JP2015059453A - エンジン冷却液循環システム - Google Patents
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Abstract
【課題】流量調整弁の制御不良となる異常時において適正なる異常対処を行なうことができるエンジン冷却液循環システムを提供する。
【解決手段】エンジン冷却液循環システムは、エンジンのブロック部に冷却液を流通させてブロック部を冷却させるブロック経路20と、エンジンのヘッド部に冷却液を流通させてヘッド部を冷却させるヘッド経路30と、弁体41による流路面積の変更に応じて、ブロック経路20及びヘッド経路30に流れる冷却液の各流量を調整するバルブVb1,Vh1と、あらかじめ定められた所定の開度範囲内でバルブVb1,Vh1の開度を制御するECU70とを備え、バルブVb1,Vh1は、ECU70による開度制御が不可の状態でブロック経路20側の最小開度がゼロになり、同状態でヘッド経路30側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度となるように構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】エンジン冷却液循環システムは、エンジンのブロック部に冷却液を流通させてブロック部を冷却させるブロック経路20と、エンジンのヘッド部に冷却液を流通させてヘッド部を冷却させるヘッド経路30と、弁体41による流路面積の変更に応じて、ブロック経路20及びヘッド経路30に流れる冷却液の各流量を調整するバルブVb1,Vh1と、あらかじめ定められた所定の開度範囲内でバルブVb1,Vh1の開度を制御するECU70とを備え、バルブVb1,Vh1は、ECU70による開度制御が不可の状態でブロック経路20側の最小開度がゼロになり、同状態でヘッド経路30側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度となるように構成されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、内燃機関のヘッド部及びブロック部に冷却液を流通させるエンジン冷却液循環システムに関するものである。
エンジン冷却液循環システムとして、冷却液をエンジンのブロック部に流通させるブロック経路と、冷却液をエンジンのヘッド部に流通させるヘッド経路とが並列的に分岐されて設けられたものが知られている。また、エンジン冷却液循環システムには、ブロック経路及びヘッド経路に流通させる冷却液の流量を調整する流量調整弁が設けられており、温度センサ等で検出される水温等に応じて流量調整弁の開度が制御されることで、ブロック経路及びヘッド経路への冷却液の流量が調整されている(特許文献1参照)。なお流量調整弁には、ステッピングモータ等で駆動されるロータリー式のバルブ等が用いられることが検討されている。
ところで、エンジンのヘッド部とブロック部とでは冷却の要求が異なり、ヘッド部についてはブロック部に比べて燃焼室からの伝熱の量が多いため、より多くの冷却液が供給される状態であることが好ましい。また一方で、流量調整弁は、異物の噛み込みや信号線の断線等により開度制御が不可となることが考えられ、こうした制御不良が生じる状況下でもエンジンの冷却を適正に実施できるようにすることが望ましい。この場合、既存のエンジン冷却技術について改善の余地があると考えられる。
本発明は、流量調整弁の制御不良となる異常時において適正なる異常対処を行なうことができるエンジン冷却液循環システムを提供することを主たる目的とするものである。
本発明では、エンジンのブロック部に冷却液を流通させてブロック部を冷却させるブロック経路と、ブロック経路と並列に接続され、エンジンのヘッド部に冷却液を流通させて前記ヘッド部を冷却させるヘッド経路と、弁体による流路面積の変更に応じて、ブロック経路及びヘッド経路に流れる冷却液の各流量を調整する流量調整弁と、あらかじめ定められた所定の開度範囲内で前記流量調整弁の開度を制御する制御手段と、を備え、流量調整弁は、制御手段による開度制御が不可となる状態下においてブロック経路側の最小開度がゼロになり、同じく制御手段による開度制御が不可となる状態下においてヘッド経路側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度となるように構成されていることを特徴とする。
