[第1の実施の形態]
以下、本発明を超音波診断装置に具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。本実施の形態の超音波診断装置は、面内流れ表示機能を有する面内流れ表示装置である。
図1は、本実施の形態の超音波診断装置を示す概略構成図である。図1に示されるように、超音波診断装置1は、装置本体2と、超音波プローブ3とを備えている。装置本体2には、コネクタ4が設けられ、そのコネクタ4にケーブル5を介して超音波プローブ3が接続されている。
超音波プローブ3は、その先端部に超音波振動子6を1次元に多数並べて配列したアレイ探触子7を有し、生体組織8(観測対象物)に対して先端部を接触させた状態で超音波を送受信する。超音波プローブ3は、例えば、リニア式電子走査を行うためのリニアプローブであり、5MHzの超音波を直線状に走査する。
装置本体2は、コントローラ10、パルス発生回路11、送信回路12、受信回路13、Bモード信号処理回路14、ドプラ信号処理回路15、画像処理回路16、流速ベクトル演算回路17、入力装置18、メモリ19、記憶装置20、ディスプレイ21を備える。
コントローラ10は、周知の中央処理装置(CPU)を含んで構成されており、メモリ19を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。パルス発生回路11は、コントローラ10からの制御信号に応答して動作し、所定周期のパルス信号を生成して出力する。
送信回路12は、超音波プローブ3における超音波振動子6の素子数に対応した複数の遅延回路(図示略)を含み、パルス発生回路11から出力されるパルス信号に基づいて、各超音波振動子6に応じて遅延させた駆動パルスを出力する。各駆動パルスの遅延時間は、超音波プローブ3から出力される超音波が所定の照射点で焦点を結ぶように設定されている。
受信回路13は、図示しない信号増幅回路、遅延回路、整相加算回路を含む。この受信回路13では、超音波プローブ3における各超音波振動子6で受信された超音波の反射波信号(観測波信号としてのエコー信号)が増幅されるとともに、受信指向性を考慮した遅延時間が各反射波信号に付加された後、整相加算される。この加算によって、各超音波振動子6の受信信号の位相差が調整される。
Bモード信号処理回路14は、図示しない対数変換回路、包絡線検波回路、A/D変換回路などから構成されている。Bモード信号処理回路14における対数変換回路は反射波信号を対数変換し、包絡線検波回路は対数変換回路の出力信号の包絡線を検波する。また、A/D変換回路は、包絡線検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換してそのデジタル信号を画像処理回路16に出力する。
ドプラ信号処理回路15は、受信回路13で受信された反射波信号に基づいて、高速フーリエ変換等の信号処理により周波数解析を行い、ドプラ効果による血流情報(例えば、血流の速度、分散等)のデータ信号を生成する。そして、ドプラ信号処理回路15は、血流情報のデータ信号を画像処理回路16に出力する。
画像処理回路16は、Bモード信号処理回路14から出力されるデジタル信号に基づいて、画像処理を行い断層画像(Bモード画像)の画像データを生成する。具体的には、画像処理回路16は、輝度変調処理を行うことで、反射波信号の振幅(信号強度)に応じた輝度の画像データを生成する。また、画像処理回路16は、ドプラ信号処理回路15から出力されるデータ信号に基づいて、画像処理を行いカラードプラ画像の画像データを生成する。画像処理回路16で生成された画像データは逐次メモリ19に転送され記憶される。なおここでは、観測面の1フレーム分の画像データがメモリ19に記憶される。
流速ベクトル演算回路17(ベクトル算出手段)は、ドプラ信号処理回路15が生成した血流情報のデータ信号を利用して、観測面内における各測定点での血流の流速ベクトルを求める。そして、各測定点での流速ベクトルのデータをメモリ19に記憶する。なお、流速ベクトルも、観測面の1フレーム分のデータがメモリ19に記憶される。
コントローラ10は、そのメモリ19に記憶された1フレーム分の画像データや流速ベクトルのデータを読み出す。そして、コントローラ10は、それらデータに基づいて画像表示処理を行い、その処理で得られた画像データをディスプレイ21に出力する。
ディスプレイ21は、画像データに基づいて超音波画像診断用の表示画像(基本画像としての超音波画像)を表示する。この表示画像において、生体組織8の断層画像が白黒の濃淡で表示されるとともに、血流情報に応じたカラードプラ画像が断層画像上にカラー表示される。具体的には、超音波プローブ3に近づく方向の血流が赤系統の色で表示され、超音波プローブ3から遠ざかる方向の血流が青系統の色で表示される。さらに、本実施の形態では、血流の流速ベクトルに対応した矢印(有方向性画像)がその画像に重ね合わせて表示される。
ディスプレイ21は、例えば、LCDやCRTなどのカラーディスプレイであり、生体組織8の超音波画像や、各種設定の入力画面を表示するために用いられる。入力装置18は、キーボードやマウス装置などであり、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
記憶装置20は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などであり、その記憶装置には制御プログラム及び各種のデータが記憶されている。コントローラ10は、入力装置18による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置20からメモリ19へ転送し、それを逐次実行する。なお、コントローラ10が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置にインストールして利用する。
次に、本実施の形態において、観測面内における血流の流速ベクトル(二次元の血流速度ベクトル)を求める手法の一例を説明する。
