JP2015077369A - 血液中β−アミロイド除去システム - Google Patents

血液中β−アミロイド除去システム Download PDF

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Abstract

【課題】血液中β−アミロイドを効率的に除去できるシステムを提供する。【解決手段】血液の注入口と排出口を備えるハウジングと、前記注入口からの血液が中空糸内腔に流入するように前記ハウジング内に収容される中空糸膜と、血液を体外に脱血し前記注入口に連結する血液回路と、流入したのちに中空糸内腔から中空糸外へ濾過された血液と、流入したのちに中空糸内腔を通過した血液とを混合する血液回路と、混合された血液を返血するための血液回路と、を備え、血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させて、β−アミロイドを中空糸で除去する構成とする。【選択図】図1

Description

本発明は、血液中β−アミロイド除去システムに関する。
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)は脳内の神経細胞が変性することにより認知症になっていくと考えられている疾患である。その発症機構については、β−アミロイド(以下、「Aβ」と略称する場合がある。)が脳に蓄積することを発端とする「アミロイド仮説」が最も有力であり、可溶性Aβが記憶の長期増強を強く阻害することが知られている。
Aβに対する抗体である抗Aβ抗体の投与やAβワクチンの投与により、認知症症状の改善とともに脳のAβ沈着が消失することが報告され(非特許文献1)、アミロイド仮説に基づいて、アルツハイマー病を治療できる可能性が示唆されている。
また、アルツハイマー病のモデルマウスを用いた実験により、脳内Aβが減少する際に血液中Aβ量が有意に増加すること(非特許文献2)、免疫賦活機能を有さないAβ結合物質(GelsolinやGM1ガングリオシド)の末梢投与により脳内Aβ量が減少すること(非特許文献3、4)、免疫賦活機能を持たない抗Aβ抗体Fab断片を血液中に投与すると脳内Aβ量が減少すること(非特許文献5)などが示され、血液中Aβ量の減少に伴い脳内Aβが血液中に引き抜かれるという「引き抜き」仮説が提唱されている。また、この仮説に関連し、人工透析によって血液中Aβ量が低下するとの報告がなされている(非特許文献6、7)。
Aβには40アミノ酸のAβ1-40、42アミノ酸のAβ1-42をメインとして、38アミノ酸のAβ1-38、43アミノ酸のAβ1-43などが存在することが知られている。中でも、Aβ1-42は凝集能が強く、神経毒性が強いと考えられている。
また、Aβモノマーよりも、Aβオリゴマが神経毒性の主体であることが報告されている(非特許文献8)。Aβモノマー、Aβオリゴマ、可溶性プロトフィブリルの間には平衡が存在し、さらに凝集が進むと、線維状Aβとして沈着する。
また、特許文献1には、中空糸表面へAβが吸着除去されることを利用したβ−アミロイド除去システムが開示されている。
特開2012−16595号公報
Bayer, A. et al., Neurology, 2005, 64, 94−101 Lemere, C. A. et al., Nuerobiol. Dis., 2003, 14, 10−18 Matsuoka, Y. et al., J. Neurosci., 2003, 23, 29−33 Bergamaschini, L. et al., J. Neurosci., 2004, 24, 4148−4186 Levites, Y. et al., J. Neurosci., 2006, 26, 11923−11928 京都医学界雑誌,第53巻,第1号,平成18年6月,113−120頁 Isabel, R. et al., Journal of Alzheimer's Disease, 2006, 10, 439−443 Walsh,DM. et al., Nature, 2002;416:535−9
本発明者らは、「引き抜き」仮説に鑑みて、アルツハイマー病患者の血液中Aβを効率的に除去することが、脳内Aβの蓄積を減少させアルツハイマー病の治療又は予防に有効な手段になると考えた。
そこで、本発明においては、血液中Aβを効率的に除去できるシステムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、Aβオリゴマが中空糸膜による吸着除去では、十分に除去できないことを発見した。しかしながら、Aβオリゴマは、中空糸壁を横断して血液を通過させて、中空糸の膜厚方向への濾過を行うことによって除去できることを見出し、また、膜厚方向への濾過を行うことにより、Aβモノマーも安定に除去することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の血液中のβ−アミロイド濃度を低下させるシステムを提供する。
[1]
血液の注入口と排出口を備えるハウジングと、
前記注入口からの血液が中空糸内腔に流入するように前記ハウジング内に収容される中空糸膜と、
血液を体外に脱血し前記注入口に連結する血液回路と、
流入したのちに中空糸内腔から中空糸外へ濾過された血液と、流入したのちに中空糸内腔を通過した血液とを混合する血液回路と、
混合された血液を返血するための血液回路と、を備え、
血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させて、β−アミロイドを中空糸で除去する、血液中β−アミロイド除去システム。
[2]
前記ハウジングが、濾過された血液の排出口と、通過した血液の排出口を備える、[1]に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[3]
血液の一部を中空糸壁を横断して通過させる血液ポンプをさらに備える、[1]又は[2]に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[4]
