JP2015078077A - 光学素子の製造方法および光学素子の製造装置 - Google Patents

光学素子の製造方法および光学素子の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】光学素子の製造方法において、光学素材に含まれる還元されやすい酸化物成分の還元生成物に起因する着色やクモリを短時間で除去することができるようにする。【解決手段】加熱により還元されやすい酸化物成分を含有する光学素材を用いた光学素子の製造方法であって、光学素材をプレス成形して、光学素子の形状を有する成形体を形成する成形工程S1と、成形体を真空槽に配置してこの真空槽を減圧し、成形体を酸素イオンにさらすことにより、成形体における酸化物成分の還元生成物を除去する酸素イオン曝露工程S2と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、光学素子の製造方法および光学素子の製造装置に関する。
従来、ガラス材料からなる光学素材を加熱により軟化させた後、得ようとする光学素子の形状をもとに精密加工された上型と下型の間でプレス成形して光学素子形状を付与し、これを冷却固化させる光学素子の製造方法が知られている。
このような光学素子の製造方法では、光学素材として、光学素子の用途に応じて、さまざまな元素を含むガラス材料が使用される。例えば、酸化ビスマスを含有するビスマス系ガラスは、主として高屈折率が求められる光学素子に使用されている。
ところが、ビスマス系ガラスをプレス成形して光学素子を製造する場合、光学素子に着色、クモリが生じやすく、これにより歩留まりが低くなるという問題があった。
例えば、特許文献1には、このようなクモリを抑制するために、ビスマス系光学素材を非酸化性ガス流により浮上させつつ加熱して、光学素材に含まれるビスマスを揮発除去する熱処理工程を行った後に、プレス成形する光学素子の製造方法が記載されている。
このような着色、クモリは、高温下でのプレス成形の際に、ビスマス系ガラス中の酸化ビスマス(Bi)が還元されて生ずるビスマス、水蒸気、酸素ガス等の揮発成分に起因すると考えられている。
特開2012−158491号公報
しかしながら、上記のような従来技術には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術によれば、光学素材を浮上させつつ、支持部材と非接触を保って加熱する熱処理工程を行う必要があるため、製造時間が増大するという問題がある。また、成形型に配置する前に光学素材を加熱するため、成形型内に移動可能な温度まで冷却した後でなければ、成形型に配置することができず、この点でも製造時間が増大してしまう。
また、特許文献1に記載の技術は、成形前の光学素材を加熱することによって還元されたビスマスを揮発させ、これにより、硝材表面の酸化ビスマスを低減する技術である。
しかし、表面の酸化ビスマスが低減された光学素材は、プレス成形される過程で、加熱され、変形されるため、内部にある一部の酸化ビスマスが表面に移動し、還元されることになる。特に、成形を非酸化性雰囲気で行う場合には、このような還元反応が起こりやすくなる。
このため、特許文献1に記載の技術を採用しても、成形時の還元反応による還元生成物に起因する着色やクモリが新たに発生するため、このような着色やクモリが残ってしまうという問題がある。
成形後に、光学素子を酸素雰囲気で加熱する工程を設けることで、着色やクモリを引き起こした金属ビスマスを揮発させることも考えられる。しかし、このような加熱工程は、例えば、350℃以上に加熱温度して、数時間加熱状態を保持しなければならず、例えば、搬送したり、蒸着等の後工程を行ったりするためには、冷却する時間も必要になる。この結果、製造に長時間を要するという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、光学素材に含まれる還元されやすい酸化物成分の還元生成物に起因する着色やクモリを短時間で除去することができる光学素子の製造方法および光学素子の製造装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様の光学素子の製造方法は、加熱により還元されやすい酸化物成分を含有する光学素材を用いた光学素子の製造方法であって、前記光学素材をプレス成形して、光学素子の形状を有する成形体を形成する成形工程と、前記成形体を真空槽に配置して該真空槽を減圧し、前記成形体を酸素イオンにさらすことにより、前記成形体における前記酸化物成分の還元生成物を除去する酸素イオン曝露工程と、を備える方法とする。
上記光学素子の製造方法においては、前記酸素イオン曝露工程では、前記成形体を加熱した状態で、前記酸素イオンにさらすことが好ましい。
上記光学素子の製造方法においては、前記酸素イオン曝露工程では、前記還元生成物による着色の変化を測定しながら前記成形体を前記酸素イオンにさらすことが好ましい。
上記光学素子の製造方法においては、前記酸素イオン曝露工程が行われた後の前記真空槽内で、前記成形体の表面に薄膜を蒸着する蒸着工程を備えることが好ましい。
上記光学素子の製造方法においては、前記酸素イオン曝露工程では、イオンガンによって前記酸素イオンを前記成形体に照射することが好ましい。
上記光学素子の製造方法においては、前記光学素材は、酸化ビスマスを含むことが好ましい。
本発明の第2の態様の光学素子の製造装置は、加熱により還元されやすい酸化物成分を含有する光学素材を用いた光学素子の製造装置であって、前記光学素材をプレス成形して光学素子の形状が形成された成形体を配置する真空槽と、該真空槽に配置された前記成形体を酸素イオンにさらして前記成形体における前記酸化物成分の還元生成物を除去するため、前記成形体の周囲に酸素イオンを供給する酸素イオン供給部と、を備える構成とする。
上記光学素子の製造装置においては、前記真空槽内に配置された前記成形体を加熱する加熱部を備える。ことが好ましい。
上記光学素子の製造装置においては、前記酸素イオン曝露部によって前記酸素イオンにさらされる前記成形体の前記還元生成物による着色の変化を測定する着色測定部を備えることが好ましい。
上記光学素子の製造装置においては、前記真空槽内で、前記成形体の表面に薄膜を蒸着する蒸着部を備えることが好ましい。
上記光学素子の製造装置においては、前記酸素イオン供給部は、前記酸素イオンを前記成形体に照射するイオンガンを備えることが好ましい。
本発明の光学素子の製造方法および光学素子の製造装置によれば、成形体を酸素イオンにさらすことにより、光学素材に含まれる還元されやすい酸化物成分の還元生成物に起因する着色やクモリを短時間で除去することができるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法で製造される光学素子の一例を示す光軸を含む模式的な断面図、そのA部およびB部の部分拡大図である。 本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の工程フローを示すフローチャートである。 本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程に用いる成形装置の構成を示す模式的な断面図である。 本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程に用いる成形型の構成を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の酸素イオン曝露工程に用いる光学素子の製造装置の構成を示す模式的な断面図である。 本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程の工程説明図である。 本発明の第2の実施形態の光学素子の製造方法の酸素イオン曝露工程に用いる光学素子の製造装置の構成を示す模式的な断面図である。 還元生成物による成形体の透過光量の変化の一例を示す模式的なグラフである。
