以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示す模式図である。同図に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ11と、装置本体13と、装置本体13に接続され操作者からの各種指示・命令・情報を装置本体13に取り込むための入力インタフェース回路(入力部)15と、表示回路(表示部)17とを有する。
超音波プローブ11は、複数の圧電振動子と、整合層と、複数の圧電振動子の背面側に設けられるバッキング材とを有する。複数の圧電振動子は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子である。複数の圧電振動子は並列され、超音波プローブ11の先端に装備される。以下、説明を簡単にするために一つの圧電振動子が一チャンネルを構成するものとして説明する。複数の圧電振動子各々は、後述する送受信回路23から供給される駆動信号に応答して超音波を発生する。
以下、超音波プローブ11は、アジマス(Azimuth)方向とエレベーション(Elevation)方向とに複数の圧電振動子を配列した2次元アレイプローブとして説明する。アジマス方向とは例えば、圧電振動子の配列方向に沿った電子走査方向に対応する。エレベーション方向とは、超音波走査面の揺動方向に対応する。なお、本実施形態に係る超音波プローブ11は、3次元エコー法を実行可能な任意の超音波プローブであってもよい。
なお、超音波プローブ11は、2次元アレイプローブに限定されず、メカニカル4次元プローブであってもよい。メカニカル4次元プローブは、1列に配列された複数の圧電振動子(以下、1次元アレイ振動子と呼ぶ)と、複数の圧電振動子の配列方向(アジマス方向)に直交する方向(エレベーション方向)に1次元アレイ振動子を揺動させる揺動機構とを有する。揺動機構は、例えば、アジマス方向を回転軸として1次元アレイ振動子を所定の角度範囲で回転させる回転機構と、回転機構に伝達する動力を発生するモータとを有する。
回転機構は、例えば、1次元アレイ振動子の端点を支持する支持フレームと、ベアリング等を介して支持フレームを回転させる回転フレームと、モータにより発生された動力を伝達する伝達部材とを有する。伝達部材は、例えば、ラックアンドピニオン、チェーンおよびスプロケット、ベルトおよびプーリーなどである。
2次元アレイプローブおよびメカニカル4次元プローブは、3次元的なエコー信号を取得することができる超音波プローブ11である。また、超音波プローブ11は、1次元アレイプローブであってもよい。このとき、エレベーション方向に超音波プローブ11を揺動させる操作者の操作により、3次元的なエコー信号が取得される。
超音波プローブ11を介して被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波(以下、送信超音波と呼ぶ)は、被検体P内の生体組織における音響インピーダンスの不連続面で反射される。圧電振動子は、反射された超音波を受信し、エコー信号を発生する。エコー信号の振幅は、超音波の反射に関する不連続面を境界とする音響インピーダンスの差に依存する。また、送信超音波が移動している血流で反射された場合のエコー信号の周波数は、ドプラ効果により、移動体(血流等)の超音波送信方向の速度成分に依存して偏移する。
整合層は、被検体Pに対する超音波の送受信を効率よくするために、複数の圧電振動子の超音波放射面側に設けられる。バッキング材は、圧電振動子の後方への超音波の伝搬を防止する。
装置本体13は、バス(データバス:data bus)21と、送受信回路(送受信部)23と、Bモード回路(Bモード情報生成部)25と、ドプラモード回路(ドプラ情報生成部)27と、画像生成回路(画像生成部)29と、処理回路(処理部)31と、通信インタフェース回路33と、記憶回路(記憶部)35と、制御回路(制御部)37とを有する。
バス21は、例えば、入力インタフェース回路15と、送受信回路23と、Bモード回路25と、ドプラモード回路27と、画像生成回路29と、処理回路31と、通信インタフェース回路33と、記憶回路35と、制御回路37とを電気的に接続する信号路である。
送受信回路23は、制御回路37による制御のもとで、超音波プローブ11における複数の圧電振動子各々に駆動信号を供給する。送受信回路23は、各圧電振動子によって発生された受信エコー信号に基づいて、受信信号を発生する。
具体的には、送受信回路23は、いずれも図示していないパルス発生器と、送信遅延回路と、パルサ回路と、プリアンプと、アナログディジタル(Analog to digital(以下、A/Dと呼ぶ))変換器と、受信遅延回路と、加算器とを有する。
パルス発生器は、所定のレート周波数frHz(周期:1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。発生されたレートパルスは、チャンネル数に分配され、送信遅延回路に送られる。
送信遅延回路は、複数のチャンネルごとに、送信超音波をビーム状に収束し、かつ送信指向性を決定するために必要な遅延時間(以下、送信遅延時間と呼ぶ)を、各レートパルスに与える。送信超音波の送信方向または送信遅延時間(以下、送信遅延パターンと呼ぶ)は、記憶回路35に記憶される。記憶回路35に記憶された送信遅延パターンは、制御回路37により超音波の送信時に参照される。
パルサ回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11の圧電振動子ごとに電圧パルス(駆動信号)を印加する。これにより、超音波ビームが被検体Pに送信される。プリアンプは、超音波プローブ11を介して取り込まれた被検体Pからのエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された受信エコー信号をディジタル信号に変換する。
受信遅延回路は、ディジタル信号に変換された受信エコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間(以下、受信遅延時間と呼ぶ)を与える。エコー信号の受信方向または受信遅延時間(以下、受信遅延パターンと呼ぶ)は、記憶回路35に記憶される。記憶回路35に記憶された受信遅延パターンは、制御回路37により超音波の受信時に参照される。
加算器は、遅延時間が与えられた複数のエコー信号を加算する。この加算により、送受信回路23は、受信指向性に応じた方向からの反射成分を強調した受信信号(RF(radiofrequency)信号ともいう)を生成する。この送信指向性と受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される。この総合的な指向性により、超音波ビーム(いわゆる「超音波走査線」)が決まる。
Bモード回路25は、送受信回路23から出力された受信信号に基づいて、Bモードデータを生成する。Bモード回路25は、Bモードデータに基づいて、Bモードに関するボリュームデータを生成する。Bモード回路25は、いずれも図示していない包絡線検波器、対数変換器などを有する。
包絡線検波器は、送受信回路23から出力された受信信号に対して包絡線検波を実行する。包絡線検波器は、包絡線検波された信号を、対数変換器に出力する。対数変換器は、包絡線検波された信号に対して対数変換を行い、包絡線検波された信号における弱い信号を相対的に強調する。Bモード回路25は、対数変換器により強調された信号に基づいて、各走査線における深さごとの信号値を生成する。この信号値は、Bモードデータと称される。
Bモード回路25は、被走査領域におけるアジマス方向、エレベーション方向、深さ方向(以下レンジ(Range)方向と呼ぶ)にそれぞれ対応付けて配列された複数の信号値に基づいて、ボリュームデータを生成する。レンジ方向とは、走査線上の深さ方向(超音波ビーム方向)である。なお、ボリュームデータは、複数の画素値または複数の輝度値などを、走査線に沿って、アジマス方向、エレベーション方向、レンジ方向にそれぞれ対応付けて配列させたデータであってもよい。なお、Bモード回路25は、複数の走査面各々に対応するBモードデータを用いた所定の補間処理により、ボリュームデータを生成してもよい。
