JP2015033153A - 電力変換装置および電力変換方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】システムの複雑化やコストアップを伴うことなく、車両の衝突時や動力の停止時に、インバータや三相交流電動機を適正に保護しながら、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電させることができる電力変換装置および電力変換方法を得る。
【解決手段】放電判定指示部が、放電動作の実行を指示した場合に、インバータ制御部は、インバータに含まれるパワー半導体素子の短絡故障の有無を検出するとともに、インバータと電動機との接続点の電位を、あらかじめ設定された電位に固定し、コンバータ制御部は、インバータと電動機との接続点の電位が、あらかじめ設定された電位に固定された後に、第1平滑コンデンサおよび第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電させる。
【選択図】図1

Description

この発明は、例えばハイブリッド自動車等の車両に搭載される電力変換装置および電力変換方法に関する。
従来、充放電可能な直流電源と、直流電源から供給される直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、直流電源と昇圧コンバータとの間の電圧を平滑化する第1平滑コンデンサと、昇圧コンバータから出力される高圧の直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、昇圧コンバータとインバータとの間の電圧を平滑化する第2平滑コンデンサと、インバータから出力される交流電圧が印加されることにより、車両の駆動力や制動力が制御される三相交流電動機とを備えたハイブリッド自動車が知られている。
このようなハイブリッド自動車では、車両の安全性を確保するために、車両の衝突時や動力の停止時に、平滑コンデンサに蓄えられた高電圧の電荷を速やかに放電し、感電を防止する必要がある。
そこで、衝突検知手段により衝突が検知された後、インバータの上アームトランジスタのすべてをオフすると同時に下アームトランジスタのすべてをオンし、その後、三相交流電動機に逆起電力が発生していない場合には、インバータの上アームトランジスタの少なくとも1つに所定値(トランジスタがオンする電圧)よりも低い入力電圧を印加するとともに、この所定値よりも低い入力電圧が印加された上アームトランジスタに直列に接続された下アームトランジスタをオンする車両およびその制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、この車両およびその制御方法では、衝突検知手段により衝突が検知された後に、インバータの上アームトランジスタのすべてがオフされると同時に下アームトランジスタのすべてがオンされる。これにより、衝突が検知された後に三相交流電動機に逆起電力が発生している場合には、逆起電力による電流が、インバータの各下アームトランジスタおよびダイオードを概ね均等に分配されながら流れることになる。
したがって、単一の下アームトランジスタに集中して電流が流れるのを抑制して、下アームトランジスタを保護するとともに、三相交流電動機の各相に半波電流が流れないようにして、三相交流電動機の磁石に減磁が生じるのを抑制している。
また、インバータの上アームトランジスタのすべてをオフすると同時に下アームトランジスタのすべてをオンすることにより、平滑コンデンサからの放電電流と逆起電力による電流とが同時に流れることで、インバータの上アームトランジスタおよび下アームトランジスタが過熱状態となるのを抑制している。
なお、三相交流電動機に逆起電力が発生した場合、この三相交流電動機には、その回転を止める方向のトルクが発生し、このトルクにより三相交流電動機の回転がある程度低下した段階で逆起電力が発生しなくなる。
次に、インバータの上アームトランジスタのすべてがオフされると同時に下アームトランジスタのすべてがオンされた後、三相交流電動機に逆起電力が発生していない場合には、インバータの上アームトランジスタの少なくとも1つに所定値よりも低い入力電圧が印加されるとともに、この所定値よりも低い入力電圧が印加された上アームトランジスタに直列に接続された下アームトランジスタがオンされる。
このとき、インバータの上アームトランジスタのうち、所定値よりも低い入力電圧が印加された上アームトランジスタの抵抗値は、完全オン時の抵抗値よりも大きくなり、この上アームトランジスタを流れる電流の値は小さくなる。
したがって、所定値よりも低い入力電圧が印加された上アームトランジスタに対応した下アームトランジスタをオンすることで、上アームトランジスタおよび下アームトランジスタに大電流が流れるのを抑制しながら、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電させることを可能としている。
すなわち、この車両およびその制御方法により、衝突検知時にインバータや三相交流電動機を適正に保護しながら、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電させることを可能にしている。
特許第5177245号公報
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1に記載された車両およびその制御方法では、衝突が検知された後に、インバータの上アームトランジスタのすべてがオフされると同時に下アームトランジスタのすべてがオンされるが、例えば衝突により上アームトランジスタの少なくとも1つが短絡した場合が考慮されていない。
ここで、上アームトランジスタの少なくとも1つに短絡状態(常時完全オン)となる故障が生じていた場合には、この上アームトランジスタおよびこの上アームトランジスタに直列に接続された下アームトランジスタに集中して許容値を超える大電流が流れ続け、このトランジスタの異常な温度上昇によって発煙、発火に至る恐れがある。
また、大電流が流れることにより、上アームトランジスタおよび下アームトランジスタの少なくとも1つが破壊されると、三相交流電動機の逆起電力がなくなってから、インバータの上アームトランジスタの少なくとも1つに所定値よりも低い入力電圧が印加されるとともに、この所定値よりも低い入力電圧が印加された上アームトランジスタに直列に接続された下アームトランジスタがオンされても、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電させることができない恐れがある。
さらに、三相交流電動機の逆起電力がなくなってから、インバータの上アームトランジスタの少なくとも1つに所定値よりも低い入力電圧が印加されるとともに、この所定値よりも低い入力電圧が印加された上アームトランジスタに直列に接続された下アームトランジスタがオンされる場合に、上アームトランジスタの少なくとも1つに短絡状態(常時完全オン)となる故障が生じていたときも、上記と同様に許容値を超える大電流が流れ続け、このトランジスタの異常な温度上昇によって発煙、発火に至る恐れがある。
