JP2015088714A - 化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】電気的・熱的安定性に優れ、有機EL素子に用いる化合物を提供する。
【解決手段】一般式(1)に示される化合物。
Figure 2015088714

〜Xは、一つが一般式(2)である。
Figure 2015088714

【選択図】なし

Description

本発明は、化合物およびこれを含む正孔輸送層を備えた有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL)素子に関する。
有機EL素子は通常、透明基板上に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極がこの位置関係で積層されることにより構成される。
有機EL素子の発光は、(1)正孔および電子が電極から注入され、(2)注入された正孔と電子が輸送され、(3)発光層内で正孔と電子が再結合し、(4)発光材料が電子的励起状態を形成し、(5)電子的励起状態から基底状態に戻る際にエネルギーを光として放射する、という過程を経て生じている。
発光材料がエネルギーを得て励起状態となるとき、一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)が1:3の確率で生成する。
一般的に、蛍光材料は、Sからのエネルギーしか光に変換されないのに対し、燐光材料は、Tからのエネルギーも光に変換されるため、蛍光材料を素子に用いた場合よりも、燐光材料を素子に用いた場合の方が有機EL素子の高効率化が期待できる(非特許文献1、非特許文献2)。
燐光材料はホスト材料に含有させる方法で使用されるのが一般的である。電極から注入された正孔と電子は、ホスト材料と燐光材料(ゲスト材料)で形成された発光層で再結合し、励起されたホスト材料のエネルギーはゲスト材料に移動し、そのエネルギーによりゲストである燐光材料が励起され、光エネルギーとして放出されることで効率的な発光を得ることができる。
ホスト材料からゲスト材料への効率的なエネルギー移動を可能とするためには、ホスト材料のTエネルギーがゲストである燐光材料のTエネルギーよりも大きいことが望ましい(非特許文献3)。ゲスト材料のTエネルギーの方が大きい場合には、ゲストからホストへの逆エネルギー移動が起こってしまい、発光の高効率化を妨げる要因となってしまうからである。
ここで、有機EL素子の外部量子効率のファクターの一つである再結合効率を高めるためには、注入された正孔と電子が発光層内で効率よく再結合するように、正孔と電子の輸送バランスを調整する必要がある。
正孔と電子の輸送バランスを調整するには、正孔注入材料、正孔輸送材料の正孔移動度や、電子注入材料、電子輸送材料の電子移動度、層界面での電荷注入障壁、またそれぞれの膜の厚さなど、多くのファクターを考慮した上でバランスを調整しなければならない。
しかし、材料自身がもつ正孔と電子の輸送性は、材料によって異なり、また異なる材料で形成された層の界面では、電荷注入障壁が生じるため、発光層内で正孔と電子がバランスよく再結合することは容易ではない。電荷注入・輸送バランスが悪い場合としては、正孔または電子のどちらかが少ない場合、あるいはどちらかが極端に多く、再結合せずに通り抜けてしまう場合などが考えられるが、電荷が対極へ流れ出てしまう場合には、電荷をブロックする層を設けて、電荷を発光層内に閉じ込め、再結合効率を高める方法もある。通常、流出する電荷をブロックして電荷を発光層内に閉じ込めるという役割は、正孔輸送層や電子輸送層が担うことが多い。
有機EL素子の正孔輸送材料に求められる特性は、再結合効率等を高めるという観点から、正孔輸送性が高く、電子輸送性が低いことに加え、バンドギャップやイオン化ポテンシャル(IP)、電子親和力(Ea)の値が適切な値を有することが重要である。イオン化ポテンシャルは、陽極の仕事関数または正孔注入材料のイオン化ポテンシャルと発光材料のイオン化ポテンシャルとの間の値となることが望ましく、これにより発光層への正孔注入障壁を小さくできる。電子親和力は、発光材料の電子親和力よりも大きくなることが望ましく、これにより電子ブロック効果を得ることができる。なお、電荷注入の指標の一つであるイオン化ポテンシャル(IP)とほぼ同義で、HOMOレベルが用いられ、電子親和力(Ea)とほぼ同義で、LUMOレベルが用いられる場合がある。そして、長寿命化の観点からは、電気的安定性が高いことが求められる。また、熱安定性も高い必要があるため、ガラス転移温度(Tg)、融点、熱分解点などが高いことが要求される。
正孔輸送材料としては、例えば下記化学式(7)〜(9)に示されるα−NPD、TPD、NPAPF、Spiro−TTBなど、第三級アミンと芳香族炭化水素の組合せからなる化合物が数多く報告されている(非特許文献4、非特許文献5、特許文献1、非特許文献6)。
Figure 2015088714
α−NPD、TPDのガラス転移温度(Tg)はそれぞれ95℃、60℃であり、有機ELの製造過程や、用途(使用環境)を考えると、Tgは少なくとも100℃以上であることが望ましく、熱安定性の要求を満たしているとはいえない。一方、NPAPF、Spiro−TTBのTgは、それぞれ166℃、149℃であるため、熱安定性の要求を満たす材料の一例であるといえる。また、フルオレンやスピロフルオレンを中心骨格にもつ化合物の熱安定性は比較的高いといえる。
しかし、一般によく用いられている正孔輸送材料であっても、特に熱安定性に優れる材料は少なく、また、熱安定性に優れる材料であっても、正孔輸送材料に求められる性能を全て備える材料は未だ少なく、開発が求められている。
US6586120
Nature,395,151(1998) Nature,403,750(2000) Appl.Phys.Lett.,83,569(2003) Appl.Phys.Lett.,69,2160(1996) 月間ディスプレイ別冊「有機ELディスプレイ」pp.51(1998) Adv.Funct.Mater.2006,16,966
本発明は、バンドギャップ、及びTエネルギーが大きく、電気的安定性・熱的安定性に優れ、有機EL素子の正孔輸送層にも用いることができる新規化合物を提供することを課題とする。さらに、上記化合物を含む正孔輸送層を備えた長寿命で発光効率の高い有機EL素子を提供することを課題とする。
発明者らは、検討の結果、中心骨格が下記一般式に(1)に示すスピロビフルオレンであって、さらに下記一般式(2)に示すアミノジベンゾチオフェンを含む化合物が提供できることを見出した。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
また、本発明の化合物は、有機EL素子の正孔輸送材料としても好適に用いることができ、本発明の化合物を正孔輸送層に用いると、高効率で、長寿命な有機EL素子が得られることを見出した。
上記一般式(1)に示される化合物を正孔輸送材料として用いることにより、有機EL素子の高効率化、長寿命化が達成できる理由は必ずしも明らかではないが、発明者らはその理由を以下のように推定している。
有機EL素子の正孔輸送材料は、発光層内での電荷の再結合効率等を高めるという観点から、正孔輸送性が高く、電子輸送性が低いという電荷輸送特性を有することに加え、正孔注入・電子阻止特性を高めるという観点から、大きいバンドギャップと、適切なHOMO、LUMOレベルを有し、さらには、長寿命化の観点から、電気的安定性、熱的安定性が高い材料であることが理想的である。
本発明の化合物においては、スピロビフルオレンからなる中心骨格により、分子の平面性が崩れていることが、バンドギャップの拡大に寄与していると考えられる。しかし、分子の平面性が崩れると、通常、電気的特性が悪くなるというデメリットも存在する。それにもかかわらず、本発明の材料は、分子内にスピロビフルオレン骨格に加え、アミノジベンゾチオフェン骨格を有することにより、大きいバンドギャップを有しながら、適切なHOMO、LUMOレベルを有するだけでなく、高い電気的安定性と、熱的安定性を備えることができる。
さらに発明者らは、発光層内での逆エネルギー移動を防ぐために、ホスト材料のTエネルギーがゲスト材料のTエネルギーよりも大きい必要があるという点に着目し、この逆エネルギー移動による効率の低下の現象は、発光層に接触する正孔輸送材料や、電子輸送材料にも関係すると考えた。すなわち、前記した逆エネルギー移動を抑制するという観点からは、正孔輸送材料のTエネルギーが、発光材料のそれよりも大きいことが望ましいと考えられる。
