JP2015048365A - 液晶性を備えたセルロース誘導体、及び、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、同セルロース誘導体を含有する樹脂材料 - Google Patents

液晶性を備えたセルロース誘導体、及び、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、同セルロース誘導体を含有する樹脂材料 Download PDF

Info

Publication number
JP2015048365A
JP2015048365A JP2013179176A JP2013179176A JP2015048365A JP 2015048365 A JP2015048365 A JP 2015048365A JP 2013179176 A JP2013179176 A JP 2013179176A JP 2013179176 A JP2013179176 A JP 2013179176A JP 2015048365 A JP2015048365 A JP 2015048365A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hpc
cellulose derivative
liquid crystallinity
isocyanate
resin material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013179176A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6395356B2 (ja
Inventor
氏家 誠司
Seiji Ujiie
誠司 氏家
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Oita University
Original Assignee
Oita University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oita University filed Critical Oita University
Priority to JP2013179176A priority Critical patent/JP6395356B2/ja
Publication of JP2015048365A publication Critical patent/JP2015048365A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6395356B2 publication Critical patent/JP6395356B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)

Abstract

【課題】樹脂材料の原料となりうる比較的容易に合成可能な液晶性を備えたセルロース誘導体を提供する。また、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法についても提供する。【解決手段】本発明に係る液晶性を備えたセルロース誘導体では、一般式[I]で現される分子構造を含むこととした。また、本発明に係る液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法では、ヒドロキシプロピルセルロースを有機溶媒中に溶解させる溶液調製工程と、この溶液に、イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートから選ばれる少なくともいずれか1つを混合し反応させる反応工程と、前記反応工程を経た混合溶液に、水及び塩水を添加して、ヒドロキシプロピルセルロース誘導体を沈殿させる沈殿工程と、沈殿物を回収して乾燥させる乾燥工程と、を有することとした。【選択図】図1

