JP2015063418A - レーザ光によるガラス基板融着方法及びレーザ加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価でかつ簡単な光学系により処理が可能であり、さらにレーザ光吸収材を用いることなく接合する積層されたガラス基板を接合する方法及び装置の提供。【解決手段】第1工程及び第2工程を備えている。第1工程は第1ガラス基板G1と第2ガラス基板G2とを重ね合わせる。第2工程は、それぞれ、波長が2.7以上6.0μm以下でかつガラス基板G1,G2の表面を溶融させないパワーの第1レーザ光L1及び第2レーザ光L2を集光して、集光された両レーザ光L1,L2の重なる部分が2枚のガラス基板G1,G2の間を通過するように、第1レーザ光L1は第1ガラス基板G1の第1主面側から照射するとともに第2レーザ光L2は第2ガラス基板G2の第1ガラス基板G1と対向する面と逆側の第2主面側から照射し、集光された両レーザ光L1,L2の重なる部分において第1及び第2ガラス基板G1,G2を溶融させて融着する。【選択図】図1
Description
本発明は、ガラス基板融着方法、特に、重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させるガラス基板融着方法及びそれを実現するためのレーザ加工装置に関する。
例えば、IT機器用の装置においては、2枚のガラス基板を重ね合わせたデバイスが用いられている。このような積層された2枚のガラス基板を接合するための方法及び装置が、特許文献1に示されている。
特許文献1に示されたガラス基板の接合方法は、2枚のガラス基板の接合界面にレーザ光を照射して接合する方法である。この方法は、まず、2枚のガラス基板のそれぞれの接合面に黒色の油性塗料等からなるレーザ光吸収材が塗布される。そして、このレーザ光吸収材にレーザ光を吸収させることにより、吸収熱によって接合部のガラス同士が溶融して接合する。
また、特許文献2には、超短光パルスレーザにより多光子吸収現象を生成させ、2枚のガラス基板を接合する方法が示されている。この特許文献2の方法では、まず、2枚のガラス基板を積層し、これらを挟持して当接させたり、あるいは2枚のガラス基板を自重により当接させたりすることによって、当接状態が保持される。次に、レーザ光の焦点を2枚のガラス基板の当接部近傍に位置させて超短光パルスレーザが照射され、多光子吸収現象を生成させることによって2枚のガラス基板が接合される。
特許文献1の方法では、2枚のガラス基板の間にレーザ光吸収材を介在させる必要があり、そのための工程が必要になる。
また、特許文献2の方法では、超短光パルスレーザが用いられるが、このようなパルスレーザ光は高価である。また、この特許文献2の方法では、多光子吸収現象を生成させるために、レーザ光のスポット径を小さくする必要がある。レーザ光のスポット径を小さくするためには、集光光学系と焦点位置制御のために複雑な装置が必要となる。
本発明の課題は、重ね合わされたガラス基板を接合する際に、安価なレーザ光を用いて、かつ簡単な光学系により処理が可能であり、さらにレーザ光吸収材を用いる必要のない接合を実現することにある。
本発明の第1側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させる方法であって、以下の工程を備えている。
第1工程:第1ガラス基板と第2ガラス基板とを重ね合わせる。
第2工程:それぞれ、波長が2.7以上6.0μm以下でかつガラス基板の表面を溶融させないパワーの第1レーザ光及び第2レーザ光を集光して、集光された両レーザ光の重なる部分が2枚のガラス基板の間を通過するように、第1レーザ光は第1ガラス基板の第1主面側から照射するとともに第2レーザ光は第2ガラス基板の第1ガラス基板と対向する面と逆側の第2主面側から照射し、集光された両レーザ光の重なる部分において第1及び第2ガラス基板を溶融させて融着する。