上記発明では、開度制御が不可となる状態下においてブロック経路側の最小開度がゼロになり、同じく開度制御が不可となる状態下においてヘッド経路側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度となるように流量調整弁を構成した。この場合、流量調整弁の開度制御が不可となる異常状態であったとしても、エンジンの始動時にブロック部を暖機させることができる。一方、ヘッド部においては継続的に冷却液が供給されることで、ヘッド部の温度上昇が抑えられ、流量制御弁の異常発生時において、エンジンの焼き付きなどの不具合を生じにくくできる。したがって、運転者による異常回避のための退避走行を行わせることを想定しても有利な構成を実現できる。
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかるエンジン冷却液循環システムを示す模式図であり、ウォータポンプ10から吐出される冷却液(冷却水)は、以下に説明するブロック経路20およびヘッド経路30へ流入する。なお、エンジンの回転駆動力によりウォータポンプ10は作動するものであるため、エンジン駆動時にはウォータポンプ10から冷却液が常時吐出される。なお、ウォータポンプ10には、機械式ポンプ、電動式ポンプ等の周知のポンプが使用される。
図1は、本実施形態にかかるエンジン冷却液循環システムを示す模式図であり、ウォータポンプ10から吐出される冷却液(冷却水)は、以下に説明するブロック経路20およびヘッド経路30へ流入する。なお、エンジンの回転駆動力によりウォータポンプ10は作動するものであるため、エンジン駆動時にはウォータポンプ10から冷却液が常時吐出される。なお、ウォータポンプ10には、機械式ポンプ、電動式ポンプ等の周知のポンプが使用される。
ブロック経路20は、エンジンのブロック部Ebに形成されたウォータジャケットの流通経路であり、ブロック経路20へ冷却液を流通させることによりブロック部Ebが冷却される。ヘッド経路30は、エンジンのヘッド部Ehに形成されたウォータジャケットの流通経路であり、ヘッド経路30へ冷却液を流通させることによりヘッド部Ehが冷却される。
ちなみに、ブロック部Ebは、エンジンのピストンを往復動可能に収容するためのシリンダを形成する部位であり、ヘッド部Ehは、吸気ポートおよび排気ポートを形成する部位である。そして、ヘッド部Ehはブロック部Ebに比べて燃焼室から伝達される熱量が多いので、例えば、エンジンの冷却負荷の小さい始動直後には、ヘッド温度Thの目標温度(例えば70℃)が、ブロック温度Tbの目標温度(例えば90℃)よりも低く設定されている。
ブロック経路20およびヘッド経路30は並列に接続されており、ウォータポンプ10から吐出された冷却液は、流量調整弁である後述するバルブVh1,Vb1の開閉状態に応じて、ブロック経路20およびヘッド経路30へ分配される。したがって、バルブVh1,Vb1の開閉状態の制御によって、ブロック部Eb及びヘッド部Ehにて、各々要求される冷却状態に応じた量の冷却液の循環が可能となっている。また、ブロック温度Tbおよびヘッド温度Thを上述した目標値となるように制御することもできる。
ブロック経路20から流出した冷却液は、ブロック側流出経路21を通じてラジエータ50へ流入可能に構成されている。なおラジエータ50で冷却された冷却液は、経路22を通じてサーモスタット51に流入される。
ヘッド経路30の下流側は、ヘッド側流出経路31およびヘッド側経路32に分岐しており、ヘッド経路30から流出した冷却液は、ヘッド側流出経路31を通じてラジエータ50へ流入可能とされている。また、ヘッド側経路32を通じて冷却液の有する熱エネルギを利用する補機類に流入可能とされている。本実施形態では、補機類としてのヒータコア80に冷却液が流入可能に構成されている。図示の構成では、ヒータコア80とEGRクーラ81とは冷却液が流通する経路33で接続されており、EGRクーラ81とサーモスタット51は冷却液が流通する経路34で接続されている。なおこのような各機器の接続関係は一例であり、これに限定されるものではなく、様々に変更可能である。
ちなみに、ラジエータ50は、冷却液を外気と熱交換させて冷却する熱交換器である。そして、冷却液温度がサーモスタット51の設定温度(例えば80℃)未満になっている時には、サーモスタット51の閉弁により冷却液はラジエータ50をバイパスして循環する。そのため、エンジンの暖機運転時にはサーモスタット51が閉弁するので、ラジエータ50により冷却液が冷却されることはない。一方、暖機運転が完了している時には、冷却液温度がサーモスタット51の設定温度以上にまで上昇してサーモスタット51が開弁しているので、ラジエータ50により冷却液が冷却されることとなる。
