本発明の液状ガスケット中、(A)成分のオキシアルキレン系重合体における架橋性珪素基は珪素原子に結合した加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。代表例としては、式(1):
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはR
2 3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基(R
2は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基)を示し、R
1が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2を、それぞれ示す。またn個の式(2):
におけるbは同一である必要はない。nは0〜19の整数を示す。但し、a+(bの和)≧1を満足するものとする。)で表わされる基があげられる。
該加水分解性基は1個の珪素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、a+(bの和)は1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性珪素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
架橋性珪素基を形成する珪素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合等により連結された珪素原子の場合には、20個程度あってもよい。
なお、式(3):
(式中、R1,X,aは前記と同じ)で表わされる架橋性珪素基が、入手が容易である点から好ましい。また、式(3)の架橋性珪素基においてaが2又は3である場合が好ましい。aが3の場合、aが2の場合よりも硬化速度が大きくなる。
上記R1の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、R2 3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が好ましい。
上記Xで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、たとえば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等があげられる。これらの中では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基がさらに好ましい。加水分解性が穏やかで取扱やすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものの方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほどに反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常メトキシ基やエトキシ基が使用される。式(3)で示される架橋性珪素基の場合、硬化性を考慮するとaは2以上が好ましい。
架橋性珪素基の具体的な例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の一般式、−Si(OR)3、で表されるトリアルコキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等の一般式、−SiR1(OR)2、で表されるジアルコキシシリル基、があげられる。ここでR1は前記と同じであり、Rはメチル基やエチル基のようなアルキル基である。
また、架橋性珪素基は1種で使用しても良く、2種以上併用してもかまわない。架橋性珪素基は、主鎖または側鎖いずれにも存在しうる。硬化物の引張特性等の硬化物物性が優れる点で架橋性珪素基が分子鎖末端に存在するのが好ましい。
架橋性珪素基は重合体1分子中に平均して少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在するのがよい。分子中に含まれる架橋性珪素基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、また多すぎると網目構造があまりに密となるため良好な機械特性を示さなくなる。特に、フタル酸エステル系可塑剤のような分子量800以下、さらには分子量1000以下の低分子量の可塑剤を含有しない、いわゆる無可塑配合の硬化性組成物を製造する場合には架橋性珪素基は重合体1分子中に平均して1.1〜1.5個、さらに好ましくは1.1〜1.3個存在するのがよい。また、無可塑配合の硬化性組成物の場合には直鎖状の重合体を使用するのが好ましい。
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は本質的に式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
式(4)におけるR3は、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好ましい。式(4)で示される繰り返し単位の具体例としては、例えば、
等があげられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。
ポリオキシアルキレン系重合体の具体的としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体を挙げることができる。特にオキシプロピレンを主成分とする重合体から成るのが好ましい。
ポリオキシアルキレン系重合体の分子量は硬化物の引張特性である引張モジュラスを小さくし破断時伸びを大きくする場合、大きいほうが好ましい。本発明においては、数平均分子量の下限としては5,000が好ましく、10,000がさらに好ましい。また、数平均分子量の上限は50,000が好ましく、30,000がさらに好ましい。なお、本発明でいう数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量をいう。数平均分子量が5,000未満の場合、引張モジュラスや破断時伸びが十分でない場合があり、50,000を超えると組成物の粘度が大きくなり作業性が低下することがある。
