JP2015075095A - クランクホルダ揺動式圧縮比可変装置 - Google Patents

クランクホルダ揺動式圧縮比可変装置 Download PDF

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Abstract

【課題】クランクホルダ揺動式圧縮比可変装置は、クランクホルダ、シリンダケースの剛性、強度、耐久性確保、総ての運転時にてクランク回転軸位置の安定可変、保持制御及び保持動力の不要、軽減化、最高、最低圧縮比リミット安全機構と、動弁伝動機構の軸間距離の変化及びアクセルに対応し、圧縮比を瞬時に可変できる応答性が必須となる。
【解決手段】クランクの両端ジャーナル間幅と略同長の円筒を、変速機に動力伝達するアウトプット(シャフト)と同芯にてシリンダケース合せ面で締結固定しピボット軸とし、クランクホルダを▲櫛▼状や漢字の目の字状に形成、クランクホルダを揺動させるジャッキ機構の一部に非可逆伝達機構を用い、それより駆動上流側伝達機構の動きを制限すると共に、動弁伝動機構の駆動をアウトプット(シャフト)から行う。
【選択図】図1−1

Description

本発明は、自動車等の動力装置において、クランクを回転可能に軸支するクランクホルダを、変速機に動力伝達するアウトプット(シャフト)と同芯のピボット軸にて揺動させ、クランク回転軸とアウトプット(シャフト)の軸間距離を一定に保ち、燃焼室に対するクランク回転軸位置を変え圧縮比を可変する装置に関するものである。
燃焼室に対するクランク回転軸位置を固定したままで圧縮比を可変するものに、ピストンピン軸上のピストン長を変えるもの、コンロッド大小端軸部の偏芯軸によりコンロッド又はピストンピン位置を変えるもの、コンロッドを2節としコンロッド長を変えるもの、コンロッド大端軸をクランクピンとは別位置としクランクピン位置に対する大端軸位置を変えるもの等が提案されているが、往復運動部重量増加、機構が大掛かりとなることによるコスト、重量増加、振動増加等の欠点がある。クランクケースに対しクランク回転軸位置は固定したままで、燃焼室容積を変えるものも提案されているが、往復運動部重量、振動増加の欠点は出ないが、変動部の大重量化及び動弁駆動軸間の変動に対する対応を図らないと素早い圧縮比可変は不可能で、圧縮比可変駆動力の大容量化及びドライブシャフト動弁駆動機構等での軸間の変動に対する対応が不可欠となり、コスト、重量が大幅に増加する欠点がある。往復運動部重量、振動増加を招かずコスト、重量増加も比較的抑えられる方法として、燃焼室に対するクランク回転軸位置を変えることで圧縮比を可変する特許文献1〜3がある。
クランクを偏芯軸受にてシリンダケースに回転可能に軸支し、偏芯軸受を駆動装置にて回転させ、燃焼室に対するクランク回転軸位置を変えることで圧縮比を可変する特許文献1がある。
登録実用新案第3038403号
クランクを回転可能に軸支するクランクホルダを、変速機軸又は変速機に動力伝達するアウトプットシャフトと同芯のピボット軸にて揺動させ、変速機軸又は変速機に動力伝達するアウトプットシャフトとの軸間距離を一定に保ちつつ、燃焼室に対するクランク回転軸位置を変え圧縮比を可変する特許文献2、3がある。
特開昭58−220926号公報 特許第4229867号
特許文献1は、クランクが偏芯軸受を介してシリンダケースに回転可能に軸支され、偏芯軸受を駆動装置にて回転させることで、燃焼室に対するクランク回転軸位置が変更され、ピストン上死点位置が変わり圧縮比が変更されるもので、クランク回転軸位置がシリンダケースに対し半円状の軌跡で変化し、シリンダケースに対し位置固定された変速機軸又は変速機に動力伝達するアウトプットシャフトとの軸間距離が変化してしまうので、対応を図らないと適正な動力伝達が困難になる。伝達効率の良いギヤ伝動では、たとえ半円軌跡の半径を大きくしてもバックラッシュが変化して噛合い音が増加するので採用困難であり、等速ジョイント等を採用する必要があるが、コスト、メカロスが増加してしまう欠点がある。
特許文献2、3は、クランクを回転可能に軸支するクランクホルダを、変速機軸又は変速機に動力伝達するアウトプットシャフトと同芯のピボット軸にて揺動させ、動力伝達軸間距離を不変とするもの故、往復運動部重量、振動増加を招かずコスト、重量増加も比較的抑えつつ、駆動力伝達騒音も抑えられるものであるが、単気筒に限らず多気筒でも、圧縮比固定の従来内燃機関並みの性能を確保しつつ圧縮比可変を成立させる為には、下記内容の対応が必須である。
1.クランクホルダ、シリンダケース及びそれらの連結部の剛性、強度、耐久性確保
燃焼圧を回転力に変換するクランクを軸支し、変速機軸又は変速機に動力伝達するアウトプットシャフトに、動力伝達するギヤ、ベルト等を保持するクランクホルダ、シリンダケース及びそれらの連結部は、燃焼圧とクランク回転による巨大な負荷変動、及び動力伝達により発生する負荷に対する充分な剛性、強度、耐久性が必要だが、特許文献2では、シリンダケースの揺動ピボット部の剛性、強度不足が懸念される構造であり、圧縮比を可変させる偏芯カムとクランクホルダとの接触が線接触故に、燃焼圧変動やクランク回転起因の振動により摩耗しやすく耐久性が無い。
特許文献3では、圧縮比を可変させる力点、作用点をシリンダ軸、クランク軸付近に設けることで支点(ピボット部)への負荷を軽減させているが、力点である駆動機構保持部に負荷が集中するので、その部分のケース剛性、強度を向上させる必要があり、小排気量、単気筒エンジンには採用出来ても大排気量、多気筒エンジンへの採用は困難である。
2.クランク軸位置の安定可変、保持制御及び保持動力不要、軽減化
エンジン始動時及び圧縮比可変時を含めた総ての運転時において、クランク軸位置の安定保持が必須であるが、特許文献2では、始動時油圧が上がらない間低圧縮比となると共に、油圧が上がっても燃焼圧変動に対しスプリング反力と油圧では位置を安定して保持することが困難であるし、偏芯カム故、上、下支点付近は非可逆伝達となり負荷側の力により駆動側が動かないので駆動力無しでも位置を保てるが、上、下支点付近以外では可逆伝達となり駆動力を保持しないと位置がずれてしまう。
特許文献3も、油圧を使った場合では油圧が確保されていれば非可逆伝達にでき安定して保持できるが、油圧が上がらないと位置可変が不可能となるか応答が遅くなると共に保持が不安定となるし、偏芯カムを使った場合も、上、下支点付近以外では電動モータにて位置保持制御をする必要があり電力を消費してしまう。また、圧縮比を下げる場合は、圧縮行程終了付近や膨張行程のクランクホルダを燃焼室に対しクランク軸を遠ざける方向に揺動させる力が働く時に、圧縮比を上げる場合は、ピストンの慣性力によりクランクホルダを燃焼室に対しクランク軸を近づける方向に揺動させる力が働く時に、油圧ピストンを作動させる方法も提案されているが、単気筒エンジンにて成り立つ案で多気筒エンジンでは成立困難である。また、たとえ単気筒でも成立させる為にはピストン径に掛かる高燃焼圧に対し、安定して制御可能な油圧ピストン径と油圧が必要となる。
3.最高及び最低圧縮比リミット安全機構
特に最高圧縮比側でクランクホルダ揺動機構がオーバーランしてしまうと、ピストン頂部が吸、排気バルブやシリンダヘッド燃焼室と接触し各部が破損してしまうので、最高、最低圧縮比を制限する機構が必須である。特許文献2、3共、偏芯カム又は油圧ピストンの上、下死点にて制限されているので問題無いが、他の方法を採用するときはリミット安全機構が不可欠である。
4.動弁伝動機構のクランク回転軸とカムシャフト軸間距離の変化対応及びアクセルに対する瞬時応答性の確保
