以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明に係る搬送装置を有する記録装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,Bに区分できる。空間A,Bには、給紙部23から排紙部4に向かう用紙搬送経路と、当該用紙搬送経路の下流側から上流側に向かう用紙再送経路とが形成されている。用紙Pは、図1に示されるように、用紙搬送経路では黒太矢印に沿って搬送され、用紙再送経路では白抜き太矢印に沿って搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像記録、用紙Pの排紙部4への搬送、及び、用紙Pの再送が行われる。空間Bでは、給紙部23から用紙搬送経路への給紙が行われる。
空間Aには、ブラックインクを吐出するヘッド2、用紙Pを搬送する搬送装置、及び、制御部100などが配置されている。本実施形態における搬送装置は、搬送機構3、用紙検出部50に加えて、後述の給紙モータ25M、搬送モータ41M〜48Mを制御する制御部100の一部によって構成されている。また、空間Aには、図示しないカートリッジが装着されている。このカートリッジには、ブラックインクが貯留されている。カーリッジは、チューブ及びポンプ(ともに図示せず)を介してヘッド2と接続され、インクがヘッド2に供給される。
ヘッド2は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するライン式のヘッドである。ヘッド2の下面は、多数の吐出口が開口した吐出面2aである。記録に際して、吐出面2aからブラックインクが吐出される。ヘッド2は、ヘッドホルダ2bを介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ2bは、吐出面2aがプラテン3d(後述する)との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド2を保持している。
搬送機構3は、上流ガイド部3a、下流ガイド部3b、再送ガイド部3c、プラテン3d、及び、駆動部を有している。プラテン3dは、ヘッド2の吐出面2aと対向する位置に配置されている。プラテン3dは、平坦な上面を有しており、用紙Pを下方から支持するとともに、吐出面2aとの間に記録領域(用紙搬送経路の一部)を構成する。上流ガイド部3a,下流ガイド部3bは、プラテン3dを挟んで配置されている。駆動部は、搬送モータ41M〜48M(図5参照)、後述の第1伝達機構61(図3参照)及び第2伝達機構62(図4参照)を有する。
上流ガイド部3aは、2つのガイド31,32と、2つの搬送ローラ対41,42とを有する。搬送ローラ対41は2つのガイド31,32間に配置され、搬送ローラ対42はガイド32とプラテン3dとの間に配置されている。各ガイド31,32は、互いに離隔した一対のガイド板を有する。各対のガイド板間及び搬送ローラ対41,42によって、給紙部23と記録領域(プラテン3dとヘッド2との間)とを繋ぐ上流側搬送経路が規定されている。各搬送ローラ対41,42は、2つのローラからそれぞれなり、一方のローラが伝達機構(不図示)を介して搬送モータ41M,42Mとそれぞれ接続され、搬送モータ41M,42Mの駆動力が伝達される。搬送モータ41M,42Mが制御部100の制御によって駆動されることで、各搬送ローラ対41,42の一方のローラ(駆動ローラ)が回転し、用紙Pを記録領域に向けて搬送する。このとき、各搬送ローラ対41,42の他方のローラ(従動ローラ)は、用紙Pの搬送に伴って回転する。
下流ガイド部3bは、2つのガイド33,34と、3つの搬送ローラ対43〜45とを有する。搬送ローラ対43は記録領域とガイド33との間に配置され、搬送ローラ対44は2つのガイド33,34間に配置され、搬送ローラ対45はガイド34と排紙部4との間に配置されている。ガイド33は、互いに離隔した一対のガイド板を有する。ガイド板34も厚み方向に互いに離隔した一対のガイド板34a,34bを有する。各対のガイド板34a,34b間及び搬送ローラ対43〜45によって、記録領域と排紙部4とを繋ぐ下流側搬送経路が規定されている。各搬送ローラ対43〜45も、2つのローラからそれぞれなる。搬送ローラ対43の一方のローラが伝達機構(不図示)を介して搬送モータ43Mと接続され、搬送モータ43Mの駆動力が伝達される。