以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る電子体温計を示すブロック構成図である。この電子体温計2は、被測定対象である人体4(図3参照)の体表面4A(図3参照)に接触する体温計本体10と、体温計本体10とは別体に設けられる表示装置12とを備えている。
図2は、本実施形態に係る体温計本体10が人体4に装着された状態を示す拡大図であり、また図3は、本実施形態に係る体温計本体10及び表示装置12が装着された状態を示す図である。
先ず、図2に示すように、体温計本体10は、二つ(一対)の温度測定部14A,14Bと、温度測定部14Cを備えている。温度測定部14Aは、人体4の体表面4Aに接触する接触面16Aを有している断熱部18と、断熱部18と外気との間に設けられた第1放熱制御部18Aとを備えている。一方、温度測定部14Bは、温度測定部14Aの接触位置とは異なる位置の体表面4Aに接触する接触面16Bを有している断熱部18と、断熱部18と外気との間に第2放熱制御部18Bを備えている。また、温度測定部14Cは、人体4の体表面4Aに接触する接触面16Cを有している断熱部18を備えている。すなわち、断熱部18は、温度測定部14Aと温度測定部14Bと温度測定部14Cとで共通しており、共通の熱抵抗値を有している。
温度測定部14Aは、体表面4Aの温度を第1体表面温度として測定する第1体表面温度測定手段としての体表面センサー20Aと、断熱部18と第1放熱制御部18Aとの界面22Aの温度を第1参照温度として測定する第1参照温度測定手段(中間温度測定手段)としての中間センサー24Aとを備えている。
また、温度測定部14Bは、体表面4Aの温度を第2体表面温度として測定する第2体表面温度測定手段としての体表面センサー20Bと、断熱部18と第2放熱制御部18Bとの界面22Bの温度を第2参照温度として測定する第2参照温度測定手段(中間温度測定手段)としての中間センサー24Bとを備えている。
さらに、温度測定部14Cは、体表面4Aの温度を第3体表面温度(第3温度)として測定する第3温度測定手段としての補正用体表面センサー20C,20D,20Eを備えている。
これらの温度測定部14A,14B,14Cからなる体温計本体10は、粘着剤などによって接触面16A,16B,16Cが人体4にそれぞれ貼付可能となっており、この粘着剤などにより、体表面4Aに良好な接触圧力で密着できるように構成されている。本実施形態では、体温計本体10は幼児(人体4)の胸部に密着されている。
ここで、体温計本体10の貼付位置は、比較的安定して体表面温度を測定できる額や後頭部、胸部、背中などの部位に設定されることが望ましい。また、体温計本体10の上に衣服を着用していても、体温計本体10が寝具と接触していてもよい。
また、温度測定部14Aの第1放熱制御部18Aと、温度測定部14Bの第2放熱制御部18Bとは異なる材料で構成され、これにより、第1放熱制御部18Aの熱抵抗値と第2放熱制御部18Bの熱抵抗値とは異なる値に設定されている。
体表面センサー20A,20B、補正用体表面センサー20C,20D,20E、及び中間センサー24A,24Bは、体表面4Aの温度及び界面22A,22Bの温度値を抵抗値に変換するものや、温度値を電圧値に変換するものなどが採用できる。なお、温度値を抵抗値に変換するものとしては、チップサーミスターや、サーミスターパターンがプリントされたフレキシブル基板、白金測温抵抗体などが採用できる。また、温度値を電圧値に変換するものとしては、熱電対素子や、PN接合素子、ダイオードなどが採用できる。
また、温度測定部14A,14B,14Cは、体表面センサー20A,20B、補正用体表面センサー20C,20D,20E、及び中間センサー24A,24Bの他に、前述の図1に示されるように、A/D変換器26A,26B,26Cと、送受信手段28A,28B,28Cと、をそれぞれ備えている。なお、温度測定部14A,14B,14Cが一体で形成されているので、A/D変換器26A,26B,26Cを共通のA/D変換器、送受信手段28A,28B,28Cを共通の送受信手段として組み込むことも可能である。
A/D変換器26A,26B,26Cは、体表面センサー20A,20B、補正用体表面センサー20C,20D,20E、及び中間センサー24A,24Bで変換された抵抗値や電圧値のアナログ信号をデジタル信号に変換し、送受信手段28A,28B,28Cに出力する。
送受信手段28A,28B,28Cは、それぞれアンテナコイル30A,30B,30Cを備え、A/D変換器26A,26B,26Cでデジタル信号に変換された温度値(抵抗値や電圧値)の信号を表示装置12側に電波送信する。なお、アンテナコイル30A,30B,30Cも共通のアンテナコイルとすることも可能である。
表示装置12は、図3に示すように、腕時計型で携帯可能に構成されており、体温計本体10を装着した幼児を抱いた操作者6が装着できるようになっている。表示装置12は、前述の図1に示すように、体温計本体10との間で信号を送受信する送受信手段28と、体温の測定結果などを表示する表示部32と、表示装置12を外部から操作する操作部34と、表示装置12の動作を制御する制御手段36と、送受信手段28や制御手段36などから得られた情報を蓄積する記憶部38とを備えている。
