JP2015062392A - 毛細血管の製造方法および毛細血管の製造装置 - Google Patents

毛細血管の製造方法および毛細血管の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】毛細血管を形成する新規な技術を提供する。
【解決手段】3次元編目状の空隙103が設けられた基材101に、血管形成能を有する細胞105、および、細胞105の培養液107を添加する工程と、基材101を貫通する空隙103内に培養液107の流れ111を生じさせながら細胞105を培養することにより、流れ111に沿って、細胞105から構成された毛細血管113を形成する工程と、を含む、毛細血管の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、毛細血管の製造方法および毛細血管の製造装置に関する。
人工血管の構築に関連する技術として、非特許文献1〜4に記載ものがある。
非特許文献1には、高分子膜上に血管内皮細胞を接着させて培養し、高分子膜上に内皮層を形成する技術が記載されている。
非特許文献2には、繊維性スキャフォルド上に繊維芽細胞を接着させて、培養する技術が記載されている。
非特許文献3には、エラスチンファイバー上に平滑筋細胞を培養することで、エラスチンファイバーと平滑筋細胞で構成された人工血管を形成する技術が記載されている。
また、非特許文献4には、細胞が接着し培養しやすい繊維の作製に関する技術が記載されている。
H. Borteh他2名、「POROUS MICROFLUIDICS: A UNIQUE PLATFORM FOR TRANSVASCULAR STUDY」、Tech. Dig. IEEE Electro Mech. Syst.、2011年、第24巻、第2号、p.952−955 舟久保昭夫他2名、「人工臓器と細胞の融合技術に関する基礎研究」、2009年、Research Report 2009, FRONTIER R&D CENTER, Tokyo Denki University 小西綾子他5名、「エラスチンファイバーマトリックスを用いる血管平滑筋細胞の培養評価、第7回生活支援工学系学会連合大会講演要旨集、2009年、第7巻、ROMBUNNO.2I2−3(162)、P.43 和田知明他3名、「繊維性スキャフォルドの配向制御による小口径人工血管開発への試み」、人工臓器、2012年、第41巻、第2号、p.S.162
上述の技術のうち、非特許文献1に記載の技術は、人工的に作成した足場の上に細胞を接着させて培養をおこない、血管の類似構造を形成しようとするものである。
また、非特許文献2〜4に記載の技術は、人工的に作成した足場の上に細胞を接着させて培養をおこない、足場を構成する繊維と細胞とから構成される小口径人工血管を形成しようとするものである。足場として繊維を用いる場合、形成される人工血管のサイズは、上記繊維の太さより大きくなる。
このように、非特許文献1〜4に記載の技術を用いて血管を形成しようとした場合、足場自体が人工血管の一部をなす構成となる。
一方、細胞を3次元空間内で培養したり、組織化したりすることは、2次元空間内にて細胞を培養する場合に比べて技術的な困難性が高いことから、細胞により構成されている血管を生体外で形成することは困難であった。
こうしたことから、5μm〜10数μm程度の内径、つまり毛細血管の内径程度の太さを有する血管および血管網を構築する技術は、未だに確立されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、毛細血管を形成する新規な技術を提供するものである。
本発明者らは、血管内皮細胞等の血管形成能を有する細胞が、流体の流れのある部分に集まって管を形成する性質を有することを見出した。さらに、流れのある3次元網目状の空隙内でかかる細胞を培養し、空隙内の培養液の流れに沿って細胞を集合させることにより、毛細血管を形成する技術を完成させるに至った。
本発明によれば、
3次元編目状の空隙が設けられた基材に、血管形成能を有する細胞、および、前記細胞の培養液を添加する工程と、
前記基材を貫通する前記空隙内に前記培養液の流れを生じさせながら前記細胞を培養することにより、前記培養液の流れに沿って、前記細胞から構成された毛細血管を形成する工程と、
を含む、毛細血管の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、
3次元編目状の空隙が設けられた基材であって、血管形成能を有する細胞が接種される前記基材と、
前記基材に前記細胞の培養液を供給し、前記基材を貫通する前記空隙内に前記培養液の流れを生じさせる供給手段と、
