JP2015095293A - 有機el素子、並びに、それを備えた画像表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機el素子、並びに、それを備えた画像表示装置及び照明装置 Download PDF

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Abstract

【課題】透明電極に酸化亜鉛を用いた場合であっても駆動電圧が上昇するのを抑制でき、光取り出し効率を向上させることが可能で発光効率に優れた有機EL素子、並びに、それを備えた画像表示装置及び照明装置を提供する。【解決手段】基板11上に、少なくとも第1電極12、発光層を含む有機層13、及び、第2電極14をこの順で具備し、基板11側が光取り出し側とされ、さらに、第2電極14の、有機層13と反対側の面に、この反対側の面側から第1の誘電体層である低屈折率層15及び金属層16がこの順で備えられ、第1電極12及び第2電極14の何れもが、発光層の発光波長に対して透過率が50%以上であり、第2電極14が、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなる。【選択図】図1

Description

本発明は、有機EL素子、並びに、それを備えた画像表示装置及び照明装置に関する。
近年、薄型の発光素子として、低電力で高い輝度が得られ、また、視認性や応答速度、視野角等の他、寿命や消費電力の点からも優れた特性を備えた有機EL素子が注目されるようになっている。このような有機EL素子は、例えば、薄型テレビのディスプレイ等への応用が進められており、次世代の照明装置や画像表示装置等の柱として期待されている。
一般に、有機EL素子は、基板上に、一対の対向電極とその間に挟持された発光層を含む有機層が積層されて構成される。そして、有機EL素子は、発光層から出射された光が取り出される方向に応じて、支持基板側から光が取り出されるボトムエミッション型と、支持基板の反対側から光が取り出されるトップエミッション型とに分けられる。通常、光を取り出す側の電極には透明電極が用いられ、もう一方の電極には、反射電極として導電性に優れる金属電極が用いられることが多い。
一方、従来の有機EL素子においては、内部で発生した光を外部に取り出す際の光取り出し効率が約20%と、決して高く無いのが実情である。このため、薄型テレビ等、有機EL素子が適用される機器の高性能化等に伴い、有機EL素子の発光強度をさらに向上させることが求められており、従来から、光取り出し効率を向上させることを目的として各種の研究が行われている。
以下に、有機EL素子における光取り出し形態と、光取り出し効率が低下する要因について説明する。
まず、透明基板上に、透明電極、発光層を含む有機層、金属電極を順に備えるボトムエミッション型の有機EL素子について考える。このような有機EL素子において発光層で発光した光のうち、透明基板に垂直に入射した光は、透明基板を透過して素子の外部に取り出される。また、発光層で発光した光のうち、透明基板(例えば、ガラス(代表的な屈折率:1.52))と空気(屈折率:1.0)との界面に臨界角以下の小さい入射角(入射光線と入射する界面の法線がなす角度)で入射した光は、その界面で屈折して素子の外部に取り出される。このような光を外部モード(External Mode)光ということがある。
これに対して、発光層で発光した光のうち、透明基板と空気との界面に臨界角よりも大きな入射角で入射した光は、その界面で全反射されて素子の外部に取り出されず、最終的に材料に吸収されうる。このような光を基板モード(Substrate Mode)光といい、これによる損失を基板損失ということがある。
また、発光層で発光した光のうち、透明導電性酸化物からなる透明電極(例えば、酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide(ITO);代表的な屈折率:1.8))と透明基板(例えば、ガラス(代表的な屈折率:1.5))との界面に、臨界角よりも大きな入射角で入射した光も、その界面で全反射されて素子の外部に取り出されず、最終的に材料に吸収されうる。このような光を導波モード(Waveguide Mode)光といい、これによる損失を導波損失ということがある。
また、発光層で発光した光のうち、金属電極に入射して金属電極の自由電子と結合し、表面プラズモンポラリトン(SPP;Surface Plasmon Polariton)として金属電極の表面に捕捉された光も、素子の外部に取り出されず、最終的に材料に吸収されうる。このような光をSPPモード光といい、これによる損失をプラズモン損失という。
上述のような導波モード光は、光が高屈折率材料から低屈折率材料に入射する際に全反射が起きることによって生じるので、導波モード光を低減するためには、全反射を起き難くするか、あるいは、全反射を生じる光の割合を低減する方法が知られている。このような方法として、例えば、透明電極の有機発光層側とは反対側に、有機層や透明電極よりも屈折率の高い高屈折率層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の有機EL素子によれば、上記構成により、導波モードの光強度分布の光強度の強いところを発光位置からずらすことができ、発生した光が導波モードに結合しにくくなり、導波損失を減らすことができるため、光取り出し効率を向上させることが可能となる。また、特許文献2には、有機層及び透明電極に、これら有機層及び透明電極よりも低屈折率の微粒子を分散させることで、等価的に有機層及び透明電極の屈折率を下げる構成が開示されている。
また、上述のようなSPPモード光によるプラズモン損失の問題に対しては、例えば、特許文献3には、有機EL素子の光取り出し側とは反対側の電極を透明電極とし、該透明電極の有機層とは反対側に所定の厚さの低屈折率層と金属反射膜とを順次設けることにより、光取り出し側の電極と低屈折率層との間で導波光が全反射する際に、発生するエバネッセント波の滲み出しが金属反射膜に届きにくくなるため、エバネッセント光の金属反射膜への吸収が防止され、金属反射膜での導波光の吸収による減衰を抑制できることが開示されている。また、有機層上に設けられる第2の電極側の構造を、SPPモード光を生成させたうえで、このSPPモード光を伝播光として取り出す構造とすることで、光取り出し効率を向上させる、所謂Otto配置と呼ばれる構造も提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
また、上記の特許文献1では、高屈折率層の有機発光層側とは反対側に金属反射層を設けることにより、透明電極及び高屈折率層の厚みの分だけ、発光点から金属層までの距離が遠くなり、この金属層から発光点までの距離が遠くなった分だけ、発生した光がプラズモンモードに結合しにくくなり、プラズモン損失を減らすことができ、その結果、光取出し効率が向上することが開示されている。
その他、透明電極や発光層に低屈折率の微粒子を分散させることや、金属電極の表面に周期的な凹凸構造を形成することで、プラズモン損失を低減して光取り出し効率を向上させることが知られている。
ここで、特許文献4には、発光層を含む有機層の上層に形成された透明酸化物を電極として用いる構成が提案されている。特許文献4に記載の透明電極は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電材料から構成され、スパッタ法や蒸着法等の方法を用いて成膜されることが開示されている。また、上記の特許文献1には、発光層を含む有機層の上層に形成された特許文献4と同様の透明導電材料を電極として用いる構成が提案されており、透明電極が、酸化インジウム錫(ITO)、二酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電材料から構成され、スパッタ法や蒸着法等の方法を用いて成膜されることが開示されている。
特開2011−233288号公報 特開2011−243625号公報 特開2013−012377号公報 特開2004−031102号公報
A.Otto,Z.Physik 216,398(1968)
上述したように、従来、有機EL素子において有機層(発光層)の上に設けられる電極(光取出し側とは逆の電極)としては、アルミニウム(Al)等の金属電極が一般的であった。一方、特許文献4に記載のようなトップエミッション型の有機EL素子や、特許文献3や特許文献1に記載のような、発光層を含む有機層の上に、透明導電層と反射層を順に配置した素子構造においては、有機層上に設けられる透明電極として透明導電性酸化物からなるものが用いられている。
しかしながら、特許文献1、2に記載の有機EL素子のように、有機層上に透明電極の材料として、ITO、IZO等の透明導電材料を用いる場合、有機層が変質するため、この透明導電膜に加熱処理による結晶化を施すことができない。その結果、透明導電膜の透過率が低いために、発光した光のうち、発光素子の外側へ取り出される光の割合が減少する(すなわち光取出し効率の低下)という問題や、導電性が低くなるために電圧降下が大きくなり、素子の駆動電圧が上昇するといった問題がある。また、ZnOは熱処理をしなくても透過率は高いが、電極として用いるには導電性が非常に低いという問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、透明電極に酸化亜鉛(ZnO)を用いた場合であっても駆動電圧が上昇するのを抑制でき、光取り出し効率を向上させることが可能で発光効率に優れた有機EL素子、並びに、それを備えた画像表示装置及び照明装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた。この結果、少なくとも第1電極、発光層を含む有機層、及び、第2電極、第1の誘電体層、反射層をこの順で備える構造の有機EL素子において、第1電極あるいは第2電極を酸化亜鉛(ZnO)から構成したうえで、これに特定の金属元素をドープすることにより、第1電極あるいは第2電極の透光性を維持しながら、導電性を向上させることが可能となることを知見した。そして、このような第1電極あるいは第2電極を採用することにより、従来の有機EL素子に較べて電力効率が顕著に向上することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の手段を採用するものである。
[1] 基板上に、少なくとも第1電極、発光層を含む有機層、及び、第2電極をこの順で具備し、前記基板側が光取り出し側とされた有機EL素子であって、さらに、前記第2電極の、前記有機層と反対側の面に、該反対側の面側から第1の誘電体層及び金属層がこの順で備えられ、前記第1電極及び第2電極の何れもが、前記発光層の発光波長に対して透過率が50%以上であり、前記第2電極が、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなることを特徴とする有機EL素子。
[2] 前記第1の誘電体層は、その屈折率が前記有機層の屈折率よりも低い層であることを特徴とする上記[1]に記載の有機EL素子。
[3] さらに、前記第1電極と前記第2電極との間に、前記有機層の屈折率と異なる屈折率を有するとともに、複数の孔部を備えた第2の誘電体層が備えられ、前記有機層は、前記孔部の内側面の少なくとも一部を被覆する孔部内側面被覆部を有しているとともに、前記第1電極の少なくとも一部及び前記第2電極の少なくとも一部と接していることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の有機EL素子。
[4] 前記第1電極は、前記孔部に連通する第1電極孔部を備え、前記有機層は、さらに、前記第1電極孔部の内側面を被覆する第1電極孔部内側面被覆部を有することを特徴とする上記[3]に記載の有機EL素子。
[5] 前記基板は、前記第1電極孔部に連通する凹部を備え、前記有機層は、さらに、前記凹部の内側面を被覆する凹部内側面被覆部を有することを特徴とする上記[3]又は[4]に記載の有機EL素子。
[6] 前記有機層は、さらに、前記第2の誘電体層及び前記孔部内側面被覆部と前記第2電極との間に配置する層状部を有することを特徴とする上記[3]〜[5]の何れか一項に記載の有機EL素子。
[7] さらに、前記第1電極が、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなることを特徴とする上記[1]〜[6]の何れか一項に記載の有機EL素子。
[8] 前記第1電極、あるいは、前記第2電極をなす酸化亜鉛にドープされる金属元素が、Al、Ga、In及びSnのうちの少なくとも1種以上であることを特徴とする上記[1]〜[7]の何れか一項に記載の有機EL素子。
[9] 前記第1電極、あるいは、前記第2電極をなす酸化亜鉛における前記金属元素の含有量が、該金属元素1種あたりで0.1〜10質量%の範囲であることを特徴とする上記[8]に記載の有機EL素子。
[10] 前記低屈折率層からなる第1の誘電体層の屈折率が、前記第2電極及び前記有機層の屈折率よりも低いことを特徴とする上記[1]〜[9]の何れか一項に記載の有機EL素子。
[11] 上記[1]〜[10]の何れか一項に記載の有機EL素子を備えたことを特徴とする画像表示装置。
[12] 上記[1]〜[10]の何れか一項に記載の有機EL素子を備えたことを特徴とする照明装置。
本発明に係る有機EL素子によれば、基板上に、第1電極、発光層を含む有機層、及び、第2電極がこの順で積層され、さらに、第2電極の有機層と反対側の面に、その反対側の面側から第1の誘電体層及び金属層がこの順で備えられ、第1電極及び第2電極の何れもが発光層の発光波長に対して透過率が50%以上であり、且つ、第2電極が、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなる構成を採用している。上述のように、有機層上に設けられる第2電極を酸化亜鉛から構成したうえで、これに特定の金属元素をドープすることにより、第2電極の透光性を維持しながら導電性を向上させることができる。これにより、有機EL素子の光取り出し効率が向上するとともに、駆動電圧を低減できるので、同電圧で駆動した場合には輝度が向上し、輝度を同輝度に維持した場合には、低電圧で素子を駆動することができる。従って、発光特性に優れるとともに、省電力の有機EL素子が実現できる。
また、本発明に係る画像表示装置及び照明装置によれば、上述の本発明に係る有機EL素子を備えたものであるため、低電圧での駆動が可能になる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図であり、(a)は第2の誘電体層の屈折率が有機層の屈折率よりも高い有機EL素子を、(b)は第2の誘電体層の屈折率が有機層の屈折率よりも低い有機EL素子を説明する図である。 図2は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の一例を示す模式断面図であり、Otto型配置を有する第2電極側構造を備えた有機EL素子を説明する図である。 図3は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図であり、透過型回折格子を備えた第1電極側構造を有する有機EL素子の、第1電極側構造を含む一部を示す図である。 図4は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図であり、(a)は回折の効果を説明する図、(b)はフォトニック結晶の効果を説明する図である。 図5は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図であり、(a)は第2の誘電体層の屈折率が有機層の屈折率より高い有機EL素子を、(b)は第2の誘電体層の屈折率が有機層の屈折率より低い有機EL素子を説明する図である。 図6は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図であり、(a)は回折の効果を説明する図、(b)はフォトニック結晶の効果を説明する図である。 図7は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子を模式的に示す斜視図であり、(a)は第2の誘電体層が孔部を有する場合の図、(b)は第2の誘電体層が島状部を有する場合の図である(図7中においては、発明の特徴を分かりやすくするため、Otto型配置構造の部分を離して図示している)。 図8は、本発明の第3の実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図であり、(a)は第2の誘電体層の屈折率が有機層の屈折率より高い有機EL素子を、(b)は第2の誘電体層の屈折率が有機層の屈折率より低い有機EL素子を説明する図である。 図9は、本発明の第3の実施形態に係る有機EL素子を示す模式断面図であり、(a)は回折の効果を説明する図、(b)はフォトニック結晶の効果を説明する図である。 図10は、本発明の第3の実施形態に係る有機EL素子を模式的に示す斜視図であり、(a)は第2の誘電体層及び陽極が孔部を有する場合の図、(b)は第2の誘電体層及び陽極が凸部を有する場合の図である(図10中においては、発明の特徴を分かりやすくするため、Otto型配置構造の部分を離して図示している)。 本発明の有機EL素子を備えた画像表示装置の一例を説明するための断面模式図である。 本発明の有機EL素子を備えた照明装置の一例を説明するための断面模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の製造方法を説明するための断面模式図であり、(a)〜(l)は各工程を示す工程図である。 本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子の、ボトムエミッション構造の場合の製造方法を説明するための断面模式図であり、(a)〜(c)は各工程を示す工程図である。 本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子の、トップエミッション構造の場合の製造方法を説明するための断面模式図である。であり、(a)〜(i)は各工程を示す工程図である。 本発明の第3の実施形態に係る有機EL素子の、ボトムエミッション構造の場合の製造方法を説明するための断面模式図であり、(a)〜(c)は各工程を示す工程図である。 本発明の第3の実施形態に係る有機EL素子の、トップエミッション構造の場合の製造方法を説明するための断面模式図であり、(a)〜(e)は各工程を示す工程図である。 図18は、本発明に係る有機EL素子において、有機層で発光した光の強度を、有機EL素子面方向における波数成分で展開するエネルギー散逸計算を行った結果を示す図である。 図19は、本発明に係る有機EL素子において、低屈折率層の屈折率を1.38として、有機層で発光した光の強度を、有機EL素子面方向における波数成分で展開するエネルギー散逸計算を行った結果を示す図であり、(a)は金属層をAlとした場合、(b)は金属層をAgとした場合である。 図20は、本発明に係る有機EL素子におけるピーク幅の変化について説明する模式断面図である。 図21は、本発明に係る有機EL素子において、低屈折率層の膜厚に対する、ピーク幅(半値幅)の変化を示した図である。 図22は、本発明に係る有機EL素子において、低屈折率層の膜厚によるSPP強度の変化を示す図であり、(a)は金属層をAlとした場合、(b)は金属層をAgとした場合を示す。
以下、本発明を適用した有機EL素子、並びに、それを備えた画像表示装置及び照明装置の実施の形態について、図1〜図17を適宜参照しながらその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
また、本発明において説明する第1電極及び第2電極は、一方が陽極であり、他方が陰極であるが、以下の説明では、第1電極を陽極、第2電極を陰極とする構成を例に挙げて説明する。
また、本発明の有機EL素子は、本発明の効果を損ねない範囲で、以下に記載していない層を備えてもよい。
<有機EL素子>
[第1の実施形態]
本発明に係る有機EL素子は、基板上に、少なくとも第1電極、発光層を含む有機層、及び、第2電極をこの順で具備し、基板側が光取り出し側とされる。そして、本発明に係る有機EL素子は、さらに、第2電極の、有機層と反対側の面に、その反対側の面側から第1の誘電体層及び金属層がこの順で備えられ、第1電極及び第2電極の何れもが、発光層の発光波長に対して透明であり、第2電極が、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなる構成を採用するものである。
ここで、第1の誘電体層としては、特に限定されないが、発光層を含む有機層よりも屈折率が低い低屈折率層か、有機層よりも屈折率の高い高屈折率層であることが好ましい。
高屈折率層である場合には、導波モードの光強度分布において光強度の強いところを発光位置からずらすことができ、発生した光が導波モードに結合しにくくなり、導波損失を減らすことができる。さらに、高屈折率層の有機発光層側とは反対側に反射層を設けることにより、第2電極及び高屈折率層の厚みの分だけ、発光点から反射層までの距離が遠くなり、反射層として金属材料を用いた場合でも、発光点までの距離が遠くなった分だけ、発生した光がプラズモンモードに結合しにくくなり、プラズモン損失を減らすことができる。
