JP2015089562A - レーザ溶接方法、それを用いた溶接継手及び溶接構造物 - Google Patents

レーザ溶接方法、それを用いた溶接継手及び溶接構造物 Download PDF

Info

Publication number
JP2015089562A
JP2015089562A JP2013230380A JP2013230380A JP2015089562A JP 2015089562 A JP2015089562 A JP 2015089562A JP 2013230380 A JP2013230380 A JP 2013230380A JP 2013230380 A JP2013230380 A JP 2013230380A JP 2015089562 A JP2015089562 A JP 2015089562A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
groove
welded
weld bead
laser
welding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013230380A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6215655B2 (ja
Inventor
旭東 張
Xudong Zhang
旭東 張
栄次 芦田
Eiji Ashida
栄次 芦田
湘 多羅沢
Sho Tarasawa
湘 多羅沢
鈴木 国彦
Kunihiko Suzuki
国彦 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Original Assignee
Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi GE Nuclear Energy Ltd filed Critical Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Priority to JP2013230380A priority Critical patent/JP6215655B2/ja
Publication of JP2015089562A publication Critical patent/JP2015089562A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6215655B2 publication Critical patent/JP6215655B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】開先の壁部と溶接ビードとの境界に生じる融合不良が低減したレーザ溶接方法、それを用いた溶接継手及び溶接構造物を提供する。
【解決手段】被溶接材1A、1Bに設けられた開先に溶加材を送給しつつレーザ光を照射し、被溶接材及び送給される溶加材を溶融させて、開先を積層溶接するレーザ溶接方法において、開先に照射されるレーザ光の照射位置を、開先の幅方向に周期的に往復走査させつつ溶接方向に進行させ、往復走査の折り返し位置においては、往復走査の停止時間T1が、往復走査の半周期T2に対して、0.1×T2≦T1≦T2を満たすように開先の幅方向の往復走査を停止させて溶接を行う。得られる溶接継手100は、前層の溶接ビード50の表面幅をa、次層の溶接ビード5の溶込み幅をbとしたとき、0.8a≦bを満たし、次層の溶接ビード5の表面幅をc、次層の溶接ビード5の溶込み深さをdとしたとき、c≦dを満たす。
【選択図】図8