送受信手段28は、アンテナコイル30を備え、体温計本体10のアンテナコイル30A,30B,30Cとの間でそれぞれ電波の送受信を行う。また、アンテナコイル30は、アンテナコイル30A,30B,30Cに対して電波を送信することにより、アンテナコイル30A,30B,30Cに電磁誘導によって起電力を発生させ、温度測定部14A,14B,14Cのチャージを行う。このため、体温計本体10はこの起電力によって駆動され、内部に電池などの電源を必要としない。
表示部32は、液晶画面などによって温度情報や操作画面を表示するものであり、例えば測定された体表面温度や、演算された深部体温などが表示可能となっている。本実施形態では腕時計の通常文字板に相当する部分に表示部32が設けられ、操作者6が表示装置12を腕につけた状態で表示部32が視認可能となっている。
操作部34は、ボタンやレバー、キーなどによって外部から表示装置12に情報を入力可能に構成されており、例えば表示部32に表示される画面にしたがってメニューを選択したり、その他被測定者(本実施形態では幼児)の氏名、年齢、体温の測定日時などの情報を入力可能に構成されている。
制御手段36は、補正用体表面センサー20C,20D,20Eからの第3体表面温度Tb5,Tb6,Tb7に基づいて、体表面センサー20A,20Bからの第1体表面温度Tb1、及び第2体表面温度Tb3と、中間センサー24A,24Bからの第1中間温度Tb2及び第2中間温度Tb4を補正する温度補正手段40と、温度補正手段40で補正された第1体表面温度Tb1´及び第2体表面温度Tb3´と、第1中間温度Tb2´及び第2中間温度Tb4´とに基づいて、人体4の深部体温Tcoreを演算する深部体温演算手段42を備えている。
温度補正手段40は、補正用体表面センサー20C,20D,20Eで得られた第3体表面温度Tb5,Tb6,Tb7を用いて体内の温度分布が理想的な場合に比べてどのように変化しているかを知り、その変化分に基づき体温計本体10から送信された体表面温度Tb1,Tb3、及び中間温度Tb2,Tb4を補正する。
深部体温演算手段42は、温度補正手段40で補正された第1体表面温度Tb1´、第1中間温度Tb2´、第2体表面温度Tb3´、及び第2中間温度Tb4´を用いて人体4の深部体温Tcoreを演算する。
図4は、本実施形態に係る人体4及び電子体温計2の温度分布モデルを示す図である。これは、人体4の深部から体表面4A及び体温計本体10を通って外気までの温度分布のモデルを示している。温度測定部14Aと温度測定部14Bとの温度分布モデルについて、実線(温度測定部14A側)と一点鎖線(温度測定部14B側)とで示している。縦軸は温度(T)を、横軸は熱抵抗(R)を示している。ここで、温度(T)と熱抵抗(R)との関係が直線であれば、その傾きは熱流束Qを表す。温度測定部14Aと温度測定部14Bとの温度分布モデルは、同様の振る舞いをするので、以下には、実線で示された温度測定部14A側を中心に説明する。
この図4に示すように、人体4の深部から外気までの温度の伝達モデルにおいては、人体4の深部体温Tcoreは略一定となっている。深部よりも外殻側の表層部では、皮膚の熱抵抗や外気温の影響により体温が下降する。なお、実際には、体表面4Aと温度測定部14Aの接触面16Aとの間には、微視的には隙間が生じているため、この隙間での熱放出(熱抵抗値Rs)により、接触熱抵抗部でも温度が低下する。したがって、実際に温度測定部14Aの体表面センサー20Aで体表面4Aの体温を測定する場合には、この接触熱抵抗部により低下した第1体表面温度Tb1が測定されることとなる。
また、温度測定部14A自体には断熱部18による熱抵抗(熱抵抗値Ru0)が存在するため、温度測定部14A内でも温度の降下が生じ、温度測定部14Aの界面22Aでは第1中間温度Tb2となる。中間センサー24Aでは、この第1中間温度Tb2が測定されることとなる。さらに、温度測定部14Aの界面22Aと外気との間には熱抵抗値Ru1を有する第1放熱制御部18Aが存在しているために温度が低下し、外気温接触部での熱放出(接触部の熱抵抗値Rvによるもの)もあるため、さらに温度が低下して最終的に外気温Tambとなる。
定常状態では、各部における熱流束Qは一定となるため、図4ではグラフの傾きが一定となっている。このとき、温度測定部14Aの第1体表面温度Tb1及び第1中間温度Tb2がわかれば、熱抵抗値Ru0を使って、次の式(1)により温度測定部14Aの体表面センサー20A側の表面から界面22Aまでの熱流束Qu1が算出できる。
一方、表層部及び接触熱抵抗部を合わせた部分、つまり人体4の深部から体表面4Aまでの部分(実際には深部から接触面16Aまでの部分)における熱流束Qs+tは、人体4の深部体温Tcore、及び人体4の深部から体表面4Aまでの部分の熱抵抗Rs+Rtを用いると次の式(2)で表される。