なお、大電流が流れることによる上アームトランジスタおよび下アームトランジスタの破壊を防止する保護装置が作動し、上アームトランジスタまたは下アームトランジスタが自動でオフされた場合には、電流が遮断され、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電させることができない恐れがある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、システムの複雑化やコストアップを伴うことなく、車両の衝突時や動力の停止時に、インバータや三相交流電動機を適正に保護しながら、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電させることができる電力変換装置および電力変換方法を得ることを目的とする。
この発明に係る電力変換装置は、直流電源と、直流電源から供給される直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、直流電源と昇圧コンバータとの間の電圧を平滑化する第1平滑コンデンサと、昇圧コンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、昇圧コンバータとインバータとの間の電圧を平滑化する第2平滑コンデンサと、インバータから出力される交流電圧が印加される電動機と、昇圧コンバータに含まれるパワー半導体素子のスイッチング動作を制御するコンバータ制御部と、インバータに含まれるパワー半導体素子のスイッチング動作を制御するインバータ制御部と、車両の衝突を検知した場合および車両の使用を終了し動力の停止状態とする場合の少なくとも一方の場合に、第1平滑コンデンサおよび第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電する指示を出す放電判定指示部と、を備え、放電判定指示部が、放電動作の実行を指示した場合に、インバータ制御部は、インバータに含まれるパワー半導体素子の短絡故障の有無を検出するとともに、インバータと電動機との接続点の電位を、あらかじめ設定された電位に固定し、コンバータ制御部は、インバータと電動機との接続点の電位が、あらかじめ設定された電位に固定された後に、第1平滑コンデンサおよび第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電させるものである。
この発明に係る電力変換装置によれば、放電判定指示部が、放電動作の実行を指示した場合に、インバータ制御部は、インバータに含まれるパワー半導体素子の短絡故障の有無を検出するとともに、インバータと電動機との接続点の電位を、あらかじめ設定された電位に固定し、コンバータ制御部は、インバータと電動機との接続点の電位が、あらかじめ設定された電位に固定された後に、第1平滑コンデンサおよび第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電させる。
そのため、システムの複雑化やコストアップを伴うことなく、車両の衝突時や動力の停止時に、インバータや三相交流電動機を適正に保護しながら、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電させることができる。
この発明の実施の形態1に係る電力変換装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態1に係る電力変換装置の昇圧コンバータによる平滑コンデンサの電荷を放電する放電動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態1に係る電力変換装置における昇圧コンバータの変換主回路の接続を示す説明図である。 (a)〜(c)は、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置における昇圧コンバータによる平滑コンデンサの放電動作を示す説明図である。 この発明の実施の形態1に係る電力変換装置における昇圧コンバータの半導体スイッチ素子によるスイッチング動作を示す説明図である。 この発明の実施の形態2に係る電力変換装置の昇圧コンバータを示す構成図である。
以下、この発明に係る電力変換装置および電力変換方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、以下の実施の形態では、電力変換装置がハイブリッド自動車に搭載されている場合について説明するが、電力変換装置は、ハイブリッド自動車以外の車両に搭載されてもよい。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置を示す構成図である。図1において、この電力変換装置は、直流電源10、昇圧コンバータ20、第1平滑コンデンサ30および1次電圧センサ31、インバータ40、第2平滑コンデンサ50および2次電圧センサ51、電動機60、リレー70並びに放電制御部80を備えている。
直流電源10は、充放電可能であり、インバータ40を介して電動機60と電力をやり取りする。昇圧コンバータ20は、直流電源10とインバータ40との間に設けられ、直流電源10から供給される直流電圧を、DC/DC変換により昇圧する。第1平滑コンデンサ30は、直流電源10と昇圧コンバータ20との間に接続され、直流電源10と昇圧コンバータ20との間の電圧を平滑化する。1次電圧センサ31は、第1平滑コンデンサ30の高電圧ノードと低電圧ノードとの間の電圧を計測する。
インバータ40は、昇圧コンバータ20から出力される高圧の直流電圧を、DC/AC変換により交流電圧に変換する。第2平滑コンデンサ50は、昇圧コンバータ20とインバータ40との間に接続され、昇圧コンバータ20とインバータ40との間の電圧を平滑化する。2次電圧センサ51は、第2平滑コンデンサ50の高電圧ノードと低電圧ノードとの間の電圧を計測する。
電動機60は、インバータ40から出力される交流電圧が印加されることにより、車両の駆動力や制動力が制御される。リレー70は、車両の稼動時には、直流電源10と第1平滑コンデンサ30および昇圧コンバータ20とを閉状態で接続し、車両の衝突時または動力の停止時には、直流電源10と第1平滑コンデンサ30および昇圧コンバータ20とを開状態で切断する。
放電制御部80は、放電判定指示部81、コンバータ制御部82およびインバータ制御部83を有している。放電判定指示部81は、例えば加速度センサ(図示せず)により、車両の衝突を検知した場合(車両の衝突時)や、車両の使用を終了し動力の停止状態とする場合(動力の停止時)に、コンバータ制御部82およびインバータ制御部83に対して、第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50および昇圧コンバータ20内のエネルギー移行用コンデンサに蓄えられた電荷を放電するよう指示を出す。
コンバータ制御部82は、昇圧コンバータ20に含まれるパワー半導体素子の構成要素である半導体スイッチ素子のスイッチング動作を制御し、昇圧コンバータ20でのDC/DC変換を行う。インバータ制御部83は、インバータ40に含まれるスイッチングアームの高電圧側パワー半導体素子および低電圧側パワー半導体素子内の半導体スイッチ素子のスイッチング動作を制御し、インバータ40でのDC/AC変換を行う。
昇圧コンバータ20およびインバータ40において、パワー半導体素子は、半導体スイッチ素子と半導体整流素子とを相互に逆並列に接続したものを単位とする。また、パワー半導体素子の直列接続体をアームと称する。
