枝のアルキル基、炭素数2〜8の、直鎖又は分枝のアルコキシアルキル基及びシラノール基から選ばれる置換基であり、R14は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の、直鎖、環状又は分枝のアルキル基であり、R15は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の、直鎖又は分枝のアルキレン基である。R16は一般式
(−S−R17−S−)、(−R18−Sm1−R19−)及び(−R20−Sm2−R21−Sm3−R22−)から選ばれる二価の基(R17〜R22は各々炭素数1〜20の、二価の炭化水素基、二価の芳香族基、並びに硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基から選ばれる二価の置換基であり、m1、m2及びm3は各々平均値として1以上4未満である。)であり、複数あるkは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1〜6であり、s及びtは各々平均値として0〜3である。但しs及びtの双方が3であることはない。
上記一般式(III)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH26−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH210−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S3−(CH26−S3−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S4−(CH26−S4−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2.5−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S3−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S4−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH210−S2−(CH210−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S4−(CH26−S4−(CH26−S4−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH26−S2−(CH26−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33等で表される化合物が好適に挙げられる
上記一般式(III)で表わされるシランカップリング剤(C)は、例えば、国際公開2004/000930号、特開2006−167919号公報に記載された方法で製造できる。
Figure 2015098553
式中、R23は炭素数1〜20の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、複数あるGは同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜9の、アルカンジイル基又はアルケンジイル基であり、複数あるZaは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、かつ [−O−]0.5、[−O−G−]0.5及び[−O−G−O−] 0.5から選ばれる官能基であり、複数あるZbは同一でも異なっていてもよく、各々二つの珪素原子と結合することのできる官能基であり、かつ [−O−G−O−] 0.5で表される官能基であり、複数あるZcは同一でも異なっていてもよく、各々−Cl、−Br、−ORe、ReC(=O)O−、RefC=NO−、RefN−、Re−及びHO−G−O−(Gは上記表記と一致する。)から選ばれる官能基であり、Re及びRfは各々炭素数1〜20の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。m、n、u、v及びwは、1≦m≦20、0≦n≦20、0≦u≦3、0≦v≦2、0≦w≦1であり、かつ(u/2)+v+2w=2又は3である。A部が複数である場合、複数のA部におけるZa u、Zb v及びZc wそれぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、B部が複数である場合、複数のB部におけるZa u、Zb v及びZc wそれぞれにおいて、同一でも異なってもよい。
上記一般式(IV)で表わされるシランカップリング剤(C)の具体例として、Momentive Performance Materials社製、商標「NXT Low−V Silane」、Momentive Performance Materials社製、商標「NXT Ultra Low−V Silane」、Momentive Performance Materials社製、商標「NXT−Z」が市販品として入手できる。
上記一般式(II)、化学式(IV)で得られるシランカップリング剤は、保護されたメルカプト基を有するので、加硫工程以前の工程での加工中に初期加硫(スコーチ)の発生を防止することができるため、加工性が良好となる。
また、上記一般式(IV)で表わされるシランカップリング剤はアルコキシシラン炭素数が多いため、揮発性化合物VOC(特にアルコール)の発生が少なく、作業環境上好ましい。
本発明に係るゴム組成物中のシランカップリング剤(C)の無機充填材(B)に対する配合質量比{シランカップリング剤(C)/無機充填材(B)}は、(1/100)〜(60/100)であることが好ましい。(1/100)以上であれば、ゴム組成物の低発熱性向上の効果が発揮され、(60/100)以下であれば、ゴム組成物のコストが過大とならないので、経済性が向上するからである。更には配合質量比{シランカップリング剤(C)/無機充填材(B)}は、(3/100)〜(50/100)であることがより好ましく、(3/100)〜(20/100)であることが特に好ましい。
本発明において、混練の最終段階に配合される加硫剤は、可塑性体である共役ジエン系ゴムの高分子鎖を網目状に架橋結合しうる物質であり、硫黄はその代表である。加硫剤は、無機系加硫剤と有機系加硫剤とに大別され、前者の具体例としては、硫黄(粉末硫黄、硫黄華、脱酸硫黄、沈殿硫黄、コロイド硫黄、高分子性硫黄、不溶性硫黄)、一塩化硫黄が挙げられ、又、後者の具体例としては、モルフォリジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等の熱解離により活性硫黄を放出しうるものが挙げられる。その他の有機系含硫黄加硫剤の具体例は、社団法人日本ゴム協会編、「ゴム工業便覧 第4版」(平成6年1月、日本ゴム協会発行)III配合薬品 1.加硫剤に記載されている。
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、樹脂酸等の加硫活性剤、老化防止剤等の各種配合剤は、必要に応じ、混練の第一段階又は最終段階、あるいは第一段階と最終段階の中間段階において混練される。
本発明のゴム組成物の製造方法で得られたゴム組成物は、空気入りタイヤの少なくとも1つの部材に好適に配設される。
ゴム組成物として、上述のゴム組成物及び上述の製造方法で得られたものを用いることにより、低発熱性及び耐摩耗性に優れるタイヤを与えることができ、しかも未加硫ゴム組成物の加工性が良好である。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、低発熱性(tanδ指数)及び耐摩耗性(指数)を下記の方法により評価した。
比エネルギー
チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階においてチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置の電動機消費電力量を該ゴム組成物全質量で除して求めた。
低発熱性(tanδ指数)
