JP2015076285A - 電極およびその電極を用いて製造された電池 - Google Patents

電極およびその電極を用いて製造された電池 Download PDF

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Abstract

【課題】種々の電池特性を劣化させる事なく、且つ材料選択性に優れ、過充電時の安全性を飛躍的に向上させる事のできる電極およびその電極を用いて製造された電池を提供する事を目的とする。
【解決手段】本発明は、電池の過充電に伴う発熱で電極を構成する材料の一部が分解する事で、電極の抵抗増加が生じ、過充電の進行を抑制する事ができ、且つ、過充電に伴う発熱で分解する材料が充放電に伴うリチウムイオン移動に関わる材料と直接接触することを避けるため、通常の充放電時に電池反応を阻害する事がない。そのため、種々の充放電特性を低下させる事なく、安全性が飛躍的に向上した電池の電極を提供する事が出来る。
【選択図】図1

Description

本発明は高エネルギー密度を有する電池、特にリチウムイオン二次電池の電極およびその電極を用いて製造された電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、そのエネルギー密度の高さから軽量かつ占有面積の少なさに優位性を持ち、ニッケル−カドミウム電池やニッケル−水素電池に比べてメモリー効果の少ない利点を備える事から、携帯電話やノートパソコンなどのポータブルデバイスに幅広く用いられている。また、近年では環境に対する影響から、これまで自動車に用いられてきた石油などの化石燃料に代わる動力源としても用いられる事が多くなってきた。さらに、最近では家庭への電力供給の一部を担う定置型蓄電池に対する期待も高い。
一般的に用いられているリチウムイオン二次電池の構成部材は、電極、電解液、セパレーター、集電体、外装体から成り、さらに電極は一般的には正極活物質又は負極活物質、導電助剤、結着材で構成されている。以降、これらの構成材料を所定の混合比率で混合したものを総じて正極材料および負極材料、正極材料と負極材料を総じて電極材料と呼称する。活物質はリチウムイオン二次電池の正極および負極においてリチウムイオンの挿入脱離が可能な材料であり、挿入脱離の際に電子の授受を伴う事で電流を流す役割を担う。導電助剤は活物質・活物質間および活物質・集電体間の電子移動を円滑に進める為に電極内部に配置される。結着材は活物質、導電助剤および集電体の密着を高める為に電極内部に混合される。
上述のように、自動車や家庭への電力供給を目的にリチウムイオン二次電池が使用される場合、携帯電話等の従来の民生用途に比べ、より大きな電池容量が必要とされる。このように、電池内に大きなエネルギーを蓄える事は、電池に異常が生じた際の危険度が飛躍的に上昇する事を意味する。特に電池を充電する際に本来の充電電位を超えて充電する状況、所謂過充電状態になると、正極の結晶構造変化に伴う発熱および電解液の分解、正極構造崩壊に伴う酸素の放出によって電池内部の温度が異常に高まり(所謂熱暴走状態になり)、発熱・発火に至る。一般的には、このような過充電における対策として、過充電に伴う電池内のガス発生による内圧上昇を検知手段とした外部回路による電流遮断機構を設ける事で、熱暴走に至る前に充電電流を止め、発火や発熱を抑制・停止する。しかしながら、上記対応だけでは安全性を確保する事ができない為、様々な取組みがなされている。
特許文献1および2では、電解液中にLiCOやビフェニルのような過充電となる電位で分解し気体を発生する材料を添加する事によって過充電時に電池の内圧上昇を促進し、より早期に所定圧力で起動する電流遮断機構を作動させる事で熱暴走を防止している。
さらに別の特許文献3では、電極中あるいは電極と集電体との間に設けた層中に熱膨張性マイクロカプセルを含ませる事で過充電に伴う発熱により熱膨張マイクロカプセルが膨張し、電極の抵抗増加を引き起こす事で電流を遮断し、熱暴走を抑制している。
特許第3061759号公報 特許第3575735号公報 特許第4727021号公報