ここで、接触熱抵抗部の熱抵抗値Rtは、接触熱抵抗部に介在する物質の性質による他、体表面4Aに接触する体温計本体10の断熱部18の熱抵抗値によっても変化する。つまり、人体4の熱伝導率をλ1、体温計本体10の熱伝導率をλ2、人体4の表面粗さをδ1、体温計本体10の接触面16Aの表面粗さをδ2、体温計本体10の体表面4Aへの押しつけ圧力をP、人体4及び体温計本体10のうち軟らかい方の硬さをH、体表面4Aと接触面16Aとの間の介在物質の熱伝導率λf、介在物質の表面粗さをδf、定数をcとすると、例えば次の式(3)から求められる。このように、接触熱抵抗部の熱抵抗値Rtは、種々の条件によって変化するので、本実施形態では接触熱抵抗部の熱抵抗値Rtが極力小さくなるように設定されることが望ましく、体表面4Aと接触面16Aとの間に隙間が空かないように設定することが望ましい。なお、接触熱抵抗部の熱抵抗値Rtを小さくする方法としては、例えば体表面4Aと接触面16Aとの接触部分にオイルを塗布するなどして接触状態を良好にする方法などが考えられる。
熱流束Qは各部において一定であるから、体温計本体10内部における熱流束Qu1と、人体4の深部から体表面4Aまでの部分における熱流束Qs+tは等しくなる(Qu1=Qs+t)。したがって、式(1)及び式(2)は、次の式(4)のように整理され、深部体温Tcoreはこの式(4)により求められる。
ここで、人体4の深部から体表面4Aまでの部分における熱抵抗値Rs+Rtは、未知の値である。そこで、温度測定部14Bにおいても、温度測定部14Aと同様に体表面センサー20B及び中間センサー24Bから、第2体表面温度Tb3及び第2中間温度Tb4を得れば、深部体温Tcoreは次の式(5)のように求められる。
第1放熱制御部18Aの熱抵抗値Ru1と第2放熱制御部18Bの熱抵抗値Ru2とは異なる値に設定されているため、温度測定部14Aと温度測定部14Bの熱抵抗(R)に対する温度(T)の傾きが変わる(図4参照)。つまり、熱抵抗と温度に関する異なる二つの関係式が得られる。
式(4)及び式(5)より、熱抵抗値(Rs+Rt)/Ru0を消去すると、深部体温Tcoreは次の式(6)によって求められる。
したがって、深部体温演算手段42には、この式(6)が、深部体温Tcoreの演算式として記憶されている。
記憶部38には、体温計本体10から送信された第1体表面温度Tb1、第2体表面温度Tb3、第1中間温度Tb2、第2中間温度Tb4、第3体表面温度Tb5,Tb6,Tb7が記憶される。また、温度補正手段40で補正された第1体表面温度Tb1´、第2体表面温度Tb3´、第1中間温度Tb2´、及び第2中間温度Tb4´も記憶される。さらに、深部体温演算手段42で演算された人体4の深部体温Tcoreも記憶される。
ここで、記憶部38は、複数の人体4に関する温度情報を記憶可能に構成されており、深部体温Tcoreなどが、人体4ごとに記憶されている。また、記憶部38は、深部体温Tcoreを算出する際に測定した第1体表面温度Tb1及び第2体表面温度Tb3などの測定位置を記憶可能となっている。なお、記憶部38には、前述の温度情報以外にも、例えば被測定者(人体4、幼児)の氏名、年齢、測定日時などの測定情報を記憶させてもよい。この場合に、これらの測定情報は、操作部34から入力されてもよい。
(実施例1)
図5は、本実施例に係る体温計本体10の構造を示す図である。なお、図5(A)は、体温計本体10の斜視図であり、図5(B)は体温計本体10の断面図であり、図5(C)は、補正用体表面センサー20C,20D,20Eの配置例を示す図である。
体温計本体10は、図5(A)に示すように、上面に段差があり、厚さが薄い円筒形状である。体温計本体10は、図5(B)に示すように、温度センサー(薄膜サーミスター)としての体表面センサー20A,20Bと、補正用体表面センサー20C,20D,20Eと、第1及び第2放熱制御部18A,18Bと、を備えている。体温計本体10は、第1放熱制御部18Aの半分の上部に、熱伝導率が異なる別の第2放熱制御部18Bを貼り付けて第1系統44Aと第2系統44Bとで温度分布が異なるように構成されている。深部体温測定用の体表面センサー20A,20B以外に温度分布測定用の複数個の補正用体表面センサー20C,20D,20Eを用いて、皮膚の温度分布を得ている。
温度分布測定用の補正用体表面センサー20C,20D,20Eは、例えば図5(C)に示すように、3個のセンサーを用い1個を体温計本体10の中心に、残りの2個をそれぞれ第1及び第2系統44A,44Bの深部体温測定用の体表面センサー20A,20Bより外側に配置されている。
各部の熱伝導率は、第1体表面温度Tb1と第1中間温度Tb2との間及び第2体表面温度Tb3と第2中間温度Tb4との間の温度差が、精度(ここでは0.1度)以上とれる材料であればよく、例えば、断熱部18の熱伝導率は、0.2〜0.02W/m・K程度であり、第1放熱制御部18Aの熱伝導率は、0.2〜0.02W/m・Kであるが、第1放熱制御部18Aの熱伝導率は断熱部18の熱伝導率よりも低いことが望ましい。
図6は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す図である。なお、図6(A)は、横方向への熱の移動がない温度分布を示し、図6(B)は、実際の温度分布を示し、図6(C)は、横方向への熱の移動の測定を示す。