以上のことから、第2の電極上に第1の誘電体層と金属層を順に備え、第1の誘電体層を有機層よりも屈折率の高い高屈折率層にすることで、導波損失及びプラズモン損失ともに減らすことができ、その結果、光取出し効率が向上する。
一方、第1の誘電体層を有機層より低い屈折率の低屈折率層とした場合には、光取り出し側の電極と低屈折率層との間で導波光が全反射する際に、発生するエバネッセント波の滲み出しが金属層まで届きにくくなるため、低屈折率層側に滲み出すエバネッセント光の金属層への吸収が防止され、金属層での導波光の吸収による減衰を抑制できる。その結果、光取出し効率が向上する。
本実施形態に係る有機EL素子で、第1の誘電体層の屈折率が有機層より低い場合の具体例を図1(a)、(b)に示す。この有機EL素子10は、基板11上に、少なくとも陽極(第1電極)12、発光層を含む有機層13、及び、陰極(第2電極)14をこの順で具備し、基板11側が光取り出し側とされる。さらに、有機EL素子10は、陰極14の、有機層13と反対側の面に、その反対側の面側から上述した第1の誘電体層としての低屈折率層15、及び、金属層16がこの順で備えられ、陽極12と陰極14との間に、有機層13の屈折率と異なる屈折率を有するとともに、複数の孔部17Aを備えた第2の誘電体層17が備えられ、有機層13は、少なくとも孔部17A(図13(f)参照)の内側面17aを被覆する孔部内側面被覆部13aを有している。そして、有機EL素子10は、陽極12及び陰極14の何れもが、有機層13に含まれる発光層の発光波長に対して透明であり、陰極14が、金属元素がドープされた酸化亜鉛(ZnO)からなる。
第1の実施形態に係る有機EL素子10は、上述のような、ボトムエミッション型の有機EL素子として構成される。
また、図1に示す例の有機EL素子10において、陽極12は、第2の誘電体層17の孔部17Aに連通する陽極孔部(第1電極孔部)12A(図13(g)参照)を備え、さらに、基板11は、陽極孔部12Aに連通する凹部11A(図13(h)参照)を備える。有機層13は、さらに、陽極孔部12Aの内側面12a被覆する陽極孔部内側面被覆部13bと、凹部11Aの内側面11aの少なくとも一部を被覆する凹部内側面被覆部13cを有する。
また、図示例では、有機層13が、さらに、第2の誘電体層17及び孔部内側面被覆部13aと第2電極14との間に配置する層状部13dを有している。
ここで、図1(a)においては、第2の誘電体層17の屈折率が孔部内側面被覆部13aの屈折率よりも大きい場合を示し、一方、図1(b)においては、第2の誘電体層17の屈折率が孔部内側面被覆部13aの屈折率よりも小さい場合を示している。
有機層13より低い屈折率を有する材料からなる低屈折率層には、空気層を含んでなる低屈折率層であってもよい。
また、孔部内側面被覆部、陽極孔部内側面被覆部及び凹部内側面被覆部は、有機層を構成する層のうちの一部によって構成されていてもよい。
上述のように、陰極側の構造について屈折率の比較を行う場合には、有機層の屈折率とは、有機EL材料からなる発光層を含む全ての層の平均の屈折率をいう。
連通する孔部17A、陽極孔部12A及び凹部11Aが基板面内の少なくとも一方向に配置される周期(ピッチ)が発光光の波長以上の場合には、孔部の形状はそれらの内側面で光を基板側へ屈折させる効果を奏するものであれば特に限定はされない。なお、図1(a)及び図1(b)には、孔部17Aの内側面17aは基板面に対して垂直に近い角度で配置するように描かれているが、かかる構成には限定されない。図1(a)に示すように第2の誘電体層17の屈折率が有機層の孔部内側面被覆部13aの屈折率より高い場合は、孔部17Aの内側面17aと、内側面17aの下端から基板面に平行に延びる仮想面がなす角度で、孔部17Aの内側の角度θは90°〜135°が好ましく、90°〜120°がより好ましい。
一方、図1(b)に示すように、第2の誘電体層17の屈折率が有機層の孔部内側面被覆部13aの屈折率より低い場合には、孔部17Aの内側面17aと、内側面17aの下端から基板面に平行に延びる仮想面がなす角度で、孔部17Aの内側の角度θは60°〜135°が好ましく、60°〜120°がより好ましい。
孔部17Aの内側面17aの傾斜角を上記のような角度とすることにより、SPPモードから放射された伝播光と、発光位置から陽極側へ向かう導波モード光が、孔部17A及び凹部11Aの内側面に入射して基板11側に屈折し、基板11の外表面から外部へ取り出されやすくなる。
一方、隣接する孔部17A、陽極孔部12A及び凹部11Aの周期(ピッチ)が光の波長と同等以下の場合においては、孔部、陽極孔部及び凹部の形状は、回折の効果やフォトニック結晶による効果を奏するものであれば特に限定はないが、発光した光をより基板側に取り出す観点からは、孔部内側面被覆部13aと第2の誘電体層17の屈折率の大小関係に依らず、孔部17A、陽極孔部12A及び凹部11Aの内側面は基板面に対して垂直に近いことが好ましい。
これは、孔部、陽極孔部及び凹部の内側面が基板面に対して垂直に近い角度で配置されることによって、孔部17Aの側面を横切る基板面内方向において、屈折率の変調が急峻になるためである。屈折率の変調が急峻な場合は、フォトニック結晶では基板面内方向に光が伝播できなくなるバンドギャップの周波数域が広くなり、より効率的に有機層13から外部へ取り出すことができる。また、回折格子でも屈折率の変調が急峻な場合は、基板方向への光の回折効率が向上するため、同様に素子外部への光取り出しが向上する。
本発明に係る有機EL素子に共通する陰極側の構成である、金属層/低屈折率層/陰極/有機層の積層構造において、低屈折率層の屈折率が有機層の屈折率よりも低い構成としては、低屈折率層、陰極、有機層の屈折率をそれぞれn、n、nとすると、n<n<nの場合(以下「Bパターン」という)、n<n<nの場合(以下「Cパターン」という)と、n<n<nの場合(以下「Dパターン」という)の3通りがある。ところで、Otto型配置では、金属層/低屈折率層/高屈折率層の順で層を配置する必要がある。ここで、Bパターンの場合は、金属層/低屈折率層/陰極の構成がOtto型配置になっている。また、Cパターンの場合は、金属層/低屈折率層/陰極の構成がOtto型配置である他、金属層/低屈折率層+陰極/有機層の構成もOtto型配置になっている。さらに、Dパターンの場合は、金属層/低屈折率層+陰極/有機層の構成がOtto型配置になっている。
上記B〜Dパターンのうち、最も好ましいのはCパターンである。この場合には、まず、金属層/低屈折率層/陰極(透明導電層)の構成がOtto型配置になっているとともに、金属層/低屈折率層+陰極(透明導電層)/有機層の構成でもOtto型配置になっているため、金属層からSPPモード光の再放射が最も生じやすい。さらに、低屈折率層、陰極(透明導電層)、有機層の順に屈折率が高くなるため、各界面で全反射が生じず、再放射されたSPPモード光がそのまま基板側へ取り出される。この具体的な構成としては、陰極(透明導電層)がPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)、代表的な屈折率:1.5)等の透明導電材料層で、低屈折率層が空気やCパターンの屈折率条件を満たすSOG(スピンオングラス)である場合が挙げられる。
次に好ましいのは、Bパターンである。この場合には、金属層/低屈折率層/陰極(透明導電層)の構成がOtto型配置になっているため、金属層からSPPモード光の再放射が生じる。但し、有機層(代表的な屈折率:1.7)の屈折率が低屈折率層と陰極(透明導電層)の中間の値なので、再放射されたSPPモード光のうちの一部の光は陰極(透明導電層)/有機層の界面で全反射して、残りの光が有機層に透過する。この具体的な構成としては、陰極がITO等の透明導電材料(代表的な屈折率:1.8)で低屈折率層がMgF(屈折率1.38)等の場合が挙げられる。
次に好ましいのは、Dパターンである。この場合には、金属層/低屈折率層/陰極(透明導電層)の構成はOtto型配置になっていないが、金属層/低屈折率層+陰極(透明導電層)/有機層の構成でだけOtto型配置になっているため、金属層からSPPモード光の再放射が生じるが、Bパターンの場合よりもさらにSPPモード光の再放射が少なくなる。この具体的な構成としては、屈折率の大小関係でn<nを満たすように陰極(例えばPEDOT:PSS)と有機層を選び、低屈折率層としてその屈折率nがnとnの中間となるような材料、例えば、Bパターンの屈折率条件を満たすSOGを採用すればよい。
なお、n<n<nの場合(以下「Eパターン」という)、n<n<nの場合(以下「Fパターン」ということがある)では、Otto型配置にはならない。また、n<n<nの場合(以下「Aパターン」という)では、金属層/低屈折率層/陰極がOtto型配置になっており、金属層からSPPモード光の再放射は生じるが、有機層の屈折率が低屈折率層よりも低いため、再放射されたSPPモード光のほとんどが陰極(透明導電層)/有機層の界面で全反射してしまい、陽極側の導波モードに取り出すことが困難である。
基板11は、本実施形態の有機EL素子10の支持基板であり、透光性材料からなる基板が用いられ、通常、可視光に対して透明であることが必要である。本実施形態の有機EL素子10は、この透光性基板上に上記層構造が形成されてなる。
上述のような透光性を有する基板11としては、例えば、400〜700nmの可視光における透過率が50%以上で、平滑な基板であることが好ましい。このような基板10として、具体的には、例えば、ガラス板やポリマー板等が挙げられる。ここで、ガラス板としては、特に、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等が挙げられる。
ここで、本実施形態で用いられる基板11は、複数の凹部11Aを備えるので、より精確に加工しやすい材料を採用することが好ましい。このような材料としては、特に限定されないが、例えば、石英等が挙げられる。
さらに、基板11として、上記透明樹脂やソーダガラス等を使用する場合には、水や酸素、金属イオン等が、基板11上に積層した透光性電極11等へ拡散しないよう、光の透過性を損なわない範囲で、基板11の表面に酸化ケイ素膜等のバリア性薄膜を形成することがより好ましい。
ここで、基板11に用いられる材料としては、後述の有機層(発光層)13から出射する光を基板11側から取り出す場合には、この光に対して透過性を有することが必要となる。なお、本実施形態において説明する、「光に対し透過性である」とは、有機層13から発する一定の波長範囲の可視光を透過することができればよいという意味であり、可視光領域全域にわたって透明である必要はない。但し、本実施形態では、基板11は、可視光として、波長450nm〜波長700nmの光を透過することが好ましい。また、透過率としては発光強度が最大である上記範囲の波長において、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
もし、発光光が可視光でない場合には、少なくとも発光波長領域に対して、可視光の場合と同様に透明であることが必要である。透過率としては、発光が最大強度となる波長に対し、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
基板11の厚さは、要求される機械的強度にも依ることから、特に限定されないが、好ましくは、0.01mm〜10mm、より好ましくは0.05mm〜2mmである。
なお、例えば、トップエミッション型の素子構造を採用し、有機層から出射する光を基板側から取り出す必要がない場合には、基板材料は上記の透明材料に限定されず、不透明な材料も使用できる。このような材料として、具体的には、ケイ素(Si)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)等の単体、またはこれらを含む合金、ステンレス等が挙げられる。また、不透明な基板材料としては、有機層で発光した光をより多く外部へ取り出すために、光反射性の高い金属材料を採用することが好ましい。また、上記の光透過性を有する材料の表面に、光反射性の金属材料からなる光反射膜を形成したものを用いてもよい。
陽極12は、複数の陽極孔部12A(図13(g)参照)を備えているが、本実施形態では、陽極孔部12Aの陽極孔部内側面12aが有機層13によって被覆されており(陽極孔部内側面被覆部13b)、また、陽極12の上面が第2の誘電体層17によって被覆されている。陽極孔部内側面被覆部13bは、陽極孔部内側面12aを被覆していれば、陽極孔部12Aを充填する構成でも、一部を埋める構成であってもよい。
本実施形態において、陽極12は、陰極14との間で電圧を印加することにより、有機層13に正孔を注入する電極(陽極)として機能する。陽極12は、仕事関数の大きい金属、合金、導電性化合物、あるいはこれらの混合物からなる材料を用いることが好ましく、陽極12に接する有機層13のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が過大にならないように、例えば、仕事関数が4eV以上6eV以下の材料を用いることが好ましい。ここで、仕事関数は、例えば、紫外線光電子分光分析法等の方法によって測定することができる。
陽極12の材料としては、透光性で、かつ導電性の材料であれば、特に制限はないが、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、二酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、金属元素をドープした酸化亜鉛等の透明無機酸化物、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン等の導電性高分子及び任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子、カーボンナノチューブ等の導電性光透過性材料、薄膜金属、薄膜状に形成された金属ナノワイヤ、これらを含む複合材料を挙げることができる。
また、陽極12は、上記電極材料を、例えば、抵抗加熱蒸着法や電子ビーム蒸着法に代表される真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の乾式成膜方法を用いて形成することができる。また、塗布成膜方法等の湿式成膜方法を採用することが可能な場合には、例えば、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法等の方法を用いて、陽極12を基板11上に薄膜として成膜、形成することができる。
ここで、有機層13からの発光を陽極12及び基板11側から取り出す構造を採用する場合には、発光光に対する陽極12の透過率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。例えば、発光光が可視光の場合には、400〜700nmの波長範囲における透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。このためには、具体的には、陽極12の電極材料や膜厚の適正化を行うことが好ましい。
また、陽極12のシート抵抗は、数百Ω/□以下であることが好ましい。
また、陽極12の膜厚は、特に限定されないが、使用する電極材料にも依るものの、上述した光透過率やシート抵抗等を勘案しながら、例えば、10nm〜2000nm(2μm)の範囲で形成することができる。陽極12の膜厚が10nmよりも薄いと、陽極12のシート抵抗が増大し、また、2000nmよりも厚いと、有機層13の平坦度を保てなくなるとともに、陽極の透過率が低下する。また、陽極12の膜厚は、導電性を高める観点からは、50nm以上の膜厚が好ましく、高い光透過性が維持される点では、1000nm以下の膜厚が好ましく、500nm以下の膜厚であることがより好ましい。
なお、有機層13からの発光を上部電極(陰極)側から取り出す構造、所謂、トップエミッション構造を採用し、有機層13から出射する光を基板11側から取り出す必要がない場合には、下部電極(陽極)として、本実施形態のような透光性材料を用いる必要が無い。このため、上記の基板11に使用可能な不透明材料として挙げた金属材料を、陽極に用いることができ、この場合、金属材料からなる下部電極は、基板(支持基板)を兼ねることができる。このように、金属材料からなる陽極が基板を兼ねる場合の、この陽極の厚さとしては、15nm〜10mmの範囲が好ましく、50nm〜2mmの範囲がより好ましい。
第2の誘電体層17は、有機層の屈折率より高いか又は低い屈折率を有するとともに、複数の孔部17Aを備えている。この孔部17Aの内側面17aは、有機層13によって被覆されている(孔部内側面被覆部13a)。孔部内側面被覆部13aは、内側面17aを被覆していれば、孔部17Aを充填する構成でも、一部を埋める構成でもよい。
上記のように第2の誘電体層17の周辺の構造について屈折率の比較を行う場合には、有機層の屈折率とは、孔部内側面被覆部13aの屈折率をいう。
第2の誘電体層17の材料としては、透光性でかつ孔部内側面被覆部13aの屈折率と異なる屈折率を有する材料であれば、特に制限はない。例えば、孔部内側面被覆部13aの屈折率が1.7である場合には、例えば、孔部内側面被覆部13aより低屈折率の第2の誘電体層17の材料としては、スピンオングラス(SOG(屈折率が1.6以下のもの))、フッ化マグネシウム(MgF(代表的な屈折率:1.38))等の金属フッ化物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機フッ素化合物、二酸化ケイ素(SiO(代表的な屈折率:1.45))、各種の低融点ガラス、多孔性物質が挙げられる。また、孔部内側面被覆部13aより高屈折率の第2の誘電体層17の材料としては、例えば、窒化ケイ素(Si)(代表的な屈折率:2.0)をはじめとするケイ素化合物、酸化チタン(TiO)(代表的な屈折率:2.5)をはじめとする金属酸化物、窒化アルミニウム(AlN)(代表的な屈折率:2.2)をはじめとする金属窒化物、アルミニウム酸窒化物(AlON)(代表的な屈折率:1.8)やケイ素酸窒化物をはじめとする金属酸窒化物、ポリエチレンナフタレート(代表的な屈折率:1.8)をはじめとする高分子化合物樹脂、スピンオングラス(SOG(屈折率が1.8以上のもの))が挙げられる。
第2の誘電体層17の厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜2000nmであり、より好ましくは50〜1000nmの範囲である。第2の誘電体層17の厚さが10nmよりも薄いと、有機層の膜厚に対して第2の誘電体層17の膜厚が占める割合が小さくなり、導波モード光が屈折又は回折され難くなり、また、2000nmよりも厚いと、有機層13の平坦度を保ち難くなる。
孔部17A、陽極孔部12A及び凹部11Aを基板面内の少なくとも1方向に周期的に配置する構成とする場合、孔部17A、陽極孔部12A及び凹部11Aのピッチは、後述の式(12)を満たすように選択する。即ち、Otto型配置の陰極構造によって所定の角度で取り出されたSPPモード光は、孔部、陽極孔部12A及び凹部11A及び孔部内側面被覆部13aによって形成された回折格子によって回折されるが、その回折光が基板/空気界面で全反射されないように、後述の式(12)を満たすピッチを選択する。
陰極14は、電子を発光層(有機層13)に注入するための電極(陰極)であり、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物、あるいはこれらの混合物からなる材料を用いることが好ましい。また、陰極14には、陽極12に接する有機層13のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が過大にならないように、仕事関数が1.9eV以上5eV以下の材料を用いるのが好ましい。
また、陰極14の材料としては、Otto型配置の陰極側構造を形成するために、透光性の導電材料を用いる必要があるが、例えば、後述するように、陰極14及び陽極12に同じ材料を用いることも可能である。
本発明の有機EL素子に用いられる陰極(第2電極)14は、上述したように、金属元素がドープされた酸化亜鉛(ZnO)からなる電極である。
本発明者等が、陰極材料としてCuI、ITO、SnO、ZnO、IZO等の透明導電性酸化物からなる導電材料を用いた場合に、素子の駆動電圧が上昇するという問題を解決するため、鋭意実験検討を重ねた。この結果、透明導電性酸化物の中でも、特に、ZnOに特定の金属元素をドープしたものが、透光性を維持しながら導電性を向上させることができることが明らかとなった。即ち、有機層上に設けられる陰極をZnOから構成し、これに特定の金属元素をドープすることにより、有機EL素子の駆動電圧が低減し、電力効率を向上させることが可能になることを見出した。
