JP2015062936A - 遠心鋳造製複合ロール及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記上型、前記外層及び前記下型により構成されるキャビティに前記内層用の溶湯を鋳込む工程を有し、前記上型内における溶湯面の上昇速度が100 mm/秒以下で、前記下型及び前記外層内における溶湯面の上昇速度より小さいことを特徴とする。
(A) 外層
(1) 第一の遠心鋳造製複合ロールの外層の組成
第一の遠心鋳造製複合ロールの外層は、質量基準で少なくともCr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、及びV:5.8〜10.0%を含有する化学組成を含有するFe基合金からなる。この外層はさらに、質量基準でC:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.8%、及びNi:0〜3.5%を含有するのが好ましい。
Crは基地をベイナイト又はマルテンサイトにして硬さを保持し、耐摩耗性を維持するのに有効な元素である。Crが3.0質量%未満では内層に溶け込む量が不足し、クラッチ部の耐損耗性が不十分である。一方、Crが10.0質量%を超えると、基地組織の靭性が低下する。Cr含有量は好ましくはCr:4.0〜7.0質量%である。
MoはCと結合して硬質炭化物(M6C、M2C)を形成し、外層の硬さを増加させるとともに、基地の焼入れ性を向上させる。また、MoはV及びNbとともに強靭かつ硬質なMC炭化物を生成し、耐摩耗性を向上させる。Moが2.0質量%未満では内層に溶け込む量が不足し、クラッチ部の耐損耗性が不十分である。一方、Moが10.0質量%を超えると、外層の靭性が劣化する。Mo含有量は好ましくはMo:4.0〜8.0質量%である。
VはCと結合して硬質のMC炭化物を生成する元素である。このMC炭化物は2500〜3000のビッカース硬さHvを有し、炭化物の中で最も硬い。Vが5.8質量%未満では、MC炭化物の析出量が不十分であるだけでなく、内層に溶け込む量が不足することにより、クラッチ部の耐損耗性が不十分である。一方、Vが10.0質量%を超えると、比重の軽いMC炭化物が遠心鋳造中の遠心力により外層の内側に濃化し、MC炭化物の半径方向偏析が著しくなるだけでなく、MC炭化物が粗大化して合金組織が粗くなり、圧延時に肌荒れしやすくなる。V含有量は好ましくはV:6.0〜10.0質量%であり、より好ましくはV:6.0〜8.0質量%である。
軸部の端部におけるCr、Mo及びVの合計量が、両側の軸部ともに0.15〜2.0質量%であり、一方の軸部のCr、Mo及びVの合計量と他方の軸部のCr、Mo及びVの合計量の差が0.2質量%以上である。外層のCr、Mo及びV含有量をCr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、V:5.8〜10.0%とし、内層材のダクタイル鋳鉄の注湯条件を調整して、外層のCr、Mo及びVといった炭化物形成元素を内層に特定量混入させることにより、内層材からなる軸部の基地組織を固溶強化するとともに炭化物が形成され、軸部が硬化する。軸部の端部におけるCr、Mo及びVの合計量が、両側の軸部がともに0.15質量%未満ではクラッチ部の耐損耗性が不十分となる。2.0質量%を超えると生成される炭化物が多くなり過ぎるため、脆くなり軸部が折損するおそれがある。軸部の端部におけるCr、Mo及びVの合計量が、両側の軸部ともに0.2〜1.8質量%がより好ましい。軸部の端部におけるCr、Mo及びVの含有量は、軸部の端面又は軸部の端面からロール軸方向に100 mm以内の範囲から試料を採取して化学分析により算出する。また、軸部はさらに耐摩耗性等を改善するため、Cu:0.1〜1.0%、P:0.03〜0.1%、Ni:0.5〜2.5%、Mn:0.5〜1.5%のいずれか1種以上を含有させてもよい。
