JP2015036427A - 機械構造用鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い疲労強度を有するとともに、被削性、特に、切削工具のチッピングを抑制出来て、安定して平滑な切削面を与え得る機械構造用鋼の提供。
【解決手段】機械構造用鋼である。質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.04〜0.15%、Mn:0.6〜1.0%、P:≦0.030%、S:0.015〜0.030%、Cu:≦0.30%、Ni:≦1.00%、Cr:1.0〜2.0%、Mo:≦1.00%、s−Al:0.010〜0.050%、及び、N:0.005〜0.030%を含み、残部Fe及び不純物からなり、元素Mの質量%を[M]とすると、10.0×[Si]+[Mn]+[Cr]≦3.90、5.44×[Si]+34.6×[S]≧1.06、[Ni]+[Mo]≦1.00%を満たし、主としてフェライト・パーライト組織からなることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、主としてフェライト・パーライト組織からなる機械構造用鋼に関し、特に、加工性に優れるとともに疲労強度にも優れる機械構造用鋼に関する。
機械構造用のJIS合金鋼として、クロム鋼のSCr420やクロムモリブデン鋼のSCM420などが知られている。これらの合金鋼は、一般的に、鍛造材を熱処理し切削加工のような機械加工を施した後に、必要に応じて疲労強度を高める目的で浸炭などの表面処理を与えて供される。ここで、切削加工における被削性を高めるには、MnSのような介在物を析出させることが有効とされているが、一方で、介在物による疲労強度の低下も指摘される。そこで、介在物の析出を抑制しつつ、被削性を高めることのできる機械構造用鋼も提案されている。
ところで、機械構造用鋼の被削性については、切削加工時の切り屑を細かく分断して切削工具と被切削物との間にこれを貯留させず、排出し易くして切削抵抗を低く抑え、平滑な切削面を与えることが重要とされる。
例えば、特許文献1では、被削性のうち特に切り屑処理性に優れる機械構造用鋼を開示している。切り屑を分断し易くするためには、フェライト及び球状化セメンタイトからなる組織であって、該フェライトのうちで球状化セメンタイトを含まないフェライトを一定とすることが好ましいことを述べている。かかる鋼は、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.30〜0.70%、Mn:0.7〜1.3%、S:0.002〜0.012%、Cr:1.20〜1.70%、Al:0.005〜0.035%、及び、N:0.010〜0.025%を含み、不純物としてのPとOの上限を規定し、Sの量を極力抑えつつSiの量を所定量以上与えると述べている。ここでSiについては、せん断強度特性における降伏比の上昇を抑制し、切り屑形成におけるせん断歪みを低い応力で発生させ、被切削物(機械構造用鋼)の硬さが同等、あるいは高くなる場合にあっても、切削抵抗を減少させ得ると述べている。
更に、被削性について、切削加工時の切り屑を細かく分断して安定して平滑な切削面を与えることと関連し、切削工具に突発的な欠け(チッピング)を生じさせてしまうと、被切削物の切削面の平滑性が急激に損なわれることになる。
例えば、特許文献2では、切削工具のチッピングは切削加工中における切削抵抗の主分力の変動幅を小さくすることで抑制し得て、これには被切削物(機械構造用鋼)がフェライト・パーライト組織を有し、その組織に占めるフェライトの割合を一定として、引張特性における降伏比(0.2%耐力/引張強さ)を小さくすることが有効であることを開示している。かかる鋼は、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.15〜0.50%、Mn:0.70〜1.30%、S:0.015%以下、Cr:1.25〜1.80、Al:0.005〜0.035%、及び、N:0.010〜0.025%を含み、SiとCrを合わせた量及び不純物としてのPとOの上限を規定し、フェライト強化元素であるSi量を増やす一方、熱処理条件を選択することで降伏比を低下させ得るとしている。
特開2012−126953号公報 特開2011−89189号公報
