JP2015094637A - 吸収顕微鏡 - Google Patents

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健治 永井
由之 新井
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由之 新井
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豊 宗形
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功生 寺尾
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Yohei Yamada
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Abstract

【課題】モル濃度の値が低い試料や厚みの少ない試料上の各部位の濃度等の差異を適切に知ることのできる吸収顕微鏡を提供すること。【解決手段】光学キャビティを構成する凹面鏡12,13のうち、少なくとも、検査光となるレーザー光の入射側に位置する凹面鏡12の背面に平凸レンズ17を形成し、凹面鏡12の背面側から照射された検査光が屈折を伴わずに凹面鏡12,13に共通する集光点Pに到達するようにすることで、光路長増幅のために必要とされる凹面鏡12と凹面鏡13の間の反射の繰り返しに伴う集光点の位置ずれを抑制し、吸収顕微鏡1における空間分解能を向上させる。【選択図】図1

Description

本発明は、照射側の検査光の強度と試料を透過した出射側の検査光の強度から求まる吸光度を利用して試料の特性を探る吸収顕微鏡の改良に関する。
試料に照射される検査光の強度をI,試料を透過した出射側の検査光の強度をI,モル吸光係数をε,モル濃度をc,試料を透過する検査光の光路長をl,吸光度をO.D.として、O.D.=−log10(I/I)=ε・c・lで表されるランバート・ベールの法則を応用した吸収測定装置が既に公知である。
この種の吸収測定装置は、キュベット(箱型の透明容器)を満たすようにして収められた試料、例えば、液体やガス等の分析に利用されるのが一般的であり、厚みの少ない試料、例えば、厚さ10μm前後の細胞といった試料の分析には余り向かない。
その理由は、試料を透過する検査光の光路長lが余りにも短いため、試料を透過することで発生する光の減衰が少なく、試料上の各部位における性状の違い、例えば、試料上の各部位に濃度等の差異があった場合でも、その差異が吸光度O.D.の検査結果に十分な影響を与えないからである。
O.D.=−log10(I/I)=ε・c・lで表されるランバート・ベールの法則から明らかなように、モル濃度cの値が低い試料の場合にも前記と同様の問題が生じる。
そこで、本出願人らは、オゾンの濃度測定等に用いられるキャビティリングダウン分光法(非特許文献1参照)や風洞の気流診断等に用いられるキャビティリングダウン分光法(非特許文献2参照)に利用される光学キャビティ構造を転用して試料を挟んで設置される一対の鏡の間で検査光を往復させることにより、試料を透過する検査光の実質的な光路長を増大させ、モル濃度の値が低い試料や厚みの少ない試料上の各部位における濃度等の差異を吸光度の検査結果に明確に反映させる技術に想到した。
なお、非特許文献1に開示されるキャビティリングダウン分光法は、検査光としてパルスレーザーを用い、対向する一対の平面鏡の間で検査光を複数回往復させ、一方の平面鏡の裏面から漏れ出す光が減衰する際の時定数を求めることによって試料である吸収物質の濃度を測定するものである。つまり、試料である吸収物質が全体として均一であるもの、例えば、大気を構成する気体等を測定対象としたものであって、試料上の各部位の濃度等の差異を識別する機能(空間分解能)は全くなく、一対の鏡によって構成される光学キャビティ構造の類似性を除き、試料上の各部位における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を吸光度に明確に反映させようとする本発明とでは、発明の技術思想や構成が全く相違する。
また、非特許文献2に開示されるキャビティリングダウン分光法は、検査光としてレーザー光を用い、一対の凹面鏡の間で検査光を複数回往復させて共振させることで実効吸収長を増大させた吸収分光法であるが、やはり、試料上の各部位の濃度等の差異を識別する機能(空間分解能)は殆どなく、一対の凹面鏡によって構成される光学キャビティ構造の類似性を除き、試料上の各部位における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を吸光度に明確に反映させようとする本発明とでは、発明の技術思想や構成が全く相違する。
つまり、これらのキャビティリングダウン分光法と本発明との共通点は、試料を挟んで設置される一対の鏡の間で検査光を往復させることにより、試料を透過する検査光の実質的な光路長を増大させるという点のみである。
非特許文献2に開示される光学キャビティ構造にあっては、キャビティを構成する一対の凹面鏡の集光点および中心軸が一致するので、この集光点に厚みの少ない試料、例えば、厚さ10μm前後の細胞といった試料を配置し、一方の凹面鏡の背面側から照射された検査光を一方の凹面鏡の反射面と他方の凹面鏡の反射面との間で試料を透過して繰り返し反射させ、他方の凹面鏡の背面から出射した検査光の強度を測定するようにすれば、一見、空間分解能が確保され、試料上の特定部位つまり集光点における試料の濃度等の差異を適切に増幅して反映した吸光度が求められそうなものであるが、非特許文献2のFIG.5に見られるように、実際には、集光点における集光スポットの径は大きく、このことは、検査光が収差の影響を受けて試料上の様々な部位を透過して集光スポットの径を広げていることを意味する。
