以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
本実施の形態の車両用前照灯装置は、ハイビーム用配光パターンの一部領域を形成可能な光を照射する灯具ユニットと、この灯具ユニットの光の照射状態を制御する照射制御部とを備える。そして、照射制御部は、ハイビーム用配光パターンの一部領域が少なくとも車幅方向に複数に分割された部分領域により形成されるように光の照射状態を制御する。また、各部分領域に対応する照射光の光度を個別に調整してハイビーム照射モードと昼間点灯照射モードを切り替えてハイビーム照射モードに適した光度分布と昼間点灯照射モードに適した光度分布を形成する。
図1は、本実施の形態に係る車両用前照灯装置を構成する灯具本体ユニットの概略構造図である。本実施の形態の車両用前照灯装置は、車両の前部の車幅方向左右両端に一対の灯具本体ユニットを含む。そして、左右の灯具本体ユニットから照射される配光パターンを車両の前方で重畳させることにより車両用前照灯装置としての照射を完成させる。図1は、左右の灯具本体ユニットのうち右側に配置される灯具本体ユニット10の構成を示す。図1では、理解を容易にするために灯具本体ユニット10を水平面で切断して上方から見た断面図を示している。なお、左側に配置される灯具本体ユニットは右側に配置される灯具本体ユニット10と左右対称の構造であり基本構造は同一である。したがって、右側に配置される灯具本体ユニット10を説明することで左側に配置される灯具本体ユニットの説明は省略する。また、以下では、便宜上、灯具の光が照射する方向を車両前方(前側)、その反対側を車両後方(後側)として説明する場合がある。
灯具本体ユニット10は、透光カバー12、ランプボディ14、エクステンション16、第1灯具ユニット18、および第2灯具ユニット20を有する。ランプボディ14は、樹脂などによって細長い開口部を有するカップ型に成形されている。透光カバー12は、透光性を有する樹脂などによって成形され、ランプボディ14の開口部を塞ぐようにランプボディ14に取り付けられる。こうしてランプボディ14と透光カバー12とによって実質的に閉鎖空間となる灯室が形成され、この灯室内にエクステンション16、第1灯具ユニット18、および第2灯具ユニット20が配置される。
エクステンション16は、第1灯具ユニット18および第2灯具ユニット20からの照射光を通すための開口部を有し、ランプボディ14に固定される。第1灯具ユニット18は、第2灯具ユニット20より車両の車幅方向の外側に配置される。第1灯具ユニット18は、いわゆるパラボラ型の灯具ユニットであり、後述するロービーム用配光パターンを形成する。
第1灯具ユニット18は、リフレクタ22、光源バルブ24、およびシェード26を有する。リフレクタ22は、カップ型に形成され、中央に挿通孔が設けられている。本実施の形態では、光源バルブ24はハロゲンランプなどフィラメントを有する白熱灯によって構成されている。なお、光源バルブ24は、放電灯等他のタイプの光源が採用されてもよい。光源バルブ24は、内部に突出するようリフレクタ22の挿通孔に挿通されてリフレクタ22に固定される。リフレクタ22は、光源バルブ24が照射した光を車両前方に向けて反射させるよう、内面の曲面が形成されている。シェード26は、光源バルブ24から車両前方へ直接進行する光を遮断する。第1灯具ユニット18の構成は公知であるため、第1灯具ユニット18に関する詳細な説明は省略する。
図2は、本実施の形態の灯具本体ユニット10に含まれる第2灯具ユニット20の構成を示す図である。図2では、第2灯具ユニット20を水平面で切断して上方から見た断面図を示している。第2灯具ユニット20は、ホルダ28、投影レンズ30、発光モジュール32、およびヒートシンク38を備える。第2灯具ユニット20は、ハイビーム用配光パターンの全部または一部領域を形成可能な光を照射する灯具ユニットである。すなわち、第2灯具ユニット20は、ハイビーム照射モード時に、第1灯具ユニット18により形成されるロービーム用配光パターンの上部にハイビーム用配光パターンを形成する。ハイビーム用配光パターンがロービーム用配光パターンに追加されることで、全体として照射範囲が広くなり、遠方視認性能も向上する。また、第2灯具ユニット20は、昼間点灯照射モード時に単独で光を照射することにより、昼間など対向車や歩行者などに自車の存在を認識し易くするための昼間点灯照射ランプ、いわゆるデイタイムランニングランプ(DRL)として機能する。
投影レンズ30は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、その後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影レンズ30は筒状に形成されたホルダ28の一方の開口部に取り付けられる。
(第1の実施の形態)
図3は、第1の実施の形態に係る発光モジュールの要部を示す断面図である。発光モジュール32は、第1発光ユニット36a、第2発光ユニット36b、第3発光ユニット36c、第4発光ユニット36dと、第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dを支持する基板34と、を有する。なお、各発光ユニット36a〜36dを特に区別しない場合は、総称して発光ユニット36と示す。本実施の形態に係る基板34は、実装基板であり、複数の発光ユニット36a〜36dを支持している。
発光モジュール32は、ハイビーム用配光パターンの光を照射するものであり、車幅方向に複数に分割された複数の領域の一部を選択的に照射することができるように構成されている。本実施の形態の場合、第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dに対応して分割されている各照射領域を合わせてハイビーム用配光パターンが形成されている。なお、その分割数は、ハイビーム照射モードや昼間点灯照射モードで要求される性能に応じて決定することができる。例えば、分割される領域の数は、複数であれば4個より多くても少なくてもよく、また、奇数個でも偶数個でも構わない。