しかしながら、特許文献1および2に示すような、電解液中に電位分解性材料を含有させる方法では、電解液中に分散した電位分解性材料が電池の充放電に伴うリチウムイオン移動の妨げとなり、大電流を流したときの電池容量維持特性(以降、電流負荷特性という)や充放電を繰り返した場合の電池容量維持特性(以降、充放電サイクル特性という)が低下する。また、電位起因で機能を発現するような材料を選定する場合、電極材料により過充電となる電位は多種多様であり、個々の電極に対応する電位分解性材料を探索しなければならず、材料選択性に課題がある。
一方、特許文献3に示したような電極中あるいは電極と集電体との間に設けた層中に、熱によって機能する熱膨張性マイクロカプセルを含有する場合においても、該特許文献中に記載のように電解液に耐性のある材料を選定する必要があり、こちらも材料選択性に乏しい。
そこで、本発明は上述の問題を解決する為になされたものであり、種々の電池特性を劣化させる事なく、且つ材料選択性に優れ、過充電時の安全性を飛躍的に向上させる事のできる電極およびその製造方法を提供する事を目的としている。
請求項1に記載の本発明は、正極と負極の間を電解質を介してリチウムイオンが移動するのに伴い、充電または放電する事が可能な電池の電極であって、導電性を有する基板の少なくとも一方の面に、少なくとも3層以上の層が形成されており、前記3層以上の層は、前記基板上に少なくとも電池の過充電時に発生する熱で分解する材料Aと導電性を有する材料C1を含む第一の層L1と、前記第一の層L1上に層L1が表面に露出しないように形成され、且つ導電性を持つ第二の層L2と、前記第二の層L2上に形成され、少なくとも前記リチウムイオンを挿入脱離できる材料Bと導電性を有する材料C2と前記材料B同士または前記材料C2同士または前記材料Bと前記材料C2を相互に電気的に接続する事ができる結着性の材料Dを含む第三の層L3を含み、前記基板及び層L1から層L3までの層が電気的に接続されている事を特徴とする電極である。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の電極が正極である事を特徴とする電極である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または2に記載の電極であって、前記基板がアルミニウム、ステンレス鋼または樹脂上にアルミニウムを形成したものである事を特徴とする電極である。
請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれかに記載の電極であって、前記第二の層L2が蒸着またはスパッタリング法などの薄膜形成法により形成された金属薄膜である事を特徴とする電極である。
請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載の電極であって、前記金属薄膜がアルミニウム箔膜である事を特徴とする電極である。
請求項6に記載の本発明は、請求項1から5のいずれかに記載の電極であって。前記第二の層L2が導電性を有する材料C3と電解液浸透性の低い樹脂材料で形成されている事を特徴とする電極である。
請求項7に記載の本発明は、請求項1から6のいずれかに記載の電極であって、前記導電材料C1からC3が、全て同じ材料または、各々が別の材料である事を特徴とする電極である。
請求項8に記載の本発明は、請求項1から7のいずれかに記載の電極であって、前記導電性材料C1からC3が少なくとも金属、金属化合物、非晶性炭素、結晶性炭素、導電性ポリマーのいずれかまたはそれらを組み合わせた材料である事を特徴とする電極である。
請求項9に記載の本発明は、請求項1から8のいずれかに記載の電極であって、前記リチウムイオンを挿入脱離できる材料Bが、挿入脱離できるリチウム原子を含んだ層状構造を持つ酸化物、スピネル構造を持つ酸化物、オリビン型構造を持つ酸化物のいずれかまたはそれらを組み合わせた材料である事を特徴とする電極である。
請求項10に記載の本発明は、請求項1から9のいずれかに記載の電極であって、前記電池の過充電時に発生する熱で分解する材料Aが80℃から140℃の範囲で分解する事を特徴とする電極である。
請求項11に記載の本発明は、請求項1から10のいずれかに記載の電極であって、前記材料Aが分解に伴い発泡する材料である事を特徴とする電極である。
請求項12に記載の本発明は、請求項1から11のいずれかに記載の電極であって、前記材料Aが分解に伴い重合する材料である事を特徴とする電極である。