ポリオキシアルキレン系重合体は直鎖状でもよくまたは分岐を有してもよいが、硬化物の引張モジュラスを小さくし破断時伸びを大きくできるため直鎖状の重合体が好ましい。また、架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の分子量分布は2以下、特には1.6以下が好ましい。
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、たとえばKOHのようなアルカリ触媒による重合法、たとえば特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−215623号に示されるような有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる、有機アルミニウム−ポルフィリン錯体触媒による重合法、たとえば特公昭46−27250号および特公昭59−15336号などに示される複金属シアン化物錯体触媒による重合法等があげられるが、特に限定されるものではない。有機アルミニウム−ポルフィリン錯体触媒による重合法や複金属シアン化物錯体触媒による重合法によれば数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
上記ポリオキシアルキレン類の主鎖骨格中にはウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。ウレタン結合成分としては、たとえばトルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートと水酸基を有するポリオキシアルキレン類との反応から得られるものをあげることができる。
ポリオキシアルキレン系重合体への架橋性珪素基の導入は、分子中に不飽和基、水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させることにより行うことができる。以下、官能基を有する重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる架橋性珪素基の導入方法を高分子反応法という。ポリオキシアルキレン系重合体は分子鎖末端に水酸基等の官能基を導入しやすいため、末端に架橋性珪素基を導入しやすい。
高分子反応法の具体例として、不飽和基含有オキシアルキレン系重合体に架橋性珪素基を有するヒドロシランや架橋性珪素基を有するメルカプト化合物を作用させてヒドロシリル化やメルカプト化し、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を得る方法をあげることができる。不飽和基含有オキシアルキレン系重合体は水酸基等の官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、不飽和ハロゲン化合物のような、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
また、高分子反応法の他の具体例として、末端に水酸基を有するオキシアルキレン系重合体とイソシアネート基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる方法や末端にイソシアネート基を有するオキシアルキレン系重合体と水酸基やアミノ基等の活性水素基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる方法をあげることができる。イソシアネート化合物を使用すると、容易に架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。高分子反応法はオキシアルキレン系重合体以外の他の重合体にも適用することが可能である。
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の具体例としては、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同57−164123号、特公平3−2450号、特開2005−213446号、同2005−306891号、国際公開特許WO2007−040143号、米国特許3,632,557号、同4,345,053号、同4,960,844号等の各公報に提案されているものをあげることができる。
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体には架橋性珪素基を有する他の重合体を併用することができる。他の重合体の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができる。例えば、エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン等の飽和炭化水素系重合体、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル、および/またはスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸、テレフタル酸、琥珀酸等の多塩基酸とビスフェノールA、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールとの縮合重合体やラクトン類の開環重合体等のポリエステル系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをイオン重合やラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル共重合体等のアクリル酸エステル系重合体;ポリサルファイド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。