ここで、インバータ40の詳細な構成について説明する。インバータ40内のアームは、駆動する電動機の相数に対応する本数が設けられており、図1に示されるように、電動機60が三相の電動機である場合、インバータ40は、U相、V相、W相の3つのスイッチングアーム41で構成される。
インバータ40のU相のスイッチングアーム41は、半導体スイッチ素子42a、42bとして、Siを材料とした絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を用い、半導体整流素子43a、43bとして、同じくSiを材料としたPiNダイオードを用いている。
半導体スイッチ素子42aのコレクタ電極Cには、半導体整流素子43aのカソード電極Kが接続され、半導体スイッチ素子42aのエミッタ電極Eには、半導体整流素子43aのアノード電極Aが接続され、相互に逆並列に接続されて、パワー半導体素子の一単位になっている。
また、同様に、半導体スイッチ素子42bのコレクタ電極Cには、半導体整流素子43bのカソード電極Kが接続され、半導体スイッチ素子42bのエミッタ電極Eには、半導体整流素子43bのアノード電極Aが接続されている。
このように、インバータ40のU相のスイッチングアーム41は、半導体スイッチ素子42aおよび半導体整流素子43aからなるパワー半導体素子と、半導体スイッチ素子42bおよび半導体整流素子43bからなるパワー半導体素子とが直列接続されて構成されている。
なお、インバータ40のV相およびW相のスイッチングアーム41も、半導体スイッチ素子42cおよび半導体整流素子43cからなるパワー半導体素子と、半導体スイッチ素子42dおよび半導体整流素子43dからなるパワー半導体素子との直列接続、並びに半導体スイッチ素子42eおよび半導体整流素子43eからなるパワー半導体素子と、半導体スイッチ素子42fおよび半導体整流素子43fからなるパワー半導体素子との直列接続により構成されている。
また、インバータ制御部83は、インバータ40に含まれるスイッチングアーム41の高電圧側パワー半導体素子44および低電圧側パワー半導体素子45内の半導体スイッチ素子のスイッチング動作を制御して、電動機60との接続ノードUac、Vac、Wacの電位を調整することで、電動機60に流れる電流量を制御する。この結果、電動機60が車両の駆動力や制動力を制御することとなる。また、インバータ制御部83は、電動機60の回転情報を併せて取得する。
続いて、昇圧コンバータ20の詳細な構成について説明する。昇圧コンバータ20は、パワー半導体素子を4つ直列接続したアームを備えている。図1に示されるように、昇圧コンバータ20のアームは、半導体スイッチ素子21a、21b、21c、21dとして、Siを材料としたIGBTを用い、半導体整流素子22a、22b、22c、22dとして、同じくSiを材料としたPiNダイオードを用いている。
半導体スイッチ素子21aのコレクタ電極Cには、半導体整流素子22aのカソード電極Kが接続され、半導体スイッチ素子21aのエミッタ電極Eには、半導体整流素子22aのアノード電極Aが接続され、相互に逆並列に接続されて、パワー半導体素子の一単位になっている。
ここで、半導体スイッチ素子21dのエミッタ電極Eは、第1平滑コンデンサ30の低電圧ノードN1と接続され、かつ第2平滑コンデンサ50の低電圧ノードN2と接続されている。また、低電圧ノードN1は、リレー70を介して直流電源10の低電圧側出力端子と接続され、低電圧ノードN2は、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45のノードNu、Nv、Nwと接続されている。
したがって、リレー70が閉の状態では、直流電源10の低電圧側出力端子、低電圧ノードN1、N2およびインバータ40の低電圧側パワー半導体素子45のノードNu、Nv、Nwは、すべて同電位(代表して、電位Vn)となる。
また、半導体スイッチ素子21dのコレクタ電極Cは、半導体スイッチ素子21cのエミッタ電極Eおよびエネルギー移行用コンデンサ23の低電圧側ノードと接続されている。半導体スイッチ素子21cのコレクタ電極Cは、半導体スイッチ素子21bのエミッタ電極Eおよびリアクトル24のコイルの一端と接続されている。
また、半導体スイッチ素子21bのコレクタ電極Cは、半導体スイッチ素子21aのエミッタ電極Eおよびエネルギー移行用コンデンサ23の高電圧側ノードと接続されている。なお、リアクトル24の第1平滑コンデンサ30側には、昇圧コンバータ20を通過する電流を計測する電流センサ25が接続されている。また、エネルギー移行用コンデンサ23の近傍には、エネルギー移行用コンデンサ23の電圧を計測するエネルギー移行用コンデンサ部電圧センサ26が設けられている。
一方、半導体スイッチ素子21aのコレクタ電極Cは、第2平滑コンデンサ50の高電圧ノードP2と接続されている。また、高電圧ノードP2は、インバータ40の高電圧側パワー半導体素子44のノードPu、Pv、Pwと接続されている。したがって、高電圧ノードP2およびインバータ40の高電圧側パワー半導体素子44のノードPu、Pv、Pwは、すべて同電位(代表して、電位Vp)となる。
次に、車両の衝突時や動力の停止時における電力変換装置の動作について説明する。まず、放電制御部80は、例えば加速度センサにより、車両の衝突を検知した場合や、車両の使用を終了し動力の停止状態とする場合に、エンジン(図示せず)を停止して、車両を安全に停車させる。
続いて、放電判定指示部81は、コンバータ制御部82およびインバータ制御部83に対して、放電動作の実行を指示する。放電判定指示部81による放電動作の実行の指示に従い、インバータ制御部83は、まず、インバータ40内の半導体スイッチ素子をすべてオフ(開)状態となるように制御するとともに、電動機60の回転情報を取得する。
ここで、上記の制御を行ったにもかかわらず、電動機60からの回転情報が、電動機が回転中であることを示している場合には、車両の駆動輪(図示せず)が路面から浮いている状態で空転しているか、または衝突後も車両が完全に停止していない等、外的要因で電動機60が回転し続けている可能性がある。
このような場合には、電動機60に逆起電力が発生し、インバータ40内のパワー半導体素子に電流が流れることにより、本来は放電すべき第2平滑コンデンサ50が蓄電される恐れがある。
そこで、もし車両が衝突し、何らかの乗員の救護処置や車両の事故後処理を行うべきであるにもかかわらず、電動機60が回転し逆起電力が発生している状況であって、電力変換装置内部の平滑コンデンサに蓄積された電荷を速やかに放電し、感電を防止するためには、逆起電力が生じていても、平滑コンデンサを蓄電しないように制御することが望ましい。
そのため、電動機60とインバータ40との接続点の電位を、あらかじめ設定された所定電位に固定することで、インバータ40から第2平滑コンデンサ50への電荷の充電を阻止することが考えられる。ここで、この発明の実施の形態1において、所定電位とは、第2平滑コンデンサ50の高電圧ノードP2の電位Vp2、または低電圧ノードN2の電位Vn2と同じ電位である。
具体的には、この発明の実施の形態1では、電動機60の逆起電力による第2平滑コンデンサ50への充電を阻止するために、インバータ40の高電圧側パワー半導体素子44および低電圧側パワー半導体素子45の短絡を検出し、適切なインバータ制御を行えるようにしている。
