JP2015067702A - 複合粒子及びその製造方法、並びにフィルム - Google Patents

複合粒子及びその製造方法、並びにフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】高い透明性及び良好な帯電防止性を有する複合粒子及びその製造方法、並びに、その複合粒子を用いたフィルムを提供する。
【解決手段】複合粒子は、上記課題を解決するために、ビニル系単量体の重合体からなる重合体粒子と、前記重合体粒子の表面の少なくとも一部を被覆する複合酸化物粒子とを含み、前記複合酸化物粒子が、リン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方からなる。複合粒子の製造方法は、高分子分散安定剤の非存在下で、かつ、ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤と、リン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方からなる複合酸化物粒子との存在下で、ビニル系単量体をアルコール系溶媒中で分散重合する。フィルムは、上記複合粒子を含む。
【選択図】図3

Description

本発明は、重合体粒子に導電性物質を複合化させてなる複合粒子及びその製造方法、並びに、その複合粒子を用いた、帯電防止フィルムや防眩フィルム等として好適に使用可能なフィルムに関するものである。
従来より、重合体粒子に導電性物質を複合化させてなる複合粒子が知られている。例えば、特許文献1には、エチレン性不飽和単量体を重合してなるポリマー微粒子の全体に、芳香族アミン単量体を酸化重合してなる導電性のポリマーを含ませた着色微粒子が記載されている。
また、特許文献2には、コアポリマー粒子に付着した導電性のポリアニリンポリマーを含むポリアニリン粒子が記載されている。
また、特許文献3には、樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面を覆う着色剤としての被覆層とを有する着色樹脂粒子であって、前記被覆層が、導電性物質として知られているピロール又はその誘導体の重合体を含む着色樹脂粒子が記載されている。
特開2007−254558号公報 特開2002−356654号公報 国際公開第2012/042918号
しかしながら、特許文献1〜3に記載の粒子は、粒子中に含まれている導電性物質が着色した重合体であるために、着色粒子であり、透明性(光透過性)が低い。そのため、特許文献1〜3に記載の粒子は、透明性帯電防止フィルムに配合される帯電防止添加剤等のような高い透明性が要求される用途へ展開することが困難である。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い透明性及び良好な帯電防止性を有する複合粒子及びその製造方法、並びに、その複合粒子を用いたフィルムを提供することにある。
本発明の複合粒子は、上記課題を解決するために、ビニル系単量体の重合体からなる重合体粒子と、前記重合体粒子の表面の少なくとも一部を被覆する複合酸化物粒子とを含み、前記複合酸化物粒子が、リン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方からなることを特徴としている。
上記のリン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方は、高い透明性及び良好な導電性を有する複合酸化物である。そして、上記構成の複合粒子は、この高い透明性及び良好な導電性を有する複合酸化物からなる複合酸化物粒子が重合体粒子の表面の少なくとも一部を被覆しているので、高い透明性及び良好な帯電防止性を有している。従って、上記構成の複合粒子は、例えば、フィルムに添加されたときに、高い透明性及び良好な帯電防止性を有するフィルムを実現できる。また、上記構成の複合粒子は、高い透明性を有するために、フィルムに添加されたときに、高い光拡散性を有するフィルム(例えば高い防眩性を有する防眩フィルム)を実現できる。
本発明の複合粒子の製造方法は、上記課題を解決するために、ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤と、リン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方からなる複合酸化物粒子との存在下で、ビニル系単量体をアルコール系溶媒中で分散重合することを特徴としている。
上記方法によれば、複合酸化物粒子の存在下における分散重合を、ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤の存在下で行うことにより、複合酸化物粒子が重合体粒子を被覆することなく凝集したり、複合酸化物粒子の多くが凝集したり、得られる複合粒子の形状が真球状でなくなったりすることを回避できる。これは、重合体分子の末端に存在する、ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤に由来するヒドロキシ基と、複合酸化物粒子の酸素原子との間の水素結合によって、重合体分子表面に複合酸化物粒子が付着し易くなるためと考えられる。上記方法によれば、これらの作用により、前述したように高い透明性及び良好な帯電防止性を有する本発明の複合粒子を良好な分散状態かつ真球形状の複合粒子として得ることができる。
本発明のフィルムは、上記課題を解決するために、本発明の複合粒子を含むことを特徴としている。
上記構成によれば、前述したように高い透明性及び良好な帯電防止性を有する本発明の複合粒子を用いているので、高い透明性及び良好な帯電防止性を有している。また、上記構成によれば、前述したように高い透明性及び良好な帯電防止性を有する本発明の複合粒子を用いているので、高い光拡散性を有するフィルム(例えば高い防眩性を有する防眩フィルム)を実現できる。
