JP7125892B2 - アミロイドβ除去器具、生体由来液浄化システム、アミロイドβ除去方法およびアミロイドβ除去用吸着材 - Google Patents
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Description
本実施形態に係るAβ除去器具は、生体由来液に接触させる多孔質炭素材料を備えている。
本実施形態に係るAβ除去器具に含まれる多孔質炭素材料は、細孔直径のピーク位置が3~500nmである多孔質炭素材料である。ここで細孔直径は、窒素吸着法または水銀圧入法によって測定したものである。詳細には、比較的小さな細孔直径については窒素吸着法を使用して測定し、比較的大きな細孔直径については水銀圧入法により測定する。窒素吸着法は、窒素ガスの相対圧力を段階的に変えて、吸着等温線より、細孔直径および細孔容積を求める方法である。水銀圧入法は、水銀に圧力を加えることにより、順次細孔に水銀が圧入されることを利用した測定法である。水銀圧入法においては、必要圧力から細孔直径が得られ、圧入量から細孔容積を求めることができる。
Aβ除去器具は、上述の多孔質炭素材料を含み、生体由来液を当該多孔質炭素材料に通過させ得る形態のものであれば特に制限はないが、一実施形態において、Aβ除去器具は、多孔質炭素材料が充填されたカラムである。また、カラムの一態様として、Aβ除去器具は血液浄化用カラムとして用いることができる。
本実施形態に係る血液浄化システムには、上述のAβ除去器具が組み込まれている。図1は、本発明の一実施形態に係る血液浄化システム100の一例を示す模式図である。図1に示されるとおり、血液浄化システム100は、Aβ除去器具1、患者(対象、不図示)から採取された血液をAβ除去器具1に送るチューブ11および13(第1送液部)、Aβ除去器具1を通過した血液を患者に戻すチューブ14(第2送液部)、および患者から血液を採取し、血液浄化システム100において血液の流れを生じさせるポンプ12(第1送液部)を備えている。
本発明に係るAβ除去方法の一実施形態として、生体由来液を血液とした場合について説明する。本実施形態に係るAβ除去方法は、対象から取り出された血液からAβオリゴマーを除去する方法であって、本実施形態に係るAβ除去器具に血液を通液する工程を含む。取り出された血液は、未処理であってもよいし、不純物を取り除くためのフィルタに通したり、凝固防止剤を添加したりなど、任意の処理が施されていてもよい。また、血液は予め採取されたものであってもよいし、対象から血液を体外に取り出す脱血工程により脱血されたものであってもよい。すなわち、本実施形態に係るAβ除去方法は、Aβ除去器具として本実施形態に係るAβ除去器具を用いる点以外は、従来の血液浄化技術を用いることができる。本実施形態に係るAβ除去方法は、Aβ除去器具として本実施形態に係るAβ除去器具を用いることにより、血液中のAβモノマーのみならずAβオリゴマーも除去することが可能となる。本実施形態に係るAβ除去方法自体には、Aβオリゴマーが除去された血液を患者に戻す工程は含まれていないが、血液を患者に戻す工程を含むアルツハイマー病の治療方法または予防方法に利用することができる。
本発明に係るAβ除去用吸着材の一実施形態として、生体由来液を血液とした場合について説明する。本実施形態に係るAβ除去用吸着材は、血液を通液させる多孔質炭素材料であって、細孔直径のピーク位置が3~500nmである多孔質炭素材料を含んでいる。多孔質炭素材料の具体的な説明は、〔1.Aβ除去器具〕に記載したとおりである。このような多孔質炭素材料を含むことにより、本実施形態に係るAβ除去用吸着材は、血液中のAβモノマーのみならずAβオリゴマーも吸着させ、血液中からAβモノマーのみならずAβオリゴマーも除去することが可能となる。
以上の通り、本発明に係るアミロイドβ除去器具の一態様では、生体由来液からアミロイドβを除去するアミロイドβ除去器具であって、前記生体由来液に接触させる多孔質炭素材料を備えており、前記多孔質炭素材料は細孔直径のピーク位置が3~500nmである構成を有している。
[平均粒径]
Aβ吸着材約0.1gに対し、分散剤(カチオン系界面活性剤「SNウェット366」(サンノプコ社製))を3滴加え、Aβ吸着材に分散剤を馴染ませた。次に、純水30mLを加え、超音波洗浄機で約3分間分散させたのち、粒径分布測定器(日機装株式会社「MicrotracMT3300EXII」)で、粒径0.02~2000μmの範囲の粒径分布を求めた。測定条件において、「透過性」は吸収、「粒子屈折率」は1.81、「形状」は非球形または球形(球状活性炭のみ)を選択した。得られた粒径分布から、累積容積が50%となる粒径をもって平均粒径Dv50(μm)とした。
実施例および比較例に用いたAβ吸着材の比表面積(SSA)は、JISZ 8830に定められた方法に準拠し、測定した。すなわち、ガス吸着法による比表面積測定器(カンタクローム・インスツルメンツ社製「Autosorb(登録商標)-iQ」)を用いて、活性炭のガス吸着量を測定し、下記の式により比表面積を計算する。具体的には、試料である活性炭を試料管に充填し、200℃で12時間減圧乾燥した後、乾燥後の試料重量を測定した。次に、試料管を-196℃に冷却し、試料管に窒素を導入し球状活性炭試料に窒素を吸着させ、窒素分圧と吸着量との関係(吸着等温線)を測定した。
[細孔容積測定法 -窒素吸着法-]
