JP2015074681A - 耐候性防錆塗料及びその用途 - Google Patents

耐候性防錆塗料及びその用途 Download PDF

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初実 酒井
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Tatsuya Tsunekawa
竜也 恒川
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Abstract

【課題】粘度等に関する条件に制約されることなく、耐候性と防食性とを両立させることができる耐候性防錆塗料及びその用途を提供する。
【解決手段】耐候性防錆塗料は、アクリル系樹脂エマルションと、縮合リン酸アルミニウムと、撥水剤とを必須成分として含有する。アクリル系樹脂エマルションは、アクリル−スチレン系共重合樹脂エマルションが好ましい。縮合リン酸アルミニウムは、トリポリリン酸二水素アルミニウム又はその誘導体が好ましい。撥水剤は、シリコーン化合物又は脂肪酸エステルが好ましい。前記アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して、縮合リン酸アルミニウムの配合量は0.5〜20質量部及び撥水剤の配合量は0.4〜22質量部が好ましい。また、耐候性防錆塗料には、シランカップリング剤を含有することが望ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば鋼材等の被塗物に塗布して短時間加熱処理を行うことにより、優れた耐候性と防食性とを兼ね備えた塗膜を形成することができる耐候性防錆塗料及びその用途に関する。
一般に、防錆塗料は得られる塗膜に防食性を付与できるが、耐候性が不十分であり、耐候性に優れているアクリル樹脂塗料は防食性が不十分であった。このため、例えば鋼材表面に水性塗料を塗布して塗膜を形成し、その塗膜に耐候性と防食性とを発揮させるためには、鋼材表面に防食性を有する下塗り塗料を塗布して第1の塗膜を形成した後、耐候性を有する上塗り塗料を塗布して第2の塗膜を形成し、両塗膜による2層構造としなければならなかった。
この種の水性防錆塗料を本願出願人は既に提案している(特許文献1を参照)。この水性防錆塗料は、合成樹脂エマルションと、ジノニルナフタレンスルホン酸の金属塩又はアミン塩とを含有し、粘度及び異なる回転数における粘度比が所定範囲に設定されたものである。この水性防錆塗料によれば、水性防錆塗料を塗装してから乾燥塗膜が形成されるまでの間の錆の発生を抑制することができる。
特開2011−57942号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている従来構成の水性防錆塗料においては、塗料の粘度が1000〜200000mPa・sの範囲で、かつ回転数2rpmにおける粘度と20rpmにおける粘度の粘度比が3〜15の範囲でなければ、初期錆の発生を抑えることができなかった。つまり、上記のような粘度と粘度比の条件が共に満たされていなければ、防錆剤としてのジノニルナフタレンスルホン酸の金属塩はその機能を発揮することができず、初期錆の発生を抑制することが困難であり、防食性が得られないという問題があった。
従って、合成樹脂エマルションとしてアクリル系樹脂エマルションを使用すれば耐候性を有する塗膜は得られるが、塗膜の防食性を得ることはできず、耐候性と防食性の両立を図ることができなかった。
そこで、本発明の目的とするところは、粘度等に関する条件に制約されることなく、耐候性と防食性とを両立させることができる耐候性防錆塗料及びその用途を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の耐候性防錆塗料は、アクリル系樹脂エマルションと、縮合リン酸アルミニウムと、撥水剤とを必須成分として含有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明の耐候性防錆塗料は、請求項1に係る発明において、前記撥水剤は、シリコーン化合物又は脂肪酸エステルであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の耐候性防錆塗料は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記アクリル系樹脂エマルションは、アクリル−スチレン系共重合樹脂エマルションであることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の耐候性防錆塗料は、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、シランカップリング剤を含有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明の耐候性防錆塗料は、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明において、前記縮合リン酸アルミニウムは、トリポリリン酸二水素アルミニウム又はその誘導体であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明の耐候性防錆塗料は、請求項1から請求項5のいずれか一項に係る発明において、前記アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して、縮合リン酸アルミニウムの配合量は0.5〜20質量部及び撥水剤の配合量は0.4〜22質量部であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明の産業用車両は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の耐候性防錆塗料を、産業用車両を構成する被塗物に塗布して形成されることを特徴とする。
