JP2015074073A - ポータブルトルク測定装置 - Google Patents

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藤 幸 太 近
Kota Kondo
藤 幸 太 近
澤 健司郎 伊
Kenshiro Izawa
澤 健司郎 伊
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Abstract

【課題】イレギュラーな初動トルクの発生を防止し正確なトルク波形の測定が可能でありながら、可搬性、携帯性に優れたポータブルトルク測定装置を提供する。【解決手段】直流モータ16と連結され、回転軸にかかるトルクの大きさに比例した電気信号を出力するトルク測定器20と、トルク測定器20の回転軸と連結されねじまたはボルト、ナットに締付けトルクを伝達するドライバー軸24とを有する携帯可能なトルク測定ユニット10を備え、直流モータ16に供給する電流を制御し、直流モータ16の急激な起動を抑制するスロースタータ回路26を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、ポータブルトルク測定装置に係り、特に、ねじ、ボルト、ナットを締め付ける過程のトルクを測定するための携帯型のトルク測定装置に関する。
従来から製造ラインでのねじやボルト、ナットを締め付ける工程では、電動ドライバーや電動トルクレンチなどの電動工具が用いられている。この種の電動ドライバーや電動トルクレンチには、トルクが設定値に達すると、ねじやボルト、ナットの締め付けを自動的に停止する機能があり、これによって、ねじやボルト、ナットを過剰なトルクで締め付け過ぎるのを未然に防止している。ねじやボルト、ナットの締め付けトルクの適正な設定値を決定するには、ねじやボルト、ナットを締め付けるときのトルクをあらかじめ測定する必要がある。
従来、ねじやボルト、ナットの締付トルクの測定には、トルク検出器を内蔵したトルクレンチや、トルクメータを取り付けたトルクレンチ、あるいは携帯用のトルク測定機などが用いられてきた。従来の携帯用のトルク測定機としては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。これらのトルクレンチや携帯用トルク測定機等は、携帯可能であるという利便性があるものの、その瞬間、瞬間のトルクの値はわかるが、締め付ける過程でのトルクの変化を示す波形を測定することができない。
ここで、図7は、タッピンねじを締め込む過程中のトルクの変化の典型例を示すグラフである。この図7において、横軸は、時間を表し、縦軸はトルクを表している。図8(a)はタッピンねじ1の締め込み開始位置を示している。図8(b)は、図7のトルク曲線上のポイントP1でのタッピンねじ1の締め込み位置を示し、図8(c)は、トルク曲線上のポイントP3でのタッピンねじ1の締め込み位置を示している。
これら図8(a)〜図8(c)において、参照番号2a、2bは、タッピンねじ1で締結される2枚の相手材を示している。タッピンねじ1は、相手材2a、2bにめねじを成形しながら締め込んでいくねじである。
相手材2a、2bには穴3があらかじめ開けられており、タッピンねじ1を図示しないトルクレンチなどで回転させると、穴3の内周面にめねじを成形しながら、タッピンねじ1がねじ込まれ、相手材2a、2bを貫通するまでめねじが成形されていく。めねじが成形されていく過程のトルクの変化は、原点からP1までの曲線で表される。めねじを新たに成形しながらの締め込みであるので、トルクは徐々に増えていく。ポイントP1、すなわち、めねじの形成が完了した時点を過ぎると、タッピンねじ1を締め込んでいってもねじ成形は伴わずに、タッピンねじ1のおねじがめねじに螺合していくだけであるので、P1からP2で表される曲線のように、締め込みトルクは次第に減少していくことになる。
やがて、タッピンねじ1の頭部1aの座面が相手材2aに着座すると(ポイントP3)、トルクの値は急激に増加し、さらにピークに達すると(ポイントP4)、めねじが破壊されるか、あるいはおねじが破壊されるかによって、トルクの値は急激に減少する。
以上のような変化をたどる締め込みトルクの波形を測定することで、従来、次のようにして、締付けトルクの適正値を求めていた。
その代表的な例としては、図7におけるポイントP1におけるトルク値(ここではねじ込みトルクT1という)と、ポイントP4におけるトルク値(締付け破断トルクT2という)との値を求め、