第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dの各々は矩形に形成されており、基板34に第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dの順に帯状となるよう一直線状に配置される。第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dは、例えば個別に光度制御が可能な光源で構成可能である。つまり、第2灯具ユニット20は、多灯式光源となっている。
第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dを構成する光源は、半導体発光素子、例えば1mm角程度の正方形の発光面を有するLED素子、などを備えている。なお、発光ユニット36の光源がこれに限られないことはもちろんであり、例えばレーザダイオードなど略点状に面発光する他の素子状の光源であってもよい。また、半導体発光素子が発する光の波長は、可視光領域に限らず紫外光領域であってもよい。
図2に示すヒートシンク38は、アルミなどの金属により多数のフィンを有する形状に形成され、基板34の裏面に取り付けられる。このように、第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dをLED光源で構成することにより、各発光ユニット36の発光状態の調整が精度よくできる。その結果、後述するハイビーム照射モードや昼間点灯照射モードにおいて、所望の配光特性を高い精度で実現できる。
発光モジュール32は、左から第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dの順に並んでホルダ28の内部に配置されるよう、基板34がホルダ28の他方の開口部に取り付けられる。第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dの各々は、発光することによりそれぞれの像が灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影される。
図4は、本実施の形態に係る車両用前照灯装置の左右の灯具本体ユニット10から前方へ照射される光により、例えば車両前方25メートルの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図である。
ロービーム用配光パターンPLは第1灯具ユニット18によって形成される。ロービーム用配光パターンPLは左側通行の地域で利用される左配光のロービーム用配光パターンであり、その上端縁に第1カットオフラインCL1〜第3カットオフラインCL3を有する。第1カットオフラインCL1と第3カットオフラインCL3は、灯具正面方向に設定された鉛直線V−Vを境にして左右段違いで水平方向に延在する。第1カットオフラインCL1は、鉛直線V−Vより右側且つ灯具正面方向に設定された水平線H−Hより下方において水平方向に延在する。このため、第1カットオフラインCL1は対向車線カットオフラインとして利用される。
第3カットオフラインCL3は、第1カットオフラインCL1の左端部から左上方に向かって例えば45°の傾斜角度で斜めに延在する。第2カットオフラインCL2は、第3カットオフラインCL3と水平線H−Hとの交点から左側において水平線H−H上に延在する。このため、第2カットオフラインCL2は自車線側カットオフラインとして利用される。なお、ロービーム用配光パターンPLにおいて、第1カットオフラインCL1と鉛直線V−Vとの交点であるエルボ点Eは交点H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しており、このエルボ点Eをやや左よりに囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZがリフレクタ22の形状調整等により形成され、自車線側の視認性を向上させている。
ハイビーム用配光パターンの一部領域である付加配光パターンPAは、第2灯具ユニット20からの照射光によって形成される。付加配光パターンPAは、水平線H−Hを含んで水平方向に延びる帯状に形成される。
付加配光パターンPAは、発光ユニット36の数にしたがい水平方向に並ぶ4つの矩形領域に分割されて構成されている。以下、これらの領域を右から順に第1部分領域PA1〜第4部分領域PA4といい、隣り合う部分領域の境界線を分割ラインという。第2部分領域PA2と第3部分領域PA3との分割ラインは0°に設定され、鉛直線V−Vに対応する。
第1部分領域PA1は、第1発光ユニット36aの照射光によって形成される。第2部分領域PA2は、第2発光ユニット36bの照射光によって形成される。第3部分領域PA3は、第3発光ユニット36cによって形成される。第4部分領域PA4は、第4発光ユニット36dによって形成される。
詳しくは後述するが、第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dは、運転者の操作または、車両に搭載され対向車や前走車など前方車両や歩行者を検出する装置からの情報に基づき、個別またはグループ化された複数のユニット毎に点消灯や調光が可能である。これにより、照射領域の異なる複数の配光パターンを得ることができる。したがって、第1部分領域PA1〜第4部分領域PA4のうち前方車両や歩行者の存在する領域を照射する発光ユニット36を消灯することにより、前方車両や歩行者に与えるグレアを抑制できる。
例えば、自車両と反対車線を走行する対向車が存在する場合、第1発光ユニット36aや第2発光ユニット36bを消灯することにより対向車の運転者にグレアを与えないようにすることができる。また、自車両と同じ車線を走行する先行車が存在する場合、第2発光ユニット36bや第3発光ユニット36cを消灯することにより先行者の運転者にグレアを与えないようにすることができる。また、道路の路側帯を走行する歩行者が存在する場合、第1発光ユニット36aや第4発光ユニット36dを消灯することにより歩行者にグレアを与えないようにすることができる。このように、対向車や先行車、歩行者などにグレアを感じさせないように複数の発光ユニット36を部分的に消灯し、残りの発光ユニット36を点灯させることで、運転者の遠方視認性の確保が可能になる。