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法および光学素子の製造装置について説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法で製造される光学素子の一例を示す光軸を含む模式的な断面図である。図1(b)、(c)は、図1(a)におけるA部の部分拡大図およびB部の部分拡大図である。図2は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の工程フローを示すフローチャートである。図3は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程に用いる成形装置の構成を示す模式的な断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の成形工程に用いる成形型の構成を示す断面図である。図5は、本発明の第1の実施形態の光学素子の製造方法の酸素イオン曝露工程に用いる本実施形態に光学素子の製造装置の構成を示す模式的な断面図である。
本実施形態の光学素子の製造方法によって製造される光学素子は、加熱により還元されやすい酸化物成分を含有する光学素材を用いた光学素子である。
光学素子の種類としては、例えば、レンズ、ガラス平板、光学フィルター、反射ミラー、プリズム等の例を挙げることができる。
以下では、光学素子の一例として、図1(a)、(b)、(c)に示すようなレンズ40を製造する場合の例で説明する。
レンズ40は、図1(a)に示すように、フランジ付きの平凸レンズの形状に成形されたレンズ本体40d(成形体)におけるレンズ面40a、40b(図1(b)、(c)参照、成形体の表面)に、それぞれ光学薄膜41a、41b(薄膜)が蒸着によって形成されたガラスモールドレンズである。
レンズ面40aは光軸Oを中心とする凸面からなり、レンズ面40bは光軸Oを中心とする平面である。フランジ部の側面40cは、光軸Oと同軸の円筒面からなる。
このようなレンズ40の形状は一例であり、本実施形態で製造可能なレンズの形状は、レンズ40の形状に限定されるものではない。
例えば、レンズ40は、両凸、両凹、平凹、凸メニスカス、凹メニスカスのいずれの形状も可能である。
また、レンズ面40a、40bを曲面形状とする場合、曲面形状の種類は特に限定されず、例えば、球面、非球面、自由曲面などの曲面形状から適宜選択することが可能である。
また、レンズ40は、フランジ部を有しない形状も可能である。
光学薄膜41a(41b)は、レンズ面40a(40b)に必要な光学特性に応じて、1層以上の薄膜層からなる適宜の層構成を採用することができる。
光学薄膜41a(41b)の種類としては、例えば、反射防止膜、光学フィルター、ビームスプリッターなどの例を挙げることができる。
以下で、光学薄膜41a(41b)の一例として、単層のフッ素化マグネシウム(MgF)層を形成した反射防止膜の場合の例で説明する。
このようなレンズ40のレンズ本体40dは、プレス成形により形成される。すなわち、レンズ本体40dの質量に応じて計量された塊状のガラス材料である光学素材4(図4参照)を成形型に配置して、加熱し、成形型を加圧することにより成形される。
図4では、光学素材4は球形として描かれているが、これは一例であって、例えば、円板状等の他の形状も可能である。
光学素材4は、例えば、モールド成形、母材からの切削、研磨などによって製造することができる。
光学素材4の材質は、成形前後および成形時の温度条件において、還元されやすい酸化物成分を含む光学素材からなる。このような還元されやすい酸化物成分としては、例えば、還元されることにより金属ビスマス(Bi)と酸素ガスや水蒸気などのガスとを発生する酸化ビスマス(Bi)を挙げることができる。
還元されやすい成分とは、言い換えると電極電位が高い物質の酸化物成分である。電極電位が高い物質としては、例えば、周期表では、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などが挙げられる。
酸化ビスマスを含むガラス材料は、高屈折率が得られるとともに、軟化しやすくなるため、プレス成形によって、高屈折率を有する光学レンズを製造することが可能となる。
このような酸化ビスマスを含むビスマス系の光学素材としては、例えば、L−BBH2(商品名:(株)オハラ製)、L−BBH1(商品名:(株)オハラ製)、K−PSFn2(商品名:(株)住田光学ガラス製)などの例を挙げることができる。
本実施形態の光学素子の製造方法によって、レンズ40を製造するには、図2に示すように、成形工程S1、酸素イオン曝露工程S2、および蒸着工程S3をこの順に行う。
各工程を説明する前に、各工程に用いる装置について説明する。
図3に示すのは、成形工程S1に用いる成形装置1である。
成形装置1は、光学素子用成形型20(成形型)の内部に配置された図示略の光学素材4を加熱、加圧、冷却して、光学素子用成形型20内の後述する成形面の形状を転写することにより、レンズ本体40dを形成する装置である。
光学素子用成形型20は、図4に示すように、下型21、上型22、およびスリーブ23を備える。
下型21は、レンズ本体40dの外径よりも大きな外径を有する円筒面状の側面を備えた略円柱状部材からなり、その上端部に、レンズ本体40dのレンズ面40aおよびレンズ面40aの外周に隣接するフランジ面の形状を転写する成形面21aが形成されている。
成形面21aの中心軸は、側面の中心軸と同軸に形成されている。
上型22は、下型21の側面と同じ外径を有する円筒面状の側面を備えた略円柱状部材からなり、その下端部に、レンズ本体40dのレンズ面40bおよびレンズ面40bの外周に隣接するフランジ面の形状を転写する成形面22aが形成されている。
成形面22aの中心軸は、側面の中心軸と同軸に形成されている。
スリーブ23は、下型21および上型22の側面を摺動可能に外嵌する内周面を有する円筒状部材である。
光学素子用成形型20において、下型21、上型22、およびスリーブ23は、スリーブ23が下型21および上型22の各側面を外嵌する状態で、同軸に配置され、上型22がスリーブ23の内周面に沿って移動可能になっている。
成形面21a、22a、およびスリーブ23の内周面に囲まれた空間は、光学素材4をレンズ本体40dの形状に成形するための成形空間Sを構成している。
成形空間Sは、下型21および上型22とスリーブ23との間に形成される嵌合隙間と、スリーブ23の径方向に貫通する貫通孔23aとによって、外部と連通している。
下型21、上型22、およびスリーブ23の材質は、成形時の加熱温度、加圧力に耐える超硬合金、セラミックスなどを採用することができる。
例えば、成形面21a、22aのように、成形時に光学素材4に当接する部位は、離型性を向上するため、母材の表面に離型膜が成膜された構成を有する。
離型膜としては、光学素材4に対する離型性が良好となる材質であれば、特に限定されず、例えば、酸化膜や金属膜からなる離型膜を採用することができる。
成形装置1は、図3に示すように、光学素子用成形型20を搬入する開口部17aと光学素子用成形型20を搬出する開口部17bとを側部に備える成形室チャンバー17と、成形室チャンバー17の内部に設けられた、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、および冷却ステージ10Cとを備える。
開口部17a、17bには、それぞれ、シャッター18a、18bが設置され、これにより開閉可能とされている。シャッター18a、18bを閉止すると、成形室チャンバー17は密閉状態になる。
成形室チャンバー17には、成形室チャンバー17内の真空引きを行う真空引き用管路15と、成形室チャンバー17内に不活性ガスGを供給する不活性ガス流入路16とが設けられている。
真空引き用管路15の成形室チャンバー17と反対側の端部(図示略)は、図示略の真空ポンプに接続されている。
また、不活性ガス流入路16の成形室チャンバー17と反対側の端部(図示略)は、図示略の不活性ガス供給源に接続されている。
不活性ガスGとしては、成形時の最高温度以下の温度において、酸化されずかつ光学素子用成形型20および光学素材4と化学反応を起こさないガス、例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどのガスを採用することができる。本実施形態では、不活性ガスGは、一例として、窒素ガスを採用している。