ヒータコア80は、その内部を流通する冷却液の保有熱を放熱させる熱交換をすることによって、車室内の空気を暖める装置、いわゆる暖房装置である。ヒータコア80で暖められた空気は、ヒータブロア(図示を略す)と呼ばれる送風機により車室内に送風される。
EGRクーラ81は、排ガスの一部(EGRガス)を吸気側へ還流させるEGRシステムに備えられた熱交換器(HE:heat exchanger)であり、冷却液とEGRガス(所定流体)との熱交換によりEGRガスを冷却することで、燃焼室の温度を下げて、これによりNOxの発生を抑制するものである。
バルブVb1は、ブロック経路20の上流側のブロック側流入経路23に設けられている。バルブVb1は、ブロック側流入経路23に対して開放される開度が予め定められた所定の開度範囲内で調整されるように構成されており、バルブVb1の開度に応じてブロック経路20に流入される冷却液の流量が調整される。
バルブVh1は、ヘッド経路30の上流側のヘッド側流入経路36に設けられている。バルブVh1は、ヘッド側流入経路36に対して開放される開度が予め定められた所定の開度範囲内で調整されるように構成されており、バルブVh1の開度に応じてヘッド経路30に流入される冷却液の流量が調整される。
これらのバルブVb1,Vh1の開度が個別に調整されることによって、ウォータポンプ10から流出する冷却水のブロック経路20に流入する水量と、ヘッド経路30に流入する水量とが個別に調節される。
また、ブロック部Ebには、ブロック経路20の出口部分の水温(ブロック温度Tb)を検出する温度センサSbが設けられている。ヘッド部Ehには、ヘッド経路30の出口部分の水温(ヘッド温度Th)を検出する温度センサShが設けられている。ECU70は、ブロック温度Tb及びヘッド温度Thに基づいて、バルブVb1,Vh1の開閉状態を、それぞれ予め定められた所定の開度範囲内で調節することで、ブロック経路20およびヘッド経路30のそれぞれに流れる冷却液の各流量を調整する。これにより始動後、ブロック温度Tb及びヘッド温度Thがそれぞれの目標温度に到達するようにしている。なお、ヘッド部Eh等によって加熱された冷却液の温度が、サーモスタット51の設定温度を超えると、ラジエータ50による冷却液の冷却が開始される。これによりヘッド温度Thが上限温度OH(例えば140℃)を超えないように制御される。なお上限温度OHは、エンジンの焼き付き(オーバーヒート)が生じない上限温度であるとする。
次にバルブVh1,Vb1の構成について説明する。図2は、ヘッド側流入経路36に設けられるバルブVh1の例であり、図2(a)はバルブVh1の開度が最大の状態、図2(b)はバルブVh1の開度が最小の状態である。図3は、バルブVh1の開度と冷却液の流量との関係の説明図である。図4は、ブロック側流入経路23に設けられるバルブVb1の構成の説明図であり、図4(a)はバルブVb1の開度が最大の状態、図4(b)はバルブVb1の開度が最小の状態(開度ゼロ)である。図5は、バルブVb1の開度と冷却液の流量との関係の説明図である。
バルブVh1は、弁体41と、弁体41の内側を貫通するように設けられた流路42と、弁体41の外周の所定位置に設けられた凸部43と、ヘッド側流入経路36を構成する配管の外周において、凸部43が当接する位置に設けられたストッパ44とを備えている。
弁体41は、ロータリーバルブであり、図示を略すロータの回転によって、回転角度が調整されるように構成されており、ヘッド側流入経路36に対して流路42の開口全体が流通される最大開度から、ヘッド側流入経路36に対して流路42の開口の一部のみが流通される最小開度までの開度範囲で回転されるように回転角度が決定されている。
流路42は、ヘッド経路30の上流側から冷却液が流入される流入口42aと、弁体41を通過した冷却液をヘッド経路30へと流出させる排出口42bとを有しており、弁体41が回転することで、流入口42a及び流出口42cにおける開口面積(流路面積)が変更され、ヘッド経路30に流れる冷却液の流量が調整(開閉)される。
凸部43は、バルブVh1が最小開度となる場合にストッパ44に当接する位置に設けられている。例えばバルブVh1の最小開度は、バルブVh1の最大開度の5〜20%に設定されており、バルブVh1が最小開度の際にヘッド経路30への冷却液の循環が継続されるようにしている。