この方法では、波長が2.7μm以上6.0μm以下の中赤外光のレーザ光がガラス基板に対して照射される。中赤外光はガラス基板の内部まで浸透しながら吸収されるために、ガラス基板の表面から内部にわたって、熱分布の偏りが少なくなる。すなわち、ガラス基板の内部は比較的均一に加熱される。したがって、ガラス基板の熱損傷を抑制しつつ、ガラス基板を溶融させることが可能となる。
ここで、1つのレーザ光によって以上のような2枚のガラス基板の融着を行うと、ガラス基板のレーザ光照射面側の表面が溶融し、ガラス基板に凸部が形成されることが判明した。ガラス基板の表面に凸部が形成されると、例えば有機ELパネル等のディスプレイを実装する際に、凸部を避けて保持する必要がある等、利用しにくい。また、ガラス基板を分断する工程において、ガラス基板をテーブルに真空吸着する必要があるが、ガラス基板の表面に凸部が形成されていると、凸部によってガラス基板とテーブルとの間に隙間が形成され、吸着できない。
なお、レーザ光を集光させてガラス基板に照射する場合、ガラス基板のレーザ光照射側の表面よりも裏面でのビーム径を小さくし、ガラス基板の表裏面に温度差をつければ、凸部の形成を抑制することが可能である。
しかし、ガラス基板の表面側に凸部が形成されず、かつ裏面においてガラス基板が溶融されるようにするためには、裏面側におけるビーム径を非常に小さくする必要がある。このように、ビーム径を非常に小さくするためには、高価な光学系が必要になる。
そこで、本発明では、単独ではガラス基板の表面を溶融させない2つのレーザ光を用いて2枚のガラス基板を融着させるようにしている。すなわち、それぞれ波長が2.7以上6.0μm以下でかつガラス基板の表面を融着させないパワーの第1レーザ光を第1ガラス基板の表面から照射するとともに、第2レーザ光を第2ガラス基板の裏面(すなわち第1レーザ光が照射される面と反対側の面)から照射し、集光された両レーザ光の重なる部分が2枚のガラス基板の間を通過するようにしている。これにより、ガラス基板において、集光された両レーザ光が重ならない部分ではガラス基板は溶融せず、かつ2枚のガラス基板の間では集光された両レーザ光が重なり、このレーザ光の重なった部分ではガラス基板が溶融して互いが融着する。
このため、ガラス基板のレーザ光照射面側に凸部を形成することなく、2枚のガラス基板を容易に、かつ簡単な構成で融着することができる。また、2枚のガラス基板の間にレーザ光吸収材を設ける必要がない。
本発明の第2側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1側面の方法において、第2工程では、第1レーザ光及び第2レーザ光を同時にガラス基板に対して照射する。
ここでは、2つのレーザ光が同時にガラス基板に照射されるので、それぞれのレーザ光のパワーを比較的低くすることができる。
本発明の第3側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1側面の方法において、第2工程では、第1レーザ光をガラス基板に照射した後に第2レーザ光を照射する。
本発明の第4側面に係るレーザ光によるガラス基板融着方法は、第1又は第2側面の方法において、第2工程では、1つのレーザ発振器から発振されたレーザ光を分岐して得られた第1レーザ光及び第2レーザ光をガラス基板に照射する。
ここでは、2つのレーザ光は、1つのレーザ発振器から出射されたレーザ光を分岐することによって得られたものである。したがって、装置構成を簡単にすることができる。
本発明の第5側面に係るレーザ加工装置は、重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させる装置であって、重ね合わされた第1ガラス基板及び第2ガラス基板が載置されるワークテーブルと、レーザ光照射機構と、を備えている。レーザ光照射機構は、それぞれ波長が2.7以上6.0μm以下でかつガラス基板の表面を溶融させないパワーの第1レーザ光及び第2レーザ光を集光して、集光された両レーザ光の重なる部分が2枚のガラス基板の間を通過するように、第1レーザ光は第1ガラス基板の第1主面側から照射するとともに第2レーザ光は第2ガラス基板の第1ガラス基板と対向する面と逆側の第2主面側から照射する。
