JP2015045549A - 接地抵抗測定装置、接地抵抗測定方法および接地抵抗測定プログラム - Google Patents

接地抵抗測定装置、接地抵抗測定方法および接地抵抗測定プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】演算量が膨大になるのを回避しつつ多重接地された接地抵抗の接地抵抗値を確実かつ短時間で測定する。【解決手段】各接地極Pkの実測接地抵抗値rkの1/4の値を算出しそのうちの最小値を初期値とする初期値決定処理を実行し、かつ実測接地抵抗値rk、接地極Pk全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび下記式に基づいて各接地極Pkの各接地抵抗値Rkについての仮接地抵抗値Rtkを算出する処理と、仮接地抵抗値Rtkに基づいて接地極Pk全体での並列合成抵抗値Rbを算出する処理とを、仮合成抵抗値Raを初期値から仮合成抵抗値Raと並列合成抵抗値Rbとの差分値の符号に基づいて変更しながら繰り返して仮合成抵抗値Raを収束させることで仮接地抵抗値Rtkを収束させて、仮接地抵抗値Rtkの収束値を各接地抵抗値Rkとして測定する処理部を備えている。Rtk=(rk+√(rk2−4?rk?Ra))/2【選択図】図1

Description

本発明は、多重接地されたn個の接地極の各接地抵抗値R(kは1からnまでのすべての整数)を測定する接地抵抗測定装置、接地抵抗測定方法および接地抵抗測定プログラムに関するものである。
この種の接地抵抗測定方法として、下記特許文献1に開示されている接地抵抗測定方法が知られている。この接地抵抗測定方法は、まず、多重接地されたn箇所全ての接地極(第1接地極から第n接地極)の接地抵抗値X1,X2,・・・,Xnを1箇所ずつ非接触型のクランプ式接地抵抗計で測定する(実測工程)。次いで、第1から第nまでの各接地極の単独接地状態における実質的な接地抵抗をA,B,・・・,Nとしたときに、下記のn元連立方程式が成り立つため、これらの連立方程式に実測した接地抵抗値X1,X2,X3,・・・,Xnを代入する。
X1=A+1/(1/B+1/C+・・・+1/N)、X2=B+1/(1/A+1/C+・・・+1/N)、X3=C+1/(1/A+1/B+・・・+1/N)、・・・、Xn=N+1/(1/A+1/B+・・・+1/(N−1))
続いて、上記のn元連立方程式の変数項である接地抵抗A〜Nに任意の数値(整数)を初期値として代入して(例えば、A=1,B=1,・・・,N=1)、ニュートン法による数値解析を行うことで、最終的な変数項としての接地抵抗A〜Nを算出する(演算工程)。
特開2008−39426号公報(第6−7頁、第1−2図)
ところが、上記の接地抵抗測定方法には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、この接地抵抗測定方法では、n元連立方程式の変数項としての接地抵抗A〜Nをニュートン法による数値解析で求めているが、ニュートン法には各変数項に対する初期値の選び方次第では最終的な変数項(収束した変数項)としての接地抵抗A〜Nを算出するまでに要する時間が長くなったり、変数項が収束せずに接地抵抗A〜Nを算出することができなかったりといった不具合が生じるおそれがあると共に、n個の変数項を初期値から最終的な値まで変更させながら収束させる必要があるため、演算量が膨大になるという課題とが存在している。
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、演算量が膨大になるのを回避しつつ、多重接地されたn個の接地抵抗の接地抵抗値を確実かつ短時間で測定し得る接地抵抗測定装置、接地抵抗測定方法および接地抵抗測定プログラムを提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の接地抵抗測定装置は、多重接地されたn個の接地極の各接地抵抗値R(kは1からnまでのすべての整数)を測定する接地抵抗測定装置であって、実測された前記n個の接地極の実測接地抵抗値rのそれぞれの1/4の値を算出すると共に当該算出した値のうちの最小値または当該最小値の近傍の値を初期値として決定する初期値決定処理を実行すると共に、前記実測接地抵抗値r、前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび下記式に基づいて当該n個の接地極の前記各接地抵抗値Rについての仮接地抵抗値Rtを算出する仮接地抵抗算出処理と、前記仮接地抵抗値Rtに基づいて前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗値Rbを算出する並列合成抵抗算出処理とを、前記仮合成抵抗値Raを前記初期値から当該仮合成抵抗値Raと前記並列合成抵抗値Rbとの差分値の符号に基づいて変更しながら繰り返し実行することによって当該仮合成抵抗値Raを収束させることで前記仮接地抵抗値Rtを収束させて、当該仮接地抵抗値Rtの収束値を前記各接地抵抗値Rとして測定する処理部を備えている。