本発明によれば、高い透明性及び良好な帯電防止性を有する複合粒子及びその製造方法、並びに、その複合粒子を用いたフィルムを提供できる。
実施例1で得られた複合粒子を走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と略記する)で撮像することによって得られたSEM画像である。 実施例1で得られた複合粒子を電界放出形走査電子顕微鏡(以下、「FE−SEM」と略記する)で撮像することによって得られたFE−SEM画像である。 実施例1で得られた複合粒子を電界放出形走査電子顕微鏡(以下、「FE−SEM」と略記する)で撮像することによって得られた、図2よりも低倍率のFE−SEM画像である。 実施例1で得られた複合粒子を透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」と略記する)で撮像することによって得られたTEM画像である。 実施例2で得られた複合粒子をSEMで撮像することによって得られたSEM画像である。 実施例2で得られた複合粒子をTEMで撮像することによって得られたTEM画像である。 実施例3で得られた複合粒子をSEMで撮像することによって得られたSEM画像である。 実施例3で得られた複合粒子をTEMで撮像することによって得られたTEM画像である。 比較例1で得られた複合粒子をSEMで撮像することによって得られたSEM画像である。 比較例1で得られた複合粒子をTEMで撮像することによって得られたTEM画像である。 比較例2で得られた複合粒子をSEMで撮像することによって得られたSEM画像である。 比較例2で得られた複合粒子をTEMで撮像することによって得られたTEM画像である。
〔複合粒子〕
本発明の複合粒子について、以下に詳細に説明する。
本発明の複合粒子は、ビニル系単量体の重合体からなる重合体粒子と、前記重合体粒子の表面の少なくとも一部を被覆する複合酸化物粒子とを含み、前記複合酸化物粒子が、リン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方からなる。
前記ビニル系単量体は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル系単量体(1つのエチレン性不飽和基を有する、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)、スチレン系単量体等の単官能ビニル系単量体(1つのエチレン性不飽和基を有する化合物)が挙げられる。前記ビニル系単量体は、スチレン系単量体(スチレン又はその誘導体)を含むことが好ましく、スチレン系単量体を50重量超の割合で含むことがより好ましく、スチレン系単量体を70重量以上の割合で含むことがさらに好ましく、スチレン系単量体を90重量%以上の割合で含むことがより一層好ましく、スチレン系単量体のみからなることが最も好ましい。これにより、より透明性の高い複合粒子を実現できると共に、重合時におけるアルコール系溶媒に対する複合粒子の分散性が向上するために複合粒子を容易に製造できる。前記スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン(o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、又はp−メチルスチレン)、1−ブチルスチレン、クロロスチレン等が挙げられる。これらスチレン系単量体は、1種のみを用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記ビニル系単量体の重合体は、架橋性単量体(2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物)で架橋することができる。すなわち、前記ビニル系単量体は、前記単官能ビニル系単量体に加えて架橋性単量体を含んでいてもよい。前記架橋性単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
前記複合酸化物粒子を構成するリン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方としては、例えば、リンでドープされた酸化スズ(リンドープ型酸化スズ)、アンチモンでドープされた酸化亜鉛、これらの混合物等が挙げられる。アンチモンを含む物質は、環境負荷への懸念があることから、前記複合酸化物粒子は、リンでドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方(例えばリンでドープされた酸化スズ)がより好ましい。
前記複合酸化物粒子の平均一次粒子径は、1〜40nmの範囲内であることが好ましい。前記複合酸化物粒子の平均一次粒子径が1nm未満であると、前記複合酸化物粒子が単独で凝集しやすくなるので、前記複合酸化物粒子を得ることが困難になる恐れがある。前記複合酸化物粒子の平均一次粒子径が40nmを超えると、前記複合酸化物粒子が重合体粒子に付着しにくくなり、前記複合酸化物粒子を得ることが困難になる恐れがある。また、前記複合酸化物粒子の平均一次粒子径が40nmを超えると、前記複合酸化物粒子表面での光散乱が起こり、前記複合粒子の透明性が低下する恐れがある。なお、ここで言う「平均一次粒子径」は、動的光散乱法で測定された平均一次粒子径を指すものとする。
前記複合粒子表面における前記複合酸化物粒子による被覆率は、4%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50〜80%の範囲内であることがさらに好ましい。前記被覆率を上記範囲の下限以上とすることで、より帯電防止性の高い複合粒子を実現できる。
前記複合粒子の個数平均粒子径は、0.5〜5μmの範囲内であることが好ましい。これにより、良好な光拡散性を有する複合粒子を実現できる。