ここでは、第1レーザ光及び第2レーザ光のそれぞれを、単独ではガラス基板の表面を溶融させないパワーとし、かつ集光された両レーザ光の重なる部分においてガラス基板が溶融するようなパワーにすることができる。これにより、ガラス基板のレーザ光照射面側に凸部を形成することなく、2枚のガラス基板を容易に、かつ簡単な構成で融着することができる。
本発明の第6側面に係るレーザ加工装置は、第5側面の装置において、第1レーザ光及び第2レーザ光は、2枚のガラス基板の間の集光された両レーザ光が重なる部分においてガラス基板が溶融するパワーに調整されている。
本発明の第7側面に係るレーザ加工装置は、第5又は第6側面の装置において、レーザ光照射機構は、レーザ発振器と、光学系と、を有している。レーザ発振器は波長が2.7以上6.0μm以下のレーザ光を発振する。光学系は、レーザ発振器からのレーザ光を第1レーザ光及び第2レーザ光に分岐し、第1及び第2レーザ光を集光して集光された両レーザ光の重なる部分が2枚のガラス基板の間を通過するように照射する。
ここでは、1つのレーザ発振器から出射されたレーザ光を分岐することによって2つのレーザ光を得るようにしている。したがって、装置構成を簡単にすることができる。
本発明の第8側面に係るレーザ加工装置は、第5から第7側面のいずれかの装置において、光学系とワークテーブルとを相対的に移動させて、集光されたレーザ光を融着予定ラインに沿って走査する走査機構をさらに備えている。
以上のような本発明では、安価なレーザ光を用いて、光学系も簡単であり、さらにレーザ光吸収材を用いることなくガラス基板を融着することができる。
[レーザ加工装置]
本発明の一実施形態によるレーザ加工装置を図1に示す。このレーザ加工装置は、重ね合わされた2枚のガラス基板G1,G2が載置されるワークテーブル1と、レーザ発振器2と、光学系3と、走査機構としてのテーブル移動機構4と、を備えている。そして、レーザ発振器2及び光学系3によってレーザ照射機構が構成されている。
本発明の一実施形態によるレーザ加工装置を図1に示す。このレーザ加工装置は、重ね合わされた2枚のガラス基板G1,G2が載置されるワークテーブル1と、レーザ発振器2と、光学系3と、走査機構としてのテーブル移動機構4と、を備えている。そして、レーザ発振器2及び光学系3によってレーザ照射機構が構成されている。
レーザ発振器2は、波長が2.7μm以上6.0μm以下の中赤外光のレーザ光を発振する。ここで、レーザ発振器2としては、Er:Y2O3、Er:ZBLAN、Er:YSGG、Er:GGG、Er:YLF、Er:YAG、Dy:ZBLAN、Ho:ZBLAN、CO、Cr:ZnSe、Cr:ZnS、Fe:ZnSe、Fe:ZnS、半導体レーザの中赤外のレーザ光群の中から選択されたレーザ光で、前述のように、波長が2.7〜6.0μmのものを出射するものであればよい。また、ここでは、連続発振のレーザ光を出射する。
光学系3は、複数の反射ミラー6a,6b,6c,6d,6e,6fと、分岐部7と、第1及び第2集光レンズ8a,8bと、を含んでいる。
反射ミラー6a,6b,6cはレーザ発振器2からのレーザ光L0を分岐部7に導く。分岐部7は、反射ミラー6cからのレーザ光L0を、ガラス基板G1の上面(第1主面)に対して直交する方向の第1レーザ光L1と、ガラス基板G1の上面に平行な方向の第2レーザ光L2と、に分岐する。反射ミラー6d,6e,6fは、分岐部7で分岐された第2レーザ光L2を、テーブル移動機構4の下方に導き、さらに第2ガラス基板G2の下面(第2主面)から照射されるように導く。この例では、各レーザ光L1,L2はガラス基板G1,G2の第1主面及び第2主面に直交するように照射される。