まず、図2を用い、血流の速度成分について説明する。図2において、X方向はリニア走査される超音波のビーム方向であり、XY平面がリニア走査の観測面30(断層面)である。
実際の血流の速度V(x,y,z)は三次元ベクトルである。このベクトルVは、次式(1)に示されるように、カラードプラ画像の観測面30の二次元ベクトルU(x,y)と、観測面30に対して垂直方向(z方向)の速度成分wとに分解することができる。
ここで、ezは、観測面30に垂直方向の単位ベクトルである。
そして、観測面30内の二次元ベクトルU(x,y)は、次式(2)に示されるように、ビーム方向の成分u(x,y)とビーム方向に対して直角方向の成分v(x,y)とに分解することができる。
ここで、exは、ビーム方向の単位ベクトルであり、eyは、ビーム方向に直交する方向の単位ベクトルである。
次に、観測面30内の二次元ベクトルU(x,y)の推定法について説明する。なお、本実施の形態における観測面30は、無限の平面ではなく、超音波ビームの走査範囲に対応した有限の面領域である。
図3に示されるように、観測面30内の流れが、有限の観測面30内のみの流れである渦流31と、観測面30を通して該観測面30外の領域との間での流出及び流入がある基本流32とに分解される、と仮定する。
渦流31及び基本流32は、本実施の形態の概念を説明するために導入した概念である。すなわち、この流れの分解では、観測面30内の流れには、該観測面30内で閉じて循環する流れの成分が存在すると仮定し、そのような面内循環流の成分を渦流31と名付ける。つまり、本実施の形態における渦流31は、流体力学における渦(vortex)とはまったく独立した概念である。そして、観測面30内の流れ全体から渦流31を除いた残りを、基本流32と呼ぶ。従って、基本流32は、観測面30内に対して三次元的に流出入する成分と、観測面30と同一平面内の、該観測面30の外部との間で流出入する成分とを含んでいる。
このように、観測面30内の流れを渦流31と基本流32とに分解した場合、上式(2)のビーム方向の速度成分u(x,y)は、次式(3)のように、渦流31が担う速度成分u
s(x,y)と、基本流32が担う速度成分u
b(x,y)との和で表される。
同様に、上式(2)におけるビームに直交する方向の速度成分v(x,y)も、次式(4)のように、渦流31が担う速度成分v
s(x,y)と基本流32が担う速度成分v
b(x,y)との和で表される。
超音波のドプラ効果によって直接測定が可能な速度は、ビーム方向の速度成分u(x,y)のみである。本実施の形態では、ビーム方向の速度成分u(x,y)の情報(ドプラ信号処理回路15で取得した血流情報)に基づき、ビーム方向の渦流31の速度成分us(x,y)を推定する。そして、求めた渦流31の速度成分us(x,y)を利用することで、ビーム方向と直交する速度成分のうちの渦流31の成分vs(x,y)、及び基本流32の成分vb(x,y)を推定する。これら各成分の推定法を、以下に説明する。
二次元の非圧縮性流体は、流れ関数を用いて流れの状態を記述できる。ここで、観測面30内の渦流31が二次元の非圧縮性流体の流れであると仮定すると、渦流31のビーム方向の速度成分u
sと、ビーム方向に直交する速度成分v
sは、流れ関数S(x,y)を用いて、次式(5)及び(6)で表すことができる(図4参照)。
従って、渦流31のビーム方向の速度成分u
sが分かれば、流れ関数S(x,y)は次式(7)から求められる。
上記流れ関数S(x,y)は二次元流に関するものである。本実施形態では、この流れ関数S(x,y)の考え方を三次元流の中の観測面内の流れに拡張した、流量関数F(x,y)を用いる。流量関数F(x,y)は、上式(7)と同様に、ドプラ法により求めることができるビーム方向の速度成分u(x,y)を、ビーム方向に直交する方向(y方向)に沿って積分することにより計算する。すなわち、流量関数F(x,y)は次式(8)で定義される。
ここでは、図5(a)に示すように、観測面30の領域内に、ビーム方向に平行にx軸を、ビーム方向に直交する方向にy軸をとっている。そして、ビーム走査範囲は[y1,y2]で示される範囲とする。上式(8)の積分は、図5(a)において、y軸からの距離がxである直線の積分経路40に沿って、u(x,y)をy=0からy=yまで積分する処理である。具体的な数値計算として、この積分は、ドプラ法で求められる各測定点(x,y)のビーム方向の速度成分uの値を、その積分経路40に沿ってy=0からy=yまで足し合わせることにより行う。積分経路40に沿った各測定点(x,y)のビーム方向の速度成分uの分布が曲線41であるとすると、その積分経路40に沿った流量関数F(x,y)は図5(b)における曲線42で示される。
また、ビーム方向に沿って距離xの位置にある積分経路40において、ビーム方向の速度成分uをビーム走査範囲[y
1,y
2]に渡って距離積分した値を、距離流量関数F
r(x)と定義する。この距離流量関数F
r(x)は次式(9)で表される。
距離流量関数Fr(x)は、距離xの位置でのビーム方向に垂直な直線を横切る流量(ただし、ビーム方向の速度成分uのみによるもの)の総計を示す。図5(c)は、距離流量関数Fr(x)の曲線43の一例を示している。
次に、このように求めた距離流量関数F
r(x)から渦流31の成分による流量を計算する。具体的には、まず、距離流量関数F
r(x)を、次式(10)に示されるように、uの正の成分であるu
+からの寄与F
r+と、uの負の成分であるu
-からの寄与F
r-とに分解する。
ここで、渦流31の流れ関数Sを求めるとき、u
sの正の成分u
s+からの寄与S
+と、u
sの負の成分u
s-からの寄与S
-とに分解する。観測面30内の渦流31は二次元流と考えられ、しかも定義上観測面30の外周の境界線を介して外部との間で流出入がない。このため、観測面30を横切る経路の端点からもう一方の端点までu
sを積分すれば、その結果はゼロとなる(図4(b)参照)。従って、次式(11)の関係が成り立つ。
