JP2015081230A - 色素複合体を利用したpH勾配法、および色素内包リポソーム - Google Patents
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Abstract
【課題】、両親媒性色素を大量に安定に保持することができるリポソーム粒子の作製。【解決手段】pHによって親疎水性が変化する両親媒性シアニン系色素をリン脂質の構成成分、特に好ましくはホスホコリンとの複合体を形成し、pH勾配法によってリポソームに内包させる。【選択図】図1
Description
本発明は、色素複合体を利用したpH勾配法、および色素内包リポソームに関する。
近年、非侵襲的に診断ができるイメージング方法として、蛍光イメージング法や光音響イメージング法が注目されている。
蛍光イメージング法は蛍光色素に光を照射し、色素が発する蛍光を検出する方法で、各種イメージングに広く用いられている。光音響イメージング法は、光を照射された測定対象の分子が放出する熱が起こす体積膨張により生じる音響波の強度と音響波の発生位置を検出することで、測定対象の画像を得る方法である。蛍光イメージング法や光音響イメージング法において、測定対象部位からの蛍光の大きさや音響波の強度を大きくするための造影剤として色素を用いることができる。
このような造影剤においては、信号強度(蛍光や音響波の強度)を有効に増幅するために、光を吸収することで蛍光または音響波を発する色素を粒子、ミセル、ポリマーミセル、リポソーム等(以下、単に粒子という場合は、特に言及される場合を除き、これらの総称を意味する)に集積することにより、色素密度を上げて、照射エネルギーの吸収効率を上げることが望まれる。
光を吸収することで蛍光または音響波を発することが知られている色素として、インドシアニングリーン(Indocyanine Green、以下、ICGと略すことがある)を挙げられる。なお、本明細書において、ICGとはシアニン骨格を有し、下記に示される構造を有する化合物を指す。
ただし、対イオンはNa+でなくともよく、H+あるいはK+でもよい。またヨウ化ナトリウムNaIを添加してもよい。
一般的に色素は分子量が低く、造影剤として用いるには、血中滞留性が低いという課題があった。ICGのような両親媒性色素は肝代謝され易く、水溶性の色素は腎排泄され易い場合が多い。
そこで、血中滞留性を高め、腫瘍滞留性を向上させる目的で、よりサイズの大きい腫瘍造影剤が望まれていた。ICGを含み、よりサイズの大きな粒子として、非特許文献1には、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol:PVA)を界面活性剤にしてエマルジョン溶媒拡散法によって得たICG含有乳酸−グリコール酸共重合体(poly(lactide−co−glycolide:以下PLGAと略すことがある)粒子が開示されている。
"Enhanced photo−stability, thermal−stability and aqueous−stability of indocyanine green in polymeric nanoparticulate systems",Journal of Photochemistry and Photobiology B:Biology,74,PP.29−38,2004
"J−aggregation and disaggregation of indocyanine green in water", Chemical Physics,Volume220,PP.385−392,1997
特許文献1および非特許文献1に開示されたICGを含有する粒子には、リポソーム内に充填できる色素量に限界があり、造影剤粒子のICG含有率が低く、必要な造影感度を得るためには、ICG含有粒子を大量に投与することになり、患者に過度の負担を与えるという問題があった。
水和分散法においては有機溶媒に溶解し溶媒除去したリン脂質フィルムをICG水溶液と共に超音波撹拌することによりICG水溶液を内包するリポソームを形成できるが、かかる方法で作製された、例えば粒径70nm前後のリポソームでは、その体積、乾燥重量より求めた内水相体積は0.5vol%前後しかない。したがって、飽和濃度に近いICG水溶液を使って水和分散し限外ろ過や遠心などで濃縮したとしても造影剤全体のICGモル吸光係数εは10^8オーダーでああった。
上記の他に、バンガム法と呼ばれるリポソーム作製方法がある。この方法では、リン脂質クロロホルム溶液にICGメタノール溶液を混和溶解した後、溶媒除去したICGを含むリン脂質フィルムをバッファ水溶液と共に超音波撹拌することによりICGをリン脂質内に含むリポソームを形成できる。しかし、バンガム法で製作された、粒径70nm前後のリポソームでも、その体積、乾燥重量より求めたリポソーム脂質膜の体積は1vol%前後しかなく、造影剤全体のICGモル吸光係数εは10^8オーダーである。よってICG含有率が優れたICG含有粒子が求められていた。
そこで本発明は、両親媒性色素を大量に安定に保持することができるリポソーム粒子の作製を課題とした。
そこで本発明は、両親媒性色素を大量に安定に保持することができるリポソーム粒子の作製を課題とした。
本発明は、両親媒性色素、例えばICGを外水相から内水相へと輸送して、内水相ICG濃度を高めるトランスメンブレン法の一種であるpH勾配法に基づいて、色素含有粒子を作製した。
pH勾配法はドキソルビシンをリポソーム内に高効率で内包する技術として知られる(特許文献2)。pH勾配法で作製されたドキソルビシン内包リポソームとして、ドキシル(商標)が知られる。pH勾配法によるドキシルの作製では、ドキソルビシンがpH4.0で水溶性のイオン型となり、pH7.5で脂溶性の分子型となることを利用している。すなわち、あらかじめpH4.0の内水相をもつリポソームを調製し、後に外水相をpH7.5に置換することによりリポソーム内外にpH勾配を形成させる。ドキソルビシンを添加すると、pH7.5環境下であるため、ドキソルビシンは脂溶性となりリポソームのリン脂質2重膜を透過し始める。リポソーム内部はpH4.0であるから、透過した分子型ドキソルビシンはイオン型に戻り、内水相に閉じ込められる。すなわち、リポソーム内外でのpH勾配がドライビングフォースとなり、リポソームの外側に存在したドキソルビシンがリポソーム内に濃縮される。ドキシルにおいてリン脂質として水素添加大豆ホスファチジルコリン(Hydrogenated Soy Phosphatidylcholine:HSPCと略す)が用いられている。
一方、ICGはJ会合体、H会合体などの会合体を形成することが知られる。会合体はそれ自体が造影の妨害とはなるわけではないが、会合することによってICG単量体に由来する780nmの吸収が減ずるため、造影剤中の会合体の形成は抑制することが好ましい。
ICGの水溶液は60℃以上に加熱すると、J会合体の形成がはじまり、J会合体の形成が始まると、核ができ、更なるJ会合体の形成を促進することが知られる(非特許文献2では65℃を基準に20℃、45℃、80℃、90℃に加熱した例を示す)。pH勾配法を含む従来のリポソーム作製法においては、高濃度ICG水溶液(非特許文献2によれば1.5mM以上)をリン脂質の相転移温度である60℃以上に加熱した状態で作製するため、J会合体が形成される。
シアニン色素pseudoisocyanine iodide(1,10−diethyl−2,20−cyanine iodide;IUPAC:1−ethyl−2−[(1−ethyl−2(1H)−quinolinylidene)methyl]quinolinium iodide 以下、PIC)は、ツィッターイオン(Zwitterion)部位を有するリン脂質2重膜の表面に色素がカチオン−π電子結合様式で結合し、さらにリン脂質の配向性をテンプレートとして色素が会合状態を取るため、特にリン脂質共存下においてJ会合体を形成しやすいと考えられている。
上記の結合様式は、両親媒性色素であるICGでも同様と推察され、従来のpH勾配法によって、ICGをリポソームに導入しようとすれば、リポソームに内包されることなく、リン脂質2重膜の表面に吸着すると考えられる。
本発明に係る粒子は、両親媒性色素(例えばICG)とホスホコリンあるいはホスホコリンを部分構造として有するリン脂質とから成る色素複合体を形成することで、会合体の形成を抑制し、両親媒性色素をリン脂質2重膜表面に吸着することなく、より効率的に両親媒性色素を内包する。
なお、本明細書中において、ホスホコリンをPC、ICGとホスホコリンとの複合体をICG−PCなどと省略表記する場合がある。ICGとPCを混合した際のモル比に応じて、ICG−1PC(モル比が1:1),ICG−2PC(モル比が1:2)などと表記する場合もある。
本発明の粒子は、pH勾配法によって両親媒性色素を効率的に内包する。また、両親媒性色素を色素複合体とすることで、色素が粒子表面に吸着したり、会合状態を形成することを防ぎ、2重膜を通過してリポソームに大量に内包させることができる。
本発明の一実施形態は色素含有粒子の製造方法であって、
両親媒性色素とリン脂質とを有する色素複合体を形成させる工程と、
前記色素複合体と粒子とを混合し、前記粒子内と前記粒子外とのpHの差を設けることにより、前記両親媒性色素を前記粒子に内包させる工程と、を有することを特徴とする、色素含有粒子の製造方法を提供する。
前記粒子内と前記粒子外とのpHの差を設けるとは、pH勾配法を用いることを含む。pH勾配法については後述する。
両親媒性色素とリン脂質とを有する色素複合体を形成させる工程と、
前記色素複合体と粒子とを混合し、前記粒子内と前記粒子外とのpHの差を設けることにより、前記両親媒性色素を前記粒子に内包させる工程と、を有することを特徴とする、色素含有粒子の製造方法を提供する。
前記粒子内と前記粒子外とのpHの差を設けるとは、pH勾配法を用いることを含む。pH勾配法については後述する。
また、上記の色素含有粒子の製造方法において、粒子がリポソームであることを特徴とすることができる。
上記の色素含有粒子の製造方法において、さらに、該リン脂質はツィッターイオン部位を有することを特徴とすることができる。
上記の色素含有粒子の製造方法において、さらに、色素とリン脂質とのモル比率が色素:リン脂質=1:2乃至2:1となるように色素複合体を形成することを特徴とすることができる。
上記の色素含有粒子の製造方法において、さらに、色素含有粒子の流体力学的平均粒子径は光散乱法で測定して1000nm以下であることを特徴とすることができる。
上記の色素含有粒子の製造方法において、さらに、両親媒性色素がICGであることを特徴とすることができる。
上記の色素含有粒子の製造方法において、さらに、該リン脂質がホスホコリンあるいはホスホコリンを部分構造として含むことを特徴とすることができる。
上記の色素含有粒子の製造方法において、さらに、粒子表面にPEG鎖を付加することを特徴とすることができる。
上記の色素含有粒子の製造方法において、さらに、該リン脂質がリン酸ジエステル結合を有することを特徴とすることができる。
本発明の第二の実施形態は、光イメージングに用いられることを特徴とする上記の色素含有粒子の製造方法で作製した色素含有粒子を提供する。光イメージングは、光音響イメージングを含む。
前記色素含有粒子においては、脂質は二重膜を形成していることを特徴とすることができる。
本発明の第三の実施形態は、上記の色素含有粒子の製造方法で作製した色素含有粒子と、前記粒子を分散する分散媒とを有することを特徴とする光イメージング用の造影剤を提供する。
以下、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限られない。
(両親媒性色素)
本実施形態の両親媒性色素は、特定のpH領域において疎水的・脂溶性な分子構造となることが特徴である。
本実施形態の両親媒性色素は、特定のpH領域において疎水的・脂溶性な分子構造となることが特徴である。
ICGはpH7の中性領域においてオクタノール相/水相の分配係数が低く水相に存在しやすいが、pH3の酸性領域においてオクタノール相/水相の分配係数が高くなり、脂溶性の分子構造であることが後述の実験によって確認されている。
