JP2015083855A - 超電導磁気軸受及び冷却装置 - Google Patents
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Abstract
Description
この問題を解決するために、従来、超電導コイルと超電導体が配置される回転軸とが収容される空間にガスを充填するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構成では、超電導コイルと超電導体との熱伝達が輻射だけでなく、ガスによる対流、伝導が加わるため、熱伝達が良くなり超電導体を効率良く冷却することができる。
また、超電導磁気軸受を含む装置全体を輻射シールドで覆うことで、外部からの熱侵入を抑制し、冷却源の熱負荷の低減を図ったものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
そこで、本発明は、冷却源の熱負荷を簡単に低減できる超電導磁気軸受及び冷却装置を提供することを目的とする。
この構成によれば、スロート部の内表面の少なくとも一部及び回転軸の外表面の少なくとも一部に鏡面処理が施されたため、スロート部と回転軸との隙間を通じて輻射熱が侵入することが抑制される。従って、超電導体を効率良く冷却することができ、冷却源の熱負荷を簡単に低減できる。
また、本発明によれば、スロート部の内表面の少なくとも一部及び柱状体の外表面の少なくとも一部に鏡面処理が施されたため、スロート部と柱状体との隙間を通じて輻射熱が侵入することが抑制される。従って、被冷却体を効率良く冷却することができ、冷却源の熱負荷を簡単に低減できる。
図1は、本実施形態にかかる超電導磁気軸受が搭載された超電導フライホイール電力貯蔵装置(以下、電力貯蔵装置という)の概略構成図である。
電力貯蔵装置1は、モータ/発電機11と、フライホイール13と、このフライホイール13の回転軸14を回転自在に支持する超電導磁気軸受15とを有し、電力によりモータ/発電機11を回転させることによりフライホイール13を回転させ、電力を回転力に変換して蓄え、また、フライホイール13の回転力によりモータ/発電機11を回転させて発電することにより回転力を電力に変換して出力するように構成されている。
このように非接触式の電磁クラッチ装置19を設けることにより、モータ/発電機11の回転軸を常に回転させる必要がなくなり、このモータ/発電機11のロータが常時高速で回転することに伴う渦電流損失やモータ/発電機11のベアリングの回転損失等の損失を防ぐことができ、この電力貯蔵装置1の効率を向上させることができる。
具体的には、ケース体17の下方には冷却容器25が取り付けられ、この冷却容器25内に超電導磁気軸受15が格納される。冷却容器25は、断熱性の高い材料を用いて形成され、電力貯蔵装置1が設置された空間の雰囲気温度が超電導磁気軸受15に伝達されることを抑制している。
超電導バルク体31は、超電導コイル33に対して浮上状態となるように配置されるため、超電導バルク体31が設けられた回転軸14及びフライホイール13は、超電導コイル33と非接触状態で回転することができるように構成される。
また、超電導磁気軸受15には、図1に示すように、超電導コイル33を臨界温度以下に冷却するための熱伝導型の冷却装置41(冷却源)が取り付けられている。この冷却装置41は、例えばHe圧縮器42とHe冷却器等の極低温冷却器43とを備えて構成され、極低温冷却器43は、冷却容器25内に配置されて熱伝導部材34を介して超電導コイル33と伝熱可能となっている。このため、極低温冷却器43の冷熱が熱伝導部材34を介して、超電導コイル33に伝達されるため、この超電導コイル33は臨界温度以下に冷却される。
また、内槽35内には、He(ヘリウム)ガスが充填されている。これにより、超電導バルク体31は、臨界温度以下に冷却された超電導コイル33からの輻射熱で冷却されると共に、ヘリウムガスを介して伝熱によって冷却されるため、超電導バルク体31を効率良く冷却することができる。
この構成では、内槽35を熱伝導率の高い材料であるCuで形成しているため、内槽35の壁面が均等に冷却され、この壁面からの輻射及び伝熱によって超電導バルク体31を効率良く冷却することができる。
しかし、回転軸14の下端14Bを除いた他の部分(例えば、上端14A)は、内槽35の外部であるケース体17内に延在している。ケース体17内は、冷却されていないため、該ケース体17が設置される空間の雰囲気温度に近い温度となる。この雰囲気温度は、当然のことながら内槽35内の冷却温度に比べて高い温度となるため、回転軸14の中に温度の高い部分と低い部分による温度勾配が生じる。