ここで、観測面30内の流れのうち、渦流31の成分が最大であると仮定する。すなわち、y軸から見て距離xの経路40上の流量関数F(x,y)の曲線において、該経路40全体での総流量(具体的には距離流量Fr(x))とは逆向きの流れとなっている区間の流量は、すべて渦流31によるものと仮定する。
この仮定を、図6を用いて説明する。経路40上のビーム方向の速度成分uの分布が、図6(a)の曲線50に示すようなものであった場合、この経路40を横切る流れは経路40全体で見ればx軸の正の方向であるといえる。ここで、この流れのうち、観測面30内で循環している渦流31による流量成分は経路40全体で総計すれば零になるので、総流量Fr(x)は基本流32によるものと言える。そして、基本流32の流れ方向がその経路40の全域にわたって同一方向(すなわち総流量の方向)であるとし、これとは逆向きの流れはすべて渦流31によるものであると仮定する。つまり、図6(a)において、uが負の区間の流量は、渦流31によるものとする。
なおこの場合、総流量の向きと同一方向の流れ成分による流量よりも、その逆向きの流れの成分による流量の方が小さいものとなる。従って、次式(12)の関係が成り立つ。
ここで、図6に示す具体例のように、流量距離関数F
r(x)が正の場合(図6(b)参照)には、−F
r-の値がF
r+の値より小さい(ここでは絶対値同士を比較している)ので、次式(13)及び(14)が成り立つ。
これは、負方向の流れが渦流31によるものと見なした場合である。この場合、図6(b)に示されるように、負方向の流れによる流量F
r-が、渦流31の負方向の成分u
s-による寄与S
-と等しくなる。ここで、正の流量F
r+に対する渦流31の正の流量S
+の割合k
+を、次式(15)で定義する。
ここで、Fr+及びFr-は既知なので、上式(13)からS+の値が決まり、上式(15)により割合k+の値が決まる。
一方、F
r(x)が負またはゼロの場合には、F
r+が−F
r-より小さいか等しいので、次式(16)及び(17)が成り立つ。
これは、正方向の流れが渦流31によるものと見なした場合である。この場合は、正方向の流れによる流量F
r+が、渦流31の正方向の成分u
s+による寄与S
+と等しくなる。ここで、負の流量F
r-に対する渦流31の負の流量S
-の割合k
-を、次式(18)で定義する。この割合k
-の値も、上述の割合k
+の値と同様の考え方で求めることができる。
次に、ビーム方向の渦流31の速度成分u
s(x,y)及びビーム方向の基本流32の速度成分u
b(x,y)を推定する。この推定のため、ここでは、観測面30内で湧出や吸込が一様に発生していると仮定する。図6に示されるように、流量距離関数F
r(x)が正となる場合について説明する。この場合、上記の仮定の下では、上式(15)の割合k
+は、ビーム方向の速度成分uに対する正の場合の渦流の速度成分u
sとの割合になる。従って、次式(19)が成り立つ。
従って、上式(3)から、ビーム方向の基本流32の速度成分u
bが次式(20)で表される。
以上の計算では、図6(c)に示されるように、正の範囲にあるビーム方向の速度成分uを、渦流31による成分と基本流32による成分とに比例配分している。すなわち、図6(c)では、破線の曲線55が渦流31の成分を示し、曲線50と曲線55との差分が基本流32の成分を示している。
以上、流量距離関数F
r(x)が正の場合について説明したが、流量距離関数F
r(x)が負又は0の場合も同様に考えることができる。すなわち、負の流量F
r-に対する渦流31の負の流量S
-の割合k
-から、ビーム方向の渦流31及び基本流32の速度成分u
s及びu
bは、次式(21)及び(22)で表される。
上式(19)または上式(21)で求めたusを用いることで、上式(7)から流れ関数S(x,y)が求められる。そして、その流れ関数Sを用いることで、上式(6)から渦流31のビームに直交方向の速度成分vs(x,y)が求められる。
また、基本流32についての基本流量関数F
bを次式(23)で定義する。
すなわち基本流量関数Fbは、ビーム方向の速度成分uから求めた流量関数Fから、渦流31の流量を示す流れ関数Sを減算したものである。
距離xごとにこの基本流量関数F
bが全体(具体的には、距離流量関数F
r(x))の50%となる点を求めてつないだ曲線を、基本流32の中央流線と定義する(図7参照)。図7に示すように中央流線60を等レベル線で表示するために、各距離ごとに距離流量関数F
r(x)が単位流量となるように、次式(24)に従って基本流量関数を正規化する。
この関数の等レベル線が基本流32の流線になる。すなわち、例えばF
bn=0.2を満足する点を繋げば、流量がF
r(x)の20%となる流線61となる。図8に示すように、観測面30上の点Pでの基本流32の速度ベクトルQは、点Pを通る基本流32の流線63の接線ベクトルとなる。従って、点Pでの流線63の接線方向とビーム方向とのなす角度をθとすると、点Pでの基本流32のビーム方向に直交する速度成分v
bは次式(25)で与えられる。
上式(25)において、ubは上式(20)又は上式(22)から既知である。また、点PにおけるFbnの値を求め、それと同じFbn値を持つ点P近傍の点を求めれば、角度θは分かる。従って、上式(25)によりvbの値が求められる。
以上のように、超音波のドプラ法で得られるビーム方向の速度成分uから、渦流31の速度成分(us,vs)と基本流32の速度成分(ub,vb)が求められる。そして、これら速度成分が分かれば、上式(4)からビーム方向に直交する方向の速度成分v(x,y)が求められる。さらに、直交方向の速度成分v(x,y)とビーム方向の速度成分u(x,y)と組み合わせることで、観測面30内の各測定点における血流の二次元の流速ベクトルが求められる。
本実施の形態の超音波診断装置1では、以上詳述した処理を流速ベクトル演算回路17で行うことにより、観測面30の各測定点における血流の流速ベクトルが求められ、メモリ19に記憶される。そして、コントローラ10により、メモリ19に記憶されたデータに基づいて画像表示処理が行われる。この結果、断層画像にカラードプラ画像を重ね合わせた超音波画像がディスプレイ21に表示されるとともに、流速ベクトルに応じた矢印がその断層画像上に表示される。