搬送ローラ対44の一方のローラが第2伝達機構62を介して搬送モータ44Mと接続され、搬送モータ44Mの駆動力が伝達される。搬送ローラ対45の一方のローラが第1伝達機構61を介して搬送モータ45Mと接続され、搬送モータ45Mの駆動力が伝達される。搬送モータ43M〜45Mが制御部100の制御によって駆動されることで、各搬送ローラ対43〜45の一方のローラ(駆動ローラ)が回転し、用紙Pを排紙部4に向けて搬送する。このとき、各搬送ローラ対43〜45の他方のローラ(従動ローラ)は、用紙Pの搬送に伴って回転する。用紙搬送経路は、4つのガイド31〜34、5つの搬送ローラ対41〜45、プラテン3d及びヘッド2によって規定されている。つまり、用紙搬送経路は、上流側搬送経路、記録領域及び下流側搬送経路によって構成されている。
再送ガイド部3cは、4つのガイド35〜38と、3つの搬送ローラ対46〜48とを有する。各ガイド35〜38は、互いに離隔した一対のガイド板を有する。各対のガイド板間及び搬送ローラ対46〜48によって、記録領域を迂回して上流側搬送経路と下流側搬送経路とを繋ぐ用紙再送経路が規定されている。4つのガイド35〜38は、下流側搬送経路から上流側搬送経路に向かって順に配置され、3つの搬送ローラ対46〜48がこれらガイド35〜38間に順に配置されている。また、ガイド35は、ガイド33の途中部位に接続され、下流側搬送経路と用紙再送経路とを繋いでいる。ガイド38は、ガイド31の途中部位に接続され、用紙再送経路と上流側搬送経路とを繋いでいる。各搬送ローラ対46〜48も、2つのローラからそれぞれなり、一方のローラが伝達機構(不図示)を介して搬送モータ46M〜48Mとそれぞれ接続され、搬送モータ46M〜48Mの駆動力が伝達される。搬送モータ46M〜48Mが制御部100の制御によって駆動されることで、各搬送ローラ対46〜48の一方のローラ(駆動ローラ)が回転し、用紙Pを上流ガイド部3aに向けて搬送する。このとき、各搬送ローラ対46〜48の他方のローラ(従動ローラ)は、用紙Pの搬送に伴って回転する。なお、8つの搬送ローラ対41〜48は、用紙搬送経路及び用紙再送経路に沿って互いに隣接する搬送ローラ対間の距離が、当該経路において搬送される用紙Pの長さ未満となるように配置されている。
また、2つの搬送ローラ対44,45は、制御部100の制御により、用紙Pの搬送方向が切り換えられる。つまり、搬送ローラ対44,45は、用紙Pを第1方向J1(用紙Pを記録領域から排紙部4へと搬送する方向:図2参照)に搬送するときと、用紙Pを第2方向J2(第1方向J1とは反対方向であって用紙Pを用紙搬送経路から用紙再送経路へと搬送する方向:図2参照)へと搬送するときとで、その回転方向が切り換えられる。用紙搬送経路から用紙再送経路に搬送されてきた用紙Pは、上流ガイド部3aに再送される。このとき、再送される用紙Pは、直前の記録領域を通過したときとはその表裏が反転した状態で当該記録領域に再び搬送される。こうして、用紙Pの両面に画像を記録することが可能となる。
空間Bには、給紙部23が配置されている。給紙部23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ24が、筐体1aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ24は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収容可能である。給紙ローラ25は、制御部100の制御によって給紙モータ25M(図5参照)が駆動されることで回転し、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙Pを送り出す。
ここで、副走査方向とは、搬送ローラ対42,43によって搬送される用紙搬送方向D、及び、搬送ローラ対47,48によって搬送される用紙搬送方向Eと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
次に、用紙検出部50及びこれが配置されたガイド34について、図2を参照しつつ詳述する。
