JP2019193709A - アミロイド−β除去システム - Google Patents

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Nobuya Kitaguchi
暢哉 北口
和紀 川口
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和紀 川口
優太 齋藤
Yuta Saito
優太 齋藤
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【課題】血液中Aβオリゴマを効率的に除去できる新たなシステムを提供する。【解決手段】アミロイド−β(Aβ)除去システムは、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスを有し、血液から分離された血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させることで血中Aβオリゴマを除去する。また、中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させて、中空糸膜内腔中に存在する液中にAβオリゴマを蓄積させる。【選択図】図1

Description

本発明は、アミロイド−β除去システムに関する。
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)は脳内の神経細胞が変性することにより認知症になっていくと考えられている疾患である。その発症機構については、アミロイド−β(以下、「Aβ」と略称する場合がある。)が脳に蓄積することを発端とする「アミロイド仮説」が最も有力であり、可溶性Aβが記憶の長期増強を強く阻害することが知られている。
Aβには40アミノ酸のAβ1-40、42アミノ酸のAβ1-42をメインとして、38アミノ酸のAβ1-38、43アミノ酸のAβ1-43などが存在することが知られている。中でも、Aβ1-42は凝集能が強く、神経毒性が強いと考えられている。
Aβ1-40やAβ1-42などのAβモノマが2個以上凝集したAβオリゴマが存在することも知られている(非特許文献1〜5)。
また、Aβモノマよりも、Aβオリゴマが神経毒性の主体であることが報告されている(非特許文献6)。Aβモノマ、Aβオリゴマおよびプロトフィブリルの間には平衡が存在し、さらに凝集が進むと、線維状Aβとして沈着する。
血液中Aβ量の減少に伴い脳内Aβが血液中に引き抜かれるという「引き抜き」仮説が提唱されている。特許文献1〜3においても開示されているように、「引き抜き」仮説に鑑みて、血液中Aβを効率的に除去することが、脳内Aβの蓄積を減少させアルツハイマー病の治療または予防に有効な手段になると考えられている。
特許文献1には、セルロース、シリカ、ポリビニルアルコールまたは活性炭を担体の材質とするアミロイドβタンパク質除去材が開示されている。
また、特許文献2には、β−アミロイドを吸着させて、血液中のβ−アミロイド濃度を低下させる中空糸膜を備える、β−アミロイド除去システムが開示され、特許文献3には、血液の一部を中空糸内腔から中空糸外へ横断して濾過させて、β−アミロイドを中空糸で除去する、血液中β−アミロイド除去システムが開示されている。
国際公開第2010/073580号 特開2012−16595号公報 特開2015−77369号公報
Nature Medicine, 2008;14(8):837−842 Nature, 2006;440:352−357 Neurobiol Dis., 2016;85:111−121 Neuron, 2014;82:308−319 Brain, 2013;136;1383−1398 Nature, 2002;416:535−539
ヘキサデシル基結合セルロース(HDC)などの吸着材(特許文献1)、およびポリスルホン(PSf)、ポリエーテルスルホン(PES)またはポリメチルメタアクリレート(PMMA)などを主要構成成分とした中空糸膜により(特許文献2,3)、Aβモノマが膜表面への吸着等により除去することが可能であることが分かってきているが、本発明者らの検討により、Aβオリゴマは吸着ではあまり除去されないことがわかってきた。
また、特許文献3には、血液中β−アミロイド除去システムにより、血液中Aβオリゴマを除去し得るが、血液中Aβオリゴマをより効率的に除去する新たな方法を見出すことも必要であった。
本発明者らは、アルツハイマー病患者の血液中Aβオリゴマを効率的に除去することが、最終的には脳内Aβの除去につながり、アルツハイマー病の治療または予防に有効な手段になると考えた。
そこで、本発明においては、血液中Aβオリゴマを効率的に除去できる新たなシステムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、Aβオリゴマが血液透析用の中空糸膜による吸着除去では、十分に除去できないことを発見した。しかしながら、Aβオリゴマが通過しにくい中空糸膜壁を横断して血漿を通過させると、Aβオリゴマを効率的に除去できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の血液中Aβオリゴマを除去するアミロイド−β除去システムを提供する。
[1]
中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスを有し、血液(好ましくは、ヒト血液)から分離された血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させることで血液中Aβオリゴマを除去する、アミロイド−β除去システム。
[2]
中空糸膜内腔に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、[1]に記載のアミロイド−β除去システム。
[3]
中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させる、[1]または[2]に記載のアミロイド−β除去システム。
[4]
中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させて、中空糸膜内腔中に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、[1]〜[3]のいずれかに記載のアミロイド−β除去システム。
[5]
血漿分離器をさらに有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のアミロイド−β除去システム。
[6]
血液中Aβモノマを除去するためのシステムをさらに有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のアミロイド−β除去システム。
[6−1]
血液中Aβモノマを同時に除去するシステムである、[1]〜[5]のいずれかに記載のアミロイド−β除去システム。
[6−2]
Aβモノマを中空糸膜に吸着させて血液中Aβモノマを除去する、[6]または[6−1]に記載のアミロイド−β除去システム。
[7]
中空糸膜外へ濾過された血漿を体内に戻す回路をさらに有する、[1]〜[6−2]のいずれかに記載のアミロイド−β除去システム。
また、本発明は、以下の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法、また、以下の
アルツハイマー病を治療または予防する方法を提供する。
[8]
血液中アミロイド−β濃度を低下する方法であって、
血液(好ましくは、ヒト血液)を体外に脱血する工程
脱血した血液から血漿を分離する工程、および
分離した血漿を、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスの中空糸膜内腔に通液する工程、を含有し、
血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液することで血液中Aβオリゴマを除去する、血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