Aβ吸着材における、3~50nmの細孔直径を有する細孔(メソ孔)の細孔容積は、窒素吸着法により測定した。具体的には、カンタクローム・インスツルメンツ社製「Autosorb(登録商標)-iQ」を用いて測定した。まず、試料であるAβ吸着材を試料管内に充填し、300℃で12時間減圧加熱乾燥を行って、試料における細孔内の水分などの不純物を除去する前処理を行った。次いで、減圧しながら、液体窒素を用いて、試料温度を-196℃に低下させた。ここで、窒素の圧力を変えながら試料管内に段階的に導入し、各圧力における試料の窒素の吸着量を測定した。得られた圧力と窒素吸着量との関係から、Barrett Joyner Hallenda法を用いて細孔径1.0~50nmの細孔の容積(cm3/g)を測定した。得られた細孔分布のうち、3~50nmの細孔直径における細孔容積を読み取った。
[細孔容積測定法 -水銀圧入法-]
Aβ吸着材における、50nm~10000nmの細孔直径を有する細孔(マクロ孔)の細孔容積は、水銀圧入法により測定した。具体的には、水銀ポロシメーター(MICROMERITICS社製「AUTOPOREIV 9500」)を用いて細孔容積を測定した。まず、試料であるAβ吸着材を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気した。次いで、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を圧入した(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から以下の各計算式を用いて細孔容積分布を測定した。具体的には、細孔直径89μmに相当する圧力(0.01MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)までに試料に圧入された水銀の体積を測定した。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:-πDγcosθ=π(D/2)2・Pが成り立つ。従って、
D=(-4γcosθ)/P
となる。
本実施例においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、次式:D=1.27/Pにより圧力Pと細孔直径Dの関係を求めた。
Log微分細孔容積分布に基づき、dV/d(logD)から細孔直径のピークトップを確認し、ピークトップのある位置を、細孔直径のピーク位置とした。
以下の方法で、AβオリゴマーおよびAβモノマーの吸着試験を行った。なお、神経細胞から分泌される主要なAβの分子種は、40個のアミノ酸残基からなるAβ40および42個のアミノ酸残基からなるAβ42であるが、今回はAβ42のモノマーおよびオリゴマーを用いて評価した。
Aβ吸着材に関して、Aβ42オリゴマー吸着実験を以下の方法で実施した。まず、10mg/mLのウシ血清アルブミン(和光純薬社、脂肪酸/IgG/プロテアーゼ不含)を加えたリン酸緩衝液(PBS-)に、Aβ42オリゴマーを16.7ng/mLとなるよう添加してオリゴマー吸着試験溶液を調製した。なお、Aβ42オリゴマーは、HFIP処理Aβ42モノマー(コスモバイオ社)を37℃で一晩インキュベートすることにより調製した。2.0mL容量のポリプロピレン(PP)製の丸底チューブにAβ吸着材10mgを量りとり、生理食塩水0.1mLを添加して混和した後、試験溶液0.9mLを添加した。室温、暗所でチューブローテーターを用いて10分間転倒混和(10回転/分)を行った。その後、遠心機を用いて3000gで10分間遠心した。Aβ吸着材が粉体であった場合は、その上清をさらに3000gで2分間遠心した。これらの上清を処理後サンプルとして取得した。
[Aβモノマー吸着試験]
Aβ吸着材に関して、Aβ42モノマー吸着実験を以下の方法で実施した。まず、10mg/mLのウシ血清アルブミン(和光純薬社、脂肪酸/IgG/プロテアーゼ不含)を加えたリン酸緩衝液(PBS-)に、Aβ42(ペプチド研究所)を16.7ng/mLとなるよう添加してモノマー吸着試験溶液を調製した。オリゴマー吸着試験溶液をモノマー吸着試験溶液とした以外は、Aβオリゴマー吸着試験と同様にして処理後サンプルを取得した。
<Aβ吸着材の調製>
[実施例1]
酸化マグネシウム(MgO、平均粒径は10nm)とポリビニルアルコールとを3:2の重量比で混合した。次に、この混合物を窒素雰囲気中1000℃で2時間熱処理した。得られた焼成物を1mol/Lの割合で添加された硫酸溶液で洗浄して、MgOを完全に溶出させた。これにより、孔径が10nm前後の細孔を多数有する非晶質の多孔質炭素であるAβ吸着材1を得た。Aβ吸着材1の物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
[実施例2]
酸化マグネシウムを、平均粒径が30nmである酸化マグネシウムに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で実施することで、孔径が30nm前後の細孔を多数有する非晶質の多孔質炭素であるAβ吸着材2を得た。Aβ吸着材2の物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
[実施例3]
酸化マグネシウムを、平均粒径が150nmである酸化マグネシウムに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で実施することで、孔径が150nm前後の細孔を多数有する非晶質の多孔質炭素であるAβ吸着材3を得た。Aβ吸着材3の物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
[実施例4]
酸化マグネシウムを、平均粒径が5nmである酸化マグネシウムに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で実施することで、孔径が5nm前後の細孔を多数有する非晶質の多孔質炭素であるAβ吸着材4を得た。Aβ吸着材4の物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
