以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。図1乃至図6は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、本発明の一実施の形態による蓄光部材の一例を示す概略断面図であり、図2は、図1の蓄光部材の概略平面図である。
図1に示すように、蓄光部材1は、第1面11及び当該第1面11に対向する第2面12を有するシート部10と、当該シート部10の第1面11上に設けられたレンズ部20と、シート部10の第2面12に対向するようにして設けられた蓄光パターン層30と、を備えている。図1に示す蓄光部材1では、外光をレンズ部20によって集光して、蓄光パターン層30に含まれる蓄光要素31に多くの光を集中的に吸収させて蓄える。そして、蓄光パターン層30の蓄光要素31が蓄えた光を放出して、蓄光部材1は発光する。以下、このような蓄光部材1をなす各構成要素について詳述していく。
先ず、シート部10及びシート部10の第1面11に配置されたレンズ部20について説明する。シート部10は、第1面11に配置されたレンズ部20を安定して保持すると共に、第1面11側から入射する外光及び第2面12側から入射する蓄光要素31からの光を有効に透過させ、かつレンズ部20と蓄光パターン層30を一定の距離に保つ機能を有している。シート部10は、シート状に形成され、互いに平行な第1面11及び第2面12を有している。このうち、シート部10の第2面12上に蓄光パターン層30が配置されている。本実施の形態では、シート部10の第2面12上に蓄光パターン層30がスクリーン印刷によって形成されている。すなわち、本実施の形態では、シート部10の第2面12に隣接して蓄光パターン層30が形成されている。
一方、シート部10の第1面11には、複数の単位レンズ21を含むレンズ部20が配置されている。レンズ部20は、外光の進路をシート部10のシート面10aに直交する法線へ絞り、蓄光パターン層30の蓄光要素31に光を集める機能を有している。また、レンズ部20は、蓄光パターン層30の蓄光要素31から放出する光を、シート部10側から外部に向かって有効に透過させる機能も有している。
なお、本明細書において、「フィルム」、「シート」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「フィルム」はシートや板と呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、本明細書において、「シート面」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(フィルム状部材、板状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。以下の説明では、シート部10のシート面10aは、シート部10の第1面11及び第2面12と平行となっている。添付の各図において、シート部10の第2面12を、シート部10のシート面10aとして図示する。
レンズ部20は、シート部10の第1面11に配列された複数の単位レンズ21を有している。単位レンズ21は、入射光に対して一定のレンズ作用を及ぼす。すなわち、単位レンズ21は、平行光束の光路を曲げて、焦点Xと呼ばれる点または或る程度の限られた領域を通過させる機能を有している。
図3に、単位レンズ21を拡大して示す。図3に示すように、各単位レンズ21は、シート部10の第1面11から、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndに沿って、第2面12とは反対側に突出している。各単位レンズ21は、法線方向ndに沿ってシート部10の第1面11から最も離間した頂部22と、法線方向ndに沿ってシート部10の第1面11に最も接近した端部23と、を含んでいる。図示する例では、各単位レンズ21は、単位レンズ21の配列方向とシート部10の法線方向ndとの両方に沿った断面(以下、主切断面と呼ぶ)において、楕円乃至円の一部をなす形状を有している。従って、主切断面において、頂部22は、単位レンズ21の輪郭をなす曲線の極大部に位置している。
本実施の形態において、レンズ部20は、凸状シリンドリカルレンズとして構成されている。具体的には、図2に示すように、単位レンズ21は、シート部10のシート面10a内を延びる第1方向d1に沿って配列されている。各単位レンズ21は、当該第1方向d1と交差しシート面10a内を延びる第2方向d2に沿って延びている。本実施の形態では、第1方向d1と第2方向d2とは、直交している。
なお、このようなレンズ部20の単位レンズ21をなす材料及びシート部10をなす材料は、光を多く透過することができるよう、透明性の高い材料が好ましい。単位レンズ21をなす材料として、例えば、紫外線硬化樹脂を用いることができ、具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を用いることができる。一方、シート部10のなす材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネートを用いることができる。また、レンズ20及びシート部10は、別材料により形成されている必要はなく、また、別個の部分として形成されている必要もない。例えば、レンズ20及びシート部10が同一の材料から一体的に形成され、レンズ20及びシート部10の間に物理的な界面が存在しなくてもよい。
このレンズ部20の単位レンズ21の配列に対応した所定のパターンにて、蓄光パターン層30が形成されている。上述のように、蓄光パターン層30は、シート部10の第2面12にスクリーン印刷によって形成されている。図3に示すように、蓄光パターン層30は、単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む各領域30aと、単位レンズ21の端部23に対面する位置を含む各領域30bと、に区分することができる。言い換えると、領域30aは、シート部10の法線方向ndからみて、単位レンズ21の頂部22と重なる位置を含む領域であり、領域30bは、シート部10の法線方向ndからみて、単位レンズ21の端部23と重なる位置を含む領域である。本実施の形態の蓄光パターン層30は、各単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aにそれぞれ配置された蓄光要素31を含んでいる。そして、各蓄光要素31は、単位レンズ21の端部23に対面する位置を含む領域30bには配置されていない。すなわち、各蓄光要素31は、単位レンズ21の端部23に対面する位置とはずれた位置に配置されている。
