JP2015042855A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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一康 岩田
晃 山下
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晃 山下
大史 大八木
Hiroshi Oyagi
大史 大八木
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Abstract

【課題】尿素SCR触媒を備えた内燃機関のランニングコストを適切に改善する。【解決手段】制御装置は、尿素SCR触媒を備えた内燃機関に適用され、内燃機関の燃焼サイクルにおいて燃料が燃焼するときの熱発生率重心位置として定められるクランク角度を燃焼制御に用いる。制御装置は、熱発生率重心位置と、燃料の消費の度合いと、尿素SCR触媒における尿素水の消費の度合いと、の間の関係に基づき、内燃機関のランニングコストの改善を図り得る目標位置を定めるとともに、目標位置に熱発生率重心位置が一致するように燃焼制御を行う制御部、を備える。【選択図】図4

Description

本発明は、尿素SCR触媒(以下、便宜上、単に「SCR触媒」とも称呼される。)を備えた内燃機関に適用される制御装置に関する。
従来から、内燃機関の種々の特性を高めるべく、内燃機関の燃焼サイクルにおける燃料の燃焼状態を制御することが提案されている。
例えば、従来の制御装置の1つ(以下、「従来装置」とも称呼される。)は、ディーゼル機関の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)および粒子状物質(スモーク)の量を低減するべく、燃料が燃焼するときの燃焼重心角度(1回の燃焼行程中に発生する総熱量の50%が発生する時点におけるクランク角度)を、制御指標の一つとして用いている。具体的には、従来装置は、燃焼重心角度を特定の手法によって算出し、算出された燃焼重心角度と実際の燃焼重心角度との差が小さくなるように燃料噴射時期などを制御する、ように構成されている(例えば、特許文献1を参照。)。
以下、説明の便宜上、従来装置の「燃焼重心角度」は「50%熱発生角度」とも称呼され、内燃機関は単に「機関」とも称呼される。
特開2011−202629号公報
従来装置は、上述したように、排ガスの浄化に関して50%熱発生角度を利用している。これに対し、本出願に係る発明の発明者らは、SCR触媒を備えた機関のランニングコストの改善(例えば、燃料および尿素水の消費量の低減)に関しても、従来装置の50%熱発生角度を利用できるか否か、を検討した。本検討の結果は、以下の通りである。
まず、内燃機関(例えば、ディーゼル機関)においては、1つのサイクルの燃焼に対して燃料を複数回噴射する多段噴射が行われる場合がある。具体的には、例えば、メイン噴射(主噴射)の前にパイロット噴射が行われる場合がある。
図11は、パイロット噴射およびメイン噴射が行われる場合における、クランク角度と、熱発生率と、の関係の一例を表す参考図である。図11(A)の“熱発生率”は、「単位クランク角度(クランクシャフトの回転位置の単位変化量)だけクランクシャフトが回転する期間中に燃料の燃焼により発生する熱量(すなわち、単位クランク角度あたりの熱発生量)」を表す。また、図11(B)の“発熱量比率”とは、「発熱量の総量に対する、燃焼開始から所定のクランク角度までの発熱量の積算値の比率」を表す。よって、この“発熱量比率”が50%であるときのクランク角度が、従来装置の“50%熱発生角度”に相当することになる。
図11(A)の波形(曲線C1)に示されるように、熱発生率は、クランク角度θ1において開始されるパイロット噴射により極大値Lpとなり、クランク角度θ2において開始されるメイン噴射により極大値Lmとなる。このとき、図11(B)に示されるように、クランク角度θ3における発熱量比率が50%である。すなわち、本例における50%熱発生角度は、クランク角度θ3である。
一方、図12は、図11の例の“パイロット噴射の開始時期だけ”をクランク角度θ1からクランク角度θ0へ“Δθpだけ進角した”場合における、クランク角度と、熱発生率と、の関係の一例を表す参考図である。
図12(A)の波形(曲線C2)に示されるように、この場合、パイロット噴射によって発熱が始まるクランク角度がクランク角度Δθpだけ進角する。しかし、図12(B)に示されるように、パイロット噴射による発熱が始まるクランク角度が進角しても、50%熱発生角度は、変化することなくクランク角度θ3に維持される。すなわち、50%熱発生角度と燃料の燃焼状態との間には、一対一の関係がない。この理由は、発熱量の積算の始点がθ1からθ0へ変化したとしても、パイロット噴射における発熱量そのものは変化せず、発熱量の積算値が総発熱量の50%に到達する時点(θ3)は変化しないことになるからである。
さらに、図13は、50%熱発生角度と、燃料消費率の悪化率と、の関係の一例を表す参考図である。図中の曲線Hb1〜曲線Hb3は、それぞれ、低負荷かつ低回転速度、中負荷かつ中回転速度、および、高負荷かつ高回転速度の場合における同関係を表す。なお、これら曲線は、発明者らが行った実験による測定結果に基づく。
図13に示されるように、機関の負荷および/または機関回転速度が異なると、燃料消費率の悪化率が最小となる50%熱発生角度(逆に言えば、燃料消費率が最も良くなる50%熱発生角度)が異なる。別の言い方をすると、50%熱発生角度を一定の基準値(固定値)に一致するように制御したとしても、機関の負荷および/または機関回転速度が異なれば、燃料消費率の悪化率が異なることになる。すなわち、50%熱発生角度と燃料消費率との間には、一対一の関係がない。
よって、図11〜図13から理解されるように、従来装置の50%熱発生角度は、燃料の燃焼状態を十分には反映しておらず、機関の燃料消費率を検討するために適したパラメータではないと考えられる。
さらに、周知のように、燃料の燃焼状態は、排ガス中の窒素酸化物(NOx)の量に影響を及ぼす。そして、この排ガス中の窒素酸化物(NOx)の量に応じて、SCR触媒にて消費される尿素水の量が定まる。よって、燃料の燃焼状態は、上述した機関の燃料消費率だけではなく、SCR触媒にて消費される尿素水の量にも密接に関連する。ところが、上述したように、50%熱発生角度は燃料の燃焼状態を適切に反映しない。
よって、従来装置の50%熱発生角度は、SCR触媒の尿素水消費率を検討するために適したパラメータでもないと考えられる。
このように、従来装置の50%熱発生角度は、SCR触媒を備えた機関における燃料消費率および尿素水消費率の検討に関しては、適切に利用することができないと考えられる。換言すると、同機関を50%熱発生角度を制御指標として制御しても、同機関のランニングコストを適切に改善することはできないと考えられる。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、尿素SCR触媒を備えた内燃機関のランニングコストを適切に改善することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明による制御装置は、
尿素SCR触媒を備えた内燃機関に適用され、前記内燃機関の燃焼サイクルにおいて燃料が燃焼するときの「熱発生率重心位置」として定められるクランク角度を燃焼制御に用いる。
具体的には、本発明の制御装置は、
「前記熱発生率重心位置と、前記燃料の消費の度合いと、前記尿素SCR触媒における尿素水の消費の度合いと、の間の関係に基づいて定めた目標位置」に前記熱発生率重心位置が一致するように燃焼制御を行う制御部、を備える。
上記構成と上記課題の解決との関係を説明する前に、本発明における「熱発生率重心位置」の定義、および、「熱発生率重心位置と、燃料の消費の度合いと、尿素SCR触媒における尿素水の消費の度合いと、の関係」について述べる。
まず、本発明における「熱発生率重心位置」の定義について述べる。本発明の熱発生率重心位置は、クランクシャフトの回転位置(すなわち、クランク角度)で表され、下記定義1〜5のように定義される。
・定義1
熱発生率重心位置の第1の定義として、
「クランク角度を横軸(一つの軸)に設定し、かつ、熱発生率を縦軸(一つの軸に直交する他の軸)に設定した座標系(グラフ)」に対して前記熱発生率が描かれた波形と、前記横軸(一つの軸)と、により囲まれる領域の幾何学的重心に対応するクランク角度、
を熱発生率重心位置と定義し得る(例えば、図1における斜線の領域を参照。詳細は後述される)。
なお、上記「熱発生率」は、図11および図12を参照しながら上述べたように、「単位クランク角度だけクランクシャフトが回転する期間中に燃料の燃焼により発生する熱量(すなわち、単位クランク角度あたりの熱発生量)」を表す。下記定義2〜5においても、同様である。
・定義2
熱発生率重心位置の第2の定義として、
