JP2015038229A - 金属膜の形成方法並びに無電解メッキ液 - Google Patents
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Abstract
【課題】 水と加圧二酸化炭素とを含む混合溶液を用いて所定の処理を行う方法において、より効率よく且つ安定して所定の処理が行える方法を提供する。【解決手段】 被処理体を処理する方法であって、水、加圧二酸化炭素及び腐食防止剤を含む混合溶液を調製することと、調製された混合溶液を被処理体に接触させることとを含む処理方法を提供することにより、より効率よく且つ安定して所定の処理を行う。【選択図】 図3
Description
本発明は、水と加圧二酸化炭素とを含む混合溶液を用いて被処理体に所定の処理を行う方法及びそれに用いられる溶液に関し、特に、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液中で無電解メッキ処理を行う方法に関する。
近年、水と加圧二酸化炭素とを含む混合溶液中で被処理体に何らかの処理を行う方法が様々な分野で適用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、水と加圧二酸化炭素とを含む混合溶液中でリポソームが分散した懸濁液を生成する方法が開示されている。具体的には、まず、水溶液中に脂質(被処理体)を界面活性剤として添加し、さらに、炭酸ガスを導入してCO2/H2Oのエマルジョンを得る。次いで、圧力容器中から炭酸ガスを抜くことにより、リポソームが分散した懸濁液を生成している。
また、水と加圧二酸化炭素とを含む混合溶液を用いた処理方法の一つとして、水が主成分である無電解メッキ液に超臨界二酸化炭素を含ませて無電解メッキを行う方法が提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2参照)。これらの文献では、無電解メッキ液と超臨界二酸化炭素とを、界面活性剤を用いて相溶させ、攪拌によりエマルジョン(乳濁状態)を形成し、該エマルジョン中でメッキ反応を起こす無電解メッキ方法が開示されている。通常、電解メッキや無電解メッキにおいては、メッキ反応中に発生する水素ガスがメッキ対象物(被処理体)の表面に滞留して、メッキ膜にピンホールの発生させる要因となる。しかしながら、上記文献に開示されている無電解メッキ法のように超臨界二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用いた場合には、超臨界二酸化炭素は水素を溶解するので、上記メッキ反応中に発生する水素が取り除かれ、それによりピンホールが発生し難くなり、硬度の高い無電解メッキ膜が得られるとされる。
上述のように、現在、様々な分野で、水と加圧二酸化炭素とを含む混合溶液を用いて所定の処理を行うことが検討されており、その最適化が要望されている。
本発明は、上記要望に応えるべくなされたものであり、本発明の目的は、水と加圧二酸化炭素とを含む混合溶液を用いて所定の処理を行う方法において、より効率よく且つ安定して所定の処理が行える方法及びその溶液を提供することである。また、本発明の別の目的は、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用いて基材上にメッキ膜を形成する方法において、効率よく且つ安定して基材上にメッキ膜が形成可能な方法を提供することである。
本発明の第1の態様に従えば、被処理体を処理する方法であって、水、加圧二酸化炭素及び腐食防止剤を含む混合溶液を調製することと、調製された混合溶液を被処理体に接触させることとを含む処理方法が提供される。
本明細書でいう、用語「処理」は、加水分解、脱水反応、付加重合、縮合重合(縮重合)、電解メッキ、無電解メッキ等の化学反応のみならず、混合、分離、精製、抽出、溶解、浸透等の物理的な処理も含む意味である。また、用語「被処理体」は、固体物のみならず、液状物質(液体)も含む意味である。
また、本明細書でいう「加圧二酸化炭素」とは、加圧された二酸化炭素のことをいう。なお、ここでいう「加圧二酸化炭素」には、超臨界状態の二酸化炭素のみならず、加圧された液状二酸化炭素及び加圧された二酸化炭素ガスも含む意味である。また、加圧二酸化炭素の圧力は、臨界点(超臨界状態)以上に加圧された二酸化炭素のみならず、臨界点より低圧力で加圧された二酸化炭素も含まれる。好ましくは5MPa以上に加圧された二酸化炭素のことをいう。
本発明者らが、水と加圧二酸化炭素とを含む混合溶液を用いて所定の処理を行う方法、例えば、非特許文献2に開示されているような超臨界二酸化炭素を含む無電解メッキ液(主成分は水)を用いて無電解メッキを行う方法について、検証実験を重ねたところ、水及び加圧二酸化炭素の混合溶液には、金属を腐食及び溶解させる作用があることが分かった。具体的には、金属製の処理容器の内壁が腐食したり、混合溶液に浸漬した金属片(被処理体)の金属成分が溶出したりすることが分かった。ここで、本発明者らが行った検証実験について詳細に説明する。
本発明者らは非特許文献2に開示されている実験手法に従い、金属製基材上にNi−Pのメッキ膜を形成する方法を追試実験した。その結果、上記従来の超臨界二酸化炭素を用いた無電解メッキ方法では、無電解メッキの析出反応(析出レート)が低下し、無電解ニッケルメッキ膜が殆ど成長しなかった。このような現象は、工業化製品への応用、大量生産の大きな妨げとなる。
この要因を解明するため、次のような検証実験を行った。まず、金属製基材として、Ni板、Cu板、Al板及び常圧で従来のNi−P金属膜を表面にコーティングした基材を用意した。そして、無電解メッキ液の代わりにイオン交換水を用い、加圧二酸化炭素を含むイオン交換水に上記金属製基材を浸漬し、イオン交換水を攪拌した。より具体的には、まず、内容積100ml、SUS316L製の高圧容器に、界面活性剤(東信油化工業製 トーレックス)を5wt%添加したイオン交換水を50ml仕込み、次いで1×2cmに切り出した種々の金属製基材を高圧容器上部より吊るしてイオン交換水に浸漬した。次いで、容器内を密閉し、容器内部を80℃に温調した。次いで、圧力15MPaの加圧二酸化炭素を高圧容器内に導入し、攪拌子を500rpmで回転させ、加圧二酸化炭素とイオン交換水を混合した。この状態を3時間保持した。その後、攪拌を停止し、加圧二酸化炭素を減圧排出して、容器より金属製基材を取り出し、金属製基材の質量の変化を測定した。その結果を下記表1に示した。
表1から明らかなように、加圧二酸化炭素を含むイオン交換水に上記金属製基材を浸漬してイオン交換水を攪拌することにより、全ての基材において質量が減少することが分かった。また、基材の概観を観察したところ、一部の材料では腐食が発生していた。なお、処理後のイオン交換水の溶液中には金属片は確認されなかった。さらに、本発明者らは、イオン交換水を水道水に変えて上記検証実験を行ったが、この場合も同様の結果が得られた。以上の結果から、加圧二酸化炭素と水との混合加圧流体が、金属を溶解及び腐食させる高い酸化能力を有することが分かった。
加圧二酸化炭素と水との混合加圧流体におけるこの酸化作用は、水を主成分とする無電解メッキ液に加圧二酸化炭素を混合させた溶液においても同様に起こる。本発明者らが非特許文献2に開示されている技術を追試実験した際に、無電解メッキの析出反応(析出レート)が低下し、無電解ニッケルメッキ膜が殆ど成長しなかったのは、加圧二酸化炭素と水との混合加圧流体の酸化作用によるものと推測される。なお、非特許文献2では、メッキ膜の成長反応が基材の溶出反応よりわずかに勝るため、遅い析出レートで反応が進行するものと推測される。
また、上記検証実験において、高圧容器の内壁を観察したところ、腐食が発生していることが分かった。非特許文献2で開示されているような技術では、処理容器に加圧二酸化炭素を導入するので、従来の無電解メッキ法とは異なり、処理容器に樹脂製の容器を用いることができない。高圧容器つまり耐圧の要求される金属製容器内で反応させる必要がある。しかしながら、処理容器に金属製容器を用いた場合に、本発明者らの検証実験では、上述のように、加圧二酸化炭素及び水を含む混合加圧流体の酸化作用により、容器内に腐食が発生するという問題が生じた。このような現象が起こると、容器耐久性が低くなり、コストが増大するという問題が生じるので、工業化、大量生産化において大きな障害となる。また。金型へのメッキを目的とした場合、厚膜(100μm以上)の金属膜を金型表面に形成する必要があるので、メッキ反応時間(処理時間)も非常に長くなる。そのような処理時間が長くなる場合、容器腐食により生成された腐食物がメッキ膜へ混入する可能性が高くなる。腐食物がメッキ膜へ混入すると、金型表面にピンホールが発生し、金型としては致命的な欠陥となり得る。