本実施形態では、成形室チャンバー17は、シャッター18a、18bを閉じた状態では密閉状態となる。このため、この密閉状態で真空引き用管路15を通して真空引き行った後に、不活性ガス流入路16から不活性ガスGを流入させることで成形室チャンバー17の内部に、不活性ガスGを充填し、非酸化性雰囲気に置換することができる。
ただし、成形室チャンバー17は、半密閉構造とすることも可能である。この場合、不活性ガスGを成形室チャンバー17内に、常時供給して成形室チャンバー17内を陽圧に保つことにより、外部の空気の流入を抑制し、内部の不活性ガス雰囲気を維持することができる。この場合には、真空引き用管路15や図示略の真空ポンプは省略することも可能である。
成形室チャンバー17の内部には、開口部17aから開口部17bに向かう経路上に、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、および冷却ステージ10Cがこの順に近接して配置されている。
加熱ステージ10Aは、光学素子用成形型20および光学素子用成形型20内の光学素材4を加熱する装置部分である。
プレスステージ10Bは、加熱ステージ10Aによって加熱された光学素材4を成形可能な温度まで加熱してからプレス成形する装置部分である。
冷却ステージ10Cは、プレス成形によりレンズ本体40dの形状が付与された光学素材4を冷却する装置部分である。
本実施形態では、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cの装置構成は共通であり、それぞれプレスプレート11、12、エアーシリンダー13を備える。
プレスプレート11は、光学素子用成形型20の下型21を下方から支持して、下型21を加熱する円板状部材であり、ヒーターが内蔵されている。
プレスプレート12は、プレスプレート11の上方に対向して配置され、上型22に上方から当接して上型22を加熱する円板状部材であり、ヒーターが内蔵されている。
エアーシリンダー13は、プレスプレート12を昇降させて、降下時に光学素子用成形型20を上方から加圧する装置部分であり、成形室チャンバー17の内部において進退するように、成形室チャンバー17の上部に取り付けられている。
以下、これらのプレスプレート11、12、エアーシリンダー13が、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cのいずれに属する部材か区別する必要がある場合には、各ステージの符号に添字A、B、Cを付して区別する。例えば、加熱ステージ10Aのプレスプレート11、12、エアーシリンダー13は、それぞれプレスプレート11A、12A、エアーシリンダー13Aと称する。
各プレスプレート11、12の温度は、独立に制御することが可能である。
各プレスプレート11の上面は水平方向に整列されており、光学素子用成形型20を水平方向に摺動移動させることが可能である。
各エアーシリンダー13の昇降動作や、加圧力は、それぞれ独立に制御することが可能である。
また、成形室チャンバー17の内部には、光学素子用成形型20を、開口部17aから開口部17bに向かって、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cの各プレスプレート11上を移動する図示略の搬送手段が設けられている。
搬送手段としては、例えば、ロボットアームなどを採用することができる。
図5に示すのは、酸素イオン曝露工程S2と、蒸着工程S3とに用いる表面処理装置3(光学素子の製造装置)である。
表面処理装置3は、真空槽30、基板保持部材31、ヒーター32(加熱部)、イオンガン33(酸素イオン供給部)、ニュートラライザー34、および蒸着源36(蒸着部)を備える。
真空槽30は、レンズ本体40dを収容して、レンズ本体40dを酸素イオンにさらしたり、光学薄膜41a、41bを蒸着によって成膜したりするために必要な減圧雰囲気を形成する装置部分である。
真空槽30は、複数のレンズ本体40dを出し入れする図示略の搬入口と、真空引きを行う真空引き用管路30aとが設けられている。
真空引き用管路30aの真空槽30と反対側の端部(図示略)は、図示略の真空ポンプに接続されている。
基板保持部材31は、成膜が行われる間、複数のレンズ本体40dを保持するドーム状部材であり、真空槽30の上部において回転軸31aを介して支持されている。
回転軸31aは、図示略の回転モータに連結されている。このため、基板保持部材31は、鉛直軸に沿う回転中心軸線C回りに回転可能に支持されている。
各レンズ本体40dは、基板保持部材31の下面側にレンズ面40a、40bの一方の被成膜面が向くように配置されている。なお、図5は模式図のため、レンズ本体40dを簡略化して矩形状に描いている。
なお、図5では、レンズ本体40d上に回転軸31aが位置しているかのように描かれているが、これは図5が模式図のためである。
詳細の図示は省略するが、回転軸31aは、回転中心軸線C上に位置するレンズ本体40dを避けた位置において、基板保持部材31上に設けられた図示略の連結機構を介して、基板保持部材31と着脱可能に連結されている。
基板保持部材31は、保持されたレンズ本体40dの被成膜面の向きを変更するために、上下の向きを反転できるようになっている。これにより、必要に応じて、レンズ面40a、40bのうちのいずれかの被成膜面を下方に向けることができる。
基板保持部材31を反転する機構としては、適宜の周知技術を採用することができる。例えば、特開平5−271935に記載されているような、反転可能に支持された複数の基板ホルダと、これらの基板ホルダを反転させる回転付与手段とを備えた構成などを採用することができる。
ヒーター32は、蒸着される膜の耐擦傷性や耐環境性を向上させると同時に、光学的な特性を安定させるために、各レンズ本体40dを加熱するもので、本実施形態では、基板保持部材31の上方に配置されている。
イオンガン33は、レンズ本体40dを酸素イオンにさらして、レンズ本体40dにおける酸化物成分の還元生成物を除去するため、レンズ本体40dの周囲に酸素イオンを供給する装置部分である。
イオンガン33の構成としては、イオンガン33の内部で酸素プラズマを発生させて、引き出し電極によって酸素イオンO (図示矢印参照)を外部に引き出すことにより、レンズ本体40dに向けて酸素イオンO を照射する構成を採用することができる。
還元生成物の除去効果は、酸素イオンO の運動エネルギーが高い方が高まるため、イオンガン33における酸素イオンO の加速電圧は高い方がより好ましい。また、処理時間を短くするためには、酸素イオンO の照射イオン電流は高い方がより好ましい。
例えば、イオンガン33としては、酸素、または酸素とアルゴンの混合ガスを用いて酸素プラズマを発生させ、酸素イオンO の加速電圧が100V〜1200Vの範囲で、酸素イオンO の照射イオン電流が100mA〜1200mAの範囲で調整可能な構成が好ましい。
イオンガン33の照射口には、照射口を必要に応じて開閉するイオンガンシャッター38が設けられている。
ニュートラライザー34は、酸素イオンO を照射する際に、イオンビームの拡散やレンズ本体40dの帯電を防ぎ、レンズ本体40dに酸素イオンO を効率よく到達させるための装置部分である。
本実施形態のニュートラライザー34は、電子eを発生して、基板保持部材31の下面側に向けて照射できるようになっている。
蒸着源36は、光学薄膜41a、41bを形成するための成膜材料Mの微粒子をレンズ本体40dに向けて飛散させる装置部分である。
蒸着源36が成膜材料Mを飛散させる装置構成としては、例えば、電子銃、抵抗加熱装置、スパッタ装置などの例を挙げることができる。
本実施形態では、一例として、蒸着源36が図示略の電子銃を備え、電子銃から照射される電子ビームに磁場をかけて成膜材料Mに照射することで成膜材料Mを加熱して気化させる構成を採用している。
光学薄膜41a、41bが多層膜からなる場合には、成膜材料Mとして各層に応じた複数のものが設置され、それぞれ独立に気化させることができるようになっている。
