JP2015042734A - 膜及びその製造方法 - Google Patents

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祐彦 ▲高▼橋
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Abstract

【課題】配向性が良好であって一定の構造周期を有する細孔を備える膜及びこの膜の製造方法を提供する。【解決手段】メソ構造を有する膜であって、前記膜が、ケイ素原子と、4以上のメチレン基からなる有機基と、を有する酸化物膜であり、前記膜が、柱状の構造体がハニカム状に配置されたメソ構造を有し、前記柱状の構造体が一方向に配向しており、前記膜が、下記一般式(α)に示される部分構造(Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)を有し、前記膜に含まれ、かつ前記一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の総数Xと、前記膜に含まれるケイ素原子の総数Y1と、の間で、下記一般式(1a)が満たされることを特徴とする。0.02≰X/Y1≰0.4【選択図】図1

Description

本発明は、膜、特に、構造規則性を有するメソ構造体膜及びその製造方法に関する。
メソポーラス材料は、広い比表面積、低い誘電率、屈折率、高度に規則的な構造をもつ、という特長を有することから様々な応用が期待されている。メソポーラス材料の中でもシリカのメソポーラス膜は、メソポーラス材料が有する優れた特性を電気的、光学的に応用する上で重要である。中でも基板の上に作製され膜面内の配向性が制御された二次元ヘキサゴナル構造を持つメソポーラス膜は、酸化物からなるチューブ状の壁が膜内で揃った(配向された)構造を持つため、孔内部に導入した化合物に異方性を与えるホストとしての応用が報告されている。
これまでメソポーラス膜の物性、特に、面内配向性を制御するための手法がいくつか報告されてきた。中でも、ディスプレイ向けの液晶配向技術として広く用いられている、ラビング処理を行ったポリマー膜を基板(あるいは基板の表面部材)として利用した場合、この基板の上に形成されるメソポーラス膜は高い配向性を示す。このラビング処理を行ったポリイミド膜がメソポーラスシリカに配向性を付与する機構は、簡単には以下のように説明される。メソポーラスシリカの鋳型となるアルキル基を含む界面活性剤分子は、ラビング処理によって配向を与えられたポリイミド分子内のアルキル基との化学的な相互作用によってラビング方向に沿って配向される。そして、この配向された界面活性剤分子を起点としてシリンダー状ミセルよりなる二次元ヘキサゴナル構造が形成される。その結果、ラビング方向に垂直な方向にシリンダーが配向した二次元ヘキサゴナル構造の酸化物メソ構造体膜が形成される。ここで、酸化物メソ構造体膜から鋳型分子を除去して中空の細孔としたものをメソポーラス膜といい、特にその細孔の方向が膜面内で一方向に制御されているものを配向性メソポーラス膜と呼ぶ。
このメソポーラスシリカ膜を、種々のゲスト分子、例えば、生体材料や発光材料の器として用いるために、膜が有するメソポーラスの孔径及び構造周期を拡大する研究が盛んに行われている。この大きな構造周期の酸化物メソ構造体膜を調製する方法として、特許文献1にて提案されている方法がある。具体的には、アルキル基を含む界面活性剤と比較して大きな構造周期のメソ構造体を与えることが知られている両親媒性のブロックコポリマーを鋳型として酸化物メソ構造体膜を形成する方法が開示されている。
特許文献2には、ラビング処理済みポリイミドが塗布・成膜されている基板を異方性基板として用い、基板と界面活性剤が有するアルキル基との化学的な相互作用を利用して配向させた酸化物メソ構造体膜の作製方法が開示されている。
特表2003−531083号公報 特開2001−145831号公報
しかし、両親媒性ブロックコポリマーを鋳型に、ラビング処理済みポリイミド塗布基板を基板に、それぞれ用いた上で酸化物メソ構造体膜を作製しようとすると、膜内の細孔が一方向に配向されている酸化物メソ構造体膜を得ることは容易ではなかった。これは、アルキル鎖を疎水基として持つ界面活性剤と比較して、両親媒性ブロックコポリマーは、基板上の配向された分子との相互作用が弱く、大きな構造周期は得られるものの、一定方向に制御された配向を形成することが困難であると考えられる。
本発明は、上述した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、配向性が良好であって一定の構造周期を有する細孔を備える膜及びこの膜の製造方法を提供することにある。
本発明の膜の第一の態様は、メソ構造を有する膜であって、
前記膜が、ケイ素原子と、4以上のメチレン基からなる有機基と、を有する酸化物膜であり、
前記膜が、柱状の構造体がハニカム状に配置されたメソ構造を有し、
前記柱状の構造体が一方向に配向しており、
前記膜が、下記一般式(α)に示される部分構造
Figure 2015042734
(Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
を有し、
前記膜に含まれ、かつ前記一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の総数Xと、前記膜に含まれるケイ素原子の総数Y1と、の間で、下記一般式(1a)が満たされることを特徴とする。
0.02≦X/Y1≦0.4 (1a)
また本発明の膜の第二の態様は、メソ構造を有する膜であって、
前記膜が、ケイ素原子と、金属原子と、4以上のメチレン基からなる有機基と、を有する酸化物膜であり、
前記膜が、柱状の構造体がハニカム状に配置されたメソ構造を有し、
前記柱状の構造体が一方向に配向しており、
前記膜が、下記一般式(α)に示される部分構造
Figure 2015042734
(Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
を有し、
前記膜に含まれ、かつ前記一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の総数Xと、前記膜に含まれるケイ素原子と金属原子との総数Y2と、の間で、下記一般式(1b)が満たされることを特徴とする。
0.02≦X/Y2≦0.4 (1b)
本発明によれば、配向性が良好であって一定の構造周期を有する細孔を備える膜及びこの膜の製造方法を提供することができる。また本発明の膜が有する細孔は、構造周期の選択の自由度が高い。また本発明の膜は、機械的強度が高い。
本発明に係る膜の概略を示す図である。 基板と膜が有する有機基との相互作用、及び有機基同士の相互作用の概念を示す図である。 実施例1で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜の面内ロッキングカーブプロファイルを示す図である。 実施例1で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜の二次元XRDパターンを示す図である。 実施例1で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜のラビング方向に平行方向の断面における断面SEM像を示す図である。 実施例1で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜のラビング方向に垂直方向の断面における断面SEM像を示す図である。 実施例5で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜の二次元XRDパターンを示す図である。 実施例5で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜の面内ロッキングカーブプロファイルを示す図である。
本発明に係る膜は、メソ構造を有する膜である。また本発明に係る膜は、ケイ素原子と、4以上のメチレン基からなる有機基(有機置換基)と、を有する酸化物膜である。尚、本発明に係る膜(酸化物膜)には、さらに金属原子が含まれていてもよい。
本発明に係る膜は、柱状(例えば、シリンダー状、多角柱状、楕円柱状、半円柱状、かまぼこ状等)の構造体がハニカム状に配置されたメソ構造を有する。ここで、この柱状の構造体は、一方向に配向している。
本発明に係る膜は、下記一般式(α)に示される部分構造を有する。
Figure 2015042734
(Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
本発明において、膜に含まれ、かつ一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の総数Xと、膜に含まれるケイ素原子の総数Y1と、の間で、下記一般式(1a)が満たされる。
0.02≦X/Y1≦0.4 (1a)
尚、膜内にケイ素原子の他に金属原子が含まれている場合、膜に含まれ、かつ一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の総数Xと、膜に含まれるケイ素原子と金属原子との総数Y2と、の間で、下記一般式(1b)が満たされる。
0.02≦X/Y2≦0.4 (1b)
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(1)用語の説明
まず、本発明の実施形態を説明する際に用いられる用語について説明する。具体的には、酸化物、酸化物メソ構造体膜及び界面活性剤について説明する。
(1−1)酸化物について
本発明の膜を構成する酸化物は、基本的には、無機系元素と、酸素と、を有する無機酸化物である。ただし、本発明において、無機酸化物には、無機系元素と、酸素と、で形成される骨格の内外に有機物が付加されているものも含まれる。
本発明の膜を構成する酸化物となり得る無機酸化物として、例えば、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化亜鉛等が挙げられる。この中でも好ましくは、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタン又は酸化ハフニウムであり、特に好ましくは、酸化ケイ素である。
無機酸化物の骨格の内外に含まれ得る有機物として、例えば、ケイ素等の無機酸化物を構成する無機系元素と結合した有機系部分構造が挙げられる。この有機系部分構造として、例えば、フェニル基等の芳香族系置換基、メチル基、メチレン基等の脂肪族系置換基等が挙げられる。
本発明の膜を構成する酸化物は、酸化物前駆体より形成される。
