第1の発明は、洗浄水を噴出するノズル装置と、前記ノズル装置に洗浄水を供給する洗浄水供給流路と、制御部と、を含み、前記洗浄水供給流路は、前記ノズル装置に洗浄水を送給する水ポンプと、前記水ポンプの上流側にあって洗浄水を加熱する熱交換器と、前記
熱交換器の上流側にあって前記洗浄水供給流路の一部を大気に開放するサブタンクと、を備え、前記サブタンクは、前記サブタンク内に貯溜した洗浄水の水位を検知する水位検知センサと入水温度センサと、を備え、前記水位検知センサは、前記サブタンクの内面にコモン電極と複数の水位電極とを備え、前記制御部は、前記コモン電極と前記水位電極間に直流電流を印加し、電圧の変化により水位を検知する構成とし、前記制御部は、前記水位電極の浸水状態と非浸水状態とを判定する閾値を備え、前記入水温度センサの温度検知データにより前記閾値を補正することを特徴とする衛生洗浄装置である。
これにより、水位検知の精度を向上することができるとともに、広い範囲に導電率の洗浄水の使用が可能となり、使用範囲が広く使い勝手の良い衛生洗浄装置を提供することができる。
第2の発明は、特に第1の発明において、前記制御部は、前記水位センサの検知データと前記サブタンクの容量に基づいて、前記水ポンプで送給される流量を演算し、算出された前記流量が設定値と異なる場合は、前記水ポンプの出力を調整することを特徴とするものである。
これにより、水回路の構成において、流量を検知する専用の流量センサを別途設ける必要がなく、水回路の構成を簡素化することができるとともに、コスト低減を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示し、図2は衛生洗浄装置の本体の前本体ケースを取り外した状態の斜視図を示し、図3は衛生洗浄装置の本体の前本体ケースと制御部を取り外した状態の斜視図を示し、図4は衛生洗浄装置の操作部上面の斜視図を示し、図5はリモートコントローラの外観の斜視図を示すものである。
<1>衛生洗浄装置の全体構成
図1に示すように、衛生洗浄装置100は、本体200、便座300、便蓋320、リモートコントローラ400、人体検知センサ450を主構成部材として構成され、本体200と便座300と便蓋320は一体で構成され、便器110の上面に設置される。
なお、本実施の形態においては衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座300の設置側を前方とし、前方に向かって右側を右方、前方に向かって左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
本体200の側部には突出して操作部210が一体に設けられ、本体200の前部には、便座300および便蓋320が便座便蓋回動機構360を介して開閉自在に取り付けられている。便座便蓋回動機構360は直流モータと複数のギアで構成されており、便座300と便蓋320を個別または同時に開閉することができる。
図1に示すように便蓋320を開放した状態においては、便蓋320は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋320を閉成すると便座300の上面を隠蔽する。便蓋320は樹脂材料の成型による部材で構成されており、二重構造と断熱材による断熱構造となっている。
便座300は着座面を加熱する便座ヒータ(図示せず)を内蔵しており、便座の着座面が快適な温度になるように加熱する。
また、便座300の回動軸を支持する本体200内の軸受け部分には便座300に着座した人体を検知する着座センサ(図示せず)が設置されている。この着座センサは重量式の着座センサであり、便座300に使用者が着座することによる重量変化でスイッチを開閉させることにより、便座300の着座面に使用者が着座していることを検知するものである。
本体200の内部には、サブタンク600、熱交換器700、ノズル装置800等で構成され、人体の局部を洗浄する洗浄手段500と、排便時の臭気を脱臭する脱臭装置120と、衛生洗浄装置100の各機能を制御する制御部130等が内蔵されている。(洗浄手段500の詳細については後述する。)
図2に示すように、本体200の内部の中央部には、洗浄手段500の主構成部材であるノズル装置800が設置されており、ノズル装置800の左側には、脱臭装置120が設置されている。また左側部には便座300と便蓋320を開閉駆動する便座便蓋回動機構360が設置されている。
図3に示すように、ノズル装置800の右側には、前方に洗浄手段500の止水電磁弁514、サブタンク600等が設置されており、その後方には熱交換器700が設置されており、熱交換器700の後方には水ポンプ516が設置されている。また、図2に示すように洗浄手段500の上方には制御部130が設置されている。
本体200の右側部には前方に突出するように操作部210が一体に設けられており、図4に示すように、衛生洗浄装置100の各機能を操作および設定する複数のスイッチと表示灯240が設置されている。
操作部210の内部には操作基板(図示せず)が設置されている。操作基板には複数のタクトスイッチと複数のLEDが設置されており、操作部210の上面に貼付されたスイッチ銘板を介してタクトスイッチの押圧操作とLEDの視認が可能となっている。
また、操作部210の上面後方には、リモートコントローラ400と人体検知センサ450から送信される赤外線信号を受信する赤外線受信部211が配置されている。
操作部210に設置されたスイッチは、洗浄動作を操作する複数の操作スイッチ220と各種機能を設定する複数の設定スイッチ230が設置されている。また、表示灯240としては設定状態を表示する複数のLEDが設置されている。
操作スイッチ220としては、リモートコントローラ400の電池切れや、故障の場合に補助的に使用するお尻洗浄スイッチ221と、ノズルの掃除を行うときに操作するノズル掃除スイッチ222が設けられている。
設定スイッチ230としては、洗浄水の温度を設定する温水温度スイッチ231と、便座の温度を設定する便座温度スイッチ232と、設定されてから8時間に亘り便座300の保温を停止する8時間切りスイッチ233と、衛生洗浄装置100が使用されない時間帯を自動的に学習して、使用されない時間帯に便座300の保温温度を下げることにより節電を行う節電スイッチ234と、便座300および便蓋320の自動開閉動作を設定する便蓋自動開閉スイッチ235等が設置されている。
衛生洗浄装置100の多くの操作は、本体200とは別体で構成されたリモートコント
ローラ400で行われる。リモートコントローラ400は便座300に着座した使用者が操作のしやすいトイレルームの壁面等に取り付けられる。
図5に示すように、リモートコントローラ400の全体形状は薄い直方体に形成されており、樹脂材料で成形された箱状のリモコン本体401の上面と前面に複数のスイッチと表示灯が設置されている。また、リモコン本体401に上部角にはリモートコントローラ400の操作信号を本体200に赤外線で送信する送信部402が配置されている。