上述した加圧二酸化炭素と水とを含む混合液体による酸化作用の問題は、メッキ反応に限定されず、それ以外の種々の処理を加圧二酸化炭素と水とを含む混合液体を用いて行う場合に発生する課題であり、その工業化には大きな障害となる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の処理方法では、加圧二酸化炭素及び水を含む混合溶液中にさらに腐食防止剤を含ませた混合溶液を用いて処理を行うので、上述した金属製容器の内壁及び金属片の腐食及び溶解が防止され、安定して効率よく所定の処理を行うことができる。実際、上記検証実験で用いた加圧二酸化炭素とイオン交換水との混合溶液中に、腐食防止剤として次亜リン酸ナトリウム50g/L添加し、上記と同様の実験を試みたところ、いずれの金属製基材においてもその質量の変化が見られず、容器の腐食も見られなかった。
本発明の処理方法では、上記腐食防止剤が次亜リン酸ナトリウムであることが好ましい。なお、本発明はこれに限定されず、腐食防止剤として、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム(水素化ボロン)、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、シュウ酸、硫化水素、二酸化硫黄、ヨウ化カリウム、過酸化水素等が用い得る。また、本発明の処理方法では、上記加圧二酸化炭素が超臨界状態の二酸化炭素であることが好ましい。
本発明の処理方法では、上記被処理体が表面に金属を有する基材であることが好ましい。また、本発明の処理方法では、上記処理を金属製容器内で行うことが好ましい。
本発明の第2の態様に従えば、基材上に金属膜を形成する方法であって、還元剤、金属塩、腐食防止剤及び加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用意することと、上記無電解メッキ液を上記基材に接触させて、上記基材上に上記金属膜を形成することとを含み、上記無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比が5.3〜18であることを特徴とする金属膜の形成方法が提供される。
上述のように、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用いたメッキ法においては、加圧二酸化炭素と水とを含む混合溶液の酸化作用により、被メッキ対象物(基材)の素地金属の溶解及び腐食が発生するとともに、容器内壁の腐食が発生し、サビなどの異物が被メッキ対象物(基材)に混入する恐れがある。
本発明の金属膜の形成方法は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明者らの検証実験によれば、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液にさらに腐食防止剤を添加し、無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比、すなわち、(還元剤+腐食防止剤)/金属塩のモル比が5.3〜18となるように、無電解メッキ液を調製することにより、処理容器の内壁の腐食を防止しつつ且つ浴の安定性を保ちながら良好な析出レートで金属膜を形成することができることが分かった。より好ましくは、(還元剤+腐食防止剤)/金属塩のモル比を5.5〜15にすることが好ましい。なお、本発明における無電解メッキ法とは、外部電源を用いることなく触媒活性を有する基材表面で、還元剤を用いて金属皮膜を析出する方法のことである。
本発明の第3の態様に従えば、基材上に金属膜を形成する方法であって、還元剤及び金属塩を含む無電解メッキ液を用意することと、加圧二酸化炭素を腐食防止剤に接触させることと、上記腐食防止剤に接触した上記加圧二酸化炭素を上記無電解メッキ液に導入することと、上記加圧二酸化炭素が導入された無電解メッキ液を上記基材に接触させて、上記基材上に上記金属膜を形成することとを含む金属膜の形成方法が提供される。本発明者らの検証実験によれば、上記第3の態様に従う金属膜の形成方法によっても、処理容器の内壁の腐食を防止しつつ且つ浴の安定性を保ちながら良好な析出レートで金属膜を形成することができることが分かった。
本発明の金属膜の形成方法では、金属製容器内で上記基材上に金属膜を形成することが好ましい。また、本発明の金属膜の形成方法では、上記基材を成形した金型内で、上記基材上に金属膜を形成することがこのましい。この場合、基材の成形工程から金属膜の形成工程まで連続的に行うことができるので、金属膜の形成方法がより簡易になる。
メッキ皮膜(金属膜)となる金属としては、Ni,Co,Pd,Cu,Ag,Au,Pt,Sn等を用いることができ、メッキ液中における硫酸ニッケル、塩化パラジウム、硫酸銅等の金属塩から供給される。還元剤としては、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム(ホスフィン酸ナトリウム)、ヒドラジン、ホルマリン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、三塩化チタン等を用いることができる。また、その他、メッキ液には、公知の各種添加剤を用いることができる。例えば、メッキ液中で金属イオンと安定な可溶性錯体を形成するクエン酸、酢酸、コハク酸、乳酸等の錯化剤を添加することができる。あるいは、メッキ液の安定剤として、チオ尿素等の硫黄化合物や鉛イオン、光沢剤、湿潤剤(界面活性剤)を添加することもできる。
本発明の金属膜の形成方法では、予め、無電解メッキ液のpH(水素イオン指数)を好適な値より高めに調整しておいてもよい。この場合、高密度の炭酸ガスを無電解メッキ液に混入することにより、無電解メッキ液のpHが低下して好適な値となり、良好なメッキ膜の析出速度が得られる。それゆえ、この方法を用いた場合には、メッキ膜の析出速度が低下する等の問題を防止することができる。
本発明の金属膜の形成方法では、無電解メッキ液に界面活性剤が含まれることが望ましい。界面活性剤を無電解メッキ液に含ませることにより、超臨界二酸化炭素等の加圧二酸化炭素と水溶液であるメッキ液との相溶性を向上させ、エマルジョンの形成を助長することができる。界面活性剤の種類としては、公知の、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性界面活性剤のうち、少なくも1種類以上を選択して用いることが望ましい。特に、超臨界二酸化炭素と水のエマルジョンを形成するのに有効であると確認されている各種界面活性剤を用いることが望ましい。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)−ポリプロピレンオキシド(PPO)のブロックコポリマー、アンモニウムカルボキシレートパーフルオロポリエーテル(PFPE)、PEO−ポリブチレンオキシド(PBO)のブロックコポリマー、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル等を用いることができる。
本発明の金属膜の形成方法では、無電解メッキ液に混合させる加圧二酸化炭素の圧力は7.38MPa以上30MPa以下の超臨界二酸化炭素であることが望ましい。二酸化炭素の臨界圧力は7.38MPaであるが、それ以上の超臨界状態であると密度が高くなり、メッキ液と相溶しやすくなるので好適である。また、30MPa以上に高くなると、二酸化炭素の使用量が過剰に多くなる、高圧容器のシールが困難になる等の不具合が生じるので望ましくない。
本発明の第4の態様に従えば、水と、加圧二酸化炭素と、腐食防止剤とを含む溶液が提供される。また、上記腐食防止剤が次亜リン酸ナトリウムであることが好ましい。
本発明の処理方法及び溶液によれば、水及び加圧二酸化炭素を含む混合溶液にさらに腐食防止剤を添加しているので、水及び加圧二酸化炭素を含む混合溶液の
酸化作用(金属製の処理容器の内壁や混合溶液中に浸漬された金属片の腐食及び溶解)が抑制され、安定して効率よく所定の処理を行うことができる。
酸化作用(金属製の処理容器の内壁や混合溶液中に浸漬された金属片の腐食及び溶解)が抑制され、安定して効率よく所定の処理を行うことができる。
また、本発明の金属膜の形成方法によれば、無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比((還元剤+腐食防止剤)/金属塩)が5.3〜18となるように、無電解メッキ液を調製することにより、処理容器の内壁の腐食を防止しつつ且つ良好な析出レートで金属膜を形成することができる。
以下、本発明の処理方法の実施例について、図面を参照しながら具体的に説明するが、以下に述べる実施例は本発明の好適な具体例であり、本発明はこれに限定されない。
実施例1では、HPM38(SUS420J2改良鋼または焼き入れ焼き戻し鋼)素地の光学部材成形用金型の作製時に、加圧二酸化炭素及び腐食防止剤を含む無電解メッキ液を用いて、金型基材(被処理体)の表面にメッキ膜を形成した。この例では、無電解メッキ液として奥野製薬社製ニコロンDKを用い、その無電解メッキ液に添加する腐食防止剤としては次亜リン酸ナトリウムを用いた。
なお、この例では、液晶表示装置等のバックライトユニットに用いられる導光板の成形用金型を作製した。この例で作製した導光板成形用金型の概略構成を図2に示した。図2(a)は、導光板成形用金型を成形機内の固定金型に装着した際の概略断面図であり、図2(b)はこの例で作製した導光板成形用金型の概略断面図であり、そして、図2(c)は図2(b)中の破線Aで囲まれた領域の拡大断面図である。