この点について、本発明の化合物は、比較的大きなTエネルギーを有しているため、特に緑色〜赤色有機EL素子において、高効率化、長寿命化に寄与するものと推定することができる。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(a)下記一般式(1)に示す化合物。
Figure 2015088714
〜Xは、各々独立して、水素、又は下記一般式(2)のいずれかから選ばれ、X〜Xのうち少なくとも一つが下記一般式(2)である。
Figure 2015088714
〜Rは、各々独立して、水素、置換基を有してもよいアルキル基、又はハロゲン基のいずれかから選ばれ、各々独立して、単数または複数存在していてもよく、複数存在する場合は、互いに同一又は異なる基であってもよい。
Yは、置換基を有してもよい芳香族環式基を示す。
(b)一般式(1)における、X〜Xが、各々独立して、水素、又は下記一般式(3)、若しくは下記一般式(4)のいずれかから選ばれ、X〜Xのうち少なくとも一つが下記一般式(3)、若しくは下記一般式(4)である、請求項1に記載の化合物。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
〜Rは、各々独立して、水素、置換基を有してもよいアルキル基、又はハロゲン基のいずれかから選ばれ、各々独立して、単数または複数存在していてもよく、複数存在する場合は、互いに同一又は異なる基であってもよい。
Yは、置換基を有してもよい芳香族環式基を示す。
(c)X〜Xが水素以外であることを特徴とする、(a)、又は(b)に記載の化合物。
(d)Xが水素であることを特徴とする、(a)、又は(b)に記載の化合物。
(e)XおよびXが水素であることを特徴とする、(a)、又は(b)に記載の化合物。
(f)XおよびXが水素であることを特徴とする、(a)、又は(b)に記載の化合物。
(g)X、XおよびXが水素であることを特徴とする、(a)、又は(b)に記載の化合物。
(h)X〜Xの結合位が、それぞれスピロビフルオレン骨格の2位、7位、2’位、7’位であることを特徴とする(a)〜(g)のうちいずれかに記載の化合物。
(i)Yがフェニル基である、(a)〜(h)のうちいずれかに記載の化合物。
(j)R〜Rが水素である、(a)〜(i)のうちいずれかに記載の化合物。
(k)下記化学式(5)に示される化合物。
Figure 2015088714
(l)下記化学式(6)に示される化合物。
Figure 2015088714
(m)電極、陽極、及びこれら両電極間に、有機化合物で形成された層を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機化合物で形成された層に(a)〜(l)のうちいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(n)陽極、陰極、及びこれら両電極間に、電荷輸送材料を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記電荷輸送材料に、(a)〜(l)のうちいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(o)陽極、陰極、及びこれら両電極間に、正孔輸送層層を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記正孔輸送層に、(a)〜(l)のうちいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(p)陽極、陰極、及びこれら両電極間に、発光層、正孔輸送層層を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、ホスト材料と、発光材料からなるゲスト材料とを含み、
前記ホスト材料が、電子輸送性材料、又は電子と正孔の両電荷輸送性材料であって、
前記正孔輸送層に、(a)〜(l)のうちいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(q)ゲスト材料が、燐光材料であることを特徴とする(p)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明により、バンドギャップ、及びTエネルギーが大きく、電気的安定性・熱的安定性に優れ、有機EL素子の正孔輸送層にも用いることができる化合物を提供することができる。
さらに、上記化合物を含む正孔輸送層を備えた長寿命で発光効率の高い有機EL素子を提供することができる。
(化合物の態様について)
下記一般式(1)におけるX〜Xは、各々独立して、水素、または下記一般式(2)、下記一般式(3)、又は下記一般式(4)のいずれかから選ばれ、XないしXのうち少なくとも一つが下記一般式(2)、下記一般式(3)、又は下記一般式(4)のいずれかである。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
Figure 2015088714
Figure 2015088714
上記一般式(1)〜(4)におけるR〜Rは、成膜後の膜質の向上、電気的安定性、熱的安定性の向上、化合物の合成・精製のし易さの観点から選ばれる。
〜Rは、各々独立して、水素、置換基を有してもよいアルキル基、又はハロゲン基のいずれかから選ばれる。R〜Rにおける、置換基を有してもよいアルキル基の置換基は、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン基のいずれかから選ばれる。
〜Rにおける、置換基を有してもよいアルキル基は、直鎖状でも環状でもよい。直鎖状のアルキル基は、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作成時の成膜性等の観点から、炭素数1〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数1〜6がより好ましい。炭素数1〜18の直鎖状のアルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基をいう。環状のアルキル基は、炭素数3〜18が好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、炭素数3〜8が好ましい。環状のアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、またはビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等の多環アルキル基が挙げられる。
〜Rにおける、置換基を有してもよいアルキル基の置換基は、2以上置換してもよく、各々が異なってもよい。
置換基を有してもよいアルキル基の置換基として選ばれるアルキル基は、有機EL素子作製時の成膜性の観点から、主鎖となるアルキル基と、その置換基であるアルキル基を合計した炭素数が、1〜18となるのが好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、合計した炭素数が1〜6となるのがより好ましい。
