JP2015083929A - ケーブルの金属被の繰り返し曲げ試験方法及び繰り返し曲げ試験装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ケーブル10を収容する管状の金属被17に弾性波を検出する検出素子20を設けた状態で、金属被に対して曲げを生じさせる動作を繰り返し付与し、曲げを生じさせる動作の開始から検出素子が金属被の破断発生による弾性波を検出するまでの曲げ回数を測定する。
【選択図】図1
Description
従来の繰り返し曲げ試験方法は、金属被の両端部を塞いで内部を密閉した状態でその内部に大気圧以上の圧力でガスを充填すると共に金属被の内部に設けた圧力センサーで内部圧力を監視する。そして、金属被の一端部に対して所定振幅で往復動作を付与し、曲げ疲労により破断が生じ、内部のガスが漏出して圧力の低下が検出されたときの往復動作の回数を求めることで、繰り返し曲げ疲労の評価を行っていた(例えば、非特許文献1参照)。
従って、防食層を形成する金属被について繰り返し曲げ疲労の評価を行う場合には、金属被に防食層が形成された状態で行うことが望ましい。即ち、防食層がない状態の金属被の試験を行えば、繰り返し曲げ疲労について実際の使用状態よりも耐久性が低く見積もられるため、金属被に対して必要以上の強度が要求されることになる。
しかしながら、非特許文献1の繰り返し曲げ試験方法では、内部に充填したガスの漏出による内部圧力の低下から破断を検出する方法を採っている。このため、防食層を形成した金属被で同じ試験を行うと、破断箇所から漏出したガスは金属被と防食層との間に侵入して圧力低下が発生せず、破断を検出することができないという問題があった。
従って、上記弾性波を検出素子により検出することで、破断の発生を検出することができることから、破断に至るまでの曲げ回数を測定することが可能となる。
そして、金属被に防食層が形成されている場合でも金属被の破断時の弾性波は伝搬して検出可能であるため、防食層を形成した状態の金属被について、繰り返し曲げ試験における曲げ回数をより正確に測定することが可能となる。
また、これにより、防食層を形成した金属被の繰り返し曲げに対する耐久性をより正確に評価することができるので、実際の使用環境に応じた適正な強度で金属被を設計することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について図1〜3を参照して説明する。
図1はケーブルの金属被の繰り返し曲げ試験装置100の構成を示している。この繰り返し曲げ試験装置100は、ケーブルとしての電力ケーブル10を収容する管状の金属被17から生じる弾性波を検出する検出素子としてのAE(Acoustic Emission)センサー20と、金属被17に対して曲げを生じさせる動作を繰り返し付与する曲げ動作付与機構30と、曲げ動作付与機構30の動作開始からAEセンサー20が金属被17の破断発生による弾性波を検出するまでの曲げ回数を測定する測定部としてのパーソナルコンピューター(以下、「PC」とする)70と、AEセンサー20からの検出信号の波形を表示するオシロスコープ60とを備えている。
試験に供する電力ケーブル10は、図2に示すように、導体11を中心として内部半導電層12、絶縁層13、外部半導電層14、遮蔽層15、半導電性テープ層16が内側から順番に形成されている。
そして、上記電力ケーブル10を収容する金属被17は、ステンレス製の波付き管からなり、当該金属被17の外周全体にはコールタールやビニール等の樹脂からなる防食層18が被覆形成されている。
上記繰り返し曲げ試験装置100では、防食層18が形成された金属被17に対して、電力ケーブル10が収容されていない状態で繰り返し曲げ試験を実施する。
曲げ動作付与機構30は、主に、複数の固定金具32により金属被17の一端部を片持ちの状態で固定支持するテーブル31と、自由端となる金属被17の他端部に装着される保持枠33と、金属被17の他端部に対して上下動を付与するための駆動源となるモーター37と、全体構成を支持するフレーム40とを備えている。