次に、本実施の形態の超音波診断装置1で行われる画像表示処理について図9を用いて説明する。図9の処理は、作業者が入力装置18を操作して処理開始ボタン(図示略)が操作されたときに開始される。
まず、コントローラ10は、パルス発生回路11を動作させ、超音波プローブ3による超音波の送受信を開始させる(ステップ100)。具体的には、コントローラ10から出力される制御信号に応答してパルス発生回路11が動作し、所定周期のパルス信号が送信回路12に供給される。そして、送信回路12では、パルス信号に基づいて、各超音波振動子6に対応した遅延時間を有する駆動パルスが生成され、超音波プローブ3に供給される。これにより、超音波プローブ3の各超音波振動子6が振動して超音波が生体組織8に向けて照射される。生体組織8内を伝搬する超音波の一部は、組織境界面などで反射して超音波プローブ3で受信される。このとき、超音波プローブ3の各超音波振動子6によって反射波が電気信号(反射波信号)に変換される。そして、その反射波信号は、受信回路13で増幅等された後、Bモード信号処理回路14及びドプラ信号処理回路15に入力される。
Bモード信号処理回路14では、対数変換、包絡線検波、A/D変換といった信号処理が行われ、デジタル信号に変換された反射波信号が画像処理回路16に供給される。画像処理回路16では、その反射波信号に基づいて、断層画像の画像データを生成するための画像処理が行われる。
また、ドプラ信号処理回路15では、反射波信号に基づいて、高速フーリエ変換等の信号処理により周波数解析が行われ、ドプラ効果による血流情報(具体的には、血流の速度、分散等)のデータ信号が生成される。画像処理回路16では、ドプラ信号処理回路15から出力されるデータ信号に基づいて、カラードプラ画像の画像データを生成するための画像処理が行われる。そして、コントローラ10は、画像処理回路16で生成された各画像データをメモリ19に一旦記憶する(ステップ110)。
さらに、流速ベクトル演算回路17では、ドプラ信号処理回路15で生成された血流の速度のデータ信号に基づいて、観測面30内における各測定点での血流の流速ベクトル(二次元速度ベクトルとしての血流速度ベクトル)が求められる(ベクトル算出ステップ)。そして、コントローラ10は、流速ベクトル演算回路17で求められた流速ベクトルのデータをメモリ19に一旦記憶する。
コントローラ10は、メモリ19に記憶された各画像データを読み出し、超音波画像のデータを生成してディスプレイ21に出力する。この結果、血流情報に応じたカラードプラ画像を断層画像上に重ね合わせた超音波画像をディスプレイ21に表示させる(ステップ120)。
その後、コントローラ10は、表示モードを選択させるための選択画面をディスプレイ21に表示させる(ステップ130)。この選択画面には、表示モードの選択ボタンやボタン選択を促すメッセージなどが表示されている。そして、作業者は、表示画面を確認しつつ入力装置18を操作して、矢印の表示モードを選択する。本実施の形態では、矢印の表示モードとして、例えば、通常表示モードと圧縮表示モードとを有する。通常表示モードは、流速ベクトルの大きさに対して、リニアなサイズで矢印を表示するモードである。また、圧縮表示モードは、流速ベクトルの大きさに対して、対数演算による圧縮したサイズで矢印を表示するモードである。
サイズ選択手段としてのコントローラ10は、表示モードの選択信号を入力装置18から取り込み、選択された表示モードを判定する(ステップ140)。ここで、通常表示モードが選択されたと判断した場合、コントローラ10は、通常表示モードで矢印を表示するための処理を行う。
具体的には、コントローラ10は、超音波画像の表示領域において、複数の測定点における流速ベクトルをメモリ19から読み出す。さらに、第1表示サイズ演算手段としてのコントローラ10は、流速ベクトルの大小に応じた矢印の表示サイズを基本演算式に従って決定する(第1表示サイズ演算ステップとしてのステップ150)。本実施の形態の基本演算式は、表示サイズをY(mm)、流速ベクトルの大きさをX(cm/s)としたとき、Y=AXで表される比例式である。但し、Aは比例定数である。この基本演算式によって、流速ベクトルの大小に比例した表示サイズが求められる。そして、画像データ生成手段としてのコントローラ10は、矢印の表示サイズと流速ベクトルの方向とに基づいて矢印の画像データを測定点毎に生成する(画像データ生成ステップとしてのステップ170)。ここでは、流速ベクトルの大きさに比例したサイズであって、流速ベクトルが示す方向に向く矢印の画像データが生成される。また、矢印の画像データは、矢印の中心位置(重心)が測定点と一致するように生成される。
一方、ステップ140において圧縮表示モードが選択されたと判断した場合、コントローラ10は、圧縮表示モードで矢印を表示するための処理を行う。具体的には、コントローラ10は、超音波画像の表示領域において、複数の測定点における流速ベクトルをメモリ19から読み出す。さらに、第2表示サイズ演算手段としてのコントローラ10は、流速ベクトルの大きさに対して、対数圧縮したサイズで矢印の表示サイズを決定する(第2表示サイズ演算ステップとしてのステップ160)。図10には、流速ベクトルの大きさと表示サイズとの関係を示している。図10では、基準ベクトルに対するデシベル値で表現した流速ベクトルのdB値を横軸(X軸)にとり、表示サイズを縦軸(Y軸)にとっている。デシベル値とは、基準ベクトルの大きさをX0、流速ベクトルの大きさをXとしたとき、20log10(X/X0)で表される値である。なお、基準ベクトルの大きさX0は、例えば20cm/sである。また、横軸には、デシベル値に加えて、X/X0で求められる倍率(レベル)も表示している。