ガイド34は、図2に示すように、一対のガイド板34a,34bを有する。一対のガイド板34a,34b間に規定される搬送経路Rは、ガイド板34aのガイド面34a4に沿ってその一部が湾曲する湾曲経路R1を有する。ガイド板34a(第1ガイド)は、鉛直方向に延在する鉛直部34a1と、水平方向に延在する水平部34a2と、これら鉛直部34a1及び水平部34a2を接続する湾曲部34a3(湾曲部分)とを有する。湾曲部34a3は、湾曲経路R1の外側を規定する。ガイド板34b(第2ガイド)は、鉛直部34a1と対向する鉛直部34b1と、水平部34a2と対向する水平部34b2と、これら鉛直部34b1及び水平部34b2を接続する湾曲部34b3(湾曲部分)とを有する。湾曲部34b3は、湾曲部34a3とで湾曲経路R1を規定する。つまり、湾曲部34b3は、湾曲経路R1の内側を規定する。また、湾曲部34b3は、湾曲部34a3とは反対側(図2中左斜め下側)に湾曲し、筐体1aに固定されている。このため、湾曲部34b3の大部分が、ガイド板34aのガイド面34a4から大きく離隔している。より具体的には、ガイド板34bは、突出位置にあるアームの先端(下面51a1)から用紙Pの厚みよりも大きな隙間を介して離れている。
また、湾曲部34a3には、貫通孔34a5が形成されている。この貫通孔34a5は、ガイド板34aの主走査方向の中央に形成されている。また、貫通孔34a5の主走査方向の長さは、搬送される用紙Pの主走査方向の長さよりも短い。貫通孔34a5は、搬送ローラ対44によって排紙部4に向かって搬送される用紙Pの先端がガイド面34a4に最初に接触する点である接触点H1よりも、第1方向J1に関して、下流に配置されている。この接触点H1は、搬送ローラ対44の2つのローラの中心を通る直線(第1直線)L1に直交し且つこれら2つのローラ同士の当接点を通る直線(第2直線)L2のうち、第1方向J1において当接点よりも下流側がガイド面34a4と交差する点である。換言すると、搬送ローラ対44は、第1方向J1に関して、直線L2の下流側とガイド面34a4とが交差する点(接触点H1)が貫通孔34a5よりも上流となるように配置されている。これにより、搬送ローラ対44によって、簡単に用紙Pをガイド板34aに向かって搬送することが可能となる。用紙Pが湾曲経路R1を搬送される際、用紙Pは湾曲経路R1に倣うように湾曲した形状となる。用紙Pが湾曲した形状になると、用紙Pには直線状の形状に戻ろうとする反力が生じる。この反力によって、用紙Pは、湾曲経路R1のうちの、外側を規定するガイド板34aのガイド面34a4に倣う。つまり、用紙Pが湾曲経路R1を搬送される際、用紙Pはガイド板34aのガイド面34a4に接触しつつ搬送される。なお、鉛直方向に延びる鉛直部34a1に対して、直線L2が平行になっているが、用紙Pが確実にガイド板34aのガイド面34a4に接触しつつ搬送されるように、直線L2が第1方向J1に向かうにつれて、鉛直部34a1に近づくように鉛直方向に対して交差していてもよい。
用紙検出部50は、図2に示すように、アーム51と、アーム51を回動可能に支持する軸52と、センサ53とを有する。軸52は、湾曲経路R1の外側に配置されている。具体的には、ガイド面34a4をガイド板34bとの間に挟む位置に配置されている。本実施形態における軸52は、ガイド板34aよりも外側に配置されているが、例えば、貫通孔34a5に配置されていてもよい。
アーム51は、直線状に延在している。また、アーム51は、アーム51の左側部分(図2中軸52よりも左側部分)51aが突出位置と退避位置との間において回動可能に軸52に支持されている。突出位置は、図2に示すように、左側部分51aが貫通孔34a5を介して湾曲経路R1内に突出する位置である。このとき、左側部分51aの下面51a1の一部が湾曲経路R1内に突出する。この下面部分は、搬送されてきた用紙Pと当接する当接部を構成する。退避位置は、左側部分51aの下面51a1が湾曲経路R1から退避する位置である(図6(a)参照)。なお、アーム51は、用紙Pと当接していないときは、図2に示すように、下面51a1が貫通孔34a5の内面に当接し、突出位置に位置決めされる。そして、用紙Pが下面51a1に当接し当該用紙Pが排紙部4に搬送されることで、左側部分51aが退避位置に回動する。アーム51が突出位置をとるとき、アーム51は、軸52からガイド板34bに近づくように、延在している。ここで、用紙Pは、ガイド板34aのガイド面34a4に沿って搬送されるため、アーム51の下面51a1に確実に当接する。また、アーム51は、用紙Pとの当接によって左側部分51aが退避位置に回動可能な自重に設定されている。