を含む、毛細血管の製造装置が提供される。
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
本発明によれば、毛細血管を形成する新規な技術を提供することができる。
実施形態における毛細血管の製造方法を模式的に説明する図である。 実施形態における毛細血管の製造装置の構成を説明する図である。 実施形態における毛細血管の製造装置の構成を説明する図である。 実施例における毛細血管の製造装置の構成を示す図である。 実施例におけるランダムスキャフォルドの製造方法を説明する図である。 実施例におけるランダムスキャフォルドの構成部材を示す図である。 実施例における細胞培養の手順および条件を説明する図である。 実施例における位相差顕微鏡観察結果を示す図である。 実施例における位相差顕微鏡観察結果を示す図である。 実施例における位相差顕微鏡観察結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図1(a)〜図1(d)は、本実施形態における毛細血管の製造方法を模式的に説明する図である。
図1に示した毛細血管の製造方法は、たとえば、以下の工程を含む。
(工程1)3次元編目状の空隙103が設けられた基材101(図1(a))に、血管形成能を有する細胞105、および、細胞105の培養液107を添加する(図1(b))工程;ならびに、
(工程2)基材101を貫通する空隙103内に、培養液107の流れ111を生じさせながら、細胞105を培養することにより(図1(c))、流れ111に沿って、細胞105から構成された毛細血管113を形成する(図1(d))工程。
はじめに、工程1について説明する。
工程1は、さらに具体的には、3次元編目状の空隙103が設けられた基材101を準備する工程(図1(a))を含む。基材101の材料および構造に限定はなく、3次元編目状の空隙103が形成されており、たとえば少なくとも一部の空隙103が基材101を貫通しているものであればよい。
また、図1(a)において、基材101中の空隙103が繋がって、培養液107(培地)の流れる通路となっている。基材101の外部から供給された培養液107は、空隙103を通って基材101の外部に流出する。
空隙103の幅は、空隙103内に細胞105が毛細血管を形成することができる程度の大きさであればよく、たとえば10μm以上、好ましくは20μm以上とする。また、毛細血管の太さに対応する程度の内径を有する血管を空隙103内に効率よく形成する観点からは、空隙103の幅をたとえば50μm以下、好ましくは30μm以下とする。
また、空隙103の網目の態様に特に制限はなく、空隙103が3次元方向にランダムな網目状であってもよい。または、空隙103の延在方向または配置方向が基材101内において所定の方向に沿って配向していてもよい。より生体内に近い場を細胞105に与える観点からは、空隙103がランダムな網目状であることが好ましい。
基材101は、3次元構造を有するものであれば形状や大きさに制限はなく、形成したい毛細血管113の大きさや空間配置に応じた形状、大きさとすることができる。
本実施形態の方法においては、3次元(たとえば、奥行きや深さ)方向にも細胞105を培養することができるため、基材101に所定の厚みを持たせることができる。
また、基材101の材料として、たとえば、有機材料、無機材料、金属材料、生体材料およびこれらの複合材料が挙げられる。毛細血管113をより一層確実に形成する観点からは、基材101が生体適合性に優れた材料により構成されていることが好ましい。
基材101には、たとえばこれを貫通する複数の空隙103が網目状に3次元に張り巡らされており、基材101は空隙103の外壁を構成する。
このような構造の具体例として、図1(a)〜図1(d)には、基材101が3次元繊維性スキャフォルドを含み、空隙103が、3次元繊維性スキャフォルドを構成する繊維間の空隙部である構造を示した。以下、基材101が3次元繊維性スキャフォルド等の繊維基材である例を中心に説明するが、基材101の構造はこれに限られない。
3次元繊維基材を構成する繊維の材料の例として、有機材料、無機材料、金属材料、生体材料等が挙げられる。
また、繊維が高分子材料により形成されていてもよく、その具体例として、セグメント化ポリウレタン(Segmented Polyurethane:SPU)等のポリウレタン系高分子、ポリ乳酸等が挙げられる。材料自体の耐久性と生体適合性とのバランスの観点からは、ポリウレタン系高分子が好ましい。
繊維の形成方法は、材料の種類および繊維の太さに応じて適宜選択される。たとえば、ナノ〜マイクロメートルオーダーの繊維を3次元的に形成する方法として、エレクトロスピニング法が挙げられる。