従って、非特許文献2に開示されるような光学キャビティ構造をそのまま転用して試料を透過する検査光の実質的な光路長を単純に増大させたとしても、試料上の各部位の濃度等の差異を識別するに足る十分な機能(空間分解能)を備えた吸収顕微鏡を提供することはできない。
「光資源を活用し、創造する科学技術の振興−持続可能な「光の世紀」に向けて−」,文部科学省科学技術・学術審議会・資源調査分科会報告書,平成19年9月5日,[online],文部科学省ホームページ,[平成25年11月6日検索],インターネット<http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/07091111/002.htm>(3地球環境を光で計測する/(2)光を応用したその場環境計測/(2)新しい光応用環境計測技術:キャビティリングダウン分光法,図14) 高柳大樹・松井信・小柴公也・荒川義博 共著,「高反射ミラーによるレーザー吸収分光法の感度向上」,プラズマ応用科学会,プラズマ応用科学 Vol.13,2005,pp.75−80,[online]、東京大学学術機関リポジトリホームページ,[平成25年11月6日検索],インターネット<http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/35650/1/16_Org_Plasma_13_75.pdf>(3実験装置,FIG.2,FIG.5)
本発明の目的は、モル濃度の値が低い試料や厚みの少ない試料、例えば、細胞等といった試料であっても、試料上における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を適切に知ることのできる吸収顕微鏡を提供することにある。
本出願人らは、集光スポットの径が広がる原因を追究し、その原因が、凹面鏡の反射面の形状や寸法の異常によるものではなく、一方の凹面鏡の背面側から照射された検査光が一方の凹面鏡を通過する際に生じる光の屈折によるものであること、つまり、検査光の最初の集光点の位置が一対の凹面鏡に共通する集光点の位置から光軸方向にずれることによって起こるものであるとの知見を得た。
本発明の吸収顕微鏡は、光の透過を許容する反射面を対向させて相互の集光点および中心軸が一致するように配置した一対の凹面鏡の間の集光点に試料を設置し、一方の凹面鏡の背面側から照射された検査光を前記一方の凹面鏡の反射面と他方の凹面鏡の反射面との間で前記試料を透過して繰り返し反射させ、前記他方の凹面鏡の背面から出射した検査光を受光素子に収束させて強度を測定し、照射側の検査光の強度と出射側の検査光の強度に基いて前記集光点に位置する試料上の部位の吸光度を求めるようにした吸収顕微鏡であり、前記目的を達成するため、特に、
前記一方の凹面鏡の背面に、前記一方の凹面鏡の反射面に倣った形状の表面を有する平凸レンズを形成することにより、前記一方の凹面鏡の背面側から照射された検査光が屈折を伴わずに前記集光点に到達するようにしたことを特徴とする構成を有する。
以上の構成によれば、まず、一方の凹面鏡の背面側から照射された検査光が一方の凹面鏡の反射面に倣った形状の表面を有する平凸レンズと前記一方の凹面鏡を透過して、集光点に配置された試料に照射される。この際、一方の凹面鏡の背面に形成された平凸レンズにより前記一方の凹面鏡の背面側から照射された検査光の屈折が排除され、直進する検査光が一対の凹面鏡に共通した集光点に導かれる。
そして、試料に照射された検査光の一部が試料を透過して他方の凹面鏡の反射面に至り、更に、その一部が他方の凹面鏡の反射面で反射されて集光点に配置された試料上の同一部位つまり集光点に照射され、その一部が試料を透過して一方の凹面鏡の反射面に戻る。
以下、一方の凹面鏡の反射面と他方の凹面鏡の反射面との間で試料上の同一部位つまり集光点を透過して同様の反射が繰り返される。試料を透過する検査光は必ず試料上の同一部位つまり集光点を通るので、反射の繰り返しによって集光点の集光スポットの径が増大することはない。
そして、前記他方の凹面鏡の反射面で反射されずに其の背面から出射した検査光、つまり、一対の凹面鏡の間を繰り返し往復した後の検査光の強度が受光素子により測定され、既知の値をとる照射側の検査光の強度と出射側の検査光の強度に基いて、集光点に位置する試料上の部位の吸光度が求められる。
反射の繰り返しによって試料上の同一部位つまり集光点を繰り返し透過する検査光の光路長が増幅されるので、モル濃度の値が低い試料や厚みの少ない試料、例えば、細胞等といった試料であっても、試料上における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を吸光度の値から適切に知ることができる。
また、この吸光度は試料上の同一部位つまり径の小さな集光点を透過した検査光の情報のみを反映した値であり、試料上の他の部位を透過した検査光の影響といった外乱を含まない値であるので、この値によって試料上における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を適切に知ることができる。
更に、前記他方の凹面鏡の背面に前記他方の凹面鏡の反射面に倣った形状の表面を有する平凸レンズを形成することにより、前記他方の凹面鏡の背面側から出射する検査光の屈折を除去するようにしてもよい。
他方の凹面鏡の背面に其の反射面に倣った形状の表面を有する平凸レンズを形成して他方の凹面鏡の背面側から出射する検査光の屈折を除去し、受光素子に収束する検査光のスポット径を小さくすることができるため、試料上の各部位の濃度等の差異を更に正確に知ることができるようになる。
前述した各平凸レンズは、これに対応する凹面鏡と独立した平凸レンズとして形成し、貼り合わせによって対応する凹面鏡と光学的に一体化してもよいし、あるいは、その製造段階で対応する凹面鏡に一体成形してもよい。
前記一対の凹面鏡の反射面の球面曲率は等しく設定することが望ましい。