(ねじ込みトルクT1+締付けトルクT2)÷2=適正締付けトルク
として算出している。ただし、締付けトルクの大きさは、JIS B1055で定められているねじりトルクの80%以下になるように、適宜値は補正されることがある。
ところで、以上のようなトルクの波形は、上述した携帯型のトルク測定装置では測定することができないものが多かった。また、トルクの波形を測定できても、初動トルクをイレギュラーに感知してしまうという問題があった。
ここで、図9は、初動トルクをイレギュラーに感知してしまった場合のトルク波形を説明する図である。
携帯型のトルク測定機の駆動モータには、軽量なブラシレス直流モータ等が用いられており、起動したときに急激に回転数が増加し、図8に示したタッピンねじの締め込みの例でいえば、めねじの成形を急激に開始することになるため、本来の締め込み開始時とは違ってトルクが一時的に急上昇するイレギュラー部Aが検出されてしまう。そして、締付けトルクの波形がこのようなイレギュラーな変化をすると、本来あるべき波形とは違った波形となって締付けトルクの適正値を正確に算出することができなくなる。
携帯型のトルク測定装置にはこのような問題点があったため、従来は、締付けトルク解析専用のトルクアナライザー試験機が用いられてきた。このトルクアナライザー試験機は、ねじにトルクを与える駆動モータにサーボモータを用いているので、モータ起動時の回転をコントロールすることが容易になり、イレギュラーな初動トルクの感知を未然に防止することが可能になる。
実開平5−33043号公報
しかしながら、従来の締付けトルク解析専用のトルクアナライザー試験機は、サーボモータを搭載しているため、可搬性、携帯性のない据付固定式の装置として構成されていた。このため、試験機に組み込めない大型の締結構造物は測定できないなど、測定の対象が限定されたり、ねじ込む方向も垂直方向以外は制限を受け、斜め方向からのねじの締付けが測定できないという問題点が指摘されていた。
そこで、本発明は、前記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであって、イレギュラーな初動トルクの発生を防止し正確なトルク波形の測定が可能でありながら、可搬性、携帯性に優れたポータブルトルク測定装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、直流モータと連結され、回転軸にかかるトルクの大きさに比例した電気信号を出力するトルク測定器と、前記トルク測定器の回転軸と連結されねじまたはボルト、ナットに締付けトルクを伝達するドライバー軸とを有する携帯可能なトルク測定ユニットを備え、前記直流モータに供給する電流を制御し、当該直流モータの急激な起動を抑制するスロースタータ回路を有することを特徴とするものである。
本発明の第1実施形態によるポータブルトルク測定装置の概略構成を示す説明図である。 同ポータブルトルク測定装置の一部破断側面図である。 同ポータブルトルク測定装置のブロック構成図である。 同ポータブルトルク測定装置の備えるスロースタータ回路の一例を示す回路図である。 同ポータブルトルク測定装置による締付けトルク測定のトルク変化を示すグラフである。 本発明の第2実施形態によるポータブルトルク測定装置の一部破断側面図である。 タッピンねじを締め込むときの締め込みトルク変化の典型的な例を示すグラフである。 タッピンねじの締め込み位置の変化の説明図である。 タッピンねじを締め込むときに検知されるイレギュラーな初動トルクを含むトルク変化の例を示すグラフである。
以下、本発明によるポータブルトルク測定装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態によるポータブルトルク測定装置を示す。図1において、参照番号10は、携帯型のトルク測定ユニットを示す。このトルク測定ユニット10は、直流モータによって駆動されるドライバー型のトルク測定ユニットである。12は、交流電流を直流に変換し、トルク測定ユニット10に電力を供給する電源ユニットを示す。14は、トルク測定ユニット10でねじやボルト、ナットを締め込む過程のトルク変化の波形を解析するためのコンピュータを示している。
次に、図2に示されるように、本実施形態のトルク測定ユニット10は、細長い筒状のハウジング15を有している。このハウジング15の内部には、モータ16と、減速機17と、クラッチ18、トルク測定器20とが同軸に収納されている。