各サイクルにおける任意のクランク角度から特定クランク角度を減じて得られる値と、任意のクランク角度における熱発生率と、の積に対応した値を、クランク角度について積分して得られる値がゼロとなる特定クランク角度、
を熱発生率重心位置と定義し得る。
別の言い方をすると、本定義(第2の定義)における熱発生率重心位置は、下記(1)式が成立するように定められるクランク角度(特定クランク角度)Gcである。下記(1)式において、CAsは燃料の燃焼が始まるクランク角度を表し、CAeは燃料の燃焼が終わるクランク角度を表し、θは任意のクランク角度を表し、dQ(θ)はクランク角度θにおける熱発生率を表す。
Figure 2015042855
・定義3
熱発生率重心位置の第3の定義として、
「任意のクランク角度よりも進角側の各熱発生率と該熱発生率にそれぞれ対応するクランク角度距離との積の総和が、前記任意のクランク角度よりも遅角側の各熱発生率と該熱発生率にそれぞれ対応するクランク角度距離との積の総和に等しい」ときの任意のクランク角度、
を熱発生率重心位置と定義し得る。なお、上記「クランク角度距離」は、任意のクランク角度と各クランク角度との間のクランク角度の差、を表す。
別の言い方をすると、本定義(第3の定義)における熱発生率重心位置は、下記(2)式が成立するように定められるクランク角度Gcである。下記(2)式におけるCAs、CAe、θ、および、dQ(θ)は、上記(1)式と同様のパラメータを表す。
Figure 2015042855
そこで、本定義(第3の定義)における熱発生率重心位置Gcは、言い換えれば、「一つの燃焼行程における燃焼開始から燃焼終了までの間の特定クランク角度であって、“燃焼開始から特定クランク角度まで間の任意の第1クランク角度と特定クランク角度との差の大きさ”と“その任意の第1クランク角度における熱発生率”との積を燃焼開始から特定クランク角度までクランク角度について積分(積算)した値と、“特定クランク角度から燃焼終了までの間の任意の第2クランク角度と特定クランク角度との差の大きさ”と“その任意の第2クランク角度における熱発生率”との積を特定クランク角度から燃焼終了までクランク角度について積分(積算)した値と、が等しくなるような特定クランク角度」を表すとも言える。
・定義4
熱発生率重心位置の第4の定義として、
各サイクルにおいて、燃料の燃焼が始まるクランク角度をCAsにて表し、燃焼が終わるクランク角をCAeにて表し、任意のクランク角度をθにて表し、かつ、クランク角度θにおける熱発生率をdQ(θ)にて表すとき、下記(3)式:
Figure 2015042855
に基づく演算により取得されるクランク角度Gc、
を熱発生率重心位置Gcと定義し得る。
なお、本定義(第4の定義)に用いられる上記(3)式は、上記(1)式および上記(2)式をクランク角度Gcについて解くことにより、導出される関係式である。
・定義5
熱発生率重心位置の第5の定義として、上記第4の定義を言い換え、
クランク角度距離とそれに対応する熱発生率との積の積分値を、クランク角度に対する熱発生率の波形によって画定される領域の面積で割って得られる値に燃焼開始クランク角度を加えた値、
を熱発生率重心位置と定義し得る。
以上が、本発明の「熱発生率重心位置」の定義(定義1〜5)である。
なお、上記定義1〜5は、同一の対象(熱発生率重心位置)をそれぞれ異なる側面から定義付けたものであり、当然ながら、燃料の燃焼波形が同一であれば、いずれの定義によって特定されるクランク角度(熱発生率重心位置)も同一の値となる。よって、例えば、制御装置が適用される機関の状態など(例えば、本発明の制御装置が適用される機関の種類、機関の構造、および、機関に設けられるセンサの種類など)を考慮して上記定義1〜5のいずれかを適宜に選択し、その選択された定義を用いて熱発生率重心位置が特定されればよい。
次いで、「熱発生率重心位置と、燃料の消費の度合いと、尿素SCR触媒における尿素水の消費の度合いと、の関係」について述べる。
一般に、機関の運転時、燃料の燃焼によって生じるエネルギの一部はクランクシャフトを回転させる仕事に変換されるが、残りは損失となる。この損失には、機関本体から発生する熱として失われる冷却損失、排ガスによって大気中に放出される排気損失、吸気および排気に伴って発生するポンプ損失、ならびに、機械抵抗損失などが含まれる。これら損失のうち、一般に、冷却損失および排気損失が、損失の全体に対して大きな割合を占めている。そこで、冷却損失および排気損失を減少させることにより、燃料の消費の度合い(例えば、燃料消費率)を効果的に改善し、ひいては、機関のランニングコストを小さくすることができると考えられる。
しかし、冷却損失と排気損失とは一般にトレードオフの関係にある。すなわち、冷却損失を減少させれば排気損失が増加し、排気損失を減少させれば冷却損失が増加することになる。そこで、「冷却損失および排気損失の和(合計)」を小さくするように燃焼制御が行われれば、燃料の消費の度合いが改善されると考えられる。
そのような燃焼制御を行うにあたり、燃料の燃焼状態は、燃料噴射時期および過給圧などの「燃焼状態に影響を及ぼす種々のパラメータ」に応じて変化する(以下、燃焼状態に影響を及ぼすパラメータは、単に「燃焼パラメータ」とも称呼される。)。ところが、様々な運転状態に応じた好適な燃焼パラメータ(場合によっては、複数の燃焼パラメータ)を実験等によって予め決定することは、一般に容易ではない。さらに、予め燃焼パラメータを決定し得るとしても、その決定のためには一般に莫大な時間を要する。そのため、所望の燃焼制御を行うための燃焼パラメータを体系的に決定する手法を開発することが望まれる。
そこで、発明者らは、燃料の燃焼状態を表す指標として、従来装置の50%熱発生角度に代えて、上述した「熱発生率重心位置」に着目した。
図1は、熱発生率重心位置をより具体的に説明するための説明図である。まず、図1(A)に示されるように、クランク角度θ1にてパイロット噴射が開始され、クランク角度θ2にてメイン噴射が開始される例において、上記定義に従って特定される熱発生率重心位置Gcは、図中のクランク角度θ4に相当する。なお、図1に表示される各波形は、図11および図12に表示される従来装置の各波形に対応している。
この例において、図1(B)に示されるように、パイロット噴射の開始時期がクランク角度θ1からΔθpだけ進角されてクランク角度θ0に設定された場合、上記各定義から理解されるように(例えば、定義1に従えば、熱発生率重心位置は図中の斜線領域の幾何学的重心Gに相当するので)、熱発生率重心位置Gcはクランク角度Δθgだけ進角してクランク角度θ4’となる。すなわち、燃料の燃焼状態(パイロット噴射の開始時期)が変化すると、その変化に応じて熱発生率重心位置Gcも変化することになる。
よって、本発明の「熱発生率重心位置」は、従来装置の「50%熱発生角度」に比べ、燃料の燃焼状態をより正確に反映するパラメータであると言える。
次いで、図2は、熱発生率重心位置と、燃料消費率の悪化率と、の関係の一例を表す説明図である。図中の曲線Gc1〜曲線Gc3は、それぞれ、低負荷かつ低回転速度、中負荷かつ中回転速度、および、高負荷かつ高回転速度の場合における同関係を表す。なお、これら曲線は、発明者らが行った実験による測定結果に基づく。また、図2に表示される各波形は、図13に表示される従来装置の各波形に対応している。
図2に示されるように、たとえ機関の負荷および/または機関回転速度が異なっていても、燃料消費率の悪化率が最小となる熱発生率重心位置(逆に言えば、燃料消費率が最良となる熱発生率重心位置)は、特定のクランク角度θaとなる。別の言い方をすると、熱発生率重心位置を一定の基準値(固定値)に一致するように制御すれば、機関の負荷および/または機関回転速度が異なっても、燃料消費率の悪化率は変化しない。すなわち、熱発生率重心位置と燃料消費率との間には、実質的に一対一の関係がある。
このように、熱発生率重心位置は燃焼状態を良好に示すパラメータであり、熱発生率重心位置を機関の負荷および/または機関回転速度に依らず所定の一定値(例えば、上記クランク角度θa近傍の値)に近付けることにより、燃料消費率を改善できる、との知見が得られた。逆に言えば、熱発生率重心位置と燃料消費率との関係を調べれば、燃料消費率を改善可能な熱発生率重心位置を特定することができる、との知見が得られた。
一方、SCR触媒は、周知のように、内燃機関の排気通路に設けられ、排ガス中の窒素酸化物(NOx)と、排ガス中などに供給される尿素水に含まれる尿素を加水分解して得られるアンモニアと、を反応させることにより、排ガスから窒素酸化物(NOx)を除去する(窒素および水に還元する)触媒である。よって、SCR触媒を備えた内燃機関においては、一般に、排ガス中の窒素酸化物の量に応じて尿素水の量が決定され、その量の尿素水が排ガス中などに供給される。
そこで、排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)の量を減少させることにより、尿素水の消費の度合い(例えば、尿素水消費率)を効果的に改善し、ひいては、機関のランニングコストを小さくすることができると考えられる。