陰極14を構成するZnOにドープする金属元素としては、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉛(Pb)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)及びランタン(La)のうちの少なくとも1種以上であることが好ましい。これらの金属元素は、ZnOにドープすることで、このZnOからなる透明電極(陰極)の導電性を高めるとともに、発光層を含む有機層13への電子の注入効率を高める作用がある。また、一般に、金属酸化物に金属元素をドープすると、透過率が低下する傾向がみられるが、上記金属元素は、ZnOからなる透明電極(陰極)の透光性の低下を最小限に抑制しながら、導電性を高める作用が得られるものである。これは、亜鉛イオンの部分に上記金属イオンが置換固溶することで、電子が放出されて抵抗が下がるためと考えられる。
陰極14を構成するZnOにおける上記の金属元素の含有量は、金属元素1種あたりで0.1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。ZnOにおける金属元素の含有量がこの範囲であれば、上述のような、陰極14の透光性を低下させることなく導電性を高める作用が顕著となる。従って、有機EL素子の駆動電圧が低減し、電力効率を向上させる効果がより顕著に得られる。陰極14を構成するZnOにおける金属元素の含有量が、金属元素1種あたりで0.1質量%未満だと、高い透光性が維持できる一方で、導電性が十分でなく、駆動電圧が上昇するおそれがあり、また、10質量%を超えると、導電性が高くなる一方で透光性が低下し、結果として電力効率が低下するおそれがある。
なお、ZnOに上記金属元素をドープするにあたり、ドープする成分の原料として、各金属元素の単体及び/又はこれらの酸化物を用いて成膜することができる。このように、成膜に用いるドープする成分の原料が異なっていたとしても、成膜により得られた膜の導電性や透光性などの物性は同等である。
本発明に係る有機EL素子においては、有機層を挟む第1電極及び第2電極の何れもが発光光に対して透明であることが必要とされる。従って、本実施形態に係る有機EL素子の陰極14の発光光に対する透過率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。例えば、発光光が可視光の場合には、400〜700nmの波長範囲における透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。このためには、具体的には、陽極12の電極材料や膜厚の適正化を行うことが好ましい。
陰極14のシート抵抗は、有機EL素子としての電力効率等を考慮すると、数百Ω/□以下であることが好ましい。
また、陰極14の膜厚は、特に限定されず、材料にも依るものの、例えば、10nm〜1μmであり、より好ましくは30〜500nmの範囲である。陰極14の厚さが10nmよりも薄いと、シート抵抗が増加して駆動電圧が上昇する。また、陰極14の厚さが1μmよりも厚いと、成膜時の熱や放射線ダメージ、膜応力による機械的ダメージが電極や有機層に蓄積する。
また、陰極14は、上記の電極物質を、例えば、抵抗加熱法や電子ビーム法に代表される真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の乾式成膜方法を用いて成膜することができる。また、塗布成膜方法等の湿式成膜方法を採用することが可能な場合には、例えば、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、ディスペンサー法等の方法によって、薄膜を成膜することで形成することができる。
なお、本実施形態では、ボトムエミッション型の有機EL素子10において上部電極となる陰極(第2電極)14を、上述のような金属元素がドープされた酸化亜鉛から構成した場合について説明しているが、これには限定されない。例えば、上部電極である陰極14に加え、下部電極12も、上記と同様の材料から構成されていてもよい。
有機層13は、注入された電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能を有し、さらに、有機層13は、電子と正孔の電荷再結合の場を提供することにより、これを発光につなげる発光層としての機能を有するものである。ここで、本実施形態の有機層13においては、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあっても良く、また、正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があっても良い。
有機層13は、第2の誘電体層17の孔部17Aの内側面17aを被覆する孔部内側面被覆部13aと、陽極12の陽極孔部12Aの陽極孔部内側面12aを被覆する陽極孔部内側面被覆部13bと、基板11の凹部11Aの内側面11aを被覆する凹部内側面被覆部13cとを有する。また、図1に示す例では、さらに、第2の誘電体層17及び孔部内側面被覆部13aと陰極14との間に配置する層状部13dを有している。
有機層13における発光材料としては、従来から有機EL素子用の材料として知られる任意の材料を用いることができ、例えば、特開2011−139044号公報に記載の材料(特に、同公報の段落0100に記載の有機物材料、並びに、段落0101に記載の有機金属錯体材料)等を何ら制限なく用いることができる。
また、有機層13に用いられるホスト材料としては、例えば、特開2009−260308号公報に記載の材料(特に、同公報の段落0049に記載の正孔輸送性を有するホスト材料、並びに、段落0054に記載の電子輸送性を有するホスト材料)等を何ら制限無く用いることができる。
また、有機層13には、ドーパントをドープしても良い。この場合に用いられるドーパントとしても、従来公知のものを用いることが可能である。
また、有機層13は、有機EL材料からなる発光層(有機発光層)の他、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等を備えてもよい。
正孔注入層は、陽極12から有機層13への正孔注入を補助する層であり、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と低い層である。このような正孔注入層としては、より低い電界強度で正孔を有機層13に注入できる材料を用いることが好ましいが、この材料としては、上記の機能を担えるものであれば特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
また、正孔輸送層は、発光領域まで正孔を輸送する層であって、正孔移動度が大きい層である。このような正孔輸送層に用いる材料としては、上記の機能を担えるものであれば特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
電子注入層は、陰極14から有機層13への電子注入を補助する層である。このような電子注入層としては、より低い電界強度で電子を有機層13に注入できる材料が好ましいが、この材料としては、上記の機能を担えるものであれば特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
また、電子輸送層は、発光領域まで電子を輸送する層であって、電子移動度が大きい層である。このような電子輸送層に用いる材料としては、上記の機能を担えるものであれば特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
また、有機層13を形成する方法としても、特に限定されないが、例えば、抵抗加熱法や電子ビーム法に代表される真空蒸着法、転写法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の乾式成膜方法を用いることができる。また、塗布成膜方法等の湿式成膜方法を採用することが可能な場合は、例えば、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、ディスペンサー法、ダイコート法、グラビア印刷法等、従来公知の方法を用いて有機層13を成膜することができる。
有機層13を構成する上記の各層の厚さは、電荷の移動度や電荷注入バランス、発光する光の干渉等を考慮して、適宜選択することができ、特に限定されるものではない。
また、複数の層の膜厚を合計した有機層13の厚さは、例えば、40〜2000nmであり、より好ましくは80〜1000nmの範囲である。有機層13の厚さが40nmよりも薄いと、突き抜け電流による内部量子効率の低下や、金属層16による損失性表面波モードカップリング(lossy surface wave mode coupling)等、SPPカップリング以外の消光が起こる。また、有機層13の厚さが2000nmよりも厚いと、駆動電圧が上昇する。
低屈折率層15は、陰極14の、有機層13とは反対側に備えられており、陰極14を構成する透光性導電材料や、後述の有機層13を構成する材料よりも低い屈折率を有する透明材料からなることが好ましい。
発光層(有機層13)で発光した光が陰極側に伝播し、陰極14と低屈折率層15との界面に達したとき、臨界角以上の角度で入射した場合に全反射が起きる。
このような低屈折率層15の材料としては、陰極14を構成する透光性導電材料より低い屈折率を有する材料であれば、特に制限はなく、例えば、この屈折率条件を満たすSOG、フッ化マグネシウム(MgF(代表的な屈折率1.38))等の金属フッ化物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE(代表的な屈折率1.35))等の有機フッ素化合物、二酸化ケイ素(SiO(代表的な屈折率1.45))、各種の低融点ガラス、多孔性物質等が挙げられる。また、低屈折率層15は空気層を含む層からなり、陰極14を構成する透光性導電材料よりも低い屈折率を有するものであってもよい。
また、低屈折率層15は、陰極14及び有機層13のうちの少なくとも一方よりも、屈折率が0.2以上小さい材料からなることが好ましい。これは、低屈折率層15と上記各層との屈折率の差が0.2以上であれば、高屈折率層と低屈折率層の差が明確になり、Otto型配置によってSPPモード光の取出し効率が向上する効果が顕著に得られるからである。
また、低屈折率層15の厚さは、20nm〜300nmであることが好ましい。低屈折率層の厚みが20nm以下では、膜厚が薄すぎるために、後述の金属層と高屈折率層が接近してSPPモード光の波数が大きくなり、分散曲線が伝播光の分散曲線と交わらなくなる。また、低屈折率層の厚みが300nm以上では、膜厚が厚すぎるため、発光点におけるエバネッセント波が金属層に届かなくなり、SPPが金属層表面に捕捉されない。
なお、第1の誘電体層として、低屈折率層15に代わり、高屈折率層を用いる場合の材料としては、上記の第2の誘電体層17の材料として示したように、例えば、窒化ケイ素(Si)(代表的な屈折率:2.0)をはじめとするケイ素化合物、酸化チタン(TiO)(代表的な屈折率:2.5)をはじめとする金属酸化物、窒化アルミニウム(AlN)(代表的な屈折率:2.2)をはじめとする金属窒化物、アルミニウム酸窒化物(AlON)(代表的な屈折率:1.8)やケイ素酸窒化物をはじめとする金属酸窒化物、ポリエチレンナフタレート(代表的な屈折率:1.8)をはじめとする高分子化合物樹脂、スピンオングラス(SOG(屈折率が1.8以上のもの))が挙げられる。
また、高屈折率層の厚さとしても、低屈折率層の場合と同様の厚さとすることができる。
金属層16は、陰極14の、有機層13とは反対側に低屈折率層15を介して備えられている。
金属層16の材料としては、発光層(有機層13)における発光光によってプラズモン共鳴が生じるものであればよく、ほとんどの金属の単体又は合金を用いることができるが、中でも、複素誘電率の実部の絶対値が大きな負の値を持つような材料が好ましい。かかる材料としては、例えば、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の単体や、金と銀との合金、銀と銅との合金、真鍮等の合金が挙げられる。また、金属層16は、2層以上の積層構造であってもよい。
金属層16の厚さは、特に限定されないが、例えば、20〜2000nmであり、より好ましくは50〜500nmの範囲である。金属層16の厚さが20nmよりも薄いと、反射率が低くなって正面輝度が低下する。また、金属層16の厚さが500nmよりも厚いと、成膜時の熱や放射線ダメージ、膜応力による機械的ダメージが電極や有機層に蓄積するおそれがある。
本発明の有機EL素子の、Otto型配置による第2電極側構造の作用効果について、以下に説明する。以下は、計算式に基づく原理的な説明であるため、第1電極と第2電極をそれぞれ陽極または陰極の一方に対応させることはせずに、第1電極及び第2電極のまま記載する。
平坦な金属表面に生成される表面プラズモンポラリトン(SPP)の角振動数をωsp、波数の基板面内方向成分をkspとすると、この分散関係(角振動数と波数の間の関係)は、金属の誘電率の実部ε1と、金属表面に接触する誘電体の誘電率ε2によって決定され、近似的に次式(1)によって与えられる(cは真空中の光の速さ)。
Figure 2015095293
これに対して、通常の伝播光の分散関係は、角振動数をω、波数ベクトルをkとして、次式(2)によって与えられる。
Figure 2015095293
表面プラズモンポラリトン(SPP)の分散曲線は通常の伝播光の分散直線と交差しない。そのため、通常の伝播光では平坦な金属表面にSPPを励起することはできず、また、平坦な金属表面に存在するSPPから直接伝播光を取り出すことはできない。
次に、上記に対して、Otto型配置、即ち高屈折率誘電体層(誘電率ε)/低屈折率誘電体層(誘電率ε)/金属(誘電率εの積層構造)を用いた場合について考える。ここで、高屈折率誘電体層側から臨界角より大きい入射角で入射した光は、高屈折率誘電体層と低屈折率誘電体層の界面で全反射する。この際、界面の低屈折率誘電体層側には非伝播光であるエバネッセント波が生じ、全反射の点から遠ざかるに連れて、その光強度は減衰する(入射光は界面で全反射するが、その一部は界面から滲み出して存在していると見ることができる)。このエバネッセント波の分散曲線は、次式(3)によって与えられる。ここで、θは高屈折率誘電体層から低屈折率誘電体層への入射光の入射角である。
Figure 2015095293
従って、入射角θを変えることにより、SPPの分散曲線とエバネッセント波の分散直線に交点(ω=ωsp、k=ksp)を持たせることが可能となる。即ち、エバネッセント波を用いれば、平坦な金属表面にSPPを励起することができ、また、平坦な金属表面に存在するSPPからエバネッセント波を介して高屈折率誘電体層中に伝播光として取り出すことが可能となる。ここで、「入射角θ」は金属側からみると、SPPの放射角度ということになる。
換言すると、Otto型配置を用いた場合、SPPの分散曲線とエバネッセント波の分散直線とが交差するようになる。これは、所定の角度で放射されるSPPだけが、SPPとエバネッセント波とが共鳴することによりエネルギーをやり取りできる状態となることを意味する。そして、SPPを、エバネッセント波を介して所定の角度で放射される伝播光として取り出すことが可能となる。
従って、有機EL素子において、例えば、有機層に対して十分に近接して高屈折率層/低屈折率層/金属層を設けると、有機発光層で発光した光のうち、所定の入射角(SPPの分散曲線とエバネッセント波の分散直線とが交点を有する角度)で高屈折率層から高屈折率層/低屈折率層の界面へ入射した光は、低屈折率誘電体層中にエバネッセント波を生じ、そのエバネッセント波が金属表面にSPPモード光を励起する。また、金属表面に励起されたSPPモード光は、Otto型配置構造において生成されるエバネッセント波を介して、所定の角度で放射される伝播光として高屈折率誘電体層中に取り出すことが可能となる。即ち、有機EL素子においてOtto型配置構造を導入することにより、SPPモード光を、所定の角度で有機層中を伝播する伝播光として取り出すことが可能となる。但し、エバネッセント波を介したSPPモード光の励起・取り出しは、上記低屈折率層が十分に薄膜である場合に生じる。これは、低屈折率層が厚すぎると、有機層からのエバネッセント波の滲み出しが金属層まで到達せず、エバネッセント波とSPPモード光同士がエネルギーをやりとりできないためである。また、低屈折率層が薄すぎると、金属層と高屈折率層とが接近してSPPモードの波数が下記式(1)よりも大きくなり、分散曲線が伝播光の分散曲線(上記式(2))と交わらなくなるためである。
このようにしてSPPから取り出される光は、上述した通り、SPPの分散曲線とエバネッセント波の分散直線との交点に対応する所定の角度を有して放射される。
次に、本発明の有機EL素子の第1電極側構造の作用効果について以下に説明する。
第1電極側構造としては、導波モード光が透明基板側に屈折して界面への入射角(入射光線と入射する界面の法線がなす角度)が小さくなるように、透明基板面に対して垂直に近い屈折率の界面を導入した。
第1電極側構造は、基板面内方向に周期性を有する屈折率変調構造であっても、あるいは、周期性を有さない非周期的な屈折率変調構造であってもよい。
第1電極側構造が周期性を有する屈折率変調構造である場合、即ち、屈折率が互いに異なる有機層と第1電極とが1次元的又は2次元的に周期的に並ぶ場合には、屈折の効果に加えて、透過型回折格子(以下、単に「回折格子」という)による回折効果(基板面に対して光が所定の角度に指向する効果)や、フォトニック結晶による効果(特定の方向・周波数の光伝播を禁制する効果)によって、導波モード光を基板側に取り出すことが可能となる。
第1電極側構造の屈折率変調構造の周期(ピッチ)が波長(波長を屈折率で割った値)よりも十分に大きい場合は、屈折率が互いに異なる媒質界面での屈折が支配的なメカニズムとなって光が取り出されると考えられる。一方、第1電極の屈折率変調構造の周期(ピッチ)が波長と同等以下である場合は、回折格子の効果やフォトニック結晶の効果が支配的なメカニズムとなって光が取り出されると考えられる。
第1電極側構造が屈折率の周期性を有し、透過型回折格子として機能する場合について、光取り出し効率が向上する原理を、図2及び図3を用いてより具体的に説明する。
図2は、Otto型配置を有する第2電極側構造を備えた有機EL素子の断面模式図である。まず、図2を用いて、この第2電極側構造によりSPPモード光を有機層内の伝播光として取り出す原理について説明する。
ここで、nは低屈折率層の屈折率、nsubは基板の屈折率、nOLEDは第1電極、有機層及び第2電極の平均の屈折率、ε1は金属層の誘電率の実部、kspはSPPモード光の波数ベクトルの基板面内方向成分、kは真空中の光の波数(2π/λ)、ここでλは発光層から放射される光の真空中の波長、高屈折率層中を伝播する光の、伝播角をθとする。
SPPモード光の波数kspは、式(1)から、近似的に以下の式(4)によって与えられる。
Figure 2015095293
ただし、ε=n である。SPPモード光とそれが再放射され、伝播光として取り出されるためには、SPPモード光とその取り出される光とで波数ベクトルの面内成分が一致する、即ち、以下の式(5)が成立する必要がある。
Figure 2015095293
式(4)及び式(5)から、SPPモード光は以下の式(6)を満たす角度で伝播光として取り出される。
Figure 2015095293
次に、回折格子によって、そのSPPモード光から取り出された光を外部に取り出す原理について説明する。
図3は、透過型回折格子を備えた第1電極側構造を備えた有機EL素子の第1電極側構造を含む一部の断面模式図である。
SPPモード光から所定の角度θで取り出された光が、格子間隔(屈折率変調の周期)pを有する回折格子によって回折されるとする。基板面に対して所定の角度θsubで基板側に回折する条件は、回折格子に入射する入射光の面内波数と回折光の面内波数との差が2π/pの整数倍であることであり、以下の式(7)で表される。ここで、N=0、±1、・・・である。
なお、図3において、「OLED積層部」とは、第1電極及び有機層を含む導波モード光が伝播する層を示すものであり、具体的な層構成は本発明の具体的な構成に依存する。また、「回折格子」を備える位置も、本発明の具体的な構成に依存する。また、「回折格子」を備える位置は、本発明の具体的な構成に依存する。
Figure 2015095293
上記の式(6)及び式(7)から、下記の式(8)が得られる。
Figure 2015095293
基板と空気の界面で全反射が起きない条件は、式(9)を満たすことである。
Figure 2015095293
従って、回折格子の格子間隔が以下の式(10)を満たすような回折格子を設けることにより、基板と空気の界面で全反射を生じさせず、その結果、光取り出し効率は向上する。
Figure 2015095293
ここで、SPP共鳴を生じる周波数域においては、ε<0、ε<|ε|であるため、以下の式が成り立つ。
Figure 2015095293
ただし、式(10)中のNは正の整数としてよい。
さらに、基板と空気の界面でのフレネル反射を抑えるためには、式(10)は、おおよそ次の式をみたしていることが望ましい。また、実際の有機EL素子の発光波長はスペクトル分布をもつため、このλには発光層の発光スペクトルのピーク波長を採用する。ピーク波長としては、フォトルミネセンス・スペクトルのピーク波長を用いることができる。