流入させる血液流量(QB)と血液濾過量(QF)を制御する一の血液ポンプを備える、[3]に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[5]
流入させる血液流量(QB)を制御する血液ポンプと、血液濾過量(QF)を制御する血液ポンプを備える、[3]に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[6]
血液濾過量(QF)を制御する圧損構造をさらに備える、[1]〜[5]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[7]
前記圧損構造が、オリフィスである、[6]に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[8]
流入させる血液流量(QB)が、20〜200mL/minである、[1]〜[7]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[9]
(流入させる血液流量)/(血液濾過量)(QB/QF)比が、2〜100である、[1]〜[8]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[10]
中空糸膜が収容されたハウジングが、血液透析用カラムである、[1]〜[9]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[11]
中空糸が、ポリスルホン(PSf)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマアロイ(PEPA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルローストリアセテート(CTA)、改質セルロース(BEM)、及びエチレンビニルアルコール共重合体(EVAL)からなる群から選択される少なくとも1つの高分子を含有する、[1]〜[10]いずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[12]
中空糸が、ポリスルホン(PSf)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマアロイ(PEPA)、ポリエーテルスルホン(PES)からなる群から選択される少なくとも1つの高分子を含有する、[1]〜[11]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システム。
[13]
中空糸が、ポリビニルピロリドンをさらに含有する、[11]又は[12]に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
また、本発明は、以下の血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法、また、以下のアルツハイマー病を治療又は予防する方法を提供する。
[14]
血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法であって、
血液を体外に脱血する工程
脱血した血液を、中空糸内腔に通液する工程
通液した血液を体内に返血する工程、を含有し
血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させて、β−アミロイドを中空糸で除去する、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法。
[15]
流入させる血液の流量(QB)が20〜200mL/minである、[14]に記載の方法。
[16]
流入させる血液の流量(QB)が40〜60mL/minである、[14]又は[15]に記載の方法。
[17]
(流入させる血液流量)/(血液濾過量)(QB/QF)比が、2〜100である、[14]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]
(流入させる血液流量)/(血液濾過量)(QB/QF)比が、5〜10である、[14]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
[1]〜[13]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システムを用いる、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法。
[20]
[1]〜[13]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システムを用いる、[14]〜[19]のいずれかに記載の血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法。
[21]
血液中のβ−アミロイド濃度を低下させることにより、アルツハイマー病を治療又は予防する方法であって、
患者の血液を体外に脱血する工程、
脱血した血液を、中空糸に通液する工程、
通液した血液を該患者の体内に返血する工程、を含有し、
血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させて、β−アミロイドを中空糸で除去する、方法。
[22]
流入させる血液の流量(QB)が20〜200mL/minである、[21]に記載の方法。
[23]
流入させる血液の流量(QB)が40〜60mL/minである、[21]又は[22]に記載の方法。
[24]
(流入させる血液流量)/(血液濾過量)(QB/QF)比が、2〜100である、[21]〜[23]のいずれかに記載の方法。
[25]
(流入させる血液流量)/(血液濾過量)(QB/QF)比が、5〜10である、[21]〜[24]のいずれかに記載の方法。
[26]