酸化物前駆体の例としては、ケイ素や金属元素のアルコキサイド、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物)等が挙げられる。具体的には、Si、Sn、Zr、Ti、Nb、Ta、Al、W、Hf及びZnから選択されるアルコキサイド、塩化物が挙げられる。アルコキサイドとして、例えば、メトキサイド、エトキサイド、プロポキサイド等が挙げられる。尚、本発明においては、上記アルコキシ基の一部がアルキル基に置換されていてもよい。
(1−2)酸化物メソ構造体膜について
近年、界面活性剤の集合体を鋳型として形成される、膜状のメソ構造材料については、盛んに研究が行われており、ナノメートルスケールの高度な構造規則性を有する酸化物メソ構造体膜を作製することが可能になっている。本発明の膜(メソ構造体膜)は、下記(A)及び(B)を包含する概念である。
(A)メソポーラス膜
(B)酸化物メソ構造体膜
以下、上記(A)及び(B)について説明する。尚、一般的に、多孔質材料は、その孔径により分類されており、孔径が2nm乃至50nmである多孔質材料は、メソポーラス材料に分類される。また、以下の説明において、上記(A)及び(B)のいずれかに該当する膜については、単に「膜」と言うことがある。
(A)メソポーラス膜
本発明において、メソポーラス膜は、孔径が2nm乃至50nmの多孔質材料膜である。本発明において、膜に含まれる孔を取り囲む壁部は上述した酸化物から構成される。この壁部の表面は、必要に応じて修飾されていてもよい。例えば、膜の表面や孔の壁面に水等の吸着を抑制するために、疎水性の分子を壁部の表面に修飾してもよい。
尚、上述した酸化物は、本発明の膜のマトリックス材でもある。また、メソポーラスという言葉の定義は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)による。
(B)酸化物メソ構造体膜
上記メソポーラス膜に含まれる孔に充填物が充填されている膜は酸化物メソ構造体膜である。このとき孔内に充填されている充填物は、メソ構造体となる。
本発明において、酸化物メソ構造体膜に含まれる充填物としては、下記(B1)及び(B2)がある。
(B1)メソポーラス膜を形成する際に使用される鋳型
(B2)膜に含まれる孔に導入される材料((B1)の鋳型に該当するものを除く。)
(B1)は、主に、界面活性剤等の材料を集合させてなる分子集合体である。(B1)の鋳型の径は、2nm乃至50nmであり、(B1)の鋳型の構造は、主に、酸化物からなる壁部によって固定されている。尚、(B1)の鋳型には、必要に応じて他の材料が含まれていてもよい。ここでいう他の材料とは、メソポーラス膜を作製する際に使用される材料(上述した酸化物前駆体等)、膜の作製の際に生じた物質、具体的には、水、アルコール、エーテル、炭化水素等の有機溶媒、塩等が挙げられる。
また、(B1)の鋳型を内包した酸化物メソ構造体膜において、(B1)の鋳型を除去すると、(A)のメソポーラス膜になる。
(B2)は、(B1)の鋳型を除去することで得られる(A)のメソポーラス膜に含まれる孔に導入される材料である。ここで(B2)に該当する材料は、酸化物メソ構造体膜の使用用途により適宜選択することができ、例えば、有機材料、無機材料又は有機材料と無機材料とからなるハイブリッド材料が挙げられ、より具体的には、発光材料等が挙げられる。
(1−3)界面活性剤
本発明の膜を形成する際に使用される鋳型を構成する界面活性剤分子の例としては、親水部位、疎水部位からなるブロックコポリマーが挙げられる。このブロックコポリマーの親水部位として、例えば、ポリエチレングリコールが挙げられる。一方、疎水部位として、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。ポリエチレングリコールを親水基として含む界面活性剤の具体例としては、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのジブロックコポリマー、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのトリブロックコポリマー等を挙げることができる。
一般的に、疎水基及び親水基のいずれかを分子量が大きな置換基とすることにより、膜が有するメソポーラスの孔径を拡大することが可能である。また、界面活性剤に加えて、構造周期を調整するための添加物を加えてもよい。この構造周期を調整するための添加物としては、疎水性物質が挙げられる。この疎水性物質の例としては、アルカン類、親水性基を含まない芳香族化合物が挙げられ、その具体的な例としては、オクタンが挙げられる。
(2)膜(第一の実施形態)
(2−1)膜の構造、配向
図1は、本発明に係る膜の概略を示す図である。尚、図1の膜は、膜に含まれるメソ構造体が一方向に配向されている配向性酸化物メソ構造体膜である。図1の膜1は、基板10の上に設けられており、マトリクス部11と、このマトリクス部11に内包されているメソ構造体部12と、からなる。ただし、本発明において、膜1は、必ずしも基板10の上に設けられるものに限定されない。
図1の膜1において、マトリクス部11は、上述する酸化物からなるが、上述した界面活性剤の親水部がさらに含まれていてもよい。図1の膜1において、メソ構造体部12は、空孔又はこの空孔に充填される充填物である。尚、ここでいう充填物は、上述した界面活性剤の疎水部から構成される構造体であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1の膜1は、シリンダー状のメソ構造体部12がハニカム状に充填された構造を持つ酸化物メソ構造体膜である。ここでハニカム状に充填されたシリンダー状のメソ構造体部12は、一般的には、二次元ヘキサゴナル構造と呼ばれる。ヘキサゴナル構造とは、厳密には、シリンダー状のメソ構造体部12の断面形状が正六角形になるようにパッキングされている構造を指すが、本発明においては、正六角形が変形した構造のものも含まれる。これは、本発明の膜となるメソポーラス膜を作製するにあたり、後述する界面活性剤を除去する工程を行う際に、膜が厚さ方向に選択的に収縮することがあり、この「収縮」により断面形状が「正」六角形とならないことがあるからである。
本発明に係る膜は、マトリクス部11に内包されるシリンダー状の構造体(メソ構造体部12)の配向方向は、膜面内にわたって一定方向である。
界面活性剤の集合体を鋳型としてメソ構造体膜を作製した場合、作製した膜を設ける基材については、特段、配向を与える工夫を行わなくても、極めて小さな範囲でシリンダー状の構造体の向きがそろった部位が形成されることがある。例えば、メソ構造体膜のうち1μm四方以下程度の領域に注目すると、その領域内でシリンダー状の構造体の向きがそろった部位が形成されることがある。しかし、この向きのそろった部位は、膜全体から見るとランダムに発生するものであり、また上述した向きのそろった部位のサイズもメソ構造体膜全体に対して小さいものである。このため、膜状のデバイスを作製した際には、シリンダー状の構造体の配向が膜面内にわたって一定方向であることに由来する機能を実質的に発現することができない。
本発明では、膜内におけるシリンダー状の構造体の配向(広範囲に置ける一定方向の配向)を達成するために、後述する有機基を導入することでその配向を制御する。これにより、広い範囲、例えば、膜全体のうち、10μm四方以上、好ましくは、1mm四方以上、より好ましくは、1cm四方以上の領域にわたってシリンダー状の構造体の配向方向を膜面内にわたって一定方向に配向させることが可能になる。尚、この「膜面内にわたって一定方向に配向」という記述は、後述する膜の評価の項で記載する膜面内において配向が確認できる領域が基板表面に対して50%以上あることを意味する。ここで、この領域は、好ましくは、80%以上であり、より好ましくは、95%以上である。
本発明の膜は、膜を構成する元素としてケイ素が含まれるが、このケイ素原子の中には、4以上のメチレン基からなる有機基と結合しているケイ素原子が含まれる。
本発明の膜は、膜に含まれるシリンダー状の構造体の配向方向を制御するために、分子の配向方向に異方性を有する基板と相互作用する化合物が膜中に含まれる。このように基板と相互作用する化合物として、有機系置換基、具体的には、複数のメチレン基が連結してなる部分構造が好ましく用いられる。
図2は、基板と膜が有する有機基との相互作用、及び有機基同士の相互作用の概念を示す図である。尚、図2は、図1中の空間領域aの部分拡大図でもある。以下、図2を参照しながら説明する。
図2において、基板10は、ラビング処理等により、符号30に示される方向に配向を有している。また図2において、基板10の上には半円柱状のメソ構造体部12が設けられている。またメソ構造体部12の上及びメソ構造体部12が設けられていない基板10の上には、複数の連続したメチレン基からなる有機基21と、ケイ素原子22と、からなる部分構造20が配置されている。尚、この部分構造20は、図1中のマトリクス部11の一部となっている。
ところで、本発明の膜を構成する部分構造20に含まれる有機基(複数の連続したメチレン基)21は、基板10上の配向方向(符号30)に異方性をもつ分子との相互作用により、その分子と平行に配置される。このとき有機基21が疎水性の置換基であるため、メソ構造体部12を構成する界面活性剤の疎水部内あるいはこの疎水部の界面、又はこの疎水部が除去されてなる空孔の界面に存在すると考えられる。一方で、この部分構造20は、膜を構成する酸化物と結合するケイ素原子21を有しているという点で、酸化物と界面活性剤の親水部とが混合している空間領域、酸化物内又はこれら空間領域の界面に存在すると考えられる。
そうすると、部分構造20自体は、ケイ素元素21と有機基22とがそれぞれ存在しやすい位置、具体的には、下記(i)と(ii)との境界領域に優先して存在するものと考えられる。要するに、疎水性の空間領域と親水性の空間領域の境界に優先して存在すると考えられる。
(i)界面活性剤の疎水部内あるいはこの疎水部の界面、又はこの疎水部が除去されてなる空孔の界面
(ii)酸化物と界面活性剤の親水部とが混合している空間領域、酸化物内又はこれら空間領域の界面
ところで、図2中の分子20が有する有機基21の長さは、長くても1nm乃至3nm程度であり、メソ構造体部12となるミセルの直径φと比較して明らかに短い。このため、有機基21は、図2に示されるように、膜中に形成されるシリンダー状の構造体(メソ構造体部12)と平行に配置される。この結果、シリンダー状の構造体(メソ構造体部12)の配向方向は、基板の分子の配向方向に対して平行に配置されることとなる。尚、本発明において、「平行に配置される」とは、数学的な平行配置に限られず、略平行方向に配置されている態様も包含される。ここでいう略平行方向とは、平行方向(基板の配向方向)を基準として±30度、好ましくは±10度以下の範囲内の角度を表す。また、有機基21に含まれるメチレン基は、シリンダー状の構造体(メソ構造体部12)の配向方向に対して平行に配向される。