第1及び第2集光レンズ8a,8bは、それぞれ第1及び第2レーザ光L1,L2を集光して、これらの集光されたレーザ光L1,L2が2枚のガラス基板G1,G2の間、すなわち両者の接合部で重なり合って通過するように設定されている。
テーブル移動機構4は、互いに直交するX及びY方向にワークテーブル1を移動させるための機構である。このテーブル移動機構4によって、集光点を融着予定ラインに沿って走査することができる。
なお、この例では、第2レーザ光L2は第2ガラス基板G2の下方から照射されるために、ワークテーブル1及びテーブル移動機構4の中央部には、それぞれ第2レーザ光L2が通過するための開口1a,4aが形成されている。
[ガラス基板表面の凸部について]
ここで、例えば厚みが0.2mmの無アルカリガラス基板に対して、波長が2.8μmのErファイバーレーザを照射した場合、ガラス基板のレーザ光照射面(表面)と逆側の裏面では、照射面側に比較して裏面におけるレーザ光のパワーが78%まで減衰する。そして、レーザ光によるガラス基板の温度上昇量はレーザ光の吸収量と比例関係にあることから、基板裏面の温度上昇量は基板表面の78%となり、基板表面の温度の方が高くなる。
ここで、例えば厚みが0.2mmの無アルカリガラス基板に対して、波長が2.8μmのErファイバーレーザを照射した場合、ガラス基板のレーザ光照射面(表面)と逆側の裏面では、照射面側に比較して裏面におけるレーザ光のパワーが78%まで減衰する。そして、レーザ光によるガラス基板の温度上昇量はレーザ光の吸収量と比例関係にあることから、基板裏面の温度上昇量は基板表面の78%となり、基板表面の温度の方が高くなる。
このため、2枚のガラス基板の間の融着させるべき部分(レーザ光が照射される側のガラス基板の裏面)の温度を適切な温度まで上昇させようとすると、レーザ光が照射される側のガラス基板の表面が加熱によって膨張し、凸部が形成される。
図2に以上のような凸部が形成された例を示している。図2の例のガラス基板及びレーザ照射条件は以下の通りである。
基板:無アルカリガラス(OA10=製品名:日本電気硝子社製)、板厚0.2mm
レーザ光(1本):Er:ZBLANファイバーレーザ、波長2.7μm、出力7W、連続発振、走査速度20mm/s
この顕微鏡写真で示すように、2枚のガラス基板はレーザ光が照射された部分において強固に融着されているが、レーザ光が照射された上側のガラス基板の表面に凸部が形成されている。
レーザ光(1本):Er:ZBLANファイバーレーザ、波長2.7μm、出力7W、連続発振、走査速度20mm/s
この顕微鏡写真で示すように、2枚のガラス基板はレーザ光が照射された部分において強固に融着されているが、レーザ光が照射された上側のガラス基板の表面に凸部が形成されている。
[ガラス基板の融着方法]
以上のようなガラス基板の表面に形成される凸部は、2枚の融着されたガラス基板をデバイスとして利用する場合や、2枚の融着されたガラス基板を分断する際の吸着工程で、作業の妨げになる。
以上のようなガラス基板の表面に形成される凸部は、2枚の融着されたガラス基板をデバイスとして利用する場合や、2枚の融着されたガラス基板を分断する際の吸着工程で、作業の妨げになる。
そこで、この実施形態では、ガラス基板のレーザ光が照射される側の表面に凸部を形成することなく、2枚のガラス基板を融着するようにしている。
具体的には、まず、融着すべき2枚のガラス基板G1,G2を重ねあわせ、ワークテーブル1上の所定位置にセットする。このとき、2枚のガラス基板G1,G2の間には、レーザ光吸収材を介在させず、かつ2枚のガラス基板G1,G2を圧接するための圧力を加えることもしない。