第二の遠心鋳造製複合ロールの外層は、質量基準で少なくともCr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、及びV及びNb:合計6.5〜10.0%(Nbが0%の場合を除く。)を含有する化学組成を含有するFe基合金からなる。この外層はさらに、質量基準でC:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.8%、及びNi:0〜5.0%を含有するのが好ましい。第二の遠心鋳造製複合ロールの外層の化学組成は、V及びNbの合計量としている点でのみ第一の遠心鋳造製複合ロールの外層の化学組成と異なる。従って、V及びNbの合計量についてのみ、以下詳述する。
Vと同様に、NbもCと結合して硬質MC炭化物を生成する。NbはV及びMoとの複合添加により、MC炭化物に固溶してMC炭化物を強化し、外層の耐摩耗性を向上させる。NbC系のMC炭化物は、VC系のMC炭化物より溶湯密度との差が小さいので、MC炭化物の偏析を軽減させる。V及びNbの合計量が6.5質量%未満では内層に溶け込む量が不足し、クラッチ部の耐損耗性が不十分である。一方、V及びNbの合計量が10.0質量%を超えると、比重の軽いMC炭化物が遠心鋳造中の遠心力により外層の内側に濃化し、MC炭化物の半径方向偏析が著しくなるだけでなく、MC炭化物が粗大化して合金組織が粗くなり、圧延時に肌荒れしやすくなる。より好ましくは、V及びNb:合計6.5〜8.5質量%である。
(a) C:1.0〜3.0質量%
CはV、Nb、Cr、Mo及びWと結合して硬質炭化物を生成し、外層の耐摩耗性の向上に寄与する。Cが1.0質量%未満では硬質炭化物の晶出量が少なすぎて外層に十分な耐摩耗性を付与することができない。
Siは溶湯の脱酸により酸化物の欠陥を減少する。Siが0.3質量%未満では溶湯の脱酸作用が不十分であり、酸化物欠陥が発生しやすい。一方、Siが2.0質量%を超えると合金基地が脆化し、外層の靱性は低下する。Siの含有量は好ましくはSi:0.3〜1.8質量%である。
Mnは溶湯の脱酸作用の他に、不純物であるSをMnSとして固定する作用を有する。Mnが0.1質量%未満ではそれらの効果は不十分である。一方、Mnが1.8質量%を超えてもさらなる効果は得られない。Mnの含有量は好ましくはMn:0.1〜1.6質量%である。
Niは基地組織の焼入れ性を向上させる。Niが3.5質量%を超えると残留オーステナイトが過剰になり、ベイナイト又はマルテンサイトに変態しにくくなる。Niの含有量は好ましくはNi:0〜3.3質量%である。
本発明の遠心鋳造製複合圧延ロールの外層は、上記必須組成要件の他に、少なくとも一種の下記の元素を含有しても良い。
WはCと結合して硬質のM6C及びM2Cの炭化物を生成し、外層の耐摩耗性向上に寄与する。またMC炭化物にも固溶してその比重を増加させ、偏析を軽減させる作用を有する。しかし、Wが10.0質量%を超えると、M6Cのネットワーク炭化物が過剰となり靭性が低下する。Wの含有量は好ましくはW:0.1〜8.0質量%である。
Moと同様に、WもCと結合して硬質炭化物(M6C、M2C)を生成し、外層の硬さを増加させるとともに、基地の焼入れ性を向上させる。また、Mo及びWはV及びNbとともに強靭かつ硬質なMC炭化物を生成し、耐摩耗性を向上させる。
TiはN及びOと結合し、酸化物又は窒化物を形成する。Tiの酸化物又は窒化物は溶湯中に懸濁されて核となり、MC炭化物を微細化及び均質化する。しかし、Tiが5.0質量%を超えると、溶湯の粘性が増加し、鋳造欠陥が発生しやすくなる。従って、Tiを添加する場合、その好ましい含有量は5.0質量%以下である。一方、Tiが0.003質量%未満ではその添加効果は不十分である。Tiの含有量は好ましくは0.003〜3.0質量%である。
AlはN及びOと結合して、酸化物又は窒化物を形成し、それが溶湯中に懸濁されて核となり、MC炭化物を微細均一に晶出させる。しかし、Alが2.0質量%を超えると、外層が脆くなり、機械的性質の劣化を招く。従って、Alの好ましい含有量は0.2質量%以下である。Alの含有量は好ましくは、Al:0.01〜1.0質量%である。