なお、[8]〜[14]において共通に、血液中アミロイド−β濃度を低下する方法は、血液中Aβオリゴマ濃度を低下する方法であってもよい。
また、血液中アミロイド−β濃度を低下する方法における中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスとしては、[1]〜[7]のいずれかに記載のアミロイド−β除去システムであってよい。
[9]
中空糸膜内腔に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、[8]に記載の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
[10]
中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液する、[8]または[9]に記載の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
[11]
中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液して、中空糸膜内腔中に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、[8]〜[10]のいずれかに記載の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
[12]
血漿分離器により血液から血漿を分離する、[8]〜[11]のいずれかに記載の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
[13]
血液中Aβモノマを除去するための工程をさらに有する、[8]〜[12]のいずれかに記載の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
[13−1]
血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液することで血液中Aβモノマを除去する、[8]〜[12]のいずれかに記載の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
[13−2]
Aβモノマを中空糸膜に吸着させて血液中Aβモノマを除去する、[13]または[13−1]に記載の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
[14]
中空糸膜外へ濾過された血漿を体内に戻す工程をさらに有する、[8]〜[13−2]のいずれかに記載の血液中アミロイド−β濃度を低下する方法。
[15]
それを必要とする対象(好ましくは、ヒト)のアルツハイマー病を治療または予防する方法であって、
対象の血液を体外に脱血する工程、
脱血した血液から血漿を分離する工程、および
分離した血漿を、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスの中空糸内腔に通液する工程を含有し、
血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液することで血液中Aβオリゴマを除去して、血液中アミロイド−β濃度を低下することにより、それを必要とする対象(好ましくは、ヒト)のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
なお、[15]〜[21]において共通に、血液中アミロイド−β濃度を低下するとは、血液中Aβオリゴマ濃度を低下することであってもよい。
また、アルツハイマー病を治療または予防する方法における中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスとしては、[1]〜[7]のいずれかに記載のアミロイド−β除去システムであってよい。
[16]
中空糸膜内腔に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、[15]に記載のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
[17]
中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液する、[15]または[16]に記載のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
[18]
中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液して、中空糸膜内腔中に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、[15]〜[17]のいずれかに記載のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
[19]
血漿分離器により血液から血漿を分離する、[15]〜[18]のいずれかに記載のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
[20]
血液中Aβモノマを除去するための工程をさらに有する、[15]〜[19]のいずれかにに記載のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
[20−1]
血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液することで血液中Aβモノマを除去する、[15]〜[19]のいずれかにに記載のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
[20−2]
Aβモノマを中空糸膜に吸着させて血液中Aβモノマを除去する、[20]または[20−1]に記載のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
[21]
中空糸膜外へ濾過された血漿を体内に戻す工程をさらに有する、[15]〜[20−2]に記載のアルツハイマー病を治療または予防する方法。
本発明によれば、Aβオリゴマを効率的に除去できる新たなシステムを提供することができる。
本発明のアミロイド−β除去システムを用いる態様の概略図を示す。 本発明のアミロイド−β除去システムが二重濾過膜血漿交換療法(DFPP)による態様である場合の概略図を示す。実施例2におけるヒトでの二重濾過膜血漿交換療法(DFPP)によるAβオリゴマ除去実験での回路構成の概略図でもある。 実施例1におけるAβオリゴマ除去システムの概略図を示す。図中、Poolは通液させる溶液のプールを、Preは中空糸膜処理前血漿のサンプリング部位を、Fは濾過血漿サンプリング部位を、Rは中空糸膜内腔残留血漿サンプリング部位を示す。 実施例1におけるPool内ヒト廃血漿中の(A)アルブミン、(B)Aβ1-40、(C)Aβ1-42および(D)Aβオリゴマの各濃度変化を示す。 実施例1におけるEC−20Wを用いた場合の中空糸膜内腔の血漿中の(A)アルブミン、(B)Aβ1-40、(C)Aβ1-42および(D)Aβオリゴマの各濃度変化を示す。 実施例1におけるEC−50Wを用いた場合の中空糸膜内腔の血漿中の(A)アルブミン、(B)Aβ1-40、(C)Aβ1-42および(D)Aβオリゴマの各濃度変化を示す。 実施例1におけるEC−20Wを用いた場合の、in vitroでのAβオリゴマ除去実験の施行前後の(A)アルブミン、(B)Aβ1-40、(C)Aβ1-42および(D)Aβオリゴマの各マスバランスを解析した結果を示す。 実施例1におけるEC−50Wを用いた場合の、in vitroでのAβオリゴマ除去実験の施行前後の(A)アルブミン、(B)Aβ1-40、(C)Aβ1-42および(D)Aβオリゴマの各マスバランスを解析した結果を示す。 実施例2におけるDay1、3、6間の(A)Aβ1-40および(B)Aβ1-42の各濃度変化を示す。 実施例2におけるAβオリゴマの(A)Day1、(B)Day3および(C)Day6の各濃度変化を示す。 実施例3におけるAβモノマ除去デバイスとしてHDC(ヘキサデシル基結合セルロースビーズ)を用い、Aβオリゴマ除去デバイスとしてEC50Wを用いた、Aβモノマ・オリゴマ同時除去システムの概略図を示す。 実施例3におけるPool内ヒト廃血漿中の、アルブミン、Aβ1-40、Aβ1-42およびAβオリゴマの各濃度変化を示す。 実施例4におけるAβモノマ除去デバイスとしてダイアライザを用い、Aβオリゴマ除去デバイスとしてEC50Wを用いた、Aβモノマ・オリゴマ同時除去システムの概略図を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について以下詳