[1]〜[13]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システムを用いる、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させることにより、アルツハイマー病を治療又は予防する方法。
[27]
[1]〜[13]のいずれかに記載の血液中β−アミロイド除去システムを用いる、[14]〜[20]のいずれかに記載の血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法により、アルツハイマー病を治療又は予防する方法。
本発明によれば、血液中Aβを効率的に除去できるシステムを提供することができる。
本実施形態における血液中Aβ除去システムの概略図を示す。 実施例1の製品ダイアライザーを用いた回路の概略図を示す。 実施例1におけるプール液中Aβ1-40除去率の結果を示す。 実施例1における循環開始15分後のプール液中Aβ1-40除去率とQFとの関係を示す。 実施例2のミニモジュールを用いた回路の概略図を示す。 実施例2におけるプール液中の高分子量Aβ1-42オリゴマ、低分子量Aβ1-42オリゴマ、Aβ1-42モノマーの経時的除去のWestern Blotの結果を示す。 実施例3の製品ダイアライザーを用いた回路の概略図を示す。 実施例3におけるプール液中Aβ1-42除去率の結果を示す。 実施例4におけるプール液中Aβ1-42オリゴマ除去率の結果を示す。 実施例4におけるWestern Blotの結果を示す。 参考例1におけるAβ1-42モノマーの除去率の結果を示す。 参考例1におけるAβ1-42オリゴマの除去率の結果を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について以下詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の血液中β−アミロイド除去システムは、
血液の注入口と排出口を備えるハウジングと、
前記注入口からの血液が中空糸内腔に流入するように前記ハウジング内に収容される中空糸膜と、
血液を体外に脱血し前記注入口に連結する血液回路と、
流入したのちに中空糸内腔から中空糸外へ濾過された血液と、流入したのちに中空糸内腔を通過した血液とを混合する血液回路と、
混合された血液を返血するための血液回路と、を備え、
血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させて、β−アミロイドを中空糸で除去する、血液中β−アミロイド除去システムである。
本実施形態においては、血液の一部を中空糸膜の膜厚方向に誘導することにより、Aβモノマーが、中空糸内腔表面又は中空糸外表面だけでなく膜厚方向の表面にも吸着され、血液中Aβモノマー濃度が低下する。また、中空糸内腔から中空糸外へ血液の一部を横断させて、血液を濾過することで、中空糸壁表面でAβオリゴマが濾過除去されるためAβオリゴマ濃度が低下すると考えられる。
本実施形態においては、血液中のAβモノマー及びAβオリゴマを効率よく除去することができるため、患者の血液中Aβを効率的に除去できる。それにより、患者において、脳内Aβの蓄積を減少させアルツハイマー病の治療又は予防に有効な手段になると考えられる。
本実施形態において、患者とは、特に限定されず、アルツハイマー病を発症している患者であってもよく、アルツハイマー病を発症する前の患者であってもよい。
本実施形態においては、中空糸を横断的に膜厚方向に血液を通液することにより、中空糸膜表面(中空糸内腔表面及び中空糸外表面を含む)及び中空糸膜壁内の細孔での濾過により、Aβモノマーや、低分子量Aβオリゴマと平衡関係にある高分子量Aβオリゴマ及びAβプロトフィブリルの除去も同時に行うことができる。
本実施形態において、血液の一部を中空糸膜の膜厚方向に誘導することにより、Aβモノマーが、中空糸内腔表面だけでなく膜厚方向の表面にも吸着され、血液中Aβモノマー濃度が低下する。また、中空糸内腔から中空糸外へ血液の一部を濾過させることで、中空糸内腔表面又は中空糸膜壁内でAβオリゴマが濾過除去されるためAβオリゴマ濃度が低下すると考えられる。
そして、中空糸内腔を通過した血液と、中空糸内腔から中空糸外側に出てきた血液とを混合して返血用の血液とすることにより、血液中Aβモノマー及び血液中Aβオリゴマを同時に効率的に、すなわち、血液中Aβを効率的に除去することができる。
本実施形態における血液中Aβ除去システムの概略図を図1に示す。図1においては、血液は中空糸内腔を通液され、中空糸内腔表面及び中空糸の厚み部分(中空糸膜の内表面と外表面の間の多孔質部分)にAβが吸着される。また、中空糸内腔から中空糸外へと血液が通過する際に、血液が濾過され、血液中に含まれるAβが除去される。主として、Aβオリゴマは、中空糸壁で濾過されることにより除去され、Aβモノマーは、中空糸内腔表面及び中空糸壁面表面の細孔に主として吸着して除去されると考えられる。
濾過された血液においては、AβモノマーとAβオリゴマが除去されており、中空糸内腔を通液された血液においては、Aβモノマーが除去されており、濾過された血液と中空糸内腔を通液された血液を混合することで、Aβが除去されると考えられる。Aβが除去された混合血液は、血液回路より返血される。
本実施形態で用いられる中空糸膜は、血液を通液、濾過することができる中空糸膜であれば、特に限定されるものではないが、例えば、人工透析、血液濾過、及び血漿分離などにおいて用いられる中空糸膜が挙げられ、市販の中空糸膜を用いてもよい。