この例の導光板成形用金型110は、図2(b)に示すように、金型基材111(入れ子)と、金型基材111(HPM38)の表面に形成された金属膜112とからなる。そして、図2(c)に示すように、金属膜112の表面には、鋸状の凹凸面が形成されている。なお、この例では、金属膜112はニッケル−リンで形成し、金属膜112の表面にはピッチ200μm、高さ5μmの鋸状の凹凸パターンを形成した。
図2(b)に示すような、導光板成形用金型110を用いて導光板を成形する場合には、図2(a)に示すように、成形機300内の固定金型301に導光板成形用金型110が装着される。この際、導光板成形用金型110の金属膜112側がキャビティ303側に配置されるように装着される。
ここで、実施例1における光学部材成形用金型のメッキ処理及び作製方法を説明する前に、加圧二酸化炭素及び水を含む混合溶液に腐食防止剤を添加することにより、処理容器の内壁及び混合溶液に浸漬されたサンプル基材(金属片)の腐食及び溶出が起こらないことを確認するために、次のような予備実験を行った。
[予備実験]
この例の予備実験で用いた処理装置の概略構成図を図1に示した。この予備実験用処理装置100は、図1に示すように、主に、二酸化炭素ボンベ21と、フィルター24と、シリンジポンプ22と、高圧容器10とからなり、各構成要素は配管23により繋がれており、配管23には、二酸化炭素の流動を制御するためのバルブ25〜27が適宜設置されている。
この例の予備実験で用いた処理装置の概略構成図を図1に示した。この予備実験用処理装置100は、図1に示すように、主に、二酸化炭素ボンベ21と、フィルター24と、シリンジポンプ22と、高圧容器10とからなり、各構成要素は配管23により繋がれており、配管23には、二酸化炭素の流動を制御するためのバルブ25〜27が適宜設置されている。
高圧容器10は、図1に示すように、容器本体1と、蓋2とからなり、公知のバネが内蔵されたポリイミド製シール3でシールされ、容器内部が密閉される構造になっている。高圧容器10の形成材料としては、腐食され難い材質を用いることが望ましく、SUS316、SUS316L、インコネル、ハステロイ、チタン等を用いることができるが、この例の予備実験用処理装置100ではSUS316Lを用いた。また、高圧容器10の蓋2には、容器内部に金型基材111を吊り下げるための吊り下げ部材4を設けた。なお、高圧容器10は、温調流路6を流れる図示しない温調機により温度制御された温調水により30℃から145℃の任意の温度により温調することができる構造になっている。このような予備実験用処理装置100を用いて、次のようにして、容器の内壁及びサンプルの腐食及び溶解を調べた。
まず、表面にニッケルメッキが施されたHPM38素地の光学部材成形用金型基材111を作製した。具体的には、図示しないメッキ装置により、金型基材111の表面にストライクメッキを施し、厚さ約1μmのニッケルメッキ膜を金型基材111の表面に形成した。
次に、高圧容器10内部(内容積500ml)に、350mlのイオン交換水を導入した。次いで、イオン交換水に腐食防止剤として次亜リン酸ナトリウムを50g/L添加し、さらに界面活性剤として、東信油化製トーレックス1000を1wt%添加した。界面活性剤を用いることで、加圧二酸化炭素とイオン交換水とをより相溶させることができ、攪拌によりエマルジョン(乳濁状態)を形成することができる。
次いで、ストライクメッキが施された金型基材111及びマグネチックスターラー5を高圧容器10内に挿入した。次いで、二酸化炭素ボンベ21からフィルター24を介して、シリンジポンプ22に液体二酸化炭素を供給し、シリンジポンプ22で液体二酸化炭素を15MPaに昇圧した。
次いで、手動バルブ25及び26を開いて、容器本体1に設けられた導入口28より圧力15MPaの加圧二酸化炭素を高圧容器10内に導入した。その後、マグネチックスターラー5を500rpmで回転させて加圧二酸化炭素とイオン交換水とを攪拌して相溶させた。そして、その状態を3時間保持した。
3時間保持後、マグネチックスターラー5を停止させ、二酸化炭素とイオン交換水を2相分離させた。次いで、手動バルブ25を閉じ、手動バルブ27を開いて、二酸化炭素を排気した。その後、高圧容器10内から金型基材111を取り出した。その取り出した金型基材111の重量を測定したが、その重量は、高圧容器10に挿入する前の重量と同じであり、金型基材111の表面に形成されたニッケルメッキ膜及び素地ともにイオン交換水に溶出していないことが分かった。また、目視により、金型基材111の表面及び高圧容器10の内壁の腐食の有無を確認したが、ともに腐食は見られなかった。この結果と上述した表1に示した評価結果と合わせて考えると、水と加圧二酸化炭素とを含む混合液体にさらに腐食防止剤を添加することにより、上述した混合液体の酸化作用(腐食及び溶解)が抑制できることが分かった。
[処理装置]
次に、この例のメッキ処理で用いた処理装置を説明する。この例で用いたメッキ処理装置の概略構成図を図3に示した。この例のメッキ装置200は、図3に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ21と、フィルター24と、加圧二酸化炭素を生成するシリンジポンプ22と、メッキ処理を行う高圧容器30と、高圧容器30から排出されるガスを回収する回収槽41と、それらの構成要素を繋ぐ配管23とで構成されている。また、配管23には、図3に示すように、処理装置200内の加圧二酸化炭素の流動を制御するための手動ニードルバルブ25,44,45及び保圧弁42が所定の位置に設けられている。
次に、この例のメッキ処理で用いた処理装置を説明する。この例で用いたメッキ処理装置の概略構成図を図3に示した。この例のメッキ装置200は、図3に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ21と、フィルター24と、加圧二酸化炭素を生成するシリンジポンプ22と、メッキ処理を行う高圧容器30と、高圧容器30から排出されるガスを回収する回収槽41と、それらの構成要素を繋ぐ配管23とで構成されている。また、配管23には、図3に示すように、処理装置200内の加圧二酸化炭素の流動を制御するための手動ニードルバルブ25,44,45及び保圧弁42が所定の位置に設けられている。
高圧容器30は、図3に示すように、容器本体31と、蓋32とからなり、公知のバネが内蔵されたポリイミド製シール33でシールされ、容器内部が密閉される構造になっている。高圧容器30の形成材料としては、SUS316Lを用いた。また、高圧容器30の蓋32には、容器内部に光学部材成形用の金型基材111を吊り下げるための吊り下げ部材34を設けた。なお、高圧容器30は、温調流路36を流れる図示しない温調機により温度制御された温調水により30℃から145℃の任意の温度により温調することができる構造になっている。また、図3に示すように高圧容器30の容器本体31には、加圧二酸化炭素の導入口38及び排出口39が形成されており、導入口38及び排出口39には配管23が繋がれている。それゆえ、高圧容器30の内部はその導入口38及び排出口39を介して、それぞれシリンジポンプ22及び回収槽41と流通している。
[メッキ処理方法及び金型の作製方法]
次に、この例の光学部材成形用の金型基材111の表面にメッキ膜112(金属膜)を形成する方法並びに光学部材成形用金型の作製方法を図3及び4を参照しながら説明する。なお、図4は、この例の光学部材成形用金型の作製方法の手順を示したフローチャートである。
次に、この例の光学部材成形用の金型基材111の表面にメッキ膜112(金属膜)を形成する方法並びに光学部材成形用金型の作製方法を図3及び4を参照しながら説明する。なお、図4は、この例の光学部材成形用金型の作製方法の手順を示したフローチャートである。
まず、表面にニッケルメッキが施されたHPM38素地の金型基材111を作製した(図4中のステップS11)。具体的には、図示しないメッキ装置により、金型基材111の表面にストライクメッキを施し、厚さ約1μmのニッケルメッキ膜を金型基材111の表面に形成した。
次いで、還元剤(次亜リン酸ナトリウム)及び金属塩(硫酸ニッケル)を含む無電解メッキ液(奥野製薬社製ニコロンDK)に腐食防止剤及び界面活性剤が添加されたメッキ液を用意した(図4中のステップS12)。なお、腐食防止剤としては、次亜リン酸ナトリウムを用い、無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比が10となるように、腐食防止剤を無電解メッキ液に添加した。具体的には、無電解メッキ液1l中の金属塩及び還元剤の割合がそれぞれ0.08mol及び0.16molである無電解メッキ液に腐食防止剤を0.64mol添加したメッキ液を用意した。また、この例では、界面活性剤として、東信油化製トーレックス1000を1wt%添加した。