以上説明した基板10と有機基21が有するメチレン基との相互作用は、疎水性相互作用、ファンデルワールス力に起因すると考えられる。これら相互作用をシリンダー状の構造体(メソ構造体部12)の配向の制御に活用するためには、有機基21を構成する連続したメチレン基の繰り返し数がある程度大きいほうが好ましい。具体的には、繰り返し数を4以上とすることが好ましく、さらに8以上とすることが好ましい。メチレン基の繰り返し数を4以上とするのは、疎水性相互作用やファンデルワールス力に起因すると考えられるメチレン基間の相互作用を実現するために一定以上の繰り返し数が必要だからである。具体的には、代表的な自己組織化膜である金/アルカンチオールの系と同様に、繰り返し数を4以上とすることでその効果が見られ、繰り返し数が8以上になると細密なパッキングを起こすのに十分な相互作用が得られる。一方、メチレン基の繰り返し数の上限は、使用する試薬の入手可能性やこの試薬の溶媒への溶解性の観点から、例えば、22以下である。しかし、試薬の入手可能性や溶媒への溶解性という観点で問題がないのであれば、メチレン基の繰り返し数は22を超えても差し支えない。
また有機基21は、連続したメチレン基が直鎖状に連結されてなる置換基であることが好ましい。以上説明したように、有機基21は、連続した4以上のメチレン基からなる置換基である。単純に、メチレン基間、及びメチレン基と基板と間の相互作用を増大させ、膜自体の配向機能を強化するという観点で考慮すると、有機基21は、メチレン基のみからなることが好ましいと考えられる。一方で、本発明において最低限要求される膜の配向機能を満たした上で、機能の追加、合成容易性向上等の目的を達成させたいのであるならば、有機基21を構成するメチレン基に他の有機系置換基を導入してもよい。具体的には、フェニル基、アミド基及びそれらの誘導体等をメチレン基に導入してもよい。
本発明において、膜(メソ構造体膜中)全体に対する有機基21の量は、一定の範囲に制御されていることが望ましい。ここで膜全体に対する有機基21の量は、この有機基21に結合しているケイ素原子の数から推測することができる。
ここで本発明の膜に含まれる、ケイ素又はケイ素及び金属元素の総数(総原子数)をYとする。これに対して、本発明の膜が有する有機基(連続した4以上のメチレン基を含む有機系置換基)に結合しているケイ素の総数をXとする。本発明においては、X/Yで表される原子数比において、下記一般式(1)が満たされる。
0.02≦X/Y≦0.4 (1)
尚、膜に金属元素が含まれない(無機系元素がケイ素原子のみの)場合、Yは、膜に含まれるケイ素原子の総数(Y1)と等しくなる。一方、膜にケイ素原子の他に金属元素が含まれる場合、Yは、膜に含まれるケイ素原子と金属原子との総数と(Y2)と等しくなる。
本発明において、式(1)中のX/Yが0.02未満である場合は、膜全体に対する有機基21の量が少ないことを意味する。この場合、膜が有する有機基と基板との相互作用が弱くなるために、本発明にて要求される膜(酸化物メソ構造体膜)の配向制御が達成できなくなる。また式(1)中のX/Yが0.4を超える場合は、膜に含まれる有機基21によって酸化物ネットワークの形成が空間的に阻害されるために、強度が低くなり、形成される構造体の面内規則構造を保持することが困難となる。
本発明の膜は、後述するブラッグ・ブレンターノ配置におけるエックス線回折測定において、面間隔8nm以上に対応する角度領域(格子面間隔dが8nm以上に対応する角度領域)に少なくとも一つのピークを示す。このピークの出現は、従来用いられてきた、一軸配向性の構造を比較的容易に形成可能な、アルキル系界面活性剤では達成することができなかった。一方で、このピークを出現させることが可能な界面活性剤を鋳型として形成した膜(酸化物メソ構造体膜)では、分子配向異方性基板と膜を構成する部分構造の化学的な相互作用を利用して膜面内の配向を制御することができなかった。ところで、上記格子面間隔の最大値は、メソポーラスの定義から50nmである。
(2−2)基板(分子の配向方向に異方性を有する基板)
本発明の膜は、基板面内における分子の配向方向に異方性を有する基板の上に設けられていてもよい。
本発明の膜は、基板面内における分子の配向方向に異方性を有する基板(以降、分子配向異方性基板と言う。)を使用することで、膜に含まれるメソ構造体の配向方向を基板面内にわたって一定方向に制御することができる。この分子配向異方性基板としては、一般的な基板の表面に分子の配向が異方性を有する材料からなる薄膜が形成されている基板等が挙げられる。
上記薄膜を設けるための基板の材質としては特に限定はないが、上記薄膜を形成する際に用いられる溶液(反応溶液)に対して安定なものが好ましく用いられる。具体的には、ガラス、石英、シリコンウェハ等の半導体ウェハ、セラミクス、ポリイミド等の樹脂材料、金属等が挙げられる。尚、必要に応じて、プラスチック等のフレキシブルなフィルム状の基板や透明導電性膜を付与した基板も用いることもできる。本発明において、基板の表面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平面、曲面等が挙げられる。尚、使用する基板については、その表面を充分に洗浄し、清浄な状態で表面を露出させることが好ましい。ここで基板を洗浄する方法として、例えば、有機溶媒を用いた洗浄、水による洗浄、酸処理、UV−オゾン処理等が挙げられる。
基板表面に形成される薄膜としては、分子の面内における配向が異方性を有する材料からなる高分子化合物膜、具体的には、ラビング処理を施した高分子化合物膜、高分子化合物のラングミュア−ブロジェット膜(LB膜)等を挙げることができる。
これらの高分子化合物膜は、本発明の膜の作製プロセスに耐え得るものであり、かつ配向規制力のある分子配向異方性を有する高分子化合物からなる膜である。この高分子化合物膜の構成材料として、具体的には、ポリイミドが挙げられる。本発明においては、ポリイミドの中でも、繰り返し構造単位中に2つ以上の連続したメチレン基を含んでいるものが好ましく用いられる。この高分子化合物を基板上に形成する手法としては、スピンコート等が挙げられる。
基板表面に形成される薄膜に配向を付与するラビング処理とは、上記基板の上に設けたポリマー等を布等で一方向に擦る処理のことをいう。ラビング処理の例としては、ラビング布をローラー上に配置し、回転させたローラーを基板表面に接触させ、基板を固定したステージをローラーに対して一方向に移動させることによって行う方法が挙げられる。この方法で使用されるラビング布は、使用する高分子材料に対して最適なものを選択することになるが、ナイロン、コットン等一般的なものを使用することができる。またラビング処理の強度は、ローラーの回転数、基板とローラーの距離、基板を固定したステージの移動速度等のパラメータによって適宜制御される。
LB膜とは、水等の液体の気液界面上に展開された単分子膜を基板上に移し取ることで形成される膜である。ここでLB膜は、成膜(基板上における移し取り)を繰り返すことで累積構造を形成することができる。本発明において、基板の上に形成されるLB膜には、膜を形成した後に熱処理等の処理を施し、累積構造を保ったままで化学構造を変化させてなるLB膜誘導体の単分子累積膜も含まれる。LB膜の構成材料としては、良好な配向を達成できる材料であればその材質については特に限定されない。例えば、ポリイミド等の高分子化合物が挙げられる。
LB膜を成膜する方法としては、一般的な方法が用いられる。例えば、水面上に展開された単分子層に表面圧をかけながら、基板を水中に出し入れすることで基板上に1層ずつ単分子層を形成する方法により得られる。尚、LB膜の形態及び性質は、単分子層にかける表面圧、基板の押し込み/引き上げの際の移動速度、LB膜を構成する層の数等で適宜制御可能である。
最近では、膜に含まれる酸化物メソ構造体の構造周期を拡大する検討が盛んに行われている。この構造周期を拡大するための方法として、例えば、鋳型分子の分子量(特に、疎水性置換基の分子量)を増大させる方法が挙げられる。ただし、この手法を基板の分子配向異方性を利用した、一軸配向性酸化物メソ構造体膜の作製への適用を考える場合、以下の問題に遭遇する。それは、この分子配向異方性基板との相互作用の強い、界面活性剤の疎水基であるアルキル基が、一定の鎖長以上では、ミセルを形成するために必要な水と相溶性のある溶媒への溶解度が低いために、酸化物メソ構造体膜が調製できないという問題である。
本発明者らは、この大きな構造周期をもつ配向酸化物メソ構造体膜の実現という課題に対し以下に説明する解決案を提示した。即ち、従来、アルキル基を含む界面活性剤が担っていた(膜の)配向形成機能を、下記一般式(α)に示される部分構造に存在する連続した4以上のメチレン基を含む有機基(図2の符号21)に担わせることで解決した。
Figure 2015042734
(Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
この手法は、本発明の膜の配向制御を達成するだけでなく、ケイ素原子とケイ素原子との間を連結する有機基によって、シリカ原子によってもたらされるネットワークを切断することがない点で、形成されるメソ構造体膜の機械的強度が損なわないので有利である。
(2−3)メソ構造体膜の評価について
本発明の膜は、基板面内における構造体の配向方向が、基板全体にわたって一つの方向に制御された酸化物メソ構造体膜である。本発明の膜が有するメソ構造は、一般的には、二次元ヘキサゴナル構造として記述されるシリンダー様の構造がハニカム状に配置されたものである。尚、以下の説明において、構造体の配向方向が、基板面内にわたって一定方向に制御されていることを、今後、「一軸配向性」と記載することがある。
本発明の膜は、機器分析によりその特性を評価することができる。本発明の膜を評価するための機器分析として、具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)観察、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、原子間力顕微鏡観察、エックス線回折(XRD)分析、赤外スペクトル(IR)測定、紫外可視吸収スペクトル測定、蛍光スペクトル測定、エックス線光電子分光(XPS)等が挙げられる。尚、本発明の膜が、酸化物メソ構造体膜であるか否かは、上記の顕微鏡観察やXRD分析によって調べることができる。
本発明の膜の構造規則性については、顕微鏡観察やXRD分析を行うことで調べることができる。例えば、膜の構造周期については、ブラッグ・ブレンターノ配置におけるXRD分析(一般的には、θ/2θスキャンと呼ばれるエックス線回折測定)を行い、回折ピークを与える角度に対応する面間隔を算出することで確認することができる。