Rt=(r+√(r −4×r×Ra))/2
また、請求項2記載の接地抵抗測定方法は、多重接地されたn個の接地極の各接地抵抗値R(kは1からnまでのすべての整数)を測定する接地抵抗測定方法であって、実測された前記n個の接地極の実測接地抵抗値rのそれぞれの1/4の値を算出すると共に当該算出した値のうちの最小値または当該最小値の近傍の値を初期値として決定する初期値決定処理を実行すると共に、前記実測接地抵抗値r、前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび下記式に基づいて当該n個の接地極の前記各接地抵抗値Rについての仮接地抵抗値Rtを算出する仮接地抵抗算出処理と、前記仮接地抵抗値Rtに基づいて前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗値Rbを算出する並列合成抵抗算出処理とを、前記仮合成抵抗値Raを前記初期値から当該仮合成抵抗値Raと前記並列合成抵抗値Rbとの差分値の符号に基づいて変更しながら繰り返し実行することによって当該仮合成抵抗値Raを収束させることで前記仮接地抵抗値Rtを収束させて、当該仮接地抵抗値Rtの収束値を前記各接地抵抗値Rとして測定する。
Rt=(r+√(r −4×r×Ra))/2
また、請求項3記載の接地抵抗測定プログラムは、多重接地されたn個の接地極の各接地抵抗値R(kは1からnまでのすべての整数)を測定する接地抵抗測定装置に対して、実測された前記n個の接地極の実測接地抵抗値rのそれぞれの1/4の値を算出すると共に当該算出した値のうちの最小値または当該最小値の近傍の値を初期値として決定する初期値決定処理を実行させると共に、前記実測接地抵抗値r、前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび下記式に基づいて当該n個の接地極の前記各接地抵抗値Rについての仮接地抵抗値Rtを算出する仮接地抵抗算出処理と、前記仮接地抵抗値Rtに基づいて前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗値Rbを算出する並列合成抵抗算出処理とを、前記仮合成抵抗値Raを前記初期値から当該仮合成抵抗値Raと前記並列合成抵抗値Rbとの差分値の符号に基づいて変更させながら繰り返し実行させることによって当該仮合成抵抗値Raを収束させることで前記仮接地抵抗値Rtを収束させて、当該仮接地抵抗値Rtの収束値を前記各接地抵抗値Rとして測定させる。
Rt=(r+√(r −4×r×Ra))/2
請求項1記載の接地抵抗測定装置および請求項2記載の接地抵抗測定方法では、接地極の実測接地抵抗値rのそれぞれの1/4の値を算出すると共にこの算出した値のうちの最小値またはこの最小値の近傍の値を初期値として決定する初期値決定処理を実行すると共に、実測接地抵抗値r、n個の接地極の全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび上記式に基づいて各接地極の各接地抵抗値Rについての仮接地抵抗値Rtを算出する仮接地抵抗算出処理と、各仮接地抵抗値Rtに基づいて接地極の全体での並列合成抵抗値Rbを算出する並列合成抵抗算出処理とを、仮合成抵抗値Raを初期値から差分値(Rb−Ra)の符号に基づいて変更しながら繰り返し実行することによって仮合成抵抗値Raを収束させることで各仮接地抵抗値Rtを収束させて、各仮接地抵抗値Rtの収束値を各接地極の各接地抵抗値Rとして測定する。また、この接地抵抗測定プログラムでは、上記の初期値決定処理、仮接地抵抗算出処理および並列合成抵抗算出処理をこの接地抵抗測定装置に実行させる。