次いで、予め90℃に温調された高圧容器30内に、腐食防止剤及び界面活性剤が添加されたメッキ液37を導入した。この際、高圧容器30の内容積(500ml)の70%をメッキ液37が占めるように導入した。次いで、ストライクメッキされた金型基材111及びマグネチックスターラー35を高圧容器30内に挿入し、金型基材111をメッキ液37中に浸漬した。
次いで、二酸化炭素ボンベ21からフィルター24を介して、シリンジポンプ22に液体二酸化炭素を供給し、シリンジポンプ22で液体二酸化炭素を15MPaに昇圧した。次いで、手動バルブ25を開いて、導入口38より圧力15MPaの加圧二酸化炭素を高圧容器30内に導入した(図4中のステップS13)。その後、マグネチックスターラー35を500rpmで回転させて加圧二酸化炭素とメッキ液と攪拌して相溶させた。そして、その状態を15時間保持し、ストライクメッキが施された金型基材111の表面にニッケルーリン皮膜を形成した(図4中のステップS14)。また、この際、高圧容器30内のメッキ液は図示しない自動分析供給システムにより浴内の濃度が一定になるように調製した。
15時間保持後、マグネチックスターラー35を停止させ、二酸化炭素とメッキ液を2相分離させた。その後、手動バルブ25を閉じ、手動バルブ45を開いて、二酸化炭素を回収槽41に排気した。その後、高圧容器30内から金型基材111を取り出した。取り出した金型基材111の表面には、ピンホールのない厚さ102μmで均一なニッケルーリン皮膜が形成されていた。また、目視により、金型基材111の表面及び高圧容器30の内壁の腐食の有無を確認したが、ともに腐食は見られなかった。
次に、上述のようにして厚さ102μmのニッケルーリン皮膜(金属膜112)が表面に形成された金型基材111の表面を鏡面研磨した後、単結晶ダイヤモンドバイトにより金属膜112の表面に溝部を切削加工して図2(c)に示したような所定の凹凸パターンを形成し、光学部材成型用の金型を作製した(図4中のステップS15)。この例で作製した金型表面をレーザ顕微鏡で観察したところ、欠陥及びピンホール等が観測されなかった。この例では、このようにして、光学部材成形用金型を得た。
実施例2では、無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比(以下、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)と記す)を変えた種々のメッキ液を用意してメッキ処理を行った。具体的には、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が5.3〜15の範囲で変化させた種々のメッキ液を用意し、各メッキ液で処理した場合の金属の析出レートの変化及び容器の腐食状況を調べた。具体的には、無電解メッキ液1l中の金属塩及び還元剤の割合がそれぞれ0.08mol及び0.16molである無電解メッキ液に腐食防止剤を0.264mol〜1.04molの範囲で変化させて添加した種々のメッキ液を用意した。なお、この例では、比較のため、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が2〜5.2の範囲で変化させた種々のメッキ液、並びに、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が20のメッキ液も用意し、同様に、金属の析出レートの変化及び容器の腐食状況を調べた。
この例では、メッキ処理装置として、実施例1と同様の装置(図3の装置)を用いた。すなわち、高圧容器の形成材料はSUS316Lとした。また、この例では、被メッキ部材として、1×2cmのCu板(被処理体)を用いた。
[析出レートの評価方法及び評価結果]
最初に、上述したモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)の異なる各種メッキ液における金属の析出レートの変化の評価方法を説明する。
最初に、上述したモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)の異なる各種メッキ液における金属の析出レートの変化の評価方法を説明する。
まず、予め70℃に温調された高圧容器30内に、所定のモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)に調整されたメッキ液を実施例1と同様にして導入した。なお、この例では、図示しないメッキ装置によりCu板に表面にストライクメッキを施し、Cu板表面に厚さ約1μmのニッケル−リン膜を形成した。次いで、Cu板及びマグネチックスターラー35を高圧容器30内に挿入し、Cu板をメッキ液中に浸漬した。
次いで、実施例1と同様にして、加圧二酸化炭素を高圧容器30内に導入し、その後、マグネチックスターラー35を500rpmで回転させて加圧二酸化炭素とメッキ液とを攪拌して相溶させた。そして、その状態を所定時間保持し(メッキ処理時間)、Cu板の表面にニッケルーリン皮膜を形成した。
メッキ処理時間を3時間とし、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)の異なる各種メッキ液で形成されたニッケルーリン皮膜の厚さから、析出レート(μm/h)を求めた。
この例では、上記析出レートの評価実験をモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)の異なる各メッキ液において行い、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)と析出レートとの関係を調べた。さらに、この例では、高圧容器30の温度を80℃及び90℃にした場合のモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)と析出レートとの関係についても調べた。
析出レートの評価結果を、図5及び6に示した。図5は各メッキ液のモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)における析出レートを示した表である。図6は、図5に示したモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)と析出レートとの関係をグラフ化したものであり、横軸にモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)をとり、縦軸には析出レートをとった。
図5及び6から明らかなように、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が3以下の場合には、析出レートが負の値となった。これは、メッキ膜が成長せず、Cu板(被メッキ対象物)及びニッケル−リンのストライクメッキ膜が溶出していることを表している。そして、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が3より大きくなると、析出レートが正の値となりメッキ膜がCu板上に成長し始める。そして、図6に示すように、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が大きくなるとともに、析出レートも増大し、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が約14〜15付近になると析出レートが最大となることが分かった。また、それよりさらに、腐食防止剤を添加すると、いわゆる「浴が壊れる」という現象が起こり始め、析出レートが減少した。
なお、図6に示すように、浴が壊れ始めているモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が20の場合でも、十分な析出レートが得られているが、この場合には、メッキ膜の異常析出が起きたり、浴が不安定となるため、メッキ膜の厚膜化に必要な長時間(例えば、3時間以上)処理には不向きであり、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が20であるメッキ液は使用できない。本発明者らの更なる検証によれば、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が約18程度までなら、浴の分解(浴が壊れること)の影響も小さく、長時間メッキ処理を行っても浴が安定していることが分かった。
[腐食の評価結果]
メッキ液中のモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)を変えたときの容器の腐食状況の測定結果を図7に示した。なお、図7では腐食の評価結果を◎、○△及び×で表わしたが、これらの評価基準は以下の通りとした。
◎:腐食なし(腐食箇所が0)
○:腐食箇所が1〜2
△:腐食箇所が3〜20
×:腐食箇所が20以上。浴中に腐食物が浮遊
メッキ液中のモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)を変えたときの容器の腐食状況の測定結果を図7に示した。なお、図7では腐食の評価結果を◎、○△及び×で表わしたが、これらの評価基準は以下の通りとした。