Description

本発明は、液晶性を備えたセルロース誘導体、及び、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、同セルロース誘導体を含有する樹脂材料に関する。
従来、配向性を示す高分子化合物を主成分として含有させた液晶性を備える樹脂材料が知られている。
このような高分子化合物としては、例えば、セルロースエステルが知られている。
セルロースエステルを主成分として含有する樹脂材料は、各セルロースエステルの分子の伸延方向を、おおよそ一定の方向に配向させた状態でフィルム状に成形することにより、偏光フィルムとして利用されている。
特開2010−222433号公報
ところで、液晶性を備える樹脂材料は、上述したように配向性を有するため、その樹脂材料にて成形された成型品は、所定の方向への力に対して高い強度を示す。
そのため、成型品の強度に異方性を付与する際の樹脂材料として好適である。
しかしながら、セルロースエステルを主成分とした樹脂材料は、比較的低い温度で軟化してしまうため、例えば、電気製品の筐体やプラスチックパネルなど、一般的な樹脂製品に応用するのは困難であった。
また、セルロースエステルを合成するにあたり、副生成物の処理が必要となるため、高価となってしまうという問題もある。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、樹脂材料の原料となりうる比較的容易に合成可能な液晶性を備えたセルロース誘導体を提供する。また、本発明では、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、前記セルロース誘導体を含有する樹脂材料についても提供する。
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る液晶性を備えたセルロース誘導体は、
一般式[I]:
で現される分子構造を含むこととした。
また、請求項2に係る液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法では、ヒドロキシプロピルセルロースを有機溶媒中に溶解させてヒドロキシプロピルセルロース溶液を調製する溶液調製工程と、前記ヒドロキシプロピルセルロース溶液に、イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートから選ばれる少なくともいずれか1つを混合し、この混合溶液中にて前記イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートと前記ヒドロキシプロピルセルロースとを反応させる反応工程と、前記反応工程を経た混合溶液に、水及び塩水を添加して、ヒドロキシプロピルセルロース誘導体を沈殿させる沈殿工程と、前記沈殿工程にて沈殿させたヒドロキシプロピルセルロース誘導体を回収して乾燥させる乾燥工程と、を有することとした。
また、請求項3に係る液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法では、請求項2に記載の液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法において、前記イソシアン酸フェニル化合物は、イソシアン酸4−ニトロフェニル、イソシアン酸p−トリル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸4−クロロフェニルから選ばれる少なくともいずれか1つであることに特徴を有する。
また、請求項4に係る樹脂材料では、請求項1に記載の液晶性を備えたセルロース誘導体及び/または請求項2又は請求項3に記載の液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法により得られた液晶性を備えたセルロース誘導体を主成分として含有することとした。
また、請求項5に係る樹脂材料では、請求項4に記載の樹脂材料において、前記液晶性を備えたセルロース誘導体同士を架橋する架橋剤を含有させたことに特徴を有する。
また、請求項6に係る樹脂材料では、請求項4又は請求項5に記載の樹脂材料において、フィラーを含有させたことに特徴を有する。
また、請求項7に係る樹脂成型品では、請求項4〜6に記載の樹脂材料により成形した。
請求項1に係る本発明では、一般式[I]:
で現される分子構造を含むこととしたため、樹脂材料の原料となりうる比較的容易に合成可能な液晶性を備えたセルロース誘導体を提供することができる。
また、請求項2に係る液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法では、ヒドロキシプロピルセルロースを有機溶媒中に溶解させてヒドロキシプロピルセルロース溶液を調製する溶液調製工程と、前記ヒドロキシプロピルセルロース溶液に、イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートから選ばれる少なくともいずれか1つを混合し、この混合溶液中にて前記イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートと前記ヒドロキシプロピルセルロースとを反応させる反応工程と、前記反応工程を経た混合溶液に、水及び塩水を添加して、ヒドロキシプロピルセルロース誘導体を沈殿させる沈殿工程と、前記沈殿工程にて沈殿させたヒドロキシプロピルセルロース誘導体を回収して乾燥させる乾燥工程と、を有することとしたため、樹脂材料の原料となりうる比較的容易に合成可能な液晶性を備えたセルロース誘導体を製造することができる。
また、請求項3に係る液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法では、イソシアン酸フェニル化合物は、イソシアン酸4−ニトロフェニル、イソシアン酸p−トリル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸4−クロロフェニルから選ばれる少なくともいずれか1つであることとしたため、配向性に優れた液晶性を備えたセルロース誘導体を製造することができる。
また、請求項4に係る樹脂材料では、請求項1に記載の液晶性を備えたセルロース誘導体及び/または請求項2又は請求項3に記載の液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法により得られた液晶性を備えたセルロース誘導体を主成分として含有することとしたため、液晶性を備えたセルロース誘導体を有する樹脂材料を提供することができる。
また、請求項5に係る樹脂材料では、前記液晶性を備えたセルロース誘導体同士を架橋する架橋剤を含有させたため、より強度の高い成型品を製造可能な樹脂材料を提供することができる。
また、請求項6に係る樹脂材料では、フィラーを含有させたため、より強度の高い成型品を製造可能な樹脂材料を提供することができる。
また、請求項7に係る樹脂成型品では、請求項4〜6に記載の樹脂材料により成形したため、比較的高い温度においても軟化し難く液晶性を備えたセルロース誘導体を有する樹脂成型品とすることができる。