ここで回折ピークを与える角度(θ)、この角度に対する面間隔(d)及び測定に用いられるエックス線の波長(λ)の関係は、下記一般式(2)に示されるBraggの式によって簡潔に表現される。
nλ=2dsinθ (2)
例えば、波長0.1542nmのCu−Kα線を用いた測定において、θ=1°を与える回折ピークが現れた場合には、その面間隔は4.42nmとなり、θ=2°を与える回折ピークが現れた場合には、その面間隔は2.21nmとなる。
本発明の膜を構成するマトリクス部(いわゆる壁部)の構造が、ハニカム状に配置されたシリンダー様の構造であるかは、XRD分析を行うことで調べることができる。例えば、膜の二次元エックス線回折パターンを取得し、そのパターンに(01)のスポットに加えて、ハニカム状に配置されたシリンダー様の構造に特徴的な(10)(−11)のスポットが現れるかどうかを調べることによって確認できる。また、必要に応じて膜断面の顕微鏡観察を行うことによっても確認することができる。
本発明の膜に含まれるメソ構造体の配向方向が、基板面内にわたって一定方向であることを定量的に評価する方法としては、面内XRD分析による評価法がある。この方法は、膜面に対して非平行な面に起因するXRD強度の面内回転依存性を測定するもので、シリンダー用の構造の配向方向とその分布を調べることができる。
具体的には、面内XRD分析のラジアルスキャンで面間隔を測定し、面内における周期構造を確認してから、測定の際に得られた回折ピークについて、ロッキングカーブ測定を行うことで同一面内での配向分布を調べることができる。ところで、面内エックス線回折分析は、エックス線の入射角度が非常に小さい(例えば、0.2°程度)ため、分析対象を広範囲(例えば、cmオーダー)にすることができる。このため、面内XRD分析で得られた構造情報は、膜内の広い範囲における構造情報として扱うことができる。この分析において、例えば、シリンダー様の構造体の配向方向が、基板面内にわたって一定方向である場合には、この面内エックス線回折によって評価した場合、同一面内のロッキングカーブに、180°離れた二本の回折ピークが観測されることを意味する。ここで、180°離れたという記載の意味は、二つのピークの間隔が180±1°の範囲にあることをいう。また、本発明の膜(酸化物メソ構造体膜)では、2本のピークとして観測される同一面内エックス線回折ピークは、実質的に同じ回折強度を示す。ここで、2本のピークとして観測される同一面内エックス線回折ピークが、実質的に同じ回折強度を示すとは、高い強度を示すピークのピーク強度の値を、低い強度を示すピークのピーク強度の値で割った値が1以上であり1.5未満になることをいう。
本発明において、上記同一面内ロッキングカーブ測定により観測されたピークの半値幅は、望ましくは80°の範囲内であり、好ましくは40°の範囲内であり、特に好ましくは20°の範囲内である。この範囲内であれば、構造体の配向方向は膜面内にわたって一つの方向に配向していることになる。
本発明の膜を構成する有機基に含まれるメチレン基がシリンダー状の構造体の配向方向に平行して配向しているか、については、偏光を用いたIR測定によって確認することができる。具体的には、有機基に含まれるメチレン基が一定の方向に配向している場合は、このメチレン基が配向している方向、またそれに対して垂直な方向の偏光を用いた透過率測定を行えばよい。ここでメチレン基に由来する吸収の吸光度をそれぞれの偏光に対して比較すると、配向方向の偏光を用いた場合の吸光度は、配向方向に対して垂直方向の偏光を用いた場合の吸光度と比較して大きくなる。ここで偏光角を変化させてIR測定を行った場合の吸光度の角度依存性プロファイルにおいて現れるピークの半値幅は80°の範囲内が望ましい。この半値幅は、好ましくは40°の範囲内、特に好ましくは20°の範囲内であれば、有機基中のメチレン基は配向していることになる。
(3)膜(酸化物メソ構造体膜)の製造方法(第二の実施形態)
(3−1)基板(分子の配向方向に異方性を有する基板)
本発明の膜の製造する際には、基板面内における分子の配向方向に異方性を有する基板の上に膜を成膜する。ここで分子の配向方向に異方性を有する基板としては、上記(2−2)にて説明した基板を用いることができる。好ましくは、ラビング処理がされた基板(ラビング基板)である。
(3−2)成膜工程
本発明の膜(酸化物メソ構造体膜)は、基板の上に酸化物前駆体を含む溶液を塗布した後、界面活性剤の存在下で行われる縮重合反応を利用して基板の上に重合物が付与されることで形成される。尚、本発明において、酸化物前駆体を含む溶液の中には界面活性剤と、下記一般式(β)に示されるケイ素化合物が含まれている。一般式(β)に示されるケイ素化合物は、酸化物メソ構造体膜を作製する際に用いられる複数種類ある酸化物前駆体の一つに該当する。
Figure 2015042734
(A乃至Fは、それぞれアルコキシ基又は塩素、臭素及びヨウ素から選択される置換基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
ここで本工程を行う際には、以下に説明する前駆体溶液の調製工程と、塗布工程と、が行われる。
(3−2−1)前駆体溶液の調製工程
酸化物メソ構造体膜を作製する際に用いられる前駆体溶液は、酸化物前駆体、界面活性剤、溶媒、水が含まれる。ここで酸化物前駆体としては、上記(1−1)にて説明した酸化物前駆体を用いることができる。また界面活性剤としては、上記(1−3)にて説明した界面活性剤を用いることができる。
前駆体溶液に含まれる溶媒としては、無機酸化物である酸化物前駆体や界面活性剤をいずれも溶解することができるものが用いられる。具体例としては、有機溶媒、水が挙げられる。ここで有機溶媒の例としては、極性溶媒が挙げられ、具体的には、エタノール、プロパノール、メタノール、ブタノール等のアルコール、THF等が挙げられる。本発明において、前駆体溶液に含まれる溶媒は、1種類のみであってもよいし、2種以上の溶媒を混合した混合溶媒であってもよい。
上記前駆体溶液には、必要に応じて上記以外の物質を添加することができる。例えば、触媒の機能を担い、前駆体溶液のpH(酸性、塩基性)を調整するための物質を添加してもよい。ここでpH(酸性、塩基性)を調整するための物質の例としては、塩酸等の酸や水酸化アンモニウム等の塩基が挙げられる。尚、これらpH調整物質は、前駆体物質の加水分解、縮合反応速度を制御するために加えられることが多い。
成膜工程を構成する各工程は、特に限定されないが、例えば、溶媒に前駆体溶液を構成する物質を投入し、攪拌することが行われる。これらの工程は、必要に応じて、雰囲気、温度、湿度、攪拌強度等を適宜制御してもよい。また必要に応じて、超音波処理、ろ過等の小工程をさらに加えてもよい。
一般式(β)のケイ素化合物は、本発明の膜の製造方法において、膜が有するシリンダー状の構造体の配向方向を制御するために前駆体溶液に含ませる物質である。尚、分子の配向方向に異方性を有する基板と一般式(β)のケイ素化合物とが相互作用することでシリンダー状の構造体の配向方向を制御することができる。特に、一般式(β)のケイ素化合物が有する有機基、具体的には、複数のメチレン基が連結されることで形成される有機基は、主に基板との相互作用を生じさせるために機能する。
基板と有機基との間、及び有機基同士の相互作用の具体的態様は、図2に示されている通りである。ここで基板とメチレン基との相互作用は、疎水性相互作用やファンデルワールス力に起因すると考えられる。この相互作用を利用してシリンダー状の構造体の配向を制御させるようにするためには、一般式(β)のケイ素化合物が有するアルキレン基を構成するメチレン基の繰り返し数がある程度大きい方が好ましい。具体的には、メチレン基の繰り返し数を4以上とすることが好ましく、さらに8以上とすることが好ましい。この繰り返し数が4以上であるのは、疎水性相互作用、ファンデルワールス力に起因すると考えられる。つまり、基板の表面にあるメチレン基と一般式(β)のケイ素化合物に含まれるメチレン基との間の相互作用を実現するために、一般式(β)のケイ素化合物に含まれるメチレン基の繰り返し数が一定以上必要であるからである。具体的には、代表的な自己組織化膜である金/アルカンチオールの系と同様に、一般式(β)のケイ素化合物に含まれるメチレン基の繰り返し数が4以上のときにファンデルワールス力に因む効果が見られる。そして、メチレン基の繰り返し数が8以上となった場合には、細密なパッキングを起こすのに十分な相互作用が得られる。一方、このメチレン基の繰り返し数の上限は、例えば、試薬の入手可能性、溶媒への溶解性の観点から22以下が好ましい。しかし、試薬が入手できたり、溶解性の観点で問題がなかったりする場合は、一般式(β)のケイ素化合物に含まれるメチレン基の繰り返し数が22を超えても差し支えない。また一般式(β)のケイ素化合物に含まれる連続したメチレン基は、直鎖であることが好ましい。
以上説明したように、一般式(β)のケイ素化合物には、有機基として連続した4以上のメチレン基が含まれている。ここで膜内に含まれるメソ構造体(メソポーラス等)の配向をより精密に制御するのであれば、有機基を構成するメチレン基に水素原子以外の置換基を導入しないことが好ましいと考えられる。一方で、膜内に含まれるメソ構造体(メソポーラス等)の配向については有意の配向機能を発揮できる範囲(本発明で最低限要求される範囲)に留め、代わりに機能の追加や合成容易性向上等の目的を達成するために、上記メチレン基に置換基を適宜導入してもよい。具体的には、フェニル基、アミド基及びそれらの誘導体基等を置換基としてメチレン基に導入してもよい。
ここで一般式(β)のケイ素化合物を含む酸化物前駆体において、この酸化物前駆体に含まれるケイ素又はケイ素及び金属元素の総数をY’とし、この酸化物前駆体に含まれ、かつ一般式(β)のケイ素化合物を構成するケイ素の総数をX’とする。本発明においては、X’とY’との比、即ち、原子数比(X’/Y’)は、好ましくは、0.02以上0.4以下である。ここで原子数比が0.02未満の場合は、基板との相互作用が弱くなるために、本発明で要求される酸化物メソ構造体膜の配向が達成できない。一方、原子数比が0.4を超える場合は、上述した有機基によって酸化物ネットワークの形成が空間的に阻害されるために、強度が低くなり、形成される構造体の面内規則構造を保持することが困難となるためである。
(3−2−2)塗布工程
上述した前駆体溶液を基板に付与(塗布)する方法としては、一般的な塗付方法を用いることができる。この例としては、ディップコート法、キャスト法、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ペンリソグラフィー法等が挙げられる。
