以下、本発明に係る多気筒内燃機関の制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態では、ガソリン仕様の直列2気筒の内燃機関01に適用したものであり、全気筒の機械圧縮比εを変化可能な可変機械圧縮比機構(VCR)02が設けられていると共に、#1気筒のみに吸気弁と排気弁の作動を停止して気筒を休止できる気筒休止機構03が設けられている。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態を示し、内燃機関01には、前記VCR02と気筒休止機構03の他に、機械式過給機であるスーパーチャージャ04が設けられていると共に、吸気弁3の開閉タイミング(開閉位相)を制御できる位相可変型の電動VTC05が設けられている。
図1、図2に示す前記VCR02は、先に出願された特開2002−276446号公報に記載されているものがあり、したがって、構造を簡単に説明する。
クランクシャフト50は、複数のジャーナル部51とクランクピン52を有し、シリンダブロック06の主軸受に、ジャーナル部51が回転自在に支持されている。前記クランクピン52は、ジャーナル部51から所定量偏心しており、ここにロアリンク53が回転自在の連結されている。
このロアリンク53は、左右の2部材に分割可能に構成されていると共に、ほぼ中央の連結孔に前記クランクピン52が回転自在に嵌合している。
前記ロアリンク53の一端部に連結ピン55を介して連結されたアッパリンク54は、上端部がピストンピン56によってピストン57に回動自在に連結されている。前記ピストン57は、燃焼圧力を受け、シリンダブロック06のシリンダ58内を往復運動するようになっている。
前記シリンダ58の上部には、シリンダヘッド07内に開閉自在に支持された前記吸気弁3と排気弁71が配置されている。
上端部が前記ロアリンク53の他端部に連結ピン60を介して連結されたコントロールリンク59は、下端部が制御軸61を介して前記シリンダブロック06の下部に揺動可能に連結されている。つまり、前記制御軸61は、シリンダブロック06に支持されていると共に、その回転中心から偏心している偏心カム61aを有し、この偏心カム61aに前記コントロールリンク59の下端部が回転可能に連結されている。
前記制御軸61は、コントロ−ラであるエンジンコントロールユニット63からの制御信号に基づき、電動モータを用いた圧縮比制御アクチュエータ62によって回動位置が制御されるようになっている。
したがって、前記VCR02は、図2Aに示すように、前記制御軸61が圧縮比制御アクチュエータ62によって一方向(図2中反時計方向)へ回動されると、偏心カム61aの中心位置Xが図中左下方へ位置する。これによって、前記コントロールリンク59の下端の揺動支持位置が変化して、前記ピストン57のストロ−ク位置が変化して機械圧縮比が最大制御位置、すなわちピストン上死点位置が最も高くなる制御位置に変化させることができる(後述のε15)。
一方、制御軸61が他方向(図2中時計方向)へ回動されると、図2Bに示すように、偏心カム61aの中心位置Xが図中垂直上方へ位置する。これによって、前記コントロールリンク59の下端の揺動支持位置が変化して、前記ピストン57のストロ−ク位置が変化して機械圧縮比が最小制御位置、すなわちピストン上死点位置が最も低くなる制御位置に変化させることができる(後述の圧縮比ε9)。
ここで、制御軸61の反時計方向の最大回転を規制する図外のストッパ位置を最大制御位置(機械圧縮比ε15)、時計方向の最大回転を規制するストッパ位置を最小制御位置(機械圧縮比ε9)と設定すればよい。
ここで、機械圧縮比εとは、ピストン57の上死点(TDC)での気筒内容積でピストン57の下死点(BDC)での気筒内容積を割った値をいう。
前記気筒休止機構03は、図3及び図4に示すように構成され、図3は#1気筒(気筒休止可能気筒)における吸気側及び排気側の動弁装置を示し、図4では#1気筒と#2気筒の吸気側(または排気側)の動弁装置を示している。この図4に示すフロント(F)側の#1気筒が気筒休止可能な気筒、すなわち、全ての吸気弁と排気弁の弁作動停止が可能な気筒になっていると共に、リア(R)側の#2気筒は気筒休止せず、常時少なくとも1つの吸気弁と排気弁が作動する常時稼働気筒になっている。
〔吸気側の動弁装置〕
#1、#2気筒の吸気側の動弁機構について具体的に説明すると、図3及び図4に示すように、シリンダヘッド07内に形成された一対の吸気ポート2、2を開閉する一気筒当たり一対の吸気弁が設けられている。すなわち、#1気筒では第1、第2吸気弁3a,3a、#2気筒では第1、第2吸気弁3b、3bが設けられている。ここで、各気筒とも第1吸気弁3a、3bはF側に、第2吸気弁3a、3bはR側にそれぞれ配置されている。
前記各吸気弁3a〜3bは、シリンダヘッド07の上端部と軸受けブラケット13との間に軸受けされた吸気カムシャフト5に設けられた一気筒当たり2つ設けられた回転カム5aの回転力とバルブスプリング12のばね力によって各スイングアーム6を介して各吸気ポート2の開口端を開閉作動するようになっている。
また、シリンダヘッド07に保持されて、前記各スイングアーム6と各吸気弁3a〜3bとの間の隙間及び各回転カム5aの各カム面のベースサークルとの間の隙間を零ラッシに調整する支点部材(ピボット)である4つの第1〜第4油圧ラッシアジャスタ10a、10b、10c、10dが配設されている。
つまり、#1気筒の吸気弁側には、第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10bが配設され、#2気筒の吸気弁側には第3、第4油圧ラッシアジャスタ10c、10dが配設されている。
ここで、第1油圧ラッシアジャスタ10aは、#1気筒のF側に配設され、第2油圧ラッシアジャスタ10bは、同R側に配設され、第3油圧ラッシアジャスタ10cは、#2気筒のF側に配設され、第4油圧ラッシアジャスタ10dはR側に配設されている。
さらに、前記#1気筒の第1、第2吸気弁3a、3a側には、機関運転状態に応じて前記#1気筒側の第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10bを介して前記#1気筒の第1、第2吸気弁3a、3aの開閉作動をそれぞれ停止させる気筒休止機構03としての第1、第2弁停止機構(ロストモーション機構)11a、11bが設けられている。
また、前記吸気側には、前述したように、前記吸気カムシャフト5のF側の端部に、前記各吸気弁3a〜3bの開閉タイミングを機関運転状態に応じて可変にする位相変更型バルブタイミング制御装置(吸気電動VTC)05が設けられている。この吸気電動VTC05は、例えば特開2012−145036号公報に記載されている電動モータによってクランクシャフト50と吸気カムシャフト5との相対回転角度を制御するものが用いられている。
以下、#1、#2気筒における各構成部材について説明すると、前記4つの吸気弁3a〜3bは、各バルブガイド4を介してシリンダヘッド07に摺動自在に保持されていると共に、各ステムエンド3cの近傍に設けられた各スプリングリテーナ3dとシリンダヘッド07の内部上面との間に弾接された各バルブスプリング12によって閉方向に付勢されている。
前記吸気カムシャフト5は、一端部に設けられた前記吸気VTC05のハウジングに設けられたタイミングプーリを介してクランクシャフトの回転力がタイミングベルトによって伝達されるようになっている。また、前記回転カム5aは、外周のカムプロフィールが卵形状に形成されている。
前記各スイングアーム6は、一端部6aの平坦状あるいはやや凸状の下面が前記各吸気弁3a〜3bの各ステムエンドに当接している一方、他端部6bの下面凹部6cが前記各油圧ラッシアジャスタ10a〜10dの頭部に当接していると共に、中央に形成された収容孔内に、それぞれローラ軸14aを介してローラ14が回転自在に収容配置されている。