ところで、複数の発光ユニット36のそれぞれが照射する領域を合成して一つの配光パターンを形成する場合、各領域の間に隙間(非照射領域)がないことが望ましい。このような観点からは、発光モジュール32は、各発光ユニット36の照射領域の境界部分が重なる方向で構成が設定されることになる。一方、各照射領域の境界部分の重なりが多いと、幾つかの発光ユニット36を消灯し、その他の発光ユニット36を点灯させた場合、点灯している発光ユニット36の光が、消灯している発光ユニットの照射領域に漏れ出てしまうこととなり、その領域に存在する前走車や歩行者に対してグレアを与えることにもなる。
そこで、発明者らが鋭意検討した結果、点灯している発光ユニットや半導体発光素子が発する光が導光体を通過することで光の照射範囲が規制されることに想到した。これにより、仮に隣接している発光ユニットや半導体発光素子が消灯している場合であっても、消灯した発光ユニットや半導体発光素子に対応する部分領域に存在する前走車や歩行者に与えるグレアが抑制されることになる。また、発明者らは、蛍光体などの光波長変換部材と半導体発光素子との間に導光体を設けることで、放熱性の改善が図られることに想到した。これにより、仮に発光ユニットが高頻度で点灯しているような場合であっても、昇温による発光特性の変化や、発光素子および蛍光体の劣化が抑制されることになる。
本実施の形態において、導光体は、発光ユニットや半導体発光素子が発する光を透過させることができる透光性(透明)材料を有する。透光性材料としては、例えば、透明な樹脂材料などの有機材料、透明な無機ガラスなどの無機材料、有機材料と無機材料との混合物、ゾル・ゲル材料、などが挙げられる。例えば、樹脂材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
また、導光体は、前述の透光性材料からなる透明部分の表面が、その材料より屈折率の低い物質で覆われていてもよい。この場合、導光体の内部を通過する光は、全反射により外部へ漏れにくくなる。また、導光体は、光の入射する面と出射する面を除いた他の部分を、金属反射膜、白色組成物、誘電体多層膜、光を吸収する遮光材料などで覆われていてもよい。この場合、光が出射する面以外から光が漏れることが防止される。なお、導光体は、中空チューブなどの管状物であってもよい。また、導光体は、一つの部材であってもよいし、光ファイバのような複数の部材が束になったものであってよい。
本実施の形態に係る発光モジュール32は、図3に示すように、第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dを備える。第1発光ユニット36aは、導光体41aと半導体発光素子42aと蛍光体層44aとを備える。第2発光ユニット36bは、導光体41bと半導体発光素子42bと蛍光体層44bとを備える。第3発光ユニット36cは、導光体41cと半導体発光素子42cと蛍光体層44cとを備える。第4発光ユニット36dは、導光体41dと半導体発光素子42dと蛍光体層44dとを備える。
発光ユニット同士の間隔W1は、発光ユニットの幅W2より小さいとよい。間隔W1は、各発光ユニットのそれぞれが照射する領域の間に隙間が生じないように考慮しながら、実験やこれまでの知見を用いて適宜設計すればよい。発光モジュールを車両用前照灯装置に用いる場合、例えば、発光ユニット同士の間隔W1は50〜500μmの範囲で設定されているとよい。
なお、第1発光ユニット36a〜第4発光ユニット36dは、適宜発光ユニット36と称する。また、導光体41a〜41dは、適宜導光体41と称する。半導体発光素子42a〜42dは、適宜半導体発光素子42と称する。蛍光体層44a〜44dは、適宜蛍光体層44と称する。
各導光体41は、各蛍光体層44の上面を覆うように配置されている。これにより、半導体発光素子42から発した光、および半導体発光素子42から発した光のうち蛍光体層44で波長変換された光が導光体41に入射する。導光体41に入射した光は、導光体41の内部を通過することで散乱が抑制され、各導光体41から出射された光は、隣接する発光ユニット36の所定の照射領域に漏れ出ることが抑制される。つまり、各発光ユニット36が発する光は、その発光ユニット36に対応する導光体41を通過することで、隣接する発光ユニット36の照射領域に光が漏れ出ることが抑制される。したがって、本実施の形態に係る発光モジュール32によれば、所望の配光特性を高い精度で実現することができる。その結果、発光モジュール32の幾つかの発光ユニット36を消灯し、その他の発光ユニット36を点灯させた場合、点灯している発光ユニット36の光が、消灯している発光ユニット36の照射領域に漏れ出てしまうことが抑制され、その領域に存在する前走車や歩行者に対してグレアを与える状況が改善される。
図5は、第1の実施の形態に係る発光モジュールの変形例の要部を示す断面図である。以下では、図3に示す発光モジュール32と異なる構成について主に説明する。発光モジュール132は、第1発光ユニット136a〜第4発光ユニット136dを備えている。また、発光モジュール132は、第1発光ユニット136a〜第4発光ユニット136d(以下、適宜発光ユニット136と称する)が有する蛍光体層44a〜44dの上部を一体的に覆う導光体141を備えている。
導光体141は、各蛍光体層44と対向する複数の領域141a〜141dに区画されている。各領域141a〜141dの境界には、遮光部58b〜58dが形成されている。したがって、蛍光体層44aから出射し、導光体141の領域141aに入射した光の一部が、隣接する領域141bに向かったとしても、遮光部58bによって遮られる。また、蛍光体層44bから出射し、導光体141の領域141bに入射した光の一部が、隣接する領域141a,141cに向かったとしても、遮光部58b,58cによって遮られる。また、蛍光体層44cから出射し、導光体141の領域141cに入射した光の一部が、隣接する領域141b,141dに向かったとしても、遮光部58c,58dによって遮られる。また、蛍光体層44dから出射し、導光体141の領域141dに入射した光の一部が、隣接する領域141cに向かったとしても、遮光部58dによって遮られる。この結果、発光モジュール132は、発光モジュール32の説明で述べたと同様の効果が得られる。また、一体に形成された導光体141を各蛍光体層44の上部に設置することで、発光ユニット36毎に導光体を設ける場合よりも発光モジュールの製造が容易となる。