Description

本発明は、レーザ溶接方法、それを用いた溶接継手及び溶接構造物に関する。
レーザ溶接は、熱源として用いるレーザ光のエネルギ密度が高いため、頻用されているアーク溶接等と比較して、深い溶込みや高速の施工を可能とする溶接方法である。また、入熱量が小さいため、歪みが少なく高精度な溶接継手の作製に適した溶接方法である。
レーザ溶接の用途は多岐に渡り、例えば、原子力発電施設に備えられる炉内構造物等のような厚板の接合にも利用されている。このような厚板溶接においては、狭開先を設けた被溶接材を突合わせ、溶接ワイヤ等の溶加材を、最大出力が数kWから十数kWに及ぶレーザ光で溶融させることによって開先を積層溶接する多層盛レーザ溶接が行われている。
厚板を接合する多層盛レーザ溶接では、開先の壁部とレーザ光との干渉を避けるために、レーザ光の集光角及びスポット径に応じて、開先上部付近にはある程度の開先幅が必要となる。そのため、積層を繰り返し、開先上部付近の溶接パスに至ると、幅広の開先に起因して、開先の壁部と溶接ビードとの境界面で融合不良が生じ易いことが知られている。そこで、このような、開先の壁部と溶接ビードとの境界面で生じる融合不良を抑制する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、狭い開先内に固形溶加材を送給しながらレーザ光を溶接方向に走査して、前記開先底部に形成される溶融プールで固形溶加材と被溶接材を溶融させて溶接を行うレーザ狭開先溶接方法において、前記開先底部におけるレーザ光照射量を周期的に変化させ、固形溶加材の先端位置を検出し、固形溶加材先端が開先中央に位置するように前記レーザ光照射ヘッドの動作と独立して固形溶加材の位置調整を行い、前記開先底部における前記レーザ光の照射位置を、開先底部と平行に所定振幅で周期的に揺動させるレーザ狭開先溶接方法が開示されている(特許文献1の請求項9参照)。
特開2011−5533号公報
厚板の被溶接材を積層溶接する多層盛レーザ溶接においては、一般に、初層の溶接パスでは、レーザ光の焦点位置を開先底部付近に設定し、溶加材の送給量は抑えて深溶込み型(キーホール型)レーザ溶接を行う。これに対し、2層目以降の溶接パスにおいては、溶加材の送給量を増やし、1パスあたりの積層高さを高くして、溶接効率の向上を図ることが多い。そのため、2層目以降の溶接パスにおいても、前層の溶接ビードを溶融させるために、高エネルギ密度のレーザ光を照射して深溶込み型レーザ溶接を行うのが一般的である。
一般に、深溶込み型レーザ溶接によって積層される溶接ビードの断面形状は、前層に溶け込んでいる下部側の溶込み幅が狭い一方で、上部側の幅が広くなる傾向があり、このように、下部側の溶込み幅が狭い溶接ビードが形成されると、開先の壁部と溶接ビードとの境界に、溶着金属の密度が低い領域が生じて、融合不良が生じ易くなる。特許文献1に開示される技術によれば、積層溶接の2層目以降の溶接パスにおいて、積層される溶接ビードの下部側の溶込み幅を一定程度拡幅することができると考えられる。
しかしながら、特許文献1に開示される技術のように、レーザ光の照射位置を単に周期的に揺動させる場合、揺動の変位が最大となる折り返し位置において、開先の壁部や溶加材に対する入熱が減少するため、開先の壁部と溶接ビードとの境界に生じる融合不良を十分には抑制することができない。
したがって、本発明の課題は、開先の壁部と溶接ビードとの境界に生じる融合不良を低減したレーザ溶接方法、それを用いた溶接継手及び溶接構造物を提供することにある。
前記課題を解決するために本発明に係るレーザ溶接方法は、被溶接材に設けられた開先に溶加材を送給しつつレーザ光を照射し、前記被溶接材及び送給される前記溶加材を溶融させて、前記開先を積層溶接するレーザ溶接方法であって、前記開先に照射される前記レーザ光の照射位置を、前記開先の幅方向に周期的に往復走査させつつ溶接方向に進行させ、前記往復走査の折り返し位置においては、前記往復走査の停止時間T1が、前記往復走査の半周期T2に対して、以下の数式1、0.1×T2≦T1≦T2・・・(数式1)を満たすように前記開先の幅方向の往復走査を停止させて溶接することを特徴とする。
また、本発明に係る溶接継手は、開先が設けられた複数の被溶接材が、前記開先に形成された溶接部を介して突合わせ溶接されてなる溶接継手であって、前記溶接部は、開先に形成された前層の溶接ビードと、前記前層の溶接部に積層された次層の溶接ビードを含んでなり、前記前層の溶接ビードの表面幅をa、前記次層の溶接ビードの溶込み幅をbとしたとき、前層の溶接ビードの表面幅aと次層の溶接ビードの溶込み幅bとが、次の数式2、0.8a≦b・・・(数式2)を満たし、前記次層の溶接ビードの表面幅をc、前記次層の溶接ビードの溶込み深さをdとしたとき、次層の溶接ビードの表面幅cと次層の溶接ビードの溶込み深さdとが、次の数式3、c≦d・・・(数式3)を満たすことを特徴とする。
また、本発明に係る溶接構造物は、前記の溶接継手を備えることを特徴とする。
本発明によれば、開先の壁部と溶接ビードとの境界に生じる融合不良を低減したレーザ溶接方法、それを用いた溶接継手及び溶接構造物を提供することができる。
多層盛レーザ溶接方法の一例を表す概要図である。 被溶接材に設けられた開先の一例を表す断面図である。 比較例1に係るレーザ溶接方法による溶接継手の一例を表す概略断面図である。 比較例2に係るレーザ溶接方法における、レーザ光の走査軌跡の一例を表す平面図である。 比較例2に係るレーザ溶接方法による溶接継手の一例を表す概略断面図である。 第1実施形態に係るレーザ溶接方法における、レーザ光の走査軌跡の一例を表す平面図である。 第2実施形態に係るレーザ溶接方法における、レーザ光の走査軌跡の一例を表す平面図である。 本実施形態に係る溶接継手の形状を表す概略断面図である。 第3実施形態に係るレーザ溶接方法の一例を表す概要図である。
以下に本発明に係るレーザ溶接方法、それを用いた溶接継手及び溶接構造物について詳細に説明する。
はじめに、比較例の多層盛レーザ溶接方法について説明する。
図1は、多層盛レーザ溶接方法の一例を表す概要図である。
多層盛レーザ溶接は、図1に示すように、溶接によって接合されるべき複数の被溶接材1A,1Bに設けられた開先2を積層溶接するレーザ溶接方法である。このレーザ溶接方法では、開先2に、溶接ワイヤ等の溶加材3を送給しつつレーザ光4を照射し、被溶接材1A,1B及び送給される溶加材3をレーザ光4により加熱溶融させることによって、溶融池6を形成しながら、開先2に単層の溶接ビード5を形成し、形成された溶接ビード5に次層の溶接ビード5を積層する溶接パスを順次繰り返すことで、被溶接材1A,1Bに多層盛レーザ溶接を施工する。被溶接材1A,1Bとしては、薄板や厚さ3.2mm以上25mm以下の中板のみならず、厚さ25mm以上の厚板を適用することができ、被溶接材1A,1Bの材質は、炭素鋼、クロム鋼等の各種鉄鋼やその他金属類等、任意の素材を適用することが可能となっている。溶接される被溶接材の個数は、通常、2個を突合わせるが、被溶接材を接合可能な配置を採れる限り3個以上とすることも妨げられない。
多層盛レーザ溶接は、図1に示すような機器構成を備えるレーザ溶接装置を用いて行われる。このレーザ溶接装置は、レーザ光4を照射するレーザ照射部7と、溶加材3を送給する溶加材送給手段8と、シールドガスを供給するガス供給手段9とを備えている。また、被溶接材1A,1Bとレーザ照射手段7とを相対移動させるための不図示の可動手段と、開先2を検出してレーザ照射部7の位置制御を行う不図示の位置検出センサと、これら機器を制御するPC等の制御装置が備えられている。このような機器構成は、一般的な自動レーザ溶接装置に備えられているものである。