図1及び図3に示すように、各蓄光要素31は、シート部10の第2面12に対面している。蓄光要素31は、レンズ部20側を向く面を構成する表発光面31aと、当該表発光面31aと対向する裏発光面31bと、を含んでいる。この場合、表発光面31aが、シート部10の第2面12に対面している。
とりわけ、本実施の形態の蓄光要素31は、図1に二点鎖線で示すように、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndに沿った平行光束LF1が、シート部10とは反対側からレンズ部20に入射したと仮定した場合に、当該レンズ部20を透過した光束が通過する範囲内に配置されている。すなわち、蓄光要素31は、対面する単位レンズ21の端部23の各位置と焦点Xとを結ぶ多数の直線によって形成される面に囲まれる領域内に配置されている。
上述のように、レンズ部20の複数の単位レンズ21は、第1方向d1に沿って並べて配置され、当該第1方向d1と交差する第2方向d2に沿って延びている。本実施の形態の複数の蓄光要素31は、単位レンズ21の配列に対応して配列されている。従って、図2に示すように、複数の蓄光要素31は、第1方向d1に沿って間隔を空けて並べて配置され、第2方向d2に沿って延びている。なお、図2に示すように、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndからみて、蓄光要素31は、多角形、具体的には矩形の形状を有している。もっとも、このような例に限定されず、蓄光要素31は、楕円形や円形であってもよい。
ところで、図3に示すように、シート部10の法線方向ndにおいて、蓄光パターン層30は、レンズ部20の焦点Xとシート部10の第1面11との間に位置している。言い換えると、各単位レンズ21の頂部22から蓄光要素31までの距離a1は、当該単位レンズ21の焦点距離fよりも短くなっている。ここで、焦点距離fとは、単位レンズ21の頂部22から焦点Xまでの距離をいう。なお、焦点Xはレンズの収差の影響で一点に定まらないことがある。この場合には、シート部10の主切断面において、一つの単位レンズ21に入射した平行光束LF1が、当該単位レンズ21を透過した後に通過するようになる範囲の幅(光束の断面積)が、最も狭くなる位置に焦点Xが存在するとみなし、焦点距離fを導き出すこととする。
このような蓄光要素31をなす材料として、例えば、光を蓄えて発光する性質をもつ蓄光顔料を用いることができる。蓄光顔料としては、硫黄系の顔料や酸化物系の顔料を用いることができる。また、この蓄光顔料を樹脂等で被覆してもよいし、シランカップリング剤で表面処理をしてもよい。また、蓄光顔料の平均粒径は、例えば、1μm〜1000μm程度からなり、典型的には10μm〜500μm程度のものが用いられる。蓄光顔料の平均粒径が大きいほど、燐光特性がよい。蓄光顔料の平均粒径が小さくなると、蓄光材料の取り扱い性が向上する。なお、蓄光顔料の平均粒径とは、各々の蓄光顔料の最長径の平均を意味する。
また、図1に示すように、蓄光部材1は、蓄光パターン層30の、シート部10とは反対側に設けられた反射層50と、拡散層50と蓄光パターン層30との間に配置された透明基材45と、蓄光パターン層30が形成されたシート部10と透明基材45との間に配置された接合層40と、を備えている。
このうち、接合層40は、蓄光パターン層30の蓄光要素31を被覆するとともに、反射層50を透明基材45を介してシート部10の第2面12に接合させている。本実施の形態では、接合層40は、蓄光パターン層30が形成されたシート部10の第2面12を覆っている。接合層40をなす材料は、光を多く透過することができるよう、透明性の高い材料が好ましい。このような接合層40をなす材料として、例えばアクリル系の接合剤を用いることができる。
一方、反射層50は、接合層40及び透明基材45を間に介在させて蓄光パターン層30に対して離間している。反射層50は、蓄光要素31から放出される光のうち、レンズ部20とは反対側に向かう光を反射してレンズ部20側に戻すために設けられている。このような反射層50は、例えば、少なくとも蓄光パターン層30側に面する表面又は全体が白色粒子や金属からなる高反射率の層によって形成され得る。また、反射層50は、光を鏡面反射させる層として形成されてもよいし、光を拡散反射させる層として形成されてもよい。本実施の形態の反射層50は、透明基材45に拡散剤を塗布することによって形成されている。
次に、以上のような蓄光部材1の作用について説明する。先ず、蓄光部材1が蓄光する作用について、図3を参照して説明し、続いて、蓄光部材1が発光する作用について、図4を参照して説明する。
図3は、単位レンズ21に入射した光が集光される様子を示す部分断面図である。図3に示すように、レンズ部20の単位レンズ21に種々の方向から外光が入射する。単位レンズ21に入射した外光は、全体的な傾向として、レンズの集光作用により焦点Xに向けて絞り込まれる。焦点Xは、単位レンズ21の頂部22に対面する領域に位置する。このため、単位レンズ21に入射した外光は、単位レンズ21の頂部22に対面する領域に集光され、単位レンズ21の端部23に対面する領域には集まり難くなる。本実施の形態では、蓄光要素31は、単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aに配置されている。このため、単位レンズ21で進行方向を変化させた外光は、蓄光要素31に向かうようになり、蓄光要素31に多くの光を蓄えることが可能となる。結果として、蓄光要素31から発光される光の発光強度を高めることができる。また、蓄光要素31に多くの外光を集めることができるため、蓄光要素31の蓄光が短時間で完了する、というメリットもある。