中空糸膜としては、例えば、セルロースアセテート、改質セルロース、銅アンモニアセルロース等のセルロース系中空糸膜や、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマーアロイ、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルスルホン、エチレンビニルアルコール共重合体等の合成高分子系中空糸膜などが挙げられる。中でも、静電的結合及び/又は疎水結合を利用しているため、疎水性の高分子を用いることが好適であり、ポリスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマーアロイ、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリルなどの高分子から形成される中空糸膜が好ましい。
中空糸膜の材料としては、血液適合性を含めて、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリハイドロキシエチルメタクリレートなどをさらに含有していることが好ましく、ポリスルホンとポリビニルピロリドンからなる高分子混合物から製造される中空糸膜が挙げられる。
また、上記ポリビニルピロリドンなどは、ポリスルホンなどの高分子と、混合して紡糸してもよいが、ポリスルホンなどの高分子を用いて紡糸して得られる中空糸膜にコーティングするために用いてもよい。
本実施形態において用いられる中空糸膜は、公知の方法により製造することができるが、中空糸膜の太さは、好ましくは、0.01〜1mmである。
本実施形態において、中空糸膜は、通液される血液を中空糸内腔から中空糸外へ濾過することができれば、ハウジング内での形状は特に限定されるものではないが、中空糸膜は、ハウジング内に収納された中空糸膜型モジュールとして用いることができる。
中空糸膜がハウジング内に備えられている形態としては、中空糸膜カラム様の中空糸膜型モジュールとして、筒型のハウジング内に多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束として収納されていてもよい。
この場合、中空糸膜束の両端が、ポリウレタン等の樹脂組成物を充填して形成する封止部としての樹脂層部により接着固定(シール)されていてもよい。
本実施形態においては、ハウジングには、ハウジング内に血液を通液させ、排出させるための、血液の注入口と、排出口を供えている。ハウジングの排出口を出た後に血液は混合されてもよく、混合された血液がハウジングの排出口から出てもよい。
このような中空糸膜を備えるモジュールとしては、いわゆるダイアライザーとして用いられるモジュール(透析カラム)や、特開2005−52716号、国際公開第2006/024902号、国際公開第2004/094047号などに記載されているモジュールが挙げられ、本実施形態における中空糸膜が収容されたハウジングとして好適に用いることができる。ハウジングとしては、血液透析用カラムを用いてもよく、市販の血液透析用カラムを用いてもよい。
本実施形態において、脱血するための血液回路から送液されてくる血液は、中空糸膜の中空糸内腔に通液されるが、中空糸内腔へ流入させる血液流量(QB)が、好ましくは20〜200mL/minであり、より好ましくは30〜70mL/minであり、さらに好ましくは、40〜60mL/minである。
また、本実施形態において、脱血するための血液回路から送液されてくる血液は、中空糸膜の中空糸内腔に通液され、血液の一部が中空糸内腔から中空糸外へ通液されるが、(中空糸内腔へ流入させる血液流量)/(中空糸内腔から中空糸外への血液濾過量)(QB/QF)比が、好ましくは2〜100であり、より好ましくは3〜50であり、さらに好ましくは5〜10である。
本実施形態においては、Aβ除去率、及び、単位時間当たりの血液処理量を勘案して、実際のモジュールを設計すればよい。
斯かる血液の流速を維持するデバイスとして、血液ポンプが血液中Aβ除去システムに備えられていてもよい。
血液ポンプは、中空糸膜に血液を連続的に供給することができれば特に限定されないが、例えば、血液浄化装置用のポンプや人工透析用のポンプ、ペリスタポンプ(ローラーポンプ)などが挙げられる。
また、通常、血液は、中心膜型モジュール等に通液される場合、血液凝固を防ぐために、血液中に抗凝固剤を含有させて通液させるため、抗凝固剤を血液と混合するチャンバーが設けられていてもよい。
さらに、通液される血液の圧力を測定するための、圧モニターや、返血される血液中の気泡を確認するためのモニターが設けられていてもよく、血液をサンプリングできるようになっていてもよい。
かかる血液ポンプにより、血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ血液を通過させることが好ましく、一つの血液ポンプにより、中空糸内腔へ流入させる血液流量(QB)と中空糸内腔から中空糸外への血液濾過量(QF)を制御してもよく、中空糸内腔へ流入させる血液流量(QB)を制御する血液ポンプと、中空糸内腔から中空糸外への血液濾過量(QF)を制御する血液ポンプを別々に備えていてもよい。
一の血液ポンプにより、血液処理量を適宜調整することにより、送液される圧力等を調整して、血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ血液を通過させることができる。血液ポンプは、注入口側に設けられていてもよく、排出口側に設けられていてもよい。
本実施形態の血液中Aβ除去システムにおいては、補液を供給する補液ポンプや、補液を貯蔵する補液タンクなどが設けられていてもよい。
本実施形態の血液中Aβ除去システムにおいては、β−アミロイドを、中空糸膜表面及び膜厚部に吸着及び濾過させて除去するため、β−アミロイドの除去率を上げるためにも、血液を中空糸内腔、中空糸外、膜厚内部へ効率よく接触させるために、部分的であっても逆ろ過を防止することが好ましい。
ダイアライザー型の中空糸膜を用いた場合においては、透析液側の圧力を低く設定することにより、逆ろ過を防止することができるので、透析液側の流量が、特に限定されるものではないが、100mL/min以下であることが好ましい。
このような逆ろ過を防止する方法としては、中空糸の充填率を、血液透析用のダイアライザーより低くすることや、有効中空糸部分の容器の長さLと直径Dの比L/Dを、血液透析用のダイアライザーより低くする、つまり太短くすることが挙げられる。