前記複合粒子の粒子径の変動係数は、20%以下であることが好ましく、10%以下でることがより好ましい。上記樹脂粒子の粒子径の変動係数が20%を超えると、樹脂粒子に含まれる粗大粒子の量が多くなり、樹脂粒子及び樹脂粒子を用いた製品(フィルム等)の光学特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
〔複合粒子の製造方法〕
次に、本発明の複合粒子の製造方法について、以下に詳細に説明する。
本発明の複合粒子の製造方法は、ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤と、リン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方からなる複合酸化物粒子との存在下で、ビニル系単量体をアルコール系溶媒中で分散重合する方法である。
本発明の製造方法では、重合開始剤として、ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤を用いる。前記ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド](商品名「VA−086」、和光純薬工業株式会社製)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(商品名「VA−080」、和光純薬工業株式会社製)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}(商品名「VA−082」、和光純薬工業株式会社製)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}(商品名「VA−085」、和光純薬工業株式会社製)等が挙げられる。これらのヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤は、1種のみを用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤の使用量は、前記ビニル系単量体100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲内であることが好ましく、1〜7重量部の範囲内であることがより好ましく、3〜6重量部の範囲内であることがさらに好ましい。これにより、前記複合酸化物粒子による被覆率の高い複合粒子を容易に製造できる。
本発明の製造方法では、一般的な分散重合で使用されているような高分子分散安定剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の非存在下で分散重合を行うことが好ましい。これにより、高分子分散安定剤の存在により重合体粒子間に多くの複合酸化物粒子の凝集体が形成されることを回避できる。高分子分散安定剤の存在により多くの複合酸化物粒子の凝集体が形成されるのは、高分子分散安定剤が複合酸化物粒子同士を結着するバインダーとして働くためであると考えられる。
前記複合酸化物粒子は、分散媒中に分散された分散体の状態で分散重合に使用することが好ましい。これにより、前記複合酸化物粒子を良好に分散させた状態で分散重合を行うことができ、前記複合酸化物粒子による被覆率の高い複合粒子を容易に製造できる。前記分散媒としては、メタノール、2−プロパノール等のアルコール類;水;これらの混合物等を用いることができる。リンドープ型酸化スズ粒子のメタノール分散体は、日産化学工業株式会社から商品名「セルナックス(登録商標)CX−S501M」で市販されており、リンドープ型酸化スズ粒子の2−プロパノール分散体は、日産化学工業株式会社から商品名「セルナックス(登録商標)CX−S204IP」で市販されており、リンドープ型酸化スズ粒子の水分散体は、日産化学工業株式会社から商品名「セルナックス(登録商標)CX−S301H」で市販されている。
前記アルコール系溶媒は、アルコールを含む溶媒であって、前記ビニル系単量体が均質に溶解し、かつ前記ビニル系単量体を重合して得られる重合体が不溶になるものであればよい。前記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アルコール類に水を混合した混合溶媒等が挙げられる。また、アルコール類に水を混合した混合溶媒における水の割合は、0〜70重量%の範囲内であることが好ましい。前記複合酸化物粒子をアルコール系溶媒分散体の状態で分散重合に使用する場合、前記分散重合に使用するアルコール系溶媒として、上記アルコール系溶媒分散体の分散媒(アルコール系溶媒)と同じ溶媒を用いることが好ましい。例えば、前記複合酸化物粒子をメタノール分散体の状態で分散重合に使用する場合、前記アルコール系溶媒としてメタノールを用いることが好ましい。これにより、上記アルコール系溶媒分散体と上記アルコール系溶媒とを混合したときに前記複合酸化物粒子を良好に分散させることができ、前記複合酸化物粒子による被覆率の高い複合粒子を容易に製造できる。
前記アルコール系溶媒の使用量は、前記ビニル系単量体の使用量100重量部に対して、300〜3000重量部の範囲内であることが好ましい。前記アルコール系溶媒の使用量を上記範囲の下限以上とすることで、重合時におけるアルコール系溶媒に対する複合酸化物粒子及び複合粒子の分散性を向上させることができ、前記複合酸化物粒子による被覆率の高い複合粒子を容易に製造できる。前記アルコール系溶媒の使用量を上記範囲の上限を超えてもアルコール系溶媒の使用量の増大に見合った効果がみられなくなるので、前記アルコール系溶媒の使用量を上記範囲の上限以下に抑えることがコストの面から好ましい。
〔フィルム〕
本発明のフィルムは、本発明の複合粒子を含んでいる。本発明のフィルムは、例えば、複合粒子とバインダー樹脂とを含む塗工用樹脂組成物を基材フィルム上に塗工してなる構成である。この構成のフィルムは、防眩フィルム又は帯電防止フィルムとして好適に使用できる。