HPC-Hの合成経路を示す説明図である。 HPC-Nの合成経路を示す説明図である。 HPC-Meの合成経路を示す説明図である。 HPC-Clの合成経路を示す説明図である。 HPC-MOIの合成経路を示す説明図である。 HPC-H-MOIの合成経路を示す説明図である。 HPC-Hの1HNMRスペクトル及びピーク積分値を示した説明図である。 HPC誘導体の置換度を示した説明図である。 偏光顕微鏡像を示した説明図である。 ガラス転移温度以下に冷却した際のHPC-Hの光学組織を示した説明図である。 カラムの模式図である。 各サンプルのDSC曲線、及び相転移温度と熱量を示した説明図である。 重合性置換基導入の効果を示す説明図である。 HPC-MeとHPC-ClのX線回折パターン及び2θとd値を示した説明図である。 HPC-MeとHPC-Clのパッキングモデルを示した説明図である。 HPC-HのX線回折パターン及び2θとd値を示した説明図である。 HPC-Hのパッキングモデルを示した説明図である。 HPC-NとHPC-MOIのX線回折パターン及び2θとd値を示した説明図である。 HPC-NとHPC-MOIのパッキングモデルを示した説明図である。 複合体の作製手順及び作製したHPC-H/Faの偏光顕微鏡像を示した説明図である。 化学架橋複合化の手順を示したフローである。 Fa-MOIとFaのTF-IRスペクトル、及びHPC誘導体とミクロファイバーとのネットワーク構造、並びに、複合体の作製方法を示した説明図である。 試験片及び試験片の作製手順を示した説明図である。 強度試験結果を示した説明図である。 複合体の引張強度の測定結果を示した説明図である。
本発明は、樹脂材料の原料となりうる比較的容易に合成可能な液晶性を備えたセルロース誘導体の提供を目的の一つとしている。
特に、本発明にて提供する液晶性を備えたセルロース誘導体は、具体的には、一般式[I]:
で現される分子構造を含むことを特徴としている。
換言すれば、この液晶性を備えたセルロース誘導体は、R1が水素原子又は、
で示される分子構造を有するヒドロキシプロピルセルロースの側鎖のヒドロキシル基に、イソシアナートのイソシアナート基を反応させて、ウレタン結合を介して置換基が導入されたものであるとも言える。
従来、樹脂材料の原料として用いられているセルロースエステルは、置換基がエステル結合を介して側鎖の部分に導入されたものであるが、このようなセルロースエステルは、その原料となるセルロースよりも水素結合性が低下してしまうこととなり、融点や強度が低下するという問題がある。
例えば、セルロースエステルを主成分とする樹脂材料にて成形された樹脂成型品は、比較的低い温度で軟化してしまうため、一般的なプラスチック成型品の代替樹脂として利用するには、耐熱性の観点において困難である。
一方、本実施形態に係る液晶性を備えたセルロース誘導体は、ウレタン結合を介して側鎖部分に置換基を導入することで、融点や強度の向上を図るようにしている。
具体的には、ウレタン結合は、アミドと同様にCOとNHを備えており、この部分が水素結合する能力を有しているため、融点や強度を向上させることが可能となっている。
また、本実施形態に係る液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法では、ヒドロキシプロピルセルロースを有機溶媒中に溶解させてヒドロキシプロピルセルロース溶液を調製する溶液調製工程と、前記ヒドロキシプロピルセルロース溶液に、イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートから選ばれる少なくともいずれか1つを混合し、この混合溶液中にて前記イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートと前記ヒドロキシプロピルセルロースとを反応させる反応工程と、前記反応工程を経た混合溶液に、水及び塩水を添加して、ヒドロキシプロピルセルロース誘導体を沈殿させる沈殿工程と、前記沈殿工程にて沈殿させたヒドロキシプロピルセルロース誘導体を回収して乾燥させる乾燥工程と、を有することとしている。
ここで、使用するヒドロキシプロピルセルロースは特に限定されるものではないが、例えば、20℃における20g/L水溶液の粘度が1000〜4000cpsとなるものを使用することができる。
溶液調製工程においては、このようなヒドロキシプロピルセルロースを、所定量の有機溶媒中に溶解させてヒドロキシプロピルセルロース溶液を調製する。
この有機溶媒は、誘電率が15〜25程度であって、ヒドロキシプロピルセルロースを溶解可能な有機溶媒であれば良い。このような有機溶媒としては、例えば、アセトンを好適に用いることができる。
この有機溶媒は、ヒドロキシプロピルセルロースと、イソシアナート(例えば、イソシアン酸フェニル化合物)や、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(以下、MOIともいう。)との反応に直接関与するものではなく、反応の場として用いられるものであるため、その量については特に限定されるものではないが、反応効率の観点から使用するヒドロキシプロピルセルロース5g当たり150〜250mL程度であるのが好ましい。
反応工程にてヒドロキシプロピルセルロース溶液に添加するイソシアナートとしてのイソシアン酸フェニル化合物は、例えば、以下に示すものが好適に用いられる。
ここで上記一般式におけるXは、NO2、CH3、H、又はClのいずれかであるのが好ましい。すなわち、イソシアン酸フェニル化合物としては、イソシアン酸4−ニトロフェニル、イソシアン酸p−トリル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸4−クロロフェニルを好適に用いることができる。また、上記一般式におけるXは、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであっても良い。
また、これらのイソシアン酸フェニル化合物は、それぞれ単独で用いても良く、また、これらの2つ以上化合物をそれぞれ組み合わせて使用しても良い。これらの化合物を2つ以上組み合わせて使用した場合には、各イソシアン酸フェニル化合物それぞれの特徴を有するセルロース誘導体を生成することができる。
これらのイソシアン酸フェニル化合物は、4.9〜5.1重量部のヒドロキシプロピルセルロースに対して、溶解させたヒドロキシプロピルセルロース5g当たり0.016〜0.018molの割合で添加するのが好ましい。なお、これは添加割合を示すものであり、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース0.5gに対しては、イソシアン酸フェニル化合物は0.0016〜0.0018mol、ヒドロキシプロピルセルロース50gに対しては、イソシアン酸フェニル化合物は0.16〜0.18molとなる。
このような添加量とすることにより、過不足を可及的防止しながら、反応を行わせることができる。
また、反応工程においてヒドロキシプロピルセルロース溶液には、MOIを添加するようにしても良い。
具体的には、以下に示すものを好適に用いることができる。
このように、反応工程は、ヒドロキシプロピルセルロース溶液と、上述のイソシアナートとの混合溶液を調製して反応させることにより行われる。
沈殿工程では、上記反応工程を経た混合溶液と水及び塩水とを混合して、セルロース誘導体を液中に沈殿させる。
ここで使用する水は例えばRO水とすることができ、前述の有機溶媒と略等量を添加する。また、塩水は前述の有機溶媒の略半分量を添加する。このような操作を行うことで、十分な沈殿を促すことができる。
このようにして沈殿させたセルロース誘導体は、回収して乾燥を行う(乾燥工程)。
回収の方法としては、セルロース誘導体を変性させるおそれの少ない回収方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、濾過法など公知の方法によって行うことができる。
回収したセルロース誘導体は、必要に応じて洗浄操作等を行い、乾燥させる。乾燥の方法としては、例えば、デシケーター内にて室温静置乾燥するなど公知の乾燥方法により行うことができる。
このように、前述の一般式[I]にて示される分子構造を含む液晶性を備えたセルロース誘導体や、上記液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法にて生成した液晶性を備えるセルロース誘導体は、比較的高い温度においても軟化し難い樹脂材料として用いることができる。なお、目安ではあるが、例えば150℃に耐えうるためには、ウレタン結合が形成されたR1が30%以上の割合で存在していれば良い。