遮光部に充填される材料や遮光部の構成は、少なくとも入射する光をそのまま透過することを妨げるものであればよい。遮光部の充填材料としては、少なくとも導光体141よりも光の透過率が低いものが好ましく、例えば、樹脂組成物、金属、誘電体などの不透明な各種材料から適宜選択される。なお、不透明な材料とは、電磁波の全波長域にわたって光の吸収を示す必要はなく、少なくとも半導体発光素子が発する光の波長域に対して吸収を示すものであればよい。例えば、半導体発光素子が発する紫外光や青色光等、蛍光体が発する黄色光等を選択的に遮光するものであってもよい。
また、遮光部は、反射部材として機能するものであってもよい。例えば、反射率の高い樹脂組成物や金属、誘電体などが挙げられる。また、遮光部は、蛍光体層との境界面に金属膜や誘電体薄膜が形成されたものであってもよい。例えば、高屈折率と低屈折率の誘電体薄膜を交互に多層重ねた反射膜を遮光部に設けるとよい。また、蛍光体層と遮光部との屈折率の違いを利用して光が遮光部の表面で反射するようにしてもよい。この場合、遮光部に充填される物質の屈折率は、蛍光体層を構成する物質の屈折率よりも低いとよい。また、遮光部の形状は、断面が方形のような多角形に限られるものではなく、図5に示す遮光部のような薄い形状であってもよい。
光波長変換部材に用いられる材料は、粉末の蛍光体を分散させた樹脂組成物やガラス組成物、後述する蛍光セラミックが挙げられる。特に、無機材料である蛍光セラミックは、多様な形状への成形や、精度の高い加工が容易に行える。そのため、蛍光セラミックは、特に、板状の光波長変換部材として利用する場合に好適である。半導体発光素子としては、前述のLED素子が好適であるが、その発光波長は、可視光の範囲だけではなく紫外光の範囲であってもよい。
図6は、第1の実施の形態に係る発光モジュールの他の変形例の要部を示す断面図である。以下では、図3に示す発光モジュール32や図5に示す発光モジュール132と異なる構成について主に説明する。発光モジュール232は、第1各発光ユニット236a〜第4発光ユニット236d(以下、適宜発光ユニット236と称する)に応じた導光体241a〜241dを備えている。導光体241aは、蛍光体層44aの上面ならびに半導体発光素子42aおよび蛍光体層44aの側面を全体的に覆っている。導光体241bは、蛍光体層44bの上面ならびに半導体発光素子42bおよび蛍光体層44bの側面を全体的に覆っている。導光体241cは、蛍光体層44cの上面ならびに半導体発光素子42cおよび蛍光体層44cの側面を全体的に覆っている。導光体241dは、蛍光体層44dの上面ならびに半導体発光素子42dおよび蛍光体層44dの側面を全体的に覆っている。
したがって、発光モジュール232は、発光モジュール32の説明で述べたと同様の効果が得られる。また、発光モジュール232は、各導光体241a〜241dによって各半導体発光素子42の側面まで覆われているため、各半導体発光素子42の側面から出射した光も前方を照射するために有効に利用することができる。なお、各導光体241a〜241dを一体的に設けてもよい。この場合、各導光体の境界には遮光部を設けるとよい。
次に、半導体発光素子42を備える発光ユニット36について更に詳述する。なお、上述の発光ユニット136や発光ユニット236については、発光ユニット36とほぼ同様の構成のため説明を省略する。図7は、本実施の形態に好適な発光ユニットの一例を示す断面図である。発光ユニット36は、成長基板40と、その上に成長させた半導体発光素子42と、蛍光体層44と、を備える。発光ユニット36は、基板34に支持されている。基板34としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、SUSなどのステンレス鋼、Cu、AlN、SiC、Siなどの中から適宜選択される。成長基板40は、半導体発光素子42を作製するために適当な格子定数の結晶であり、透光性を有するものが好ましい。本実施の形態に係る発光ユニット36では、成長基板40としてサファイアが用いられている。
図7に示す発光ユニット36では、板状の蛍光体層44が成長基板40を挟んで半導体発光素子42の発光面に対向するように設けられている。半導体発光素子42は、LED素子によって構成される。本実施の形態では、半導体発光素子42として、青色の波長の光を主として発する青色LEDが採用されている。具体的には、半導体発光素子42は、サファイアの成長基板40上に結晶成長したn型半導体層46およびp型半導体層48と、その間に形成されている発光層50と、を有する。そして、半導体発光素子42は、主として発光層50において発光するため、発光層50の上面を発光面としてとらえることもできる。半導体発光素子42は、バンプ52を介して基板34にフリップチップ実装される。なお、半導体発光素子42の構成や発する光の波長が上述したものに限られないことはもちろんである。
蛍光体層44は、光波長変換部材であり、少なくとも光波長変換セラミックから構成されている。光波長変換セラミックは、1μm以上5000μm未満、好ましくは10μm以上1000μm未満の厚さの板状に形成されたものを、半導体発光素子42のサイズに合わせて加工されたものである。なお、光波長変換セラミックの大きさがこれに限られないことはもちろんである。
光波長変換セラミックは、いわゆる発光セラミック、または蛍光セラミックと呼ばれるものであり、青色光によって励起される蛍光体であるYAG(Yttrium Aluminium Garnet)粉末を用いて作成されたセラミック素地を焼結することにより得ることができる。このような光波長変換セラミックの製造方法は公知であることから詳細な説明は省略する。こうして得られた光波長変換セラミックは、例えば粉末状の蛍光体と異なり、粉末表面での光拡散を抑制でき、半導体発光素子42が発する光の損失が非常に少ない。