本実施形態の血液中Aβ除去システムにおいては、血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ通過させることで中空糸により濾過した血液と、中空糸内腔を通過した血液とを混合する血液回路と、を備える。
かかる血液回路において、血液ポンプが備えられていてもよく、中空糸内腔へ流入させる血液流量(QB)を制御する圧損構造を備えていてもよい。また、中空糸外へ流入させる血液流量を制御する圧損構造を備えていてもよい。
中空糸内腔へ流入された血液の一部が中空糸内腔から中空糸外へ通過することのできる圧損構造であれば、特に限定されるものではないが、例えば、オリフィスを備える血液中Aβ除去システムとしてもよい。
また、本実施形態において、中空糸の細孔を制御して濾過圧を発生させて、血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ通過させることもできる。
本実施形態における中空糸の細孔は、アルブミンをほとんど通過させない程度の小ささを有することが好ましい。
また、膜内外の圧力差(TMP)を制御することによって、血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ通過させることもできる。
本実施形態においては、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法を実施することができる。
本実施形態の血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法は、
血液を体外に脱血する工程
脱血した血液を、中空糸内腔に通液する工程
通液した血液を体内に返血する工程、を含有し、
血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させて、β−アミロイドを除去する、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法である。
本実施形態において、血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させるには、本実施形態の血液中Aβ除去システムを用いることが好ましい。
血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法は、血液を体外に脱血し、脱血した血液を中空糸膜に通液し、通液した血液を体内に返血する体外循環を行うことにより実施することができる。
かかる一連の工程は、いわゆる人工透析や血液ろ過などの血液浄化技術に類似する方法として実施することができるが、一例を挙げれば、患者の血液を体外循環させるべく可撓性チューブから成る血液回路が使用される。
体外循環を行うための血液回路は、一般に、患者から血液を採取する動脈側穿刺針が先端に取り付けられた動脈側血液回路と、患者に血液を戻す静脈側穿刺針が先端に取り付けられた静脈側血液回路と、動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に中空糸膜とを備える。
動脈側血液回路、中空糸膜、及び静脈側血液回路は、可撓性チューブで連結されており、患者から脱血された血液は、可撓性チューブ内を通液され、中空糸膜と接触させられる。
すなわち、血液は、動脈側血液回路より、患者体内より体外へ脱血されて、血液回路内に導入され、血液回路内の可撓性チューブを通り、中空糸膜へ通液される。
中空糸膜へ通液された血液中のβ−アミロイドは中空糸膜と接することにより、β−アミロイドが中空糸膜に吸着・濾過され、中空糸膜を通液後の血液中のβ−アミロイド濃度が低下する。本実施形態においては、Aβモノマーのみならず、低分子量Aβオリゴマ、高分子量Aβオリゴマ及びAβプロトフィブリルなども効率よく除去することができるため、血液中のβ−アミロイドを効率よく除去することができる。それにより、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法として提供される。
中空糸膜より通液されて出てきた血液は、血液中β−アミロイド濃度が低下した血液として、静脈側血液回路より、患者体外から体内へ返血される。
本実施形態の血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法は、患者に、好適には、アルツハイマー病患者に適用されることにより、アルツハイマー病患者における血液中のβ−アミロイド濃度を低下させることができる。また、アルツハイマー病の予備軍ともいうべき、アルツハイマー病には罹患していないものの、血液中Aβ濃度が通常より高い患者や、アルツハイマー病の症状は発症していないものの病理学的にはアルツハイマー病患者と分類することができるような患者において、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させてもよい。
アルツハイマー病患者としては、体外循環を行うことができる患者であれば、特に限定されるものではない。また、本実施形態の血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法は、アルツハイマー病を未発症の患者に適用することにより、アルツハイマー病の発症を予防する方法として用いることもできる。
本実施形態において、β−アミロイドは中空糸膜に吸着・濾過されることにより、血液中のβ−アミロイド濃度が低下するが、「β−アミロイドが中空糸膜に吸着される」とは、中空糸膜表面と、β−アミロイドが静電的結合及び/又は疎水結合している状態をいう。また、「β−アミロイドが中空糸膜に濾過される」とは、膜厚の細孔に、β−アミロイドが物理的に捕捉されている状態をいう。捕捉されたβ−アミロイドも、中空糸膜表面に静電的結合及び/又は疎水結合していてもよい。