この樹脂材料は、本実施形態に係る液晶性を備えたセルロース誘導体のみで構成されていても良く、また、その他の樹脂や添加物が加えられていても良い。
例えば、本実施形態に係る液晶性を備えたセルロース誘導体同士を架橋する架橋剤を含有させることにより、より強度の高い樹脂成型品を成形可能な樹脂材料とすることができる。
また、樹脂材料に添加する添加物としては、例えばフィラーを挙げることができる。フィラーとしては、例えば、ガラス繊維や炭素素材、綿繊維等を用いることができる。
樹脂材料にフィラーを添加することにより、より強度の高い樹脂成型品とすることができる。
以下、本実施形態に係る液晶性を備えたセルロース誘導体、及びその製造方法、並びに同セルロース誘導体を用いた樹脂材料等について、試験結果を交えながら更に具体的に説明する。
〔1.本実施形態に係る液晶性を備えたセルロース誘導体の合成〕
(1.フェニル基を置換基に持つセルロース誘導体の合成)
フェニル基を置換基に持つセルロース誘導体(以下、HPC-Hという。)の合成を行った。
具体的には、有機溶媒としてアセトンを約200mL量り取った1L容のビーカーに、1000〜4000cpsのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)5.02gを少量ずつ加えてスターラーを用い十分に溶解させることによりヒドロキシプロピルセルロース溶液の調製を行った(溶液調製工程)。
次に、調製したヒドロキシプロピルセルロース溶液に、予め少量のアセトンに溶解させた2.04gのイソシアン酸フェニルを加えて混合溶液を調製し、約1日ほどスターラーにて撹拌しながら反応を行った(反応工程)。
次に、反応工程を経た混合溶液に、200mLのRO水と100mLの塩水とを添加し、薬さじにて十分に撹拌した後、しばらく静置してセルロース誘導体を沈殿させた(沈殿工程)。
次に、沈殿したセルロース誘導体を吸引濾過によって取りだし、数日間デシケーター内で室温乾燥させた。
次いで、乾燥したセルロース誘導体を細かくちぎって500mLビーカーに収容し、300mLの水を添加して、スターラーにて1日ほど撹拌しながら水洗し、再度数日間デシケーター内で室温乾燥させ(乾燥工程)、HPC-Hを得た。図1にHPC-Hの合成経路を示す。また、合成したHPC-Hの分子量を表1に示す。
(2.ニトロフェニル基を置換基に持つセルロース誘導体の合成)
ニトロフェニル基を置換基に持つセルロース誘導体(以下、HPC-Nという。)の合成を行った。
具体的には、有機溶媒としてアセトンを約200mL量り取った1L容のビーカーに、1000〜4000cpsのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)5.02gを少量ずつ加えてスターラーを用い十分に溶解させることによりヒドロキシプロピルセルロース溶液の調製を行った(溶液調製工程)。
次に、調製したヒドロキシプロピルセルロース溶液に、予め少量のアセトンに溶解させた2.04gのイソシアン酸4-ニトロフェニルを加えて混合溶液を調製し、約1日ほどスターラーにて撹拌しながら反応を行った(反応工程)。
次に、反応工程を経た混合溶液に、200mLのRO水と100mLの塩水とを添加し、薬さじにて十分に撹拌した後、しばらく静置してセルロース誘導体を沈殿させた(沈殿工程)。
次に、沈殿したセルロース誘導体を吸引濾過によって取りだし、数日間デシケーター内で室温乾燥させた。
次いで、乾燥したセルロース誘導体を細かくちぎって500mLビーカーに収容し、300mLの水を添加して、スターラーにて1日ほど撹拌しながら水洗し、再度数日間デシケーター内で室温乾燥させ(乾燥工程)、HPC-Nを得た。図2にHPC-Nの合成経路を示す。また、合成したHPC-Nの分子量を表2に示す。
(3.メチルフェニル基を置換基に持つセルロース誘導体の合成)
メチルフェニル基を置換基に持つセルロース誘導体(以下、HPC-Meという。)の合成を行った。
具体的には、有機溶媒としてアセトンを約200mL量り取った1L容のビーカーに、1000〜4000cpsのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)5.02gを少量ずつ加えてスターラーを用い十分に溶解させることによりヒドロキシプロピルセルロース溶液の調製を行った(溶液調製工程)。
次に、調製したヒドロキシプロピルセルロース溶液に、予め少量のアセトンに溶解させた2.29gのイソシアン酸p-トリルを加えて混合溶液を調製し、約1日ほどスターラーにて撹拌しながら反応を行った(反応工程)。
次に、反応工程を経た混合溶液に、200mLのRO水と100mLの塩水とを添加し、薬さじにて十分に撹拌した後、しばらく静置してセルロース誘導体を沈殿させた(沈殿工程)。
次に、沈殿したセルロース誘導体を吸引濾過によって取りだし、数日間デシケーター内で室温乾燥させた。
次いで、乾燥したセルロース誘導体を細かくちぎって500mLビーカーに収容し、300mLの水を添加して、スターラーにて1日ほど撹拌しながら水洗し、再度数日間デシケーター内で室温乾燥させ(乾燥工程)、HPC-Meを得た。図3にHPC-Meの合成経路を示す。また、合成したHPC-Meの分子量を表3に示す。
(4.クロロフェニル基を置換基に持つセルロース誘導体の合成)
クロロフェニル基を置換基に持つセルロース誘導体(以下、HPC-Clという。)の合成を行った。
具体的には、有機溶媒としてアセトンを約200mL量り取った1L容のビーカーに、1000〜4000cpsのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)5.04gを少量ずつ加えてスターラーを用い十分に溶解させることによりヒドロキシプロピルセルロース溶液の調製を行った(溶液調製工程)。
次に、調製したヒドロキシプロピルセルロース溶液に、予め少量のアセトンに溶解させた2.10gのイソシアン酸4-クロロフェニルを加えて混合溶液を調製し、約1日ほどスターラーにて撹拌しながら反応を行った(反応工程)。
次に、反応工程を経た混合溶液に、200mLのRO水と100mLの塩水とを添加し、薬さじにて十分に撹拌した後、しばらく静置してセルロース誘導体を沈殿させた(沈殿工程)。
次に、沈殿したセルロース誘導体を吸引濾過によって取りだし、数日間デシケーター内で室温乾燥させた。
次いで、乾燥したセルロース誘導体を細かくちぎって500mLビーカーに収容し、300mLの水を添加して、スターラーにて1日ほど撹拌しながら水洗し、再度数日間デシケーター内で室温乾燥させ(乾燥工程)、HPC-Clを得た。図4にHPC-Clの合成経路を示す。また、合成したHPC-Clの分子量を表4に示す。
(5.重合性置換基を持つセルロース誘導体の合成)
重合性置換基を持つセルロース誘導体(以下、HPC-MOIという。)の合成を行った。
具体的には、有機溶媒としてアセトンを約200mL量り取った1L容のビーカーに、1000〜4000cpsのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)5.05gを少量ずつ加えてスターラーを用い十分に溶解させることによりヒドロキシプロピルセルロース溶液の調製を行った(溶液調製工程)。
次に、調製したヒドロキシプロピルセルロース溶液に、予め少量のアセトンに溶解させた2.28gの2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(MOI)を加えて混合溶液を調製し、約1日ほどスターラーにて撹拌しながら反応を行った(反応工程)。
次に、反応工程を経た混合溶液を乾燥させ(乾燥工程)、HPC-MOIを得た。図5にHPC-MOIの合成経路を示す。また、合成したHPC-MOIの分子量を表5に示す。
(6.フェニル基と重合性置換基とを持つセルロース誘導体の合成)
フェニル基と重合性置換基とを持つセルロース誘導体(以下、HPC-H-MOIという。)の合成を行った。