中でも、ディップコート法及びスピンコート法は、簡便に均一な膜を形成できる塗布方法である点で有効である。ディップコート法による塗布方法は、前駆体溶液に基板を浸し、基板を引き上げることで基板上に前駆体溶液を塗布するものである。この塗布量は、塗布及び前駆体溶液調製の条件によって制御可能である。代表的な条件としては、前駆体溶液の組成、基板の引き上げ速度が挙げられる。例えば、一般的に、前駆体溶液に含まれる溶媒の比率を増大させる、又は引上げ速度を低下させることにより、塗布量(膜の厚さ)は減少する。
尚、ディップコート法を用いた塗布は、周囲の環境に影響を受ける。このため、必要に応じて、雰囲気、温度、雰囲気中の溶媒濃度等を制御する。
(3−3)成膜工程
上記塗布工程によって基板の上に付与(塗布)された塗布膜は、塗布膜に含まれる酸化物前駆体が縮重合反応を起こすことで本発明の膜(酸化物メソ構造体膜)が形成される。尚、上記縮重合反応は、後述するように周囲の環境等により、前駆体溶液が基板の上に付与(塗布)されたときから開始・進行することがある。
(3−3−1)前駆体溶液中の酸化物前駆体及びケイ素化合物の加水分解−縮重合反応の進行
前駆体溶液に含まれる酸化物前駆体は、加水分解−重縮合反応により酸化物を形成することで、膜に含まれるメソ構造体のフレームワークを形成する。この反応は、後述する、基板上での界面活性剤分子の自己集合構造の親水部において進行するが、基板に付与する前の前駆体溶液中においても既に反応を開始させてもよい。一般式(β)のケイ素化合物も、この加水分解−重縮合に関与し、酸化物、例えば、Si−O−Si−G0−Si−O−Siで表される部分構造(G0は、一般式(β)が有する有機基Gと同じ)を形成する。この反応の進行は、温度、溶液組成等により制御が可能である。
(3−3−2)分子配向異方性基板上における界面活性剤、酸化物前駆体及びケイ素化合物の自己集合
前駆体溶液を分子配向に異方性を有する基板に塗布した後、前駆体溶液に含まれる揮発性の溶媒等が時間の経過と共に基板上の塗布膜から徐々に失われる。それに伴って塗布膜中の界面活性剤、酸化物前駆体及び一般式(β)のケイ素化合物の濃度が増大する。尚、塗布膜から溶媒等が消失する過程で、酸化物前駆体及び一般式(β)のケイ素化合物の少なくとも一部は、加水分解あるいは縮重合されていると考えられる。
ここで塗布膜中の界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度に達すると、界面活性剤の分子は、疎水基を内側に、親水基を外側にしてミセルを形成することで、規則的なリオトロピック液晶層を形成する。この時、加水分解された酸化物前駆体は、ミセルが形成するリオトロピック液晶層の親水部に集積される。一方、加水分解された一般式(β)のケイ素化合物は、Si−O部位が親水部に、アルキレン鎖が疎水部に存在するようにリオトロピック液晶層のミセル中に取り込まれようとする。これらの分子間相互作用が働く結果、一般式(β)のケイ素化合物は、ミセルの界面付近に比較的選択的に配置されると考えられる。 さらに溶媒の蒸発が進行すると、ミセルの親水部において、加水分解された酸化物前駆体間で重縮合反応が進行し、ミセルの疎水部の周囲に酸化物からなる壁が形成される。また一般式(β)のケイ素化合物も、酸化物との間で、M−O−Si−G−Si−O−M(Mは、ケイ素又は金属元素)という結合(共有結合)を形成しながら重合する。
このようなメカニズムで、メソ構造体を有する膜が基板上に形成される。ここで膜内に形成されるメソ構造体の構造は、酸化物種により、成膜工程終了時に最終的な構造がほぼ決定される場合と、その後の処理等によって成膜工程終了時の構造が大きく変化する場合とがある。ここで後処理とは、例えば、水蒸気中に形成した膜を保持するような処理を表す。ところで、分子配向異方性基板との相互作用と配向構造形成については、図2に記載されている通りである。
(3−3)その他の工程
(3−3−1)界面活性剤の除去工程
本発明の膜を製造する際には、必要に応じて界面活性剤を除去する工程を含ませてもよい。ここで膜中から界面活性剤を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、分解除去や抽出といった方法を用いることができる。前者の例としては、焼成、UV照射、O3による方法が挙げられ、後者の例としては、溶剤や超臨界流体を用いた方法が挙げられる。
ここで焼成によって両親媒性物質である界面活性剤の除去を行うと、多孔質膜からほぼ完全に界面活性剤を除去することができる。尚、焼成の条件(焼成温度、時間)は、膜の内部に含まれる両親媒性物質の種類によって適宜設定することができる。例えば、焼成温度としては、180℃乃至600℃の範囲で設定可能であり、焼成時間としては、15分乃至24時間の範囲で設定可能である。
焼成を利用すると、以上説明した利点がある。ただし焼成を利用すると、膜(酸化物メソ構造体膜)自体の構造規則性を乱す、あるいは構造を崩壊させる可能性がある。これは焼成時の高温環境によって、膜自体の構造が変化するためであると考えられる。これを防止するためには、膜(酸化物メソ構造体膜)を構成するマトリクス、即ち、膜に含まれる孔の壁を強化すること、膜を構成する酸化物の結晶成長を抑制することが有効であると考えられる。これらを実現する具体的な方法として、例えば、膜の形成後に酸化ケイ素等の酸化物の前駆体を反応させ、少なくとも部分的に酸化ケイ素等の酸化物を形成する方法が挙げられる。この方法を用いることで、焼成による界面活性剤の除去を行いながらも、膜(酸化物メソ構造体膜)の構造規則性の乱れを抑制することができる。特に、メソポーラス膜を作製する際には、必要に応じてこの手法を適用することができる。
一方、溶剤抽出法を用いて界面活性剤の除去を行うと、界面活性剤(両親媒性物質)を100%除去することは困難ではあるが、界面活性剤からなる鋳型によって形成された構造を界面活性剤除去後でも保持できるという点で有利である。
本発明の膜の配向方向は、界面活性剤/酸化物前駆体複合体からなるミセルを構成する酸化物前駆体の分子と分子配向異方性基板との相互作用に起因する。つまり、分子レベルの非常に微細な物質間の相互作用が膜の配向形成の駆動力となる。その結果、報告されている集合体とその集合体よりも大きな基板の形状異方性の物理的な関係により形成される配向と比較して、より精密な配向制御が可能となり、分布の狭い配向を形成することができる。また本発明の膜は、比較的凹凸が小さい基板を用いて、所定の配向構造を有する膜として作製することができるため、基板の凹凸に起因する膜の表面粗さを抑制できる点でも有利である。このように、本発明の膜は、膜自体の表面粗さを抑制することができるため、例えば、光学素子への応用が可能である。
次に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例で使用した界面活性剤及び酸化物前駆体を以下に示す。
(1a)界面活性剤:トリブロックコポリマー(エチレンオキサイド(20)プロピレンオキサイド(70)エチレンオキサイド(20):カッコ内は、それぞれのブロックの繰り返し数を表す。以下の説明では、EO(20)PO(70)EO(20)と記載する。)
(1b)酸化物前駆体:テトラエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン
次に、本実施例における膜の製造方法、即ち、一軸配向性酸化ケイ素メソ構造体膜の製造法について説明する。尚、以下の説明は、図1の膜1の製造方法でもある。
(1−1)実験
(1−1−1)分子配向異方性基板を用意する工程
基板10となるシリコンウェハをUVオゾン洗浄した後、このシリコンウェハの上に、後述するポリイミドの前駆体であるポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液をスピンコートにより塗布することで塗布膜を形成した。
次に、200℃で1時間焼成することで、下記繰返し構造を有するポリイミドの薄膜を形成した。
Figure 2015042734
次に、この基板10に対して、基板全体に一方向のラビング処理を施すことで、分子配向異方性基板を作製した。
(1−1−2)膜(酸化物メソ構造体膜)の形成工程
次に、以下に説明する方法により、分子の配向方向に異方性を有する基板(基板10)の上に、膜面内における配向性の規則構造を有する膜を形成した。
(1−1−2−1)前駆体溶液の準備
膜が有するメソポーラスの配向を形成する機能を有する酸化物前駆体(第一のケイ素化合物)として、ビス(トリエトキシシリル)オクタン(メチレン基の繰り返し数:8)を用いた。尚、この第一のケイ素化合物に含まれるケイ素は、形成される膜(メソ構造体膜)に関する数式(1a)に示されるX(一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の総数)として計上されるケイ素原子である。
まず下記表1に示される試薬、溶媒を、下記表1に示される混合比(モル比)にて15分間混合して、混合溶液を調製した。
Figure 2015042734
次に、この混合溶液に、ブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)と、エタノールと、を、それぞれモル比が0.0096、3.5となるように混合して調製したブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)のエタノール溶液を加えた。次に、混合溶液をさらに3時間攪拌することにより、前駆体溶液を調製した。尚、調製した前駆体溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用してもよい。
(1−1−2−2)基板への塗布
ディップコート法を用いて、(1−1−1)の工程で作製したシリコン基板の上に、上記前駆体溶液を塗布した。ここで成膜時の環境は、25℃・40%RHであり、基板の引き上げ速度は、0.5mm/s乃至4mm/sの範囲とした。次に、基板を12時間以上放置することで膜(酸化物メソ構造体膜)を乾燥させた後、後述する評価を行った。
(1−1−3)鋳型の除去工程
酸化物メソ構造体膜が形成されている基板を、トリメチルクロロシランが入っている密閉容器内に入れた後、この密閉容器を80℃に加熱しこの温度(80℃)で13時間保持した。次に、この基板を、エタノールに浸漬し、80℃で8時間保持した。これにより、膜に含まれている鋳型の除去を行った。
(1−1−4)評価工程
エックス線回折装置を使用して、面外XRD及び面内XRDを測定し、これら測定結果に基づいてXRDパターンの記録を行った。
面外XRDの測定は、ブラッグ・ブレンターノ配置におけるXRD測定(一般的にθ/2θスキャンと呼ばれるエックス線回折測定)を行い、回折ピークを与える角度に対応する面間隔を算出した。