ポリオキシアルキレン系重合体と併用する重合体として(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が併用物の硬化物の機械強度に優れ、且つ、耐熱性や基材との接着性にも優れる特性を有するため、本発明に適している。架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の混合物を使用する場合、オキシアルキレン系重合体100質量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を5〜200質量部使用することが好ましく、5〜50質量部使用することがさらに好ましい。
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は本質的に式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
(式中、R
4は水素原子またはメチル基、R
5はアルキル基を示す)
式(5)におけるR5はアルキル基であり、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。R5は直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、ハロゲン原子やフェニル基等を有する置換アルキル基でもよい。R5の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基、グリシジル基等のエポキシ基置換アルキル基、ジエチルアミノエチル基等のアミノ基置換アルキル基等をあげることができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の分子鎖は本質的に式(5)の単量体単位からなるが、ここでいう本質的にとは該重合体中に存在する式(5)の単量体単位の合計が50重量%をこえることを意味する。式(5)の単量体単位の合計は好ましくは70重量%以上である。
式(5)以外の単量体単位の例としては、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位があげられる。
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は上記したように、オキシアルキレン系重合体と混合して使用されることがある。この場合、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体との相溶性が大きい点で、架橋性珪素基を有し分子鎖が、下記式(6):
(式中、R
4は前記に同じ、R
6は炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記式(7):
(式中、R
4は前記に同じ、R
7は炭素数6以上のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体が好ましい。
前記式(6)のR6としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜5、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2のアルキル基があげられる。なお、R6は一種でもよく、2種以上混合していてもよい。
前記式(7)のR7としては、たとえば2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素数6以上、通常は7〜30、好ましくは8〜20の長鎖のアルキル基があげられる。なお、R7は一種でもよく、2種以上混合したものであってもよい。また、式(6)の単量体単位と式(7)の単量体単位の存在比は、重量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40がさらに好ましい。
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをラジカル共重合して得ることができる。また、架橋性珪素基を有する開始剤や架橋性珪素基を有する連鎖移動剤を使用すると分子鎖末端に架橋性珪素基を導入することができる。
特開2001−040037号公報、特開2003−048923号公報および特開2003−048924号公報には架橋性珪素基を有するメルカプタンおよびメタロセン化合物を使用して得られる架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。また、特開2005−082681号公報合成例には高温連続重合による架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。
特開2000−086999号公報等にあるように、架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体であって架橋性珪素基が分子鎖末端に高い割合で導入された重合体も知られている。このような重合体はリビングラジカル重合によって製造されているため、高い割合で架橋性珪素基を分子鎖末端に導入することができる。本発明では以上に述べたような(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を使用することができる。
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体やこの重合体と架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の混合物の具体例は、特開昭59−122541号、同63−112642号、同特開平6−172631号等の各公報に記載されている。また、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報には、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行い、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の混合物を得る方法が記載されている。