特許文献3の図のように動弁伝動機構にチェーンを用い駆動スプロケットをクランク軸に設けた場合、クランク回転軸とカムシャフト軸間距離の変化によるバルブタイミングの変化は、VVT等にて対応できるので問題から除外して良いが、圧縮比可変範囲を広くとろうとすると(例えば圧縮比を10〜15位に可変)クランク回転軸とカムシャフト軸間距離の変化によるチェーンの周長変化量が、耐久寿命のチェーンの伸び相当分程度になり、双方を吸収し適正なチェーンの張りを確保する為に、チェーンテンショナの揺動量を倍位とる必要があり、SOHCではチェーンガイド側とチェーンテンショナ側のチェーンが当ってしまったり、DOHCでもチェーンテンショナのRが小さくなりすぎテンショナの耐久性に問題が出てきたりする。また、アクセルに対応して圧縮比を瞬時に変化させる必要上、クランク回転軸とカムシャフト軸間距離の変化に対応して、チェーンを適正に張りつつチェーテンショナを揺動させる必要がある。低圧縮比から高圧縮比に可変する時は、適正に張りつつテンショナを張る側に揺動させるので速い応答速度で対応できるが、高圧縮比から低圧縮比に可変する時は、適正に張りつつテンショナを緩める側に揺動させる必要があり、通常用いられているチェーンアジャスタ装置では困難であり、電動又は油圧と電子制御を組合せた高度なチェーンアジャスタが必要となるし応答速度も遅くなる。対策としては、クランク軸とカムシャフトに傘歯車を設けシャフトドライブにて駆動力を伝達し、シャフトドライブの軸間距離をスプライン継ぎ手等にて可変可能にする方法があるが、コスト、重量高となる。チェーンを用いる場合での対策は、特許文献3にて考え方が述べられているように、カムシャフトに対し軸間の変化しないメイン軸等にクランク軸と一体回転する駆動スプロケットを設ける方法が効率的である。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたもので、クランクを回転可能に軸支するクランクホルダを変速機に動力伝達するアウトプット(シャフト)と同芯のピボット軸にて揺動させ、動力伝達軸間距離を不変とし燃焼室に対するクランク回転軸位置を変え圧縮比を可変する装置において、クランクの両端ジャーナル間幅と略同長の円筒をシリンダケース合せ面にて締結固定してピボット軸とし、クランクホルダを▲櫛▼状や漢字の目の字状に形成、さらにはシリンダケース合せ面にて締結固定した円筒にジャッキ機構を保持する等して、単気筒に限らず多気筒でもクランクホルダ、シリンダケース及びそれらの連結部の剛性、強度、耐久性を確保しつつ、クランクホルダを揺動させるジャッキ機構の一部に非可逆伝達機構を用い、それより圧縮比制御モータ側の上流伝達機構部の動きの範囲を制限すると共に、動弁伝動機構の駆動をアウトプット(シャフト)から行いカムシャフトとの軸間距離を不変とすることで、始動時及び圧縮比可変時等も含めた総ての運転時においてクランク軸位置の安定可変、保持制御及び保持動力の不要化が図れ、最高及び最低圧縮比リミット安全機構を有しピストン頂部と燃焼室の部品類との接触による関係部品の破損を防止でき、動弁伝動機構のクランク回転軸とカムシャフト軸間距離の変化対応及びアクセルに対する瞬時応答性を確保できる圧縮比可変装置を提供することを目的とする。
前述の課題を解決する為の請求項1の発明は、クランク回転軸に平行に配置され、クランクにギヤを介して変速機構と連結するアウトプットと同芯にシリンダケース合せ面にて締結固定され、クランクの両端ジャーナル間幅と少なくとも略同長の円筒をピボット軸とし、シリンダ内で往復運動するピストンがコンロッドにて連結されるクランクを回転可能に軸支するクランクホルダを、ジャッキ機構にて揺動させ燃焼室に対するクランク回転軸の位置を変えることを特徴とする。
特許文献2の様に、ピボット軸を揺動アーム毎に分割しシリンダケースに固定したものは、シリンダケースの剛性、強度向上にピボット軸は寄与しておらず剛性、強度不足となり易い。特許文献3の例では、一本の変速機入力軸をピボット軸としクランクケースに玉軸受にて軸支しており、入力軸はクランクケースの剛性、強度向上に寄与しておらず剛性、強度不足となり易い。また、単気筒であれば左右揺動アームスパンと入力軸のギヤ列幅が近いので入力軸をピボット軸にできるが、多気筒になると幅が違いすぎピボット軸とすることは困難となる。また、クランクホルダ揺動駆動機構(ジャッキ機構)をシリンダ軸線、クランク回転軸付近に設けることで、燃焼圧とクランク回転による巨大な負荷変動によるピボット軸部の負荷を極力少なくしているが、揺動駆動機構を保持する部分のクランクケースに負荷が集中するので、その部分のケースの剛性、強度不足を招き易く大排気量エンジンには向かない。
本発明は、クランクを保持する揺動アームのピボット軸を、クランクの両端ジャーナル間幅と少なくとも略同長の円筒としシリンダケース合せ面にて締結固定することにより、シリンダケースの剛性、強度を増すことができるので、燃焼圧とクランク回転による巨大な負荷変動、及び動力伝達により発生する負荷に対し、シリンダケースの充分な剛性、強度、耐久性を、多気筒、大排気量エンジンにおいても確保できるようになる。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面に対し直角方向から視て、クランクホルダの揺動アーム部をクランク回転軸に略直角に各クランクジャーナル部と円筒軸部を連結すると共に、クランク回転軸に対して円筒の反対方向側にまで延長して形成し、円筒の反対側のクランク外側で各揺動アーム部をクランク回転軸に略平行なアームにて連結した▲櫛▼状とすると共に、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を結んだ平面にて二つ割りとし締結することでクランクホルダを一体化形成し、連結アーム部にジャッキ機構を設けることを特徴とする。
特許文献3の例の様に、揺動アームを結合部材で締結しクランクホルダを形成するものは、剛性、強度を確保しにくく小排気量、単気筒であれば成立するが、多気筒、大排気量に採用することは非常に困難となる。特許文献2の例では、クランクホルダをコの字状に一体形成しており比較的に剛性を確保し易いが、クランクジャーナル部を半割状の軸受具にて保持する方式ゆえ、半割り片方のクランクホルダのみで剛性、強度を確保する必要があると共に、ジャーナル部を潤滑する油路の形成が難しい。また、ピボット軸が揺動アーム部毎に別体であるのでアーム根元部が剛性不足となり大排気量への採用は困難である。
本発明では、クランクジャーナル部毎に設けた揺動アームをピボット軸穴の反対側のクランク外側でクランク回転軸に略平行なアームにて連結し▲櫛▼状としたクランクホルダを、各揺動アームに亘って一本の円筒をピボット軸として揺動保持することにより、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面方向の剛性、強度を著しく向上させることができ、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を結んだ平面にて二つ割りとし締結することで、割面両側に略均等に揺動アームを形成できるので割面に直角方向の剛性、強度も確保し易く、多気筒、大排気量化が可能となる。また、割面部に鋳造による溝を形成できるのでピボット部やクランク等への油路を容易に形成できる。さらに、連結アーム部にジャッキ機構を設けることで、燃焼圧とクランク回転による巨大な負荷変動による荷重を、円筒とジャッキ機構の保持部にて分担することで、シリンダケースの各保持部負荷を略半減でき、多気筒、大排気量化が可能となる。
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、円筒内径穴部をクランク等にオイルを供給するオイル通路とすることを特徴とする。
特許文献3の例の様に、クランクホルダとクランクホイール側面に保持されたシールプレートの側面を摺動接触させ油路を形成する方法では、油圧を上げることが困難で玉軸受には採用可能だがメタル軸受では採用困難であり、エンジン回転と同回転にて摺動接触するのでメカロス大で耐久性も劣るし、なによりも多気筒にはシールプレートの組立面から採用できないものである。揺動するクランクに潤滑油を供給する他の方法としては、可撓性のあるホースにてクランクジャーナル部に油を送る方法があるが、メタル軸受の場合は高圧で供給する必要があり、高温、高圧、可撓耐久性を有するホースが必要となりコストUPを招く。
本発明の様に、潤滑油供給専用部品を使わずに、シール性があり高圧を確保し易いピボット軸から、揺動アーム部に設けた油路を経由してクランクジャーナル部に油を送るのが合理的な方法であり、クランクの両端ジャーナル間幅つまりはクランクホルダ両端揺動アーム部幅と少なくとも略同長とした円筒(ピボット軸)の内径穴部をクランク等にオイルを供給するオイル通路とすることで、コスト、重量UPすること無く多気筒にも高圧油を供給できるものである。尚、第一実施例では円筒内径穴部と穴部を貫通して配置されたアウトプットシャフトとの空間を、第三実施例では円筒を二重管とし外管と内管の空間を油通路としている。
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、クランクにギヤを介して変速機構と連結するアウトプットを円筒穴部と同芯にて貫通するシャフトとし、ギヤ列側に配置した変速機係合ボス部の反対側の円筒外側に動弁、オイルポンプ、補機類等駆動の為のスプロケット、プーリ等を配置することを特徴とする。
特許文献3の例の様に、変速機入力軸にクランクホルダを揺動軸支するものは多気筒でのレイアウトが困難であり、クランク回転軸からチェーンにて動弁の駆動をしているが、発明が解決しようとする課題の対応必須項目4で述べたクランク回転軸とカムシャフト軸間距離の変化対応及びアクセルに対する瞬時応答性の確保が不十分である。
