JP2013170283A - 耐疲労性に優れた熱間圧延用遠心鋳造製ロール外層材および熱間圧延用遠心鋳造製複合ロール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:2.3〜2.9%、Si:0.2〜0.8%、Mn:0.2〜1.0%、Cr:5.0〜7.5%、Mo:4.4〜6.5%、V:5.3〜7.0%、Nb:0.6〜1.5%、Co:0.1〜4.0%を、14.0≦(Mo+1.7V)≦17.0(ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%))を満足するように含み、さらにAl:0.001〜0.03%および/またはREM:0.001〜0.03%を含有する組成を有し、炭化物を面積率で13〜40%含有する遠心鋳造製ロール外層材とする。これにより、表層の耐疲労性が顕著に向上する。また、このロール外層材に軸材を溶着一体化し、複合ロールとすることにより、表層の耐疲労性にも優れた、熱間仕上圧延用ロールとして好適な、遠心鋳造製複合ロールとなる。
【選択図】図3
Description
熱間圧延用ロール(作業ロール)の表面には、被圧延材を熱間圧延するに際し、ロール転動方向に作用するすべり応力、ロール軸方向に作用する転動応力とが繰返し作用し、さらにはバックアップロールからの繰返し転動応力が作用する。上記したようなロールの使用環境の苛酷化に伴い、特許文献1、2に記載されたロール外層材を使用しても、このような熱と応力の繰返し負荷により、作業ロール表層が疲労し、ロール圧延面の肌荒れ、疲労疵、表層の欠落ちなど、疲労損傷の発生が大きな問題となっている。
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、欠落ちや疲労疵などの疲労損傷を抑制できる、耐疲労性に優れた熱間圧延用遠心鋳造製ロール外層材および熱間圧延用遠心鋳造製複合ロールを提供することを目的とする。
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。質量%で、C:2.1〜3.1%、Si:0.3〜0.7%、Mn:0.3〜1.0%、Nb:0.7〜1.4%、Co:0〜3.1%を含み、さらにCrを4.8〜9.8%、Moを3.8〜6.9%、Vを4.9〜7.3%の範囲で変化させ、さらにAlを0〜0.018%、REMを0〜0.023%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の溶湯を、高周波炉で溶解し、ロール外層材に相当するリング状ロール材(外径:250mmφ、肉厚:55mm)を遠心鋳造法により鋳造した。なお、鋳込み温度は1380℃〜1450℃、遠心力は重力倍数で176Gとした。鋳造後、焼入れ処理、焼戻処理を施し、硬さをHS 78〜86に調整した。なお、焼入れ処理は、加熱温度:1050℃に加熱し、空冷あるいは炉冷する処理とし、焼戻処理は、焼戻温度:540〜560℃に加熱する処理とした。
得られたリング状ロール材から疲労試験片(外径60mmφ、肉厚10mm)を採取して、熱間転動疲労試験を実施した。なお、疲労試験片には、図2に示すようなノッチ(深さt:1.2mm、周方向長さL:0.8mm)を外周面の2箇所(180°離れた位置)に、0.20mmφのワイヤを用いた放電加工(ワイヤカット)法で導入した。また、疲労試験片の転動面の端部には面取り(1.2C)を施した。
なお、図3では、質量%で、C:2.1〜3.1%、Si:0.3〜0.7%、Mn:0.3〜1.0%、Nb:0.7〜1.4%、Co:0〜3.1%を含み、さらにCrを4.8〜9.8%、Moを3.8〜6.9%、Vを4.9〜7.3%を含有する範囲で、かつAlおよび/またはREMを含有する場合と、Al、REMを含有しない場合に限定して、示した。なお、Coを含有しない場合も区別して示した。
図3から、(Mo+1.7V)が14.0〜17.0の範囲で、かつAlおよび/またはREMを含有する場合(●印)には、折損転動回転数の比が1.5以上と、従来例(△印)に比して増加しており、耐熱間転動疲労性が顕著に向上していることがわかる。一方、(Mo+1.7V)が14.0〜17.0の範囲内であってもAl、REMを含有しない場合(×印)には、顕著な、折損転動回転数の比の増加は認められない。
(1)熱間圧延用遠心鋳造製複合ロールに用いられるロール外層材であって、質量%で、C:2.3〜2.9%、Si:0.2〜0.8%、Mn:0.2〜1.0%、Cr:5.0〜7.5%、Mo:4.4〜6.5%、V:5.3〜7.0%、Nb:0.6〜1.5%、Co:0.1〜4.0%を、次(1)式
14.0 ≦(Mo+1.7V)≦ 17.0 ‥‥(1)
(ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含み、さらにAl:0.001〜0.03%および/またはREM:0.001〜0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐疲労性に優れた熱間圧延用遠心鋳造製ロール外層材。
14.0 ≦(Mo+1.7V)≦ 17.0 ‥‥(1)
(ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含み、さらにAl:0.001〜0.03%および/またはREM:0.001〜0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐疲労性に優れた熱間圧延用遠心鋳造製複合ロール。
C:2.3〜2.9%