蒸着源36において、成膜材料Mを飛散させるための開口部には、この開口部を必要に応じて開閉するシャッター37が設けられている。
このような構成の表面処理装置3は、本実施形態の光学素子の製造装置を構成している。
次に、成形装置1を用いた成形工程S1、表面処理装置3を用いた酸素イオン曝露工程S2および蒸着工程S3について、成形装置1、表面処理装置3の動作とともに説明する。
成形工程S1は、光学素材4をプレス成形して、レンズ40の形状を有するレンズ本体40dを形成する工程であり、酸化ビスマスを含まない光学素材をプレス成形する周知の工程と同様にして行われる。
まず、成形装置1の外部で、下型21の円筒部に、スリーブ23を外嵌させ、成形面21a上に光学素材4を配置してから、スリーブ23の上部に上型22の円筒部を挿入する。これにより、図4に示すように、光学素材4が、上型22の成形面22aと下型21の成形面21aとの間に挟まれた状態で、成形空間S内に配置される。このとき、成形空間S内の雰囲気は、外部の大気雰囲気と同一である。
次に、この光学素子用成形型20を成形装置1に搬入し、非酸化性雰囲気下で、光学素子用成形型20を加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cに順次移動して、プレス成形を行う。
このため、光学素子用成形型20の搬入に先立って、成形室チャンバー17内の雰囲気を不活性ガスGで置換しておく。すなわち、シャッター18a、18bによって、それぞれ開口部17a、17bを閉じた状態で、真空引き用管路15から真空引きを行って、100Pa以下程度に減圧する。その後、不活性ガス流入路16から不活性ガスGを導入して、成形室チャンバー17を大気圧に比べてわずかに陽圧となる不活性ガスG雰囲気を形成しておく。
この状態で、シャッター18aを開けて、開口部17aから光学素子用成形型20を搬入し、加熱ステージ10A上に配置する。この搬入には、図示略のロボットアームなどの搬入手段を用いることが可能である。
成形装置1内に光学素子用成形型20を搬入したら、図示略の搬送手段によって、光学素子用成形型20を加熱ステージ10Aのプレスプレート11A上に水平移動し、シャッター18aを閉じる。
光学素子用成形型20がプレスプレート11A上に移動したら、エアーシリンダー13Aを駆動して、図5(a)に示すように、プレスプレート11A、12Aによって光学素子用成形型20を上下方向に挟持されるまで、プレスプレート12Aを降下する。
プレスプレート11A、12Aは、予め、光学素材4が軟化する温度に加熱しておく。このため、光学素子用成形型20がプレスプレート11A、12Aによって挟持されると、プレスプレート11A、12Aからの熱伝導によって下型21、上型22が加熱される結果、下型21および上型22に挟まれた光学素材4も昇温される。加熱ステージ10Aでは、光学素材4を、成形温度の近傍まで昇温する。
光学素材4が、成形温度よりもわずかに低い温度まで昇温されたら、エアーシリンダー13Aを上昇して、光学素子用成形型20の挟持を解除し、図示略の搬送手段によって、光学素子用成形型20をプレスステージ10Bに移動する。
プレスステージ10Bでは、予め、プレスプレート11B、12Bが成形温度になるように加熱されている。
光学素材4の成形温度として、特に好ましい温度は、屈伏点と軟化点との間の中間付近の温度である。例えば、光学素材4がL−BBH2(商品名:(株)オハラ製)の場合、好適な成形温度は、425℃〜455℃である。
光学素子用成形型20がプレスプレート11B上に移動したら、エアーシリンダー13Bを駆動して、まず、図6(a)に示すように、プレスプレート12Bが、上型22の上端部に当接する位置まで降下させて、光学素子用成形型20を挟持する。
この状態で、光学素材4の温度が成形温度になるまで、光学素子用成形型20および光学素材4を加熱する。
光学素材4が成形温度になるまで加熱したら、エアーシリンダー13Bを駆動して、図6(b)に示すように、プレスプレート12Bを降下し、プレスプレート12Bによって光学素子用成形型20を上方から加圧して、上型22を押し下げる。
これにより、成形空間S内の光学素材4は、成形面21a、22aに挟まれて加圧され、成形面21a、22aの形状に沿って変形する。
プレスプレート12Bを、成形面21a、22aの間隔がレンズ本体40dのレンズ面間隔になるまで、押し下げたら、エアーシリンダー13Bを停止する。
これにより、変形した光学素材4が成形面21a、22aと密着して、成形面21a、22aの形状が、光学素材4の表面に転写される。すなわち、光学素材4は、レンズ本体40dの形状に成形される。
光学素材4の形状が安定したら、エアーシリンダー13Bを上昇して、光学素子用成形型20の加圧および挟持を解除し、図示略の搬送手段によって、光学素子用成形型20を、冷却ステージ10Cに移動する。
冷却ステージ10Cでは、プレスプレート11C、12Cが、予め、光学素材4の歪点以下の冷却用温度に加熱されている。
光学素子用成形型20がプレスプレート11C上に移動したら、エアーシリンダー13Cを駆動して、図6(b)に示すように、プレスプレート12Cを降下させる。これにより、プレスプレート11C、12Cによって光学素子用成形型20を上下方向に挟持する。
これにより、より高温の光学素子用成形型20から、より低温のプレスプレート11C、12Cに熱伝導して、光学素子用成形型20およびレンズ本体40dの冷却が進む。
レンズ本体40dが歪点以下に冷却され、固化したら、エアーシリンダー13Cを駆動して、プレスプレート12Cを上昇させて、光学素子用成形型20の挟持を解除する。そして、シャッター18bを開放して、図示略の搬送手段によって、光学素子用成形型20を開口部17bから成形室チャンバー17の外部に搬出し、シャッター18bを閉じる。
以上で、成形工程S1が終了する。
以上、1つの光学素子用成形型20に注目して、成形装置1の動作について説明したが、成形装置1では、搬送タクトを設けて、順次、複数の光学素子用成形型20を投入することが可能である。
この場合、成形室チャンバー17内の加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cにおいて、上記の動作を搬送タクトごとに繰り返すことにより、複数の光学素子用成形型20に対して上記の各工程を並行して行うことができる。これにより、複数の光学素子用成形型20を用いて、レンズ本体40dを連続的に製造することができる。
成形室チャンバー17の外部に光学素子用成形型20を搬出したら、光学素子用成形型20からレンズ本体40dを脱型する。
脱型したレンズ本体40dは、必要に応じて、例えば、歪み等を除去するアニール工程等の後処理を施したり、レンズ外周部を切削する等の加工を施して外径を整えたり、芯出ししたりする後加工を行う。
次に、酸素イオン曝露工程S2を行う。本工程は、レンズ本体40dを真空槽に配置してこの真空槽を減圧し、レンズ本体40dを酸素イオンにさらすことにより、レンズ本体40dにおける酸化物成分の還元生成物を除去する工程である。
成形工程S1を行うことで成形されたレンズ本体40dは、非酸化性雰囲気で加熱されているため、光学素材4に含まれる酸化物成分である酸化ビスマスの一部が還元される。これにより、還元生成物である金属ビスマスがレンズ本体40dの表面に現れ、金属ビスマスに起因するレンズ面40a、40bに着色やクモリが生じる。
なお、「着色やクモリ」における「着色」と「クモリ」とは、金属ビスマスの発生量、発生分布などによる見え方の相違であり官能的な区別である。そこで、以下では、特に断らない限りは、着色、クモリ、およびそれらの混合している外観状態を、総称して「着色」と称することにする。
また、このような広義の「着色」の一部または全部が除去されて、レンズ面40a、40bの透明性が増大することを「脱色」と称する場合がある。つまり、「クモリ」が低減されることも「脱色」されると言うことにする。
ただし、レンズ本体40dの成形時に金属ビスマス以外のゴミや汚れが付着する可能性がある場合や、成形工程S1後に、上述のような後処理、後加工を行う場合には、本工程を行う前に、各レンズ本体40dを湿式洗浄して乾燥させる洗浄工程を設けることが好ましい。