図2は、ボリュームデータの生成に関する撮像ボリューム(被走査領域)IVの一例を示す図である。被走査領域は、例えば、対象組織である心臓を含む空間である。図2における座標系において、z方向は、超音波プローブ11における超音波送受信面の中心を通るレンジ方向に対応する。図2におけるx方向とy方向とは、z方向に直交し、互いに直交する2方向である。図2におけるx方向とy方向とは、例えば、アジマス方向とエレベーション方向とにそれぞれ対応する。撮像ボリュームIVは、被検体Pにおける心臓に対応する領域であるものとする。なお、撮像ボリュームIVは、心臓に限定されず、任意の臓器であってもよい。
ドプラモード回路27は、送受信回路23から出力された受信信号に基づいて、ドプラデータを生成する。ドプラモード回路27は、いずれも図示していないミキサー、低域通過フィルタ(Low Pass Filter:以下、LPFと呼ぶ)、速度/分散/Power演算デバイス等を有する。
ミキサーは、送受信回路23から出力された受信信号に、送信周波数と同じ周波数f0を有する基準信号を掛け合わせる。ミキサーは、この掛け合わせにより、ドプラ偏移周波数fdの成分の信号と、(2f0+fd)の周波数成分を有する信号とを生成する。LPFは、ミキサーからの2種の周波数成分を有する信号のうち、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除く。ドプラモード回路27は、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除くことにより、ドプラ偏移周波数fdの成分を有するドプラ信号を生成する。
なお、ドプラモード回路27は、ドプラ信号を生成するために、直交検波方式を用いてもよい。このとき、受信信号(RF信号)は、直交検波されIQ信号に変換される。ドプラモード回路27は、IQ信号を複素フーリエ変換することにより、ドプラ偏移周波数fdの成分を有するドプラ信号を生成する。ドプラ信号は、例えば、血流、組織、造影剤によるドプラ成分である。
速度/分散/Power演算デバイスは、いずれも図示していないMTI(Moving Target Indicator)フィルタ、LPFフィルタ、自己相関演算器等を有する。なお、自己相関演算器の代わりに相互相関演算器を有していてもよい。MTIフィルタは、生成されたドプラ信号に対して、臓器の呼吸性移動や拍動性移動などに起因するドプラ成分(クラッタ成分)を除去する。
MTIフィルタは、ドプラ信号から血流に関するドプラ成分(以下、血流ドプラ成分と呼ぶ)を抽出するために用いられる。LPFは、ドプラ信号から組織の移動に関するドプラ成分(以下、組織ドプラ成分と呼ぶ)を抽出するために用いられる。
自己相関演算器は、血流ドプラ成分および組織ドプラ成分に対して自己相関値を計算する。自己相関演算器は、計算された自己相関値に基づいて、血流および組織の平均速度値、分散値、ドプラ信号の反射強度(パワー)等を算出する。速度/分散/Power演算デバイスは、複数のドプラ信号に基づく血流および組織の平均速度値、分散値、ドプラ信号の反射強度等に基づいて、被走査領域の各位置におけるカラードプラデータを生成する。
以下、ドプラ信号とカラードプラデータとをまとめて、ドプラデータと呼ぶ。ドプラデータは、処理回路31等の各回路に出力される。ドプラデータとボリュームデータとは、例えば、心電波形における心位相の時相に基づいて対応付けられる。
撮像ボリュームIVに対応する被走査領域が心臓である場合、血流ドプラ成分は、心腔内の血液(流体)のドプラ情報(以下、血流ドプラ情報と呼ぶ)に対応する。すなわち、ドプラモード回路27は、超音波プローブ11からの出力に基づいて、心腔内の血液に関する血流ドプラ情報を生成する。血流ドプラ情報は、心腔内において走査線方向(超音波ビーム方向)に沿った複数の位置における血流の速さに相当する。血流の速さとは、血液の移動方向および血液の移動速度に対応する。血流ドプラ情報は、処理回路31に出力される。
画像生成回路29は、いずれも図示していないプロセッサ(CPU(central processing unit))と、メモリと、ディジタルスキャンコンバータ(Digital Scan Converter:以下DSCと呼ぶ)と、画像メモリとを有する。画像生成回路29は、画像生成に関する各種プログラムを記憶回路35から読み出す。画像生成回路29は、読み出した各種プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、各種プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各種プログラムを読み出した状態の画像生成回路29は、図1に示すように、画像生成機能291、運動情報生成機能293等の各機能を有する。
具体的には、画像生成回路29は、画像生成機能291に関する画像生成プログラムを記憶回路35から読み出す。画像生成回路29は、読み出した画像生成プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、画像生成機能291を実現する。このとき、画像生成回路29は、画像生成部として機能する。
画像生成機能291は、DSCと、画像メモリとを制御する。画像生成機能291は、DSCに対して、座標変換処理(リサンプリング)等を実行する。座標変換処理とは、例えば、Bモードデータおよびドプラデータからなる超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する処理である。画像生成機能291は、座標変換処理により、表示画像としての超音波画像を生成する。
具体的には、画像生成機能291は、Bモードデータに基づいて、Bモード画像(以下、2次元Bモード画像と呼ぶ)を生成する。画像生成機能291は、カラードプラデータに基づいて、平均速度画像、分散画像などのカラー血流画像と、ドプラ信号の反射強度を示すパワー血流画像などを生成する。画像生成機能291は、ボリュームデータに基づいて、3次元的なBモード画像(以下、3次元Bモード画像と呼ぶ)を生成する。
画像生成機能291は、時系列に沿った一連のボリュームデータの生成に応じて、時系列に沿った一連の3次元Bモード画像を生成する。画像生成機能291は、例えば、少なくとも1心拍において、時系列に沿った一連の3次元Bモード画像を生成する。画像生成機能291は、1心拍において、1心拍の時間にフレームレートを乗じた数に対応する複数の3次元Bモード画像を生成する。
画像生成機能291は、ボリュームデータに対してレンダリング処理を実行することにより、レンダリング画像を生成する。レンダリング処理に関する種々のパラメータ(レンダリングパラメータ:例えば、視点、視線(レンダリング方向)、不透明度など)は、入力インタフェース回路15を介して入力される。すなわち、画像生成機能291は、入力されたレンダリングパラメータを用いて、ボリュームデータに対してレンダリング処理を実行する。
画像生成機能291は、断面変換(multi−planar reconstruction:以下、MPRと呼ぶ)処理により、少なくとも一つのMPR画像を生成する。MPR処理に関する種々のパラメータ(MPRパラメータ:例えば、断面位置、断面方向など)は、入力インタフェース回路15を介して入力される。すなわち、画像生成機能291は、入力されたMPRパラメータを用いて、ボリュームデータに対してMPR処理を実行する。
撮像ボリュームIVが心臓である場合、MPR画像は、例えば、4つの内腔(右心房、右心室、左心房、左心室:以下、4ch(chamber)と呼ぶ)を含む断面(以下、4chビューと呼ぶ)と、4chのうち2つの内腔(以下、2ch(chamber)と呼ぶ)を含む断面(以下、2chビューと呼ぶ)と、4chビューと2chビューとに垂直な断面(以下、垂直断面と呼ぶ)とにそれぞれ対応する3断面画像(以下、直交3断面画像と呼ぶ)である。なお、MPR画像は、上記直交3断面画像に限定されず、任意の断面に対応する断面画像でもよい。