本実施形態における両親媒性色素としては、特に限定はないが、シアニン色素であってスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、カルボン酸塩、リン酸、リン酸塩などの極性基を有するものが好ましい。
両親媒性色素の最も好ましい例として、インドシアニングリーン(ICG)を挙げられるが、その他にも、Cy5(GE−Healthcare)、Cy5.5(GE−Healthcare)、Cy7(GE−Healthcare)、NK−1841(日本感光色素 CAS#:64285−36−5)、S0524 (FEW Chemicals GmbHv CAS#:64285−36−5)、NK−1967(日本感光色素CAS#:64285−35−4)、S0121(FEW Chemicals GmbH CAS # : 115970−66−6)、S0523(FEW Chemicals GmbH CAS#:120768−44−7)、SF64(Omocianine)などが挙げられ、シアニン色素以外でもVivoTag680は本実施形態の方法に用いられる。
(H会合体形成とICG複合体形成との関係について)
ICGは高濃度の条件下においてH会合体(H−aggregate)を形成することが知られている。
ICG単量体(モノマー)の最大吸収波長λmaxは780nm付近にあり、高濃度ではICG同士が励起子相互作用により最大吸収波長が短波長700nmへシフトすることでH会合体の形成が確認できる。
H会合体はICG分子の励起子が相互作用を及ぼす距離まで近接した時にスペクトルシフトを起こすため、高濃度になるほどH会合体を形成しやすい。一方、ICGに立体障害となる分子が結合した複合体の場合にはH会合体の形成が抑制される。
ICGは高濃度の条件下においてH会合体(H−aggregate)を形成することが知られている。
ICG単量体(モノマー)の最大吸収波長λmaxは780nm付近にあり、高濃度ではICG同士が励起子相互作用により最大吸収波長が短波長700nmへシフトすることでH会合体の形成が確認できる。
H会合体はICG分子の励起子が相互作用を及ぼす距離まで近接した時にスペクトルシフトを起こすため、高濃度になるほどH会合体を形成しやすい。一方、ICGに立体障害となる分子が結合した複合体の場合にはH会合体の形成が抑制される。
(J会合体)
ICGは特定の条件下においてJ会合体(J−aggregate)を形成することが知られている。J会合体は、数nm乃至数μmの平均粒径を有する多量体であり、単量体に比べて、吸収極大波長が長波長側に大きくシフトし、その吸収帯が鋭くなることが知られている。ICGのJ会合体は、ICGの多量体構造物である会合体のうち、吸収波長がずれて、880nm乃至910nmに吸光度の極大をもつものと定義する。
ICGは特定の条件下においてJ会合体(J−aggregate)を形成することが知られている。J会合体は、数nm乃至数μmの平均粒径を有する多量体であり、単量体に比べて、吸収極大波長が長波長側に大きくシフトし、その吸収帯が鋭くなることが知られている。ICGのJ会合体は、ICGの多量体構造物である会合体のうち、吸収波長がずれて、880nm乃至910nmに吸光度の極大をもつものと定義する。
J会合体およびH会合体が存在するとICG単量体に由来する780nmの吸収が減ずるため抑制することが感度の点で好ましい。
本実施形態の両親媒性色素複合体はpH勾配法における両親媒性色素のリン脂質2重膜の透過性を改善するためのものであるが、同時に、両親媒性色素同士の会合を立体的に障害し両親媒性色素の会合を抑制する。特に、J会合体は平均粒径が大きくなるためリン脂質2重膜を透過するのが困難であるため、両親媒性色素複合体を形成し、会合を抑制することは、ICGのリポソーム内包の効率も上げていると推測される。
本実施形態では、できあがったリポソームに含まれる色素が会合状態か、非会合状態か、は重要ではない。以下に示す実施例では、本実施形態にかかる粒子において、H会合体の形成が抑制されていることからICGが複合体を形成していることを証明し、pH勾配工程時にJ会合体の形成が抑制されていることからICG複合体がリポソーム表面に吸着せずICGが内包されていることを証明する。
(リン脂質)
リン脂質とは、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質の総称である。なお、リン脂質は、色素複合体を形成するために用いられるが、色素未含有粒子にもリン脂質は含まれる場合がある。
リン脂質とは、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質の総称である。なお、リン脂質は、色素複合体を形成するために用いられるが、色素未含有粒子にもリン脂質は含まれる場合がある。
本実施形態において、色素複合体を形成するためのリン脂質の好ましい例として、ツィッターイオン部位を有するリン脂質をあげられる。
後述するように、実施例1では、8種類のリン脂質、あるいはその他の化合物をICGと複合体を形成しようとしたところ、ICGとホスホコリンは複合体を形成しているが、その他7種類の化合物は単なる混合物を形成していると思われた。したがって、複合体を形成するリン脂質はホスホコリン、あるいはホスホコリンを部分構造として有するリン脂質が好ましい。
ツィッターイオン部位を有するリン脂質とは、脂質のうちその構造の一部に、陽イオンの部分構造と陰イオンの部分構造を有する脂質のことを言う。このような脂質の例としては、ホスホコリンの他、ホスホコリンを一部の構造に含むリン脂質を挙げられ、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン等を挙げることができる。
また、ツィッターイオン部位を有するリン脂質は、さらにリン酸ジエステル結合を有してもよく、その例として、1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DSPE)、1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DPPE)、1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DMPE)、1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DLPE)、1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DOPE)、1,2−Dilinoleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DLoPE)、1,2−Dierucoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DEPE)、1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DSPC)、1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DPPC)、1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DMPC)、1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DLPC)、1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DOPC)、1,2−Dilinoleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(DLoPC)などが挙げられる。
本実施形態におけるリン脂質としては、他にも、水素添加大豆ホスファチジルコリン(Hydrogenated Soy Phosphatidylcholine,HSPCと略す)等を使用することができる。
また、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンの例としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン及びジアシルホスファチジルセリンなどが挙げられる。
(粒子)
本明細書において、粒子とは、色素含有、未含有を問わない。なお、色素未含有粒子とは、色素複合体あるいは色素を内包する前の粒子を指す。また、色素未含有粒子であっても、色素、両親媒性色素を含んでいてもよい。
粒子は、ミセル、ポリマーミセル、リポソーム等を挙げられ、特に好ましくはリポソームである。両親媒性色素を含む粒子は、両親媒性色素以外にツィッターイオン部位を有するリン脂質を含んでいる。
また、粒子表面には界面活性剤が存在していてもよい。
本実施形態の粒子の例として、図1(a)に示すようなICG1と添加物としてのリン脂質2からなる粒子や、図1(b)に示すようなICG1を含むリポソーム3の表面に界面活性剤やポリエチレングリコールなどの表面改質剤4を含む粒子等が挙げられる。
本明細書において、粒子とは、色素含有、未含有を問わない。なお、色素未含有粒子とは、色素複合体あるいは色素を内包する前の粒子を指す。また、色素未含有粒子であっても、色素、両親媒性色素を含んでいてもよい。
粒子は、ミセル、ポリマーミセル、リポソーム等を挙げられ、特に好ましくはリポソームである。両親媒性色素を含む粒子は、両親媒性色素以外にツィッターイオン部位を有するリン脂質を含んでいる。
また、粒子表面には界面活性剤が存在していてもよい。
本実施形態の粒子の例として、図1(a)に示すようなICG1と添加物としてのリン脂質2からなる粒子や、図1(b)に示すようなICG1を含むリポソーム3の表面に界面活性剤やポリエチレングリコールなどの表面改質剤4を含む粒子等が挙げられる。
(粒径)
粒子の粒径は特に限定されることはない。ただし、造影剤、特に腫瘍用の造影剤として用いる場合、流体力学的平均粒子径を1000nm以下とすることで、血管から腫瘍への取り込みやすさと腫瘍での滞留性を高めることが可能となる。
粒径が1000nm以下の場合、EPR(Enhanced Permeability and Retention、腫瘍血管の透過性亢進と腫瘍内滞留)効果により、生体内の正常部位に比べて腫瘍部位により多くの粒子を集積させることができる。集積した粒子を、蛍光や光音響といった各種画像形成モダリティを用いて検出することによって、腫瘍部位を特異的にイメージングすることができる。また、粒径が1000nmを超えると、腫瘍への効率的な取り込みが期待できない。そのため、粒径は10nm以上1000nm以下とすることが好ましい。粒径は20nm以上500nm以下であることがより好ましく、20nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。粒子の粒径が200nm以下であると、粒子が血中のマクロファージに取り込まれにくく、血中滞留性が高くなると考えられるからである。
粒径は電子顕微鏡観察や動的光散乱法に基づく粒径測定法により測定することができる。動的光散乱法に基づいて粒径を測定する場合、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering,DLS)法によって流体力学的直径を測定する。
後述する細孔フィルターによってろ過したり、後述するnanoemulsion法を用いたり、リポソーム等の粒子に含ませたりすることで、このような好ましいサイズの粒子を作成することができる。
粒子の粒径は特に限定されることはない。ただし、造影剤、特に腫瘍用の造影剤として用いる場合、流体力学的平均粒子径を1000nm以下とすることで、血管から腫瘍への取り込みやすさと腫瘍での滞留性を高めることが可能となる。