横方向への熱の移動がない温度分布は、図6(A)に示すように、図の左側の断熱材のない領域ではある一定の温度で分布し、第1放熱制御部18Aのある第1系統44Aでは上昇し、第1及び第2放熱制御部18A,18Bのある第2系統44Bではさらに上昇し、図の右側の断熱材のない領域では一定の温度に戻っている。
実際の温度分布は、図6(B)に示すように、断熱材の有無等の変化点で横方向の熱の移動による温度の低下(誤差)が生じていることにより、点線で示した横方向への熱の移動がない温度分布より全体的に低下している。つまり、図6(C)に示すように、各補正用体表面センサー20C,20D,20E間の温度差により皮膚の温度分布を測定することで、横方向の熱の移動を測定することができる。
図7は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面を示す図である。表層部内で、横方向の熱の移動を考慮しない場合は、式(6)で深部体温Tcoreが計算できる。しかし、実際の深部体温測定において、体温計本体10下の高温部から体温計本体10がない低温部へ熱が移動し、体温計本体10端面付近では温度が、理想状態よりも下がることで、式(6)では誤差が生じる。特に体温計本体10が小型の場合には、測定点においてこの影響が顕著となる。この誤差を補正するための方法を以下に説明する。
図8は、本実施例に係る補正値測定用サンプルを装着したときの体表面の温度分布を示す図である。先ず、中心部では、端面の影響が無視できる程度の大きさの補正値測定用サンプル100を用意する。またこの補正値測定用サンプル100は、体温計本体10と同じ熱抵抗を持つものである。また、既知の熱伝達率Kbを持つ人体表層部サンプル102を用意し、その下面を均一に加温することで深部体温Tcoreを模した熱源とする。その場合、端面からの距離が十分に長い体表面温度Txの温度は、理想的な値といえる。
図8に示す温度分布は、人体表層部サンプル102の熱伝導率Kbに依存するため、体表面温度Tb及びTcと体表面温度Txの関係を、熱伝導率Kbを変化させて測定し、テーブルを作成しておく。これらは、熱伝達シミュレーションにより得ておいてもよい。また、ここでは測定点が2点の場合を説明したが、測定点はn=2以上のn個であればよく、測定点が多いほど、より正確に体表面温度Txを測定することができる。
図9は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す図である。本実施例の体温計本体10では、図9(A)に示すように、小型化が求められているため、体表面温度Txを直接測定できないが体表面温度Tb及びTcを測定することにより、シミュレーションにより体表面温度Taを求めることで体表面温度Tx(図8参照)を推定することができる。なお、図9(B)に示すように、第2体表面温度Tb3についても同様に測定或いはシミュレーションを行い、体表面温度Td及びTfから、理想値の体表面温度Ty(図示せず)を推定できるようにしておく。計算式において第1体表面温度Tb1及び第2体表面温度Tb3の代わりに第1体表面温度Tx及び第2体表面温度Tyを用いることでより正確な深部体温Tcoreを導くことができる。
図10は、本実施例に係る深部体温の算出のための生体組織内の熱流の電気的等価回路を示す図である。実際の温度分布として縦横方向の熱の移動を体内の熱抵抗として計算する。その際、横方向の熱抵抗が∞の場合の温度分布を計算することで横方向への熱の移動がない温度分布を得ることができる。その温度分布を用いて各センサーの値を補正して深部体温Tcoreを計算する。
(実施例2)
図11は、本実施例に係る体温計本体10の構造を示す図である。なお、図11(A)は、体温計本体10の斜視図であり、図11(B)は、温度測定部46を切り出した図であり、図11(C)及び(D)は、体温計本体10の断面図である。
体温計本体10は、図11(A)に示すように、断熱部18で温度測定部を囲み、熱が一次元的に伝わるようにしている。体温計本体10は、図11(B)に示すように、温度測定部46の熱抵抗は等しくするが、温度分布が異なるように外気と触れる部分に熱伝導率が異なる物質である第1及び第2放熱制御部18A,18Bが設けられている。例えば図11(C)に示すように、第1系統44Aと第2系統44Bとの温度分布が異なるように外気と触れる部分にそれぞれ第1及び第2放熱制御部18A,18Bが設けられている。また、図11(D)に示すように、第1系統44Aと第2系統44Bとの温度分布が異なるように外気と触れる部分に、第1系統44Aは第1放熱制御部18A(断熱部18)が設けられ、第2系統44Bは開放されている。
各部の熱伝導率は、第1体表面温度Tb1と第1中間温度Tb2との間及び第2体表面温度Tb3と第2中間温度Tb4との間の温度差が、精度(ここでは0.1度)以上とれる材料であればよく、例えば、温度測定部46の熱伝導率は、0.2W/m・K程度である。また断熱部18の熱伝導率は、0.04W/m・K程度である。さらに第1放熱制御部18Aの熱伝導率は、0.04W/m・K程度、ここでは断熱部18と同じである。なお、断熱部18は、温度測定部46よりも熱伝導率が低いことが必須である。