上記ピニオン歯車36は、ラック歯35に噛合し、モーター37の駆動により棒状体34を介して保持枠33に上下動を付与することが可能となっている。
モーター37は、例えば、ステッピングモーターであり、PC70からの制御指令に従ってモータードライバー39が駆動させる。
繰り返し曲げ試験では、予め定めされた位置まで金属被17の一端部を上昇させた後に予め定めされた位置まで金属被17の一端部を下降させ、その後に元の高さに戻す上下方向の往復動作を繰り返し実行させる。
また、上述の往復動作のストロークは、PC70により任意に変更することが可能となっている。
AEセンサー20は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛等のセラミック圧電素子を備え、当該圧電素子を内蔵するケースが機械的共振を生じる構造を有することにより、特定の周波数の弾性波を高感度で検出することが可能な検出素子である。
上記AEセンサー20は例えば、60[kHz]〜1[MHz]の範囲弾性波を高感度で検出することが可能である。この帯域は、金属の変形及び破断の際に生じる弾性波の帯域を含んでいる。これにより、曲げ動作付与機構30の作動音やその他のノイズの影響を抑えて専ら金属被17の破断発生時の弾性波を効果的に検出することができる。
なお、上述したAEセンサー20の高感度検出帯域の数値は一例であり、測定の対象とする金属被17の材質、寸法等に応じて適切な検出帯域のAEセンサー20を選択することが望ましい。
オシロスコープ60は、増幅されたAEセンサー20からの検出信号を時系列の波形に変換してモニターに表示する。
PC70は、オシロスコープ60を介してAEセンサー20と接続され、モータードライバー39を介してモーター37と接続されている。
PC70は、モータードライバー39を通じてモーター37に対して上下方向の往復動作を行うための動作指令を繰り返し出力する。また、PC70は、金属被17に対する曲げ回数をカウントしており、モータードライバー39に対して一往復分の動作指令を出力する毎に金属被17の曲げ回数を一つカウントアップする。
図3は曲げ動作が付与されている金属被17に取り付けられたAEセンサー20の検出信号の出力波形を示しており、横軸は経過時間、縦軸は検出された振動振幅の大きさを示している。そして、図中の符号Tは金属被17に破断が発生した時間であり、弾性波の振動振幅が、破断の発生直後から破断前に比較して急激に大きくなっていることが分かる。
PC70は、破断が生じていないときの曲げ動作時に発生する弾性波の検出による振動振幅と金属被17の破断時に発生する弾性波の検出による振動振幅との間の範囲で閾値を定めている。これにより、AEセンサー20が出力する弾性波の振動振幅が閾値を超える場合に金属被17に破断が発生したことを検出できる。
さらに、PC70は、AEセンサー20の出力から金属被17の破断を検出すると、前述した曲げ回数のカウントを終えて、それまでに積算されたカウント値を破断までの曲げ回数として記録する。この時、当該曲げ回数に関連づけて、金属被17に加えられていた上下方向の往復動作のストロークの値も同時に記録する。
上下方向の往復動作のストロークは金属被17に生じる歪み量であり、この値から金属に17に加えられた応力を算出することができる。
例えば、同一仕様の金属被17に対して、複数の異なるストロークで破断までの曲げ回数を計測することにより、金属被17のS−N曲線を求めることが可能である。なお、Sは金属被17に加えられた応力(歪み)であり、Nは破断までの曲げ回数を示している。即ち、PC70は、複数の異なるストロークで破断までの曲げ回数を計測し、収集したデータからS−N曲線を求め、モニターに表示することが可能となっている。
上記繰り返し曲げ試験装置100を用いて行われる繰り返し曲げ試験方法について、順を追って説明する。
まず、防食層18が形成された金属被17の一端部側を曲げ動作付与機構30のテーブル31に固定する。そして、片持ち状態となった金属被17の他端部に保持枠33を装着する。また、金属被17の自由端側にAEセンサー20が取り付けられる。