本実施形態において、中空糸膜に患者の血液を通液することにより、β−アミロイドは、血液中の形態としてのβ−アミロイド−アルブミン複合体から解離し中空糸膜に吸着するが、複合体の一方のアルブミンは、血液中に遊離して存在する。
本実施形態の血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる方法は、好ましくは、血液中には、アルブミンと結合したβ−アミロイド−アルブミン複合体を含有し、前記方法は、血液を体外に脱血する工程、脱液した血液を少なくとも入口と出口を有するハウジングに、透析用中空糸膜を有する中空糸膜に通液する工程、通液した血液を体内に返血する工程、を含有し、体外の血液の流速は、中空糸内腔へ流入させる血液量として20〜200mL/minであって、前記通液する工程は、β−アミロイド−アルブミン複合体から、β−アミロイドを中空糸膜に吸着させて、アルブミンを遊離させることにより、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる、血液中のβアミロイドを低下させる方法として実施してもよい。
本実施形態においては、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させることにより、アルツハイマー病の治療又は予防する方法を提供することもできる。アルツハイマー病の治療又は予防する方法において、本実施形態における血液中Aβ除去システムを用いてもよい。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例及び参考例において、Aβとしては、和光純薬工業社製のヒトAβ1-40又はヒトAβ1-42の、塩酸塩を用いた。Aβ1-40又はAβ1-42は、100μg/mLのAβを純水又はジメチルスルホキシド(DMSO)溶液として冷凍保存し、保存液を使用直前に解凍して用いた。
<実施例1>製品ダイアライザーを用いたプール液中のAβ1-40除去
ポリスルホン(PSf)製ダイアライザー(APS13EA 旭化成メディカル社、V型)と血液透析用回路(日機装社)を用いて回路を図2の如く組み立てた。
血液側及び濾過ポンプにはCole Parmer instrument社製MASTER FLEX (7518−10)を用い、QF=1mL/minの場合のみ、濾過ポンプとしてATTO社製PERISTAポンプ(SJ−1211)を用いた。
カルシウム不含リン酸緩衝食塩水(PBS)(和光純薬工業社、pH7.2)500mLを流速200mL/minでダイアライザー中空糸内腔をプライミングし、5mg/mLに調整したウシ血清アルブミン(BSA)(和光純薬工業社・グロブリン不含生化学用)のPBS溶液200mLを流速50mL/minにて30分間循環させた。この後、4ng/mL Aβ1-40及び5mg/mL BSAのPBS溶液200mLを流速50mL/minでダイアライザーを通過させた。
4ng/mL Aβ1-40及び5mg/mL BSAのPBS溶液250mLをプール液(人体に相当)とし、QB=50mL/min、QF=1,5,15,25mL/minにてそれぞれ循環させた。プール液を5,15,30,60分後に採取した。採取したサンプル中のAβ1-40濃度はHuman βAmyloid(1−40) ELISA Kit,High−Sensitive(和光純薬工業社)を用いたELISAにて測定し、X分間循環後におけるプール液中Aβ1-40除去率を次式により算出した。
プール液中Aβ1-40除去率(X分)=100×{1−(X分間循環後のプール液中Aβ1-40濃度/循環開始時のプール液中Aβ1-40濃度)}
結果を図3に示す。QB=50mL/minの場合、QF=1mL/minというQBに比して少量で濾過を行っても、QF=0mL/minに比べて、Aβ1-40の除去が速く効率的に行える。つまり、濾過速度(QF)が全くない場合よりも濾過を生じさせれば、中空糸内腔を流れていくAβ1-40溶液は中空糸外側への流路を得るので、中空糸内腔から中空糸外へ移行する間に中空糸壁部分でAβ1-40が吸着濾過されると推察された。
循環開始15分後のプール液中Aβ1-40除去率を縦軸に、QFを横軸にとったグラフ(図4)から、QBが50mL/minにおいて、QFが1mL/min以上でプール液中のAβ1-40除去率が向上し、QFが5mL/min以上あれば安定して高いAβ1-40除去率が得られることがわかる。図4において、QF=0mL/minとQF=5mL/minとの除去率には有意差がある(p=0.031)。また、QF=0mL/minとQF=25mL/minとの除去率には有意差がある(p=0.037)。
<実施例2>ミニモジュールを用いたプール液中のAβ1-42除去
ポリスルホン(PSf)製ダイアライザー(APS−SA 旭化成メディカル社、IV型)の中空糸80本を取り出し、有効長80mmになるようウレタンで封入したダイアライザー型のミニモジュール(膜表面積0.0037m2)を作成した。
内径1mmのシリコンチューブを用いて、ミニモジュールの中空糸内腔を通過した液と、中空糸壁で濾過された濾液が、いずれもプール液に戻るように回路を図5の如く組み立てた。プール液と濾液を30分,1,2,18,24時間後に採取した。
Atto社製PERISTAポンプ(SJ−1211L)2台を用いて、QBを9mL/hr(製品ダイアライザーの大きさに換算するとQB=50mL/minに相当)、QFを1.8mL/hr(製品ダイアライザーの大きさに換算するとQF=10mL/minに相当)となるよう流量を調整した。
50μg/mL Aβ1-42及び2.5mg/mL BSAのPBS溶液をプール液として調整することにより、Aβ1-42オリゴマを作成した。
Western BlotでAβ1-42オリゴマを確認するため、Western Blotの感度を考慮して、通常の血液中の100万倍も濃いAβ1-42濃度で実験を行った。
