JP2015082000A - 弦楽器用板材、弦楽器用板材の製造方法および弦楽器 - Google Patents
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Abstract
Description
また、バイオリン属の表板および裏板として、複数枚の単板を接着剤を介して積層してなる積層材を、曲げ加工により緩やかに湾曲させてなるものもある。
これらの表板および裏板では、曲げ加工によってむくり形状を形成しているので、むくり形状を形成するための削り工数を削減できる。したがって、ブロック状の木材を削り出して製造したものと比較して、効率よく製造できるし、素材の歩留まりも向上する。
しかし、この表板および裏板は、肉厚が均一であるため、これを用いた弦楽器では、演奏時の表板および裏板の振動がバイオリン属特有のものとならず、良好な音響特性が得られない場合があった。
また、積層材を曲げ加工する前または後に積層材を削り出して、肉厚が部分的に異なるむくり形状を形成することも考えられる。しかし、積層材を削り出すと、表面に積層断面が露出してしまうため、良好な外観が得られない。
また、本発明は、効率よく製造でき、素材の歩留まりが高い弦楽器用板材からなる表板および/または裏板を備え、表板および/または裏板の変形による破損が生じにくく、音質の良好な弦楽器を提供することを課題とする。
上記の弦楽器用板材は、前記単板の繊維の延在方向が、前記単板の前記湾曲形状に沿う方向に揃えられているものとすることができる。
上記の弦楽器用板材は、前記単板の一方の面または両面に、接着剤を介して化粧材が積層されているものとすることができる。
上記の弦楽器用板材の製造方法は、前記単板の一方の面または両面に、接着剤を介して化粧材を積層してから、前記単板を一方の面側に凸状に湾曲させる方法とすることができる。
「第1実施形態」
本実施形態においては、本発明の弦楽器用板材の一例として、バイオリンの表板を例に挙げて説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るバイオリンの表板の幅方向の断面模式図である。また、図1(b)は、図1(a)に示す表板の平面図である。図1(a)は、図1(b)に示すA−A’に対応する断面図である。
積層板11は、凹部34を有する単板3を含むものである。単板3の表面3aには、接着剤4を介して表面板1が積層されている。また、単板3の裏面3bには、接着剤4を介して裏面板2が積層されている。表面板1および裏面板2は、均一な厚みを有する単板材からなるものであり、単板3の表面3aまたは裏面3bを覆う化粧材として機能するものである。また、表面板1および裏面板2は、接着剤4とともに単板3を補強し、単板3の変形を防止する機能も有する。
また、単板3の裏面3b(図1においては下面)には、底面の深さが段階的に異なっている凹部34が形成されている。凹部34は、単板3の肉厚を部分的に小さくするものであり、表板10の振動板として機能を考慮した所定の形状および深さ分布となっている。
なお、単板の厚み分布は、バイオリンの表板または裏板に要求される性能に応じて決定されるものであり、例えば、周縁部を薄くし、中央部を厚くしてもよく、図1(a)に示す単板3の厚み分布に限定されるものではない。
単板3、表面板1および裏面板2の材料は、全て同じであってもよいし、一部または全部が異なっていてもよい。本実施形態においては、単板3と表面板1と裏面板2の全てを、スプルースを用いて形成することが好ましい。このことにより、表板10としてより優れた機能が得られ、これを用いたバイオリンの音質がより良好なものとなる。
本実施形態においては、本発明の弦楽器用板材の製造方法の一例として、図1(a)および図1(b)に示すバイオリンの表板の製造方法を例に挙げて説明する。
図1(a)および図1(b)に示す表板10を製造するには、まず、凹部34を有する単板3(図2参照)を用意する。そして、表面板1と、単板3と、裏面板2とを下から順に接着剤4を介して積層し、図3に示す積層体10aとする。
図2に示す単板3は、図1(b)に示す表板10の外形形状よりも大きいものである。単板3には、単板3の肉厚を部分的に小さくする凹部34が形成されている。凹部34は、図2および図3に示すように、底面の深さが段階的に異なるものである。凹部34は、単板3となる単板材を、所定の深さおよび平面形状で削り出す方法などにより形成できる。
また、曲げ加工の温度条件は、特に限定されるものではなく、使用する接着剤4の種類等に応じて適宜決定できる。例えば、接着剤4として熱硬化するものを用いた場合には、所定の温度に加熱しながら曲げ加工を行って、曲げ加工と同時に接着剤4を硬化させることが好ましい。
その後、必要に応じて、スクレーバーなどを用いて、積層板11の表面を削ることにより、表板10の厚み分布を微調整したり、表板10の表面に凹凸が存在する場合にこれを取り除いたりする仕上げ工程を行ってもよい。