本発明の耐候性防錆塗料によれば、粘度等に関する条件に制約されることなく、耐候性と防食性とを両立させることができるという優れた効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の耐候性防錆塗料は、例えば鋼材等の被塗物に塗布して加熱処理を行うことにより塗膜を形成できる水性塗料であって、アクリル系樹脂エマルションと、縮合リン酸アルミニウムと、撥水剤とを必須成分として含有する。被塗物としては、鋼材以外の金属、合金等であってもよいが、特に厚い鋼材が好適である。
前記アクリル系樹脂エマルションは、耐候性防錆塗料の主成分であって、従来の酢酸ビニル系樹脂エマルションや塩化ビニル系樹脂エマルションに比べて、得られる塗膜の耐候性に優れている。このアクリル系樹脂エマルションは、耐候性防錆塗料を構成する他の成分を混合するための水分量を考慮するとともに、各成分の機能発現を図るため不揮発分(固形分)30〜60質量%のものが好適に使用される。不揮発分が30質量%を下回ると耐候性防錆塗料中のアクリル系樹脂が減少して揮発分の水が多く、該耐候性防錆塗料を被塗物に塗布した後に錆が発生しやすくなるおそれがある一方、60質量%を上回ると他の成分の混合性が低下したり、耐候性防錆塗料の塗布作業性が悪くなったりして好ましくない。このアクリル系樹脂エマルションは、(メタ)アクリル単量体の単独重合体又は共重合体のエマルション、(メタ)アクリル単量体とその他の単量体との共重合体のエマルション等が含まれる。
(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等が用いられる。なお、(メタ)アクリルは、アクリルとメタクリルの総称である。(メタ)アクリル単量体以外の単量体としては、スチレン、酢酸ビニル、シラン化合物、ジアセトンアクリルアミド等が用いられる。
アクリル系樹脂エマルションとしては、アクリル−スチレン系共重合樹脂エマルションが耐候性防錆塗料の撥水性(耐水性)を高めて防食性を向上させることができる点から好ましい。
前記縮合リン酸アルミニウムは防錆剤の一種であって、従来のリン酸亜鉛やリン酸カルシウムに比べて防食性に優れているトリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH10)又はその誘導体が好ましい。トリポリリン酸二水素アルミニウムの誘導体としては、トリポリリン酸二水素アルミニウムの水和物、トリポリリン酸二水素アルミニウムの亜鉛(Zn)処理物、トリポリリン酸二水素アルミニウムのマグネシウム(Mg)処理物、トリポリリン酸二水素アルミニウムのカルシウム(Ca)処理物等が用いられる。これらのうち、トリポリリン酸二水素アルミニウムの亜鉛(Zn)処理物、トリポリリン酸二水素アルミニウムのマグネシウム(Mg)処理物及びトリポリリン酸二水素アルミニウムのカルシウム(Ca)処理物が好ましい。
前記撥水剤は耐候性防錆塗料の塗膜に撥水性を付与して防食性を向上させる成分であって、シリコーン化合物又は脂肪酸エステルが好ましい。シリコーン化合物としては、シラン・シロキサンエマルション、シリケート水溶液、シロキサンオイル等が好適に使用される。脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ステアレート、グリセリンステアリン酸エステル等のステアリン酸エステル、ラウリン酸ラウリレート、グリセリンラウリン酸エステル等のラウリン酸エステル等が用いられる。
また、耐候性防錆塗料には、被塗物に対する塗膜の密着性を向上させ、耐揮発油性等の物性を高めることができるという観点から、シランカップリング剤を含有することが好ましい。このシランカップリング剤としては、例えばグリシドキシエトキシシラン、グリシドキシメトキシシラン等が用いられる。
耐候性防錆塗料には、該耐候性防錆塗料を被塗物に塗布した後の初期に錆の発生を抑制するために、有機酸塩を配合することができる。そのような有機酸塩としては、脂肪酸アミン塩、脂肪酸塩等が用いられる。
また、耐候性防錆塗料には、消泡剤、顔料、増膜助剤等のその他の成分を常法に従って配合することができる。
次に、耐候性防錆塗料の各成分の配合量について説明する。
前記縮合リン酸アルミニウムの配合量は、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは1〜10質量部、最も好ましくは2〜5質量部である。縮合リン酸アルミニウムの配合量が0.5質量部を下回る場合には、耐候性防錆塗料による塗膜の防食性が低下して好ましくない。その一方、縮合リン酸アルミニウムの配合量が20質量部を上回る場合には、過剰な縮合リン酸アルミニウムによって光沢性等の塗膜物性が低下する。