置換基を有してもよいアルキル基の置換基としてアルキル基が選択される場合とは、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1−n−プロピルプロピル基、1−メチルブチル基、1−エチルブチル基、1−プロピルブチル基、1−n−ブチルブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、1−n−プロピルペンチル基、1−n−ペンチルペンチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルヘキシル基、1−n−プロピルヘキシル基、1−n−ブチルヘキシル基、1−n−ペンチルヘキシル基、1−n−ヘキシルヘキシル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘプチル基、1−n−プロピルヘプチル基、1−n−ブチルヘプチル基、1−n−ペンチルヘプチル基、1−n−ヘプチルヘプチル基、1−メチルオクチル基、1−エチルオクチル基、1−n−プロピルオクチル基、1−n−ブチルオクチル基、1−n−ペンチルオクチル基、1−n−ヘキシルオクチル基、1−n−ヘプチルオクチル基、1−n−オクチルオクチル基、1−メチルノニル基、1−エチルノニル基、1−n−プロピルノニル基、1−n−ブチルノニル基、1−n−ペンチルノニル基、1−n−ヘキシルノニル基、1−n−ヘプチルノニル基、1−n−オクチルノニル基、1−n−ノニルノニル基、1−メチルデシル基、iso−プロピル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、2−n−プロピルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−n−プロピルヘキシル基、2−n−ブチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、2−n−プロピルヘプチル基、2−n−ブチルヘプチル基、2−n−ペンチルヘプチル基、2−メチルオクチル基、2−エチルオクチル基、2−n−プロピルオクチル基、2−n−ブチルオクチル基、2−n−ペンチルオクチル基、2−n−ヘキシルオクチル基、2−メチルノニル基、2−エチルノニル基、2−n−プロピルノニル基、2−n−ブチルノニル基、2−n−ペンチルノニル基、2−n−ヘキシルノニル基、2−n−ヘプチルノニル基、2−メチルデシル基、2,3−ジメチルブチル基、2,3,3−トリメチルブチル基、3−メチルブチル基、3−メチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−メチルペンチル基、4−エチルヘキシル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2,3,3,4−テトラメチルペンチル基、3−メチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、6−メチルヘプチル基、3,7−ジメチルオクチル基、6−メチルオクチル基、等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキル基の置換基として選ばれるアルコキシ基は、汎用の有機溶剤への溶解性、有機EL素子作製時の成膜性等の観点から、アルキル基と、その置換基であるアルコキシ基を合計した炭素数が1〜18となるが好ましく、ガラス転移温度、立体障害等の観点から、合計した炭素数が1〜6となるのがより好ましい。
置換基を有してもよいアルキル基の置換基として選ばれるハロゲン基は、フッ素基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、このうち、電気的・熱的安定性、合成のし易さの観点から、フッ素基が好ましい。
ここで、RおよびRは、上記のように、水素、アルキル基、又はハロゲン基が選ばれるが、電気的安定性、熱的安定性、成膜性、合成・精製のし易さ等を総合して判断すると、水素、又はメチル基が最も好ましい。また、メチル基が選ばれる場合、ジベンゾチオフェンの反応点である2位、又は4位に置換されると電気的安定性が増すと考えられ、好ましい。
また、一般式(2)〜(4)におけるYは、化合物のHOMOレベル、LUMOレベル、バンドギャップ等の電気的効果、および融点、ガラス転移温度等の熱的安定性、および立体障害の効果の観点から選ばれる。
Yは、置換基を有してもよい芳香族環式基を示す。
芳香族環式基は、芳香族炭化水素基、または複素環基を示す。
Yで示される、置換基を有してもよい芳香族環式基としては、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数1〜30の芳香族複素環基が挙げられる。
ここで、Yで示される炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、6π電子系、10π電子系、12π電子系、14π電子系の芳香族炭化水素環基が挙げられ、具体的には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、テルフェニル、アンスリル、アズレニル、フルオレニル、ピレニル、フェナンスリル、ナフスリル等が挙げられ、このうち適切な電気的効果、及び熱的安定性を得るという観点から特にフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好ましい。
また、ビフェニル基の場合、当該ビフェニルのうちフェニル同士の結合位のオルト位にあたる部分にメチル基等のアルキル基が導入されると立体障害によりビフェニル骨格がねじれ、π共役系の広がりを抑え、適切な電気的効果を得ることができるため、特に2,2’‐ジメチル‐1,1’−ビフェニルが好ましい。
Yで示される芳香族複素環基としては、6π電子系、10π電子系、12π電子系、14π電子系の芳香族複素環基が挙げられ、具体的には、チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキゾリル、ピリジル、ピリダジル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、トリアジル、チアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾセレナジアゾリル、チエノ[2,3−b]チエニル、チエノ[3,2−b]チエニル、チエノ[3,4−b]チエニル、9−オキソフルオレニル、カルバゾリル、ジベンゾチオフェニル、シラフルオレニル、セレノフルオレニル、キサンテニル、フェナントロリル、フェナジリル、フェニキサジリル等が挙げられる。このうち適切な電気的効果を得るという観点から特にジベンゾチオフェニル基が好ましい。
置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基は、2以上置換してもよく、各々異なってもよい。
置換基を有してもよい芳香族環式基の置換基としては、直鎖もしくは分岐又は環状のアルキル基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。また、アルキル基としては、適切な立体的効果を得るという観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが好ましい。また、ハロゲンとしては、合成のし易さの観点からフッ素基が好ましい。
一般式(1)におけるX〜Xは、各々独立して、水素、または下記一般式(2)、下記一般式(3)、又は下記一般式(4)のいずれかから選ばれ、XないしXのうち少なくとも一つが下記一般式(2)、下記一般式(3)、又は下記一般式(4)のいずれかである。このうち、合成のし易さの観点から、X〜Xのうち、X、およびXが水素である場合、又はX、およびXが水素である場合が好ましい。また、電気的安定性、合成のし易さの観点から、X〜Xが一般式(3)、又は一般式(4)であることが好ましい。さらに、合成のし易さの観点から、X〜Xの結合位が、それぞれスピロビフルオレン骨格の2位、7位、2’位、7’位であることが好ましい。
以下に、具体的な化合物を例示する。
一般式(1)におけるX〜Xが、一般式(2)で表される場合、例えば、以下に示す化合物(11)〜(20)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)で表される場合、例えば、以下に示す化合物(21)〜(32)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)で表される場合、例えば、以下に示す化合物(33)〜(44)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、Rにメチル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(45)〜(56)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、Rにメチル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(57)〜(68)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、Rにt−ブチル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(69)〜(80)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