バルブVb1は、基本的な構成はバルブVh1と同様であり、弁体41と、弁体41の内側を貫通するように設けられた流路42と、弁体41の外周の所定位置に設けられた凸部43と、ブロック側流入経路23を構成する配管の外周において、凸部43が当接する位置に設けられたストッパ44とを備えている。なおバルブVb1の場合、最小開度で閉状態(開度ゼロ)となるように、弁体41の外周上での凸部43の形成位置が決定されている。
このように、流量調整弁であるバルブVb1,Vh1が、あらかじめ定められた開度範囲で開度調整がなされることによって、ブロック経路20及びヘッド経路30のそれぞれに流れる冷却液の流量が調整される。この場合、例えば異物の噛み込みに起因する弁体41の固着や断線異常等(例えば制御用ハーネスの断線)が生じてバルブVb1,Vh1の開度が制御不能になると、冷却液の流量調整が不可能になる。これらの異常は、流量調整弁の開度範囲内の任意の開度で生じるものであり、その開度範囲内の最小開度でも当然に生じうる。そして、その最小開度で開度固定となる異常が生じると、エンジン冷却に影響が及ぶことが懸念される。
ここで、エンジンのヘッド部Ehとブロック部Ebとでは冷却の要求が異なる。つまりヘッド部Ehの場合、ブロック部Ebに比べて伝達される熱量が多いことから、ブロック部Ebに比べてより多くの冷却液が供給される状態であることが好ましい。これを考慮すると、ヘッド部EhについてはバルブVh1が異常である場合を含めて常に冷却液の循環による冷却が継続的に実施されるのが望ましい。一方、ブロック部Ebについては冷却に関する要望が異なり、例えばエンジン始動直後の低水温時などに、エンジンの暖機を早期に完了させるために冷却液の循環が停止されることが求められる場合がある。
この点、本実施形態では、ECU70による開度制御が不可となる状態下において、ブロック経路20側の最小開度がゼロになり、同じくECU70による開度制御が不可となる状態下において、ヘッド経路30側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度となるようにバルブVb1,Vh1が構成されている。その為、ECU70によるバルブVb1,Vh1の開度制御が不可となる異常状態でも、ブロック部Eb及びヘッド部Ehの各々の冷却の要求に応じることができる。つまりエンジンの始動時にブロック部Ebを暖機させることができる。一方、ヘッド部Ehにおいては継続的に冷却液が供給されることで、ヘッド部Ehの温度上昇が抑えられ、流量制御弁の異常時において、エンジンの焼き付きなどの不具合を生じにくくできる。
ちなみに、バルブの異常により冷却液が過昇温となる場合には、その過剰な温度上昇が検出されて、車両のインパネに設けられた警告ランプの点灯等による警告が行われる。この場合、上記のとおりバルブ異常時にもヘッド部Ehの冷却が継続されることで、運転者が、その退避走行に要すると想定される時間内において焼き付き等の不具合の発生を抑制できる。
次にバルブVh1の開閉動作について詳細に説明する。図6は、ヘッド部Ehにおける各種変化を示すタイムチャートであり、図6(a)は、ヘッド温度Thの変化を示す図、図6(b)はバルブVh1の開度変化を示す図、図6(c)はヘッド経路30の冷却液の流量の変化を示す図である。なお図6では、本実施形態のバルブVh1が正常状態の場合の変化を二点鎖線で示している。また、本実施形態でのバルブVh1が故障状態(例えば、弁体41が固着により最小開度位置のままとなる状態)での変化を実線で示している。更には、故障時に全閉状態(流量ゼロの状態)となりえる従来例のバルブの故障状態の場合の変化を破線で示している。
冷却液の温度がサーモスタット51の設定温度未満となっているエンジンの冷間始動時には、サーモスタット51が閉弁されて、ラジエータ50をバイパスして冷却液を循環させる暖機運転が実施される。この際、ヘッド部Ehの温度センサShの検出値が目標温度の70℃に達するまでは、ヘッド経路30の冷却液の流量ができるだけ少なくなるように、バルブVh1の開度が調整されることで、ヘッド温度Thの温度上昇が促される。つまり本実施形態のバルブVh1の場合には最小開度に調整される。従来例のバルブの場合には開度はゼロに調整される。なおここでの図示は省略しているが、ブロック部Ebにおいては、温度センサSbの検出値が目標温度の90℃に達して暖機が完了するまでは、バルブVb1の開度はゼロ(全閉状態)とされ、暖機完了後にバルブVb1の開度が調整される。