具体的には、有機溶媒としてアセトンを約200mL量り取った1L容のビーカーに、前述のHPC-H 5.00gを少量ずつ加えてスターラーを用い十分に溶解させることによりHPC-H溶液の調製を行った(溶液調製工程)。
次に、調製したHPC-H溶液に、予め少量のアセトンに溶解させた1.02gの2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(MOI)を加えて混合溶液を調製し、約1日ほどスターラーにて撹拌しながら反応を行った(反応工程)。
次に、反応工程を経た混合溶液を乾燥させ(乾燥工程)、HPC-H-MOIを得た。図6にHPC-H-MOIの合成経路を示す。また、合成したHPC-H-MOIの分子量を表6に示す。
〔2.試験サンプルの作製〕
次に、合成を行った各セルロース誘導体について、各種試験に供するための試験サンプルの作製を行った。具体的には、アズワンAT-1T熱プレス機を用い、160℃、最大30MPaで熱プレスし、各セルロース誘導体をフィルム状に加工することで試験サンプルとした。
〔3.HPCの置換反応と置換基導入の効果〕
(1.置換率)
次に、合成した各セルロース誘導体の置換率について検討を行った。ここでは、まず始めに、HPC-Hについて検討を行った。図7(a)にHPC-Hの1HNMRスペクトルを示し、図7(b)にHPC-Hの1HNMRスペクトルのピーク積分値を示す。
図7に示すように、フェニルイソシアナート部位中のcのプロトンは1つ、HPCの1ユニットあたりのeのプロトンは9つである。cの積分値をIc、eの積分値をIeとすると1ユニットあたりのフェニルイソシアナートの置換数xは式1に示す計算式の通り導かれる。
よって、HPC-Hの1ユニットあたりの置換度は1.00である。つまり、1ユニット中に存在する3つのヒドロキシル基のうち約1つに置換基が導入されたということが示された。
さらに、前述のHPC-N、HPC-Me、HPC-ClおよびHPC-MOIの置換度も同様に検討を行った。その結果を図8に示す。
(2.転移温度と液晶性)
次に、転移温度と液晶性について検討を行った。
(a.偏光顕微鏡観察)
まず、各試験サンプルについて偏光顕微鏡観察を行った。図9に各試験サンプルの偏光顕微鏡像を示す。
図9からも分かるように、HPC-H、HPC-N、HPC-Me、HPC-ClおよびHPC-MOIのそれぞれにおいて、液晶状態を示す光学組織が観察された。
HPCはリオトロピック液晶であるのに対し、HPC誘導体は加熱によって液晶相を形成するサーモトロピック液晶であった。また、液晶状態は、HPC-H、HPC-N、HPC-Me、HPC-ClおよびHPC-MOIは末端基に依存せず、いずれも同じような光学組織が観察され、それらの光学組織からカラムナー相を形成していると判断した。HPC-MOIは重合性置換基をもつため、加熱することによって重合が進行する。加熱をしながら偏光顕微鏡観察を行ったところ、重合前と重合後で光学組織に変化が見られなかったため、重合後も重合前に形成した液晶配向を保っていると考えられる。
図10に、150℃のときと30℃のときに観察されたHPC-Hの光学組織を示す。ガラス転移温度以下に試料を冷却しても光学組織に大きな変化は見られなかったため、液晶相で形成された基本的な配向構造は、ガラス状態に冷却しても保持されていると考えられた。
図11にHPC誘導体分子の模式図を示す。HPC誘導体は、分子そのものをカラムとみなすことができる。さらに、HPC分子は光学活性であり、ゆるやかな螺旋を描いていると考えられた。
(b.DSC測定)
次に、HPC-H、HPC-N、HPC-MeおよびHPC-ClについてDSC測定を行った。これらの試験サンプルの第二昇温過程におけるDSC曲線を図12(a)に示し、HPC-H、HPC-N、HPC-MeおよびHPC-Clの相転移温度と熱量を図12(b)に示す。
図12(a)からも分かるように、いずれもガラス転移温度(ベースラインのずれ)と液晶−等方相転移(吸熱ピーク)が観測された。また、図12(b)に示すように、ガラス転移温度はHPC-Hが56℃であり、末端に極性基をもつHPC-NやHPC-MeおよびHPC-Clは80℃前後であった。一方、液晶−等方相転移は170℃〜200℃程度であり、比較的幅広い温度範囲で液晶相を示した。
このように幅広い温度範囲での液晶形成が可能となるのは、HPC分子の側鎖に導入されたベンゼン環が水素結合を適度に阻害することによって、カラム状になったHPC分子が程良く分散した配列を形成するためと考えられる。
さらに、HPC-Hは二つの吸熱ピークが観測されたことから、液晶相が二つ存在すると考えられる。
HPC-Hは56.2℃から194.9℃の温度範囲でレクタンギュラーカラムナー相を形成し、194.9℃から210.7℃の温度範囲でラメラカラムナー相を形成した。HPC-Nは83.6℃〜172.8℃の温度範囲でカラムナーネマチック相を形成した。HPC-Meは89.5℃〜219.1℃の温度範囲でラメラカラムナー相を形成した。HPC-Clは76.7℃〜178.1℃の温度範囲でラメラカラムナー相を形成した。なお、詳しい配向構造については、後述の〔4.HPC誘導体の配向挙動〕で言及する。
また、HPC-HとHPC-Meは、他のHPC誘導体に比べ、ΔH、ΔSの値が高い傾向が見られた。
(3.重合性置換基導入の効果)
HPC-HとHPC-MOIの試験サンプルに対し、水で膨潤させて重合性置換基導入の効果の検証を行った。その結果を図13に示す。
図13からも分かるように、重合性置換基を導入したHPC-MOIは、加熱によって架橋化し、透明で水に膨潤しない素材となった。HPC-HとHPC-MOIを水に浸しておくと、HPC-Hは厚さ1mmから6mmに膨潤したのに対し、HPC-MOIの厚みに変化はなく、膨潤していないことが確認できた。
この透明性や非膨潤性は、他のHPC誘導体にはみられなかったため、HPC-MOIを適度に複合化などすることによって、新たな素材への発展が期待できる。
〔4.HPC誘導体の配向挙動〕
次に、各セルロース誘導体の配向挙動について検討を行った。
(1.HPC-MeとHPC-Clの配向挙動)
図14(a)に、室温におけるHPC-MeとHPC-ClのX線回折パターンを示し、図14(b)にHPC-MeとHPC-Clの2θとd値を示す。
図14(a)及び図14(b)からも分かるように、HPC-MeとHPC-Clは、どちらもカラムの配列の秩序に対応した鋭い反射と共にブロードな反射が観測された。鋭い反射から、カラムが秩序を持って配列していると考えられる。小角域のブロードな反射はカラムの径に対応していると考えられる。広角域のブロードな反射は、カラム内の低い秩序に対応すると考えられる。
X線回折測定から、HPC-MeおよびHPC-Clの分子配向構造は類似であると判断された。これらのパッキングモデルを図15に示す。
X線回折測定より得られた鋭い反射のd値の比がd1:d2:d3:d4=1:1/2:1/3:1/4となっていることから、層状(ラメラ)構造をもっていると判断した。さらにHPC誘導体は分子自体をカラムとみなすことができるため、ラメラカラムナーのようなパッキングをしていると考えられる。ベンゼン環や末端の極性基の相互作用が働くことによって、このような秩序の高い配列をしていると考えられる。
カラムの径の平均の値に対応していると考えられる小角域のピークがブロードであることから、カラムの径はある程度バラバラであると考えられる。カラムの径は、HPC-Meは平均9.6Å、HPC-Clは平均11.0Åであった。
カラム内の繰り返し単位の距離は、広角域のブロードな反射より、HPC-Meは平均4.8Å、HPC-Clは平均4.4Åであった。
(2.HPC-Hの配向挙動)
図16(a)に、室温におけるHPC-HのX線回折パターンを示し、図16(b)にHPC-Hの2θとd値を示す。
HPC-HのX線回折測定では、HPC-MeとHPC-Clと同様、カラムの配列の秩序に対応した鋭い反射と共にブロードな反射が観測された。鋭い反射から、カラムが秩序を持って配列していると考えられる。小角域のブロードな反射はカラムの径に対応していると考えられる。広角域のブロードな反射は、カラム内の低い秩序に対応すると考えられる。