光波長変換セラミックは、半導体発光素子42が主として発する青色光の波長を変換して黄色光を出射する。このため、発光ユニット36からは、蛍光体層44をそのまま透過した青色光と、光波長変換セラミックによって波長が変換された黄色光との合成光が出射する。こうして、発光ユニット36は、白色の光を発することが可能となる。
なお、半導体発光素子42は、青以外の波長の光を主として発するものが採用されてもよい。この場合も、光波長変換セラミックには、半導体発光素子42が発する主とする光の波長を変換するものが採用される。なお、光波長変換セラミックは、この場合においても半導体発光素子42が主として発する波長の光と組み合わせることにより白色または白色に近い色の波長の光となるよう、半導体発光素子42が発する光の波長を変換してもよい。
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態に係る発光モジュールの要部を示す断面図である。なお、第1の実施の形態と同様の構成や効果については説明を適宜省略する。本実施の形態に係る発光モジュール332は、第1発光ユニット336a〜第4発光ユニット336dを備えている。第1発光ユニット336aは、半導体発光素子42aと蛍光体層44aとを備える。第2発光ユニット336bは、半導体発光素子42bと蛍光体層44bとを備える。第3発光ユニット336cは、半導体発光素子42cと蛍光体層44cとを備える。第4発光ユニット336dは、半導体発光素子42dと蛍光体層44dとを備える。各発光ユニットにおいて、半導体発光素子42と蛍光体層44とは離間している。これにより、半導体発光素子42や蛍光体層44の放熱性が向上し、発光モジュール全体の特性が改善する。
図9は、第2の実施の形態に係る発光モジュールの変形例の要部を示す断面図である。発光モジュール432は、図8に示す発光モジュール332と異なり、第1発光ユニット436a〜第4発光ユニット436dの全てに共通する蛍光体層144を備えている。これにより、蛍光体層144を複数の半導体発光素子42に対して一度に位置決めすることができる。
(第3の実施の形態)
図10は、第3の実施の形態に係る発光モジュールの要部を示す断面図である。なお、上述の各実施の形態と同様の構成や効果については説明を適宜省略する。本実施の形態に係る発光モジュール532は、第1発光ユニット536a〜第4発光ユニット536dを備えており、第1の実施の形態に係る発光モジュール32と比較して、各導光体41a〜41dが、各半導体発光素子42a〜42dと各蛍光体層44a〜44dとの間に配置されている点が異なる。このような構成によれば、各半導体発光素子42が発する光は対応する導光体41を通過することで散乱が抑制される。また、半導体発光素子42と蛍光体層44とは離間しているため、半導体発光素子42や蛍光体層44の放熱性が向上し、発光モジュール全体の特性が改善する。
図11は、第3の実施の形態に係る発光モジュールの変形例の要部を示す断面図である。以下では、図10に示した発光モジュール532と異なる構成について主に説明する。発光モジュール632は、第1各発光ユニット636a〜第4発光ユニット636d(以下、適宜発光ユニット636と称する)に応じた導光体341a〜341dを備えている。導光体341aは、半導体発光素子42aの上面および側面を覆うように設けられている。蛍光体層44aは、導光体341aの上面に積層されている。導光体341bは、半導体発光素子42bの上面および側面を覆うように設けられている。蛍光体層44bは、導光体341bの上面に積層されている。導光体341cは、半導体発光素子42cの上面および側面を覆うように設けられている。蛍光体層44cは、導光体341cの上面に積層されている。導光体341dは、半導体発光素子42dの上面および側面を覆うように設けられている。蛍光体層44dは、導光体341dの上面に積層されている。
したがって、発光モジュール632は、発光モジュール532の説明で述べたと同様の効果が得られる。また、発光モジュール632においては、各半導体発光素子42が各導光体341a〜341dによって側面まで覆われているため、各半導体発光素子42の側面から出射した光も前方を照射するために有効に利用されることになる。
図12は、第3の実施の形態に係る発光モジュールの他の変形例の要部を示す断面図である。以下では、図9に示した発光モジュール432と異なる構成について主に説明する。発光モジュール732は、第1発光ユニット736a〜第4発光ユニット736dを備えている。また、発光モジュール732は、第1発光ユニット736a〜第4発光ユニット736d(以下、適宜発光ユニット736と称する)が有する半導体発光素子42a〜42dの上部を一体的に覆う導光体141を備えている。導光体141は、図5に示したものと同様の構成であり、蛍光体層144と各半導体発光素子42との間に配置されている。
したがって、半導体発光素子42aから出射し、導光体141の領域141aに入射した光の一部が、隣接する領域141bに向かったとしても、遮光部58bによって遮られる。また、半導体発光素子42bから出射し、導光体141の領域141bに入射した光の一部が、隣接する領域141a,141cに向かったとしても、遮光部58b,58cによって遮られる。また、半導体発光素子42cから出射し、導光体141の領域141cに入射した光の一部が、隣接する領域141b,141dに向かったとしても、遮光部58c,58dによって遮られる。また、半導体発光素子42dから出射し、導光体141の領域141dに入射した光の一部が、隣接する領域141cに向かったとしても、遮光部58dによって遮られる。この結果、発光モジュール732は、発光モジュール32の説明で述べたと同様の効果が得られる。また、一体に形成された導光体141を各半導体発光素子42の上部に設置することで、発光ユニット736毎に導光体を設ける場合よりも発光モジュールの製造が容易となる。また、このような構成によれば、各半導体発光素子42a〜42dが発する光は、対応する導光体141の領域141a〜141dをそれぞれ通過することで散乱が抑制される。また、半導体発光素子42と蛍光体層144とは離間しているため、半導体発光素子42や蛍光体層144の放熱性が向上し、発光モジュール全体の特性が改善する。