ここで、圧縮表示モードにおける矢印の表示サイズの決定方法を詳述する。すなわち、流速ベクトルの大きさが規定範囲内(例えば、0.2cm/s以上20m/s以下の範囲内)である場合、コントローラ10は、基本演算式とは異なる補正演算式を用いて、流速ベクトルに応じた矢印の表示サイズを決定する。本実施の形態における補正演算式は、対数変換を用いた演算式であり、表示サイズY(mm)は、Y=Blog10(X/X0)+Cで表される。なお、Bは比例定数(例えば8)であり、Cは基準サイズ(例えば10mm)である。従って、流速ベクトルが基準ベクトルと同じ大きさである場合、表示サイズは基準サイズの10mmとなる。この基準ベクトルや基準サイズのデータは、プログラムデータとして記憶装置20に予め設定される。
さらに、コントローラ10は、流速ベクトルが下限値(例えば、0.2cm/s)未満である場合、矢印の表示サイズを最小サイズ(例えば、2mm)とし、流速ベクトルが上限値(例えば、20m/s)を超える場合、矢印の表示サイズを最大サイズ(例えば、18mm)としている。このように矢印の表示サイズを決定する場合、流速ベクトルが大きくなるほど基本演算式による表示サイズよりも小さくかつ流速ベクトルが小さくなるほど基本演算式による表示サイズよりも大きくなるよう矢印の表示サイズが決定される。そして、画像データ生成手段としてのコントローラ10は、矢印の表示サイズと流速ベクトルの方向とに基づいて矢印の画像データを測定点毎に生成する(ステップ170)。またここで、矢印の画像データは、矢印の中心位置(重心)が測定点と一致するように生成される。
その後、コントローラ10は、作成した画像データをディスプレイ21に送る(ステップ180)。この結果、超音波画像上において、各測定点での流速ベクトルに応じた矢印が表示される。この超音波画像上では、血流の流速ベクトルの大きさに応じてサイズの異なる矢印が流速ベクトルの向きに合わせて表示される。
本実施の形態において、超音波画像71上における各矢印70は、中心位置が横方向及び縦方向に規則正しく千鳥状となるよう配置されている(図11等参照)。つまり、本実施の形態では、図12に示されるように、各測定点M1が千鳥状に設定されており、それら測定点M1と各矢印70の中心位置(重心)とが一致するように各矢印70が表示されている。図12では、説明の便宜上、各測定点M1を図示しているが、図11に示すような実際の超音波画像71上では測定点M1は表示されていない。また、各矢印70は、カラードプラ画像で用いられる青や赤以外の異なる色でカラー表示される。なお、超音波画像71上における各矢印70の表示間隔(各測定点の間隔)は、例えば診断開始時に表示される設定画面等にて作業者が入力装置18を操作することで設定される。
矢印70の表示後、コントローラ10は、処理終了か否かを判定する(ステップ190)。ここで、コントローラ10は、処理終了を促す終了ボタンや、矢印の再表示を促す再表示ボタンをディスプレイ21に表示させる。そして、作業者によって終了ボタンが選択されたとき、本処理を終了する。一方、再表示ボタンが選択されたとき、表示モードの選択画面をディスプレイ21に表示させ、表示モードを再設定させる。そして、コントローラ10は、表示モードの選択信号を入力装置18から取り込んだ後、ステップ140に戻ってステップ140〜190の処理を再度実行する。
本実施の形態において、流速ベクトルのダイナミックレンジ(ベクトルの最小値と最大値との比率)が大きい場合に通常表示モードを選択すると、図23に示されるように、矢印70が大きくなりすぎて、超音波画像71が見難くなる。また、矢印70が重なって表示されることで、確認したい測定点での流速ベクトルの向きや大きさが見難くなる。このような場合には、圧縮表示モードに切り換えることで、図11に示されるように、流速ベクトルの大きさに応じて対数圧縮されたかたちで矢印70が表示される。図11においては、小さな流速ベクトルから大きな流速ベクトルまでその大きさに応じたサイズで矢印70が超音波画像71上に重ね合わせて表示される。また逆に、流速ベクトルのダイナミックレンジが小さい場合に圧縮表示モードを選択すると、各矢印70がほぼ同じサイズで表示されるため、各測定点での流速ベクトルの大きさの変化がわかり難くなる。この場合には、通常表示モードに切り換えて各矢印70を表示すると、流速ベクトルの大きさの変化が確認し易くなる。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の超音波診断装置1では、観測面30内における血流の流速ベクトルのダイナミックレンジに応じて、矢印70の表示サイズを通常表示モードと圧縮表示モードとで切り換えることができる。このように、矢印70の表示モードを切り替えることにより、矢印70が大きくなりすぎて、超音波画像71が見難くなったり、見たい矢印70が重なってベクトルの向きが見難くなったりするといった問題を回避することができる。また、矢印70が小さくなりすぎて流速ベクトルの方向がわからなくなるといった問題も回避することができる。このように、血流の流速ベクトルに応じた矢印70を超音波画像71上に加えることにより、観測面30内の血流の状態をわかり易く表示することができ、超音波画像診断を迅速に行うことが可能となる。
(2)本実施の形態の超音波診断装置1では、圧縮表示モードにおいて、流速ベクトルの大きさについて対数変換し、その変換後の値(dB値)に応じたサイズで矢印70を超音波画像71上に表示させている。このようにすると、血流の速さに応じて対数圧縮されたかたちで矢印70が表示されるので、小さな流速ベクトルから大きな流速ベクトルまで矢印70のサイズで確認することができる。従って、ゆっくりと流れる全体的な血流の中に速い血流の急激な変化がある場合でも、全体的な血流と方向の異なる速い血流とを瞬時に区別して認識することができる。
(3)本実施の形態の超音波診断装置1において、各矢印70は、中心位置が超音波画像71の横方向及び縦方向に規則正しく配置されている。このようにすると、超音波画像71において各矢印70が重ならないように表示することができ、各矢印70を見易くすることができる。