、Rにt−ブチル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(81)〜(92)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、Yにフェニル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(93)〜(102)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、Yにフェニル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(103)〜(114)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、Yに2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(115)〜(122)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、Yに2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(123)〜(132)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(3)である場合には、例えば、以下に示す化合物(133)〜(136)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(3)であって、Yにフェニル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(137)〜(140)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(3)である場合には、例えば、以下に示す化合物(141)〜(144)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(3)であって、Yにフェニル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(145)〜(148)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(4)である場合には、例えば、以下に示す化合物(149)〜(152)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(4)であって、Yにフェニル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(153)〜(156)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(4)である場合には、例えば、以下に示す化合物(157)〜(160)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(4)であって、Yにフェニル基が選ばれる場合には、例えば、以下に示す化合物(161)〜(164)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,2’位に置換されている場合には、例えば、以下に示す化合物(165)〜(168)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,2’位に置換されており、Yがフェニル基である場合には、例えば、以下に示す化合物(169)〜(172)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,7位に置換されている場合には、例えば、以下に示す化合物(173)〜(176)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(2)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,7位に置換されており、Yがフェニル基である場合には、例えば、以下に示す化合物(177)〜(180)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(3)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,2’位に置換されている場合には、例えば、以下に示す化合物(181)〜(184)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(3)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,2’位に置換されており、Yがフェニル基である場合には、例えば、以下に示す化合物(6)及び(185)〜(187)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(3)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,7位に置換されている場合には、例えば、以下に示す化合物(188)〜(191)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(3)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,7位に置換されており、Yがフェニル基である場合には、例えば、以下に示す化合物(5)及び(193)〜(194)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(4)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,2’位に置換されている場合には、例えば、以下に示す化合物(195)〜(198)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(4)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,2’位に置換されており、Yがフェニル基である場合には、例えば、以下に示す化合物(199)〜(202)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(4)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,7位に置換されている場合には、例えば、以下に示す化合物(203)〜(206)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
一般式(1)におけるX〜Xのうち、XおよびXが一般式(4)であって、XおよびXが、中心骨格であるスピロビフルオレンの2,7位に置換されており、Yがフェニル基である場合には、例えば、以下に示す化合物(207)〜(210)の化合物群が挙げられる。
Figure 2015088714
なお、ここに挙げた化合物は例示であって、これに限定されるものではない。
(合成について)
本発明に係る化合物の代表的な合成手法について述べる。
下記一般式(211)に示す化合物の代表的な合成手法について述べる。
Figure 2015088714
一般式()に示される化合物は、下記反応式(S1)に示すように、ジベンゾチオフェン誘導体を一般的なハロゲン化反応を用いてハロゲン化し、続いて下記一般式(213)に示されるハロゲン化ジベンゾチオフェンと、下記一般式(214)に示されるアミノ基を有する芳香族炭化水素とのN−アリール化反応を行うことにより合成される。
Figure 2015088714
ハロゲン化反応には、例えば、臭素、ヨウ素などのハロゲンを触媒存在下で直接反応させる方法や、ハロゲン化剤を用いる方法がある。ハロゲン化剤は、クロロ化剤、ブロモ化剤、ヨード化剤がある。クロロ化剤としては、例えば、N−クロロスクシンイミド(NCS)等が挙げられ、ブロモ化剤としては、例えば、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、ジブロモイソシアヌル酸(DBI)等が挙げられ、ヨード化剤としては、例えば、N−ヨードスクシンイミド(NIS)、1,3−ジヨード−5,5’−ジメチルヒルダントイン(DIH)等が挙げられる。