センサ53は、アーム51の右側部分(図2中軸52よりも右側部分)51bを検出する検出部53aを有する。検出部53aには、アーム51の回動に応じて、右側部分51bが出入り可能なスリット(不図示)が形成されている。検出部53aは、スリットを挟んで対向する部分に発光部と受光部がそれぞれ配置されている。この構成により、アーム51が突出位置にあるときは、図2に示すように、検出部53aのスリットに右側部分51bの一部が存在し、発光部から受光部への光が遮断される。アーム51が退避位置にあるときは、検出部53aのスリットに右側部分51bが存在せず(図6(a)参照)、発光部からの光を受光部が受光する。センサ53は、受光部が発光部からの光を受光することで、用紙Pの検出信号を制御部100に出力する。つまり、センサ53は、アーム51の位置に応じて、用紙Pの検出信号を出力する。制御部100は、センサ53が出力する検出信号によって、用紙Pの有無を判定する。制御部100は、センサ53が出力する検出信号を用いて、用紙Pの搬送の方向を、第1方向J1から第2方向J2へと反転させるための、タイミングを決定する。また、制御部100は、センサ53が出力する検出信号によって、用紙ジャムの発生の有無を検出してもよい。なお、制御部100は、当該タイミングを決定するために、センサ53が出力する検出信号を用いず、別の位置に設けた用紙センサが出力する検出信号を用いてもよい。
次に、第1及び第2伝達機構61,62について、図3及び図4を参照しつつ以下に説明する。
第1伝達機構61は、図3に示すように、互いに噛み合う2つのギア61a,61bを有している。ギア61aは、搬送ローラ対45の駆動ローラが固定された軸部材45Lに固定されている。ギア61bは、搬送モータ45Mの軸部材45MLに固定されている。この構成において、用紙Pを第1方向J1に搬送する場合は、制御部100が搬送モータ45Mを正方向(時計回り)に駆動する。このとき、図3(a)に示すように、ギア61bが時計回りに回転し、ギア61aが反時計回りに回転する。これにより、搬送ローラ対45が、用紙Pを第1方向J1に搬送する向きに回転する。一方、用紙Pを第2方向J2に搬送する場合は、制御部100が搬送モータ45Mを逆方向(反時計回り)に駆動する。このとき、図3(b)に示すように、ギア61bが反時計回りに回転し、ギア61aが時計回りに回転する。これにより、搬送ローラ対45が、用紙Pを第2方向J2に搬送する向きに回転する。
第2伝達機構62は、図4に示すように、5つのギア62a〜62eを有する。ギア62aは、ギア61aと同じ構成であって搬送ローラ対44の駆動ローラが固定された軸部材44Lに固定されている。ギア62eは、ギア61bと同じ構成であって搬送モータ44Mの軸部材44MLに固定されている。2つのギア62b,62cは、互いに離隔しつつギア62aと常に噛み合うように配置されている。ギア62cはギア62aと同じ構成を有し、ギア62bはギア62a,62cよりもその径が大きい。ギア62dは、ギア62aと同じ構成であって、連結板62fによってギア62eと常に噛み合うように連結されている。また、ギア62dは、ギア62b,62cのそれぞれと当接する範囲内において、ギア62eの周囲を移動可能に配置されている。
この構成において、用紙Pを第1方向J1に搬送する場合は、制御部100が搬送モータ44Mを正方向(時計回り)に駆動する。このとき、図4(a)に示すように、ギア62eが時計回りに回転し、ギア62dが反時計回りに回転するとともにギア62cに近づく方向に移動しギア62cと噛み合う。そして、ギア62cが時計回りに回転しギア62aが反時計回りに回転する。なお、ギア62a,62c,62dはいずれも同じギア構成であり、且つ、ギア61aとも同じ構成であるため、搬送ローラ対44による用紙Pの搬送速度が搬送ローラ対45と同じになる。一方、用紙Pを第2方向J2に搬送する場合は、制御部100が搬送モータ44Mを逆方向(反時計回り)に駆動する。このとき、図4(b)に示すように、ギア62eが反時計回りに回転し、ギア62dが時計回りに回転するとともにギア62bに近づく方向に移動しギア62bと噛み合う。そして、ギア62bが反時計回りに回転しギア62aが時計回りに回転する。なお、ギア62bは、ギア62cよりもそのギア径が大きいため、ギア62aの回転速度がギア62cよりも遅くなる。このため、用紙Pを第2方向J2に搬送する場合においては、搬送ローラ対44による用紙Pの搬送速度が搬送ローラ対45よりも遅くなる。