図3は、熱発生率重心位置と、機関本体からのNOx排出量の変化率と、尿素水消費率の変化率と、燃料消費率の悪化率と、の関係の一例を表す説明図である。これら“率”は、熱発生率重心位置がθaであるときの量を1.0とした場合における、熱発生率重心位置が或る値であるときの量の割合を表す。なお、図3における各データは、発明者らが行った実験による測定結果に基づく。
図3(A)に示されるように、たとえ機関の負荷および/または機関回転速度が異なっていても、熱発生率重心位置とNOx排出量の変化率との間の関係は、ほぼ同一となる。別の言い方をすると、熱発生率重心位置とNOx排出量の変化率との間には、機関の負荷および/または機関回転速度に依らない実質的に一対一の関係がある。よって、熱発生率重心位置が定まれば、NOx排出量が一意に定まることになる。
そして、上述したように、尿素水の消費量はNOx排出量に応じて定まるので、図3(B)に示されるように、熱発生率重心位置と尿素水消費率の変化率との間にも、機関の負荷および/または機関回転速度に依らない実質的に一対一の関係がある。よって、熱発生率重心位置が定まれば、尿素水消費率が一意に定まることになる。
なお、図3(C)は、図2と同一の内容を表す図である。上述したように、熱発生率重心位置と燃料消費率との間には実質的に一対一の関係がある。
このように、熱発生率重心位置はNOx排出量(換言すると、尿素水消費量)を良好に示すパラメータであり、熱発生率重心位置を機関の負荷および/または機関回転速度に依らず出来る限り遅角側(図3の横軸における右方向)の値にすることにより、尿素水消費率を改善できる、との知見が得られた。
以上に説明したように、本発明の「熱発生率重心位置」は、従来装置の「50%熱発生角度」とは異なり、燃料の消費の度合い(例えば、燃料消費率)を一意に特定可能なパラメータであり、かつ、SCR触媒における尿素水の消費の度合い(例えば、尿素水消費率)を一意に特定可能なパラメータである。
換言すると、上述した関係(熱発生率重心位置と、燃料の消費の度合いと、尿素水の消費の度合いと、の関係)を考慮すれば、それら消費の度合いに応じて定まる機関のランニングコストを改善可能な「熱発生率重心位置の目標位置」を特定することができる。そして、この目標位置に熱発生率重心位置が一致するように燃焼制御を行えば、機関のランニングコストの改善を図ることができる。
別の言い方をすると、「熱発生率重心位置」が燃料の消費の度合いおよび尿素水の消費の度合いの双方と一対一の関係にあるとの新たな知見を見出したからこそ、その知見を利用し、燃料および尿素水の消費の度合いと関連する機関のランニングコストを改善できる「熱発生率重心位置の目標位置」を特定することが可能となった。そして、本発明は、そのように定めた目標位置に熱発生率重心位置を一致させるように燃焼制御を行うことにより、従来装置では実現が困難であった機関のランニングコストの改善を、適切に実現することができる。
したがって、本発明の制御装置は、尿素SCR触媒を備えた内燃機関のランニングコストを適切に改善するとの目的を達成することができる。
ところで、上記「燃焼の消費の度合い」は、機関にて使用される燃料の多さ(消費率)を表す値であればよく、具体的なパラメータは特に制限されない。例えば、燃料の消費の度合いとして、単位出力・単位時間当たりの燃料消費量(いわゆるBSFC。例えば、g/kW・h)、内燃機関を搭載した車両の単位走行距離当たりの燃料消費量(例えば、L/100km)、および、単位燃料量当たりの車両の走行距離(例えば、km/L)などが採用され得る。また、機関の駆動以外の目的のために燃料が消費される場合(例えば、ディーゼル・パーティキュレート・フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去させる(すなわち、同フィルタの再生の)ため燃料を排ガス中に噴射する場合)、その目的のために消費される燃料消費量を「燃料の消費の度合い」に含めてもよい。
上記「尿素水の消費の度合い」は、SCR触媒にて使用される尿素水の多さ(消費率)を表す値であればよく、具体的なパラメータは特に制限されない。例えば、尿素水の消費の度合いとして、上記「燃料の消費の度合い」と同様、単位出力・単位時間当たりの尿素水消費量(BSFCに対応する量)、内燃機関を搭載した車両の単位走行距離当たりの尿素水消費量、および、単位尿素水量当たりの車両の走行距離などが採用され得る。
上記「目標位置」は、機関のランニングコストを改善する観点において適切な熱発生率重心位置であればよく、具体的な値は特に制限されない。例えば、燃料の消費の度合い(または、その度合いに対応する燃料の消費に起因するコスト)および尿素水の消費の度合い(または、その度合いに対応する尿素水の消費に起因するコスト)の合計が最も小さくなるような熱発生率重心位置を目標位置に設定すれば、機関のランニングコストを最小とし得ると考えられる。一方、機関のランニングコストとは異なる観点からの要求(例えば、SCR触媒の早期暖機、機関が発する音の静粛化、尿素水の残量が低下した際の処置、および、機関の負荷が過大または過小の際の処置など)を考慮し、それら要求とランニングコストの改善とを両立し得るような熱発生率重心位置を目標位置に設定してもよい。
上記「目標位置に・・・一致するように燃焼制御を行う」との表現は、熱発生率重心位置が目標位置と一致していない場合に熱発生率重心位置を目標位置に近づけるように燃焼制御を行うこと、および、熱発生率重心位置が目標位置と一致している場合に熱発生率重心位置と目標位置とが一致した状態を維持するように燃焼制御を行うこと、を含む。なお、本表現は、熱発生率重心位置を目標位置に制御する、と言い換え得る。
上記「燃焼制御」は、例えば、熱発生率重心位置に影響を及ぼす燃焼パラメータ(例えば、下記1〜12を参照。)を調整することによって行い得る。なお、燃焼制御を行うことは、燃焼パラメータを定めること(すなわち、燃焼パラメータをフィードフォワード制御および/またはフィードバック制御により機関の運転状態に応じた適値に設定・変更すること)と実質的に同義である。
燃焼制御のための燃焼パラメータとして、例えば、内燃機関の構成に応じて、下記(1)〜(12)の少なくとも1つが採用され得る。
(1)メイン噴射(主噴射)の時期
(2)燃料噴射弁が燃料を噴射するときの圧力である燃料噴射圧
(3)メイン噴射よりも進角側にて行われる燃料噴射であるパイロット噴射の燃料噴射量
(4)パイロット噴射の回数
(5)パイロット噴射の時期
(6)各パイロット噴射の燃料噴射量
(7)メイン噴射よりも遅角側にて行われる燃料噴射であるアフター噴射の燃料噴射量
(8)過給機による過給圧(例えば、ディーゼルエンジンを備えたシステムにおける可変ノズルターボ(VNターボ)機構の可変ノズル開度、ガソリンエンジンを備えたシステムにおけるウェイストゲート弁の開度、に対応。)
(9)吸気温度(例えば、インタークーラーの冷却効率(冷却能力)、および、EGRクーラーの冷却効率(冷却能力)、に対応する。より具体的には、インタークーラーをバイパスする通路を通過するガス量(バイパス弁の開度)、および、EGRクーラーをバイパスする通路を通過するガス量(バイパス弁の開度)、に対応する。)
(10)吸入空気に対するEGRガスの比率であるEGR率(または、EGRガス量)
(11)機関に備えられ且つ排気通路に配設された過給機のタービンよりも下流側の排ガスを機関の吸気通路へと還流させる低圧EGR装置により還流させられる低圧EGRガス量に対する、機関に備えられ且つ過給機のタービンよりも上流側の排ガスを吸気通路へと還流させる高圧EGR装置により還流させられる高圧EGRガス量の比(高低圧EGR率)
(12)気筒内のスワール流の強度(例えば、スワールコントロールバルブの開度に対応する。)
上記(1)〜(12)の各燃焼パラメータを用いて熱発生率重心位置を進角(アドバンス)させる場合、例えば、制御装置は下記(1a)〜(12a)の動作を行えばよい。
(1a)メイン噴射の時期を進角側に移動させる。
(2a)燃料噴射圧を増加させる。
(3a)パイロット噴射の燃料噴射量を増加させる。
(4a)パイロット噴射のみに関して決まるパイロット噴射の熱発生率重心位置が進角側へ移動するようにパイロット噴射の回数を変更する。
(5a)パイロット噴射の熱発生率重心位置が進角側へ移動するようにパイロット噴射の時期を変更する。
(6a)パイロット噴射の熱発生率重心位置が進角側へ移動するように各パイロット噴射の燃料噴射量を変更する。
(7a)アフター噴射の燃料噴射量を減少する、または、アフター噴射を行わない。
(8a)過給圧を増加させる。
(9a)吸気温度を上昇させる。
(10a)EGR率を低下させる(EGR量を減少させる。)。
(11a)高低圧EGR率を低下させる。
(12a)スワール流の強度を増大させる。
逆に、熱発生率重心位置を遅角(リタード)させる場合、例えば、制御装置は下記(1b)〜(12b)の動作を行えばよい。
(1b)メイン噴射の時期を遅角側に移動させる。
(2b)燃料噴射圧を減少させる。
(3b)パイロット噴射の燃料噴射量を減少させる。
(4b)パイロット噴射のみに関して決まるパイロット噴射の熱発生率重心位置が遅角側へ移動するようにパイロット噴射の回数を変更する。