Figure 2015095293
Nは回折次数であり、任意の整数であるが、回折次数が大きくなりすぎると、回折光の指向性が低下する。そこで、式(12)を満たすようなNが1≦N≦3の範囲にあるように、ピッチpと波長λを選ぶことが好ましい。
以上の理論的な解析は1次元的な解析であり、1次元回折格子構造(基板面内の所定の一方向に規則的な間隔で格子が配列する回折格子構造)については、この解析に基づく回折効果が得られる。1次元回折格子構造では、その一方向に直交する方向については格子構造を有さないため、その直交方向の光(光の成分)に対しては回折効果を生じない。これに対して、2次元回折格子構造では、基板面内のさらに別の一方向に対しても回折格子構造を有し、その方向についても回折効果が追加されることになる。よって、2次元回折格子構造では1次元回折格子構造よりも回折効果が大きい。
従って、所定の断面において、式(12)の条件を満たす構成を備えた有機EL素子では、その構成が1次元回折格子構造でも2次元回折格子構造でも、光取り出し効率の向上が得られるのである。
次に、フォトニック結晶の効果による光の取り出し効率の向上について説明する。
フォトニック結晶は、屈折率が周期的に異なる構造体で、特にその周期が波長と同等以下である構造体のことである。この周期的構造により、特定の波長範囲の光が存在できない禁制帯(フォトニックバンドギャップ)が形成される。本発明の第1電極側構造が周期的な屈折率変調構造で、その周期が波長と同等以下である場合には、第1電極側構造を1次元または2次元のフォトニック結晶(それぞれ、基板面内の所定の一方向または二方向に規則的な間隔で格子が配列するフォトニック結晶構造)と見なすことができる。1次元のフォトニック結晶では、周期構造を有する一方向に対しては、フォトニックバンドギャップに相当する波長の光は伝播することができない。このため、面内以外の方向へ光の伝播が再分配され、光を透明基板側に取り出すことができる。但し、1次元フォトニック結晶構造では、その一方向に直交する方向については周期構造を有しないため、この方向についてはフォトニックバンドギャップが存在せず、これによる取り出し効果はないか、あるとしても非常に小さい。
一方、2次元フォトニック結晶構造では面内の互いに異なる2方向に対して格子構造を有するため、この2方向に対してはフォトニックバンドギャップが形成され、光が伝播できないことになる。よって、2次元のフォトニック結晶では、面内で光が伝播できない方向が増大するため、1次元構造よりもより効率的に透明基板へ光が取り出される。
第1電極側構造が、基板面内方向に周期性を有さない非周期的な構造の場合は、この第1電極構造に入射した光がランダムな位置・位相で回折されるため、特定の放射角度に光が強め合って放射されることはない。従って、第1電極側にこのような構造を持つことによって、比較的均一な(拡散性の高い)配向特性を得ることができる。
つまり、第1電極側構造が周期的な構造の場合は、回折格子またはフォトニック結晶による出射光の強め合いの効果により、ある特定の放射角の光強度が強くなる配向特性を得ることができるのに対し、第1電極構造が非周期的な構造の場合は、比較的均一な配向特性を得ることができる。
そのため、第1電極側構造は、必要に応じて周期性を有する構造にするか、非周期的な構造にするかを選択することができる。
次に、本発明の第1の実施形態の有機EL素子の屈折の作用効果を、図1(a)、(b)を用いて模式的に説明する。本発明においては、第1電極及び第2電極は一方が陽極で他方が陰極である場合を主として説明しているが、以下の説明においては、第1電極を陽極、第2電極を陰極とする構成を例に挙げて説明する。
ここで、図1に矢印で示した光の伝播の仕方は、屈折作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。光の伝播形態は、第2の誘電体層17の屈折率と、有機層の孔部内側面被覆部13aの屈折率との大小関係によって異なり、図1(a)は前者が後者の屈折率より高い場合の説明図、図1(b)は前者が後者の屈折率より低い場合の説明図である。
まず、第2の誘電体層17の屈折率と孔部内側面被覆部13aとの屈折率の大小関係によらず、有機層13に含まれる発光層のAPi点で発光した光のうち、陰極14側に進んだ光が陰極14と低屈折率層15との界面に臨界角以上の大きい入射角で入射して(矢印AP1)全反射した場合(矢印AP1r)、低屈折率層15中にエバネッセント波(矢印AP2)が発生して、金属層16と低屈折率層15との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印AP3)が励起される。
励起されたSPPモード光は、エバネッセント波(矢印AP4)との共鳴を介して、所定の角度で陰極14に放射され(矢印AP5)、伝播光として有機層13に取り出されうる。
図1(a)、(b)において、発光点(あるいは発光箇所)APiは、平面視して孔部17A(図13(f)参照)と重なる位置の発光点を示すものであり(以下、この点での発光を「in発光」ということがある。)、発光点APoは、平面視して第2の誘電体層17と重なる位置の発光点を示すものであり(以下、この点での発光を「out発光」ということがある。)、また、発光点Aeは、「in発光」と「out発光」との境界位置での発光を示すもの(以下、この点での発光を「in−out端発光」ということがある。)である。「out発光」及び「in−out端発光」については、陰極14と低屈折率層15との界面での全反射光を示す矢印は省略している。
また、この作用効果の説明では、「in発光」の場合についてのみ詳細に説明しているが、「out発光」及び「in−out端発光」についても、SPP(矢印AP3)励起後の光の伝播は「in発光」の場合と同様である。
なお、電流は陰極と陽極との間に流れる。この構成では、第2の誘電体層17が陰極と陽極との間に配置されるため、発光点APoでの発光である「out発光」は電流が流れにくいルートにおける発光となる。これに対して、「in発光」は、陰極と陽極との間の電流の流れを第2の誘電体層17が直接妨げる位置にないルートにおける発光となる。このため、「in発光」の方が「out発光」より発光量が多い。
次に、第2の誘電体層17の屈折率が孔部内側面被覆部13aの屈折率より高い場合は、図1(a)に示すように、陰極側構造(陰極14、低屈折率層15、金属層16)から有機層13のBP点にまで取り出された光は、BP1のように伝播して基板11まで取り出される。
即ち、BP点から有機層13を通って進む光BP1は、第2の誘電体層17から孔部内側面被覆部13aに入射する際に、孔部内側面被覆部13aと第2の誘電体層17との界面(孔部17Aの内側面17a)で屈折し、有機層13を透過して、基板11内を通って外部に取り出されうる。
ここで、光BP1が第2の誘電体層17から孔部内側面被覆部13aへ進む際、第2の誘電体層17と孔部内側面被覆部13aとの界面(孔部17Aの内側面17a(基板11の法線方向に延びる、第2の誘電体層17と有機層13との界面))における屈折により、光BP1の基板11への入射角はより小さい角度(基板11の法線方向により近い角度)に変わる。有機層13と基板11(例えば、ガラス)との界面に臨界角以上の入射角で入射する光は、全反射して導波モード光となるが、光BP1は孔部17Aの内側面17aでの屈折により、基板11への入射角がより小さい角度に変わるので、有機層13と基板11との界面で全反射しない光が増え、光BP1が導波モード光となるのを防ぐ。また、基板(例えば、ガラス)の外表面(空気との界面)に臨界角以上の入射角で入射する光は、全反射して基板モード光となるが、同様に、孔部17Aの内側面17aでの屈折により、基板11から空気への光BP1の入射角がより小さい角度に変わるので、基板11の外表面で全反射をしない光が増えて、光線BP1が基板モード光となるのを防ぐことができる。すなわち、孔部17Aの内側面17aを備える構成を有することにより、光取り出し効率が向上する。
この構成においては、陰極14と陽極12との間の最短距離近傍が最も電流密度が高く、発光量が多くなる。有機層13中のCP点での発光は、この発光量が多い点での発光を模式的に示すものである。
有機層13に含まれる発光層のCP点で発光した光のうち、光CP1は基板に対して垂直方向に基板側に進む光であり、基板11との界面で屈折することなく基板11内を進み、外部に取り出される。
また、光CP2は、第2の誘電体層17と孔部内側面被覆部13aとの界面(孔部17Aの内側面17aで屈折し、有機層13を透過し、有機層13と基板11の界面で屈折して、基板11内を通って外部に取り出されうる。
ここで、光CP2が第2の誘電体層17から孔部内側面被覆部13aへ進む際、第2の誘電体層17と孔部内側面被覆部13aとの界面(孔部17Aの内側面17a)における屈折により、光CP2の有機層13から基板11への入射角および基板11から空気への入射角がより小さい角度に変わる。有機層13と基板11との界面に臨界角以上の角度で入射する光は、全反射して導波モード光となるが、光CP2は孔部17Aの内側面17aでの屈折により有機層13から基板11への入射角がより小さい角度に変わるので、陽極12と基板11との界面で全反射しない光が増えて、光CP2が導波モード光となるのを防ぐ。また、基板(例えば、ガラス)の外表面に臨界角以上の角度で入射する光は、全反射して基板モード光となるが、この孔部17Aの内側面17aでの屈折により、基板11から空気への光CP2の入射角がより小さい角度に変わるので、基板11の外表面で全反射しない光が増えて光取り出し効率が向上する。また、光CP3についても同様の効果が得られる。
一方、第2の誘電体層17の屈折率が孔部内側面被覆部13aの屈折率よりも低い場合は、図1(b)に示すように、励起されたSPPモード光AP3がエバネッセント波との共鳴を介して有機層13中に取り出されるまでは、第2の誘電体層17の屈折率が孔部内側面被覆部13aの屈折率より高い場合(図1(a))と同様である。
また、有機層に取り出された光は、図1(b)に示す光BP1のように伝播して、基板11まで取り出される。即ち、BP点から有機層13を通って進む光BP1は、孔部内側面被覆部13aと第2の誘電体層17との界面(孔部17Aの内側面17a)で屈折し、第2の誘電体層17内を進む。この際、第2の誘電体層17と孔部内側面被覆部13aの界面での屈折により、陽極12と基板11の界面、及び、基板11の外表面への入射角がより小さい角度に変わるので、これらの界面での全反射が抑えられ、光線BP1がそれぞれ導波モード光及び基板モード光となるのを防ぐことができ、光取出し効率が向上する。
次に、本発明の第1実施形態の有機EL素子10において、連通する孔部17A、陽極孔部12A及び凹部11Aが基板11の面内の少なくとも1方向に、発光光の波長と同等以下の周期で周期的に配置することによって、第2の誘電体層17、陽極12及び基板11の凸部11Bの積層体と有機層(孔部内側面被覆部13a、陽極孔部内側面被覆部13b及び凹部内側面被覆部13cの部分)とが回折格子をなす場合について、その回折格子による作用効果を、図4(a)を用いて模式的に説明する。図4(a)に矢印で示した光の伝播の仕方は、回折格子による作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。以下で述べる原理は、第2の誘電体層17、陽極12及び基板の凸部11Bの屈折率と、孔部内側面被覆部13a、陽極孔部内側面被覆部13b及び凹部内側面被覆部13cの屈折率の大小関係には依らない。
有機層13に含まれる発光層のDPi点で発光した光のうち、陰極14側に進んだ光が陰極14と低屈折率層15との界面に臨界角以上の大きな入射角で入射して(矢印DP1)全反射した場合(矢印DP1r)、低屈折率層15中にエバネッセント波(矢印DP2)が発生して、金属層16と低屈折率層15との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印DP3)が励起される。
励起されたSPPは、エバネッセント波(矢印DP4)との共鳴を介して、上述したように、所定の角度で陰極14に放射され(矢印DP5)、有機層13に取り出されうる。
DPo点及びDPe点で発光した光についても同様である。
陰極側構造(陰極14、低屈折率層15、金属層16)から有機層13のDP点にまで取り出された光は、有機層を伝播して回折格子に入射する。入射した光は、回折格子によって、ある所定の方向(強め合う条件を満たす方向)に回折光として放射される。
回折光は、通常の屈折光と比べて、回折点毎の回折光が干渉しながら放出されているため、ある所定の角度に非常に強く光が放射される。
ここで、矢印DPD1や矢印DPD2で示すように、基板11(例えば、ガラス)と外部(例えば空気)との界面に、臨界角以下の入射角で入射する光は、そのまま外部に取り出される。この矢印DPD1や矢印DPD2で示す光は上記のように干渉により、他の伝播方向に比べ強め合っているため、ある特定の角度に強度が強い光を取り出すことが可能となり、光の取り出し効率が向上する。
一方で、矢印DPD3で示すように、基板11と外部との界面に、臨界角以上の角度で入射する光は、全反射(矢印DPD3r)して基板モード光となり、基板外部に取り出すことができない。また、図示していないが、有機層13または陽極12と基板11の界面に、臨界角以上の入射角度で入射する光は全反射して導波モード光となり、同様に基板外部に取り出すことができない。
このように全反射する光を減らし、効率的に光を取り出すためには、前記式(12)を満たすように、金属層16及び低屈折率層15の材料、並びに、回折格子の周期(ピッチ)を選択することが好ましい。特に、数Nが小さいほど回折光の強度が高いので、できるだけ絶対値の小さいNに対し、式(12)を満たすように回折格子の周期等を選択することが好ましい。換言すると、このようなNに対し、式(12)を満たすようにすれば、回折格子により、SPPモード光から再放射された光を効率よく基板11から外部へ取り出すことができ、光の取り出し効率を向上させることが可能となる。
さらに、本発明の第1実施形態の有機EL素子10において、連通する孔部17A、陽極孔部12A及び凹部11Aが、基板11の面内の少なくとも1方向に発光光の波長と同程度以下の周期で周期的に配置される場合は、上述のように回折格子を形成していると見なせるとともに、一方ではフォトニック結晶を形成していると見ることもできる。そのフォトニック結晶による作用効果を、図4(b)を用いて模式的に説明する。図4(b)に矢印で示した光の伝播形態は、フォトニック結晶による作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。以下で述べる形態は、第2の誘電体層17と孔部内側面被覆部13aの屈折率の大小関係には依らない。
有機層13に含まれる発光層のEPi点で発光した光のうち、陰極14側に進んだ光が陰極14と低屈折率層15との界面に臨界角以上の大きな入射角で入射して(矢印EP1)全反射した場合(矢印EP1r)、低屈折率層15中にエバネッセント波(矢印EP2)が発生して、金属層16と低屈折率層15との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印EP3)が励起される。
励起されたSPPは、エバネッセント波(矢印EP4)との共鳴を介して、上述したように所定の角度で陰極14に放射され(矢印EP5)、伝播光として有機層13に取り出されうる。
EPo点及びEPe点で発光した光についても同様である。
陰極側構造(陰極14、低屈折率層15、金属層16)から有機層13のEP点にまで取り出された光は、有機層を伝搬し、フォトニック結晶構造に入射する。ある方向に光の波長と同等以下の周期を有する屈折率変調構造体が存在する空間では、その方向にはフォトニックバンドギャップを生じ、バンドギャップ周波数域内の光は伝播できなくなる(光閉じ込め効果)。
本発明の第1実施形態においては、周期構造は第2の誘電体層17、陽極12及び基板凸部11Bの積層体と有機層(孔部内側面被覆部13a、陽極孔部内側面被覆部13b及び凹部内側面被覆部13c)によって形成されており、ここでフォトニックバンドギャップを生じうるのは、基板と平行な矢印EPD2の方向である。従って、EPD2の方向のフォトニックバンドギャップに対応するバンドギャップ周波数域内の光に対しては、この基板と平行な方向への伝播は禁制される。
一方で、基板に垂直な方向については、フォトニック結晶をなす周期構造が形成されていないので、フォトニックバンドギャップは生じない。従って、有機層13中に伝播光として取り出されたSPPモード光はこの基板に垂直に近い方向に進むことになる。
フォトニック結晶構造がない場合、有機層13中に取り出された光は、大部分が陽極12(あるいは有機層13)と基板11の界面で全反射されて導波モード光になるか、基板11の外表面で全反射されて基板モードとなるが、フォトニック結晶構造によって有機層中の光伝播方向が基板面に対して垂直に近い方向に変えられるため、全反射が抑えられ、外部への光取り出し効率が向上する。
本実施形態においては、陽極孔部12Aが形成されているため、陽極材料による発光光の吸収損失がなく、光取り出し効率が向上する。また、連通する孔部17A、陽極孔部12A及び基板凹部11Aが形成されていることにより、この連通する孔に内部充填される有機層13において、発光層が深さ方向で第2の誘電体層17の位置に存在する確率が高くなる。これにより、発光層から基板11に対して平行に近い方向で放射される光(導波モード光になりやすい光)が孔部17Aの内側面17aに有効に入射して、その進行方向が基板面に対して垂直に近い方向に変えられ、光取り出し効率が向上する。
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子の一例を説明するための断面模式図である。第2の実施形態に係る有機EL素子は、いわゆるボトムエミッション構造であっても、トップエミッション構造であってもよく、何れの構造を適用してもよい。また、本実施形態では、陰極上の第1の誘電体層として低屈折率層を採用した場合を例に挙げて説明するが、これには限定されず、第1の実施形態で説明したように、高屈折率層を採用しても構わない。
図5に示す例の有機EL素子20は、陽極22と、有機EL材料からなる発光層を含む有機層23と、陰極24とを順に具備する有機EL素子30である。さらに、陰極24の、有機層23の反対側に、低屈折率層25と金属層26とを順に具備するとともに、陽極22と前記陰極24との間に、複数の孔部27A(図14(a)参照)を備えた第2の誘電体層27を具備する。有機層23は、少なくとも、孔部27Aの内側面27aを被覆する孔部内側面被覆部23aを有するものであり、第2の誘電体層27の屈折率は孔部内側面被覆部23aと異なるものであり、陰極24は、透明導電材料からなり、低屈折率層25の屈折率は、有機層23の屈折率よりも低いものであって、有機層23は、さらに、第2の誘電体層27及び孔部内側面被覆部23aと陰極24との間に配置する層状部23bを有する。ここで、図5(a)は、第2の誘電体層27の屈折率が孔部内側面被覆部23aの屈折率よりも大きい場合の有機EL素子を示し、一方、図5(b)は、第2の誘電体層27の屈折率が孔部内側面被覆部23aの屈折率よりも小さい場合の有機EL素子を示す。
そして、本実施形態の有機EL素子20は、上述した第1の実施形態の有機EL素子10と同様、陽極(第1電極)22及び陰極(第2電極)24の何れもが、有機層(発光層)23の発光波長に対して透明であり、陰極24が、金属元素がドープされたZnOからなる構成を採用するものである。本実施形態における説明では、このような陰極の構成及び作用効果は、第1の実施形態と同様であることから、その詳しい説明を省略する。
図5(a)、(b)において、有機EL素子20は、基板21から光を取り出す場合(図中における基板は実線の領域)と金属層26側から取り出す場合(図中における基板は二点鎖線の領域)を示している。以下、基板21が陽極22側に存在し、基板側から光を取り出すボトムエミッション構造を例に説明する。
なお、有機層23よりも低い屈折率を有する材料からなる低屈折率層25は、空気層を含んでなる低屈折率層であってもよい。
また、孔部内側面被覆部23aは、有機層23を構成する層のうちの一部によって構成されていてもよい。
上記のように、陰極側の構造について屈折率の比較を行う場合には、有機層の屈折率とは、有機EL材料からなる発光層を含む全ての層のうち、平均の屈折率をいう。
図7(a)、(b)は、何れも本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子の一例を説明するための斜視図であるが、図7(a)は、平面視で第2の誘電体層の孔部27Aが島部を構成する有機EL素子、図7(b)は、平面視で第2の誘電体層が島部を構成する有機EL素子を説明するための斜視図である。図7(b)における第2の誘電体層の島部27Bの外側面部は、図7(a)における孔部27Aの内側面と同様に、入射する光を基板21側に屈折させる効果を奏する。
従って、第2の誘電体層27が海島構造の海部であっても、あるいは島部であっても、同様の効果を奏するため、以下の説明は図7(a)に示す構造に基づいて行うものとする。