繊維の外径は、空隙103内の細胞105の過度の移動を抑制し、流れ111に沿ってより一層安定的に毛細血管113を形成する観点からは、たとえば1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上とする。
また、毛細血管113をより一層効率よく形成する観点からは、繊維の外径を10μm以下、好ましくは5μm以下とする。
毛細血管113の径のばらつきを抑制する観点からは、繊維状基材を構成している繊維の外径のばらつきを小さくすることが好ましい。
また、繊維性基材の空隙率は、細胞培養の観点からは、たとえば10%以上、好ましくは15%以上とする。また、空隙103内での細胞105の易動性を適度に高める観点からは、繊維性基材の空隙率をたとえば40%以下、好ましくは30%以下とする。
なお、繊維の外径および繊維性基材の空隙率は、たとえば繊維性基材の走査型電子顕微鏡観察により算出することができる。
このうち、繊維の外径は、たとえば数平均であり、観察された繊維性基材像中の複数の繊維の粒子径を測定することにより算出できる。
また、繊維性基材の空隙率は、たとえば非特許文献2に記載の方法に準じて求めることができる。具体的には、1cm×1cm×200μmの角材状に切断した繊維性基材の重量W(g)および体積(V)を求めることにより、以下の式から空隙率P(%)が算出される。
P=(1−W/V)×100
以上、基材101が繊維状基材である場合を例に説明した。基材101の構造はこれには限られず、他のメッシュ状、スポンジ状等の3次元構造であってもよい。また、他の基材101の構造の例として、たとえば脱細胞した生体スキャフォルドが挙げられる。
次に、基材101に添加される細胞105は、毛細血管形成能を有するものであり、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞等が挙げられる。
また、培養液107は、用いる細胞105の種類に応じて適宜選択される。
つづいて、工程2の毛細血管を形成する工程(図1(c)および図1(d))を説明する。
工程2は、たとえば、空隙103内に、培養液107の流れ111に沿って毛細血管113を形成させる工程である。また、工程2は、たとえば、細胞105が培養液107の流れ111を包み込むように毛細血管113を形成する工程である。
また、工程2は、たとえば細胞105を灌流培養する工程を含む。灌流培養により、空隙103内に培養液107の流れ111を継続的かつ効率的に生じさせることができるため、簡便で確実に毛細血管113を形成することができる。
なお、図1(c)および図1(d)では、流れ111のある系で培養をおこなう例として、基材101の内部または一辺に複数の管状の送液部109が互いに平行に配置され、送液部109の各末端(供給口)から培養液107を供給しながら細胞105を培養する方法を示したが、空隙103内に流れ111を生じさせる態様に制限はない。
たとえば、図3(a)および図3(b)を参照して後述するように、工程2の毛細血管を形成する工程は、基材101に包埋した管状部材を設け、管状部材に設けられた複数の供給口から基材101に培養液107を供給しながら細胞105を培養する工程を含んでいてもよい。
基材101への培養液107の供給速度は、空隙103内に好適な流れ111を生じさせる観点からは、たとえば1.0mL/min以上、好ましくは1.5mL/min以上とする。また、細胞105に毛細血管113をさらに確実に形成させる観点からは、基材101への培養液107の供給速度をたとえば10mL/min以下、好ましくは5mL/min以下とする。ただし、送液部109の供給口やチューブ123の供給口125(図3(b))の開口幅により培養液107の供給速度は大きく異なる。
次に、工程2において形成される毛細血管113について説明する。
毛細血管113は、生体内または生体外において、当該生体の毛細血管またはその一部として用いうる程度の形状を有する毛細管であって、細胞105から実質的に構成される。さらに具体的には、毛細血管113は、たとえば基材101の材料を実質的に含まない毛細管である。また、毛細血管113の側壁は、たとえば単層の細胞105により構成される。
毛細血管113の長さは、毛細血管113の用途に応じて決めることができる。
また、毛細血管113は、たとえば生体の毛細血管と同程度の内径を有する。毛細血管113内で赤血球を好適に移動させうる構成とする観点からは、毛細血管113の内径をたとえば3μm以上、好ましくは5μm以上とする。また、生体内で形成される毛細血管の内径に対応させる観点からは、毛細血管113の内径をたとえば20μm以下、好ましくは15μm以下とする。