◎:腐食なし(腐食箇所が0)
○:腐食箇所が1〜2
△:腐食箇所が3〜20
×:腐食箇所が20以上。浴中に腐食物が浮遊
図7から明らかなように、高圧容器の温度が70℃〜90℃の範囲では、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)が5を超え始めると、容器の腐食防止効果が現れ、5.3以上の場合に高圧容器の温度に関係なく腐食が十分に防止できることが分かった。特に、モル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)を5.5以上にした場合には、◎評価となり、より確実に容器の腐食を防止できることが分かった。
図5〜7に示したメッキ液中のモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)に対する析出レート及び腐食状況の変化の評価結果を総合すると、メッキ液中のモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)を約5.3〜18、より好ましくは、5.5〜15とすることにより、容器腐食を防止しつつ、メッキ液の浴を安定して保つことができ、それにより、ある程度の析出レートでメッキ膜を基材上に形成することができることが分かった。すなわち、加圧二酸化炭素を含むメッキ液を用いて基材上に金属膜を形成する方法を工業化する際には、メッキ液中のモル比・(還元剤+腐食防止剤)/(金属塩)を約5.3〜18、より好ましくは、5.5〜15とすることが望ましいことが分かった。
実施例3では、メッキの触媒核となる金属微粒子が表面内部に含浸したポリマー成形品(被処理体)を射出成形機を用いて成形した後に、同じ射出成形機内で、加圧二酸化炭素及び腐食防止剤を含む無電解メッキ液を用いて、ポリマー成形品表面にメッキ膜を形成した。本実施例では、ポリマー成形品として自動車ヘッドライトのリフレクターを作製した。
[ポリマー成形品の製造装置]
本実施例で用いたポリマー成形品の製造装置の概略構成を図8に示した。本実施例の製造装置500は、図8に示すように、主に、金型を含む縦型の射出成形装置部501と、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液の金型への供給及び排出を制御する無電解メッキ装置部503と、射出成形装置部501の可塑化シリンダー内の溶融樹脂に金属錯体を溶解した加圧二酸化炭素を浸透させるための表面改質装置部502とからなる。
本実施例で用いたポリマー成形品の製造装置の概略構成を図8に示した。本実施例の製造装置500は、図8に示すように、主に、金型を含む縦型の射出成形装置部501と、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液の金型への供給及び排出を制御する無電解メッキ装置部503と、射出成形装置部501の可塑化シリンダー内の溶融樹脂に金属錯体を溶解した加圧二酸化炭素を浸透させるための表面改質装置部502とからなる。
縦型の射出成形装置部501は、主に、図8に示すように、ポリマー成形品の形成樹脂を可塑化溶融する可塑化溶融装置50と、金型を開閉する型締め装置60とからなる。
可塑化溶融装置50は、主に、スクリュー51を内臓した可塑化シリンダー52と、ホッパー53と、可塑化シリンダー52内の先端部(フローフロント部)付近に設けられた加圧二酸化炭素の導入バルブ55とからなる。また、可塑化シリンダー52の導入バルブ55と対向する位置には、樹脂内圧を計測するための圧力センサー56を設けた。なお、ホッパー53内から可塑化シリンダー52内に供給される図示しない樹脂ペレットの材料としては、ポニフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業社製FZ−8600 Black)を用いた。
また、型締め装置60は、主に、固定金型61と、可動金型62とからなり、可動金型62が可動プラテン63およびそれに連結した図示しない油圧型締め機構の駆動に連動して4本のタイバー65間を開閉する構造になっている。また、可動金型62には、可動金型62及び固定金型61との間に画成されるキャビティ504に、加圧二酸化炭素及び無電解メッキ液を供給及び排出するためのメッキ液導入路66,67が形成されている。なお、メッキ液導入路66,67は、図8に示すように後述する無電解メッキ装置部503の配管85に接続されており、配管85を介して加圧二酸化炭素及び無電解メッキ液がキャビティ504に導入される構造になっている。また、キャビティ504のシールは、固定金型61の外径部に設けられたバネ内蔵シール64と可動金型62との勘合により行われる。
表面改質装置部502は、図8に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ71と、シリンジポンプ72,73と、フィルター77と、背圧弁75と、金属錯体が仕込まれた溶解槽74と、これらの構成要素を繋ぐ配管76とから構成される。また、表面改質装置部502の配管76は、図8に示すように、可塑化シリンダー52の導入バルブ55に接続されており、導入バルブ55付近の配管76には圧力センサー57が設けられている。なお、この例では、溶解槽74に仕込んだ金属微粒子の原料としては、金属錯体(ヘキサフルオロアセチルアセトナパラジウム(II))を用いた。
無電解メッキ装置部503は、図8に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ80と、ポンプ81と、バッファータンク82と、無電解メッキ液と加圧二酸化炭素を混合させる高圧容器87と、循環ポンプ90と、無電解メッキ液を補給するためのメッキタンク91と、シリンジポンプ92と、無電解メッキ液を回収する回収容器93と、回収槽94と、これらの構成要素を繋ぐ配管85とから構成される。また、加圧二酸化炭素及び無電解メッキ液の流動を制御するための自動バルブ83,84,95〜97が配管85の所定箇所に設けられている。また、配管85は、図8に示すように、可動金型62のメッキ液導入路66,67と接続されている。
[ポリマー成形品の成形方法]
次に、表面内部に金属微粒子が含浸したポリマー成形品の成形方法を図8〜10を参照しながら説明する。なお、本発明において金属微粒子の樹脂への浸透方法は任意であるが、本実施例では、可塑化シリンダー52内で可塑化計量した溶融樹脂の先端部(フローフロント部)に金属錯体を溶解した加圧二酸化炭素を導入した。
次に、表面内部に金属微粒子が含浸したポリマー成形品の成形方法を図8〜10を参照しながら説明する。なお、本発明において金属微粒子の樹脂への浸透方法は任意であるが、本実施例では、可塑化シリンダー52内で可塑化計量した溶融樹脂の先端部(フローフロント部)に金属錯体を溶解した加圧二酸化炭素を導入した。
まず、溶解槽74において金属錯体をエタノールに溶解させ、金属錯体が溶解したエタノールをシリンジポンプ73内で15MPaに昇圧した。一方、液体二酸化炭素ボンベ71よりフィルター77を介してシリンジポンプ72に供給し、シリンジポンプ72内で液体二酸化炭素を15MPaと昇圧した。そして、昇圧された二酸化炭素と金属錯体が溶解したエタノールとを配管76内で混合した(加圧混合流体を生成した)。なお、この加圧混合流体を可塑化溶融装置50に供給する際、加圧混合流体の供給圧力は、圧力計78の表示が15MPaになるように、背圧弁75により制御した。また、両シリンンジポンプ72,73からのエタノール溶液と加圧二酸化炭素との加圧混合流体の送液は、各シリンジポンプ72,73の制御を圧力制御から流量制御に切り替えて行った。さらに、加圧混合流体を可塑化溶融装置50に供給する際には、加圧混合流体を、配管76内で図示しないヒーターにより50℃に温度制御しつつ、可塑化溶融装置50に供給した。
次に、加圧混合流体を可塑化溶融装置50内に導入する手順を図8及び9を参照しながら説明する。図9(a)及び9(b)は、可塑化溶融装置50の導入バルブ55付近の拡大断面図である。まず、ホッパー53から樹脂ペレットを供給しながら、可塑化シリンダー52内のスクリュー51を回転させて、樹脂の可塑化計量を行った。可塑化計量完了時における導入バルブ55付近の状態を示したのが図9(a)である。なお、この際、図9(a)に示すように、導入バルブ55の導入ピン551が後退(図9(a)中の左側に移動)することで、溶融樹脂611へ加圧混合流体610が導入されること遮断している。
次いで、スクリュー51をサックバック(後退)して、溶融樹脂611の内圧力を低下させると同時に、両シリンジポンプ72,73を圧力制御から流量制御に切り替え、該金属錯体の溶解したエタノールと二酸化炭素の流量の比を1:10としながら、加圧混合流体610を導入バルブ55を介して可塑化シリンダー52内のフローフロント部の溶融樹脂611に導入した(図9(b)の状態)。図9(b)中の領域612が加圧混合流体610が浸透した溶融樹脂の部分である。