面内XRD測定は、基板面に対する入射角度を0.2度に設定し、ラジアルスキャン(2θχ/φスキャン)で面間隔を測定した。次に、面内における周期構造を確認すると共に、測定の際に得られた回折ピークについて、ロッキングカーブ測定(φスキャン)を行うことで同一面内での配向分布を調べた。
また透過モードでのIR測定を行い、メチレン基の配向方向を評価した。
さらに、作製した膜について強度試験を行った。具体的には、手指の接触に対する膜剥がれの有無を確認することで行った。さらに詳細な強度試験として、スクラッチ法を用いた強度試験を行った。具体的には、Surfcoder ET4000(小坂研究所)を用いて、先端径2μmのスタイラスに5μN乃至500μNの荷重をかけながら、0.1mms-1の速度で走引したときに膜破壊が発生する荷重(臨界荷重)を記録した。尚、この膜剥がれの評価を行う際に、以下に説明する比較試料Aも作製した。
(比較試料Aの作製方法)
まず下記表2に示される試薬、溶媒を、下記表2に示す混合比(モル比)で容器内に投入した。
Figure 2015042734
次に、この混合溶液に、ブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)と、エタノールと、を、それぞれモル比が0.015、3.5となるように混合して調製したブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)のエタノール溶液を加えた。次に、混合溶液をさらに3時間攪拌することにより、前駆体溶液を調製した。
次に、(1−1−1)工程で調製したシリコン基板の上に、上記前駆体溶液を塗布し、スピンコート装置を用いて成膜した。このとき、基板の回転速度を5000rpmとし、基板の回転時間を10秒とした。
以上に説明した方法により作製された膜(比較試料A)は、シリンダー状の構造体がハニカム状に充填された構造を持つ酸化物メソ構造体膜であることがわかった。また、そのシリンダー状の構造体の配向方向は膜面内にわたって一定方向(ラビング方向に対して垂直方向)であることが確認された。
(1−2)結果
本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜のプロファイルの一覧を下記表3に示す。尚、下記表3には、比較対象となるサンプルも含まれている。
Figure 2015042734
表3より、メチレン部位(−CH2−)が4つ以上あるアルキルトリエトキシシランを用いて、X/Y1が0.4乃至0.02の範囲で調整された酸化物メソ構造体膜は、配向性の面内規則構造を有することが確認された。また、二次元XRDパターン、断面SEM像により、X/Y1が0.4乃至0.02の範囲で調整された酸化物メソ構造体膜は、すべて配向性の二次元ヘキサゴナル構造を持つことが確認された。さらに、これら酸化物メソ構造体膜の面内XRDのロッキングカーブプロファイルは、ラビング方向に対して0及び180度の方向にピークを示し、そのシリンダー状の構造体の配向方向が、基板のラビング方向に対して並行であることが確認された。さらに、鋳型を除去したメソポーラス膜の偏光IR測定により、基板のラビング方向(シリンダー状の構造体の配向方向と同じ方向)の偏光を入射した時に、メチレン基由来のC−H伸縮に対応するピークが現れた。一方で、ラビング方向に垂直の偏光を入射した際には、このピークはほとんど現れなかった。このことから、酸化物メソ構造体膜に含まれる有機基中のメチレン基が、シリンダー状の構造体の配向方向に従って配向していることが確認された。
図3は、本実施例で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜の面内ロッキングカーブプロファイルを示す図である。尚、図3に示される面内ロッキングカーブプロファイルは、p=0.1(X/Y1=X’/Y’=0.18)の酸化ケイ素メソ構造体膜に係るものである。図3のプロファイルにおいて、横軸はラビング方向に対する入射エックス線の角度φを示し、縦軸はエックス線の反射率Rを示す。図3より、このプロファイルにおいては、ラビング方向に対して0度及び180度の方向にピークが現れた。このことは、本実施例の酸化物メソ構造体膜が、配向性の面内規則構造を有し、膜内に含まれるシリンダー状の構造体の配向方向が、基板のラビング方向に対して並行であることを意味する。
図4は、本実施例で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜の二次元XRDパターンを示す図である。図4(A)及び(B)において、縦軸は、基板面に対して垂直の方向の角度を表し、横軸は、基板面内方向の角度を表す。尚、図4(A)は、X線の入射方向をラビング方向に対して0度としたときのパターンであり、また図4(B)は、X線の入射方向をラビング方向に対して90度としたときのパターンである。これらのパターンから、本実施例で作製されたケイ素メソ構造体膜が、配向性の二次元ヘキサゴナル構造を有し、かつその配向方向が、基板のラビング方向に対して並行であることが確認された。
図5は、本実施例で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜のラビング方向に平行方向の断面における断面SEM像を示す図である。また図6は、本実施例で作製した酸化ケイ素メソ構造体膜のラビング方向に垂直方向の断面における断面SEM像を示す図である。
図5では、シリンダー状の構造の長手方向(側面)の断面が、図6では、このシリンダー状の構造の径方向の断面が確認された。図5及び図6より、本実施例にて作製されたケイ素メソ構造体膜は、配向性の二次元ヘキサゴナル構造を有し、その配向方向が、基板のラビング方向に対して並行であることが確認された。
酸化ケイ素メソ構造体膜の強度試験を行ったところ、pが0.25、0.1、0.01の膜については、いずれも手指の接触に対して膜剥がれは確認されなかった。これに対し、比較試料Aでは、膜剥がれが確認された。また、pが0.1のサンプルについてスクラッチ法による試験を行ったところ、装置限界の500μNの荷重をかけた際にも膜破壊は観測されなかった。一方、比較試料Aについても同様の試験を行ったところ、10μNで膜の破壊が生じた。
以上の結果より、以下のことが確認できた。
(A)酸化物メソ構造体膜を構成する元素のうち、ケイ素の総数(Y1)に対して、4以上のメチレン基を含む有機基と結合したケイ素の総数(X)が、原子数比(X/Y)で0.02以上0.4以下であれば本発明の効果が発現することが確認できた。
(B)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、シリンダー状の構造体がハニカム状に充填された構造を持つ酸化物メソ構造体膜であることが確認できた。そして、そのシリンダー状の構造体の配向方向は膜面内にわたって一定方向であることが確認できた。
(C)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、ブラッグ・ブレンターノ配置におけるエックス線回折測定において、格子面間隔d=8.0nm以上に相当する角度領域にブラッグ反射のピークを示すことが確認できた。
(D)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、分子配向異方性基板の上に作製されているため、膜に含まれるメソポーラスが、シリンダー状の構造体の配向方向に配向していることが確認できた。
(E)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、膜に含まれる有機基中のアルキレン基(オクタニレン基)が前記シリンダー状の構造体の配向方向に沿って配向していることが確認できた。
(F)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、膜に含まれるシリンダー状の構造体の配向方向が、分子配向異方性基板の異方性を示す方向に対して並行であることが確認できた。
(G)本実施例で説明した方法によって作製された酸化物メソ構造体膜は、膜面内における配向性の規則構造を有する酸化物メソ構造体膜であることが確認できた。
(H)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、比較試料Aに対し50倍以上の高い強度を有することが確認できた。
(実施例2)
本実施例で使用した界面活性剤及び酸化物前駆体を以下に示す。
(1a)界面活性剤:トリブロックコポリマーEO(20)PO(70)EO(20)
(1b)酸化物前駆体:テトラエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン
次に、本実施例における膜の製造方法、即ち、一軸配向性酸化ケイ素メソ構造体膜の製造法について説明する。尚、以下の説明は、図1の膜1の製造方法でもある。
(2−1)実験
(2−1−1)分子配向異方性基板を用意する工程
実施例1の(1−1−1)と同様の方法により、分子配向異方性基板を用意した。
(2−1−2)膜(酸化物メソ構造体膜)の形成工程
次に、以下に説明する方法により、分子の配向方向に異方性を有する基板(基板10)の上に、膜面内における配向性の規則構造を有する膜を形成した。
(2−1−2−1)前駆体溶液の準備
膜が有するメソポーラスの配向を形成する機能を有する酸化物前駆体(第一のケイ素化合物)として、ビス(トリエトキシシリル)ブタン(メチレン基の繰り返し数:4)を用いた。尚、この第一のケイ素化合物に含まれるケイ素は、形成される膜(メソ構造体膜)に関する数式(1a)に示されるX(一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の原子数)として計上されるケイ素原子である。また比較サンプルとして、第一のケイ素化合物がビス(トリエトキシシリル)エタン(メチレン基の繰り返し数:2)であるサンプルについても併せて記載する。
まず下記表4に示される試薬、溶媒を、下記表4に示す混合比(モル比)にて15分間混合して、混合溶液を調製した。
Figure 2015042734
次に、この混合溶液に、ブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)と、エタノールと、を、それぞれモル比が0.0096、3.5となるように混合して調製したブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)のエタノール溶液を加えた。次に、混合溶液をさらに3時間攪拌することにより、前駆体溶液を調製した。尚、調製した前駆体溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用してもよい。