細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の
範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のアミロイド−β除去システムは、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスを有し、血液から分離された血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させることで血液中Aβオリゴマを除去する、アミロイド−β除去システムである。
Aβモノマ(アミロイド−β)、Aβオリゴマおよびプロトフィブリルの間には平衡が存在するため、血液中Aβオリゴマを除去することにより、本実施形態においては、アミロイド−β(Aβ)が除去される。
本実施形態におけるアミロイド−β除去システムにより除去されるAβオリゴマは、2個以上のAβモノマの凝集体であり、特に限定されるものではなく、100個以上のAβモノマの凝集体であってもよいが、血液中で可溶性である範囲内での大きさであることが必要であり、2個以上100個程度の凝集体であることが好ましい。
Aβオリゴマにおいては、電子顕微鏡により観察すると繊維化を確認することはできないが、プロとフィブリルにおいては、電子顕微鏡により観察すると繊維化が確認される。
本実施形態において、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスを用いることで、血液中Aβオリゴマは、主として、膜厚方向に血漿を通液することによる濾過、すなわち、中空糸膜厚の壁内部へのAβオリゴマの捕捉により除去されるものではなく、血漿から除去される。
本実施形態においては、アルブミンの透過率が3〜96%であることは、血漿から除去されるAβオリゴマが膜厚方向での濾過(中空糸膜厚の壁内部へのAβオリゴマの捕捉)に拠らずとも除去し得ることを示す指標である。
アルブミンの透過率が3%以上であることにより、中空糸膜内腔から中空糸膜外面に血漿を通過させる際に、通過圧を適切な範囲に制御することが可能である。
アルブミンの透過率が96%以下であることにより、血漿中のAβオリゴマを効率よく除去することが可能となる。
本実施形態において、中空糸膜を含むデバイスのアルブミンの透過率は3〜96%であり、かかる数値範囲内にあって、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%または96%であってもよい。
中空糸膜を含むデバイスのアルブミンの透過率は、ここで例示した数値のいずれか2つの数値を上限下限とする範囲内であってよく、好ましくは5〜95%であり、より好ましくは10〜90%であり、さらに好ましくは35〜90%である。
本実施形態においては、中空糸膜を含むデバイスであって、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスを用いることにより、通液される血漿からAβオリゴマは除去される。
中空糸膜を含むデバイスのアルブミンの透過率は、分画曲線を求めて、アルブミンの阻止率から算出することも可能であるし、ふるい係数から算出することも可能であるが、分画曲線を用いて算出された値とすることが好適である。
分画曲線は、従来公知の方法により作成することが可能である。
本実施形態においては、デバイスに用いる中空糸膜の平均細孔径が、約5〜約50nmであり、好ましくは8〜40nmであり、より好ましくは10〜30nmである。
中空糸膜の平均細孔径が、当該範囲内にあることにより、中空糸膜を含むデバイスのアルブミンの透過率を好適な範囲に制御することができる。
中空糸膜の内径および膜厚は、適宜選択される。
当該デバイスとしては、血漿成分分画膜として知られるデバイスを用いることができる。
本実施形態においては、血液から分離された血漿中のAβオリゴマの除去は、血漿中Aβオリゴマの濃度の低下により確認される。
本実施形態のアミロイド−β除去システムにおいては、血液をそのまま通液すると血球も中空糸膜内腔に溜まってしまうため、効率的なAβオリゴマの除去のためにも、中空糸膜内腔に通液する前の血液の血漿分離が不可欠なものとなる。
本実施形態においては、Aβオリゴマの除去率は、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスの血漿の入口と出口のAβオリゴマ濃度の比較により、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、よりさらに好ましくは70%以上である。
本実施形態におけるアミロイド−β除去システムを用いる態様の概略図を図1に示す。図1においては、血漿分離に用いられるデバイスとして、血漿分離器が記載されているが、血漿分離器としては、公知のものを用いることができ特に限定されないが、連続遠心分離機でもよく、血漿分離膜でもよい。
血液から分離された血漿は、図1においては、Aβオリゴマ除去器として記載される中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスの中空糸膜内腔を通液される。
Aβオリゴマ除去器に中空糸膜内腔から中空糸膜外面に向けて血漿が通液されるが、Aβオリゴマは、主として、中空糸膜壁を透過せずに、血漿から分離除去される。
好ましくは、Aβオリゴマは、中空糸膜内腔に存在する液中に蓄積することで血漿から分離除去される。したがって、本実施形態におけるアミロイド−β除去システムを用いることにより、中空糸膜内腔の存在する液中のAβオリゴマの濃度は上昇していくことになる。
中空糸膜内腔のAβオリゴマ濃度の上昇に併せて、中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄することで、Aβオリゴマは、本実施形態におけるアミロイド−β除去システムにより血漿中から除去される。
本実施形態においては、さらに、血液中Aβモノマを除去するためのシステムをさらに有していてもよい。血液中Aβモノマを除去するためのシステムとして、Aβモノマ除去器を本実施形態のアミロイド−β除去システムに組み込んで、AβオリゴマとAβモノマを高効率で同時除去するシステムも本実施態様に含まれる。
血液中Aβモノマを除去するためのシステムをさらに有する場合、本実施形態におけるアミロイド−β除去システムは、血漿分離器および血液中Aβモノマを除去するためのシステム(例えば、Aβモノマ除去器)をさらに有することが好ましい。Aβモノマ除去器、血漿分離器およびAβオリゴマ除去器の接続は、血漿分離器からAβオリゴマ除去器に血漿が通液されるように構成されていれば特に限定されないが、Aβモノマ除去器、血漿分離器、そして、Aβオリゴマ除去器と通液される回路を構成していることが好ましい。
また、図1において示されるAβオリゴマ除去器が、Aβモノマを同時に除去できる場合も好適な態様となる。この場合、本実施形態におけるアミロイド−β除去システムは、血漿分離器をさらに有することが好ましい。
中空糸膜壁を濾過された血漿においては、Aβオリゴマが除去されており、好適には、Aβモノマの一部も除去され、本実施形態のアミロイド−β除去システムを通液された血漿においてはAβが除去されている。Aβが除去された血漿は、血液回路より返血されることが好ましい。
なお、本実施形態において、Aβオリゴマの除去は、血漿中から完全に除去されることを意味するものではなく、血漿中のAβオリゴマ濃度の減少が確認されることを意味する。Aβモノマの除去においても同様に、血液中ないし血漿中のAβオリゴマ濃度の減少が確認されることを意味する。
本実施形態におけるアミロイド−β除去システムが血漿分離器をさらに有する場合、血漿分離器は、連続遠心分離機でもよく、血漿分離膜でもよい。アミロイド−β除去システムとしては、血漿分離膜を用いた二重濾過膜血漿交換療法によることも好ましい実施態様の一つである。