本発明の様に、クランクにギヤを介して変速機構と連結するアウトプットを円筒穴部と同芯にて貫通するシャフトとし、ギヤ列側に配置した変速機係合ボス部の反対側の円筒外側に動弁、オイルポンプ、補機類等駆動の為のスプロケット、プーリ等を配置することで、前記問題を解決すると共に、シリンダブロック(クランク)に対し変速機構の反対側に動弁、オイルポンプ、補機類等を配置することにもなり、コンパクトで整備しやすいエンジンにできる。
本実施例ではアウトプットをシャフトとしているが、円筒を変速機側に延長させクランクにギヤを介して変速機構と連結するアウトプットを円筒外周に回転可能に軸支し、アウトプットから動弁、オイルポンプ、補機類等を駆動することもできる。
また、請求項5の発明は、請求項1の発明において、クランクホルダを揺動させるジャッキ機構として、ネジ棒に対し片側一対のリンクとしたパンタグラフジャッキを用い、中央部に圧縮比制御モータからの駆動力を受けるギヤを設けたネジ棒をシリンダケースに円筒に平行に配置すると共に、回転自在、径方向固定、軸方向スライド自在に軸支し、ネジ棒の回転によるリンク支持部の軸方向の動きをリンクにてクランクホルダを揺動させる動きに変換することを特徴とする。
特許文献2、3の例でクランクホルダの揺動駆動機構として偏芯カムをもちいたものは、クランクホルダ揺動機構がオーバーランしても、ピストン頂部が吸、排気バルブやシリンダヘッド燃焼室と接触し各部を破損させることは無いが、偏芯カム故、上、下支点付近は非可逆伝達となり負荷側の力により駆動側が動かないので駆動力無しでも位置を保てるが、上、下支点付近以外では可逆伝達となり駆動力を保持しないと位置がずれてしまう。さらに特許文献2では、始動時油圧が上がらない間低圧縮比となると共に、油圧が上がっても燃焼圧変動に対しスプリング反力と油圧では位置を安定して保持することが困難である。特許文献3の例でクランクホルダの揺動駆動機構として油圧を使った場合では、油圧が確保されていれば非可逆伝達にでき安定して保持できるが、油圧が上がらないと位置可変が不可能となるか応答が遅くなると共に保持が不安定となる。また、圧縮比を下げる場合は、圧縮行程終了付近や膨張行程のクランクホルダを燃焼室に対しクランク軸を遠ざける方向に揺動させる力が働く時に、圧縮比を上げる場合は、ピストンの慣性力によりクランクホルダを燃焼室に対しクランク軸を近づける方向に揺動させる力が働く時に、油圧ピストンを作動させる方法が提案されているが、単気筒にて成り立つ案で多気筒では成立困難であり、多気筒で成立させる為にはピストン径に掛かる高燃焼圧に対し、安定して制御可能な油圧ピストン径と油圧が必要となる。
本発明は、ネジ棒を回転させリンク支持部を軸方向に動かせて、リンクにてクランクホルダを揺動させる動きに変換するもの故、ネジ部が常時非可逆伝達となり、負荷側らの荷重によりネジ棒から制御モータ側の上流伝達機構に力が働かなくなるので、圧縮比可変時、保持時共に全運転時においてクランク軸位置の安定可変、保持が可能となると共に、保持電力が不要となる。
また、請求項6の発明は、請求項1の発明において、クランクホルダを揺動させるジャッキ機構の一部に非可逆伝達機構を用い、非可逆伝達機構より圧縮比制御モータ側の上流伝達機構部の動きの範囲を制限することで圧縮比可変範囲を制限することを特徴とする。
特許文献2、3の例では、偏芯カム又は油圧ピストンの上、下死点にて圧縮比可変範囲を制限しているので、たとえクランクホルダ揺動機構がオーバーランしても偏芯カムであれば上、下死点から中央側に戻るだけであるし、油圧の場合もピストンをシリンダ壁に押付ける荷重が上がるだけであるが、非可逆伝達機構にネジを用いた場合はネジ部がロックしてしまい、制御モータで戻そうとすると過大な電力が必要になるか、最悪の場合はロックを解除できなくなってしまう危険がある。
本発明の様に、非可逆伝達機構より圧縮比制御モータ側の上流伝達機構部の動きの範囲を制限することで、ネジ部をロックさせること無く圧縮比可変範囲を制限することが可能となる。
また、請求項7の発明は、請求項2の発明において、各揺動アーム部を円筒付近にて円筒に略平行なアームにて連結し、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面に対し直角方向から視て、クランクホルダを漢字の目の字形状に形成することを特徴とする。
クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面方向の剛性、強度を請求項2の発明よりさらに向上させるもので、変速機構にトルクを伝達するギヤ列をヘリカルギヤ等にしてトルク伝達能力を向上させると共に騒音対策をした場合における、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面方向のモーメントに対する剛性、強度を確保するものである。
また、請求項8の発明は、請求項2の発明において、クランク回転軸に対し円筒の反対側のクランク外側に設けた連結アーム部の両側端部とシリンダケースとを摺動可能に接触させることを特徴とする。
クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面方向のモーメントを、シリンダケースにても受けることでさらに剛性、強度を向上させるものである。
また、請求項9の発明は、請求項1の発明において、クランクホルダを揺動させるジャッキ機構を、クランク回転軸に平行にシリンダケース合せ面にて締結固定されたパイプにて保持することを特徴とする。
ジャッキ機構を保持するパイプをシリンダケース合せ面にて締結固定することで、ジャッキ側のシリンダケースの剛性、強度を増すことができるので、ピボット軸側と合せてクランク軸両側のシリンダケースの剛性、強度をバランス良く増すことができ、請求項1の発明よりさらに大きな負荷に耐えられ、大排気量化、ディーゼル化に対応できる。
また、請求項10の発明は、請求項9の発明において、パイプの穴部をスライド可能としたシャフトに斜面カムを設け、シャフトのスライドによりシャフト直角方向にストロークするピースにてクランクホルダを揺動させジャッキ機構とすることを特徴とする。
加工誤差を吸収できる構造では無いので、加工精度を上げるか選別するかしないと二ヶ所のジャッキ部で揺動アームを拗らせてしまう可能性があるが、構造が簡単で部品点数も少ないので加工精度を上げ易くまた選別組立も容易にできると共に、ジャッキ部の剛性、強度がパンタグラフ式より高くできる利点がある。
また、請求項11の発明は、請求項10の発明において、ピースに当接するクランクホルダ側を円筒穴とし、T字断面形状ピースのクランクホルダ接触部断面を円弧状とすることを特徴とする。
シリンダケースに保持されるパイプ、斜面カムを有するシャフト及びピースに対して、ピースに当接するクランクホルダ側穴位置が、ピボット軸芯とジャッキ機構を保持するパイプの軸芯を結ぶ線上方向で、クランクホルダの揺動により変動しずれるので揺動による角度変化と共に吸収する必要があるが、クランクホルダ側穴を円筒とし接触断面を円弧とすることで相対回転することで角度変化を吸収でき、ピースと斜面カムの接触も横ずれ可能にすることでピボット軸芯とジャッキ機構を保持するパイプの軸芯を結ぶ線上方向の位置ずれも吸収できる。ピースとクランクホルダ穴側の接触断面を平面にしてもピースと斜面カムの片方の接触断面を弧状とすれば位置ずれ、角度変化共吸収可能ではあるが、穴を円筒としたほうが加工が簡単で精度も出しやすく、ピースと斜面カムの接触面も広くとれ剛性、強度、耐久性も高くできる。
燃焼室に対するクランク回転軸位置を固定したままで往復運動部にて圧縮比を可変するものは、往復運動部重量増加、機構が大掛かりとなることによるコスト、重量増加、振動増加等の欠点がある。クランク回転軸位置を固定したままで燃焼室容積を変えるものも提案されており、往復運動部重量、振動増加の欠点は出ないが、変動部の大重量化及び動弁駆動軸間の変動に対する対応を図らないと素早い圧縮比可変は不可能で、圧縮比可変駆動力の大容量化及びドライブシャフト動弁駆動機構等での軸間の変動に対する対応が不可欠となりコスト、重量が大幅に増加する欠点がある。
往復運動部重量、振動増加を招かずコスト、重量増加も比較的抑えられる圧縮比可変装置として、燃焼室に対するクランク回転軸位置を変えるものがあるが、変速機軸又は変速機への動力伝達部品との軸間距離を不変にしないと、適正な動力伝達が困難で動力装置として成立しない。
クランクを回転可能に軸支するクランクホルダを変速機軸又は変速機に動力伝達する出力軸と同芯のピボット軸にて揺動させ軸間距離を不変とするものが公知であるが、単気筒に限らず多気筒でも、圧縮比固定の従来内燃機関並みの性能を確保しつつ圧縮比可変を成立させる為には、クランクホルダ、シリンダケース及びそれらの連結部は、燃焼圧とクランク回転による巨大な負荷変動及び動力伝達により発生する負荷に対し充分な剛性、強度、耐久性が確保でき、始動時及び圧縮比可変時等も含め総ての運転時において、クランク回転軸位置の安定可変、保持制御及び保持動力の不要、軽減化ができ、圧縮比可変装置がオーバーランしたとしても、ピストン頂部が燃焼室の部品類と接触し関係部品が破損しないよう、最高及び最低圧縮比リミット安全機構が不可欠であると共に、動弁伝動機構がクランク回転軸とカムシャフト軸間距離の変化に対応できるだけでなく、アクセルに対応して圧縮比を瞬時に変化できる応答性が必須であり、本発明はそれらの問題を解決するものである。