以上のような2枚のガラス基板G1,G2に対して、前述のような中赤外光の第1レーザ光L1を第1ガラス基板G1の表面(上面=第1主面)から照射するとともに、同様の第2レーザ光L2を第2ガラス基板G2の裏面(下面=第2主面)から照射する。この実施形態では、1つのレーザ発振器2からのレーザ光L0を2つのレーザ光L1,L2に分岐して照射しているので、2つのレーザ光L1,L2は同時にガラス基板G1,G2に対して照射されることになる。そして、このとき、両レーザ光L1,L2の集光された部分が、両ガラス基板G1,G2間で重なるように照射する。また、2つのレーザ光L1,L2のパワーは、単独ではガラス基板G1,G2の表面を溶融させず、しかも2つの集光されたレーザ光L1,L2が重なる領域ではガラス基板G1,G2が溶融するような強度に設定する。
なお、両レーザ光L1,L2ともに、2つのガラス基板G1,G2の間の領域に集光させられる。このため、2つのガラス基板G1,G2の間の所定領域では2つの集光されたレーザ光L1,L2は、所定の密度(パワー)を有しており、これらの集光されたレーザ光L1,L2が重なり合った部分では、ガラス基板G1,G2が溶融する。一方、各レーザ光L1,L2は、集光点から先の領域では拡散するので、2つのガラス基板G1,G2の間以外の領域では、集光されたレーザ光L1又はL2と拡散されたレーザ光L2又はL1とが重なることになる。したがって、この領域では、両レーザ光L1,L2が重なり合っても、ガラス基板G1,G2は溶融されない。
これにより、集光された2つのレーザ光L1,L2が重ならないガラス基板G1,G2の表面や中間部では高温にならずに溶融せず、また集光された2つのレーザ光L1,L2が重なる2つのガラス基板G1,G2の間の領域では温度が上昇して2つのガラス基板G1,G2が溶融し、互いに融着する。
以上のように、第1レーザ光L1が照射される側の第1ガラス基板G1の表面及び第2レーザ光L2が照射される第2ガラス基板G2の裏面は高温にならない。したがって、特に、加熱による第1ガラス基板G1の表面及び第2ガラス基板G2の裏面の膨張、すなわち凸部の形成を避けることができる。
以上のような2つのレーザ光L1,L2を連続照射しながら融着予定ラインに沿って走査することによって、両ガラス基板G1,G2を確実に接合することができる。
[透過率と波長]
図3に、板厚が0.2mmの無アルカリガラス(例えばOA10(製品名:日本電気硝子社製))のガラス基板に対するレーザ光の波長と透過率との関係を示している。また、図4に、板厚が0.5mmのソーダガラスのガラス基板に対するレーザ光の波長と透過率との関係を示している。
図3に、板厚が0.2mmの無アルカリガラス(例えばOA10(製品名:日本電気硝子社製))のガラス基板に対するレーザ光の波長と透過率との関係を示している。また、図4に、板厚が0.5mmのソーダガラスのガラス基板に対するレーザ光の波長と透過率との関係を示している。
図3から明らかなように、板厚0.2mmの無アルカリガラスに対しては、波長が10.6μmのCO2レーザでは透過率が「0」であるので、レーザ光は基板の表面で吸収されることになる。また、波長が1μmのYAGレーザや、波長が532nmのグリーンレーザでは、透過率が90%以上であり、透過しない約10%のレーザ光もそのほとんどは表面で反射され、基板内部に吸収されない。そして、波長が2.8μmのレーザ光であれば、適切なパワーに調節することによって、基板内部でほぼ均一に吸収され、基板内部を溶融させて、重ね合わされた2枚の基板を融着することができる。
また、図4の板厚0.5mmのソーダガラスでは、波長が2.8μmのレーザ光では、基板の内部までレーザ光が透過しながら吸収され、したがってパワーを適切に調整することによって、基板内部を溶融させて、重ね合わされた2枚の基板を融着することができる。なお、図3と図4に示したグラフの透過率の値の差は、試料の厚さの違いに起因するものであり、厚さが同じであれば、無アルカリガラスとソーダガラスとで透過率に差は無いと思われる。
以上のことから、波長が2.7μm以上6.0μm以下のレーザ光を用いて、パワーを適切に調整することによって、多くのガラス基板に対して、基板内部を溶融させて2枚の基板を融着することができると推察される。また、レーザ光を照射する基板の厚さが比較的厚い場合でも、波長2.7μm以上5.0μm以下のレーザ光を用いることにより、安定して2枚の基板を融着することができる。