画像生成機能291は、処理回路31により生成されたベクトル場画像を、レンダリング画像に、それぞれの心位相の時相と位置とを略一致させて重畳する。この重畳により、画像生成機能291は、ベクトル場画像をレンダリング画像に重畳した第1重畳画像を生成する。このとき、ベクトル場画像は、後述する3次元のベクトル情報に対応する3次元ベクトルデータをレンダリングした画像に対応する。ベクトル場画像については、処理回路31において詳述する。
画像生成機能291は、MPR画像の断面に対応するベクトル場画像をMPR画像にそれぞれの心位相の時相と断面位置とを略一致させて重畳する。この重畳により、画像生成機能291は、ベクトル場画像をMPR画像に重畳した第2重畳画像を生成する。MPR画像の断面に対応するベクトル場画像の生成については、処理回路31において詳述する。
画像生成機能291は、Bモード画像にカラー血流画像を重畳させた重畳画像を生成する。画像生成機能291は、Bモード画像にパワー血流画像を重畳させた重畳画像を生成する。Bモード画像にカラー血流画像を重畳させた重畳画像と、Bモード画像にパワー血流画像を重畳させた重畳画像とをまとめてカラードプラ画像と呼ぶ。
画像生成機能291は、ドプラ信号に基づいて、ドプラ波形を示すドプラ波形画像を生成する。画像生成機能291は、カラードプラ画像とドプラ波形画像とを有する超音波画像を生成する。なお、超音波画像は、Bモード画像とドプラ波形画像とを有していてもよい。
画像生成機能291は、Bモード画像、カラードプラ画像、ドプラ波形画像、第1重畳画像、第2重畳画像、ベクトル場画像などに、種々のパラメータ、文字情報、目盛等を合成する。画像生成機能291は、種々のパラメータ、文字情報、目盛等を合成したBモード画像、ドプラ画像、カラードプラ画像、ドプラ波形画像、第1重畳画像、第2重畳画像、ベクトル場画像などを表示回路17に出力する。
画像メモリは、生成された各種画像に対応するデータ(以下、画像データと呼ぶ)を記憶する。画像メモリに記憶された画像データは、入力インタフェース回路15を介した操作者の指示により、読み出される。画像メモリは、例えば、フリーズする直前の一連のフレームに対応する各種画像を保存するメモリである。画像メモリに記憶されている画像を、表示回路17に連続表示(シネ表示)させることで、各種画像の動画像が表示回路17に表示される。
画像生成回路29は、運動情報生成機能293に関する運動情報生成プログラムを記憶回路35から読み出す。画像生成回路29は、読み出した運動情報生成プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、運動情報生成機能293を実現する。このとき、画像生成回路29は、運動情報生成部として機能する。
運動情報生成機能293は、超音波プローブ11からの出力に基づいて、心腔に関する心臓の運動情報を生成する。運動情報生成機能293は、生成した運動情報を処理回路31に出力する。心臓の運動情報とは、例えば、心臓における心筋(または心壁)の各位置における3次元的な速さを示す情報である。具体的には、心臓の運動情報は、心臓壁を含む心筋に対応する3次元的な領域(以下、心筋領域と呼ぶ)の各位置において、心筋の運動に伴う3次元的な心筋の速度ベクトル(以下、3次元運動ベクトルと呼ぶ)に対応する。
すなわち、3次元運動ベクトルは、心筋の運動(ねじれ運動)を示す3次元ベクトルである。心臓の運動情報は、3次元的な心筋領域内の複数の位置にそれぞれ対応する複数の3次元運動ベクトルと、心位相(隣接する2つのR波間における位置)とを有する。以下、運動情報の生成について詳述する。
運動情報生成機能293は、一連の3次元Bモード画像各々におけるスペックルパターン(speckle pattern)を追跡すること(トラッキング:tracking)により、運動情報を生成する。具体的には、運動情報生成機能293は、一連の3次元Bモード画像のうち時間的に隣接する2つの3次元Bモード画像(換言すれば、互いに隣接する2フレームにそれぞれ対応する2つの3次元Bモード画像)各々におけるスペックルパターンに対して、パターンマッチングを実行する。
このパターンマッチングにより、フレーム間において、スペックルパターンがトラッキングされ、心筋の動きが追跡される。運動情報生成機能293は、上記処理をフレームごとに繰り返すことで、時間とともに変化する心筋(局所組織)の位置、すなわち心筋の移動を示す運動情報を追跡することができる。
なお、運動情報生成機能293は、時系列に沿った一連の2次元的なBモード画像におけるスペックルパターンを用いて、運動情報を生成してもよい。また、運動情報生成機能293は、心筋に関する組織ドプラ成分を有するドプラデータ(以下、組織ドプラ情報)を用いて、運動情報を生成してもよい。
上記説明においては、単一の画像生成回路29において画像生成機能及び運動情報生成機能等の各種機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて画像生成回路29を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。また、画像生成機能291と運動情報生成機能293とは、それぞれ異なる回路で実現されてもよいし、処理回路31、制御回路37等に組み込まれてもよい。
処理回路(Processing circuitry)31は、いずれも図示していないCPUとメモリを備える。処理回路31は、心腔内の3次元領域の各位置における流体(血液)の速さに関する3次元のベクトル情報の生成に関する各種プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、各種プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各種プログラムを読み出した状態の処理回路31は、図1に示すように、運動ベクトル分解機能311と、血流ベクトル計算機能313と、ベクトル場画像生成機能315等の各機能を有する。
処理回路31は、上記読み出した各種プログラムを実行することにより、ドプラ情報と運動情報とに基づいて、心腔内の3次元領域の各位置における流体(血液)の速さに関する3次元のベクトル情報(3次元ベクトルデータ)を生成する。生成したベクトル情報は、撮像ボリュームIVにおける心腔領域に対応する3次元領域の各位置において、流体の移動方向と移動速度とを有する。以下、3次元ベクトルデータの生成のための処理内容について詳述する。
処理回路31は、運動ベクトル分解機能311に関する運動ベクトル分解プログラムを記憶回路35から読み出す。処理回路31は、読み出した運動ベクトル分解プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、運動ベクトル分解機能311を実現する。このとき、処理回路31は、運動ベクトル分解部として機能する。
運動ベクトル分解機能311は、撮像ボリュームIVに対応するボリュームデータにおいて、走査線方向(超音波ビーム方向)に直交し、かつ互いに直交する第1方向と第2方向とを特定する。第1方向とは、例えば、走査線方向に直交し、エレべーション方向に沿った方向である。第2方向とは、走査線方向に直交し、アジマス方向に沿った方向である。
例えば、超音波プローブ11が1次元アレイプローブである場合、第1方向は、走査線方向に直交し、かつボリュームデータの収集時における複数の走査面各々を規定する方向である。すなわち、撮像ボリュームIVにおける複数の走査面各々は、走査線方向と第1方向とにより規定される。第2方向は、走査線方向に直交し、かつボリュームデータの収集時において走査面を揺動させる方向である。
運動ベクトル分解機能311は、撮像ボリュームIVに対応する3次元領域の各位置における3次元運動ベクトルを、第1方向と第2方向と走査線方向とにそれぞれ投影する。この投影により、運動ベクトル分解機能311は、3次元領域の各位置において、3次元運動ベクトルを、第1方向に沿った第1成分と、第2方向に沿った第2成分と、走査線方向に沿った成分とに分解する。
図3は、撮像ボリュームIVのxy断面における3次元運動ベクトルの分解の一例を示す図である。図3に示すMYは、心筋領域を示している。図に示す矢印MV1、MV2は、xy平面に投影された3次元運動ベクトルを示している。図3に示すように、xy平面に投影された3次元運動ベクトルMV2は、x方向(第1方向)成分MVxと、y方向(第2方向)成分MVyとに分解される。