上島製作所製スペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用い、周波数52Hz、初期歪10%、測定温度60℃、動歪1%で測定し、tanδの数値を、比較例2のtanδを100として下記式にて指数表示した。指数値が大きい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
低発熱性指数={(比較例2の加硫ゴム組成物のtanδ)/(供試加硫ゴム組成物のtanδ)}×100
耐摩耗性(指数)
JIS K 6264−2:2005「改良ランボーン摩耗試験」に準拠し、室温(23℃)にてスリップ率が25%の摩耗量を測定し、比較例2の数値の逆数を100とし、供試加硫ゴム組成物の数値の逆数を指数表示した値について下記の基準で評価した。
◎: 比較例1対比105%以上である。
○: 比較例1対比100%以上105%未満である。
△: 比較例1対比90%以上100%未満である。
×: 比較例1対比90%未満である。
実施例1〜7及び比較例1〜4
第1表に示す配合処方、混練方法及び加工条件により、バンバリーミキサーで混練し、11種類のゴム組成物を調製した。実施例1〜7及び比較例3〜4の混練の第一段階において、ゴム成分(A)、カーボンブラック、無機充填材(B)の全部、シランカップリング剤(C)、プロセスオイル、他の配合剤及びチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えて混練した。実施例1〜7及び比較例3〜4の第一段階において、ゴム成分(A)、カーボンブラック、無機充填材(B)の全部、シランカップリング剤(C)、プロセスオイル及び他の配合剤を加えて混練し、この混練開始から120秒後にチオシアネート構造を有する化合物(D)を加えて更に混練した。比較例1及び2では、各種求核剤(D)を加えなかった。得られた11種類のゴム組成物を加硫温度165℃で加硫した。加硫時間はtc(90)値(分)×1.5倍とした。ここで、tc(90)値はJIS K 6300−2:2001において規定されたtc(90)値である。得られた11種類の加硫後のゴム組成物の低発熱性(tanδ指数)及び耐摩耗性(指数)を上記の方法により評価した。結果を第1表に示す。
Figure 2015098553
[注]
*1: JSR株式会社製乳化重合SBR、商品名「JSR 1500」
*2: 東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニプシルAQ」(登録商標)、 BET表面積205m2/g
*3: ビス(3−トリエトシキシリルプロピル)ジスルフィド(平均硫黄鎖長:2.35)、Evonik社製シランカップリング剤、商品名「Si75」(登録商標)
*4: 三共油化工業株式会社製、商品名「A/Oミックス」(登録商標)
*5: N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック 6C」(登録商標)
*6: 化合物(D): チオシアン酸アンモニウム、関東化学株式会社製
*7: 2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック224」
*8: 1,3−ジフェニルグアニジン、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーD」
*9: ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーDM」
*10: N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーNS」
第1表から明らかなように、実施例1〜7のゴム組成物は、比較例1〜4中の対比すべきゴム組成物と比較して、いずれも低発熱性(tanδ指数)、及び耐摩耗性(指数)がより優れていた。
本発明のゴム組成物の製造方法によれば、低発熱性及び耐摩耗性に優れたゴム組成物を得ることができるので、乗用車用、小型トラック用、軽乗用車用、軽トラック用及び大型車両用{トラック・バス用、オフザロードタイヤ用(鉱山用車両用、建設車両用等)}等の各種タイヤの各部材、好ましくは空気入りラジアルタイヤのトレッド用部材、特に空気入りラジアルタイヤのトレッド接地部用部材の製造に、上記ゴム組成物が好適に用いられる。

Claims (5)

  1. 天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種からなるゴム成分(A)、無機充填材(B)を含む充填材、シランカップリング剤(C)、及び下記一般式(1)で示されるチオシアネート構造を有する化合物(D)を配合してなるゴム組成物の製造方法であって、該ゴム組成物を複数段階で混練し、該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.05〜1.50kWh/kgであることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
    [比エネルギーの測定方法
    該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置の電動機消費電力量を該ゴム組成物全質量で除して求める。]
    Figure 2015098553
    (式中、Xn+は、ナトリウムイオン、リチウムイオン、1価の銅イオン、カリウムイオン、グアニジウムイオン及びNR4 +で表される4級アンモニウムイオン(Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の1価の陽イオン、又はカルシウムイオン、バリウムイオン、コバルトイオン、2価の銅イオン及び亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の陽イオンであり、nは1又は2であり、チオシアネート構造を有する化合物(D)は水和物でもよい。)
  2. 混練の第一段階で前記ゴム成分(A)、前記無機充填材(B)の全部又は一部、前記シランカップリング剤(C)の全部又は一部及び前記チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えて混練し、且つ該第一段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練の比エネルギーが0.05〜1.50kWh/kgであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
    [比エネルギーの測定方法
    混練の第一段階において該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置の電動機消費電力量を該ゴム組成物全質量で除して求める。]
  3. 前記チオシアネート構造を有する化合物(D)が、下記式(1−a)で示されるチオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム及びビス(チオシアン酸)亜鉛から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
    Figure 2015098553
  4. 前記チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において、該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練装置のブレード回転速度が、25〜100rpmである請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
  5. 前記チオシアネート構造を有する化合物(D)を加える混練段階において、該チオシアネート構造を有する化合物(D)を加えた後の混練時間が、30秒〜30分である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
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