(5b)パイロット噴射の熱発生率重心位置が遅角側へ移動するようにパイロット噴射の時期を変更する。
(6b)パイロット噴射の熱発生率重心位置が遅角側へ移動するように各パイロット噴射の燃料噴射量を変更する。
(7b)アフター噴射の燃料噴射量を増大させる。
(8b)過給圧を減少させる。
(9b)機関制御装置は、インタークーラー45の冷却効率を上昇させる(吸気温度を低下させる)。
(10b)EGR率を上昇させる(EGR量を増大させる。)。
(11b)高低圧EGR率を上昇させる。
(12b)スワール流の強度を低下させる。
以上が、本発明に係る内燃機関の制御装置についての説明である。以下、本発明の制御装置のいくつかの態様について述べる。
上述したように、本発明における熱発生率重心位置の「目標位置」は、機関のランニングコストを改善する観点において適切な熱発生率重心位置であればよい。例えば、上述した他の要求を考慮する必要がない場合(または、他の要求よりも機関のランニングコストの低減を優先する場合)には、機関のランニングコストが最も小さくなるように目標位置を定めることが好適である。
そこで、本発明の制御装置の一の態様として、
前記制御部は、前記燃料の消費に起因するコストと前記尿素水の消費に起因するコストとの総計に相当する総運転コストを前記燃料の消費の度合い及び前記尿素水の消費の度合いに基づいて算出するとともに、前記総運転コストが最小となるように前記目標位置を定める、ように構成され得る。
上記態様について、図4を参照しながら具体的に説明する。図4は、燃料の消費の度合いと尿素水の消費の度合いと熱発生率重心位置との関係(図3を参照。)を、便宜上、ランニングコストと熱発生率重心位置との関係に置き換えた一例である。図4において、一点鎖線RCfは燃料の消費に起因するコストを表し、破線RCuは尿素水の消費に起因するコストを表し、実線TRCはそれらコストの総計(総運転コスト。トータル・ランニングコスト)を表す。なお、図4における各データは、発明者らが行った実験による測定結果に基づく。
本例においては、図4に示されるように、本例における総運転コストTRCは、熱発生率重心位置が上述した「燃料消費率が最小となるクランク角度θa」である場合には最小とならない(点Aを参照。)。この理由は、例えば、クランク角度θaはMBT(Minimum advance for Best Torque)近傍のクランク角度であることが多く、気筒内での燃料の燃焼温度が高いことに起因してNOxが多量に生成され、その結果として尿素水消費率が大きくなるからであると考えられる。一方、本例においては、熱発生率重心位置をクランク角度θaから遅角させてクランク角度θbとした場合、燃料消費率は増大するものの尿素水消費率が減少することことから、総運転コストTRCが最小となる(点B)
このように、機関のランニングコスト(総運転コスト)は、必ずしも燃料消費率が最小となるように(例えば、図4のθaに)熱発生率重心位置を制御したときに最小にならない、との知見が得られた。一方、熱発生率重心位置を適切に(例えば、図4のθbに)調整することにより、機関のランニングコストを最小にすることができる、との知見も得られた。
換言すると、ランニングコストと熱発生率重心位置との間には密接な関連があり、熱発生率重心位置に着目すれば、ランニングコストが最小となる目標位置(熱発生率重心位置)を特定することができる。そして、その目標位置に熱発生率重心位置を制御すれば、機関のランニングコストを出来る限り小さくすることができる。
したがって、本態様の制御装置は、尿素SCR触媒を備えた内燃機関のランニングコストを更に適切に改善することができる。
ところで、上記「総運転コスト」は、燃料の消費に起因するコストとSCR触媒における尿素水の消費に起因するコストとの純粋な合計値(和)であってもよく、その合計値が増加するときに増加し且つ減少するときに減少する他の値(合計値に相当する値)であってもよい。また、機関の駆動以外の目的のために燃料が消費される場合(例えば、上述したように、ディーゼル・パーティキュレート・フィルタの再生のために燃料が消費される場合)、その目的のために消費される燃料の消費に起因するコストを「総運転コスト」に含めてもよい。
なお、上述したように、本発明における「熱発生率重心位置」を取得(算出)する際には、本発明の制御装置が適用される機関の構成および状態などを考慮し、上述した各定義(定義1〜5)のいずれかが適宜に採用されればよい。
以上に説明したように、本発明に係る制御装置は、尿素SCR触媒を備えた内燃機関のランニングコストを適切に改善することができるという効果を奏する。
図1は、本発明における熱発生率重心位置の考え方を説明するための説明図である。 図2は、熱発生率重心位置と、燃料消費率の悪化率と、の関係の一例を表す説明図である。 図3は、熱発生率重心位置と、機関本体からのNOx排出量の変化率と、尿素水消費率の変化率と、燃料消費率の悪化率と、の関係の一例を表す説明図である。 図4は、熱発生率重心位置と、燃料の消費に起因するコストと、尿素水の消費に起因するコストと、総運転コストと、の関係の一例を表す説明図である。 図5は、本発明の実施形態に係る制御装置、および、制御装置が適用される内燃機関の概略図である。 図6は、本発明の実施形態に係る制御装置が行う制御の概要を示したフローチャートである。 図7は、図3に示した制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図8は、図3に示した制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図9は、図3に示した制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図10は、図4に示した関係について、機関が定常状態にある場合における同関係と、機関が過渡状態にある場合における同関係と、の一例を表す説明図である。 図11は、クランク角度と、熱発生率と、の関係の一例を表す参考図である。 図12は、クランク角度と、熱発生率と、の関係の一例を表す参考図である。 図13は、従来装置に採用されている50%熱発生角度と、燃料消費率の悪化率と、の関係の一例を表す参考図である。
<実施形態>
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る制御装置(以下、「実施装置」とも称呼する。)について説明する。なお、以下、「尿素SCR触媒」は、単に「SCR触媒」とも称呼される。
(構成)
実施装置は、図5に示した内燃機関(機関)10に適用される。機関10は、多気筒(本例では直列4気筒)・4サイクル・ピストン往復動型・ディーゼル機関である。機関10は、機関本体部20、燃料供給系統30、吸気系統40、排気系統50、EGRシステム60、電子制御ユニット70、および、各種センサ81〜95を含んでいる。
機関本体部20は、シリンダブロック、シリンダヘッドおよびクランクケース等を含む本体21を備える。本体21には4つの気筒(燃焼室)22が形成されている。各気筒22の上部には燃料噴射弁(インジェクタ)23が設けられている。燃料噴射弁23は、後述するエンジンECU(電子制御ユニット)70の指示に応答して開弁し、気筒内に燃料を直接噴射するようになっている。
燃料供給系統30は、燃料加圧ポンプ(サプライポンプ)31と、燃料送出管32と、コモンレール(蓄圧室)33と、を含む。燃料加圧ポンプ31の吐出口は、燃料送出管32に接続されている。燃料送出管32は、コモンレール33に接続されている。コモンレール33は、燃料噴射弁23に接続されている。
燃料加圧ポンプ31は、図示しない燃料タンクに貯留されている燃料を汲み上げた後に加圧し、加圧された高圧燃料を燃料送出管32を通してコモンレール33へ供給するようになっている。燃料加圧ポンプ31は、機関10のクランクシャフトに連動する駆動軸により作動する。燃料加圧ポンプ31は、電子制御ユニット70の指示に応答し、コモンレール33内の燃料の圧力(すなわち、燃料噴射圧)を調整できるようになっている。
吸気系統40は、インテークマニホールド41、吸気管42、エアクリーナ43、過給機44のコンプレッサ44a、インタークーラー45、スロットル弁46、および、スロットル弁アクチュエータ47を含んでいる。
インテークマニホールド41は、各気筒に接続された枝部と、枝部が集合した集合部と、を含む。吸気管42は、インテークマニホールド41の集合部に接続されている。インテークマニホールド41および吸気管42は吸気通路を構成している。吸気管42には、吸入空気の流れの上流から下流に向け、エアクリーナ43、コンプレッサ44a、インタークーラー45およびスロットル弁46が、順に設けられている。スロットル弁アクチュエータ47は、電子制御ユニット70の指示に応じてスロットル弁46の開度を変更するようになっている。