以下では、必要に応じて洗浄工程を行うことにより、レンズ本体40dの表面には、金属ビスマスに起因する着色以外の外観不良は除去されているものとして説明する。
本工程では、まず、図5に示すように、成形された複数のレンズ本体40dを、基板保持部材31に保持し、表面処理装置3の真空槽30に搬入して、回転軸31aに固定する。このとき、各レンズ本体40dは、例えば、レンズ面40aが、基板保持部材31の下面側になるように向きを揃えておく。
真空槽30において、基板保持部材31に対向する下方位置には、イオンガン33および蒸着源36が配置されている。
次に、表面処理装置3における図示略の真空ポンプを駆動し、真空引き用管路30aから真空引きを行って真空槽30を減圧状態とする。
真空槽30の圧力は、イオンガン33によって、レンズ本体40dに酸素イオンを効率よく照射できれば特に限定されないが、蒸着に好適な圧力(以下、蒸着圧力と称する)であれば、酸素イオンも良好に照射することが可能である。
本実施形態では、表面処理装置3内で本工程に続けて蒸着工程S3を行うため、真空槽30の圧力は、本工程が終了するまでに、次工程に必要な蒸着圧力となるように減圧する。本実施形態では、蒸着源36において電子銃を用いているため、蒸着圧力は、10−2Pa以下としている。
次に、ヒーター32を発熱させて、基板保持部材31に保持されたレンズ本体40dを加熱するとともに、回転軸31aを中心として、基板保持部材31を回転させる。
ヒーター32による加熱を行うのは、蒸着工程S3における蒸着を良好に行うためである。例えば、本実施形態のように、成膜材料Mとして、フッ素化マグネシウムを用いる場合、蒸着に好適な温度(以下、蒸着温度と称する)は、200℃〜400℃であるため、ヒーター32の加熱温度は、少なくとも本工程の終了時に、レンズ本体40dをこの蒸着温度にすることができる温度に設定する。
この状態で、イオンガンシャッター38を開放し、レンズ本体40dのレンズ面40aに向けて、イオンガン33から酸素イオンビームを照射する。
また、酸素イオンビームの照射と並行して、酸素イオンビームの拡散や光学素子の帯電を防ぐため、レンズ本体40dに向けて、ニュートラライザー34から電子eを照射する。
これにより酸素イオンO が、レンズ面40aに効率よく到達する。
酸素イオンO は、レンズ面40aに到達すると、レンズ面40aの表面に存在する金属ビスマスが酸素イオンO に反応して酸化ビスマスとなる。これにより、金属ビスマスに起因するレンズ面40aの着色が除去され、レンズ面40aが脱色されていく。
レンズ面40aが十分に脱色されたら、図示略の反転機構によって、基板保持部材31を反転し、レンズ面40bを下方に向ける。これにより同様にしてレンズ面40bが脱色される。
ただし、基板保持部材31を適宜反転させて、レンズ面40a、40bを交替に下方に向けることで、両面を徐々に脱色するようにすることも可能である。
このようにして、少なくともレンズ面40a、40bにおいて、金属ビスマスに起因する着色が許容範囲内となるまで、金属ビスマスの除去が進んだら、イオンガン33を停止して、イオンガンシャッター38を閉じる。また、ニュートラライザー34を停止する。
以上で、酸素イオン曝露工程S2が終了する。
本実施形態では、レンズ本体40dに発生する着色の程度を予め見積もり、実験などによって、着色を許容限度以下まで除去するために必要な酸素イオンO の照射条件や曝露時間を求めておく。
そして、このように求められた一定の曝露時間だけ、酸素イオンビームを照射する。
イオンガン33による酸素イオンビーム照射による脱色作用は、常温から450℃までの範囲で良好となり、温度が高いほど脱色効果が大きくなる。
したがって、本工程におけるレンズ本体40dの温度は、常温から450℃までの適宜温度に設定することができる。
例えば、レンズ本体40dを、蒸着温度を超える温度に昇温すると、本工程を終了して蒸着工程S3に移行する際に、レンズ本体40dが蒸着温度程度の降温するまで冷却する時間が必要となる。
このため、短時間で本工程を終えて、迅速に蒸着工程S3に移行するには、本工程におけるレンズ本体40dの温度は、開始時に蒸着温度より低温の100℃程度とし、本工程の終了時に蒸着温度になるように昇温する設定を用いることが可能である。
一方、後述する蒸着工程S3におけるレンズ本体40dの温度を安定させるために、レンズ本体40dの温度を、蒸着温度を超える温度に一旦オーバーシートさせてから、ヒーター32の制御を行って降温させ、降温時に蒸着温度となるタイミングで蒸着を行うことも可能である。
このような処理を行う場合には、本工程を、蒸着温度以上に昇温されている間に、脱色が完了するように酸素イオンビームの照射条件と曝露時間を設定することが可能である。
次に、蒸着工程S3を行う。本工程は、酸素イオン曝露工程S2が行われた後の真空槽30内で、レンズ本体40dの表面に光学薄膜41a、41bを蒸着する工程である。
すなわち、酸素イオン曝露工程S2が終了し、レンズ本体40dが蒸着温度になった状態で、シャッター37を開放して、下方に向けられた被成膜面に形成する薄膜層の材料に対応する成膜材料Mを図示略の電子銃で加熱し、成膜材料Mを気化させる。
気化された成膜材料Mは、上方に飛散して、順次被成膜面上に付着して、堆積し、成膜材料Mの薄膜層が形成されていく。
予め決められた層厚の薄膜層が形成されたら、シャッター37を閉じる。
例えば、本工程の開始時にレンズ面40aが下方に向けられていた場合には、光学薄膜41aの層構成に応じた成膜材料Mを気化させて、必要な層数の蒸着を行い、レンズ面40a上に光学薄膜41aの層構成を形成する。
次に、基板保持部材31を反転して、レンズ面40bを下方に向けて、同様にして光学薄膜41bの層構成に対応する蒸着を行う。
このようにして、光学薄膜41a、41bが形成されたら、蒸着工程S3が終了する。
次に、真空槽30を開放して、基板保持部材31を外部に搬出し、光学薄膜41a、41bが成膜されたレンズ本体40dを取り外す。
本実施形態では、酸素イオン曝露工程S2を行ってレンズ本体40dを脱色した後に、酸素イオン曝露工程S2が行われた真空槽30内で、続けて蒸着工程S3を行う。このため、還元反応が進行して金属ビスマスが析出する前に、被成膜面が薄膜層によって被覆されるため、レンズ本体40dの表面が脱色された状態で光学薄膜41a、41bが形成される。
脱色されたレンズ面40a、40bには、光学薄膜41a、41bが密着するため、還元反応が抑制され、金属ビスマスに起因する着色が抑制された状態が保たれる。
このため、良好な光学性能を備えるレンズ40を製造することができる。
本実施形態の光学素子の製造方法および製造装置によれば、レンズ本体40dを酸素イオンO にさらすことにより、光学素材4に含まれる還元されやすい酸化ビスマスの還元生成物である金属ビスマスに起因する着色を除去することができる。
その際、従来技術のように、成形体を高温に加熱して、表面の金属ビスマスを揮発させる必要がなく、レンズ本体40dを高温状態に昇温したり、搬送や蒸着などを行うために降温させたりする工程が不要となるため、レンズ40をより短時間で製造することができる。
また、本実施形態の酸素イオン曝露工程S2を、常温から450℃の幅広い温度範囲で行うことができるため、酸素イオン曝露工程S2の温度条件を、例えば、蒸着工程S3などの次工程で必要な温度範囲に合わせることができる。このため、次工程を行うために必須となる真空槽30の減圧過程やレンズ本体40dの温度調整期間において、これに並行して酸素イオン曝露工程S2を行うことができる点でも、製造時間を短縮して、迅速かつ効率的な生産を行うことができる。
特に、本実施形態の表面処理装置3では、真空槽30内に、酸素イオン曝露工程S2を行うためのイオンガン33、ニュートラライザー34を備え、従来の蒸着工程S3におけるのと同じ保持形態で、酸素イオンO を照射できる。このため、真空槽30からレンズ本体40dを搬出することなく、かつ真空槽30内で配置換えをすることもなく、迅速に蒸着工程S3を開始することができる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の光学素子の製造方法および光学素子の製造装置について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態の光学素子の製造方法の酸素イオン曝露工程に用いる光学素子の製造装置の構成を示す模式的な断面図である。図8は、還元生成物による成形体の透過光量の変化の一例を示す模式的なグラフである。横軸は経過時間、縦軸は光学素子を透過した光量を表す。