(2−1−2−2)基板への塗布
ディップコート法を用いて、(2−1−1)の工程で作製したシリコン基板の上に、上記前駆体溶液を塗布した。ここで成膜時の環境は、25℃・40%RHであり、基板の引き上げ速度は、4mm/sとした。次に、基板を12時間以上放置することで膜(酸化物メソ構造体膜)を乾燥させた後、後述する評価を行った。
(2−1−3)評価工程
実施例1の(1−1−4)と同様の手法を用いて評価を行った。
(2−2)結果
本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜のプロファイルの一覧を下記表5に示す。尚、下記表5には、比較対象となるサンプルも含まれている。
Figure 2015042734
表5より、ビス(トリメトキシシリル)ブタンを用いて調製した酸化物メソ構造体膜は、配向性の面内規則構造を有することが確認できた。さらに、二次元XRDパターン、により、本実施例の酸化物メソ構造体膜は、配向性の二次元ヘキサゴナル構造を持つことが確認できた。また本実施例の酸化物メソ構造体膜の面内XRDのロッキングカーブプロファイルは、ラビング方向に対して0度及び180度の方向にピークを示し、そのシリンダー状の構造体の配向方向が、基板のラビング方向に対して並行であることが確認できた。 以上の結果より、以下のことが確認できた。
(A)酸化物メソ構造体膜に含まれる有機基(ケイ素原子とケイ素原子とを連結する複数のメチレン基が連結してなるアルキレン基)として、少なくとも4つのメチレン基が連結してなる有機基が妥当であることが確認できた。
(B)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜(メチレン基の繰り返し数が4である膜)は、シリンダー状の構造体がハニカム状に充填された構造を持つ酸化物メソ構造体膜であることが確認できた。そして、そのシリンダー状の構造体の配向方向は膜面内にわたって一定方向であることが確認できた。これに対し、メチレン基の繰り返し数が2である膜(比較サンプル)は、膜が有するシリンダー状の構造体の配向方向は膜面内にわたって一定方向でないことが確認できた。
(C)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、ブラッグ・ブレンターノ配置におけるエックス線回折測定において、格子面間隔d=8.7nmに相当する角度領域にブラッグ反射のピークを示すことが確認できた。
(D)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、分子配向異方性基板の上に作製されているため、膜に含まれるメソポーラスが、シリンダー状の構造体の配向方向に配向していることが確認できた。
(E)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、膜に含まれるシリンダー状の構造体の配向方向が、分子配向異方性基板の異方性を示す方向に対して並行であることが確認できた。
(F)本実施例で説明した方法によって作製された酸化物メソ構造体膜は、膜面内における配向性の規則構造を有する酸化物メソ構造体膜であることが確認できた。
(実施例3)
本実施例で使用した界面活性剤及び酸化物前駆体を以下に示す。
(1a)界面活性剤:トリブロックコポリマーEO(20)PO(70)EO(20)
(1b)酸化物前駆体:チタンテトライソプロポキサイド、ビス(トリクロロシリル)ドデカン
次に、本実施例における膜の製造方法、即ち、一軸配向性酸化ケイ素メソ構造体膜の製造法について説明する。尚、以下の説明は、図1の膜1の製造方法でもある。
(3−1)実験
(3−1−1)分子配向異方性基板を用意する工程
実施例1の(1−1−1)と同様の方法により、分子配向異方性基板を用意した。
(3−1−2)膜(酸化物メソ構造体膜)の形成工程
次に、以下に説明する方法により、分子の配向方向に異方性を有する基板(基板10)の上に、膜面内における配向性の規則構造を有する膜を形成した。
(3−1−2−1)前駆体溶液の準備
膜が有するメソポーラスの配向を形成する機能を有する酸化物前駆体(第一のケイ素化合物)として、ビス(トリエトキシシリル)ドデカン(メチレン基の繰り返し数:12)を用いた。尚、この第一のケイ素化合物に含まれるケイ素は、形成される膜(メソ構造体膜)に関する数式(1b)に示されるX(一般式(β)に示される部分構造を構成するケイ素原子の原子数)として計上されるケイ素原子である。
まず下記表6に示される試薬、溶媒を、下記表6に示す混合比(モル比)にて5分間混合して、混合溶液を調製した。
Figure 2015042734
次に、この混合溶液に、ブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)と、エタノールと、を、それぞれモル比が0.0021、14となるように混合して調製したブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)のエタノール溶液を加えた。次に、混合溶液をさらに3時間攪拌することにより、前駆体溶液を調製した。尚、調製した前駆体溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用してもよい。
(3−1−2−2)基板への塗布
ディップコート法を用いて、(3−1−1)の工程で作製したシリコン基板の上に、上記前駆体溶液を塗布した。ここで成膜時の環境は、25℃・40%RHであり、基板の引き上げ速度は、2mm/sとした。次に、基板を12時間以上放置することで膜(酸化物メソ構造体膜)を乾燥させた後、後述する評価を行った。
(3−1−3)評価工程
実施例1の(1−1−4)と同様の手法を用いて評価を行った。
(3−2)結果
本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜のプロファイルの一覧を下記表7に示す。
Figure 2015042734
表7より、ビス(トリメトキシシリル)ドデカンを用いて調製した酸化物メソ構造体膜は、配向性の面内規則構造を有することが確認できた。さらに、二次元XRDパターン、により、本実施例の酸化物メソ構造体膜は、配向性の二次元ヘキサゴナル構造を持つことが確認できた。また本実施例の酸化物メソ構造体膜の面内XRDのロッキングカーブプロファイルは、ラビング方向に対して0度及び180度の方向にピークを示し、そのシリンダー状の構造体の配向方向が、基板のラビング方向に対して並行であることが確認できた。
以上の結果より、以下のことが確認できた。
(A)酸化物メソ構造体膜に含まれる有機基(ケイ素原子とケイ素原子とを連結する複数のメチレン基が連結してなるアルキレン基)として、12のメチレン基が連結してなる有機基も含まれることが確認できた。
(B)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜(メチレン基の繰り返し数が12である膜)は、シリンダー状の構造体がハニカム状に充填された構造を持つ酸化物メソ構造体膜であることが確認できた。そして、そのシリンダー状の構造体の配向方向は膜面内にわたって一定方向であることが確認できた。
(C)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、ブラッグ・ブレンターノ配置におけるエックス線回折測定において、格子面間隔d=10nmに相当する角度領域にブラッグ反射のピークを示すことが確認できた。
(D)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、分子配向異方性基板の上に作製されているため、膜に含まれるメソポーラスが、シリンダー状の構造体の配向方向に配向していることが確認できた。
(E)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、膜に含まれるシリンダー状の構造体の配向方向が、分子配向異方性基板の異方性を示す方向に対して並行であることが確認できた。
(F)本実施例で説明した方法によって作製された酸化物メソ構造体膜は、膜面内における配向性の規則構造を有する酸化物メソ構造体膜であることが確認できた。
(実施例4)
本実施例で使用した界面活性剤及び酸化物前駆体を以下に示す。
(1a)界面活性剤:ジブロックコポリマー(エチレンオキサイド(98)プロピレンオキサイド(60):以降、EO(98)PO(60)と記載する。)
(1b)酸化物前駆体:チタンテトライソプロポキサイド、ビス(トリクロロシリル)オクタン
次に、本実施例における膜の製造方法、即ち、一軸配向性酸化ケイ素メソ構造体膜の製造法について説明する。尚、以下の説明は、図1の膜1の製造方法でもある。
(4−1)実験
(4−1−1)分子配向異方性基板を用意する工程
実施例1の(1−1−1)と同様の方法により、分子配向異方性基板を用意した。
(4−1−2)膜(酸化物メソ構造体膜)の形成工程
次に、以下に説明する方法により、分子の配向方向に異方性を有する基板(基板10)の上に、膜面内における配向性の規則構造を有する膜を形成した。
(4−1−2−1)前駆体溶液の準備
膜が有するメソポーラスの配向を形成する機能を有する酸化物前駆体(第一のケイ素化合物)として、ビス(トリエトキシシリル)オクタン(メチレン基の繰り返し数:8)を用いた。尚、この第一のケイ素化合物に含まれるケイ素は、形成される膜(メソ構造体膜)に関する数式(1a)に示されるX(一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の原子数)として計上されるケイ素原子である。
まず下記表8に示される試薬、溶媒を、下記表8に示す混合比(モル比)にて3時間混合して、混合溶液を調製した。
Figure 2015042734
尚、調製した前駆体溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用してもよい。
(4−1−2−2)基板への塗布
スピンコート法を用いて、(4−1−1)の工程で作製したシリコン基板の上に、上記前駆体溶液を塗布した。ここで成膜時の環境は、25℃・40%RHであり、基板の回転数を5000rpmとし、回転時間を10秒とした。次に、基板を12時間以上放置することで膜(酸化物メソ構造体膜)を乾燥させた後、後述する評価を行った。
(4−1−3)評価工程
実施例1の(1−1−4)と同様の手法を用いて評価を行った。
(4−2)結果
本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜のプロファイルの一覧を下記表9に示す。
Figure 2015042734