そして、PC70は、モーター37の駆動を開始させると共に動作指令をカウントして金属被17の曲げ回数のカウントを開始する。
また、PC70は、モーター37の駆動開始と同時にAEセンサー20の検出する弾性波の振動振幅が閾値を超えるか否かを監視する。
一方、金属被17は、自由端側に上下の往復動作が付与されてその都度変形により音が発生し、弾性波としてAEセンサー20に検出されが、破断を伴わない変形に基づく弾性波の振動振幅は閾値を超えるレベルには達しない。
そして、金属被17が繰り返される曲げ動作により破断を生じると、単なる変形の場合よりも大きな音が発生し、AEセンサー20が検出する弾性波の振動振幅が閾値を超える。
これにより、PC70は、モーター37を停止させると共にそれまでに積算された曲げ回数を記録する。即ち、金属被17の繰り返し曲げ試験における破断に至るまでの曲げ回数が計測され、当該曲げ回数と上下方向の往復動作のストロークの値とが記録される。
以上のように、繰り返し曲げ試験装置100によれば、金属被17に対する繰り返しの曲げ動作によって生じる破断時の音に基づく弾性波をAEセンサー20で検出するので、密閉した状態での内部圧力の低下から破断を検出する場合のように、防食層18の影響を受けることなく破断の発生をより精度良く検出することが可能である。
このため、防食層18が形成された金属被17について、繰り返し曲げ試験における破断に至るまでの曲げ回数をより正確に計測することが可能となる。
従って、金属被17の繰り返し曲げ疲労に対する耐久性を正しく評価することができ、金属被17の強度を必要以上に高めることなく正しく設計することが可能となる。
また、AEセンサー20により金属被17の破断時の弾性波を検出するので、周囲の雑音等による弾性波の影響を抑制しつつ、金属被17の破断時の弾性波をより精度良く検出することが可能である。
上記実施形態では、絶縁油を使用しないCVケーブル等の電力ケーブル10を収容する金属被17を繰り返し曲げ試験の測定対象とする場合を例示したが、例えば、絶縁油を含んだ絶縁紙を絶縁層とするいわゆるOFケーブルを収容する金属被を測定対象とすることも可能である。
また、超電導導体を導体とした超電導ケーブルを収容して内部に冷媒を充填するための金属被を繰り返し曲げ試験の測定対象とすることも可能である。
さらに、送電用のケーブルに限らず、光ファイバー等のデータ伝送用の通信ケーブルを収容する金属被を繰り返し曲げ試験の測定対象とすることも可能である。
また、曲げ動作付与機構30の機構構造は上記のものに限られず、例えば、金属被17の端部に任意のストロークで曲げ動作を繰り返し付与することが可能であれば、異なる機構構造を用いてもよい。
17 金属被
18 防食層
20 AEセンサー(検出素子)
30 曲げ動作付与機構
70 PC(測定部)
100 繰り返し曲げ試験装置
Claims (4)
- ケーブルを収容する管状の金属被に弾性波を検出する検出素子を設けた状態で、前記金属被に対して曲げを生じさせる動作を繰り返し付与し、
前記曲げを生じさせる動作の開始から前記検出素子が前記金属被の破断発生による弾性波を検出するまでの曲げ回数を測定することを特徴とするケーブルの金属被の繰り返し曲げ試験方法。 - 前記検出素子は、AE(Acoustic Emission)センサーであることを特徴とする請求項1記載のケーブルの金属被の繰り返し曲げ試験方法。
- ケーブルを収容する管状の金属被から生じる弾性波を検出する検出素子と、
前記金属被に対して曲げを生じさせる動作を繰り返し付与する曲げ動作付与機構と、
前記曲げを生じさせる動作の開始から前記検出素子が前記金属被の破断発生による弾性波を検出するまでの曲げ回数を測定する測定部とを備えることを特徴とするケーブルの金属被の繰り返し曲げ試験装置。 - 前記検出素子は、AE(Acoustic Emission)センサーであることを特徴とする請求項3記載のケーブルの金属被の繰り返し曲げ試験装置。
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