また、撥水剤の配合量は、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して好ましくは0.4〜22質量部、さらに好ましくは0.6〜16.5質量部、最も好ましくは0.8〜11.2質量部である。撥水剤の配合量が0.4質量部より少ない場合には、塗膜の撥水性が低下し、防食性を十分に発揮できなくなる。一方、撥水剤の配合量が22質量部より多い場合には、耐候性防錆塗料の撥水性が高くなり過ぎて、該耐候性防錆塗料を被塗物に塗布する際にはじきが生じること等の塗布作業性が低下して好ましくない。
さらに、シランカップリング剤の配合量は、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部、最も好ましくは2〜3質量部である。シランカップリング剤の配合量が0.5質量部未満の場合、被塗物に対する塗膜の密着性が低下するとともに、耐揮発油性等の物性が低下して好ましくない。その一方、シランカップリング剤の配合量が10質量部を超える場合、耐候性防錆塗料の撥水性が高くなる傾向にあり、塗布作業性が低下する。
前記耐候性防錆塗料を鋼材等の被塗物に塗布する塗布方法は特に制限されず、スプレー塗布法、浸漬塗布法、刷毛塗り法等が採用される。耐候性防錆塗料の硬化は、例えば加熱硬化法、常温硬化法等が採用される。加熱硬化法では、例えば70〜90℃で2〜5分間程度加熱する方法が挙げられる。
前記耐候性防錆塗料が被塗物に塗布されて形成される用途としては、ブルトーザ、油圧ショベル、油圧ブレーカ、クローラクレーン、ホイールローダ、フォークリフト、高所作業車、散布車等の産業用車両が挙げられる。この用途としては、耐候性防錆塗料が産業用車両を構成する被塗物に塗布されて形成される産業用車両が有用である。被塗物としての鋼材の厚さは、好ましくは1〜50mm、より好ましくは5〜40mm、最も好ましくは10〜30mmである。鋼材の厚さが1mmより薄い場合には、鋼材の撓みにより塗膜が割れるおそれがある。その一方、鋼材の厚さが50より厚い場合には、鋼材の自重を考慮する必要が生じるおそれがある。
次に、上記のように構成された耐候性防錆塗料の作用について説明する。
さて、鋼材等の被塗物表面に塗膜を形成する場合には、常法に従って被塗物に耐候性防錆塗料を塗布し、例えば80℃で3分間加熱することにより、耐候性防錆塗料が硬化して被塗物表面に塗膜が形成される。得られた塗膜は、耐候性防錆塗料の主成分であるアクリル系樹脂エマルションの特質に基づいて耐候性を発現することができる。また、耐候性防錆塗料中には縮合リン酸アルミニウムが含まれていることから、防錆作用を発現することができる。さらに、耐候性防錆塗料中には撥水剤が含まれていることから、塗膜表面に撥水作用が発現され、塗膜中への水の浸入が抑えられる。
このため、塗膜には耐候性と防食性の双方が発現されるとともに、防食性が縮合リン酸アルミニウムと撥水剤とにより相乗的に発現され、かつ耐候性が縮合リン酸アルミニウムと撥水剤とにより阻害されることなく、良好に維持される。従って、塗膜は耐候性を発揮することができると同時に、防食性を発揮することができる。
以上の実施形態によって発揮される効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態の耐候性防錆塗料は、アクリル系樹脂エマルションと、縮合リン酸アルミニウムと、撥水剤とを必須成分として含有する。アクリル系樹脂エマルションは塗膜に優れた耐候性を付与でき、縮合リン酸アルミニウムは耐候性防錆塗料の粘性に影響されず、耐候性を損なうことなく塗膜に防食性を付与できるとともに、撥水剤は塗膜に撥水性を付与して防食性を向上させることができる。
従って、本実施形態の耐候性防錆塗料によれば、粘度等に関する条件に制約されることなく、また下塗り剤を用いることなく、直接被塗物に塗装することができ、塗膜の耐候性と防食性とを両立させることができるという優れた効果を奏する。
(2)前記撥水剤は、シリコーン化合物又は脂肪酸エステルである。このため、塗膜の撥水性を高めることができ、防食性を向上させることができる。
(3)前記アクリル系樹脂エマルションがアクリル−スチレン系共重合樹脂エマルションであることにより、塗膜の撥水性を高め、塗膜中への水の浸入を抑制し、防食性を向上させることができる。
(4)前記耐候性防錆塗料は、シランカップリング剤を含有する。従って、被塗物に対する塗膜の密着性を良好にできるとともに、塗膜の耐揮発油性等の物性を向上させることができる。
(5)前記縮合リン酸アルミニウムは、トリポリリン酸二水素アルミニウム又はその誘導体である。そのため、従来の防錆剤であるリン酸亜鉛やリン酸カルシウムに比べて、塗膜の防食性を顕著に高めることができる。
(6)前記アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して、縮合リン酸アルミニウムの配合量は0.5〜20質量部及び撥水剤の配合量は0.4〜22質量部であることが好ましい。この場合、塗膜物性を損なうことなく、防錆作用と撥水作用を発揮できて、塗膜の防食性向上を図ることができる。
(7)前記産業用車両は、耐候性防錆塗料を、産業用車両を構成する被塗物に塗布して形成される。このため、耐候性防錆塗料は産業用車両に好適に適用され、産業用車両の品質を向上させることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1、2及び比較例1〜3)
実施例1及び2では、アクリル系樹脂エマルション、縮合リン酸アルミニウムとしてのトリポリリン酸二水素アルミニウム、撥水剤としてのシリコーン化合物又は脂肪酸エステル、シランカップリング剤、消泡剤、顔料及び増膜助剤を表1に示す組成で配合して耐候性防錆塗料を調製した。