前記4つの油圧ラッシアジャスタ10a〜10dは、図5及び図6に示すように、シリンダヘッド07の円柱状の各保持穴07a内にそれぞれ保持された有底円筒状のボディ24と、該ボディ24内に上下摺動自在に収容されて、下部に一体に有する隔壁25を介して内部にリザーバ室26を構成するプランジャ27と、前記ボディ24の下部内に形成されて、前記隔壁25に貫通形成された連通孔25aを介して前記リザーバ室26と連通する高圧室28と、該高圧室28の内部に設けられて、前記リザーバ室26内の作動油を高圧室28方向へのみ流入を許容するチェック弁29と、を備えている。また、前記シリンダヘッド07の内部には、前記保持穴07a内の溜まった作動油を外部に排出する排出孔07bが形成されている。
前記ボディ24は、外周面に円筒状の第1凹溝24aが形成されていると共に、該第1凹溝24aの周壁に、前記シリンダヘッド07の内部に形成されて、下流端が前記第1凹溝24aに開口した油通路30とボディ24内部とを連通する第1通路孔31が径方向に貫通形成されている。
また、#1気筒の第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10b(F、R側)は、図5A,Bにそれぞれ示すように、底部24b側が、図6に示す弁停止機構が設けられていない#2気筒側の第3、第4油圧ラッシアジャスタ10c、10dのボディ24の底部24cよりも下方向へ延設されてほぼ円柱状に形成されている。
前記油通路30は、図3に示すように、シリンダヘッド07内に形成された潤滑油供給用のメインオイルギャラリ30aと連通しており、このメインオイルギャラリ30aには、図1に示すオイルポンプ64から電磁切換弁65を介して潤滑油が圧送されるようになっている。
前記プランジャ27は、図5、図6に示すように、軸方向のほぼ中央の外周面に円筒状の第2凹溝27aが形成されていると共に、該第2凹溝27aの周壁に前記第1通路孔31とリザーバ室26とを連通する第2通路孔32が径方向に沿って貫通形成されている。また、各プランジャ27の先端頭部27bの先端面が各スイングアーム6の他端部6bの球面状の下面凹部6cとの良好な摺動性を確保するために球面状に形成されている。
なお、この各プランジャ27は、ボディ24の上端部に嵌着固定された円環状のストッパ部材33によってその最大突出量が規制されるようになっている。
前記第2凹溝27aは、その軸方向の幅が比較的大きく形成され、これによってボディ24に対するプランジャ27のいずれの上下摺動位置においても前記第1通路孔31と第2通路孔32とを常時連通するようになっている。
前記各チェック弁29は、前記連通孔25aの下部開口縁(シート)を開閉するチェックボール29aと、該チェックボール29aを閉方向へ付勢する第1コイルばね29bと、該第1コイルばね29bを保持するカップ状のリテーナ29cと、ボディ24の底壁24cの内底面とリテーナ29cの円環状上端部との間に弾装されて、リテーナ29cを隔壁25方向へ付勢しつつプランジャ27全体を上方に付勢する第2コイルばね29dとから構成されている。
そして、前記回転カム5aのベースサークル区間では、前記第2コイルばね29dによる付勢力による前記プランジャ27の進出移動(上方移動)に伴って高圧室28内が低圧になると、前記油通路30から保持穴1a内に供給された作動油が第1凹溝24aから第1通路孔31と第2凹溝27a及び第2通路孔32を通ってリザーバ室26に流入して、さらにチェックボール29aを第1コイルばね29bのばね力に抗して押し開き、作動油を高圧室28内に流入させる。
これによって、プランジャ27は、スイングアーム6の他端部6bを押し上げてローラ14と揺動カム7との接触を介して揺動カム7とスイングアーム6の一端部6a及び各吸気弁3のステムエンド6aとの間の隙間を零ラッシに調整するようになっている。
そして、前記回転カム5aのリフト区間では、プランジャ27に下方荷重が作用するので、チェック弁が閉じ、高圧室28内の油圧が上昇し、高圧室28内のオイルがプランジャ27とボディ24の隙間から漏れ出てプランジャ27は僅かに降下する(リークダウン)。
再び、前記回転カム5aのベースサークル区間になると、前述のように、前記第2コイルばね29dによる付勢力で前記プランジャ27の進出移動(上方移動)により、各部の隙間を零ラッシに調整するのである。
このようなラッシ調整機能を、前記第1〜第4油圧ラッシアジャスタ10a〜10dの全てが有している。
前記第1、第2弁停止機構11a、11bは、前記#1気筒のF側とR側の第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10bのみに設けられ、図6に示すように、#2気筒のF側とR側の第3、第4油圧ラッシアジャスタ10c、10dには設けられていない。
すなわち、#1気筒のF側とR側の1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10b側に第1、第2弁停止機構11a、11bが設けられており、後述するように機関運転状態に応じて弁停止と弁作動が切り換えられるようになっている。これに対して、#2気筒のF側とR側には弁停止機構が設けられておらず、したがって、通常のピボット機能と零ラッシ調整機能のみを有している。
第1、第2弁停止機構11a、11bは、図5A、Bに示すように、前記各保持穴07aの底部側に連続して形成された円柱状の一対の摺動用穴34と、該各摺動用穴34の底面とボディ24の下面との間に弾装されて、前記第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10bを上方向へそれぞれ付勢する一対のロストモーションスプリング35と、第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10bのロストモーションを規制する規制機構36と、から構成されている。
前記各摺動用穴34は、内径が前記保持穴1aの内径と同一に設定されて前記各ボディ24が前記保持穴1aから連続的に上下方向へ摺動可能に保持するようになっている。
前記各ロストモーションスプリング35は、コイルスプリングによって形成されて、前記ボディ24の底面を上方向へ付勢して前記プランジャ27の先端頭部27bを前記スイングアーム6の他端部6b下面の凹部6cに弾接させるようになっている。
また、前記各ボディ24は、前記シリンダヘッド07の内部に挿通配置されたストッパピン37によって最大上方移動位置が規制されるようになっている。すなわち、前記各ストッパピン37は、シリンダヘッド07内を前記ボディ24に向かって軸直角方向に配置され、先端部37aが前記第1凹溝24a内に摺動可能に臨設配置されて、ボディ24の上方移動に伴い前記先端部37aが第1凹溝24aの下端縁に当接することによってボディ24の最大上方の摺動位置が規制されるようになっている。
したがって、前記各油圧ラッシアジャスタ10a、10bは、スイングアーム6の揺動に伴い前記ロストモーションスプリング35のばね力を介して前記保持穴07aと摺動用穴34との間を上下にストロークしてロストモーションを行うことによって、前記スイングアーム6の揺動支点としての機能が失われて、回転カム5aのリフト作動が吸収され、各吸気弁3aの開閉作動を停止させるようになっている。
前記第1、第2弁停止機構11a、11bの規制機構36は、図5A〜Cに示すように、前記ボディ24の底部24bの内部径方向に貫通形成された移動用孔38と、前記シリンダヘッド07内に保持穴07aと軸直角方向に形成された規制用孔39と、前記移動用孔38の内部一端側に固定されたばね支持用のリテーナ40と、前記移動用孔38から規制溶孔39の内部に跨って摺動自在に設けられた円柱状の規制ピン41と、該規制ピン41の後端と前記リテーナ40との間に弾装されて、前記規制ピン41を規制用孔39方向へ付勢するリターンスプリング42と、から主として構成されている。