上記バインダー樹脂としては、透明性、樹脂粒子分散性、耐光性、耐湿性及び耐熱性等の要求される特性に応じて、当該分野において使用されるものであれば特に限定されるものではない。上記バインダー樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂;(メタ)アクリル−ウレタン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;メラミン系樹脂;スチレン系樹脂;アルキド系樹脂;フェノール系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリエステル系樹脂;アルキルポリシロキサン系樹脂等のシリコーン系樹脂;(メタ)アクリル−シリコーン系樹脂、シリコーン−アルキド系樹脂、シリコーン−ウレタン系樹脂、シリコーン−ポリエステル樹脂等の変性シリコーン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
上記バインダー樹脂は、塗工用樹脂組成物の耐久性を向上させる観点から、架橋反応により架橋構造を形成できる硬化性樹脂であることが好ましい。上記硬化性樹脂は、種々の硬化条件で硬化させることができる。上記硬化性樹脂は、硬化のタイプにより、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、温気硬化性樹脂等に分類される。
上記熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
上記電離放射線硬化性樹脂としては、多価アルコール多官能(メタ)アクリレート等のような多官能(メタ)アクリレート樹脂;ジイソシアネート、多価アルコール、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等から合成されるような多官能ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。上記電離放射線硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。上記電離放射線硬化性樹脂は、二種類以上を併用してもよい。
上記電離放射線硬化性樹脂としては、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用できる。
上記電離放射線硬化性樹脂のうち紫外線硬化性樹脂を用いる場合、紫外線硬化性樹脂に光重合開始剤を加えてバインダー樹脂とする。上記光重合開始剤は、どのようなものを用いてもよいが、用いる紫外線硬化性樹脂にあったものを用いることが好ましい。
上記光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号公報等に記載)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α−アシルオキシムエステル等が挙げられる。
上記アセトフェノン類としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン等が挙げられる。上記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインベンゾエート、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。上記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン等が挙げられる。上記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。上記ケタール類としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルメチルケタール類が挙げられる。上記α−ヒドロキシアルキルフェノン類としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。上記α−アミノアルキルフェノン類としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンが挙げられる。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、BASFジャパン株式会社製の商品名「イルガキュア(登録商標)651」(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、BASFジャパン株式会社製の商品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製の商品名「イルガキュア(登録商標)907」(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン)等が好ましい例として挙げられる。
上記光重合開始剤の使用量は、バインダー樹脂100重量%に対し、通常、0.5〜20重量%の範囲内であり、好ましくは1〜5重量%の範囲内である。
上記バインダー樹脂として、上記硬化性樹脂以外に、熱可塑性樹脂を用いることができる。上記熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルの単独重合体及び共重合体、塩化ビニルの単独重合体及び共重合体、塩化ビニリデンの単独重合体及び共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;アクリル酸エステルの単独重合体及び共重合体、メタクリル酸エステルの単独重合体及び共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;線状ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