表9より、ビス(トリメトキシシリル)オクタンを用いて調製した酸化物メソ構造体膜は、配向性の面内規則構造を有することが確認できた。さらに、二次元XRDパターン、により、本実施例の酸化物メソ構造体膜は、配向性の二次元ヘキサゴナル構造を持つことが確認できた。また本実施例の酸化物メソ構造体膜の面内XRDのロッキングカーブプロファイルは、ラビング方向に対して0度及び180度の方向にピークを示し、そのシリンダー状の構造体の配向方向が、基板のラビング方向に対して並行であることが確認できた。
以上の結果より、以下のことが確認できた。
(A)本実施例の酸化物メソ構造体膜は、ケイ素原子とケイ素原子との間に連結される8個のメチレン基からなる有機基(オクタニレン基)を有することが確認できた。
(B)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜(メチレン基の繰り返し数が8である膜)は、シリンダー状の構造体がハニカム状に充填された構造を持つ酸化物メソ構造体膜であることが確認できた。そして、そのシリンダー状の構造体の配向方向は膜面内にわたって一定方向であることが確認できた。
(C)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、ブラッグ・ブレンターノ配置におけるエックス線回折測定において、格子面間隔d=12nmに相当する角度領域にブラッグ反射のピークを示すことが確認できた。
(D)本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、分子配向異方性基板の上に作製されているため、膜に含まれるメソポーラスが、シリンダー状の構造体の配向方向に配向していることが確認できた。
(F)本実施例で説明した方法によって作製された酸化物メソ構造体膜は、膜面内における配向性の規則構造を有する酸化物メソ構造体膜であることが確認できた。
(実施例5)
実施例1において鋳型の除去の方法を以下に説明する方法に変更した以外は、実施例1と同様の方法により一軸配向性酸化ケイ素メソ構造体膜を作製した。尚、本実施例で作製した膜は、p=0.1の一軸配向性酸化ケイ素メソ構造体膜である。
(5−1−1)鋳型の除去工程
p=0.1の試料となる膜を実施例1と同様の方法により作製し、次いでこの膜を、大気中350℃で1時間焼成することにより膜に含まれている鋳型の除去を行った。
(5−1−2)評価工程
エックス線回折装置を使用して、面外XRD及び面内XRDを測定し、これら測定結果
に基づいてXRDパターンの記録を行った。また透過モードでのIR測定を行い鋳型の除去を確認した。
(5−2)結果
図7は、本実施例で作製した酸化ケイ素メソポーラス膜(焼成後の試料)の二次元XRDパターンを示す図である。図7(A)及び(B)において、縦軸は、基板面に対して垂直の方向の角度を表し、横軸は、基板面内方向の角度を表す。尚、図7(A)は、X線の入射方向をラビング方向に対して0度としたときのパターンであり、また図7(B)は、X線の入射方向をラビング方向に対して90度としたときのパターンである。これらのパターンから、本実施例で作製されたメソポーラス膜は、焼成前と同様、明確な配向性の二次元ヘキサゴナル構造を保持し、かつその配向方向が、基板のラビング方向に対して並行であることが確認された。図8は、本実施例で作製した酸化ケイ素メソポーラス膜の面内XRDロッキングカーブプロファイルを示す図である。図8のプロファイルにおいて、横軸はラビング方向に対する入射エックス線の角度φを示し、縦軸はエックス線の強度Iを示す。このプロファイルより、本実施例で作製されたメソポーラス膜は、焼成前と同様にラビング方向に対して0度及び180度の方向にシャープなピークが現れた。ここで本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜のプロファイルの一覧を下記表10に示す。
Figure 2015042734
表10より、ビス(トリエトキシシリル)オクタンを用いて、X/Y1が0.1で作製された酸化物メソ構造体膜は、焼成工程においてもほとんど面内規則構造が低下しないことが確認された。また、IRスペクトルからは、焼成前には、存在した有機物に帰属されるピークが消失し、鋳型の除去、ビス(トリエトキシシリル)オクタンに由来するアルキル基が焼成工程において除去されていることが確認された。
以上の結果より、本実施例で作製された酸化物メソ構造体膜は、焼成工程における構造規則性の低下に対して高い耐久性を有することが確認できた。
本発明の膜(酸化物メソ構造体膜)は、主に、基板上に設けられる膜であるが、配向性や強度が良好であり、一定の構造周期を有する構造体(メソポーラス等)を有する。このため、例えば、この構造体に発光材料を導入すると偏光発光素子等のように、材料の異方性を利用したデバイスを作製することができる。
1:膜(酸化物メソ構造体膜)、10:基板、11:マトリクス部、12:メソ構造体部、20:部分構造、21:有機基、22:ケイ素原子、30:(基板の)配向方向

Claims (14)

  1. メソ構造を有する膜であって、
    前記膜が、ケイ素原子と、4以上のメチレン基からなる有機基と、を有する酸化物膜であり、
    前記膜が、柱状の構造体がハニカム状に配置されたメソ構造を有し、
    前記柱状の構造体が一方向に配向しており、
    前記膜が、下記一般式(α)に示される部分構造
    Figure 2015042734
    (Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
    を有し、
    前記膜に含まれ、かつ前記一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の総数Xと、前記膜に含まれるケイ素原子の総数Y1と、の間で、下記一般式(1a)が満たされることを特徴とする、膜。
    0.02≦X/Y1≦0.4 (1a)
  2. メソ構造を有する膜であって、
    前記膜が、ケイ素原子と、金属原子と、4以上のメチレン基からなる有機基と、を有する酸化物膜であり、
    前記膜が、柱状の構造体がハニカム状に配置されたメソ構造を有し、
    前記柱状の構造体が一方向に配向しており、
    前記膜が、下記一般式(α)に示される部分構造
    Figure 2015042734
    (Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
    を有し、
    前記膜に含まれ、かつ前記一般式(α)に示される部分構造を構成するケイ素原子の総数Xと、前記膜に含まれるケイ素原子と金属原子との総数Y2と、の間で、下記一般式(1b)が満たされることを特徴とする、膜。
    0.02≦X/Y2≦0.4 (1b)
  3. 前記メソ構造を有する膜がメソポーラス膜である特徴とする、請求項1又は2に記載の膜。
  4. 前記メソ構造を有する膜が酸化物メソ構造体膜である特徴とする、請求項1又は2に記載の膜。
  5. 前記酸化物メソ構造体膜に、有機材料、無機材料又は有機材料と無機材料とのハイブリッド材料からなる充填物が含まれることを特徴とする、請求項4に記載の膜。
  6. 前記膜が、基板面内における分子の配向方向に異方性を有する基板の上に設けられていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の膜。
  7. 前記有機基が、前記メソポーラスの配向方向に配向していることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の膜。
  8. 前記柱状の構造体の配向方向が、前記基板の配向方向に対して平行であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の膜。
  9. ブラッグ・ブレンターノ配置におけるエックス線回折測定において、
    面間隔8nm以上に対応する角度領域に少なくとも一つのピークを示すことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の膜。
  10. 基板面内における分子の配向方向に異方性を有する基板の上において、下記一般式(β)に示されるケイ素化合物
    Figure 2015042734
    (A乃至Fは、それぞれアルコキシ基又は塩素、臭素及びヨウ素から選択される置換基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
    を含む酸化物前駆体を、界面活性剤の存在下にて縮重合反応させることで、膜面内における配向性の規則構造を有する膜を形成する工程を有し、
    前記膜に含まれ、かつ前記一般式(α)に示される部分構造
    Figure 2015042734
    を構成するケイ素原子の総数Xと、前記膜に含まれるケイ素原子の総数Y1と、の間で、下記一般式(1a)が満たされることを特徴とする、膜の製造方法。
    0.02≦X/Y1≦0.4 (1a)
  11. 基板面内における分子の配向方向に異方性を有する基板の上において、下記一般式(β)に示されるケイ素化合物
    Figure 2015042734
    (A乃至Fは、それぞれアルコキシ基又は塩素、臭素及びヨウ素から選択される置換基を表し、同一であっても異なっていてもよい。Gは、連続した4以上のメチレン基を含む有機基を表す。)
    を含む酸化物前駆体を、界面活性剤の存在下において縮重合反応させることで、膜面内における配向性の規則構造を有する膜を形成する工程を有し、
    前記膜に含まれ、かつ前記一般式(α)に示される部分構造
    Figure 2015042734
    を構成するケイ素原子の総数Xと、前記膜に含まれるケイ素原子及び金属原子の総数Y2と、の間で、下記一般式(1b)が満たされることを特徴とする、膜の製造方法。
    0.02≦X/Y2≦0.4 (1b)
  12. 前記基板がラビング基板であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の膜の製造方法。
  13. 前記界面活性剤がトリブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の膜の製造方法。
  14. 前記トリブロックコポリマーが、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項13に記載の膜の製造方法。
JP2014125195A 2013-07-26 2014-06-18 膜及びその製造方法 Pending JP2015042734A (ja)

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