上記したように、MnSのような介在物を析出させずに疲労強度の低下を抑制した機械構造用鋼において、成分組成のうちの主にSiやCr量や組織を制御することで、被削性、特に、切削工具のチッピングを抑制出来る。一方で、この成分組成の制御において、疲労強度を低下させてしまうことが考慮された。
本発明は、上記したような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高い疲労強度を有するとともに、被削性、特に、切削工具のチッピングを抑制出来て、安定して平滑な切削面を与え得る機械構造用鋼の提供にある。
本発明による機械構造用鋼は、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.04〜0.15%、Mn:0.6〜1.0%、P:≦0.030%、S:0.015〜0.030%、Cu:≦0.30%、Ni:≦1.00%、Cr:1.0〜2.0%、Mo:≦1.00%、s−Al:0.010〜0.050%、及び、N:0.005〜0.030%を含み、残部Fe及び不純物からなり、元素Mの質量%を[M]とすると、10.0×[Si]+[Mn]+[Cr]≦3.90、5.44×[Si]+34.6×[S]≧1.06、[Ni]+[Mo]≦1.00を満たし、主としてフェライト・パーライト組織からなることを特徴とする。
かかる発明によれば、高い疲労強度を有するとともに、これを切削加工するために使用される切削工具のチッピングを抑制出来て、結果として、安定して平滑な切削面を得ることができる。
実施例及び比較例の成分組成の図である。 (a)旋削試験片の斜視図及び(b)疲労試験片の正面図である。 実施例及び比較例の試験結果を示す図である。 式1に対する疲労限応力比の関係を示す図である。 式2に対する逃げ面欠損寿命比の関係を示す図である。
本発明者は、JIS G4053に規定されるクロム鋼又はクロムモリブデン鋼をベースにこの成分組成に変更を加えて、焼準後(焼きならし後)において主としてフェライト・パーライト組織からなる機械構造用鋼の評価を重ねた。その結果、(1)Si、Mn及びCrの含有量が浸炭処理などの表面硬化熱処理された表層近傍の粒界酸化に影響を与え、曲げ疲労強度を大きく変化させること、(2)Si及びSの含有量がこれを切削加工するときに使用される切削工具の寿命、特にチッピング寿命に影響を与えることを見出した。以下にこの評価試験の結果などを示す。
機械構造用鋼の評価試験として、疲労強度を評価するための回転曲げ疲労試験と、これを切削加工するときに使用される切削工具のチッピング寿命から機械構造用鋼の被削性を評価するための旋削試験とを行った。まず、これらの試験に用いた試験片について説明する。
まず、図1の実施例1乃至8及び比較例1乃至10に示すような成分組成を有する150kg鋼塊を真空誘導炉によって造塊し、熱間鍛造を行った後、焼準のために910℃にて1.5時間保持し空冷する熱処理を行った。これにより、主としてフェライト・パーライト組織からなる焼きならし鋼を得られる。ここでは、断面の面積率で10%以下のベイナイト組織を含み得る。続いて、機械加工により、回転曲げ疲労試験に用いる疲労試験片と、旋削試験に用いる旋削試験片とを切り出す。図2(a)に示すように、旋削試験片20はφ60×200Lの段付き丸棒であって、長さ186mmの試験部21と、その長手方向の一端側の径の小さなチャック部22とからなる。また、図2(b)に示すように、疲労試験片10は平滑なφ8の平行部を有する小野式回転曲げ疲労試験片である。前述したように切り出された試験片に表面硬化熱処理として、表層近傍における炭素の含有量の目標値を0.8質量%となるように浸炭処理を施して疲労試験片10を得る。
次に、回転曲げ疲労試験及び旋削試験の方法について説明する。
回転曲げ疲労試験では、小野式回転曲げ疲労試験機に疲労試験片10を取り付け、室温、大気中にて回転数を3600rpmとして完全両振り(応力比R=−1)で繰り返し疲労を与えた。複数の疲労試験片10からSN曲線を求め、10回の繰り返し数で破断しない限界応力を測定し、これを疲労限応力とした。さらに、従来材であるSCM420相当材(ハーフMo)を用いた比較例1の疲労限応力を1としたきの比で疲労限応力比を表す。なお、本発明としての疲労限応力比の基準値は、基準となる比較例1における疲労限応力比の105%以上、すなわち1.05以上とした。