したがって、この接地抵抗測定装置、この接地抵抗測定方法およびこの接地抵抗測定プログラムによれば、n個の接地抵抗値を変数項とする多元連立方程式をニュートン法によって数値解析する必要はなく、1つの仮合成抵抗値Raを変数項として変更する数値解析を実行してこの仮合成抵抗値Raを収束させるだけで、収束値が各接地抵抗値Rとなる各仮接地抵抗値Rtを収束させることができるため、演算量を大幅に低減することができる。また、この接地抵抗測定装置、この接地抵抗測定方法およびこの接地抵抗測定プログラムによれば、仮合成抵抗値Raを、この仮合成抵抗値Raの収束値に近い初期値から変更することができるため、この仮合成抵抗値Raを確実に収束させることができる結果、各仮接地抵抗値Rtについても確実に収束させることができ、したがって、多重接地された各接地極の各接地抵抗値Rを確実かつ短時間で測定することができる。
接地抵抗測定装置1の構成図である。 被接地体8がn個の接地極P〜Pによって多重接地された状態の説明図である。 接地抵抗測定処理50を説明するためのフローチャートである。 仮合成抵抗値Raを収束させたときの、仮接地抵抗値Rt〜Rt、並列合成抵抗値Rbおよび差分値(Rb−Ra)の変化の様子を示す説明図である。
以下、添付図面を参照して、接地抵抗測定装置、接地抵抗測定方法および接地抵抗測定プログラムの実施の形態について説明する。
まず、接地抵抗測定装置1の構成について、図1を参照して説明する。
接地抵抗測定装置1は、非接触型のクランプ式接地抵抗測定装置(クランプ式接地抵抗計)であって、図1に示すように、注入クランプ部2、検出クランプ部3、測定部4、処理部5、記憶部6および出力部7を備え、図2に示すようにして、被接地体8(例えば、避雷針、商用交流を供給する架線のN相および送電鉄塔など)を多重接地する複数(n個:nは2以上の整数)の接地極P(kは1からnまでのすべての整数であるため、接地極P〜P)を測定対象として、それらの接地抵抗値R(接地抵抗値R〜R)を測定可能に構成されている。この場合の各接地抵抗値Rは、対応する接地極Pを他のすべての接地極P,P,・・・,Pk−1,Pk+1,・・・,Pから切り離して単独接地にしたときの接地極Pについての接地抵抗値である。
注入クランプ部2は、一例として2つに分割された第1環状コア11、および第1環状コア11に巻回された第1巻線12を有している。また、検出クランプ部3は、2つに分割された第2環状コア21、および第2環状コア21に巻回された第2巻線22を有している。また、注入クランプ部2および検出クランプ部3は、先端が開閉自在なクランプ型の樹脂製の不図示のハウジングに共に収容されて、このハウジングの開閉動作に伴い、それぞれの第1環状コア11および第2環状コア21が同時に開閉するように構成されている。この構成により、ハウジングを開状態としてその内側に接地極Pに接続されている配線を導入し、その後にハウジングを閉状態とすることで、注入クランプ部2および検出クランプ部3がこの配線を同時にクランプすることが可能になっている。
測定部4は、予め規定された振幅および周波数の交流電圧V1を生成して注入クランプ部2の第1巻線12に印加することで、注入クランプ部2でクランプした配線(接地極Pに接続されている配線)に検査用交流電圧Vxを注入する機能と、この検査用交流電圧Vxの注入時にこの配線に接続されている接地極P、およびこの接地極P以外の他の接地極P,P,・・・,Pk−1,Pk+1,・・・,Pの接地抵抗の並列回路Rxで構成される電流ループLPに流れる交流電流Ixをこの配線にクランプされている検出クランプ部3で検出する機能(具体的には、交流電流Ixに応じて検出クランプ部3の第2巻線22に流れる交流電流I1に基づいて交流電流Ixを検出する機能)と、検査用交流電圧Vxおよび交流電流Ixに基づいて、交流電流Ixが流れる上記電流ループLPの抵抗値(接地極Pについての実測接地抵抗値r(接地抵抗値Rに並列回路Rxの並列合成抵抗値を加えた抵抗値))を算出して処理部5に出力する機能とを備えている。
処理部5は、コンピュータで構成されて、各接地極Pに接続されている配線を注入クランプ部2および検出クランプ部3でクランプしたときに測定部4から出力される各接地極Pについての実測接地抵抗値rを取得して記憶部6に記憶させる記憶処理を実行する。また、処理部5は、記憶部6に記憶されている接地抵抗測定プログラムを実行することにより、接地抵抗測定処理50(図3参照)を実行する。この接地抵抗測定処理50では、処理部5は、初期値決定処理、仮接地抵抗算出処理および並列合成抵抗算出処理を実行して、各接地極Pの接地抵抗値Rを算出する。また、処理部5は、算出した各接地抵抗値Rを出力部7に出力する出力処理を実行する。