(4)本実施の形態の超音波診断装置1において、測定点M1と矢印70の中心位置(重心)とが一致するように各矢印70が表示されている(図12参照)。なお、矢印70の表示方法としては、図13に示されるように、測定点M1と矢印70の始点とを一致させた状態で表示してもよいが、血流の流速ベクトルが大きくなりその方向が急激に変わる場合には、測定点M1での血流の方向に対して矢印70の方向がずれてしまうことがある。これに対して、本実施の形態のように、測定点M1と矢印70の中心位置(重心)とを一致させて各矢印70を表示すると、測定点M1での血流の方向を矢印70の方向によって正確に表示することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図面に基づき説明する。
上記第1の実施の形態では、表示モードとして、通常表示モードと圧縮表示モードとを有していたが、本実施の形態では、それら表示モードに加えて、メインフロー(大きな流れ)をわかり易く表示するためのメインフロー表示モードを有する。メインフロー表示モードは、心臓内の血流のように短時間に速度及びベクトルの方向が大きく変化する場合(図14〜図16参照)に有効な表示モードである。なお、超音波診断装置1の構成は、第1の実施の形態と同じである。以下には、そのメインフロー表示モードの表示方法について説明する。
矢印70(70a〜70c)の表示モードとしてメインフロー表示モードが選択された場合、コントローラ10は、超音波画像71A(図14〜図16参照)の表示領域において、複数の測定点における流速ベクトルをメモリ19から読み出す。そして、コントローラ10は、流速ベクトルの大きさが規定範囲内である場合、通常表示モードで使用した基本演算式を用いて、流速ベクトルの大小に応じた矢印70の表示サイズを決定する。また、コントローラ10は、流速ベクトルがあらかじめ定めた上限値以上のときには基本演算式によるその上限値での表示サイズ(上限サイズ)と等しくなるように矢印70の表示サイズを決定する。さらに、コントローラ10は、流速ベクトルがあらかじめ定めた下限値以下のときには基本演算式によるその下限値での表示サイズ(下限サイズ)と等しくなるように矢印70の表示サイズを決定する。
そして、コントローラ10は、矢印70の表示サイズと流速ベクトルの方向とに基づいて矢印70の画像データを測定点毎に生成する。ここで、コントローラ10は、速度ベクトルの大きさが上限値以下の規定範囲内である測定点では、あらかじめ決められた規定色(例えば、緑色や黄色)の画像データを生成する。より詳しくは、コントローラ10は、流速ベクトルの大きさが規定範囲内である測定点において、流速ベクトルの大きさが規定範囲内に設定された基準値(例えば、20cm/s)よりも大きい場合に緑色の矢印70aの画像データを生成し、基準値よりも小さい場合に黄色の矢印70bの画像データを生成する。一方、コントローラ10は、流速ベクトルの大きさが上限値以上(規定範囲外)である測定点では、前記規定色とは異なる色(例えば、ピンク色)の矢印70cの画像データを生成する。
その後、コントローラ10は、作成した画像データをディスプレイ21に送る。この結果、図14〜図16に示されるように、超音波画像71A上において、各測定点での流速ベクトルに応じた矢印70(70a〜70c)が表示される。図14は、心臓の左心室における収縮期の血流分布を示し、図15は、左心室内の拡張期の血流分布を示している。また、図16は、心房収縮期の血流分布を示している。なお、図14〜図16の超音波画像71A上において、流速ベクトルの大きさが上限値以上の測定点には、黒く塗りつぶした矢印70c(実際はピンク色の矢印)が表示され、規定範囲内である測定点には、白抜きの矢印70a,70b(実際は、緑色の矢印70a及び黄色の矢印70b)が表示されている。
また、図14〜図16に示されるように、ディスプレイ21の表示画面において、超音波画像71Aの下側に、心電図の電気的なグラフ75が表示されている。そして、心電図のグラフ75には、心臓の活動タイミングを示す表示棒76が示されている。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の超音波診断装置1では、血流の流速ベクトルがあらかじめ定めた上限値以上のときには上限サイズの矢印70cが表示されるので、矢印70cが大きくなりすぎて、超音波画像71Aが見難くなったり、見たい矢印70cが重なってベクトルの向きが見難くなったりするといった問題を回避できる。また、血流の流速ベクトルがあらかじめ定めた下限値以下のときには下限サイズの矢印70bが表示されるので、矢印70bが小さくなりすぎて流速ベクトルの方向がわからなくなるといった問題を回避することができる。
(2)本実施の形態の超音波診断装置1では、血流の流速ベクトルの大きさが規定範囲内である測定点では、矢印70(70a〜70c)の大きさに基づいて流速ベクトルの大きさを確認することができる。また、流速ベクトルの大きさが上限値を超える測定点については、規定範囲内の矢印70a,70bとは異なる色の矢印70cが表示される。このように、矢印70cを表示すると、心臓内のように血流の速さや向きが急激に変わる場合であっても、その矢印70c(図14〜図16では黒く塗りつぶした矢印)の表示領域を確認することによって、観測面30内において血流の大きな流れであるメインフローを把握し易くなる。また、図16に示される心房収縮期のように、押し込まれた血液による加速で旋回する渦流が発生した場合でも、比較的流れが速い渦流と、その周辺の比較的流れが遅い血流とを瞬時に区別して認識することができる。
(3)本実施の形態の超音波診断装置1では、流速ベクトルの大きさが規定範囲内である測定点において、流速ベクトルの大きさが基準値よりも大きい場合は緑色の矢印70aの画像データが生成され、小さい場合は黄色の矢印70bの画像データが生成されている。このようにすると、流速ベクトルが基準値よりも大きいか否かを矢印70a,70bの色に応じて確実に判断することができる。
(4)本実施の形態の超音波診断装置1では、この超音波画像71に加えて、心電図の電気的なグラフ75が表示されているので、心臓の活動の様子に合わせて血流の状態を確認することができ、超音波画像診断をより確実に行うことができる。