レーザ照射部7は、集光レンズ等から構成される集光光学系を備え、光ファイバ7aを介して、不図示のレーザ発振器と接続されている。レーザ発振器は、COレーザ、YAGレーザ、半導体レーザ、ファイバーレーザ、ディスクレーザ等である。一般には、COレーザのように発振波長が長い場合は、レーザ発振器が大型化し、プラズマの発生によりレーザの吸収や散乱が生じて、溶接欠陥が発生し易くなるため、光ファイバ伝送が可能な波長1μm程度のレーザを発振する小型のYAGレーザ、半導体レーザ、ファイバーレーザ、ディスクレーザ等が備えられる。
溶加材送給手段は、溶加材3を開先2内に案内する案内部と、溶加材3を送給する送給部を備えている。案内部は、送給される溶加材3の先端部の位置が、溶接を施工する間、開先2の幅方向の中央に一致するように支持する。また、先端部の深さについては、レーザ光4の焦点の高さに対して一定の距離に維持される。そして、溶加材3は、溶接速度に応じた所定速度で、溶接方向前方から溶融池6に送給され、レーザ光4の照射をうける。溶加材3は、溶接ワイヤ等の固形の溶接材料であり、被溶接材と略同組成の材料とすることが多い。
ガス供給手段9は、流量が制御されたシールドガスを溶融池6の近傍に噴射する装置であり、シールドガスを貯留するガスタンク等と接続されている。シールドガスが噴射されることによって、レーザ光4の照射により生じた溶融金属と空気との接触が防止され、溶接不良が抑制されるようになっている。シールドガスは、例えば、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスからなる。
可動手段は、被溶接材1A,1Bとレーザ照射手段7とを、水平方向の前後左右及び垂直方向の上下に相対移動させることが可能な可動装置により構成される。このような可動装置としては、例えば、レーザ照射部7を、治具に載置されている被溶接材1A,1Bに対して一次元方向に移動可能とするレールを三次元方向に組み合わせたものや、水平方向及び垂直方向の全方向に移動可能とする多関節アームや、被溶接材1A,1Bを、静止しているレーザ照射部7に対して、水平方向及び垂直方向の全方向に移動可能とするコンベヤ等で構成される。
位置検出センサは、開先2に光を照射する投光部と、開先2からの反射光を受光する受光部とを備えており、反射光に関する情報は処理装置に伝送され、画像解析処理されて、開先2の位置情報が取得される。処理装置は、開先2の位置情報に基づいて、レーザ照射部7、可動手段等を位置制御を行う。
このようなレーザ溶接装置では、図1に示すように、不図示のレーザ発振器から発振され、増幅されたレーザは、光ファイバ7aを介してレーザ照射部7に伝送され、レーザ照射部7において、集光光学系を経て所望のスポット径となるように集光される。続いて、集光されたレーザ光4は、開先2内に照射され、被溶接材1A,1B及び送給される溶加材3を溶融させて溶融金属からなる溶融池6を形成しながら、溶接方向に開先2内を走査していく。溶融池6では、レーザ光4の走査を終えた側から次第に溶融金属が凝固し、溶接ビード5が形成されていく。
多層盛レーザ溶接では、このような溶接パスを、例えば、開先2における溶接方向の一端から他端まで行って、単層の溶接ビード5を形成する。そして、形成されている前層の溶接ビード5の上に、次層の溶接ビード5を積層する工程を順次繰り返すことによって多層の溶接ビード5を形成し、複数の被溶接材同士の溶着が行われる。一般的な多層盛レーザ溶接では、レーザ光4は、所定の走査速度で、開先溝に平行な方向に直線的に走査される。レーザ光4の照射位置及び溶加材3の先端部の中心位置(先端部位置)は、例えば、開先2の幅方向の中央に固定され、深さは、積層される溶接ビード5の高さに応じて、溶接パス毎に変更される。なお、レーザ光4の照射方向は、必ずしも図1に示すように鉛直下方向に限られず、上方向、横方向又は傾斜方向とすることも妨げられない。
図2は、被溶接材に設けられた開先の一例を表す断面図である。
多層盛レーザ溶接では、図2に示すように、複数の被溶接材1A,1Bに溝状の開先2をあらかじめ設けて積層溶接を行う。被溶接材としては、一般に、板厚が略等しい2つの被溶接材1A,1Bを使用し、被溶接材1A及び被溶接材1Bの表面を密着させて、被溶接材1Aと被溶接材1Bとの間にルート面10cが形成されるように突合わせてレーザ溶接装置に固定する。ルート面10cの長さLは、片側溶接で貫通溶融できる程度の長さとされ、例えば、8mm程度となるように上面10f側に開先2が設けられる。また、開先2は、逆台形の溝からなる形状となるように、傾斜した被溶接材1Aの壁部10a及び被溶接材1Bの壁部10bが略対称に設けられる。開先角度θは、例えば、4°程度として所謂狭開先とされる。なお、開先底面は曲率を有しているが、開先底面の延長面と壁部10a,10bそれぞれの延長面との交点間には、略水平面が形成され、その距離(開先底部幅W)は、例えば、3mm程度とされる。
図3は、比較例1に係るレーザ溶接方法による溶接継手の一例を表す概略断面図である。
図3では、一般的な多層盛レーザ溶接(比較例1に係るレーザ溶接方法)を用いて製造される溶接継手の溶接方向の断面が表わされている。2つの被溶接材1A,1Bの間に設けられた開先2には、I形の片側積層溶接が施工され、開先2には、初層の溶接ビード50の上方に、次層の溶接ビード5が積層されて、溶接パスは第2層まで行われた状態となっている。
ここで、開先2に形成された初層(前層)の溶接ビード50の表面幅をa、次層の溶接ビード5の溶込み幅をb、次層の溶接ビード5の表面幅をc、次層の溶接ビード5の溶込み深さをdとすると、比較例1に係るレーザ溶接方法では、レーザ光4の照射位置を開先2の幅方向の中央に固定して行うため、図3に示すように、積層された溶接ビード5の断面形状は、初層溶接ビード50に溶け込んでいる下部側の溶込み幅bが狭い一方で、上部側の表面幅cが広くなるように溶接ビード5が積層されている。なお、溶接ビードの表面幅(a,c)は、一溶接ビードの上面の輪郭線と開先壁部の輪郭線との交点間の距離、溶接ビードの溶込み幅(b)は、前層の溶接ビードの上面の輪郭線と、その上に積層された次層の溶接ビードの側面の輪郭線との交点間の距離、溶接ビードの溶込み深さ(d)は、溶接ビードの輪郭線と開先の中心軸線との交点間の距離として定義される。これらの距離は、輪郭線が溶接部断面から確認できない箇所がある場合は、直近の輪郭を直線的に結ぶことで特定することができる。
図3に示すような溶接ビード5が形成される理由は、被溶接材1A,1Bがレーザ照射を受けて生じた金属蒸気が、キーホール内から溶融池の上方に噴出することで、溶融池の上部付近の被溶接材1A,1Bに熱伝導が及んで、溶融池の上部側が拡幅されたり、キーホール内から溶融池の上方に噴出する金属蒸気の圧力が、キーホール周辺の溶融池を外側に押し出す流れが生まれたりすることにある。比較例1に係るレーザ溶接方法では、このような下部側の溶込み幅bが狭い溶接ビード5が形成されたために、図3に示すように、開先の壁部10a,10bと溶接ビード5との間に、溶着金属が疎な融合不良51が生じている。
次に、比較例の多層盛レーザ溶接方法の他の形態(比較例2に係るレーザ溶接方法)について説明する。