記憶部6は、一例として不揮発性メモリで構成されて、処理部5のための動作プログラム(接地抵抗測定プログラムを含む)が予め記憶されている。また、記憶部6には、処理部5が測定部4から取得した実測接地抵抗値rが記憶されると共に、処理部5が接地抵抗測定処理50において算出した各接地極Pの接地抵抗値Rが記憶される。出力部7は、一例として、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されて、処理部5から出力された各接地極Pの接地抵抗値Rを各接地極Pに対応付けて画面に表示する。なお、出力部7をインターフェース回路で構成して、処理部5から出力された各接地極Pの接地抵抗値Rを接地抵抗測定装置1の外部に位置する他の装置に出力する構成を採用することもできる。
次に、接地抵抗測定装置1の動作について、接地抵抗測定方法と併せて説明する。
最初に、オペレータは、接地抵抗測定装置1を使用して、各接地極Pの実測接地測定値rを実測する。この際に、接地抵抗測定装置1では、測定部4が、各実測接地測定値rを測定する都度、処理部5に測定した実測接地測定値rを出力する。また、処理部5が、この実測接地測定値rを入力する都度、記憶処理を実行して、入力した実測接地測定値rを対応する接地極Pに関連付けて記憶部6に記憶させる。
このようにして、すべての接地極P〜Pについての実測接地測定値r〜rの実測および記憶が完了した後に、接地抵抗測定装置1では、処理部5が、接地抵抗測定プログラムを実行することにより、図3に示す接地抵抗測定処理50を実行する。
この接地抵抗測定処理50では、処理部5は、まず、初期値決定処理を実行する(ステップ51)。この初期値決定処理では、処理部5は、記憶部6に記憶されている実測接地測定値r〜rを読み出して、各実測接地測定値r〜rのそれぞれの1/4の値を算出する。また、処理部5は、算出した各値のうちの最小値(または、この最小値の近傍(最小値未満での近傍)の値)を初期値Rini(仮接地抵抗算出処理での後述する仮合成抵抗値Raの初期値)として決定する。これにより、初期値決定処理が完了する。
ここで、各実測接地測定値r〜rの1/4の値を算出して、それらのうちの最小値を初期値Riniとする理由は以下の通りである。すなわち、すべての接地抵抗値Rの並列合成抵抗値をRとしたときに、接地抵抗値Rが下記式(1)で表され、
=(r+√(r −4×r×R))/2 ・・・ (1)
この式(1)中のルートの中の値(r −4×r×R)が0以上でなければないことから、r≧4×R、つまり、
/4≧R ・・・ (2)
が成り立つ。しかも、すべての実測接地測定値rにおいてこの式(2)が成り立たなければならないことから、並列合成抵抗値Rは、実測接地測定値r〜rの1/4の各値のうちの最小値以下になる。よって、並列合成抵抗値Rについての仮合成抵抗値Raの初期値Riniも実測接地測定値r〜rの1/4の各値のうちの最小値以下にすべきだからである。
なお、上記の式(1)は、以下のようにして算出される。
まず、図2に示すすべての接地極P〜Pについての接地抵抗値R〜Rの並列合成抵抗値Rは、以下の式(3)で表される。
1/R=1/R+1/R+・・・+1/R+・・・+1/R ・・・(3)
また、実測接地測定値rは、以下の式(4)で表される。
=R+1/(1/R+1/R+・・・+1/Rk−1+1/Rk+1+・・・+1/R) ・・・ (4)
また、上記式(3)を変形することで、下記式(5)が算出される。
1/R+1/R+・・・+1/Rk−1+1/Rk+1+・・・+1/R
=1/R−1/R ・・・ (5)
そして、この式(5)を上記式(4)に代入して整理することにより、接地抵抗値Rを変数とする二次方程式としての下記式(6)が算出されて、この二次方程式の解が上記した式(1)で表される。
−r×R+r×R=0 ・・・ (6)
次いで、処理部5は、上記のようにして算出した初期値Riniを仮合成抵抗値Raの初期値に規定して(ステップ52)、仮接地抵抗算出処理を実行する(ステップ53)。この仮接地抵抗算出処理では、処理部5は、記憶部6に記憶されているn個の実測接地抵抗値r、n個の接地極Pの全体での並列合成抵抗についての合成抵抗値R(この並列合成抵抗値Rは、後述するように、いずれは収束するが、収束するまでは変動するため、仮合成抵抗値Raと表記するものとする)、および上記式(1)に基づいて、n個の接地極Pの各接地抵抗値Rを算出する(この各接地抵抗値Rは、後述するように、いずれは収束するが、収束するまでは変動するため、仮接地抵抗値Rt(各仮接地抵抗値Rt〜Rt)と表記するものとする)。また、処理部5は、算出した各仮接地抵抗値Rtを記憶部6に記憶させる。