一対の凹面鏡に共通する集光点の位置つまり試料の配置位置が凹面鏡と凹面鏡の間の中央に位置することになるので、試料の両側に等しいワーキングディスタンスが確保され、試料の設置作業等を容易に行なうことができる。
また、前記他方の凹面鏡の背面から前記受光素子に到る光路上において前記受光素子に直近した位置にピンホールを配置してもよい。
ピンホールを設置することで他方の凹面鏡の背面から出射した検査光の光束の中心部のみが受光素子に到達することになるので、凹面鏡間での反射の繰り返しに際して集光点のスポット中心を通った検査光のみを受光素子に送ることが可能となり、外乱を排除して試料上の各部位の濃度等の差異をより正確に知ることができるようになる。
更に、前記集光点に設置された試料に対して前記中心軸に直交した第1の方向と前記中心軸および前記第1の方向に直交した第2の方向の各々に送りを掛ける試料送り手段と、
予め設定された移動量に基いて前記試料送り手段を駆動することにより前記試料上の各部位を順に前記集光点に位置決めし、各位置決め位置で求められた吸光度を各位置決め位置に対応させてメモリに記憶させ、前記メモリに記憶された各位置決め位置と吸光度の対応関係に基いて前記試料上の各部位における吸光度を前記試料の全範囲に亘り吸光度に応じた濃度もしくは色彩でモニタ上に一括して拡大して可視表示する顕微鏡画像生成手段とを備えた構成とすることが望ましい。
このような構成を適用した場合、試料送り手段によって試料上の各部位が次々と集光点に位置決めされ、その位置で求められた吸光度の値が各軸の位置決め位置、つまり、一対の凹面鏡に共通する中心軸に直交した第1の方向と一対の凹面鏡に共通する中心軸および第1の方向に直交した第2の方向とで構成される直交2軸上の座標位置に対応してメモリに記憶され、メモリに記憶された各位置決め位置と吸光度との対応関係に基いて試料上の各部位における吸光度が試料の全範囲に亘って吸光度に応じた濃度もしくは色彩でモニタ上に一括して拡大して可視表示される。
試料の各部位の吸光度に応じた濃度や色彩を試料の全範囲に亘ってモニタ上に一括して可視表示して得られる画像は、試料全体を照射して得られる透過光のコントラストを増幅し且つスケールを拡大して直視した映像と実質的に等価であるから、このモニタを参照することによって、試料上の各部位における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を目視によって容易に観察することができる。
本発明の吸収顕微鏡は、一対の凹面鏡の間に生じる反射の繰り返しによって試料上の同一部位つまり集光点を繰り返し透過する検査光の光路長を増幅するようにしているので、モル濃度の値が低い試料や厚みの少ない試料、例えば、細胞等といった試料であっても、試料上における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を吸光度の値から適切に知ることができる。
しかも、この吸光度は試料上の同一部位つまり径の小さな集光点を透過した検査光の情報のみを反映した値であり、試料上の他の部位を透過した検査光の影響といった外乱を含まない値であるので、この値によって試料上における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を適切に知ることができる。
更に、検査光の出射側となる凹面鏡の背面に其の反射面に倣った形状の表面を有する平凸レンズを形成した構成を適用した場合にあっては、凹面鏡の背面側から出射する検査光の屈折を除去して受光素子に収束する検査光のスポット径を小さくすることができるため、試料上の各部位の濃度等の差異を更に正確に知ることができるようになる。
特に、一対の凹面鏡の反射面の球面曲率を等しく設定する構成を適用した場合にあっては、一対の凹面鏡に共通する集光点の位置つまり試料の配置位置が凹面鏡と凹面鏡の間の中央に位置することになるので、試料の両側に等しいワーキングディスタンスが確保され、試料の設置作業等を容易に行なうことができる。
また、検査光の出射側となる凹面鏡の背面から出射側の検査光の強度を測定する受光素子に到る光路上において受光素子に直近した位置にピンホールを配置するようにすれば、凹面鏡の背面から出射した検査光の光束の中心部のみが受光素子に到達することになるので、凹面鏡間での反射の繰り返しに際して集光点のスポット中心を通った検査光のみを受光素子に送ることが可能となり、外乱を排除して試料上の各部位の濃度等の差異をより正確に知ることができるようになる。
更に、集光点に設置された試料に対して一対の凹面鏡に共通する中心軸に直交した第1の方向と前記中心軸および第1の方向に直交した第2の方向の各々に送りを掛ける試料送り手段と、予め設定された移動量に基いて試料送り手段を駆動することにより試料上の各部位を順に集光点に位置決めし、各位置決め位置で求められた吸光度を各位置決め位置に対応させてメモリに記憶させ、メモリに記憶された各位置決め位置と吸光度の対応関係に基いて試料上の各部位における吸光度を試料の全範囲に亘り吸光度に応じた濃度もしくは色彩でモニタ上に一括して拡大して可視表示する顕微鏡画像生成手段とを備えた構成とすれば、モニタを参照するだけで試料上の各部位における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を目視によって容易に観察することができるようになる。
その理由は、試料の各部位の吸光度に応じた濃度や色彩を試料の全範囲に亘ってモニタ上に一括して可視表示して得られる画像が、試料全体を照射して得られる透過光のコントラストを増幅し且つスケールを拡大して直視した映像と実質的に等価なものとなるからである。