リモコン本体401の内部にはリモートコントローラ400の制御機能を構成する制御基板(図示せず)と、リモートコントローラ400の電源である電池(図示せず)が内蔵されている。
リモコン本体401の前面中央部には、お尻洗浄を開始するお尻洗浄スイッチ410と、女性の局部洗浄を洗浄するビデ洗浄を開始するビデ洗浄スイッチ411と、お尻洗浄とビデ洗浄を停止する停止スイッチ412と、お尻洗浄およびビデ洗浄時に洗浄位置を前後に周期的に移動させて広い範囲の洗浄が可能とするムーブ洗浄スイッチ413と、お尻洗浄時に洗浄強さを周期的に変化させるリズム洗浄スイッチ414が配置されている。
前面上部には、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄強さを2個のスイッチで調節する洗浄強さスイッチ415と、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄位置を2個のスイッチで調整する洗浄位置スイッチ416と、ノズルを40℃の温水で約1分間洗浄するノズル除菌スイッチ417が配置されている。
また、洗浄強さスイッチ415の上方には、洗浄強さを5段階で表示するLEDの強さ表示灯421と、洗浄位置スイッチ416の上方には、洗浄位置を5段階で表示する位置表示灯422が配置されている。
リモコン本体401の上面には、便蓋を電動で開閉する便蓋スイッチ418と、便座を電動で開閉する便座スイッチ419が設置されており、スイッチ操作により使用者が任意に便座300と便蓋320を開閉できる構成となっている。
人体検知センサ450は本体200とは別体で構成されており、トイレルームの壁面等に取り付けられる。人体検知センサ450は、人体から放出される赤外線を受光する焦電センサ(図示せず)と、焦電センサの信号で人体の検出を判定するセンサ制御部(図示せず)と、センサ制御部からの人体検知信号を本体200の制御部に赤外線で送信する赤外線送信部(図示せず)と、人体検知センサ450の電源である電池(図示せず)等で構成されている。
<2>洗浄手段の構成
図6は衛生洗浄装置の洗浄手段の水回路の構成を示す模式図である。
本体200の内部には使用者の局部を洗浄する洗浄手段500が内蔵されている。洗浄手段500は洗浄水を噴出するノズル装置800と、給水接続口510からノズル装置800に洗浄水を供給する一連の洗浄水供給流路とで形成されている。
図6に示すように、洗浄水供給流路は、給水接続口510と、ストレーナ511と、逆止弁512と、定流量弁513と、止水電磁弁514と、リリーフ弁515と、サブタンク600と、熱交換器700と、バッファータンク750と、水ポンプ516と、流調弁517と、が順次設置され、ノズル装置800に接続されている。
本体200の右側下方に水道管が接続される給水接続口510が配置されており、給水接続口510の内部には水道水に含まれるごみの流入を防止するストレーナ511と、サブタンク600内に貯溜された水が水道配管に逆流することを防止する逆止弁512が組み込まれている。
逆止弁512の下流には、流路に流れる洗浄水の量を一定に保つ定流量弁513と、流路を電動で開閉する止水電磁弁514と、リリーフ弁515とが一体に構成されている。
止水電磁弁514の下流には、大気解放口を備えたサブタンク600と、洗浄水を瞬時に加熱する熱交換器700と、熱交換器700で加熱された温水の温度を均一にするバッファータンク750が接続されている。
バッファータンク750の下流には、水ポンプ516が接続されている。水ポンプ516の下流には、流調弁517を介してノズル装置800が接続されており、流調弁517のそれぞれのポートにはノズル装置800のお尻洗浄部831、ビデ洗浄部832、ノズルクリーニング部833が接続されている。
図7および図8に示すように、洗浄手段500を構成する部材のうち、給水接続口510、ストレーナ511、逆止弁512、定流量弁513、止水電磁弁514、リリーフ弁515、サブタンク600、熱交換器700、バッファータンク750、水ポンプ516は樹脂材料で成型されたシャーシ501に組み込まれ一体的に構成され、本体200の後本体ケース201に組みつけられている。
図7に示すように、ストレーナ511と逆止弁512は給水接続口510に一体に組み込まれており、定流量弁513とリリーフ弁515とは止水電磁弁514に一体に組み込まれている。また、バッファータンク750は熱交換器700と一体に構成されている。
給水接続口510と止水電磁弁514、止水電磁弁514とサブタンク600、サブタンク600と熱交換器700、とは接続チューブ等を介さず、相互の接続口をパッキンであるOリングを介して直接接続する構成となっている。また、これらの水回路を構成する部材はシャーシ501の所定の位置に設置固定されている。
このような構成を採用することにより、水密構造を向上することが可能になるとともに、相互の部材の配置精度を向上することができる。特にサブタンク600と熱交換器700の配置精度が向上することにより、洗浄水の流量の制御精度を向上することが可能となり、洗浄手段500の性能の向上と制御精度を向上することができる。
水ポンプ516は容積形ポンプであるピストンポンプであり、図14、図15に示すように、外形は略L字状をなしており、略円筒形のモータ部516aと、モータの回転運動を往復運動に変換するリンク機構部516bと、リンク機構部516bの往復運動で駆動されるピストン部516cで構成されている。ピストン部516cの外面には、接続口として吸水口516dと吐出口516eが設けられている。
上記構成の水ポンプ516を駆動させた場合、往復運動を伴うリンク機構部516bとピストン部516cに比べ、回転運動のみのモータ部516aでは発生する振動が少ない構成となっている。
モータ部516aを駆動することにより、ピストン部516cが往復運動を開始し、吸水口516dから洗浄水を吸引して、吐出口516eから洗浄水吐出する構成であり、吐出する洗浄水はピストン部516cの往復運動に伴い適度の脈動を伴った水流となる。
上記構成の水ポンプ516の略円柱形のモータ部516aの外周を、弾性を備えた発泡樹脂製の緩衝部材(図示せず)で包囲し、シャーシ501の後部に設けられた略円筒形の水ポンプ設置部501aに挿入することにより支持され、リンク機構部516bとピストン部516cは下方に垂れ下がるように懸架される。
水ポンプ設置部501aは薄い肉厚で形成されており、シャーシ501の底面から起立したリブ状の脚部501bの上部に形成されている。薄い肉厚で形成したことにより樹脂の弾性により水ポンプ516の振動を吸収する効果を得ることができる。
また、バッファータンク750が一体に形成された熱交換器700の接続口である出湯口712と水ポンプ516の接続口である吸水口516dとは軟質樹脂製の接続チューブで接続される。