続いて、処理部5は、並列合成抵抗算出処理を実行する(ステップ54)。この並列合成抵抗算出処理では、処理部5は、上記のようにして算出した仮接地抵抗値Rtに基づいてn個の接地極P〜Pの全体での並列合成抵抗値Rbを算出する。
処理部5は、この仮接地抵抗値Rt〜Rtのすべてが収束したか否かを判別して(ステップ55)、収束していないと判別したときには、仮合成抵抗値Raを変更しつつ(ステップ56)、上記したステップ53〜ステップ55を繰り返し実行する。この場合、各仮接地抵抗値Rtのすべてが収束したと判別するための基準として、本例では一例として、各仮接地抵抗値Rtがそれぞれ連続して同時に複数回(2回、3回、・・・など。本例では一例として3回)同じ値になったことを基準とする。なお、他の基準として、後述する差分値(Rb−Ra)の符号が変化したとき(マイナスからプラスに転じたときや、プラスからマイナスに転じたとき)の各仮接地抵抗値Rtと、符号が変化する直前での各仮接地抵抗値Rtとがそれぞれ一致したことを基準とすることもできる。
また、処理部5は、ステップ56での仮合成抵抗値Raの変更に際して、仮合成抵抗値Raを初期値Riniから減少させる。この場合、仮合成抵抗値Raを一定の微小な値ずつ減少させる構成であっても、仮合成抵抗値Raを収束させることができ、これにより、すべての仮接地抵抗値Rt〜Rtについても収束させることが可能であるが、この構成では収束までに時間がかかるおそれがある。このため、本例では、処理部5は、仮合成抵抗値Raと並列合成抵抗値Rbとの差分値(Rb−Ra)を算出してこの差分値(Rb−Ra)の符号を検出しつつ、この符号がマイナスのときには、現在の仮合成抵抗値Raが大き過ぎると判別して、現在の仮合成抵抗値Raを所定値(上記した微小な値よりも十分に大きな値)だけ小さな新たな仮合成抵抗値Raに変更する。一方、検出している符号がマイナスからプラスに転じたときには、処理部5は、現在の仮合成抵抗値Raが小さ過ぎると判別して、符号がプラスに転じる1つ前の仮合成抵抗値Raに戻し、この仮合成抵抗値Raから上記の所定値よりも少ない新たな所定値だけ小さな新たな仮合成抵抗値Raに変更する。
この構成を採用することにより、処理部5は、仮合成抵抗値Raを一定の微小な値ずつ減少させる構成と比較して、初めは大きく減少させて、仮合成抵抗値Raを収束値に近い値に短時間で移行させ、仮合成抵抗値Raが収束値に近い値になった以後は仮合成抵抗値Raを小さく減少させることで、仮合成抵抗値Raを収束値に短時間で、かつ精度よく収束値に収束させることができ、これにより、仮接地抵抗値Rtについても、短時間で、かつ精度よく収束値に収束させることが可能になっている。
一方、ステップ55において、各仮接地抵抗値Rtがすべて収束したと判別したときには、処理部5は、収束した各仮接地抵抗値Rt(仮接地抵抗値Rtの収束値)を、n個の接地極P〜Pの各接地抵抗値R〜Rとして決定して記憶部6に記憶させる(ステップ57)。これにより、接地抵抗測定処理50が完了する。
最後に、処理部5は、出力処理を実行して、記憶部6に記憶されている各接地抵抗値Rを出力部7に出力する。本例では、出力部7は、一例として表示装置で構成されているため、処理部5から出力された各接地抵抗値Rを対応する接地極Pに対応付けて表示する。
具体例を挙げて、処理部5が接地抵抗測定プログラムに基づいて実行する接地抵抗測定処理50(接地抵抗測定方法)により、仮合成抵抗値Raを初期値Riniから減少させて収束させることで、各接地極Pの仮接地抵抗値Rtを収束値まで収束させ得ることを説明する。一例として、接地極は3つの接地極P〜Pとし、各接地極P〜Pの実測接地測定値r〜rとして、3.86[Ω]、4.65[Ω]、3.72[Ω]が測定されたことを初期条件とする。
この例では、処理部5は、初期値決定処理(ステップ51)において、各実測接地測定値r〜rの1/4の値(0.97、1.16、0.93)を算出し、これらの値のうちの最小値である0.93を仮合成抵抗値Raの初期値Riniに決定する。なお、この最小値である0.93の近傍(最小値である0.93未満での近傍)の値、例えば、後述するように、0.90などを初期値Riniに決定することもできる。