制御部100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加え、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)、タイマ等を含む。ROMは、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等を記憶している。RAMは、プログラム実行時に必要なデータ(例えば、画像データ)を一時的に記憶する。ASICは、画像データの書き換えや並び替え(例えば、信号処理や画像処理)を行う。I/Fは、外部装置(例えば、プリンタ1に接続されたPC)とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。なお、制御部100がASICを含まず、CPUが実行するプログラムによって画像データの書き換えや並び替えが行われてもよい。
制御部100は、図5に示すように、給紙モータ25M、搬送モータ41M〜48M,センサ53、及び、ヘッド2等に接続されている。また、制御部100は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、用紙Pの片面または両面に画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。
続いて、プリンタ1の記録動作に係る制御フローについて、図6及び図7を参照しつつ以下に説明する。
制御部100は、用紙Pの片面に記録を行う記録指令を外部装置から受信すると、当該記録指令に基づいて、給紙モータ25Mを駆動して用紙Pを給紙する(S1)。次に、制御部100は、搬送モータ41M〜45Mを駆動して(第1処理)、用紙Pを搬送する(S2)。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、上流ガイド部3aによりガイドされ、記録領域(プラテン3dとヘッド2との間)に送られる。
用紙Pが記録領域に到達すると、制御部100がヘッド2を制御して、ヘッド2からインク滴を吐出させる(S3)。これにより、用紙Pの表面に所望の画像が記録される。インクの吐出動作(インクの吐出タイミング)は、用紙Pの搬送開始のタイミングに基づく。制御部100は、記録指令に含まれる情報が片面記録か否かを判定する(S4)。
制御部100は、S4においてYESと判定した場合は、用紙Pを排紙部4に排出する(S5)。このとき、図6(a)に示すように、搬送ローラ対44によって搬送されてきた用紙Pは、接触点H1において、先端とガイド面34a4とが接触する。この後、用紙Pの先端がガイド面34a4に倣って搬送ローラ対45へと搬送されるとともに、アーム51の下面51a1と当接する。これにより、アーム51が突出位置から退避位置へと回動し、センサ53が用紙Pの検出信号を制御部100に出力する。なお、片面記録の場合においては、センサ53から検出信号が出力されても、そのまま、用紙Pは排紙部4に排紙される。こうして、フローチャートが終了する。一方、制御部100は、S4においてNOと判定した場合は、ステップS6を実行する。
続いて、用紙Pの両面に記録を行う場合の動作(ステップS6〜S8)について、以下に説明する。
制御部100は、センサ53が用紙Pを検知したか否かを判定する(S6)。制御部100は、センサ53から検出信号が出力されることで、用紙Pを検知したと判定する。すると、制御部100は、用紙Pの検知から所定時間経過後であって、用紙Pの後端がアーム51の先端(下面51a1)を通過するまでの間に、搬送モータ44M,45Mを制御して搬送ローラ対44,45を逆回転する(S7:第2処理)。これにより、用紙Pの搬送の方向が第1方向J1から第2方向J2へと反転される。このとき、2つの搬送モータ44M,45Mは、同じ回転速度で駆動されている。このため、第1伝達機構61及び第2伝達機構62の構成により、搬送ローラ対44による用紙Pの搬送速度が搬送ローラ対45よりも遅くなる。これにより、用紙Pが、図6(b)中二点鎖線で示すように、湾曲部34a3から湾曲部34b3に近づくように徐々に撓む。すなわち、用紙Pがアーム51から離隔する。こうして、用紙Pがガイド板34bに沿って搬送されるとともに、アーム51が突出位置に復帰する。さらに、アーム51が突出位置に復帰しても、アーム51の先端とガイド板34bとの間には、用紙Pの厚みより大きな隙間があるので、アーム51が用紙Pと摺擦しにくくなる。さらに、このとき、制御部100は、搬送モータ46M〜48Mを駆動する。これにより、用紙Pは、その経路が切り替えられ、図1に示すように用紙再送経路(白抜き矢印の示す経路)に沿って搬送され、記録領域に再送される。