Aβ1-42オリゴマ除去の検討は、MES SDS Running BufferとNuPAGER Novex 4−12% Bis−Tris Gel(Invitrogen社)を用いた還元条件下のSDS−PAGE(電気泳動)を行った後、PVDF(polyvinylidene difluoride, Atto社)膜に転写し、Aβ1-16に対するモノクローナル抗体6E10(Covance社 1:2000)を一次抗体とし、二次抗体としては、抗マウスIgG−HRP(Rockland社 ヒト、ウシ等の蛋白でpre−absorbed)を1:5000で用い、化学発光はECL−Prime(GEヘルスケア社)を用いて、Western Blotで行った。
結果を図6に示す。プール液中の高分子量Aβ1-42オリゴマ、低分子量Aβ1-42オリゴマとも経時的に除去されていき、18時間及び24時間では、Western Blot上ではほとんど検出されなくなった。
また、中空糸壁部分を通過した濾液では、BSAのごく薄いバンドが検出されるほかは、Aβ1-42オリゴマ及びAβ1-42モノマーのバンドはほとんど確認できなかった。
<実施例3>製品ダイアライザーを用いたプール液中のAβ1-42オリゴマ除去
ポリスルホン(PSf)製ダイアライザー(APS13EA 旭化成メディカル社、V型)と血液透析用回路(日機装社製)を用いて回路を図7の如く組み立てた。
血液側及び濾過ポンプにはCole Parmer instrument社製MASTER FLEX (7518−10)を用い、QF=1mL/minの場合のみ、濾過ポンプとしてATTO社製PERISTAポンプ(SJ−1211H)を用いた。
PBS500mLを流速200mL/minでダイアライザー中空糸内腔をプライミングし、5mg/mLに調整したBSA200mLを流速50mL/minにて30分間循環させた。この後、1.6μg/mL Aβ1-42及び5mg/mL BSAのPBS溶液200mLを流速50mL/minでダイアライザーを通過させた。
1.6μg/mL Aβ1-40及び5mg/mL BSAのPBS溶液250mLをプール液とし、QB=50mL/min、QF=5mL/minにて循環させた。また、対照として、QF=0mL/minに設定して濾過を行なわずに循環を行った。
ダイアライザーの入口および出口、濾液(通常は透析液の入口)、及び、プール液を30,120分後に採取した。採取したサンプル中のAβ1-42濃度はHuman βAmyloid(1−42) ELISA Kit, High−Sensitive(和光純薬工業社製)を用いたELISAにて測定し、X分間循環後におけるプール液中Aβ1-42除去率を次式により算出した。
プール液中Aβ1-42除去率(X分)=100×{1−(X分間循環後のプール液中Aβ1-42濃度/循環開始時のプール液中Aβ1-42濃度)}
また、X分間循環後におけるダイアライザー前後のAβ1-42除去率(D前後除去率)を次式により算出した。
D前後Aβ除去率=100×{1−(X分間循環時点でのダイアライザー出口Aβ1-42濃度/X分間循環時点でのダイアライザー入口Aβ1-42濃度)}
Aβ1-42オリゴマは IBL社製amyloid β Oligomers(82E1 specific)ELISAを用いて測定した。
結果を表1に示す。QFを5mL/minとすることで、プール液のオリゴマ濃度の低下を認めた。QF=5mL/min時の濾液中のAβオリゴマ濃度は、ダイアライザーに流入するフィード液(ダイアライザ入口濃度)の1%以下であった。
また、Aβ1-42モノマーについては、実施例1と同様に、QF=5mL/minの方がQF=0mL/minに比べて除去が速く効率的であった(図8)。また、濾液中には、Aβ1-42モノマーは検出されなかった。
<実施例4>ミニモジュールを用いたプール液中のAβ1-42オリゴマ除去
ポリスルホン(PSf)製ダイアライザー(APS−SA 旭化成メディカル社、IV型)の中空糸80本を、有効長80mmになるようウレタンで封入した、ダイアライザー型のミニモジュール(膜表面積0.0037m2)を用いて、Aβオリゴマが、中空糸への濾過で除去されるかどうかを検討した。
Aβオリゴマの定量評価は、amyloid β Oligomers(82E1 specific)ELISA(免疫生物研究所(IBL)社)で行った。Aβオリゴマの分子量の定性的検討は、実施例2と同様に、Western Blotで行った。
以下のAβ1-42溶液を調製して濾過を行った。
実験1:5μg/mL Aβ1-42のPBS溶液。
実験2:50μg/mL Aβ1-42のPBS溶液。
実験3:5μg/mL Aβ1-42及び2.5mg/mL BSAのPBS溶液。
実験4:50μg/mL Aβ1-42及び2.5mg/mL BSAのPBS溶液。
ミニモジュールの中空糸内腔出口(V側)にシリコンチューブをつなぎ、鉗子で閉とし、ミニモジュールの透析液ポートのうちAβ1-42溶液流入側はキャップで閉とし、中空糸内腔出口側の透析液ポートを開としてここから全濾過液をサンプリングした。
テルモ社製シリンジポンプを用いて、ミニモジュールの中空糸内腔入口(A側)へAβ1-42溶液を20μL/minでフィードした。実験1及び2においては、実験直前に、PBSで回路及びミニモジュールを全濾過モードで200μL/min、30分間洗浄した。また、実験3及び4においては、実験直前には、2.5mg/mL BSAのPBS溶液で回路及びミニモジュールを全濾過モードで200μL/min、10分間プライミングした。
結果を図9に示す。また、Western Blotの結果を図10に示す。フィード液中にAβ1-42モノマーのほか、ダイマー、トリマー、テトラマー等の低分子量Aβ1-42オリゴマ、及び、分子量が50kDa以上の高分子量Aβ1-42オリゴマが多量に存在したが、濾過後の液には、全分子量領域に亘って、Aβ1-42オリゴマ及びAβ1-42モノマーが検出されなかった。中空糸による濾過でAβ1-42オリゴマは効率よく除去された。
SDS−PAGE上ではダイマー、トリマー、テトラマー等のバンドが確認できるが、Aβ1-42溶液中ではもっと大きな会合体を形成しており、中空糸のポア(11.8kDaのβ2ミクログロブリンは30%以上通過できる)を通過できないものと考えられた。この会合体形成は、アルブミン非存在下でも起こると考えられる。