続いて、ハロゲンの置換位置が異なるハロゲン化ジベンゾチオフェンの合成について述べる。
ジベンゾチオフェンの4位がハロゲン化された下記一般式(215)に示される化合物を得るためには、例えば、下記反応式(S2)に示される方法が挙げられる。
Figure 2015088714
すなわち、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、又は1,2−ジヨードエタンなどのジハロゲン化エタンを用いて、アニオン化された炭素をハロゲン化することができ、この方法により、ジベンゾチオフェンの4位を優先的にハロゲン化することができる。
ジベンゾチオフェンの2位がハロゲン化された化合物を得るためには、例えば、下記反応式(S3)に示す方法が挙げられる。
Figure 2015088714
例えば、ジベンゾチオフェンにハロゲン化剤の一種であるNBSを反応させることにより、ジベンゾチオフェンの2位が優先的にハロゲン化される。ハロゲン化剤の量を調整することにより、2以上のハロゲン基を導入することも可能である。
また、例えば、J.Org.Chem.,2006,71,6291に記載された方法を応用した下記反応式(S4)に示す方法に示す方法を用いれば、下記一般式(222)に示される1位がハロゲン化されたジベンゾチオフェンやその誘導体を合成することができる。
Figure 2015088714
また、Tetrahedron,2002,58,1709に記載された方法を応用した下記反応式(S5)に示す方法などを用いれば、下記一般式(227)に示される3位がハロゲン化されたジベンゾチオフェンや、その誘導体を合成することができる。
Figure 2015088714
下記反応式(S6)に示すように、ハロゲン化ジベンゾチオフェンと、アミノ基が導入された芳香族環式基を、例えば、Buchwald−Hartwig反応(例えば、Org.Synth.,2002,78,23)、Ullmann反応(例えば、Angew.Chem.,Int.Ed.2003,42,5400)等を応用したN−アリール化反応を行うことで、上記一般式(211)に記載の化合物を合成することができる。
Figure 2015088714
なお、下記反応式(S7)に示すように、アミノ基が導入されたジベンゾチオフェン誘導体と、ハロゲン化された芳香族環式基を用いて、N−アリール化を行っても、上記一般式(211)の化合物を同様に合成することができる。
Figure 2015088714
下記反応式(S8)に示すように、任意の場所にハロゲン化されたジベンゾチオフェンと、例えば、アルキルグリニャール試薬等を用いれば、ジベンゾチオフェンにアルキル基等を導入することができる。
Figure 2015088714
下記反応式(S9)に示すように、スズキカップリング反応(例えば、Chem.Rev.,1995,95,2457)等を用いれば、ジベンゾチオフェンに芳香族環式基を導入することも可能である。また、ボロン酸誘導体は、Rが、水素、メチル、イソプロピル等、必要に応じて任意のボロン酸誘導体を選ぶことができる。
Figure 2015088714
また、前記のJ.Org.Chem.,2006,71,6291に記載された方法を応用すれば、下記反応式(S10)に示す方法も可能である。
Figure 2015088714
下記一般式(234)に示す、置換基Rを導入したジベンゾチオフェン誘導体も、上記反応を応用することにより合成することができる。
Figure 2015088714
例えば、下記反応式(S11)に示される方法により、上記一般式(234)に示す化合物を合成することができる。
Figure 2015088714
本発明の化合物における中心骨格のスピロビフルオレンを導入するためには、例えば、下記一般式(239)、(240)に示す化合物を中間体として用いることができる。
Figure 2015088714
下記反応式(S12)に示すように、一般的なハロゲン化では、スピロフルオレンの2位、2’位、7位、7’位が優先的にハロゲン化される。
Figure 2015088714
ただし、スピロフルオレンの2位がハロゲン化された後、2’位、7位、7’位のうち、どこの位置が優先的にハロゲン化されるのかは、反応条件による。
ハロゲン化反応には、例えば、臭素、ヨウ素などのハロゲンを触媒存在下で直接反応させる方法や、ハロゲン化剤を用いる方法がある。ハロゲン化剤は、クロロ化剤、ブロモ化剤、ヨード化剤がある。クロロ化剤としては、例えば、N−クロロスクシンイミド(NCS)等が挙げられ、ブロモ化剤としては、例えば、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、ジブロモイソシアヌル酸(DBI)等が挙げられ、ヨード化剤としては、例えば、N−ヨードスクシンイミド(NIS)、1,3−ジヨード−5,5’−ジメチルヒルダントイン(DIH)等が挙げられる。
例えば、Org.Lett.,12,24,5648(2010)に記載の方法を応用した、下記反応式(S13)に示す方法を用いることでもハロゲン化スピロフルオレンを合成することができる。
Figure 2015088714
また、ハロゲンの置換位置が異なるスピロフルオレンは、上記の方法を用いることにより合成することができる。例えば、2,7−ハロゲン化スピロフルオレンは下記反応式(S14)に示す方法により合成することができる。
Figure 2015088714
上記反応式を応用した下記反応式(S15)に示す方法により、置換基を導入したスピロフルオレン骨格を合成することもできる。
Figure 2015088714
2,2’−ハロゲン化スピロフルオレンの合成は、例えば、Chem.Rev.,2007,107,1011に記載の方法を応用した、下記反応式(S16)に示す方法を用いることができる。
Figure 2015088714
また、4,4‘−ハロゲン化スピロフルオレンの合成は、例えば、Org.Lett.,12,24,5648(2010)に記載の方法を応用した、下記反応式(S17)に示す方法を用いることができる。
Figure 2015088714
さらに、下記反応式(S18)に示す方法により、スピロフルオレンに置換基を入することもできる。
Figure 2015088714
さらに、前記のChem.Rev.,2007,107,1011に記載の方法を用いれば、各種のスピロフルオレン誘導体を合成することができる。
下記反応式(S19)及び(S20)に示すように、前記一般式(234)と、上記一般式(239)又は(240)とのN−アリール化反応を行うことにより、下記一般式(263)又は(264)に示される本発明の化合物を合成することができる。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
(物性評価について)
化合物の純度の測定は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により行うことができる。高速液体クロマトグラフィーは資料を導入した移動相に圧力をかけ、溶媒を高流速で移動相に通し、カラムで資料(混合物)を分離して、分離された資料を検出器で検出することにより、資料の純度を測定する方法である。
カラムには順層系、逆層系を用いることができる。順層系クロマトグラフィーは、固定相の極性が移動相の極性より高い分離系をいい、固定相にはアルミナ等が用いられ、移動相にはヘキサンなどの極性の小さい溶媒を用いることができる。逆層系クロマトグラフィーは、移動相の極性が固定相の極性より高い分離系をいい、固定相には疎水処理をしたシリカ等が用いられ、移動相には、メタノールやアセトニトリルなどの極性溶媒を用いることができる。
検出器は、資料の物性に応じて様々なものを用いることができる。例えば、吸光光度検出器(UV/VIS)、蛍光検出器(FLD)、質量分析装置(MS)等が挙げられる。
化合物の分子量の測定は、質量分析法(MS)により行うことができる。質量分析は、資料導入部から導入された資料に、真空中で高電圧をかけることで、資料をイオン化し、イオンを質量電荷比に応じて分離して、検出部で検出することにより行われる。
資料導入部は、ガスクロマトグラフィー(GC/MS)、高速液体クロマトグラフィー(LC/MS)、キャピラリー電気泳動(CE/MS)に直結することができ、MSを測定するとともに、純度の測定も行うことができる。なお、資料を直接イオン化する、ダイレクトインジェクション方式(DI/MS)も採用される場合がある。