旋削試験では、まず、旋削試験片20のチャック部22を旋盤にチャッキングして、試験部21をφ58となるまで予加工する。かかる予加工においては、切削工具として予加工用バイトを用い、試験部21の偏心を少なくするとともに、表面を所定の機械加工肌にする。続いて、切削工具を新品のチップ(試験用バイト)に取り替え、旋削試験加工を開始する。旋削試験加工では、切削速度250m/min、送り速度0.35mm/rev、切り込み深さ1.0mmとし、水溶性切削油剤を用いて試験部21がφ28となるまで加工を行う。試験用バイトのチップが後述する寿命と判定されるまでは、旋削試験片20を交換しつつ、予加工及び旋削試験加工とを切削工具を予加工用バイト及び試験用バイトに都度交換しながら旋削加工を継続する。
試験用バイトのチップの寿命は、試験用バイトのチップの横逃げ面において、刃先から工具切れ刃に対して垂直方向に250μm幅の欠損を生じたときとする。このチップの逃げ面欠損寿命は、チップの寿命に達するまでの旋削試験加工に要した時間の合計とした。さらに、従来材であるSCM420相当材を用いた比較例1の寿命を1としたときの比で逃げ面欠損寿命比を表す。なお、本発明としての逃げ面欠損寿命比の基準値は、基準となる比較例1における逃げ面欠損寿命比以上、すなわち1.00以上とした。
次に、上記した実施例1乃至8及び比較例1乃至10の機械構造用鋼における回転曲げ疲労試験及び旋削試験の結果を図3にまとめた。これらの試験結果について説明する。
実施例1乃至8は、従来材であるSCM420相当材を用いた比較例1に対して、Siの含有量を減じて、Sの含有量を増加させた焼きならし鋼である(図1参照)。かかる実施例では、疲労限応力比は1.05〜1.13となって上記した基準値を満たした。また、逃げ面欠損寿命比は1.02〜1.67となって、上記した基準値を満たした。すなわち、実施例1乃至8の機械構造用鋼によれば、従来材による機械構造用鋼に比較して高い疲労強度を有するとともに、これを切削加工するために使用される切削工具のチッピングを従来材と少なくとも同等以下に抑制出来て切削性にも優れる。
一方、比較例1に対し、Siの含有量を0.05質量%まで減じた比較例2(図1参照)では、疲労限応力比は1.10と基準値を満たしたものの、逃げ面欠損寿命比が0.14と基準値を大幅に下回った。
比較例1に対し、Si及びSの含有量を減じた比較例3(図1参照)では、疲労限応力比は0.99、逃げ面欠損寿命比は0.37と、ともに基準値を満たさなかった。
比較例1に対し、Siの含有量を減じてMnの含有量を増加させた比較例4(図1参照)では、逃げ面欠損寿命比は1.04と基準値を満たしたものの、疲労限応力比は0.96と基準値を満たさなかった。
比較例1に対し、Siの含有量を減じてCrの含有量を増加させた比較例5(図1参照)では、疲労限応力比は0.99と比較例1よりも低く基準値を満たさず、また、逃げ面欠損寿命比は0.39と基準値を満たさなかった。
比較例1に対し、Pの含有量を増加させた比較例6、及び、Sの含有量を増加させた比較例7(図1参照)では、逃げ面欠損寿命比はそれぞれ1.14及び1.47と基準値を満たすものの、疲労限応力比はそれぞれ0.98及び0.91と比較例1よりも低く基準値を満たさなかった。
比較例1に対し、Crの含有量を増加させた比較例8(図1参照)では、逃げ面欠損寿命比は1.18と基準値を満たすものの、疲労限応力比は1.00と比較例1と同等の値となり基準値を満たさなかった。
比較例1に対し、比較例2と同様にSiの含有量を0.05質量%まで減じた比較例9(図1参照)では、疲労限応力比は1.10と基準値を満たしたものの、逃げ面欠損寿命比が0.10と基準値を大幅に下回った。
比較例1に対し、s−Al及びNの含有量を減じた比較例10(図1参照)では、逃げ面欠損寿命比は1.47と基準値を満たすものの、疲労限応力比は1.01と比較例1よりは大きいものの基準値を満たさなかった。
更に、実施例1乃至8及び比較例1乃至10の鋼における疲労限応力比と逃げ面欠損寿命比の傾向について、図4及び図5を用いて説明する。
酸素との結合力の強い元素、例えば、Si、Mn、Crなどの元素を含む鋼において、浸炭処理で曲げ疲労強度が低下してしまう原因の1つとして、結晶粒界の酸化(粒界酸化)がある。浸炭雰囲気中の酸素が結晶粒界を経由して鋼内部へと浸入し、結晶粒界近傍のSi、Mn、Crなどと反応して酸化物を生成する。一方、結晶粒界の近傍では、合金中に固溶したこれらSi、Mn、Crなどが局所的に欠乏することになる。故に、焼入れ性が低下しマルテンサイトの生成が阻害され、不完全焼入れ層を起因として曲げ疲労強度が低下してしまうのである。