図13は、第3の実施の形態に係る発光モジュールの他の変形例の要部を示す断面図である。以下では、図11に示す発光モジュール632と異なる構成について主に説明する。発光モジュール832は、第1発光ユニット836a〜第4発光ユニット836dを備えている。また、発光モジュール832は、第1発光ユニット836a〜第4発光ユニット836d(以下、適宜発光ユニット836と称する)が有する半導体発光素子42a〜42dの上面および側面を一体的に覆う導光体441を備えている。
導光体441は、各半導体発光素子42と対向する複数の領域441a〜441dに区画されている。各領域441a〜441dの境界には、遮光部158b〜158dが形成されている。したがって、半導体発光素子42aから出射し、導光体441の領域441aに入射した光の一部が、隣接する領域441bに向かったとしても、遮光部158bによって遮られる。また、半導体発光素子42bから出射し、導光体441の領域441bに入射した光の一部が、隣接する領域441a,441cに向かったとしても、遮光部158b,158cによって遮られる。また、半導体発光素子42cから出射し、導光体441の領域441cに入射した光の一部が、隣接する領域441b,441dに向かったとしても、遮光部158c,158dによって遮られる。また、半導体発光素子42dから出射し、導光体441の領域441dに入射した光の一部が、隣接する領域441cに向かったとしても、遮光部158dによって遮られる。
この結果、発光モジュール832は、発光モジュール32の説明で述べたと同様の効果が得られる。また、一体に形成された導光体441を各半導体発光素子42の上部に設置することで、発光ユニット836毎に導光体を設ける場合よりも発光モジュールの製造が容易となる。また、発光モジュール832においては、各半導体発光素子42が導光体441の各領域441a〜441dによって側面まで覆われているため、各半導体発光素子42の側面から出射した光も前方を照射するために有効に利用されることになる。
(第4の実施の形態)
図14は、第4の実施の形態に係る発光モジュールの要部を示す断面図である。なお、上述の各実施の形態と同様の構成や効果については説明を適宜省略する。本実施の形態に係る発光モジュール932は、第1発光ユニット936a〜第4発光ユニット936dを備えている。また、発光モジュール932においては、各半導体発光素子42a〜42dの出射面42a1〜42d1の大きさと、対応する各蛍光体層244a〜244d(以下、適宜蛍光体層244と称する)の入射面244a1〜244d1の大きさが異なる。そのため、各半導体発光素子42a〜42dと蛍光体層44a〜44dとの間に配置されている各導光体541a〜541d(以下、適宜導光体541と称する)は、発光ユニットの光の照射方向に対して垂直な断面積が蛍光体層244に近付くにつれて小さくなるように構成されている。このような構成によれば、各半導体発光素子42が発する光は対応する導光体541を通過することで散乱が抑制される。また、半導体発光素子42と蛍光体層244とは離間しているため、半導体発光素子42や蛍光体層244の放熱性が向上し、発光モジュール全体の特性が改善する。また、半導体発光素子42を出射した光は導光体541により集束されて蛍光体層244に入射するため、蛍光体層244から出射される光の輝度が上がる。
図15は、第4の実施の形態に係る発光モジュールの変形例の要部を示す断面図である。以下では、図14に示した発光モジュール932と異なる構成について主に説明する。発光モジュール1032は、第1各発光ユニット1036a〜第4発光ユニット1036d(以下、適宜発光ユニット1036と称する)を備えている。導光体641aは、半導体発光素子42aの上面および側面を覆うように設けられている。蛍光体層244aは、導光体641aの上面に積層されている。導光体641bは、半導体発光素子42bの上面および側面を覆うように設けられている。蛍光体層244bは、導光体641bの上面に積層されている。導光体641cは、半導体発光素子42cの上面および側面を覆うように設けられている。蛍光体層244cは、導光体641cの上面に積層されている。導光体641dは、半導体発光素子42dの上面および側面を覆うように設けられている。蛍光体層244dは、導光体641dの上面に積層されている。
したがって、発光モジュール1032は、発光モジュール932の説明で述べたと同様の効果が得られる。また、発光モジュール1032は、各導光体641a〜641dによって各半導体発光素子42の側面まで覆われているため、各半導体発光素子42の側面から出射した光も前方を照射するために有効に利用することができる。
図16は、第4の実施の形態に係る発光モジュールの他の変形例の要部を示す断面図である。以下では、図12に示した発光モジュール732と異なる構成について説明する。発光モジュール1132は、第1発光ユニット1136a〜第4発光ユニット1136d(以下、適宜発光ユニット1136と称する)を備えている。また、発光モジュール1132は、第1発光ユニット1136a〜第4発光ユニット1136d(以下、適宜発光ユニット1136と称する)が有する半導体発光素子42a〜42dの上部を一体的に覆う導光体741を備えている。導光体741は、蛍光体層144と各半導体発光素子42との間に配置されており、遮光部258b〜258cによって複数の領域741a〜741dに区画されている。発光モジュール1132は、導光体741が図12に示した導光体141と類似の構成であるため、発光モジュール732と同様の効果が得られる。なお、導光体741は、各半導体発光素子42と対向する側の面積よりも、蛍光体層144と対向する側の面積が小さくなるように構成されている。そのため、第1発光ユニット1136aや第4発光ユニット1136dにおいては、半導体発光素子42a,42dを出射した光は導光体741の領域741a,741dにより集束されて蛍光体層144に入射するため、蛍光体層144から出射される光の輝度が上がる。