上記構成においても、深部体温測定用の体表面センサー20A,20B以外に温度分布測定用の複数個の補正用体表面センサー20C,20D,20Eを用いて、皮膚の温度分布を得ている。
図12は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す図である。なお、図12(A)は、皮膚表面と温度測定部46の側面とを完全断熱したときの温度分布を示し、図12(B)は、断熱部18のみの温度分布を示し、図12(C)は、体温計本体10を装着したときの温度分布を示す。
皮膚表面と温度測定部46の側面とを完全断熱したときの温度分布は、図12(A)に示すように、その誤差が極小になるため理想的な温度分布状態となる。
また、断熱部18のみの温度分布は、図12(B)に示すように、断熱部18端での熱ロスが現れている。この断熱部18端での熱ロスは温度測定部46の測定にも影響を与える。特に小型化する場合に顕著に現れる。
体温計本体10を装着したときの温度分布は、図12(C)に示すように、図12(A)の皮膚表面と温度測定部46の側面とを完全断熱したときの温度分布が、図12(B)の断熱部18のみの温度分布に影響されて、断熱部18の有無等の変化点で横方向の熱の移動による温度の低下(誤差)が生じていることにより、点線で示した横方向への熱の移動がない温度分布より全体的に低下している。
図13は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す断面図及び配置例を示す図である。なお、図13(A)は、体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す断面図であり、図13(B)、(C)、及び(D)は、補正用体表面センサー20C,20Dの配置例を示す図である。本実施例では、図13に示すように、温度測定部46は周囲の断熱部18よりも熱伝導率が高いため、温度が低くなる。そのため、実施例1のように温度測定部46の温度を補正用センサーとして直接用いることはできない。ここでは、補正用体表面センサー20C,20D,20Eを用いた補正手段を示す。その時の補正用体表面センサー20C,20Dは、図13(B)に示すように、温度測定部46と平衡に配置されていてもよい。また、図13(C)に示すように、補正用体表面センサー20C,20Dは、温度測定部46と垂直に配置されていてもよい。さらに、図13(D)に示すように、補正用体表面センサー20C,20Dは、中心からの距離が異なる2点以上に配置されていてもよい。
図14は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す断面図である。図15は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す断面図である。実施例1と同様に既知の熱伝導率Kbを持った人体表層部サンプル102を用意し、その上に十分な大きさ(熱勾配が無視できる程度)の断熱材104を設置する。この断熱材104の厚みと熱伝達率は体温計本体10の断熱部と同じとする。これを用いて、補正用体表面センサー20C,20Dで理想状態を測定する。
次に、図15に示すように、実際の体温計本体10で同じ大きさの断熱部18を用いて、体温計本体10の温度分布を測定し、その結果から理想状態の温度分布を推定できるようにする。体温計本体10の温度分布は、人体表層部サンプル102の熱伝達率Kbに依存するため、いくつか熱伝導率Kbを変化させて測定し、テーブルを作成する。
(実施例3)
図16は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す断面図及び配置例を示す図である。図17は、本実施例に係る補正用体表面センサー20C,20D,20Eの配置例を示す図である。なお、図16(A)は、体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す断面図であり、図16(B)及び(C)は、補正用体表面センサー20C,20D,20Eの配置例を示す図である。
図16(A)に示すように、補正用体表面センサー20C,20D,20Eを追加して、図12(B)の断熱部18のみの温度分布のカーブを検出する。その時の補正用体表面センサー20C,20D,20Eは、図16(B)に示すように、温度測定部46と平衡に配置される。なお、図16(C)に示すように、補正用体表面センサー20C,20D,20Eは、温度測定部46と垂直に配置されてもよい。また、図17(A)に示すように、補正用体表面センサー20C,20Dは、深部体温測定用の体表面センサー20A,20Bと分けて配置されてもよい。これによれば、温度分布測定用と深部体温測定用とで相互の影響を小さくすることができる。さらに、図17(B)に示すように、外側に配置される補正用体表面センサー20C,20Eの位置を左右でずらして配置してもよい。これによれば、温度分布の勾配を3点でとっているのと同じ状態になり細かい勾配変化を測定することができる。
図18は、本実施例に係る体温計本体10を装着したときの体表面の温度分布を示す図である。なお、図18(A)は、補正前の温度分布を示し、図18(B)は、温度分布測定用の補正用体表面センサー20C,20D,20Eによる温度分布を示し、図18(C)は、補正後の温度分布を示す。