図17は、HPC-Hのパッキングモデルである。HPC-HのX線回折測定では、鋭い反射が観測された。しかし、d値の比は、d1:d2:d3:d4=1:1/2:1/3:1/4となっていない。さらに、ヘキサゴナル構造やテトラゴナル構造のd値の比にも当てはまらないため、レクタンギュラー構造をもつと仮定し、d110、d200の値を下記式2
に代入したところ当てはまったため、図17に示すようなレクタンギュラーカラムナー構造をもつパッキングが考えられる。
HPC-Hは、極性基を持たないためにHPC-MeおよびHPC-Clとは異なる配向構造を持つと考えられる。カラムの径の大きさは平均10.1Å、カラム内の繰り返し単位の距離は平均4.5Åであった。
(3.HPC-NとHPC-MOIの配向挙動)
図18(a)に、室温におけるHPC-NとHPC-MOIのX線回折パターンを示し、図18(b)にHPC-NとHPC-MOIの2θとd値を示す。
図18(a)及び図18(b)からも分かるように、HPC-NおよびHPC-MOIのX線回折測定では、ブロードな反射のみが観測された。これは、カラムの乱れた配列の秩序に対応しているものと考えられる。X線回折測定から、HPC-NおよびHPC-MOIの分子配向構造は類似であると判断された。これらのパッキングモデルを図19に示す。
HPC-NおよびHPC-MOIは、カラムの配列が乱れたカラムナーネマチック相を形成していると考えられる。
X線回折測定より、HPC-MOIはHPC-Nよりも小角域のブロードな反射が比較的小さくなっていることから、HPC-MOIは他のHPC誘導体とは異なり、カラムとして存在している分子の割合が少ないということを示す。これは、他のHPC誘導体が構造中にベンゼン環を持っているのに対して、HPC-MOIはベンゼン環を持たないためカラムとして存在しにくくなったと考えられる。
HPC-Nは、ニトロ基の極性が他の置換基よりも強く、嵩高いためにカラムの配列が乱れたと考えられる。このように、HPC誘導体の液晶構造は置換基に依存すると考えられる。
〔5.HPC複合体の作製〕
(1.複合体の作製)
次に、合成原料として使用したHPCや、合成によって得られたHPC-H、HPC-MOI、HPC-H-MOIを用いて、フィラーを含有する樹脂材料としてのHPC複合体の作製を行った。
図20(a)にフィラーとHPC誘導体の複合体の作製方法を示す。図20(a)に示すように、ここでは、フィラーとして、500μm以下の大きさとした綿繊維を使用することとした。また、フィラーの混合は、2種類の方法で行った。まず第1の方法は、HPC誘導体のアセトン溶液中に綿繊維を拡散させて混合する方法であり、第2の方法はHPC誘導体と綿繊維とを化学架橋複合化する方法である。
図20(b)に第1の方法で作製した綿繊維入りHPC-H(以下、HPC-H/Faという。)の偏光顕微鏡写真を示す。図20(b)からも分かるように、検鏡像から液晶状態であることが確認され、また、綿繊維がネットワーク状に絡み合っている様子が観察された。
(2.HPC-Hとミクロファイバーの化学架橋複合化)
図21に化学架橋によるHPC誘導体と綿ファイバーの複合方法について示す。まず、ミクロファイバーとMOIを反応させ、その反応物(Fa-MOI)をHPC-MOIまたはHPC-H-MOIと混合し、それを加熱して架橋化反応させることによって複合体(HPC-MOI/Fa-MOIまたはHPC-H-MOI/Fa-MOI)を合成した。
図22(a)はミクロファイバー(Fa)とミクロファイバーとMOIの反応物(Fa-MOI)のIRスペクトルである。FaとFa-MOIのIRスペクトルを比較すると、Fa-MOIのIRスペクトルの1700cm-1付近にウレタン結合のC=O伸縮に由来する吸収帯が新たに観測された。また、3000〜3700cm-1のO-H伸縮に加え、ウレタン結合のN-H伸縮に基づく吸収帯が現れたため、全体として高波数側にシフトした。以上から、ミクロファイバーとMOIが反応していると判断した。
また、図22(b)に示すように、HPC誘導体とミクロファイバーは、ネットワーク構造を形成していると考えられる。図22(c)に、作製した複合体と作製方法についてまとめた表を示す。
〔6.強度試験〕
(1.試験片の作製)
HPC誘導体の強度を調べるために、引張強度試験を行った。試料を金型に入れ、熱プレス機で160℃にてプレスすることにより、図23に示すような長さ15cm、幅1cm、厚み1mmの試験片を作製した。本試験では、卓上型精密万能試験機を用いて、すべての試料について引張強度試験を行った。
(2.引張強度)
前述のようにして作製した試験片を用いた試験結果を図24に示す。合成したHPC誘導体は、HPCのフィルムに比べ引張強度が向上した。さらに、HPC-Hの引張強度は、同様に加工したポリプロピレンの約3倍であった。また、樹脂加工された一般のポリプロピレンの引張強度は20〜40MPaであるのに対し、本実験で金型加工したポリプロピレンの引張強度は12.7MPaであった。さらに、加工温度の異なる3種類のHPC-Hを比較すると強度に差が出たことから、加工の方法によって強度は変化すると考えられる。よって、HPC誘導体においても配向コントロールなどを行うことにより、さらに強度を向上させることができると考えられる。
図25はミクロファイバーを混合や複合化したHPC誘導体の引張強度をまとめたグラフである。HPC-Hにミクロファイバーを混合したことによって、HPC-Hに比べ、引張強度は低下した。重量パーセントで1%の量ファイバーを混合したところ、引張強度は14.8MPaまで低下した。しかし、ファイバーの量を3%、5%と増やしていくに従い引張強度は向上していき、さらに10%、15%と増やしていくと引張強度が低下していった。ファイバーを混合することによって強度の向上はみられなかった。しかし、ファイバーを1%〜10%混合した複合体は、同様に加工したポリプロピレンよりも高い引張強度を示した。高い引っ張り強度を持ったまま、半合成物であるHPC誘導体の量を減らすことが出来れば、コスト低減や生分解性の向上が期待できる。
HPCにファイバーを混合したことによって、引張強度が向上した。HPC-MOIとファイバーの化学架橋複合体もまた、HPC-MOIに比べ強度が向上した。しかし、HPC-H-MOIとファイバーの化学架橋複合体は、HPC-H-MOIに比べ強度が低下した。
上述してきたように、本実施形態に係る液晶性を備えたセルロース誘導体は、
一般式[I]:
で現される分子構造を含むこととしたため、樹脂材料の原料となりうる比較的容易に合成可能な液晶性を備えたセルロース誘導体を提供することができる。
また、本実施形態に係る液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法では、ヒドロキシプロピルセルロースを有機溶媒中に溶解させてヒドロキシプロピルセルロース溶液を調製する溶液調製工程と、前記ヒドロキシプロピルセルロース溶液に、イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートから選ばれる少なくともいずれか1つを混合し、この混合溶液中にて前記イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートと前記ヒドロキシプロピルセルロースとを反応させる反応工程と、前記反応工程を経た混合溶液に、水及び塩水を添加して、ヒドロキシプロピルセルロース誘導体を沈殿させる沈殿工程と、前記沈殿工程にて沈殿させたヒドロキシプロピルセルロース誘導体を回収して乾燥させる乾燥工程と、を有することとしたため、樹脂材料の原料となりうる比較的容易に合成可能な液晶性を備えたセルロース誘導体を製造することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。