本実施形態の光学素子の製造方法は、図2に示すように、成形工程S11、酸素イオン曝露工程S12、および蒸着工程S13を備え、これらの各工程をこの順に行う方法である。
成形工程S11は、上記第1の実施形態の成形工程S1と同様の工程であり、成形装置1を用いて行うことができる。
酸素イオン曝露工程S12は、還元生成物による着色の変化を測定しながらレンズ本体40dを酸素イオンO にさらす点が、上記第1の実施形態の酸素イオン曝露工程S2と異なる。
蒸着工程S13は、上記第1の実施形態の蒸着工程S3と同様の工程である。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
本実施形態における酸素イオン曝露工程S12および蒸着工程S13は、図7に示す本実施形態の表面処理装置50(光学素子の製造装置)を用いて行うことができる。
表面処理装置50は、上記第1の実施形態の表面処理装置3に、投光部51、受光部52、測定制御部53、および表示部54を備える着色測定部55を追加したものである。
投光部51は、還元生成物による着色の変化を測定するための基準となる測定光Lを発生し、レンズ本体40dに照射する装置部分である。
投光部51は、後述する測定制御部53に通信可能に接続され、測定制御部53からの制御信号によって動作が制御されるようになっている。
投光部51によって測定光Lを照射するレンズ本体40dは、連続的または断続的に一定の測定箇所に測定光Lを照射することができれば、特に限定されない。
本実施形態では、投光部51の光軸が基板保持部材31の回転中心軸線Cに整列されている。このため、測定光Lは、基板保持部材31の回転中心軸線C上に配置されたレンズ本体40dに照射されるようになっている。なお、図7は、模式図のため、回転軸31aの図示は省略している。
本実施形態では、基板保持部材31は、回転中心軸線Cに光軸Oが整列する位置に、レンズ本体40dを保持する保持部を有している。このため、投光部51から測定光Lを照射すると、測定光Lは、投光部51に対向する位置に配置されたレンズ本体40dの光軸上に入射し、基板保持部材31の回転中に、同一のレンズ本体40dの同一箇所に測定光Lを連続して照射することができる。
以下では、測定光Lが照射されるレンズ本体40dを被測定体Rと称する場合がある。
測定光Lとしては、金属ビスマスに起因する着色の変化を、レンズ本体40dの透過光量の変化によって検出できれば、特に限定されない。
金属ビスマスによる着色が生じると、透過率が減少する。透過率の変化は、短波長側で大きく変化するため、波長が短い方が検出精度を優れている。
ただし、波長が短すぎると、レンズ本体40d自体の吸収により着色がない場合の透過率自体が低下するため、測定精度が悪化してしまう。
このため、測定光Lの波長は、光学素材4の吸収波長を考慮して、設定することが好ましい。
例えば、レンズ本体40dの材質が、L−BBH1(商品名:(株)オハラ製)からなる場合には、420nm以上500nm以下の波長が好適である。また、レンズ本体40dの材質が、L−BBH2(商品名:(株)オハラ製)からなる場合には、400nm以上500nm以下の波長が好適である。
図7は模式図のため、測定光Lが平行光のように描かれているが、測定光Lは平行光には限定されず、収束光や発散光も可能である。
投光部51に集光位置を調整する集光レンズを設けておき、レンズ本体40dの屈折力に応じて、透過光の集光位置を調整できる構成としてもよい。
受光部52は、レンズ本体40dを透過した測定光Lの光量を測定する装置部分であり、例えば、測定光Lの波長に感度を有するフォトセンサなどの受光素子を含んで構成される。
受光部52の配置位置は、レンズ本体40dの透過光をもれなく受光でき、かつ酸素イオンO 、電子eの照射、および成膜材料Mの飛散の妨げとならない位置であれば、特に限定されない。
本実施形態では、投光部51の光軸が基板保持部材31の回転中心軸線Cに整列されているため、受光部52も基板保持部材31の回転中心軸線C上に配置されている。
受光部52は、レンズ本体40dの透過光を集光する集光レンズを備える構成も可能である。
受光部52は、後述する測定制御部53に通信可能に接続されており、受光量に対応する検出信号は測定制御部53に送信される。
測定制御部53は、投光部51から一定の発光量の測定光Lを出射させ、受光部52から受信した検出信号に基づいて、レンズ本体40dの着色の変化を測定する装置部分であり、投光部51および受光部52と通信可能に接続されている。
また、本実施形態では、測定制御部53は、イオンガンシャッター38、イオンガン33、ニュートラライザー34、シャッター37、および蒸着源36の動作制御を行うため、これらと通信可能に接続されている。
測定制御部53は、受光部52の受光量と検出信号との校正データを内蔵しており、検出信号を受光量に換算することができる。
また、測定制御部53には、受光部52の受光量の変化から、レンズ本体40dの着色が許容限度以下になったかどうかの判定を行う。測定制御部53には、表示部54が接続されており、判定結果は、必要に応じて、表示部54に表示することができる。
測定制御部53がレンズ本体40dの着色が許容限度以下になったと判定すると、測定制御部53は、イオンガン33による酸素イオンビームの照射を終了し、蒸着を開始する動作制御を行う。
測定制御部53の装置構成は、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータからなり、これにより適宜の制御プログラム、演算プログラムを実行することで、上記のような測定制御部53による制御が実現される。
このような構成の表面処理装置50を用いて行う酸素イオン曝露工程S12について、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
本工程では、図7に示すように、必要に応じて洗浄されたレンズ本体40dを上記第1の実施形態と同様にして、基板保持部材31に保持し、表面処理装置50の真空槽30に搬入して、回転軸31aに固定する。
次に、上記第1の実施形態と同様に、真空引き用管路30aから真空引きを行って真空槽30を減圧状態とし、ヒーター32を発熱させて基板保持部材31に保持された各レンズ本体40dを加熱しつつ、回転軸31aを中心として基板保持部材31を回転させる。
測定制御部53は、この状態で、イオンガンシャッター38を開放し、各レンズ本体40dのレンズ面40aに向けて、イオンガン33から酸素イオンビームを照射する。
また、酸素イオンビームの照射と並行して、各レンズ本体40dに向けて、ニュートラライザー34から電子eを照射する。
これにより、上記第1の実施形態と同様に、酸素イオンO が、各レンズ面40aに到達し、各レンズ面40aの表面の金属ビスマスが酸素イオンO に反応して酸化ビスマスとなる。これにより、各レンズ面40aが徐々に脱色されていく。
また、測定制御部53は、このような酸素イオンビームの照射と並行して、投光部51から一定光量の測定光Lを出射させる。この測定光Lは、基板保持部材31の回転中心軸線C上に位置する被測定体Rを透過して、受光部52によって受光される。
受光部52は、受光量に応じた検出信号を測定制御部53に送出する。
測定光Lは、被測定体Rのレンズ面40a、40bにおける金属ビスマスによる着色の程度に応じて、吸収、反射、または散乱されて光量損失が発生するため、被測定体Rの透過後は、より低光量の測定光L’となっている。
レンズ面40aの脱色が進むと、光量損失が低減するため、受光部52の受光量が増大し、レンズ面40aの脱色が完了すると略一定の受光量が得られることになる。
測定制御部53では、受光部52からの検出信号を、投光部51の発光量に対応する検出信号の信号値で割って、透過光量の測定値とする。本実施形態では、測定制御部53は、透過光量の測定値のグラフを表示部54に逐次表示させる。