請求項13に記載の本発明は、請求項1から12のいずれかに記載の電極であって、前記第一の層L1の電気抵抗が前記材料Aの分解に伴い増加する事を特徴とする電極である。
請求項14に記載の本発明は、請求項1から13のいずれかに記載の電極であって、前記過充電となる電位で分解する前記材料Aが熱膨張マイクロカプセルまたは熱発泡剤である事を特徴とする電極である。
請求項15に記載の本発明は、請求項1から14のいずれかに記載の電極であって、前記結着性の材料Dがポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンラバー、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、のいずれかである事を特徴とする電極である。
請求項16に記載の本発明は、請求項1から15のいずれかに記載の電極を用いて製造された電池である。
本発明の電池の電極は、電池の過充電に伴い発生する熱によって本発明の電極を構成する材料の一部が分解する事で、電極の抵抗増加が生じ、過充電の進行を抑制する事ができ、且つ、熱によって分解する材料(以降、熱分解性材料という)が充放電に伴うリチウムイオン移動に関わる材料と直接接触する事を避ける事で通常の充放電時に電池反応を阻害する事がない為、種々の充放電特性を低下させる事なく、安全性が飛躍的に向上した電池の電極を提供する事が出来る。
本発明の電極の構成を概略的に示す断面図
以下、本発明の実施の一例を、図1を用いながら説明する。図1は、本発明に係る電極の構成を概略的に示す断面図である。
図1に図示する基板100には導電性材料を使用する。基板100に用いる導電性材料としてはアルミニウムやステンレス鋼、その中でも箔状のアルミニウム(以降、アルミニウム箔という)が好適である。アルミニウム箔は一般的にリチウムイオン二次電池の正極集電体に用いられる材料であり、安価で且つ正極の電位においてリチウムイオンと合金化しない。正極の電位においてリチウムイオンと合金化する材料では、リチウムイオンが挿入脱離する充放電に伴い集電体が脆化する為、電池の充放電サイクル特性が著しく低下する。また、基板100の厚みは特に限定されないが、基板100を用いて電池を製造する際に、電池の重量および体積当りのエネルギー密度を高める為に、電池製造工程上の集電体にかかる負荷に耐え得る強度を維持する範囲で、より薄い方が好ましい。一般的なリチウムイオン二次電池の正極集電体に用いられるアルミニウム箔の厚みは8μmから20μm程度である。また、より集電体の重量を軽量にする為に、樹脂上にアルミニウムを薄く形成した材料を集電体としても良い。さらに、基板100上に形成する層200(以降、熱分解機能性下地層200または下地層200という)に密着性を向上させるため、基板100の表面に粗化処理が施されていても良い。
次に、基板100上に形成される熱分解機能性下地層200には、電池の過充電に伴い発生する熱で分解する熱分解性材料201と、導電性を有する材料202とが含有されている。熱分解性材料201は分解に伴い、電極内の抵抗を上昇する効果が得られるものであれば特に限定されず、分解に伴いガスを発生する材料、重合する材料、膨張する材料など適宜選択できる。例えば、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドやアゾジカルボンアミドなどの分解に伴い発泡する材料が好適である。これらの材料は分解に伴い発泡する事で電池の抵抗を増加する事ができる。また、熱膨張マイクロカプセルのように熱によって膨張する材料を選択する事もできる。
また、一般的にリチウムイオン電池使用がされる環境温度は、−20℃から70℃程度が想定される為、熱分解性材料の分解温度が80℃以下の場合、通常の電池使用環境で熱分解性材料が分解してしまい、抵抗上昇により電池が著しく劣化する恐れがある。また、電池の熱暴走は選択される正極活物質種および負極活物質種にもよるが一般的に140℃前後で生じる事が多い為、熱分解性材料の分解温度が140℃を超えていると、熱暴走を抑制できなくなる。これらの事から、熱分解性材料は80℃から140℃の温度範囲で分解する事が好ましい。さらに、これらの材料が、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液の溶媒である、エチレンカーボネイトやジメチルカーボネイト、ジエチルカーボネイト等のカーボネイト系材料に耐性がない場合、これらの材料が電解液中に分散する事で電池の充放電特性が低下してしまう恐れがある。その為、熱分解機能性下地層200が電解液に接触、浸漬する事は好ましくない。