また、得られた毛細血管113は、たとえばピンセットで取り出すなどの所定の方法で基材101から分離して用いることができる。
たとえば、生体外で形成された毛細血管113を生体内の所定の位置に配設することにより、生体内に毛細血管113を起点とする毛細血管網を発達させることができる。
また、人工肺、人工心臓等の人工臓器や組織培養による再生臓器の構成部材として毛細血管113を用いることもできる。
次に、毛細血管113の形成装置の具体例を示す。
図2は、本実施形態における毛細血管113の形成装置を示す図である。
図2に示した装置120は、3次元編目状の空隙103が設けられた基材101であって、血管形成能を有する細胞105が接種される基材101と、基材101に細胞105の培養液107を供給し、基材101を貫通する空隙103内に培養液107の流れ111を生じさせる供給手段121と、を含む。
図2においても、基材101が3次元繊維性スキャフォルドである構成が例示されている。図2の装置120においても、繊維間の空隙部すなわち空隙103に培養液(図2には不図示)が流れる。
また、図3(a)および図3(b)は、図2に示した装置120のより詳細な構成例を示す図である。
図3(a)に示した装置122では、供給手段121が、基材101に培養液107を供給する供給部材(チューブ123)と、チューブ123への培養液107の供給を調節する調節手段(ポンプ127)と、を含む。
チューブ123は、ポンプ127の供給部材であって、基材101に包埋して設けられた管状部材である。図3(a)では、基材101に包埋しこれを貫通するチューブ123が配置されている。
また、図3(b)は、装置122において、基材101の厚さ方向の断面図であり、基材101内に埋設されたチューブ123の構成を示す図である。図3(b)では、図3(a)に示した基材101のうち、チューブ123の下方にある基材101aが示されている。
チューブ123の材料として、有機材料、無機材料、金属材料、生体材料およびこれらの複合材料等が挙げられる。チューブ123は、生体適合性に優れた材料により構成されていることが好ましい。たとえば、人工血管の側壁にこれを貫通する供給口を形成したものをチューブ123として用いることもできる。
チューブ123には、その延在方向に沿って複数の供給口125が設けられている。複数の供給口125は、チューブ123の延在方向に沿って配置されている。また、このとき、複数の供給口125は、たとえば基材101に対して同じ方向に開いており、図3(b)では、基材101の上面に平行な同じ向きに開いている。また複数の供給口125は、基材101に対してランダム方向に開いていてもよく、供給口125により基材101内に培養液107の流れ111が出来ることが重要である。
また、チューブ123の内径および供給口125の開口幅は、基材101内に培養液107を効率よく供給する観点から、たとえば、チューブ123の内径を1〜3mm程度とする。
また、供給口125の開口幅をたとえば30〜500μm程度とする。また、チューブ123が基材101に埋設されるとき、たとえば、基材101の厚さがチューブ123の外径よりも大きい構成とする。
また、供給口125は、空隙103に直接連通することが好ましい。こうすることにより、たとえばチューブ123に接続する毛細血管113を形成することも可能となるため、得られた毛細血管113と基材101との分離を容易におこなうことができる。また、さらに、チューブ123として、人工血管として機能しうる性状のものを用いることにより、チューブ123および毛細血管113の複合体としての利用も可能となる。
また、ポンプ127は、チューブ123に培養液107を供給する。ポンプ127は、基材101への培養液107の供給または排出を調節する機能を有する。
図3(a)および図3(b)に示した装置122を用いることにより、細胞105を灌流培養することができるため、空隙103内に培養液107の流れ111を継続的かつ効率的に生じさせて、簡便で確実に毛細血管113を形成することができる。
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態においては、基材101を貫通する空隙103に培養液107の流れ111を生じさせながら細胞105を培養する。このため、流れ111に沿って細胞105を集め、細胞105から構成される毛細血管を形成することができる。