上記のように、振動の少ないモータ部516aが緩衝部材を介して、シャーシ501の薄い肉厚で形成された水ポンプ設置部501aに設置され、振動を多く発生するリンク機構部516bとピストン部516cとはフリーな状態で懸架され、しかもバッファータンク750とは軟質樹脂製の接続チューブ502で接続されることにより、水ポンプ516の駆動時に発生する振動をシャーシ501や他の部材、また本体200に伝わること抑制することが可能となり、衛生洗浄装置の快適性と耐久性を向上する効果を得ることができる。
特に水ポンプ516は、発泡樹脂製の緩衝部材と水ポンプ設置部501aを形成する弾性を備えた樹脂との2つの異なる材質を介して支持されることにより、広い範囲の周波数の振動が吸収され、本体への振動の伝達を効果的に抑制することができる。
<3>サブタンクの構成
図9はサブタンクの外観を示す斜視図を示すものであり、図10はサブタンクの横方向の断面図を示し、図11はサブタンクの前後方向の断面図を示すものである。
図9に示すように、サブタンク600は樹脂材料により成型されたタンク本体610と、タンク本体610に貯溜された洗浄水の水位を検知する水位検知センサ620と、タンク本体610内に供給される洗浄水の温度を検知するサーミスタからなる入水温度センサ630とで構成されている。
タンク本体610はタンクの前壁、両側壁、底面、天面を構成する前部タンク611と、タンクの後壁を構成する後部タンク612と、タンク本体610の天面に配置された大気開放部613と、の3個の部材で構成されている。タンク本体610の全体的な形状は、前壁、後壁、両側壁、底面、天面からなる複数の平面で形成されており、平面視形状は略四角形である。前壁は途中から後退する傾斜部を備え、側面視形状は下部より上部が細くなった略台形形状に形成されており、タンク本体610の上部の断面積は下部より小さい断面積となっている。
タンク本体610の一方の側壁下部には入水口601が、タンク本体610後壁下部には出水口602が設けられており、タンク本体610の天面に配置された大気開放部613にはタンク本体610の内部と外部を連通する大気開放口603が設けられている。大気開放口603を設けることにより、タンク本体610内に溜まった空気を外部に放出するとともに、タンク本体610の内部圧力を常時大気圧に維持することができる。
サブタンク600の内部が常時大気圧に維持されることにより、サブタンク600の下
流から水ポンプ516の吸水口516dまでの流路も大気圧に維持されるため、水ポンプ516は水圧変動の影響を受けずに吸水することができるため、安定したポンプ機能を発揮することができる。
大気開放部613の大気開放口603に連通する流路には、流路の断面積が大きいバッファ部613aが形成されており、大気開放口603から気泡に伴って洗浄水が衝撃的に流出しようとした場合等に、洗浄水が一旦バッファ部603aに貯溜されることにより、大気開放口603からの流出を抑制する機能を備えている。
タンク本体610の内部には仕切壁614が設けられており、仕切壁614によりタンク本体610の内部は入水槽615と貯溜槽616の2つの槽に分割されている。入水槽615の側面の底面近傍には入水口601が、貯溜槽616の後壁の底面近傍には出水口602が設けられている。
仕切壁614を設け、入水槽615と貯溜槽616を形成することにより、入水口601から流入した洗浄水に空気が含まれている場合、空気は入水槽615の上部より、大気開放口603を通過して外部に放出されるため、貯溜槽616には空気を含まない洗浄水のみを流入させることができる。
入水槽615の上方には、入水槽615の上面開口部615aと大気開放部613の間に介在し、タンク本体610の側壁より略水平方向に突出した障壁617が設けられている。障壁617は入水槽615の上面開口部の全面を覆う大きさとなっている。
また、入水槽615の内部には、タンク本体610の側壁と仕切壁614には、略水平方向に交互に突出した複数の整流リブ618が形成されている。
入水口601から流入した洗浄水は、まず入水槽615の下部に流入し、整流リブ618で流れの方向を変化させながら入水槽615内を上昇する。このとき入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで著しく流れが乱れている場合は整流リブ618により、流れが適度に整流化されるとともに、整流リブ618の下流側で発生する渦により洗浄水内に含まれる空気が分離される。
入水槽615内を上昇した空気が分離された洗浄水は、仕切壁614の上端を乗り越えて貯溜槽616に流入して貯溜される。
このとき、入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで著しく流れが乱れている場合でも、洗浄水は障壁617により上方への流れが抑制され、洗浄水が大気開放部613に直接当たり、大気開放口603よりサブタンク600の外部に流出することが防止される。
上記のように、入水口601から流入した洗浄水は入水槽615内を上昇する間に洗浄水に含まれる空気が分離され、分離された空気は大気開放口603よりタンク本体610外に放出される。貯溜槽616には空気を含まない洗浄水が貯溜され、出水口602より熱交換器700に供給される。
サブタンク600より熱交換器700に供給される洗浄水に空気が混入していた場合、熱交換器700の内部に気泡が発生することにより熱交換器700の内部の温度が異常上昇し、熱交換器700が損傷することがあり、仕切壁614を設け、空気の混入を防止することにより、熱交換器700の損傷を防止する効果を得ることができる。
水位検知センサ620は、共通の電極となるコモン電極621と、水位毎に設置された複数の水位電極622で構成されており、本実施の形態においては1個のコモン電極621と2個の水位電極622で構成されている。コモン電極621と水位電極622はステンレス材料で形成されている。
タンク本体610の前壁下部の内面にはコモン電極621が配置されており、タンク本体610の後壁の内面には水位電極622が配置されている。水位電極622は上部に設けられた上限電極623と、下部に設けられた下限電極624で構成されている。コモン電極621は下限電極624より低い位置に設置されており、コモン電極621は通常の使用状態では常に浸水状態となっている。
コモン電極621と、水位電極622である上限電極623および下限電極624とを異なる面に設置したことにより、タンク本体610の内面に付着した残水を貯溜水として誤検知することを抑制する効果を得ることができる。
水位の検知は、コモン電極621と水位電極622との間に直流電流を印加し、水位電極622が浸水しているか否かにより電圧が変化することにより水位を検知する。すなわち、貯溜槽616に洗浄水が流入して水位が上昇し、下限電極624および上限電極623が浸水すると、コモン電極621と下限電極624および上限電極623間の電圧が低下することにより制御部130は水位を検知する。