図4は、比較例2に係るレーザ溶接方法における、レーザ光の走査軌跡の一例を表す平面図である。
図4では、開先2内に照射されるレーザ光4の走査軌跡41を、開先2の上方から視た様子が表わされている。比較例2に係るレーザ溶接方法は、溶接ビードを積層する第2層以降の溶接パスにおいて、開先2に照射されるレーザ光4の照射位置を、開先2の幅方向に周期的に揺動させつつ溶接方向に進行させて溶接ビードを形成していく方法であって、前記の特許文献1に開示されている方法に準じて行われる方法に関する。
図4に示すように、比較例2に係るレーザ溶接方法では、レーザ光4の走査軌跡41が、溶加材3の先端部位置(図4に破線で透視断面を示す。)の外径と略等しい振幅になるように揺動されつつ、溶接方向に進行している。そのため、レーザ光4の走査軌跡41は、つづら折れ状の軌跡を描くように開先2内を走査している。なお、比較例2に係るレーザ溶接方法では、溶加材3の先端部位置は、開先2の幅方向の中央に一致する状態で、溶接方向に進行するように制御されている(図4に破線で移動後の先端部位置を示している。)。
図5は、比較例2に係るレーザ溶接方法による溶接継手の一例を表す概略断面図である。
図5では、比較例1に係るレーザ溶接方法を用いて製造される溶接継手の溶接方向の断面が表わされている。2つの被溶接材1A,1Bの間に設けられた開先2には、初層の溶接ビード50の上方に、次層の溶接ビード5が積層されて、溶接パスは第2層まで行われた状態となっている。
比較例2に係るレーザ溶接方法では、レーザ光4の走査軌跡41が、つづら折れ状の軌跡を描くように開先2内を走査しているため、図5に示すように、積層された溶接ビード5の断面形状は、初層溶接ビード50に溶け込んでいる下部側の溶込み幅bが比較例1よりも広くなっている。しかしながら、依然として、下部側の溶込み幅bは十分な寸法になっておらず、初層の溶接ビード50の表面幅aと次層の溶接ビード5の溶込み幅bとは、a>bの関係となっている。そのため、図5に示すように、開先2の壁部10a,10bと溶接ビード5との間に、溶着金属が疎な融合不良51が生じている。
また、比較例2に係るレーザ溶接方法では、図4に示すように、溶加材3の先端部位置は、開先2の幅方向の中央に一致する状態に維持されているため、レーザ光4の走査軌跡41の振幅は、溶加材3の半径以下に抑えられている。レーザ光4が溶加材3に直接照射されなくなると、溶加材3の一部が未溶融のまま溶融池に送給されて、溶着金属の内部に未溶融の溶加材3が混入し、溶接欠陥を生じるおそれがあるためである。また、レーザ光4の往復走査の変位が、溶加材3の半径を超えて過大になると、レーザ光4が直接開先2の壁部10a,10bに照射されて開先2が損壊するため、この場合にも溶接欠陥に至る場合がある。比較例2に係るレーザ溶接方法では、このような制約があるために、溶加材3の送給量は、通常、抑えざるを得ない。
次に、本発明の第1実施形態に係るレーザ溶接方法について説明する。
第1実施形態に係るレーザ溶接方法は、開先に照射されるレーザ光の照射位置を、開先の幅方向に周期的に往復走査させつつ溶接方向に進行させ、被溶接材及び送給される溶加材を加熱溶融させる方法である。そして、この往復走査の折り返し位置では、レーザ光による開先の幅方向の往復走査が所定時間停止するように制御し、比較例1や比較例2のように、開先の壁部10a,10bと溶接ビード5との間に生じる融合不良51を低減するものである。なお、第1実施形態に係るレーザ溶接方法は、前記のレーザ溶接装置と同等の機器構成を備えるレーザ溶接装置を用いて行うことができる。
図6は、第1実施形態に係るレーザ溶接方法における、レーザ光の走査軌跡の一例を表す平面図である。
図6では、開先2内に照射されるレーザ光4の走査軌跡42を、開先2の上方から視た様子が表わされている。第1実施形態に係るレーザ溶接方法では、溶接ビードを積層する第2層以降の溶接パスにおいて、開先2に照射されるレーザ光4の照射位置を、開先2の幅方向に間欠的且つ周期的に往復走査させつつ溶接方向に進行させて溶接ビードを形成する。また、このとき、往復走査の折り返し位置においては、往復走査を所定時間停止する時間(停止時間T1)を設け、レーザ光4の照射位置が、開先2の壁部10a,10bから離反しない区間が生じるように走査している。なお、本明細書において、往復走査とは、レーザ光4の照射位置が、開先2の幅方向中央を挟んで一方の開先壁部側から他方の開先壁部側まで移動する動作を、幅方向について繰り返すことを意味している。また、レーザ光4の照射位置は、レーザ光4の光軸の水平面(開先底面と平行な面)上の位置を意味している。
レーザ光4の照射位置の走査は、可動手段によるレーザ照射手段7の水平面上の移動を位置制御することによって行われている。レーザ光4の照射位置の起点は、例えば、図6に示すように、開先2の幅方向の中央に設定し、レーザ光4の照射位置は、溶接方向について、一定の溶接速度で進行するように制御する。なお、溶接速度は、溶接精度、生産性等を勘案した上で、レーザ出力等のその他溶接条件との調整に基づいてあらかじめ設定され、例えば、0.1m/分〜1.0m/分とされる。
レーザ光4の照射位置は、開先2の幅方向については、開先2の幅方向の中央を中心として周期的に往復走査するように制御されている。レーザ光4の照射位置の幅方向の振幅は、開先2の幅方向の中央から、開先2に送給される溶加材3の半径と一致する距離に設定され、溶接パスの間は一定に維持されている。
レーザ光4の照射位置の往復走査は、間欠的であり、開先2の幅方向の中央からの変位が最大となる往復走査の折り返し位置においては、所定時間(停止時間T1)に亘って中断される。このように往復走査の折り返し位置において、幅方向の往復走査を中断し、レーザ光4の幅方向の照射位置が、開先2の壁部10a,10bから離反しない区間を有する走査軌跡42を描くように制御することによって、開先2の壁部10a,10bに対する入熱が維持されている。
停止時間(T1)は、開先2の壁部10a側及び壁部10b側の両側において、同等の時間となるように、溶接速度に基づいてあらかじめ設定されている。すなわち、一定の溶接速度に対して、レーザ光4の照射位置の幅方向の振幅を設定することによって、レーザ光4の走査周期が定められ、この走査周期を、停止時間(T1)及び往復走査の半周期(T2)とに配分することによって、停止時間(T1)を設定すると共に、往復走査の幅方向の速度が設定されている。なお、本明細書において、走査周期は、往復走査する時間と停止時間とを合算した時間を意味し、往復走査の半周期(T2)は、レーザ光4の照射位置が、開先2の壁部の一方に最も近接する位置から、開先2の壁部の他方に最も近接する位置まで移動するのに要する時間を意味している。
具体的には、走査周期は、0.05秒から2秒の範囲、すなわち往復走査の周波数が0.5Hzから20Hzの範囲である。このような範囲に設定すると、形成される溶接ビードの形状が安定し、スパッタの発生が抑制されて、溶接欠陥や品質不良が抑えられるためである。
停止時間(T1)と、往復走査の半周期(T2)とは、次の数式1の関係を満たすように設定されている。
0.1×T2≦T1≦T2・・・(数式1)
停止時間(T1)が、往復走査の半周期(T2)の10%未満の範囲では、開先2の壁部側における停止時間が短く、また、停止時間(T1)が、往復走査の半周期(T2)を超える範囲では、開先2の幅方向の中央側における走査速度が過大になるためである。