なお、本実施例の可塑化シリンダー52の導入バルブ55では、溶融樹脂611と加圧混合流体610との圧力差が5MPa以上となったときに、加圧混合流体610が可塑化シリンダー52内の溶融樹脂611の導入される構造になっており、導入バルブ55による加圧混合流体610の導入原理は次の通りである。可塑化計量完了後、スクリュー51をサックバックさせると、溶融樹脂611が減圧され密度が低下する。そして、溶融樹脂611と加圧混合流体610との圧力差が5MPa以上となったとき、加圧混合流体610の圧力が導入バルブ55内のバネ552の戻し力(弾性力)に打ち勝ち、導入ピン551が溶融樹脂611側に前進し、加圧混合流体610が溶融樹脂611内部に導入される。なお、加圧混合流体610の導入は、樹脂圧および加圧混合流体610の圧力を、それぞれ圧力センサー56,57で監視しながら行った。
次いで、両シリンジポンプ72,73を停止して加圧混合流体610の送液を停止した。また、それと同時に、スクリュー51を前進させて、樹脂圧力を再度上昇させ、導入ピン551を後退(図9(b)中の左方向に移動)させた。それにより、加圧混合流体610の導入を停止するとともに、加圧混合流体610と溶融樹脂611とを相溶させた。
次いで、両シリンジポンプ72,73を、配管76中の図示しない自動バルブを閉鎖した後、可塑化溶融装置50に供給した加圧二酸化炭素及び金属錯体が溶解したエタノール溶液の流量分をシリンジポンプ72,73内に補液した。その後、圧力制御に切り替え、15MPaの高圧に保持し、次ショットの送液まで待機させた。
次に、可塑化シリンダー52内のフローフロント部の溶融樹脂611に加圧混合流体610を導入した後、型締め装置60の油圧型締め機構(不図示)により型締めされ、温調回路(不図示)により温度制御された金型内に画成されたキャビティ504に溶融樹脂を射出充填した。次いで、成形品を冷却固化した(図10の状態)。なお、溶融樹脂を金型内に射出成形する際、最初に射出されるフローフロント部の溶融樹脂612は噴水効果(ファウンテンフロー)により、射出成形品の表皮を形成する。すなわち、この例では、フローフロント部近傍に金属錯体由来の金属微粒子が分散しているので、図10に示すように、ポリマー成形品507の表皮505(表面内部)には金属微粒子が含浸したポリマー成形品507が得られる。この例では、このようにして、表皮であるスキン層505に金属微粒子が分散し、内皮であるコア層506に、ほとんど金属微粒子が存在しないポリマー成形品507を得た(図13中のステップS31)。
[メッキ膜の形成方法]
上述のようにして作製された表面内部に金属微粒子が分散したポリマー成形品507に対して、次のようにして、金型内で無電解メッキ処理を行った。なお、無電解メッキ処理を行っている間、金型内部は80℃に温調した。
上述のようにして作製された表面内部に金属微粒子が分散したポリマー成形品507に対して、次のようにして、金型内で無電解メッキ処理を行った。なお、無電解メッキ処理を行っている間、金型内部は80℃に温調した。
まず、還元剤、金属塩及び腐食防止剤を含む無電解メッキ液を用意し、そのメッキ液を無電解メッキ装置部503のメッキタンク91に導入した(図13中のステップS32)。なお、この例では、還元剤(次亜リン酸ナトリウム)及び金属塩(硫酸ニッケル)を含む無電解メッキ液(奥野製薬社製ニコロンDK)に腐食防止剤及び界面活性剤が添加されたメッキ液を用意した。なお、腐食防止剤としては、次亜リン酸ナトリウムを用い、無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比((還元剤+腐食防止剤)/(金属塩))が10となるように、腐食防止剤を無電解メッキ液に添加した。具体的には、無電解メッキ液1l中の金属塩及び還元剤の割合がそれぞれ0.08mol及び0.16molである無電解メッキ液に腐食防止剤を0.64mol添加したメッキ液を用意した。また、この例では、界面活性剤として、東信油化製トーレックス1000を1wt%添加した。
次いで、自動バルブ96,97を開けて、シリンジポンプ92により、メッキタンク91から無電解メッキ液を高圧容器87に供給し、自動バルブ96,97を閉じた。次いで、無電解メッキ装置部503の液体二酸化炭素ボンベ80より供給した液体二酸化炭素をポンプ81で昇圧し、バッファータンク82に貯蔵した。次いで、自動バルブ83,84を開けて、バッファータンク82から15MPaの加圧二酸化炭素を高圧容器87内に導入して、高圧容器87内にて無電解メッキ液と加圧二酸化炭素とを混合させた(図13中のステップS33)。また、この際、スタラー86の駆動および、マグネチックスタラー88の高速回転により加圧二酸化炭素と無電解メッキ液とを高圧容器87内で相溶させた。次いで、自動バルブ83,84を閉じた。
次に、図11に示すように、型締め装置60の油圧型締め機構(不図示)を後退(図11中の下方向)させることにより、可動プラテン63および可動金型62を後退させ、固定金型61とポリマー成形品507との間に隙間508(キャビティ508)を設けた。
次いで、無電解メッキ装置部503の液体二酸化炭素ボンベ80より供給した液体二酸化炭素をポンプ81で昇圧し、バッファータンク82に貯蔵した。次いで、自動バルブ83を開放して、バッファータンク82に貯蔵されていた加圧二酸化炭素をメッキ液導入路66を介してキャビティ508に導入してポリマー成形品507の表面に加圧二酸化炭素を接触させた(図13中のステップS34)。なお、この際、固定金型61の外径部に設けられたバネ内蔵シール64と可動金型62の勘合により、キャビティ508はシールされているので、導入された加圧二酸化炭素が金型外部に漏れ出すことはない。また、この際、キャビティ508における加圧二酸化炭素の圧力は15MPaとした。このように、ポリマー成形品507の表面に加圧二酸化炭素を接触させることにより、ポリマー成形品507の表面が膨潤するので、次いで導入される加圧二酸化炭素と無電解メッキ液との混合流体のポリマー成形品507の内部への浸透がよりスムーズに行われるという効果が得られる。
次いで、自動バルブ83を閉鎖し、自動バルブ84,97を開放し、予め、高圧容器87内に貯蔵された15MPaの加圧二酸化炭素と腐食防止剤を添加した無電解メッキ液との混合流体をキャビティ508に導入して、ポリマー成形品507に接触させた(図13中のステップS35)。具体的には、循環ポンプ90を運転し、高圧容器87、配管85およびキャビティ508からなる循環流路に、加圧二酸化炭素及び腐食防止剤を含む無電解メッキ液を循環させて、ポリマー成形品507の表面に無電解メッキ液を接触させ、メッキ膜(ニッケル−リン膜)を形成した。
この際、ポリマー成形品507の表面は膨潤しているので、ポリマー成形品507の表面から無電解メッキ液がポリマー成形品507の内部に浸透するとともに、ポリマー成形品507内部に分散する金属微粒子を触媒核にして、メッキ膜が成長する。すなわち、ポリマー成形品507上に形成されたメッキ膜はポリマー成形品507の内部に食い込んだ状態で成長するので、密着性の優れたメッキ膜が形成される。なお、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が循環している際には、キャビティ508および循環ライン85の圧力は圧力センサー68,89で同圧になっていた。また、無電解メッキ液の補給は、メッキタンク91より供給したメッキ液をシリンジポンプ92で昇圧して、自動バルブ96の開放と同時に送液することで随時行った。
次いで、上述のようにしてポリマー成形品507上にメッキ膜を形成した後、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液の循環経路から加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器93を介して回収槽94から排気した。具体的には、自動バルブ84,97を閉鎖し、次いで、自動バルブ95を開放することで、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器93に排出した。回収容器93では、回収した加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が、遠心分離の原理で水溶液(メッキ液)と高圧ガス(二酸化炭素)に分離される。メッキ液は回収槽94で回収し再利用することができる。ガス化した二酸化炭素は回収容器93の上部から排出され、図示しない排気ダクトに回収される。
次いで、自動バルブ83を一定時間開いて、固定金型61とポリマー成形品507との間の隙間508(キャビティ508)に加圧二酸化炭素を導入し、キャビティ508に残ったメッキ液の残留物を加圧二酸化炭素とともに金型の外へ排出した。次いで、キャビティ508の内圧が圧力センサー68のモニター値でゼロになったところで、金型を開きポリマー成形品507を取り出した。
取り出されたポリマー成形品507の表面には腐食はなく、均一なニッケルーリン膜が形成されていた。また、ポリマー成形品507を取り出した後、金型内部の腐食状況を目視で観測したが、腐食は見られなかった。