前記規制用孔39は、前記ボディ24が前記ストッパピン37によって最大上方位置に規制された際に、前記移動用孔38と軸方向から合致するようになっており、内径が前記移動用孔38とほぼ同一に形成されていると共に、一端側にシリンダヘッド07内に形成された油通路孔44から信号油圧が導入されるようになっている。
ここで、前記ボディ24の回転方向の規制は、前記ストッパピン37の飛び出し量を僅かに増やすと共に、前記ボディ24の前記第1凹溝24a内に軸長手方向のスリットを設け、前記ストッパピン37先端と係合させることによって容易に実現できる。あるいは、別個の回転規制部材をシリンダヘッド07と前記ボディ24の間に装着してもよい。
前記リテーナ40は、有蓋円筒状に形成されて、底壁に規制ピン41の円滑な移動を確保するための呼吸孔40aが貫通形成されていると共に、後端面の呼吸孔40aが臨む中央部40bが平坦に形成されているが、外端部40c、40cは、滑らかな摺動性を確保するために前記摺動用穴34の内周面とほぼ同一の曲率の円弧面状に形成されている。また、このリテーナ40の軸方向の長さは、図5Bに示すように、前記規制ピン41が移動用孔38に完全に収容される前に、先端縁に規制ピン41の後端縁が当接してそれ以上の後退移動を規制する長さに設定されている。なお、前記移動用孔38にリークした僅かな作動油は、前記呼吸孔40aを介してリテーナ40の底壁外面と摺動用穴34の内周面を通って摺動用穴34内に導かれるようになっている。
前記規制ピン41は、図5A、Cに示すように、有蓋円筒状に形成されて、外径が前記移動用孔38の内径よりも僅かに小さく形成されて円滑な摺動性が確保されていると共に、先端部の先端面41aが滑らかな摺動性を確保するために前記摺動用穴34の内周面と同じ曲率の円弧面状に形成されている。
また、この規制ピン41は、図5Aに示すように前記リターンスプリング42のばね力で規制用孔39内に移動すると、先端部が規制用孔39内に一部が収容されるようになっている。これによって、シリンダヘッド07にロックされて、#1気筒のF,R側の油圧ラッシアジャスタ10a、10bの上下方向の移動、つまりロストモーションが規制されるようになっている。
また、この規制ピン41は、外径が前記移動用孔38と規制用孔39の内径よりも僅かに小さく形成されてこれらに対して円滑な摺動性が確保されていると共に、前記油通路孔44から規制用孔39に供給された油圧を受圧面としての先端面41aが受けることにより、図5Bに示すように、前記リターンスプリング42のばね力に抗して図中左方向へ移動してリテーナ40に軸方向から当接すると、規制ピン41全体が移動用孔38内に収容された形になる。これによって、#1気筒の第1、第2油圧ラッシアジャスタ10a、10bの上下方向の移動が許容されて、つまりロストモーションが行われるようになっている。
前記油通路孔44(規制用孔39)には、図1に示すように、前記オイルポンプ64から圧送された油圧が電磁切換弁65を介して信号油圧として供給されるようになっている。すなわち、この電磁切換弁65は、切り換えエネルギ−である油圧を供給する状態と供給停止する状態とを変換する、切り換えエネルギ−供給/供給停止変換手段(油圧供給/供給停止変換手段)となっている。
前記電磁切換弁65は、図外のバルブボディの内部に摺動自在に設けられたスプール弁を、ソレノイドの電磁力とコイルスプリングのばね力とによって、オン、オフ的に2段階に切り換えるようになっている。前記ソレノイドには、前記可変圧縮比機構02の圧縮比制御アクチュエータ62の駆動を制御する同じコントロールユニット63から制御電流が通電、非通電(オン、オフ)されてポンプ吐出通路と油通路孔44とを連通して前記規制ピン41に信号油圧を供給するか、またはポンプ吐出通路を閉止して前記油通路孔44とドレン通路66を連通するように切り換え制御されるようになっている。
したがって、機関停止時には、コントロールユニット63からソレノイドに通電されず電磁切換弁65が、ポンプ吐出通路を閉止して油通路44とドレン通路66を連通することから第1、第2弁停止機構11a、11bによるロストモーション作動が不可能な状態になっている。すなわち、第1、第2弁停止機構11a、11bは、切り換えエネルギーである油圧の供給が停止された場合に、弁作動ができる状態(弁作動態様)に機械的に安定する、弁作動安定型となっている。
前記コントロールユニット63は、クランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、スロットルバルブ角度センサなどの各種センサ類から機関回転数や負荷、スロットルバルブ開度量などの情報信号に基づいて機関運転状態を検出すると共に、クランク角センサとカム角センサからの情報信号によって前記電動VTC05の電動モータを駆動制御して、吸気カムシャフト5とクランクシャフト50との相対回転角度を制御する。また同時に、前記電磁切換弁65を制御して#1気筒の2つの吸気弁3a、3aの弁停止と弁作動を変換制御するようになっている。
前記スーパーチャージャ04は、一般的なものであって、図1に示すように、吸入通路のスロットルバルブ67の上流側に配置され、前記コントロールユニット63からの出力された制御信号によって、クランクシャフトの回転と同期回転できる状態とできない状態をクラッチ機構へのオン、オフ信号によって制御すると共に、吸気バイパス弁68の開閉制御により過給圧が制御されるようになっている。
〔排気側の動弁装置〕
排気側の動弁装置は、基本的に吸気側と同じであって、図3に示すように、シリンダヘッド07内に形成された一気筒当たり一対の排気ポート70、70の開口端をそれぞれ開閉する一気筒当たり2つの排気弁71a、71a、71b、71bが設けられている。つまり、#1気筒ではF側とR側の第1、第2排気弁71a、71a、#2気筒ではF側とR側の第1、第2排気弁71b、71bが設けられている。
排気側動弁装置としては、図4に示す吸気側と同様であり、カッコ内に符番を付記して示すが、各気筒の上方側に機関前後方向に沿って配置され、外周に前記各排気弁71a〜71bを各バルブスプリング72のばね力に抗して開作動させる卵形の回転カム73aを有する排気側カムシャフト73が設けられており、前記各排気弁71a〜71bと各回転カム73aとの間に介装されたローラ77及び各スイングアーム74を介して前記各排気弁71a〜71bを一定のバルブリフト量で開閉作動するようになっている。
また、シリンダヘッド07に保持されて、前記各スイングアーム74と各排気弁71a〜71bとの隙間及び各回転カム73aのベースサークルとの間の隙間を零ラッシュ調整するピボットである油圧ラッシアジャスタ75a〜75dがそれぞれ配設されている。つまり、排気側にも4つの油圧ラッシアジャスタ75a〜75dがあり、#1気筒に第1、第2油圧ラッシアジャスタ75a、75bが配設され、#2気筒に第3、第4油圧ラッシアジャスタ75c、75dが配設されている。
ここで、第1油圧ラッシアジャスタ75aは、#1気筒のF側に配設され、第2油圧ラッシアジャスタ75bは、同R側に配設され、第3油圧ラッシアジャスタ75cは、#2気筒のF側に配設され、第4油圧ラッシアジャスタ75dは、同R側に配設されている。
そして、#1気筒のF側とR側の前記排気弁71a、71a側の各第1、第2油圧ラッシアジャスタ75a、75bは、それぞれ第1、第2弁停止機構(ロストモーション機構)11a、11bを備えている。
一方、#2気筒のF,R側の前記排気弁71b、71bの第3、第4油圧ラッシアジャスタ75c、75dは弁停止機構を備えていない。