なお、第1方向および第2方向は、超音波プローブ11における超音波送受信面の中心と撮像ボリュームIVの下面の中心とを結ぶ方向(以下、中心軸方向と呼ぶ)に直交し、かつ互いに直交する2方向であってもよい。例えば、被検体Pの体表面に超音波プローブ11が鉛直方向に平行に沿って当接されている場合、中心軸方向は、鉛直方向に平行となる。
また、第1方向と第2方向とが、中心軸方向に対して直交し、かつ互いに直交する場合、中心軸方向と、第1方向と、第2方向とは、直交3軸を構成する。このとき、血流ベクトル計算機能313で用いられる血流ドプラ情報には、心腔内において中心軸方向に沿った複数の位置における血流の速さに相当する。すなわち、血流ドプラ情報は、心腔に対応する領域内の複数の位置各々において、中心軸方向に平行な走査線方向を除いて、ドプラモード回路27において生成された血流ドプラ成分を、中心軸方向に投影したドプラデータとなる。
処理回路31は、血流ベクトル計算機能313に関する血流ベクトル計算プログラムを記憶回路35から読み出す。処理回路31は、読み出した血流ベクトル計算プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、血流ベクトル計算機能313を実現する。このとき、処理回路31は、血流ベクトル計算部として機能する。以下、血流ベクトル計算機能313は、心腔内の血液の流れを計算する機能として説明する。なお、血流ベクトル計算機能313における計算対象である血液の流れは、心腔内に限定されず、他の臓器における血液の流れであってもよい。
血流ベクトル計算機能313は、第1方向と走査線方向とにより規定され第2方向に沿った複数の第1断面を特定する。血流ベクトル計算機能313は、第2方向と走査線方向とにより規定され第1方向に沿った複数の第2断面を特定する。例えば、超音波プローブ11が1次元アレイプローブである場合、複数の第1断面は、走査面の揺動方向に直交する複数の走査面に対応する。また、このとき、複数の第2断面は、揺動方向に平行であって、複数の走査面に直交する面となる。なお、第1断面と第2断面とは、中心軸方向に垂直な面に直交し、かつ互いに直交する面であってもよい。
複数の第1断面各々は、後述する第1の2次元血流ベクトルが計算される複数の部分領域(微小領域)に分割されているものとする。加えて、複数の第2断面各々は、後述する第2の2次元血流ベクトルが計算される複数の部分領域に分割されているものとする。複数の部分領域各々において、血液の流量に関して質量保存則が成り立つものと仮定する。
より詳細には、複数の部分領域各々において、部分領域に流入および流出する血液(流量)に関して連続の式が成り立っているものとする。なお、部分領域内において、血流(ベクトルu)の沸き出しおよび吸い込みはないもの(div u=0)とする。なお、質量保存則の代わりに、運動量保存則が用いられてもよい。
具体的には、血流ベクトル計算機能313は、被検体Pの心腔領域内の複数の第1断面各々を、例えば、M行N列(M、Nは任意の自然数)に格子状に分割する。血流ベクトル計算機能313は、被検体Pの心腔領域内の複数の第2断面各々を、例えば、M行L列(Lは任意の自然数)に格子状に分割する。なお、心腔領域を分割した部分領域の形状は、任意の多角形であってもよい。
血流ベクトル計算機能313は、複数の第1断面(x−z平面)各々において、分解された3次元運動ベクトルの第1成分とドプラ情報とを用いて、第1断面内の各位置における流体(血液)の速さに関する第1の2次元血流ベクトルを計算する。すなわち、血流ベクトル計算機能313は、第1方向に沿った心筋の運動を示すベクトル(第1成分)と走査線方向に沿ったドプラ情報とを用いて、複数の第1断面各々における各位置における血液の速度と移動方向とを示す2次元血流ベクトルを計算する。以下、2次元血流ベクトルの計算について、具体的に説明する。
図4は、第1断面における複数の部分領域各々における第1の2次元血流ベクトルの計算過程の一例を示す図である。図4におけるMYは、被検体Pの心筋領域を示している。図4におけるEx01、Ex02、Ex03、Ex11、Ex12、Ex13、Ex21、Ex22、Ex23は、第1断面における複数の部分領域の一部分を示している。以下、Ex11、Ex12各々において、第1方向に沿った血流ベクトルの計算について、図4を参照して説明する。
以下説明を簡単にするために、第1方向(図4のx方向)に平行な向きの符号と、走査線方向(図4のz方向)に平行な向きの符号とを正(プラス)として、説明する。なお、第1方向(図4のx方向)に反平行な向きの符号と、走査線方向(図4のz方向)に反平行な向きの符号とは、負(マイナス)となる。
血流ベクトル計算機能313は、部分領域Ex11において、運動ベクトル分解機能311によって分解された3次元運動ベクトルの第1成分Ex11xm(心壁MYの速度)と、走査線方向に沿った2つの血流ドプラ成分Ex11zu、Ex11zdと、質量保存則とを用いて、第1方向に沿ったベクトルEx11xcを計算する。
具体的には、図4における部分領域Ex11と心壁MYとの境界から、部分領域Ex11には、Ex11xmに関する血流が流入する。すなわち、部分領域Ex11において、心壁の動きMYMにより心壁MYを介して、第1成分Ex11xmに対応する運動量が、部分領域Ex11に流入する。
また、Ex11zd(走査線に沿った血流速度)に関する血流が、図4における部分領域Ex11の下面から流入する。すなわち、血流成分Ex11zdに対応する運動量が、部分領域Ex11の下面から部分領域Ex11に流入する。一方、Ex11zu(走査線に沿った血流速度)に関する血流が、図4における部分領域Ex11の上面から部分領域Ex01に流出する。すなわち、血流成分Ex11zuに対応する運動量が、部分領域Ex11の上面から部分領域Ex01に流出する。
部分領域Ex11において、第1成分Ex11xm(心壁MYの速度)と、走査線方向に沿った2つの血流ドプラ成分Ex11zu、Ex11zdとは既知である。このため、血流ベクトル計算機能313は、部分領域Ex11から部分領域Ex12へ流出する血流Ex11x1を、以下に示す質量保存則(連続の式)により計算する。
Ex11xm+Ex11zd=Ex11zu+Ex11x1
Ex11x1=Ex11xm+Ex11zd−Ex11zu
次いで、血流ベクトル計算機能313は、部分領域Ex11に隣接する部分領域Ex12について、部分領域Ex12から部分領域Ex13へ流出する血流Ex11x2を、以下に示す質量保存則(連続の式)により計算する。
Ex11x1+Ex12zd=Ex12zu+Ex11x2
Ex11x2=Ex11x1+Ex12zd−Ex12zu
同様にして、血流ベクトル計算機能313は、複数の第1断面各々の各部分領域(各位置)において、心筋領域に隣接する部分領域から第1方向に沿って心腔内部の領域に向けて、第1方向に沿った血流量および血流の向きを、逐次的に計算する。血流ベクトル計算機能313は、複数の第1断面各々の各部分領域(各位置)から流出する血流量および血流の向きを用いて、複数の第1断面各々の各部分領域(各位置)における第1の2次元血流ベクトルを計算する。第1の2次元血流ベクトルは、第1断面内の各位置における血流の速度および方向を2次元的に示すベクトルである。
図5は、一つの第1断面内の各位置における第1の2次元血流ベクトルの一例を示す図である。図5において、複数の部分領域から構成される立方体は、心腔領域に対応する。図5におけるxz平面に垂直な矢印X1、X2は、複数の3次元運動ベクトルをそれぞれ分解した複数の第1成分を模式的に示している。図5におけるxy平面に垂直な矢印Z1、Z2は、走査線方向に沿った複数の血流ドプラ成分を模式的に示している。図5におけるxz平面における矢印A1は、血流ベクトル計算機能313により計算された第1の2次元血流ベクトルを示している。
血流ベクトル計算機能313は、複数の第2断面各々の各部分領域(各位置)において、心筋領域に隣接する部分領域から第2方向に沿って心腔内部の領域に向けて、第2方向に沿った血流量および血流の向きを、分解された3次元運動ベクトルの第2成分とドプラ情報とを用いて、逐次的に計算する。血流ベクトル計算機能313は、複数の第2断面各々の各部分領域(各位置)から流出する血流量および血流の向きを用いて、複数の第2断面各々の各部分領域(各位置)における第2の2次元血流ベクトルを計算する。第2の2次元血流ベクトルは、第2断面内の各位置における血流の速度および方向を2次元的に示すベクトルである。