次に、取り出したポリマー成形品507に対して、通常の置換型金メッキを施して、ポリマー成形品507の表面に金メッキ膜を積層した。この例では、上述のようにして、表面にメッキ膜が形成されたポリマー成形品507を得た。
この例で作製されたポリマー成形品507の一部の模式断面図を図12に示した。この例で作製されたポリマー成形品507のスキン層505内部には金属微粒子600(図12中の黒丸印)が分散していることが確認された。また、ポリマー成形品507の片側には、金型内で成長させたニッケルーリンの金属膜509が形成されており、ニッケルーリンの金属膜509はポリマー成形品507の内部から成長していた(金属膜509の浸透層が形成されていた)。また、ニッケルーリンの金属膜509の上に金の高反射膜510が形成されていた。
また、この例で作製されたポリマー成形品507に対して高温多湿環境試験高温多湿試験(条件:温度80℃、湿度90%Rh、放置時間500時間)やヒートサイクル試験(80℃と150℃との温度間を15サイクル)を行った後、ピール試験したところ、膜剥れは発生しなかった。また、温度150℃、報知時間500時間の条件で高温試験も行った。その結果、金属膜の密着性の低下は認められなかった。さらに、この例で作製されたポリマー成形品507の表面粗さRaを測定したところ、金型の表面粗さと同等のRa=100nmであった。すなわち、この例のメッキ膜の形成方法によれば、射出成形と同時にメッキ処理を行うことができ、プロセスが簡略化することができるだけでなく、密着性が高く且つ平滑な金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できることが分かった。
上記実施例1〜3では、メッキ処理について説明したが、本実施例では、特許文献1と同様に、水と加圧二酸化炭素を含む混合溶液中で、リポソームが分散した懸濁液を生成する方法について説明する。なお、この例の処理装置は、実施例1(図3の装置)と同様の装置200を用いた。ただし、高圧容器30はSUS304で形成し、それ以外の構成は実施例1と同じとした。
まず、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.2g、及び、グルコース水溶液20g(グルコース濃度0.15mM)を予め60℃に温調された高圧容器30内に仕込み、腐食防止剤として次亜リン酸ナトリウムを1g(50g/L)添加した。ただし、この例では、この混合水溶液を高圧容器30の内容積の70%を満たすように導入した。
次いで、実施例1と同様にして、高圧容器30内に圧力20MPaで加圧二酸化炭素を導入した。具体的には、液体二酸化炭素ボンベ21からフィルター24を介して液体二酸化炭素をシリンジポンプ22で吸い上げ、次いで、シリンジポンプ22内で液体二酸化炭素を20MPaに昇圧にした。次いで、手動バルブ25を開いて20MPaの加圧二酸化炭素を高圧容器30内部に導入した。その後、高圧容器30内のマグネチックスターラー35を高速で回転させ、40分間撹拌した。そして、40分保持後、高圧容器30内の加圧二酸化炭素を実施例1と同様にして排気し、リポソームが分散した懸濁液を得た。この際、高圧容器30内壁の腐食は認められなかった。
[比較例]
また、比較のため、腐食防止剤(次亜リン酸ナトリウム)を添加しなかった混合溶液を用いて、実施例4と同様の処理を行った。その結果、高圧容器内壁において変色及び腐食が起きていることが確認された。
また、比較のため、腐食防止剤(次亜リン酸ナトリウム)を添加しなかった混合溶液を用いて、実施例4と同様の処理を行った。その結果、高圧容器内壁において変色及び腐食が起きていることが確認された。
実施例5では、実施例1と同様に、光学部材成形用の金型基材の表面にメッキ膜を形成する方法について説明する。なお、この例では、実施例1とは異なる処理装置を用いてメッキ膜を形成した。
[処理装置]
この例のメッキ処理で用いた処理装置の概略構成図を図14に示した。この例のメッキ装置400は、図14に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ21と、フィルター24と、加圧二酸化炭素を生成するシリンジポンプ22と、加圧二酸化炭素を腐食防止剤に接触させるための処理容器401と、メッキ処理を行う高圧容器30と、高圧容器30から排出されるガスを回収する回収槽41と、それらの構成要素を繋ぐ配管23とで構成されている。また、配管23には、図14に示すように、処理装置400内の加圧二酸化炭素の流動を制御するための手動ニードルバルブ25〜27,44,45及び保圧弁42が所定の位置に設けられている。なお、処理容器401の形成材料としては、SUS316Lを用いた。
この例のメッキ処理で用いた処理装置の概略構成図を図14に示した。この例のメッキ装置400は、図14に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ21と、フィルター24と、加圧二酸化炭素を生成するシリンジポンプ22と、加圧二酸化炭素を腐食防止剤に接触させるための処理容器401と、メッキ処理を行う高圧容器30と、高圧容器30から排出されるガスを回収する回収槽41と、それらの構成要素を繋ぐ配管23とで構成されている。また、配管23には、図14に示すように、処理装置400内の加圧二酸化炭素の流動を制御するための手動ニードルバルブ25〜27,44,45及び保圧弁42が所定の位置に設けられている。なお、処理容器401の形成材料としては、SUS316Lを用いた。
すなわち、この例では、加圧二酸化炭素を腐食防止剤に接触させるための処理容器401を別途設けたこと以外は、実施例1で用いた処理装置(図3)と同様の構造とした。この例では、後述するように、腐食防止剤を溶解したイオン交換水に加圧二酸化炭素を通過させた後、加圧二酸化炭素を高圧容器30内の無電解メッキ液37’に導入しメッキ処理を行う。この方法でメッキ処理を行うことにより、メッキ浴に腐食防止剤を直接仕込む必要が無くなるので、浴分解を低減することができる等の利点がある。
[メッキ処理方法及び金型の作製方法]
次に、この例の光学部材成形用金型基材の表面にメッキ膜(金属膜)を形成する方法を図14及び15を参照しながら説明する。
次に、この例の光学部材成形用金型基材の表面にメッキ膜(金属膜)を形成する方法を図14及び15を参照しながら説明する。
まず、実施例1と同様にして表面にストライクメッキが施された(厚さ約1μmのニッケルメッキ膜が形成された)HPM38素地の金型基材111を作製した(図15中のステップS51)。
次いで、実施例1と同様に、還元剤(次亜リン酸ナトリウム)0.16mol及び金属塩(硫酸ニッケル)0.08molを含む無電解メッキ液(奥野製薬社製ニコロンDK)を用意し、その無電解メッキ液に界面活性剤として、東信油化製トーレックス1000を1wt%添加した(図15中のステップS52)。次いで、予め90℃に温調された高圧容器30内に、界面活性剤が添加されたメッキ液37’を導入した。この際、高圧容器30の内容積(500ml)の70%をメッキ液37’が占めるように導入した。次いで、ストライクメッキされた金型基材111及びマグネチックスターラー35を高圧容器30内に挿入し、金型基材111をメッキ液37’中に浸漬した。
次いで、イオン交換水に、腐食防止剤として次亜リン酸ナトリウムを50g/L(0.47mol)、界面活性剤として、東信油化製トーレックス1000を1wt%添加して建浴し、その混合溶液402を処理容器401内に導入した。次いで、二酸化炭素ボンベ21からフィルター24を介して、シリンジポンプ22に液体二酸化炭素を供給し、シリンジポンプ22で液体二酸化炭素を15MPaに昇圧した。次いで、手動バルブ26を開いて、圧力15MPaの加圧二酸化炭素を処理容器401内に導入した。次いで、処理容器401内のマグネチックスターラー403を高速で回転させて、その状態を10分保持した。この工程により、加圧二酸化炭素を腐食防止剤に接触させた(図15中のステップS53)。
次に、手動バルブ27を開いて、導入口38より腐食防止剤に接触させた(処理容器401内を通過させた)圧力15MPaの加圧二酸化炭素を高圧容器30内に導入した。次いで、圧力計404により高圧容器30内が15MPaになったことを確認したのち、マグネチックスターラー35を高速で回転させ、手動バルブ44を開き、予め15MPaに設定した背圧弁42により、10ml/minの一定流量で腐食防止剤を溶解した加圧二酸化炭素を高圧容器30内で5分間フローさせて、無電化メッキ液37’に加圧二酸化炭素を導入した(図15中のステップS54)。加圧二酸化炭素を5分間フローさせた後、手動バルブ27、44を閉じた。そして、その状態を3時間保持した(図15中のステップS55)。
上記状態を3時間保持した後、高圧容器30内のマグネチックスターラー35を停止させ、二酸化炭素とメッキ液とを2相分離させた。その後、手動バルブ45を開くことで、二酸化炭素を排気し、金型基材111を取り出した。取り出し金型基材111の表面を観察したところ、金型基材111表面のストライクメッキ膜および素地ともに溶出していないことが確認され、また、金型基材111表面には、ピンホールのない均一なニッケル−リン皮膜(金属膜112)が形成されていることが確認された。なお、金属膜112の厚さは約23μmであった。さらに、高圧容器内壁の腐食状況を目視で確認したが、腐食は認められなかった。