排気系統50は、エキゾーストマニホールド51、排気管52、過給機44のタービン44b、ディーゼル酸化触媒(DOC)53、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)54、SCR触媒55、尿素水タンク(尿素水貯留部)56、尿素水供給管57、および、尿素水噴射弁(尿素水供給弁)58を含んでいる。
エキゾーストマニホールド51は、各気筒に接続された枝部と、枝部が集合した集合部と、を含む。排気管52は、エキゾーストマニホールド51の集合部に接続されている。エキゾーストマニホールド51および排気管52は排気通路を構成している。排気管52には、排ガスの流れの上流から下流に向け、タービン44b、DOC53、DPF54およびSCR触媒55が設けられている。
過給機44は周知の可変容量型過給機であり、タービン44bには図示しない複数のノズルベーン(可変ノズル)が設けられている。さらに、タービン44bは、図示しない「タービン44bのバイパス通路、および、そのバイパス通路に設けられたバイパスバルブ」を備えている。ノズルベーンおよびバイパスバルブは、電子制御ユニット70の指示に応じて開度が変更され、その結果、過給圧が変更(制御)されるようになっている。よって、ノズルベーンの角度および/またはバイパスバルブの開度を変更することにより、過給機44の過給圧を変更する(換言すると、過給機44を制御する)ことができる。
DOC53は、排ガス中の未燃ガス(HC、CO)を酸化する。すなわち、DOC53により、HCは水(HO)とCOに酸化され、COはCOに酸化される。さらに、DOC53により、NOxのうちのNOがNOに酸化される。
DPF54は、炭素からなる煤および有機物を含むパティキュレート・マター(PM)を捕集する。DPF54に捕集された炭素は、DPF54に流入するNOと結合し、COとNOとに変化する。
SCR触媒55は、尿素水噴射弁58から供給される尿素水に含まれる尿素を加水分解して得られるアンモニアによって排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元し、排ガスから窒素酸化物(NOx)を除去する触媒である。すなわち、SCR触媒55内において、NOxとNHがNとHOへと変化する。SCR触媒は「NOx選択還元触媒」とも称呼される。
尿素水噴射弁58は、SCR触媒55の上流側であってDPF54の下流側(すなわち、DPF54とSCR触媒55との間)に設けられている。尿素水噴射弁58は、尿素水供給管57を介して尿素水タンク56(の底部)に接続されている。尿素水タンク56は尿素水を貯留している。尿素水供給管57には図示しない加圧装置が設けられている。尿素水は、尿素水タンク56から尿素水供給管57を介して尿素水噴射弁58へと加圧されながら供給され、尿素水噴射弁58が後述する電子制御ユニット70の指示に基づいて開弁させられたとき、尿素水噴射弁58を介してSCR触媒55へと供給される(排気管52内に噴射される。)。
SCR触媒55に供給された尿素水は、高温の排ガス等に接触してアンモニアと二酸化炭素とに加水分解される。そして、アンモニアがSCR触媒55内においてNOxを還元する。
EGRシステム60は、排気還流管61、EGR制御弁62およびEGRクーラー63を含んでいる。排気還流管61は、排気通路(エキゾーストマニホールド51)であってタービン44bの上流側と、吸気通路(インテークマニホールド41)であってスロットル弁46の下流側と、を連通している。EGR制御弁62は、排気還流管61に設けられている。EGR制御弁62は、電子制御ユニット70からの指示に応じて排気還流管61の流路断面積を変更することにより、排気通路から吸気通路へと再循環される排ガス量(EGRガス量またはEGRガス率)を変更し得るようになっている。
電子制御ユニット70は、周知のマイクロコンピュータを含む電子回路であり、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMおよびインターフェース等を含む。電子制御ユニット70は、各種センサと接続されており、各種センサからの信号を受信(入力)するようになっている。さらに、電子制御ユニット70は、CPUからの指示に応じ、各種アクチュエータに指示(駆動)信号を送出するようになっている。
各種センサ81〜95は、エアフローメータ81、スロットル弁開度センサ82、吸気管圧力センサ83、燃料圧力センサ84、筒内圧センサ85、クランク角度センサ86、EGR制御弁開度センサ87、水温センサ88、SCR上流側排ガス温度センサ89、SCR下流側排ガス温度センサ90、NOxセンサ91、尿素水残量センサ92、車速センサ93、燃料残量センサ94、および、アクセル開度センサ95、を含む。
エアフローメータ81は、吸気通路内を通過する吸入空気(EGRガスを含まない新気)の質量流量を表す信号、および、吸入空気の温度を表す信号を出力する。スロットル弁開度センサ82は、スロットル弁開度を表す信号を出力する。吸気管圧力センサ83は、吸気通路内であってスロットル弁46よりも下流側の吸気管内のガスの圧力(吸気管圧力。過給圧)を表す信号を出力する。燃料圧力センサ84は、コモンレール33内の燃料の圧力(燃料圧力、燃料噴射圧、コモンレール圧)を表す信号を出力する。
筒内圧センサ85は、各気筒(燃焼室)に対応するように設けられている。筒内圧センサ85は、対応する気筒内の圧力(すなわち、筒内圧)Pcを表す信号を出力する。
クランク角度センサ86は、機関10の図示しないクランクシャフトの回転位置(すなわち、クランク角度)に応じた信号を出力する。電子制御ユニット70は、このクランク角度センサ86および図示しないカムポジションセンサからの信号に基づいて、所定の気筒の圧縮上死点を基準とした機関10のクランク角度(絶対クランク角度)θを取得する。さらに、電子制御ユニット70は、クランク角度センサ86からの信号に基づいて、機関回転速度NEを取得する。
EGR制御弁開度センサ87は、EGR制御弁62の開度を表す信号を出力する。水温センサ88は、機関10の冷却水の温度(冷却水温)を表す信号を出力する。SCR上流側排ガス温度センサ89は、SCR触媒55の上流側の排気管52(排気通路)に設けられている。SCR上流側排ガス温度センサ89は、SCR触媒55に流入する排ガスの温度(上流排ガス温)を表す信号を出力する。SCR下流側排ガス温度センサ90は、SCR触媒55の下流側の排気管52に設けられている。SCR下流側排ガス温度センサ90は、SCR触媒55から流出する排ガスの温度(下流排ガス温)を表す信号を出力する。
NOxセンサ91は、SCR触媒55の下流側の排気管52に設けられている。NOxセンサ91は、NOxセンサ91に到達する排ガス(すなわち、SCR触媒55から流出する排ガス)に含まれる窒素酸化物の濃度NOxoutを表す信号を出力する。
尿素水残量センサ92は、尿素水タンク56に貯留されている尿素水の量(尿素水残量)を表す信号を出力する。車速センサ93は、機関10が搭載された車両の走行速度(車速)Spdを表す信号を出力する。燃料残量センサ94は、図示しない燃料タンクに貯留されている燃料の量(燃料残量)を表す信号を出力する。
アクセル開度センサ95は、図示しないアクセルペダルの開度Accpを表す信号を出力する。
以上が、実施装置が適用される機関10の構成についての説明である。
(作動の概要)
次いで、実施装置における制御の考え方が、図6を参照しながら説明される。図6は、実施装置における制御の概要を表すフローチャートである。
実施装置は、まず、ステップ610にて、本発明の制御(ランニングコストを低減するための制御)を実行するか否かを判定する。具体的には、例えば、ランニングコストの低減とは異なる観点からの制御(例えば、上述したように、SCR触媒の早期暖機など)が実行されているか否か等に基づき、本発明の制御を実行するか否かが判断される。
本発明の制御を実行可能な場合、実施装置は、ステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ620にて、熱発生率重心位置の目標位置を決定する。具体的には、熱発生率重心位置、燃料消費率および尿素水消費率の関係に基づき(詳細は後述される。)、ランニングコストが低減されるような(例えば、ランニングコストが最小となるような)目標位置を決定する。
そして、実施装置は、ステップ630に進み、その目標位置に熱発生率重心位置が一致するように燃焼制御を行う。具体的には、実施装置においては、熱発生率重心位置と燃焼パラメータとの関係が電子制御ユニット70のROMに記憶されている。実施装置は、実際の機関の運転状態に応じてROMから燃焼パラメータを読み出し、その燃焼パラメータを使用する制御(すなわち、フィードフォワード制御)によって熱発生率重心位置を目標位置に一致させる。さらに、実施装置は、実際の熱発生率重心位置を筒内圧センサ85が検出する筒内圧Pcに基づいて推定し、その推定した熱発生率重心位置が目標位置と一致するように燃焼パラメータをフィードバック制御する。ただし、このフィードバック制御は必ずしも必須ではない。さらに、フィードフォワード制御は実行せず、フィードバック制御のみにより熱発生率重心位置を目標位置と一致させてもよい。
以上が、実施装置の作動の概要である。