前記排気側第1、第2弁停止機構は、前述した図5に示す吸気側第1,第2弁停止機構11a、11bと同様の構造であるから、同一の符番を付して具体的な説明は省略する。すなわち、シリンダヘッド07の各保持穴07aの底部側に連続して形成された円柱状の摺動用穴34と、該摺動用穴34の底面とボディ24の下面との間に弾装されて、前記第1、第2油圧ラッシアジャスタ75a、75bを上方向へ付勢するロストモーションスプリング35、35と、前記第1、第2油圧ラッシアジャスタ75a、75bのロストモーションを規制する規制機構76、76と、から構成されている。
そして、この規制機構76、76を有する第1、第2弁停止機構11a、11bを備えた#1気筒側の第1、第2排気弁71a、71aは、そのバルブリフト量が、ロストモーションにより弁停止された場合は零リフトとなり、弁停止されていない弁作動の場合は、ピークリフト量が一定となっている。
〔本実施形態の作動特性〕
図7は稼動気筒数と機械圧縮比εのマップを示しており、横軸は機関回転数、縦軸は機関トルクである。
縦軸でみると、全筒運転での最大正トルク特性(全筒)を示す太実線と、最大負トルク(エンブレ)特性(全筒)とで囲まれる領域が全筒運転領域(第2運転領域)である。
横軸でみると、機関回転数のアイドル回転のNi(例えば700rpm)、と最高回転数のNh(例えば6000rpm)の両破線に囲まれる領域である。これらの4つの線で囲まれる領域を第2運転領域(全筒運転領域)と呼ぶ(但し、後述の第1運転領域を除いた領域)。
一方、減筒運転での最大正トルク特性(減筒)を示す太実線と、最大負トルク(エンブレ)特性(減筒)とで囲まれる領域が減筒運転領域(第1運転領域)である。
横軸でみると、機関回転数のアイドル回転よりやや高いNl(例えば1000rpm)と、中速回転数のNm(例えば3500rpm)の両実線に囲まれる領域である。これらの4つの線で囲まれる領域が第1運転領域(減筒運転領域)である。
ここで図7における2点鎖線は全筒運転での等機械圧縮比ε線を、1点鎖線は減筒運転での等機械圧縮比ε線示す。
まず、全筒運転領域(第2運転領域)についてみてみると、例えば、機械圧縮比が15となるε15の等機械圧縮比ε線(2点鎖線)は、機関トルクT15となっている。このT15は、全筒運転ε15でノッキングを発生せずに出せる機関最大トルク(全筒)になっている。
このT15から機関トルクが増加するに従い、VCR02の制御により次第に圧縮比(機械圧縮比)εを減少させていき、機関最大正トルク(全筒)のT9.5付近では、圧縮比ε9.5まで低下する。すなわち、機関トルクが増加していくと、圧縮比εが大きいと、いわゆるノッキングが発生してしまうので、ノッキング抑制できる分だけ、圧縮比εを低下させていくので、上述のような圧縮比εマップ(2点鎖線)となるのである。言い換えると、ノッキングを抑えつつ圧縮比εを可及的に高めることができるので、熱効率をその分高められるのである。
ここで、例えばT9.5とは、ε9.5でノッキングを発生させず出せる機関最大トルク(全筒)になっているのである。
なお、ここで単に圧縮比と記載しているが、上述してきた機械圧縮比の意味であり、後述する有効圧縮比とは異なる。
一方、機関トルクがT15未満の低機関トルク領域では大圧縮比ε15一定となっている。これは、T15未満の低機関トルク領域では、大きな圧縮比ε15とすることで、理論熱効率を高めて燃費をよくできるのであるが、ここで、仮に圧縮比ε15よりさらに増大させても、燃焼室のS/V比が増加し冷却損失が増加するので、これ以上燃費が伸びず、例えばこの圧縮比ε15一定に保持するのである。
次に、減筒運転領域(第1運転領域)についてみてみると、図7の1点鎖線が減筒領域における等圧縮比ε線を示す。
ここで、減筒運転でのε15線(1点鎖線)を見てみると、縦軸の機関トルクは略T15、すなわち全筒運転ε15でノッキングを発生せずに出せる機関最大トルク(全筒)と略一致している。つまり、同じε15でしかも減筒運転でありながら全筒運転と同等の機関トルクを出せている。これは、減筒運転により出せる燃焼トルクは減少するもにものの、減筒運転より機関フリクションやポンプ損失が低減することによる機関トルク低下抑制分が生じ、この低下抑制分の比率が低機関トルク領域では大きくなるからである。
機関トルクがT15未満のさらに低機関トルク側の減筒領域では第2運転領域(全筒運転領域)と同様に、大圧縮比ε15が一定としているが、これは、減筒運転領域であっても、仮に圧縮比ε15よりさらに増大させても、燃焼室のS/V比が増加し冷却損失が増加するので、やはりこれ以上燃費が伸びず、例えば圧縮比ε15一定に保持するのである。(全筒運転と同様)
次に、同様減筒運転状態において、機関トルクがT15から増加していく場合を考える。
機関トルクが増加するにしたがいVCR02の制御により急激に圧縮比εを減少させていき、機関トルクT12付近では、圧縮比ε9まで低下させていく。ここで、T12という機関トルクは、前述のように、全筒運転において圧縮比ε12でノッキングを起こさずに出せる最大機関トルクに対応する。
第2運転領域(全筒)でのT12付近では圧縮比ε12とまだ比較的大きいのに対して、第1運転領域(減筒)では、同じT12付近で、前述の圧縮比ε9まで大きく低下させる。
減筒運転である場合は、同じ機関トルクであっても稼動気筒に発生する稼動気筒あたり機関トルク(負荷)は2倍の高負荷になるので、特に、機関トルクの増加に連れてノッキングが発生やすくなる。そのため、機関トルクが高まるにつれ、圧縮比εを急激に低下していくのである。
このようにすることで、減筒領域においてノッキングを回避し、減筒での最大トルク特性をT12まで高めることができ、もって、実走行において減筒運転する頻度を高め、実走行での燃費性能を高めることができるのである。
ここで減筒領域の例えば図7(1)点(例えば、機関トルクT15、約1600rpm)からアクセルを吹かし、機関トルクをT12まで高めていく場合を考える。
図7の減筒領域マップ上で前述の(1)点からT12の(2)点まで移行するが、その間に圧縮比εは15から9まで大きく減小変化する。
図8は、横軸に機械圧縮比εを、縦軸に機関トルクTを取ったグラフを示す。
この図8に示すように、減筒のままT15・ε15((1)点)から、T12・ε9((2)点)へと変化する。この(2)点では、圧縮比ε9という低機械圧縮比によりノッキングを抑えつつT12という大きな機関トルクを減筒運転でありながら実現できるのである。すなわち、この低機械圧縮化により、前述のような、点火時期の遅角や燃料リッチ化という燃費悪化要因を抑制しつつノッキングを回避しつつ大きな機関トルクT12を得ることができるのである。
その結果、前述のように、大きな燃費効果を持つ減筒領域を高機関トルク側まで拡大でき、実走行時における減筒運転頻度を高め、実走行時の燃費性能を高められるのである。
ここで、本発明ではない従来における気筒休止システムについて仮に考える。
この場合の機械圧縮比εは固定であり、例えば機械圧縮比ε11といった中間的な値が取られる。この場合、図8における、減筒領域内の前述の(1)点と同じ機関トルクT15になる点は、(ア)点で示されるT15・ε11となる。
この(ア)点からアクセルを吹かすと、機関トルクがT13の(イ)点に到達するが、これ以上機関トルクを上げると、圧縮比ε11ゆえにノッキングが発生してしまうため、(イ)点を越えると全筒運転に切り替えざるを得ないのである。
ここで、この図8における(イ)点は、減筒運転における(1)点から(2)点に至る、機械圧縮比εとノッキングを発生せずに出せる最大機関トルクとの相関線と、ε11一定線との交点に対応する。
それに対し、本実施形態は、(イ)点を通った後、(2)点に向い圧縮比εが減少していくので、ノッキングを抑制しつつ機関トルクを増加できる。
この際、図9の(1)点から(2)点にかけて示すように、吸気弁閉時期(IVC)を下死点に近づけていくので、充填効率が一層向上し、機関トルクを、ノッキングを発生せずに出せる最大機関トルクに向けて一層高めていくことができる。