粒径が1000nm以下の場合、EPR(Enhanced Permeability and Retention、腫瘍血管の透過性亢進と腫瘍内滞留)効果により、生体内の正常部位に比べて腫瘍部位により多くの粒子を集積させることができる。集積した粒子を、蛍光や光音響といった各種画像形成モダリティを用いて検出することによって、腫瘍部位を特異的にイメージングすることができる。また、粒径が1000nmを超えると、腫瘍への効率的な取り込みが期待できない。そのため、粒径は10nm以上1000nm以下とすることが好ましい。粒径は20nm以上500nm以下であることがより好ましく、20nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。粒子の粒径が200nm以下であると、粒子が血中のマクロファージに取り込まれにくく、血中滞留性が高くなると考えられるからである。
粒径は電子顕微鏡観察や動的光散乱法に基づく粒径測定法により測定することができる。動的光散乱法に基づいて粒径を測定する場合、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering,DLS)法によって流体力学的直径を測定する。
後述する細孔フィルターによってろ過したり、後述するnanoemulsion法を用いたり、リポソーム等の粒子に含ませたりすることで、このような好ましいサイズの粒子を作成することができる。
本実施形態に係るツィッターイオン部位を有するリン脂質としては、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリンのうち少なくともいずれか一方であることが特に好ましい。
(リポソーム)
本明細書において、リポソームとは、色素含有、未含有のいずれも指すが、本段落では色素未含有のリポソームについて説明する。
リポソームとは、脂質、糖脂質、リン脂質、ステロール、あるいはそれらの組み合わせにより構成される単層リポソーム及び多重層リポソームを指す。また、なお、単層リポソームとはリン脂質2重膜から構成され、多重層リポソームは2重膜が複数層となっているものを意味する。
本明細書において、リポソームとは、色素含有、未含有のいずれも指すが、本段落では色素未含有のリポソームについて説明する。
リポソームとは、脂質、糖脂質、リン脂質、ステロール、あるいはそれらの組み合わせにより構成される単層リポソーム及び多重層リポソームを指す。また、なお、単層リポソームとはリン脂質2重膜から構成され、多重層リポソームは2重膜が複数層となっているものを意味する。
なお、pH勾配法では、一般的には、単層リポソームのリン脂質2重膜を通過できれば、多重層リポソームの2重膜も通過できる。
リポソームの脂質は、異なる脂質の混合物から構成されていてもよく、また脂質の誘導体、たとえばポリエチレングリコール結合リン脂質なども使用することができる。リポソームの調製方法は、従来公知の方法を利用でき、適宜選択して望ましい物性のリポソームを得ることができる。脂質の種類や量などは、リポソームの用途に応じて適宜選択することができる。例えば、脂質量や比率、脂質の荷電を考慮することで、リポソームの粒径や表面電位を制御することができる。
リポソームに含まれるリン脂質の例としては、中性リン脂質を挙げることができ、中性リポソームの例として、大豆あるいは卵黄レシチン、リゾレシチン、またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体である。その他にも、半合成のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンも挙げられる。また、合成された、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)などが挙げられる。
糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリドなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質などが挙げられる。
上記以外にも、リポソーム膜構成分子として、必要に応じ他の分子を加えることもできる。例として、膜安定化剤として作用するコレステロール類、エチレングリコールなどのグリコール類、デキストランなどの糖類、電荷制御のために添加されるリン酸ジアルキルエステル類、ステアリルアミンなどの脂肪族アミンが例示される。
(リポソームへのICGの内包)
リポソーム内に内包されるICGは水溶性物質であり、典型的にはリポソームの内水相に内包される。しかし、ICGはリン脂質との親和性を有していることやICG同士の多量体化を起こしやすいことから、リポソーム膜表面や脂質二重膜内の局在も起こりえる。本実施形態では上記3通りの場合、すなわち、「リポソーム内水相への内包」、「リポソームの膜内への局在」ならびに「リポソーム表面への局在」のうち、「リポソーム内水相への内包」を改善する。なお、粒子がICGを含有するとは、上記のいずれも指す。
リポソーム内に内包されるICGは水溶性物質であり、典型的にはリポソームの内水相に内包される。しかし、ICGはリン脂質との親和性を有していることやICG同士の多量体化を起こしやすいことから、リポソーム膜表面や脂質二重膜内の局在も起こりえる。本実施形態では上記3通りの場合、すなわち、「リポソーム内水相への内包」、「リポソームの膜内への局在」ならびに「リポソーム表面への局在」のうち、「リポソーム内水相への内包」を改善する。なお、粒子がICGを含有するとは、上記のいずれも指す。
(界面活性剤)
粒子の形成には界面活性剤が用いられる場合がある。界面活性剤としては、特に限定されることはなく、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、高分子界面活性剤又はリン脂質等を使用することができる。これらの界面活性剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。上記本実施形態における界面活性剤に使用する非イオン性界面活性剤としては、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80及びTween85等のポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、Brij35、Brij58、Brij76、Brij98、Triton X−100、Triton X−114、Triton X−305、Triton N−101、Nonidet P−40、Igepol CO530、Igepol CO630、Igepol CO720並びにIgepol CO730等を挙げることができる。
粒子の形成には界面活性剤が用いられる場合がある。界面活性剤としては、特に限定されることはなく、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、高分子界面活性剤又はリン脂質等を使用することができる。これらの界面活性剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。上記本実施形態における界面活性剤に使用する非イオン性界面活性剤としては、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80及びTween85等のポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、Brij35、Brij58、Brij76、Brij98、Triton X−100、Triton X−114、Triton X−305、Triton N−101、Nonidet P−40、Igepol CO530、Igepol CO630、Igepol CO720並びにIgepol CO730等を挙げることができる。
また、アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホネート、デシルベンゼンスルホネート、ウンデシルベンゼンスルホネート、トリデシルベンゼンスルホネート、ノニルベンゼンスルホネート並びにこれらのナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩等を挙げることができる。
また、カチオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム及び塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等を挙げることができる。
また、界面活性剤に使用する高分子界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及びゼラチン等を挙げることができる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの市販品としては、プルロニックF68(シグマアルドリッチジャパン社製)、プルロニックF127(シグマアルドリッチジャパン社製)などが挙げられる。
また、界面活性剤に使用するリン脂質としては、水酸基、メトキシ基、アミノ基、カルボキシル基、N−ヒドロキシスクシンイミド基又はマレイミド基のいずれかの官能基を有するホスファチジル系リン脂質であることが好ましい。また、界面活性剤に使用するリン脂質はPEG鎖を含むものであってもよい。
(ポリエチレングリコール)
腫瘍へのパッシブターゲティングの原理として提唱されているEPR効果を生じさせるためには、高い血中滞留性を有することが造影剤には求められる。ポリエチレングリコールは血中タンパク質との相互作用を抑制することで肝臓などの細網内皮系細胞に貪食され難くなり、粒子の血中滞留性を向上させることができるため、本実施形態の粒子へのポリエチレングリコール(PEG)の導入は非常に有益である。
腫瘍へのパッシブターゲティングの原理として提唱されているEPR効果を生じさせるためには、高い血中滞留性を有することが造影剤には求められる。ポリエチレングリコールは血中タンパク質との相互作用を抑制することで肝臓などの細網内皮系細胞に貪食され難くなり、粒子の血中滞留性を向上させることができるため、本実施形態の粒子へのポリエチレングリコール(PEG)の導入は非常に有益である。
ポリエチレングリコールの分子量や粒子への導入率を適宜変えることにより、その機能を調節することができる。その分子量が500から200000のポリエチレングリコールの使用が好ましく、特に2000から100000が好適である、また粒子へのポリエチレングリコール導入率は、該粒子を構成する脂質に対して0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜30モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である。
粒子へのポリエチレングリコール導入方法は、公知の技術を利用することができる。好ましい例としては、粒子を被覆するリン脂質類の中に、予めポリエチレングリコール結合リン脂質などを含めて粒子を作製する方法である。ポリエチレングリコール結合リン脂質の例としては、ホスファチジルエタノールアミンのポリエチレングリコール誘導体、たとえばジステアロイルホスファチルジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE−PEG)などがある。