アクリル系樹脂エマルションとしては、アクリル−スチレン系共重合樹脂エマルション(不揮発分50質量%)又はアクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%)を使用した。アクリル−スチレン系共重合樹脂エマルションは、スチレン(St)15質量%、メチルメタクリレート(MMA)20質量%、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)22質量%、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHA)37質量%、アクリル酸(AA)1.5質量%、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)1.5質量%及びジアセトンアクリルアミド(DAAM)3質量%の共重合樹脂のエマルション(不揮発分50質量%)である。アクリル樹脂エマルションは、アクリル−スチレン系共重合樹脂からスチレンを除いたアクリル樹脂のエマルションである。
また、比較例1においては、エマルションとして酢酸ビニル系樹脂エマルション(不揮発分50質量%)を使用し、比較例2においては、エマルションとして塩化ビニル系樹脂エマルション(不揮発分50質量%)を使用した。比較例3では、エマルションを使用しなかった。
トリポリリン酸二水素アルミニウムとしては、亜鉛処理を施したものを使用した。
撥水剤のシリコーン化合物としては、シラン・シロキサンエマルションを用いた。撥水剤の脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ステアレートを用いた。
シランカップリング剤としては、グリシドキシエトキシシラン及びグリシドキシメトキシシランを使用した。
また、消泡剤としては変性シリコーン系の消泡剤、顔料としては水分散黒顔料、増膜助剤としてはポリプロピレングリコールモノメチルエーテル及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを用いた。
得られた耐候性防錆塗料について、防食性、耐候性、耐揮発油性、塗布作業性(はじき)及び塗膜物性(主に光沢)を下記の方法に従って測定し、それらの結果を表1に示した。なお、被塗物としては、厚さ20mmの鋼材を用いた。
防食性:サイクル腐食試験(複合サイクル試験)、JISZ 2371、JISK5600−7−9(2006)、サイクルA、480時間、下1/3〜1/2をXカットした。そして、錆の面積0.5%未満を◎、1%未満を○、8%未満を△、8%以上を×として評価した。
耐候性:、JISA 6909(2006)、7.19耐候性B法、キセノンランプを使用した。そして、耐候型1種相当を◎、耐候型2種相当を○、耐候型3種相当を△、耐候型3種に満たない場合を×として評価した。
耐揮発油性:JISK 5600−5−4、引っ掻き硬度(鉛筆法)、ガソリン浸漬前後の硬度変化を測定した。そして、硬度変化が1段以内を◎、2段以内を○、3段以内を△、硬度変化が3段以上又はガソリン浸漬部が膨潤したときを×として評価した。
塗布作業性:スプレーで標準塗装をし、1m当たりのピンホールの数を測定した。そして、ピンホールなしの場合を◎、ピンホール3個以下の場合を○、ピンホール10個以下の場合を△、ピンホール10個以上の場合を×として評価した。
塗膜物性:JISK5660、鏡面光沢度、60°で測定した。そして、光沢度80%以上を◎、60%以上を○、40%以上を△、40%以下を×として評価した。
表1に示したように、実施例1においては、防食性及び耐候性に優れるとともに、耐揮発油性、塗布作業性及び塗膜物性にも優れる結果が得られた。実施例2においては、防食性については実施例1より若干劣るが、その他の物性は実施例1と同様に優れていた。
一方、比較例1及び2では、エマルションとしてアクリル系樹脂エマルション以外の酢酸ビニル系樹脂エマルション又は塩化ビニル系樹脂エマルションを使用したことから、耐候性が悪化した。また、比較例3では、エマルションを使用しなかったため、防食性及び耐候性の双方が悪化するとともに、耐揮発油性及び塗膜物性も悪化した。
(実施例3、4及び比較例4〜6)
実施例3、4及び比較例4〜6の耐候性防錆塗料の組成を表2に示した。すなわち、実施例3では、実施例1において、防錆剤としてのトリポリリン酸二水素アルミニウム(亜鉛処理)に代えて、トリポリリン酸二水素アルミニウム(マグネシウム処理)を使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。実施例4では、実施例1において、防錆剤としてのトリポリリン酸二水素アルミニウム(亜鉛処理)に代えて、トリポリリン酸二水素アルミニウム(カルシウム処理)を使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。
一方、比較例4では、実施例1において、防錆剤としてトリポリリン酸二水素アルミニウム(亜鉛処理)に代えてリン酸亜鉛を使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を得た。比較例5では、実施例1において、防錆剤としてトリポリリン酸二水素アルミニウム(亜鉛処理)に代えてリン酸カルシウムを使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を得た。また、比較例6では、実施例1において、防錆剤を使用しなかった以外は実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を得た。