また、導電性材料202は熱分解機能性下地層200内を基板100側から表面側に連続的に導電性が維持され、基板100と下地層200の上に形成される層300(以降、下地保護層300という)を電気的に接続出来得る材料であれば特に限定されないが、金属粒子、金属化合物、非晶性炭素、結晶性炭素などの高導電性材料が好ましい。
また、熱分解機能性下地層200にはその他の材料が含まれていてもよい。例えば、熱分解性材料201と導電性材料202の密着性を向上する為の結着性材料が含まれていても良い。結着性材料としては例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、スチレンブタジエンラバーなどが挙げられる。結着性材料を含む事で層内の密着が高まり、熱分解性材料201に効果的に熱を伝える事ができる。
また、熱分解機能性下地層200の厚みは熱分解性材料201と導電性材料202の種類や粒子径により適宜取り決める事が出来るが、熱分解性材料201が電池の過充電時に効果を発揮する量を含有した上でなるべく薄い事が好ましい。下地層200を薄く形成する事で、下地層200の断面方向(厚み方向)の抵抗を下げる事が出来、電池の電極として使用した時の抵抗値を低減する事ができる。電池内部の抵抗は、電池の電流負荷特性や充放電サイクル特性に大きく影響を与える。
次に、前述のように熱分解機能性下地層200と電解液が接触すると下地層200内の熱分解性材料が電解液中に溶出してしまう事が多い為、下地層200上に形成される下地保護層300は電解液を浸透しない事が要求される。ここで、電解液を浸透しないとは、下地保護層300の表面上に接触した電解液の成分が、下地層200と下地保護層300の界面に到達しない事と定義する。電解液を浸透しない事で、下地層200への電解液の接触を防止し、熱分解性材料201の電解液内への溶出を防止する事ができる。また、下地層200が基板100に対して垂直方向からだけでなく水平方向からの電解液の接触を防止する為に、下地保護層300は下地層200を基板100側以外の全方位を被覆するように形成するのが好ましい。
また、同時に下地保護層300には下地層200および下地保護層300上に形成される層400(以降、電極層という)と電気的に接続される事が要求される為、導電性を有する事が要求される。このような材料としては、例えば蒸着やスパッタリング法等の薄膜形成法によって形成される金属薄膜や、ラミネートフィルム型電池の外装体であるアルミラミネートフィルムの接着層に使用される無延伸ポリプロピレンのような樹脂材料と導電性材料を混合したものが好適である。緻密に形成された金属薄膜であれば電解液浸透性は極めて低く、また無延伸ポリプロピレンも膨潤性が低く電解液を浸透し難い事が知られている。
下地保護層300の厚さは下地保護層300上の電解液が下地層200に到達しなければ特に限定されないが、電極全体の抵抗を下げる観点から極力薄く形成される事が好ましい。例えば、前述の薄膜形成法によって形成される金属薄膜は、1μm未満の膜厚を精度良く形成する事ができる。また、薄膜を形成する金属の中でも、段落〔0030〕に記載のようにアルミニウムは正極の電位でもリチウムと合金化しない為好適である。
次に下地保護層300上に形成される電極層400には、リチウムイオンを挿入脱離できる材料401(即ち活物質)と、導電性材料402(即ち導電助材)と、材料401同士または導電性材料402同士または材料401と導電性材料402を相互に電気的に接続する事ができる結着性の材料403(即ち結着材)とが含有される。
材料401としては、例えばLiCoO、LiNiO、LiMn、LiFePO、LiMnPO、LiCo(1−x)(M:Mn、Niなどの繊維金属、0<x<1)、LiNiCoMn(1−x−y)(0<x<1,0<y<1,0<x+y<1)などが挙げられ、電池に求める電圧および容量特性に応じて適宜選択する事ができる。特にLiCoOやLiNiO、LiNiCoMn(1−x−y)(0<x<1,0<y<1,0<x+y<1)などのような層状化合物を電池の電極活物質として用いる場合、過充電時に熱暴走を起こしやすい事が知られている。