前述した非特許文献1〜4においては、人工物の足場に細胞を接着させて培養していたのに対し、本実施形態においては、空隙103の流れ111領域において細胞105に自発的に毛細血管113を形成させることができる。3次元繊維性スキャフォルド等の基材101には、3次元網目状の空隙103が設けられているため、基材101中に流れ111領域を効率よく形成することができ、細胞105による毛細血管の形成を効果的に促すことができる。
また、再生医療分野においては、3次元空間内での細胞培養が必要不可欠であるものの、発明が解決する課題の項において前述したとおり、細胞の3次元培養は2次元培養に比べて技術的に大きな困難を伴うものであった。
すなわち、2次元培養の場合、細胞は培養液上にほぼ均一に播種されるため、それぞれの細胞が培養液に接触することができ、栄養を摂取することができる。また、酸素の取り込みも容易であり、細胞の増殖に関わる不足事項が特に存在しない状態で細胞を培養することができる。
しかし、3次元培養の場合、培養液に接している表面部分の細胞に関しては、栄養分やガスの供給がおこなわれるものの、奥行き(深さ)方向に存在する細胞に関しては、直接培養液やガスに接触することができず、長時間にわたって細胞を培養し、生存させておくことはできなかった。
また、iPS細胞等を使用した再生医療では、細胞の2次元的な培養は容易に実現できるものの3次元培養は困難であった。3次元のスキャフォルドは作製可能であっても、奥行き方向に存在する細胞に対して栄養や酸素を供給することができないため、表面以外の部分の細胞は細胞死を起こしてしまう。
これに対し、本実施形態においては、3次元網目状の空隙103に培養液107の流れ111を生じさせながら細胞105を培養する構成となっている。このため、毛細血管を構築させた三次元繊維性スキャフォルドに心筋細胞などの目的とする細胞を3次元方向に培養または増殖させるとともに、3次元方向における細胞へのガスや培養液の供給や老廃物の排出が可能となるため、細胞の組織化およびこれによる毛細血管の安定的な形成が可能となる。
また、血管を作る場所を人為的にコントロールすることは難しいが、本実施形態においては血管内皮細胞等の細胞105が必要に応じて毛細血管網を拡大していくので、細胞105にとって最適な毛細血管網が構築できる。
生体組織や臓器のほとんどは3次元構造を形成しており、今後の再生医療には3次元培養技術が必要不可欠であるところ、本実施形態により構築された毛細血管網は、3次元的な広がりを有することが可能であるため、3次元の細胞培養を初めて安全に実施させるための方法として再生医療の発展に大きく貢献することが期待される。
また、本実施形態においては、基材101として3次元スキャフォルドを用いることにより、スキャフォルドを構成する繊維間の空隙103領域に、毛細血管を形成することができる。またとえばランダムネットワーク構造を有する3次元スキャフォルドを用いることにより、空隙領域にランダムに毛細血管網を構築することも可能となる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
本実施例では、細胞固定培養および灌流培養の2つの方法による毛細血管の形成をおこなった。
まず、本実施例で用いた装置の構成および作製方法を説明する。
図4(a)〜図4(c)は、灌流培養に用いた毛細血管の製造装置の構成を示す図である。以下の実施例においては、図4(a)〜図4(c)に示した装置130を用いて毛細血管を形成した。図4(b)は、図4(a)の点線内を拡大して示す図である。また、図4(c)は、装置内の培地の流れを説明する図である。
装置130は、装置122(図3(a)および図3(b))の構成を有する。装置130において、プレートの片面に3次元ランダムスキャフォルドを積層させ、その積層面の上に供給口125を設けたチューブ123を取り付けた。そしてその上から3次元ランダムスキャフォルドを再び積層させ、チューブ123が包埋された基材101を用いた。基材101はシャーレ135内に配置されている。また、基材101内を、供給口125のあいたチューブ123が貫通している。
本実施例では、チューブ123としては、人工血管を用いた。人工血管の一端には、培地を供給する供給管131が接続され、他端には培地を排出する排出管133が接続されている。供給管131および排出管133はポンプ127に接続されており、ポンプ127を用いて培地の供給および排出を調節しながら、灌流培養がおこなわれる。
装置130およびその構成部材の作製方法は、以下の通りである。
(人工血管の作製)
チューブ123として用いた人工血管は、SPUのエレクトロスピニングにより、以下の手順で作製した。表1に、人工血管の作製条件をまとめて示す。また、図6(c)に、得られた人工血管を示す。
1.エレクトロスピニング装置に1.5mmのマンドリルを設置した。