(尿素水の供給)
次に、電子制御ユニット70のCPU(以下、単に「CPU」と表記する。)が実際に行う処理について説明する。CPUは、所定時間が経過する毎に図7にフローチャートによって示した「尿素水の供給ルーチン」を実行するようになっている。具体的には、適当なタイミングになると、CPUは図7のステップ700から処理を開始し、ステップ710に進む。
CPUは、ステップ710にて、NOxセンサ91により示されるNOx濃度NOxoutが目標濃度NOxoutth(極めてゼロに近い正の値)よりも大きいか否かを判定する。目標濃度NOxoutthは、例えば、機関10から大気中に放出される排ガス中のNOx量についての法規制値などを考慮し、適宜に設定され得る。
NOx濃度NOxoutが目標濃度NOxoutthよりも大きい場合、CPUはステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進み、尿素水噴射弁58からSCR触媒55へと供給される尿素水の量を所定量ΔUrだけ増大させる。これにより、SCR触媒55内にてより多くのNOxが還元され、NOx濃度NOxoutが減少する。その後、CPUはステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。
これに対し、NOx濃度NOxoutが目標濃度NOxoutth以下である場合、CPUはステップ710にて「No」と判定してステップ730に進み、尿素水噴射弁58からSCR触媒55へと供給される尿素水量を所定量ΔUrだけ減少させる。その後、CPUはステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。
上述したステップ710〜ステップ730の処理により、機関10の本体21から排気通路に排出されるNOxの量(すなわち、SCR触媒55に流入するNOx量)が多いほど尿素水がより多く供給(消費)され、大気中に放出されるNOx量が目標濃度NOxoutth以下に維持されることになる。
(ランニングコスト最小位置の検索)
次いで、機関10のランニングコストが最小となる熱発生率重心位置(目標位置)の検索手法について説明する。CPUは、所定時間が経過する毎に図8にフローチャートにて示した「ランニングコスト最小制御ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンにより、ランニングコストが最小となるような熱発生率重心位置の目標位置が検索・設定され、その目標位置に実際の熱発生率重心位置が一致するように燃焼制御が行われる。
具体的には、CPUは、適当なタイミングになると、図8のステップ800から処理を開始してステップ810に進み、アクセルペダル開度Accpと機関回転速度NEにより規定される現時点の運転状態が、所定時間だけ前の時点における運転状態と同一であるか否かを判定する。運転状態が変化していない場合、CPUはステップ810にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。すなわち、これまでの目標位置を維持しながら機関10の運転が継続される。
一方、運転状態が変化している場合、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、熱発生率重心位置を現在の値から徐々に変更(遅角または進角)するために用いる単位変更量ΔGcを設定する。具体的には、本ステップにて、正の値「+θd」が単位変更量ΔGcに格納される。なお、正の値「+θd」は、制御装置に要求されるランニングコスト最小位置の精度などを考慮した適値に設定されればよい。
ところで、本実施形態の制御装置は、熱発生率重心位置が「増大」することが、熱発生率重心位置が「遅角」することを意味するように構成されている(例えば、図3などを参照。)。よって、以下、正の値が格納された単位変更量ΔGcは、単位“遅角”量ΔGcとも称呼される。
次いで、CPUは、ステップ830に進む。CPUは、ステップ830にて、現在の熱発生率重心位置の目標位置Gctgtに単位遅角量ΔGcを加算した値を、新たな目標位置Gctgtに設定する。これにより、目標位置Gctgtが、現在の値から単位遅角量ΔGcだけ“遅角”されることになる。
次いで、CPUは、ステップ840に進む。CPUは、ステップ840にて、熱発生率重心位置Gcを目標位置Gctgtに一致させるように燃焼制御(フィードバック制御)を行う。すなわち、CPUは、ステップ840にて、図9にフローチャートによって示した「熱発生率重心位置の制御ルーチン」を実行し、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtと等しくなるように、燃焼パラメータの一つであるメイン噴射の噴射時期CMingをフィードバック制御により調整する。なお、本ルーチンは機関10の気筒毎に実行される。
具体的には、CPUは、図9のルーチンに進み、ステップ900から処理を開始し、ステップ910に進む。CPUは、ステップ910にて、目標位置Gctgtを読み込む。現時点における目標位置Gctgtは、上述したように設定された(過去の値から単位遅角量ΔGcだけ遅角された)目標位置Gctgtである。なお、目標位置Gctgtの初期値は、燃料消費率が最小となるクランク角度θa(図3などを参照。)に設定されるようになっている。
次いで、CPUは、ステップ920に進む。CPUは、ステップ920にて、筒内圧センサ85により検出されている筒内圧Pcに基づいて熱発生率を算出し、その熱発生率に基づいて実際の熱発生率重心位置Gcを推定する。
具体的には、CPUは、筒内圧Pcに基づいてクランク角度θ[degATDC]に対する単位クランク角度あたりの発熱量である熱発生率dQ(θ)[J/degATDC]を周知の手法に基づいて算出する(例えば、特開2005−54753号公報、および、特開2007−285194号公報などを参照。)。
次いで、CPUは熱発生率dQ(θ)を下記の(3)式に適用することにより、熱発生率重心位置Gcを取得・推定する(上記“定義4”を参照。)。なお、実際には、熱発生率重心位置Gcは、(3)式をデジタル演算式に変換した式に基づいて計算される。(3)式において、CAsは燃焼が始まるクランク角度であり、CAeは燃焼が終わるクランク角度である。
Figure 2015042855
次に、CPUはステップ930に進み、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上遅角(リタード)しているか否かを判定する。実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上遅角している場合、CPUは、ステップ930にて「Yes」と判定してステップ940に進み、メイン噴射の噴射時期CMingを所定の微小角度ΔCAだけ進角(アドバンス)する。これにより、熱発生率重心位置Gcが、僅かに進角し、目標位置Gctgtに近づく。
その後、CPUは、再びステップ920に戻り、ステップ930の処理を再び実行する。そして、未だに実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上遅角(リタード)している場合、ステップ940にて、再びメイン噴射の噴射時期CMingを微小角度ΔCAだけ進角(アドバンス)する。このように、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上遅角(リタード)している場合、CPUは、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上遅角しなくなるまで、ステップ920〜ステップ940の処理を繰り返す。
これに対し、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上遅角(リタード)していない場合、CPUは、ステップ930にて「No」と判定し、ステップ950に進む。CPUは、ステップ950にて、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上進角(アドバンス)しているか否かを判定する。熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上進角している場合、CPUは、ステップ930にて「Yes」と判定してステップ960に進み、メイン噴射の噴射時期CMingを所定の微小角度ΔCAだけ遅角(リタード)する。これにより、熱発生率重心位置Gcが、僅かに遅角し、目標位置Gctgtに近づく。
その後、CPUは、再びステップ920に戻り、ステップ930を経由した後、ステップ950の処理を再び実行する。そして、未だに実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上進角(アドバンス)している場合、ステップ960にて、再びメイン噴射の噴射時期CMingを微小角度ΔCAだけ遅角(リタード)する。このように、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上進角(アドバンス)している場合、CPUは、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上進角しなくなるまで、ステップ920、ステップ930、ステップ950およびステップ960の処理を繰り返す。