本発明を適用した一実施形態の吸収顕微鏡の構成の概略を示した機能ブロック図である。 単体の凹面鏡で得られる集光状態と平凸レンズを形成した凹面鏡で得られる集光状態との相違を示した作用原理図で、図2(a)では単体の凹面鏡で得られる集光状態について示し、図2(b)では平凸レンズを形成した凹面鏡で得られる集光状態について示している。 平凸レンズを備えない凹面鏡を光学キャビティとして利用した場合と平凸レンズを備えた凹面鏡を光学キャビティとして利用した場合のスキャン画像の相違の一例を示した図で、図3(a)は平凸レンズを備えない凹面鏡を光学キャビティとして利用した場合のスキャン画像、また、図3(b)は平凸レンズを備えた凹面鏡を光学キャビティとして利用した場合のスキャン画像である。 濃度依存的な吸光度の上昇特性を示した線図であり、図4(a)は100umの厚さのキュベットを用いて蛍光タンパク質Venusの吸光度を計測した結果について、また、図4(b)は10um厚さのキュベットを用いて蛍光タンパク質Venusの吸光度を計測した結果を表している。 蛍光タンパク質Venusの発現の有無による画像の変化と吸収スペクトルの特徴を示した図であり、図5(a)は野生型の細胞の吸光度を示す画像、また、図5(b)は細胞質にVenusを発現した細胞の吸光度を示す画像であり、図5(c)は吸収スペクトルの反映状況を示した線図である。 HeLa,COS7,NIH3T3,PC12,GH3,colon26,iPSの各細胞の画像の表示状況と細胞毎の吸収スペクトルの特性を示した図で、図6(a)は各細胞の画像の表示状況を纏めて示した図、また、図6(b)は各細胞毎の吸収スペクトルを表した線図である。
図1は本発明を適用した一実施形態の吸収顕微鏡1の構成の概略を示した機能ブロック図である。
この吸収顕微鏡1は、検査光として使用する400nm〜600nmの範囲の波長を利用可能な白色レーザー光を生成するスーパーコンティニュームレーザー(以下、単にレーザー光源という)2と、レーザー光源2で生成されたレーザー光を導くファイバーケーブル3と、ファイバーケーブル3の端部から照射されたレーザー光を平行化する反射型コリメーター4と、レーザー光から600nm以上の波長の光をカットするショートパスフィルター5と、光路変更用の平面鏡6と、集光用の球面アクロマティックレンズ7と、空間フィルタとして機能するピンホール8と、球面アクロマティックレンズ7で集光されたレーザー光を平行化するための球面アクロマティックレンズ9と、ビーム径を調整するための絞り10と、集光用の球面アクロマティックレンズ11と、レーザー光の透過を許容する反射面を有する凹面鏡12,13と、凹面鏡13の背面から出射したレーザー光を平行化するための球面アクロマティックレンズ14と、球面アクロマティックレンズ14で平行化されたレーザー光を集光するための球面アクロマティックレンズ15と、蛍光フィルタ19と、球面アクロマティックレンズ15で集光されたレーザー光の強度を測定するための受光素子として機能する光電子増倍管16とを備える。
凹面鏡12,13は共に400nm〜600nmのレーザー光に対して99.5%の反射率を有する高反射凹面鏡であり、0.5%のレーザー光の透過を許容する。
そして、一方の凹面鏡12はレーザー光の進行方向の下流側に凹面からなる反射面を向ける一方、凹面鏡12よりも下流側に位置する他方の凹面鏡13はレーザー光の進行方向の上流側に凹面からなる反射面を向けるようにして対称に対をなすかたちで、互いに対向して相互の集光点および中心軸を一致させて光路上に設置されている。
この実施形態にあっては凹面鏡12,13の凹面の球面曲率を共に60mmと等しく設定しているので、相互の集光点を一致させる関係上、凹面鏡12と凹面鏡13の離間距離は120mm(60mm+60mm)となり、凹面鏡12,13から共に60mmの位置に共通の集光点Pが位置することになる。
凹面鏡12,13に共通する集光点Pの位置つまり試料の配置位置が凹面鏡12と凹面鏡13の間の中央に位置することになるので、試料の両側に等しいワーキングディスタンスが確保され、試料やキュベット23の設置作業等を容易に行なうことができる。
また、レーザー光を回折限界まで集光点に集光させるためには、球面曲率共通型のキャビティ構造(いわゆるコンセントリックタイプ)を採用することが望ましい。
ワーキングディスタンスを広げたいのであれば、焦点距離の長い凹面鏡12,13を採用することが望まれる。
なお、主要な光路を鉛直方向に備える吸収顕微鏡、つまり、キュベット23を水平に設置する構成の吸収顕微鏡の場合にあっては、中央部に孔を設けたピエゾステージの上にキュベット23を設置することになるので、対向する一対の凹面鏡の球面曲率を異ならせ、ピエゾステージの上方に長いワーキングディスタンスを保証するようにしてもよい。
そして、一方の凹面鏡12の背面、つまり、凹面鏡12における検査光の入射側には、凹面鏡12の反射面に倣った表面形状を有する平凸レンズ17が形成され、他方の凹面鏡13の背面、つまり、凹面鏡13における検査光の出射側には、凹面鏡13の反射面に倣った表面形状を有する平凸レンズ18が形成されている。凹面鏡12の材質と平凸レンズ17の材質、および、凹面鏡13平凸レンズ18の材質は共に等しい。
この実施形態においては、平凸レンズ17,18が凹面鏡12,13と独立した平凸レンズとして形成され、貼り合わせによって対応する凹面鏡12,13と光学的に一体化されているが、平凸レンズ17を備えた凹面鏡12や平凸レンズ18を備えた凹面鏡13を其の製造段階で一体成形するようにしてもよい。
なお、一対の平面鏡あるいは凹面鏡を対向させて設置した構成は一般に光学キャビティと呼ばれる公知のものであるが、大気を構成する気体等の分析や風洞の気流診断等のように空間分解能を必要としない測定で利用される従来型の凹面鏡12は図2(a)に示されるように背面に平凸レンズのない凹面鏡12を単体で利用したものであるのに対し、この実施形態の凹面鏡12は図2(b)に示されるように其の背面に平凸レンズ17を形成したものであって、両者は構成が相違する。図2(a)および図2(b)では入射側の凹面鏡12についてのみ示しているが、出射側の凹面鏡13についても状況は同じである。