導電性材料402は電極層400内を基板100側から表面側に連続的に導電性が維持され、材料401と接触する事によって、材料401に対してリチウムイオンが挿入脱離する際に、材料401から基板100にかけての電子移動が円滑に進行できる機能を持つ材料であれば特に限定されなく、選択される材料401、結着性材料403に応じて適宜選択される。より好適には、非晶性炭素材料、結晶性炭素材料、金属粒子、金属化合物粒子などの高導電性材料を用いるのが好ましい。
結着性材料403は電極層400内の各材料を効果的に密着する事が出来うる材料であれば特に限定されず、材料401および材料402に応じて適宜選択する事ができる。材料403としては例えば、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンラバー、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
以上の構成により、本発明の電極が完成する。本発明の電極の構成材料は上記に例示されたものに限定されず、同様の機能を持つと類推される全ての材料を含むものとする。
(本明細書に記載の構成となる電極の作製)
基板に厚さ10μmのアルミニウム箔を準備した。
基板上に形成する熱分解機能性下地層に用いる熱分解性材料に熱膨張マイクロカプセル、導電性材料にアセチレンブラック、結着材にポリフッ化ビニリデンを準備した。
これらの材料を、n−メチル−2−ピロリドンを溶媒として一軸攪拌機を用いて10分間攪拌し、塗液を作製した。次に、作製した塗液をバーコータを用いてアルミニウム箔上に乾燥後の層厚さが2μmとなるように塗工した。さらに塗液の溶媒を完全に除去する為に、100℃で1時間乾燥処理を実施した後、真空環境下で再度100℃で12時間乾燥処理を実施した。
次に、熱分解機能性下地層が形成された基板上に下地保護層としてアルミニウム層を形成した。アルミニウム層の形成はスパッタリング法を用いて実施し、アルミニウム層の厚さが800nmとなるようにした。また、アルミニウム層形成中にスパッタリングにより発生する熱で熱分解機能性下地層が劣化しないように、基板を冷却しながらスパッタリングを実施した。
次に、熱分解機能性下地層および下地保護層が形成された基板上に形成する電極層として使用する材料に、活物質としてLiCoO、導電助剤としてアセチレンブラック、結着材としてポリフッ化ビニリデンを準備した。
これらの材料を、LiCoOとアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンの重量比が90対5対5となるよう秤量し、n−メチル−2−ピロリドンを攪拌溶媒として、二軸混練攪拌機を用いて30分間攪拌して塗液を作製した後、アプリケータを用いて目付量が13mg/cmとなるようにアルミニウム箔上に塗工した。さらに塗液の溶媒を完全に除去する為に、100℃で1時間乾燥処理を実施した後、真空環境下で再度100℃で12時間乾燥処理を実施した。
以上の工程により、熱分解機能性下地層および下地保護層を有する電極を作製する事ができた。
(本明細書に記載の構成に対する比較となる一般的な電極の作製)
基板として厚さ10μmのアルミニウム箔を準備した。
次にアルミニウム箔上に形成する電極層として使用する材料には、活物質としてLiCoO、導電助剤としてアセチレンブラック、結着材としてポリフッ化ビニリデンを準備した。
LiCoOとアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンの重量比が90対5対5となるように秤量し、n−メチル−2−ピロリドンを攪拌溶媒として、二軸混練攪拌機を用いて30分間攪拌して塗液を作製した。作製した塗液をアプリケータで、アルミニウム箔上に目付量が13mg/cmとなるように塗工した。さらに塗工した塗液の溶媒を完全に除去する為に、100℃で1時間乾燥処理を実施した後、真空環境下で再度100℃で12時間乾燥処理を実施した。