再送されてきた用紙P(用紙再送経路から上流ガイド部3aに再送された用紙P)は、記録領域において裏返しで再供給される。そして、制御部100がヘッド2を制御して(S8)、裏面に画像を記録する。このときのインクの吐出動作(インクの吐出タイミング)は、用紙Pの再送開始のタイミング(搬送ローラ対44,45の逆回転)に基づく。なお、裏面への画像記録が開始される際に、制御部100の制御の下、搬送ローラ対44,45が正回転に戻される。制御部100は、両面記録された用紙Pを、下流ガイド部3bを介して、排紙部4に排出する(S5)。
以上に述べたように、本実施形態による搬送装置及びプリンタ1によると、ステップS7において用紙Pが第2方向J2に搬送される際に、2組の搬送ローラ対44,45間の速度差によって用紙Pが搬送経路R内で撓む。このとき、ガイド板34b(第2ガイド)とアーム51の先端(下面51a1)との間に隙間が設けられているので、用紙Pとアーム51の先端とが摺擦するのを抑制することが可能となる。このため、アーム51の先端が用紙Pの搬送によって摩耗するのを抑制することができる。
また、搬送ローラ対44は、第1方向J1において、用紙Pの先端がガイド板34aに向くように搬送する。このため、用紙Pを第1方向J1に搬送する際に、用紙Pの先端をアーム51の下面51a1に確実に当接させることが可能となる。
また、アーム51は、突出位置をとるときに、下面51a1が湾曲経路R1内に配置されている。これにより、用紙Pを第1方向J1に搬送する際に、用紙Pの先端をアーム51の下面51a1に確実に当接させることが可能となる。
アーム51の下面51a1は、第1方向J1に関して、接触点H1よりも下流に配置されている。これにより、用紙Pを第1方向J1に搬送する際に、用紙Pの先端をアーム51の下面51a1に、より一層確実に当接させることが可能となる。
ガイド板34bは、突出位置をとるアーム51の先端(下面51a1)との間に隙間が生じる位置に固定されている。これにより、隙間を設けるためにガイド板34bを可動させる必要がなくなり、ガイド板34bの構成が簡単になる。
変形例として、図8に示すように、搬送ローラ対45とガイド34との間に、ガイド234、搬送ローラ対244、付勢部材235及び規制部材236が設けられていてもよい。ガイド234は、一対のガイド板234a,234bを有する。ガイド板234aは、水平に延在している。ガイド板234aのガイド面234a1とガイド板234bとの間には、水平搬送経路R2が規定されている。
ガイド板234aは、貫通孔234a2を有している。本変形例においては、この貫通孔234a2の近傍に用紙検出部50が配置されている。アーム51は、突出位置において、貫通孔234a2を介して水平搬送経路R2内に左側部分51aの下面51a1の一部が突出し、退避位置において、左側部分51aの下面51a1が水平搬送経路R2から退避する。
貫通孔234a2は、搬送ローラ対244によって排紙部4に向かって搬送される用紙Pの先端がガイド面234a1に最初に接触する点である接触点H2よりも、第1方向J1に関して、下流に配置されている。この接触点H2は、搬送ローラ対244の2つのローラの中心を通る直線(第1直線)L3に直交し且つこれら2つのローラ同士の当接点を通る直線(第2直線)L4のうち、第1方向J1において当接点よりも下流側がガイド面234a1と交差する点である。換言すると、搬送ローラ対244も、上述の搬送ローラ対44と同様に、直線L4の下流側がガイド面234a1と交差するように配置され、第1方向J1に関して、当該交差点(接触点H2)が貫通孔234a2よりも上流となるように配置されている。これにより、搬送ローラ対244によって、簡単に用紙Pをガイド板234aに向かって搬送することが可能となる。また、搬送される用紙Pが、アーム51の先端に確実に当接する。本変形例による搬送ローラ対244は、上述の第2伝達機構62によって搬送モータ44Mと接続されている。このため、用紙Pを第2方向J2に搬送する場合においては、搬送ローラ対244による用紙Pの搬送速度が搬送ローラ対45よりも遅くなる。