図6に示すように、第1実施形態に係るレーザ溶接方法では、レーザ光4の走査軌跡42が、溶加材3の先端部(図6に破線で透視断面を示す。)の外径と略等しい振幅になるように往復走査されつつ、溶接方向に進行している。そのため、レーザ光4の走査軌跡42は、台形波の軌跡を描くように開先2内を走査し、開先2内を走査する間に被溶接材1A,1Bや溶加材3に入熱を与えている。なお、第1実施形態に係るレーザ溶接方法では、溶加材3の先端部位置は、開先2の幅方向の中央に一致する状態で、溶接方向に進行するように制御されている(図6に破線で移動後の先端部位置を示している。)。
第1実施形態に係るレーザ溶接方法では、レーザ出力、溶接速度(溶接方向における被溶接材とレーザ照射位置との相対移動の速度)、焦点位置(レーザ光の焦点の位置と溶接ビード表面との距離)、溶加材送給速度等の溶接条件については、事前に行う前試験において溶接不良や溶接精度を確認しつつ適切なパラメータを決定し、あらかじめレーザ溶接装置に設定すればよい。なお、溶接不良や溶接精度の確認は、前試験で得られた溶接継手の断面観察、X線透過検査、超音波探傷試験等により行うことが可能である。
以上の第1実施形態に係るレーザ溶接方法によれば、レーザ光4の照射が、開先2の壁部10a,10bに近接した位置で、幅方向の往復走査を所定の停止時間に亘って中断することにより、開先2の壁部10a,10bの加熱時間が延長されるため、被溶接材1A,1Bに対する入熱量を増加させることができる。そして、開先2の壁部10a,10bと溶接ビード5との境界に生じる融合不良51が低減した溶接継手を製造することができる。
次に、第2実施形態に係るレーザ溶接方法について説明する。
前記の第1実施形態に係るレーザ溶接方法においては、送給される溶加材3の先端部は、開先2の幅方向の中央に固定されている。これに対して、第2実施形態に係るレーザ溶接方法では、溶加材3の位置を、開先2の幅方向に周期的に往復移動させつつ溶接方向に進行させることによって、溶加材3の位置とレーザ光4の照射位置とを一致させる。
第2実施形態に係るレーザ溶接方法は、可動装置を有する溶加材送給手段を備えたレーザ溶接装置を用いて行うことができる。この可動装置は、溶加材3を開先2内に案内する案内部が、水平方向の全方向に相対移動させることを可能としている。このレーザ溶接装置が備えるその他の機器構成は、第1実施形態に係るレーザ溶接方法に用いられるレーザ溶接装置と同等である。
図7は、第2実施形態に係るレーザ溶接方法における、レーザ光の走査軌跡の一例を表す平面図である。
第2実施形態に係るレーザ溶接方法では、第1実施形態と同様にして、溶接ビードを積層する第2層以降の溶接パスにおいて、開先2に照射されるレーザ光4の照射位置を、開先2の幅方向に間欠的且つ周期的に往復走査させつつ溶接方向に進行させて溶接ビードを形成する。また、このとき、往復走査の折り返し位置においては、往復走査を所定時間停止する時間(停止時間T1)を設け、レーザ光4の照射位置が、開先2の壁部10a,10bから離反しない区間が生じるように走査する。
第2実施形態に係るレーザ溶接方法では、レーザ光4の照射位置の走査は、第1実施形態と同様にして、可動手段によるレーザ照射手段7の水平面上の移動を位置制御することによって行われ、レーザ光4の照射位置は、開先2の幅方向については、開先2の幅方向の中央を中心として周期的に揺動するように制御されている。また、レーザ光4の往復走査は、停止時間(T1)と半周期(T2)との関係を、第1実施形態と同様の条件としている。
これに対し、レーザ光4の照射位置の幅方向の振幅は、開先2の幅の略半分より僅かに小さい距離とし、レーザ光4の照射位置が幅方向に最大変位した場合に、開先2の壁部10a,10bに近接するように設定されている。また、溶加材3の位置は、円形の断面形状を有する溶加材3の先端部位置を検知して位置制御し、溶加材3の先端部が、溶接方向については一定の溶接速度で進行するように制御している。すなわち、溶加材3の先端部位置の溶接方向の変位は、レーザ光4の照射位置と略同期するように位置制御されている。また、溶加材3の先端部位置の幅方向の変位は、レーザ光4の照射位置の幅方向の変位から溶加材3の半径を減算した値となるように位置制御されている。
なお、レーザ光4の照射位置の幅方向の振幅は、開先2の幅の半分の長さから、溶加材3の半径を減算した長さより僅かに小さくなるように設定してもよい。すなわち、溶加材3の往復移動の振幅を、溶加材3が開先2の壁部10a,10bに衝突しない範囲で最大となるようにあらかじめ設定し、レーザ光4の照射位置の幅方向の変位を、溶加材3の先端部位置の幅方向の変位に溶加材3の半径を加算した値となるように位置制御する。あるいは、溶加材3の先端部位置とレーザ光4の照射位置とを、略一致させてもよい。この場合、レーザ光4の走査軌跡43と溶加材3の先端部位置の移動軌跡とは、略同一の軌跡となる。
図7に示すように、第2実施形態に係るレーザ溶接方法では、レーザ光4の走査軌跡43が、開先2の幅方向の略全域に及んでおり、停止時間におけるレーザ光4の照射位置は、第1実施形態と比較して、開先2の壁部10a,10bに更に近接している。また、溶加材3の先端部位置(先端部の中心位置)は、レーザ光4の走査軌跡43とほぼ同周期で開先2の幅方向に往復移動し、溶加材3の先端部(図7に破線で透視断面を示す。)は、常に、レーザ光4の照射位置の範囲内にあって、レーザ光の直接照射を受けるようになっている。
以上の第2実施形態に係るレーザ溶接方法によれば、開先2に送給される溶加材3が、常にレーザ光4の直接照射を受けることになり、溶加材3の溶融が確実になされるため、溶加材3の一部が未溶融の状態のまま、溶融ビード5内に残留することが無い。そして、未溶融の溶加材3と溶融金属との境界に生じる融合不良51が低減した溶接継手を製造することができる。
次に、前記の実施形態に係るレーザ溶接方法を用いることによって製造された溶接継手について説明する。
図8は、本実施形態に係る溶接継手の形状を示す概略断面図である。
本実施形態に係る溶接継手100は、開先2が設けられた複数の被溶接材1A,1Bが、開先2に積層溶接により形成された溶接部(溶接ビード)を介して突合わせ溶接された形態を有している。開先2には、溶接ビード5,50,53が積層されており、積層された多層の溶接ビード5,50,53からなる溶接部を介して2つの被溶接材1A,1Bが接合されている。本実施形態に係る溶接継手100は、開先に形成されている前層の溶接ビード50の直上に積層された次層の溶接ビード5の形状に特徴を有している。なお、図8では、複数の被溶接材1A,1Bには、I形の片側積層溶接が施工され、溶接パスは、初層溶接ビード50、第2層溶接ビード5及び第3層溶接ビード53の3層を形成するまで行われているが、溶接継手の形状や積層数はこれに限られるものではない。
図8に示すように、次層の溶接ビード5は、下部側が、前層(初層)の溶接ビード50に溶け込んでおり、上部側の側面は、開先2の壁部10a,10bに融着している。そして、溶接ビード5の断面形状は、初層の溶接ビード50に溶け込んでいる下部側の幅と、余盛りの上部側の幅との差が小さい形状となっている。そのため、比較例1や比較例2における溶接継手と比較して、開先2の壁部10a,10bと溶接ビード5との境界面は密着して溶着金属が密に存在し、開先の壁部10a,10bと溶接ビード5との間に融合不良が発生していない。