図17は、第4の実施の形態に係る発光モジュールの他の変形例の要部を示す断面図である。以下では、図13に示す発光モジュール832と異なる構成について主に説明する。発光モジュール1232は、第1発光ユニット1236a〜第4発光ユニット1236dを備えている。また、発光モジュール1232は、第1発光ユニット1236a〜第4発光ユニット1236d(以下、適宜発光ユニット1236と称する)が有する半導体発光素子42a〜42dの上面および側面を一体的に覆う導光体841を備えている。
導光体841は、各半導体発光素子42と対向する複数の領域841a〜841dに区画されている。各領域841a〜841dの境界には、遮光部358b〜358dが形成されている。発光モジュール1232は、導光体841が図13に示した導光体441と類似の構成であるため、発光モジュール832と同様の効果が得られる。なお、導光体841は、内包する各半導体発光素子42の上面と接している面の面積よりも、蛍光体層144と対向する側の面積が小さくなるように構成されている。そのため、第1発光ユニット1236aや第4発光ユニット1236dにおいては、半導体発光素子42a,42dを出射した光は導光体841の領域841a,841dにより集束されて蛍光体層144に入射するため、蛍光体層144から出射される光の輝度が上がる。
(第5の実施の形態)
図18は、第5の実施の形態に係る発光モジュールの要部を示す断面図である。本実施の形態に係る発光モジュールは、レンズやプリズムなどの光学部品を用いて半導体発光素子から発する光を集束し、導光体へ向かわせている点に特徴がある。本実施の形態に係る発光モジュール1332は、第1発光ユニット1336a〜1336d(以下、適宜発光ユニット1336と称する)を備えている。
第1発光ユニット1336aは、基板34に支持されている半導体発光素子42aと、半導体発光素子42aの発光面と対向するように設けられた凸レンズ60aと、凸レンズ60aの出射側に設けられた導光体941aと、導光体941aの出射側に積層されている蛍光体層244aと、を備えている。第2発光ユニット1336bは、基板34に支持されている半導体発光素子42bと、半導体発光素子42bの発光面と対向するように設けられた凸レンズ60bと、凸レンズ60bの出射側に設けられた導光体941bと、導光体941bの出射側に積層されている蛍光体層244bと、を備えている。第3発光ユニット1336cは、基板34に支持されている半導体発光素子42cと、半導体発光素子42cの発光面と対向するように設けられた凸レンズ60cと、凸レンズ60cの出射側に設けられた導光体941cと、導光体941cの出射側に積層されている蛍光体層244cと、を備えている。第4発光ユニット1336dは、基板34に支持されている半導体発光素子42dと、半導体発光素子42dの発光面と対向するように設けられた凸レンズ60dと、凸レンズ60dの出射側に設けられた導光体941dと、導光体941dの出射側に積層されている蛍光体層244dと、を備えている。
また、各半導体発光素子42の出射面42a1〜42d1の面積は、対応する蛍光体層244の入射面244a1〜244d1の面積以上である。なお、凸レンズ60a〜60dを適宜凸レンズ60と称する。また、導光体941a〜941dを適宜導光体941と称する。
半導体発光素子42から発した光は、凸レンズ60により集光され、導光体941に入射する。導光体941に入射した光は、半導体発光素子42の発光面以下の入射面を有する蛍光体層244を通過して前方へ照射される。この構成により、半導体発光素子42から発する光が仮に発散する場合であっても、凸レンズ60と導光体941により確実に蛍光体層244に集光される。したがって、各蛍光体層244から出射された光は、隣接する発光ユニット1336の所定の照射領域に漏れ出ることが抑制される。したがって、本実施の形態に係る発光モジュール1332によれば、所望の配光特性を高い精度で実現することができる。その結果、発光モジュール1332の幾つかの発光ユニット1336を消灯し、その他の発光ユニット1336を点灯させた場合、点灯している発光ユニット1336の光が、消灯している発光ユニット1336の照射領域に漏れ出てしまうことが抑制され、その領域に存在する前走車や歩行者に対してグレアを与える状況が改善される。また、半導体発光素子42を出射した光は凸レンズ60により集束されて蛍光体層244に入射するため、蛍光体層244から出射される光の輝度が上がる。
(第6の実施の形態)
図19は、第6の実施の形態に係る発光モジュールの要部を示す断面図である。本実施の形態に係る発光モジュールは、反射鏡を用いて半導体発光素子の側面から発する光を集束し、導光体へ向かわせている点に特徴がある。以下では、図10に示す発光モジュール532と異なる構成について主に説明する。本実施の形態に係る発光モジュール1432は、第1発光ユニット1436a〜第4発光ユニット1436d(以下、適宜発光ユニット1436と称する)を備えている。
第1発光ユニット1436aは、基板34に支持されている半導体発光素子42aと、半導体発光素子42aを囲むように設けられた反射鏡62aと、半導体発光素子42aの出射側に間隔を開けて設けられている導光体41aと、導光体41aの出射側に積層されている蛍光体層44aと、を備えている。第2発光ユニット1436bは、基板34に支持されている半導体発光素子42bと、半導体発光素子42bを囲むように設けられた反射鏡62bと、半導体発光素子42bの出射側に間隔を開けて設けられている導光体41bと、導光体41bの出射側に積層されている蛍光体層44bと、を備えている。第3発光ユニット1436cは、基板34に支持されている半導体発光素子42cと、半導体発光素子42cを囲むように設けられた反射鏡62cと、半導体発光素子42cの出射側に間隔を開けて設けられている導光体41cと、導光体41cの出射側に積層されている蛍光体層44cと、を備えている。第4発光ユニット1436dは、基板34に支持されている半導体発光素子42dと、半導体発光素子42dを囲むように設けられた反射鏡62dと、半導体発光素子42dの出射側に間隔を開けて設けられている導光体41dと、導光体41dの出射側に積層されている蛍光体層44dと、を備えている。なお、反射鏡62a〜62dを適宜反射鏡62と称する。また、導光体41a〜41dを適宜導光体41と称する。