また、他方の凹面鏡13の背面から光電子増倍管16に到る光路上において光電子増倍管16に直近した位置に空間フィルタとして機能するピンホール29が配置されると共に、他方の凹面鏡13の背面から光電子増倍管16に到る光路上に設置された球面アクロマティックレンズ15と蛍光フィルタ19の間には、他方の凹面鏡13の背面から出射したレーザー光の経路を2つに分割するためのビームスプリッタ20が設置され、ビームスプリッタ20により分割されたレーザー光を受ける分光器21が設けられている。
そして、凹面鏡12と凹面鏡13の間には、共通する集光点Pに設置された試料に対して凹面鏡12,13の中心軸に直交した第1の方向と、前記中心軸および第1の方向に直交した第2の方向と、前記中心軸に沿った第3の方向の各々に送りを掛ける試料送り手段として機能するピエゾステージ22が設置されている。
ここでは、便宜上、凹面鏡12,13の中心軸に直交した第1の方向、例えば、図1の紙面と平行で且つ凹面鏡12,13の中心軸と直交する第1の方向をx軸方向と規定し、前記中心軸および第1の方向に直交する第2の方向つまり図1の紙面に直交する方向をy軸方向と規定し、前記中心軸に沿った第3の方向をz軸方向と規定する。
ピエゾステージ22は、ピエゾステージ22に対してx軸方向に送りを掛けるための圧電素子と、ピエゾステージ22に対してy軸方向に送りを掛けるための圧電素子と、ピエゾステージ22に対してz軸方向に送りを掛けるための圧電素子とを含み、ピエゾステージ22上に、細胞等の試料を担持した透明なキュベット23等が垂直に取り付けられるようになっている。
この実施形態における顕微鏡画像生成手段は、CPU,ROM,RAM(課題を解決するための欄でいうところのメモリ),不揮発性メモリ,ハードディスク,入出力インターフェイス等を備えたワークステーション,パーソナルコンピューター,ノートパソコン等を始めとする市販のコンピューター(以下、単にコンピューターという)24と、そのハードディスク等に収められた専用の制御プログラムによって構成される。
なお、図1中の符号25は液晶ディスプレイ等からなるモニタ、また、符号26はコンピューター24のマン・マシン・インターフェイス(以下、単にMMIという)として機能キーボードやマウスである。
顕微鏡画像生成手段とした機能するコンピューター24のCPUは、コンピューター24のハードディスクに収められた専用の制御プログラムを読み出して実行対象プログラムとしてコンピューター24のRAMの記憶領域の一部であるワークメモリ領域に展開し、これを実行する。
この制御プログラムには、少なくとも、予め設定された移動量に基いて軸制御回路27を駆動制御してピエゾステージ22の各軸x,yの圧電素子を伸縮させてピエゾステージ22に送りを掛けることによってキュベット23に担持された試料上の各部位、例えば、1umで区切られる試料上の測定スポットを順に集光点Pに位置決めし、各位置決め位置において、予め求められたブランク光の強度I’(試料のみを除いた状態のキュベット23をピエゾステージ22に設置してレーザー光源2を作動させたときに光電子増倍管16によって検出されるレーザー光の強度)と試料をセットした状態で光電子増倍管16によって測定されノイズ除去用のロックインアンプ28を経由してCPUに入力される出射側のレーザー光の強度IとO.D.=−log10(I/I’)で表されるランバート・ベールの法則とに基いて集光点Pに位置する試料上の測定スポットQ(x,y)における吸光度O.D.(x,y)の値を求め、位置決め位置の現在座標値Q(x,y)にO.D.(x,y)の値を対応させて(Q,O.D.)のかたちで二次元配列的にコンピューター24のRAMのデータ一時記憶領域に記憶させる作業を、試料上の各部位たとえば1umで区切られる測定スポットに対して重複せず満遍なく繰り返し実行するスキャニング処理と、スキャニング処理が完了して最後の一時記憶処理が終了した後の時点でコンピューター24のRAMのデータ一時記憶領域から(Q,O.D.)からなるデータの組を全て読み出し、少なくとも、各位置決め位置Q(x,y)と吸光度O.D.(x,y)の対応関係に基いて、試料上の各測定スポットQ(x,y)における吸光度O.D.(x,y)の値を吸光度O.D.(x,y)に応じた濃度でモニタ25の座標系x’−y’を基準としてモニタ25上に一括して拡大して可視表示する画像構築処理と、MMI26に対するユーザの入力操作、例えば、左右方向の矢印キーの操作に応じて軸制御回路27を駆動制御してピエゾステージ22における軸zの圧電素子を伸縮させてピエゾステージ22に送りを掛けることによってキュベット23に担持された試料をz軸方向に微速で送るピント合わせ処理と、スキャニング処理で得られた一連の二次元配列データ(Q,O.D.)の組に試料名やスキャニングの実施日あるいは他の識別可能なタイトルを付して此のスキャニング処理における吸収スペクトルのデータSと共にコンピューター24のハードディスクに格納するデータ格納処理が含まれる。
マシン座標系x−yつまり試料上の測定スポットQ(x,y)を表す座標系x−yとモニタ25上の座標系x’−y’の関係は、画像構築処理で生成された試料の濃度画像が試料の実際の大きさに比べて拡大されるように調整されている。
スキャニング処理における送りのピッチが1umであり、一般的なモニタ25の解像度が72dpi程度であることから倍率の大きな拡大表示が可能である。モニタ上における画像の拡大率を変更するズーミング処理に関しては公知である。
この実施形態ではスキャニング処理の送りピッチを1umとしているが、この値は集光点Pにおける集光スポットの径に応じて決めることが望ましい。
なお、この実施形態における集光スポットの径は約10umであるが、スポット径の改善に直接的に関連する平凸レンズ17の他にも前述した平凸レンズ18やピンホール29がもたらす空間分解能の改善を見込んで、スキャニング処理の送りピッチを1umとしている。