そこで、このような粒界酸化の進行に対する尺度としての粒界酸化パラメータNgoについて、実施例1乃至8を含む一連の機械構造用鋼のSi、Mn、Crの含有量と疲労限応力比とについて回帰計算を行って求めた。すなわち、元素Mの質量%を[M]とすると、粒界酸化パラメータNgoは、
go=10×[Si]+[Mn]+[Cr]
である。
図4に示すように、粒界酸化パラメータNgoが3.90以下の範囲内ならば、疲労限応力比は基準値を上回る。つまり、粒界酸化パラメータNgoを3.90以下の範囲内となるように鋼に含まれるSi、Mn、Crの成分を調整することで、疲労限応力比を基準値である1.05以上の範囲内に制御し得る。すなわち、以下の式1を満たす場合である。
go=10×[Si]+[Mn]+[Cr]≦3.90 (式1)
なお、比較例6、比較例7及び比較例10は、粒界酸化パラメータNgoがそれぞれ3.80、3.75及び3.60であって、式1を満たしている。しかしながら、疲労限応力比はそれぞれ0.98、0.91及び1.01であり、基準値を下回っている。比較例6及び比較例7は、P又はSの含有量が多く、介在物を多く生成し、結晶粒界の強度を低下させたためと考えられる。また、比較例10は、s−Al及びNの含有量が少なく、結晶粒の微細化をもたらすAlNの析出が少ないため結晶粒が粗くなったと考える。
また、上記したように、被削材を加工する切削工具の逃げ面の欠損による寿命は、被削材のSi及びSの含有量に影響を受ける。すなわち、Siは、切削加工中に切削工具の表面に酸化皮膜を形成させて、切削工具のチッピングを低減させ得る。かかる酸化皮膜については、潤滑性を向上させて切削抵抗を減少させるものと推測される。また、Sは、介在物としてMnSを形成し、切り屑を細かく分断しやすくさせて、切削抵抗を減少させ得るのである。
そこで、このような切削工具の逃げ面の欠損寿命に対する尺度としての逃げ面欠損パラメータNvbについて、実施例1乃至8を含む一連の機械構造用鋼のSi、Sの含有量と逃げ面欠損寿命比とについて回帰計算を行って求めた。すなわち、元素Mの質量%を[M]とすると、逃げ面欠損パラメータNvbは、
vb=5.44×[Si]+34.6×[S]−0.71
である。
図5に示すように、逃げ面欠損パラメータNvbが0.35以上の範囲内ならば、逃げ面欠損寿命比は基準値を上回る。つまり、逃げ面欠損パラメータNvbを0.35以上の範囲内となるように鋼に含まれるSi、Sの成分を調整することで、逃げ面欠損寿命比を基準値である1.00以上の範囲内に制御し得る。すなわち、以下の式2を満たす場合である。
vb=5.44×[Si]+34.6×[S]−0.71≧0.35 (式2)
つまり、
5.44×[Si]+34.6×[S]≧1.06 (式3)
を満たすことが必要である。
なお、逃げ面欠損寿命は旋削加工の条件によっても変化し、例えば、切削速度の比較的高い領域において従来材に比べて逃げ面欠損寿命が長くなる傾向も観察されている。
以上、述べてきたように、従来材に対して、Siの含有量を減じつつSの含有量を増加させ、さらに、Si、Mn及びCrの含有量を(式1)を満たすように調整し、浸炭処理などの表面硬化熱処理における粒界酸化を抑制することで、従来材よりも高い曲げ疲労強度を確保できる。加えて、Si及びSの含有量を(式2)を満たすように調整することで、従来材と同等以上の逃げ面欠損寿命を得ることができる。つまり、高い疲労強度を有するとともに、これを切削加工するために使用される切削工具のチッピングを抑制出来て、安定して平滑な切削面を与え得る機械構造用鋼を提供できる。
これらの結果に基づいて、上記した実施例1乃至8に示す成分組成の鋼によって得られる機械構造用鋼としての特性を損なわない範囲において、その各々の組成成分の範囲を以下のような指針で定めた。
Cは、表面硬化熱処理後に機械構造用鋼として必要とされる機械的強度、特に心部の強度を確保するために必須の添加元素である。すなわち、Cの添加量が少なすぎると、心部強度を確保できない。一方、Cの添加量が多すぎると、熱間鍛造性や機械加工性といった製造性を低下させてしまう。そこで、Cの含有量は、質量%で、0.15〜0.25%の範囲内である。
Siは、溶鋼の脱酸剤であり、更に、鋼の焼入れ性を高める。また、切削加工中には切削工具の表面に酸化皮膜を形成させ、切削工具の寿命を向上させ得る。しかし、Siの添加量が多すぎると、表面硬化熱処理時に粒界酸化を進行させ、機械構造用鋼として必要とされる疲労強度を確保できなくなる。そこで、Siの含有量は、質量%で、0.04〜0.15%の範囲内である。