とりわけ、本実施の形態では、単位レンズ21の頂部22から蓄光要素31までの距離a1は、当該単位レンズ21の焦点距離fよりも短くなっている。従って、後述の図7(b)のシミュレーションで示すように、より多くの光を安定して蓄光要素31に蓄えることができ、結果として、蓄光要素31から発光される光の発光強度をさらに高めることができる。
さらに、本実施の形態では、図1に二点鎖線で示すように、蓄光要素31は、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndに沿った平行光束LF1が、シート部10とは反対側からレンズ部20に入射した場合に、当該レンズ部20を透過した光が通過する範囲内に配置されている。この場合、蓄光要素31を、平行光束LF1からなる外光が集光される領域に配置することができる。このため、蓄光要素31が平行光束LF1からなる外光を効果的に吸収して蓄えることができる。
上述のように、蓄光要素31は、単位レンズ21の端部23に対面する位置を含む領域30bには配置されていない。単位レンズ21に入射する外光の一部には、光量としては少ないものの、単位レンズ21で屈折して、蓄光パターン層30の領域30bを通過する成分もある。このような光も、反射層50で反射されて蓄光パターン層30側に戻される。これにより、戻された光を蓄光要素31に吸収させて蓄えることができるため、より多くの光を蓄光要素31に蓄えることができる。
次に、蓄光部材1が発光する作用について、図4を参照して説明する。図4は、蓄光要素31が発光する様子を示す部分断面図である。図4に示すように、蓄光要素31が発光すると、表発光面31aからレンズ部20側に向かう光が放出され、裏発光面31bからレンズ部20とは反対側に向かう光が放出される。このうち、蓄光要素31の表発光面31aから放出される光は、いずれかの単位レンズ21に入射する。本実施の形態では、蓄光パターン層30がシート部10の第2面12に対向しており、蓄光要素31は、単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aに配置されている。表発光面31aから放出される光は、一般的に、シート部10の法線方向ndに輝度のピークをもつ。このため、蓄光要素31の表発光面31aから放出される光の多くは、当該蓄光要素31と対面する単位レンズ21に入射する。蓄光要素31と対面する単位レンズ21に入射する光は、単位レンズ21の表面に対する入射角があまり大きくならないため、単位レンズ21で全反射することなく外部に透過していくことができる。このため、表発光面31aから放出される光の多くは、対面する単位レンズ21で屈折して外部に透過していく。
とりわけ、本実施の形態では、単位レンズ21の頂部22から蓄光要素31までの距離a1は、当該単位レンズ21の焦点距離fよりも短くなっている。この場合、表発光面31aから放出されるより多くの光が、当該蓄光要素31と対面する単位レンズ21に入射する。この光は、単位レンズ21の表面の任意の位置で入射角があまり大きくならないため、単位レンズ21で全反射することなく外部に透過していくことができる。このため、表発光面31aから放出されるより多くの光が、単位レンズ21で屈折して外部に透過していく。
一方、蓄光要素31の裏発光面31bから放出される光は、蓄光パターン層30と離間して配置された反射層50で反射してレンズ部20側に戻される。上述したように、蓄光要素31は、単位レンズ21の端部23に対面する位置を含む領域30bには配置されていない。従って、反射層50で反射した光の一部は、蓄光パターン層30の領域30bを通過して、レンズ部20の単位レンズ21に入射する。一方、反射層50で反射したその他の光は、蓄光要素31に吸収されたり、蓄光要素31で反射されて再び反射層50に向かう。
以上のように、本実施の形態によれば、シート部10の第1面11に設けられた複数の単位レンズ21を含むレンズ部20と、シート部10の第2面12に対向するようにして設けられた蓄光パターン層30と、を備え、蓄光パターン層30は、各単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aにそれぞれ配置された蓄光要素31を含んでいる。単位レンズ21に入射する外光は、全体的な傾向として、レンズの集光作用により焦点Xに向けて絞り込まれるようになる。このとき、焦点Xは、単位レンズ21の頂部22に対面する領域に位置する。従って、単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aに配置された蓄光要素31に、多くの外光を集中的に集めることができる。これにより、蓄光要素31に多くの光を効率的に蓄えることができ、結果として、蓄光要素31から発光される光の発光強度を高めることができる。このように、本実施の形態によれば、多くの外光が集光される領域に蓄光要素31を選択的に配置しているため、蓄光材料を効率よく利用することができる。一方、蓄光要素31が発光すると、レンズ部20側に向かう光が放出される。本実施の形態では、蓄光パターン層30がシート部10の第2面12に対向しており、蓄光要素31が単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aに配置されているため、蓄光要素31に対面する単位レンズ21にある程度多くの光が入射する。この光は、単位レンズ21での入射角があまり大きくならないため、単位レンズ21で反射することなく外部に透過していくことができる。従って、蓄光要素31から放出されるある程度多くの光が単位レンズ21を透過していくため、蓄光要素31から発光される光を効率よく取り出すことができる。
とりわけ本実施の形態では、単位レンズ21の頂部22から蓄光要素31までの距離a1は、当該単位レンズ21の焦点距離fよりも短くなっている。このため、蓄光要素31が、単位レンズ21の頂部22に対面する領域に集光される外光の多くを安定して吸収して蓄えることができる。結果として、蓄光材料をさらに効率よく利用することができる。また、蓄光要素31が発光すると、蓄光要素31からレンズ部20側に放出される光が、当該蓄光要素31と対面する単位レンズ21に安定して入射する。この光は、単位レンズ21の表面の任意の位置で入射角が大きくならないため、単位レンズ21で全反射することなく外部に透過していく。従って、蓄光要素31から放出されるより多くの光が単位レンズ21を透過していくため、蓄光要素31から発光される光をさらに効率よく取り出すこともできる。