上限電極623は上限水位の検知に使用され、下限電極624は下限水位の検知に使用される。上限電極623は大気開放口603より低い位置に設置されており、これにより、大気開放口603から洗浄水が流出することを防止することができる。また、下限電極624は出水口602より上方に設置されており、これにより、熱交換器700に空気が流入することを防止することができる。
また、制御部130は、電極に印加する直流電流の極性を周期的に反転させながら印加する構成となっている。洗浄水を介してコモン電極621と水位電極622と間に直流電流を印加した場合、電気分解の作用により電極を形成する金属が酸化およびイオン化による溶出することにより、電極が短期間に劣化することがあり、電流の極性を周期的に反転することにより電極の劣化を抑制することができる。
本実施の形態においては、極性の反転の間隔は、衛生洗浄装置の電源として供給される交流電源に対応した時間設定となっており、供給される交流電源が50Hzの場合は1/50秒、供給される交流電源が60Hzの場合は1/60秒としている。
本実施の形態における衛生洗浄装置100においては、止水電磁弁514が開放されてサブタンク600に洗浄水が供給され、上限水位が検知されると、止水電磁弁514は閉止され給水が停止し、サブタンク600内は満水状態となる。サブタンク600の満水状態から、通常の洗浄動作を実施すると水位が低下し、下限水位が検知されると止水電磁弁514が再び開放されてサブタンク600に洗浄水が供給され、上限水位が検知されるまで給水が継続される。
サブタンク600に貯溜される洗浄水の最大量は100ccであり、上限水位から下限水位までの水量は65ccである。
洗浄に使用される洗浄水の流量は最も強い洗浄力で洗浄した場合は450cc/minであり、最も弱い洗浄力洗浄した場合は260cc/minに設定されている。この場合、洗浄水が上限水位から下限水位に到達するまでの時間は、最も強い洗浄力で洗浄した場
合8.7秒間となり、最も弱い洗浄力で洗浄した場合15秒間となる。
一般的に使用者が局部の洗浄に要する時間は30秒以上であるので、最も弱い洗浄力で洗浄した場合でも130ccの洗浄水を使用することとなり、1回の洗浄動作で、最低1回は上限水位から下限水位への変化を検知することが可能となる。
制御部130は、上限水位から下限水位までの経過時間を計測し、計測した時間と上限水位から下限水位までの水量(65cc)とを演算することにより流量を算出し、洗浄強さ毎に設定された流量と差がある場合は、水ポンプ516の出力を調整することにより、洗浄水の流量を補正する。
なお、本実施の形態のサブタンク600は底面が略四角形の形状としたが、これに限るものではなく、他の多角形状でもよい。
また、本実施の形態においては、コモン電極621と水位電極622とは対向する壁面である前壁と後壁に設置したが、これに限るものではなく、異なる面であれば、例えば、前壁と側壁等の隣接する壁面に設置してもよい。
また、コモン電極621と水位電極622の別の設置例としては、コモン電極621を前壁に設置し、水位電極622を天面に設置してもよい。このとき、下限電極624と上限電極623の先端はそれぞれ下限水位、上限水位に位置するように長さを変える。
また、本実施の形態においては、水位電極622としては上限電極623と下限電極624の2個を設置したがこれに限るものではなく、3個以上の水位電極622を配置することにより、水位検知の間隔を細分化することにより、水位検知と流量検知の精度を向上することができる。
<4>水位検知の閾値の補正
図12は上限電極とコモン電極との出力電圧の変化と上限電極の浸水状態と非浸水状態を判定する閾値を示すグラフであり、図13は下限電極624とコモン電極との出力電圧の変化と下限電極の浸水状態と非浸水状態を判定する閾値を示すグラフである。
上記のように、本実施の形態におけるサブタンクの水位検知センサ620で検知した検知データは単に水位の検知のみに使用されるものではなく、演算処理により流量検知に使用されるものであり、高い検知精度が要求されるものである。
2つの電極間の出力電圧の変化により水位を検知する場合、水位電極622と洗浄水の水面との接触および離脱により変化する出力電圧を閾値と比較して判定するものであるが、出力電圧は洗浄水の導電率と温度によりバラツキが発生する。
衛生洗浄装置の場合、使用される洗浄水を限定して導電率を一定にすることは難しく、また、使用時の導電率を検知して、補正するためには専用の検知センサを採用することによりコストアップにつながるため、本実施の形態においては、サブタンク600に設置した入水温度センサ630の検知データを使用して温度的な補正を行うことにより広い範囲の導電率の洗浄水に対応できるようにしている。
図12に示すように、上限電極623とコモン電極621との間の出力電圧は、上限電極623が浸水していない状態においては、グラフの破線で示すように、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約4.7Vであり、40℃の場合は約4.4Vであり、温度変化に対して略直線的に変化している。また、上限電極623が浸水した状態においては、洗浄水の
入水温度が5℃の場合は約2Vであり、40℃の場合は約1.4Vであり、温度変化に対して略直線的に変化している。
上記のように出力電圧が入水温度により変化するため、上限電極623の浸水状態と非浸水状態を判定する閾値を一定にした場合、導電率の異なる洗浄水を使用された場合に誤検知する可能性があり、洗浄水の入水温度に対応して補正することが有効である。
図12のグラフにおいて実線で示すように、0℃〜5℃の間は閾値を3.9V、35℃〜40℃の間は閾値を3.3Vとし、0℃〜40℃の間は5℃毎に段階的に閾値を設定している。
図13に示すように、下限電極624とコモン電極621との間の出力電圧は、下限電極624が浸水していない状態においては、グラフの破線で示すように、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約3.5Vであり、40℃の場合は約2.9Vであり、温度変化に対して略直線的に変化している。また、下限電極624が浸水した状態においては、洗浄水の入水温度が5℃の場合は約1.5Vであり、40℃の場合は約1Vであり、温度変化に対して略直線的に変化している。
上記のように上限電極623の場合と同様に、出力電圧が入水温度により変化するため、閾値を一定にした場合、導電率の異なる洗浄水を使用された場合に誤検知する可能性があり、洗浄水の入水温度に対応して閾値を補正している。
図13のグラフにおいて実線で示すように、0℃〜5℃の間は閾値を3.5V、35℃〜40℃の間は閾値を2.9Vとし、0℃〜40℃の間は5℃毎に段階的に閾値を設定している。
制御部130は、入水温度センサ630の温度検知データに基づき、上限電極623と下限電極624に対応する水位検知の閾値を上記の補正することにより、広い範囲の導電率の洗浄水の水位を正確に検知することができる。
<5>熱交換器の構成