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、機械構造用鋼として必要とされる機械的強度の確保に必要である。Mnの添加量が少なすぎると、焼入れが不足し、機械構造用鋼として必要とされる機械的強度を確保できない。一方、上記したように、Mnの添加量が多すぎると、表面硬化熱処理時に粒界酸化が進行し、機械構造用鋼として必要とされる曲げ疲労強度が確保できない。そこで、Mnの含有量は、質量%で、0.6〜1.0%の範囲内である。
Pは、結晶粒界を脆化させて機械的強度を低下させるとともに疲労強度を低下させ得る。しかし、一定の含有量以下であればこの疲労強度の低下は軽微でもある。また、含有量を極度に低減させると精錬プロセスが長くなってしまうことから、コストを増大させる原因ともなり得る。そこで、Pの含有量は、質量%で0.030%以下とした。
Sは、不可避的に鋼中に存在するが、Mnと結合してMnS介在物を生成し、切り屑を細かく分断しやすくさせる。すなわち切り屑の破砕性を向上させ得る。Sの含有量が少なすぎると、切り屑の破砕性が低下し、加工性を低下させ得る。一方、Sの含有量が多すぎると、応力集中の起点となる介在物を増加させ、機械構造用鋼として必要とされる疲労強度の確保が困難となる。そこで、Sの含有量は質量%で0.015〜0.030%の範囲内である。
Cuは、鋼の焼入れ性を向上させ得る。しかし、添加量に対する効果は徐々に飽和し、またコストの増大要因ともなり得る。そこで、Cuの含有量は、質量%で0.30%以下の範囲内である。
Niは、鋼の焼入れ性を向上させ、鋼の耐摩耗性を向上させ得る。しかし、添加量に対する効果は徐々に飽和し、またコストの増大要因ともなり得る。そこで、Niの含有量は、質量%で1.00%以下の範囲内である。
Moは、鋼の焼入れ性を向上させ、鋼の耐摩耗性を向上させ得る。しかし、添加量に対する効果は徐々に飽和し、またコストの増大要因ともなり得る。そこで、Moの含有量は、質量%で1.00%以下の範囲内である。
なお、Ni及びMoは、ほぼ等価に鋼の耐摩耗性を向上させ得るため、Ni及びMoの含有量の合計を質量%で1.00%以下の範囲内、すなわち、元素Mの質量%を[M]とすると、[Ni]+[Mo]≦1.00とされる。
Crは、鋼の焼入れ性を向上させ、機械的強度を向上させ得る。つまり、Crの添加量が少なすぎると焼入れ性が不足し曲げ疲労強度を低下させ得る。一方、Crの添加量が多すぎると、上記したように、表面硬化熱処理時に粒界酸化が進行し、機械構造用鋼として必要とされる曲げ疲労強度が確保できない。そこで、Crの含有量は、質量%で、1.0〜2.0%の範囲内である。
s−Alは、溶鋼の脱酸作用を有する。また、Nと結合して結晶粒を微細化させるAlNを形成し、機械構造用鋼として必要とされる曲げ疲労強度を向上させ得る。しかし、s−Alの含有量が多すぎると、介在物を増加させ、機械構造用鋼として必要とされる曲げ疲労強度が確保できない。そこで、s−Alの含有量は、質量%で0.010〜0.050%の範囲内である。
Nは、Al、Nb、Ti等と結合して結晶粒を微細化させる窒化物を形成し、機械構造用鋼として必要とされる曲げ疲労強度を向上させ得る。しかし、Nの含有量が多すぎると、曲げ疲労強度の向上能は飽和してしまう。そこで、Nの含有量は、0.005〜0.030%の範囲内である。
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
10 疲労試験片
20 旋削試験片
21 試験部
22 チャック部

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.04〜0.15%、Mn:0.6〜1.0%、P:≦0.030%、S:0.015〜0.030%、Cu:≦0.30%、Ni:≦1.00%、Cr:1.0〜2.0%、Mo:≦1.00%、s−Al:0.010〜0.050%、及び、N:0.005〜0.030%を含み、残部Fe及び不純物からなり、元素Mの質量%を[M]とすると、
    10.0×[Si]+[Mn]+[Cr]≦3.90
    5.44×[Si]+34.6×[S]≧1.06
    [Ni]+[Mo]≦1.00
    を満たし、主としてフェライト・パーライト組織からなることを特徴とする機械構造用鋼。
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