このような透過光量の測定値(図示では光量)の変化を示すグラフの一例を図8に曲線100として示す。
透過光量の測定値は、例えば、酸素イオンビームの照射開始時に80%であり、酸素イオンビームの照射が進むにつれて増大して、約95%で平衡状態になる、といった変化を示す。
測定制御部53は、透過光量の測定値の変化が予め設定された閾値の範囲内になったとき、被測定体Rのレンズ面40aの脱色が終了したと判断して、基板保持部材31を反転させる制御を行う。
透過光量の測定値の変化の判定は、一定の判定時間幅を設け、この判定時間幅における測定値の最大値と最小値との差が、閾値以下になったかどうかを判定することができる。
ここで、判定に用いる閾値および判定時間幅は、基板保持部材31上の配置位置による脱色時間の相違等を考慮して、基板保持部材31上のすべてのレンズ本体40dが脱色されるように余裕を設けた数値に設定する。
基板保持部材31が反転されると、酸素イオンビームは、レンズ面40bに照射され、レンズ面40bにおける脱色が進む。
測定制御部53は、上記と同様にして、透過光量の測定値の判定を続行し、透過光量の測定値の変化が予め設定された閾値の範囲内になったとき、被測定体Rのレンズ面40bの脱色が終了したと判断し、酸素イオンビームの照射停止制御を行う。すなわち、測定制御部53は、イオンガン33を停止して、イオンガンシャッター38を閉じ、さらにニュートラライザー34を停止する。
以上で、酸素イオン曝露工程S12が終了する。
次に、測定制御部53は、レンズ本体40dが蒸着温度になったら、上記第1の実施形態の蒸着工程S3と同様な蒸着工程S13を開始する。
すなわち、シャッター37を開放して、下方に向けられた被成膜面に形成する薄膜層の材料に対応する成膜材料Mを図示略の電子銃で加熱し、成膜材料Mを気化させ、予め決められた層厚の薄膜層が形成されたら、シャッター37を閉じ、これをレンズ面40a、40bにおいて、光学薄膜41a、41bの層数分だけ繰り返す。
このようにして光学薄膜41a、41bが形成されたら、蒸着工程S13が終了する。
なお、蒸着温度になったかどうかは、例えば、レンズ本体40dの近傍に温度計を配置して、この温度計の測定値に基づいて判定できるようにしてもよいし、予め蒸着温度に達する必要加熱時間を調べておき、この必要加熱時間以上加熱しているかどうかで判定してもよい。
このようにして、蒸着工程S13が終了したら、上記第1の実施形態と同様に、真空槽30を開放して、基板保持部材31を外部に搬出し、光学薄膜41a、41bが成膜されたレンズ本体40dを取り外す。
このようにして、レンズ40が製造される。
本実施形態の光学素子の製造方法および製造装置によれば、上記第1の実施形態と同様にして、レンズ本体40dを酸素イオンO にさらすことにより、光学素材4に含まれる還元されやすい酸化ビスマスの還元生成物である金属ビスマスに起因する着色を除去することができる。
特に本実施形態では、着色測定部55を備える表面処理装置50を用いて酸素イオン曝露工程S12を行うため、着色測定部55によってレンズ本体40dが許容限度内に脱色されるまで、酸素イオン曝露工程S12が行われる。このため、レンズ本体40dが脱色されたことを確認してから、蒸着工程S13を行うことができるため、良好な光学性能を備えるレンズ40をより確実に製造することができる。
なお、上記の各実施形態の説明では、表面処理装置3(50)が蒸着源36を備え、酸素イオン曝露工程S2(S12)と蒸着工程S3(S13)とを同一の装置で行う場合の例で説明したが、酸素イオン供給部を備え蒸着部を有しない光学素子の製造装置を用いて、酸素イオン曝露工程のみを行うことも可能である。この場合には、酸素イオン曝露工程では加熱部が必須ではないため、ヒーター32を削除した構成も可能である。
このような光学素子の製造装置を用いる場合、脱色した成形体をそのまま光学素子として用いることが可能である。
また、他の製造装置を用いて光学薄膜を成膜することも可能である。この場合、成膜を行う製造装置は、蒸着装置には限定されず、真空槽を用いることも必須ではない。例えば、成形体を酸素イオンにさらした後に、スピンコート装置などに湿式の成膜装置を用いて光学薄膜を成膜することが可能である。
上記の各実施形態の説明では、真空槽30の圧力とレンズ本体40dの温度とが、酸素イオン曝露工程が終了するまでに、蒸着工程で必要な蒸着圧力、蒸着温度になるように、真空槽30の減圧およびレンズ本体40dの加熱を行う場合の例で説明した。
ただし、蒸着工程で必要な蒸着圧力、蒸着温度は、蒸着工程の開始時に得られていればよい。
したがって、酸素イオン曝露工程は、真空槽30の圧力とレンズ本体40dの温度とがそれぞれ蒸着圧力、蒸着温度になったときに開始してもよい。
また、酸素イオン曝露工程の終了時には、蒸着工程で必要な蒸着圧力、蒸着温度に近い状態にとどめておき、蒸着工程を開始する前に、真空槽30の圧力とレンズ本体40dの温度とをそれぞれ蒸着圧力、蒸着温度に調整する工程を設けることも可能である。
上記の各実施形態の説明では、酸素イオン供給部がイオンガン33の場合の例で説明したが、酸素イオン供給部は、イオンガンには限定されない。
例えば、プラズマガン、高周波励起を用いた酸素イオン発生装置などを採用することができる。
また、酸素イオン供給部は、イオンガンのように酸素イオンだけを照射するのではなく、酸素イオンを含むプラズマを、成形体の近傍に形成することにより、成形体を酸素イオンにさらす構成も可能である。
上記の各実施形態の説明では、レンズ本体40dのレンズ面40a、40bをそれぞれを酸素イオンにさらして脱色した後、レンズ面40a、40bに光学薄膜41a、41bを成膜する場合の例で説明したが、レンズ面40aに対して、酸素イオン曝露工程、蒸着工程を順次行った後に、レンズ面40bに対して、酸素イオン曝露工程、蒸着工程を順次行うことも可能である。
すなわち、成形工程を行った後、被成膜面ごとに、酸素イオン曝露工程、蒸着工程をこの順に行うことを繰り返して光学素子を製造してもよい。
上記の各実施形態の説明では、着色測定部が、成形体の透過光量の変化により着色の変化を測定する場合の例で説明したが、還元生成物による着色の変化が測定できれば、透過光量の測定とは異なる測定を採用してもよい。
例えば、成形体の反射率を測定したり、透過光や反射光の分光特性を測定したりすることも可能である。
上記の第2の実施形態の説明では、着色測定部の測定結果を酸素イオン曝露工程の終了タイミングの判定のみに用いる場合で説明したが、着色測定部により測定された光量の値や光量の変化量に応じて、酸素イオン供給部の酸素イオンのエネルギーを制御することも可能である。酸素イオンのエネルギーは、イオンガンの場合には加速電圧、高周波励起を用いた酸素イオン供給装置の場合には真空槽30と基板保持部材31との電位差により調整できる。
例えば、着色測定部による着色の変化が少ない場合には、酸素イオンのエネルギーを増加することにより、脱色を促進し、製造時間を低減することが可能である。
上記の第2の実施形態の説明では、透過光量の測定値の収束を透過光量の測定値の変化幅を閾値と比較することで判定する場合の例で説明したが、透過光量の測定値の変化率をから判定することも可能である。
脱色が進行すると、透過光量の測定値は、一定値に近づくが、図8に示すように、測定ノイズの影響によって短周期で変動する。そこで、測定値の変化がこのような変動になったら、着色の変化がなくなったものと判定する。
このような判定を行うには、例えば、測定制御部53が測定値の変化率を測定し、変化率の正負が反転した時点で、着色の変化がなくなったと判定する。例えば、図8の点aまでは変化率は正であるが、点bでは変化率が負に転じている。このため、点bのように、変化率が最初に負に転じた時点で着色の変化がなくなったと判定することが可能である。
また、より高精度に判定するために、変化率の正負の交替が2回以上の所定回数だけ検知された時点で、着色の変化がなくなったと判定することも可能である。