以下、インバータ40の高電圧側パワー半導体素子44および低電圧側パワー半導体素子45の短絡故障を検出する動作について説明する。まず、インバータ制御部83により、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45をすべてオン動作する。このとき、それ以外のインバータ40の高電圧側パワー半導体素子44をすべてオフ動作する。
続いて、昇圧コンバータ20内の電流センサ25により、昇圧コンバータ20を通過する電流が計測され、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45すべてのオン動作によって、過大電流が導通する場合には、インバータ40の高電圧側パワー半導体素子44の少なくとも1つが短絡故障していると判定される。
このときの判定閾値は、低電圧側パワー半導体素子45および高電圧側パワー半導体素子44の短絡経路に許容値を超える過大電流が流れても、パワー半導体素子の異常な温度上昇による発煙、発火には至らない程度の値に設定される。また、このときの判定時間は、過大電流が導通しても高電圧側パワー半導体素子44および低電圧側パワー半導体素子45が破壊されない時間、例えば10μs以内に制限される。
なお、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45をすべてオン動作しても、電流センサ25に過大電流が流れない場合には、引き続きこのオン動作を継続する。
これに対して、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45をすべてオン動作すると、電流センサ25に過大電流が流れる場合には、低電圧側パワー半導体素子45のオン動作を止め、すべてオフ動作に切り替えた上で、高電圧側パワー半導体素子44をすべてオン動作し、電流センサ25により、昇圧コンバータ20に過大電流が導通するか否かを判定する。
このとき、インバータ40の高電圧側パワー半導体素子44すべてのオン動作によっても、過大電流が導通する場合には、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45および高電圧側パワー半導体素子44の双方が、それぞれ少なくとも1つの相で短絡故障していると判定され、高電圧側パワー半導体素子44のオン動作を止める。
なお、インバータ40の高電圧側パワー半導体素子44をすべてオン動作しても、電流センサ25に過大電流が流れない場合には、引き続きこのオン動作を継続する。
次に、電流センサ25に過大電流が流れない場合には、引き続きこのオン動作を継続しつつ、リレー70を開状態として、直流電源10と第1平滑コンデンサ30および昇圧コンバータ20との間を電気的に切断する。
これにより、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45および高電圧側パワー半導体素子44の双方が、それぞれ少なくとも1つの相で短絡故障している場合を除いて、電動機60とインバータ40との接続点の電位を所定電位に固定することにより、インバータ40から第2平滑コンデンサ50への電荷の充電を阻止する。
ここで、所定電位とは、第2平滑コンデンサ50の高電圧ノードP2の電位Vp2、または低電圧ノードN2の電位Vn2と同じ電位であることから、以下に説明するように、昇圧コンバータ20による第1平滑コンデンサ30および第2平滑コンデンサ50の電荷の放電によって電位Vp2が変化しても、電動機60から第2平滑コンデンサ50へ電荷が充電されることはない。
また、このとき、オフ動作している高電圧側パワー半導体素子44または低電圧側パワー半導体素子45には、短絡故障したパワー半導体素子がないので、過大電流が流れず、インバータ40および電動機60を保護することができる。
以上説明したように、インバータ40の高電圧側パワー半導体素子44および低電圧側パワー半導体素子45の短絡故障判定が終了すると、直流電源10と第1平滑コンデンサ30および昇圧コンバータ20との間が電気的に切断される。
続いて、コンバータ制御部82により、昇圧コンバータ20に含まれるパワー半導体素子の構成要素である半導体スイッチ素子21をスイッチング動作させ、第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23の電荷を放電する放電動作について説明する。
まず、これまで説明したように、放電制御部80は、車両の衝突を検知した場合や、車両の使用を終了し動力の停止状態とする場合に、エンジンを停止して、車両を安全に停車させている。また、放電判定指示部81は、コンバータ制御部82およびインバータ制御部83に、放電動作の実行を指示している。
また、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45および高電圧側パワー半導体素子44の双方が、それぞれ少なくとも1つの相で短絡故障している場合を除いて、電動機60とインバータ40との接続点の電位は、電位Vpまたは電位Vnに固定されており、さらに、リレー70を開状態として、直流電源10と第1平滑コンデンサ30および昇圧コンバータ20との間は、電気的に切断されている。
以下、図2に示したフローチャートを参照しながら、コンバータ制御部82により、半導体スイッチ素子21のスイッチング動作を制御して、第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23の電荷を放電する放電動作について説明する。
まず、開始後(ステップS100)、コンバータ制御部82は、半導体スイッチ素子21dをオン動作させるとともに、半導体スイッチ素子21a、21b、21cをオフ動作させる(ステップS101)。半導体スイッチ素子21dをオン動作させることで、エネルギー移行用コンデンサ23の低電圧ノードが、第2平滑コンデンサ50の低電圧ノードと同じ電位Vnになる。
次に、コンバータ制御部82は、エネルギー移行用コンデンサ部電圧センサ26から、エネルギー移行用コンデンサ23の高電圧ノードと電位Vnとの間の電圧V0を取得し、2次電圧センサ51から、第2平滑コンデンサ50の高電圧ノードと低電圧ノードとの間の電圧V2を取得する(ステップS102)。
ここで、この発明と同一の出願人による特許第5059160号公報において、エネルギー移行用コンデンサ23の両端電圧が、第2平滑コンデンサ50の端子間電圧V2の1/2倍となることが示されている。
このとき、半導体スイッチ素子21dをオン動作していることから、エネルギー移行用コンデンサ23の高電圧ノードと電位Vnとの間の電圧V0は、エネルギー移行用コンデンサ23の両端電圧とほぼ等しいことから、V0≒(V2/2)となり、V0<V2の関係が成り立っている。
続いて、コンバータ制御部82は、電圧V2と電圧V0との電圧差ΔV20=(V2−V0)を算出し(ステップS103)、ΔV20があらかじめ設定された所定閾値Vth1以上であるか否かを判定する(ステップS104)。
ステップS104において、ΔV20が所定閾値Vth1以上である(すなわち、Yes)と判定された場合には、ステップS105に移行する。なお、所定閾値Vth1は、第2平滑コンデンサ50の電荷を、エネルギー移行用コンデンサ23へ移す処理を行うか否かを判定する設定値となる。