このようにして、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに一致するように燃焼パラメータがフィードバック制御される。そして、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに対して正の微小角度Δθs以上遅角(リタード)も進角(アドバンス)もしなくなると(すなわち、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに実質的に一致すると)、CPUは、ステップ930およびステップ950の双方にて「No」と判定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
図9のルーチンが終了すると、CPUは、図8のルーチンに戻り、ステップ850に進む。CPUは、ステップ850にて、目標位置Gctgtを修正したことによって総運転コスト(トータル・ランニングコスト)TRCが減少したか否かを判定する。本実施形態において、総運転コストTRCは以下の考え方に従って算出される。
まず、総運転コストTRCは、原理的には、下記(4)式により表される。しかし、本実施形態においては、便宜上、上記(4)式を変形した下記(5)式により、総運転コストTRC(総運転コスト相当値)を算出する。
Figure 2015042855
Figure 2015042855
なお、上記(4)式および上記(5)式における各パラメータとして、例えば、以下の各値が採用され得る。
・燃料消費率:
いわゆるBSFC(Brake−Specific Fuel Consumption)。機関10が単位出力を単位時間にわたって発生させ続けるときに消費される燃料の量(例えば、g/kW・hまたはg/ps・h)。機関10の運転状態に基づき、算出される(下記参照。)。
・SI:
DPF54の再生(DPF54に蓄積される粒子状物質の燃焼除去)に要する燃料の量を、燃料消費率の一部として取り扱うための係数(Soot Index。単位なし)。あらかじめ取得された固定値であり、電子制御ユニット70のROMに記録されている。
・尿素水消費率:
機関10が単位出力を単位時間にわたって発生させ続けるときに排出される窒素酸化物(NOx)の浄化に要する尿素水の量(例えば、g/kW・hまたはg/ps・h)。燃料消費率(BSFC)との対応を考慮して、この消費率が採用されている。機関10の運転状態に基づき、算出される(下記参照。)。
・尿素水価格/燃料価格:
単位量あたりの燃料の価格(例えば、円/g)に対する単位量あたりの尿素水の価格(例えば、円/g)の比。尿素水価格および燃料価格は、実際には、固定値ではなく時々刻々と変化する値である。しかし、一般に、尿素水価格は、燃料価格と比較して相当に小さい(例えば、燃料価格の数十分の一程度)。そのため、尿素水価格および燃料価格が多少変動しても、それらの比(尿素水価格/燃料価格)の大きさはそれ程大きく変動しないと考えられる。そこで、本実施形態においては、この比の値を固定値であると仮定する(換言すると、尿素水価格および燃料価格を固定値であると仮定する。)。この比の値は、あらかじめ取得され、電子制御ユニット70のROMに記録されている。なお、尿素水価格および燃料価格を時々刻々と把握可能である場合、これら値を固定値と仮定する必要はなく、それら把握した値が用いられればよい。この比の値は、以下、「価格比」とも称呼される。
・TRC相当値:
総運転コスト(トータル・ランニングコスト)に相当する値。機関10が単位出力を単位時間にわたって発生させ続けるときに要するコストに相当する。以下、便宜上、単に「総運転コストTRC」とも称呼される。
CPUは、ステップ850にて、現時点における燃料噴射量(パイロット噴射量とメイン噴射量との和)および軸トルク(例えば、機関10の性能曲線に機関回転速度NEを適用して算出される。)から燃料消費率(BSFC)を算出し、現時点における尿素水の供給量Urおよび上記軸トルクから尿素水消費率(BSFC相当)を算出する。そして、CPUは、それら算出された値と、電子制御ユニット70のROMから読み出した係数SIおよび価格比(尿素水価格/燃料価格)と、に基づき、現時点における総運転コストTRCを算出する。なお、算出された総運転コストTRCは、電子制御ユニット70のRAMに一時的に保存される。
そして、CPUは、現時点における総運転コストTRCと、電子制御ユニット70のRAMに格納されている「目標位置Gctgtを修正する前の時点における総運転コストTRC」と、を比較することにより、目標位置Gctgtを修正したことによって総運転コストTRCが減少したか否かを判定する。なお、総運転コストTRCの初期値(目標位置Gctgtがクランク角度θaである場合の値)は、電子制御ユニット70に格納されているマップ等に基づいて取得されるようになっている。
目標位置Gctgtの遅角によって総運転コストTRCが減少した場合、CPUは、ステップ850にて「Yes」と判定し、再びステップ830に戻る。そして、CPUは、ステップ830にて目標位置Gctgtを更に単位遅角量ΔGcだけ遅角させた後、ステップ840にて熱発生率重心位置を目標位置Gctgtに一致させ、ステップ850にて総運転コストTRCが低下したか否かを再び判定する。このように、CPUは、目標位置Gctgtを遅角させる(修正する)ことによって総運転コストTRCが減少しなくなるまで、ステップ830〜ステップ850の処理を繰り返す。なお、これら処理は、例えば、図4において、点Aを始点として、総運転コストTRCが点Bに至るまで徐々に熱発生率重心位置を(θaからθbに向かって)遅角させることに相当する。
そして、目標位置Gctgtを遅角させても総運転コストTRCが減少しなくなると(例えば、図4の点Bを通過して総運転コストTRCが増大すると)、CPUは、ステップ850にて「No」と判定し、ステップ860に進む。CPUは、ステップ860にて、総運転コストTRCが最小となる目標位置Gctgt(TRC最小位置。総運転コスト最小位置)を特定済みであるか否かを判定する。ここで、総運転コスト最小位置は、総運転コストTRCが減少しなくなる直前の位置(例えば、図4の点B)として特定済みであるので、CPUは、ステップ860にて「Yes」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これに対し、ステップ830にて“初めて(初回に)”目標位置Gctgtを単位遅角量ΔGcだけ修正(遅角)した場合において、総運転コストTRCが減少しなかった場合(すなわち、目標位置Gctgtよりも遅角側に総運転コスト最小位置が存在しない場合)、CPUは、ステップ850にて「No」と判定し、ステップ860に進む。この場合、総運転コスト最小位置は未だ特定されていないので、CPUは、ステップ860にて「No」と判定し、ステップ870に進む。
CPUは、ステップ870にて、熱発生率重心位置を現在の値から徐々に変更するために用いる単位変更量ΔGcを設定する。具体的には、負の値「−θd」が単位変更量ΔGcに格納される。なお、負の値「−θd」は、制御装置に要求されるランニングコスト最小位置の精度などを考慮した適値に設定されればよい。
ところで、本実施形態の制御装置は、熱発生率重心位置が「減少」することが、熱発生率重心位置が「進角」することを意味するように構成されている(例えば、図3などを参照。)。よって、以下、負の値が格納された単位変更量ΔGcは、単位“進角”量ΔGcとも称呼される。
次いで、CPUは、ステップ830に進み、現在の熱発生率重心位置の目標位置Gctgtに単位進角量ΔGcを加算した値(単位進角量ΔGcは負の値であるので、実際にはΔGcだけ減算された値)を、新たな目標位置Gctgtに設定する。これにより、目標位置Gctgtが、現在の値から単位進角量ΔGcだけ“進角”されることになる。
次いで、CPU81は、ステップ840に進み、実際の熱発生率重心位置Gcが目標位置Gctgtに一致するように燃焼パラメータをフィードバック制御する。そして、CPU81は、ステップ850に進み、目標位置Gctgtを修正(進角)したことによって総運転コストTRCが減少したか否かを判定する。さらに、CPUは、上記同様、目標位置Gctgtを進角させる(修正する)ことによって総運転コストTRCが減少しなくなるまで、ステップ830〜ステップ850の処理を繰り返す。