さらにスーパーチャージャ04のクラッチをONしてバイバス弁68を閉じ過給圧を強めれば、さらに充填効率が向上し、(2)で示す機関トルクT12まで減筒領域での機関トルクを増加できる。
その結果、図7、図8の大きな矢印(白抜き)で示すTgだけ、減筒での最大機関トルクを高めることができるのである。
なお、ここで、機械圧縮比低減以外のノッキングの抑制手法として、点火時期の遅延化もあるが、これだと機関トルクが低下したり、熱効率が大幅に低下するなどの問題があり、減筒運転でのトルク向上が不十分である上に、減筒の目的である燃費向上に逆行するので、不適切な手法と言わざるを得ない。
空燃比をリッチにすることでもノッキングを抑制しつつ僅かに機関トルクを高めることができるが、燃費悪化を伴うため同様不適切な手法であるのは言うまでもない。
本実施形態では、これらの不適切なノッキング抑制手法を特に用いずとも、機械圧縮比低減によりノッキング抑制が可能になるのである。
なお、ここで、ノッキング抑制のため、上述してきた機械圧縮比低減でなく、吸気弁閉時期(IVC)を下死点から大きく離すことによる有効圧縮比低減も考えられる。しかしながら、この有効圧縮比低減は、IVCを下死点から進角側に離しても、遅角側に離しても、吸気充填効率低下を伴ってしまうので、本発明の主旨であるところの減筒運転領域の高機関トルク側への拡大はできないのである。
次に、図8及び図9に戻ると、本実施形態の減筒領域における(2)点(トルクT12;減筒)まで至ると、過給能力(スーパーチャージャ04は回転数依存)からこれ以上空気を押し込めないので、仮にさらに圧縮比を下げてさらに耐ノッキング性高めても機関トルクを向上できないばかりか、熱効率が下がりむしろ機関トルクは低下してしまう。
そこで、さらに高い機関トルクを出せるように、全筒運転((3)点)に切り換えるのである。
具体的には、図10に示すコントロールユニット63の制御フローチャート(加速側)に示すように、気筒休止機構03に制御信号(気筒休止解除信号)を送り、制御油圧をOFFとし弁作動態様へと移行するのである。
すなわち、図10のステップ1では、現在の機関運転状態を読み込み、ステップ2で、減筒運転状態にあるか否かを判断する。
減筒運転でないと判断した場合は、そのままリターンするが、減筒運転であると判断した場合は、ステップ3に移行する。
このステップ3では、前記減筒運転(領域1)用マップに基づき、VCRで圧縮比ε制御と、電動VTC05によってIVC制御、さらにスーパーチャージャ04(S/C)のクラッチ機構と吸気バイパス弁68の制御を行う。
ステップ4では、図7に示す領域1(第1領域)と領域2(第2領域)の境界ラインに達したか否かを判断し、境界ラインに達していない場合はリターンするが、達している場合はステップ5に移行する。
このステップ5では、前記電磁切換弁65に気筒休止解除信号を出力する(制御電流オフ)と共に、電動VTC05にIVCを遅角側に変換する制御信号を出力する。さらに、前記S/Cの吸気バイパス弁68の開度を増大させる信号を出力する。
ステップ6では、ステップ5での制御信号を出力した後、所定時間tが経過したか否かを判断して、NOであればステップ6に戻り、経過したと判断した場合はステップ7に移行する。
ステップ7では、VCR02によって圧縮比εを増大させる信号を出力して、ステップ8に移行する。
ステップ8では、全筒運転用マップに基づいて、VCR02で圧縮比εを制御し、電動VTC05でIVCを制御すると共に、S/Cのクラッチ機構と吸気バイパス弁68の開度を制御し、その後、リターンする。
この場合、全筒運転になるので、機関トルクが大幅に増加しトルクショックが発生してしまうため、図9(3)に示すように、吸気弁の閉時期(IVC)を遅角側に変換制御して、充填効率を低下させ、スーパーチャージャ04の吸気バイパス弁68の開度を増大することで実質の過給圧を低下させて、さらに充填効率を低下させ、全筒運転移行に起因する機関トルクの増加変化が抑制される。
これによって、機関トルク低減のためのスロットルバルブ67の開度の絞りを抑制して、もってポンプ損失を抑制しつつ機関トルク増加の抑制が図れるのである。
これらの過程を行った後に、図8(3)に示すように圧縮比εを12までVCR02によって高めるのである。
この圧縮比ε12は、言い換えると、全筒運転で機関トルクT12においてノッキングが発生しない最大機械圧縮比であり、燃費に不利な全筒運転においてもこの高圧縮比ε12により可及的に燃費(熱効率)を向上させることができる。
ちなみに、この変換順序として、仮に先に圧縮比εを増大させて、その後に前述の全筒移行シーケンスを行うことを想定してみると、減筒状態で高圧縮比εの瞬間が存在することになり、大きなノッキング(過渡ノッキング)が発生してしまうことになる。
このため、本実施形態では、図10のステップ5〜ステップ7に示すように、全筒移行およびIVC変化やバイバス弁68の制御を先に行い、その直後に(僅かな所定時間t経過後に)、圧縮比εを増大させる制御信号を出力するのである。
つぎに、さらにアクセルが踏み込まれると、全筒運転での機関トルクがさらに増加し、図7の(4)点のT9.5まで増加していく。
このとき、充填効率を高めるため、遅角したIVCは再び下死点に近づけていく。また、スーパーチャージャ04はクラッチONのまま、吸気バイパス弁68を全閉まで閉じていく。
(3)点から(4)点に至る過程では、各機関トルクに応じて、圧縮比εはノッキングを抑制できる最大値をトレースして行き、最大機関トルクT9.5の(4)点では、圧縮比ε9.5となっている。
これに対し、従来の気筒休止だと、図8の(イ)点において全筒運転に切り換わらざるを得ないことは前述した通りだが、アクセルをさらに踏み込むと(ウ)点に向って機関トルクが増大して行く。
しかしながら、圧縮比ε11は固定であるため、T11の(ウ)点に達すると、全筒運転でのノッキング限界となり、それ以上の機関トルクが得られなくなる。
一方、本実施形態に戻ると、前述のように、VCR02により圧縮比ε9.5まで減少制御を行うので、ノッキングを抑制しつつ(4)点のT9.5まで機関トルクを高められるのである。
この全筒最大機関トルクT9.5について補足説明すると、機械式過給機(スーパーチャージャ04)では機関回転(実施形態では1600rpm程度)と同期し回転するので、回転数により過給能力が制約される。この制約のもとに決まった充填効率、すなわち機関トルク(全筒)があり、このときノッキングを抑ええる限界圧縮比εがこの実施形態では9.5であり、そのときの機関トルクがT9.5となっているのである。したがって、機関トルクはT9.5まで向上できるものの、逆に言えば、T9までは到達できないのである。その要因としては、全筒運転ではスーパーチャージャ04により押し込まれる空気は全気筒に配分されるため1気筒当たりの充填効率の上昇効果は、少ない気筒に配分される減筒運転のときよりも少ないからである。
よって、全筒での最大機関トルク(T9.5)時の機械圧縮比は、減筒時の圧縮比ε9ほどには下げなくて済み、圧縮比ε9.5とやや大きくなっている。
言い換えれば、このスーパーチャージャ04を用いた場合の特徴として、減筒時には、スーパーチャージャ04により押し込まれる空気は、少ない稼動気筒に配分されるため、稼動気筒で見た場合に大きな充填効率効果が得られると共に、回転依存型であり低機関トルク領域から十分な過給効果が得られるため、減筒時における最大機関トルクをT12(全筒運転ε12でのノッキングを発生せずに出せる最大トルク)まで充分大きくできたのである。
そして、VCR02で圧縮比εを制御範囲で最小の圧縮比ε9まで下げることで、減筒でありながら、上述の大きなT12、すなわち全筒ε12でノッキングを発生させずに出せる最大機関トルクを発生でき、しかもノッキング発生を抑制できる。もって、減筒機関トルクを充分高め(T12)、減筒運転領域を高機関トルク側に十分拡大することで、減筒運転の頻度を充分高め、実走行での燃費性能を充分高められるのである。