温度勾配が生じると、伝達及び輻射によって、温度の高い高温側部分(上端14A)から低い低温側部分(下端14B)に熱が侵入するため、その分、冷却装置41の熱負荷が高くなることが想定された。
発明者達が、実験等を重ねたところ、図3に示すように、高温側部分の温度が100(K)を超えると、輻射による熱侵入が伝熱による熱侵入を大きく上回るという知見を得た。通常、ケース体17が設置される空間の雰囲気温度は、100(K)以上となるため、輻射による侵入熱を抑えて冷却装置41の熱負荷の低減を図ることが重要となっている。
本実施形態では、回転軸14及びスロート部37は、いずれも熱伝導率が10W/Kmよりも小さい材料である繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)で形成されている。この場合には、回転軸14の外周部及びスロート部37の内周部にそれぞれ、金属(例えば、SUS(ステンレススチール)またはTi(チタン))製のスリーブ(不図示)を取り付ける。回転軸14に取り付けたスリーブの外周面(回転軸14の外周面に相当)、及び、スロート部37に取り付けたスリーブの内周面(スロート部37の内周面に相当)のそれぞれ一部に鏡面処理を施せばよい。なお、回転軸14については、該回転軸を金属(例えば、SUS(ステンレススチール)またはTi(チタン))で形成し、この外周面の一部を鏡面処理しても良いことは勿論である。
発明者達の実験等によれば、鏡面処理は、スロート部37の上端37Bから該スロート部37の長さLの1/4以上半分以下の長さ(1/4L以上1/2L以下)離れた位置までの領域37A1に設けることが好ましいことが判明した。なお、符号37Cは、内槽35に接続されるスロート部37の下端(接続端)を示す。
[実施例1]
実施例1では、内槽35は残留抵抗比が100の高純度Cu(銅)で形成され、回転軸14及びスロート部37は、いずれも繊維強化プラスチックで形成されている。この回転軸14の外周及びスロート部37の内周には、それぞれSUS(ステンレススチール)製のスリーブ(不図示)が取り付けられている。回転軸14に取り付けられるスリーブの外周面(回転軸14の外周面14Cに相当)、及び、スロート部37に取り付けられるスリーブの内周面(スロート部37の内周面37Aに相当)にはそれぞれ鏡面処理が施されている。
鏡面処理は、輻射率を0.05とし、該鏡面処理をスロート部37の上端37B(開放端)から該スロート部37の長さLの1/4の長さ(1/4L)離れた位置までの領域、及び、これに対向する回転軸14の外周面14Cの領域に施した。
実施例2では、回転軸14の外周面14C及びスロート部37の内周面37Aに施される鏡面処理領域が実施例1と異なる。具体的には、鏡面処理は、スロート部37の内周面37Aの全領域(すなわち上端37Bから下端37Cまで)と、この領域に対向する回転軸14の外周面14Cの領域に施されている。他の構成については上記した実施例1と同一である。
[実施例3]
実施例3においても、回転軸14の外周面14C及びスロート部37の内周面37Aに施される鏡面処理領域が実施例1,2と異なる。具体的には、鏡面処理は、スロート部37の下端37Cから該スロート部37の長さLの半分の長さ(1/2L)離れた位置までの領域、及び、これに対向する回転軸14の外周面14Cの領域に施されている。他の構成については上記した実施例1と同一である。
[従来例]
従来例では、回転軸14の外周面14C及びスロート部37の内周面37Aには、いずれも鏡面処理が施されていない。他の構成については上記した実施例1と同一である。
この図4によれば、実施例1では、従来例と比較して、超電導バルク体31の温度は16K低下するとともに、侵入熱を19W低減することが可能となっている。このため、従来のものに比べて、超電導バルク体31を効率良く冷却することができ、冷却装置41の熱負荷を簡単に低減することができる。
また、実施例2は、実施例1と同一の結果が出ており、スロート部37の上端37B(開放端)からの所定領域(高温側)に鏡面処理が施されていれば、上端37B側からの熱の侵入が抑制されるため、下端37C側への鏡面処理の有無にかかわらず、冷却装置41の熱負荷を低減することができることがわかる。
実施例1及び2によれば、スロート部37の上端37B(開放端)からの所定領域(高温側)に鏡面処理を施すことにより、簡単な構成で冷却装置41の熱負荷を効果的に低減できる。