[特徴]
(1)単独ではガラス基板の表面を溶融させず、かつ集光されたレーザ光が重なった部分ではガラス基板を溶融させるパワーの中赤外光の2つのレーザ光をガラス基板に照射することによって、レーザ光が照射される側のガラス基板の照射面に凸部を形成することなく2枚のガラス基板を融着して接合できる。
(1)単独ではガラス基板の表面を溶融させず、かつ集光されたレーザ光が重なった部分ではガラス基板を溶融させるパワーの中赤外光の2つのレーザ光をガラス基板に照射することによって、レーザ光が照射される側のガラス基板の照射面に凸部を形成することなく2枚のガラス基板を融着して接合できる。
(2)2枚のガラス基板の間にレーザ光吸収材を用いる必要がなく、工程が簡素になる。
(3)2枚のガラス基板を重ね合わせる際に、両ガラス基板を互いに押圧する必要がない。したがって、装置構成が簡単になる。
(4)1つのレーザ発振器を用いて2つのレーザ光を作成しているので、レーザ照射機構の構成が簡単になる。また、同時に2つのレーザ光がガラス基板に照射されるので、それぞれのレーザ光のパワーを比較的低くすることができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(a)図5にレーザ光照射機構の他の実施形態を示している。この図5に示す例では、第1レーザ光L1は前記実施形態と同様であるが、第2レーザ光L2の照射する方向が前記実施形態と異なっている。
具体的には、第1レーザ光L1は、前記実施形態と同様に、第1集光レンズ10aを介して第1ガラス基板G1の表面(上面)G1aに対して直交する方向から照射され、かつ両ガラス基板G1,G2の間に集光される。一方、第2レーザ光L2は、第2集光レンズ10bを介して、第2ガラス基板G2の裏面(第2主面)G2bに対して角度θだけ傾斜した方向から照射され、かつ両ガラス基板G1,G2の間に集光される。
このような構成にすることにより、両レーザ光L1,L2の光軸がずれることになり、第1レーザ光L1が第2レーザ光L2側の光学系、又は第2レーザ光L2が第1レーザ光L1側の光学系に入射するのを防止でき、各光学系が損傷するのを防止できる。
(b)図6にレーザ光照射機構のさらに他の実施形態を示している。この図6に示す例は、それぞれ複数の第1及び第2レーザ光を両ガラス基板に対して照射するようにしている。
具体的には、2つの第1レーザ光L11,L12は、それぞれ第1集光レンズ11a,12aを介して第1ガラス基板G1の表面(上面)G1aに対して角度θだけ傾斜した方向から照射され、かつ両ガラス基板G1,G2の間に集光される。また、2つの第2レーザ光L21,L22は、それぞれ第2集光レンズ11b,12bを介して、第2ガラス基板G2の裏面(第2主面)G2bに対して角度θだけ傾斜した方向から照射され、かつ両ガラス基板G1,G2の間に集光される。
このような構成では、各レーザ光のパワーをより小さくすることができ、各ガラス基板G1,G2への熱ダメージをより抑えることができる。
(b)前記実施形態では、連続発振のレーザ光を用いたが、繰り返し周波数1MHz以上の擬似連続発振のパルスレーザ光や、繰り返し周波数が10kHz以上のパルスレーザ光を照射するようにしてもよい。
(c)前記実施形態では、1つのレーザ発振器からのレーザ光を分岐して第1及び第2レーザ光を得るようにしたが、2つのレーザ発振器及び光学系により2つのレーザ光照射機構を設け、各レーザ光照射機構によって第1レーザ光及び第2レーザ光を得るようにしてもよい。
そして、このような構成にした場合、第1及び第2レーザ光を同時にガラス基板に照射してもよいし、2つのレーザ光を、時間差を設けてガラス基板に照射するようにしてもよい。
1 ワークテーブル
2 レーザ発振器
3 光学系
4 テーブル移動機構
6a〜6f 反射ミラー