上記の各実施形態の説明では、光学素材に含まれる還元されやすい成分がビスマスの酸化物成分の場合の例で説明したが、還元されやすい酸化物成分としては、例えば、テルル(Te)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、およびフッ素(F)のうちいずれかの酸化物成分であってもよい。
また、このような還元されやすい酸化物成分は、光学素材に1種類以上含有することが可能である。
上記の各実施形態の説明では、成形装置1が、成形室チャンバー17のシャッター18a、18bを開閉して、外部との間で、直接的に、光学素子用成形型20を搬入、搬出する構成の場合の例で説明したが、成形室チャンバー17の開口部17a、17bの少なくとも一方に隣接して、不活性ガス置換室を設けることも可能である。
不活性ガス置換室は、光学素子用成形型20を搬入して不活性ガス置換する状態と、不活性ガス置換室に設けられたシャッターを開放して大気開放する状態とが切り替え可能としておく。これにより、光学素子用成形型20を成形室チャンバー17に搬入する際、あるいは、光学素子用成形型20を成形室チャンバー17から搬出する際に、成形室チャンバー17の雰囲気に影響を与えることなく、光学素子用成形型20の搬入や搬出を行うことが可能になる。
上記に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
[実施例1]
次に、上記第1の実施形態の実施例1について、比較例とともに説明する。
本実施例では、光学素材4の材質として、ビスマス系硝材の一例であるL−BBH2(商品名:(株)オハラ製)を用いて、成形装置1により成形工程S1を行って、レンズ本体40dを製造した。
次に、表面処理装置3によって、レンズ本体40dを酸素イオンにさらす酸素イオン曝露工程S2を行った後、レンズ面40a、40bに光学薄膜41a、41bを蒸着する蒸着工程S3を行った。これにより、レンズ40を製造した。
ここで、酸素イオン曝露工程S2では、イオンガン33に酸素60sccm、アルゴン10sccmの混合ガスを導入して、酸素イオン加速電圧が1000V、酸素イオンの照射イオン電流が1200mAの条件で酸素イオンビームを15分間照射した。
イオンガン33と基板保持部材31上のレンズ本体40dとの間の距離は1000mmとした。このため、基板保持部材31上での酸素イオンのイオン電流密度は、約100μA/cmであった。
本工程において、真空槽30の圧力は、イオンガン33の起動時から酸素イオンビーム照射終了時までの間に、1.2×10−3Paから蒸着圧力である7.0×10−4Paまで減圧した。
また、レンズ本体40dの温度は、280℃から蒸着温度である300℃まで昇温された。
蒸着工程S3では、真空槽30の圧力を7.0×10−4Paに保つとともに、レンズ本体40dの温度を300℃に保って、光学薄膜41a、41bの成膜を行った。
光学薄膜41a、41bは、物理膜厚が100nmのフッ素化マグネシウム単層で構成される反射防止膜である。
[比較例]
比較例では、上記実施例の酸素イオン曝露工程S2において、イオンガンシャッター38を閉じた点以外は、上記実施例と同様にしてレンズ40を製造した。
すなわち、本比較例は、レンズ本体40dを酸素イオンにさらすことなく、光学薄膜41a、41bを成膜した場合の例になっている。
[評価]
評価は、波長420nmの光に対する透過率測定、および研磨したガラス素材との目視による着色の比較によって行った。透過率は、(株)日立ハイテクノロジー社製の分光光度計U−4000によって測定した。
実施例1のレンズ40は、透過率が80.9%となった。研磨したガラス素材に同じ反射防止膜を成膜した場合の透過率は約84%になるため、酸素イオンによって、プレス成形による着色の影響が小さい光学特性のレンズが得られたといえる。また、目視観察では、研磨したガラス素材との差は見られず、外観品質にも問題がなかった。
比較例のレンズ40は、透過率が68.8%となり、プレス成形による着色の影響が明らかに見られた。また、目視観察によっても、強い着色が確認され、外観品質が許容限度を超えてしまった。
実施例1と比較例との相違は、酸素イオン曝露工程S2の有無のみであるため、実施例が良好な結果となったのは、酸素イオン曝露工程S2によって還元生成物である金属ビスマスが除去されたため、これに起因する着色が抑制されたためであると考えられる。
1 成形装置
3、50 表面処理装置(光学素子の製造装置)
4 光学素材
20 光学素子用成形型
30 真空槽
30a 真空引き用管路
31 基板保持部材
32 ヒーター(加熱部)
33 イオンガン(酸素イオン供給部)
34 ニュートラライザー
36 蒸着源(蒸着部)
37 シャッター
38 イオンガンシャッター
40 レンズ(光学素子)
40a、40b レンズ面(成形体の表面)
40d レンズ本体(成形体)
41a、41b 光学薄膜(薄膜)
51 投光部
52 受光部
53 測定制御部
54 表示部
55 着色測定部
C 回転中心軸線
L、L’ 測定光
M 成膜材料
O 光軸
R 被測定体
S1、S11 成形工程
S2、S12 酸素イオン曝露工程
S3、S13 蒸着工程

Claims (11)

  1. 加熱により還元されやすい酸化物成分を含有する光学素材を用いた光学素子の製造方法であって、
    前記光学素材をプレス成形して、光学素子の形状を有する成形体を形成する成形工程と、
    前記成形体を真空槽に配置して該真空槽を減圧し、前記成形体を酸素イオンにさらすことにより、前記成形体における前記酸化物成分の還元生成物を除去する酸素イオン曝露工程と、
    を備える、光学素子の製造方法。
  2. 前記酸素イオン曝露工程では、
    前記成形体を加熱した状態で、前記酸素イオンにさらす
    ことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記酸素イオン曝露工程では、
    前記還元生成物による着色の変化を測定しながら前記成形体を前記酸素イオンにさらす
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記酸素イオン曝露工程が行われた後の前記真空槽内で、前記成形体の表面に薄膜を蒸着する蒸着工程を備える
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記酸素イオン曝露工程では、
    イオンガンによって前記酸素イオンを前記成形体に照射する
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
  6. 前記光学素材は、
    酸化ビスマスを含む
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
  7. 加熱により還元されやすい酸化物成分を含有する光学素材を用いた光学素子の製造装置であって、
    前記光学素材をプレス成形して光学素子の形状が形成された成形体を配置する真空槽と、
    該真空槽に配置された前記成形体を酸素イオンにさらして前記成形体における前記酸化物成分の還元生成物を除去するため、前記成形体の周囲に酸素イオンを供給する酸素イオン供給部と、
    を備える、光学素子の製造装置。
  8. 前記真空槽内に配置された前記成形体を加熱する加熱部を備える。
    ことを特徴とする、請求項7に記載の光学素子の製造装置。
  9. 前記酸素イオン供給部によって前記酸素イオンにさらされる前記成形体の前記還元生成物による着色の変化を測定する着色測定部を備える
    ことを特徴とする、請求項7または8に記載の光学素子の製造装置。
  10. 前記真空槽内で、前記成形体の表面に薄膜を蒸着する蒸着部を備える
    ことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の光学素子の製造装置。
  11. 前記酸素イオン供給部は、
    前記酸素イオンを前記成形体に照射するイオンガンを備える
    ことを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の光学素子の製造装置。
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