二重濾過膜血漿交換療法においては、体外に取り出した血液を血漿分離器により血球成分と血漿成分に分離した後、分離された血漿を、血漿成分分画膜を用いて免疫グロブリンやLDL、さらには、フィブリノーゲンなどの除去を行う。本実施形態においては、血漿成分分画膜に代えて、本実施形態におけるアミロイド−β除去システムにおける中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスを用いることで、二重濾過膜血漿交換療法による本実施形態におけるアミロイド−β除去システムとすることができる。
本実施形態においては、対象(好ましくは、ヒト)から脱血された血液から分離された血漿が前記デバイスに通液されることが好ましい。二重濾過膜血漿交換療法により、本実施形態における血液中アミロイド−β濃度を低下する方法や、アルツハイマー病を治療または予防する方法を実施する場合、血漿分離器に対象(好ましくは、ヒト)の体外に脱血された血液が通液され、血液が血球成分と血漿成分に分離されて実施される。
血漿分離器として、連続遠心分離機を用いる場合、血液成分分離装置として知られる装置を用いてもよい。
連続遠心分離機としては、具体的には、特に限定されるものではないが、フレゼニウス社製血液成分分離装置 COM.TECおよびCOBE SPECTRA(日本での販売はテルモBCT)などが挙げられる。
血漿分離器として、血漿分離膜を用いる場合、二重濾過膜血漿交換療法に用いる中空糸デバイスを用いてもよい。当該中空糸デバイスとしては、約0.1〜約0.3μmの細孔径(ポアサイズ)を有して、赤血球、白血球および血小板などの血球が抜けない血漿分離膜であってよい。
血漿分離膜としては、具体的には、特に限定されるものではないが、旭化成メディカル社製プラズマフローOP(ポリエチレン製多孔質膜をエチレンービニルアルコール共重合体でコーティング)や、フレゼニウス社製Plasma Filter(ポリスルホン製多孔質膜)などが挙げられる。
本実施形態で用いられる中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスに含まれる中空糸膜は、血液を通液、濾過することができる中空糸膜であれば、特に限定されるものではないが、例えば、人工透析、血液濾過および血漿分離などにおいて用いられる中空糸膜が挙げられ、市販の中空糸膜を用いてもよい。
本実施形態においては、二重濾過膜血漿交換療法(DFPP)において用いられる血漿成分分離器(本実施形態においては、血漿成分分画膜または血漿分画器ともいう。)が、好適には、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスとして用いられる。
中空糸膜の材質としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVAL)、ポリスルホン(PSf)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマーアロイ(PEPA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニルエーテル等の合成高分子、セルロースアセテート(CTAやCDA)、改質セルロース、銅アンモニアセルロース等のセルロース系高分子などが挙げられる。
Aβオリゴマと共にAβモノマも一つのデバイスで同時除去するためには、デバイスが、アルブミンの透過率が3〜96%であることに加え、静電的結合および/または疎水結合を利用してAβモノマを吸着除去するために、中空糸膜の材質として、疎水性の高分子を用いることが好適である。
当該デバイスが、ポリスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマーアロイ、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリルなどの合成高分子から形成される中空糸膜であって、アルブミンの透過率が3〜96%であることが好ましい。
疎水性の高分子を材質として用いた場合の中空糸膜の親水化材料としては、血液適合性を含めて、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリハイドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
例えば、ポリビニルピロリドンなどの親水化材料を用いる場合には、ポリスルホンなどの合成高分子と、混合して紡糸して用いてもよいが、ポリスルホンなどの合成高分子を用いて紡糸して得られる中空糸膜にコーティングするために用いてもよい。
本実施形態において用いられる中空糸膜は、公知の方法により製造することができるが、中空糸膜の内径は、特に限定されないが、好ましくは、0.01〜1mmである。
血漿成分分離器としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体を材質とする血漿成分分画膜や、ポリスルホンを材質とする血漿成分分画膜が挙げられる。
エチレンビニルアルコール共重合体を材質とする血漿成分分画膜としては、具体的には、特に限定されるものではないが、旭化成メディカル社製カスケードフローEC−20W、EC−30W、EC−40WおよびEC−50W、並びに川澄化学工業社製エバフラックス2A、3A4Aおよび5Aなどが挙げられる。
ポリスルホンを材質とする血漿成分分画膜としては、具体的には、特に限定されるものではないが、フレゼニウス社製AlbuFlowやMONETなどが挙げられる。
アルブミンの透過率は、各製品における製品情報に基づいて求めてもよく、例えば、旭化成メディカル社製カスケードフローEC−20W、EC−30W、EC−40WおよびEC−50Wを用いる場合には、製品情報(http://www.asahi-kasei.co.jp/medical/pdf/apheresis/plasmapheresis_document_01.pdf)を利用して、アルブミンの透過率としてもよい。
当該製品情報9頁において、EC−20Wの場合、アルブミン阻止率が約65%と記載され、EC−50Wの場合、アルブミン阻止率が約10%と記載されているので、アルブミンの透過率は、それぞれ、約35%、約90%と算出される。
本実施形態において、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマーアロイを材質とするヘモダイアフィルターを中空糸膜として含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスとして用いてもよい。
当該ヘモダイアフィルターとしては、具体的には、特に限定されるものではないが、日機装製GDFなどが挙げられる。
本実施形態において、中空糸膜は、通液される血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面へ濾過することができれば、ハウジング内での形状は特に限定されるものではないが、中空糸膜は、ハウジング内に収納された中空糸膜型モジュールとして用いることができる。
本実施形態におけるアミロイド−β除去システムにおいて、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスに代えて、多孔質平面膜(平膜)を積層し、中空糸膜内腔に相当するAβオリゴマ蓄積層と、中空糸膜外面に相当するAβオリゴマ除去血漿層とからなり、アルブミン透過率が3〜96%を有するデバイスを用いてもよい。
また、本実施形態におけるアミロイド−β除去システムにおいて、血液から分離された血漿を、中空糸膜内腔ではなく、中空糸膜外面に通液し、血漿を中空糸膜外面から中空糸膜内腔へ通液させることで血液中Aβオリゴマを除去するアミロイド−β除去システムであってもよい。この場合、Aβオリゴマは、中空糸膜外面側において蓄積されるので、中空糸膜外に存在する液を廃棄することが好ましい。
中空糸膜がハウジング内に備えられている形態としては、中空糸膜カラム様の中空糸膜型モジュールとして、筒型のハウジング内に多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束として収納されていてもよい。