ヘッド温度Thが目標温度の70℃に到達すると、バルブVh1が正常の場合には、ヘッド温度Thの上昇に伴い、バルブVh1の開度が増加される。そして、さらにヘッド温度Thが上昇してサーモスタット51の設定温度に到達すると、サーモスタット51が開弁し、ラジエータ50による冷却液の冷却が開始される。これによりヘッド温度Thの過上昇が抑制されている。
バルブが故障している場合、従来例の場合には全閉状態(開度ゼロ)であるため図示のような温度上昇が生じ、時刻t1でヘッド温度Thが上限温度OHに到達する。一方、本実施形態においてバルブが故障している場合、バルブVh1の開度はゼロよりも大きいためヘッド経路30に対して所定量の冷却液が継続的に流入される。例えば、3L/minの冷却液が流入される。つまり、本実施形態の場合にはより冷却要求の高いヘッド側のバルブVh1の最小開度がゼロよりも大きい所定開度とされていることによって、バルブVh1の開度調節が不可となる異常状態であっても、ヘッド経路30への冷却液の流入が停止されない。この場合、ヘッド温度Thの上昇が抑えられることで、時刻t1よりも遅い時刻t2で、ヘッド温度Thが上限温度OHに到達される。このように、バルブVh1の異常状態で、ヘッド部Ehの必要最低限の冷却状態が確保されることで、ヘッド部Ehの急激な温度上昇が緩和され、エンジンの焼き付きを生じ難くできる。その為、運転者が異常回避のための退避走行を行う場合にも比較的に余裕を持たせることができる。
上記によれば、以下の優れた効果が得られる。
ECU70による開度制御が不可となる状態下においてブロック経路20側の最小開度がゼロになり、同じくECU70による開度制御が不可となる状態下においてヘッド経路30側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度となるようにバルブVh1、Vb1を構成した。この場合、バルブVh1、Vb1の開度制御が不可となる異常状態であったとしても、ブロック部Ebにおいてはエンジンの始動時における暖機性能を確保できる。一方、ヘッド部Ehにおいては、冷却状態が確保されることで、ヘッド部Ehの温度上昇が抑えられる。これによりエンジンの焼き付きなどの不具合を生じにくくでき、ひいては運転者による異常回避のための退避走行をより確実に行わせることができる。
ヘッド経路30側の最小開度を、ヘッド経路30の開口面積に対して5〜20%の範囲のいずれかとなる開度とすることで、エンジンのヘッド部Ehの温度が過剰に高温又は低温になることを抑えることができる。
ヘッド経路30は、開度制御が不可となる状態下にあってもバルブVh1の開度がゼロにならず、冷却液の循環が継続される経路であり、そのヘッド経路30に補機類が接続されていることで、バルブVh1が制御不良となる状況下でもエンジン排熱の利用が可能となる。
(第2実施形態)
上記の構成において、バルブVb1が閉状態(開度ゼロ)で故障した状態でエンジンの運転が継続されると、ブロック温度Tbの温度上昇の影響が大きくなる可能性が想定される。そこで、バルブVb1が閉状態で故障した際の温度上昇を抑えるため、図7の変容例の説明図に示されるように、ブロック経路20の入口側又は出口側にバルブVb1に対して並列接続されるバイパス経路91を設けると共に、バイパス経路91に、バイパス経路91を開閉する感温式の開閉弁92を設けてもよい。
上記の構成において、バルブVb1が閉状態(開度ゼロ)で故障した状態でエンジンの運転が継続されると、ブロック温度Tbの温度上昇の影響が大きくなる可能性が想定される。そこで、バルブVb1が閉状態で故障した際の温度上昇を抑えるため、図7の変容例の説明図に示されるように、ブロック経路20の入口側又は出口側にバルブVb1に対して並列接続されるバイパス経路91を設けると共に、バイパス経路91に、バイパス経路91を開閉する感温式の開閉弁92を設けてもよい。
開閉弁92は、図7(a)に示されるように、ブロック温度Tbが上限値(例えば105℃)となった際に開き、図7(b)に示されるように、ブロック温度Tbが目標温度未満(例えば90℃)となった際に閉じるサーモスタット等で構成される。ECU70によるバルブVb1の開度調整が不可となり、ブロック温度Tbが所定以上に上昇した際に、開閉弁92が開き、バイパス経路91を介してブロック経路20に冷却液が循環されることで、ブロック温度Tbの上昇の度合いを抑えることができる。
(第3実施形態)