官能基が水酸基、メトキシ基、アミノ基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、マレイミド基でありPEG鎖を含むような界面活性剤に使用するリン脂質としては、例えば、化学式2で示される1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine−N−[poly(ethylene glycol)] (DSPE−PEG−OH)、化学式3で示されるPoly(oxy−1,2−ethanediyl),α−[7−hydroxy−7−oxido−13−oxo−10−[(1−oxooctadecyl)oxy]−6,8,12−trioxa−3−aza−7−phosphatriacont−1−yl]−ω−methoxy− (DSPE−PEG−OMe)、化学式4で示されるN−(aminopropyl polyethyleneglycol)−carbamyl distearoylphosphatidyl−ethanolamine(DSPE−PEG−NH2)、化学式5示される3−(N−succinimidyloxyglutaryl) aminopropyl polyethyleneglycol−carbamyl distearoylphosphatidyl−ethanolamine(DSPE−PEG−NHS)、化学式6で示されるN−(3−maleimide−1−oxopropyl) aminopropyl polyethyleneglycol−carbamyl distearoylphosphatidyl−ethanolamine(DSPE−PEG−MAL)等のリン脂質を挙げることができる。なお、化学式2乃至6において、nは5以上500以下の整数である。
なお、本実施形態において用いる界面活性剤は1種類に限定されることはなく、2種類又はそれ以上の種類の界面活性剤を同時に用いてもよい。
(捕捉分子)
本発明の一実施形態おいて、上記の粒子の一部に、捕捉分子を固定化することにより、標的部位を特異的に標識することができる。
捕捉分子とは、腫瘍などの標的部位に特異的に結合する物質、標的部位の周辺に存在する物質に特異的に結合する物質などであり、生体分子や医薬品等の化学物質などから任意に選択することができる。具体的には、抗体、抗体フラグメント、酵素、生物活性ペプチド、グリコペプチド、糖鎖、脂質、分子認識化合物などが挙げられる。これらの物質は単独で用いることもできるし、あるいは複数を組み合わせて用いることもできる。
捕捉分子が化学結合された粒子を用いることで、標的部位の特異的な検出、標的物質の動態、局在、薬効、代謝等の追跡を行うことができる。例えば、捕捉分子として腫瘍に特異的に結合する物質を採用すれば、腫瘍の特異的検出が可能となる。また捕捉分子として、特定の疾病部位の周辺に多く存在するタンパク質や酵素などの生体物質に特異的に結合する物質を用いれば、その疾病を特異的に検出することが可能である。なお、本実施形態に係る粒子によれば、捕捉分子を持たない場合でも、EPR効果によって腫瘍を検出することは可能である。
本発明の一実施形態おいて、上記の粒子の一部に、捕捉分子を固定化することにより、標的部位を特異的に標識することができる。
捕捉分子とは、腫瘍などの標的部位に特異的に結合する物質、標的部位の周辺に存在する物質に特異的に結合する物質などであり、生体分子や医薬品等の化学物質などから任意に選択することができる。具体的には、抗体、抗体フラグメント、酵素、生物活性ペプチド、グリコペプチド、糖鎖、脂質、分子認識化合物などが挙げられる。これらの物質は単独で用いることもできるし、あるいは複数を組み合わせて用いることもできる。
捕捉分子が化学結合された粒子を用いることで、標的部位の特異的な検出、標的物質の動態、局在、薬効、代謝等の追跡を行うことができる。例えば、捕捉分子として腫瘍に特異的に結合する物質を採用すれば、腫瘍の特異的検出が可能となる。また捕捉分子として、特定の疾病部位の周辺に多く存在するタンパク質や酵素などの生体物質に特異的に結合する物質を用いれば、その疾病を特異的に検出することが可能である。なお、本実施形態に係る粒子によれば、捕捉分子を持たない場合でも、EPR効果によって腫瘍を検出することは可能である。
(捕捉分子の固定化)
粒子に捕捉分子を固定化する方法としては、用いる捕捉分子の種類にもよるが、含有粒子に捕捉分子を化学結合させることができる限り、いかなる公知の方法をも使用することができる。例えば、前記した界面活性剤が有する官能基と捕捉分子の官能基とを反応させて化学結合する方法等を使用することができる。
例えば、界面活性剤がN−ヒドロキシスクシンイミド基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、アミノ基を有する捕捉分子と反応させて、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、界面活性剤の未反応のN−ヒドロキシスクシンイミド基は、グリシン、エタノールアミン、又は末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等と反応させて失活させることが好ましい。
また、界面活性剤がマレイミド基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、チオール基を有する捕捉分子と反応させて、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、界面活性剤の未反応のマレイミド基は、L−システイン、メルカプトエタノール、又は末端にチオール基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等と反応させて失活させることが好ましい。
また、界面活性剤がアミノ基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、グルタルアルデヒドを用いて捕捉分子のアミノ基と反応させ、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、エタノールアミン、又は末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等を反応させて未反応のアミノ基の活性をブロックすることが好ましい。あるいは、界面活性剤のアミノ基をN−ヒドロキシスクシンイミド基やマレイミド基に置換して、捕捉分子を固定化しても良い。
粒子に捕捉分子を固定化する方法としては、用いる捕捉分子の種類にもよるが、含有粒子に捕捉分子を化学結合させることができる限り、いかなる公知の方法をも使用することができる。例えば、前記した界面活性剤が有する官能基と捕捉分子の官能基とを反応させて化学結合する方法等を使用することができる。
例えば、界面活性剤がN−ヒドロキシスクシンイミド基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、アミノ基を有する捕捉分子と反応させて、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、界面活性剤の未反応のN−ヒドロキシスクシンイミド基は、グリシン、エタノールアミン、又は末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等と反応させて失活させることが好ましい。
また、界面活性剤がマレイミド基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、チオール基を有する捕捉分子と反応させて、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、界面活性剤の未反応のマレイミド基は、L−システイン、メルカプトエタノール、又は末端にチオール基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等と反応させて失活させることが好ましい。
また、界面活性剤がアミノ基を有するホスファチジル系リン脂質である場合、グルタルアルデヒドを用いて捕捉分子のアミノ基と反応させ、粒子に捕捉分子を固定化することができる。捕捉分子の固定化後、エタノールアミン、又は末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール等を反応させて未反応のアミノ基の活性をブロックすることが好ましい。あるいは、界面活性剤のアミノ基をN−ヒドロキシスクシンイミド基やマレイミド基に置換して、捕捉分子を固定化しても良い。
(粒子の製造方法)
本実施形態に係る粒子の製造方法は、色素を含まない色素未含有粒子を調製するステップと、粒子に色素を内包させるステップを含む。その一例をいかに述べる。
本実施形態に係る粒子の製造方法は、色素を含まない色素未含有粒子を調製するステップと、粒子に色素を内包させるステップを含む。その一例をいかに述べる。
(リポソームの調製方法)
リポソームは、公知のリポソーム製造方法により調製することができる。公知の技術としては、Bangham (J.Mol. Biol.、 13、 238(1965))らの方法、その変法(特開昭52−114013号公報、特開昭59−173133号公報、特開平2−139029号公報、特開平7−241487号公報)、超音波処理法(Biochem. Biophys. Res. Commun.、94、 1367(1980))、エタノール注入法(J. Cell. Biol.、 66、 621(1975))、コール酸(界面活性剤)法(Biochim. Biophys. Acta、 455、 322(1976))、凍結融解法(Arch.Biochem. Biophys.、 212、 186(1981))、逆相蒸発法(Pro. N. A.S. USA、 75、 4194(1978))、ならびに市販のキットを用いた方法などが挙げられ、これら公知の方法により調製される色素未含有リポソーム(空リポソーム)に色素未含有粒子調製後にICGを内包化させることができる。
リポソームは、公知のリポソーム製造方法により調製することができる。公知の技術としては、Bangham (J.Mol. Biol.、 13、 238(1965))らの方法、その変法(特開昭52−114013号公報、特開昭59−173133号公報、特開平2−139029号公報、特開平7−241487号公報)、超音波処理法(Biochem. Biophys. Res. Commun.、94、 1367(1980))、エタノール注入法(J. Cell. Biol.、 66、 621(1975))、コール酸(界面活性剤)法(Biochim. Biophys. Acta、 455、 322(1976))、凍結融解法(Arch.Biochem. Biophys.、 212、 186(1981))、逆相蒸発法(Pro. N. A.S. USA、 75、 4194(1978))、ならびに市販のキットを用いた方法などが挙げられ、これら公知の方法により調製される色素未含有リポソーム(空リポソーム)に色素未含有粒子調製後にICGを内包化させることができる。
本実施形態のリポソームの製造方法の好ましい例は、Banghamらにより報告されたリポソーム作製方法に従うものである。すなわち、リン脂質などのリポソームの原料を有機溶媒に溶解、混合して、有機溶媒を減圧下で除去して脂質を乾固させ、これを水系媒体で分散させ、超音波照射により均一化させることでリポソームを形成させるものである。その後、リポソーム溶液を加温あるいは超音波処理することもできる。
(色素複合体)
色素複合体は、両親媒性色素と、リン脂質を、1:2乃至2:1(モル比)となるように溶解して、適宜加熱等を行うことにより、得ることができる。
以下、本発明の実施例に示すICGとホスホコリンの複合体の一例を示すと、蒸留水を逆浸透膜に通して精製した水1mlに、ICG6mg (7.74μモル m.w. 775 )およびICGに対して1倍のモル比のホスホコリン2.04mg (7.74μモル m.w. 263) を添加し60℃30分間加熱した後、室温まで徐冷し、ICG−PCを得た。このようにして得られたICG−PC中のICG濃度は7.74mMである。 ICG複合体をpH3のクエン酸酸性緩衝液(ICG濃度=1.5mM)を調製し、この複合体水溶液を外水相として、その後の内包に用いられた。
色素複合体は、両親媒性色素と、リン脂質を、1:2乃至2:1(モル比)となるように溶解して、適宜加熱等を行うことにより、得ることができる。
以下、本発明の実施例に示すICGとホスホコリンの複合体の一例を示すと、蒸留水を逆浸透膜に通して精製した水1mlに、ICG6mg (7.74μモル m.w. 775 )およびICGに対して1倍のモル比のホスホコリン2.04mg (7.74μモル m.w. 263) を添加し60℃30分間加熱した後、室温まで徐冷し、ICG−PCを得た。このようにして得られたICG−PC中のICG濃度は7.74mMである。 ICG複合体をpH3のクエン酸酸性緩衝液(ICG濃度=1.5mM)を調製し、この複合体水溶液を外水相として、その後の内包に用いられた。