以下図面により、本発明による圧縮比可変装置及びそれを備えた内燃機関の好適な実施形態を説明する。本発明による圧縮比可変装置は自動車等に搭載される各種ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンを用いた動力装置に適用可能である。
第一実施形態の圧縮比可変装置は請求項1〜6の具体的実施例で、クランクを回転可能に軸支するクランクホルダを変速機に動力伝達するアウトプット(シャフト)と同芯のピボット軸にて揺動させ、動力伝達軸間距離を不変とし燃焼室に対するクランク回転軸位置を変え圧縮比を可変する動力装置において、クランクの両端ジャーナル間幅と略同長の円筒をシリンダケース合せ面にて締結固定してピボット軸とし、クランクホルダをクランク回転軸芯及び円筒軸芯を結んだ平面にて二つ割りとし締結した▲櫛▼状に形成、その連結アーム部とシリンダケースを繋ぎ合せるように設けられクランクホルダを揺動させるジャッキ機構の一部に非可逆伝達機構を用い、それより圧縮比制御モータ側の上流伝達機構部の動きの範囲を制限するもので、クランク機構10、クランク揺動機構20、圧縮比制御機構30、アウトプット部40を含む。
(図1−1〜7参照)
クランクとアウトプット(シャフト)間をギヤにて動力伝達する為に、総ての運転時において、クランクから変速機に直結伝達する一般的な多気筒エンジンに対し、2%台のギヤ伝達メカロスが追加されてしまうが、変速機及び動弁駆動部のクランク軸受がメタルとなる一般的エンジンに比べ、本発明ではギヤ伝達部クランク軸受及びアウトプットシャフトの軸受をコロガリ軸受にできるので、負担が大きな部位の軸受メカロスを大幅に低減できトータルメカロスを抑えることができる。
クランク機構10は、クランク揺動機構20に回転自在に軸支されており、アッパシリンダケース1のシリンダ部にストローク自在に挿入されたピストン11が、ピストンピン12及びクランクシャフト14のクランクピン部14cに、回転自在に軸支されたコンロッド13にてクランクシャフト14に連結され、往復運動を回転運動に変換するもので、ピストンピン12はピストンピンサークリップ12−1にて抜け止めされ、コンロッド13は、クランクピン部14c軸芯にて二つ割りされたコンロッドアーム13−1とコンロッドキャップ13−2とを、コンロッド大端メタル13−4を組み込みコンロッドボルト13−5にて締結一体化した、多気筒一体クランクに一般的に用いられるもので、本実施例では小端部をコンロッド小端メタル13−3にて摩耗対策し耐久性を向上させたものとしている。クランクシャフト14は、クランクホルダ21にクランクジャーナル部14bを、クランクジャーナルメタル21−4を介して回転自在に軸支した直列4気筒一体クランクで、クランクの一端にアウトプット部40に減速比1にて動力伝達するドライブピニオンギヤ部14aを一体に設け、そのボス部側面及びクランクホイール部14d側面と、アッパ、ロアークランクホルダ21−1、21−2の、クランク軸方向位置決めシム挿入部21−1d、21−2dの間に、Cリング状のシム14−2を各箇所二枚挿入し隙間を調整しつつ位置決めをしている。(図1−1、2、6参照)
尚本実施例では、簡潔構造にてクランク位相を検知し点火時期制御を可能とする為に、アウトプットシャフト41の軸上にクランク位相検知ピン44−3を配置できる様に、アウトプット部40への動力伝達減速比を1としているが、クランク位相検知センサをクランク軸位置の変動に対応できる構造とすればアウトプット部40以外に配置でき、4サイクルエンジンではクランク軸から動弁カム軸への減速比を2にする必要があるが、アウトプット部40への動力伝達減速比を1にする必要はなく、変速機と内燃機関との性能の釣り合いで自由に選択できる。また本実施例では、振動低減の為のクランクバランサを用いていないが、ドライブピニオンギヤ部14a又はドリブンギヤ部41aより動力伝達を受け、シリンダケース又はクランクホルダにバランサを設けることも可能である。(図1−1、2参照)
クランク揺動機構20は、クランク機構10を回転自在に軸支し、揺動することでクランク位置を可変するクランクホルダ機構と、それを揺動するジャッキ機構とで構成され、ジャッキ機構の一部を非可逆伝達としクランク機構10側からの負荷により圧縮比制御機構30が動かない構造としている。
クランクシャフト14の両端ジャーナル間幅と少なくとも略同長の円筒状としたクランクホルダピボットパイプ22を、クランクシャフト14の回転軸に平行に配置すると共に、アッパシリンダケース1とロアーシリンダケース2の合せ面を軸芯とし、ノックピン22−1にて位相及び軸方向を位置決めし、シリンダケースボルト2−1にて締結固定することでピボット軸としている。(図1−1、2、7参照)
クランクを保持する揺動アームのピボット軸を、クランクの両端ジャーナル間幅と少なくとも略同長の円筒としシリンダケース合せ面にて締結固定することにより、シリンダケースの剛性、強度を増すことができるので、燃焼圧とクランク回転による巨大な負荷変動、及び動力伝達により発生する負荷に対する、シリンダケースの充分な剛性、強度、耐久性を、多気筒、大排気量エンジンにおいても確保できるようになる。
クランクホルダピボットパイプ22の材質は軽量化の目的で軽金属としても良いが、クランクホルダ21を軽金属とした場合振動叩かれによる凝着が発生し易くなるので、コスト、剛性向上の観点からも重くはなるが鉄系を採用した方が良い。
クランクホルダピボットパイプ22の両端部内径側にはラビリンスシール溝が彫られており、アウトプットシャフト41外径との間に設けられた油路からのオイルの漏れを抑えている。オイルシール等にて漏れを完全に防止する方法もあるが、メカロス低減と、両端部外側に配置されたアウトプット側ベアリング42、カムシャフトドライブチェーン側ベアリング43を潤滑する為に、クランクホルダ21のピボット軸穴部からも含めて適正油圧を確保しつつオイルを漏らし噴射する構造としている。また、クランクホルダピボットパイプ22のクランクホルダ21のピボット軸受部には、クランクホルダ21のピボット軸穴部の軸方向略中央全周に設けられた油溝に連通する油穴が設けられている。クランクホルダピボットパイプ22内径とアウトプットシャフト41外径との間に設けられた油路へのオイル供給は、図1−7のようにオイルパン3側に設けられたオイルポンプ(図示せず)から、ロアーシリンダケース2に設けた油路を経由し供給される。尚、ロアーシリンダケース2のオイルセパレータ壁2aはオイルパン3に溜められたオイルの波立ちによりオイルがクランクホイール部14dに接触しメカロスとなることを防止すると共に、ケースを補強し剛性を向上させるもので、気筒毎にオイル戻し穴2bを設けオイルパン3にオイルを戻す構造としている。(図1−1、2、6、7参照)
クランクシャフト14を回転可能に軸支するクランクホルダ21は、クランクシャフト14の回転軸芯及びクランクホルダピボットパイプ22の軸芯を結んだ平面にて二つ割りとした、アッパクランクホルダ21−1及びロアークランクホルダ21−2を、ノックピン21−5にて正確に位置決めしクランクホルダボルト21−3にて締結一体化し、クランクホルダピボットパイプ22に揺動自在に軸支されている。
クランクシャフト14の回転軸芯及びクランクホルダピボットパイプ22の軸芯を含む平面に対し、直角方向から視たクランクホルダ21の形状は、揺動アーム部21−1b、21−2bを、クランクシャフト14の回転軸に略直角に各クランクジャーナル部14bとクランクホルダピボットパイプ22を連結すると共に、クランクシャフト14の回転軸に対してクランクホルダピボットパイプ22の反対方向側にまで延長して形成し、クランクホルダピボットパイプ22の反対側のクランクシャフト14の外側で、各揺動アーム部21−1b、21−2bをクランクシャフト14の回転軸に略平行なジャッキ側連結アーム部21−1a、21−2aにて連結した▲櫛▼状としている。各揺動アーム部21−1bのピボット軸穴とクランクジャーナル穴間の揺動アーム部21−2bとの合せ面部には、オイル通路21−1fが設けられており、クランクジャーナル部14b、クランクピン部14c及びピストンオイルジェット21−7へオイルを供給している。本実施例では、クランクホルダ21中央の揺動アーム部21−1b、21−2bのピボット軸穴両側面部に設けた軸方向位置決めボス部21−1c、21−2cとアッパシリンダケース1とロアーシリンダケース2の側面を接触揺動させ揺動軸方向位置決めをしているが、位置決めはどの揺動アーム部でも、複数の揺動アーム部にて行っても良い。(図1−1〜3、6参照)