また、実施例3では、超電導バルク体31は、実施例1,2と同等の温度(31K)まで低下したものの、侵入熱は実施例1,2に比べて8W(30%)程大きい。これは、ケース体17内に近い高温側に鏡面処理が施されていないため、熱が回転軸14とスロート部37との隙間に侵入し、輻射熱によって、回転軸14を加熱した分、冷却装置41の熱負荷が大きくなったためと考えられる。このため、鏡面処理は、スロート部37の上端37Bから該スロート部37の長さLの1/4以上半分以下の長さ(1/4L以上1/2L以下)だけ離れた位置までの領域37A1(所定領域)に設けることが好ましい。
なお、実施例1〜3において、超電導バルク体31と超電導コイル33との間に相当する回転軸14の下端(低温)側の外周面14C2には鏡面処理が施されていない。
図5は、輻射熱の比Qz/Qrと、スロート部37と回転軸14の隙間距離yとの関係を示すグラフである。
図2に示すように、スロート部37から回転軸14へ伝わる輻射熱をQr、スロート部37から内槽35へ伝わる輻射熱をQzとする。この場合、輻射熱の比Qz/Qrは、回転軸14の直径Xに関係なく、スロート部37と回転軸14の隙間距離(離間距離)yと正比例の関係にある。
ここで、輻射熱の比Qz/Qrが1よりも大きくなる、すなわちQz>Qrとなると、スロート部37から内槽35へ伝わる輻射熱Qzが大きくなるため、輻射熱Qzが内槽35内に侵入しやすくなる。
このため、本構成では、回転軸14の外周面14Cとスロート部37の内周面37Aとの離間距離(隙間距離)yは、上限を10mmとしている。これによれば、輻射熱の比Qz/Qrを1以下に保つことができるため、輻射熱の内槽35内への侵入を効果的に抑えることができる。
一方、本実施形態にように、フライホイール13が接続される回転軸14の場合には、スロート部37と回転軸14の隙間距離yが小さくなると、振動によって、回転軸14がスロート部37に接触する恐れがある。このため、本構成では、隙間距離yの下限を1mmとし、回転軸14とスロート部37との接触を防止している。
11 モータ/発電機
13 フライホイール
14 回転軸
14A 上端(他端)
14B 下端(一端)
14C 外周面(外表面)
15 超電導磁気軸受
31 超電導バルク体(超電導体)
33 超電導コイル
35 内槽
37 スロート部
37A 内周面(内表面)
37B 上端(開放端)
37C 下端(接続端)
41 冷却装置(冷却源)
Claims (8)
- 回転軸内に配置された超電導体と、前記超電導体の周囲に配置された超電導コイルと、前記超電導コイルに熱的に接続された冷却源とを備え、前記回転軸を非接触状態に浮上させて支持する超電導磁気軸受であって、
前記超電導コイルを内包する内槽と、前記内槽に接続されており前記回転軸の外周を覆うスロート部とを備え、前記スロート部の内表面の少なくとも一部及び前記回転軸の外表面の少なくとも一部に鏡面処理が施されたことを特徴とする超電導磁気軸受。 - 前記超電導体は前記回転軸の一端に配置され、該回転軸の他端は、前記冷却源による冷却温度よりも高い温度の空間に延在することを特徴とする請求項1に記載の超電導磁気軸受。
- 前記鏡面処理は、前記内表面及び前記外表面のうち、相互に対向する領域にそれぞれ施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の超電導磁気軸受。
- 前記スロート部は、前記内槽と接続される接続端とは反対側に開放端を備え、前記鏡面処理は、前記開放端を含む領域の前記内表面に施されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超電導磁気軸受。
- 前記鏡面処理は、前記開放端から前記スロート部の長さの1/4以上離れた位置までの領域に施されることを特徴とする請求項4に記載の超電導磁気軸受。
- 前記超電導体と前記超電導コイルとの間に相当する前記回転軸の前記外表面には、前記鏡面処理が施されないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の超電導磁気軸受。
- 前記回転軸の外表面と前記スロート部の内表面との離間距離を1mm以上10mm以下としたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の超電導磁気軸受。
- 柱状体内に配置された被冷却体と、前記被冷却体を非接触で冷却する冷却源と、前記被冷却体が配置された側の前記柱状体の端部を内包する内槽と、前記内槽に接続されており前記柱状体の外周を覆うスロート部とを備え、前記スロート部の内表面の少なくとも一部及び前記柱状体の外表面の少なくとも一部に鏡面処理が施されたことを特徴とする冷却装置。
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