ハウジングの組成は特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
この場合、中空糸膜束の両端が、ポリウレタン等の樹脂組成物を充填して形成する封止部としての樹脂層部により接着固定(シール)されていてもよい。
本実施形態においては、ハウジングには、ハウジング内に血液を通液させ、排出させるための、血液の注入口と、排出口を供えている。ハウジングの排出口を出た後に血液は混合されてもよく、混合された血液がハウジングの排出口から出てもよい。
このような中空糸膜を備えるモジュール形状としては、例えば、血漿成分分離器における形状と同様の形状とすることができるが、他にも、中空糸膜の好適な孔径は異なるものの、いわゆるダイアライザとして用いられるモジュール(透析カラム)や、特開2005−52716号、国際公開第2006/024902号、国際公開第2004/094047号などに記載されているモジュールと同様の形状であってもよく、これらモジュールにおけるハウジングを本実施形態における中空糸膜が収容されたデバイスのハウジングとして用いてもよい。ハウジングとしては、血液透析用カラムに用いられるハウジングを用いてもよく、中空糸膜を備えるモジュールとして、市販の血漿成分分離等において用いられるカラムをそのまま用いてもよい。
本実施形態において、アルブミンの透過率が3〜96%であることにより、中空糸膜内腔に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する。
中空糸膜内腔に蓄積されるAβオリゴマは、中空糸膜内腔に存在する液中で濃度が高くなる。したがって、中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させることで、Aβオリゴマを効率よく、血漿から除去することができ、ひいては、対象における血液中アルブミン−β濃度を低下させることができる。
本実施形態におけるアミロイド−β除去システムは、血液から分離された血漿が前記デバイスに通液され中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させて、中空糸膜内腔中に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、アミロイド−β除去システムであることが好ましい。
本実施形態において、中空糸膜内腔に存在する液の一部の廃棄は、連続して、間欠的に、あるいは終了後に行ってよい。
本実施形態においては、血液から分離された血漿が前記デバイスに通液され中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させる場合には、
(1)廃棄を連続的に行いながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させてもよく、
(2)廃棄を間欠的に行いながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させてもよい。
また、本実施形態においては、血液から分離された血漿が前記デバイスに通液され中空糸膜内腔に存在する液の一部の廃棄を、Aβオリゴマの除去完了後に一度に行ってもよいが、連続して、あるいは間欠的ににかかわらず、中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら行うことが好適である。
本実施形態のアミロイド−β除去システムは、
血漿の注入口と排出口を備えるハウジングと、
前記注入口からの血液が中空糸膜内腔に流入するように前記ハウジング内に収容される中空糸膜と、および
血漿を前記注入口に連結する血液回路と、を含み、
血漿の一部を中空糸膜内腔から中空糸膜外面へ通液させて、中空糸膜内腔中に存在する液中にAβオリゴマを蓄積させて除去する、アミロイド−β除去システムであってもよい。
中空糸膜を収容するハウジングが、本実施形態のアミロイド−β除去システムにおける中空糸膜を含むデバイスとして用いられるため、当該ハウジングにおいて、アルブミンの透過率が3〜96%である。
本実施形態のアミロイド−β除去システムは、流入したのちに中空糸膜内腔から中空糸膜外面へ通液された血漿を返血するための血液回路を備えていてもよい。
当該血液回路は、図2に示すように、アルブミン液や新鮮凍結血漿などの補液を供給する回路と結合していてもよい。
本実施形態におけるアミロイド−β除去システムが血漿分離器を有する場合には、血漿の注入口は、血漿分離器からの回路となっていてもよく、また、血漿分離器からの返血回路と中空糸膜外面へ通液された血漿を返血するための血液回路とが結合していてもよい。
本実施形態においては、血漿を中空糸膜の膜厚方向に通液することにより、デバイスがアルブミンの透過率が3〜96%であるので、Aβオリゴマが、中空糸膜内腔に蓄積され、通液された血漿中Aβオリゴマ濃度が低下する。なお、中空糸膜内腔から中空糸膜外面へ血漿を横断させて、血漿を濾過することで、中空糸膜壁でAβオリゴマが濾過除去されることを排除するものではない。
本実施形態においては、血漿中のAβオリゴマを効率よく除去することができるため、Aβオリゴマと平衡関係にあるAβの効率的な除去に繋がり、よって、対象の血液中Aβを効率的に除去できる。したがって、Aβ引き抜き仮説をも考慮すると、患者において、脳内Aβの蓄積を減少させアルツハイマー病の治療または予防に有効な手段になると考えられる。
本実施形態において、対象とは、特に限定されないが、脳にAβが蓄積した、あるいは、蓄積し始めた患者であってもよく、アルツハイマー病を発症している患者であってもよく、アルツハイマー病を発症する前の患者であってもよく、ヒトであることが好ましい。
本実施形態においては、中空糸膜を横断的に膜厚方向に血液を通液することにより、中空糸膜表面(中空糸膜内腔表面および中空糸膜外表面を含む)並びに中空糸膜壁内の細孔での濾過や吸着により、Aβモノマや、Aβプロトフィブリルの除去も同時に行うことができればより効率的に血液中アミロイド−βを除去することができる。
本実施形態において、Aβモノマを吸着しやすい素材からなる中空糸膜を用いれば、血漿を中空糸膜の膜厚方向に誘導することにより、Aβモノマが、中空糸膜内腔表面だけでなく膜厚方向の表面にも吸着され、血漿中Aβモノマ濃度が低下することも期待できる。また、中空糸膜内腔から中空糸膜外面へ血漿を濾過させることで、中空糸膜内腔表面または中空糸膜壁内でAβオリゴマが濾過除去されていてもよい。
そして、中空糸膜内腔を通過した血漿を血漿分離器の返血用の回路と連結して対象へ返血することにより、血液中Aβモノマおよび血液中Aβオリゴマを同時に効率的に、すなわち、血液中アミロイド−βを効率的に除去することができる。
本実施形態について図1を参照して以下説明する。
脱血流量(QB)は20〜400mL/minであり、留置カテーテル設置時は50〜200mL/minであり、通常の19−16G(ゲージ)程度の穿刺針では30〜60mL/min程度である。
血漿分離器から、Aβオリゴマ除去器へ送液されてくるAβオリゴマ含有血漿は、中空糸膜の中空糸膜内腔に通液されるが、中空糸膜内腔へ流入させる血漿流量(QP)は、脱血流量の3分の1前後、好ましくは7〜100mL/minであり、より好ましくは10〜70mL/minである。また、Aβオリゴマ高含有血漿としての中空糸膜内腔液の廃棄液流量は、0mL/minでもよいが、好ましくは、中空糸膜内腔に通液される血漿流量の約5分の1〜約30分の1を連続的にまたは間欠的に廃棄することが、膜の目詰まりを防ぐために好ましい。
廃棄液流量を大きくすると、循環系から早期にAβオリゴマを廃棄できるので好ましいが、廃棄液量が多くなるとアルブミンや新鮮凍結血漿などの補液が必要となることがある。また、中空糸膜内腔にAβオリゴマが高度に濃縮されてくる期間(例えば、循環開始20〜40分)のみ、廃棄液流量を大きくすることも可能である。
Aβオリゴマ除去器へ送液されたAβオリゴマ含有血漿は、中空糸膜外へ濾過され、Aβオリゴマ低含有血漿として返血される。
これらの、血液流量、血漿流量、廃棄液流量は、図1の各ポンプで制御できるが、圧損回路をAβオリゴマ除去器の廃棄液側に設置することでも制御できる。