次に、第2運転領域から第1運転領域に変化する減速側運転シ−ンについて説明する。
図8の下向き矢印(白抜き)に示すように、全筒最大機関トルクの(4)点から機関トルクが低下していき、(3)点に到達しさらに機関トルクが下がっていく場合を考える。
(3)点に到達した時点で、まだアクセル開度がある程度高い場合は、巡航走行が継続していると判断し、図11の制御フローチャート(減速側)に示すように、燃費の良い気筒休止(減筒)状態に切り替わる。
すなわち、ステップ11では、機関運転状態を読み込み、ステップ12で、現在全筒運転(領域2)になっているか否かを判断する。
ここで、全筒運転になっていない場合は、ステップ11に戻るが、全筒運転であると判断した場合は、ステップ13に移行して、ここでは、全筒運転用マップに基づきVCR02に圧縮比制御の信号を出力すると共に、電動VTC05にIVC制御を行う信号を出力する。また、クラッチ機構と吸気バイパス弁68に制御信号を出力する。
ステップ14では、領域1−領域2の境界ラインに達したか否かを判断し、達していないと判断した場合はリターンするが、達していると判断した場合は、ステップ15に移行する。
このステップ15では、アクセル開度が所定値以上か否かを判断し、所定値以上になっていない場合は(所定値未満)、ステップ21に移行し、所定値以上になっていると判断した場合は、ステップ16に移行する。このステップ16では、VCR02に目標機械圧縮比ε(ε0)を、目標機関トルク(アクセル開度)などより演算する。
このように、目標機械圧縮比ε0を演算し(図7、8において、例えば目標機関トルクが変わらないとし、目標機械圧縮比ε0はε9とする)、先行してVCRを目標ε0への変換信号を出力する。
その後、ステップ17において、VCR02に目標機械圧縮比ε0に向けて減少信号を出力すると共に、ステップ18で、VCR02によって実機械圧縮比εが目標ε0に達したか否かを判断する。ここで、実機械圧縮比εはVCR02の制御軸61の位相やモ−タ62の回転角度より検出すれば良い。
目標ε0に達していた場合は、ステップ19にいき、気筒休止信号やIVCを進角させる信号、さらに吸気バイパス弁68の開度減少信号をそれぞれ出力してステップ20に移行する。(目標ε0に達していない場合は、再度ステップ17に戻り、繰り返す。)
ステップ20では、減筒運転(領域1)用のマップに基づいてVCR02によって機械圧縮比εを制御すると共に、電動VTC05によってIVCを制御し、さらに吸気バイパス弁68によって開度制御を行う。
すなわち、実際にVCR02の実機械圧縮比εが目標圧縮比ε0(例えば、前述のε9)まで低下したのを確認してから、気筒休止信号出力、IVC進角信号出力、スーパーチャージャ04の吸気バイパス弁68の開度減少信号出力を行うのである。
ここで、前述のように、圧縮比εを先に低減させているのは、以下の理由による。すなわち、仮に圧縮比εが大きい状態で、気筒休止変換したり、IVCを下死点に近づけたり、吸気バイパス弁68の開度を減少したりすると、稼働気筒の充填効率が高いので、ノッキングが発生してしまうからである。そのために、実際に圧縮比εが目標圧縮比ε0まで低下したのを確認後、これらの制御を行うのである。
一方、ステップ15に戻って、アクセル開度が所定値未満であった場合には、ステップ21にいき、全筒運転を維持する信号(気筒休止OFF信号を継続)を出力すると共に、ステップ22で全筒運転(領域2)用のマップ(図7中2点鎖線)に基づきVCR02に圧縮比ε制御信号を出力する。また、電動VTC05にIVCの制御信号を出力すると共に、前記クラッチ機構と吸気バイパス弁68に制御信号を出力する。つまり、全筒運転の(3)点で、アクセル開度が所定量に満たなくなった場合は、比較的急な減速状態と判断し、全筒運転状態を維持するのである。
全筒運転のまま、図8の(3)点(T12、全筒)から(1’)点(T15、全筒)まで下がり、さらに、最大負トルクTa(エンブレ)特性となる(a)点に至り、充分なエンジンブレ−キを生じさせ、制動能力を高められるのである。
なお、図7、図8における(1’)点は、全筒運転においてε15、T15となる点であり、前述のように、図7、図8における減筒運転での(1)点と略一致している。
ここで、この比較的急な減速過程で仮に減筒状態に移行してしまったとすると、休止気筒のポンプ損失や動弁フリクションが十分小さくなっているので、最大負機関トルクの絶対値もTbまで減少し、エンジンブレ−キ(エンブレ)が効きにくく、もって制動能力が低下してしまう(Tb<Ta)。
これに対し、前述のようにエンジンブレ−キが効きやすい全筒運転(最大負機関トルクTa)となっているので、制動能力を充分高められるのである(Ta>Tb)。
一方、ここで機関負トルク域までトルク低下する前に、再度アクセルを吹かして再加速するというシ−ンを考えてみる。
例えば、全筒運転のまま(1’)点(T15、全筒)まで下がった時点で再加速する場合を想定してみる。
ここで、仮に減筒状態であったと仮定すると(1)点であり、そこからの再加速の途中で全筒運転に切り替わるので((1)→(2)→(3))、その切り替わり応答時間の分、加速応答性が悪化してしまう。
それに対して、本実施形態のように、急減速の際には全筒運転を維持しておくようにすれば、再加速の際には、元々機関トルクが出しやすい全筒運転((1’)点)になっているし、気筒数切り換えシ−ケンスも不要となるので、良好な加速応答性が得られるのである。この様な、付随効果も本実施形態は有している。
以上のように、本実施形態では、前記減筒運転領域においては、低い圧縮比により耐ノッキング性が向上できるので、ノッキングを抑制しつつ燃費に有利な減筒運転領域を機関高トルク側まで拡大できる。つまり、燃費の良い減筒運転領域での運転頻度を高めることができ、車両実走行時の燃費性能を向上できる。
また、燃費に不利な全筒運転領域での運転頻度は減少し、一方でこの全筒運転領域では高い圧縮比制御により熱効率を可及的に向上できる。したがって、車両実走行時におけるト−タルでの燃費性能を向上できる。
さらに、加速シ−ン及び減速シ−ンも含め、前述したような付随効果も得られるのである。
〔第2実施形態〕
図12〜図17は第2実施形態を示し、過給機として、機械式のスーパーチャージャ04に代えて、例えば特開2009−209880号公報などに記載された排気ガスを利用したいわゆるターボチャ−ジャ69を用いたものである。
そして、ターボチャ−ジャのタービンの入り口と出口をバイパスさせる排気バイパス弁80が設けられている。これは電子制御により開度を制御できるもので、いわゆる電制ウェストゲ−トバルブと呼ばれるものなどに相当する。
この排気バイパス弁80によって、排気ガスによるタ−ビン仕事を低下させ、これによりコンプレッサの過給仕事を低下させるようになっている。
VCR02は第1実施形態と同様のものであるが、圧縮比εの制御範囲は拡大され、最小制御圧縮比εは8.5と低く設定されている。
また、本実施形態の吸気弁側では、図13に示すように、各吸気弁3a〜3bのバルブリフト量と作動角を可変制御する吸気VEL81が用いられている。この吸気VEL81は、本出願人が先に出願した例えば特許第4989523号に記載されているので、具体的な説明は省略するが、基本構成としては、クランクシャフト50によって回転駆動する駆動軸82と、該駆動軸82の外周に圧入固定された回転カム82aと、駆動軸82の外周に揺動自在に支持されて、各吸気弁3a〜3bの上端部に有する前記各スイングアーム6のローラ14に摺接して各吸気弁3a〜3bを開作動させる揺動カム83と、回転カム82aと揺動カム83との間に介装されて回転カム82aの回転力を揺動運動に変換して揺動カム83に揺動力として伝達する伝達機構84と、該伝達機構84の姿勢を機関運転状態に応じて制御する制御機構85とを備えている。
この制御機構85は、図外の減速機構を介して電動モータによって回転角度位置が制御され、前記電動モータは、前記コントロールユニット63によって回転駆動が制御されるようになっている。