補正前の温度分布は、図18(A)に示すように、図18(B)の温度分布測定用の補正用体表面センサー20C,20D,20Eによる温度分布に影響されて、断熱部18の有無等の変化点で横方向の熱の移動による温度の低下(誤差)が生じている。
補正後の温度分布は、図18(C)に示すように、誤差が極小になるため理想的な温度分布状態となる。
このような電子体温計2では、次のように動作する。
図19は、本実施形態に係る電子体温計2の動作を示すフローチャートである。
人体4(本実施形態では幼児の胸部)に体温計本体10を装着し、幼児を抱いた電子体温計2の操作者6は表示装置12を腕に装着する。操作者6が表示装置12の操作部34を操作することにより表示装置12のスイッチがONされると、送受信手段28が体温計本体10(温度測定部14A、温度測定部14B、及び温度測定部14C)に電波を送信する。この電波による電磁誘導でアンテナコイル30A,30B,30Cに起電力を発生させることにより体温計本体10にチャージを行う(ステップS10)。
起電力により体温計本体10が起動し(ステップS20)、体表面センサー20A,20B、補正用体表面センサー20C,20D,20E、及び中間センサー24A,24Bが起動する。
これらのセンサー20A,20B,20C,20D,20E,24A,24Bが起動すると、体温計本体10は、送受信手段28A,28B,28Cから表示装置12にスタンバイ信号を送信する(ステップS30)。
表示装置12の制御手段36は、このスタンバイ信号を受信すると温度測定開始信号を送受信手段28から送信する(ステップS40)。
体温計本体10は、この温度測定開始信号を受信して、体表面センサー20A,20B、補正用体表面センサー20C,20D,20E、及び中間センサー24A,24Bを駆動し、体表面4Aの第1体表面温度Tb1、第2体表面温度Tb3、第3体表面温度Tb5,Tb6,Tb7、及び界面22A,22Bの第1中間温度Tb2,第2中間温度Tb4を測定する(ステップS50、第1温度測定工程、第2温度測定工程、及び第3温度測定工程)。これらの体表面温度Tb1,Tb3,Tb5,Tb6,Tb7、及び中間温度Tb2,Tb4の温度情報は、A/D変換器26A,26B,26Cでアナログ信号からデジタル信号に変換され、送受信手段28A,28B,28Cによって表示装置12に送信される。なお、体表面温度Tb1,Tb3,Tb5,Tb6,Tb7、及び中間温度Tb2,Tb4は、人体4の深部から体表面4Aまでの伝熱が定常状態(平衡状態)となるように、所定時間経過後に測定することが望ましい。
制御手段36の温度補正手段40では、体温計本体10から送信された第3体表面温度Tb5,Tb6,Tb7から体内の温度分布が理想的な場合に比べてどのように変化しているかを知り、その変化分に基づき体温計本体10から送信された体表面温度Tb1,Tb3、及び中間温度Tb2,Tb4を補正する(ステップS60、温度補正工程)。
制御手段36の深部体温演算手段42では、ステップS60で補正された体表面温度Tb1´,Tb3´、及び中間温度Tb2´,Tb4´を式(6)のTb1、Tb2、Tb3、及びTb4に代入することによって深部体温Tcoreを演算する(ステップS70、深部体温演算工程)。
制御手段36は、記憶部38に深部体温Tcoreを記憶させるとともに(ステップS80)、表示部32に深部体温Tcoreを表示する(ステップS90)。操作者6は、幼児を抱いた状態で、腕時計型の表示装置12の表示部32で、深部体温Tcoreを確認できる。
制御手段36は、内蔵されたタイマーにより体表面温度Tb1,Tb3の測定時からの経過時間をカウントし、所定時間経過したか否かを監視する(ステップS100)。経過時間が所定時間以上となると、ステップS40に戻って、制御手段36は体温計本体10に測定開始信号を送信し、再度体表面温度Tb1,Tb3,Tb5,Tb6,Tb7、及び中間温度Tb2,Tb4の測定を行う。
このようにして所定時間ごとに体表面温度Tb1,Tb3,Tb5,Tb6,Tb7、及び中間温度Tb2,Tb4を測定し、体表面温度Tb1,Tb3、及び中間温度Tb2,Tb4を補正して深部体温Tcoreを演算し、記憶部38に蓄積する。
このような実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)温度測定部14Aから第1体表面温度Tb1及び第1中間温度Tb2と、温度測定部14Bから第2体表面温度Tb3及び第2中間温度Tb4を得るとともに、温度測定部14Cから第3体表面温度Tb5,Tb6,Tb7を得ることにより、温度補正手段40では、第3体表面温度Tb5,Tb6,Tb7に基づいて、体表面温度Tb1,Tb3、及び中間温度Tb2,Tb4を補正する。温度補正手段40で補正された第1体表面温度Tb1´、第1中間温度Tb2´、第2体表面温度Tb3´、及び第2中間温度Tb4´により、深部体温演算手段42では、人体4の深部体温Tcoreを算出できる。