Claims (7)

  1. 一般式[I]:
    で現される分子構造を含む液晶性を備えたセルロース誘導体。
  2. ヒドロキシプロピルセルロースを有機溶媒中に溶解させてヒドロキシプロピルセルロース溶液を調製する溶液調製工程と、
    前記ヒドロキシプロピルセルロース溶液に、イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートから選ばれる少なくともいずれか1つを混合し、この混合溶液中にて前記イソシアン酸フェニル化合物、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートと前記ヒドロキシプロピルセルロースとを反応させる反応工程と、
    前記反応工程を経た混合溶液に、水及び塩水を添加して、ヒドロキシプロピルセルロース誘導体を沈殿させる沈殿工程と、
    前記沈殿工程にて沈殿させたヒドロキシプロピルセルロース誘導体を回収して乾燥させる乾燥工程と、を有する液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法。
  3. 前記イソシアン酸フェニル化合物は、イソシアン酸4−ニトロフェニル、イソシアン酸p−トリル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸4−クロロフェニルから選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項2に記載の液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法。
  4. 請求項1に記載の液晶性を備えたセルロース誘導体及び/または請求項2又は請求項3に記載の液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法により得られた液晶性を備えたセルロース誘導体を主成分として含有する樹脂材料。
  5. 前記液晶性を備えたセルロース誘導体同士を架橋する架橋剤を含有させたことを特徴とする請求項4に記載の樹脂材料。
  6. フィラーを含有させたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の樹脂材料。
  7. 請求項4〜6に記載の樹脂材料により成形された樹脂成型品。
JP2013179176A 2013-08-30 2013-08-30 液晶性を備えたセルロース誘導体、及び、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、同セルロース誘導体を含有する樹脂材料 Active JP6395356B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013179176A JP6395356B2 (ja) 2013-08-30 2013-08-30 液晶性を備えたセルロース誘導体、及び、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、同セルロース誘導体を含有する樹脂材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013179176A JP6395356B2 (ja) 2013-08-30 2013-08-30 液晶性を備えたセルロース誘導体、及び、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、同セルロース誘導体を含有する樹脂材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015048365A true JP2015048365A (ja) 2015-03-16
JP6395356B2 JP6395356B2 (ja) 2018-09-26