図14は稼動気筒数・機械圧縮比(ε)のマップを示している。最大機関トルク特性(全筒)についてみてみると、低回転側領域ではこの機関トルクが低くなっている。これは、低回転域では排出する排ガス絶対量が少なく、排圧を十分に高められず、充分にはタ−ビンを回転できないことによる。
一方、高回転域では機関トルクが、スーパーチャージャ04を用いた第1実施形態と比較しても、高くなり、最高出力、最大トルクも高くなる。これは、高負荷域の高回転側では排気ガス量が増大し、タービンを高速で回し、コンプレッサによる過給圧が充分に高められるからである。さらに、回転増加に伴う作動フリクション増加もスーパーチャージャ04を用いた第1実施形態と比較し小さいため、一層機関のトルク向上に繋がるのである。
ここで、機械圧縮比(ε)マップをみてみると、減筒での最大正トルクすなわち領域1と領域2の境界での機関トルクはT12.5であり、スーパーチャージャ04のT12と比較してやや低くなっている。これは、排気ガスを排出する気筒数が半分となっているので、機関としての排気ガス量は高負荷であっても絶対量は少なく、もって過給圧を高めにくく、充填効率を充分には上げにくいからである。
とはいえ、圧縮比εをやや低い10に制御することで、ある程度充填効率を向上しつつノッキングを抑え、従来技術と相当のT13よりは大きな機関トルクT12.5とできる(図14、図15の大きな白抜き矢印)。よって、第1実施形態と同様に、減筒運転領域が拡大し、減筒領域の使用頻度が高まり、車両実走行時の燃費性能を向上できるのである。
次に、減筒運転状態の(1)点(第1実施形態の(1)点と同様)から、アクセルを踏み込んで加速する場合を考える。スーパーチャージャ04を用いた第1実施形態の場合、図7に示すように、機関回転数の変化は僅かであるが、ターボチャ−ジャ69を用いた第2実施形態では、図14に示すように、機関回転数を高めながら、すなわち、比較的大きな傾斜を持ちながら、機関トルクが上昇していく。これは、低回転、低トルク側では排圧が低く過給圧が高くならないので、いわゆるCVTなどのトランスミッションで比較的ロ−ギヤ側に制御しつつエンジン回転を上昇させていく方が車両としての加速性を高められるからである。このような目的のために、このような傾きを設けるのである。
そして、第1実施形態と同様に、第1運転領域-第2運転領域の境界である(2)点に到達すると、図15に示すように、全筒運転に切り替わるとともに、圧縮比ε10から圧縮比ε12.5に変化する。
具体的には、図17の制御フローチャート(加速側)に示すように、電磁弁65に気筒休止制御信号(気筒休止解除信号)を送り、気筒休止機構03の制御油圧をOFFとし吸排気弁作動態様へと移行するのである。
この図17のフローチャートは、第1実施形態の図10とほぼ同様であるが、いくつか異なる点がある。まず、過給圧制御の方法として、第1実施形態がスーパーチャージャ04のクラッチON−OFF制御と、吸気バイパス弁68の制御だったのに対し、本実施形態では、ターボチャージャ69の排気バイパス弁80の制御になっているが、基本的な制御の考え方は同一である。
また、吸気弁閉時期(IVC)制御の考え方として、第1実施形態では充填効率や有効圧縮比を低減する方策としてIVCを下死点より遅れる側に離すようにしているのに対し、本実施形態ではIVCを下死点より進む側に離すようにしているが、考え方は同一である。
IVCを変化させる構成としては、第1実施形態が位相可変の電動VTC05なのに対し、本実施形態では作動角やリフトも変化できる吸気VEL81を併設している点で異なっており、これにより、吸気弁開時期(IVO)やバルブオーバーラップの制御自由度が向上できる。
すなわち、まず、ステップ31では現在に機関運転状態を読み込み、ステップ32では、減筒運転(領域1)か否かを判断する。ここで、減筒運転ではないと判断した場合は、リターンするが減筒運転であるとした場合はステップ33に移行する。
このステップ33では、減筒運転(領域1)用マップに基づき、VCR02と電動VTC05、吸気VEL81及び排気バイパス弁80に制御信号を出力する。
ステップ34では、図14に示す機関トルクが領域1(第1運転領域)−領域2(第2運転領域)の境界ラインに達したか否かを判断し、境界ラインに達しない場合はリターンするが、境界ラインに達した場合は、ステップ35に移行する。
このステップ35では、電磁切換弁65に気筒休止解除信号と、電動VTC05にIVC進角信号を出力すると共に、排気バイパス弁80に弁開度を増加する信号を出力する。
ステップ36では、ステップ35での制御信号を出力した後、所定時間tが経過したか否かを判断して、NOであればステップ36に戻り、経過したと判断した場合はステップ37に移行する。
ステップ37では、VCR02によって圧縮比εを増大させる信号を出力して、ステップ38に移行する。
ステップ38では、全筒運転用マップに基づいて、VCR02で圧縮比εを制御し、電動VTC05とVEL81でIVCなどを制御すると共に、排気バイパス弁80の開度制御し、その後、リターンする。
補足すると、ステップ35〜37の過程で、全筒運転になるので、機関トルクが大幅に増加しトルクショックが発生してしまうため、図16に示すようにIVCを下死点の充分手前まで充分進角させ、すなわち、第1実施形態と異なって下死点手前側に離すことで充填効率を低下させ、排気バイパス弁80の開度を増大することで実質の過給圧を低下させて、さらに充填効率が低下し、機関トルクの増加変化が抑制される。
したがって、スロットルバルブ67の開度を絞るのを抑制でき、もってポンプ損失を抑制しつつ機関トルクの増加抑制ができるのである。
これらの過程を行った後に、ステップ37で、図15の(3)点に示すように圧縮比εを12.5までVCRにより高めるのである。
この圧縮比ε12.5は、全筒運転で機関トルクT12.5においてノッキングが発生しない最大機械圧縮比であり、燃費に不利な全筒運転においてもこの高圧縮比ε12.5により可及的に燃費(熱効率)を向上するのである。
ちなみに、この変換順序として、仮に先に圧縮比εが増大してその後に前述の全筒移行シーケンスを行うことを想定してみると、減筒状態で高圧縮比εの瞬間が存在することになり、大きなノッキング(過渡ノッキング)が発生してしまうことになる。
そのため、本実施形態では、図17に示すように、ステップ35において全筒移行およびIVC変化や排気バイバス弁80の制御を先に行い、その直後にステップ36で僅かな所定時間 t 経過後に、圧縮比εを増大させる制御信号を出力するのであり、これは第1実施形態と同様の考え方である。
つぎに、さらにアクセルが踏み込まれると、全筒運転での機関トルク(充填効率)がさらに増加し、圧縮比εを減少していくと、(4)点のT9まで増加して行く。
ターボチャージャ69の場合は、機械式過給機と比較し、高負荷域で高排圧になるため過給圧を容易に高められ、また機関回転増加に伴う作動フリクション増加が小さいため、充填効率や機関トルクをスーパーチャージャに比較して大きくできるのである。このとき、充填効率をさらに高めるため、排気バイバス弁80は絞っていき、進角したIVCは再び下死点に近づけていく。そして、最大充填効率となる下死点を少し過ぎたあたりに制御する。
一方、吸気VEL81により作動角とバルブリフト量を増大させ、さらに充填効率を向上させる。これにより、バルブオーバーラップ区間を付随的に増大でき、同区間と排気脈動の負圧波と同期させることで吸気を筒内に吸い込み、一層充填効率を高められる。
この高まった充填効率でノッキングが発生しない最大の圧縮比εが9であり、そのときの機関トルクが前述のT9であり、このT9は、スーパーチャージャ04を用いた第1実施形態のT9.5より大きくなっている。