具体的な計算手法は、第1の2次元血流ベクトルの導出に関する計算と実質的に同様であり、例えば、図4に関する説明において、「第1方向」、「第1断面」、「x」を、「第2方向」、「第2断面」、「y」にそれぞれ置換することにより、説明される。
図6は、一つの第2断面内の各位置における第2の2次元血流ベクトルの一例を示す図である。図6において、複数の部分領域から構成される立方体は、心腔領域に対応する。図6におけるyz平面に垂直な矢印Y1、Y2は、心壁における複数の3次元運動ベクトルをそれぞれ分解した複数の第2成分を模式的に示している。図6におけるxy平面に垂直な矢印Z1、Z2は、走査線方向に沿った複数の血流ドプラ成分を模式的に示している。図6におけるyz平面における矢印B1は、計算された第2の2次元血流ベクトルを示している。
なお、血流ベクトル計算機能313は、心腔領域の上端及び下端(心尖部近傍)に隣接する部分領域に関して、走査線方向に沿って分解された3次元運動ベクトルの成分(以下、走査線方向成分とよぶ)または組織ドプラ成分を用いて、第1の2次元血流ベクトルおよび第2の2次元血流ベクトルを計算してもよい。
また、第1の2次元血流ベクトルの計算の開始箇所における心壁に略対向する心壁(第1方向に沿った計算の終了位置の部分領域に隣接する心壁)に関する第1成分(図5のX1またはX2)は、第1の2次元血流ベクトルの計算における整合性および計算精度を向上させるために、例えば、丸め誤差を低減させるために利用されてもよい。
また、第2の2次元血流ベクトルの計算の開始時点における心壁に略対向する心壁(第2方向に沿った計算の終了位置の部分領域に隣接する心壁)に関する第2成分(図6のY1またはY2)は、第2の2次元血流ベクトルの計算における整合性および計算精度を向上させるために、例えば、丸め誤差を低減させるために利用されてもよい。
血流ベクトル計算機能313は、第1の2次元血流ベクトルと第2の2次元血流ベクトルとを合成することにより、心腔内の3次元領域の各位置における流体(血液)の速さに関する3次元のベクトル情報(3次元ベクトルデータ)を生成する。具体的には、血流ベクトル計算機能313は、隣接する2つの第1断面において略対向する2つの部分領域と、これら2つの部分領域に接続する2つの第2断面における2つの部分領域とを、心腔内の3次元領域において特定する。
すなわち、血流ベクトル計算機能313は、1ボクセルの周囲の4つの部分領域(以下、同一局所領域と呼ぶ)を特定する。同一局所領域のうち対向する2つの部分領域は、隣接する2つの第1断面に属する。同一局所領域のうち対向する他方の2つの部分領域は、隣接する2つの第2断面に属する。
血流ベクトル計算機能313は、第1断面に属する2つの部分領域における第1の2次元血流ベクトルと、第2断面に属する2つの部分領域における第2の2次元血流ベクトルとを合成する。例えば、血流ベクトル計算機能313は、同一局所領域に属する4つのベクトル(隣接する2つの第1の2次元血流ベクトルと隣接する2つの第2の2次元血流ベクトル)各々の成分(第1方向に沿った成分、第2方向に沿った成分、走査線方向に沿った成分)ごとに平均化することにより、4つのベクトルを合成してもよい。
以上の処理により、血流ベクトル計算機能313は、互いに対向しかつ隣接する4つの部分領域により規定される重心位置において、3次元血流ベクトルを生成する。なお、4つの部分領域のうち少なくとも一つの部分領域が心壁に対応する場合、血流ベクトル計算機能313は、心壁に対応する部分領域を除いた複数の部分領域に対応する第1の2次元血流ベクトルと第2の2次元血流ベクトルとを合成することにより、3次元血流ベクトルを生成する。
第1断面における部分領域の数がM×Nであって、第2断面における部分領域の数がM×Lであって、心腔領域が直方体である場合、重心位置の総数はL×M×N+2×(L×M+M×N+N×L)となる。すなわち、血流ベクトル計算機能313は、複数の重心位置各々において、3次元血流ベクトルを生成する。これにより、血流ベクトル計算機能313は、心腔内の3次元領域の各位置における血液(流体)の速さに関する3次元のベクトル情報を生成する。3次元のベクトル情報は、心腔内の3次元領域の各位置における血液(流体)の移動方向と移動速度とを有する。
血流ベクトル計算機能313は、複数の重心位置にそれぞれ対応する複数の3次元血流ベクトルを、3次元のベクトル情報として、ベクトル場画像生成機能315に出力する。血流ベクトル計算機能313は、3次元血流ベクトルの生成に関連する各種データの時相(心位相の時相)を、3次元のベクトル情報に付帯させる。なお、3次元のベクトル情報は、3次元血流ベクトルの生成に関連する各種データの取得に応じて、リアルタイムに生成されてもよい。
処理回路31は、ベクトル場画像生成機能315に関するベクトル場画像生成プログラムを記憶回路35から読み出す。処理回路31は、読み出したベクトル場画像生成プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、ベクトル場画像生成機能315を実現する。このとき、処理回路31は、ベクトル場画像生成部として機能する。
ベクトル場画像生成機能315は、3次元のベクトル情報の表示に関する種々のパラメータ(以下、ベクトル表示パラメータと呼ぶ)を、3次元のベクトル情報に基づいて決定する。ベクトル表示パラメータとは、3次元血流ベクトルの表示に関するパラメータである。3次元血流ベクトルの表示とは、例えば、マーカである。マーカとは例えば、矢印である。
具体的には、ベクトル場画像生成機能315は、3次元のベクトル情報における複数の3次元血流ベクトル各々に対応するマーカの大きさ(長さ)を、血液の移動速度(3次元血流ベクトルの大きさ)に応じて決定する。このとき、マーカの大きさは、血液の移動速度に対応する。ベクトル場画像生成機能315は、マーカの色相と、明度と、彩度とのうち少なくとも1つを、血液の移動速度に応じて決定する。このとき、マーカの色相と、明度と、彩度は、血液の移動速度に対応する。
例えば、ベクトル場画像生成機能315は、血液の移動速度に対するベクトル表示パラメータの対応表を、記憶回路35から読み出す。ベクトル場画像生成機能315は、読み出した対応表と、3次元のベクトル情報における血液の移動速度の大きさとを用いて、腔内の3次元領域の各位置におけるベクトル表示パラメータを決定する。
ベクトル場画像生成機能315は、決定されたベクトル表示パラメータと3次元のベクトル情報とに対応するマーカを心腔内の3次元領域の各位置に対応付けて表示可能なベクトル場画像を生成する。ベクトル場画像生成機能315は、生成したベクトル場画像を、画像生成回路29に出力する。以下、ベクトル場画像の生成について詳述する。
ベクトル場画像生成機能315は、レンダリングパラメータを用いて、3次元のベクトル情報における3次元血流ベクトルに対してレンダリング処理を実行する。ベクトル場画像生成機能315は、3次元血流ベクトルに対するレンダリング処理の結果と、ベクトル表示パラメータとを用いて、レンダリングベクトル場画像を生成する。レンダリングベクトル場画像とは、ベクトル表示パラメータに従って3次元的に血流ベクトルを表示可能なレンダリング画像である。
なお、レンダリングパラメータは、レンダリング画像の生成に関するレンダリングパラメータと略同一であってもよい。このとき、ベクトル場画像生成機能315は、レンダリング画像の生成に関するレンダリング処理を3次元血流ベクトルに適用することにより、レンダリング処理を実行する。
ベクトル場画像生成機能315は、MPRパラメータを用いて、3次元のベクトル情報における3次元血流ベクトルに対してMPR処理を実行する。具体的には、ベクトル場画像生成機能315は、MPR処理に関する断面に応じて、3次元血流ベクトルの成分を計算する。ベクトル場画像生成機能315は、3次元血流ベクトルに対するMPR処理の結果と、ベクトル表示パラメータとを用いて、MPRベクトル場画像を生成する。3次元血流ベクトルに対するMPR処理の結果は、MPR処理に関する断面上の各位置における3次元血流ベクトルの成分である。