図14は熱交換器の外観を示す斜視図であり、図15は熱交換器の断面図を示すものである。
本実施の形態における熱交換器700はバッファータンク750が一体に形成されており、熱交換器700の上部にバッファータンク750が設置されている。
図14に示すように、熱交換器700は正面視で略長方形の平板状をなし、ABS樹脂にガラス繊維をコンパウンドした強化ABS樹脂で成型されたケーシング701とセラミック製の平板状ヒータ702と出湯部材703とを主構成部材としている。
ケーシング701は前面部を構成する前面部材710と、背面部構成する背面部材720で構成されており、前面部材710と背面部材720との間に形成される空間に平板状ヒータ702が設置されている。前面部材710と平板状ヒータ702との対向部と、背面部材720と平板状ヒータ702との対向部に形成された隙間を加熱流路715とし、加熱流路715を流れる洗浄水を平板状ヒータ702で瞬時に昇温させるものである。
熱交換器700は、前面部材710の前面下端の右側に接続口である入水口711を備えており、前面部材710の右側面上端に設置された出湯部材703には接続口である出湯口712を備えている。
図15に示すように、入水口711に連なる入水流路713がケーシング701の下端部の略全幅に亘り設けられている。入水流路713の上面には全幅に亘り複数のスリット714が設けられており、入水流路713に流入した洗浄水はスリット714を通過して加熱流路715へ流入する構成となっている。スリット714は洗浄水を加熱流路715の全幅に亘り均等に流入させるものである。
加熱流路715の上端部には仕切リブ716が設けられており、仕切リブ716より上方がバッファータンク750となっている。仕切リブ716には略全幅に亘り複数の通水孔717が設けられており、加熱流路715で加熱された洗浄水は通水孔717を通過してバッファータンク750内に流入する構成となっている。
バッファータンク750内には断面形状が略半円形の突起718が略全幅に亘り間隔をあけて設けられている。バッファータンク750内を出湯口712に向かって流れる洗浄水は、突起718による流れが乱されることにより、洗浄水が混ざり合って洗浄水の温度斑が解消され、均一な温度の洗浄水が出湯口712より出湯される。
出湯部材703には2個のサーミスタが設置されており、一方は洗浄水の出湯温度を検知する出湯温度センサ730であり、他方は熱交換器700の過昇温度を検知する過昇温度センサ731である。
<6>ノズル装置の構成
図18は本実施の形態におけるノズル装置の収納状態を示す斜視図であり、図19は図18に示すAA断面図であり、図20はノズル装置の収納状態を示す縦断面図であり、図21は図20に示すB部の詳細断面図であり、図22は図21に示すCC断面図であり、図23はノズル装置の収納状態の横断面図であり、図24は図23に示すD部の詳細断面図であり、図25はノズル装置のお尻洗浄状態を示す縦断面図であり、図26は図25に示すE部の詳細断面図であり、図27はノズル装置のビデ洗浄状態を示す縦断面図であり、図28は図27に示すF部の詳細断面図であり、図29はノズル装置のビデ洗浄状態を示すノズル部の横断面図であり、図30は図29に示すG部の詳細断面図である。
ノズル装置800は、図18に示すように、樹脂材料で成型した略三角形の枠状の支持部810と、支持部810に沿って進退移動するノズル部820と、ノズル部820の進退移動を駆動する駆動部860と、ノズル部820への洗浄水の供給を切り替える流調弁517で構成されている。
なお、本実施の形態においてはノズル部の収納方向を後方とし、ノズル部820の進出方向を前方とし、後方より前方に向かって右側を右方、左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
支持部810は側面視略三角形の枠状に形成されており、略水平な底辺部811に対し、後部より前部に向かって降下した傾斜部812と、底辺部811と傾斜部812の後端を接合する縦辺部813が形成されている。傾斜部812にはノズル部820の進退移動を案内するガイドレール814と駆動部860の可撓ラック861を案内するラックガイド815が略全長に亘って形成されている。また傾斜部812の前端下方にはノズル部820を抱囲するように支持する略円筒形の抱持部816が一体に形成されている。
図19に示すように、ノズル部820を案内するガイドレール814は断面が略T字状に形成されている。また、可撓ラック861を案内するラックガイド815は断面が一方の側面が開放された略コの字状を成しており、可撓ラック861の上下面と一方の側面を
規制して案内する構成となっている。
ラックガイド815は傾斜部812に続いて支持部810の後部の縦辺部813と底辺部811にも連続して形成されており、傾斜部812と縦辺部813および縦辺部813と底辺部811とのコーナは円弧形状で接続されている。縦辺部813と底辺部811に形成されたラックガイド815の断面形状も略コの字状であるが、開放された側面は傾斜部においては左側であるのに対し、縦辺部813と底辺部811とは反対の右側面となっている。縦辺部813と底辺部811のラックガイド815の開放面は別部材の支持部蓋により閉塞されている。
ノズル部820をガイドレール814に沿って進退移動させる駆動部860は、ノズル部820に結合された可撓ラック861と、可撓ラック861と噛合するピニオンギア862と、ピニオンギア862を回転駆動する駆動モータ863で構成されている。
駆動モータ863はステッピングモータであり、パルス信号により回転角度が制御される。駆動モータ863が回転することによりピニオンギア862を介して可撓ラック861が駆動される構成となっている。
支持部810の抱持部816の内周面とノズル部820の外周面との間には間隙が設けられており、ノズル部820から噴出した洗浄水が抱持部816の内周面とノズル部820の外周面との間に形成される間隙に流入してノズル部820外周面を洗浄する構成となっている。
また、抱持部816の前方にはノズル部820の進退により開閉するノズル蓋801が開閉自在に設けられており、ノズル部820が収納されている状態で閉塞することにより、ノズル部820が便等で汚染されることを防止する構成となっている。
支持部810の底辺部811には、洗浄水供給手段に接続する給水チューブ(図示せず)と支持部810から流調弁517に洗浄水を供給する接続チューブ802とを相互に接続する給水継手817が形成されている。
ノズル部820は、樹脂材料で成型された棒状のノズル本体830と、ノズル本体830の略全体を覆う筒状のノズルカバー840と、ノズル本体830でノズルカバー840を牽引する連結手段850とで構成されている。
ノズル本体830は、局部を洗浄するお尻洗浄部831と、女性の局部を洗浄するビデ洗浄部832と、ノズル部820をクリーニングするノズルクリーニング部833を備えている。