次に、コンバータ制御部82は、半導体スイッチ素子21dをオン動作させ、半導体スイッチ素子21b、21cをオフ動作させるとともに、半導体スイッチ素子21aをスイッチング動作させて(ステップS105)、再度ステップS102に移行する。すなわち、ステップS101の状態から、新たに半導体スイッチ素子21aをスイッチング動作させる。
このとき、昇圧コンバータ20の変換主回路の接続は、図3に示すようになる。図3より、第2平滑コンデンサ50の低電圧ノードとエネルギー移行用コンデンサ23の低電圧ノードとは等しい。また、第2平滑コンデンサ50の高電圧ノードとエネルギー移行用コンデンサ23の高電圧ノードとは、半導体スイッチ素子21aがオン動作の場合に短絡され、半導体スイッチ素子21aがオフ動作の場合、半導体整流素子22aによって、電圧V0>電圧V2のときにはほぼ短絡状態となり、電圧V0≦電圧V2のときには開放状態となる。
そのため、半導体スイッチ素子21aがオン動作の場合には、第2平滑コンデンサ50からエネルギー移行用コンデンサ23へ電荷が移り、図4(a)〜(c)に示されるように、電圧V2と電圧V0とは、平衡する。
これにより、昇圧コンバータ20によって昇圧され、高電圧となっている第2平滑コンデンサ50の電荷は、エネルギー移行用コンデンサ23へ移り、その電圧は速やかに減少するので、感電の危険性は減少する。
図2に戻って、一方、ステップS104において、電圧V2と電圧V0との電圧差ΔV20が所定閾値Vth1未満である(すなわち、No)と判定された場合、すなわち、電圧V2と電圧V0とがほぼ平衡したと判定される場合には、ステップS106に移行する。
続いて、コンバータ制御部82は、半導体スイッチ素子21a、21dをオン動作させるとともに、半導体スイッチ素子21b、21cをスイッチング動作させる(ステップS106)。この半導体スイッチ素子の動作は、図5(a)に示すようになる。
図5(a)は、半導体スイッチ素子21a、21b、21c、21dのオン、オフ動作を時系列で示したタイムチャートであって、半導体スイッチ素子21a、21dは、常にオン動作としている。これにより、第2平滑コンデンサ50とエネルギー移行用コンデンサ23とは、互いの高電圧ノードおよび低電圧ノードが繋がり、並列接続となっている。
また、半導体スイッチ素子21bは、あらかじめ任意に設定された所定オン時間tonでスイッチング動作する。この場合、スイッチングDUTYは、DUTY=(ton/T)である。一方、半導体スイッチ素子21cは、半導体スイッチ素子21bと相補の論理関係となる。スイッチング動作の周波数fsw−dschrgは、平滑コンデンサの放電動作用の周波数として、正常時に昇圧コンバータ20の昇圧電圧を制御するときのfswとは異なる高い周波数に設定される。
図5(b)は、リアクトル24を導通する電流ILを示しており、図5(a)のスイッチング動作のタイムチャートと時間を同期して表記されている。リアクトル24を導通する電流ILは、すなわち昇圧コンバータ20を通過する電流であり、電流センサ25にて検出される。
この電流ILは、0(ゼロ)を跨いで正、負の極性に流れ、その平均値はおおよそ0、振幅はΔILとなる。また、この電流ILは、第1平滑コンデンサ30と、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23との間を行き来する電流であり、半導体スイッチ素子21cがオン動作の場合に負極性から正極性へ向けて増加し、オフ動作の場合に正極性から負極性へ向けて減少する。
ここで、電動機60とインバータ40との接続点の電位が所定電位に固定されていることから、電動機60は、電気負荷として作用していない。すなわち、リアクトル24には、直流成分の負荷電流は導通せず、第1平滑コンデンサ30と、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23との間で、無負荷電流が流れるのみである。
しかしながら、この無負荷電流は、昇圧コンバータ20内のリアクトル24、半導体スイッチ素子21および半導体整流素子22を導通経路とする。そのため、リアクトル24、半導体スイッチ素子21および半導体整流素子22に電流が流れることで、経路の抵抗成分にて損失が発生し、電気エネルギーが熱に変換されて第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23に蓄積された電荷が放電される。
すなわち、図5(b)に示されるように、第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23に蓄積された電荷の放電により、時刻t1における振幅ΔIL1に対して、無負過電流の導通を繰り返した後の時刻t2における振幅ΔIL2は、減衰した値となる。
図2に戻って、ステップS106で、半導体スイッチ素子21a、21dをオン動作させるとともに、半導体スイッチ素子21b、21cをオン時間tonでスイッチング動作させるように設定した後、コンバータ制御部82は、2次電圧センサ51から、第2平滑コンデンサ50の高電圧ノードと低電圧ノードとの間の電圧V2を取得する(ステップS107)。
次に、コンバータ制御部82は、電圧V2があらかじめ設定された所定閾値Vth2以上であるか否かを判定する(ステップS108)。
ステップS108において、電圧V2が所定閾値Vth2以上である(すなわち、Yes)と判定された場合には、再度ステップS106に移行して、上述した動作フローを繰り返す。
一方、ステップS108において、電圧V2が所定閾値Vth2未満である(すなわち、No)と判定された場合には、ステップS109に移行する。具体的には、第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23に蓄積された電荷の放電につれて、電圧V1、電圧V2が減少し、やがてV2がVth2未満となったところで、ステップS109に移行する。
続いて、コンバータ制御部82は、半導体スイッチ素子21a、21b、21c、21dのすべてをオフ動作に設定し(ステップS109)、第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23の電荷を放電する放電動作を終了する(ステップS110)。
このように、正常動作時に必要な電力変換装置の構成に新たな部品を付加することなく、車両の衝突を検知した場合や、車両の使用を終了し動力の停止状態とする場合に、インバータ40の低電圧側パワー半導体素子45および高電圧側パワー半導体素子44のオン動作およびオフ動作を、上述した手順に従って切り替えることにより、電動機60とインバータ40との接続点の電位を所定電位に固定する。
また、リレー70を開状態として、直流電源10と第1平滑コンデンサ30および昇圧コンバータ20との間を電気的に切断した後、まず、半導体スイッチ素子21dをオン動作させ、半導体スイッチ素子21b、21cをオフ動作させるとともに、半導体スイッチ素子21aをスイッチング動作させて、第2平滑コンデンサ50からエネルギー移行用コンデンサ23へ電荷を移し、電力変換装置の中で最も高電圧な部位である第2平滑コンデンサ50の電圧V2を減少させる。これにより、感電の危険は速やかに減少する。