なお、MPRパラメータは、MPR画像の生成に関するMPRパラメータと略同一であってもよい。このとき、ベクトル場画像生成機能315は、MPR画像の生成に関するMPR処理を3次元血流ベクトルに適用することにより、MPR処理を実行する。
上記説明においては、単一の処理回路31において運動ベクトル分解機能311、血流ベクトル計算機能313、及びベクトル場画像生成機能315等の各種機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路31を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。また、運動ベクトル分解機能311と、血流ベクトル計算機能313と、ベクトル場画像生成機能315とは、それぞれ異なる回路で実現されてもよいし、制御回路37等に組み込まれてもよい。
通信インタフェース回路33は、ネットワークを介して他の医用画像診断装置および医用画像保管装置等の各種装置に接続される。医用画像診断装置は、例えば、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:以下、CTと呼ぶ)、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下MRIと呼ぶ)装置、X線診断装置などのボリュームデータを生成可能な各種モダリティである。
通信インタフェース回路33は、ネットワークを介して被検体Pのボリュームデータ等の各種データを、医用画像診断装置または医用画像保管装置から受信する。通信インタフェース回路33は、受信したボリュームデータ等の各種データを、記憶回路35に出力する。処理回路31により処理された各種データは、通信インタフェース回路33およびネットワークを介して、各種装置へ転送可能である。加えて、通信インタフェース回路33には、心電計、心音計、脈波計などに代表される不図示の生体信号計測センサが、ネットワークを介して接続されてもよい。
通信インタフェース回路33は、心臓の運動情報の生成に関する各種データ、3次元のベクトル情報における3次元血流ベクトルの生成に関する各種データ、ベクトル場画像の生成に関する各種データを、ネットワークを介して他の医用画像診断装置から受信してもよい。このとき、画像生成機能291、運動情報生成機能293、運動ベクトル分解機能311、血流ベクトル計算機能313、ベクトル場画像生成機能315等の各機能は、受信したデータを用いて各種処理を実行する。
記憶回路35は、各種メモリ、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどにより構成される。記憶回路35は、通信インタフェース回路33およびネットワークを介して受信した各種データを記憶する。記憶回路35は、本超音波診断装置1を統括的に制御する装置制御プログラム、ディスプレイに表示される各種画像の表示制御に関する表示制御プログラム等の各種プログラムを記憶する。
記憶回路35は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターンおよび複数の送信遅延パターン、診断プロトコル、送受信条件等の各種データ群を記憶する。記憶回路35は、通信インタフェース回路33から出力された各種データを記憶する。記憶回路35は、Bモード回路25により生成されたBモードデータ、ボリュームデータ等の各種データを記憶する。記憶回路35は、ドプラモード回路27により生成されたドプラデータ、血流ドプラ情報、組織ドプラ情報等を記憶する。
記憶回路35は、画像生成回路29において実行される画像生成プログラム(レンダリング処理に関するプログラム、MPR処理に関するプログラム等)、運動機能生成プログラム(例えば、スペックルパターンのトラッキングに関するパターンマッチング等のプログラム)を記憶する。記憶回路35は、レンダリングパラメータ、MPRパラメータ等の種々のパラメータ、文字情報、目盛等を記憶する。記憶回路35は、画像生成回路29により生成された種々の画像(Bモード画像、ドプラ画像、カラードプラ画像、ドプラ波形画像、第1重畳画像、第2重畳画像等)のデータ、心臓(心筋)の運動情報(3次元運動ベクトル)を記憶する。
記憶回路35は、処理回路29において実行される運動ベクトル分解プログラム、血流ベクトル計算プログラム、及びベクトル場画像生成プログラムなどの各種プログラムと、ベクトル表示パラメータと、血液の移動速度に対するベクトル表示パラメータの対応表等とを記憶する。記憶回路35は、処理回路31により生成される3次元のベクトル情報(3次元血流ベクトル)、ベクトル場画像(レンダリングベクトル場画像、MPRベクトル場画像)等を記憶する。
記憶回路35は、運動情報生成機能293により生成された心臓の運動情報において、心臓(心筋)の運動量に応じたカラーマップを記憶する。心臓の運動量とは、例えば、心筋領域の各位置における3次元運動ベクトルの大きさに対応する。
入力インタフェース回路15は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本超音波診断装置1に取り込む。例えば、入力インタフェース回路15は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、および表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルでディスプレイ等によって実現される。
入力インタフェース回路15は、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を制御回路37に出力する。入力インタフェース回路15は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標を制御回路37に出力する。
入力インタフェース回路15は、バス21を介して処理回路31および制御回路37に接続される。入力インタフェース回路15は、操作者から受け取った入力操作を電気信号に変換する。入力インタフェース回路15は、変換した電気信号を処理回路31および制御回路37へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース回路15は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限らない。例えば、本超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を処理回路31および制御回路37へ出力するような電気信号の処理回路も入力インタフェース回路15の例に含まれる。
入力インタフェース回路15は、レンダリングパラメータ、MPRパラメータ等の種々のパラメータを入力する。入力インタフェース回路15は、レンダリング画像およびMPR画像を任意に回転させる操作を入力してもよい。また、入力インタフェース回路15は、フリーズ操作、シネ表示の開始・終了の指示を入力する。
制御回路37は、本超音波診断装置1における各回路等を制御するプロセッサ(Processing circuitry)である。制御回路37は、いずれも図示していないCPUとメモリを備える。制御回路37は、本超音波診断装置1における各回路等を制御するための各種プログラム(装置制御プログラム、表示制御プログラム等)を記憶回路35から読み出す。制御回路37は、読み出した各種プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、各種プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、記憶回路35からプログラムを読み出した状態の制御回路37は、システム制御機能、表示制御機能等の各機能を有する。
具体的には、制御回路37は、装置制御プログラムを記憶回路35から読み出す。制御回路37は、読み出した装置制御プログラムを自身のメモリに展開し、実行することで、各回路に対する装置制御機能を実現する。このとき、制御回路37は、システム制御部として機能する。