イオン源には様々なイオン化の方式が採用される。例えば、電子イオン化法(EI)、高速原子衝突法(FAB)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、誘電結合プラズマ法(ICP)等が挙げられる。
化合物の同定には核磁気共鳴スペクトル(NMR)を用いることができる。NMR測定では、原子の結合状態などによって、化学シフトやカップリングの情報を知ることができるため、化合物固有のスペクトルを得ることができ、化合物を同定することができる。測定は、少量の資料を重溶媒に溶かし行われる。
化合物の熱安定性の評価は、示差走査熱量測定(DSC)により行うことができる。DSC測定は、資料が相転移や融解等の熱変化が生じた場合に、標準試料との熱量の差を検出することにより行われる。DSCでは、化合物の融点や、ガラス転移温度を知ることができる。
化合物の紫外可視吸収スペクトル(UV/VIS)、蛍光スペクトル(PL)、燐光スペクトルを測定することで、化合物特有のUV吸収波長、蛍光波長、燐光波長を知ることができるだけでなく、化合物のバンドギャップ、蛍光量子収率、Tエネルギー等の情報を知ることができる。
化合物のHOMOレベル、LUMOレベルは、サイクリックボルタンメトリー(CV)により測定することができる。また、HOMOレベルと同様の観念として、イオン化ポテンシャル(IP)測定も用いられる。
さらに、UV吸収波長から、光学的バンドギャップを求め、HOMOレベル(またはIP)から、LUMOレベル(またはEa)を計算で求める手法も用いられる。
(有機EL素子について)
本発明の有機EL素子は、本発明の化合物を正孔輸送層に用いることを特徴とする。
有機EL素子は、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層(電子阻止層)、発光層、電子輸送層(正孔阻止層)、電子注入層、陰極がこの位置関係で積層されて構成される。
有機EL素子は全てが有機物で形成される必要はなく、電極や正孔注入層、電子注入層等には無機材料が用いられる場合がある。
また、有機EL素子を形成する層のうち、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層のうちいずれかが省略される場合もある。
有機EL素子は、基板側から光を取り出すボトムエミッション型素子と、基板とは反対側から光を取り出すトップエミッション型があり、本発明の有機EL素子においては、どちらの方式をとることもできる。
基板に用いられる材料は、トップエミッション型素子とボトムエミッション型素子で異なる場合がある。ボトムエミッション型素子には、透明な基板が用いられる。一方、トップエミッション型では透明な基板だけでなく、不透明な基板を用いることもできる。
基板に用いられる材料は、石英ガラス、ソーダガラス、パイレックス等、各種のガラスを用いることができる。また、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート等、各種のプラスチック基板を用いることもできる。さらに、これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。
陽極には、ボトムエミッション型素子では、一般に透明導電材料が用いられる。また、トップエミッション型では、特に制限はないが、反射性の電極が用いられる場合がある。陽極の役割は、正孔注入層又は正孔輸送層に正孔を注入することである。このため、陽極には、仕事関数が比較的大きい各種金属材料や、各種合金等、陽極として機能する材料が用いられる。例えば、金、ヨウ化銅、酸化スズ、アルミニウムドープの酸化亜鉛(ZnO:Al)、インジウム酸化スズ(ITO)、インジウム酸化亜鉛(IZO)、フッ素酸化スズ(FTO)等が挙げられる。このうち、透明性や仕事関数の観点から、ITO、IZO、FTOが好ましい。
正孔注入層に用いられる材料は、陽極の仕事関数と正孔輸送層のIPの関係、電荷輸送特性等の観点から選ばれる。例えば、下記化学式(265)〜(282)で示される化合物が挙げられる。このうち、下記化学式(275)に示されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、下記一般式(267)に示される銅フタロシアニン(CuPc)、モリブデン酸化物(MoOx)、酸化バナジウム(V)等が好ましく、PEDOT:PSSについても好適に用いられることがある。適切なIPと電荷輸送特性を有する化合物であれば、低分子、高分子問わず、各種の有機化合物、無機化合物を選択することができる。また、これらの材料を2種以上組み合わせて用いることもできる。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
正孔輸送層には、本発明の化合物を用いることができる。該化合物は、オルトフェニレンの中心骨格と、アミノジベンゾチオフェン骨格を有することにより、広いバンドギャップ、適切なHOMO、LUMOレベルを有し、電気的安定性、熱的安定性にすぐれる。したがって、発光層内での電荷の再結合効率を高めることができ、より高い発光効率で、長寿命な有機EL素子を実現することができるため、好ましい。
本発明の化合物は単独で用いることもできるが、既存の正孔輸送性材料を1種又は2種以上混合して用いることもできるし、1層又は2層以上を積層して用いることもできる。正孔輸送性材料としては、例えば、下記一般式(7)〜(10)、(283)〜(313)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
Figure 2015088714
Figure 2015088714
発光層には、蛍光材料、または燐光材料を用いることができる。発光材料は、電荷輸送および電荷再結合を行うホスト材料に、発光材料(ゲスト)を含有させて用いることもできる。
ホスト材料は、正孔輸送性および電子輸送性を有する両電荷輸送性の材料を用いることができる。また、本発明の正孔輸送性材料は電子阻止性能にも優れるため、ホスト材料に電子輸送性の材料を用いることもできる。
ゲスト材料として燐光材料が選ばれる場合は、ホスト材料のTエネルギーがゲスト材料のTエネルギーよりも高くなるように、ホスト材料を選択することが好ましい。
ホスト材料としては、例えば、下記一般式(314)〜(336)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
発光材料はホスト材料からのエネルギー移動を有効に行うために、ホスト材料の発光波長とゲスト材料の吸収波長が重なることが好ましい。また、ゲスト材料が燐光材料の場合には、ホスト材料のTエネルギーが、ゲスト材料のTエネルギーよりも大きいことが好ましい。
発光材料は特に限定されないが、蛍光材料としては、例えば、下記一般式(337)〜(358)に示される化合物が挙げられ、燐光材料としては、例えば、下記一般式(359)〜(387)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
Figure 2015088714
Figure 2015088714
電子輸送層に用いる材料としては、例えば、下記一般式(388)〜(415)に示される化合物が挙げられる。適切なLUMOレベルを有する電子輸送層を、発光層と陰極又は電子注入層との間に設けると、陰極又は電注入層から電子輸送層への電子注入障壁を緩和し、さらに、電子輸送層から発光層への電子注入障壁を緩和することができる。また、該材料が適切なHOMOレベルを有すると、発光層で再結合せずに対極へ流出する正孔を阻止し、発光層内に正孔を閉じ込め、発光層内での再結合効率を高めることができる。ただし、電子注入障壁が問題とならず、さらに、発光層の電子輸送能が十分に高い場合には、電子輸送(正孔阻止)層を設ける必要はなく、当該層は省略される場合がある。
Figure 2015088714
Figure 2015088714
Figure 2015088714
電子注入層に用いられる材料は、陰極の仕事関数と電子輸送層のLUMOレベル等の観点から選ばれる。電子輸送層を設けない場合には、発光材料又は後述するホスト材料のLUMOレベルを考慮して選ばれる。電子注入材料は有機化合物でも無機化合物でもよい。