発光ユニット1436においては、半導体発光素子42から発した光のうち側面から側方に向かって出射された光であっても、反射鏡62によって反射され、導光体41に入射する。導光体41に入射した光は、蛍光体層44を通過して前方へ照射される。この構成により、半導体発光素子42から発する光が仮に側面から出射される場合であっても、反射鏡62と導光体41により確実に蛍光体層44に集光される。したがって、各蛍光体層44から出射された光は、隣接する発光ユニット1436の所定の照射領域に漏れ出ることが抑制される。したがって、本実施の形態に係る発光モジュール1432によれば、所望の配光特性を高い精度で実現することができる。その結果、発光モジュール1432の幾つかの発光ユニット1436を消灯し、その他の発光ユニット1436を点灯させた場合、点灯している発光ユニット1436の光が、消灯している発光ユニット1436の照射領域に漏れ出てしまうことが抑制され、その領域に存在する前走車や歩行者に対してグレアを与える状況が改善される。
(車両用灯具)
図20は、上述のように構成される車両用前照灯装置の照射制御部と車両側の車両制御部の構成を説明する機能ブロック図である。車両用前照灯装置100の照射制御部102は、車両104に搭載された車両制御部106の指示にしたがって電源回路108の制御を行い第1灯具ユニット18や第2灯具ユニット20の照射制御を行う。
車両制御部106には、ライトスイッチ110、時計112、照度センサ114、カメラ116、車速センサ118が接続されている。ライトスイッチ110は第1灯具ユニット18のオン/オフによるロービーム照射切替え、第1灯具ユニット18の点灯時における第2灯具ユニット20のオン/オフによるハイビーム照射切替え、第1灯具ユニット18の消灯時における第2灯具ユニット20のオン/オフによるDRL照射切替えを手動で行うスイッチである。
本実施の形態の車両用前照灯装置100は、ライトスイッチ110の操作がない場合でも車両104の周囲の状況を検出して第1灯具ユニット18や第2灯具ユニット20の点消灯制御を行うことができる。例えば、時計112は、現在の日時または現在の季節と時刻を車両制御部106に提供する。車両制御部106は、日時や季節に基づき車両104の周囲が車両用前照灯装置100を点灯すべき暗さであると判定できる場合は、照射制御部102に第1灯具ユニット18の点灯指令を送りロービームを自動点灯するようにしてもよい。一方、車両制御部106が車両用前照灯装置100の点灯は必要ない明るさであると判定した場合、照射制御部102に第2灯具ユニット20の減光点灯指令を送りDRLを自動点灯するようにしてもよい。また、車両制御部106は、カメラ116からの情報に基づき、車両前方に前方車両や歩行者が存在しない場合、ロービーム照射からハイビーム照射に自動的に切り替えてもよい。
前述したように、本実施形態の場合、第1灯具ユニット18とともに第2灯具ユニット20を点灯させているときに、ハイビーム照射領域中に照射を抑制すべき物体が存在する場合、前記物体が存在する位置に対応する第2灯具ユニット20の照射による部分領域を消灯制御する。ここで、照射を抑制すべき物体とは、対向車や前走車、歩行者などである。このような消灯制御を実行するために、車両制御部106は、物体の認識手段として例えばステレオカメラなどのカメラ116から提供される画像データを用いる。カメラ116の撮影領域は仮想鉛直スクリーンの領域と一致している。撮影画像中に予め保持している車両や歩行者を示す特徴点を含む画像が存在する場合、ハイビーム照射領域中に照射を抑制すべき物体が存在すると判定する。そして、照射を抑制すべき物体の存在する位置に対応する部分領域を形成している発光ユニット36を消灯するように照射制御部102に情報を供給する。なお、ハイビーム照射領域中に照射を抑制すべき対象物を検出する手段は適宜変更可能であり、カメラ116に代えてミリ波レーダや赤外線レーダなど他の検出手段を用いてもよい。また、それらを組み合わせてもよい。また、カメラ116からの情報に基づき、車両104の周囲の明るさを検出してハイビーム照射モードと昼間点灯照射モードの切替え制御を行うようにしてもよい。
なお、本実施の形態においては、車両用灯具としての車両用前照灯装置は、発光モジュールが備える複数の発光ユニットを個別に調光制御する制御回路を備えている。なお、制御回路は、発光モジュールが備える複数の発光ユニットを複数のグループに分けた場合にグループ毎に調光制御するものであってもよい。このような車両用前照灯装置は、前述の発光モジュールを備えることで、所望の配光特性を高い精度で実現することができる。
以上、本発明を各実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
上述の実施の形態では、青色の光を発する半導体発光素子と黄色の蛍光体の組み合わせた発光ユニットについて説明したが、発光ユニットとしては、紫外光を発する半導体発光素子と、紫外光で励起され、赤、緑、青の光をそれぞれ発する複数の蛍光体と、を有するものであってもよい。あるいは、紫外光を発する半導体発光素子と、紫外光で励起され、青、黄の光を発する蛍光体と、を有する発光ユニットであってもよい。
また、上述の実施の形態では、光波長変換部材としてセラミック材料が用いられているが、これに代えてシリコーン樹脂やガラス、ゾル・ゲル剤と、粉末蛍光体とを混合して板状に加工したものを光波長変換部材として用いてもよい。なお、蛍光体層としては、波長600nmにおける光透過率が40%以上であることが好ましい。また、本実施の形態に係る発光モジュールは、車両用灯具だけではなく照明用灯具にも用いることができる。