体温計下の体表面の温度分布を測定し、体内の温度分布が理想的な場合に比べてどのように変化しているかを知り、その変化分に基づき測定結果を補正することで、理想的な測定条件下での深部体温を演算できる。つまり正確な深部体温を測定することができる。
(2)全体としての熱抵抗値の異なる2つの温度測定部14A,14Bを用いることで、2種類の温度分布(熱流束)における体表面温度Tb1,Tb3及び中間温度Tb2,Tb4を測定できるので、実際の温度の測定値のみから深部体温Tcoreを演算できる。このため、従来人体の深部から表層部までの熱抵抗値Rsを固定値として仮定して設定していた場合に比べて、より実際の温度分布に即した深部体温Tcoreの演算ができる。よって、より正確な深部体温Tcoreが得られ、電子体温計2の測定精度を向上させることができる。
また、全体としての熱抵抗値を、体表面温度測定位置と中間温度測定位置との間の熱抵抗Ru0は共通とし、中間温度測定位置と外気との間の熱抵抗値Ru1,Ru2を変えることによって異なる値としている。したがって、体温計本体10の外気側に衣服や寝具が接触しても、全体としての熱抵抗値が変化するだけで体表面温度測定位置と中間温度測定位置との間の熱抵抗値Ru0は変化しないので、これらの外乱による測定への影響を少なくできる。
さらに、人体4の深部から外気までの熱流束が一定であることを利用して、深部体温演算手段42が人体4の深部体温Tcoreを算出するので、従来の体温計のように熱流をキャンセルするためのヒーターなどの加熱手段が不要となるから、電子体温計2の構成を簡単にできる。これにより電子体温計2の小型化をより一層促進できる。そして、従来の加熱手段が不要なので、電子体温計2の省電力化を促進できるとともに、電子体温計2を長時間体表面4Aに貼り付けていても安全であるから、電子体温計2の安全性、取扱い性を向上させることができる。
(3)深部体温演算手段42が、前述の式(6)を演算式として有するので、補正後の第1体表面温度Tb1´、第1中間温度Tb2´、第2体表面温度Tb3´、及び第2中間温度Tb4´が得られると、これらの値を式(6)のTb1、Tb2、Tb3、及びTb4に代入することによって深部体温Tcoreを演算できる。2箇所の体表面温度Tb1´,Tb3´及び中間温度Tb2´,Tb4´を測定することにより人体4の深部から体表面4Aまでの部分の熱抵抗値Rs+Rtを演算上消去できるから、この熱抵抗値Rs+Rtを用いる必要がなく、演算処理を簡単にできるとともに、演算処理を迅速にできる。したがって、電子体温計2の応答性を向上させることができる。
(4)体温計本体10が人体4の皮膚に一体で貼付可能に構成されているので、従来の腋下温や舌下温の測定のように一定時間電子体温計2を保持する必要がない。したがって、体温計本体10の取扱い性を向上させることができる。また、体温計本体10が一体で貼付可能に構成されているので、幼児や乳幼児、子供が使用する場合などに多少動いても、体温計本体10が皮膚に良好に接触するので、正確な体温を測定できる。さらに、衣服や寝具が体温計本体10に接触した状態でも深部体温Tcoreが計算できる。したがって、連続的に長時間にわたって温度変化を監視したい場合などでも、容易かつ正確に測定を行うことができる。
例えば女性が基礎体温を測定する場合などでは、起床直後に安静状態で測定しなければならないなど、体温測定方法に制約が多く、体温測定が面倒であった。ところが、本実施形態の電子体温計2で測定すれば、長時間体表面4Aに貼り付けた状態で体温を連続的に測定できるので、体温計本体10を装着した状態で就寝すれば、就寝中に自動的に基礎体温が測定でき、起床時には既に基礎体温の測定を終了できる。したがって、体温測定の煩雑さを除去できるから、家庭や旅行先でも測定忘れを防止でき、確実に正確な基礎体温を測定できる。
また、本実施形態の電子体温計2は、人体4の体温の常時計測ができるから、例えば入院患者などの体温の変化のモニタリングなどに適している。
(5)体温計本体10と表示装置12とを別体に構成し、送受信手段28,28A,28B,28Cによって通信可能に構成したので、人体4に接触させる体温計本体10に搭載する部品数を最小限に抑制でき、体温計本体10の軽量化、小型化を促進できる。よって、体温計本体10を長時間貼り付けていても負担にはならないため、体温計本体10の携帯性を向上させることができる。また、深部体温演算手段42を備えた制御手段36を表示装置12側に設けたことにより、体温計本体10の軽量化、小型化をより一層促進できる。
送受信手段28,28A,28B,28Cがアンテナコイル30,30A,30B,30Cによって無線通信を行う構成となっているので、配線などが邪魔にならず、電子体温計2の取扱い性を向上させることができる。
さらに、表示装置12が、腕時計型に形成されているので、操作者6が腕につけて表示部32を視認できる。したがって、本実施形態のように体温を測定したい幼児を抱いた状態で体温の表示を確認できるので、電子体温計2の操作性を向上させることができる。
(6)表示装置12のアンテナコイル30から電波を送信することで、電磁誘導により体温計本体10のアンテナコイル30A,30B,30Cに起電力を生じさせることができる。この起電力により体温計本体10を駆動するので、体温計本体10には電池などの電源が不要となり、体温計本体10の軽量化、小型化をより一層促進できる。