電子注入層が、無機化合物からなるものである場合には、例えば、アルカリ金属や、アルカリ土類金属の他、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、炭酸セシウム等を用いることができる。
有機EL素子の陰極は、電子注入層又は電子輸送層に電子を注入する役割を担う。陰極には、仕事関数の比較的小さな各種金属材料、各種合金等、陰極として作用する材料が用いられる。例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、カルシウム、金、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、マグネシウムインジウム合金(MgIn)、銀合金等が挙げられる。
ボトムエミッション方式を採用する場合、陰極には、金属からなる不透明電極を用いることができる。また、陰極を反射電極とすることもできる。
トップエミッション方式を採用する場合、陰極には、ITO、IZO等の透明電極を用いることができる。ここで、ITOは仕事関数が大きいため、電子注入が困難となることに加え、ITO膜を形成するためには、スパッタ法やイオンビーム蒸着法が用いられるが、成膜時に電子輸送層等にダメージを与える可能性がある。そこで、電子注入を改善するとともに、成膜時の電子輸送層へのダメージを低減するために、電子輸送層と、ITOとの間に、マグネシウム層や銅フタロシアニン層を設けることもできる。
(化合物の合成)
実施例1
下記化学式(5)示される化合物を、以下に示す合成経路(S21)により合成した。
Figure 2015088714
下記化学式(418)に示される化合物を以下に示す方法により合成した。
Figure 2015088714
攪拌子を備え、アルゴン置換した300mLのシュレンク管に、4−ブロモジベンゾチオフェン(13.16g、50mmol)、アニリン(4.66g、50mmol)、酢酸パラジウム(225mg、1.0mmol)、トルエン(150mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(202mg、1.0mmol)、及びt−ブトキシカリウム(5.61g、50mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で6時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(150mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記一般式(418)に示される化合物を得た(収量10.7g、収率77.8%)。
H−NMR、DMSO−d6、δ:6.85(t、J=7.3Hz、1H)、6.98(d、J=7.8Hz、8H)、7.23(t、J=8.3Hz、2H)、7.32(d、J=7.8Hz、1H)、7.45(t、J=7.8Hz、1H)、7.50−7.53(m、2H)、8.01−8.03(m、2H)、8.17(s、1H)、8.33−8.35(m、1H)
下記化学式(5)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
Figure 2015088714
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管にN−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(0.55g、2.0mmol)、2,7−ジブロモ−9,9′−スピロビフルオレン(0.47g、1.0mmol)、酢酸パラジウム(9.0mg、0.04mmol)、トルエン(40mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(8.1mg、0.04mmo1)、及びt−ブトキシカリウム(0.22g、2.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で20時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(30mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記一般式(5)に示される化合物を得た(収量0.47g、収率54.5%)。
HPLCによる純度測定は、以下に示す条件で行った。
カラム「InertSustain、C18、5μm、4.6mm×150mm(逆相系)」、溶離液「アセトニトリル:THF=90:10」、流速「1.0ml/min」、UV検出器「254nm」
化合物の同定は、MSスペクトルにて分子イオンピークが目的物と一致したこと、及びプロトンNMRで行った。
H−NMR、CDCl δ:6.07(d、J=1.8Hz、2H)、6.74(d,J=7.8Hz、2H)、6.83(d、J=7.8Hz、4H)、6.90−6.97(m、6H)、7.07−7.18(m、8H)、7.38(t、J=7.8Hz、2H)7.47−7.50(m、4H)、7.66(d、J=7.3Hz、2H)、7.82(d、8.7Hz、2H)、7.88−7.91(m、2H)、8.09(d、J=7.0Hz、2H)、8.27−8.29(m、2H)
実施例2
下記化学式(6)に示される化合物を、以下に示す合成経路(S22)により合成した。
Figure 2015088714
下記化学式(6)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
Figure 2015088714
攪拌子を備え、アルゴン置換した100mLのシュレンク管にN−フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン−4−アミン(0.55g、2.0mmol)、2,2′−ジブロモ−9,9′−スピロビフルオレン(0.47g、1.0mmol)、酢酸パラジウム(9.0mg、0.04mmol)、トルエン(40mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(8.1mg、0.04mmol)、及びt−ブトキシカリウム(0.22g、2.0mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で20時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(30mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記一般式(6)に示される化合物を得た(収量0.38g、収率44.0%)。
HPLCによる純度測定は、以下に示す条件で行った。
カラム「InertSustain、C18、5μm、4.6mm×150mm(逆相系)」、溶離液「アセトニトリル:THF=90:10」、流速「1.0ml/min」、UV検出器「254nm」
化合物の同定は、MSスペクトルにて分子イオンピークが目的物と一致したこと、及びプロトンNMRで行った。
H−NMR、DMSO−d6 δ:6.30(s、2H)、6.62(d,J=7.8Hz、2H)、6.81(d、J=7.4Hz、4H)、6.89(dd、J=2.3Hz、8.2Hz、2H)、7.00(q、J=7.4Hz、4H)、7.09(d、J=6.9Hz、2H)7.18−7.28(m、6H)、7.44−7.48(m、6H)、7.75−7.84(m、6H)、8.18(d、J=7.8Hz、2H)、8.31−8.33(m、2H)
下記化学式(217)に示される化合物を、以下に示す方法により合成した。
Figure 2015088714
攪拌子を備え、アルゴン置換した300mLのシュレンク管に、2‐ブロモジベンゾチオフェン(13.16g、50mmol)、アニリン(4.66g、50mmol)、酢酸パラジウム(225mg、1.0mmol)、トルエン(150mL)、トリ−t−ブチルホスフィン(202mg、1.0mmol)、及びt−ブトキシカリウム(5.61g、50mmol)を入れ、密閉した後に、100℃で18時間、攪拌した。その後、反応容器を室温付近まで放冷し、蓋を開け、そこに水(150mL)を入れた。内容物を分液ロートに移し、有機相と水相を分離させた後、水相を取り除き、さらに有機相を水洗した。有機相は硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、有機相を濃縮した。濃縮した得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)により精製し、目的とする上記一般式(419)に示される化合物を得た(収量7.85g、収率57.1%)。