Cは、固溶して基地硬さを増加させるとともに、炭化物形成元素と結合し硬質炭化物を形成し、ロール外層材の耐摩耗性を向上させる作用を有する。C含有量に応じて共晶炭化物量が変化する。共晶炭化物は圧延使用特性に影響するため、C含有量が2.3%未満では、共晶炭化物量が不足し、圧延時の摩擦力が増加し圧延が不安定となるとともに、ロール外層材の圧縮0.2%耐力が低下する。一方、2.9%を超える含有は、共晶炭化物量を過度に増加させ、ロール外層材を硬質、脆化させて、疲労亀裂の発生・成長を促進し、耐疲労性を低下させる。このため、Cは2.3〜2.9%の範囲に限定した。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、溶湯の鋳造性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.2%以上の含有を必要とする。一方、0.8%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Siは0.2〜0.8%に限定した。
Mnは、SをMnSとして固定し、Sを無害化する作用を有するとともに、一部は基地に固溶し、焼入れ性を向上させる効果を有する元素である。このような効果を得るためには0.2%以上の含有を必要とするが、1.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、さらには材質を脆化する場合もある。このため、Mnは0.2〜1.0%に限定した。
Crは、Cと結合して主に共晶炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させるとともに、圧延時に鋼板との摩擦力を低減し、ロールの表面損傷を軽減させ、圧延を安定化させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには5.0%以上の含有を必要とする。一方、7.5%を超える含有は、硬脆な共晶炭化物が増加しすぎて、耐疲労性を低下させる。このため、Crは5.0〜7.5%の範囲に限定した。
Moは、Cと結合して硬質な炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる元素である。また、Moは、V、NbとCが結合した硬質なMC型炭化物中に固溶して、炭化物を強化するとともに、共晶炭化物中にも固溶し、それら炭化物の破壊抵抗を増加させる。このような作用を介してMoは、ロール外層材の耐摩耗性、耐疲労性を向上させる。このような効果を得るためには、4.4%以上の含有を必要とするが、6.5%を超える含有は、Mo主体の硬脆な炭化物が生成し、耐熱間転動疲労性を低下させ、耐疲労性を低下させる。このため、Moは4.4〜6.5%の範囲に限定した。
Vは、ロールとしての耐摩耗性と耐疲労性とを兼備させるために、本発明において重要な元素である。Vは、極めて硬質な炭化物(MC型炭化物)を形成し、耐摩耗性を向上させるとともに、共晶炭化物を分断、分散晶出させることに有効に作用し、耐熱間転動疲労性を向上させ、ロール外層材としての耐疲労性を顕著に向上させる元素である。このような効果は、5.3%以上の含有で顕著となるが、7.0%を超える含有は、MC型炭化物を粗大化させるとともに、MC型炭化物の遠心鋳造偏析を助長させるため、圧延用ロールの諸特性を不安定にする。このため、Vは5.3〜7.0%の範囲に限定した。
Nbは、MC型炭化物に固溶してMC型炭化物を強化し、MC型炭化物の破壊抵抗を増加させる作用を介し、耐摩耗性、とくにさらに耐疲労性を向上させる。NbとMoとがともに、炭化物中に固溶されることにより、耐摩耗性とさらには耐疲労性の向上が顕著となる。また、Nbは、共晶炭化物の分断を促進させ、共晶炭化物の破壊を抑制する作用を有し、ロール外層材の耐疲労性を向上させる元素である。また、NbはMC型炭化物の遠心鋳造時の偏析を抑制する作用を併せ有する。このような効果は、0.6%以上の含有で顕著となるが、1.5%を超える含有は、溶湯中でのMC型炭化物の成長を促進させ、遠心鋳造時の炭化物偏析を助長する。このため、Nbは0.6〜1.5%の範囲に限定した。
Coは、基地中に固溶し、とくに高温において基地を強化して、耐疲労性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、4.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Coは0.1〜4.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.2〜3.0%である。
14.0 ≦(Mo+1.7V)≦ 17.0 ‥‥(1)
(ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含有する。
図3に示すように、Mo、Vを(Mo+1.7V)が上記した(1)式を満足するように調整して含有することにより、Alおよび/またはREMを含有する場合には、基準(従来例)に比べて折損転動数が顕著に増加し、耐熱間転動疲労性が顕著に向上する。(Mo+1.7V)は、耐熱間転動疲労性向上の駆動力となる重要なファクターであり、(Mo+1.7V)が14.0〜17.0の範囲に調整されてはじめて、優れた耐熱間転動疲労性を維持することができる。(Mo+1.7V)が14.0〜17.0の範囲を外れると、Alおよび/またはREMを含有する場合でも、耐熱間転動疲労性が劣化する。このため、本発明ではMo、V含有量を(1)式を満足するように調整することにした。
Al:0.001〜0.03%および/またはREM:0.001〜0.03%