オキシアルキレン系重合体以外の架橋性珪素基を有する重合体として飽和炭化水素系重合体を使用することができる。飽和炭化水素系重合体は芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体であり、その骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素原子数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させ、あるいは、オレフィン系化合物とを共重合させた後、水素添加するなどの方法により得ることができるが、イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体は、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましく、イソブチレン系重合体が特に好ましい。
主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体であるものは、耐熱性、耐候性、耐久性、及び、湿気遮断性に優れる特徴を有する。イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、他単量体との共重合体でもよいが、ゴム特性の面からイソブチレンに由来する繰り返し単位を50質量%以上含有するものが好ましく、80質量%以上含有するものがより好ましく、90〜99質量%含有するものが特に好ましい。
飽和炭化水素系重合体の合成法としては、従来、各種重合方法が報告されているが、特に近年多くのいわゆるリビング重合が開発されている。飽和炭化水素系重合体、特にイソブチレン系重合体の場合、Kennedyらによって見出されたイニファー重合(J. P. Kennedyら、 J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed.1997年、15巻、2843頁)を用いることにより容易に製造することが可能であり、分子量500〜100,000程度を、分子量分布1.5以下で重合でき、分子末端に各種官能基を導入できることが知られている。
架橋性珪素基を有する飽和炭化水素系重合体の製法としては、たとえぱ、持公平4ー69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開平1−197509号、特許公報第2539445号、特許公報第2873395号、特開平7−53882号の各明細書などに記載されているが、特にこれらに限定されるものではない。上記の架橋性珪素基を有する飽和炭化水素系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
本発明の液状ガスケットは、(B)成分として粘着付与樹脂を含有する。粘着付与樹脂を添加することにより、本発明の液状ガスケットは硬化後に粘着性を有しており、再接着した場合にも粘着性によりハウジング部材等の基材に対する強い接着性が得られる。
粘着付与樹脂の例として、スチレン系(共)重合体;クマロン−インデン樹脂、クマロン樹脂にナフテン樹脂、フェノール樹脂、ロジン等を混合したもの等のクマロン系樹脂;p−t−ブチルフェノール−アセチレン樹脂、重合度が低く低軟化点が60〜100℃程度のフェノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、粘着性のみならず接着性や耐熱性も向上させるテルペン−フェノール樹脂、テルペン樹脂等のフェノール系、テルペン系樹脂;合成ポリテルペン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂等の石油系炭化水素樹脂;ロジンやロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロール・エステル、水素添加ロジン、高度に水素添加したウッドレジン、水素添加ロジンのメチルエステル、水素添加ロジンのトリエチレングリコールエステル、水素添加ロジンのペンタエリスリトール・エステル、重合ロジン、重合ロジンのグリセロール・エステル、樹脂酸亜鉛、硬化ロジン等のロジン誘導体;低分子量ポリスチレン、その他の特殊調合品等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、難接着性材料への接着性を付与できる点でスチレン系重合体及び/又はスチレン系共重合体が特に好ましい。これらの粘着付与樹脂は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
上記スチレン系(共)重合体としては、従来公知のものを広く使用でき、特に限定されないが、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系単量体の1種以上を(共)重合して得られる(共)重合体が挙げられる。スチレン系重合体として、例えば、FTR−8100及びFTR−8120(いずれも製品名、三井化学社製)等を用いることができる。また、スチレン系共重合体として、スチレン系単量体の1種以上と、これと共重合可能な他の単量体の1種以上とを共重合させて得られる共重合体を用いることも可能である。共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、例えば、1−ヘプテン、エチル−1−ブテン及びメチル−1−ノネン等の炭素原子数が2〜12のα−オレフィン類;1,4−ペンタジエン及びジシクロペンタジエン等の非共役ジエン類等の不飽和化合物が挙げられる。スチレン系共重合体として、例えば、FTR−6100、FTR−6125及びFTR−7125(いずれも製品名、三井化学社製)等を用いることができる。上記スチレン系(共)重合体は、単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
(B)成分の配合割合は、(A)成分100質量部に対して、50〜250質量部用いることが好ましく、100〜250質量部用いることがより好ましく、130〜200質量部用いることが更に好ましい。50質量部未満であると、十分な粘着力が得られないため、好ましくない。250質量部を超えると、本発明の液状ガスケットを塗布する場合、流動性が低下し作業性が悪くなる可能性がある。