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施の形態の超音波診断装置1において、圧縮表示モードでは、対数変換を用いた所定の補正演算式に従って矢印の表示サイズを決定していたがこれに限定されるものではない。図17に示されるように、対数変換を用いた補正演算の演算値(流速ベクトルのdB値)と表示サイズとの比例関係における比例定数(図17では各直線の傾き)を変更可能な機能を設けてもよい。具体的には、例えば、診断開始時に表示される設定画面等にて作業者が入力装置18を操作することで、補正演算式における比例定数等を変更可能に構成してもよい。また、コントローラ10が、各測定点での流速ベクトルのダイナミックレンジを判定し、それに応じて補正演算式における比例定数等を自動的に変更するよう構成してもよい。
さらに、図18において点線で示されるように、流速ベクトルの大きさの下限値及び上限値を変更可能な機能を有していてもよい。具体的には、例えば上限値を調整するための操作ツマミを入力装置18に設け、作業者がそのツマミを操作する。このとき、上限値の変更に伴いピンク色の矢印70c(図14〜図16において黒く塗りつぶした矢印)が表示される領域の面積が変更されるため、流速が大きな領域がどのように分布しているか容易に確認することができる。またここで、例えばピンク色の矢印70cが1つだけ表示されるように上限値を調整すると、観測面30内において流速ベクトルが最大となる位置を容易に特定することができる。
・上記第2の実施の形態において、血流の流速ベクトルが上限値以上である測定点では、ベクトルの大きさが規定範囲内にある矢印70a,70bの表示色(規定色としての緑色や黄色)とは異なるピンク色で表示するようにしたが、これに限定されるものではない。血流の流速ベクトルが下限値以下である測定点についても、規定色とは異なる色(例えば、紫色)で表示するように構成してもよい。さらに、血流の流速ベクトルが規定範囲外(下限値以下または上限値以上)である測定点において、ベクトルの大きさに応じて色を変えて矢印70cの画像データを生成し、規定範囲外の流速ベクトルの大きさを矢印70cの表示色によって確認できるよう構成してもよい。このようにしても、観測面30内における血流の状態をわかり易く表示することができる。
・上記各実施の形態において、超音波画像71,71A上における各矢印70の表示間隔は、例えば診断開始時に表示される設定画面等にて作業者が設定するものであったが、これに限定されるものではない。各測定点における流速ベクトルの大きさに応じて、コントローラ10が矢印70の表示間隔を自動で調整するよう構成してもよい。またこの場合、矢印70の向きに応じて、矢印70の表示間隔を調整するように構成してもよい。このように構成しても、超音波画像71において各矢印70が重ならないように表示することができ、血流の状態を確実に確認することができる。
・上記各実施の形態において、平均ベクトル演算手段としてのコントローラ10が、観測面30における各測定点での速度ベクトルを平均化した平均ベクトルを求め、平均ベクトルに対応する矢印70の画像データを生成してもよい。この場合、コントローラ10は、平均ベクトルの画像データをディスプレイ21に送ることで、図19に示されるように、平均ベクトルを示す矢印70dを超音波画像71A上に表示させる。心臓内の血流のように短時間に速度及びベクトルの方向が大きく変化する場合に、図19のような平均ベクトルの矢印70dを表示することで、観測面30内のおおまかな血流の状態を瞬時に確認することが可能となる。
・上記各実施の形態において、観測面30内全体に矢印70を表示させるものであったが、これに限定されるものではなく、血流の観測ポイントを限定し、その観測ポイントの血流の状態を矢印70で表示してもよい。この場合、画像位置設定手段としての入力装置18を操作することにより、超音波画像71A上における矢印の表示位置P1(血流の観測ポイント)を設定する(図20参照)。なお、図20の場合、例えば、始点と終点とを指定することにより、それら始点及び終点を結ぶ直線上において等間隔に複数の観測ポイントP1が設定されている。そして、コントローラ10は、各観測ポイントP1における流速ベクトルに基づいて、矢印70の画像データを生成し、その画像データをディスプレイ21に送る。この結果、図21及び図22に示されるように、超音波画像71A上にて設定した観測ポイントP1に矢印70を表示させる。なお、図20の超音波画像71Aにおいては、心臓における僧帽弁及び大動脈弁に対応する位置に矢印70の表示位置P1を設定している。図21の超音波画像71Aでは、左心室の収縮期において大動脈弁を介して左心室から流出する血流が矢印70で表示される。また、図22の超音波画像71Aでは、左心室の拡張期において僧帽弁を介して左心室に入り込む血流が矢印70で表示される。このように観測ポイントP1を限定して矢印70を表示することで、その位置の血流を直感的に把握することができる。
・上記各実施の形態の超音波診断装置1では、観測面30内で血流の湧出や吸込が一様に発生していると仮定して、観測面30内における二次元の流速ベクトルを求めていたが、この流速ベクトルの算出方法は適宜変更することができる。例えば、観測面30内において湧出や吸込の位置を推定し、その湧出や吸込を反映した形で流速ベクトルを求めてもよい。さらに、画像の取得タイミングをずらして複数の基本画像を取得し、各画像のズレ量等に基づいて観測面内の二次元速度ベクトルを求めるように構成してもよい。
・上記各実施の形態では、面内流れ表示装置として超音波診断装置1に具体化したが、X線診断装置、X線CTスキャナ、MRI装置などの他の診断装置や、気象や海流などを観測する観測装置などの他の表示装置に具体化してもよい。また、観測波としては超音波以外に、電波や電磁波などを用いてもよい。さらに、観測波信号としては、観測対象物に対して観測波を送信したときの観測対象物からの反射波もしくは透過波の受信信号を用いてもよいし、観測対象物が自ら発した出力波の受信信号を用いてもよい。