第2の誘電体層27の孔部27Aが基板面内の少なくとも一方向に配置される周期が発光光の波長以上の場合には、孔部の形状は、その内側面で光を基板側へ屈折させる効果を奏するものであれば、特に限定されない。なお、図5(a)及び図5(b)には、孔部27Aの内側面27aを基板面に対して垂直に近い角度で配置するように描かれているが、かかる構成には限定されない。図5(a)に示すように、第2の誘電体層27の屈折率が孔部内側面被覆部23aの屈折率よりも高い場合は、孔部27Aの内側面27aと、内側面17aの下端から基板面に平行に延びる仮想面がなす角度で、孔部27Aの内側の角度θは、90°〜135°が好ましく、90°〜120°がより好ましい(図5(a)の孔部27Aの底面は、基板面に平行であると仮定して描いている。)。
一方、図5(b)に示すように、第2の誘電体層27の屈折率が有機層の孔部内側面被覆部23aの屈折率よりも低い場合は、孔部27Aの内側面27aと、内側面17aの下端から基板面に平行に延びる仮想面がなす角度で、孔部27Aの内側の角度θは60°〜135°が好ましく、60°〜120°がより好ましい(図5(b)の孔部27Aの底面は、基板面に平行であると仮定して描いている。)。
孔部27Aの内側面27aの傾斜角を上記のような角度とすることにより、SPPモード光から再放射された伝播光と発光位置から陽極側へ向かう導波モード光が孔部27Aの内側面27aに入射して基板21側に屈折し、基板21の外表面から外部へ取り出されやすくなる。
一方で、隣接する孔部27Aが配置される周期が発光光の波長と同等以下の場合には、孔部27Aの形状は、回折の効果やフォトニック結晶による効果を奏するものであれば特に限定はされないが、発光した光をより基板側に取り出す観点からは、孔部内側面被覆部23aと第2の誘電体層27の屈折率の大小関係に依らず、孔部27Aの内側面27aは基板面に対して垂直に近い角度で配置されることが好ましい。
これは、孔部27Aの内側面27aが基板面に対して垂直に近い角度で配置されることによって、第2の誘電体層の孔部の側面27aを横切る基板面内方向において、屈折率の変調が急峻になるためである。屈折率の変調が急峻な場合、フォトニック結晶では基板面内方向に光が伝播できなくなるバンドギャップの周波数域が広くなり、より効率的に有機層23で発光した光を外部へ取り出すことができる。また回折格子でも基板面に垂直な方向への光の回折効率が向上するため、同様に素子外部への光取り出しが向上する。
また、図7(b)のように、第2の誘電体層が島部27Bを構成する場合についても、島部の形状に関して、上記と同様のことが言える。
本発明の有機EL素子は、上記のようにトップエミッション型、ボトムエミッション型の有機EL素子の何れにも適用できる。ボトムエミッション型に適用する場合には、基板21は、基板21の材料及び厚さとしては、第1の実施形態の基板1と同様のものを用いることができる。トップエミッション型に適用する場合には、上記記載と同様なものの他に、不透明なものも使用できる。具体的には、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W),チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)の単体金属、またはこれらを含んだ合金、あるいはステンレスなどからなる材料からなる基板、その他のトップエミッション型の有機EL素子で通常用いられる基板を用いることができる。
陽極22の材料及び厚さとしては、第1の実施形態の陽極材料と同様のものを用いることができる。
図7(a)に示すように、第2の誘電体層27の複数の孔部27Aの内側面27aが有機層23(図5の孔部内側面被覆部23a)によって被覆されている場合は、孔部内側面被覆部23aが内側面27aを被覆していれば、有機層23が孔部27Aを充填する構成でも、一部を埋める構成でもよい。
また、図7(b)に示すように、第2の誘電体層の島部27Bの外側面27bが有機層23(図示しない凸部外側面被覆部)によって被覆されている場合は、凸部外側面被覆部が外側面27bを被覆していれば、第2の誘電体層の島部27Bの全表面を覆う構成でも、その一部を覆う構成でもよい。
上記のように、第2の誘電体層27の周辺の構造について屈折率の比較を行う場合には、有機層の屈折率とは、孔部内側面被覆部23aの屈折率をいう。
第2の誘電体層27の材料及び厚さとしては、第1の実施形態の陽極材料と同様のものを用いることができる。
孔部が周期的に配置する構成とする場合には、孔部が配置される周期は、第1の実施形態と同様に、式(12)を満たすように選択する。
また、陰極側構造(陰極24、低屈折率層25、金属層26)は、その構成及び材料としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
有機層23は、孔部27Aの内側面27aを被覆する孔部内側面被覆部23aと、第2の誘電体層27及び孔部内側面被覆部23aと陰極24との間に配置する層状部23bを有している。第2の誘電体層の島部27Bを有する場合も、同じように層状部23bを有する。
発光層の材料としては、第1の実施形態と同様に、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料を用いることができる。
また、有機層23が、有機EL材料からなる発光層(有機発光層)の他、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等を備えていてもよいことについても、第1の実施形態と同様である。
次に、本実施形態の有機EL素子の作用効果を、図5(a)、(b)を用いて模式的に説明する。図5に矢印で示した光の伝播の形態は、作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。この形態は、第2の誘電体層27の屈折率と、孔部内側面被覆部23aとの大小関係によって異なり、図5(a)は、前者が後者より高い場合の説明図、図5(b)は、前者が後者より低い場合の説明図である。
なお、SPPモード光の伝播光としての取り出しについては、第1の実施形態に係る有機EL素子の場合と同じである。
まず、第2の誘電体層27の屈折率と孔部内側面被覆部23aとの屈折率の大小関係に依らず、有機層23に含まれる発光層のAQi点で発光した光のうち、陰極24側に進んだ光が、陰極24と低屈折率層25との界面に臨界角以上の大きい入射角で入射して(矢印AQ1)全反射した場合(矢印AQ1r)、低屈折率層25中にエバネッセント波(矢印AQ2)が発生して、金属層26と低屈折率層25との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印AQ3)が励起される。
励起されたSPPモード光は、エバネッセント波(矢印AQ4)との共鳴を介して、所定の角度で陰極24に放射され(矢印AQ5)、伝播光として有機層23に取り出されうる。
図5(a)、(b)において、発光点(あるいは発光箇所)AQiは、平面視して孔部27Aと重なる位置(有機層23を介して陽極22と対面する位置)の発光点を示すものであり(以下、この点での発光を「in発光」ということがある。)、発光点AQoは、平面視して第2の誘電体層27と重なる位置の発光点を示すものであり(以下、この点での発光を「out発光」ということがある。)、また、発光点Aeは、「in発光」と「out発光」との境界位置での発光を示すもの(以下、この点での発光を「in−out端発光」ということがある。)である。「out発光」及び「in−out端発光」については、陰極24と低屈折率層25との界面での全反射光を示す矢印は省略している。
また、この作用効果の説明では「in発光」の場合についてのみ詳細に説明しているが、「out発光」及び「in−out端発光」についても、SPP(矢印AQ3)励起後の光の伝播は「in発光」の場合と同様である。
なお、電流は陰極と陽極との間に流れるので、「in発光」の方が「out発光」よりも発光量が多い。
次に、第2の誘電体層27の屈折率が孔部内側面被覆部23aの屈折率よりも高い場合は、図5(a)のように陰極側構造(陰極24、低屈折率層25、金属層26)から有機層23のBQ点にまで取り出された光は、取り出される角度によって、BQ1のように伝播して基板21まで取り出される。
即ち、BQ点から有機層23を通って進む光BQ1(導波モード光)は、第2の誘電体層27と孔部内側面被覆部23aとの界面(孔部27Aの内側面27a)で屈折し、有機層23を透過し、基板21内を通って外部に取り出されうる。
ここで、光BQ1が第2の誘電体層27から孔部内側面被覆部23aへ進む際、第2の誘電体層27と孔部内側面被覆部23aとの界面(孔部27Aの内側面27a(基板21の法線方向に延びる、第2の誘電体層27と有機層23との界面))における屈折により、光BQ1の基板21への入射角はより小さい角度に変わる。
陽極22と基板21との界面に臨界角以上の入射角で入射する光は、界面で全反射して導波モード光となるが、光BQ1は孔部内側面27aでの屈折によって基板21への入射角がより小さい角度に変わるので、陽極22と基板21との界面で全反射をしない光が増えて、光BQ1が導波モード光となるのを防ぐ。また、基板21の外表面(空気との界面)に臨界角以上の入射角で入射する光は、全反射して基板モード光となるが、同様に、光BQ1は、この内側面27aでの屈折により、基板21から空気への入射角がより小さい角度に変わるので、基板21の外表面で全反射をしない光が増えて光取り出し効率が向上する。即ち、孔部27Aの内側面27aを備える構成を有することにより、光取り出し効率が向上する。
また、有機層23に含まれる発光層のCQ点で発光した光のうち、光CQ1は基板に対して垂直方向に基板側に進む光であり、有機層23と陽極22との界面及び陽極22と基板21との界面でも屈折することなく、陽極22内、基板21内を進み、外部に取り出される。
また、光CQ2は孔部27Aの内側面27aにおいて基板21側に屈折し、有機層23、陽極22、基板21内を通って外部に取り出されうる。この界面(内側面27a)がない構成では、基板21と陽極22の界面及び基板21の外表面で全反射を生じ得るが、この界面(内側面27a)を有することにより、孔部27Aの内側面27aでの屈折によって有機層内伝播光の基板21への入射角がより小さい角度に変わるので、陽極22と基板21の界面、基板21の外表面で全反射しない光が増えて光取り出し効率が向上する。即ち、孔部27Aの内側面27aを備える構成を有することにより、光取り出し効率が向上する。
光CQ3も同様に、孔部27Aの内側面27aにおいて、基板21側に屈折することにより、導波モード光及び基板モード光とならずに、有機層23、陽極22、基板21内を通って外部に取り出されうる。
一方、第2の誘電体層27の屈折率が孔部内側面被覆部23aの屈折率よりも低い場合は、図5(b)に示すように励起されたSPPモード光AQ3がエバネッセント波との共鳴を介して有機層23中に取り出されるまでは、第2の誘電体層27の屈折率が孔部内側面被覆部23aの屈折率よりも高い場合(図5(a))と同様である。
一方、有機層に取り出された光は、図5(b)に示す光BQ1のように伝播して、外部まで取り出される。即ち、BQ点から有機層23を通って進む光BQ1は、孔部内側面被覆部23aと第2の誘電体層27との界面(孔部27Aの内側面27a)で屈折し、第2の誘電体層27内を進む。このとき、内側面27aでの屈折により、陽極22と基板21の界面、及び基板21の外表面への入射角がより小さい角度に変わるので、これら界面での全反射が抑えられ、光BQ1がそれぞれ導波モード光および基板モード光となるのを防ぐことができ、光取出し効率が向上する。
次に、本発明の第2実施形態の有機EL素子20において、孔部27Aが基板21の面内の少なくとも1方向に、発光光の波長と同等以下の周期で周期的に配置されることにより、第2の誘電体層27と孔部内側面27aを被覆する有機層23aとが回折格子をなす場合について、その回折格子による作用効果を、図6(a)を用いて模式的に説明する。図6(a)中の矢印で示した光の伝播の形態は、回折格子による作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。以下で述べる原理は、第2の誘電体層27と孔部内側面被覆部23aの屈折率の大小関係にはよらない。
有機層23に含まれる発光層のDQi点で発光した光のうち、陰極24側に進んだ光が、陰極24と低屈折率層25との界面に臨界角以上の大きな入射角で入射して(矢印DQ1)全反射した場合(矢印DQ1r)、低屈折率層15中にエバネッセント波(矢印DQ2)が発生して、金属層26と低屈折率層25との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印DQ3)が励起される。
励起されたSPPは、エバネッセント波(矢印DQ4)との共鳴を介して、上述したように、所定の角度で陰極24に放射され(矢印DQ5)、有機層23に取り出されうる。
DQo点及びDQe点で発光した光についても同様である。
陰極側構造(陰極24、低屈折率層25、金属層26)から有機層23のDQ点にまで取り出された光は、有機層を伝播し、回折格子に入射する。入射した光は、回折格子により、ある所定の方向(強め合う条件を満たす方向)に回折光が放射される。
回折光は、通常の屈折光と比べて、回折点毎の回折光が干渉しながら放出されているため、ある所定の角度に非常に強く光が放射される。
ここで、矢印DQD1や矢印DQD2で示すように、基板21(例えば、ガラス)と外部(例えば、空気)との界面に、臨界角以下の入射角で入射する光は、そのまま外部に取り出される。この矢印DQD1や矢印DQD2で示す光は、上記のような干渉により、他の伝播方向に比べ強め合っているため、ある特定の角度に強度が強い光を取り出すことが可能となり、光の取り出し効率が向上する。
一方、矢印DQD3で示すように、基板21の外表面に、臨界角以上の角度で入射する光は、全反射(矢印DQD3r)して基板モード光となり、基板外部に取り出すことができない。また、図示していないが、陽極22(あるいは有機層23)と基板21との界面に、臨界角以上の入射角度で入射する光は全反射して導波モード光となり、同様に基板外部に取り出すことはできない。
このように、全反射する光を減らし、効率的に光を取り出すためには、前記式(12)を満たすように、金属層26及び低屈折率層25の材料、並びに、回折格子の周期(ピッチ)を選択することが好ましい。特に、次数Nが小さいほど回折光の強度が高いので、できるだけ絶対値の小さなNに対し、式(12)を満たすように回折格子の周期等を選択することが好ましい。換言すると、このようなNに対し式(12)を満たすようにすれば、回折格子により、SPPモード光から再放射された光を効率よく基板21から外部へ取り出すことができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
さらに、本発明の第2実施形態の有機EL素子20において、孔部27Aが、基板21の面内の少なくとも1方向に発光光の波長と同程度以下の周期で周期的に配置される場合は、上述のように、回折格子を形成していると見なせるとともに、一方ではフォトニック結晶を形成していると見ることもできる。そのようなフォトニック結晶による作用効果を、図6(b)を用いて模式的に説明する。図6(b)に矢印で示した光の伝播の形態は、フォトニック結晶による作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。以下で述べる原理は、第2の誘電体層27と孔部内側面被覆部23aの屈折率の大小関係にはよらない。
有機層23に含まれる発光層のEQi点で発光した光のうち、陰極24側に進んだ光が陰極24と低屈折率層25との界面に臨界角以上の大きな入射角で入射して(矢印EQ1)全反射した場合(矢印EQ1r)、低屈折率層25中にエバネッセント波(矢印EQ2)が発生して、金属層26と低屈折率層25との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印EQ3)が励起される。
励起されたSPPは、エバネッセント波(矢印EQ4)との共鳴を介して、上述したように所定の角度で陰極24に放射され(矢印EQ5)、伝播光として有機層23に取り出されうる。
EQo点及びEQe点で発光した光についても同様である。
陰極側構造(陰極24、低屈折率層25、金属層26)から有機層23のEQ点にまで取り出された光は、有機層を伝搬し、フォトニック結晶構造に入射する。ある方向に、光の波長と同等以下の周期を有する屈折率変調構造体が存在する空間では、その方向にはフォトニックバンドギャップを生じ、バンドギャップ周波数域内の光は伝播できなくなる(光閉じ込め効果)。
第2の実施形態においては、周期構造は第2の誘電体層27と孔部内側面27aを被覆する孔部内側面被覆部23aによって形成されており、ここでフォトニックバンドギャップを生じうるのは基板と平行な矢印EQD2の方向である。従って、EQD2の方向に対応するバンドギャップ周波数域内の光に対しては、この基板と平行な方向への伝播は禁制される。
一方で、基板に垂直な方向については、フォトニック結晶をなす周期構造が形成されていないので、フォトニックバンドギャップは生じない。従って、有機層23中に伝播光として取り出されたSPPモード光は、この基板に垂直に近い方向(EQD1の方向)に進むことになる。
フォトニック結晶構造がない場合、有機層23中に取り出された光は大部分が陽極22(あるいは有機層23)と基板21の界面で全反射されて導波モード光になるか、基板21の外表面で全反射されて基板モードとなるが、フォトニック結晶構造によって有機層中の光伝播方向が基板面に対して垂直に近い方向に変えられるため、これらの界面での全反射が抑えられ、外部への光取り出し効率が向上する。
以上、第2実施形態において、第2の誘電体層が海島構造の海部を構成する場合を例に説明を行った。しかし、第2の誘電体層が海島構造の島部を構成する場合についても、海部を構成する場合と較べて、屈折率変調構造における孔部(または島部)の周期(ピッチ)とサイズが等しい場合は同様の屈折の効果を有するため、同様の作用効果が得られる。また、回折格子やフォトニック結晶の効果についても同様である。
[第3の実施形態]
図8(a)、(b)は、本発明の第3の実施形態に係る有機EL素子の一例を説明するための断面模式図である。第3の実施形態に係る有機EL素子は、いわゆるボトムエミッション構造であっても、トップエミッション構造であっても、何れの構造を適用してもよい。また、本実施形態でも、 陰極上の第1の誘電体層として低屈折率層を採用した場合を例に挙げて説明するが、これには限定されず、第1、2の実施形態で説明したように、高屈折率層を採用しても構わない。
図8(a)、(b)に示す有機EL素子30は、陽極32と、有機EL材料からなる発光層を含む有機層33と、陰極34とを順に具備する有機EL素子40である。さらに、有機EL素子30は、陰極34の、有機層33の反対側に、低屈折率層35と金属層36とを順に具備するとともに、陽極32と陰極34との間に、複数の孔部37A(図16(a)参照)を備えた第2の誘電体層37を具備する。また、有機層33は、少なくとも、孔部37Aの内側面37aを被覆する孔部内側面被覆部33aを有するものであり、第2の誘電体層37の屈折率は孔部内側面被覆部33aと異なるものである。陰極34は、透明導電材料からなり、低屈折率層35の屈折率は、有機層33の屈折率よりも低いものであって、陽極32は、孔部37Aに連通する陽極孔部(第1電極孔部)32Aを備える。さらに、有機層33は、陽極孔部32Aの陽極孔部内側面32aを被覆する陽極孔部内側面被覆部33bと、第2の誘電体層37及び孔部内側面被覆部33aと陰極34との間に配置する層状部33cを有する。
ここで、図8(a)は第2の誘電体層37の屈折率が孔部内側面被覆部33aの屈折率よりも大きい有機EL素子を示し、一方、図8(b)は第2の誘電体層37の屈折率が孔部内側面被覆部33aの屈折率よりも小さい有機EL素子を示す。
図8(a)、(b)において、有機EL素子30は、基板11から光を取り出す場合(図中における基板は実線の領域)と金属層36側から取り出す場合(図中における基板は二点鎖線の領域)を示している。以下、基板31が陽極32側に存在し、基板側から光を取り出すボトムエミッション構造を例に説明する。
なお、有機層33より低い屈折率を有する材料からなる低屈折率層は、空気層を含んでいてもよい。
また、孔部内側面被覆部及び陽極孔部内側面被覆部は、有機層を構成する層のうちの一部によって構成されていてもよい。
上記のように陰極側の構造について屈折率の比較を行う場合には、有機層の屈折率とは、有機EL材料からなる発光層を含む全ての層のうち、平均の屈折率をいう。
図10(a)、(b)は、何れも本発明の第3の実施形態に係る有機EL素子の一例を説明するための斜視図であるが、図10(a)は、平面視で、孔部37Aと、これに連通する陽極孔部32Aが配列した場合、図10(b)は、互いに連結された陽極凸部32Bが突起状に配列し、その陽極凸部パターン上に、平面視で同形状の誘電体膜を島状に形成した誘電体島状部37Bを有する有機EL素子の、その他の例を説明するための斜視図である。図10(b)における誘電体島状部37Bは、図10(a)における孔部37Aと同様に、有機層33側から入射する光を基板31の法線寄りの方向に屈折させる効果を奏する。従って、図10(a)に示す構成のみならず、陽極32及び第2の誘電体層37の積層体と有機層33の海島の関係が図10(a)とは逆である、図10(b)の構成を用いることもできる。但し、この場合には、各陽極凸部32B間の導通を確保するために、基板31上で陽極凸部32Bを形成しない領域にも陽極の層状部を形成する必要がある。