上記塗工用樹脂組成物は、水及び/又は有機溶剤をさらに含んでいてもよい。上記塗工用塗工用樹脂組成物を基材フィルムに塗工する場合、上記有機溶剤は、それを塗工用樹脂組成物に含有させることによって、基材フィルムへの塗工用樹脂組成物の塗工が容易になるものであれば、特に限定されるものではない。上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセタート、酢酸2−エトキシエチルアセタート(セロソルブアセタート)、2−ブトキシエチルアセタート、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート等のグリコールエーテルエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタン、塩化メチレン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒等を用いることができる。これら有機溶剤は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記基材フィルムは、透明であることが好ましい。透明の基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等のポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、透明の基材フィルムとして、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等のポリマーからなるフィルムも挙げられる。さらに、透明の基材フィルムとして、イミド系ポリマー、サルホン系ポリマー、ポリエーテルサルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや上記ポリマーのブレンド物等のポリマーからなるフィルム等も挙げられる。上記基材フィルムとして、特に複屈折率の少ないものが好適に用いられる。また、これらフィルムにさらに(メタ)アクリル系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂等の易接着層を設けたフィルムも上記基材フィルムとして用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味するものとする。
上記基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には、強度や取り扱い等の作業性、薄層性等の点より10〜500μmの範囲内であり、20〜300μmの範囲内であることが好ましく、30〜200μmの範囲内であることがより好ましい。
また、上記基材フィルムには、添加剤を加えてもよい。上記添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、屈折率調整剤、増強剤等が挙げられる。
上記塗工用樹脂組成物を基材フィルム上に塗工する方法としては、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等の公知の塗工方法が挙げられる。
上記塗工用樹脂組成物に含まれるバインダー樹脂が電離放射線硬化性樹脂である場合、上記塗工用樹脂組成物の塗工後に、必要に応じ溶剤を乾燥させ、さらに活性エネルギー線を照射することにより電離放射線硬化性樹脂を硬化させればよい。
上記活性エネルギー線としては、例えば、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線;通常20〜2000KeVのコックロフワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線等を用いることができる。
塗工用樹脂組成物の塗工(及び硬化)によって形成される、バインダー樹脂中に複合粒子が分散された層(防眩層)の厚みは、特に限定されず、複合粒子の粒子径により適宜決定されるが、1〜10μmの範囲内であることが好ましく、3〜7μmの範囲内であることがより好ましい。
なお、本発明のフィルムは、上述した構成に限定されるものではなく、複合粒子とバインダー樹脂とを含む塗工用樹脂組成物と同様の成形用樹脂組成物をフィルム形状に成形したものであってもよい。この構成のフィルムは、光拡散フィルム又は帯電防止フィルムとして好適に使用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず、以下の実施例及び比較例における、複合粒子のXPSの測定方法、複合粒子の灰分の測定方法、並びに、複合粒子の個数平均粒子径及び粒子径の変動係数の測定方法を説明する。
〔複合粒子のXPSの測定方法〕
複合粒子に含まれる複合酸化物粒子がリン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズを含む場合、複合粒子のX線光電子分光(以下、「XPS」と略記する)の測定は、アルバック・ファイ株式会社製のX線光電子分光装置、商品名「Quantera II」を用いて行った。
XPSの測定条件は、
X線源の線種:単色化AlKα線(エネルギー1486.6eV)
検出領域のサイズ:直径100μm
検出深さ:約4〜5nm(取出角45°)
測定スペクトル:ワイドスペクトル、Sn3d5/2ナロースペクトル、O1sナロースペクトル、C1sナロースペクトル
とした。
XPSによる、複合粒子表面に存在するSn、O、及びCの各元素の存在量の定量は、各元素の光電子ピーク(Sn3d5/2ピーク、O1sピーク、及びC1sピーク)の面積(ピーク面積)をもとに行った。各元素のピーク面積は、その元素の存在量(at%(原子濃度))および注目電子の感度に比例するので、ピーク面積Aを相対感度係数RSFで割った値は元素の存在量に比例した値となる。よって、Sn、O、及びCの存在量(定量値)は、Sn、O、及びCの存在量の和を100at%とした相対定量によると、次式