処理部5は、仮接地抵抗算出処理(ステップ53)および並列合成抵抗算出処理(ステップ54)を実行して、仮合成抵抗値Raを0.93としたときの仮接地抵抗値Rt〜Rt、および並列合成抵抗値Rbを図4に示すように算出する。この状態では、処理部5は、ステップ55において、仮接地抵抗値Rt〜Rtは収束していないと判別するため、ステップ56を実行して仮合成抵抗値Raを変更する。
この場合、算出される差分値(Rb−Ra)の符号がマイナスであるため、処理部5は、仮合成抵抗値Ra(この場合、0.93)の未確定最上位(この場合、小数点第1位)の値を1つ減らした0.83を新たな仮合成抵抗値Raとし、その後に、差分値(Rb−Ra)の符号がマイナスの間は、小数点第1位の値を1つ減らす動作を繰り返すことで新たな仮合成抵抗値Raとする構成を採用することもできる。しかしながら、本例では、仮合成抵抗値Raの減少の様子を分かりやすくするため、処理部5は、1回目では仮合成抵抗値Raを区切りのよい0.9に減少させ、その後に、差分値(Rb−Ra)の符号がマイナスの間は、小数点第1位の値を1つ減らす動作を繰り返すことで新たな仮合成抵抗値Raとする(仮合成抵抗値Raを0.8,0.7,・・・というように減少させる)という構成を採用している。
この具体例では、仮合成抵抗値Raを0.9に減少させたときの差分値(Rb−Ra)の符号はマイナスで、その後に、仮合成抵抗値Raを0.8に減少させたときの差分値(Rb−Ra)の符号はプラスに転じる。これにより、仮合成抵抗値Raは、0.9未満で、かつ0.8よりも大きい値であることが確定する。つまり、仮合成抵抗値Raの小数点第1位は、数値8に確定する。このため、処理部5は、仮合成抵抗値Raを差分値(Rb−Ra)の符号がプラスに転じる直前の値(つまり、0.9)に戻すと共に、このときの未確定最上位(この場合、小数点第2位)の値を1つ減らして新たな仮合成抵抗値Raを0.89とし、その後に、差分値(Rb−Ra)の符号がマイナスの間は、小数点第2位の値を1つ減らす動作を繰り返すことで新たな仮合成抵抗値Raとする。
この具体例では、仮合成抵抗値Raを0.89から0.88に減少させたときの差分値(Rb−Ra)の符号がプラスに転じる。これにより、仮合成抵抗値Raは、0.89未満で、かつ0.88よりも大きい値であることが確定する。つまり、仮合成抵抗値Raの小数点第2位は、数値8に確定する。このため、処理部5は、仮合成抵抗値Raを差分値(Rb−Ra)の符号がプラスに転じる直前の値(つまり、0.89)に戻すと共に、このときの未確定最上位(この場合、小数点第3位)の値を1つ減らして新たな仮合成抵抗値Raを0.889とし、その後に、差分値(Rb−Ra)の符号がマイナスの間は、小数点第3位の値を1つ減らす動作を繰り返すことで新たな仮合成抵抗値Raとする。
この例では、処理部5が、上記の動作を繰り返すことで、仮合成抵抗値Raは、図4に示すように、初期値の0.93から、0.884以上0.885未満の範囲まで収束して、0.885,0.884,0.8849のときに、仮接地抵抗値Rtが3回連続して2.49[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して3.46[Ω]になり、かつ仮接地抵抗値Rtが3回連続して2.27[Ω]になる。これにより、処理部5は、ステップ55において、すべての仮接地抵抗値Rt〜Rtが収束したと判別して、ステップ57に移行して、この仮接地抵抗値Rt〜Rtの収束値(2.49[Ω],3.46[Ω],2.27[Ω])を、3個の接地極P〜Pの各接地抵抗値R〜Rとして決定して記憶部6に記憶させる。なお、収束したと判別するための上記した他の基準(差分値(Rb−Ra)の符号が変化したときの各仮接地抵抗値Rtと、符号が変化する直前での各仮接地抵抗値Rtとがそれぞれ一致したこと)を適用したときには、図4に示すように、仮合成抵抗値Raが0.885から0.884に減少して、差分値(Rb−Ra)の符号がこの例ではマイナスからプラスに転じたときに、仮合成抵抗値Raが0.884のとき(符号が転じたとき)の仮接地抵抗値Rt,Rt,Rt(2.49,3.46,2.27)と、仮合成抵抗値Raが0.885のとき(符号が転じる直前のとき)の仮接地抵抗値Rt,Rt,Rt(2.49,3.46,2.27)とが一致する。これにより、処理部5は、仮合成抵抗値Raが0.884のとき(または0.885のとき)に各仮接地抵抗値Rtが収束したと決定する。
また、このようにして測定された接地極P〜Pの各接地抵抗値R〜R(2.49[Ω],3.46[Ω],2.27[Ω])を上記の式(4)に代入して各実測接地測定値r〜rを算出して、上記の初期条件(実測接地測定値r〜rとして、3.86[Ω]、4.65[Ω]、3.72[Ω]が測定されたものとした条件)と同じになるか検算すると、すべて一致することから、接地極P〜Pの各接地抵抗値R〜Rは正確に測定されていることが検証された。