これらの耐候性防錆塗料について、実施例1と同様に防食性、耐候性、耐揮発油性、塗布作業性及び塗膜物性を測定し、それらの結果を表2に示した。
表2に示したように、実施例3及び4では、防錆剤としてトリポリリン酸二水素アルミニウムを使用したことから、優れた耐候性を維持しつつ、良好な防食性を発揮することができた。これに対して、比較例4及び5では防錆剤としてトリポリリン酸二水素アルミニウム以外のリン酸亜鉛又はリン酸カルシウムを用い、比較例6では防錆剤を用いなかったため、防食性が不良となる結果を招いた。
(実施例5〜11)
実施例5〜11では、撥水剤の種類について検討した。すなわち、実施例5では、実施例1の撥水剤であるシラン・シロキサンエマルションに代えて、シリケート水溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。実施例6では、実施例1の撥水剤であるシラン・シロキサンエマルションに代えて、シロキサンオイルを使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。実施例7では、実施例1の撥水剤であるシラン・シロキサンエマルションを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。
実施例8では、実施例1の撥水剤であるステアリン酸ステアレートに代えて、グリセリンステアリン酸エステルを使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。実施例9では、実施例1の撥水剤であるステアリン酸ステアレートに代えて、ラウリン酸ラウリレートを使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。実施例10では、実施例1の撥水剤であるステアリン酸ステアレートに代えて、グリセリンラウリン酸エステルを使用した以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。実施例11では、実施例1の撥水剤であるステアリン酸ステアレートを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。
そして、これらの耐候性防錆塗料について、実施例1と同様に防食性、耐候性、耐揮発油性、塗布作業性及び塗膜物性を測定し、それらの結果を表3に示した。
表3の実施例5及び6に示したように、撥水剤のシリコーン化合物の種類を変更した場合でも、優れた耐候性を発揮しつつ、良好な防食性を得ることができた。なお、実施例7に示したように、シリコーン化合物を含まない場合であっても、撥水剤として脂肪酸エステルを含むことにより、実施例6と同等の性能が得られた。
また、実施例8〜11に示したように、撥水剤として実施例1のステアリン酸ステアリレート以外の脂肪酸エステルを使用した場合であっても、耐候性等に優れるとともに、防食性も良好に維持することができた。
(実施例12〜14)
実施例12〜14では、シランカップリング剤の種類について検討した。実施例12では、実施例1において、シランカップリング剤としてのグリシドキシメトキシシランを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。実施例13では、実施例1において、シランカップリング剤としてのグリシドキシエトキシシランを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。実施例14では、実施例1において、シランカップリング剤としてのグリシドキシメトキシシランとグリシドキシエトキシシランの双方を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして耐候性防錆塗料を調製した。
そして、これらの耐候性防錆塗料について、実施例1と同様に防食性、耐候性、耐揮発油性、塗布作業性及び塗膜物性を測定し、それらの結果を表4に示した。
表4に示したように、実施例12〜14では、防食性、耐候性等の物性は実施例1と同様に優れているが、耐揮発油性は低下した。
(実施例15〜22)
実施例15〜22では、防錆剤の配合量について検討した。表5に示したように、防錆剤としてのトリポリリン酸二水素アルミニウム(亜鉛処理)の配合量を、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して0.3質量部(実施例15)〜30質量部(実施例22)まで変化させて、耐候性防錆塗料を調製した。
そして、これらの耐候性防錆塗料について、実施例1と同様に防食性、耐候性、耐揮発油性、塗布作業性及び塗膜物性を測定し、それらの結果を表5に示した。
表5に示したように、実施例15では、防錆剤の配合量が少ないことから、防食性が低下した。その一方、実施例22では、防錆剤の配合量が過剰であるため、塗膜物性が低下した。従って、防錆剤の配合量は、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましいことが示された。
(実施例23〜30)