(従来の色素含有粒子)
以下、pH勾配法によるICG(複合体を形成していない)の粒子への内包を例にとって述べる。
リン脂質などのリポソームの原料を有機溶媒に溶解、混合し、有機溶媒を減圧下で除去して溶質を乾固させる。これを中性緩衝液で分散させ、超音波照射により均一化させることでリポソームを形成させることにより、リポソーム内部に中性緩衝液を含むリポソームを調製する。その後、リポソーム外側の緩衝液を酸性緩衝液に置換することにより、リポソーム内側が中性、外側が酸性のpH勾配を持ったリポソーム分散液を調製する。
このリポソーム分散液に酸性緩衝液に溶解したICG溶液を添加し、原料リン脂質の転移温度以上で30分間加温撹拌することによりJ会合体化したICGがリポソームに内包されてしまう。
ICGを酸性緩衝液であるpH3のクエン酸バッファ中で60℃加熱するとJ会合体化することが原因である。
pH勾配を利用した薬剤のリポソームへの内包方法は特許文献3に記載されており、塩基性薬剤のリポソーム内への内包に有効である。しかしICGは酸性薬剤であるため、この文献とは逆のpH勾配をもつリポソームを調製した。この条件でICGを内包させたところ、内包されたICGがほとんどJ会合体化することがわかった。
J会合体化は反応速度論で説明することができ、反応速度には濃度と反応温度および触媒がパラメータとなる。
すなわち、ICGのJ会合体化はICG濃度と加熱温度およびリン脂質やクエン酸や水素イオンなどが正触媒として機能すると思われる。なお、尿素はJ会合体化を抑制するため負触媒として機能すると考えることもできる。
以下、pH勾配法によるICG(複合体を形成していない)の粒子への内包を例にとって述べる。
リン脂質などのリポソームの原料を有機溶媒に溶解、混合し、有機溶媒を減圧下で除去して溶質を乾固させる。これを中性緩衝液で分散させ、超音波照射により均一化させることでリポソームを形成させることにより、リポソーム内部に中性緩衝液を含むリポソームを調製する。その後、リポソーム外側の緩衝液を酸性緩衝液に置換することにより、リポソーム内側が中性、外側が酸性のpH勾配を持ったリポソーム分散液を調製する。
このリポソーム分散液に酸性緩衝液に溶解したICG溶液を添加し、原料リン脂質の転移温度以上で30分間加温撹拌することによりJ会合体化したICGがリポソームに内包されてしまう。
ICGを酸性緩衝液であるpH3のクエン酸バッファ中で60℃加熱するとJ会合体化することが原因である。
pH勾配を利用した薬剤のリポソームへの内包方法は特許文献3に記載されており、塩基性薬剤のリポソーム内への内包に有効である。しかしICGは酸性薬剤であるため、この文献とは逆のpH勾配をもつリポソームを調製した。この条件でICGを内包させたところ、内包されたICGがほとんどJ会合体化することがわかった。
J会合体化は反応速度論で説明することができ、反応速度には濃度と反応温度および触媒がパラメータとなる。
すなわち、ICGのJ会合体化はICG濃度と加熱温度およびリン脂質やクエン酸や水素イオンなどが正触媒として機能すると思われる。なお、尿素はJ会合体化を抑制するため負触媒として機能すると考えることもできる。
(本実施形態の色素含有粒子)
本願発明者らは、上記の公知のpH勾配法に、さらに改良を加え、色素、あるいは色素複合体を高濃度に粒子内に内包することに成功した。なお、本明細書では、色素含有粒子といった場合、粒子内で、色素が複合体として存在するか否かは問わない。ICG含有粒子(あるいはリポソーム)といった場合も、同様に、ICGが複合体として存在するか、否かは問わない。
本願発明者らは、上記の公知のpH勾配法に、さらに改良を加え、色素、あるいは色素複合体を高濃度に粒子内に内包することに成功した。なお、本明細書では、色素含有粒子といった場合、粒子内で、色素が複合体として存在するか否かは問わない。ICG含有粒子(あるいはリポソーム)といった場合も、同様に、ICGが複合体として存在するか、否かは問わない。
以下、本実施形態のICG含有リポソームの作製方法について述べる。
ICG複合体の内包化は上記したリポソーム外側の緩衝液を本実施形態の酸性緩衝液に置換してリポソーム内側が中性、外側が酸性のpH勾配を持ったリポソーム分散液に、上記ICG複合体水溶液を添加し60℃で30分以上加熱撹拌する。
上述したように、本実施形態のICG複合体とすることで、リポソームを構成するリン脂質へのICGの結合を抑制し、リン脂質膜2重膜を透過すると考えることができる。
このようにしてICGが内包されたリポソームを遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、限外ろ過などにより精製することで本発明の実施形態に係るリポソームが調製される。
本実施形態のICGを内包するリポソームの調製において、重要なポイントとして、色素を複合体とした他に、ICGを内包させるためにICGを高濃度で存在させたこと、かつ加温によりリポソーム相転移を促進したことのふたつを挙げることができる。
溶液中のICGの濃度は少なくとも0.1mM以上、好ましくは1.0mM以上であり、加温は少なくとも20℃、好ましくは37℃以上、さらに好ましくは65℃以上である。しかし、90℃では色素の分解が促進されることから、好ましい加温温度範囲は、37℃から65℃である。
ICG複合体の内包化は上記したリポソーム外側の緩衝液を本実施形態の酸性緩衝液に置換してリポソーム内側が中性、外側が酸性のpH勾配を持ったリポソーム分散液に、上記ICG複合体水溶液を添加し60℃で30分以上加熱撹拌する。
上述したように、本実施形態のICG複合体とすることで、リポソームを構成するリン脂質へのICGの結合を抑制し、リン脂質膜2重膜を透過すると考えることができる。
このようにしてICGが内包されたリポソームを遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、限外ろ過などにより精製することで本発明の実施形態に係るリポソームが調製される。
本実施形態のICGを内包するリポソームの調製において、重要なポイントとして、色素を複合体とした他に、ICGを内包させるためにICGを高濃度で存在させたこと、かつ加温によりリポソーム相転移を促進したことのふたつを挙げることができる。
溶液中のICGの濃度は少なくとも0.1mM以上、好ましくは1.0mM以上であり、加温は少なくとも20℃、好ましくは37℃以上、さらに好ましくは65℃以上である。しかし、90℃では色素の分解が促進されることから、好ましい加温温度範囲は、37℃から65℃である。
(造影剤)
本実施形態に係る粒子はICGを含んでおり、近赤外光を吸収して蛍光又は音響波を発することができるため、蛍光イメージング又は光音響イメージングといった光イメージング用の造影剤として用いることができる。また、ICGは緑色に着色しているため、目視で検出するための造影剤としても使用できる。
本実施形態に係る粒子はICGを含んでおり、近赤外光を吸収して蛍光又は音響波を発することができるため、蛍光イメージング又は光音響イメージングといった光イメージング用の造影剤として用いることができる。また、ICGは緑色に着色しているため、目視で検出するための造影剤としても使用できる。
本明細書において「造影剤」とは、主に、検体内にあって観察したい組織や分子とその周囲の組織や分子とのコントラスト差を生じさせ、当該観察したい組織や分子の形態情報あるいは位置情報の検出感度を向上させることができる物質と定義する。ここで「蛍光イメージング」や「光音響イメージング」とは、上記の組織や分子を蛍光検出装置あるいは光音響信号検出機装置などによって、イメージングすることを意味する。
本実施形態に係る造影剤は、本実施形態に係る粒子及び前記粒子が分散された分散媒を有する。分散媒は、本実施形態に係る粒子を分散させるための液状の物質であり、例えば生理食塩水、注射用蒸留水などが挙げられる。また、造影剤は、食塩やグルコースなどの薬理上許容できる添加物を有していても良い。本実施形態に係る造影剤は、上記本実施形態に係る粒子をこの分散媒に予め分散させておいてもよいし、本実施形態に係る粒子と分散媒とをキットにしておき、生体内に投与する前に粒子を分散媒に分散させて使用してもよい。
(蛍光イメージング法)
本実施形態に係る造影剤は、蛍光イメージング法に用いることもできる。本実施形態に係る造影剤を用いた蛍光イメージング法は、本実施形態に係る造影剤を検体もしくは前記検体から得られる試料に投与する工程と、前記検体もしくは前記検体から得られる試料に光を照射する工程と、前記検体内もしくは前記検体から得られる試料内に存在する前記粒子由来物質の蛍光を測定する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
本実施形態に係る造影剤は、蛍光イメージング法に用いることもできる。本実施形態に係る造影剤を用いた蛍光イメージング法は、本実施形態に係る造影剤を検体もしくは前記検体から得られる試料に投与する工程と、前記検体もしくは前記検体から得られる試料に光を照射する工程と、前記検体内もしくは前記検体から得られる試料内に存在する前記粒子由来物質の蛍光を測定する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
本実施形態に係る造影剤を用いた蛍光イメージング法の一例は以下の通りである。すなわち、本実施形態に係る造影剤を検体に投与し、あるいは前記検体より得られた臓器等の試料に添加する。なお、前記検体とは、実験動物やペット等、その他、特に限定されることなく、あらゆる生物を指し、前記検体中もしくは検体より得られた試料としては、臓器、組織、組織切片、細胞、細胞溶解物などを挙げることができる。前記粒子の投与あるいは添加後、前記検体等に対し近赤外波長域の光を照射する。
市販の蛍光イメージング装置IVIS (IVIS(登録商標) Lumina Imaging Systemなど)を用い、ICGフィルターを使ってイメージングができる。
上述したように、光イメージング装置はこの波長範囲を使うよう設計されているものが多く、IVISもICG単量体の吸収波長780nmには対応している(フィルタセット4のExcitation Passband705−780nm)。
上述したように、光イメージング装置はこの波長範囲を使うよう設計されているものが多く、IVISもICG単量体の吸収波長780nmには対応している(フィルタセット4のExcitation Passband705−780nm)。
また、IVIS(登録商標) Lumina Imaging SystemのスペックシートによればQuantum Efficiencyは>85% at 500700nm,>30% at 400900nmであることが知られている。
本実施形態に係る光音響イメージング法において、照射される光の波長は使用するレーザー光源により選択することが可能である。本実施形態に係る蛍光イメージング法においては、効率良く音響信号を取得するために、生体内における光の吸収、拡散の影響が少ない「生体の窓」と呼ばれる600nm乃至1300nmの、近赤外光領域の波長の光を照射することが好ましい。
本実施形態に係る造影剤からの蛍光を蛍光検出器で検出し、電気信号に変換する。この蛍光検出器より得られた電気信号に基づき、前記検体等の内の吸収体の位置や大きさを計算することができる。例えば、造影剤が基準とする閾値以上で検出されれば、その検体に前記粒子由来物質が存在すると推定され、又は、前記検体より得られた試料に前記粒子由来の物質が存在すると推定することができる。
本実施形態に係る造影剤を検体に投与した場合、リンパ節、特にがん原発巣からリンパ管に流入したがん細胞が最初に到達するセンチネルリンパ節を好適に検出することできる。この場合、腫瘍内あるいは腫瘍周辺にリンパ節用造影剤を注射し、注射後の適切な時間に造影剤の検出を行う。
(光音響イメージング方法)