以上の工程により、本明細書に記載の構成に対する比較となる一般的な電極を作製する事ができた。
(本明細書に記載の構成の電極および一般的な電極を正極として電池を作製する際の負極の作製)
基板に厚さ10μmの銅箔を準備した。
次に銅箔上に形成する電極層として使用する材料には、活物質として鱗片状黒鉛、導電助剤としてアセチレンブラック、結着材としてスチレンブタジエンラバーを準備した。
鱗片状黒鉛とアセチレンブラックとスチレンブタジエンラバーの重量比が96対3対1となるように秤量し、水を攪拌溶媒として、一軸混練攪拌機を用いて1時間攪拌して塗液を作製した。また、この時、塗液の粘度を調整するためにカルボキシメチルセルロースを前記組成の総重量部100に対して1重量部を添加して作製した。作製した塗液をアプリケータで銅箔上に目付量が6mg/cmとなるように塗工した。さらに、塗工した塗液の溶媒を完全に除去する為に、100℃で1時間乾燥処理を実施した後、真空環境下で再度100℃で12時間乾燥処理を実施した。
以上の工程により、負極を作製する事ができた。
比較例1
実施例1および2で作製したそれぞれの電極を用いて、対極に実施例3で作製した負極、電解液に1mol/Lの六フッ化燐酸リチウムを含有し、且つ重量比が1対1となるような割合でエチレンカーボネイトとジエチルカーボネイトが混合された溶媒を用いたラミネート型電池を作製した。電池の容量は、正極と負極を積層し500mAhとなるように設計した。以降、本比較例1内に記載の実施例1で作製した電極を用いた電池を電池1−1、実施例2で作製した電極を用いた電池を電池2−1と呼称する。
次に、電池1−1、2−1を用いて過充電試験を実施した。測定温度を25℃として、充電電流1500mAで12Vまで充電し、その時の電池の様子を観察したところ、1−1の電池には特に変化は生じなかったが、2−1の電池からは白煙が生じた。
比較例2
実施例1および2で作製したそれぞれの電極を用いて、比較例1に示した電池と同じ構成の電池を作製した。以降、本比較例2内に記載の実施例1で作製した電極を用いた電池を電池1−2、実施例2で作製した電極を用いた電池を電池2−2と呼称する。
次に、電池1−2、2−2を用いて電流負荷特性を評価した。測定温度を25℃として、充電電流250mAで4.1Vまで充電した後、放電電流250mAで3Vまで放電し、さらにその後充電電流250mAで4.1Vまで充電した後、放電電流2000mAで3Vまで放電した。この試験における放電電流250mAで放電した時に得られた電池容量に対する放電電流2000mAで放電した時に得られた電池容量の比率を負荷容量維持率として電池1−2と2−2を比較したところ、電池1−2の負荷容量維持率は81.8%、電池2−2の負荷容量維持率は83.3%とほぼ同等の値を示した。
比較例3
実施例1および2で作製したそれぞれの電極を用いて、比較例1に示した電池と同じ構成の電池を作製した。以降、本比較例3内に記載の実施例1で作製した電極を用いた電池を電池1−3、実施例2で作製した電極を用いた電池を電池2−3と呼称する。
次に、電池1−3、2−3を用いて充放電サイクル特性を評価した。測定温度を25℃として、充電電流500mAで4.1Vまで充電した後、放電電流500mAで3Vまで放電する充放電を1サイクルとし、200サイクルまで実施したときの1サイクル目の放電容量に対する200サイクル目の放電容量を容量維持率として電池1−3と2−3を比較したところ、電池1−3が容量維持率91.0%であったのに対して2−3が92.3%とほぼ同等の値を示した。
以上の比較例1から3の結果を表1にまとめる。これらの結果から熱分解機能性下地層および下地保護層を有した電極を用いた電池は過充電時の安全性を向上しながら、従来の電極を用いた電池と同等の充放電性能が得られる事が示された。
本発明の電極の構成は、リチウムイオン二次電池分野をはじめとして、安全性を必要とするエネルギーデバイスに関わる全ての分野に適用する事ができる。
100…基板
200…熱分解機能性下地層
201…熱分解性材料
202…導電性材料
300…下地保護層
400…電極層
401…活物質
402…導電助剤
403…結着材

Claims (16)

  1. 正極と負極の間を電解質を介してリチウムイオンが移動するのに伴い、充電または放電する事が可能な電池の電極であって、