図1においては、特に限定されるものではないが、ポンプ3およびポンプ4を図示しているが、一方により流量制御は可能である。
血漿(本段落では、血漿をも意味する用語として血液を用いる)の流速を維持するデバイスとして、血液ポンプが血液中アミロイド−β除去システムに備えられていてもよい。
血液ポンプは、中空糸膜に血液を連続的に供給することができれば特に限定されないが、例えば、血液浄化装置用のポンプや人工透析装置用のポンプ、独立したペリスタポンプ(ローラーポンプ)などが挙げられる。
また、通常、血液は、中心膜型モジュール等に通液される場合、血液凝固を防ぐために、血液中に抗凝固剤を含有させて通液させるため、抗凝固剤の注入ポンプと、抗凝固剤を血液と混合するチャンバーが設けられていてもよい。
さらに、通液される血液の圧力を測定するための、圧モニターや、返血される血液中の気泡を確認するためのモニターが設けられていてもよく、血液をサンプリングできるようになっていてもよい。
本実施形態のアミロイド−β除去システムにおいては、補液を供給する補液ポンプや、補液を貯蔵する補液タンクなどが設けられていてもよい。
図2においては、特に限定されるものではないが、ポンプ2により、Aβオリゴマ除去器に入る血漿量(流速)が制御され、ポンプ3により、Aβオリゴマ除去器から廃棄液量(流速)と返血側にいれる補液量(流速)が同じになるように制御される。
本実施形態においては、血液中のアミロイド−β濃度を低下させる方法を実施することができる。
本実施形態のアミロイド−β濃度を低下させる方法は、
血液(好ましくは、ヒト血液)を体外に脱血する工程
脱血した血液から血漿を分離する工程、および
分離した血漿を、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスの中空糸膜内腔に通液する工程、を含有し、
血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液することで血液中Aβオリゴマを除去する、方法である。
本実施形態において、血液中アミロイド−β濃度を低下する方法を実施するにあたっては、本実施形態のアミロイド−β除去システムを用いることが好ましい。
本実施形態においては、中空糸膜外へ濾過された血漿を体内に戻す工程をさらに有することが好ましい。
血液中のアミロイド−β濃濃度を低下させる方法は、血液を体外に脱血し、脱血した血液を中空糸膜に通液し、通液した血液を体内に返血する体外循環を行うことにより実施することができる。
かかる一連の工程は、いわゆる人工透析や血液ろ過などの血液浄化技術に類似する方法ではあるが、人工透析や血液ろ過では、中空糸外へ通過した血漿成分は廃棄し、中空糸内腔の液は体内に戻す。一方、本実施形態では、中空糸膜内腔に存在する液は廃棄し、中空糸膜外へ通過した血漿成分は体内へ戻すことが好適である。
回路として、患者の血液を体外循環させるべく可撓性チューブから成る血液回路が使用される。
体外循環を行うための血液回路は、一般に、患者から血液を採取する動脈側穿刺針またはカテーテルが先端に取り付けられた動脈側血液回路と、患者に血液を戻す静脈側穿刺針またはカテーテルが先端に取り付けられた静脈側血液回路と、動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に中空糸膜とを備える。
本実施形態においては、血漿分離器を備えることが好適であるので、図1に例示されるような回路を有していることが好適である。
動脈側血液回路、血漿分離器、Aβオリゴマ除去器、必要に応じて補液、必要に応じて他のデバイスなどおよび静脈側血液回路は、可撓性チューブで連結されており、患者から脱血された血液は、可撓性チューブ内を通液され、血漿分離器を介して、Aβオリゴマ除去器の中空糸膜に血漿として接触させられる。
すなわち、血液は、動脈側血液回路より、患者体内より体外へ脱血されて、血液回路内に導入され、血液回路内の可撓性チューブを通り、血漿分離器へ通液される。血漿分離器により、血液は血漿として分離され、Aβオリゴマ除去器の中空糸膜へ通液される。通液された血漿中のAβオリゴマは中空糸膜内腔から中空糸膜外面へと通液させられることで、中空糸膜内腔を通過せず、中空糸膜内腔に蓄積され、中空糸膜を通液後の血漿中のAβオリゴマ濃度が、すなわち、血液中アミロイド−β濃度が低下する。中空糸内腔液は廃棄する。
本実施形態においては、Aβオリゴマのみならず、プロトフィブリルなども効率よく除去することができるため、また、Aβオリゴマ除去器の中空糸膜の素材をポリスルホンやポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタアクリレート、ポリエーテルスルホンポリアリレートポリマーアロイなどとした場合にはAβモノマも効率よく除去できて、血液中のアミロイド−βを効率よく除去することができる。それにより、血液中のアミロイド−β濃度を低下させる方法として提供される。
中空糸膜より通液されて出てきた血漿は、血液中アミロイド−β濃度が低下した血漿として、静脈側血液回路より、患者体外から体内へ返血される。
本実施形態の血液中のアミロイド−β濃度を低下させる方法は、対象に、好適には、アルツハイマー病患者に適用されることにより、アルツハイマー病患者における血液中のアミロイド−β濃度を低下させることができる。また、アルツハイマー病の予備軍ともいうべき、アルツハイマー病の症状は発症していないものの脳にAβが蓄積しはじめた、病理学的にはアルツハイマー病患者と分類することができるような患者において、血液中のアミロイド−β濃度を低下させてもよい。
アルツハイマー病患者または予備軍患者としては、体外循環を行うことができる患者であれば、特に限定されるものではない。また、本実施形態の血液中のアミロイド−β濃度を低下させる方法は、アルツハイマー病を未発症の患者に適用することにより、アルツハイマー病の発症を予防する方法として用いることもできる。
本実施形態においては、除去されるAβオリゴマは、好ましくは、血液中にAβモノマのみからなる凝集体として存在していてもよく、アルブミンやLDLといった血液中の成分と結合して存在するものであってもよい。
本実施形態においては、血液中Aβモノマを除去するためのシステムをさらに備えることが好ましい。
血液中Aβモノマを除去するためのシステムとしては、特許文献1〜3に記載されるシステム等が挙げられる。
本実施形態においては、血漿中のAβオリゴマ濃度を低下させることにより、血液中のアミロイド−β濃度を減少させることができ、ひいては、引き抜き仮説等に鑑みれば、アルツハイマー病の治療または予防する方法を提供することもできる。アルツハイマー病の治療または予防する方法において、本実施形態におけるアミロイド−β除去システムを用いてもよい。
本実施形態においては、アルツハイマー病の治療または予防する方法として、それを必要とする対象(好ましくは、ヒト)のアルツハイマー病を治療または予防する方法であって、
対象の血液を体外に脱血する工程、
脱血した血液から血漿を分離する工程、および
分離した血漿を、中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスの中空糸膜内腔に通液する工程を含有し、
血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液することで血液中Aβオリゴマを除去して、血液中アミロイド−β濃度を低下することにより、それを必要とする対象のアルツハイマー病を治療または予防する方法であってよい。
以下、本実施形態を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1 in vitroでのAβオリゴマ除去
アルブミンの透過率が約35%であるEC20W(エチレンビニルアルコール共重合体(EVAL)素材の中空糸デバイス。旭化成メディカル社製カスケードフローEC−20W)(n=3)、または、アルブミンの透過率が約90%であるEC50W(EVAL素材の中空糸デバイス。旭化成メディカル社製カスケードフローEC−50W)(n=6)を用いて、さらに、血液透析用回路(日機装社製)を用いてin vitroのAβオリゴマ除去システムを図3の如く構成した。血漿ポンプにはCole Parmer instrument社製MASTER FLEX(7518−10)を用いた。