Sn=(ASn/RSFSn)/{(ASn/RSFSn)+(AO/RSFO)+(AC/RSFC)}
O=(AO/RSFO)/{(ASn/RSFSn)+(AO/RSFO)+(AC/RSFC)}
C=(AC/RSFC)/{(ASn/RSFSn)+(AO/RSFO)+(AC/RSFC)}
(上記式中、CSn、CO、及びCCはそれぞれSn、O、及びCの存在量(at%)を表し、ASn、AO、及びACはそれぞれSn、O、及びCのピーク面積を表し、RSFSn、RSFO、及びRSFCはそれぞれSn、O、及びCの相対感度係数を表す)
により算出される。
なお、複合粒子に含まれる複合酸化物粒子がリン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化亜鉛からなる場合、Sn3d5/2ピークに代えてZn2p3/2ピークのピーク面積を測定すればよい。また、この場合に各元素の存在量を算出するには、上記算出式においてSnの存在量、ピーク面積、及び相対感度係数をZnの存在量、ピーク面積、及び相対感度係数に置き換えればよい。
〔複合粒子の灰分の測定方法〕
複合粒子の灰分は、概ね複合粒子中における複合酸化物粒子の含有率に相当する。
複合粒子の灰分は、以下のようにして求めた。すなわち、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA装置)(セイコーインスツル株式会社製、商品名「TG/DTA6200」)を用いて、空気雰囲気中、空気流量200ml/minにて、昇温速度10℃/minで500℃まで複合粒子を昇温し、500℃で2時間保持し、重量(質量)減少が認められないことを確認した後、残留物の重量を測定した。そして、昇温前の複合粒子の重量に対する残留物の重量の割合を複合粒子の灰分(%)とした。
〔複合粒子の個数平均粒子径及び粒子径の変動係数の測定方法〕
複合粒子の個数平均粒子径は、SEMで撮像することによって得られたSEM画像により算出した。具体的には、倍率10000倍のSEM画像中において30個の複合粒子の直径を測長し、それらの平均値を個数平均粒子径とした。
また、前記の30個の複合粒子の直径を測長した結果から複合粒子の個数基準の粒度分布の標準偏差を求め、以下の数式によって粒子径の変動係数(CV値)を算出した。
複合粒子の粒子径の変動係数=(複合粒子の個数基準の粒度分布の標準偏差
÷複合粒子の個数平均粒子径)×100
〔実施例1〕(本発明の一例に係る複合粒子の製造方法)
ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤としての2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド](商品名「VA−086」、和光純薬工業株式会社製;以下「VA−086」と称する)5.0g(ビニル系単量体としてのスチレン100重量部に対して5.0重量部)を、アルコール系溶媒としてのメタノール1000gに溶解させて、混合溶液を調製した。
次に、調製した混合溶液を攪拌機および温度計を備えた内容量2Lのオートクレーブに入れた。その後、前記混合溶液に対して、複合酸化物粒子としてのリンドープ型酸化スズ粒子のメタノール分散体(メタノール分散ゾル)(商品名「セルナックス(登録商標)CX−S501M」、日産化学工業株式会社製、固形分(リンドープ型酸化スズ粒子の含有量)50重量%、動的光散乱法で測定されたリンドープ型酸化スズ粒子の平均一次粒子径28nm)50gを添加し、次いでビニル系単量体としてのスチレン(St)100gを添加して、単量体混合液を調製した。
次に、前記オートクレーブの内部温度を70℃に加温して前記オートクレーブの内容物を攪拌しながら、前記単量体混合液の分散重合を開始した。引き続いて、70℃で20時間加温処理を行いながら前記単量体混合液の分散重合を行い、粒子分散体(粒子のメタノール分散体)を得た。本実施例では、反応系内(オートクレーブ内)における粒子の分散安定性が良好であった。
反応終了後、得られた粒子分散体を遠心分離した後、上澄み液を排除し、沈殿物をメタノールにて遠心洗浄した。この遠心洗浄を3回繰り返した後に、沈殿物を乾燥させ、目的の粒子を得た。
得られた粒子をSEM、FE−SEM、及びTEMでそれぞれ撮像したところ、得られた粒子は、図1のSEM画像、図2及び図3のFE−SEM画像、並びに図4のTEM画像に示されるように、重合体粒子としてのスチレン系重合体(ポリスチレン鎖の末端にVA−086が結合したもの)粒子表面がリンドープ型酸化スズで被覆された真球状の複合粒子であることが認められた。また、得られた複合粒子の灰分は、3.7重量%であった。また、得られた複合粒子は、個数平均粒子径が0.78μm、粒子径の変動係数が6.8%であった。
また、得られた複合粒子をXPSの測定によって分析したところ、複合粒子の表面に、VA−086に由来するヒドロキシ基及び酸化スズが存在することが確認された。このことから、スチレン系重合体粒子表面をリンドープ型酸化スズが被覆している要因が、スチレン系重合体粒子表面に存在するヒドロキシ基とリンドープ型酸化スズの酸素原子との間の水素結合である可能性が極めて高いと考えられる。
〔実施例2〕(本発明の一例に係る複合粒子の製造方法)
VA−086の使用量を1.0g(ビニル系単量体としてのスチレン100重量部に対して1.0重量部)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的の粒子を得た。本実施例では、反応系内における粒子の分散安定性が実施例1と比較して劣り、スケールの発生が見られた。
得られた粒子をSEM及びTEMでそれぞれ撮像したところ、得られた粒子は、図5のSEM画像及び図6のTEM画像に示されるように、スチレン系重合体粒子表面がリンドープ型酸化スズで被覆された真球状の複合粒子であることが認められた。また、得られた複合粒子の灰分は、1.0重量%であった。また、得られた複合粒子は、個数平均粒子径が1.25μm、粒子径の変動係数が8.1%であった。