そして、目標位置Gctgtを進角させても総運転コストTRCが減少しなくなると、CPUは、ステップ850にて「No」と判定し、ステップ860に進む。ここで、総運転コスト最小位置は、総運転コストTRCが減少しなくなる直前の位置として特定済みであるので、CPUは、ステップ860にて「Yes」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、ステップ820〜870の処理により、目標位置Gctgtを単位変更量ΔGcずつ遅角または進角させることにより、総運転コストTRCが最小となる目標位置Gctgtが検索される。さらに、この検索と併せ、その目標位置Gctgtに実際の熱発生率重心位置Gcが一致するように燃焼制御が行われる。
これにより、機関10のランニングコストが低減される。以上が、本発明の実施形態についての説明である。
ところで、上述した実施装置は、機関10の状態が定常状態である場合だけではなく、過渡状態(例えば、SCR触媒55の暖機が完了していない状態、および、機関10に急加速または急減速などが要求された状態など)である場合にも、機関10のランニングコストを適切に低減することができる。この点について、図10を参照しながら説明する。
例えば、過渡状態の一例として機関10が冷間始動された直後において、SCR触媒55の温度がその活性温度に達していないとき(すなわち、SCR触媒55の暖機が完了していない場合)、排ガス中のNOxが十分に浄化されず、SCR触媒55の下流側に比較的多量のNOxが流出する場合がある。その場合、NOxセンサ91にて検出されるNOx濃度NOxoutが増大することに起因し、尿素水の供給量Urが増大する(図7のルーチンを参照。)。すなわち、SCR触媒55の暖機が完了していない場合、SCR触媒55の暖機が完了している場合に比べ、SCR触媒55に流入するNOxの量が同じであっても尿素水の供給量Urが増大する。その結果、総運転コストTRCも増大する。
図10は、「定常状態」における総運転コストTRC1の推移と、「過渡状態」における総運転コストTRC2の推移と、の一例を示す参考図である。
機関10が「定常状態」にある場合の総運転コストTRC1は、燃料の消費に起因するコストRCfと、尿素水の消費に起因するコストRCu1と、の合計である(図4と同様)。一方、機関10が上記「過渡状態」にある場合、上述したように、尿素水の供給量Urが増大するので、尿素水の消費に起因するコストが、コストRCu1からコストRCu2に増大する。一方、機関10が上記「過渡状態」にあっても(SCR触媒55が未暖機であっても)、燃料の消費そのものには影響が及ばないので、燃料の消費に起因するコストRCfは変化しない。その結果、総運転コストは、尿素水の消費に起因するコストの増大分だけ増大し、コストTRC1からコストTRC2に変化する。
このとき、図10に示されるように、過渡状態における総運転コストTRC2は、定常状態にて総運転コストTRC1が最小となる熱発生率重心位置(θb)においては最小とならず(点B’)、熱発生率重心位置をクランク角度θbよりも遅角させたクランク角度θcとした場合に最小となる(点C)。このように、機関10が定常状態にある場合と過渡状態にある場合とでは、総運転コストTRCを最小とするための熱発生率重心位置の目標位置Gctgtが異なる場合がある。
実施装置は、上記説明から理解されるように、たとえ機関10が過渡状態にある場合であっても、総運転コストTRC2に対して図7〜図9のルーチンの処理を実行することにより、総運転コストTRC2を最小とする熱発生率重心位置の目標位置Gctgt(θc)を検索して特定することができる。すなわち、実施装置は、機関10が定常状態にあっても過渡状態にあっても、機関10の総運転コストを低減する制御を行うことができる。
<実施形態の総括>
以上、図5〜図10を参照しながら説明したように、上記実施形態に係る制御装置は、尿素SCR触媒55を備えた内燃機関10に適用され、燃料が燃焼するときの熱発生率重心位置Gcとして定められるクランク角度を燃焼制御に用いる制御装置であって、
前記熱発生率重心位置Gcと、前記燃料の消費の度合いと、前記尿素SCR触媒55における尿素水の消費の度合いと、の間の関係(図3、図10のグラフ、図7〜図9のルーチンを参照。)に基づいて定めた目標位置Gctgtに前記熱発生率重心位置Gcが一致するように燃焼制御を行う制御部(例えば、電子制御ユニット70)を備えている。
より具体的には、前記制御部70は、前記燃料の消費に起因するコストRCfと前記尿素水の消費に起因するコストRCuとの総計に相当する総運転コストTRCを前記燃料の消費の度合い及び前記尿素水の消費の度合いに基づいて算出するとともに(図8のステップ850。上記(5)式を参照。)、前記総運転コストTRCが最小となるように前記目標位置Gctgtを定める、ように構成されている(図8のルーチンを参照。)。
以上に説明したように、本発明は、尿素SCR触媒を備えた内燃機関のランニングコストを適切に改善することができる内燃機関の制御装置として、利用することができる。
10 機関
21 機関本体
22 気筒
23 燃料噴射弁
33 コモンレール
44 過給機
45 インタークーラー
55 尿素SCR触媒
56 尿素水タンク
57 尿素水供給管
58 尿素水噴射弁
70 電子制御ユニット
85 筒内圧センサ
86 クランク角度センサ
91 NOxセンサ

Claims (7)

  1. 尿素SCR触媒を備えた内燃機関に適用され、前記内燃機関の燃焼サイクルにおいて燃料が燃焼するときの熱発生率重心位置として定められるクランク角度を燃焼制御に用いる制御装置であって、
    前記熱発生率重心位置と、前記燃料の消費の度合いと、前記尿素SCR触媒における尿素水の消費の度合いと、の間の関係に基づいて定めた目標位置に前記熱発生率重心位置が一致するように燃焼制御を行う制御部、を備えた内燃機関の制御装置。
  2. 請求項1に記載の制御装置において、
    前記制御部が、前記燃料の消費に起因するコストと前記尿素水の消費に起因するコストとの総計に相当する総運転コストを前記燃料の消費の度合い及び前記尿素水の消費の度合いに基づいて算出するとともに、前記総運転コストが最小となるように前記目標位置を定める、内燃機関の制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
    前記熱発生率重心位置が、各サイクルにおけるクランク角度を一つの軸に設定し且つ熱発生率を前記一つの軸に直交する他の軸に設定したグラフに対して前記熱発生率が描かれた波形と、前記一つの軸と、により囲まれる領域の幾何学的重心に対応するクランク角度である、内燃機関の制御装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記熱発生率重心位置が、各サイクルにおける任意のクランク角度から特定クランク角度を減じて得られる値と、前記任意のクランク角度における熱発生率と、の積に対応した値を、前記クランク角度について積分して得られる値がゼロとなる前記特定クランク角度である、内燃機関の制御装置。
  5. 請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
    前記熱発生率重心位置が、任意のクランク角度よりも進角側の各熱発生率と該熱発生率にそれぞれ対応するクランク角度距離との積の総和が前記任意のクランク角度よりも遅角側の各熱発生率と該熱発生率にそれぞれ対応するクランク角度距離との積の総和に等しいときの前記任意のクランク角度であり、
    前記クランク角度距離が、前記任意のクランク角度と各クランク角度とのクランク角度差である、内燃機関の制御装置。
  6. 請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
    前記熱発生率重心位置が、各サイクルにおいて、前記燃料の燃焼が始まるクランク角度をCAsにて表し、前記燃焼が終わるクランク角をCAeにて表し、任意のクランク角度をθにて表し、かつ、前記クランク角度θにおける熱発生率をdQ(θ)にて表すとき、下式:
    Figure 2015042855
    に基づく演算により取得される値Gcである、内燃機関の制御装置。
  7. 請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
    前記熱発生率重心位置が、クランク角度距離とそれに対応する熱発生率との積の積分値を、クランク角度に対する熱発生率の波形によって画定される領域の面積で割って得られる値に燃焼開始クランク角度を加えた値である、内燃機関の制御装置。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015113790A (ja) * 2013-12-12 2015-06-22 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置
CN112360598A (zh) * 2020-11-16 2021-02-12 潍柴动力股份有限公司 一种双scr系统、后处理系统及发动机
CN114412617A (zh) * 2022-01-17 2022-04-29 潍柴动力股份有限公司 一种柴油机控制方法和相关装置

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