Millipore Elix純水900mLを用い回路内のエアー抜きと、中空糸膜内腔および中空糸膜外面の洗浄を行い(まずR点から純水を廃棄したのち、R点を閉としてF点から純水を廃棄した)、カルシウム不含リン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.2)150mLを流速50mL/minで流して、通液したPBSをR点から廃棄することで、中空糸内腔を洗浄した。ついで、R点をクランプで閉とし、PBSをPool液として、回路内に流速50mL/minで5分間循環させた。非特異吸着などを避けるために、さらに5分間循環させた。5mg/mLに調整したウシ血清アルブミン(BSA)(和光純薬工業製・グロブリン不含生化学用)を含有するPBS溶液(BSA/PBS溶液)300mLを流速50mL/minで流して、通液したBSA/PBS溶液をF点から廃棄した後、F点からBSA/PBS溶液をPoolに戻すように変えて、5分間回路内を循環させた。ついで、患者に同意を得て採取した血漿交換療法のヒト廃血漿450mLをPool液として、回路内に流速50mL/minで200mL流して、通液したヒト廃血漿をF点から廃棄することで、回路内をヒト廃血漿で置換した。なお、ヒト廃血漿中に、Aβオリゴマを含むことは、事前に確認した。
この時点を0分として、残った250mLのヒト廃血漿を流速50mL/minで流して、F点からPBS溶液をPoolに戻して循環させた。図3に示した各採取ポイントにて、0、15、30、60分時点でサンプリングを行った。60分経過後、ポンプを停止し、中空糸デバイスの血漿入口(Pre側)から回路をはずし、中空糸デバイスのR点から50mLシリンジで中空糸内腔内の残留液を取り出し、残留液量を測定した。
残留液中のAβ1-40はhumanβamyloid(1−40)ELISA kit WakoII(和光純薬)、Aβ1-42はhumanβamyloid(1−42)ELISA kit high sensitive(和光純薬)、Aβオリゴマは Human Amyloidβ Oligomers (82E1−specific) Assay Kit−IBL(免疫生物研究所)を用いて測定し、アルブミンはSRL社へ測定委託した。
Pool内ヒト廃血漿中の各濃度変化を図4に示す。Aβ1-40、Aβ1-42は循環初期にやや低下するが15分以降は濃度が下がらない。循環初期の濃度低下は、残留BSA/PBS溶液による希釈の影響が否定できない。一方、Aβオリゴマは、0分の20%から15分の時点で0%にまで低下した。250mLのヒト廃血漿を、流速50mL/minで循環させているので、250mLのヒト廃血漿は15分で全量が中空糸デバイスを十分通過しているため、中空糸によりAβオリゴマが除去されたと考えられる。
中空糸内腔に各物質がどれくらい濃縮されたかを図5および図6に示す。EC20Wでは、Aβ1-40は、60分時点でのPool内ヒト廃血漿中濃度と中空糸内腔中濃度はほぼ同じであり、中空糸内腔に濃縮はされていなかった。一方、Aβ1-42では2倍程度、アルブミンでは3倍程度中空糸内腔に濃縮された。Aβオリゴマでは約10倍に濃縮された。0分時点でのPool内ヒト廃血漿中濃度と比べても60分時点での中空糸内腔中濃度は2倍程度濃縮されていた。分子量が約4500DaであるAβ1-42は、単独のモノマのままではEC20Wの細孔径に比べ小さいためEC20Wで除去されないが、血漿中に存在するアルブミンと結合して中空糸内腔への濃縮が起こったと考えることも可能である。
EC50Wでは、Aβ1-40もAβ1-42も、60分時点でのPool内ヒト廃血漿中濃度と中空糸内腔中濃度はほぼ同じであった。アルブミンでは1.2倍程度中空糸内腔に濃縮された。Aβオリゴマでは約30倍に濃縮された。0分時点でのPool内ヒト廃血漿中濃度と比べても中空糸内は6倍程度に濃縮されていた。
さらに、Pool内ヒト廃血漿、回路容量、中空糸内腔液などの体積と濃度から、各物質のin vitroでのAβオリゴマ除去実験の施行前後のマスバランスを解析した結果を図7および図8に示す。各物質の絶対量を、0時間でのPool内ヒト廃血漿中濃度を100%として、60分後でのPool内ヒト廃血漿中濃度および中空糸内腔中濃度と比較を行った。
EC20Wでは、Aβ1-40は、60分後のPost時点でのPool液と中空糸膜内(R)にほぼ1:1で分布しているが、Aβ1-42は60分後のPost時点でのPool液中量の約2.5倍量が中空糸膜内腔に捕捉された。Aβオリゴマは、60分後のPost時点でのPool液中量のほぼ約10倍量が中空糸膜内腔に捕捉された。施行前のPool液中に存在していたAβオリゴマの大半が、60分の施行後には中空糸膜内腔に捕捉されていた。中空糸膜内腔液は実際の患者血液浄化では廃棄するので、EC20Wでは、施行前血液に存在したAβオリゴマの91%が除去廃棄されることになる。アルブミンはPool中の3倍程度量が中空糸膜内腔に捕捉された。
一方、EC50Wでは、Aβ1-40は60分後のPost時点でのPool中の1.4倍程度量が中空糸膜内に捕捉され、Aβ1-42は60分後のPost時点でのPool中の2倍程度量が中空糸膜内に捕捉された。Aβオリゴマは60分後のPost時点でのPool中の12倍程度量が中空糸膜内に捕捉された。施行前のPool液中に存在していたAβオリゴマの大半が、60分の施行後には中空糸膜内腔に捕捉されていた。中空糸膜内腔液は実際の患者血液浄化では廃棄するので、EC50Wでは、施行前血液に存在したAβオリゴマの92%が除去廃棄されることになる。アルブミンはPool中の2倍程度量が中空糸膜内腔に捕捉された。
Aβ1-40、Aβ1-42は、施行開始前の絶対量から施行後(Poolと中空糸膜内腔合計)には若干減少しているようにみえるが、これはモノマが回路に吸着したものと考えられる。モノマからオリゴマの移行の可能性については、Aβオリゴマの絶対量がほとんど増えていないことから否定できる。
実施例2 ヒトでの二重濾過膜血漿交換療法(DFPP)によるAβオリゴマ除去
生体間腎移植を目的として、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVAL)製膜型血漿成分分画器(エバフラックス2A20 川澄化学工業社製。実施例1記載のEC−20Wと同等のポアサイズを持つ。アルブミンの透過率は約35%)を用いた二重濾過膜血漿交換療法(DFPP)を3回(Day1、3、6)施行した。
血漿分離器には、プラズマフローOP−08W(旭化成メディカル社)を用い、血液浄化装置には旭化成メディカル社製ACH−Σを用いた。施行条件と回路構成を表1および図2に示す。
表1中、
BPI; 患者から脱血する血液流量
BPII;血漿分離器(プラズマフローOP)から血漿成分分離器(エバフラックス2A20)へ流入する血漿流量
BPIII;血漿成分分離器(エバフラックス2A20)中空糸内腔から廃棄する血漿流量
をそれぞれ表す。
各施行日において、DFPP施行前(0分)、60分、終了時(90分)に血液回路脱血側(施行前に関してはバスキュラーアクセスから)よりシリンジで各3mL、血漿用真空採血管(EDTA−2K)にサンプリングを行い、4℃の冷蔵庫に保管、採取から2時間以内に遠心分離を行ない、得られた血漿を1.5mLチューブに分注して−80℃の冷凍庫で保管した。
Aβ1-40、Aβ1-42、Aβオリゴマは、実施例1と同様にELISAキットを用いて測定した。結果を図9および図10に示す。
90分間のDFPPでAβ1-40、Aβ1-42はどちらも血中濃度はほとんど変わらなかった。一方、Aβオリゴマは、DFPP終了時点でDay1、3、6ともほぼゼロ(検出限界以下)になった。すなわち、Aβオリゴマは、本発明の中空糸デバイスで極めて効率よくヒト循環血から除去された。