上記の構成では、ヘッド経路30及びブロック経路20に対して個別にバルブVh1,Vb1を設ける例を示した。これ以外にも、図8の第3実施形態のエンジン冷却液循環システムの構成図に示されるように、ヘッド経路30及びブロック経路20の共通の経路上(分岐部)に、各経路に共通のバルブV2を設けてもよい。図9に第3実施形態のバルブV2の拡大図を示す。バルブV2は、ロータリーバルブで構成された三方弁であり、弁体61と、弁体61に形成された流路62とを有している。流路62は、ヘッド側流入経路36に流通される流路62aと、ブロック側流入経路23に流通される流路62bとが弁体61の内部で連通されている。これにより、一つの流入口63aと、ヘッド部Eh及びブロック部Ebに設けられた2つの排出口63b,63cとが形成されている。
上記の構成では、ヘッド経路30及びブロック経路20に対して個別にバルブVh1,Vb1を設ける例を示した。これ以外にも、図8の第3実施形態のエンジン冷却液循環システムの構成図に示されるように、ヘッド経路30及びブロック経路20の共通の経路上(分岐部)に、各経路に共通のバルブV2を設けてもよい。図9に第3実施形態のバルブV2の拡大図を示す。バルブV2は、ロータリーバルブで構成された三方弁であり、弁体61と、弁体61に形成された流路62とを有している。流路62は、ヘッド側流入経路36に流通される流路62aと、ブロック側流入経路23に流通される流路62bとが弁体61の内部で連通されている。これにより、一つの流入口63aと、ヘッド部Eh及びブロック部Ebに設けられた2つの排出口63b,63cとが形成されている。
この場合にも、ECU70による開度制御が不可となる状況下において、ヘッド経路30側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度とされ、ブロック経路20側の最小開度がゼロとされる。これにより、バルブV2の制御不良となる異常時に、ヘッド部Eh及びブロック部Ebに対する適正なる異常対処が可能となる。
(その他の実施形態)
・バルブVh1,Vb1は、ECU70の非制御状態でバルブVh1の開度が最小開度に保持されるノーマリークローズ式であってもよい。例えば、バルブVh1,Vb1の弁体41に、図示を略す弾性体(バネ等)等の付勢部材が設けられることで、通常状態でバルブVh1,Vb1が閉状態とされるようにしてもよい。
・バルブVh1,Vb1は、ECU70の非制御状態でバルブVh1の開度が最小開度に保持されるノーマリークローズ式であってもよい。例えば、バルブVh1,Vb1の弁体41に、図示を略す弾性体(バネ等)等の付勢部材が設けられることで、通常状態でバルブVh1,Vb1が閉状態とされるようにしてもよい。
・上記では、ロータリーバルブを用いる例を示した。これ以外にも様々な形状のバルブを用いることができる。例えば、図10の変容例に示されるように、ヘッド側流入経路36(又はブロック側流入経路23)の流路内をスライドされるバルブV3によって、冷却液の流量が調整されてもよい。本実施形態のバルブV3は、弁部65と、弁部65を支持する支持部66と、支持部66をヘッド経路30(又はブロック経路20)に対して垂直方向に移動させることによって、ヘッド側流入経路36(又はブロック側流入経路23)内での弁部65の位置を調整する駆動部67と、弁部65の移動範囲を制限する制止部68とを備えている。
バルブV3がヘッド側流入経路36に設けられる場合、弁部65の可動域L1がヘッド経路30の内径L2よりも小さくなるように、支持部66上の制止部68の取付け位置が決定される。これにより、ヘッド側流入経路36と制止部68が当接された際の最小開度がゼロよりも大きくなり、ヘッド経路30への冷却液の循環が可能とされる。一方、バルブV3がブロック側流入経路23に設けられる場合、弁部65の可動域L1がブロック側流入経路23の内径L2と等しくなるように、支持部66上の制止部68の取り付け位置が決定される。この場合、ブロック側流入経路23と制止部68が当接された状態の最小開度がゼロとなり、ブロック経路20への冷却液の循環が停止される。
なお図10(b)に示されるように、バルブV3がヘッド側流入経路36に設けられる場合には、ヘッド側流入経路36の流路内(内壁)に、弁部65の閉方向の移動量を制限する突起39を設けることにより、ヘッド側流入経路36に対する最小開度が定められるようにしてもよい。
・ヘッド経路30の側に接続される熱交換器等(冷却液の有する熱エネルギを利用する補機類)の種類や容量に応じて、ヘッド経路30の最小開度が定められるようにしてもよい。このようにすると、ECU70による開度制御が不能となる状況下において、各補機類に対する冷却液の流量が確保される。