クランクジャーナル部毎に設けた揺動アームをピボット軸穴の反対側のクランク外側でクランク回転軸に略平行なアームにて連結し▲櫛▼状としたクランクホルダを、ピボット軸として各揺動アームに亘って一本の円筒にて揺動保持することにより、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面方向の剛性、強度を著しく向上させることができ、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を結んだ平面にて二つ割りとし締結することで、割面両側に略均等に揺動アームを形成できるので割面に直角方向の剛性、強度も確保し易く、多気筒、大排気量化が可能となる。また、割面部に鋳造による溝を形成できるのでピボット部やクランク等への油路を容易に形成できる。
ロアークランクホルダ21−2のジャッキ側連結アーム部21−2aの両端気筒付近には、ノックピン28−1にて位置決めされた十字ジョイントホルダ28が、アッパクランクホルダ21−1とでロアークランクホルダ21−2を挟むようにボルト28−2にて固定されている。クランクホルダピボットパイプ22に平行に明けられた十字ジョイントホルダ28の両側アーム部の穴に圧入されたピン27に、アーム部により軸方向を位置決めされ回転自在に軸支された、十字ジョイント26が取付られている。十字ジョイント26には、ピン穴両側に穴に直角にパンタグラフリンクプレート25を揺動自在に軸支する軸が設けられており、軸端部にナット25−1を締結することで軸方向を位置決めし、パンタグラフリンクプレート25をクランクホルダピボットパイプ22の軸方向に揺動可能に軸支している。十字ジョイント26をクランクホルダピボットパイプ22に平行なピン27に対し回転自在とすることで、パンタグラフリンクプレート25がクランクホルダピボットパイプ22の直角方向にも揺動自在となり、クランクホルダ21の圧縮比可変時の揺動による角度変化を吸収している。(図1−1〜3参照)
連結アーム部にジャッキ機構を設けることで、燃焼圧とクランク回転による巨大な負荷変動による荷重を、円筒とジャッキ機構の保持部にて分担することで、シリンダケースの各保持部負荷を略半減でき、多気筒、大排気量化が可能となる。
十字ジョイントホルダ28の下側のロアーシリンダケース2とオイルパン3の合せ面を軸芯とし、ロアーシリンダケース2にノックピン29−1にて位置決めされたジャッキシャフトジャーナルメタル29に、バンタグラフジャッキに於けるネジ棒に相当するジャッキシャフト23がクランクホルダピボットパイプ22に平行に軸方向移動、回転自在に軸支されている。ジャッキシャフト23をロアーシリンダケース2とオイルパン3にて直に軸支することも可能だが、燃焼圧及びクランク回転起因の振動にて軸受部が叩かれて凝着等が発生し易いので、本実施例ではジャッキシャフト23の材質に対し凝着しにくい軸受材質を自由に選択できる構造としている。ジャッキシャフト23を軸方向移動自在とすることにより、パンタグラフジャッキ機構における両側リンク機構各部の精度誤差を吸収し中立した位置に収まることで、クランクホルダ21の揺動軸とジャッキシャフト23の軸を無理に抉ることなく平行に保て、スムーズで低メカロスな圧縮比可変を可能としている。その為に、クランクホルダが受けるジャッキシャフト軸方向の荷重をジャッキ機構にて受け止めることができないが、ジャッキシャフト23の両端部を中立位置決定後に、ジャッキシャフト軸上のシリンダケースにボルトナットを締付しボルト頭位置を調整する等して、ストッパ位置を調整してジャッキシャフト23の軸方向移動を制限すれば、パンタグラフジャッキの特性を有効利用し、クランクホルダが受けるジャッキシャフト軸方向の荷重をジャッキ機構にて受け止めることが可能となる。また、ジャッキシャフト23を上側のシリンダ側では無く下側のオイルパン合せ面に配置したのは、合せ面加工を削減すると共に、潤滑油路を設けにくいので、オイルパンに溜められ波立つオイル及び飛び散って落ちてくるオイルで潤滑できる位置に配置したものである。(図1−1〜3参照)
ジャッキシャフト23の両軸端部に設けられた雄ネジに勘合する雌ネジを有し、ジャッキシャフト23の回転によりストロークする十字ジョイントスライダ24には、雌ネジに直角にパンタグラフリンクプレート25を揺動自在に軸支する軸が設けられており、軸端部にナット25−1を締結することで軸方向を位置決めし、パンタグラフリンクプレート25をクランクホルダピボットパイプ22の軸方向に揺動可能に軸支している。十字ジョイントスライダ24がクランクホルダピボットパイプ22に平行なジャッキシャフト23に対しネジ部で回転自在ゆえ、パンタグラフリンクプレート25がクランクホルダピボットパイプ22の直角方向にも揺動自在となり、クランクホルダ21の圧縮比可変時の揺動による角度変化を十字ジョイント26と共に吸収することでスムーズで低メカロスなジャッキ機構の機能を発揮できる。ジャッキシャフト23の略中央部にはドリブンギヤ部23aが設けられ、両軸端部の雄ネジは一方を逆ネジに設定してあり、ジャッキシャフト23の回転により両側に配置された十字ジョイントスライダ24が、ドリブンギヤ部23aに対し離れたり、近づいたりストロークすることでパンタグラフリンクプレート25が揺動し傾斜角が変わり、連結されたクランクホルダ21が連動し揺動することで圧縮比が可変される。ジャッキシャフト23及び十字ジョイントスライダ24に用いられる送りネジとしては、台形ネジ、角ネジ、鋸歯ネジ等があるが、ネジ部を非可逆伝動にする為にネジリード角を使用材質の動摩擦係数以下(静摩擦係数以下でも可だが微振動でも確実に非可逆伝達とする為に動摩擦係数以下とした方が良い)に設定することと、クランク回転軸位置のバタツキを抑える為に軸、径双方向のガタを最少に抑えることが肝心となる。
(図1−1〜4参照)
ドリブンギヤ部23a側部には圧縮比リミットストッパ突起23bが圧入固定されており(一体成形しても良い)、オイルパン3に設けられた圧縮比リミットストッパボス部3aに突起が当たりジャッキシャフト23の回転可能角度が制限されることで、最高、最低圧縮比範囲を制限している。尚、図1−1は最高圧縮比制限時を示し、図1−3、5に於けるパンタグラフリンクプレート25及び圧縮比リミットストッパ突起23bの実線が最高圧縮比制限時を示し、二点鎖線が最低圧縮比制限時を示す。
ジャッキシャフト23の軸受のジャッキシャフトジャーナルメタル29回りの締付ボルトであるジャッキシャフトボルト23−1は、雌ネジをアッパシリンダケース1に設けオイルパン3とでロアーシリンダケース2を挟みこむことで、ジャッキシャフトジャーナルメタル29回りの剛性、強度を向上させている。尚、本実施例ではジャッキシャフトジャーナルメタル29のホルダ部をオイルパン3に一体成形しているが、組立性向上の為に別体としても良い。(図1−1、3〜5参照)
尚、シリンダケースへのクランク機構10、クランク揺動機構20の組立順序は、ジャッキシャフト23及びジャッキシャフトジャーナルメタル29を除いた総てを組立たものを、アッパ、ロアーシリンダケース1、2に組付しボルト締め後、ジャッキシャフト23及びジャッキシャフトジャーナルメタル29をロアーシリンダケース2に組付けし、ジャッキシャフト23を回転させて十字ジョイントスライダ24を定められた位相にてジャッキシャフト23に組付けると共に、ジャッキドライブピニオンギヤシャフト32も組付けオイルパン3を被せる。(図1−1〜5参照)
ネジ棒を回転させリンク支持部を軸方向に動かして、リンクにてクランクホルダを揺動させる動きに変換するもの故、ネジ部が常時非可逆伝達となり、負荷側からの荷重によりネジ棒から制御モータ側の上流伝達機構に力が働かなくなるので、圧縮比可変時、保持時共に全運転時においてクランク軸位置の安定可変、保持が可能となると共に、保持電力が不要となる。更に、非可逆伝達機構より圧縮比制御モータ側の上流伝達機構部の動きの範囲を制限することで、ネジ部をロックさせること無く圧縮比可変範囲を制限することが可能となる。
圧縮比制御機構30は、圧縮比制御モータ31及びその駆動力をジャッキ機構に伝達する伝達機構部と、圧縮比制御モータの正逆回転により揺動するクランクホルダの位置変化を測定するセンサ部とで構成される。