ガイド板234bは、図8に示すように、直線状に延在し、右端部が軸237によって回動可能に支持されている。ガイド板234bは、軸237を回動支点として、第1位置と、第2位置との間において回動可能に構成されている。第1位置は、図8に示すように、ガイド板234bが水平に保持され、突出位置にあるアーム51の先端と当接する位置である。第2位置は、第1位置にあるときよりもガイド板234aから離れた位置であり、アーム51の先端との間に大きな隙間が構成される位置である(図9(b)参照)。また、ガイド板234bの右端部には、軸237よりも右方に突出した突出部234b1が形成されている。
付勢部材235は、図8中左斜め上方に向かって延在するバネから構成されている。付勢部材235は、下端が筐体1aに固定され、上端がガイド板234bの中央よりも左側部分の下面に固定され、ガイド板234bをガイド板234aに向けて付勢する。付勢部材235の付勢力は、用紙Pの腰よりも小さく設定されている。付勢部材235の付勢力は、撓んだ用紙Pの腰によって、ガイド板234bが第1位置から第2位置に移動できる程度の付勢力に設定される。付勢部材235の付勢力は、予め実験等により設定される。なお、付勢部材235は、ガイド板234bをガイド板234aに向けて付勢することが可能であれば、どのような弾性部材から構成されていてもよい。
規制部材236は、ガイド板234bが第1位置にあるときに、ガイド板234bの突出部234b1の下面と当接する位置に配置されている。これにより、ガイド板234bが付勢部材235によって付勢されていても、ガイド板234bが第1位置に位置付けられるように、ガイド板234bの回動を規制する。
続いて、搬送ローラ対45,244によって用紙Pを第1方向J1及び第2方向J2に搬送する際の動作について、図9を参照しつつ以下に説明する。本変形例においても、用紙Pを排紙部4に排出する際(すなわち、ステップS4においてYESと判定した場合)は、第1方向J1に用紙Pが搬送される。
このとき、図9(a)に示すように、搬送ローラ対244によって搬送されてきた用紙Pは、接触点H2において、先端とガイド面234a1とが接触する。この後、用紙Pの先端がガイド面234a1に倣って搬送ローラ対45へと搬送されるとともに、アーム51の下面51a1と当接する。これにより、アーム51が突出位置から退避位置へと回動し、センサ53が用紙Pの検出信号を制御部100に出力する。なお、片面記録の場合においては、上述の実施形態と同様に、センサ53から検出信号が出力されても、そのまま、用紙Pは排紙部4に排紙される。
一方、表面に画像が記録された用紙Pの裏面に画像を記録する際(すなわち、ステップS4においてNOと判定した場合)は、搬送ローラ対45,244によって第1方向J1に搬送される用紙Pが、第2方向J2に向かって搬送される。このとき、制御部100は、上述の実施形態と同様に、センサ53による用紙Pの検知から所定時間経過後であって、用紙Pの後端がアーム51の先端(下面51a1)を通過するまでの間に、搬送モータ44M,45Mを制御して搬送ローラ対45,244を逆回転する(第2処理)。これにより、用紙Pの搬送の方向が第1方向J1から第2方向J2へと反転される。このとき、2つの搬送モータ44M,45Mは、同じ回転速度で駆動されている。このため、第1伝達機構61及び第2伝達機構62の構成により、搬送ローラ対244による用紙Pの搬送速度が搬送ローラ対45よりも遅くなる。これにより、用紙Pが、図9(b)中二点鎖線で示すように、ガイド板234aからガイド板234bに近づくように徐々に撓む。そして、用紙Pの撓みが大きくなるに連れて、用紙Pと接触するガイド板234bが付勢部材235の付勢力に抗して第1位置から第2位置へと回動する。すなわち、ガイド板234bとアーム51との隙間が大きくなり、用紙Pがアーム51から離隔する。こうして、用紙Pがガイド板234bに沿って搬送されるとともに、アーム51が突出位置に復帰する。さらに、アーム51が突出位置に復帰しても、アーム51の先端とガイド板234bとの間には、用紙Pの厚みより大きな隙間があるので、アーム51が用紙Pと摺擦しにくくなる。この後、上述の実施形態と同様に、制御部100が搬送モータ46M〜48Mを駆動することで、用紙Pは、その経路が切り替えられ、用紙再送経路に沿って搬送され、記録領域に再送される。