装置制御機能は、操作者により入力インタフェース回路15を介して入力されたフレームレート、被走査深度、送信開始・終了等に基づいて、記憶回路35に記憶された送信遅延パターン、受信遅延パターンと装置制御プログラムとを読み出し、これらに従って装置本体13の送受信回路23を制御する。操作者による入力インタフェース回路15における終了ボタンの押下に応じて、装置制御機能は、超音波の送受信を終了するために送受信回路を制御する。このとき、装置本体13は一時停止状態となる。
制御回路37は、表示制御プログラムを記憶回路35から読み出し、表示回路17を制御する。このとき、制御回路37は、表示制御部として機能する。表示制御機能は、例えば、入力インタフェース回路15を介した操作者の指示により、Bモード画像、ドプラ画像、カラードプラ画像、ドプラ波形画像、第1重畳画像、第2重畳画像等の各種画像を切り換えて表示するために、表示回路17を制御する。表示制御機能は、動画表示された上記各種画像に対するフリーズ操作の入力に応答して、動画表示されている画像をフリーズさせるために、表示回路17を制御する。
表示制御機能は、第1重畳画像および第2重畳画像各々において、心筋に対応する領域の各位置における3次元運動ベクトルの大きさに対応するカラーマップを重畳させるように、表示回路17を制御する。例えば、表示制御機能は、第1重畳画像および第2重畳画像各々において、心筋領域に隣接する3次元血流ベクトルを示すマーカの色相を、3次元血流ベクトルに最近接する心筋領域のカラーマップに対応する色相で表示するために、表示回路17を制御する。
これにより、レンダリング画像における運動情報(3次元運動ベクトル)と、ベクトル場画像における心腔の壁部分に隣接する3次元のベクトル情報(3次元血流ベクトル)とが、同一の表示態様として表示される。表示態様とは、例えば、色相と明度と彩度とのうち少なくとも一つである。
上記説明においては、単一の制御回路37において装置制御機能及び表示制御機能等の各種機能が実行されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路37を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各種機能を実現するものとしても構わない。また、装置制御機能と表示制御機能とは、それぞれ異なる回路で実現されてもよいし、処理回路31等に組み込まれてもよい。
また、制御回路37は、画像生成回路29における画像生成機能291と運動情報生成機能293とを有していてもよい。また、制御回路37は、処理回路31における運動ベクトル分解機能311と血流ベクトル計算機能313とベクトル場画像生成機能315とを有していてもよい。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(graphics processing unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Comlex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
表示回路17は、生成された各種画像(Bモード画像、ドプラ画像、カラードプラ画像、ドプラ波形画像、第1重畳画像、第2重畳画像)および生体信号波形等を、ディスプレイに表示する。表示回路17は、表示された画像に対して、ブライトネス、コントラスト、ダイナミックレンジ、γ補正などの調整および、カラーマップの割り当てを実行して表示する。
表示回路17は、カラードプラ画像をドプラ波画像とともに示すトリプレックス表示を実行してもよい。表示回路17は、所定の範囲の時間幅に含まれる同一種類の複数の画像を連続表示(シネ表示)させることで、動画像を表示することも可能である。表示回路17は、入力インタフェース回路15を開始入力された回転操作に従って、レンダリング画像およびMPR画像を任意に回転させて、ディスプレイに表示する。
表示回路17は、レンダリングベクトル場画像をレンダリング画像に心位相の時相および位置を略一致させて重畳した第1重畳画像を、ディスプレイに表示する。なお、表示回路17は、第1重畳画像における心筋領域を、心臓の運動量に応じたカラーマップでディスプレイに表示してもよい。また、表示回路17は、心筋領域に隣接する3次元血流ベクトルの色相を、3次元血流ベクトルに最近接する心筋領域のカラーマップに対応する色相で表示してもよい。また、表示回路17は、レンダリングベクトル場画像とレンダリング画像とを、心位相の時相を略一致させて並列表示してもよい。
図7は、レンダリングベクトル場画像RVF1をレンダリング画像RIに重畳した第1重畳画像の一例を示す図である。図7に示すように、レンダリング画像RIにおける心筋領域MYには、心筋の運動量に応じたカラーマップが割り当てられる。図7において、心筋領域に重畳されるカラーマップは、心筋の運動量に応じてドットの密度が異なるように示されている。
なお、図7に記載のレンダリングベクトル場画像RVF1における3次元血流ベクトルは説明の便宜上2次元状に記載されているが、第1重畳画像における3次元血流ベクトルは、奥行きの位置に応じて不透明度が異なるように、3次元的(立体的に)に表示される。また、図7において、心壁に近い複数の3次元血流ベクトルNV1、NV2は、最も近い心壁のカラーマップに対応する色相で表示されてもよい。
図8は、レンダリングベクトル場画像の一例を示す図である。図8に示すように、3次元血流ベクトルは、第1重畳画像において、立体的に表示される。なお、図8における3次元血流ベクトルは、奥行きの位置に応じて不透明度が異なるように、ディスプレイに表示されてもよい。
表示回路17は、MPRベクトル場画像をMPR画像に心位相の時相および断面位置を略一致させて重畳した第2重畳画像を、ディスプレイに表示する。なお、表示回路17は、第2重畳画像における心筋領域に、心臓の運動量に応じたカラーマップを重畳させて、ディスプレイに表示してもよい。また、表示回路17は、心筋領域に隣接する血流ベクトルの色相を、血流ベクトルに最近接する心筋領域のカラーマップに対応する色相で表示してもよい。
図9は、3つのMPR画像に3つのMPRベクトル場画像をそれぞれ重畳した3つの第2重畳画像を示す図である。図9における2chは、2chビューに対応するMPR画像に、対応するMPRベクトル場画像をそれぞれの心位相の時相と断面位置とを略一致させて重畳した第2重畳画像(以下、2ch重畳画像と呼ぶ)を示している。
図9における4chは、4chビューに対応するMPR画像に、対応するMPRベクトル場画像をそれぞれの心位相の時相と断面位置とを略一致させて重畳した第2重畳画像(以下、4ch重畳画像と呼ぶ)を示している。図9におけるOrthは、2chビューおよび4chビューに直交する垂直断面に対応するMPR画像に、対応するMPRベクトル場画像をそれぞれの心位相の時相と断面位置とを略一致させて重畳した第2重畳画像(以下、垂直重畳画像と呼ぶ)を示している。
図9に示すように、2ch重畳画像、4ch重畳画像、垂直重畳画像各々において、心筋領域MYには、心筋の運動量に応じたカラーマップが割り当てられる。図9において、カラーマップは、心筋の運動量に応じてドットの密度が異なるように示されている。好適には、3つのMPR画像(直交3断面画像)、および直交3断面画像にそれぞれ対応する3つのMPRベクトル場画像は、それぞれ同一の心位相である。また、図9において、心壁に近い複数の3次元血流ベクトルNV3、NV4、NV5は、最も近い心壁のカラーマップに対応する色相で表示されてもよい。
図7乃至図9において、矢印は、3次元血流ベクトルに対応するマーカである。図7乃至図9におけるマーカの大きさ(矢印の長さ)は、血液の移動速度(3次元血流ベクトルの大きさ)に対応する。図7および図9におけるマーカの向き(矢印の向き)は、血液の移動方向(3次元血流ベクトルの向き)に対応する。
(ベクトル場画像生成表示処理)
ベクトル場画像生成表示処理とは、運動情報生成機能293と、運動ベクトル分解機能311と、血流ベクトル計算機能313と、ベクトル場画像生成機能315とにより実行される一連の処理である。
図10は、ベクトル場画像生成表示処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下、図10に記載のフローチャートを参照して、ベクトル場画像生成表示処理を説明する。