2.20mLのシリンジに、濃度13%のSPUを充填し、18Gのニードルを接続した。
3.エレクトロスピニング装置にSPUを充填したシリンジを設置した。
4.電極間を200mm、トラバース距離を200mmに設定した。
5.印加電圧15kV、シリンジ速度0.15mm/min、トラバース速度25cm/min、ターゲット速度200rpmに設定し、4.0min間スピニングした。
6.スピニング終了後、エレクトロスピニング装置からマンドリルを外し、乾燥させた。
7.マンドリルから人工血管を外した。
8.人工血管を45mmの長さに切断した。
9.45mmの人工血管を21Gのニードルにつけ、5mm間隔で片面に目印をプロットした。
10.27Gの注射針を用いて、プロット点に供給口をあけた(片面)。
(人工血管付き基材の作製)
装置130中の基材101としては、3.7cm×3.7cmのプレート上にセグメント化ポリウレタンをエレクトロスピニングして得られたランダムスキャフォルドを用いた。
図5は、本実施例におけるランダムスキャフォルドの製造方法を説明する図である。また、図6(a)および図6(b)に、それぞれ、用いたプレートおよび得られたランダムスキャフォルドを示す。
具体的な作製手順は、以下の通りである。
1.ハイブリッド細胞シート用プレート(以下、単に「プレート」ともいう。)を200mm×200mmの陰極板に両面テープで固定した。
2.20mLのシリンジに濃度13%のSPUを充填し、18Gのニードルを接続した。
3.エレクトロスピニング装置にSPUを充填したシリンジを設置した。
4.電極間を200mmとし、陰極板を設置した。
5.印加電圧15kV、シリンジ速度0.15mm/minに設定し、10.0min間スピニングした。
6.スピニング後、陰極板からスキャフォルドとプレートを分離した。
7.1mLのシリンジと21Gのニードルを用いて、SPUによりスキャフォルドをプレートの一方の面に堆積した。
8.前述した方法で得られた人工血管(図6(c))を、供給口が側面に配置されるようにスキャフォルド面上に配置し、人工血管とスキャフォルドとをSPUで固定した。
9.人工血管を固定したプレートを陰極板に固定した。
10.電極間を200mm、印加電圧15kV、シリンジ速度0.15mm/minに設定し、5.0min間スピニングした。
11.スピニング後、陰極板からスキャフォルドとプレートを分離した。
12.1mLのシリンジと21Gのニードルを用いて、プレートに固定したスキャフォルドと人工血管固定化面の上にさらにSPUによりスキャフォルドを堆積した。
表2に、ランダムスキャフォルドの作製条件をまとめて示す。
(灌流培養システムの作製)
以下の手順により、灌流培養システムとして機能する装置130を作製した。
1.タイゴンチューブ(内径4mm、外径6mm)を55cm長さに切断し、両端にルアーフィティング(メス)を接続した。
2.底面から5mmの高さまで、60mmシャーレを削った。
3.人工血管付き基材を2.5φのルアーフィティング(オス)と接続した。
4.60mmシャーレと人工血管付き基材のルアーフィティングとをシリコーン樹脂で固定した。
5.タイゴンチューブを10mmの長さに切断し、2.5φのルアーフィティング(オス)と接続した。
6.60mmシャーレ上面の端から5mmの位置に3.0φの穴をあけ、タイゴンチューブを接続した2.5φのルアーフィティング(オス)をシリコーン樹脂で固定した。
7.人工血管付き基材のスキャフォルド面がシリコーンシートに密着するように、スキャフォルドシートを60mmシャーレに配置した。
8.チューブと人工血管付き基材を固定した60mmシャーレをEOG滅菌した。
以上の手順により、装置130を得た。
次に、細胞固定培養法および灌流培養法による細胞培養方法および培養結果を説明する。
(細胞固定培養)
細胞固定培養条件を表3に示す。また、図7は、細胞培養の手順および条件を説明する図である。
具体的な固定培養手順を以下に示す。
1.FBS入りのD−MEM培地を20μLずつプレート(33穴)の各穴にいれ、オーバーナイトでコーティングした。
2.プレート面積を13.7cm2として、X0=1.0×105cells/cm2の接種濃度でプレートにRCB1994細胞を接種した。
3.CO2インキュベータ内にプレートを入れたシャーレを設置し培養をおこなった。
4.接種後24時間後、シリコーンシートを取り除き、スキャフォルド面が上になるようにプレートをひっくり返し設置した。
インキュベータ内で14日間培養した後の基材を位相差顕微鏡により観察した。結果を図8に示す。
図8において、穴A〜穴Cのいずれの領域においても、スキャフォルドを構成する繊維網とは異なる太さの網目構造が形成されていることが確認された。この新たに形成された網目構造が、毛細血管網である。