以上の工程により、図1(a)および図1(b)に示す表板10が得られる。
しかも、図1(a)に示す表板10では、表面板1と単板3と裏面板2とが接着剤4を介して積層されており、表面板1と単板3と裏面板2とが接着剤4で固定されている。このため、表板10の変形が抑制される。
本実施形態においては、本発明の弦楽器用板材の一例として、バイオリンの裏板を例に挙げて説明する。
本実施形態に係るバイオリンの裏板が、上述した図1(a)に示す第1実施形態の表板10と異なるところは、単板の凹部の深さ分布および形状が、裏板としての機能を考慮した所定の厚み分布に応じて決定されているところと、表面板、裏面板、単板を形成している単板の材料として、メープルを用いることが好ましいことである。
また、本実施形態の裏板によれば、上述した第1実施形態の表板10と同様の効果が得られる。すなわち、本実施形態の裏板は、効率よく製造でき、素材の歩留まりが高いものである。しかも、本実施形態の裏板は、密度のばらつきが小さく、肉厚が部分的に異なり、一方の面側に凸状に湾曲された形状を有し、形状安定性に優れ、良好な外観を有し、優れた音響特性が得られる
本実施形態においては、本発明の弦楽器の一例として、バイオリンを例に挙げて説明する。図4は、本発明の弦楽器の一例であるバイオリンを示した側面図である。
図4において、符号50はバイオリンを示し、符号10は表板を示し、符号20は裏板を示し、符号30は側板を示し、符号40はネックを示している。
図4に示すバイオリン50では、裏板20として、第2実施形態のバイオリンの裏板を用いている。
具体的には、例えば、裏板20と側板30とをニカワなどの接着剤を用いて接合する。次いで、側板30と表板10とをニカワなどの接着剤を用いて接合してボディを形成する。その後、ボディにネック40を取り付け、表面にニスを塗る。次いで、指板を接着し、魂柱を立てる。その後、駒を設置し、弦を張る。
以上の工程により、図4に示すバイオリン50が得られる。
本発明の弦楽器および弦楽器用板材は、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の弦楽器は、バイオリンに限定されるものではなく、バイオリン属であるビオラ、チェロ、コントラバスであってもよい。また、本発明は、肉厚が部分的に異なり、一方の面側に凸状に湾曲されたむくり形状を有する表板および/または裏板を備えたギターなどの弦楽器にも用いることができる。
また、実施形態においては、深さの異なる底面の境界部分には段差が形成されていたが、底面の境界部分に段差を緩和する傾斜面を形成してもよい。
また、図1(a)に示す表板10では、表面板1および裏面板2を有する場合を例に挙げて説明したが、表面板1および/または裏面板2はなくてもよい。また、表面板1および/または裏面板2は、それぞれ2枚以上であってもよい。
弦楽器用板材が表板であって表面板がない場合、単板は、より良好な外観および音質が得られるように、柾目のスプルース材を用いて形成することが好ましい。弦楽器用板材が裏板であって表面板がない場合、単板は、より良好な外観および音質が得られるように、杢のあるメープル材を用いて形成することが好ましい。
また、表面板がない場合、単板は、2枚の単板の端面を表板または裏板の長さ方向中央部で対向させて接ぐことによって、一体化された連続した平面を有するものであってもよい。
Claims (6)
- 弦楽器の表板または裏板を構成する弦楽器用板材であって、
肉厚を部分的に小さくする凹部が設けられてなる単板からなり、
前記単板が一方の面側に凸状に湾曲されていることを特徴とする弦楽器用板材。 - 前記単板の繊維の延在方向が、前記単板の前記湾曲形状に沿う方向に揃えられていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用板材。
- 前記単板の一方の面または両面に、接着剤を介して化粧材が積層されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弦楽器用板材。
- 弦楽器の表板または裏板を構成する弦楽器用板材の製造方法であって、
肉厚を部分的に小さくする凹部を有する単板を用意し、前記単板を一方の面側に凸状に湾曲させる工程を含むことを特徴とする弦楽器用板材の製造方法。 - 前記単板の一方の面または両面に、接着剤を介して化粧材を積層してから、前記単板を一方の面側に凸状に湾曲させることを特徴とする請求項4に記載の弦楽器用板材の製造方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の弦楽器用板材を備えることを特徴とする弦楽器。
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