また、本実施の形態によれば、各蓄光要素31は、単位レンズ21の端部23に対面する位置とはずれた位置に配置されている。すなわち、各蓄光要素31は、単位レンズ21の端部23に対面する位置を含む領域30bには配置されていない。上述のように、単位レンズ21に入射した外光は、単位レンズ21で屈折して単位レンズ21の端部23に対面する領域には集まり難い。このため、単位レンズ21の端部23に対面する位置を含む領域30bに蓄光要素31を設けないことによって、蓄光材料をさらに効率よく利用することができる。
また、本実施の形態によれば、蓄光パターン層30の、シート部10とは反対側に、反射層50が設けられている。この場合、単位レンズ21に入射する外光の一部が、蓄光パターン層30の蓄光要素31が設けられていない領域30bを通過すると、反射層50で反射されて蓄光パターン層30側に戻される。これにより、戻された光を蓄光要素31に吸収させて蓄えることができるため、より多くの光を蓄光要素31に蓄えることができる。また、蓄光要素31が発光すると、レンズ部20とは反対側に向かう光も蓄光要素31から放出される。この光は、蓄光パターン層30と離間して配置された反射層50で反射する。反射した光の一部は、蓄光パターン層30の蓄光要素31が設けられていない領域30bを通過して、レンズ部20の単位レンズ21に入射する。これにより、蓄光要素31から放出されるより多くの光が単位レンズ21を透過することができるため、蓄光要素31から発光される光をさらに効率よく取り出すことができる。
また、本実施の形態によれば、レンズ部20は、第1方向d1に沿って配列され、当該第1方向d1と交差する第2方向d2に沿って延びる複数の単位レンズ21を含むシリンドリカルレンズである。加えて、蓄光要素31は、第1方向d1に沿って間隔を空けて並べて配置され、第2方向d2に沿って延びている。この場合、蓄光要素31を第2方向d2に帯状に延びるように設けることができるため、比較的粒径の大きい蓄光顔料からなる蓄光要素31であっても、比較的容易に作製することができる。
ここで、図5に、上述した蓄光部材1を標示器2に利用した例を示す。図5に示すように、蓄光部材1は、発光する発光領域3と、当該発光領域3の周りに配置された非発光領域4と、を有している。標示器2は、発光領域3または非発光領域4の輪郭で、特定の情報を表示するようになっている。図5に示す例において、標示器2の示す情報は、「非常口」という文字情報である。この場合、上述した蓄光部材1は、発光領域3内に配置される。この使用例によれば、表示領域2が示す情報をむらのない明るさで表示することができる。
≪変形例≫
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
上述した実施の形態において、同一形状を有する単位レンズ21がシート部10の第1面11に隙間なく並べられている例を示したが、これに限られない。例えば、異なる形状を有する単位レンズが、シート部10の第1面11に配列されていてもよい。また、単位レンズが、隙間を空けて、シート部10の第1面11に配列されていてもよい。
また、上述した実施の形態において、蓄光パターン層30がシート部10の第2面12に印刷されている例を示したが、これに限られない。例えば、反射層50が積層された透明基材45に蓄光パターン層が形成されていてもよい。図10乃至図17を参照して蓄光パターン層30の他の形成方法について説明する。図10乃至図17は、蓄光パターン層30の他の形成方法を説明するための図である。
このうち、図10乃至図13に示す例では、シート部10の第2面12に、蓄光要素31の配置に対応して複数の凹部13が形成されている。各蓄光要素31は、対応する凹部13の少なくとも一部内に位置している。各蓄光要素31を対応する凹部13の少なくとも一部内に位置させることにより、凹部13が形成されたシート部10によって蓄光要素31を保持することができる。これにより、蓄光要素31を安定して配置することができ、蓄光要素31の厚みを大きくすることが可能となる。
図10乃至図13に示すように、各凹部13は、シート部10の第2面12の他の部分よりも、シート部10への法線方向ndに沿って凹んでいる。上述のように、凹部13は、蓄光要素31の配置に対応している。したがって、各凹部13は、各々に対応する単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域に配置されている。また、複数の凹部13は、第1方向d1に沿って間隔を空けて並べて配置され、第2方向d2に沿って延びている。また、凹部13は、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndからみて、蓄光要素31と同様な形状、つまり矩形の形状を有している。もっとも、このような例に限定されず、凹部13は、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndからみて、楕円形や円形であってもよい。
このような凹部13が形成されたシート部10は、シート部10をなすようになる樹脂材料を、凹部を賦型するための凸部が形成された型に流し込むことにより形成することが可能である。この場合、凹部13を精度良くシート部10に形成することができる。このような製法として、例えば、樹脂材料を型から押し出す押出成形、樹脂材料を型に流し込んで熱を加える熱プレス成形、あるいは、樹脂材料を型に射出する射出成形が挙げられる。