化合物はMSスペクトルで同定した。
上記化学式(5)で示される化合物(実施例3)、上記化学式(6)で示される化合物(実施例4)、および化学式(9)で示されるNPAPF(比較例1)について、DSC測定を行った。ガラス転移温度の結果を表1に示す。
Figure 2015088714
表1に示すように化学式(5)、(6)で示される化合物は、熱安定性が比較的高いとされる化学式(9)で示される化合物と同様にTgが高く、熱安定性に優れる材料であることが分かる。
化学式(5)で示される化合物(実施例5)、化学式(6)で示される化合物(実施例6)、および化学式(9)で示される化合物(比較例2)からなる薄膜をそれぞれ石英基板上に形成した。これらの薄膜をSHIMADZU社製のUV−2500PCを用いてUV/visスペクトルをそれぞれ測定し、光学的バンドギャップを算出した。結果を表2に示す。
Figure 2015088714
化学式(5)で示される化合物からなる薄膜(実施例7)、および化学式(9)で示される化合物からなる薄膜(比較例3)を、HORIBA社製のFluoroMax−4を用い、波長300nmの励起光源を用いて、77Kの低温下で発光スペクトルをそれぞれ測定し、各薄膜のTエネルギーを算出した。その結果を、以下の表3に示す。
Figure 2015088714
エネルギーの閉じ込めの観点から、正孔輸送層材料のTエネルギーは、ゲスト材料のTエネルギーよりも大きいことが好ましい。上記図に示す結果から、化学式(5)に示される化合物(実施例7)からなる正孔輸送層は、ゲスト材料としてIr(mppy)を用いた場合に、三重項励起状態(T)のエネルギーの閉じ込めが可能となる。したがって、化合物5を含む正孔輸送層と、ゲスト材料としてIr(mppy)を用いた発光層とを備えることで、発光効率の高い有機EL素子が得られることが推定できる。
「有機EL素子」
実施例8
基板上に、ITO(酸化インジウムスズ)からなる陽極と、PEDOT:PSSからなる厚み30nmの正孔注入層と、前記一般式(7)に示されるα−NPDからなる厚み20nmの第2正孔輸送層と、上記一般式(5)に示される化合物からなる厚み10nmの正孔輸送層と、ゲスト材料として前記一般式(360)に示されるIr(mppy)を用い、ホスト材料として前記一般式(330)に示されるBeppを用い、発光層中のゲスト材料の含有量を6重量%とした厚み35nm発光層と、下記一般式(391)に示されるTPBIからなる厚み40nmの電子輸送層と、LiF膜からなる厚み1nmの電子注入層と、Al膜からなる陰極とを公知の方法により順に形成した。
比較例4
正孔輸送層の材料を上記一般式(9)に示されるNPAPFに代えたこと以外は、実施例3と同様にして、比較例8の有機EL素子を形成した。
比較例5
正孔輸送層の材料を上記一般式(10)に示されるSPIRO−TTBに代えたこと以外は、実施例8と同様にして、比較例4の有機EL素子を形成した。
得られた実施例8、比較例4、及び比較例5の有機EL素子について、素子特性を調べた。電流密度1.0(mA/cm)の電圧と素子効率、および素子寿命の結果を表4に示す。
Figure 2015088714
図に示すように、上記一般式(5)に示される化合物からなる正孔輸送層を有する有機EL素子(実施例8)と、NPAPFからなる正孔輸送層を有する比較例4とを比較すると、素子効率、および素子寿命のいずれにおいても、実施例8の素子が大幅に改善していることが分かる。また、中心骨格がスピロビフルオレンで共通する、実施例8と、比較例5を比較しても、素子効率、および素子寿命のいずれにおいても本発明の化合物を用いた実施例8の素子が大幅に改善した結果となっている。これは、実施例8が、正孔輸送性材料として適切な電気的特性を有し、バンドギャップエネルギーおよびTエネルギーが大きいことに加え、熱安定性や電気的安定性が高いことよるものと考えられる。

Claims (17)

  1. 下記一般式(1)に示される化合物。
    Figure 2015088714
    〜Xは、各々独立して、水素、又は下記一般式(2)のいずれかから選ばれ、X〜Xのうち少なくとも一つが下記一般式(2)である。
    Figure 2015088714
    ここでR〜Rは、各々独立して、水素、置換基を有してもよいアルキル基、又はハロゲン基のいずれかから選ばれ、各々独立して、単数または複数存在していてもよく、複数存在する場合は、互いに同一又は異なる基であってもよい。
    Yは、置換基を有してもよい芳香族環式基を示す。
  2. 一般式(1)における、X〜Xが、各々独立して、水素、又は下記一般式(3)、若しくは下記一般式(4)のいずれかから選ばれ、X〜Xのうち少なくとも一つが下記一般式(3)、若しくは下記一般式(4)である、請求項1に記載の化合物。
    Figure 2015088714
    Figure 2015088714
    ここでR〜Rは、各々独立して、水素、置換基を有してもよいアルキル基、又はハロゲン基のいずれかから選ばれ、各々独立して、単数または複数存在していてもよく、複数存在する場合は、互いに同一又は異なる基であってもよい。
    Yは、置換基を有してもよい芳香族環式基を示す。
  3. 〜Xが水素以外であることを特徴とする、請求項1、又は請求項2に記載の化合物。
  4. が水素であることを特徴とする、請求項1、又は請求項2に記載の化合物。
  5. およびXが水素であることを特徴とする、請求項1、又は請求項2に記載の化合物。
  6. およびXが水素であることを特徴とする、請求項1、又は請求項2に記載の化合物。
  7. 、XおよびXが水素であることを特徴とする、請求項1、又は請求項2に記載の化合物。
  8. 〜Xの結合位が、それぞれスピロビフルオレン骨格の2位、7位、2’位、7’位であることを特徴とする請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の化合物。
  9. Yがフェニル基である、請求項1〜請求項8のうちいずれか一項に記載の化合物。
  10. 〜Rが水素である、請求項1〜請求項9のうちいずれか一項に記載の化合物。
  11. 下記化学式(5)に示される化合物。
    Figure 2015088714
  12. 下記化学式(6)に示される化合物。
    Figure 2015088714
  13. 電極、陽極、及びこれら両電極間に、有機化合物で形成された層を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記有機化合物で形成された層に請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 陽極、陰極、及びこれら両電極間に、電荷輸送材料を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記電荷輸送材料に、請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  15. 陽極、陰極、及びこれら両電極間に、正孔輸送層層を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記正孔輸送層に、請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  16. 陽極、陰極、及びこれら両電極間に、発光層、正孔輸送層層を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記発光層が、ホスト材料と、発光材料からなるゲスト材料とを含み、
    前記ホスト材料が、電子輸送性材料、又は電子と正孔の両電荷輸送性材料であって、
    前記正孔輸送層に、請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  17. ゲスト材料が、燐光材料であることを特徴とする請求項16に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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