具体的には、本実施形態に係る溶接継手100では、開先2に形成された前層の溶接ビードの表面幅をa、次層の溶接ビードの溶込み幅をbとしたとき、前層の溶接ビードの表面幅aと次層の溶接ビードの溶込み幅bとは、次の数式2の関係を満たしている。
0.8a≦b・・・(数式2)
このように、次層の溶接ビードの溶込み幅bが大きく、開先2の壁部10a,10bと溶接ビードとの境界面が密着した形状は、レーザ光4の幅方向の往復走査を所定の停止時間に亘って中断することで、開先2の壁部10a,10bへの入熱量を増加させたことによるものである。
また、本実施形態に係る溶接継手100では、次層の溶接ビードの表面幅をc、次層の溶接ビードの溶込み深さをdとしたとき、次層の溶接ビードの表面幅cと次層の溶接ビードの溶込み深さdとは、次の数式3の関係を満たしている。
c≦d・・・(数式3)
このような次層の溶接ビードの溶込み深さが溶接ビードの表面幅以上となる形状が形成されるか否かは、溶加材3の送給量や溶加材3の溶融の確実性に依っている。開先2に送給される溶加材3に対して、常にレーザ光の直接照射を行うことで、溶加材3の送給量を増加させると共にこれを確実に溶融させると、このような形状を形成することが可能である。
前記の数式2や数式3で表わされるような形状寸法の関係は、多層盛とされた任意の一層(前層)と次層との間で満たしていればよいが、特に、初層と第2層との間で満たされていることが好ましい。初層は溶加材3の送給量を減じて行う場合が多く、融合不良が生じ易いところ、第2層の形状を前記の形状寸法とすることによって、高品質の溶接継手が得られる。また、さらに別の形態として、初層以降の全ての層について、数式2で表わされる関係が満たされていることが好ましく、さらに、初層以降の全ての層について、数式3で表わされる関係が満たされていることがより好ましい。
以上の本実施形態に係る溶接継手100によれば、開先2の壁部10a,10bと溶接ビードとの境界に生じる融合不良が低減した溶接継手が得られる。そして、このような溶接継手100を備える高品質の溶接構造物を製造することが可能となる。溶接構造物としては、例えば、各種発電施設、原子燃料再処理施設、化学プラント等を構成する構造物が挙げられる。特に、配管、容器、弁体等を含む配管系構造物や、シュラウド等の原子炉内構造物をはじめとする大型構造物に好適である。
次に、第3実施形態に係るレーザ溶接方法について説明する。
前記の実施形態に係るレーザ溶接方法においては、レーザ光4の焦点距離及びレーザ光4の照射高さは、一溶接パスあたりにおいて、一定に維持されている。これに対して、第3実施形態に係るレーザ溶接方法では、レーザ光4の焦点距離やレーザ光4の照射高さを、前層の溶接ビードの表面高さを検出しつつ、検出された表面高さの変動に応じて変化させることによって、焦点位置を一定に維持させる。また、検出された表面高さの変動に応じて溶加材3の先端部高さ変化させることによって、溶加材3の溶融の確実性を維持する。
第3実施形態に係るレーザ溶接方法は、レーザ光4の照射位置の溶接方向の前方の溶接ビードの表面高さを検出する距離センサ70と、可動装置を有する溶加材送給手段を備えたレーザ溶接装置を用いて行うことができる。この可動装置は、溶加材3を開先2内に案内する案内部が、水平方向及び垂直方向の全方向に相対移動させることを可能としている。このレーザ溶接装置が備えるその他の機器構成は、第1実施形態又は第2実施形態に係るレーザ溶接方法に用いられるレーザ溶接装置と同等である。
距離センサ70は、溶接ビード表面に光を照射する投光部と、溶接ビード表面からの反射光を受光する受光部とを備えている。例えば、レーザ光を溶接ビードの表面に投光し、その反射光を受光して、投光と反射光の位相差に基づいて、溶接ビードの表面までの距離を計測するセンサである。
図9は、第3実施形態に係るレーザ溶接方法の一例を表す概要図である。
図9には、溶接方向の外側から視た開先2の横断面が表わされている。溶接ビード5の表面5aには、表面高さが変化した凹凸が生じている。一般に、このような凹凸は、被溶接材や溶加材3の組成分布や、レーザ光4の照射による入熱量の変化に起因して、溶融池の粘性と表面張力とが変動することによって生じるものであり、溶接精度の悪化や溶接欠陥の一因となる。そこで、第3実施形態に係るレーザ溶接方法では、一溶接パスの間に、距離センサ70によって溶接ビード5の表面5aまでの距離を計測し、溶接ビード5の表面高さの変位に応じて、開先2に照射されるレーザ光4の焦点高さを調整し、溶加材3の先端部高さを位置制御する。
距離センサ70は、レーザ光4の照射位置に対して、溶接方向の前方の溶接ビード表面5aついて計測を行う。距離センサ70による投光は、照射域を点状に集光して、開先2の幅方向に周期的に往復走査させつつ溶接方向に進行させて、焦点位置の将来の走査軌跡と略同一の領域に一致するように照射することができる。また、照射域を線状として、溶接ビード5の表面5aの幅方向全域に照射されるようにして、開先2の幅方向について静止させてもよい。この場合、幅方向全域について計測される距離を平均化して、溶接ビード5の表面高さを把握することができる。また、レーザ光4の照射位置を、開先2の幅方向に往復走査させているために、溶接ビード5の開先2の壁部側の表面高さは、周期的な高低を生じることがあるため、幅方向の表面高さを含む三次元領域について、表面高さの変位を計測してもよい。
レーザ光4の焦点距離の調整は、レーザ照射部7が備える集光光学系を操作して行えばよく、レーザ光4の照射高さの調整は、レーザ照射部7の高さを位置制御することにより行えばよい。また、溶加材3の先端部高さの位置の調整は、溶加材3を開先2内に案内する案内部を、垂直方向について位置制御することにより行うことができる。
以上の第3実施形態に係るレーザ溶接方法によれば、溶接ビード表面に凹凸が生じているような場合においても、溶接ビード5の表面高さを検出し、それに応じて焦点位置を維持することができるため、溶接精度を向上させることができる。また、レーザ光4の照射位置を、開先2の幅方向に往復走査させることで、溶接ビードの開先2の壁部側の表面高さが周期的に変動しているような場合においても、溶接ビードの表面高さに応じて焦点位置を維持することが可能である。
なお、前記の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施に係るレーザ溶接方法では、レーザ光4の照射位置は、溶接方向に対して一定の溶接速度で進行するように制御するものとしている。しかしながら、これに代えて、往復走査の折り返し位置において、溶接方向と反対向きに後進するように制御してもよい。すなわち、幅方向の往復走査を停止する停止時間を、溶接方向に前進する前進時間(Tf)と、溶接方向と反対向きに後進する後進時間(Tb)とに配分し、前進時間(Tf)と、後進時間(Tb)とが、次の数式4の関係を満たすように設定する。
Tf>Tb・・・(数式4)
このようにすると、レーザ光4の照射位置は、開先2の壁部10a,10bに近接した位置で、溶接方向に沿って往復走査しつつ、溶接方向に徐々に進行していくことになる。そのため、被溶接材に対する入熱量をさらに増大させることが可能となる。
100 溶接継手
a 初層の溶接ビードの表面幅
b 次層の溶接ビードの溶込み幅
c 次層の溶接ビードの表面幅
d 次層の溶接ビードの溶込み深さ
1A,1B 被溶接材
2 開先
3 溶加材
4 レーザ光
5 溶接ビード
6 溶融池
7 レーザ照射部
8 溶加材送給手段
9 ガス供給手段
10a,10b 開先壁部
50 初層溶接ビード