このような凹部13内に蓄光要素31が配置されている。上述のように、各蓄光要素31を対応する凹部13内に位置させることにより、蓄光要素31の厚みを大きくすることが可能となる。ここで、蓄光要素31の厚み、言い換えると、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndに沿った蓄光要素31の長さは、一例として、10μm以上500μm以下に設定される。蓄光要素31は、厚みが厚いほど発光強度が高まり、蓄光部材が示す情報の視認性を確保することに寄与する。一方で、蓄光材料は、顔料を多く含むため比較的脆くて剥がれ易いことから、厚みを厚く形成することが難しい。例えば、蓄光要素31を平坦な面に載置した場合、蓄光要素31の厚みを重ね塗りを除いて1回の塗工で100μm以上に形成することは困難である。一方、図10乃至図13に示す例では、蓄光要素31は、凹部13内でシート部10に保持される。このため、平坦な面に載置した場合では得られないような、100μm以上の厚みをもつ蓄光要素31であっても、安定して形成することができる。すなわち、凹部13内に蓄光要素31を配置して蓄光要素31の厚みを100μm以上とすることにより、蓄光要素31が高い発光強度を示し、蓄光部材1が示す情報の視認性を大幅に高めることに寄与する。ただし、蓄光要素31の厚みが500μmを越えると、厚みが増加した分の材料コストに見合うだけの蓄光要素31の発光強度の向上効果を得難くなる。好ましくは、蓄光要素31の厚みは、300μm以下に設定される。この場合、比較的材料コストを抑えた上で蓄光要素31の高い発光強度を得ることができる。
一方、凹部13の深さは、蓄光要素31の厚みを上述の範囲に設定するべく、例えば、10μm以上500μm以下に設定される。
蓄光要素31を凹部13の少なくとも一部内に位置させる具体的な形態として、図10乃至図13に示す形態が挙げられる。このうち、図10に示す例では、各蓄光要素31は、対応する凹部13を隙間なく埋めるようにして配置されている。このような蓄光要素31は、シート部10の凹部13内に充填した蓄光材料をスキージで掻き取った後熱硬化させることにより、得られる。典型的には、凹部13内に充填された蓄光材料は、熱硬化収縮を伴い、熱硬化した蓄光材料は、熱硬化前の蓄光材料よりも体積が小さくなる。このため、図10に示す蓄光要素31を得るためには、熱硬化した蓄光材料が配置された凹部13内に、さらなる蓄光材料を充填させて、熱硬化収縮した分だけ補償する必要がある。
一方、図11に示す例では、各蓄光要素31は、対応する凹部13の一部を埋めるようにして配置されている。このような蓄光要素31は、シート部10の凹部13内に充填した蓄光材料をスキージで掻き取った後熱硬化させることにより、得られる。上述のように、凹部13内に充填された蓄光材料は、典型的には、熱硬化収縮を伴い、熱硬化した蓄光材料は、熱硬化前の蓄光材料よりも体積が小さくなる。このため、熱硬化した蓄光材料は、図11に示すように、凹部13の一部を埋める。
また、図12に示す例では、各蓄光要素31は、対応する凹部13を隙間無く埋め、且つ、当該凹部13から突出している。隣り合う蓄光要素31の凹部13から突出した部分の間となる領域に、平坦化層60が位置し当該領域を埋めている。ただし、図12に示す例では、平坦化層60は、各蓄光要素31を覆っていない、言い換えると、シート部10への法線方向ndにおいて各蓄光要素31からずれた位置に配置されている。隣り合う蓄光要素31の凹部13から突出した部分の間となる領域を平坦化層60で埋めることにより、蓄光要素31が配置されたシート部10を、反射層50が積層された透明基材45に安定して接合させることができる。
図12に示す蓄光部材1を作製するためには、先ず、シート部10の凹部13内に蓄光材料をインクジェット印刷にて充填し熱硬化させる。蓄光材料が熱硬化することにより、蓄光要素31が得られる。その後、隣り合う蓄光要素31の凹部13から突出した部分の間となる領域を、例えばシート部10をなす材料と同じ材料で埋める。これにより、平坦化層60を形成することができる。
また、図13に示す例では、各蓄光要素31は、対応する凹部13を隙間無く埋め、且つ、当該凹部13から突出している。そして、シート部10の第2面12との間で蓄光要素31を間に挟むようにして、シート部10の第2面12に平坦化層60が積層されている。したがって、平坦化層60は、各蓄光要素31を覆っている。さらに、平坦化層60は、隣り合う蓄光要素31の凹部13から突出した部分の間となる領域に位置し、当該領域を埋めている。蓄光要素31が配置されたシート部10の第2面12に平坦化層60を積層することにより、蓄光要素31が配置されたシート部10を、反射層50が積層された透明基材45に安定して接合させることができる。
図13に示す蓄光部材1を作製するためには、先ず、シート部10の凹部13内に蓄光材料をインクジェット印刷にて充填し熱硬化させる。蓄光材料が熱硬化することにより、蓄光要素31が得られる。その後、蓄光要素31が配置されたシート部10の第2面12に、例えばシート部10をなす材料と同じ材料を積層させる。これにより、平坦化層60が得られる。
一方、図14乃至図17に示す例では、シート部10の第2面12との間で蓄光要素31を挟むようにして、シート部10に接合層40を介して積層された透明基材45を備えている。透明基材45のシート部10側を向く面45aには、蓄光要素31に対応して複数の凹部46が形成されている。各蓄光要素31は、対応する凹部46の少なくとも一部内に位置している。各蓄光要素31を対応する凹部46の少なくとも一部内に位置させることにより、凹部46が形成された透明基材45によって蓄光要素31を保持することができる。これにより、蓄光部材1に蓄光要素31を安定して設けることができ、蓄光要素31の厚みを大きくすることが可能となる。
各凹部46は、透明基材45のシート部10側を向く面45aの他の部分よりも、シート部10への法線方向ndに沿って凹んでいる。上述のように、凹部46は、蓄光要素31の配置に対応している。したがって、各凹部46は、各々に対応する単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域に配置されている。また、複数の凹部46は、第1方向d1に沿って間隔を空けて並べて配置され、第2方向d2に沿って延びている。また、凹部46は、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndからみて、蓄光要素31と同様な形状、つまり矩形の形状を有している。もっとも、このような例に限定されず、凹部46は、シート部10のシート面10aに対する法線方向ndからみて、楕円形や円形であってもよい。