試料上の各測定スポットQ(x,y)における吸光度O.D.(x,y)の値を吸光度O.D.(x,y)に応じた濃度でモニタ25上に一括して拡大して可視表示する際には、例えば、256の階調を使用して、吸光度O.D.(x,y)の値が大きい箇所を暗く、また、吸光度O.D.(x,y)の値が小さい箇所を明るくするように表示することが望ましい。無論、ポジ/ネガの関係に相当する反転表示も可能である。
あるいは、濃度の相違に代えて色調の相違によって各測定スポットQ(x,y)における吸光度O.D.(x,y)の値を可視的に表現してもよい。
データ格納処理によってコンピューター24のハードディスクに格納された二次元配列データ(Q,O.D.)の組と此れに対応する吸収スペクトルのデータSを其のデータの格納時に設定したタイトルをキーワードとして検索し、ハードディスクから読み出してRAMのデータ一時記憶領域に一時記憶した後、この二次元配列データ(Q,O.D.)の組に対して画像構築処理を実施することも可能である。
次に、この実施形態における吸収顕微鏡1の動作原理をスキャニング処理で実行される固定サイクルの1つの工程を参照して説明する。
但し、この段階では既に細胞等の試料を担持した透明なキュベット23がz軸に対して垂直になるようにしてピエゾステージ22に取り付けられているものとする。
また、レーザー光源2は既に作動しており、MMI26に対するユーザの送り指令の入力操作によるピント合わせ処理が完了し、z軸方向における試料の位置が集光点Pに位置決めされているものとする。
レーザー光源2で生成された400nm〜600nmのレーザー光はファイバーケーブル3を経由して反射型コリメーター4に導かれ、反射型コリメーター4によって平行化される。
反射型コリメーター4で平行化されたレーザー光はショートパスフィルター5で600nm以上の波長の光をカットされ、平面鏡6によって光路を変更されて集光用の球面アクロマティックレンズ7に照射されて空間フィルタとして機能するピンホール8で集光した後、再び広がって球面アクロマティックレンズ9に照射されて平行化される。
球面アクロマティックレンズ9で平行化されたレーザー光は絞り10でビーム径を絞られ、凹面鏡12,13に共通の集光点Pに向かうべく、球面アクロマティックレンズ11によって集光され、図2(b)に示されるように、その光路上にある平凸レンズ17および凹面鏡12によって屈折されることなく、平凸レンズ17および凹面鏡12を真っ直ぐに突き抜けるようにして凹面鏡12,13に共通の集光点Pに正確に集光する。(ここで、仮に、平凸レンズ17を形成していない従来型の凹面鏡12のみを使用していたとすれば、凹面鏡12,13に共通の集光点Pに向かうべく球面アクロマティックレンズ11によって集光されたレーザ光は、図2(a)に示されるように、凹面鏡12に入射する過程と凹面鏡12から出射する過程の各々で屈折を生じるため、その集光位置は凹面鏡12,13に共通の集光点Pとは一致せず、僅かに光軸方向にずれた位置で集光することになる。)
このようにして集光点Pに正確に集光したレーザー光は、集光点Pに位置する試料上の部位を透過することで僅かにエネルギーを吸収されて再び広がり、他方の凹面鏡13の反射面に至る。
そして、その一部(99.5%)が他方の凹面鏡13の反射面によって集光点Pに集光すべく反射され、集光点Pに配置された試料上の同一部位つまり集光点Pに再び照射され、試料上の同一部位を透過することによって僅かにエネルギーを吸収されて再び広がり、一方の凹面鏡12の反射面に戻る。
そして、その一部(99.5%)が一方の凹面鏡12の反射面によって集光点Pに集光すべく反射され、集光点Pに配置された試料上の同一部位つまり集光点Pに照射される。
以下、一方の凹面鏡12の反射面と他方の凹面鏡13の反射面との間で試料上の同一部位つまり集光点Pを透過して前記と同様の反射が繰り返されるが、試料を透過するレーザー光は必ず試料上の同一部位つまり集光点Pを通るので、凹面鏡12と凹面鏡13の間で発生する反射の繰り返しによって集光点Pの集光スポットの径が増大することはない。(ここで、仮に、平凸レンズ17を形成していない従来型の凹面鏡12のみを使用していたとすれば、集光点Pに向かうべく球面アクロマティックレンズ11によって集光されたレーザ光の位置ずれが反射の繰り返しによって積算的に増幅されることになるので、集光点Pの近傍のスポット径が著しく増大するといった不都合が発生してしまう。)
そして、最終的に、一対の凹面鏡12,13の間で繰り返し往復して反射されたレーザー光の一部(0.5%)は、その光路上にある凹面鏡13および平凸レンズ18によって屈折されることなく、凹面鏡13および平凸レンズ18を真っ直ぐに突き抜けるようにして広がりながら球面アクロマティックレンズ14に照射される。
平凸レンズ18が凹面鏡13に及ぼす効果は前述した平凸レンズ17が凹面鏡12に及ぼす効果と同様である。
そして、球面アクロマティックレンズ14で平行化されたレーザー光は、出射側のレーザー光の強度を測定するための受光素子として機能する光電子増倍管16に向かうべく球面アクロマティックレンズ15によって集光され、その一部がビームスプリッタ20を透過し、蛍光フィルタ19および空間フィルタとして機能するピンホール29を経由して光電子増倍管16に到り、光電子増倍管16によって出射側のレーザー光の強度Iの値が測定される。
そして、光電子増倍管16からの信号出力はロックインアンプ28でノイズ成分を除去されてコンピューター24のCPUに読み込まれ、顕微鏡画像生成手段として機能するCPUが、予め求められたブランク光の強度I’と光電子増倍管16によって測定された出射側のレーザー光の強度IとO.D.=−log10(I/I’)で表されるランバート・ベールの法則とに基いて集光点Pに位置する試料上の測定スポットQ(x,y)における吸光度O.D.(x,y)の値を求め、マシン座標系x−yにおけるピエゾステージ22の現在位置Q(x,y)つまり試料上の測定スポットQ(x,y)の位置に対応させてO.D.(x,y)の値を(Q,O.D.)の二次元配列のかたちでコンピューター24が備えるRAMのデータ一時記憶領域に記憶させる。