Family

ID=52698657

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013179176A Active JP6395356B2 (ja) 2013-08-30 2013-08-30 液晶性を備えたセルロース誘導体、及び、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、同セルロース誘導体を含有する樹脂材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6395356B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018008700A1 (ja) * 2016-07-07 2018-01-11 日本製紙株式会社 変性セルロースナノファイバーおよびこれを含むゴム組成物
WO2019189444A1 (ja) * 2018-03-28 2019-10-03 学校法人東京理科大学 液晶材料、液晶フィルム及びその製造方法、センサー、並びに、光学素子

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0586101A (ja) * 1990-05-10 1993-04-06 Ciba Geigy Ag ウレタン基によつて結合した側鎖(メタ)アクリロイル単位を含むヒドロキシエチルセルロース誘導体及びそれより作られたヒドロゲルコンタクトレンズ
JPH1025365A (ja) * 1996-04-03 1998-01-27 Basf Ag 液晶性重合組成物、支持体の被覆法並びに顔料の製造法
JP2004519541A (ja) * 2001-03-02 2004-07-02 ブルーワー サイエンス アイ エヌ シー. ヒドロキシプロピルセルロースのアリールウレタン類を含む熱硬化性の反射防止コーティング
JP2006335842A (ja) * 2005-06-01 2006-12-14 Konica Minolta Opto Inc セルロースエステル化合物、セルロースエステルフィルム、セルロースエステルフィルムの製造方法、偏光板、及び液晶表示装置
JP2008106158A (ja) * 2006-10-25 2008-05-08 Kaneka Corp セルロースカーバメート誘導体並びにその合成方法
JP2009298826A (ja) * 2008-06-10 2009-12-24 Fujifilm Corp セルロース誘導体、セルロース誘導体フィルム、及びその用途

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0586101A (ja) * 1990-05-10 1993-04-06 Ciba Geigy Ag ウレタン基によつて結合した側鎖(メタ)アクリロイル単位を含むヒドロキシエチルセルロース誘導体及びそれより作られたヒドロゲルコンタクトレンズ
JPH1025365A (ja) * 1996-04-03 1998-01-27 Basf Ag 液晶性重合組成物、支持体の被覆法並びに顔料の製造法
JP2004519541A (ja) * 2001-03-02 2004-07-02 ブルーワー サイエンス アイ エヌ シー. ヒドロキシプロピルセルロースのアリールウレタン類を含む熱硬化性の反射防止コーティング
JP2006335842A (ja) * 2005-06-01 2006-12-14 Konica Minolta Opto Inc セルロースエステル化合物、セルロースエステルフィルム、セルロースエステルフィルムの製造方法、偏光板、及び液晶表示装置
JP2008106158A (ja) * 2006-10-25 2008-05-08 Kaneka Corp セルロースカーバメート誘導体並びにその合成方法
JP2009298826A (ja) * 2008-06-10 2009-12-24 Fujifilm Corp セルロース誘導体、セルロース誘導体フィルム、及びその用途

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018008700A1 (ja) * 2016-07-07 2018-01-11 日本製紙株式会社 変性セルロースナノファイバーおよびこれを含むゴム組成物
JP6276489B1 (ja) * 2016-07-07 2018-02-07 日本製紙株式会社 変性セルロースナノファイバーおよびこれを含むゴム組成物
US11261302B2 (en) 2016-07-07 2022-03-01 Nippon Paper Industries Co., Ltd. Modified cellulose nanofiber and rubber composition including the same
WO2019189444A1 (ja) * 2018-03-28 2019-10-03 学校法人東京理科大学 液晶材料、液晶フィルム及びその製造方法、センサー、並びに、光学素子
JPWO2019189444A1 (ja) * 2018-03-28 2021-07-15 学校法人東京理科大学 液晶材料、液晶フィルム及びその製造方法、センサー、並びに、光学素子
JP7296134B2 (ja) 2018-03-28 2023-06-22 学校法人東京理科大学 液晶材料、液晶フィルム及びその製造方法、センサー、並びに、光学素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP6395356B2 (ja) 2018-09-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Huang et al. Facile fabrication and characterization of highly stretchable lignin-based hydroxyethyl cellulose self-healing hydrogel
JP6810100B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドを含むペレットを含有するコンパウンディング組成物の射出物である製品
Xiao et al. Synthesis, characterization and properties of novel cellulose derivatives containing phosphorus: cellulose diphenyl phosphate and its mixed esters
JP5655003B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
Fox et al. Simultaneously tailoring surface energies and thermal stabilities of cellulose nanocrystals using ion exchange: effects on polymer composite properties for transportation, infrastructure, and renewable energy applications
KR101959462B1 (ko) 프탈로니트릴 화합물
JP5232426B2 (ja) リオトロピック液晶性混合物、及びコーティング液、及び光学異方性フィルム
BR112013029571B1 (pt) Método para produção de uma fibra precursora contendo lignina e fibra precursora para produção de fibras de carbono
TW201802145A (zh) 聚芳硫醚與其製備之方法
JP5647254B2 (ja) ステレオコンプレックスポリ乳酸系フィルムおよび樹脂組成物
Ludueña et al. Preparation and characterization of polybutylene‐succinate/poly (ethylene‐glycol)/cellulose nanocrystals ternary composites
Roy et al. Metastability in a bi-component hydrogel of thymine and 6-methyl-1, 3, 5-triazine-2, 4-diamine: ultrasound induced vs. thermo gelation
JP6395356B2 (ja) 液晶性を備えたセルロース誘導体、及び、液晶性を備えたセルロース誘導体の製造方法、並びに、同セルロース誘導体を含有する樹脂材料
KR101505490B1 (ko) 유연기를 갖는 액정성 에폭시 화합물 및 제조방법
US20200163255A1 (en) Highly elastic, thermally conductive and optically transparent polymer based material for heat dissipation in flexible/wearable electronics and other thermal management applications
JP2008266401A (ja) セルロース成形体およびその製造方法
Zhang et al. Superior comprehensive performance of a rigid-rod poly (hydroxy-p-phenylenebenzobisoxazole) fiber
KR101837634B1 (ko) 아세틸화 셀룰로오스 에테르와 그의 제조방법, 및 상기 아세틸화 셀룰로오스 에테르를 포함하는 물품
KR101503284B1 (ko) 고열전도도를 갖는 복합 절연 조성물 및 제조방법
JP6761611B2 (ja) 高分子配位子及び液晶性高分子錯体
Wei et al. Preparation and property of poly (vinyl alcohol) grafted with butyl glycidyl ether
Kausar et al. Effect of miscibility and interaction on the properties of polymethylmethacrylate/aramid nanoblends
Jadhav et al. Carboxylate functionalized imidazolium-based zwitterions as benign and sustainable solvent for cellulose dissolution: Synthesis and characterization
JP7223362B2 (ja) エポキシ化セルロースの製造方法
JPH06234881A (ja) 液晶性セルロース溶液

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160622

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170523

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170724

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180109

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180207

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180807

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180828

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6395356

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250