このような凹部46が形成された透明基材45は、透明基材45をなすようになる樹脂材料を、凹部を賦型するための凸部が形成された型に流し込むことにより形成することが可能である。この場合、凹部46を精度良く透明基材45に形成することができる。このような製法として、例えば、上述した押出成形、熱プレス成形、あるいは、射出成形が挙げられる。
このような凹部46内に蓄光要素31が配置されている。図10乃至図13に示す形態と同様に、蓄光要素31の厚みは、一例として、10μm以上500μm以下に設定される。蓄光要素31の厚みを100μm以上とすることにより、蓄光要素31が高い発光強度を示し、蓄光部材1が示す情報の視認性を大幅に高めることに寄与する。一方、蓄光要素31の厚みを500μm以下に設定することにより、材料コストに見合うだけの蓄光要素31の発光強度の向上効果を得ることができる。好ましくは、蓄光要素31の厚みは、300μm以下に設定される。この場合、比較的材料コストを抑えた上で蓄光要素31の高い発光強度を得ることができる。なお、凹部46の深さは、蓄光要素31の厚みを上述の範囲に設定するべく、例えば、10μm以上500μm以下に設定される。
蓄光要素31を凹部46の少なくとも一部内に位置させる具体的な形態として、図14乃至図17に示す形態が挙げられる。このうち、図14に示す例では、各蓄光要素31は、対応する凹部46を隙間なく埋めるようにして配置されている。一方、図15に示す例では、各蓄光要素31は、対応する凹部46の一部を埋めるようにして配置されている。
また、図16に示す例では、各蓄光要素31は、対応する凹部46を隙間無く埋め、且つ、当該凹部46から突出している。隣り合う蓄光要素31の凹部46から突出した部分の間となる領域に、平坦化層60が位置し当該領域を埋めている。ただし、図16に示す例では、平坦化層60は、各蓄光要素31を覆っていない、言い換えると、シート部10への法線方向ndにおいて各蓄光要素31からずれた位置に配置されている。
他方で、図17に示す例では、各蓄光要素31は、対応する凹部46を隙間無く埋め、且つ、当該凹部46から突出している。そして、透明基材45のシート部10側を向く面45aとの間で蓄光要素31を間に挟むようにして、透明基材45のシート部10側を向く面45aに平坦化層60が積層されている。したがって、平坦化層60は、各蓄光要素31を覆っている。さらに、平坦化層60は、隣り合う蓄光要素31の凹部46から突出した部分の間となる領域に位置し、当該領域を埋めている。
図16及び図17に示すように、蓄光部材1に平坦化層60が設けられていることにより、蓄光要素31が配置された透明基材45を、レンズ部20が配列されたシート部10に安定して接合させることができる。
なお、図14乃至図17に示す蓄光要素31を透明基材45に形成された凹部46内に形成する方法は、それぞれ、上述した図10乃至図13に示す蓄光要素31をシート部10に形成された凹部13内に形成する方法と略同様なため、ここではこれ以上の説明を省略する。
図10乃至図17に示す蓄光部材1は、シート部10の第1面11に設けられた複数の単位レンズ21を含むレンズ部20と、シート部10の第2面12に対向するようにして設けられた蓄光パターン層30と、を備え、蓄光パターン層30は、各単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域にそれぞれ配置された蓄光要素31を含んでいる。したがって、図10乃至図17に示す蓄光部材1は、当然に、図1に示す蓄光部材1と同様な作用効果を奏することができる。
また、上述した実施の形態において、レンズ部20がシリンドリカルレンズからなる例を示したが、これに限られず、種々の既知の構成をレンズ部に適用することができる。図6に、レンズ部20がレンズアレイからなる例を示す。レンズアレイは、フライアイレンズや蝿の目レンズとも呼ばれ、平面上の異なる二以上の方向のそれぞれに、規則的な間隔または非規則的(ランダム)な間隔で、二次元配列された多数の単位レンズ21を有する。各単位レンズ21は、シート部10の法線方向ndに平行な断面において、例えば、円の一部分または楕円の一部分に相当する形状を有している。図6に示すように、任意の1つの単位レンズ21は、その周りを6つの単位レンズ21に囲まれている。また、任意の1つの単位レンズ21の底面に相当する円の中心とその周りの6つの単位レンズ21の底面に相当する円の中心の各々との距離は、互いに等しくなっている。フライアイレンズを構成するレンズ部20によれば、二つの方向、例えば直交する二方向において光の進路方向を偏向して集光することができる。
このレンズ部20の単位レンズ21の配列に対応して蓄光パターン層30がパターニングされている。図6に示す例では、複数の蓄光要素31は、単位レンズ21の配列に対応して二次元配列されている。このような形態であっても、本実施の形態と同様な作用効果を奏することができる。
次に、本件発明者が行ったシミュレーション結果を説明する。先ず、外光が集光される場合のシミュレーション結果について、図7(a)、(b)を参照して説明し、続いて、蓄光要素が発光する場合のシミュレーション結果について、図8(a)、(b)、(c)及び図9(a)、(b)、(c)を参照して説明する。
図7(a)、(b)は、蓄光部材1を示す部分断面図であって、蓄光部材1の単位レンズ21に入射した光が集光される様子をシミュレーションした結果を説明するための図である。このうち、図7(a)は、単位レンズ21に平行光を入射した場合を示し、図7(b)は、シート部10の法線方向ndを中心として当該法線方向に対して45°傾斜した範囲内の各方向から光が単位レンズ21に入射した場合を示す。図7(a)及び(b)に示すシミュレーションモデルでは、図1から図4を参照して説明したシート部10及びレンズ部20の構成と同一の構成とした。
シミュレーションモデルでは、単位レンズ21は、主切断面において半円をなす形状とし、その半径を0.5mmとした。隣り合う単位レンズ21の頂部22の間隔、すなわち単位レンズ21のピッチを1.0mmとした。そして、レンズ部20及びシート部10の屈折率を1.5とした。単位レンズ21の焦点距離fは、1.25mmとなる。