さらに、Day1、3、6間の血中Aβオリゴマ濃度の推移をみると、Day1の90分間のDFPP施行後で血中濃度がゼロとなったが、Day3のDFPP開始時には、Day1開始時の157%に大きく増加していた。これはDay1のDFPPでAβオリゴマが血液中から減少したことにより、Aβオリゴマ含有臓器(おそらく脳)と血液とのAβオリゴマの濃度差が大きくなり、Aβオリゴマが脳から血液へ湧き出す(移行する)可能性を示唆している。血中に存在するAβモノマが結合しAβオリゴマを形成しているためとも考えられなくはないが、Aβモノマの濃度はDay1からDay6の3回のDFPPで大きな変化はなかったので、この考えはほぼ否定できよう。また、Day3、Day6では60分時点のサンプルで血中Aβオリゴマ濃度がゼロとなっており、血中Aβオリゴマの除去速度が速くなっていることが示唆された。3日後のDay6でのDFPP開始時の血中Aβオリゴマ濃度はDay1DFPP開始時の39%で、Day1施行終了時からDay3施行開始時の増加率に比べ、1/4程度しか増加しておらず、こちらもDay3と同様に60分時点のサンプルで血中濃度はゼロとなっていた。Day3からDay6の間での血中濃度の増加が少なかったのは、Aβオリゴマ含有臓器(おそらく脳)に存在していたAβオリゴマが、Day1とDay3のDFPPによって除去され、血液中への湧き出し量が減少したためだと考えることができる。
実施例3 Aβモノマ除去デバイスとしてHDC(ヘキサデシル基結合セルロース)ビーズを用い、Aβオリゴマ除去デバイスとしてEC50Wを用いた、Aβモノマ・オリゴマ同時除去システム
Aβモノマ除去デバイスとして、市販のHDC(リクセル(登録商標)、カネカ社製)であるS−25を解体し、中のHDCビーズを取り出して純水で洗浄した。このHDC66mLを50mL用のシリンジ(テルモ社)に充填して、HDCミニカラムを作成した。ミニカラム中のHDC量は、使用する血漿量600mLを勘案して決定した。すなわち、ヒト臨床で体重65kgの患者の全血は5Lであり、ヘマトクリットを40%と仮定すると3000mLが血漿量となる。この患者に市販の350mL入りHDCカラムを使用することを想定すると、血漿600mLではHDCは70mLとなるが、50mLシリンジに最大量HDCを充填しても66mLだったので、本実施例ではHDCを66mLとした。
実際のヒトでの施行では、HDCは全血で流すので、それを模して、Poolからの血漿流量を30mL/min(ヘマトクリット値を40%とすると、全血での血液流量50mL/minに相当)とし、HDC出口からの血漿を15mL/minでEC50Wへ流入させ、HDC出口からの残りの15mL/minはそのままPoolへ戻した。
実際のヒトDFPPと同様に、EC50Wの中空糸内腔出口から、ペリスタポンプ(SJ−1211 II −L、ATTO社)で1mL/minで中空糸内腔液を廃棄しつつ(排液)、残りの14mL/minは中空糸膜内腔から中空糸膜外面へ通過させたのちPoolへ戻した。回路を図11に示す。サンプリング箇所は図11の丸数字の1から6で、0、5、10、30、60、75minでサンプリングを行った。また、循環するPoolのヒト血漿量は600mLとした。それ以外は実施例1と同様に施行した。施行時間は、30分で終了したもの、60分で終了したもの、30分以降のPoolからの血漿流量を20mL/minに減少させて75分行ったもの(これのみ同一実験を2回実施)の3通りであった。施行開始から30分までは、同一条件で4回施行したことになる。
施行した結果のPool濃度推移の平均値(0分の濃度を100%として表記)を図12に示す。アルブミンは、初期の回路内残留PBSによる希釈の影響か、少し濃度が低下するが、その後は一定であった。一方、Aβ1-40およびAβ1-42もAβオリゴマも効率よく除去された。すなわち、30分の施行時点で0分の濃度に比べていずれも有意に(p<0.001)低下し、施行継続とともにさらに低下した。なお、HDCは全血漿流を処理しているが、EC50Wはその半量処理ゆえ、Aβオリゴマの減少カーブはAβモノマに比べて緩やかになる。
また、EC50Wからの排液(図11の丸数字4)のAβオリゴマ濃度は、開始時のPool液が64pmol/Lであったのが、30分時点では188pmol/Lとなり、EC50Wの中空糸内に濃縮され除去(廃棄)されていることがわかる。
HDCカラムの入口・出口(カラム前後)のAβ1-40除去率は施行時間を通して60〜80%であり、カラム前後のAβ1-42除去率は60〜70%であったが、Aβオリゴマのカラム前後の除去率は、施行時間を通して19から27%程度と低かった。
実施例4 Aβモノマ除去デバイスとしてダイアライザを用い、Aβオリゴマ除去デバイスとしてEC50Wを用いた、Aβモノマ・オリゴマ同時除去システム
Aβモノマ除去デバイスとして、市販のポリスルホン素材のダイアライザ(膜面積1.1m2のAPS11EA、旭化成メディカル社)をそのまま用いた。ダイアライザでは3mL/minの濾過流量で、中空糸内腔へのAβ吸着を促進する濾過吸着を行った。このダイアライザの濾液はPoolに戻さず廃棄した。回路を図13に示した。それ以外は、実施例3と同様にAβモノマ・オリゴマ同時除去を行った。
ヒト臨床で体重65kgの患者の全血は5Lであり、ヘマトクリットを40%と仮定すると3000mLが血漿量となる。この患者に市販の膜面積2.1m2のポリスルホン素材のダイアライザAPS21EAを使用することを想定すると、血漿600mLでは膜面積は0.4m2程度となるが、このような膜面積のものは入手できなかったので、入手可能な最少膜面積1.1m2のAPS11EAを使用した。よって、Aβモノマ除去用としては、ヒトでの想定デバイスのほぼ3倍程度の膜面積を使用したことになる。よって、40分間施行した結果(n=3)のPool濃度推移の平均値(施行前のPool中の濃度を100%として表記)は、Aβ1-40は3.5±0.4(SD)%、Aβ1-42は6.5±3.4%、Aβオリゴマは24.4±13.0%と減少していた。
また、施行開始直前のPool液中のAβオリゴマ濃度は平均46pmol/Lであったが、施行40分時点のEC50Wからの排液(図13の丸数字の1)のAβオリゴマ濃度は、平均118pmol/Lとなり、EC50Wの中空糸内に濃縮され除去(廃棄)されていることがわかる。
ダイアライザAPSの入口・出口(カラム前後)のAβ1-40除去率は施行時間を通して94〜67%であり、カラム前後のAβ1-42除去率は85〜76%であったが、Aβオリゴマのカラム前後の除去率は、0.9〜8.2%程度と低かった。
本発明のアミロイド−β除去システムにより血液中Aβオリゴマ濃度を減少させることができるので、本発明のアミロイド−β除去システムはアルツハイマー病の治療または予防に有効である可能性がある。

Claims (7)

  1. 中空糸膜を含み、アルブミンの透過率が3〜96%であるデバイスを有し、血液から分離された血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させることで血中Aβオリゴマを除去する、アミロイド−β除去システム。
  2. 中空糸膜内腔に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、請求項1に記載のアミロイド−β除去システム。
  3. 中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させる、請求項1または2に記載のアミロイド−β除去システム。
  4. 中空糸膜内腔に存在する液の一部を廃棄しながら、血漿を中空糸膜内腔から中空糸膜外面に通液させて、中空糸膜内腔中に存在する液中にAβオリゴマが蓄積する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアミロイド−β除去システム。
  5. 血漿分離器をさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアミロイド−β除去システム。
  6. 血液中Aβモノマを除去するためのシステムをさらに有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアミロイド−β除去システム。
  7. 中空糸膜外へ濾過された血漿を体内に戻す回路をさらに有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアミロイド−β除去システム。
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