ZrはCと結合してMC炭化物を生成し、外層の耐摩耗性を向上させる。また溶湯中で生成したZr酸化物は結晶核として作用するために、凝固組織が微細になる。またMC炭化物の比重を増加させ偏析を防止する。しかし、Zrが0.5質量%を超えると、介在物を生成し好ましくない。一方、Zrが0.01質量%未満では、その添加効果は不十分である。Zrの含有量は好ましくは、Zr:0.01〜0.1質量%である。
Coは基地組織の強化に有効な元素である。しかし、Coが10質量%を超えると外層の靱性は低下する。従って、Coの含有量は10質量%以下が好ましい。一方、Coが0.1質量%未満では、その添加効果は不十分である。Coの含有量は好ましくは、Co:0.1〜6.0質量%である。
第一及び第二の遠心鋳造製複合ロールのいずれにおいても、外層は基地、MC炭化物、MC炭化物以外の炭化物(M2C、M6C等)を有する。
(1) 炭化物形成元素の分布
図1及び図2に示すように、内層2は、外層1に溶着した胴芯部21と、胴芯部21の両端から一体的に延出する駆動側軸部22及び従動側軸部23とを有する。外層1から内層2への「Cr、Mo、V及びNb」の拡散については、第一の遠心鋳造製複合ロールの場合、Nbの含有量がゼロであるので、「Cr、Mo及びV」の拡散を意味するものとする。従って、以下の説明では第一及び第二の遠心鋳造製複合ロールを区別せずに、単に本発明の遠心鋳造製複合ロールと呼ぶ。
最終製品の複合ロールにおいて内層用ダクタイル鋳鉄は、上記Cr、Mo、V及びNb以外に、質量基準でC:2.3〜3.6%、Si:1.5〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、及びNi:0.3〜2.0%を含有する。これらの元素の他に、脱酸剤として用いるAlを0.1%以下、硬度を向上させるためのCu、Sn、As又はSbを0.5%以下、及びフラックス又は耐火材から混入するB、Ca、Na又はZrを0.2%以下含有しても良い。また不純物として、S、P、N及びOを合計で約0.1%以下含有しても良い。内層用ダクタイル鋳鉄の好ましい化学組成は、質量基準でC:2.3〜3.6%、Si:1.5〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、Ni:0.3〜2.0%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、W:0〜0.7%、V:0.05〜1.0%、及びNb:0〜0.7%、Mg:0.01〜0.08%、残部が実質的にFe及び不可避的不純物である。その他、外層中の各元素もそれぞれ1%未満含有する。
本発明では内層2の鋳造の際に外層1のCr、Mo、V及びNbが駆動側軸部22及び従動側軸部23に混入するのを利用しているが、必要に応じて外層1と内層2の間に中間層を設けても良い。中間層の好ましい化学組成は、質量基準でC:0.8〜3.2%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.8%、Ni:0〜3.0%、Cr:0.1〜5.0%、Mo:0〜6.0%、W:0〜5.0%、V:0〜6.0%、及びNb:0〜3.0%である。その他、外層中の各元素もそれぞれ1%未満含有する。
図3及び図4は、遠心鋳造用円筒状鋳型30で外層1を遠心鋳造した後に内層2を鋳造するのに用いる静置鋳造用鋳型の一例を示す。静置鋳造用鋳型100は、内面に外層1を有する円筒状鋳型30と、その上下端に設けられた上型40及び下型50とからなる。円筒状鋳型30内の外層1の内面は内層2の胴芯部21を形成するためのキャビティ60aを有し、上型40は内層2の従動側軸部23を形成するためのキャビティ60bを有し、下型50は内層2の駆動側軸部22を形成するためのキャビティ60cを有する。遠心鋳造法は水平型、傾斜型又は垂直型のいずれでも良い。