Alおよび/またはREMは、Mo、Vが上記した(1)式を満足するように含有される場合にはじめて、図3に示すように、耐熱間転動疲労性を著しく向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、Al、REMをそれぞれ0.001%以上含有する必要がある。一方、Al、REMをそれぞれ0.03%を超えて含有しても、上記した効果が飽和するうえ、気泡生成や溶鋼の流動性が低下するなど鋳造性が低下する。このため、Al:0.001〜0.03%および/またはREM:0.001〜0.03%の範囲に限定した。
不可避的不純物としては、P:0.05%以下、S:0.05%以下、N:0.06%以下が例示できる。Pは、粒界に偏析し、材質を劣化させるため、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、0.05%以下であれば許容できる。また、Sは、硫化物系介在物として存在し材質を低下させるため、できるだけ低減することが好ましいが、0.05%以下であれば許容できる。Nは、通常の溶解であれば、0.06%以下程度混入するが、この程度であれば本発明の効果に影響することはない。なお、Nは、複合ロールの外層と中間層あるいは内層との境界に欠陥を生成する場合があるため、0.05%未満とすることが好ましい。
まず、本発明では、ロール外層材の製造方法は、エネルギーコストの低い安価な、遠心鋳造法とする。
まず、内面にジルコン等を主材とした耐火物が被覆された、回転する鋳型に、上記したロール外層材組成の溶湯を、所定の肉厚となるように、注湯し、遠心鋳造する。そして、中間層を形成する場合には、ロール外層材の凝固途中あるいは完全に凝固したのち、鋳型を回転させながら、中間層組成の溶湯を注湯し、遠心鋳造することが好ましい。外層あるいは中間層が完全に凝固したのち、鋳型の回転を停止し鋳型を立ててから、内層材を静置鋳造して、複合ロールとすることが好ましい。これにより、ロール外層材の内面側が再溶解され外層と内層、あるいは外層と中間層、中間層と内層とが溶着一体化した複合ロールとなる。
本発明の熱間圧延用複合ロールは、鋳造後、熱処理を施されることが好ましい。熱処理は、950〜1150℃に加熱し空冷あるいは衝風空冷する工程と、さらに450〜600℃に加熱保持したのち冷却する工程を1回以上施す処理とすることが好ましい。
得られたリング状試験材から、硬さ試験片、圧縮試験片、熱間転動疲労試験片および組織観察用試験片を採取して、硬さ試験、圧縮試験、熱間転動疲労試験および組織観察試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)硬さ試験
得られた硬さ試験片について、JIS Z 2244 の規定に準拠して、ビッカース硬さ計(試験力:50kgf(490kN))でビッカース硬さHV50を測定し、JIS換算表でショア硬さHSに換算した。なお、測定点は各10点とし、最高値、最低値を削除して算術平均し、その試験材の硬さとした。
(2)圧縮試験
得られた圧縮試験片(直径10mmφ×長さ20mm)について、室温で圧縮試験を実施した。繰り返し数は2本とした。なお、圧縮試験では、圧縮試験片の中央部に歪ゲージを貼付し、応力−歪曲線を測定し、得られた応力−歪曲線から0.2%耐力を読み取った。各試験材の0.2%耐力は、試験片2本でそれぞれ得られた0.2%耐力の平均値とした。
(3)熱間転動疲労試験
得られたリング状試験材から図2に示す形状の熱間転動疲労試験片(外径60mmφ、肉厚10mm、面取り有)を採取した。熱間転動疲労試験片には、図2に示すようなノッチ(深さt:1.2mm、周方向長さL:0.8mm)を外周面の2箇所(180°離れた位置)に、0.20mmφのワイヤを用いた放電加工(ワイヤカット)法で導入した。
(4)組織観察試験
得られた組織観察用試験片を、研磨し、ナイタール腐食して、画像解析装置を用い、光学顕微鏡倍率:50倍で、組織を観察した。得られた画像を2値化して、炭化物の面積率を測定し、各試験材の炭化物量とした。
Claims (2)
- 熱間圧延用遠心鋳造製複合ロールに用いられるロール外層材であって、質量%で、
C:2.3〜2.9%、 Si:0.2〜0.8%、
Mn:0.2〜1.0%、 Cr:5.0〜7.5%、
Mo:4.4〜6.5%、 V:5.3〜7.0%、
Nb:0.6〜1.5%、 Co:0.1〜4.0%
を、下記(1)式を満足するように含み、さらにAl:0.001〜0.03%および/またはREM:0.001〜0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐疲労性に優れた熱間圧延用遠心鋳造製ロール外層材。
記
14.0 ≦(Mo+1.7V)≦ 17.0 ‥‥(1)
ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%) - 外層と、該外層と溶着一体化した内層とからなる遠心鋳造製複合ロールであって、前記外層が、質量%で、
C:2.3〜2.9%、 Si:0.2〜0.8%、
Mn:0.2〜1.0%、 Cr:5.0〜7.5%、
Mo:4.4〜6.5%、 V:5.3〜7.0%、
Nb:0.6〜1.5%、 Co:0.1〜4.0%
を、下記(1)式を満足するように含み、さらにAl:0.001〜0.03%および/またはREM:0.001〜0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐疲労性に優れた熱間圧延用遠心鋳造製複合ロール。
記
14.0 ≦(Mo+1.7V)≦ 17.0 ‥‥(1)
ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
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