具体的には、気象を観測する気象レーダに本発明を適用する場合、アンテナから電磁波を放射し、反射して返ってくる電磁波を分析する。この結果、二次元の観測面内における風速や風向きを示す二次元速度ベクトルを算出し、上記各実施の形態と同様に、二次元速度ベクトルに応じた矢印を表示する。このようにすると、例えば竜巻発生時において竜巻の風速や風向きの変化をわかり易く表示することができ、竜巻とその周囲の比較的遅い風の流れとを区別して認識することができる。
また、例えば河川の合流地点や海流の合流地点などにおいて水流の変化を観測する観測装置に本発明を適用してもよい。この場合、超音波センサを用いて超音波を送受信することで、観測面内における水流を示す二次元速度ベクトルを算出する。そして、上記各実施の形態と同様に、二次元速度ベクトルに応じた矢印を表示する。このようにすると、水流の方向や速さが異なるところで発生する渦流(例えば海峡で発生する渦潮)などをわかり易く表示することができる。このため、渦流とその周囲の水流とを区別して認識することができる。
さらには、処理液体の流れの分岐や合流がある製造プラントにおいて処理液体の流れの変化を観測する観測装置に本発明を適用してもよい。この場合、超音波センサを用いて処理液体中にて超音波を送受信することで、観測面内における処理液体の二次元速度ベクトルを算出する。そして、上記各実施の形態と同様に、二次元速度ベクトルに応じた矢印を表示する。このようにすると、処理液体の流れの速さや方向をわかり易く表示することができ、製造プラントにおける処理を確実に行うことができる。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)請求項2において、前記サイズ演算手段は、前記対数変換を用いた補正演算の前記演算値と前記サイズとの比例関係における比例定数を変更可能な機能を有していることを特徴とする面内流れ表示装置。
(2)技術的思想(1)において、前記サイズ演算手段は、前記二次元速度ベクトルのダイナミックレンジに応じて、前記比例定数を変更することを特徴とする面内流れ表示装置。
(3)請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記サイズ演算手段及び前記画像データ生成手段は、前記二次元速度ベクトルの下限値及び上限値の少なくとも一方を変更可能な機能を有していることを特徴とする面内流れ表示装置。
(4)請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記第1表示サイズ演算手段及び前記第2表示サイズ演算手段が決定した前記表示サイズのうちのいずれか一方を選択するサイズ選択手段を備えたことを特徴とする面内流れ表示装置。
(5)請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記有方向性画像の中心位置が前記超音波画像の横方向及び縦方向に規則正しく配置するよう複数の前記測定点を選択する測定点選択手段を備え、前記画像データ生成手段は、前記測定点選択手段が選択した各測定点について前記有方向性画像の画像データを生成することを特徴とする面内流れ表示装置。
(6)技術的思想(5)において、前記測定点選択手段は、前記有方向性画像を表示するために選択する前記測定点を変更して前記有方向性画像の配置間隔を調整する機能を有することを特徴とする面内流れ表示装置。
(7)技術的思想(6)において、前記第1表示サイズ演算手段及び前記第2表示サイズ演算手段は、前記有方向性画像の配置間隔に応じて、前記表示サイズにおける上限サイズを調整する機能を有していることを特徴とする面内流れ表示装置。
(8)請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記第1表示サイズ演算手段は、前記二次元速度ベクトルの大小に比例して前記有方向性画像の表示サイズを決定し、前記第2表示サイズ演算手段は、前記二次元速度ベクトルの大きさについて対数変換を用いた補正演算を行って前記表示サイズを決定することを特徴とする面内流れ表示装置。
(9)請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記第1表示サイズ演算手段及び前記第2表示サイズ演算手段は、前記二次元速度ベクトルの大きさについて対数変換を用いた補正演算を行い、その演算値に比例したサイズとなるよう前記表示サイズを決定するものであり、前記演算値と前記サイズとの比例関係における比例定数は、前記第1表示サイズ演算手段における値よりも第2表示サイズ演算手段における値のほうが大きいことを特徴とする面内流れ表示装置。
(10)請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記各測定点での二次元速度ベクトルを平均化した平均ベクトルを求める平均ベクトル演算手段を備え、前記画像データ生成手段は、前記平均ベクトルに対応する有方向性画像の画像データを生成することを特徴とする面内流れ表示装置。
(11)請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記基本画像の表示領域に、前記有方向性画像の表示位置を設定する画像位置設定手段を備え、前記画像データ生成手段は、前記画像位置設定手段により設定された表示位置における前記二次元速度ベクトルに基づいて、前記有方向性画像の画像データを生成することを特徴とする面内流れ表示装置。
(12)請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記有方向性画像が矢印であり、前記画像データ生成手段は、前記矢印の重心が前記測定点と一致するように前記矢印の画像データを生成することを特徴とする面内流れ表示装置。
(13)請求項8において、前記血流速度ベクトルは、心臓内の血流速度ベクトルであり、前記画像データ生成手段が生成した画像データに基づいて、前記有方向性画像としての矢印をリアルタイムで表示することを特徴とする超音波血流表示装置。