図3に示す構造の円筒状鋳型30(内径800 mm、及び長さ2500 mm)を水平型の遠心鋳造機に設置し、表1に示す組成の溶湯を用いて外層1を遠心鋳造した。外層1が凝固した後、内面に外層1(外層の厚み90mm)が形成された円筒状鋳型30を起立させ、駆動側軸部22形成用の中空状下型50(内径600 mm、及び長さ1500 mm)の上に円筒状鋳型30を立設し、円筒状鋳型30の上に従動側軸部23形成用の中空状上型40(内径600 mm、及び長さ2000 mm)を立設し、図4に示す静置鋳造用鋳型100を構成した。
外層1の内面に表1に示す組成の中間層(中間層の厚み20mm)を形成した後、円筒状鋳型30を起立させた以外実施例1と同様にして、複合ロールを形成した。超音波検査を行った結果、外層1と中間層と内層2は健全に溶着していることが確認された。
○:クラッチ部の耐損耗性は良好であった。
×:クラッチ部が損耗しすぎて、複合ロールが使用不能になった。
23 従動側軸部、24 クラッチ部、25 凸状部、30 鋳型、40 上型、50 下型
Claims (5)
- 遠心鋳造法により形成した外層とダクタイル鋳鉄からなる内層とが溶着一体化した遠心鋳造製複合ロールであって、前記外層は、質量基準で少なくともCr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、及びV:5.8〜10.0%を含有する化学組成を含有するFe基合金からなり、前記内層は、前記外層に溶着した胴芯部と、前記胴芯部の両端から一体的に延出する軸部とを有し、両軸部とも端部におけるCr、Mo及びVの合計量が0.15〜2.0質量%であり、かつ一方の軸部と他方の軸部との間でCr、Mo及びVの合計量の差が0.2質量%以上であることを特徴とする遠心鋳造製複合ロール。
- 遠心鋳造法により形成した外層とダクタイル鋳鉄からなる内層とが溶着一体化した遠心鋳造製複合ロールであって、前記外層は、質量基準で少なくともCr:3.0〜10.0%、Mo:2.0〜10.0%、及びV及びNb:合計6.5〜10.0%を含有する化学組成を含有するFe基合金からなり、前記内層は、前記外層に溶着した胴芯部と、前記胴芯部の両端から一体的に延出する軸部とを有し、両軸部とも端部におけるCr、Mo、V及びNbの合計量が0.15〜2.0質量%であり、かつ一方の軸部と他方の軸部との間でCr、Mo、V及びNbの合計量の差が0.2質量%以上であることを特徴とする遠心鋳造製複合ロール。
- 請求項1項又は2に記載の遠心鋳造製複合ロールにおいて、前記外層がさらに質量基準でC:1.0〜3.0%、Si:0.3〜2.0%、Mn:0.1〜1.8%、及びNi:0〜3.5%を含有することを特徴とする遠心鋳造製複合ロール。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の遠心鋳造製複合ロールにおいて、前記外層がさらに質量基準でW:0〜10.0%、Ti:0.003〜5.0%、Al:0.01〜2.0%、Zr:0.01〜0.5%、及びCo:0.1〜10%の少なくとも一種を含有することを特徴とする遠心鋳造製複合ロール。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の遠心鋳造製複合ロールを製造する方法において、(1) 回転する遠心鋳造用円筒状鋳型で前記外層を遠心鋳造し、(2) 前記外層を有する前記円筒状鋳型を起立させ、その上下端にそれぞれ前記外層に連通する上型及び下型を設けて、静置鋳造用鋳型を構成し、(3)
前記上型、前記外層及び前記下型により構成されるキャビティに前記内層用の溶湯を鋳込む工程を有し、前記上型内における溶湯面の上昇速度が100 mm/秒以下で、前記下型及び前記外層内における溶湯面の上昇速度より小さいことを特徴とする方法。
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