(7)記憶部38が、複数の人体4について深部体温Tcoreなどの情報を記憶できるので、電子体温計2を複数人に交互に使用することもでき、電子体温計2の利便性を向上させることができる。これにより、電子体温計2を複数人で使用する場合でも、記憶部38から対象となる被測定者の以前の深部体温Tcoreを読み出すことができるので、長期間にわたる体温のモニタリングにも適している。
(8)体表面4Aと界面22A,22Bとの間の断熱部18は、共通の熱抵抗値を持つので同じ素材で同じ厚みの断熱材が使用でき、製造が簡単で、一体構造を採用できる。また、温度測定部14Aと温度測定部14Bとの距離Lも固定することができ、貼り付けも簡単にできる。
なお、本実施形態では、実測(シミュレーション)ベースで理想値を算出しているが、単純円柱形状でベッセル関数を用いる等、解析的に式を用いた方法であってもよい。
送受信手段は、アンテナを有する無線通信に限らず、例えば体温計本体と表示装置とを配線して有線通信を行ってもよい。このような構成によれば、電波通信を行う必要がないので、電波による人体への影響を除去できる。また、有線により体温計本体に電力を供給できるので、電力供給の構成を簡単にできる。
前記実施形態では、体表面センサー20A,20B、補正用体表面センサー20C,20D,20E、及び中間センサー24A,24Bは、温度値のアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器を備えていたが、これに限らずA/D変換器を備えていない構成でもよい。この場合には、例えば温度値を周波数に変換するものなどが採用でき、抵抗値を、マルチバイブレーター回路や発振回路、V−Fコンバーターなどによって周波数変換すればよい。又は、温度値を時間に変換するものであってもよい。この場合には、周波数変換された信号をさらに周期時間又はパルス幅に変換すればよい。
深部体温演算手段42は、前記実施形態のように式(6)を演算式として記憶し、第1体表面温度Tb1、第1中間温度Tb2、第2体表面温度Tb3、及び第2中間温度Tb4から直接深部体温Tcoreを演算するものに限らない。例えば、人体の深部から外気までの熱流束Q、及び人体の深部から体表面までの部分の熱抵抗値Rs+Rtを求め、これらの熱流束Q及び熱抵抗値Rs+Rtを用いて深部体温Tcoreを演算するように構成してもよい。
なお、人体4に固有の表層部熱抵抗値Rs+Rtは、変化が小さいので、電子体温計2を再び使用する場合にも、前回算出した表層部熱抵抗値Rs+Rtを用いることができるので、二回目からの測定時には、体温測定開始までの時間の短縮を図ることができる。この場合に、記憶部38に複数の人体4に対する表層部熱抵抗値Rs+Rtを記憶しておけば、操作部34で操作することによって前回算出した表層部熱抵抗値Rs+Rtを読み出して再度利用することができる。この場合には、体温測定工程を行う際に、操作部34によって人体4を特定するための被測定対象選択を行えばよい。
体温計は、表示装置と体温計本体とが別体になっているものに限らず、表示装置と体温計本体とが一体に構成されていてもよい。
体温計は、前記実施形態のように表示装置12と体温計本体10とが別体で構成されている場合に、表示装置12が複数の体温計本体10の情報を管理するように構成されていてもよい。この場合には、各体温計本体10を識別できるIDコードなどを設け、表示装置12で体温計本体10を認識、管理できるように構成すればよい。
また、電子体温計の情報を端末などに送って複数個の電子体温計の情報を管理してもよい。この場合には、端末に被測定対象ごとの体温データなどを蓄積、管理できるので、操作性が向上する。また、このような構成では、使用する電子体温計を変更した場合でも以前に算出した体温データなどを端末から取得できるので、電子体温計の利便性を向上させることができる。
参照温度測定手段は、第1参照温度測定手段及び第2参照温度測定手段が中間温度測定手段である場合に限らず、少なくともどちらか一方が中間温度測定手段で構成されていればよい。また、参照温度測定手段は、中間の温度を測定する中間温度測定手段に限らず、例えば外気の温度を測定する外気温度測定手段であってもよい。
体表面測定手段及び参照温度測定手段は、2つずつ設けられるものに限らず、3つ以上の複数個設けられていてもよい。
電子体温計は、前記実施形態では、体温計本体10が粘着剤により貼付可能な構成となっていたが、これに限らず、例えば体温計本体10を帽子やヘアバンドに組み込んだりすることにより、帽子やヘアバンドを装着すれば額や後頭部に体表面温測定手段が貼り付き、体表面に接触できる。また、体温計本体を下着などに組み込めば下着を装着することにより背中や胸に体表面温測定手段を接触させることができる。
さらに、前記実施形態では、温度測定部14A,14B,14Cは、一つの断熱部18によって一体に形成されているが、断熱部18を二つの切り離した構成にして、温度測定部14A,14B,14Cを別々に形成してもよい。
表示体の形状は、腕時計に限らず、例えば据置きであってもよいし、その他ペンダント式などにしてもよい。