本実施形態に係る造影剤は、光音響イメージング法に用いることができる。なお、本明細書において、光音響イメージングは、光音響トモグラフィー(断層撮影法)を含む概念である。本実施形態に係る造影剤を用いた光音響イメージング法は、本実施形態に係る造影剤を検体もしくは前記検体から得られる試料に投与する工程と、前記検体もしくは前記検体から得られる試料にパルス光を照射する工程と、前記検体内もしくは前記検体から得られる試料内に存在する前記粒子由来物質の光音響信号を測定する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
本実施形態に係る造影剤は、光音響イメージング法に用いることができる。なお、本明細書において、光音響イメージングは、光音響トモグラフィー(断層撮影法)を含む概念である。本実施形態に係る造影剤を用いた光音響イメージング法は、本実施形態に係る造影剤を検体もしくは前記検体から得られる試料に投与する工程と、前記検体もしくは前記検体から得られる試料にパルス光を照射する工程と、前記検体内もしくは前記検体から得られる試料内に存在する前記粒子由来物質の光音響信号を測定する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
本実施形態に係る造影剤を用いた光音響イメージング法の一例は以下の通りである。すなわち、本実施形態に係る造影剤を検体に投与し、あるいは前記検体より得られた臓器等の試料に添加する。なお、前記検体とは、実験動物やペット等、その他、特に限定されることなく、あらゆる生物を指し、前記検体中もしくは検体より得られた試料としては、臓器、組織、組織切片、細胞、細胞溶解物などを挙げることができる。前記粒子の投与あるいは添加後、前記検体等に対し近赤外波長域のレーザーパルス光を照射する。
本実施形態に係る光音響イメージング法において、照射される光の波長は使用するレーザー光源により選択することが可能である。本実施形態に係る光音響イメージング法においては、効率良く音響信号を取得するために、生体内における光の吸収、拡散の影響が少ない「生体の窓」と呼ばれる600nm乃至1300nmの近赤外光領域の波長の光、特に700nm乃至900nmの波長の光を照射することが好ましい。
本実施形態に係る造影剤からの光音響信号(音響波)を、音響波検出器、例えば圧電トランスデューサで検出し、電気信号に変換する。この音響波検出器より得られた電気信号に基づき、前記検体等の内の吸収体の位置や大きさ、あるいはモル吸光係数などの光学特性値分布を計算することができる。例えば、造影剤が基準とする閾値以上で検出されれば、その検体に前記粒子由来物質が存在すると推定され、又は、前記検体より得られた試料に前記粒子由来の物質が存在すると推定することができる。
本実施形態に係る造影剤を検体に投与した場合、リンパ節、特にがん原発巣からリンパ管に流入したがん細胞が最初に到達するセンチネルリンパ節を好適に検出することできる。この場合、腫瘍内あるいは腫瘍周辺にリンパ節用造影剤を注射し、注射後の適切な時間に造影剤の検出を行う。
本実施形態では、色素の漏出を抑制することで、色素の集積による消光を起こさせ、照射されたパルス光のエネルギーが蛍光発光に用いられることを防ぎ、より多くの熱エネルギーに変換することができる。そのため、より効率的に音響信号を取得することが可能となる。
以下の実施例で色素含有粒子を作製する際に用いる具体的な試薬や反応条件を挙げているが、これらの試薬や反応条件は、変更が可能であり、それらの変更は本発明の範囲に包摂されるものとする。したがって以下の実施例は、本発明の理解を助けることが目的であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
なお、本明細書中において、ホスホコリンをPC、ICGとホスホコリンとの複合体をICG−PCなどと省略表記する場合がある。
なお、本明細書中において、ホスホコリンをPC、ICGとホスホコリンとの複合体をICG−PCなどと省略表記する場合がある。
実施例1
(H会合体形成とICG複合体形成との関係について)
ICGは高濃度の条件下においてH会合体(H−aggregate)を形成することが知られている。
ICG単量体(モノマー)の最大吸収波長λmaxは780nm付近にあり、高濃度ではICG同士が励起子相互作用により最大吸収波長が短波長700nmへシフトすることでH会合体の形成が確認できる。
H会合体はICG分子の励起子が相互作用を及ぼす距離まで近接した時にスペクトルシフトを起こすため、高濃度になるほどH会合体を形成しやすい。一方、ICGに立体障害となる分子が結合した複合体の場合にはH会合体の形成が抑制される。
(H会合体形成とICG複合体形成との関係について)
ICGは高濃度の条件下においてH会合体(H−aggregate)を形成することが知られている。
ICG単量体(モノマー)の最大吸収波長λmaxは780nm付近にあり、高濃度ではICG同士が励起子相互作用により最大吸収波長が短波長700nmへシフトすることでH会合体の形成が確認できる。
H会合体はICG分子の励起子が相互作用を及ぼす距離まで近接した時にスペクトルシフトを起こすため、高濃度になるほどH会合体を形成しやすい。一方、ICGに立体障害となる分子が結合した複合体の場合にはH会合体の形成が抑制される。
図2はICGによく見られるスペクトルを重ねて表示したもので、780nm付近にあるピーク1はモノマー分子によるもの、700nm付近にあるピーク2はH会合体によるもの、900nm付近にあるピーク3はJ会合体によるものである。
図3(a)はH会合体でよくみられる励起子相互作用を模式的に示した図である。色素分子が平行配置された状態において、励起子相互作用の強さEexitionは|μ|2(1−3cos2θ)/r3で与えられる。ただし、遷移モーメントをμ、遷移モーメント間の距離をr、角度をθとする。
図3(b)は色素分子にリン脂質等が結合した複合体を模式的に示した図である。
図3(a)はH会合体でよくみられる励起子相互作用を模式的に示した図である。色素分子が平行配置された状態において、励起子相互作用の強さEexitionは|μ|2(1−3cos2θ)/r3で与えられる。ただし、遷移モーメントをμ、遷移モーメント間の距離をr、角度をθとする。
図3(b)は色素分子にリン脂質等が結合した複合体を模式的に示した図である。
上述したように励起子相互作用の強さは距離rの3乗で弱くなるため、立体障害があって会合が抑制されれば図2における700nmのH会合体による吸収スペクトルのシフトに変化がある。また、色素のモル吸光係数εは複合体を形成すると摂動を受けて変化することが知られている。
本実施形態において、複合体の形成はICGの吸収スペクトルシフトおよびモル吸光係数によって評価した。
表2に記載の1番から8番までの、8種類のリン脂質、あるいはその他の化合物をICGに対して1倍ならびに2倍のモル比で添加し60℃30分間加熱した後、室温まで徐冷した後、以下のICG濃度となるよう水溶媒で希釈して吸収スペクトル測定を実施し、色素複合体の形成を評価した。(0番は代表的なツィッターイオン部位を有するリン脂質であるDSPC)
図4(a)、(b)、(c)は、ICG単独、あるいは、ICGと8種類の化合物を混合したときのスペクトルを示す。横軸は波長(nm)で、縦軸は任意であるが各図において同一ICG濃度における吸光度を示す。図4(a)はICG濃度が7.74μM濃度で8種類のリン脂質が15.5μMのとき光路長10mmの光学セルを用いて測定したスペクトルを示す。図4(b)はICG濃度が77.4μMで8種類のリン脂質が155μM濃度のとき光路長1mmの光学セルを用いて測定したスペクトルを示す。図4(c)はICG濃度が77.4μMで8種類のリン脂質が77.4μM濃度のとき光路長1mmの光学セルを用いて測定したスペクトルを示す。
全8種類の化合物ともICG7.74μM濃度のときにはモノマーに由来する780nmに最大吸収波長を示しているが、ICG77.4μMの高濃度のときにホスホコリンを除く7種類の化合物、およびICGのみの場合は700nmに最大吸収波長がシフトしている。一方、ホスホコリンとICGの系は700nmより780nmの吸収ピークの方が大きく、H会合体の形成が抑制されていると言える。
この抑制効果はICG1モルに対して2モル(ICG−2PC)(図4(b))の方が1モル(ICG−1PC)(図4(c))より顕著であるが、図4(c)においてホスホコリン以外は効果が認められず、ホスホコリンはICG1モルに対して2モル以下、例えばICGと等モルでも効果が認められた。
また、ホスホコリンを除く7種類の化合物はICGのみと同じ濃度で同じ吸収強度、すなわち同じモル吸収係数である。ホスホコリンとICGの系は低濃度でも高濃度でもICGのみより吸収強度が低くモル吸収係数に変化があることから複合体を形成していると言える。
実施例2
(ICG−PCのオクタノール/水分配)
実施例2−1
(ICG複合体の作製)
両親媒性色素の例としてインドシアニングリーンとホスホコリンとの複合体ICG−PCを例に色素複合体の調製方法を示す。
蒸留水を逆浸透膜に通して精製した水(以下、ミリQ水)1mlに、インドシアニングリーン(以下ICG、日本公定書協会製)6mg (7.74μモル m.w. 775 )およびICGに対して2倍のモル比のホスホコリンクロリドナトリウム水和物(以下PC、東京化成工業製)4.08mg (15.5μモル m.w. 263) を添加し60℃30分間加熱した後、室温まで徐冷し、ICG−2PCを得た。
また、ミリQ水1mlにICG6mg (7.74μモル)およびICGに対して1倍のモル比のPC 2.04mg (7.74μモル)を上記同様の操作でICG−1PCを得た。
ICG−2PCおよびICG−1PCともにICG濃度は7.74mMである。
ICG−2PCおよびICG−1PCをミリQ水で希釈してICG濃度を77.4μMとした溶液のスペクトル(点線)と、77.4μMのインドシアニングリーンのスペクトル(実線)を図7(a)および図7(b)に示す。
(ICG−PCのオクタノール/水分配)
実施例2−1
(ICG複合体の作製)
両親媒性色素の例としてインドシアニングリーンとホスホコリンとの複合体ICG−PCを例に色素複合体の調製方法を示す。
蒸留水を逆浸透膜に通して精製した水(以下、ミリQ水)1mlに、インドシアニングリーン(以下ICG、日本公定書協会製)6mg (7.74μモル m.w. 775 )およびICGに対して2倍のモル比のホスホコリンクロリドナトリウム水和物(以下PC、東京化成工業製)4.08mg (15.5μモル m.w. 263) を添加し60℃30分間加熱した後、室温まで徐冷し、ICG−2PCを得た。
また、ミリQ水1mlにICG6mg (7.74μモル)およびICGに対して1倍のモル比のPC 2.04mg (7.74μモル)を上記同様の操作でICG−1PCを得た。
ICG−2PCおよびICG−1PCともにICG濃度は7.74mMである。
ICG−2PCおよびICG−1PCをミリQ水で希釈してICG濃度を77.4μMとした溶液のスペクトル(点線)と、77.4μMのインドシアニングリーンのスペクトル(実線)を図7(a)および図7(b)に示す。
実施例2−2
(ICG複合体のpH3およびpH7におけるオクタノール/水分配)
実施例2−1で作製したICG−2PCをミリQ水で希釈してICG濃度を77.4μMとしたpH7の水溶液0.5mlを1−オクタノール(n−オクタノール)0.5mlと撹拌混合した後に静置し2相に分離させ、オクタノール相/水相へのICG色素のpH7における分配を観察した。
次に、実施例2−1で作製したICG−2PCを後述の実施例3のB溶液で希釈してICG濃度を77.4μMとしたpH3の水溶液0.5mlを1−オクタノール(n−オクタノール)0.5mlと撹拌混合した後に静置し2相に分離させ、オクタノール相/水相へのICG色素のpH3における分配を観察した。
図5(a)はICG77.4μM+ホスホコリン155μMの複合体(ICG−2PC)の水/オクタノール分配
(b)はICG77.4μM+ホスホコリン77.4μMの複合体(ICG−1PC)の水/オクタノール分配