お尻洗浄部831は、ノズル本体830の先端部に上方に開口したお尻洗浄噴出口834と、ノズル本体830の後端よりお尻洗浄噴出口834に連通するお尻洗浄流路835で構成されている。お尻洗浄流路835はノズル本体830の下部に設置されており、お尻洗浄噴出口834の下方で上方に向かって屈曲しており、屈曲部には洗浄水の流れを整流する整流板835aが設置されている。お尻洗浄噴出口834から噴出した洗浄水はノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
ビデ洗浄部832は、お尻洗浄噴出口834の後方に配置されたビデ洗浄噴出口836と、ノズル本体830の後端よりビデ洗浄噴出口836に連通するビデ洗浄流路837で構成されている。ビデ洗浄噴出口836から噴出した洗浄水はノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
ノズルクリーニング部833は、ノズル本体830の側面に配置されたノズルクリーニング噴出口838と、ノズル本体830の後端よりノズルクリーニング噴出口838に連通するノズルクリーニング流路839で構成されている。ノズルクリーニング噴出口838から噴出した洗浄水はノズルカバー840の内部に噴出され、ノズルカバー840排水口845からノズルカバー840の外部に放出される。ノズルクリーニング噴出口838から噴出した洗浄水はノズル部820とその周辺の清掃に使用される。
ノズル部820は、前方を支持部810の抱持部816に挿入した状態で支持され、後部をガイドレール814に懸架された状態で摺動自在に設置されており、図18に示すように、ノズル部820を抱持部816より後方に収容された収納位置と、図25に示すように、ノズル部820が抱持部816より突出したお尻洗浄位置と、図27に示すビデ洗浄位置との間を進退可能となっている。
ノズルカバー840はノズルカバー本体841と連結部材842とで構成されている。ノズルカバー本体841はステンレスの薄板を円筒状に形成したものであり、先端面は閉塞面をなし、後端面は開放面となっている。連結部材842は樹脂材料で成型された略円筒状であり、両側部にはノズル本体830と係合する連結片843が形成されている。
また、連結部材842の後端右側には、ノズルカバー840の摺動範囲を規制するノズルカバーストッパが一体に形成されており、支持部810に形成された前ストッパ受部と後ストッパ受部に当接することにより摺動範囲が規制される構成となっている。
連結部材842の一部はノズルカバー本体841の後端の開口よりノズルカバー本体841内に挿入された状態で固定され一体化された構成となっている。ノズルカバー本体841の前方上面には、ノズル本体830のお尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口836が対向可能な噴出開口844が1個設けられている。また、ノズルカバー本体841の前方下面にはノズルカバー本体841内に流出した洗浄水を外部に排出する排水口845が設けられている。
ノズルカバー840の内径はノズル本体830の外径より僅かに大きい寸法であり、ノズルカバー840にノズル本体830を挿入した状態で、ノズル本体830とノズルカバー840が互いにスムーズに摺動可能な寸法関係となっている。
ノズル本体830の後端面には流調弁517が設置されている。流調弁517はディスクタイプの弁本体517aと切り替え動作を駆動するステッピングモータ517bで構成されている。流調弁517はお尻洗浄流路835と、ビデ洗浄流路837と、ノズルクリーニング流路839に選択的に洗浄水を供給するものである。
また、流調弁517の弁本体517aの外面には流調弁517に洗浄水を供給する給水口517c設置されており、給水口517cには支持部810の給水継手817と連通する接続チューブ802が接合されている。
次に、ノズルカバー840の連結部材842とノズル本体830の連結受部851で構成される連結手段850について説明する。
図24、図30に示すように、ノズル本体830の後端部の外周右側には連結受部851が形成されている。連結受部851は2本の略V字型の溝が形成されており、前方の前凹陥部851aと後方の後凹陥部851bが前後に間隔をあけて2本配置されている。前凹陥部851aと後凹陥部851bの間隔はお尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口83
6の間隔と等しい寸法となっている。
一方、ノズルカバー840の連結部材842は、略円筒状の樹脂材料で成型され、後部両側部は後方に突出した連結片843が形成されており、連結片843の後端部には内方に突出した略V字形状の連結突起843aが形成されている。
ノズル本体830をノズルカバー840に挿入した状態においては、ノズルカバー840の連結部材842の弾性により、連結突起843aがノズル本体830の連結受部851に常時押し当てられた状態となり、連結突起843aが前凹陥部851a内または後凹陥部851bに係合した状態では、ノズル本体830とノズルカバー840が連結された状態となり、ノズルカバー840はノズル本体830に牽引されて移動することが可能となる。
図24に示すように、連結突起843aが前凹陥部851aに入り込んでいる状態では、図28に示すように、ノズル本体830のビデ洗浄噴出口836とノズルカバー840の噴出開口844が対向した状態となり、図30に示すように、連結突起843aが後凹陥部851bに入り込んでいる状態では、図21、図26に示すように、お尻洗浄噴出口834と噴出開口844が対向した状態となる。
<7>洗浄手段の制御と作用動作
図31は初期使用時における洗浄手段のタイムチャートを示し、図32は通常使用時における洗浄手段のタイムチャートを示すものである。
洗浄手段500の基本的な作用動作としては、水道配管を流れる水道水が、洗浄水として給水接続口510から供給され、止水電磁弁514が開放されることによりサブタンク600へ洗浄水が送給される。流路内を流れる洗浄水の流量は定流量弁513により一定に維持される。止水電磁弁514の駆動は、リモートコントローラ400および操作部210の操作に基づき制御部130により制御される。
サブタンク600に送給された洗浄水はサブタンク600内に貯溜されるとともに、熱交換器700および水ポンプ516に送給される。水ポンプ516が駆動されることにより洗浄水は流調弁517を介してノズル装置800に送給される。水ポンプ516の駆動はリモートコントローラ400および操作部210の操作に基づき制御部130により制御される。制御部130は水ポンプ516を駆動するとともに、熱交換器700の平板状ヒータ702への通電を開始し、洗浄水の加熱を開始する。
制御部130は入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知情報により、平板状ヒータ702への通電を制御し、洗浄水を操作部210の温水温度スイッチ231で設定された温度を維持する。