例えば、遊星歯車機構からなる減速機17は、モータ16の回転を減速させて、クラッチ18を介してトルク測定器20に伝達する。この場合、クラッチ18は、あらかじめ設定している規定トルク以上のトルクがかかるとクラッチの接続が切れて、モータ16の回転はトルク測定器20に伝わらないようになっている。トルク測定機20は、その回転軸に歪みゲージが配置されており、トルクによる回転軸の歪みを歪みゲージによって検出し、電気信号に変換して出力する。
トルク測定器20の回転軸の先端には、継手22を介してねじやボルト、ナットを回すためのドライバー軸24が着脱可能に連結されている。ドライバー軸24は、ねじやボルトの種類ごとに複数本用意されており、測定対象に応じて適したドライバー軸24を取り付けられるようになっている。この実施形態では、タッピンねじ用のドライバー軸24が用いられている。
ここで、図3は、本実施形態によるポータブルトルク測定装置のブロック図である。なお、図3において、図2と同一の構成要素には同一の参照番号を付してある。
図3において、11は交流電源を示す。携帯型のトルク測定ユニット10には、スイッチ25をオンにすると同時にモータ16が高速で回転しないように、スロースタータ回路26が設けられている。スイッチ25をオンにすると、このスロースタータ回路26によってモータ16に供給される電流が徐々に増えるようになっている。図4は、スロースタータ回路26の一例を示している。電解コンデンサ27と、NPN形トランジスタ28と、PNP形トランジスタ29とを組み合わせてスロースタータ回路26が構成されている。電解コンデンサ27があることで、NPN形トランジスタ28のベースへ供給する電流を徐々に大きくすることができるので、モータ16には、スイッチ25をオンにした直後には小さい電流が供給され、徐々に大きな電流に増幅されるようになっている。
図3において、モータ16が回転すると、減速機17によって減速された回転がトルク測定器20に伝達され、測定物40であるねじやボルトの締付けトルクに比例した電圧がトルク測定器20の歪みゲージから出力される。この出力電圧は、A/D変換器29によってデジタルデータに変換されて、解析用のコンピュータ14に取り込まれる。このコンピュータ14には、トルク波形解析用のソフトウェアがインストールされている。トルク測定ユニット10のスイッチ25がオンされると、これに同期するスイッチ33がオンになり、計測開始のトリガー信号がコンピュータ14に導入され、トルク波形解析用ソフトウェアによる締付けトルクの記録が開始される。このとき記録したトルクの変化を示す波形から、後述するように、締付けトルクの適正値が算出されるようになっている。また、このときのデータは、表計算ソフト、例えば、エクセル形式のデータとして出力され、エクセルを使って解析結果の報告書等を直ちに作成することができるようになっている。
本実施形態によるポータブルトルク測定装置は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用並びに効果について説明する。
本実施形態によるポータブルトルク測定装置では、図2に示されるように、携帯式の電動ドライバー型のトルク測定ユニット10としてコンパクトに構成されているので、トルク測定ユニット10の本体を手で持って、ドライバー軸24の先端をねじやボルトの頭に嵌めてからスイッチ25をオンにしてモータ10を起動するだけで、ねじやボルトを締め込む過程のトルクを簡便に測定してその変化の波形を記録することができる。そして、トルク測定ユニット10でねじやボルトを締め込むときの姿勢も、従来の固定式のトルク測定装置とは異なって、方向の制約はなく、縦方向の締付けはもちろんのこと、水平方向、斜め方向の締付けなどいずれも可能である。
また、トルク測定ユニット10だけでなく、電源ユニット12とノート型パソコンからなるトルク解析用のコンピュータ14とを組み合わせることで、トルク測定装置のシステム全体を例えば、アタッシュケースに収納して容易に持ち運べることができる。
さらに、本実施形態によれば、携帯型のトルク測定装置でありながら、次のようにして、イレギュラーな初動トルクの発生を抑止してトルク波形の正確な測定を実現することができる。
ここで、図5は、本実施形態のポータブルトルク測定装置によりタッピンねじを締め込む過程のトルクの変化を示す。
トルク測定が開始されると、スロースタータ回路26が作動して、モータ10にはいきなり大きな電流は供給されずに、徐々に供給される電流が増えていく。このため、モータ10は起動後ある程度時間を経たポイントP1まで回転を開始せず、めねじを形成することはない。この過程でのトルクの変化は、図5において、原点からP1までの曲線で表される。この過程では、タッピンねじでめねじを成形するのに必要なトルクが発生していない。