(c)はICG77.4μMの水/オクタノール分配を示す。
(ICG複合体のpH3およびpH7におけるオクタノール/水分配)
実施例2−1で作製したICG−2PCをミリQ水で希釈してICG濃度を77.4μMとしたpH7の水溶液0.5mlを1−オクタノール(n−オクタノール)0.5mlと撹拌混合した後に静置し2相に分離させ、オクタノール相/水相へのICG色素のpH7における分配を観察した。
次に、実施例2−1で作製したICG−2PCを後述の実施例3のB溶液で希釈してICG濃度を77.4μMとしたpH3の水溶液0.5mlを1−オクタノール(n−オクタノール)0.5mlと撹拌混合した後に静置し2相に分離させ、オクタノール相/水相へのICG色素のpH3における分配を観察した。
図5(a)はICG77.4μM+ホスホコリン155μMの複合体(ICG−2PC)の水/オクタノール分配
(b)はICG77.4μM+ホスホコリン77.4μMの複合体(ICG−1PC)の水/オクタノール分配
(c)はICG77.4μMの水/オクタノール分配を示す。
図5(a)から明らかなように、pH7においてICG−2PC(ただし複合体ではなく単独のICGとなっているものも含まれる)は水相に多く油相にも少し溶解している。一方、pH3においてICG−2PC(同様に単独のICGを含む)は油相に多く溶解している。
このことは、pH3の外水相環境に置かれたICG−2PC(もしくはICG)は疎水性となりリン脂質2重膜を通過して内水相まで移動できることを示している。
さらに、内水相まで移動するとpH7の環境であるためICGは水相に溶解しやすくなり逆方向へ移動しにくい。よって外水相pH3で内水相pH7のpH勾配によってICGはリポソーム内に濃縮内包される。
これは図5(b)に示したICG−1PCでも同様であった。
また、図5(c)に示したようにICGだけでもpH3においてオクタノール相へ移行することが確認できた。よって、内水相に存在するのはICG−2PCであるか、ICGのみであるかの区別はつかない。
しかし、比較例1で明らかなようにICGのみではリポソーム表面でリン脂質に結合し内水相に内包できないが、PCがICGのリン脂質への結合を抑制していることは明らかである。
このことは、pH3の外水相環境に置かれたICG−2PC(もしくはICG)は疎水性となりリン脂質2重膜を通過して内水相まで移動できることを示している。
さらに、内水相まで移動するとpH7の環境であるためICGは水相に溶解しやすくなり逆方向へ移動しにくい。よって外水相pH3で内水相pH7のpH勾配によってICGはリポソーム内に濃縮内包される。
これは図5(b)に示したICG−1PCでも同様であった。
また、図5(c)に示したようにICGだけでもpH3においてオクタノール相へ移行することが確認できた。よって、内水相に存在するのはICG−2PCであるか、ICGのみであるかの区別はつかない。
しかし、比較例1で明らかなようにICGのみではリポソーム表面でリン脂質に結合し内水相に内包できないが、PCがICGのリン脂質への結合を抑制していることは明らかである。
実施例3
(pH勾配法によるICGを内包したリポソームの調製)
実施例3−1
(色素未含有リポソーム(空リポソーム)の調製)
表3に示した内水相(A溶液)、外水相(B溶液)の濃度となる空リポソーム分散液を調製した。ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、COATSOME MC−8080、日本油脂製)、コレステロール(和光純薬製)、ジステアロイルホスファチルジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE−PEG、日本油脂製)をそれぞれ重量比で3:1:1に秤量した。3種の脂質の合計量102mgあたりメタノール・クロロホルム(1:1)溶液2mlに溶解し、37℃で1時間撹拌した後、溶媒留去し、さらに室温で一晩、真空乾燥した。得られた脂質乾固物(3種の脂質の合計量102mgにつき)に表12に示したA溶液を10ml添加し、37℃で1時間撹拌した。そして60℃で30分間、バス型超音波装置(3周波超音波洗浄器 VS−100III、アズワン製)により超音波処理(28kHz60秒→45kHz60秒→100kHz3秒のサイクルで照射)した後、ポアーサイズ0.22μm膜を通過させた。
(pH勾配法によるICGを内包したリポソームの調製)
実施例3−1
(色素未含有リポソーム(空リポソーム)の調製)
表3に示した内水相(A溶液)、外水相(B溶液)の濃度となる空リポソーム分散液を調製した。ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、COATSOME MC−8080、日本油脂製)、コレステロール(和光純薬製)、ジステアロイルホスファチルジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE−PEG、日本油脂製)をそれぞれ重量比で3:1:1に秤量した。3種の脂質の合計量102mgあたりメタノール・クロロホルム(1:1)溶液2mlに溶解し、37℃で1時間撹拌した後、溶媒留去し、さらに室温で一晩、真空乾燥した。得られた脂質乾固物(3種の脂質の合計量102mgにつき)に表12に示したA溶液を10ml添加し、37℃で1時間撹拌した。そして60℃で30分間、バス型超音波装置(3周波超音波洗浄器 VS−100III、アズワン製)により超音波処理(28kHz60秒→45kHz60秒→100kHz3秒のサイクルで照射)した後、ポアーサイズ0.22μm膜を通過させた。
通過した空リポソーム分散液の外水相を限外ろ過(撹拌式セル、限外ろ過膜300KDa、ミリポア製)により表3に示したB溶液に置換した後、濃縮し、DSPCとコレステロールの合計脂質濃度を40mg/mLに調整した。DSPCとコレステロールの定量は市販定量キット(リン脂質Cテストワコー、コレステロールE−テストワコー、和光純薬製)で行った。
A溶液はHEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピぺラジニル]−エタンスルホン酸、インビトロジェン製)濃度10mMに10mM水酸化ナトリウムを添加してpH7.3にpH調製した緩衝液である。
B溶液はクエン酸一水和物(ナカライテスク製)とクエン酸三ナトリウム二水和物(ナカライテスク製)を溶解しpH3.0に調製したクエン酸緩衝液であり、濃度は10mMとした。
粒径分布測定結果を図8(a)に示した。
B溶液はクエン酸一水和物(ナカライテスク製)とクエン酸三ナトリウム二水和物(ナカライテスク製)を溶解しpH3.0に調製したクエン酸緩衝液であり、濃度は10mMとした。
粒径分布測定結果を図8(a)に示した。
実施例3−2
(空リポソームへのICG−2PCの内包・精製)
実施例2−1で作製したICG−2PCを実施例3−1のB溶液に溶解し、ICG濃度、6mg/mlとなるICG−2PC溶液を作製した。上記、空リポソーム1にICG−2PC溶液を添加し、以下の条件でICG内包処理したリポソームを調製した。
ICG溶液及び空リポソーム分散液を60℃の恒温槽中に置いて15分加温した。
2.5mLの空リポソーム分散液に2.5mLのICG溶液を添加し、60℃で30分撹拌した。
回収したリポソーム分散液に空リポソーム1の外水相B溶液を注入しながら限外ろ過(限外ろ過膜300KDa)処理し、遊離のICGを除去し精製した。精製後、液量をおよそ4mlに濃縮し回収した。
(空リポソームへのICG−2PCの内包・精製)
実施例2−1で作製したICG−2PCを実施例3−1のB溶液に溶解し、ICG濃度、6mg/mlとなるICG−2PC溶液を作製した。上記、空リポソーム1にICG−2PC溶液を添加し、以下の条件でICG内包処理したリポソームを調製した。
ICG溶液及び空リポソーム分散液を60℃の恒温槽中に置いて15分加温した。
2.5mLの空リポソーム分散液に2.5mLのICG溶液を添加し、60℃で30分撹拌した。
回収したリポソーム分散液に空リポソーム1の外水相B溶液を注入しながら限外ろ過(限外ろ過膜300KDa)処理し、遊離のICGを除去し精製した。精製後、液量をおよそ4mlに濃縮し回収した。
実施例3−3
(吸収スペクトル測定)
実施例3−2で得られたICG内包化処理リポソームをB液で希釈し、波長500〜950nm間の吸光度を測定し、リポソーム中の色素を確認した。結果を図6(a)に示した。
(吸収スペクトル測定)
実施例3−2で得られたICG内包化処理リポソームをB液で希釈し、波長500〜950nm間の吸光度を測定し、リポソーム中の色素を確認した。結果を図6(a)に示した。
実施例3−4
(粒径測定)
実施例3−2で得られたICG内包化処理リポソームの粒径をDLS(ゼータサイザーナノ、マルバーン社製)で測定した。結果を図8(b)に示した。ICG内包リポソームは100nm前後の粒径として調製できることが分かった。
(粒径測定)
実施例3−2で得られたICG内包化処理リポソームの粒径をDLS(ゼータサイザーナノ、マルバーン社製)で測定した。結果を図8(b)に示した。ICG内包リポソームは100nm前後の粒径として調製できることが分かった。
比較例1
(ホスホコリンを添加せずにICG内包にpH勾配法を適用した場合)
比較例1−1
実施例3−1において作製した空リポソームを用いた。
比較例1−2
(pH勾配を利用したリポソームへの内包 (2)ICGの内包・精製)
インドシアニングリーン(ICG、日本公定書協会製)15mgを実施例3−1 表3記載のB溶液 pH3クエン酸バッファ溶液2.5mLに溶解し、ICG濃度6mg/mlとなるICG溶液2.5mLを作製した。
このICG溶液及び実施例3−1において作製した空リポソーム分散液2.5mLを60℃の恒温槽中に置いて15分加温した。60℃に加温した空リポソーム分散液に同じく60℃に加温したICG溶液を添加し、60℃で30分撹拌しICG内包処理したリポソームを調製した。
回収したリポソーム分散液に外水相B溶液を注入しながら限外ろ過(限外ろ過膜300KDa)処理し、遊離のICGを除去し精製した。精製後、液量をおよそ4mlに濃縮し回収した。
実施例3−2と同様に吸収スペクトルを測定し、結果を図6(b)に示した。また、同様に粒径分布測定を行い、結果を図8(c)に示した。
(ホスホコリンを添加せずにICG内包にpH勾配法を適用した場合)
比較例1−1
実施例3−1において作製した空リポソームを用いた。
比較例1−2
(pH勾配を利用したリポソームへの内包 (2)ICGの内包・精製)
インドシアニングリーン(ICG、日本公定書協会製)15mgを実施例3−1 表3記載のB溶液 pH3クエン酸バッファ溶液2.5mLに溶解し、ICG濃度6mg/mlとなるICG溶液2.5mLを作製した。
このICG溶液及び実施例3−1において作製した空リポソーム分散液2.5mLを60℃の恒温槽中に置いて15分加温した。60℃に加温した空リポソーム分散液に同じく60℃に加温したICG溶液を添加し、60℃で30分撹拌しICG内包処理したリポソームを調製した。
回収したリポソーム分散液に外水相B溶液を注入しながら限外ろ過(限外ろ過膜300KDa)処理し、遊離のICGを除去し精製した。精製後、液量をおよそ4mlに濃縮し回収した。
実施例3−2と同様に吸収スペクトルを測定し、結果を図6(b)に示した。また、同様に粒径分布測定を行い、結果を図8(c)に示した。
比較例2
(ホスホコリンを添加せずにICG内包にpH勾配なしの場合)
比較例2−1
従来のバンガム法によってICGをリポソームに内包させた。
本比較例において、外水相は内水相A溶液と同じであってpH勾配は生じていない。