ジャッキシャフト23の回転駆動は、ドリブンギヤ部23aに噛合うドライブピニオンギヤ部32aを有するジャッキドライブピニオンギヤシャフト32を、ロアーシリンダケース2とオイルパン3の合せ面を軸芯とし回転自在に軸支し、それのシリンダケース側壁側に圧入固定されたドリブンギヤ32−1に噛合うドライブピニオンギヤ31−1を回転子軸端に固定した圧縮比制御モータ31を、ロアーシリンダケース2とオイルパン3の合せ面を軸芯として配置し、Oリング31−4にて液封し、ボルト31−3にて固定している。尚、ドライブピニオンギヤ31−1はスプラインにて回転固定、サークリップ31−2にて抜け止めされている。 ジャッキドライブピニオンギヤシャフト32は、ドライブピニオンギヤ部32a及びドリブンギヤ32−1の側面部と、ロアーシリンダケース2及びオイルパン3のボス端面部で軸方向位置決めをされており、摩耗及び摩擦トルク低減の為にスラストワッシャ32−2、32−3を間に配置している。ドリブンギヤ32−1側軸受け部外側のロアーシリンダケース2とオイルパン3はプラグ32−4にて液封されている。(図1−1、3、4参照)
センサ部は、クランクホルダ21の揺動ピボット軸方向中央付近のジャッキ側連結アーム部に配置され、アッパ及びロアークランクホルダの締結ボルトの役目を兼ねるクランク位置検知センサボルト21−6の頭部頂面に、測定子先端が接触するようにアッパシリンダケース1にOリング33−2にて液封、ボルト33−1にて固定されたクランク位置検知センサ33にて構成され、クランクホルダ21の揺動変化位置を測定することでクランクシャフト14の回転軸位置の変化を読み取り、電子制御装置(図示せず)により圧縮比制御モータ31の回転制御を行うことで圧縮比可変を正確、精密に制御する。(図1−1、3参照)
圧縮比可変駆動源としてモータを用いることで、油圧を用いた場合の様な始動時の油圧不足による応答の遅さや、保持位置の不安定化の問題を防げる。また、クランク位置検知センサを、揺動アーム比が約2倍となるクランクホルダ先端部に設けたことで、センサの測定分解能の約2倍の精密さでクランク位置を検知できると共に、クランクホルダ揺動軸方向の中央付近に配置したことでホルダの揺動軸方向の振れの節部分で測定することで、測定データの振れを抑えられより正確な検知が可能となっている。
アウトプット部40は、変速機、動弁、オイルポンプ、補機類への動力伝達部等で構成されている。
アウトプットシャフト41は、クランクホルダピボットパイプ22の穴部に同軸芯に配置されており、外径部とクランクホルダピボットパイプ22の内径部とで油路を形成している。潤滑油供給専用部品を使わずに、シール性があり高圧を確保し易いピボット軸から、揺動アーム部に設けた油路を経由してクランクジャーナル部に油を送るのが合理的な方法であり、クランクの両端ジャーナル間幅つまりはクランクホルダ両端揺動アーム部幅と少なくとも略同長とした円筒(ピボット軸)の内径穴部をクランク等にオイルを供給するオイル通路とすることで、コスト、重量UPすること無く多気筒にも高圧油を供給できるものである。
クランクシャフト14のドライブピニオンギヤ部14aに噛合うドリブンギヤ部41aを有し、その外側側部に変速機係合ボス部41cが設けられており、その外径部はアッパ、ロアーシリンダケース1、2に圧入されたオイルシール41−1にて液封されている。内側側部のクランクホルダピボットパイプ22との間にはアウトプット側ベアリング42が配置され、アウトプットシャフト41を回転自在に軸支している。尚、アウトプット側ベアリング42は巨大な負荷に耐えられるよう円筒ころ軸受を採用しており、内輪はアウトプットシャフト41に圧入固定され、外輪をCリング42−1にて位置決めしている。クランクホルダピボットパイプ22を挟んでドリブンギヤ部41aの反対側には、段付軸部41bが設けられており、クランクホルダピボットパイプ22の直ぐ外側にカムシャフトドライブチェーン側ベアリング43、その外側にカムシャフトドライブスプロケット44、補機ドライブプーリ45の順に配置され、ボルト45−1にて締結され軸方向を固定されている。尚、カムシャフトドライブスプロケット44、補機ドライブプーリ45はスプラインにて位相を決め、回転固定されている。また、カムシャフトドライブスプロケット44は、Oリング44−1及びカムシャフトドライブチェーンカバー4に圧入されたオイルシール44−2にて液封されており、オイルポンプドライブスプロケット44aクランク位相検知ピン44−3が併設されている。カムシャフトドライブチェーン側ベアリング43は深溝玉軸受とし外輪をCリング43−1にて位置決めすることで、アウトプットシャフト41を軸方向固定、回転自在に軸支している。(図1−2、7参照)
クランクにギヤを介して変速機構と連結するアウトプットを円筒穴部と同芯にて貫通するシャフトとし、ギヤ列側に配置した変速機係合ボス部の反対側の円筒外側に動弁、オイルポンプ、補機類等駆動の為のスプロケット、プーリ等を配置することで、動弁伝動機構のクランク回転軸とカムシャフト軸間距離を不変とし、変動する場合の多くの問題を解決すると共に、シリンダブロック(クランク)に対し変速機構の反対側に動弁、オイルポンプ、補機類等を配置することで、コンパクトで整備しやすいエンジンにできる。円筒を変速機側に延長させクランクにギヤを介して変速機構と連結するアウトプットを円筒外周に回転可能に軸支し、アウトプットから動弁、オイルポンプ、補機類等を駆動することもできる。
カムシャフトドライブスプロケット44とカムシャフト(以下図示せず)の一端に組付けられたドリブンスプロケットとの間に、カムチェーンがチェーンガイド、チェーンテンショナ、チェーンアジャスタ等により適正走行するよう巻回装架され、カムシャフトドライブスプロケット44がクランクシャフトに設けられた場合に対し逆回転にてカムシャフトを回転させ、吸、排気バルブを作動させている。
第二実施形態の圧縮比可変装置は請求項7、8の具体的実施例で、第一実施形態のクランクホルダ形状が、クランクシャフトの回転軸芯及びクランクホルダピボットパイプの軸芯を含む平面に対し直角方向から視て▲櫛▼状であったものを、平面方向の剛性、強度向上をより図る目的にて漢字の目の字状とすると共に、クランク回転軸に対し円筒の反対側のクランク外側に設けた連結アーム部の両側端部とシリンダケースとを摺動可能に接触させ、平面方向のモーメントをシリンダケースにても受けることでさらに剛性、強度を向上させるもので、クランク揺動機構20の第一実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同じである他機構の説明は省略する。(図2−1〜6参照)
第二実施形態のアッパ、ロアークランクホルダ21−1、21−2は、第一実施形態に対して、クランクシャフト14反対方向側のピボット軸穴側部に穴に平行に、各揺動アーム部21−1b、21−2bを連結する補強連結アーム部21−1e、21−2eを追加し、クランクシャフトの回転軸芯及びクランクホルダピボットパイプの軸芯を含む平面に対し直角方向から視て、漢字の目の字状としたものである。
尚本実施例では、補強連結アームをピボット軸に対しクランクシャフト14の反対外側に設けているが、ピボット軸とクランクシャフト14の間に設けても良い。
(図2−1、2参照)
クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面方向の剛性、強度を請求項2の発明よりさらに向上させるもので、変速機構にトルクを伝達するギヤ列をヘリカルギヤ等にしてトルク伝達能力を向上させると共に騒音対策をした場合における、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面方向のモーメントに対する剛性、強度を確保するものである。
ロアークランクホルダ21−2のジャッキ側連結アーム部21−2aの両側端部にスラスト荷重受け面21−2gを設け、それに摺動接触するクランクホルダスラスト荷重受け面2gをロアーシリンダケース2にも設けている。本実施例ではロアークランクホルダ21−2及びロアーシリンダケース2に受け面を設けているが、アッパクランクホルダ21−1及びアッパシリンダケース1側に設けても良いし、両方に設けることもできる。また、本実施例ではクランクホルダとシリンダケースを直に接触させているが、間にバネ材や緩衝材を介して接触させることで振動、騒音を減衰させることもできる。(図2−3〜6参照)
クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面方向のモーメントを、シリンダケースにても受けることでさらに剛性、強度を向上させるものである。
第三実施形態の圧縮比可変装置は請求項9〜11の具体的実施例で、第一、第二実施形態がパンタグラフ式ジャッキを用いたのに対し、斜面カムを設けたシャフトのスライドにてピースがストロークしクランクホルダを揺動させるジャッキを、シリンダケースに締結固定したパイプにて保持するもので、クランク機構10、クランク揺動機構20、圧縮比制御機構30、アウトプット部40を含む。尚、第一、第二実施形態と同様な部分については説明を省略し、異なる点について説明する。