反射の繰り返しによって試料上の同一部位Q(x,y)を透過するレーザー光の光路長が増幅されるので、モル濃度の値が低い試料や厚みの少ない試料、例えば、細胞等といった試料であっても、試料上における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異といったものを増幅させるかたちで出射側のレーザー光の強度Iの値に的確に反映させることができる。
従って、例えば、厚みの少ない10um程度の試料やモル濃度の低い1細胞レベルの試料からでも試料の部位毎の性状の相違を識別するに足りる有意な差を有する吸光度O.D.(x,y)の値を得ることができ、通常の分光光度計では困難な極微量サンプル(1ピコリットル)の吸光度測定や創薬応用あるいは細胞腫の違いによる診断なども可能となる。
しかも、ここで求められる吸光度O.D.(x,y)の値は、集光点Pつまり試料上の同一部位Q(x,y)の位置を透過したレーザー光の情報のみを反映した出射側のレーザー光の強度Iに基いて算出された値であり、試料上の他の部位を透過したレーザー光の影響といった外乱を含まない値であるので、この値によって試料上の部位Q(x,y)における濃度等の差異を適切に知ることができ、空間分解能の精度が向上する。
また、出射側のレーザー光の強度Iを測定する光電子増倍管16に直近する光路上にピンホール29を配置しているので、他方の凹面鏡13の背面から出射したレーザー光の光束の中心部のみが光電子増倍管16に到達することになり、凹面鏡間12,13間での反射の繰り返しに際して集光点のスポット中心を通った検査光のみを測定することが可能となり、外乱を排除して試料上の各部位の濃度等の差異をより正確に知ることができる。
一方、光電子増倍管16に向かうべく球面アクロマティックレンズ15で集光された後にビームスプリッタ20で反射されたレーザー光は分光器21に到り、分光器21によって吸収スペクトルを測定され、吸収スペクトルのデータSの値がコンピューター24のCPUに読み込まれ、顕微鏡画像生成手段として機能するCPUが、試料上の測定スポットQ(x,y)の位置と吸光度O.D.(x,y)の値に加え、吸収スペクトルのデータSの値をコンピューター24のRAMのデータ一時記憶領域に記憶させる。
スキャニング処理は、予め設定された移動量に基いて軸制御回路27を駆動制御してピエゾステージ22の各軸x,yの圧電素子を伸縮させてピエゾステージ22に送りを掛けることによってキュベット23に担持された試料上の各部位、例えば、1umで区切られる試料上の測定スポットを順に集光点Pに位置決めし、その都度に上述の固定サイクルの処理(段落047〜0059参照)を実行するものである。
そして、試料上の各部位たとえば1umで区切られる測定スポットに対して重複せず満遍なく固定サイクルの処理が実行されて測定スポットの全数に相当する(Q,O.D.)のデータ組が取得されると、一連のスキャニング処理が完了し、コンピューター24のRAMに(Q,O.D.)からなる一連の二次元配列データが全て記憶される。
一連の二次元配列データと吸収スペクトルのデータSは、前述したデータ格納処理の実施により、タイトルを付してコンピューター24のハードディスクに格納することが可能である。
また、スキャニング処理の完了時点でコンピューター24のRAMに一時記憶されているデータを利用して直ちに前述の画像構築処理を実行することも可能である。
画像構築処理を起動すると、顕微鏡画像生成手段として機能するコンピューター24のCPUがRAMのデータ一時記憶領域から(Q,O.D.)からなるデータの組を全て読み出し、少なくとも、各位置決め位置Q(x,y)と吸光度O.D.(x,y)の対応関係に基いて、試料上の各測定スポットQ(x,y)における吸光度O.D.(x,y)の値を吸光度O.D.(x,y)に応じた濃度でモニタ25の座標系x’−y’を基準としてモニタ25上に一括して拡大して可視表示する。
この際、対応する吸収スペクトルのデータSをモニタ25上にテキスト形式で表示するようにしてもよい。
既に述べた通り、この実施形態にあっては、平凸レンズ17,18やピンホール29を配置することにより、試料上の部位Q(x,y)における吸光度O.D.(x,y)の算出に際し、近接する試料上の部位Q’(x±Δ,y±Δ)の吸光度がIの値に関与しないようしているので、試料上の部位Q(x,y)に対応した吸光度O.D.(x,y)の信頼性が高く、吸収顕微鏡1における空間分解能(解像度)と其の精度(シャープネス)が向上する。
従って、試料の各部位Q(x,y)の吸光度O.D.(x,y)に応じた濃度を試料の全範囲に亘ってモニタ25上に一括して可視表示して得られる画像は、試料全体を照射して得られる透過光のコントラストを増幅し且つスケールを拡大して直視した映像と実質的に等価であり、モニタ25を参照することによって、試料上の各部位Q(x,y)における性状の違い、例えば、試料上の各部位の濃度等の差異を目視によって容易に観察することができる。
平凸レンズ17,18を備えない凹面鏡12,13を光学キャビティとして利用した場合と平凸レンズ17,18を備えた凹面鏡12,13を光学キャビティとして利用した場合のスキャン画像の相違の一例を図3に示す。スキャン対象はHeLa細胞(ヒト子宮頚部癌細胞)であり、図3(a)が平凸レンズ17,18を備えない凹面鏡12,13を光学キャビティとして利用した場合のスキャン画像、また、図3(b)が平凸レンズ17,18を備えた凹面鏡12,13を光学キャビティとして利用した場合のスキャン画像であり、両者の表示スケールは同一である。
濃度の相違を利用した可視表示のうち、256の階調を使用して、吸光度O.D.の値が大きい箇所を暗く、また、吸光度O.D.の値が小さい箇所を明るくして識別するようにした場合のモニタ25上の画像の表示状況等を参考として何例か示す。