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、COATSOME MC−8080、日本油脂製)、コレステロール(和光純薬製)、ジステアロイルホスファチルジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE−PEG、日本油脂製)をそれぞれ重量比で3:1:1に秤量した。3種の脂質の合計量102mgあたりメタノール・クロロホルム(1:1)溶液2mlに溶解し、6mg/mlのICGを添加した。37℃で1時間撹拌した後、溶媒留去し、さらに室温で一晩、真空乾燥した。得られた脂質乾固物(3種の脂質の合計量102mgにつき)に表12に示したA溶液を2.5ml添加し、37℃で1時間撹拌した。そして60℃で30分間、バス型超音波装置(3周波超音波洗浄器 VS−100III、アズワン製)により超音波処理(28kHz60秒→45kHz60秒→100kHz3秒のサイクルで照射)した後、ポアーサイズ0.22μm膜を通過させた。
回収したリポソーム分散液に内水相A溶液を注入しながら限外ろ過(限外ろ過膜300KDa)処理し、遊離のICGを除去し精製した。精製後、液量をおよそ4mlに濃縮し回収した。
DSPCとコレステロールの定量は市販定量キット(リン脂質Cテストワコー、コレステロールE−テストワコー、和光純薬製)で行った。
実施例3−2と同様に吸収スペクトルを測定した結果を図6(c)に示した。
(ホスホコリンを添加せずにICG内包にpH勾配なしの場合)
比較例2−1
従来のバンガム法によってICGをリポソームに内包させた。
本比較例において、外水相は内水相A溶液と同じであってpH勾配は生じていない。
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、COATSOME MC−8080、日本油脂製)、コレステロール(和光純薬製)、ジステアロイルホスファチルジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE−PEG、日本油脂製)をそれぞれ重量比で3:1:1に秤量した。3種の脂質の合計量102mgあたりメタノール・クロロホルム(1:1)溶液2mlに溶解し、6mg/mlのICGを添加した。37℃で1時間撹拌した後、溶媒留去し、さらに室温で一晩、真空乾燥した。得られた脂質乾固物(3種の脂質の合計量102mgにつき)に表12に示したA溶液を2.5ml添加し、37℃で1時間撹拌した。そして60℃で30分間、バス型超音波装置(3周波超音波洗浄器 VS−100III、アズワン製)により超音波処理(28kHz60秒→45kHz60秒→100kHz3秒のサイクルで照射)した後、ポアーサイズ0.22μm膜を通過させた。
回収したリポソーム分散液に内水相A溶液を注入しながら限外ろ過(限外ろ過膜300KDa)処理し、遊離のICGを除去し精製した。精製後、液量をおよそ4mlに濃縮し回収した。
DSPCとコレステロールの定量は市販定量キット(リン脂質Cテストワコー、コレステロールE−テストワコー、和光純薬製)で行った。
実施例3−2と同様に吸収スペクトルを測定した結果を図6(c)に示した。
(実施例3、比較例1、比較例2で作製したリポソームの分析結果比較)
前記表4に実施例3と比較例1、および比較例2で作製したリポソームの分析結果を表4にまとめた。
表4中(1)分析結果(ICG量/乾燥重量、ICG量/脂質量、ICG回収率など)から、実施例3で作製されたICG−2PC内包は、(3)比較例(比較例2)に示した従来のバンガム法で作製したリポソームより内包されている色素が高濃度であることは明らかである。
前記表4に実施例3と比較例1、および比較例2で作製したリポソームの分析結果を表4にまとめた。
表4中(1)分析結果(ICG量/乾燥重量、ICG量/脂質量、ICG回収率など)から、実施例3で作製されたICG−2PC内包は、(3)比較例(比較例2)に示した従来のバンガム法で作製したリポソームより内包されている色素が高濃度であることは明らかである。
表4ではpH勾配ありはpH勾配なしに比較して3〜4倍の濃縮効果が得られている。
また、(2)比較例(比較例1)に示した従来のICGを使ったpH勾配法においてはICG内包率が高く見積もられているが、このICGはリポソームのリン脂質表面に吸着していて通常の精製工程では分離できないが、造影剤として投与した場合には生体内アルブミンと結合して無効な成分となっているため、造影効果が悪いという欠点があった。(データ不開示)。
また、(2)比較例(比較例1)に示した従来のICGを使ったpH勾配法においてはICG内包率が高く見積もられているが、このICGはリポソームのリン脂質表面に吸着していて通常の精製工程では分離できないが、造影剤として投与した場合には生体内アルブミンと結合して無効な成分となっているため、造影効果が悪いという欠点があった。(データ不開示)。
比較例3
(ICG1モルに対してホスホコリン4モル添加した場合)
ICGに対して過剰にホスホコリンを添加した場合、すなわち、ICG77.4μM+ホスホコリン310μMを混合した場合、余剰のホスホコリンを除去しなければ図9に示したように水溶性であるホスホコリンの作用によってICGが水相へ移行しやすくなっていた。よって、ICG1モルに対して4モルのホスホコリンは余剰であり、ICG1モルに対して2モルのホスホコリンが上限として好ましい。
(ICG1モルに対してホスホコリン4モル添加した場合)
ICGに対して過剰にホスホコリンを添加した場合、すなわち、ICG77.4μM+ホスホコリン310μMを混合した場合、余剰のホスホコリンを除去しなければ図9に示したように水溶性であるホスホコリンの作用によってICGが水相へ移行しやすくなっていた。よって、ICG1モルに対して4モルのホスホコリンは余剰であり、ICG1モルに対して2モルのホスホコリンが上限として好ましい。
実施例4
(光音響信号の測定)
実施例3で得たICG−2PC内包リポソームの光音響信号の強度を測定した。比較例としてICG水溶液も同様に測定した。光音響信号の計測は、パルスレーザー光をサンプルに照射し、サンプルから光音響信号を圧電素子を用いて検出し,高速プリアンプで増幅後,デジタルオシロスコープで取得した。具体的な条件は以下の通りである。光源として、チタンサファイアレーザ(Lotis社製)を用いた。波長は780nm、エネルギー密度は12mJ/cm2、パルス幅は20ナノ秒、パルス繰返しは10Hzの条件とした。超音波トランスデューサとしては、型式V303(Panametrics−NDT社製)を用いた。中心帯域は1MHz、エレメントサイズはφ0.5、測定距離は25mm(Non−focus)、アンプは+30dB(超音波プリアンプ Model 5682 オリンパス社製)の条件である。測定容器としては、ポリスチレン製キュベットで、光路長0.1cm、サンプル容量は約200μlであった。溶媒は水を用いた。計測器は、DPO4104(テクトロニクス社製)を用いて、トリガー:光音響光をフォトダイオードで検出、Data acquisition:128回(128パルス)平均の条件で測定を行った。
波長は780nmにおける光音響信号測定の結果、本実施例3の粒子はICG水溶液に比較して、1.7倍の光音響信号を発生することが分かった。
(光音響信号の測定)
実施例3で得たICG−2PC内包リポソームの光音響信号の強度を測定した。比較例としてICG水溶液も同様に測定した。光音響信号の計測は、パルスレーザー光をサンプルに照射し、サンプルから光音響信号を圧電素子を用いて検出し,高速プリアンプで増幅後,デジタルオシロスコープで取得した。具体的な条件は以下の通りである。光源として、チタンサファイアレーザ(Lotis社製)を用いた。波長は780nm、エネルギー密度は12mJ/cm2、パルス幅は20ナノ秒、パルス繰返しは10Hzの条件とした。超音波トランスデューサとしては、型式V303(Panametrics−NDT社製)を用いた。中心帯域は1MHz、エレメントサイズはφ0.5、測定距離は25mm(Non−focus)、アンプは+30dB(超音波プリアンプ Model 5682 オリンパス社製)の条件である。測定容器としては、ポリスチレン製キュベットで、光路長0.1cm、サンプル容量は約200μlであった。溶媒は水を用いた。計測器は、DPO4104(テクトロニクス社製)を用いて、トリガー:光音響光をフォトダイオードで検出、Data acquisition:128回(128パルス)平均の条件で測定を行った。
波長は780nmにおける光音響信号測定の結果、本実施例3の粒子はICG水溶液に比較して、1.7倍の光音響信号を発生することが分かった。
Claims (11)
- 色素含有粒子の製造方法であって、
両親媒性色素とリン脂質とを有する色素複合体を形成させる工程と、
前記色素複合体と粒子とを混合し、前記粒子内と前記粒子外とのpHの差を設けるにより、前記両親媒性色素を前記粒子に内包させる工程と、を有することを特徴とする、色素含有粒子の製造方法。 - 前記粒子がリポソームであることを特徴とする請求項1に記載の色素含有粒子の製造方法。
- 前記リン脂質はツィッターイオン部位を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の色素含有粒子の製造方法。
- 前記両親媒性色素と前記リン脂質とのモル比率が、両親媒性色素:リン脂質=1:2乃至2:1となるように前記色素複合体を形成する工程を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の色素含有粒子の製造方法。
- 前記色素含有粒子の流体力学的平均粒子径は光散乱法で測定して1000nm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の色素含有粒子の製造方法。
- 前記両親媒性色素がICGであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の色素含有粒子の製造方法。
- 前記リン脂質がホスホコリンあるいはホスホコリンを部分構造として含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の色素含有粒子の製造方法。
- 前記色素含有粒子の表面にPEG鎖を付加する工程を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の色素含有粒子の製造方法。
- 前記リン脂質がリン酸ジエステル結合を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の色素含有粒子の製造方法。
- 光イメージングに用いられることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の色素含有粒子の製造方法で作製した色素含有粒子。
- 請求項1から9のいずれか1項に記載の色素含有粒子の製造方法で作製した色素含有粒子と、前記色素含有粒子を分散する分散媒とを有することを特徴とする光イメージング用の造影剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013218345A JP2015081230A (ja) | 2013-10-21 | 2013-10-21 | 色素複合体を利用したpH勾配法、および色素内包リポソーム |
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JP2013218345A Pending JP2015081230A (ja) | 2013-10-21 | 2013-10-21 | 色素複合体を利用したpH勾配法、および色素内包リポソーム |
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JP (1) | JP2015081230A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016169361A (ja) * | 2014-10-24 | 2016-09-23 | 国立大学法人京都大学 | 重合体、前記重合体を有する光音響イメージング用造影剤 |
-
2013
- 2013-10-21 JP JP2013218345A patent/JP2015081230A/ja active Pending
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