(灌流培養)
装置130を用いて灌流培養をおこなった。図4(c)に示したように、灌流培養中、人工血管に設けられた5つの供給口から培養液を基材中に流出させた。灌流培養条件を表4に示す。
また、具体的な灌流培養手順を以下に示す。
1.クリーンベンチ内で、ローラーポンプ(図4(a)のポンプ127)にチューブを設置した。
2.チューブとシャーレとを接続した。
3.チューブ内に培地を6mL添加した。
4.シャーレ内に培地を8mL添加した。
5.CO2インキュベータ内にローラーポンプを含む灌流回路を設置した。
6.培地流速を1.5mL/minとして培養した。
7.24時間ごとに、位相差顕微鏡観察をおこなった。
8.4日目に回路内の培地を交換した。
図9(a)〜図9(e)は12日後、図10は18日後の位相差顕微鏡観察結果を示す図である。
図9(a)には、図4(c)に示したシャーレ135を面内方向に180度回転した配置となっている。つまり、図9(a)において、人工血管の供給口は、図中下方向に開いており、ランダムスキャフォルドの図中下側に培養液が供給された。
図9(b)より、人工血管に接していて、供給口が設けられていない部分には、毛細血管の形成が認められなかった。一方、図9(c)より、人工血管に接しており、供給口をあけた側には、供給口のあいている部分に毛細血管の形成が認められた。
また、図9(d)および図9(e)より、スキャフォルドを構成する繊維網とは異なる太さの網目構造が繊維間の空隙部に形成されていることが確認された。
また、図10は、3次元繊維性スキャフォルドから形成された毛細血管を引っ張り出した観察結果を示す図である。図10より、ランダムスキャフォルドを構成する繊維とは異なる網目構造が、管状体であることが確認された。
101 基材
101a 基材
103 空隙
105 細胞
107 培養液
109 送液部
111 流れ
113 毛細血管
120 装置
121 供給手段
122 装置
123 チューブ
125 供給口
127 ポンプ
130 装置
131 供給管
133 排出管
135 シャーレ

Claims (8)

  1. 3次元編目状の空隙が設けられた基材に、血管形成能を有する細胞、および、前記細胞の培養液を添加する工程と、
    前記基材を貫通する前記空隙内に前記培養液の流れを生じさせながら前記細胞を培養することにより、前記流れに沿って、前記細胞から構成された毛細血管を形成する工程と、
    を含む、毛細血管の製造方法。
  2. 請求項1に記載の毛細血管の製造方法において、
    毛細血管を形成する前記工程が、前記細胞を灌流培養する工程を含む、毛細血管の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の毛細血管の製造方法において、
    前記基材が、3次元繊維性スキャフォルドを含み、
    前記空隙が、前記3次元繊維性スキャフォルドを構成する繊維間の空隙部である、毛細血管の製造方法。
  4. 請求項1乃至3いずれか一項に記載の毛細血管の製造方法において、
    毛細血管を形成する前記工程が、前記基材に包埋して設けられた管状部材の供給口から前記基材に前記培養液を供給しながら前記細胞を培養する工程を含み、
    前記管状部材に、複数の前記供給口が前記管状部材の延在方向に沿って配置されている、毛細血管の製造方法。
  5. 3次元編目状の空隙が設けられた基材であって、血管形成能を有する細胞が接種される前記基材と、
    前記基材に前記細胞の培養液を供給し、前記基材を貫通する前記空隙内に前記培養液の流れを生じさせる供給手段と、
    を含む、毛細血管の製造装置。
  6. 請求項5に記載の毛細血管の製造装置において、前記基材が、3次元繊維性スキャフォルドを含み、
    前記空隙が、前記3次元繊維性スキャフォルドを構成する繊維間の空隙部である、毛細血管の製造装置。
  7. 請求項5または6に記載の毛細血管の製造装置において、
    前記供給手段が、
    前記基材に前記培養液を供給する供給部材と、
    前記供給部材への前記培養液の供給を調節する調節手段と、
    を含む、毛細血管の製造装置。
  8. 請求項7に記載の毛細血管の製造装置において、
    前記供給部材が、前記基材に包埋して設けられた管状部材を含むとともに、前記管状部材の延在方向に沿って複数の供給口が前記管状部材に設けられており、
    前記調節手段が、前記管状部材に前記培養液を供給するポンプを含む、毛細血管の製造装置。
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