上記実施例1〜3及び5では、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用いたメッキ処理について説明し、実施例4では、水と加圧二酸化炭素を含む混合溶液中で、リポソーム懸濁液を生成する方法について説明したが、本発明はこれに限定されず、水と加圧二酸化炭素を含む混合溶液を用いて行う任意の処理に適用可能である。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、半導体等のレジストパターンの乾燥処理やアルコールの分離精製、抽出等の処理においても、本発明は適用可能であり、同様の効果が得られる。
本発明の処理方法及び処理溶液では、加圧二酸化炭素及び水の混合溶液中に腐食防止剤を含んでいるので、例えば、金属製容器の内壁や混合溶液中に浸漬された金属製基材の腐食及び溶解(加圧二酸化炭素及び水の混合溶液の酸化作用)が防止され、安定して効率よく所定の処理を行うことができる。それゆえ、本発明の処理方法及び処理溶液は、加圧二酸化炭素と水とを含む混合溶液を用いた種々の処理、特に、メッキ処理等に最適な処理方法及び処理溶液である。
21 液体二酸化炭素ボンベ
22 シリンジポンプ
30 高圧容器
37,37’ 無電解メッキ液
401 処理容器
111 光学部材成形用の金型基材
22 シリンジポンプ
30 高圧容器
37,37’ 無電解メッキ液
401 処理容器
111 光学部材成形用の金型基材
本発明の第1の態様に従えば、基材上に金属膜を形成する方法であって、還元剤、金属塩、腐食防止剤及び加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用意することと、上記無電解メッキ液を上記基材に接触させて、上記基材上に上記金属膜を形成することとを含み、上記無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比が5.3〜18であることを特徴とする金属膜の形成方法が提供される。なお、還元剤、金属塩、腐食防止剤及び加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液は、水、加圧二酸化炭素及び腐食防止剤を含む混合溶液の一種である。また、基材は、被処理体の一種である。
なお、本発明の第1の態様とは別に、基材上に金属膜を形成する方法であって、還元剤及び金属塩を含む無電解メッキ液を用意することと、加圧二酸化炭素を腐食防止剤に接触させることと、上記腐食防止剤に接触した上記加圧二酸化炭素を上記無電解メッキ液に導入することと、上記加圧二酸化炭素が導入された無電解メッキ液を上記基材に接触させて、上記基材上に上記金属膜を形成することとを含む金属膜の形成方法が提供するようにしてもよい。本発明者らの検証実験によれば、この別の態様の金属膜の形成方法によっても、処理容器の内壁の腐食を防止しつつ且つ浴の安定性を保ちながら良好な析出レートで金属膜を形成することができることが分かった。
この別の態様の金属膜の形成方法では、金属製容器内で上記基材上に金属膜を形成することが好ましい。また、本発明の金属膜の形成方法では、上記基材を成形した金型内で、上記基材上に金属膜を形成することがこのましい。この場合、基材の成形工程から金属膜の形成工程まで連続的に行うことができるので、金属膜の形成方法がより簡易になる。
本発明の第2の態様に従えば、還元剤と、金属塩と、加圧二酸化炭素と、腐食防止剤とを含む無電解メッキ液であって、無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比が5.3〜18である無電解メッキ液が提供される。また、上記腐食防止剤が次亜リン酸ナトリウムであることが好ましい。
本発明の第1の態様に従えば、基材上に金属膜を形成する方法であって、還元剤および腐食防止剤としての次亜リン酸ナトリウム、金属塩および加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用意することと、上記無電解メッキ液を上記基材に接触させて、上記基材上に上記金属膜を形成することとを含み、上記無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比が5.5〜18であることを特徴とする金属膜の形成方法が提供される。なお、還元剤、金属塩、腐食防止剤及び加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液は、水、加圧二酸化炭素及び腐食防止剤を含む混合溶液の一種である。また、基材は、被処理体の一種である。
本発明の金属膜の形成方法は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明者らの検証実験によれば、加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液にさらに腐食防止剤を添加し、無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比、すなわち、(還元剤+腐食防止剤)/金属塩のモル比が5.5〜18となるように、無電解メッキ液を調製することにより、処理容器の内壁の腐食を防止しつつ且つ浴の安定性を保ちながら良好な析出レートで金属膜を形成することができることが分かった。より好ましくは、(還元剤+腐食防止剤)/金属塩のモル比を5.5〜15にすることが好ましい。なお、本発明における無電解メッキ法とは、外部電源を用いることなく触媒活性を有する基材表面で、還元剤を用いて金属皮膜を析出する方法のことである。
本発明の第2の態様に従えば、還元剤および腐食防止剤としての次亜リン酸ナトリウムと、金属塩と、加圧二酸化炭素とを含む無電解メッキ液であって、無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比が5.5〜18である無電解メッキ液が提供される。また、上記腐食防止剤が次亜リン酸ナトリウムであることが好ましい。
Claims (13)
- 被処理体を処理する方法であって、
水、加圧二酸化炭素及び腐食防止剤を含む混合溶液を調製することと、
調製された混合溶液を被処理体に接触させることとを含む処理方法。 - 上記腐食防止剤が次亜リン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
- 上記加圧二酸化炭素が超臨界状態の二酸化炭素であることを特徴とする請求項1または2に記載の処理方法。
- 上記被処理体が表面に金属を有する基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の処理方法。
- 上記処理を金属製容器内で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理方法。
- 基材上に金属膜を形成する方法であって、
還元剤、金属塩、腐食防止剤及び加圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用意することと、
上記無電解メッキ液を上記基材に接触させて、上記基材上に上記金属膜を形成することとを含み、
上記無電解メッキ液中の金属塩に対する還元剤及び腐食防止剤の和のモル比が5.3〜18であることを特徴とする金属膜の形成方法。 - 基材上に金属膜を形成する方法であって、
還元剤及び金属塩を含む無電解メッキ液を用意することと、
加圧二酸化炭素を腐食防止剤に接触させることと、
上記腐食防止剤に接触した上記加圧二酸化炭素を上記無電解メッキ液に導入することと、
上記加圧二酸化炭素が導入された無電解メッキ液を上記基材に接触させて、上記基材上に上記金属膜を形成することとを含む金属膜の形成方法。 - 上記腐食防止剤が次亜リン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項6または7に記載の金属膜の形成方法。
- 上記加圧二酸化炭素が超臨界状態の二酸化炭素であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の金属膜の形成方法。
- 金属製容器内で上記基材上に金属膜を形成することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の金属膜の形成方法。
- 上記基材を成形した金型内で、上記基材上に金属膜を形成することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の金属膜の形成方法。
- 水と、
加圧二酸化炭素と、
腐食防止剤とを含む溶液。 - 上記腐食防止剤が次亜リン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項12に記載の溶液。
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