実施例23〜30では、撥水剤(シリコーン化合物)の配合量について検討した。表6に示したように、撥水剤としてのシラン・シロキサンエマルションの配合量を、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して0.2質量部(実施例23)〜3質量部(実施例30)まで変化させて、耐候性防錆塗料を調製した。
そして、これらの耐候性防錆塗料について、実施例1と同様に防食性、耐候性、耐揮発油性、塗布作業性及び塗膜物性を測定し、それらの結果を表6に示した。
表6に示したように、実施例23では、撥水剤の配合量が少ないことから、防食性が低下した。一方、実施例30では、撥水剤の配合量が過剰であるため、塗布作業性が低下した。従って、撥水剤の配合量は、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して0.4〜2質量部が好ましいとの結果が得られた。
(実施例31〜38)
実施例31〜38では、撥水剤(脂肪酸エステル)の配合量について検討した。表6に示したように、撥水剤としてのステアリン酸ステアレートの配合量を、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して0.2質量部(実施例31)〜30質量部(実施例38)まで変化させて、耐候性防錆塗料を調製した。
そして、これらの耐候性防錆塗料について、実施例1と同様に防食性、耐候性、耐揮発油性、塗布作業性及び塗膜物性を測定し、それらの結果を表7に示した。
表7に示したように、実施例31では、撥水剤の配合量が少ないことから、防食性が低下した。一方、実施例38では、撥水剤の配合量が過剰であるため、塗布作業性の低下を招いた。従って、撥水剤の配合量は、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して0.4〜20質量部が好ましいことが示された。
(実施例39〜46)
実施例39〜46では、シランカップリング剤の配合量について検討した。表8に示したように、シランカップリング剤の配合量を、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して0.3質量部(実施例39)〜20質量部(実施例46)まで変化させて、耐候性防錆塗料を調製した。
そして、これらの耐候性防錆塗料について、実施例1と同様に防食性、耐候性、耐揮発油性、塗布作業性及び塗膜物性を測定し、それらの結果を表8に示した。
表8に示したように、実施例39では、シランカップリング剤の配合量が少ないことから、耐揮発油性が低下した。その一方、実施例46では、シランカップリング剤の配合量が過剰であるため、塗布作業性が低下した。従って、シランカップリング剤の配合量は、アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましいという結果が得られた。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・前記アクリル系樹脂エマルションとして、複数種類のエマルションを混合して使用してもよい。例えば、アクリル−スチレン系共重合樹脂エマルションのスチレン含量の異なる複数種類のエマルションを混合して使用してもよい。
・前記縮合リン酸アルミニウムとして、トリポリリン酸二水素アルミニウム又はその誘導体を複数選択して用いてもよい。
・前記撥水剤としてのシリコーン化合物を複数種類併用したり、脂肪酸エステルを複数種類併用したりしてもよい。

Claims (7)

  1. アクリル系樹脂エマルションと、縮合リン酸アルミニウムと、撥水剤とを必須成分として含有することを特徴とする耐候性防錆塗料。
  2. 前記撥水剤は、シリコーン化合物又は脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の耐候性防錆塗料。
  3. 前記アクリル系樹脂エマルションは、アクリル−スチレン系共重合樹脂エマルションであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐候性防錆塗料。
  4. シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の耐候性防錆塗料。
  5. 前記縮合リン酸アルミニウムは、トリポリリン酸二水素アルミニウム又はその誘導体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の耐候性防錆塗料。
  6. 前記アクリル系樹脂エマルション100質量部に対して、縮合リン酸アルミニウムの配合量は0.5〜20質量部及び撥水剤の配合量は0.4〜22質量部であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の耐候性防錆塗料。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の耐候性防錆塗料を、産業用車両を構成する被塗物に塗布して形成されることを特徴とする産業用車両。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105733383A (zh) * 2016-03-24 2016-07-06 安徽圣德建材科技有限公司 一种高韧性疏油疏水涂料

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