続いて、半導体スイッチ素子21a、21dをオン動作させるとともに、第2平滑コンデンサ50とエネルギー移行用コンデンサ23とを並列接続としつつ、半導体スイッチ素子21b、21cをスイッチング動作させて無負荷動作を行う。
この無負荷動作によって、昇圧コンバータ20内のリアクトル24、半導体スイッチ素子21および半導体整流素子22に電流を流し、経路の抵抗成分で電気エネルギーが熱に変換されて第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23に蓄積された電荷が放電される。これにより、何らかの乗員の救護処置や車両の事故後処理を行うべき場合に、感電を防止して安全性を確保することができる。
以上のように、実施の形態1によれば、放電判定指示部が、放電動作の実行を指示した場合に、インバータ制御部は、インバータに含まれるパワー半導体素子の短絡故障の有無を検出するとともに、インバータと電動機との接続点の電位を、あらかじめ設定された電位に固定し、コンバータ制御部は、インバータと電動機との接続点の電位が、あらかじめ設定された電位に固定された後に、第1平滑コンデンサおよび第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電させる。
また、インバータは、高電圧側パワー半導体素子および低電圧側パワー半導体素子を含むスイッチングアームを有し、昇圧コンバータは、複数のパワー半導体素子を直列接続したアームと、アームのパワー半導体素子の直列接続体において、変換主回路の2次側端子の高電圧側ノードに接続されるパワー半導体素子と、変換主回路の2次側端子の低電圧側ノードに接続されるパワー半導体素子とを除いて、複数のパワー半導体素子のうち、最高電圧ノードと最低電圧ノードとの間に接続されたエネルギー移行用コンデンサと、複数のパワー半導体素子の少なくとも1つのパワー半導体素子同士の接続ノードに接続されたリアクトルと、を有し、インバータ制御部は、スイッチングアームの高電圧側パワー半導体素子および低電圧側パワー半導体素子のうち、何れの側も短絡故障している相を含む場合を除いて、短絡故障している相を含む側のすべての半導体スイッチ素子をオン動作させるとともに、何れの相も短絡故障していない側のすべての半導体スイッチ素子をオフ動作させることで、インバータと電動機との接続点の電位を所定電位に固定し、コンバータ制御部は、昇圧コンバータのパワー半導体素子を構成する半導体スイッチ素子のスイッチを、2次平滑コンデンサからエネルギー移行用コンデンサへ電荷を放電させると場合と、1次平滑コンデンサ、2次平滑コンデンサおよびエネルギー移行用コンデンサに蓄積された電荷を同時に放電させる場合とで切り替えることにより、1次平滑コンデンサ、2次平滑コンデンサおよびエネルギー移行用コンデンサに蓄積された電荷を放電させる。
そのため、システムの複雑化やコストアップを伴うことなく、車両の衝突時や動力の停止時に、インバータや三相交流電動機を適正に保護しながら、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電させることができる。
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係る電力変換装置の昇圧コンバータを示す構成図である。図6において、この昇圧コンバータ20Aのアームは、半導体スイッチ素子26a、26b、26c、26dとして、図1に示したSi材料からなるIGBTではなく、バンドギャップがさらに大きいシリコンカーバイド(SiC:炭化珪素)材料のユニポーラ型の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を用いている。
この発明の実施の形態2に係る電力変換装置は、昇圧コンバータ20Aのパワー半導体素子が、バンドギャップがSi材料のバンドギャップよりも大きい半導体材料を用いた電界効果トランジスタで構成されることを除いて、上述した実施の形態1の電力変換装置と同様である。そこで、以下、実施の形態1と同じ構成、動作、作用については、適宜説明を省略する。
電界効果トランジスタは、その内部構造に起因して、双方向導通が可能な半導体素子であり、電圧の逆バイアス時(ドレイン電極の電位よりもソース電極の電位の方が高い状態)でオフ動作であっても、ソース電極からドレイン電極の方向へ電流を導通することができる。
一方、順バイアス時(ソース電極の電位よりもドレイン電極の電位の方が高い状態)では、オン動作の場合にドレイン電極からソース電極の方向へ電流を導通し、オフ動作の場合には、電流は導通しない。この特性から、半導体スイッチ素子としての機能と半導体整流素子としての機能とを兼ねることができる。
また、電界効果トランジスタは、ユニポーラ型の半導体素子なので、オン動作の状態からオフ動作の状態に切り替わるターンオフ時の終盤に、IGBTのようにドリフト層内の蓄積キャリアが再結合により消滅するまでの期間としてテール電流が流れるといった現象が生じず、スイッチングの応答が速いという特徴がある。そのため、IGBTよりも高周波数でのスイッチング動作が可能となる。
さらに、半導体材料として、Siではなくバンドギャップがさらに大きいワイドバンドギャップ材料であるシリコンカーバイド(SiC)を用いることにより、高い耐圧のユニポーラ型パワー半導体素子を、実用的な特性で実現することができる。これは、ワイドバンドギャップ半導体材料の絶縁破壊強度が、Siの絶縁破壊強度よりも数倍以上高い数値であるということに起因する。
すなわち、高い耐圧のパワー半導体素子を実現するためには、半導体の内部のドリフト領域に厚みを持たせ、内部の電界強度が絶縁破壊を起こさないように厚みを設定する必要がある。しかしながら、Si材料を用いたユニポーラ型のパワー半導体素子では、耐圧が100Vを超える領域において絶縁破壊を生じない厚みを設定すると、ドリフト領域での抵抗成分による損失が著しく増加し、同程度の耐圧のバイポーラ型のパワー半導体素子と比較して、特性が劣ってしまう。
例えば、自動車に搭載の電気駆動システム用の電力変換装置に適用するパワー半導体素子は、直流電圧が100Vから約700Vに到る範囲の電圧帯を扱うので、耐圧が600V、あるいは1200Vのものが用いられる。このとき、Si材料を用いたユニポーラ型のパワー半導体素子では、損失が大きく、発熱による温度上昇により耐熱温度を超過することから、実用が困難であった。
一方、ワイドバンドギャップ半導体材料の高絶縁破壊強度という特徴をいかすと、半導体の内部のドリフト領域の厚みを薄くすることができ、耐圧が600Vから1200V程度であっても、特性が良いユニポーラ型のパワー半導体素子が実現することができる。なお、絶縁破壊強度は、Siが3.0×10V/cmであり、シリコンカーバイド(4H−SiC)が2.5×10V/cmである。
この発明の実施の形態2に係る電力変換装置では、上記シリコンカーバイド材料の電界効果トランジスタの特徴を用いて、昇圧コンバータ20Aの半導体スイッチ素子のスイッチング動作の周波数fsw−dschrg−SiCを、上述した実施の形態1でのスイッチング動作の周波数fsw−dschrgと比べて高く動作させる。
これにより、リアクトル24を導通する電流のリプル成分ΔILは、波形の山部と谷部との間隔が短縮されて振幅が小さくなるものの、それに増してリアクトル24で発生する損失が増大し、第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23に蓄積された電荷の放電を促進して、より短時間で電荷を放電することができる。