さらに回転が増加するに連れて最大機関トルク特性に沿って変化し、図15の(5)点に示す最高出力点(最高回転での最大トルク点;T8.5・ε8.5)へと運転ポイントが移行する。
ところで、図15の(4)点での圧縮比ε9、(5)点での圧縮比ε8.5は、減筒最大機関トルク時の減筒での最小圧縮比ε10より小さな、大きな圧縮比ε制御範囲における最小値付近となっている。したがって、高い充填効率においても充分な耐ノッキング性を有し、前記第2運転領域(全筒領域)の最大機関トルクや最高出力を高め、加速性能を高めることができるのである。すなわち、最高比出力・最大比トルク(単位排気量当たりの最高出力・最大トルク)を高めることができるのである。
あるいは、この最高比出力・最大比トルク向上効果を、その分、機関総排気量を小さく設定することを行えば、燃費性能をさらに向上することもできるのである。
本実施形態では、前述したように、電動VTC05と吸気VEL81を併設し、これにより、吸気弁開時期(IVO)やバルブオーバーラップの制御自由度が向上できるが、これを、図16に基づいて具体的に説明する。
図16において、減筒状態で、点(1)から点(2)へと変化する際、充填効率を高めるためにIVCは下死点に近づけていくが、その際吸気VEL81で作動角を縮小することでバルブオーバーラップの変化を抑制でき、残留ガス量の過渡変化も抑制できることから、過渡性能が安定する。
また、減筒運転にある(2)点から全筒運転の(3)点に変化する際、稼動気筒の充填効率を落とすために、IVCを下死点より瞬時に進角側に遠ざけるのだが、本実施形態では、吸気VEL81と電動VTC05を併設するので、図16に示すように、バルブオーバーラップの変化を抑制するようにIVOの変化を制御することが可能である。
すなわち、減筒-全筒運転切り換え時の(2)−(3)間でバルブオーバーラップの変化を抑制し、特に過渡性能不安定が生じやすい(2)−(3)間で、残留ガス量の過渡変化を抑制し過渡性能を安定化させることができる。
なお、図16の(2)(3)に示した破線の吸気リフト曲線は、第1実施形態のような、電動VTC05を設けるがVEL81は併設しない場合の例を示す。これに対して、バルブオーバーラップの変化を抑制できるのである。
また、全筒運転最大機関トルクの(4)点や(5)点では、機関トルクを高めるために大きなバルブオーバーラップを積極的に利用できる点は前述の通りである。
また、減速時、例えば図15における(4)点→(3)点→(2)点に至るシ−ケンス、あるいは(4)点→(3)点→(1’)点に至るシ−ケンスは、第1実施形態と同様であり、同様の効果が得られる。
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば各実施形態では2気筒の内燃機関を示したが、3気筒や4気筒や6気筒、8気筒、10気筒、12気筒などに適用しても構わない。その場合、減筒運転とは一部気筒が燃焼稼動し、残気筒が気筒休止(吸排気弁停止)ということになる。
前記各実施形態では、気筒休止機構としてラッシアジャスタをロストモ−ションさせる機構を示したが、どんな気筒休止機構であってもよい。例えば、特開平10−82334号公報に示すような、油圧ピンにより作動カムを切り替えるものでも良いし、特表2010−20395に示すような、カムシャフト軸方向移動により作動カムを選択するようなものでも良い。
また、位相可変のVTCは電動式のものを示したが、ベーンなどを用いた油圧式でも構わない。リフト可変機構としてはVELを示したが、他の方式のリフト可変機構でも構わない。可変機械圧縮比機構のVCRとしても、特に限定せず、例えば特開2003―65090に示すようなピストン自体の高さを変化する方式であっても良い。つまり、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の方式、構成、構造に適用することが可能である。
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕請求項1記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
機関弁としての吸気弁の閉時期を変化可能な吸気バルブタイミング機構を設けると共に、
前記両領域間の境界ラインより低トルク側の第1運転領域では、前記一部気筒を除く残り気筒の前記吸気弁の閉時期を下死点に接近するように前記吸気バルブタイミング機構を制御し、
前記両領域間の境界ラインより高トルク側の第2運転領域では、全気筒の吸気弁の閉時期を下死点から離れるように制御することを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。
この発明によれば、第1運転領域(減筒領域)において吸気充填効率を高めることができるのでその分機関トルクを高めることができ、もって燃費の良い減筒領域での運転頻度をさらに高めることができ、車両実走行時の燃費性能をさらに向上できる。
一方、第2運転領域(全筒領域)に移行すると、稼動気筒数が増加し、機関トルクが増大してしまう。そのため、トルク増大ショックが発生したり、あるいはそれを抑えるためにスロットル弁を大きく絞るのでポンプ損失が増大してしまうという問題があった。
これに対して、全気筒の吸気弁閉時期が下死点から離れるので吸気充填効率が低下し、もって前述のトルクショックを抑制したり、スロットル弁を絞るのを抑制できるのでポンプ損失を抑制し燃費を向上することができる。
〔請求項b〕
請求項1記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
機関の運転状態が、低トルク側の前記第1運転領域から高トルク側の前記第2運転領域に変化する際に、先行して前記気筒休止機構によって前記一部気筒における機関弁の作動を開始し、その直後に前記可変圧縮比機構によって相対的に低い第1の機械圧縮比から相対的に高い第2の機械圧縮比に変化させることを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。
この発明によれば、減筒運転状態で高機械圧縮比となる瞬間を回避でき、過渡ノッキング発生を回避できる。
〔請求項c〕
請求項1記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
前記両領域間の境界ラインより低トルク側の第1運転領域において過給を行う過給機を設けたことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。
この発明によれば、燃費に有利な前記第1運転領域(減筒領域)を過給により一層高機関トルク側まで拡大でき、車両実走行時の燃費性能を一層向上できる。
〔請求項d〕
請求項c記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
前記過給機は、機械式過給機であることを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。
これによれば、機関トルクが低い場合(排圧低)であっても充分に過給圧を高めることができ、燃費に有利な前記第1運転領域(減筒領域)をより一層高機関トルク側まで拡大でき、車両実走行時の燃費性能をより一層向上できる。
〔請求項e〕
請求項c記載の多気筒内燃機関の制御装置において、
前記過給機をターボ過給機としたことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。
これによれば、請求項cに示す燃費性能向上に加え、ターボ過給機は機械式過給機と比較し、高負荷域(排圧高)で過給圧を容易に高められ、また機関回転増加に伴う作動フリクション増加が小さいため、最高比出力・最大比トルク(単位排気量当たりの最高出力・最大トルク)を高めることができ、加速性能が向上する。あるいは、加速性能が向上した分、機関総排気量を小さく設定することができ、その場合はさらに燃費性能を向上できる。