なお、図示はしないが、10個の接地極P〜P10の各接地抵抗値R〜R10を測定する他の具体例についてもシミュレーションを行い、各接地極P〜P10の実測接地測定値r〜r10として、3.86[Ω],4.65[Ω],3.72[Ω],5.62[Ω],2.13[Ω],10.99[Ω],8.96[Ω],3.56[Ω],4.55[Ω],6.33[Ω]が測定されたことを初期条件とした場合において、仮合成抵抗値Raが0.3869,0.3868,0.3867のときに、仮接地抵抗値Rtが3回連続して3.42[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して4.22[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して3.28[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して5.20[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して1.62[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して10.59[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して8.55[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して3.12[Ω]になり、仮接地抵抗値Rtが3回連続して4.12[Ω]になり、かつ仮接地抵抗値Rt10が3回連続して5.92[Ω]になる。これにより、処理部5は、ステップ55において、すべての仮接地抵抗値Rt〜Rt10が収束したと判別して、ステップ57に移行して、この仮接地抵抗値Rt〜Rt10の上記の収束値を、10個の接地極P〜P10の各接地抵抗値R〜R10として決定して記憶部6に記憶させることができる。なお、この接地抵抗値R〜R10についても、上記の3個の接地極P〜Pのときの検算と同じ検算を行うことにより、正確に測定されていることが検証された。
このように、この接地抵抗測定装置およびこの接地抵抗測定方法では、実測されたn個の接地極Pの実測接地抵抗値rのそれぞれの1/4の値を算出すると共にこの算出した値のうちの最小値(または、この最小値の近傍の値)を初期値Riniとして決定する初期値決定処理(ステップ51)を実行すると共に、実測接地抵抗値r、接地極P〜Pの全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび上記式(1)に基づいて各接地極Pの各接地抵抗値Rについての仮接地抵抗値Rtを算出する仮接地抵抗算出処理(ステップ53)と、各仮接地抵抗値Rtに基づいて接地極P〜Pの全体での並列合成抵抗値Rbを算出する並列合成抵抗算出処理(ステップ54)とを、仮合成抵抗値Raを初期値Riniから差分値(Rb−Ra)の符号に基づいて変更しながら繰り返し実行することによって仮合成抵抗値Raを収束させることで各仮接地抵抗値Rtを収束させて、各仮接地抵抗値Rtの収束値を各接地極Pの各接地抵抗値Rとして測定する。また、この接地抵抗測定プログラムでは、上記の初期値決定処理(ステップ51)、仮接地抵抗算出処理(ステップ53)および並列合成抵抗算出処理(ステップ54)をこの接地抵抗測定装置に実行させる。
したがって、この接地抵抗測定装置、接地抵抗測定方法および接地抵抗測定プログラムによれば、n個の接地抵抗値R〜Rを変数項とする多元連立方程式をニュートン法によって数値解析する必要はなく、1つの仮合成抵抗値Raを変数項として変更する数値解析を実行してこの仮合成抵抗値Raを収束させるだけで、収束値が各接地抵抗値Rとなる各仮接地抵抗値Rtを収束させることができるため、演算量を大幅に低減することができる。また、この接地抵抗測定装置、この接地抵抗測定方法およびこの接地抵抗測定プログラムによれば、仮合成抵抗値Raを、この仮合成抵抗値Raの収束値に近い初期値Riniから変更することができるため、この仮合成抵抗値Raを確実に収束させることができる結果、各仮接地抵抗値Rtについても確実に収束させることができ、したがって、多重接地された各接地極Pの各接地抵抗値Rを確実かつ短時間で測定することができる。