以上に述べたように、本変形例においても、用紙Pが第2方向J2に搬送される際に、2組の搬送ローラ対244,45間の速度差によって用紙Pが水平搬送経路R2内で撓む。このとき、ガイド板234b(第2ガイド)が第1位置から第2位置へと回動するため、アーム51の先端(下面51a1)との間に隙間が設けられる。このため、用紙Pとアーム51の先端とが摺擦するのを抑制することが可能となり、アーム51の先端が用紙Pの搬送によって摩耗するのを抑制することができる。また、上述の実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
また、ガイド板234bが第1位置から第2位置へと移動可能であるため、アーム51の先端との間において、隙間を簡単に構成することが可能となる。さらに、ガイド板234bが一端(右端)部を中心として回動可能に構成されているため、簡単な構成でガイド板234bの移動が実現できる。
また、付勢部材235の付勢力が、用紙Pの腰よりも小さく設定されているため、撓んだ用紙Pとガイド板234bとが当接することでガイド板234bが第2位置へと移動する。このため、用紙Pとアーム51の先端(下面51a1)とを離隔させることが可能となる。
別の変形例として、ガイド板234bは、水平な状態で第1位置よりもガイド板234aから離れた第2位置に移動可能に構成されていてもよい。これにおいても、上述の変形例と同様な効果を得ることができる。さらに、別の変形例として、搬送ローラ対244,45を逆回転させる際に、ガイド板234bを第1位置から第2位置へと強制的に移動させる移動機構(例えば、ソレノイド)を有していてもよい。これにおいても、上述の変形例と同様な効果を得ることができる。
また、別の変形例として、図10に示すように、ガイド33を湾曲部34b3の途中部位に接続させ、当該ガイド33の途中部位に排紙部4に向かって搬送するための搬送ローラ対344(別のローラ対)を設けてもよい。搬送ローラ対344を構成する2つのローラは、当該2つのローラの中心を通る直線(第1直線)L5に直交し且つこれら2つのローラ同士の当接点を通る直線(第2直線)L6のうち、第1方向J1において当接点よりも下流側がガイド面34a4と交差するように、配置されている。これにより、用紙Pを第1方向J1に搬送する際に、用紙Pの先端をアーム51の下面51a1に確実に当接させることが可能となる。さらに、簡単に用紙Pをガイド板34aに向かって搬送させることが可能となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態及び各変形例においては、アーム51が直線状に延在しているが、突出位置において搬送経路内の途中部位が屈曲したV字形状を有していてもよい。この場合、第1方向J1において、屈曲部の上流側面の一部が用紙Pと当接する当接部を構成する。また、第1伝達機構61及び第2伝達機構62が、用紙Pを第2方向J2に搬送する際の、搬送ローラ対44,244による用紙Pの搬送速度を、搬送ローラ対45による用紙Pの搬送速度よりも遅くする構成であるが、第1伝達機構61及び第2伝達機構62が、用紙Pを第2方向J2に搬送する際の、搬送ローラ対45による用紙Pの搬送速度を、搬送ローラ対44,244による用紙Pの搬送速度よりも速くする構成となっていてもよい。また、第1伝達機構61及び第2伝達機構62が同じ構成であってもよい。この場合、搬送ローラ対44,244を逆回転させる際の搬送モータ44Mの回転数を、正回転させるときよりも早くすればよい。こうすることでも、用紙Pを第2方向J2に搬送する際に、搬送ローラ対44,244による用紙Pの搬送速度を搬送ローラ対45よりも遅くすることが可能となる。また、駆動部は、複数の搬送モータだけから構成されていてもよいし、1つの搬送モータと伝達機構から構成され、正回転と逆回転時において搬送ローラ対44,244の回転速度を変化させてもよい。
また、センサ53は、用紙Pとの当接で回動するアーム51の回動に応じて、検出信号を出力するものであれば、どのようなものであってもよい。つまり、アーム51が第1位置から第2位置へ回動したときに、スイッチがONされるスイッチセンサであってもよい。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、画像記録する記録装置であれば、例えば、レーザー式やサーマル式など、どのような記録装置にも適用可能である。記録媒体は、可撓性を有しておれば、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。