本発明の液状ガスケットは、(C)成分としてアミノシラン化合物を含有する。アミノシラン化合物を添加することにより、本発明の液状ガスケットは粘着付与樹脂と共に強い接着性が発現する。アミノシラン化合物は接着性付与剤として知られており、接着性付与剤にはアミノシラン以外にエポキシシラン、メルカプト基シラン、(メタ)アクリロイル基含有シラン、イソシアネートシランあるいは塩素原子含有シランなどが知られているがアミノシラン化合物を使用する必要がある。アミノシランを使用しないと硬化後の本発明の液状ガスケットを一旦剥離して再接着した場合、十分な接着強度を得ることができない。
アミノシラン化合物の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1,3−ジアミノイソプロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
アミノシラン化合物の使用量は(A)成分の架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体100質量部に対し、0.01〜0.8質量部にする必要がある。この範囲は通常使用されるアミノシラン化合物に比較し少量である。アミノシラン化合物を1.0質量部以上使用すると硬化後の本発明の液状ガスケットを最初に剥離した場合、小さい力でハウジング部材を取り外すことができず、取り外し時にガスケットが破断し一方のハウジング部材に残らない場合がある。このようにアミノシラン化合物の使用量は通常より少ない量である、0.01〜0.8質量部以下にすることが重要である。
本発明の液状ガスケットにはアミノシラン化合物に加えてエポキシシラン等の他の接着性付与剤を添加してもよい。アミノシラン化合物以外の接着性付与剤の例としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等の塩素原子含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート含有シラン類等を挙げることができる。
本発明の液状ガスケットには(D)成分としてシラノール縮合触媒を使用することができる。シラノール縮合触媒は(A)成分である架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を架橋硬化するための触媒である。シラノール縮合触媒の例としては、アルキルチタン酸塩、有機珪素チタン酸塩、ビスマストリス2−エチルヘキソエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジジバーサテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の如きカルボン酸の金属塩:ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等の如きアミン塩:並びに他の酸性触媒および塩基性触媒をあげることができる。これらの中では有機錫化合物が好ましく、4価の錫化合物がさらに好ましく、ジオクチル錫ジバーサテート等の4価の錫化合物であるジオクチル錫化合物が特に好ましい。
4価の錫化合物、特にジオクチル錫化合物、を使用する場合、アミノシラン化合物が助触媒となり硬化速度を大きくすることが判明した。しかし、本発明の液状ガスケットではアミノシラン化合物の使用量が少ないため、アミノシラン化合物が助触媒として十分作用しない。本発明者等は(E)成分として架橋性珪素基を有しないアミン化合物をさらに添加することにより、液状ガスケットのハウジング部材等基材に対する接着性を大きくせずに硬化速度が大きくなることを見出した。(E)成分のアミン化合物としては、第一〜第三級アミンを使用できる。特にエポキシ樹脂の硬化剤として使用されているアミンを好適に使用できる。
第一級アミンとしては脂肪族アミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ポリメチレンジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン))、脂環族アミン(メンセンジアミン)、芳香環を含む脂肪族アミン(メタキシレンジアミン)、芳香族アミン(メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、芳香族ジアミン共融混合物)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ〔5,5〕ウンデカン)、変性アミン(アミンアダクト、シアノエチル化ポリアミン)を例示できる。第二級及び第三級アミンとしては直鎖第二級アミン、直鎖第三級アミン、テトラメチルグアニジン、ピペリジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリスジメチルアミノフェノールを例示できる。
シラノール縮合触媒(D)を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、通常0.1〜20質量部の範囲、好ましくは0.2〜10質量部の範囲で使用するのが良い。また、架橋性珪素基を有しないアミン化合物(E)を助触媒として併用する場合には(A)成分100質量部に対し、架橋性珪素基を有しないアミン化合物を0.1〜20質量部の範囲、好ましくは0.2〜10質量部の範囲で使用するのが良い。
本発明の液状ガスケットには(F)成分として充填剤を使用することができる。充填剤の例としては、フュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、硬化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、水添ヒマシ油およびシラスバルーン、などの如き充填剤;石綿、ガラス繊維およびフィラメントの如き繊維状充填剤等が使用できる。
これらの充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理膠質炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤を使用すれば好ましい結果が得られる。この中で、ヒュームドシリカ、表面処理膠質炭酸カルシウムあるいはカーボンブラックは平均粒径が1μm以下と粒径が小さく、これらの充填剤を使用すると本発明の液状ガスケットが未硬化の状態で塗布された場合、タレ等が生じず(チクソ性が優れる)作業性がよくなる。特に、ヒュームドシリカ及び/又は表面処理膠質炭酸カルシウムとカーボンブラックを組み合わせるとチクソ性が優れ、作業性が良好な液状ガスケットを得ることができる。