心臓を被走査領域とした超音波の送受信により、時系列に沿った一連のボリュームデータが生成される(ステップSa1)。運動情報生成機能293により、一連のボリュームデータに基づいて、心筋の運動に関する3次元運動ベクトル(心臓の運動情報)が生成される(ステップSa2)。運動ベクトル分解機能311により、走査線方向(超音波ビーム方向)と、走査線方向に直交しかつ互いに直交する第1方向と第2方向とに、3次元運動ベクトルが投影される。この投影により、3次元運動ベクトルが、第1方向と第2方向と走査線方向とに分解される(ステップSa3)。
心腔を被走査領域とした超音波の送受信により、走査線方向に沿ったドプラ情報が生成される(ステップSa4)。ステップSa4の処理は、ステップSa1の処理の前に実行されてもよい。走査線方向と第1方向とにより規定され第2方向に沿った複数の第1断面が、血流ベクトル計算機能313により特定される(ステップSa5)。走査線方向と第2方向とにより規定され第1方向に沿った複数の第2断面が、血流ベクトル計算機能313により特定される(ステップSa6)。
第1断面各々において、第1断面内の各位置における血液の速さを示す第1の2次元血流ベクトルが、分解された3次元運動ベクトルの第1成分とドプラ情報とを用いて計算される(ステップSa7)。第1の2次元血流ベクトルは、走査線方向と第1方向とのうち少なくとも一つの方向をベクトルの成分として有する2次元ベクトルである。ステップSa7の処理により、第1断面各々には、第1断面内の複数の部分領域にそれぞれ対応する複数の第1の2次元血流ベクトルが生成される。すなわち、第1断面各々には、第1の2次元血流ベクトルの分布が生成される。
第2断面各々において、第2断面内の各位置における血液の速さを示す第2の2次元血流ベクトルが、分解された3次元運動ベクトルの第2成分とドプラ情報とを用いて計算される(ステップSa8)。第2の2次元血流ベクトルは、走査線方向と第2方向とのうち少なくとも一つの方向をベクトルの成分として有する2次元ベクトルである。ステップSa8の処理により、第2断面各々には、第2断面内の複数の部分領域にそれぞれ対応する複数の第2の2次元血流ベクトルが生成される。すなわち、第2断面各々には、第2の2次元血流ベクトルの分布が生成される。なお、ステップSa7の処理とステップSa8の処理とは、処理手順が逆であってもよい。
同一局所領域に属する第1の2次元血流ベクトルと第2の2次元血流ベクトルを合成することにより、心腔領域内の各位置における血流の速さを示す3次元血流ベクトルが生成される(ステップSa9)。3次元血流ベクトルの分布を示すベクトル場画像が、ディスプレイに表示される(ステップSa10)。ベクトル場画像とは、心腔領域内の各位置において、血液の移動方向と血液の移動速度とに対応するマーカ(矢印)を用いて、3次元血流ベクトルの分布を示す画像である。このとき、マーカの大きさは、3次元血流ベクトルの大きさ、すなわち血液の移動速度に対応する。また、マーカの向きは、3次元血流ベクトルの向き、すなわち血液の移動方向に対応する。
例えば、レンダリング画像内の心腔領域の各微小領域の位置における3次元血流ベクトルの向きおよび大きさに応じた表示処理の後に、レンダリング処理後のベクトル場画像(レンダリングベクトル場画像)が、レンダリング画像に重畳表示される。このとき、ベクトル場画像における複数の3次元血流ベクトルは、レンダリング方向に沿った所定の不透明度で表示される。また、MPR処理後のベクトル場画像(MPRベクトル場画像)が、MPR画像に重畳表示される。
上記重畳表示において、3次元運動ベクトルの大きさに対応するカラーマップが心筋領域に重畳されてもよい。また、上記重畳表示において、心筋領域に隣接する3次元血流ベクトルを示すマーカは、最近接する心筋領域の運動情報(3次元運動ベクトル)に応じた色相が割り当てられて表示されてもよい。また、図10に記載のフローチャートを繰り返すことで、第1重畳画像または第2重畳画像の生成に応じて、第1重畳画像または第2重畳画像は、動画としてリアルタイムにディスプレイに表示されてもよい。
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態における超音波診断装置1によれば、心臓本来の3次元的なねじれ運動を考慮して、心腔内の3次元領域の各位置における血液(流体)の速さに関する3次元のベクトル情報(3次元血流ベクトル)を生成することができる。次いで、本超音波診断装置1は、心腔領域内の各位置における3次元血流ベクトルを、3次元血流ベクトルの大きさおよび方向を表示可能なマーカとして、心筋の運動に伴う運動情報とともに、表示することができる。さらに、心筋領域の運動情報は、3次元運動ベクトルの大きさに応じたカラーマップとして表示することができる。
加えて、本実施形態における超音波診断装置1によれば、心筋領域に隣接する3次元血流ベクトルを示すマーカの色相を、3次元血流ベクトルに最近接する心筋領域のカラーマップに対応する色相で表示することができる。
本実施形態における超音波診断装置1によれば、3次元ベクトルデータ(3次元血流ベクトル)に対するレンダリング処理の結果として、3次元血流ベクトルを3次元的(立体的)に表示することができる。このとき、視線方向(レンダリング方向)に沿った奥行きの位置に応じて異なる不透明度が、3次元血流ベクトルに割り当てられる。
以上のことから、本超音波診断装置1によれば、より実際の血流に近い血流ベクトルを生成して、3次元的に表示することができる。これにより、操作者は、心腔内における血流の状態および心筋の運動状態を、容易にかつ正確に把握および観察することができる。
また、本実施形態の変形例として、本超音波診断装置1の技術的思想を医用画像処理装置19で実現する場合には、例えば図1の構成図における破線内の構成要素を有するものとなる。このとき、本実施形態に係る画像生成機能291、運動情報生成機能293、運動ベクトル分解機能311、血流ベクトル計算機能313、ベクトル場画像生成機能315等の各種機能は、医用画像処理装置19においても本実施形態と同様にして実行される。例えば、本医用画像処理装置19は、超音波プローブ11からの出力を基に生成された心腔内の流体のドプラ情報と、超音波プローブ11からの出力を基に生成された前記心腔に関する心臓の運動情報とに基づいて、心腔内の3次元領域の各位置における流体の速さに関する3次元のベクトル情報を生成する処理回路(処理部)31を有する。
医用画像処理装置19では、図10に示すフローチャートにおけるステップSa1の処理は、「記憶回路35から一連のボリュームデータを読み出し」となる。なお、ステップSa1の処理は、「通信インタフェース回路33を介して、超音波診断装置または他の医用画像診断装置から一連のボリュームデータを取得」という処理であってもよい。
また、医用画像処理装置19では、図10に示すフローチャートにおけるステップSa4の処理は、「記憶回路35からドプラ情報を読み出し」となる。なお、ステップSa4の処理は、「通信インタフェース回路33を介して、超音波診断装置からドプラ情報をを取得」という処理であってもよい。
加えて、本実施形態に係る画像生成機能291、運動情報生成機能293、運動ベクトル分解機能311、血流ベクトル計算機能313、ベクトル場画像生成機能315等の各種機能は、当該各種機能およびベクトル場画像生成表示処理を実行するプログラム(医用画像処理プログラム)をワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、医用画像処理プログラムは、コンピュータに、超音波プローブ11からの出力を基に生成された心腔内の流体のドプラ情報と、超音波プローブ11からの出力を基に生成された心腔に関する心臓の運動情報とに基づいて、心腔内の3次元領域の各位置における前記流体の速さに関する3次元のベクトル情報を生成することを実現させる。また、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどの各種可搬型記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。