(図3−1〜7参照)
クランク機構10は第一実施形態のクランクジャーナル軸受が総メタル軸受であるのに対し、ドライブピニオンギヤ側部の軸受を針状ころ軸受に変更したもので、その為にドライブピニオンギヤを別体化しシム配置を変更しており、変更点についてのみ説明する。
ドライブピニオンギヤ側部のクランクジャーナルベアリング14−6はソリッド形針状ころ軸受で、クランクホルダ21の段付部とCリング21−8にて外輪の軸方向を固定され、内輪はクランクジャーナル部14bに挿入され、クランクシャフト14の段付部と、内輪側部のクランクジャーナル部14bに設けられたスプラインに挿入され回転を固定、ワッシャ14−4、ボルト14−5にて軸方向を固定された、ドライブピニオンギヤ14−3とで挟みこみ固定されている。クランクシャフト14の軸方向位置決めは、両外端クランクホイール部14d側端と揺動アーム部21−1b、21−2bとの間にリング状のシム14−2を挿入し、厚さを調整することで軸方向クリアランスを適切な値に調整する。(図3−1、2参照)
燃焼圧とクランクの回転による負荷に加えて動力伝達による負荷が掛かるドライブピニオンギヤ側部の軸受を、メタルからころ軸受に変更することで、変速機をクランク軸に直付けする圧縮比無可変エンジンに一般的に用いられる総メタル軸受に比べ、メカロスを低減できクランク軸位置を可変する為に追加したギヤ伝達によるメカロス増加を抑え、圧縮比可変による燃焼効率向上効果をより有効に得ることが出きる。変速機をクランク軸に直付けするものは、変速機側の巨大なイナーシャによる負荷も受けるので強度対応の為に、変速機係合ボス部とクランクシャフトを一体にしメタル軸受としている例が殆どである。
クランク揺動機構20は第二実施形態に対し、クランクホルダ機構を構成する、クランクホルダピボットパイプ22を二重管に変更し、軸方向中間部の内外筒間に隙間を設け油路とし、両端部にて内外筒を密着させた形状とし圧入や溶接等にて液封し油が漏れない構造としている。クランクホルダ21の油溝に連通する油穴はクランクジャーナルベアリング14−6へ連通する部分のみ孔径を絞りメタル軸受への油圧を適正に保持しつつ、各軸受への油量を適正に分配している。
クランクホルダ21は、第二実施形態の漢字の目の字状ホルダのアッパクランクホルダ21−1側に、各揺動アーム部21−1bを連結する補強天井部21−1gを追加した構造とし、剛性、強度向上を図っている。本実施例では天井をアッパクランクホルダ21−1側にのみ設けているが、ロアークランクホルダ21−2にも設ければ一層の剛性、強度向上が図れる。天井はクランクシャフト14、コンロッド13の回転を妨げないよう(図3−1の二点鎖線がコンロッド最外端軌跡13p)、またクランクホルダピボットパイプ22を保持するシリンダケース部に当たらないように逃げ(図3−2の二点鎖線)を設けている。ジャッキアーム部21−1h、21−2hは、ジャッキ側連結アーム部21−1a、21−2aに対し、クランク14の反対側の両端気筒付近にジャッキ側連結アーム部21−1a、21−2aから張出す形で設けられており、ジャッキピース53と当接する部分はピボット軸に平行な円筒穴としている。
(図3−1、2、4、5参照)
ジャッキ機構部は、第一、第二実施形態がパンタグラフ式ジャッキを用いたのに対し、斜面カムを設けたシャフトのスライドにてピースがストロークしクランクホルダを揺動させるジャッキを、シリンダケースに締結固定したパイプにて保持するものである。
加工誤差を吸収できる構造では無いので、加工精度を上げるか選別するかしないと二ヶ所のジャッキ部で揺動アームを拗らせてしまう可能性があるが、構造が簡単で部品点数も少ないので加工精度を上げ易くまた選別組立も容易にできると共に、ジャッキ部の剛性、強度がパンタグラフ式より高くできる利点がある。
ジャッキホルダパイプ51はクランクホルダ21のジャッキアーム部21−1h、21−2hに設けられた円筒穴を貫通する形で、アッパ、ロアーシリンダケース1、2の合せ面を軸芯にピボット軸に平行にスライドガイド兼用ノックピン51−1にて位相、軸方向位置を決められて締結固定されている。(図3−1、2、3、6参照)
ジャッキ機構を保持するパイプをシリンダケース合せ面にて締結固定することで、ジャッキ側のシリンダケースの剛性、強度を増すことができるので、ピボット軸側と合せてクランク軸両側のシリンダケースの剛性、強度をバランス良く増すことができ、請求項1の発明よりさらに大きな負荷に耐えられ、大排気量化、ディーゼル化に対応できる。
ジャッキホルダパイプ51穴部にはスライダジャッキ52が、スライドガイド兼用ノックピン51−1にスライドガイド溝52aを臨ませることで、位相固定、軸方向自在にスライド可能に挿入されている。スライダジャッキ52にはクランクホルダ21の揺動方向上下に軸方向に傾斜する斜面カム部52bが形成されており、カムに当接し揺動方向上下にストロークするジャッキピース53一対が、ジャッキアーム部21−1h、21−2hの円筒穴と隙間を最少に抑えて当接するよう配置されている。
斜面カム部52bの傾斜角を動摩擦係数以下に設定することで、ジャッキピース53のストロークを非可逆伝達にすると共に、斜面カム部52bの端部に圧縮比リミットストッパ部52cを設け、ジャッキピース53に当てることでスライダジャッキ52のスライド範囲を規制し、クランクホルダ21の揺動範囲を決め最高、最低圧縮比範囲を制限している。非可逆伝達部より圧縮比制御モータ側の上流伝達部の動きを規制することで、スライダジャッキ52をロックさせることなく圧縮比可変範囲を制限できている。(図3−1〜3、6参照)
ジャッキピース53は断面形状をT字状としており、クランクホルダ21の円筒穴に接する部分は円弧状とし、斜面カム部52bと接する部分は平面形状としている。軸方向は端面部をジャッキホルダパイプ51に設けられたジャッキピーススライドガイド鍔51aにて規制され、軸方向固定、軸直角方向ストローク自在としており、T字の縦棒部が臨むジャッキホルダパイプ51の溝穴は、クランクホルダ21の揺動により変動する余弦方向円筒穴位置を吸収できるように隙間を確保してあり、クランクホルダ21の揺動による角度変化は、円筒穴とジャッキピース53の接触断面形状を円弧とすることで相対回転可能となり吸収できている。(図3−1〜3、6参照)
ピースとクランクホルダ穴側の接触断面を平面にしても、ピースと斜面カムの接触断面の片方を弧状とし点接触にすれば、位置ずれ、角度変化共吸収可能ではあるが、穴を円筒とした方が加工が簡単で精度も出し易く、ピースと斜面カムの接触面も広くとれ剛性、強度、耐久性も高くできる。
圧縮比制御機構30は、第一、第二実施形態がネジ棒を回転させる方式であるのに対し、斜面カムを設けたシャフトをスライドさせる方式ゆえ、駆動力伝達をラック&ピニオンとするものである。スライダジャッキ52の斜面カム部52b軸方向中間部にラックギヤ部52dが設けられており、それに噛合うドライブピニオンギヤ部36aを有するドリブンギヤシャフト36が、回転軸をスライダジャッキ52つまりはシリンダケース合せ面に直角に設けられており、それに平行な回転軸にてアイドルギヤピン35−1にベアリング35−2にて回転自在に軸支されたアイドルギヤ35が噛合い、さらにアイドルギヤ35に圧縮比制御モータ31のドライブピニオンギヤ部31aが噛合い減速機列を形成している。減速機列はシリンダケース合せ面に平行な合せ面を持つギヤケースカバー34にて液封、保持されており、減速機列を収納する室は底面とクランク室から油を取り込む潤滑油取入窓1aとに段差を設けてあり取り入れた油を溜めてギヤ部や軸部を潤滑している。(図3−1〜3、6、7参照)
アウトプット部40は、クランクホルダピボットパイプ22を二重管に変更したことに対応して、寸法、形状を変更した以外は第一実施形態と同様ゆえ説明は省略する。
以下、実施形態例図は圧縮比可変装置の収まるシリンダケースブロック部にて説明し、動弁装置を駆動するカムチェーン関係及びオイルポンプ、補機類の駆動関係は図示、説明共に省略する。本実施形態で説明する動力装置は直列4気筒であって、シリンダヘッド部に吸、排気バルブを駆動するカムを有する。但し、本発明は4気筒に限定されるものでは無く、単気筒及び多気筒内燃機関に採用可能である。
なお、各図では必要に応じて一部図面化を省略している。第二、第三実施形態については第一実施形態と同一または対応する部材には同一符号を用いる。
第一実施形態に係る圧縮比可変装置を示す平面図(図1−2のA−A線に沿う断面図)である。 図1−1のB−B線に沿う断面図である。 図1−1のC−C線に沿う断面図である。 図1−3のD−D線に沿う断面図である。 図1−4のE−E線に沿う断面図である。 図1−1のF−F線に沿う断面図である。 図1−1のG−G線に沿う断面図である。