[実施例5]
実施例4で得られたAβ吸着材4をさらに粉砕して平均粒径17μmのAβ吸着材5を得た。Aβ吸着材5の物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
[実施例6]
酸化ケイ素(SiO2、平均粒径は450nm)と石油ピッチとを混合し、次に、この混合物を窒素雰囲気中1000℃で2時間熱処理した。得られた焼成物を1mol/Lの割合で添加された硫酸溶液で洗浄して、SiO2を完全に溶出させた。これにより、孔径が350nm前後の細孔を多数有する非晶質の多孔質炭素であるAβ吸着材6を得た。Aβ吸着材6の物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
[比較例1]
Aβ吸着材としてヘモソーバ(製品名、旭化成メディカル社製)を用いた。ヘモソーバの物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
[比較例2]
軟化点205℃、H/C原子比0.65の石油ピッチ70kgと、ナフタレン30kgとを、撹拌翼および出口ノズルのついた内容積300リットルの耐圧容器に仕込み、190℃で加熱溶融混合を行った。その後、80~90℃に冷却し、耐圧容器内を窒素ガスにより加圧して、内容物を出口ノズルから押出し、直径約500μmの紐状成型体を得た。次いで、この紐状成型体を直径(D)と長さ(L)の比(L/D)が約1.5になるように粉砕した。得られた破砕物を、0.53質量%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)を溶解した93℃の水溶液中に投入し、撹拌分散した後、冷却して球状ピッチ成型体スラリーを得た。大部分の水をろ過により取り除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍量の質量のn-ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温し、235℃に1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。次に多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用いて、水蒸気64vol%を含む窒素ガス中、嵩密度が0.46g/cm3になるまで、820℃で賦活処理を実施して、球状活性炭1を得た。球状活性炭1をAβ吸着材とし、物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
[比較例3]
粉末状活性炭2(BAC-PW/株式会社クレハ製)をAβ吸着材とし、物性およびAβ吸着試験の結果を表1に示した。
表1に示すように、これまでの活性炭(比較例1:ヘモソーバ)ではAβモノマーを吸着することができるものの、Aβオリゴマーは吸着することができないことがわかる。すなわち、比較例1の活性炭ではAβオリゴマーを除去できないことがわかる。一方、実施例1~6に示すように、細孔直径のピーク位置が3~500nmである多孔質炭素材料のAβ吸着剤では、AβモノマーのみならずAβオリゴマーも吸着することがわかる。すなわち、Aβモノマーとともに、Aβオリゴマーも除去できることがわかる。
2 多孔質炭素材料
3 血液流入口
4 血液流出口
11 チューブ(第1送液部)
12 ポンプ(第1送液部)
13 チューブ(第1送液部)
14 チューブ(第2送液部)
100 血液浄化システム(生体由来液浄化システム)
Claims (8)
- 生体由来液からアミロイドβを除去するアミロイドβ除去器具であって、
前記生体由来液に接触させる活性炭を備えており、
前記活性炭は細孔直径のピーク位置が3~500nmであり、
細孔直径が3~50nmである細孔の細孔容積および細孔直径が50~500nmである細孔の細孔容積の和は、1.25cm 3 /g以上である、アミロイドβ除去器具。 - 前記活性炭は、前記細孔直径が3~50nmである細孔の細孔容積および前記細孔直径が50~500nmである細孔の細孔容積の少なくとも一方が0.20cm3/g以上である、請求項1記載のアミロイドβ除去器具。
- 前記活性炭が粒子状であり、平均粒径が300μm以下である、請求項1または2に記載のアミロイドβ除去器具。
- 前記生体由来液は血液である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアミロイドβ除去器具。
- 血液浄化用カラムである、請求項1~4のいずれか1項に記載のアミロイドβ除去器具。
- 前記活性炭は、前記細孔容積の和が2.05cm 3 /g以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のアミロイドβ除去器具。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載のアミロイドβ除去器具と、
対象からの生体由来液を前記アミロイドβ除去器具に送る第1送液部と、
前記アミロイドβ除去器具を通過した前記生体由来液を対象へ送る第2送液部とを備える、生体由来液浄化システム。 - 生体由来液からアミロイドβオリゴマーを除去するための吸着材であって、
活性炭を含み、
前記活性炭は細孔直径のピーク位置が3~500nmであり、
細孔直径が3~50nmである細孔の細孔容積および細孔直径が50~500nmである細孔の細孔容積の和は、1.25cm 3 /g以上である、
アミロイドβ除去用吸着材。
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