Claims (7)

  1. 被溶接材に設けられた開先に溶加材を送給しつつレーザ光を照射し、前記被溶接材及び送給される前記溶加材を溶融させて、前記開先を積層溶接するレーザ溶接方法であって、
    前記開先に照射される前記レーザ光の照射位置を、前記開先の幅方向に周期的に往復走査させつつ溶接方向に進行させ、
    前記往復走査の折り返し位置においては、前記往復走査の停止時間T1が、前記往復走査の半周期T2に対して、以下の数式1、
    0.1×T2≦T1≦T2・・・(数式1)
    を満たすように前記開先の幅方向の往復走査を停止させて溶接する
    ことを特徴とするレーザ溶接方法。
  2. さらに、前記溶加材の先端部を、前記開先の幅方向に周期的に往復走査させつつ溶接方向に進行させ、前記溶加材の先端部と前記レーザ光の照射位置とを一致させる
    ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接方法。
  3. 開先に形成されている溶接部の表面高さを検出し、
    前記開先に照射される前記レーザ光の焦点高さ及び前記溶加材の先端部高さを、前記検出された溶接部の表面高さの変位に応じて変化させる
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ溶接方法。
  4. 開先が設けられた複数の被溶接材が、前記開先に形成された溶接部を介して突合わせ溶接されてなる溶接継手であって、
    前記溶接部は、開先に形成された前層の溶接ビードと、前記前層の溶接部に積層された次層の溶接ビードを含んでなり、
    前記前層の溶接ビードの表面幅をa、前記次層の溶接ビードの溶込み幅をbとしたとき、前層の溶接ビードの表面幅aと次層の溶接ビードの溶込み幅bとが、次の数式2、
    0.8a≦b・・・(数式2)
    を満たし、
    前記次層の溶接ビードの表面幅をc、前記次層の溶接ビードの溶込み深さをdとしたとき、次層の溶接ビードの表面幅cと次層の溶接ビードの溶込み深さdとが、次の数式3、
    c≦d・・・(数式3)
    を満たす
    ことを特徴とする溶接継手。
  5. 前記前層の溶接ビードが、開先の底部に形成された初層の溶接ビードである
    ことを特徴とする請求項4に記載の溶接継手。
  6. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザ溶接方法を用いて製造された
    ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の溶接継手。
  7. 請求項4又は5に記載の溶接継手を備える
    ことを特徴とする溶接構造物。
JP2013230380A 2013-11-06 2013-11-06 レーザ溶接方法、それを用いた溶接継手の製造方法 Active JP6215655B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013230380A JP6215655B2 (ja) 2013-11-06 2013-11-06 レーザ溶接方法、それを用いた溶接継手の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013230380A JP6215655B2 (ja) 2013-11-06 2013-11-06 レーザ溶接方法、それを用いた溶接継手の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015089562A true JP2015089562A (ja) 2015-05-11
JP6215655B2 JP6215655B2 (ja) 2017-10-18