〔実施例3〕(本発明の一例に係る複合粒子の製造方法)
VA−086の使用量を10g(ビニル系単量体としてのスチレン100重量部に対して10重量部)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的の粒子を得た。本実施例では、反応系内における粒子の分散安定性が実施例1と比較して劣り、スケールの発生が見られた。
得られた粒子をSEM及びTEMでそれぞれ撮像したところ、得られた粒子は、図7のSEM画像及び図8のTEM画像に示されるように、スチレン系重合体粒子表面がリンドープ型酸化スズで被覆された真球状の複合粒子であることが認められた。また、得られた複合粒子の灰分は、0.3重量%であった。また、得られた複合粒子は、個数平均粒子径が0.88μm、粒子径の変動係数が3.3%であった。
〔比較例1〕(比較用の製造方法)
VA−086に代えてカチオン性アゾ系重合開始剤である2,2’−アゾビス(プロパン−2−カルボアミジン)・二塩酸(商品名「V−50」、和光純薬工業株式会社製;以下「AIBA」と略記する)を使用したこと以外は実施例2と同様にして、目的の固体生成物を得た。
得られた固体生成物をSEM及びTEMでそれぞれ撮像したところ、得られた固体生成物は、図9のSEM画像及び図10のTEM画像に示されるように、スチレン系重合体粒子とリンドープ型酸化スズの凝集体とがそれぞれ独立して存在するものであり、複合粒子でないことが認められた。また、得られた固体生成物の灰分は、11.7重量%であった。
〔比較例2〕(比較用の製造方法)
VA−086に代えてカチオン性アゾ系重合開始剤であるPEG(ポリエチレングリコール)鎖を有する高分子アゾ系重合開始剤である4,4’−ジアゼンジイルビス(4−シアノペンタン酸)・α−ヒドロ−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)重縮合物(商品名「VPE−0201」、和光純薬工業株式会社製)を使用したこと以外は実施例2と同様にして、目的の固体生成物を得た。
得られた固体生成物をSEM及びTEMでそれぞれ撮像したところ、得られた固体生成物は、図11のSEM画像及び図12のTEM画像に示されるように、非常に多くの凝集物を含むものであり、また、真球状の複合粒子でないことが認められた。また、得られた固体生成物の灰分は、3.4重量%であった。
〔リンドープ型酸化スズ被覆率の測定〕
まず、対照として、スチレン単独重合体及びリンドープ型酸化スズを調製した。
すなわち、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]を使用しないこと以外は実施例1と同様にして、スチレン単独重合体を調製した。
また、リンドープ型酸化スズ粒子のメタノール分散体(商品名「セルナックス(登録商標)CX−S501M」、日産化学工業株式会社製)からメタノールを揮発させることによって、リンドープ型酸化スズを調製した。
これらスチレン単独重合体及びリンドープ型酸化スズと、実施例1〜3で得られた複合粒子について、XPSにより、表面に存在するSn、O、及びCの各元素の存在量を測定した。測定結果を表1に示す。
複合粒子のSn存在量と、スチレン単独重合体のSn存在量及びリンドープ型酸化スズのSn存在量との比較により、複合粒子のリンドープ型酸化スズ被覆率(複合粒子表面における複合酸化物粒子による被覆率)を算出した。より詳細には、スチレン単独重合体のSn存在量が0、リンドープ型酸化スズのSn存在量が29.6at%であるため、複合粒子のSn存在量(at%)をリンドープ型酸化スズのSn存在量29.6at%で除することにより、複合粒子のリンドープ型酸化スズ被覆率として算出した。実施例1の複合粒子のリンドープ型酸化スズ被覆率は70.9%、実施例2の複合粒子のリンドープ型酸化スズ被覆率は34.5%、実施例3の複合粒子のリンドープ型酸化スズ被覆率は4.4%と算出された。
なお、複合粒子に含まれる複合酸化物粒子がリンドープ型酸化スズ以外の複合酸化物からなる場合についても、上記の場合と同様にして複合粒子表面における複合酸化物粒子による被覆率を測定することができる。例えば、複合粒子に含まれる複合酸化物粒子がリン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化亜鉛の粒子である場合、XPSにより複合粒子及び複合酸化物粒子のZn存在量(at%)を測定し、複合粒子のZn存在量(at%)を複合酸化物粒子のZn存在量(at%)で除することにより、複合酸化物粒子による被覆率を算出すればよい。
複合粒子のリンドープ型酸化スズ被覆率を、複合粒子の製造に使用した各原料の使用量、並びに、複合粒子の灰分、個数平均粒子径、及び粒子径の変動係数と共に表3にまとめて示す。
以上の結果から、重合開始剤としてヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤(VA−086)を用いた場合に、真球状のリンドープ型酸化スズ被覆重合体粒子を製造できることが分かった。また、以上の実施例1〜3の結果の比較から、ビニル系単量体100重量部に対するヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤(VA−086)の添加量が10重量部の場合よりもその添加量が1重量部の場合の方が、系内の分散安定性、リンドープ型酸化スズ被覆率、及び灰分が向上し、その添加量が1重量部の場合よりもその添加量が5重量部の場合の方が、系内の分散安定性、リンドープ型酸化スズ被覆率、及び灰分がさらに向上することが分かった。
〔実施例4〕(フィルムの製造方法)