制御部130は操作部210およびリモートコントローラ400の操作情報に基づき流調弁517を制御して、ノズル装置800のお尻洗浄部831、ビデ洗浄部832、ノズルクリーニング部833のいずれかに洗浄水を供給する。これにより、お尻洗浄噴出口834、ビデ洗浄噴出口836、ノズルクリーニング噴出口838のいずれかの噴出口から洗浄水が噴出する。
次に、本実施の形態の特徴的な構成であるサブタンク600に関わる制御、特に水位検知と流量検知について詳細を説明する。
図31は衛生洗浄装置の設置後に初めて使用する場合、あるいは凍結防止のため水抜き
操作を実施した後の再使用の場合等、洗浄手段に洗浄水が貯溜されておらない初期使用時における洗浄手段の各機能のタイムチャートを示すものである。
操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)が操作された時点P1で、制御部130は止水電磁弁514に通電を開始して洗浄水の供給を開始する、これと同時に水位検知センサ620の駆動を開始する。水位検知センサ620の駆動はお尻洗浄の停止P7まで継続される。
水位検知センサ620が上限水位をP2で検知すると、制御部は時間計測を開始し、所定時間経過した時点P3に止水電磁弁514の通電を停止して洗浄水の供給を停止する。本実施の形態においては、上限水位検知の2秒後に通電を停止する。
上限水位を検知した時点P2で、基本的にはサブタンク600と熱交換器700は満水状態になっているが、2秒間余分に送給を継続することにより、熱交換器700と水ポンプ516により確実に洗浄水を充満させる。
これにより、熱交換器700内の空気の排除と洗浄水を確実に満水状態とすることができるので、熱交換器700の空焚きを確実に防止することができ、安全性と耐久性を向上することができる。また、水ポンプ516へ洗浄水を確実に送給して満水状態とすることにより、水ポンプ516の送水機能を確実に起動させることができる。
制御部130は、止水電磁弁514の通電を停止した時点P3で、水ポンプ516の駆動を開始するとともに、流調弁517を作動させてノズル部820のお尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。
水ポンプ516を駆動することにより、サブタンク600の水位は低下し、水位検知センサ620が上限水位の検知が解消した時点P4で、制御部130は熱交換器700の駆動を開始する。水位の低下を検知することにより、水ポンプ516が正常に作動していることを確認し、熱交換器700の異常温度上昇等を防止することができる。
お尻洗浄流路835に供給された洗浄水はお尻洗浄噴出口834より噴出する。噴出した洗浄水は噴出開口844を通過して支持部810の先端に設けられた抱持部816の内面にあたって反射しノズルカバー840の外面をクリーニングする。このクリーニング動作を前洗浄と称する。前洗浄は熱交換器700の出湯温度が25℃に到達してから2秒後の時点P5まで継続される。
時点P5で前洗浄が終了すると、制御部130はノズル装置800の駆動部860の駆動を開始し、ノズル部820を収納位置からお尻洗浄位置へと進出させる。収納位置からお尻洗浄位置への移動の間は、流調弁517を切替えて、ノズルクリーニング流路839に洗浄水を供給する。ノズルクリーニング流路839に供給された洗浄水はノズルクリーニング噴出口838よりノズルカバー840の内部に噴出し、噴出した洗浄水はノズルカバー840の内面を洗浄した後に排水口845よりノズルカバー840の外部に流出する。その間ノズル部820は洗浄水により温められ、後に実施されるお尻洗浄時に冷水が噴出して不快を感じることを抑制することができる。
ノズル部820がお尻洗浄位置に到達した時点P6で、制御部130は流調弁517を切替えてお尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。お尻洗浄流路835に供給された洗浄水はお尻洗浄噴出口834より噴出し、噴出開口844を通過して使用者の局部を洗浄する。お尻洗浄の動作は洗浄停止の操作が行われる時点P11まで継続される。
熱交換器700の駆動中は、制御部130は入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知データにより、洗浄水を設定された温度に制御する。
水ポンプ516の駆動が継続されることにより、サブタンク600の水位は低下し、水位検知センサ620が下限水位を検知した時点P7で制御部130は止水電磁弁514に通電を開始し、水位検知センサ620が上限水位を検知する時点P8まで通電を継続する。
上限水位を検知した時点P8で、制御部130は止水電磁弁514の通電を停止するとともに時間計測を開始し、次に水位検知センサ620が下限水位を検知する時点P9までの経過時間を計測する。下限水位を検知した時点P9で、制御部130は計測した経過時間と上限水位から下限水位までの水量(65cc)とを演算することにより流量を算出する。演算終了時点P10で、洗浄強さ毎に設定された流量と差がある場合は、水ポンプ516の出力を調整し、洗浄水の流量を補正する。
操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄停止の操作が行われた時点P11で、水ポンプ516と熱交換器700の通電は停止されるとともに、ノズル装置800が駆動部860の駆動が開始され、ノズル部820がお尻洗浄位置から収納位置へと後退する。
ノズル部820が収納位置に後退した時点P12でノズル装置800の駆動部860の駆動が停止するとともに、水ポンプ516と熱交換器700が再度駆動され、ノズル部820をクリーニングする後洗浄が開始され、所定時間経過した時点P13で水ポンプ516と熱交換器700の駆動が停止され、後洗浄が終了する。
ノズル部820の後洗浄が終了した時点P13で止水電磁弁514が再度通電され、サブタンク600に洗浄水が供給され、上限水位が検知された時点P14で止水電磁弁514の通電が停止され、お尻洗浄の一連の制御が終了し、サブタンク600が満水の状態で洗浄手段は待機状態となる。
図32は初期使用を以前に実施した待機状態にある衛生洗浄装置で、洗浄動作を実施した場合の通常使用時のタイムチャートを示すものである。
図31に示す初期使用の場合と大きく異なるのは、洗浄操作がなされた時点P20でサブタンク600は既に満水状態である点と、制御部130が初期使用を実施したことを記憶している点である。
図32に示すように、サブタンク600が満水状態の待機状態で、操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)が操作された時点P20において、制御部130は、止水電磁弁514の通電を開始して洗浄水の供給を開始するとともに、初期操作の制御を既に実施した記憶データに基づき熱交換器700の通電を同時に開始する。また、ノズル装置800の前洗浄動作を同時に開始する。また、水位検知センサ620の駆動を同時に開始する。