また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどから選ばれる充填剤を使用すれば好ましい結果が得られる。もちろんこれらの充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
充填剤を使用する場合、通常の接着剤やシーリング材の場合よりやや少量添加することが好ましく、(A)成分100質量部に対し、0.1〜300質量部の範囲、好ましくは1〜200質量部の範囲、さらに好ましくは5〜100質量部で使用するのが良い。ヒュームドシリカ及び/又は表面処理膠質炭酸カルシウムとカーボンブラックを組み合わせる場合、ヒュームドシリカの量あるいは表面処理膠質炭酸カルシウムの量あるいはヒュームドシリカ及び/又は表面処理膠質炭酸カルシウムの量は上記とほぼ同様、(A)成分100質量部に対し、0.1〜300質量部の範囲、好ましくは1〜200質量部の範囲、さらに好ましくは5〜100質量部で使用するのが良い。ヒュームドシリカ及び表面処理膠質炭酸カルシウムを併用する場合、ヒュームドシリカと表面処理膠質炭酸カルシウムの比は質量比で1/100〜100/1が好ましく、1/100〜1/10がさらに好ましい。また、カーボンブラックの量は(A)成分100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲、さらには0.1〜5質量部で使用するのが好ましい。
本発明の液状ガスケットには、さらに、脱水剤、酸化防止剤、光安定剤、希釈剤、可塑剤、滑剤、顔料、発泡剤などを必要に応じて添加することができる。
脱水剤は(A)成分の架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体が保存中に架橋することを防止する。脱水剤としてシリケート挙げることができる。例えば、テトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物があげられ、より具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)、および、それらの部分加水分解縮合物が挙げられる。また、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類、フェニルトリメトキシシラン等のフェニル基含有シラン類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類を使用することもできる。
脱水剤の配合割合は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。脱水剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、p−フェニレンジアミン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤や、二次酸化防止剤としてリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤の添加量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部の範囲で使用できる。
光安定剤は各種のものが知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー化学発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242)等に記載された種々のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。光安定剤の中でも、紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上いずれも日本チバガイギー社製)等のようなベンゾトリアゾール系化合物やチヌビン1577等のようなトリアジン系、CHIMASSORB81等のようなベンゾフェノン系、チヌビン120(日本チバガイギー社製)等のようなベンゾエート系化合物等が例示できる。
また、ヒンダードアミン系化合物も好ましく、そのような化合物は具体的には特開2006−274084号公報記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。更には紫外線吸収剤とヒンダードアミン系化合物の組み合わせはより効果を発揮することがあるため、特に限定はされないが併用しても良く、併用することが好ましいことがある。光安定剤は前述した酸化防止剤と併用しても良く、併用することによりその効果を更に発揮し、特に耐候性が向上することがあるため特に好ましい。予め光安定剤と酸化防止剤を混合してあるチヌビンC353、チヌビンB75(以上いずれも日本チバガイギー社製)などを使用しても良い。
光安定剤の使用量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲であることが好ましい。0.1質量部未満では耐候性を改善の効果が少なく、10質量部超では効果に大差がなく経済的に不利である。
希釈剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ガソリンから灯油留分にいたる石油系溶剤類、ジメチルアジペート(DMA)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素系溶剤等が挙げられる。
希釈剤を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、通常0.5〜50質量部の範囲、好ましくは1〜30質量部の範囲で使用するのが良い。