    導電性を有する基板の少なくとも一方の面に、少なくとも3層以上の層が形成されており、前記3層以上の層は、前記基板上に少なくとも電池の過充電時に発生する熱で分解する材料Aと導電性を有する材料C1を含む第一の層L1と、
    前記第一の層L1上に層L1が表面に露出しないように形成され、且つ導電性を持つ第二の層L2と、
    前記第二の層L2上に形成され、少なくとも前記リチウムイオンを挿入脱離できる材料Bと、導電性を有する材料C2と、前記材料B同士または前記材料C2同士または前記材料Bと前記材料C2を相互に電気的に接続する事ができる結着性の材料Dを含む第三の層L3とを含み、
    前記基板及び層L1から層L3までの層が電気的に接続されている事を特徴とする電極。
  2. 前記電極が正極である事を特徴とする請求項1に記載の電極。
  3. 前記基板がアルミニウム、ステンレス鋼または樹脂上にアルミニウムを形成したものである事を特徴とする請求項1または2に記載の電極。
  4. 前記第二の層L2が蒸着またはスパッタリング法などの薄膜形成法により形成された金属薄膜である事を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電極。
  5. 前記金属薄膜がアルミニウム箔膜である事を特徴とする請求項4に記載の電極。
  6. 前記第二の層L2が導電性を有する材料C3と電解液浸透性の低い樹脂材料で形成されている事を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電極。
  7. 前記導電材料C1からC3が、全て同じ材料または、各々が別の材料である事を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電極。
  8. 前記導電性材料C1からC3が少なくとも金属、金属化合物、非晶性炭素、結晶性炭素、導電性ポリマーのいずれかまたはそれらを組み合わせた材料である事を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電極。
  9. 前記リチウムイオンを挿入脱離できる材料Bが、挿入脱離できるリチウム原子を含んだ層状構造を持つ酸化物、スピネル構造を持つ酸化物、オリビン型構造を持つ酸化物のいずれかまたはそれらを組み合わせた材料である事を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電極。
  10. 前記電池の過充電時に発生する熱で分解する材料Aが80℃から140℃の範囲で分解する事を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電極。
  11. 前記材料Aが分解に伴い発泡する材料である事を特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の電極。
  12. 前記材料Aが分解に伴い重合する材料である事を特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の電極。
  13. 前記第一の層L1の電気抵抗が前記材料Aの分解に伴い増加する事を特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の電極。
  14. 前記過充電となる電位で分解する前記材料Aが熱膨張マイクロカプセルまたは熱発泡剤である事を特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の電極。
  15. 前記結着性の材料Dがポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンラバー、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、のいずれかである事を特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の電極。
  16. 請求項1乃至15のいずれかに記載の電極を用いて製造された電池。
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