前述した初期使用の場合とは、洗浄操作をした時点から熱交換器700の通電開始の時点までの制御が異なっており、ノズル装置800の駆動が開始される時点P5以降の制御および作用動作は同様である。
上記のように、本実施の形態における衛生洗浄装置は、洗浄手段の構成において、流量を検知する専用の流量センサを別途設けることなく、サブタンクに設けた水位検知センサ
により水位の変化を検知し、流量を演算により検出する構成としたことにより、洗浄手段の構成を簡素化することができるとともに、コスト削減を図ることができる。
また、水位検知における電極間の出力電圧変化を判定する閾値を温度により補正することにより、水位検知と流量検知の精度を向上することができるとともに、広い範囲に導電率の異なる水を衛生洗浄装置の洗浄水として使用することが可能となることにより、衛生洗浄装置の使用範囲と使い勝手を向上することができる。
また、衛生洗浄装置の初期使用時において、サブタンクの満水状態検知後に所定時間通水を継続するとともに、水ポンプ駆動後に水位検知センサが上限水位の検知が解消された後に熱交換器の通電を開始することにより熱交換器の空焚きを防止することができ、一般的に実施されている流量センサを使用した空焚きを防止の手段より、シンプルな構成で低コストで安全性と信頼性を確保することができる。
(実施の形態2)
図33は実施の形態2におけるサブタンクの外観を示す斜視図を示すものであり、図34はサブタンクの横方向の断面図を示し、図35はサブタンクの前後方向の断面図を示し、図36はサブタンクの満水状態における天面部の模式図を示すものである。
本実施の形態が実施の形態1と異なっている点は、サブタンクの構成であり、衛生洗浄装置の他の構成は実施の形態1と同様の構成であり説明は省略する。なお、以下の説明において実施の形態1と同一符号を付したものは同一の構成である。
図33に示すように、サブタンク650は樹脂材料により成型されたタンク本体660と、タンク本体660に貯溜された洗浄水の水位を検知する水位検知センサ620と、タンク本体660内に供給される洗浄水の温度を検知するサーミスタからなる入水温度センサ630とで構成されている。
タンク本体660はタンクの前壁、両側壁、底面、天面を構成する前部タンク661と、タンクの後壁を構成する後部タンク662と、の2個の部材で構成されている。タンク本体660の全体的な形状は、実施の形態1と同様に前壁、後壁、両側壁、底面、天面からなる複数の平面で形成されており、平面視形状は略四角形である。前壁は途中から後退する傾斜部を備え、側面視形状は下部より上部が細くなった略台形形状に形成されており、タンク本体660の上部の断面積は下部より小さい断面積となっている。
タンク本体660の一方の側壁下部には入水口601が、タンク本体660後壁下部には出水口602が設けられており、タンク本体660の側壁上部にはタンク本体660の内部と外部を連通する大気開放口603が設けられている。大気開放口603を設けることにより、タンク本体660内に溜まった空気を外部に放出するとともに、タンク本体660の内部圧力を常時大気圧に維持することができる。
サブタンク650の内部が常時大気圧に維持されることにより、サブタンク650の下流から水ポンプ516の吸水口516dまでの流路も大気圧に維持されるため、水ポンプ516は水圧変動の影響を受けずに吸水することができるため、安定したポンプ機能を発揮することができる。
タンク本体660の入水口601の内部には、入水口601に対抗する位置に底面より起立する仕切壁663と仕切壁663を覆うように側壁より略L字状に延出した整流リブ664で構成された整流部665が形成されている。
入水口601より流入した洗浄水は、整流部665の下部に流入し、整流部665内を上昇し、仕切壁663と整流リブ664との間隙を通過してタンク本体660内に流入する。
この間、入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで流れが乱れている場合でも、洗浄水は整流部665内で流れが整流化され、タンク本体660内には整流化された洗浄水が流入して貯留される。洗浄水に含まれる空気は貯留中に分離され、大気開放口603よりタンク本体660外に放出される
水位検知センサ620は、共通の電極となるコモン電極671と、水位毎に設置された複数の水位電極672で構成されており、本実施の形態1と同様に、1個のコモン電極671と2個の水位電極672で構成されている。コモン電極671と水位電極672はいずれもステンレス材料で形成されている。
タンク本体660の前壁下部の内面にはコモン電極671が配置されており、タンク本体660の天面の内面には水位電極672が配置されている。水位電極672は天面より垂下して設置されており、電極の長さが短く、先端が高い位置に配置された上限電極673と、電極の長さが長く、先端が低い位置に配置された下限電極674で構成されている。コモン電極671は下限電極674の先端より低い位置に設置されており、コモン電極671は通常の使用状態では常に浸水状態となっている。
図34、図36に示すように、タンク本体660の天面には2枚の垂下するリブ666により、上方に凹陥した2個の凹陥部667が形成されている。タンク本体660内の水位が上昇し、リブ666の下端より上昇した場合、凹陥部667は水面651により密閉されることにより、空気が貯溜された空間が形成され、サブタンク650の満水状態においても凹陥部667の少なくとも一部には洗浄水で浸水されない密閉空間668が形成される。
上限電極673と下限電極674は、それぞれ凹陥部667の最も高い位置である天面に設置されており、上限電極673と下限電極674の基部は、水位が上昇した場合に形成される密閉空間668内に配置されている。
上限電極673と下限電極674が密閉空間668内に配置されたことにより、上限電極673と下限電極674の基部は常に洗浄水と直接接触しない構成であり、上限電極673と下限電極674の先端が水面651より離間した状態においては、上限電極673と下限電極674の基部とタンク本体660の内面に付着した残水とは、確実に離間した状態となり、タンク本体660の内面に付着した残水を貯溜水として誤検知することを防止する効果を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、タンク本体の天面に凹陥部を2個設け、2個の密閉空間が形成される構成とし、上限電極と下限電極を個別の密閉空間に設置したが、この構成に限るものではなく、1個の密閉空間を形成し、上限電極と下限電極を同一の密閉空間に設置してもよい。
また、本実施の形態においては、コモン電極をタンク本体の前壁に設置し、2個の水位電極のみを天面の密閉空間に設置したが、これに限るものではなく、全ての電極を天面の密閉空間に設置した構成としてもよく、このような構成とした場合は、残水による誤検知をより確実に防止することができる。