可塑剤の具体例としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪族エステル類;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル等のリン酸エステル類;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類等のポリエステル系可塑剤類;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン−ナフテン系混合炭化水素等の炭化水素系可塑剤類;塩素化パラフィン類;低分子量のアクリル酸エステル重合体等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で使用しても良い、2種類以上併用しても良い。特にアクリル酸エステル重合体を使用すると硬化物の耐候性を改善することができる。可塑剤を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、通常5〜100質量部の範囲、好ましくは10〜50質量部の範囲で使用するのが良い。
本発明の液状ガスケットを製造する方法は特に制限はなく、例えば、配合物質を所定量配合し、脱気攪拌することにより製造することができる。本発明の液状ガスケットは、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできるが、特に1液型として好適に用いることができる。本発明の液状ガスケットは大気中の湿気により常温で硬化することが可能であり、常温湿気硬化型液状ガスケットとして好適に用いられるが、必要に応じて、適宜、加熱により硬化を促進させてもよい。また、本発明の液状ガスケットは、引火点が65℃未満の溶剤を含有しないことが好ましい。
本発明の液状ガスケットが使用される小型携帯電子機器は、特に制限されない。例えば、携帯通信機器(例えば携帯電話機、PDA端末、スマートフォン、タブレット等)、携帯型パーソナルコンピューター、デジタル時計、携帯型ラジオ、携帯型テレビ、デジタルカメラ、携帯デジタルビデオレコーダー、携帯型CDプレーヤー、MDプレイヤー、DVDプレーヤー、MP3プレーヤー、デジタルレコーダーなどの携帯型の録音・録画再生装置などが上げられる。また、本発明の液状ガスケットは内部の電子回路、メモリー、CPUあるいはバッテリー部分を個別に保護するために使用することもできる。
本発明の液状ガスケットは、本体や蓋体等の複数のハウジング部材の一方あるいは双方のシールすべき箇所に塗布し、ハウジング部材を合体して使用される。架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体は空気中の湿分によって硬化するので、ハウジング部材を合体後放置しておけば硬化が進行する。硬化速度を大きくしたい場合には加熱することも可能である。
ハウジング部材には塗布すべき箇所に溝を設け、液状ガスケットを固定することも可能であるが、溝は必須ではない。ハウジング部材の材料としてはポリアミド樹脂(ナイロン等)、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PMMA樹脂などの合成樹脂、これらの合成樹脂にガラス繊維を添加し強化した合成樹脂、SUS、軟鋼板等の金属、ガラス等のセラミックス等を使用できる。これらの中では合成樹脂、特に、ガラス繊維で強化した合成樹脂、が好ましい。
本発明の液状ガスケットは小型携帯電子機器をリワークする場合有用である。リワークする場合、まず、本体と蓋体等のハウジング部材を分離するが、本発明の液状ガスケットは通常の接着剤のように基材と強固に接着していないので、比較的容易に分離することができる。この際、液状ガスケットは全体が一方のハウジング部材に残り、一部が他方のハウジング部材に残ることはなく(糊残りがない)、きれいに界面剥離する。
シールされているハウジング部材の材料が異なる場合には、液状ガスケットは剥離強度が大きい材料のほうに残る。また、シールされているハウジング部材の材料が同じ場合には、液状ガスケットを塗布した側のハウジング部材に液状ガスケットが残る。片方のハウジング部材に設けられた溝などにより機械的にガスケットが固定されている場合、液状ガスケットは固定されている側のハウジング部材に残る。また、ハウジング部材を分離する際、液状ガスケットの一部を強制的に剥離すると剥離した側のハウジング部材において液状ガスケットが剥離する。いずれにしても、液状ガスケットが剥離する側においては基材との界面できれいに剥離し、糊残りはない。
ハウジング部材を分離して、不良部分を交換した後、新たに液状ガスケットを塗布することなく、一方のハウジング部材に残っている液状ガスケットを用い、再度シールすることができる。
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
(合成例1)
ポリオキシプロピレンジオールにナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、さらに生成した金属塩を水により抽出除去して、末端にアリル基を有するポリオキシプロピレンを得た。得られたアリル基末端ポリオキシプロピレンに対し、白金ビニルシロキサン錯体のイソプロパノール溶液を添加し、トリメトキシシランを反応させ、PPG(ポリプロピレングリコール)換算の質量平均分子量が約25000、1分子当たり平均1.5個の末端トリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体A1を得た。
(合成例2)
ポリオキシプロピレントリオールにナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、さらに生成した金属塩を水により抽出除去して、末端にアリル基を有するポリオキシプロピレンを得た。得られたアリル基末端ポリオキシプロピレンに対し、白金ビニルシロキサン錯体のイソプロパノール溶液を添加し、トリメトキシシランを反応させ、PPG換算の質量平均分子量が約20000、1分子当たり平均2個の末端トリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体A2を得た。
(合成例3)
フタル酸ジイソノニルにジオクチル錫オキサイドを混合し、100℃にて加温し溶解させ、シラノール縮合触媒を得た。
(実施例1)