従って、第2の誘電体層37が海島構造の海部であっても、あるいは島部であっても、同様の効果を奏するため、以下の説明は図10(a)の構造について行う。
そして、本実施形態の有機EL素子30も、上述した第1、2の実施形態の有機EL素子10、20と同様、陽極(第1電極)32及び陰極(第2電極)34の何れもが、有機層(発光層)33の発光波長に対して透明であり、陰極34が、金属元素がドープされたZnOからなる構成を採用するものである。本実施形態における説明では、このような陰極の構成及び作用効果は、第1の実施形態と同様であることから、その詳しい説明を省略する。
連通する孔部37A及び陽極孔部32Aが、基板面内の少なくとも一方向に配置される周期(ピッチ)が発光光の波長以上の場合には、孔部の形状は、それらの内側面で光を基板側へ屈折させる効果を奏するものであれば、特に限定はされない。
なお、図8(a)及び図8(b)には、孔部33Aの内側面33aを基板面に対して垂直に近い角度で配置するように描かれているが、かかる構成には限定されない。図8(a)に示すように、第2の誘電体層37の屈折率が孔部内側面被覆部33aの屈折率より高い場合は、孔部37Aの内側面37aと基板面がなす角度で、孔部37Aの内側の角度θは90°〜135°が好ましく、90°〜120°がより好ましい。
一方、図8(b)に示すように、第2の誘電体層37の屈折率が、有機層の孔部内側面被覆部33aの屈折率よりも低い場合は、孔部37Aの内側面37aと基板面がなす角度で、孔部37Aの内側の角度θは60°〜135°が好ましく、60°〜120°がより好ましい。
孔部37Aの内側面37aの傾斜角を上記のような角度とすることにより、SPPモードから放射された伝播光と、発光位置から陽極側へ向かう導波モード光が、孔部37Aの内側面37aに入射して基板31側に屈折し、基板31の外表面から外部へ取り出されやすくなる。
一方で、隣接する孔部37A及び陽極孔部32Aが配置される周期が、発光光の波長と同等以下の場合には、孔部37A及び陽極孔部32Aの形状は、回折の効果やフォトニック結晶による効果を奏するものであれば、特に限定はされないが、発光した光をより基板側に取り出す観点からは、孔部及び陽極孔部の内側面は基板面に対して垂直に近い角度で配置されることが好ましい。
これは、孔部及び陽極孔部の内側面が基板面に対して垂直に近い角度であることにより、孔部37Aの側面37aを横切る基板面内方向において、屈折率の変調が急峻になるためである。このように、屈折率の変調が急峻な場合、フォトニック結晶では基板面内方向に光が伝播できなくなるバンドギャップの周波数域が広くなり、より効率的に有機層33から外部へ光を取り出すことができる。また回折格子でも、基板方向への光の回折効率が向上するため、同様に素子外部への光取り出しが向上する。
上記のように、孔部及び陽極孔部を誘電体島状部及び陽極凸部としても形状に関して、同様のことが言える。
本発明の有機EL素子は、上記のように、トップエミッション型、ボトムエミッション型の有機EL素子の何れにも適用できる。基板31の材料及び厚さとしては、トップエミッション型、ボトムエミッション型それぞれについて、第2の実施形態の基板21と同様なものを用いることができる。
図10(a)に示すように、連通する複数の第2の誘電体層27の孔部27Aと陽極孔部32Aの内側面が有機層33(図8の孔部内側面被覆部33a及び陽極孔部内側面被覆部33b)によって被覆されている場合は、孔部内側面被覆部33aが孔部37Aの内側面37aを被覆し、且つ、陽極孔部内側面被覆部33bが陽極孔部内側面32aを被覆していれば、孔部37A及び陽極孔部32Aを充填する構成でも、その一部を埋める構成でもよい。
また、図10(b)に示すように、誘電体島状部37B及び陽極凸部32Bが有機層33(図示しない凸部外側面被覆部)によって被覆されている場合は、凸部外側面被覆部が誘電体島状部37Bの外表面37b及び陽極凸部32Bの外表面32bを被覆していれば、誘電体島状部37B及び陽極凸部32Bの全表面を覆う構成でも、その一部を覆う構成でもよい。
上記のように第2の誘電体層37の周辺の構造について屈折率の比較を行う場合には、有機層の屈折率とは、孔部内側面被覆部33aの屈折率をいう。
誘電体層37の材料及び厚さ、並びに陽極32の材料及び厚さとしては、それぞれ第1の実施形態と同様なものを用いることができる。
孔部及び陽極孔部が周期的に配置される構成とする場合には、孔部及び陽極孔部が配置される周期は、第1の実施形態と同様に、式(12)を満たすように選択する。
また、陰極側構造(陰極34、低屈折率層35、金属層36)は、その構成及び材料としては第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
有機層33は、孔部37Aの内側面37aを被覆する孔部内側面被覆部33aと、陽極孔部32Aの内側面を被覆する陽極孔部内側面被覆部33bと、第2の誘電体層37及び孔部内側面被覆部33aと陰極34との間に配置する層状部33cを有している。
発光層の材料としては、第1の実施形態と同様に、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料を用いることができる。
また、有機層33が、有機EL材料からなる発光層(有機発光層)の他、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等を備えてもよいことも、第1の実施形態と同様である。
次に、本発明の第3の実施形態の有機EL素子の作用効果を、図8(a)、(b)を用いて模式的に説明する。図8に矢印で示した光の伝播の形態は、作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。この形態は、第2の誘電体層37の屈折率と孔部内側面被覆部33aとの大小関係によって異なり、図8(a)は前者が後者より高い場合の説明図、図8(b)は前者が後者より低い場合の説明図である。
なお、SPPモード光の伝播光としての取り出しについては、第1の実施形態に係る有機EL素子の場合と同じである。
まず、第2の誘電体層37の屈折率と孔部内側面被覆部33aとの屈折率の大小関係によらず、有機層33に含まれる発光層のARi点で発光した光のうち、陰極34側に進んだ光が陰極34と低屈折率層35との界面に臨界角以上の大きい入射角で入射して(矢印AR1)全反射した場合(矢印AR1r)、低屈折率層35中にエバネッセント波(矢印AR2)が発生して、金属層36と低屈折率層35との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印AR3)が励起される。
励起されたSPPは、エバネッセント波(矢印AR4)との共鳴を介して、所定の角度で陰極34に放射され(矢印AR5)、伝播光として有機層33に取り出されうる。
図8(a)、(b)において、発光点(あるいは発光箇所)ARiは、平面視して孔部37Aと重なる位置の発光点を示すものであり(以下、この点での発光を「in発光」ということがある。)、発光点ARoは、平面視して第2の誘電体層37と重なる位置の発光点を示すものであり(以下、この点での発光を「out発光」ということがある。)、また、発光点Aeは、「in発光」と「out発光」との境界位置での発光を示すもの(以下、この点での発光を「in−out端発光」ということがある。)である。ここで、「out発光」及び「in−out端発光」については、陰極34と低屈折率層35との界面での全反射光を示す矢印は省略している。
また、この作用効果の説明では、「in発光」の場合についてのみ詳細に説明しているが、「out発光」及び「in−out端発光」についても、SPP(矢印AP3)励起後の光の伝播は「in発光」の場合と同様である。
なお、電流は陰極と陽極との間に流れる。この構成では、第2の誘電体層37が陰極34と陽極32との間に有するため、発光点ARoでの発光である「out発光」は、電流が流れにくいルートにおける発光となる。これに対して、「in発光」は、第2の誘電体層37が、陰極34と陽極32との間の電流の流れを直接妨げる位置にないルートにおける発光となる。このため、「in発光」の方が「out発光」より発光量が多い。
次に、第2の誘電体層37の屈折率が孔部内側面被覆部33aの屈折率よりも高い場合は、図8(a)に示すように、陰極側構造(陰極34、低屈折率層35、金属層36)から有機層33のBR点にまで取り出された光は、取り出される角度により、BR1のように伝播して基板11まで取り出される。
即ち、BR点から有機層13を通って進む光BR1(導波モード光)は、孔部37Aの内側面37a(基板31に対してほぼ垂直に延びる、第2の誘電体層37と孔部内側面被覆部33aとの界面)において基板31側に屈折し、有機層33を透過し、基板31内を通って外部に取り出されうる。
ここで、光BR1が第2の誘電体層37から孔部内側面被覆部33aへ進む際、第2の誘電体層37と孔部内側面被覆部33aとの界面(孔部37Aの内側面37a(基板31の法線方向に延びる、第2の誘電体層37と有機層33との界面))における屈折により、光BR1の基板31への入射角はより小さい角度に変わる。
有機層33(あるいは陽極32)と基板31との界面に臨界角以上の入射角で入射する光は、界面で全反射して導波モード光となるが、光BR1は孔部内側面37aでの屈折によって基板31への入射角がより小さい角度に変わるので、有機層33(あるいは陽極22)と基板21との界面での全反射が生じない光が増え、光BR1が導波モード光となるのを防ぐ。また、基板31の外表面(空気との界面)に臨界角以上の入射角で入射する光は、全反射して基板モード光となるが、同様に、孔部37Aの内側面37aでの屈折により、基板31から空気への光BR1の入射角がより小さい角度に変わるので、基板31の外表面で全反射をしない光が増えて光取り出し効率が向上する。即ち、孔部37Aの内側面37aを備える構成を有することにより、光取り出し効率が向上する。
この構成においては、陰極34と陽極32との間の最短距離近傍が最も電流密度が高く、発光量が多くなる。有機層33に含まれる発光層のCR点での発光は、この発光量が多い点での発光を模式的に示すものである。
また、有機層33に含まれる発光層のCR点で発光した光のうち、光CR1は基板に対して垂直方向に基板側に進む光であり、有機層33と基板31との界面で屈折することなく、基板31内を進み、外部に取り出される。
また、光CR2は、孔部37Aの内側面37aで基板31側に屈折し、有機層33内を進み、基板31内を通って外部に取り出されうる。
ここで、光CR2が第2の誘電体層37から孔部内側面被覆部33aへ進む際、第2の誘電体層37と孔部内側面被覆部33aとの界面(孔部37Aの内側面37a)における屈折により、基板31への入射角がより小さい角度に変わる。有機層33と基板31との界面及び基板(例えば、ガラス)の外表面に臨界角以上の入射角で入射する光は全反射するが、この孔部37Aの内側面37aでの屈折により、有機層33と基板31との界面及び基板31の外表面への入射角がより小さい角度に変わるので、これらの界面で全反射をしない光が増えて光取り出し効率が向上する。また、光CR3についても同様の効果が得られる。
一方、第2の誘電体層37の屈折率が孔部内側面被覆部33aの屈折率よりも低い場合、図8(b)に示すように励起されたSPPモード光AR3がエバネッセント波との共鳴を介して有機層33中に取り出されるまでは、第2の誘電体層37の屈折率が孔部内側面被覆部23aの屈折率より高い場合(図8(a))と同様である。
また、有機層に取り出された光は、図8(b)に示す光BR1のように伝播して、外部まで取り出される。即ち、BR点から有機層33を通って進む光BR1は、孔部内側面被覆部33aと第2の誘電体層37との界面(孔部37Aの内側面37a)で屈折し、第2の誘電体層37内を進む。このとき、内側面37aでの屈折により、陽極32と基板31の界面、及び基板31の外表面への入射角がより小さい角度に変わるので、これら界面での全反射が抑えられ、光BR1がそれぞれ導波モード光および基板モード光となるのを防ぐことができ、光取出し効率が向上する。
次に、本発明の第3実施形態の有機EL素子30において、連通する孔部37A及び陽極孔部32Aが、基板31の面内の少なくとも1方向に発光光の波長と同等以下の周期で周期的に配置されることによって、第2の誘電体層37と陽極32の積層構造と内側面37a及び陽極孔部内側面32aを被覆する有機層部分(33a、33b)とが回折格子をなす場合について、その回折格子による作用効果を、図9(a)を用いて模式的に説明する。図9(a)に矢印で示した光の伝播の形態は、回折格子による作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。以下で述べる原理は、第2の誘電体層37と孔部内側面被覆部33aの屈折率の大小関係にはよらない。
有機層33に含まれる発光層のDRi点で発光した光のうち、陰極34側に進んだ光が陰極34と低屈折率層35との界面に臨界角以上の大きな入射角で入射して(矢印DR1)全反射した場合(矢印DR1r)、低屈折率層35中にエバネッセント波(矢印DR2)が発生して、金属層36と低屈折率層35との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印DR3)が励起される。
励起されたSPPは、エバネッセント波(矢印DR4)との共鳴を介して、上述したように、所定の角度で陰極34に放射され(矢印DR5)、導波モード光として有機層33に取り出されうる。
DRo点及びDRe点で発光した光についても同様である。
陰極側構造(陰極34、低屈折率層35、金属層36)から有機層33のDR点にまで取り出された光は、有機層を伝播して回折格子に入射する。入射した光は、回折格子によって、ある所定の方向(強め合う条件を満たす方向)に回折光が放射される。
回折光は、通常の屈折光と比べて、回折点毎の回折光が干渉しながら放出されているため、ある所定の角度に非常に強く光が放射される。
ここで、矢印DRD1や矢印DRD2で示すように、基板31(例えば、ガラス)と外部(例えば、空気)との界面に、臨界角以下の入射角で入射する光は、そのまま外部に取り出される。この矢印DRD1や矢印DRD2で示す光は、上記のような干渉により、他の伝播方向に比べ強め合っているため、ある特定の角度に強度が強い光を取り出すことが可能となり、光取り出し効率が向上する。
一方で、矢印DRD3で示すように、基板31の外表面に、臨界角以上の角度で入射する光は、全反射(矢印DRD3r)して基板モード光となり、基板外部に取り出すことができない。また、図示していないが、陽極32(あるいは有機層33)と基板31との界面に、臨界角以上の入射角度で入射する光は全反射して導波モード光となり、同様に基板外部に取り出すことはできない。
このように、全反射する光を減らし、効率的に光を取り出すためには、前記式(12)を満たすように、金属層36及び低屈折率層35の材料、並びに、回折格子の周期(ピッチ)を選択することが好ましい。特に、次数Nが小さいほど回折光の強度が高いので、できるだけ絶対値の小さいNに対し、式(12)を満たすように回折格子の周期等を選択することが好ましい。換言すると、このようなNに対して、式(12)を満たすようにすれば、回折格子により、SPPモード光から再放射された光を効率よく基板31から外部へ取り出すことができ、光取り出し効率を向上させることができる。
さらに、本発明の第3実施形態の有機EL素子30において、連通する孔部37A及び陽極孔部32Aが、基板31の面内の少なくとも1方向に発光光の波長と同程度以下の周期で周期的に配置される場合は、上述のように回折格子を形成していると見なせるとともに、一方ではフォトニック結晶を形成していると見ることもできる。そのフォトニック結晶による作用効果を、図9(b)を用いて模式的に説明する。図9(b)に矢印で示した光の伝播の形態は、フォトニック結晶による作用効果の原理をわかりやすく説明するために模式的に示したものである。以下で述べる原理は、第2の誘電体層37と孔部内側面被覆部33aの屈折率の大小関係には依らない。
有機層33に含まれる発光層のERi点で発光した光のうち、陰極34側に進んだ光が陰極34と低屈折率層35との界面に臨界角以上の大きな入射角で入射して(矢印ER1)全反射した場合(矢印ER1r)、低屈折率層35中にエバネッセント波(矢印ER2)が発生して、金属層36と低屈折率層35との界面まで滲み出し、表面プラズモンポラリトンSPP(矢印ER3)が励起される。
励起されたSPPは、エバネッセント波(矢印ER4)との共鳴を介して、上述したように、所定の角度で陰極34に放射され(矢印ER5)、伝播光として有機層33に取り出されうる。
ERo点及びERe点で発光した光についても同様である。
陰極側構造(陰極34、低屈折率層35、金属層36)から有機層33のER点にまで取り出された光は、有機層を伝搬し、フォトニック結晶構造に入射する。ある方向に光の波長と同等以下の周期を有する屈折率変調構造体が存在する空間では、その方向にはフォトニックバンドギャップを生じ、バンドギャップ周波数域内の光は伝播できなくなる(光閉じ込め効果)。
本発明の第3の実施形態においては、周期構造は、第2の誘電体層37及び陽極32と孔部内側面37aを被覆する孔部内側面被覆部33a及び陽極孔部内側面32aを被覆する陽極孔部内側面被覆部33bによって形成されているため、バンドギャップを生じうるのは基板と平行な矢印ERD2の方向である。したがって、ERD2の方向に対応するバンドギャップ周波数域内の光に対しては、この基板と平行な方向への伝播は禁制される。
一方で、基板に垂直な方向については、フォトニック結晶をなす周期構造が形成されていないので、フォトニックバンドギャップは生じない。従って、有機層33中に伝播光として取り出されたSPPモード光は、この基板に垂直に近い方向に進むことになる。
フォトニック結晶構造がない場合、有機層33中に取り出された光は、大部分が陽極32(あるいは有機層33)と基板界面で全反射されて導波モード光になるか、基板31の外表面で全反射されて基板モードとなるが、フォトニック結晶構造によって有機層中の光伝播方向が基板面に対して垂直に近い方向に変えられるために全反射が抑えられ、外部への光取り出し効率が向上する。
以上、第3実施形態において、第2の誘電体層及び陽極が海島構造の海部を構成する場合を例に説明を行った。しかしながら、第2の誘電体層及び陽極が海島構造の島部を構成する場合についても、海部を構成する場合と較べて、屈折率変調構造における孔部(または島部)の周期(ピッチ)とサイズが等しい場合は同様の屈折の効果を有するため、同様の作用効果が得られる。また、回折格子やフォトニック結晶の効果についても同様である。
<画像表示装置>
次に、上記の有機EL素子を備えた画像表示装置について説明する。
上記の有機EL素子10、20または30を備えた画像表示装置は、有機EL素子による違いはないため、以下の説明では、各有機EL素子10、20又は30を、全て有機EL素子10として説明する。また、有機EL素子はボトムエミッション構造であっても、トップエミッション構造であっても良いが、以下の説明ではボトムエミッション構造を例に挙げて説明する。
図11は、上記の有機EL素子を備えた画像表示装置の一例を説明する図である。
図11に示した画像表示装置100は、いわゆるパッシブマトリクス型の画像表示装置であり、有機EL素子10の他に、陽極配線104、陽極補助配線106、陰極配線108、絶縁膜110、陰極隔壁112、封止プレート116、シール材118を備えている。
本実施形態において、画像表示装置100の基板1上には、複数の陽極配線104が形成されている。陽極配線104は、一定の間隔を隔てて平行に配置される。陽極配線104は、透明導電膜により構成され、例えば、ITOを用いることができる。また、陽極配線104の厚さは、例えば、100nm〜150nmとすることができる。そして、それぞれの陽極配線104の端部の上には、陽極補助配線106が形成される。この陽極補助配線106は、陽極配線104と電気的に接続されている。このような構成とすることにより、陽極補助配線106は、基板1の端部側において外部配線と接続するための端子として機能し、外部に設けられた図示しない駆動回路から陽極補助配線106を介して陽極配線104に電流を供給することができる。陽極補助配線106は、例えば、厚さ500nm〜600nmの金属膜によって構成される。
また、有機EL素子10上には、複数の陰極配線108が設けられている。複数の陰極配線108は、それぞれが平行となるように、かつ、陽極配線104と直交するように配設されている。陰極配線108には、Al、Al合金、Ag又はAg合金を使用することができる。陰極配線108の厚さは、例えば、100nm〜150nmである。また、陰極配線108の端部には、陽極配線104に対する陽極補助配線106と同様に、図示しない陰極補助配線が設けられ、陰極配線108と電気的に接続されている。よって、陰極配線108と陰極補助配線との間に電流を流すことができる。