なお、リアクトル24で生じる損失は、コイル部分で発生する銅損成分と、コイルに導通する電流によって誘導される磁気により、コア部分で発生する鉄損成分とからなる。また、銅損成分は、コイルに直流電流が流れることで生じる直流抵抗損と、交流電流(リプル電流)が流れることで生じる交流抵抗損と、コアからの漏れ磁束が導体に鎖交することで生じる損失とに分けられる。
ここで、この発明の実施の形態2に係る電力変換装置において、平滑コンデンサに蓄積された電荷の放電動作に際しては、直流成分の負荷電流は導通せず、第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23の間で無負荷電流が流れるのみであり、直流抵抗損は生じない。
また、交流抵抗損は、コイルに流れる交流電流の周波数が高いほど、導体の中心部に電流が流れにくくなる表皮効果と、コイルの隣接する巻回部分に、同方向に電流が流れると、相互の導体の近接部分で磁束数が増すので、近接していない側を流れようとして抵抗が増す近接効果とに起因する。これらは、何れも電流の周波数に対して、指数的に損失が増大する。
また、鉄損成分は、コアの内部の磁束が変化し、磁区が磁界の向きを変える際に生じるヒステリシス損と、コアに渦電流が流れることで生じる渦電流損とに起因する。これらは、何れもコイルに流れる交流電流によって誘導される交番磁束の周波数に対して、指数的に損失が増大する。
したがって、上述したように、リアクトル24のコイルに導通する交流電流(リプル電流)の周波数が高ければ高いほど、発生する損失が増大する。パワー半導体素子よりも著しく熱容量が大きいリアクトル24において、積極的に第1平滑コンデンサ30、第2平滑コンデンサ50およびエネルギー移行用コンデンサ23に蓄積された電荷を熱に変換するよう作用させれば、温度上昇による部品の劣化を抑制しながら、さらに迅速に電荷を放電することができる。
このように、昇圧コンバータ20のパワー半導体素子が、バンドギャップがSi材料のバンドギャップよりも大きい半導体材料を用いた電界効果トランジスタで構成され、平滑コンデンサに蓄積された電荷の放電動作に際して、半導体スイッチ素子のシリコンカーバイド材料による電界効果トランジスタ(FET)を、Si材料によるIGBTよりも高周波数でスイッチングすることにより、リアクトル24の損失を増大させて、短時間に放電を終了し、感電の可能性をさらに低減することができる。
また、実用的な半導体接合部温度の上限が、Si材料によるパワー半導体素子(半導体スイッチ素子、半導体整流素子)よりも引き上げられることから、Si材料によるパワー半導体素子を用いたものよりも、さらに速やかに平滑コンデンサに蓄えられた電荷を放電し、感電する可能性を低減することができる。
以上のように、実施の形態2によれば、昇圧コンバータに含まれるパワー半導体素子は、バンドギャップがSi材料のバンドギャップよりも大きい半導体材料からなる電界効果トランジスタである。
そのため、Si材料によるパワー半導体素子を用いたものよりも、さらに速やかに平滑コンデンサに蓄えられた電荷を放電することができる。
なお、上述した実施の形態1および実施の形態2は、この発明の好適な実施事例を例示したものに過ぎない、すなわち、これらの実施の形態の構成、動作に限定されるものでなく、この発明の範囲内にある限り、別な構成、動作へ変更を加えて実施してもよい。
例えば、昇圧コンバータ20、20Aとして、単一のリアクトル、単一のアームおよび単一のエネルギー移行用コンデンサを備えた構成を用いて説明したが、これに限定されず、複数のリアクトル、複数のアームおよび複数のエネルギー移行用コンデンサを備えて並列動作するものであってもよい。
また、インバータ40は、これにより駆動される電動機60を1つ備える構成を用いて示したが、これに限定されず、必ずしもインバータと電動機との組は、1つでなくてもよい。すなわち、複数の組を備え、電動機が自動車の前後の異なる駆動軸に動力を伝達するものであってもよく、また、同じ駆動軸に複数の電動機から動力を伝達するものであってもよい。
何れの場合であっても、この発明の構成、動作によって、車両の衝突時や動力の停止時に、インバータや電動機を適正に保護しながら平滑コンデンサに蓄えられた電荷を速やかに放電して感電を防止することができる。
10 直流電源、20、20A 昇圧コンバータ、21a〜21d 半導体スイッチ素子、22a〜22d 半導体整流素子、23 エネルギー移行用コンデンサ、24 リアクトル、25 電流センサ、26 エネルギー移行用コンデンサ部電圧センサ、26a〜26d 半導体スイッチ素子、30 第1平滑コンデンサ、31 1次電圧センサ、40 インバータ、41 スイッチングアーム、42a〜42f 半導体スイッチ素子、43a〜43f 半導体整流素子、44 高電圧側パワー半導体素子、45 低電圧側パワー半導体素子、50 第2平滑コンデンサ、51 2次電圧センサ、60 電動機、70 リレー、80 放電制御部、81 放電判定指示部、82 コンバータ制御部、83インバータ制御部。
この発明に係る電力変換装置は、直流電源と、直流電源から供給される直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、直流電源と昇圧コンバータとの間の電圧を平滑化する第1平滑コンデンサと、昇圧コンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、昇圧コンバータとインバータとの間の電圧を平滑化する第2平滑コンデンサと、インバータから出力される交流電圧が印加される電動機と、昇圧コンバータに含まれるパワー半導体素子のスイッチング動作を制御するコンバータ制御部と、インバータに含まれるパワー半導体素子のスイッチング動作を制御するインバータ制御部と、車両の衝突を検知した場合および車両の使用を終了し動力の停止状態とする場合の少なくとも一方の場合に、第1平滑コンデンサおよび第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電する指示を出す放電判定指示部と、昇圧コンバータを通過する電流を計測する電流センサと、直流電源と第1平滑コンデンサとの間に接続されたリレーと、を備え、インバータは、高電圧側パワー半導体素子および低電圧側パワー半導体素子を含むスイッチングアームを有し、昇圧コンバータは、複数のパワー半導体素子を直列接続したアームと、アームのパワー半導体素子の直列接続体において、変換主回路の2次側端子の高電圧側ノードに接続されるパワー半導体素子と、変換主回路の2次側端子の低電圧側ノードに接続されるパワー半導体素子とを除いて、複数のパワー半導体素子のうち、最高電圧ノードと最低電圧ノードとの間に接続されたエネルギー移行用コンデンサと、複数のパワー半導体素子の少なくとも1つのパワー半導体素子同士の接続ノードに接続されたリアクトルと、を有し、放電判定指示部が、放電動作の実行を指示した場合に、インバータ制御部は、インバータに含まれるパワー半導体素子の短絡故障の有無を検出するとともに、インバータと電動機との接続点の電位を、あらかじめ設定された電位に固定し、コンバータ制御部は、インバータと電動機との接続点の電位が、あらかじめ設定された電位に固定された後に