・上記のバルブVh1、バルブVb1は、ヘッド側流入経路36、ブロック側流入経路23以外にも、ウォータポンプ10から吐出される冷却液が循環される各経路に設けることができる。例えば、ブロック側流出経路21、ヘッド側流出経路31、経路22,33,34等に設けてもよい。この際、ヘッド経路30を経た冷却液が循環される経路32,33,34には、最小開度がゼロよりも大きいタイプのバルブ(例えばバルブVh1)が設けられるようにする。一方、ブロック経路20を経た冷却液が循環される経路21,35には、最小開度がゼロとなるタイプのバルブ(例えばバルブVb1)が設けられるようにする。この際、バルブに対して並列に上記のバイパス経路91及び開閉弁92が接続されてもよい。
20…ブロック経路、30…ヘッド経路、41…弁体、61…弁体、65…弁部、70…ECU、V2…バルブ、V3…バルブ、Vh1…バルブ、Vb1…バルブ。
Claims (6)
- エンジンのブロック部に冷却液を流通させて前記ブロック部を冷却させるブロック経路(20)と、
前記ブロック経路と並列に接続され、前記エンジンのヘッド部に冷却液を流通させて前記ヘッド部を冷却させるヘッド経路(30)と、
弁体(41,61,65)による流路面積の変更に応じて、前記ブロック経路及び前記ヘッド経路に流れる冷却液の各流量を調整する流量調整弁(Vh1,Vb1,V2,V3)と、
あらかじめ定められた所定の開度範囲内で前記流量調整弁の開度を制御する制御手段(70)と、
を備え、
前記流量調整弁は、前記制御手段による開度制御が不可となる状態下において前記ブロック経路側の最小開度がゼロになり、同じく前記制御手段による開度制御が不可となる状態下において前記ヘッド経路側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度となるように構成されていることを特徴とするエンジン冷却液循環システム。 - 前記流量調整弁において、前記ヘッド経路側の最小開度である前記所定開度は、前記ヘッド経路の開口面積に対して5〜20%の範囲のいずれかとなる開度である請求項1に記載のエンジン冷却液循環システム。
- 前記流量調整弁は、前記ブロック経路に流れる冷却液の流量を調整する第1調整弁(Vb1)と、前記ヘッド経路に流れる冷却液の流量を調整する第2調整弁(Vh1)とを有しており、
前記第1調整弁は、前記制御手段による開度制御が不可となる状態下において前記ブロック経路側の最小開度がゼロになるように構成され、前記第2調整弁は、同じく前記制御手段による開度制御が不可となる状態下において前記ヘッド経路側の最小開度がゼロよりも大きい所定開度となるように構成されている請求項1又は2に記載のエンジン冷却液循環システム。 - 前記ブロック経路の入口側又は出口側に設けられ、前記第2調整弁に並列に接続されるバイパス経路(91)と、
前記バイパス経路に設けられ、当該バイパス経路を開閉する感温式の開閉弁(92)と、
を備え、前記開閉弁は、前記ブロック経路を流れる冷却液の温度が所定温度以上であれば開放され、同冷却液の温度が前記所定温度よりも低ければ閉鎖される請求項3に記載のエンジン冷却液循環システム。 - 前記ブロック経路及び前記ヘッド経路に対して前記冷却液を供給する循環経路を有しており、
前記流量調整弁は、前記循環経路において前記ブロック経路の側及び前記ヘッド経路の側に分岐される分岐部に配置されており、前記循環経路を流れる冷却液を前記ブロック経路の側に流通させる第1流路(62b)及び前記ヘッド経路の側に流通させる第2流路(62a)と、前記第1流路及び前記第2流路へのそれぞれの前記冷却液の量を配分する弁体(61)とを有している請求項1又は2に記載のエンジン冷却液循環システム。 - 前記ブロック経路及び前記ヘッド経路のうち前記ヘッド経路の側に、前記冷却液の有する熱エネルギを利用する補機類(80)が接続されている請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンジン冷却液循環システム。
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JP2019031953A (ja) * | 2017-08-09 | 2019-02-28 | 株式会社Subaru | 冷却制御装置 |
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2013
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