以上のモデルに対して、次の条件で光が集光される様子をシミュレーションした。図7(a)に示すモデルでは、単位レンズ21に平行光を入射した場合を想定した。図7(a)に示すように、単位レンズ21に入射した平行光束は、単位レンズ21で屈折して、焦点Xに向けて絞り込まれた。言い換えると、単位レンズ21に入射した平行光束をなす各光は、単位レンズ21での屈折により、焦点Xを通るように進行方向を変化させられた。焦点Xは、端部23に対面する領域ではなく、単位レンズ21の頂部22に対面して位置していた。従って、単位レンズ21に平行光束が入射する場合、単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aに、蓄光要素31を配置することにより、蓄光要素31に多くの外光を集めることができる。なお、単位レンズ21に入射した平行光束は、端部23に対面する位置にはあまり集まらなかった。
一方、図7(b)に示すモデルでは、シート部10の法線方向ndを中心として当該法線方向ndに対して両側に45°傾斜した角度範囲内の各方向から、すなわち、法線方向を中心とした90°の角度範囲内の各方向から光が、単位レンズ21に入射した場合を想定した。図7(b)に示すように、単位レンズ21に入射した外光は、単位レンズ21で屈折して焦点Xに向けて絞り込まれた。広範囲の方向から外光が単位レンズ21に入射するため、単位レンズ21で屈折した光が通過する範囲はある程度拡がりがあった。ただしこの場合であっても、単位レンズ21の頂部22に対面する領域に位置する焦点Xに光が集光され、単位レンズ21の端部23に対面する領域には光が集光され難い、という結果が得られた。従って、単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aに、蓄光要素31を配置することにより、蓄光要素31に多くの外光を集めることができる。
とりわけ、多くの光が、単位レンズ21の頂部22からの距離が当該単位レンズ21の焦点距離fよりも短く且つ当該頂部22に対面する領域を、集中的に通過した。一方、法線方向ndにおいて焦点Xと近接する範囲において、単位レンズ21の端部23に対面する領域には特に光が通らなかった。従って、単位レンズ21の頂部22に対面する位置を含む領域30aであって、且つ、単位レンズ21の頂部22からの距離が当該単位レンズ21の焦点距離fよりも短くなる領域に、蓄光要素31を配置することにより、蓄光要素31により多くの外光を集めることができる。
なお、図7(b)に示すモデルでは、シート部10の法線方向ndを中心として当該法線方向ndに対して両側に45°傾斜した角度範囲内の各方向から、光が単位レンズ21に入射する例を示した。このような入射光の想定は、蓄光部材1の一般的な使用における当該蓄光部材1への外光の入射を十分適切に反映している。現実には、蓄光部材1の単位レンズ21に入射する光は、シート部10の法線方向ndに対して45°よりも大きく傾斜する方向からの光も含んでいる。しかしながら、このような光で蓄光要素31に到達する光は微量であり、蓄光要素31に僅かにしか蓄えられない。このため、シート部10の法線方向ndに対して45°を越えた角度だけ傾斜した方向からの入射光を無視したとしても、実際の使用での蓄光部材1への入射光を十分に正確にシミュレーションすることができる。
次に、蓄光要素31が発光する場合のシミュレーション結果について、図8(a)、(b)、(c)及び図9(a)、(b)、(c)を参照して説明する。図8(a)、(b)、(c)及び図9(a)、(b)、(c)は、蓄光部材の部分断面を示している。図8(a)、(b)、(c)は、法線方向ndに沿って単位レンズ21の焦点Xよりも単位レンズ21に近い位置に配置された蓄光要素31内の或る位置(すなわち、或る点)で発光した光についてのシミュレーション結果を示している。図9(a)、(b)、(c)は、法線方向ndにおいて焦点Xと同じ位置に配置された蓄光要素31内の或る位置(すなわち、或る点)で発光した光についてのシミュレーション結果を示している。このうち、図8(a)及び図9(a)に示された結果は、シミュレーション対象となる光の発光点が法線方向ndに沿って単位レンズ21の頂部22に対面している場合を示している。図8(b)及び図9(b)に示された結果は、シミュレーション対象となる光の発光点が法線方向ndに沿って単位レンズ21の端部23に対面している場合を示している。図8(c)及び図9(c)に示されたシミュレーション結果で対象としたモデルは、シミュレーション対象となる蓄光部材1からレンズ部20を省いた点において、図8(a)及び図9(a)に示されたシミュレーション結果で対象としたモデルと異なり、その他において、図8(a)及び図9(a)に示されたシミュレーション結果で対象としたモデルと同一条件にした。
図8(a)、(b)及び図9(a)、(b)に示されたシミュレーション結果で対象としたモデルは、図7(a)、(b)に示されたシミュレーション結果で対象としたモデルと同一の構成とした。加えて、図8(a)、(b)、(c)に示されたシミュレーション結果で対象としたモデルでは、蓄光要素31として、シート部10の第1面11から0.15mm離れて位置する蓄光要素31内の発光点からの光を対象とした。一方、図9(a)、(b)、(c)に示されたシミュレーション結果で対象としたモデルでは、シート部10の第1面11から0.75mm離れて位置する蓄光要素31内の発光点からの光を対象とした。図8(a)、(b)、(c)及び図9(a)、(b)、(c)に示されたシミュレーション結果で対象としたモデルでは、蓄光要素31内の発光点から等方的に光が射出すると想定した。
以上のモデルに対して、蓄光要素31から発光した光の取出効率をシミュレーションによって算出した。表1に、蓄光要素31から発光した光の取出効率を示す。ここで、蓄光要素31から発光した光の取出効率とは、蓄光要素31から放出された総光量に対して、レンズ部20を透過して外に取り出された光量の割合をいう。また、表1において、図8(a)、(b)、(c)に示すモデルを、それぞれ、「A」、「B」、「C」と表記し、図9(a)、(b)、(c)に示すモデルを、それぞれ、「D」、「E」、「F」と表記した。