表1に示す配合割合(質量基準)にて、攪拌機、温度計、窒素導入口、モノマー装入管および水冷コンデンサーを装着したフラスコに、合成例1で得られた架橋性珪素基を有するオキシプロピレン系重合体A1、合成例2で得られた架橋性珪素基を有するオキシプロピレン系重合体A2、粘着性付与樹脂、充填剤として表面処理膠質炭酸カルシウム及びヒュームドシリカ、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤及び可塑剤として末端水酸基オキシプロピレン系重合体を混合した。該混合物を加熱(100℃)、脱気、撹拌を2時間することによって混練及び脱水をした。冷却後、その混合物にアミノシラン化合物として3−アミノプロピルトリメトキシシラン、シラノール縮合触媒として合成例3で得られた4価錫化合物、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン及び希釈剤としてノルマルパラフィンを添加し混合撹拌することにより液状ガスケットを調製した。
調製した液状ガスケットについて、硬化性、作業性、防水性、剥離性、剥離した液状ガスケットの防水性の評価を行った。評価方法は次の通りである。
(硬化性)
JIS A 1439 5.19 タックフリー試験に準じて、23℃RH50%の環境下にて得られた液状ガスケットの指触乾燥時間(TFT)を測定し、硬化性の評価を行った。20分以内を◎、21〜45分以内を○、45〜120分を△、121分以上を×とした。
(吐出性)
内径0.61mmのニードルを吐出用ニードルとして備えたディスペンサーロボットを用いて5秒間100kPaの圧力をかけ、得られた液状ガスケットの吐出量を測定した。吐出量が10.0mg以上を○、5.0〜9.9mg以内を△、4.9mg以下を×とした。
(タレ性)
吐出性の評価に用いたディスペンサーロボットから吐出されたビードの経時的なタレ(変形)を評価した。全くタレがないものを◎、少しタレがあるものを○、かなりタレがあるものを△、大きくタレがあるものを×とした。
(初期防水性)
内径0.61mmのニードルを吐出用ニードルとして備えたディスペンサーロボットを用いて、縦130.00mm、横60.00mm、厚さ2.00mmのガラス繊維で強化されたポリカーボネート板に得られた液状ガスケットを塗工し、もう一枚の同じ大きさのアルマイトアルミニウムを重ね合わせ液状ガスケットを硬化させた。水深1.0mの水槽に、重ね合わせて張り合わせたポリカーカーボネート−アルマイトアルミニウム板を30分間没し、ガスケット内側への水の浸入の有無を目視にて判定した。水の浸入がないものを○、水の侵入があるものを×とした。
(剥離性)
重ね合わせて張り合わせたポリカーカーボネート−アルマイトアルミニウム板をはがしポリカーボネートもしくはアルマイトアルミニウムと接着剤間で破断する界面破壊を○、接着剤の凝集破壊を×とした。なお、すべての実施例において界面剥離の場合、ガスケットはアルマイトアルミニウムに残って剥離した。
(剥離した液状ガスケットの防水性)
重ね合わせて張り合わせたポリカーカーボネート−アルマイトアルミニウム板を一度はがした後、再び張り合わせた。23℃50%RHの環境下で24時間放置後、水深1.0mの水槽に、再び張り合わせたポリカーカーボネート−アルマイトアルミニウム板を30分間没し、ガスケット内側への水の浸入の有無を目視にて判定した。水の浸入がないものを○、水の侵入があるものを×とした。
(実施例2〜4)
表1に示した粘着性付与樹脂量を使用した以外は実施例1と同様に液状ガスケットを調製し、各特性の評価を行った。
(実施例5〜6)
表1に示した粘着性付与樹脂量及びアミノシラン化合物量を使用した以外は実施例1と同様に液状ガスケットを調製し、各特性の評価を行った。
(比較例1〜2)
表1に示した粘着性付与樹脂量及びアミノシラン化合物量を使用した以外は実施例1と同様に液状ガスケットを調製し、各特性の評価を行った。
(実施例7)
表1に示したカーボンブラックをさらに使用した以外は実施例3と同様に液状ガスケットを調製し、各特性の評価を行った。
(実施例8)
表1に示した架橋性珪素基を有しないアミン化合物をさらに使用した以外は実施例3と同様に液状ガスケットを調製し、各特性の評価を行った。
(実施例9)
表1に示したカーボンブラック及び架橋性珪素基を有しないアミン化合物をさらに使用した以外は実施例3と同様に液状ガスケットを調製し、各特性の評価を行った。
(実施例10〜13、比較例3〜4)
ガラス繊維で強化されたポリカーボネート板に代えて、ガラス繊維で強化されたポリアミド樹脂を使用した以外は実施例1〜4、比較例1〜2と同様に評価を行った。結果を表2に示す。なお、ガラス繊維で強化されたポリアミド樹脂に代えてガラス繊維で強化されたポリカーボネート−ABS樹脂アロイ、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、化学強化ガラスを使用した以外は実施例10〜13、比較例3〜4と同様の評価を行ったが、同様の評価結果が得られた。また、実施例1〜9の液状ガスケットを実際にガラス繊維で強化されたポリアミド樹脂製のハウジング部材を有する携帯電話のシールに使用したが、十分な防水性リワーク性を有していた。
表の配合における添加量は質量部で示され、配合物質の詳細は下記の通りである。
*1 合成例1で得られた重合体A1、直鎖状で質量平均分子量が25000であり主鎖構造がポリオキシアルキレンであり、架橋性珪素基としてトリメトキシシリル基を有する重合体
*2 合成例2で得られた重合体A2、分岐状で質量平均分子量が20000であり主鎖構造が実質的にポリオキシアルキレンであり、架橋性珪素基としてトリメトキシシリル基を有する重合体
*3 三井化学(株)製、商品名:FTR6100
*4 信越化学工業(株)製、商品名:KBM−903
*5 合成例3で得られた4価錫化合物
*6 コグニス社製、商品名:バーサミンEH30
*7 白石工業(株)製、商品名:カルファイン500
*8 (株)トクヤマ製、商品名:レオロシールQS−20
*9 三菱化学、商品名:MCF88
*10 信越化学工業(株)製、商品名:KBM−1003
*11 SONGWON社製、商品名:SONGONOX 2450
*12 JX日鉱日石エネルギー(株)製、商品名:N−11
*13 三井化学(株)製、商品名:三井ポリオールDiol−3000、分子量3000