なお、上記の接地抵抗測定装置1では、注入クランプ部2、検出クランプ部3および測定部4を備えて、接地抵抗測定装置1自らが実測接地抵抗値rを測定し得る構成を採用しているが、実測接地抵抗値rを測定する機能は有さずに、他の測定装置で測定された実測接地抵抗値rを入力して、多重接地された各接地極Pの各接地抵抗値Rを測定する構成を採用することもできる。
1 接地抵抗測定装置
接地極
実測接地抵抗値
Ra 仮合成抵抗値
Rb 並列合成抵抗値
ini 初期値
接地抵抗値
Rt 仮接地抵抗値

Claims (3)

  1. 多重接地されたn個の接地極の各接地抵抗値R(kは1からnまでのすべての整数)を測定する接地抵抗測定装置であって、
    実測された前記n個の接地極の実測接地抵抗値rのそれぞれの1/4の値を算出すると共に当該算出した値のうちの最小値または当該最小値の近傍の値を初期値として決定する初期値決定処理を実行すると共に、
    前記実測接地抵抗値r、前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび下記式に基づいて当該n個の接地極の前記各接地抵抗値Rについての仮接地抵抗値Rtを算出する仮接地抵抗算出処理と、前記仮接地抵抗値Rtに基づいて前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗値Rbを算出する並列合成抵抗算出処理とを、前記仮合成抵抗値Raを前記初期値から当該仮合成抵抗値Raと前記並列合成抵抗値Rbとの差分値の符号に基づいて変更しながら繰り返し実行することによって当該仮合成抵抗値Raを収束させることで前記仮接地抵抗値Rtを収束させて、当該仮接地抵抗値Rtの収束値を前記各接地抵抗値Rとして測定する処理部を備えている接地抵抗測定装置。
    Rt=(r+√(r −4×r×Ra))/2
  2. 多重接地されたn個の接地極の各接地抵抗値R(kは1からnまでのすべての整数)を測定する接地抵抗測定方法であって、
    実測された前記n個の接地極の実測接地抵抗値rのそれぞれの1/4の値を算出すると共に当該算出した値のうちの最小値または当該最小値の近傍の値を初期値として決定する初期値決定処理を実行すると共に、
    前記実測接地抵抗値r、前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび下記式に基づいて当該n個の接地極の前記各接地抵抗値Rについての仮接地抵抗値Rtを算出する仮接地抵抗算出処理と、前記仮接地抵抗値Rtに基づいて前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗値Rbを算出する並列合成抵抗算出処理とを、前記仮合成抵抗値Raを前記初期値から当該仮合成抵抗値Raと前記並列合成抵抗値Rbとの差分値の符号に基づいて変更しながら繰り返し実行することによって当該仮合成抵抗値Raを収束させることで前記仮接地抵抗値Rtを収束させて、当該仮接地抵抗値Rtの収束値を前記各接地抵抗値Rとして測定する接地抵抗測定方法。
    Rt=(r+√(r −4×r×Ra))/2
  3. 多重接地されたn個の接地極の各接地抵抗値R(kは1からnまでのすべての整数)を測定する接地抵抗測定装置に対して、
    実測された前記n個の接地極の実測接地抵抗値rのそれぞれの1/4の値を算出すると共に当該算出した値のうちの最小値または当該最小値の近傍の値を初期値として決定する初期値決定処理を実行させると共に、
    前記実測接地抵抗値r、前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗についての仮合成抵抗値Raおよび下記式に基づいて当該n個の接地極の前記各接地抵抗値Rについての仮接地抵抗値Rtを算出する仮接地抵抗算出処理と、前記仮接地抵抗値Rtに基づいて前記n個の接地極の全体での並列合成抵抗値Rbを算出する並列合成抵抗算出処理とを、前記仮合成抵抗値Raを前記初期値から当該仮合成抵抗値Raと前記並列合成抵抗値Rbとの差分値の符号に基づいて変更させながら繰り返し実行させることによって当該仮合成抵抗値Raを収束させることで前記仮接地抵抗値Rtを収束させて、当該仮接地抵抗値Rtの収束値を前記各接地抵抗値Rとして測定させる接地抵抗測定プログラム。
    Rt=(r+√(r −4×r×Ra))/2
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