、リレーが開放して、直流電源と第1平滑コンデンサとの間を電気的に切断した状態で、第1平滑コンデンサおよび第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電させるものであり、インバータ制御部は、インバータを構成する高電圧側パワー半導体素子および低電圧側パワー半導体素子のうち、一方をオン動作させるとともに、他方をオフ動作させ、このとき電流センサで計測された電流に基づいて、高電圧側パワー半導体素子および低電圧側パワー半導体素子の短絡故障の有無を検出し、スイッチングアームの高電圧側パワー半導体素子および低電圧側パワー半導体素子のうち、何れの側も短絡故障している相を含む場合を除いて、短絡故障している相を含む側のすべての半導体スイッチ素子をオン動作させるとともに、何れの相も短絡故障していない側のすべての半導体スイッチ素子をオフ動作させることで、インバータと電動機との接続点の電位を、あらかじめ設定された電位に固定し、コンバータ制御部は、昇圧コンバータのパワー半導体素子を構成する半導体スイッチ素子のスイッチを、第2平滑コンデンサからエネルギー移行用コンデンサへ電荷を放電させ、その後、第1平滑コンデンサ、第2平滑コンデンサおよびエネルギー移行用コンデンサに蓄積された電荷を放電させるように動作させることにより、第1平滑コンデンサ、第2平滑コンデンサおよびエネルギー移行用コンデンサに蓄積された電荷を放電させるものである。

Claims (4)

  1. 直流電源と、
    前記直流電源から供給される直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、
    前記直流電源と前記昇圧コンバータとの間の電圧を平滑化する第1平滑コンデンサと、
    前記昇圧コンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、
    前記昇圧コンバータと前記インバータとの間の電圧を平滑化する第2平滑コンデンサと、
    前記インバータから出力される交流電圧が印加される電動機と、
    前記昇圧コンバータに含まれるパワー半導体素子のスイッチング動作を制御するコンバータ制御部と、
    前記インバータに含まれるパワー半導体素子のスイッチング動作を制御するインバータ制御部と、
    車両の衝突を検知した場合および車両の使用を終了し動力の停止状態とする場合の少なくとも一方の場合に、前記第1平滑コンデンサおよび前記第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電する指示を出す放電判定指示部と、を備え、
    前記放電判定指示部が、放電動作の実行を指示した場合に、
    前記インバータ制御部は、前記インバータに含まれるパワー半導体素子の短絡故障の有無を検出するとともに、前記インバータと前記電動機との接続点の電位を、あらかじめ設定された電位に固定し、
    前記コンバータ制御部は、前記インバータと前記電動機との接続点の電位が、あらかじめ設定された電位に固定された後に、前記第1平滑コンデンサおよび前記第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電させる
    電力変換装置。
  2. 前記インバータは、
    高電圧側パワー半導体素子および低電圧側パワー半導体素子を含むスイッチングアームを有し、
    前記昇圧コンバータは、
    複数のパワー半導体素子を直列接続したアームと、
    前記アームのパワー半導体素子の直列接続体において、変換主回路の2次側端子の高電圧側ノードに接続されるパワー半導体素子と、変換主回路の2次側端子の低電圧側ノードに接続されるパワー半導体素子とを除いて、前記複数のパワー半導体素子のうち、最高電圧ノードと最低電圧ノードとの間に接続されたエネルギー移行用コンデンサと、
    前記複数のパワー半導体素子の少なくとも1つのパワー半導体素子同士の接続ノードに接続されたリアクトルと、を有し、
    前記インバータ制御部は、
    前記スイッチングアームの前記高電圧側パワー半導体素子および前記低電圧側パワー半導体素子のうち、何れの側も短絡故障している相を含む場合を除いて、
    短絡故障している相を含む側のすべての半導体スイッチ素子をオン動作させるとともに、何れの相も短絡故障していない側のすべての半導体スイッチ素子をオフ動作させることで、前記インバータと前記電動機との接続点の電位を所定電位に固定し、
    前記コンバータ制御部は、
    前記昇圧コンバータの前記パワー半導体素子を構成する半導体スイッチ素子のスイッチを、前記2次平滑コンデンサから前記エネルギー移行用コンデンサへ電荷を放電させると場合と、前記1次平滑コンデンサ、前記2次平滑コンデンサおよび前記エネルギー移行用コンデンサに蓄積された電荷を同時に放電させる場合とで切り替えることにより、前記1次平滑コンデンサ、前記2次平滑コンデンサおよび前記エネルギー移行用コンデンサに蓄積された電荷を放電させる
    請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記昇圧コンバータに含まれる前記パワー半導体素子は、バンドギャップがSi材料のバンドギャップよりも大きい半導体材料からなる電界効果トランジスタである
    請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 直流電源と、
    前記直流電源から供給される直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、
    前記直流電源と前記昇圧コンバータとの間の電圧を平滑化する第1平滑コンデンサと、
    前記昇圧コンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、
    前記昇圧コンバータと前記インバータとの間の電圧を平滑化する第2平滑コンデンサと、
    前記インバータから出力される交流電圧が印加される電動機と、
    前記昇圧コンバータに含まれるパワー半導体素子のスイッチング動作を制御するコンバータ制御部と、
    前記インバータに含まれるパワー半導体素子のスイッチング動作を制御するインバータ制御部と、
    車両の衝突を検知した場合および車両の使用を終了し動力の停止状態とする場合の少なくとも一方の場合に、前記第1平滑コンデンサおよび前記第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電する指示を出す放電判定指示部と、を備えた電力変換装置によって実行される電力変換方法であって、
    前記放電判定指示部が、放電動作の実行を指示した場合に、
    前記インバータに含まれるパワー半導体素子の短絡故障の有無を検出するステップと、
    前記インバータと前記電動機との接続点の電位を、あらかじめ設定された電位に固定するステップと、
    前記第1平滑コンデンサおよび前記第2平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電させるステップと、を有する
    電力変換方法。
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