第二実施形態に係る圧縮比可変装置を示す平面図(図2−2のA−A線に沿う断面図)である。 第二実施形態における図2−1のB−B線に沿う断面図に相当する断面図である。 図1−2のA部の第二実施形態断面図である。 図2−3のD−D線に沿う断面図である。 図1−2のB部の第二実施形態断面図である。 図2−5のF−F線に沿う断面図である。
第三実施形態に係る圧縮比可変装置を示す平面図(図3−2のA−A線に沿う断面図)である。 図3−1のB−B線に沿う断面図である。 図3−1のC−C線に沿う断面図である。 図3−1のD−D線に沿う断面図である。 図3−1のE−E線に沿う断面図である。 図3−2のF−F線に沿う断面図である。 図3−6のG−G線に沿う断面図である。
1 アッパシリンダケース 1a 潤滑油取入窓
1−1 ノックピン
2 ロアーシリンダケース 2a オイルセパレータ壁
2b オイル戻し穴
2g クランクホルダスラスト荷重受け面
2−1 シリンダケースボルト
3 オイルパン 3a 圧縮比リミットストッパボス部
3−1 オイルパンボルト
4 カムシャフトドライブチェーンカバー
10 クランク機構
11 ピストン
12 ピストンピン
12−1 ピストンピンサークリップ
13 コンロッド 13p コンロッド最外端軌跡
13−1 コンロッドアーム
13−2 コンロッドキャップ
13−3 コンロッド小端メタル
13−4 コンロッド大端メタル
13−5 コンロッドボルト
14 クランクシャフト 14a ドライブピニオンギヤ部
14b クランクジャーナル部
14c クランクピン部
14d クランクホイール部
14−1 プラグ
14−2 シム
14−3 ドライブピニオンギヤ
14−4 ワッシャ
14−5 ボルト
14−6 クランクジャーナルベアリング
20 クランク揺動機構
21 クランクホルダ
21−1 アッパクランクホルダ 21−1a ジャッキ側連結アーム部
21−1b 揺動アーム部
21−1c 軸方向位置決めボス部
21−1d クランク軸方向位置決めシム挿入 部
21−1e 補強連結アーム部
21−1f オイル通路
21−1g 補強天井部
21−1h ジャッキアーム部
21−2 ロアークランクホルダ 21−2a ジャッキ側連結アーム部
21−2b 揺動アーム部
21−2c 軸方向位置決めボス部
21−2d クランク軸方向位置決めシム挿入 部
21−2e 補強連結アーム部
21−2g スラスト荷重受け面
21−2h ジャッキアーム部
21−3 クランクホルダボルト
21−4 クランクジャーナルメタル
21−5 ノックピン
21−6 クランク位置検知センサボルト
21−7 ピストンオイルジェット
21−8 Cリング
22 クランクホルダピボットパイプ
22−1 ノックピン
23 ジャッキシャフト 23a ドリブンギヤ部
23b 圧縮比リミットストッパ突起
23−1 ジャッキシャフトボルト
23−2 ワッシャ
24 十字ジョイントスライダ
25 パンタグラフリンクプレート
25−1 ナット
26 十字ジョイント
27 ピン
28 十字ジョイントホルダ
28−1 ノックピン
28−2 ボルト
29 ジャッキシャフトジャーナルメタル
29−1 ノックピン
30 圧縮比制御機構
31 圧縮比制御モータ 31a ドライブピニオンギヤ部
31−1 ドライブピニオンギヤ
31−2 サークリップ
31−3 ボルト
31−4 Oリング
32 ジャッキドライブピニオンギヤシャフト
32a ドライブピニオンギヤ部
32−1 ドリブンギヤ
32−2 スラストワッシャ
32−3 スラストワッシャ
32−4 プラグ
33 クランク位置検知センサ
33−1 ボルト
33−2 Oリング
34 ギヤケースカバー
34−1 ガスケット
34−2 ボルト
35 アイドルギヤ
35−1 アイドルギヤピン
35−2 ベアリング
35−3 スラストワッシャ
36 ドリブンギヤシャフト 36a ドライブピニオンギヤ部
40 アウトプット部
41 アウトプットシャフト 41a ドリブンギヤ部
41b 段付軸部
41c 変速機係合ボス部
41−1 オイルシール
42 アウトプット側ベアリング
42−1 Cリング
43 カムシャフトドライブチェーン側ベアリング
43−1 Cリング(第三実施例では止め輪)
44 カムシャフトドライブスプロケット
44a オイルポンプドライブスプロケット
44−1 Oリング
44−2 オイルシール
44−3 クランク位相検知ピン
45 補機ドライブプーリ
45−1 ボルト
51 ジャッキホルダパイプ 51a ジャッキピーススライドガイド鍔
51−1 スライドガイド兼用ノックピン
51−2 プラグ
52 スライダジャッキ 52a スライドガイド溝
52b 斜面カム部
52c 圧縮比リミットストッパ部
52d ラックギヤ部
53 ジャッキピース

Claims (11)

  1. クランク回転軸に平行に配置され、クランクにギヤを介して変速機構と連結するアウトプットと同芯にシリンダケース合せ面にて締結固定され、クランクの両端ジャーナル間幅と少なくとも略同長の円筒をピボット軸とし、シリンダ内で往復運動するピストンがコンロッドにて連結されるクランクを回転可能に軸支するクランクホルダを、ジャッキ機構にて揺動させ燃焼室に対するクランク回転軸の位置を変える圧縮比可変装置。
  2. クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面に対し直角方向から視て、クランクホルダの揺動アーム部をクランク回転軸に略直角に各クランクジャーナル部と円筒軸部を連結すると共に、クランク回転軸に対して円筒の反対方向側にまで延長して形成し、円筒の反対側のクランク外側で各揺動アーム部をクランク回転軸に略平行なアームにて連結した▲櫛▼状とすると共に、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を結んだ平面にて二つ割りとし締結することでクランクホルダを一体化形成し、連結アーム部にジャッキ機構を設ける請求項1に記載した圧縮比可変装置。
  3. 円筒内径穴部をクランク等にオイルを供給するオイル通路とする請求項1に記載した圧縮比可変装置。
  4. クランクにギヤを介して変速機構と連結するアウトプットを円筒穴部と同芯にて貫通するシャフトとし、ギヤ列側に配置した変速機係合ボス部の反対側の円筒外側に動弁、オイルポンプ、補機類等駆動の為のスプロケット、プーリ等を配置する請求項1に記載した圧縮比可変装置。
  5. クランクホルダを揺動させるジャッキ機構として、ネジ棒に対し片側一対のリンクとしたパンタグラフジャッキを用い、中央部に圧縮比制御モータからの駆動力を受けるギヤを設けたネジ棒をシリンダケースに円筒に平行に配置すると共に、回転自在、径方向固定、軸方向スライド自在に軸支し、ネジ棒の回転によるリンク支持部の軸方向の動きをリンクにてクランクホルダを揺動させる動きに変換する請求項1に記載した圧縮比可変装置。
  6. クランクホルダを揺動させるジャッキ機構の一部に非可逆伝達機構を用い、非可逆伝達機構より圧縮比制御モータ側の上流伝達機構部の動きの範囲を制限することで圧縮比可変範囲を制限する請求項1に記載した圧縮比可変装置。
  7. 各揺動アーム部を円筒付近にて円筒に略平行なアームにて連結し、クランク回転軸芯及び円筒軸芯を含む平面に対し直角方向から視て、クランクホルダを漢字の目の字形状に形成する請求項2に記載した圧縮比可変装置。
  8. クランク回転軸に対し円筒の反対側のクランク外側に設けた連結アーム部の両側端部とシリンダケースとを摺動可能に接触させる請求項2に記載した圧縮比可変装置。
  9. クランクホルダを揺動させるジャッキ機構を、クランク回転軸に平行にシリンダケース合せ面にて締結固定されたパイプにて保持する請求項1に記載した圧縮比可変装置。
  10. パイプの穴部をスライド可能としたシャフトに斜面カムを設け、シャフトのスライドによりシャフト直角方向にストロークするピースにてクランクホルダを揺動させジャッキ機構とする請求項9に記載した圧縮比可変装置。
  11. ピースに当接するクランクホルダ側を円筒穴とし、T字断面形状ピースのクランクホルダ接触部断面を円弧状とする請求項10に記載した圧縮比可変装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN107588088A (zh) * 2017-11-02 2018-01-16 吉林大学 一种曲柄长度可变的曲轴
CN110552792A (zh) * 2019-10-08 2019-12-10 吉林大学 铰接传动电驱式可变压缩比活塞机构
CN114673587A (zh) * 2022-03-23 2022-06-28 重庆长安汽车股份有限公司 一种发动机排量可变装置、发动机及车辆

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