Family

ID=53193344

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013230380A Active JP6215655B2 (ja) 2013-11-06 2013-11-06 レーザ溶接方法、それを用いた溶接継手の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6215655B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62220293A (ja) * 1986-03-20 1987-09-28 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 狭開先レ−ザ溶接方法
JP2003326382A (ja) * 2002-05-14 2003-11-18 Nissan Motor Co Ltd レーザ溶接装置およびレーザ溶接方法
JP2009012035A (ja) * 2007-07-04 2009-01-22 Toyota Motor Corp 溶接装置および溶接方法
JP2011005533A (ja) * 2009-06-29 2011-01-13 Hitachi Plant Technologies Ltd レーザ狭開先溶接装置および溶接方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62220293A (ja) * 1986-03-20 1987-09-28 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 狭開先レ−ザ溶接方法
JP2003326382A (ja) * 2002-05-14 2003-11-18 Nissan Motor Co Ltd レーザ溶接装置およびレーザ溶接方法
JP2009012035A (ja) * 2007-07-04 2009-01-22 Toyota Motor Corp 溶接装置および溶接方法
JP2011005533A (ja) * 2009-06-29 2011-01-13 Hitachi Plant Technologies Ltd レーザ狭開先溶接装置および溶接方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6215655B2 (ja) 2017-10-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5136521B2 (ja) レーザ狭開先溶接装置および溶接方法
CN105149786B (zh) 一种基于预制焊材的窄间隙激光扫描多层自熔焊接方法
US20120024828A1 (en) Method of hybrid welding and hybrid welding apparatus
US10807191B2 (en) Laser welding method, laser welding conditions determining method, and laser welding system
JP6155183B2 (ja) 狭開先レーザ溶接方法
EP2886241A1 (en) Welding system and welding method
US20140216648A1 (en) Method and apparatus for laser welding of two joining members of plastic material
CN104551403A (zh) 一种厚板窄间隙激光扫描填丝焊接方法
CN104874919B (zh) 一种厚板窄间隙激光焊接方法
JP5600837B2 (ja) 狭開先多層盛レーザ溶接方法
JP5601003B2 (ja) レーザ・アーク複合溶接方法、及び突き合わせ溶接用金属板の開先
JP2006224130A (ja) レーザとマグアークによる複合溶接方法
JP6169818B2 (ja) ハイブリッドレーザ加工を用いたクラッディング施工方法及び装置
JP5812527B2 (ja) ホットワイヤレーザ溶接方法と装置
JP5645128B2 (ja) レーザ狭開先多層盛溶接方法と装置
JP2005021912A (ja) 形鋼のレーザ溶接方法
RU2578303C1 (ru) Способ лазерно-дуговой сварки вертикальных стыков толстолистовых стальных конструкций
Colombo et al. Laser dimpling and remote welding of zinc-coated steels for automotive applications
JP2013154365A (ja) 溶接装置および溶接方法
JP6215655B2 (ja) レーザ溶接方法、それを用いた溶接継手の製造方法
CN210281087U (zh) 复合焊接装置及复合焊接系统
US11801573B2 (en) Tack welding method and tack welding apparatus
CN115533316A (zh) 一种大幅面薄板特种激光焊接装备及工艺
JP6093165B2 (ja) レーザ溶接方法
JP2019038004A (ja) ハイブリッド溶接方法及びハイブリッド溶接装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160225

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20160622

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170110

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170303

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170905

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170921

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6215655

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150