図8(a)に示すモデルでは、蓄光要素31の発光点からレンズ部20側に出射した光の大部分は、当該蓄光要素31の発光点に対面する単位レンズ21に入射した。蓄光要素31の発光点は、単位レンズ21の頂部22と焦点Xとの間に位置しているため、この単位レンズ21に入射した光は、単位レンズ21の表面の任意の位置で入射角が臨界角よりも大きくならなかった。このため、単位レンズ21で全反射することなく外部に透過していった。この結果、蓄光要素31から発光される光を最も効率よく取り出すことができた。
図8(b)に示すモデルでは、蓄光要素31の発光点からレンズ部20側に出射した光の多くは、当該発光点に対面する隣接する2つの単位レンズ21のいずれかに入射した。各単位レンズ21に入射した光の多くは、入射角が臨界角よりも大きくなり、単位レンズ21の表面で反射して単位レンズ21を透過することができなかった。この結果、蓄光要素31から発光される光を効率よく取り出すことが最もできなかった。
図8(c)及び図9(c)に示すモデルでは、蓄光要素31の発光点からシート部10の第1面11の各位置へ光が入射した。第1面11の各位置へ入射した光の入射角は、第1面11への入射位置がシート面10aに沿って蓄光要素31の発光点から離れるほど、大きくなった。シート部10の第1面11への入射角が臨界角よりも小さい光は、単位レンズ21で屈折して外部に透過していくが、シート部10の第1面11への入射角が臨界角よりも大きい光は、単位レンズ21の表面で反射して単位レンズ21を透過することができなかった。この結果、図8(c)及び図9(c)に示すモデルの双方とも等しい取出効率の値を示し、蓄光要素31から発光される光を効率よく取り出すことができなかった。
図9(a)に示すモデルでは、蓄光要素31の発光点からレンズ部20側に出射した光は、複数の単位レンズ21に入射した。各単位レンズ21に入射する光の光量は、当該単位レンズ21の位置がシート面10aに沿って蓄光要素31の発光点から離れるほど、低下していった。このため、蓄光要素31の発光点に対面する単位レンズ21に多くの光が入射した。蓄光要素31に対面する単位レンズ21に入射した光は、単位レンズ21の表面の任意の位置で入射角があまり大きくならなかった。このため、単位レンズ21で全反射することなく外部に透過していった。一方、その他の単位レンズ21に入射した光は、単位レンズ21の表面でその一部が反射し、その他の光が単位レンズ21を透過した。全体としては、蓄光要素31から発光される光をある程度効率よく取り出すことができた。
図9(b)に示すモデルでは、蓄光要素31の発光点からレンズ部20側に出射した光は、複数の単位レンズ21に入射した。単位レンズ21に入射する光の光量は、当該単位レンズ21の位置がシート面10aに沿って蓄光要素31の発光点から離れるほど、低下していった。このため、蓄光要素31の発光点と向き合う2つの単位レンズ21に多くの光が入射した。蓄光要素31の発光点と向き合う2つの単位レンズ21のいずれかに入射した光は、単位レンズ21での入射角があまり大きくならなかった。このため、単位レンズ21でほとんど反射することなく外部に透過していった。一方、蓄光要素31と向き合う2つの単位レンズ21以外の単位レンズ21に入射した光は、単位レンズ21の表面でその一部が反射し、その他の光が単位レンズ21を透過した。全体としては、蓄光要素31から発光される光をある程度効率よく取り出すことができた。ただし、図9(b)に示す位置に蓄光要素31を配置した場合、すなわち、単位レンズ21の焦点Xとシート部10の第1面11からの距離が等しく、且つ、単位レンズ21の端部23に対面した位置に、蓄光要素31を配置した場合、蓄光要素31にほとんど外光が集められない(図7(b)参照)。このため、蓄光要素31から発光される光を効率よく取り出すことができても、蓄光要素31から光をほとんど発光することができない。結果として、図9(b)に示す位置に蓄光要素31を配置すると、蓄光材料を効率よく利用することができない。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
以下に説明するようにして、実施例1に係る蓄光部材を作製した。この実施例1は、図1に示す蓄光部材に対応している。
先ず、シリンドリカルレンズからなるレンズ部に対応する形状に切削された金型を準備した。この金型を用いて、PET樹脂からなるシート部の第1面に、紫外線硬化性樹脂からなるレンズ部を賦型した。このとき、レンズ部の単位レンズのピッチを1.0mmとし、単位レンズの半径を0.5mmとした。また、紫外線硬化性樹脂の屈折率は、1.5であった。
次に、スクリーン印刷にて、シート部の第2面に蓄光材料を単位レンズの配列に対応して印刷し、蓄光パターン層を作製した。このとき、蓄光パターン層の蓄光要素の厚みを、100μmとし、蓄光要素の配列方向における寸法、つまり幅を0.5mmとした。また、隣り合う蓄光要素の間の間隔を、0.5mmとした。蓄光材料として、透明な溶剤に蓄光顔料を加えたものを用いた。
続いて、PET樹脂製シートの一方の面の全域に拡散剤を塗布して反射層を作製した。この反射層が積層されたPET樹脂製シートを接合層を介して蓄光パターン層が印刷されたシート部の第2面に貼り合わせた。このとき、PET樹脂製シートは、厚み100μmからなるものを用いた。
[比較例1]
比較例1に係る蓄光部材は、実施例1に係る蓄光部材において、蓄光要素をシート部の第2面の全域に設けた点において、実施例1に係る蓄光部材と異なり、その他において、実施例1に係る蓄光部材と同一に構成した。
このようにして作製された実施例1及び比較例1に係る蓄光部材に、蛍光灯の光を照射して、蓄光要素を蓄光させた。このとき、放射量(放射エネルギー)100.0W/m2で一時間照射した。
その後、各蓄光部材を発光させて、レンズ部を透過した光について、外部に取り出された全光束と、シート部の法線方向における正面輝度(放射輝度)と、を測定した。正面輝度は、(会社名TOPCON)製の輝度計(型番Bm−7)を用いて測定した。全光束は、同じ輝度計を用い、方向を変えながら測定した輝度値から計算で求めた。表2に、測定した全光束及び正面輝度の値を示す。
表2に示すように、実施例1に係る蓄光部材は、比較例1に係る蓄光部材よりも、全光束及び正面輝度の両方において優れていた。従って、実施例によれば、従来よりも少ない蓄光材料を使用して、従来よりも高いシート部の法線方向における輝度及び光束を得ることができた。