なお、実験3及び4のBSA入りのサンプルでのアルブミン領域のバンドは、Aβ1-42を含まない実験1及び2のサンプルのWestern Blot解析から、BSA及び試薬BSAに含まれるウシ血液由来蛋白と二次抗体との交差反応であることが明らかになっている。
<参考例1>
ポリスルホン(PSf)製中空糸のダイアライザー(APS−13EA 旭化成メディカル社)を解体し、中空糸を取り出して、ほぼ2mm長に切断した。この中空糸断片を、シリコンチューブとポリプロピレン製ジョイントからなる2種のミニカラム(4−2カラム:0.629cm×2.01cm、5−1カラム:0.350cm×62.14cm)に充填した。
ミニカラム内の中空糸断片を10mg/mL BSAのPBS溶液をPERISTAポンプで60mL/hrで20分間プライミングし、その後、40ng/mL Aβ1-42及び10mg/mL BSAのPBS溶液を15mL/hrでフィードした。
Aβ1-42オリゴマは IBL社製amyloid β Oligomers (82E1 specific)ELISAを用いて測定し、Aβ1-42モノマーは、和光純薬社製ヒトβアミロイド(1−42)ELISAキットワコーを用いて測定した。
X分間循環後におけるダイアライザー前後のAβ1-42除去率(D前後除去率)を次式により算出した。
D前後Aβ除去率=100×{1−(ダイアライザー後Aβ1-42濃度/ダイアライザー前Aβ1-42濃度)}
Aβ1-42モノマーの除去率を図11に、Aβ1-42オリゴマの除去率を図12に示す。中空糸断片では吸着除去のみが起こるが、その吸着除去のみで、Aβ1-42モノマーは効率良く除去されている。一方、Aβ1-42オリゴマは、吸着のみの除去では、大量の中空糸断片(5−1カラム)を用いればある程度除去できるが、経時的に除去能が大幅に低下した。
本発明の血液中Aβ除去システムにより脳内Aβ量を減少させることができる可能性があり、アルツハイマー病の治療又は予防に有効である可能性がある。

Claims (13)

  1. 血液の注入口と排出口を備えるハウジングと、
    前記注入口からの血液が中空糸内腔に流入するように前記ハウジング内に収容される中空糸膜と、
    血液を体外に脱血し前記注入口に連結する血液回路と、
    流入したのちに中空糸内腔から中空糸外へ濾過された血液と、流入したのちに中空糸内腔を通過した血液とを混合する血液回路と、
    混合された血液を返血するための血液回路と、を備え、
    血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させて、β−アミロイドを中空糸で除去する、血液中β−アミロイド除去システム。
  2. 前記ハウジングが、濾過された血液の排出口と、通過した血液の排出口を備える、請求項1に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  3. 血液の一部を中空糸壁を横断して濾過させる血液ポンプをさらに備える、請求項1又は2に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  4. 流入させる血液流量(QB)と血液濾過量(QF)を制御する一の血液ポンプを備える、請求項3に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  5. 流入させる血液流量(QB)を制御する血液ポンプと、血液濾過量(QF)を制御する血液ポンプを備える、請求項3に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  6. 血液濾過量(QF)を制御する圧損構造をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  7. 前記圧損構造が、オリフィスである、請求項6に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  8. 流入させる血液流量(QB)が、20〜200mL/minである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  9. (流入させる血液流量)/(血液濾過量)(QB/QF)比が、2〜100である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  10. 中空糸膜が収容されたハウジングが、血液透析用カラムである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  11. 中空糸が、ポリスルホン(PSf)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマアロイ(PEPA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルローストリアセテート(CTA)、改質セルロース(BEM)、及びエチレンビニルアルコール共重合体(EVAL)からなる群から選択される少なくとも1つの高分子を含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  12. 中空糸が、ポリスルホン(PSf)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマアロイ(PEPA)、ポリエーテルスルホン(PES)からなる群から選択される少なくとも1つの高分子を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
  13. 中空糸が、ポリビニルピロリドンをさらに含有する、請求項11又は12に記載の血液中β−アミロイド除去システム。
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