さらに基板1上には、陽極配線104を覆うように絶縁膜110が形成される。絶縁膜110には、陽極配線104の一部を露出するように矩形状の開口部120が設けられている。複数の開口部120は、陽極配線104の上にマトリクス状に配置されている。この開口部120において、陽極配線104と陰極配線108の間に有機EL素子10が設けられる。即ち、それぞれの開口部120が画素となる。従って、開口部120に対応して表示領域が形成される。ここで、絶縁膜110の膜厚は、例えば、200nm〜1000nmとすることができ、開口部120の大きさは、例えば、100μm×100μmとすることができる。
有機EL素子10は、開口部120において陽極配線104と陰極配線108との間に位置している。そして、このような場合、有機EL素子10の陽極12が陽極配線104と接触し、陰極14が陰極配線108と接触する。有機EL素子10の厚さは、例えば、150nm〜200nmとすることができる。
絶縁膜110の上には、複数の陰極隔壁112が陽極配線104と平面視で直交する方向に沿って形成されている。陰極隔壁112は、陰極配線108の配線同士が導通しないように、複数の陰極配線108を空間的に分離するための役割を担っている。従って、隣接する陰極隔壁112の間に、それぞれ陰極配線108が配置される。陰極隔壁112の大きさとしては、例えば、高さが2μm〜3μm、幅が10μmのものを用いることができる。
また、基板1は、封止プレート116とシール材118を介して貼り合わせられている。これにより、有機EL素子10が設けられた空間を封止することができ、有機EL素子10が大気中の水分によって劣化するのを防ぐことができる。このような封止プレート116としては、例えば、厚さが0.7mm〜1.1mmのガラス基板を使用することができる。封止プレート116は、素子がボトムエミッション型のように光を基板1側から取り出す場合は、透明でなくてもよい。一方、トップエミッション型のような、光を封止プレート116側から取り出す素子である場合は、封止プレート116は発光波長域の少なくとも一部の波長に対して透明である必要がある。
このような構造の画像表示装置100において、図示しない駆動装置により、陽極補助配線106、図示しない陰極補助配線を介して、有機EL素子10に電流を供給し、発光層を発光させることができ、基板1を通して光を出射させることができる。そして、上述の画素に対応した有機EL素子10の発光、非発光を制御装置によって制御することにより、画像表示装置100に画像を表示させることができる。
<照明装置>
次に、上記の有機EL素子を用いた照明装置について説明する。
上記の有機EL素子10、20又は30を備えた照明装置は有機EL素子による違いはないため、以下の説明では、各有機EL素子10、20又は30を全て有機EL素子10として説明する。また、有機EL素子は、ボトムエミッション構造であっても、トップエミッション構造であっても良いが、以下の説明ではボトムエミッション構造を例に挙げて説明する。
図12は、上記の有機EL素子10を備える照明装置の一例を説明する図である。
図12に示す照明装置200は、上述した有機EL素子10と、有機EL素子10の基板1上に設置され陽極12(図1参照)に接続される端子202と、陰極14(図1参照)に接続される端子203と、端子202と端子203とに接続して有機EL素子10を駆動するための点灯回路201とから構成される。
点灯回路201は、図示しない直流電源と図示しない制御回路を内部に有し、端子202と端子203を通して、有機EL素子10の陽極12と陰極14との間に電圧を印加して電流を供給する。そして、有機EL素子10を駆動し、発光層を発光させて、基板1を通して光を出射させ、照明光として利用する。発光層は、白色光を出射する発光材料から構成されていてもよく、また緑色光(G)、青色光(B)、赤色光(R)を出射する発光材料を使用した有機EL素子10をそれぞれ複数個設け、その合成光が白色となるように構成してもよい。
<有機EL素子の製造方法>
次に、本発明の第1の実施形態で説明した有機EL素子10を製造する方法(以下、適宜「製造方法1」という)について、図13を参照しながら説明する。
まず、図13(a)に示すように、基板11上に、陽極12、第2の誘電体層17を順に形成する。この陽極12、第2の誘電体層17の形成方法は、特に限定されないが、例えば、抵抗加熱蒸着法や電子ビーム蒸着法に代表される真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の乾式プロセスの他、塗布法等、各種の湿式プロセスも用いることができる。
なお、陽極12を形成した後に、陽極12の表面処理を行うことで、オーバーコートされる層の性能(陽極12との密着性、表面平滑性、ホール注入障壁の低減化など)を改善することができる。表面処理の具体的方法としては、高周波プラズマ処理を始めとしてスパッタリング処理、コロナ処理、UVオゾン照射処理、紫外線照射処理、または酸素プラズマ処理等が挙げられる。
また、陽極12は、必要に応じて、上述した金属元素がドープされた酸化亜鉛から形成することもできる。
さらに、陽極12の表面処理の表面処理を行う代わりに、もしくは表面処理に追加して、図示しない陽極バッファ層を形成することで表面処理と同様の効果が期待できる。そして、陽極バッファ層は、ウェットプロセスにて作製することができ、具体的な成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法、浸漬法、電気化学的方法等が挙げられる。
次に、図13(a)の工程で形成した陽極12及び第2の誘電体層17を貫通する形で、互いに連通する陽極孔部12A及び孔部17Aを形成するが、陽極孔部2A及び孔部17Aを形成するには、例えば、フォトリソグラフィを用いた方法が使用できる。これを行うには、図13(b)に示すように、まず第2の誘電体層17の上にポジ型レジスト液を塗布し、スピンコート等により余分なレジスト液を除去して、レジスト層19を形成する。
そして、陽極孔部12A及び孔部17Aを形成するための所定のパターンが描画されたマスク(図示せず)を被せ、紫外線(UV)、電子線(EB)等によって露光を行うと、図13(c)に示すように、レジスト層19に孔部17A(図13(f)参照)に対応した所定のパターンが露光される。そして、現像液を用いて、レジスト層19の露光されたパターンの部分のレジスト層19aを除去する。これにより、露光されたパターンの部分に対応して、第2の誘電体層17の表面が露出する(図13(d))。
次に、残存するレジスト層19をマスクとして、図13(e)に示すように、露出した第2の誘電体層17の部分をエッチング除去する。この際の、エッチング方法としては、ドライエッチングやウェットエッチングの何れをも使用することができる。また、この際に等方性エッチングと異方性エッチングを組合せることで、孔部17Aの形状の制御を行うことができる。ドライエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)や誘導結合プラズマエッチングが利用でき、またウェットエッチングとしては、希塩酸や希硫酸、塩化鉄水溶液への浸漬を行う方法などが利用できる。このエッチングにより、上記パターンに対応して、陽極12の表面が露出する。
次に、残ったレジスト層を、レジスト除去液等によって除去し(図13(f))、図13(g)に示すように、残存する第2の誘電体層17をマスクとして、露出した陽極12の部分をエッチング除去する。この際のエッチング方法としては、図13(e)で説明した方法と同様の方法を用いることができるが、エッチング条件の変更により、第2の誘電体層17がエッチングされるのを抑えながら、陽極12を選択的にエッチングすることができる。これにより、上記パターンに対応して、基板11の表面が露出し、陽極孔部12Aが形成される。なお、図13(f)及び図13(g)で説明した各工程は、陽極12及び第2の誘電体層17を貫通し、連通する孔部17A及び陽極孔部12Aを形成する工程として捉えることができる。
次に、図13(h)に示すように、残存する第2の誘電体層17及び陽極12の部分をマスクとして、露出した基板11の部分をエッチング除去する。この際のエッチング方法としては、図13(e)及び図13(g)で説明した方法と同様の方法を用いることができるが、エッチング条件の変更により、第2の誘電体層17及び陽極12がエッチングされるのを抑えながら、基板11を選択的にエッチングすることができる。これにより、上記パターンに対応して、孔部17A及び陽極孔部12Aに連通する凹部11Aを形成することができる。逆に、凹部11A以外の部分は凸部11Bとなる。また、この方法によれば、陽極孔部12A及び基板孔部11Aを形成するのに別途マスクを用意してフォトリソグラフィを行なう必要がないため、より容易に凹部11Aを形成することが可能となる。
第2の誘電体層17として光硬化性の樹脂を用いた場合は、孔部17Aを直接露光によって形成することも可能である。この場合、例えば、第2の誘電体層17をウェットプロセスによって形成後、所定のパターンが描画されたマスクを被せ、紫外線(UV)、電子線(EB)等によって露光し、その後、現像液による現像を行うと、図13(f)に示すような孔部17Aを形成することができる。
また、第2の誘電体層17が紫外〜赤外域に吸収波長域を有する場合は、直接レーザー加工によって孔部17Aを形成することもできる。この場合、例えば、第2の誘電体層17をウェットプロセス又はドライプロセスによって形成後、第2の誘電体層17に上記波長域内の波長を持つレーザーを照射して孔部の誘電体層を除去することで、孔部17Aを形成することができる。また、レーザーの波長として陽極の吸収波長域にあるものを用いると、孔部17A及び陽極孔部12Aを同時に形成することも可能である。この際の加工に用いるレーザーとしては、例えば、パルス炭酸ガスレーザーの他、QスイッチNd:YAGレーザーやその高調波、チタンサファイアレーザー、エキシマレーザー等を用いることができる。このように、フォトレジストによるマスク形成を必要としないため、リソグラフィ法に比べて加工工程数が減少する。なお、レーザー照射による第2の誘電体層17又は陽極12の損傷を防ぐために表面保護膜を使用してもよい。
次に、レジスト層19を除去した後、図13(i)に示すように、有機層13で孔部17Aの内側面17a、陽極孔部12Aの陽極孔部内側面12a、凹部11Aの内側面11aを被覆するとともに、第2の誘電体層17及び孔部内側面被覆部13a上を覆う、有機EL材料からなる発光層を含む有機層13を形成する。有機層13は、孔部内側面被覆部13aと、陽極孔部内側面被覆部13bと、凹部内側面被覆部13cと、層状部13dとを有する。有機層13の形成には従来公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法を用いることができる。
次に、図13(j)に示すように、有機層13上に陰極14を形成する。陰極14の形成方法についても、陽極12の形成と同様の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、抵抗加熱蒸着法や電子ビーム蒸着法に代表される真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の乾式プロセスの他、塗布法等、各種の湿式プロセスも用いることができる。
本実施形態の製造方法では、上記の陽極12及び陰極14を、有機層(発光層)13の発光波長に対して透明となる材料から形成するとともに、陰極14を、金属元素がドープされたZnOから形成する。ZnOにドープする金属元素としては、Al、Ga、In及びSnのうちの少なくとも1種以上を用いることが好ましく、この際のドープ方法としても、従来公知の方法を何ら制限無く採用することができる。
さらに、本実施形態では、必要に応じて、陽極12についても、陰極14と同様に、上記金属元素がドープされた酸化亜鉛から形成することもできる。
次に、図13(k)に示すように、陰極14上に低屈折率層15を形成する。低屈折率層15の形成も第2の誘電体層17の形成と同様の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、抵抗加熱蒸着法や電子ビーム蒸着法に代表される真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の乾式プロセスの他、塗布法等、各種の湿式プロセスも用いることができる。
次に、図13(l)に示すように、低屈折率層15上に金属層16を形成する。金属層16の形成方法は、特に限定されないが、例えば、蒸着法、スパッタリング法を用いることができる。
以上の工程により、有機EL素子10を製造することができる。これら一連の工程の後、有機EL素子10を長期安定的に駆動し、有機EL素子10を外部の水分、酸素等から保護するための保護層や保護カバー(図示せず)を装着することが好ましい。保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物、窒化ケイ素、酸化ケイ素等のシリコン化合物等を用いることができる。また、亜鉛等の比較的イオン化傾向の比較的大きな金属を犠牲層(その後の工程で除去する保護層)として用いることも可能である。そして、これらの積層体も用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板、金属等を用いることができる。この保護カバーは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂、フリットガラスで基板11と貼り合わせて密閉する方法を採ることが好ましい。また、この際に、スペーサを用いることで所定の空間を維持することができ、外部からの力により、保護カバーが接触して有機EL素子10が傷つくのを防止できるため、好ましい。そして、この空間に、窒素、アルゴン、ヘリウム等のような不活性なガス、又はパーフルオロカーボン等の各種の不活性液体を封入すれば、上側の金属層16の酸化を防止し易くなる。特に、ヘリウムを用いた場合、熱伝導が高いため、電圧印加時に有機EL素子10から発生する熱を効果的に保護カバーに伝えることができることから好ましい。さらに、酸化バリウム等の乾燥剤をこの空間内に設置することにより、上記一連の製造工程で吸着した水分が有機EL素子10にダメージを与えるのを抑制し易くなる。
次に、本発明の第2の実施形態で説明した有機EL素子20を製造する方法について、図14を参照しながら説明する。
第2の誘電体層17をエッチングして孔部17Aを形成するまでの工程は、第1の実施形態の有機EL素子の製造方法(図13(a)〜図13(e))と同じである。そこで、以下の説明においては、孔部17Aが形成された後の工程から説明する。図14(a)は、基板21上に陽極22と第2の誘電体層27を順に成膜し、所定のパターンを形成したレジスト層をマスクとして、第2の誘電体層27をエッチング除去して孔部27Aを形成した状態を示す(第1の実施形態の場合の図13(f)に相当)。この実施形態の場合も、第1の実施形態の場合と同様、第2の誘電体層27として光感光性樹脂を用いた直接露光や、第2の誘電体層27として光吸収物質を用いたレーザー直接加工を利用することが可能である。
また、第2の誘電体27をエッチングして、誘電体島状部27Bを形成する場合は、マスクのパターンを変えればよい。具体的には、マスクとして開口部と遮光部を反転させたものを用いればよい。
次に、図14(b)に示すように、孔部27Aの内側面27aを被覆する孔部内側面被覆部23aを形成するとともに、第2の誘電体層27及び孔部内側面被覆部23aと陰極24との間に配置する層状部23bを形成して、有機EL材料からなる発光層を含む有機層23を形成する。有機層23の形成には製造方法1と同様の方法を用いることができる。
次に、図14(c)に示すように、有機層23の上に、陰極24、低屈折層25、金属層26を順に形成する。これらの層の形成には製造方法1と同様の方法を用いることができる。
次に、本発明の第2の実施形態の有機EL素子のトップエミッション構造の製造方法を、図15を参照しながら説明する。
図15(a)〜図15(e)に示すように、基板21上に金属層26、低屈折層25、陰極24、有機層(層状部23b)、第2の誘電体層27を順に形成する。これら各層を形成する方法は、製造方法1と同様である。
次に、図15(g)に示すように、第2の誘電体層27に所定の形状の凹部を形成する。この際の形成方法としては、第2の誘電体層27に、図15(f)に示すようなレジスト層29を所定のパターンで形成し、このレジスト層29をマスクとして、第2の誘電体層27を、図15(g)に示すようにエッチングし、レジストと同様の孔形状を有する孔部27Aを形成する。その後、レジスト膜が残っている場合にはレジストの除去を行う。
次に、図15(h)に示すように、第2の誘電体層27に形成した凹部の内側面27aを被覆するように有機層(孔部内側面被覆部23a)を形成する。この際の形成方法としては、有機層の層状部23bの場合と同様の方法を用いることができる。ここで形成する有機層は、図15(d)で形成した有機層23と同一の材料でもよいし、異なる材料であってもよい。
そして、最後に、陽極22を形成する。この際の形成方法としては、第1の実施形態の陽極12と同様の方法を用いることができる。
次に、本発明の第3の実施形態の有機EL素子の製造方法を、図16を参照しながら説明する。まず、第3の実施形態の有機EL素子をボトムエミッションの構造として製造する場合について説明する。
誘電体層の孔部及び陽極孔部を形成するまでの工程は、第1実施形態の有機EL素子の製造方法(図13(a)〜(f))と同じである。そこで、以下の説明においては、陽極孔部が形成された後の工程から説明する。
図16(a)は、基板31上に陽極32及び第2の誘電体層37を順に成膜し、エッチングによって、連通する孔部37A及び陽極孔部32Aを形成した状態を示す(第1の実施形態の場合の図13(g)に相当)。但し、陽極凸部32Bを形成する場合は、上記陽極凸部32Bを形成する工程に対して、マスクのパターンを変える(開口部と遮光部を反転させる)以外は、第1の実施形態の場合と同じで構わないが、陽極をエッチングする際に、陽極凸部32Bが孤立しないように、全膜厚にわたってエッチングせずに、膜厚方向の途中の深さでエッチングを止めて層状部を残す必要がある。これは、陽極32の層状部の部分によって、陽極凸部間の導通を確保するためである。本実施形態の場合も、第1の実施形態の場合と同様、孔部37Aの形成方法として光感光性樹脂を用いた直接露光を用い、第2の誘電体層37を、光吸収物質を用いたレーザー直接加工を用いることが可能である。
次に、図16(b)に示すように、孔部37Aの内側面37aを被覆する孔部内側面被覆部33a、及び、陽極孔部32Aの内側面を被覆する陽極孔部内側面被覆部33bを形成するとともに、第2の誘電体層37及び孔部内側面被覆部33aと陰極34との間に配置する層状部33cを形成して、有機EL材料からなる発光層を含む有機層33を形成する。この有機層33の形成には、製造方法1と同様の方法を用いることができる。
次に、図16(c)に示すように、有機層33の上に、陰極34、低屈折層35、金属層36を順に形成する。これらの層の形成方法としては、製造方法1の場合と同様の方法を用いることができる。
次に、本発明の第3の実施形態の有機EL素子のトップエミッション構造の製造方法を、図17を参照して説明する。
第2の誘電体層37の形成までは、第2の実施形態のトップエミッション構造の製造方法と同じである。即ち、図17(a)に示す工程は、第1の実施形態の場合の図15(e)に示す工程に相当する。
そして、第2の誘電体層37の上に陽極32を形成するが、この際の形成方法は、第2の実施形態の陽極22と同様の方法を用いることができる。
次に、図17(d)に示すように、陽極32、及び、第2の誘電体層37に、所定の孔形状の陽極孔部32A及び孔部37Aを形成する。この際の形成方法としては、図17(c)に示すように、陽極32上にレジスト層39を所定のパターンで形成し、このレジスト層39をマスクとして、陽極32及び第2の誘電体層37を、図17(d)に示すようにエッチングし、レジストと同様の孔形状を有する陽極孔部32A及び孔部37Aを形成する。その後、レジスト膜が残っている場合は、レジストの除去を行う。
次に、図17(e)に示すように、陽極32、及び、第2の誘電体層37に形成した孔部の内側面32a、37a被覆するように、有機層33a、33bを形成する。この際の形成方法としては、第2の実施形態における孔部内側面被覆部23aの被覆方法と同様の方法を用いることができる。また、ここで形成する有機層は、図17(d)に示す工程で形成したものと同一の材料から形成してもよいし、異なる材料であってもよい。
なお、図示はしないが、陽極凸部32Bを形成する場合には、連通する孔部32A及び陽極孔部37Aに有機層33を形成する上記工程の後に、陽極凸部32B(島部)及び有機層33(海部)の表面全体に陽極の層状部を形成する。これにより、各陽極凸部32B間の導通を確保することが可能となる。
<Otto型配置における低屈折率層の膜厚について>