まず、実施例1で得られた複合粒子(リンドープ酸化スズ被覆重合体粒子)を適量のメタノールに分散させることによって、固形分(複合粒子の含有量)が15重量%である、複合粒子のメタノール分散体(リンドープ酸化スズ被覆重合体粒子のメタノール分散体)を調製した。
バインダー樹脂としての水系バインダー樹脂(大同化成工業株式会社製、商品名「E−5221P」、固形分20重量%、ウレタンバインダー)1gに、複合粒子のメタノール分散体1.3g(複合粒子の含有量0.2g)を配合して、均一に分散させて塗工用樹脂組成物を調製した。この塗工用樹脂組成物を50μmのアプリケーターを用いて、基材フィルムとしての厚さ100μmのPETフィルム上に塗布して塗布膜(防眩層)を形成した。70℃の恒温槽で30分間加熱することによりPETフィルム上の塗布膜を乾燥させて、フィルムを得た。
〔実施例5〕(フィルムの製造方法)
水系バインダー樹脂の使用量を0.5gに変更したこと以外は実施例4と同様にして、フィルムを得た。
〔比較例3〕(比較用フィルムの製造方法)
複合粒子のメタノール分散体1.3gに代えてポリピロール被覆樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物の重合体からなる粒子をポリピロールで被覆したもの、国際公開第2012/042918号の実施例4と同様にして得られた平均粒子径5μmの単分散粒子)0.2gを使用し、水系バインダー樹脂に代えて溶剤系バインダー樹脂(大日精化工業株式会社製、商品名「メジウムVM」、固形分33%)1gを使用したこと以外は実施例4と同様にして、フィルムを得た。
実施例4、実施例5、及び比較例3において配合したバインダー樹脂及び添加物の種類及び量を表3に示す。
実施例4、実施例5、及び比較例3で得られたフィルムの帯電性を評価するために、JIS K6911:2006の「5.13 抵抗率」の項に従い、絶縁抵抗計(機器名:ハイ・レジスタンス・メータ、株式会社アドバンテスト製)を用いて、これらフィルムの表面抵抗率(単位:Ω/□)を測定した。
また、実施例4、実施例5、及び比較例3のフィルムの全光線透過率及びヘイズを、それぞれJIS K 7361−1:1997及びJIS K 7136:2000に従い、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、商品名「NDH 2000」)を使用して測定した。以上のフィルムの特性の測定結果を表3に示す。
以上のように、ポリピロール被覆樹脂粒子を用いた比較例3のフィルムは、帯電防止フィルムとして使用できないような高い表面抵抗率1.0×1015Ω/□を有するのに対し、リンドープ型酸化スズ被覆重合体粒子を用いた実施例4及び5のフィルムは、帯電防止フィルムとして使用できるような低い表面抵抗率4.8×1012Ω/□又は1.1×1011Ω/□を有していた。従って、リンドープ型酸化スズ被覆重合体粒子を用いたフィルムが良好な帯電防止性を有しており、帯電防止フィルムとして好適に使用できることが分かった。また、このことからリンドープ型酸化スズ被覆重合体粒子が良好な帯電防止性を有していることが分かった。
また、以上のように、リンドープ型酸化スズ被覆重合体粒子を用いた実施例4及び5のフィルムは、ポリピロール被覆樹脂粒子を用いた比較例3のフィルムと比較して顕著に高い全光線透過率を有していた。従って、リンドープ型酸化スズ被覆重合体粒子を用いたフィルムが高い透明性を有しており、光学用途のフィルム(防眩フィルム等)として好適に使用できることが分かった。また、このことからリンドープ型酸化スズ被覆重合体粒子が良好な透明性を有していることが分かった。
さらに、実施例4及び5のフィルムは、優れた全光線透過率を有するのみならず、比較例3のフィルムと比較して高いヘイズ値を有することから防眩性に優れており、防眩フィルムとして好適に使用できることが分かった。
本発明の複合粒子は、透明性、帯電防止剤、及び光拡散性を有するので、帯電防止剤、防眩フィルムの防眩層に添加される光拡散剤、光拡散体(光拡散フィルム、光拡散板等)に添加される光拡散剤、塗料に添加される艶消し剤、化粧品に添加されるソフトフォーカス効果付与剤等として利用できる。本発明のフィルムは、帯電防止フィルム、防眩フィルム、光拡散フィルム等として利用できる。

Claims (7)

  1. ビニル系単量体の重合体からなる重合体粒子と、前記重合体粒子の表面の少なくとも一部を被覆する複合酸化物粒子とを含み、
    前記複合酸化物粒子が、リン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方からなることを特徴とする複合粒子。
  2. 請求項1に記載の複合粒子であって、
    前記複合粒子表面における前記複合酸化物粒子による被覆率が、4%以上であることを特徴とする複合粒子。
  3. 請求項1又は2に記載の複合粒子であって、
    前記ビニル系単量体が、スチレン系単量体を含むことを特徴とする複合粒子。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の複合粒子であって、
    粒子径の変動係数が、20%以下であることを特徴とする複合粒子。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の複合粒子であって、
    前記複合酸化物粒子の平均一次粒子径が1〜40nmの範囲内であることを特徴とする複合粒子。
  6. ヒドロキシ基を有するアゾ系重合開始剤と、リン及びアンチモンの少なくとも一方でドープされた酸化スズ及び酸化亜鉛の少なくとも一方からなる複合酸化物粒子との存在下で、ビニル系単量体をアルコール系溶媒中で分散重合することを特徴とする複合粒子の製造方法。
  7. 請求項1〜5の何れか1項に記載の複合粒子を含むことを特徴とするフィルム。
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