〔実験結果1〕
厚さ10umと100umの両面テープとカバーガラスでキュベット23を作成し、蛍光タンパク質Venusの吸光度の計測を行った。
図4(a),図4(b)に示す通り、100um,10umの何れの光路長においても濃度依存的な吸光度の上昇を計測することができた。
特に、光路長を10umとした場合、その光路長が一般的な10mmキュベットの分光光度計の光路長の1000分の1であるにも関わらず計測を行うことができた。
また、吸収スペクトルの計測を行うこともできた。
〔実験結果2〕
蛍光タンパク質Venusを細胞質に発現した細胞の吸収像の計測を行った。図5(a)は野生型の細胞の吸光度を示す画像、また、図5(b)は細胞質にVenusを発現した細胞の吸光度を示す画像であり、野生型の細胞に比べてVenusを発現した細胞が高い吸光度を示している。
図5(c)に示されるように、吸収スペクトルは野生型と異なりVenusの吸収スペクトルを反映していた。
〔実験結果3〕
様々な細胞の吸収像および吸収スペクトルを調べた。HeLa(ヒト子宮頸部癌細胞),COS7(アフリカミドリザル腎臓細胞),NIH3T3(NIH Swissマウス胎仔由来細胞),PC12(+NGF)(ヒト副腎髄質褐色細胞腫由来細胞),GH3(ラット下垂体腫瘍細胞),colon26(マウス直腸癌由来細胞),iPS(ヒト人工多能性幹細胞)の固定細胞の吸収増幅像(モニタ25上の表示)を図6(a)に示す。細胞の形状を分解できる程度の空間分解能で吸収増幅像の計測を行うことに成功した。
更に、細胞ごとの吸収スペクトルの計測を行った。図6(b)に示されるように480nm,507nm,540nm付近に吸光度のピークを確認した。細胞によってピーク位置や大きさが変化していた。
本発明は、一対の凹面鏡を備えた光学キャビティを利用して試料を通る検査光の光路長を増幅する測定装置一般に適用できる。
1 吸収顕微鏡
2 スーパーコンティニュームレーザー(レーザー光源)
3 ファイバーケーブル
4 反射型コリメーター
5 ショートパスフィルター
6 平面鏡
7 球面アクロマティックレンズ
8 ピンホール
9 球面アクロマティックレンズ
10 絞り
11 球面アクロマティックレンズ
12 一方の凹面鏡
13 他方の凹面鏡
14 球面アクロマティックレンズ
15 球面アクロマティックレンズ
16 光電子増倍管(受光素子)
17 平凸レンズ
18 平凸レンズ
19 蛍光フィルタ
20 ビームスプリッタ
21 分光器
22 ピエゾステージ(試料送り手段)
23 キュベット
24 コンピューター(顕微鏡画像生成手段)
25 モニタ
26 マン・マシン・インターフェイス
27 軸制御回路
28 ロックインアンプ
29 ピンホール
P 集光点
HeLa ヒト子宮頸部癌細胞
COS7 アフリカミドリザル腎臓細胞
NIH3T3 NIH Swissマウス胎仔由来細胞
PC12 ヒト副腎髄質褐色細胞腫由来細胞
GH3 ラット下垂体腫瘍細胞
Colon26 マウス直腸癌由来細胞
iPS ヒト人工多能性幹細胞

Claims (6)

  1. 光の透過を許容する反射面を対向させて相互の集光点および中心軸が一致するように配置した一対の凹面鏡の間の集光点に試料を設置し、一方の凹面鏡の背面側から照射された検査光を前記一方の凹面鏡の反射面と他方の凹面鏡の反射面との間で前記試料を透過して繰り返し反射させ、前記他方の凹面鏡の背面から出射した検査光を受光素子に収束させて強度を測定し、照射側の検査光の強度と出射側の検査光の強度に基いて前記集光点に位置する試料上の部位の吸光度を求めるようにした吸収顕微鏡であって、
    前記一方の凹面鏡の背面に、前記一方の凹面鏡の反射面に倣った形状の表面を有する平凸レンズを形成することにより、前記一方の凹面鏡の背面側から照射された検査光が屈折を伴わずに前記集光点に到達するようにしたことを特徴とする吸収顕微鏡。
  2. 前記他方の凹面鏡の背面に、前記他方の凹面鏡の反射面に倣った形状の表面を有する平凸レンズを形成することにより、前記他方の凹面鏡の背面側から出射する検査光の屈折を除去するようにしたことを特徴とする請求項1記載の吸収顕微鏡。
  3. 前記平凸レンズが、これに対応する凹面鏡と独立した平凸レンズとして形成され、貼り合わせによって対応する凹面鏡と光学的に一体化されていることを特徴とする請求項1または請求項2のうち何れか一項に記載の吸収顕微鏡。
  4. 前記一対の凹面鏡の反射面の球面曲率が等しいことを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3のうち何れか一項に記載の吸収顕微鏡。
  5. 前記他方の凹面鏡の背面から前記受光素子に到る光路上において前記受光素子に直近した位置にピンホールを配置したことを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3,請求項4のうち何れか一項に記載の吸収顕微鏡。
  6. 前記集光点に設置された試料に対して前記中心軸に直交した第1の方向と前記中心軸および前記第1の方向に直交した第2の方向の各々に送りを掛ける試料送り手段と、
    予め設定された移動量に基いて前記試料送り手段を駆動することにより前記試料上の各部位を順に前記集光点に位置決めし、各位置決め位置で求められた吸光度を各位置決め位置に対応させてメモリに記憶させ、前記メモリに記憶された各位置決め位置と吸光度の対応関係に基いて前記試料上の各部位における吸光度を前記試料の全範囲に亘り吸光度に応じた濃度もしくは色彩でモニタ上に一括して拡大して可視表示する顕微鏡画像生成手段とを備えたことを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5のうち何れか一項に記載の吸収顕微鏡。
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