次いで、モータ10に供給される電流が増大していくと、徐々にタッピンねじは回転を始め、ゆっくりとめねじを成形していく。これとともにトルクの値も徐々に増えていく。穴を貫通するまでめねじが成形されていく過程のトルクの変化は、P1からP2までの曲線で表される。めねじを新たに成形しながらの締め込みであるので、トルクは徐々に増えていく。
ポイントP2のめねじの成形が完了した時点を過ぎると、タッピンねじを締め込んでいっても、ねじ成形は伴わずに、タッピンねじ1のおねじがめねじに螺合していくだけであるので、P2からP3で表される曲線のように、締め込みトルクは次第に減少していくことになる。
やがて、タッピンねじの頭部の座面が相手材に着座すると(ポイントP4)、トルクの値は急激に増加し、ピークに達すると(ポイントP5)、めねじが破壊されるか、おねじが破壊されるかによって、トルクの値は急激に減少する。
以上のように測定された締め込みトルクの波形では、イレギュラーなトルクは感知されなくなるので、図5におけるポイントP2におけるトルク値(ここではねじ込みトルクT1という)と、ポイントP5におけるトルク値(締付け破断トルクT2という)との値を求め、
(ねじ込みトルクT1+締付けトルクT2)÷2=適正締付けトルク
を正確に算出することができる。
第2実施形態
次に、本発明によるポータブルトルク測定装置の第2の実施形態について、図6を参照して説明する。
この第2実施形態は、トルク測定ユニットをいわゆるマルチ型のトルク測定ユニットとした実施形態である。
このマルチ型のトルク測定ユニット30では、ハウジング32の内部に、トルク測定器33と、カップリング34とが収納されている。トルク測定器33の回転軸には、継手35を介してねじやボルトを回すためのドライバー軸36が接続されている。
このようなマルチ型のトルク測定ユニット30は、駆動源としては、図示しない電動ドライバーが用いられる。電動ドライバーの駆動軸は、入力軸37と接続される。この入力軸37は、カップリング34と連結されており、このカップリング34によって電動ドライバーの駆動軸とトルク測定器33の回転軸とが偏心状態で接続されるのを抑制している。ハウジング32の後端には、電動ドライバーを保持して回り止めとなるグリップ38が設けられている。
第2実施形態のように、マルチ型のトルク測定ユニット30を用いた場合、図3に示したようなスロースタート回路26によって電動ドライバーのモータに電流が供給されることになる。
以上のように構成されるポータブルトルク測定装置によれば、トルク測定ユニット30には、モータが組み込まれていないので、トルク測定ユニット30を小型化、軽量化をすることができ、より携帯性を高めることができる。
10…ドライバー型のトルク測定ユニット、12…電源ユニット、14…コンピュータ、15…ハウジング、16…モータ、17…減速機、18…クラッチ、20…トルク測定器、22…継手、24…ドライバー軸、25…スイッチ、26…スロースタータ回路、27…電解コンデンサ、29…A/D変換器、30…マルチ型のトルク測定ユニット、33…トルク測定器、34…カップリング、36…ドライバー軸、37…入力軸

Claims (3)

  1. 直流モータと連結され、回転軸にかかるトルクの大きさに比例した電気信号を出力するトルク測定器と、前記トルク測定器の回転軸と連結されねじまたはボルト、ナットに締付けトルクを伝達するドライバー軸とを有する携帯可能なトルク測定ユニットを備え、前記直流モータに供給する電流を制御し、当該直流モータの急激な起動を抑制するスロースタータ回路を有することを特徴とするポータブルトルク測定装置。
  2. 前記トルク測定ユニットは、筒状のハウジング内に、前記直流モータと、減速機と、前記トルク測定器と減速機とを連結するクラッチと、前記トルク測定器とが直列に収納されたドライバー型のトルク測定ユニットからなることを特徴とする請求項1に記載のポータブルトルク測定装置。
  3. 前記トルク測定ユニットは、筒状のハウジング内に前記トルク測定器と、駆動源としての電動ドライバーとの連結用のカップリングが収納されたマルチ型のトルク測定ユニットからなることを特徴とする請求項1に記載のポータブルトルク測定装置。
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