7 分岐部
8a,8b,10a,10b,11a,11b,12a,12b 集光レンズ
G1,G2 ガラス基板
2 レーザ発振器
3 光学系
4 テーブル移動機構
6a〜6f 反射ミラー
7 分岐部
8a,8b,10a,10b,11a,11b,12a,12b 集光レンズ
G1,G2 ガラス基板
Claims (8)
- 重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させるガラス基板の融着方法であって、
第1ガラス基板と第2ガラス基板とを重ね合わせる第1工程と、
それぞれ、波長が2.7以上6.0μm以下でかつガラス基板の表面を溶融させないパワーの第1レーザ光及び第2レーザ光を集光して、集光された前記両レーザ光の重なる部分が前記2枚のガラス基板の間を通過するように、前記第1レーザ光は前記第1ガラス基板の第1主面側から照射するとともに前記第2レーザ光は前記第2ガラス基板の前記第1ガラスと対向する面と逆側の第2主面側から照射し、集光された前記両レーザ光の重なる部分において前記第1及び第2ガラス基板を溶融させて融着する第2工程と、
を備えたレーザ光によるガラス基板融着方法。 - 前記第2工程では、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光を同時にガラス基板に対して照射する、請求項1又は2に記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
- 前記第2工程では、前記第1レーザ光をガラス基板に照射した後に前記第2レーザ光を照射する、請求項1に記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
- 前記第2工程では、1つのレーザ発振器から発振されたレーザ光を分岐して得られた前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光をガラス基板に照射する、請求項1又は2に記載のレーザ光によるガラス基板融着方法。
- 重ね合わされたガラス基板にレーザ光を照射してガラス基板同士を融着させるレーザ加工装置であって、
重ね合わされた第1ガラス基板及び第2ガラス基板が載置されるワークテーブルと、
それぞれ波長が2.7以上6.0μm以下でかつガラス基板の表面を溶融させないパワーの第1レーザ光及び第2レーザ光を集光して、集光された前記両レーザ光の重なる部分が前記2枚のガラス基板の間を通過するように、前記第1レーザ光は前記第1ガラス基板の第1主面側から照射するとともに前記第2レーザ光は前記第2ガラス基板の前記第1ガラス基板と対向する面と逆側の第2主面側から照射するレーザ光照射機構と、
を備えたレーザ加工装置。 - 前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光は、前記2枚のガラス基板の間の集光された両レーザ光が重なる部分において前記ガラス基板が溶融するパワーに調整されている、請求項5に記載のレーザ加工装置。
- 前記レーザ光照射機構は、
波長が2.7以上6.0μm以下のレーザ光を発振するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器からのレーザ光を前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光に分岐し、前記第1及び第2レーザ光を集光して集光された前記両レーザ光の重なる部分が前記2枚のガラス基板の間を通過するように照射する光学系と、
を有する、
請求項5又は6に記載のレーザ加工装置。 - 前記光学系と前記ワークテーブルとを相対的に移動させて、集光されたレーザ光を融着予定ラインに沿って走査する走査機構をさらに備えた、請求項5から7のいずれかに記載のレーザ加工装置。
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