以下に、本発明における有機EL素子のOtto型配置による金属層表面に捕捉された表面プラズモンポラリトン(SPP)を取り出すことが可能な低屈折率層の膜厚について説明する。
図18に、有機層で発光した光の強度を、有機EL素子面方向における波数成分で展開するエネルギー散逸計算を行った結果を示す。横軸が、有機層で発光した光の波数の、有機EL素子面方向成分を真空の波数kで割ったもの、すなわち有効屈折率であり、縦軸がその波数の光の強度、すなわち展開係数を示している。計算は、TM偏光成分、TE偏光成分に分けて行った。なお、この計算は基板(ガラス)上に、各層が平坦な陽極と有機層と陰極(金属)とを積層した有機EL素子の結果を示している。この場合、TM偏光の最も高波数側のピーク面積がSPPモード光の強度を表しているが、有機層で発光した光の多くがSPPモード光として捕捉されているのが分かる。陽極と有機層の膜厚は、それぞれ150nm、100nmである。
一方で、Otto型配置の有機EL素子におけるエネルギー散逸計算による有機層で発光した光(TM偏光成分)の強度の、低屈折率層の膜厚による依存性を図19に示す。Otto型配置の有機EL素子は、基板、陽極、有機層は図18の素子と同じ構成であるが、有機層上に透明導電材料であるITOからなる陰極(50nm)が形成され、さらにその上に低屈折率層、金属層が順に形成された構成からなる。
低屈折率層の屈折率を1.38とし、図19(a)は金属層をAlとし、図19(b)は金属層をAgとした場合で、グラフ線の数字は低屈折率層の膜厚(nm)を示す。
図19(a)、(b)ともに、低屈折率層の膜厚が厚くなるに従って、ピーク波数が小さくなり、かつピーク幅が狭くなるようにシフトしていることが分かる。また膜厚が厚くなるに従って、ピーク波数のシフトはわずかになり、ピーク幅も一定に近づいていることが確認できる。なお、ピーク波数が小さくなることは、金属層に接した低屈折率層の膜厚が大きくなり、SPPの波数がこの低屈折率層の屈折率の影響で小さくなることを示しており、ピーク幅が狭くなることは、SPPとして捕捉されていた光が伝播光として取り出され、光の減衰が小さくなっていることを示している。これについて、次に説明する。
図20(a)、(b)、(c)を用いてピークの変化について、以下に説明する。図20(a)は、SPPモード光として光が完全に金属層6の表面に捕捉されている。これは、低屈折率層の膜厚が0nmの場合を表しており、SPPモード光は金属層6と陰極4の界面を面内方向に伝播しながら急速に減衰するため、ピーク幅が大きくなっている。
次に、低屈折率層5の膜厚が厚くなるにつれて、図20(b)のようになり、Otto型配置によってSPPモード光と導波モード光が混在した状態となる。これは、取り出されたSPPモード光が導波モード光となり、界面反射により再度金属層6にSPPモード光として再補足されることを意味している。この場合、光は図20(a)のSPPモード光に比べ減衰しにくいため、ピーク幅は次第に狭くなる。
最後に、低屈折率層5の膜厚が十分厚くなると、図20(c)のようになる。この場合、Otto型配置をしているが、発光点におけるエバネッセント波が金属層6に届かなくなり、SPPモード光として捕捉されない。この場合、発光した光は導波モード光として、捕捉されることとなる。つまり、低屈折率層5の膜厚がある厚みを超えると、捕捉された光は導波モード光のみとなるため、減衰のしやすさは変わらなくなり、ピーク幅にも変化が生じなくなる。
図21は、低屈折率層の膜厚に対する、ピーク幅(半値幅)の変化を示した図であるが、図21の金属層がAlの場合に、低屈折率層の膜厚が200nm以上でピーク幅の変化が小さくなり、発光した光がSPPモード光として捕捉されにくくなっていることが分かる。また、金属層がAgの場合に、低屈折率層の膜厚が150nm以上でピーク幅の変化が小さくなり、SPPモード光として捕捉されにくくなっていることが分かる。
つまりSPPモード光として捕捉される膜厚は少なくとも300nm以下であり、200nm以下で捕捉の効果が顕著になることが分かる。
また、Otto型配置において、金属層表面に捕捉された表面プラズモンポラリトン(SPP)は、陰極と低屈折率層の界面で全反射した光によって発生するエバネッセント波によって取り出すことができる。すなわち、このエバネッセント波の波数が、金属層表面に生成される表面プラズモンポラリトン(SPP)の波数kSPPと交点を持つ必要がある。
金属層表面に生成される表面プラズモンポラリトン(SPP)の波数kSPPの実部は以下の式(13)で表すことができる。但し、εは金属層の誘電率の実部であり、εは低屈折率層の誘電率であり、kは前記発光層で発光する光のピーク波長における真空中の光の波数である。
Figure 2015095293
一方で、金属層表面に生成される表面プラズモンポラリトン(SPP)の誘電体層中における波数の垂直成分は以下の式(14)で表すことができる。但し、nは低屈折率層の屈折率(ε=n )である。
Figure 2015095293
金属層表面に生成される表面プラズモンポラリトン(SPP)の電磁場の強度を、金属層表面での値を1として規格化すると、金属層に垂直な方向に指数関数的に減衰しながら低屈折率層に滲み出し、低屈折率層と陰極の界面に到達した表面プラズモンポラリトン(SPP)の強度は、各界面での反射が無視できる場合、近似的に式(15)で与えられる。
Figure 2015095293
但し、hは低屈折率層の膜厚であり、κSPPは表面プラズモンポラリトン(SPP)の波数の基板面内方向成分の実部を真空中の光の波数kで割った値である。つまり、式(15)の値が十分大きければ、金属層の表面に生成される表面プラズモンポラリトン(SPP)の電磁場が陰極や有機層に滲み出し、陰極と低屈折率層の界面での全反射により生じたエバネッセント波とカップリングして、取り出すことができる。
図22(a)は金属層をAl、(b)は金属層をAgとした場合の式(15)で表わされるSPP強度の低屈折率層膜厚による変化を示す図である。
この結果を、図19(a)、(b)と比較すると、式(15)で表わされるSPP強度、すなわち金属層表面に生成される表面プラズモンポラリトン(SPP)の、低屈折率層と陰極の界面での強度(金属表面での強度を1として規格化した値)は、この値が0.4以下となる低屈折率層の厚みで、ピーク幅が一定値に飽和していることが分かる。すなわち、式(15)のSPP強度が0.4以下となるときには、低屈折率層と陰極の界面にまで滲み出す表面プラズモンポラリトン(SPP)の強度が小さくなり、Otto型配置による光取り出し効果は少なくなると言える。逆に言えば、式(15)の値が0.4以上となるような低屈折率層の膜厚であれば、Otto型配置による光取り出し効果を十分に得ることができることが分かる。
なお、本検討においては、低屈折率層の屈折率をn=1.38の場合を計算しているが、屈折率は1.38に限定されるものではなく、金属層もAgとAlに限定されるものではない。式(15)で表わされる、低屈折率層と陰極の界面でのSPPの強度が一定値(例えば0.4)より大きいという条件を満たせば、Otto配置によってSPPモード光を有機層中に取り出すことができ、この条件を満たす限り、低屈折率層の屈折率や陰極の材料は限定されるものではない。
<作用効果>
以上説明したように、本発明に係る有機EL素子によれば、基板上に、陽極(第1電極)、発光層を含む有機層、及び、陰極(第2電極)がこの順で積層され、さらに、陰極の有機層と反対側の面に、その反対側の面側から誘電体層及び金属層がこの順で備えられ、陽極及び陰極の何れもが発光層の発光波長に対して透明であり、且つ、陰極が、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなる構成を採用している。このように、有機層上に設けられる陰極を酸化亜鉛から構成したうえで、特定の金属元素をドープすることにより、陰極の透光性を維持しながら導電性を向上させることができる。これにより、有機EL素子の光取り出し効率が向上するとともに、駆動電圧を低減できるので、同電圧で駆動した場合には輝度が向上し、輝度を同輝度に維持した場合には、低電圧で素子を駆動することができる。従って、発光特性に優れるとともに、省電力の有機EL素子が実現できる。
また、本発明に係る画像表示装置及び照明装置によれば、上記有機EL素子を備えたものであるため、低電圧での駆動が可能になる。
次に、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は、本実施例によってその範囲が制限されるものではなく、本発明に係る有機EL素子は、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
[有機EL素子の作製]
(実施例1)
実施例1では、図1(b)に示す構成のボトムエミッション型の有機EL素子を作製した。
まず、ガラス(屈折率:1.52)からなる基板11上に、陽極12として150nmのITO層(屈折率:2.09)、第2の誘電体層17として150nmのSOG層(スピンオングラス、屈折率:1.25)、1000nmのレジスト層19を順に設けた。
次に、レジスト層をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、形成されたパターンに沿ってドライエッチング法によりITO層及びSOG層に貫通孔を形成したのち、レジスト層を除去することで、ITO層及びSOG層に孔部17A及び陽極孔部12Aを形成した。
さらに、残存する第2の誘電体層17及び陽極12の部分をマスクとして、露出した基板部分をドライエッチング法により除去して、孔部17A及び陽極孔部12Aに連通する基板凹部11Aを形成した。
上記の操作により、第2の誘電体層17及び陽極12を連続して貫通し、さらに、基板11凹部11A(深さ100nm)に連なる開口部が形成された。平面視で、開口部は直径500nmの円形であり、1μmの周期で六方格子状に配列されている。
次に、有機層13として、40nmのpTmTDMPD(下記(化学式1):F4TCNQ(下記(化学式2)(95:5)からなる正孔注入層、20nmのm−MTDATA(下記(化学式3)からなる正孔輸送層、20nmのIr(piq)3(下記(化学式4)):Ir(ppy)3(下記(化学式5)):BFA−1T(下記(化学式6))(1:24:75)からなるRG発光層、10nmのFirpic(下記(化学式7)):PyTMB(下記(化学式8))(20:80)からなるB発光層、20nmのAlq3(下記(化学式9))からなる電子輸送層、100nmのBCP(下記(化学式10)):Cs(95:5)からなる電子注入層を、第2の誘電体層17の上部及び開口部(孔部17A、陽極孔部12A、基板凹部11A)の内面を被覆するようにこの順で形成した。
Figure 2015095293
Figure 2015095293
Figure 2015095293
Figure 2015095293
Figure 2015095293
Figure 2015095293
Figure 2015095293
Figure 2015095293
Figure 2015095293
Figure 2015095293
続いて、有機層13の上に、陰極14として、50nmのGaがドープされたZnO(GZO)層(屈折率:1.89)、低屈折率層15として50nmのMgF層(屈折率:1.25)及び金属層16として100nmのAg層を、この順で形成した。ここで、正孔注入層、正孔輸送層、RG発光層、B発光層、電子輸送層、電子注入層は、それぞれ有機層13の一部であり、その平均屈折率は1.72であった。
また、ITO層はスパッタリング法、SOGはスピンコーティング法、有機層13の各層、MgF層及びAg層は真空蒸着法、GZO層はイオンプレーティング法により成膜した。この際、ドープ源としてガリウム酸化物であるGaを用い、ZnOとGaの組成比を97:3とした。この金属ドープZnOからなる陰極14の屈折率は、550nmで1.89であった。
(実施例2)
実施例2では、陰極14を、金属元素としてAlがドープされたZnO(AZO)により形成した点を除き、その他の条件は上記実施例1と同様として、図1(b)に示すような有機EL素子10を作製した。この際、ドープ源としてアルミニウム酸化物であるAlを用い、ZnOとAlの組成比を98:2とした。
(実施例3)
実施例3では、陰極14を、金属元素としてInとGaがドープされたZnO(IGZO)により形成した点を除き、その他の条件は上記実施例1と同様として、図1(b)に示すような有機EL素子10を作製した。この際、ドープ源としてインジウム酸化物であるInを用い、また、電極材料であるZnO源としてGZO(Ga+ZnO)を用いた。この際の組成比は、まず、GZOの組成比を97(ZnO):3(Ga)としたうえで、IGZOの組成比を、95(GZO):5(In)とした。
(実施例4)
実施例4では、陰極14を、金属元素としてAlとGaがドープされたZnO(AGZO)により形成した点を除き、その他の条件は上記実施例1と同様として、図1(b)に示すような有機EL素子10を作製した。この際、ドープ源としてアルミニウム酸化物であるAlを用い、また、電極材料であるZnO源としてGZO(Ga+ZnO)を用いた。この際の組成比は、まず、GZOの組成比を97(ZnO):3(Ga)としたうえで、AGZOの組成比を、98(GZO):2(Al)とした。
(比較例1)
比較例1では、陰極をITOにより形成した点を除き、その他の条件は上記実施例1と同様として、図1(b)に示すような構造の有機EL素子を作製した。この際、ITOとして、SnOとInの組成比を5:95としたものを用いた。
(比較例2)
比較例2では、陰極を、金属元素としてInがドープされたZnO(IZO)により形成した点を除き、その他の条件は上記実施例1と同様として、図1(b)に示すような構造の有機EL素子を作製した。この際、ドープ源としてインジウム酸化物であるInを用い、ZnOとInの組成比を50:50とした。
(比較例3)
比較例3では、陰極を、金属元素をドープしないZnOにより形成した点を除き、その他の条件は上記実施例1と同様として、図1(b)に示すような構造の有機EL素子を作製した。
(基準例:Reference)
基準例においては、上記実施例1〜4及び比較例1〜3を比較評価するための基準として、実施例1と同様の手順及び条件で、基板上に、陽極及び有機層を順次形成した。そして、基準例では、有機層の上にAl電極のみを成膜した点が、上記各実施例及び比較例とは異なる。
[有機EL素子の評価]
上記各実施例、比較例の有機EL素子について、以下のような評価試験を行った。
プログラマブル直流電圧/電流源((株)アドバンテスト社製:TR6143)を用いて、上記手順で作成した各実施例、比較例及び基準例の有機EL素子に段階的に電圧を印加して発光させ、素子に流れる電流密度の測定と、輝度計((株)トプコン社製:BM−8)を用いて素子正面の輝度の測定を行った。得られたデータを基に、1000cd/m2における駆動電圧(DV:Driving Voltage)[V]、外部量子効率(EQE:External Quantum Efficiency)[%]及び電力効率(PE:Power Efficiency)[lm/W]を算出した。
さらに、各実施例及び比較例の有機EL素子の駆動電圧については、基準例の有機EL素子の駆動電圧に対する差[V]を求めた。また、外部量子効率と電力効率については、基準例の値に対する比を求めた。
これらの値を下記表1に示す。
Figure 2015095293
[評価結果]
表1に示すように、本発明で規定する、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなる陰極を備えた有機EL素子は、陰極がITOである比較例1、陰極がZnOである比較例3及び陰極がInがドープされたZnOである比較例2と比べて、駆動電圧(DV)が低いことがわかる。また、本実施例の有機EL素子の外部量子効率(EQE)は、陰極がITOの比較例1とほぼ同レベルであるが、駆動電圧が低い分、陰極がITOの比較例1及び他の比較例より電力効率が優れていることがわかる。
以上説明したような実施例の結果により、陰極として、特定の金属元素をドープした酸化亜鉛からなる電極を採用することにより、駆動電圧が低減され、電力効率が優れた有機EL素子が得られることが明らかである。
本発明に係る有機EL素子は、発光特性や寿命特性に優れていることから、例えば、テレビジョンやコンピュータ用モニター、民生用TV、大型表示ディスプレイ、携帯電話や各種携帯端末等に用いられる各種の画像表示装置や、照明装置等に好適である。
10、20、30 有機EL素子
1、11、21、31 基板
11a 凹部内側面
11A 凹部
11B 凸部
12、22、32 陽極(第1電極)
12a、22a、32a 陽極孔部内側面
12A、32A 陽極孔部
13、23、33 有機層(発光層を含む有機層)
13a、23a、33a 孔部内側面被覆部
13b,33b 陽極孔部内側面被覆部
13c 凹部内側面被覆部
13d、23b、33c 層状部
14、24、34 陰極(第2電極)
15、25、35 低屈折率層
16、26、36 金属層
17、27、37 第2の誘電体層
17a、27a、37a 孔部内側面
17A、27A、37A 孔部
19、29、39 レジスト層
19a レジスト層
32B 陽極凸部
27B、37B 誘電体島状部
100 画像表示装置
104 陽極配線
106 陽極補助配線
108 陰極配線
110 絶縁膜
112 陰極隔壁
116 封止プレート
118 シール材
120 開口部
200 照明装置
201 点灯回路
202 端子
203 端子
APo 発光点
APe 発光点
APi 発光点

Claims (12)

  1. 基板上に、少なくとも第1電極、発光層を含む有機層、及び、第2電極をこの順で具備し、前記基板側が光取り出し側とされた有機EL素子であって、
    さらに、前記第2電極の、前記有機層と反対側の面に、該反対側の面側から第1の誘電体層及び金属層がこの順で備えられ、
    前記第1電極及び第2電極の何れもが、前記発光層の発光波長に対して透過率が50%以上であり、
    前記第2電極が、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記第1の誘電体層は、その屈折率が前記有機層の屈折率よりも低い層であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. さらに、前記第1電極と前記第2電極との間に、前記有機層の屈折率と異なる屈折率を有するとともに、複数の孔部を備えた第2の誘電体層が備えられ、
    前記有機層は、前記孔部の内側面の少なくとも一部を被覆する孔部内側面被覆部を有しているとともに、前記第1電極の少なくとも一部及び前記第2電極の少なくとも一部と接していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子。
  4. 前記第1電極は、前記孔部に連通する第1電極孔部を備え、
    前記有機層は、さらに、前記第1電極孔部の内側面を被覆する第1電極孔部内側面被覆部を有することを特徴とする請求項3に記載の有機EL素子。
  5. 前記基板は、前記第1電極孔部に連通する凹部を備え、
    前記有機層は、さらに、前記凹部の内側面を被覆する凹部内側面被覆部を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の有機EL素子。
  6. 前記有機層は、さらに、前記第2の誘電体層及び前記孔部内側面被覆部と前記第2電極との間に配置する層状部を有することを特徴とする請求項3〜請求項5の何れか一項に記載の有機EL素子。
  7. さらに、前記第1電極が、金属元素がドープされた酸化亜鉛からなることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の有機EL素子。
  8. 前記第2電極、あるいは、前記第1電極をなす酸化亜鉛にドープされる金属元素が、Al、Ga、In及びSnのうちの少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の有機EL素子。
  9. 前記第1電極、あるいは、前記第2電極をなす酸化亜鉛における前記金属元素の含有量が、該金属元素1種あたりで0.1〜10質量%の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の有機EL素子。
  10. 前記低屈折率層からなる第1の誘電体層の屈折率が、前記第2電極及び前記有機層の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項2〜請求項9の何れか一項に記載の有機EL素子。
  11. 請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の有機EL素子を備えたことを特徴とする画像表示装置。
  12. 請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の有機EL素子を備えたことを特徴とする照明装置。
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