JP2015022279A - カラーフィルタアレイ、固体撮像素子、撮像装置 - Google Patents

カラーフィルタアレイ、固体撮像素子、撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】透過率が大きく、コストが低減可能なカラーフィルタアレイを提供する。【解決手段】カラーフィルタアレイは、金属構造と絶縁体とから構成され、中心周波数が異なる複数のカラーフィルタ120、121と、前記複数のカラーフィルタにまたがって形成された第1の共通電極123と、前記第1の共通電極と対向し、前記複数のカラーフィルタの前記金属構造から前記絶縁体によって隔てられており、前記複数のカラーフィルタにまたがって形成された第2の共通電極122と、前記第1の共通電極および前記第2の共通電極の間に電圧を印加して、前記複数のカラーフィルタの中心周波数を同時に変化させる電圧印加部12124と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、カラーフィルタアレイに関し、特に撮像装置に用いられる固体撮像素子に用いられるカラーフィルタアレイに関する。
近年、固体撮像素子の各画素に、異なる中心周波数を有するカラーフィルタをアレイ状に並べ、被写体の画像情報と周波数情報(分光画像)を同時に取得するマルチバンドカメラ(マルチスペクトルカメラ)が提案されている。このようなマルチバンドカメラにおいて、取得する周波数の分解能を上げるためには、中心周波数のわずかに異なるカラーフィルタを多数並べる必要がある。しかし、カラーフィルタの種類を増やすほど、同一周波数特性の画像を取得する画素の間隔が拡がってしまい、空間分解能が劣化する。
そこで、各カラーフィルタの特性を可変にすることで、周波数分解能と空間分解能を同時に向上させる固体撮像素子が提案されている。このような可変カラーフィルタとしては、例えば特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1に開示されている可変カラーフィルタは、微細な金属構造を周期的に配列し、表面プラズモンを利用して波長選択を行なうカラーフィルタである。このようなカラーフィルタにおいて、誘電体基板に強誘電体などの誘電率可変材料を使用し、電圧印加によって強誘電体の屈折率を変化させることで、フィルタ特性を可変にしている。
特開2011−43681号公報
しかしながら、異なる中心周波数を有するカラーフィルタをアレイ状に並べ、分光画像取得用の固体撮像素子に使用する場合、カラーフィルタ毎に電圧印加のための回路を設ける必要がある。その結果、回路によって開口率が低下してカラーフィルタの透過率が低下し、回路形成のためのコストも増大するという課題が発生する。
上記の課題を考慮し、本発明は透過率が大きく、コストが低減可能なカラーフィルタアレイを提供することを目的とする。
本発明の第一の態様は、カラーフィルタアレイであって、
金属構造と絶縁体とから構成され、中心周波数が異なる複数のカラーフィルタと、
前記複数のカラーフィルタにまたがって形成された第1の共通電極と、
前記第1の共通電極と対向し、前記複数のカラーフィルタと前記金属構造から前記絶縁体によって隔てられており、前記複数のカラーフィルタにまたがって形成された第2の共通電極と、
前記第1の共通電極および前記第2の共通電極の間に電圧を印加して、前記複数のカラーフィルタの中心周波数を同時に変化させる電圧印加部と、
を備えることを特徴とする。
本発明によると、透過率が向上し、コストを低減可能なカラーフィルタアレイが実現できる。
実施例1に係る撮像装置の構成図 実施例1に係る固体撮像素子の構成図 実施例1に係るカラーフィルタアレイの構成図 実施例1に係るカラーフィルタの透過スペクトル 実施例2に係るカラーフィルタアレイの構成図 実施例2に係るカラーフィルタの透過スペクトル 実施例2の変形例に係るカラーフィルタアレイの構成図 実施例2の変形例に係るカラーフィルタの透過スペクトル 実施例2の更なる変形例に係るカラーフィルタアレイの構成図 実施例2の更なる変形例に係るカラーフィルタの透過スペクトル 実施例3に係るカラーフィルタアレイの構成図 実施例3に係るカラーフィルタアレイの構成図 実施例3に係るカラーフィルタアレイの構成図 実施例3に係るカラーフィルタアレイの製造方法 実施例4に係るカラーフィルタアレイの構成図 実施例4に係るカラーフィルタの透過スペクトル 実施例4に係る複数のカラーフィルタの中心周波数間隔
以下、図を用いて、本発明の実施例におけるカラーフィルタアレイについて説明する。その際、全ての図において同一の機能を有するものは同一の数字を付け、その繰り返しの説明は省略する。
[実施例1]
<撮像装置(分光画像取得装置)>
本実施例は、カラーフィルタを有する固体撮像素子を用いた撮像装置である。本発明に係る撮像装置100の構成を図1に示す。図1において、撮像装置100は、結像光学系101、固体撮像素子102、制御部103から構成される。固体撮像素子102は結像光学系101の光軸上に配置され、結像光学系101は固体撮像素子102上に被写体像を結像する。
固体撮像素子102は、透過させる光の周波数帯域を変更可能なカラーフィルタを備える。カラーフィルタはアレイ状に配置され、それぞれ異なる周波数帯域を透過させるので、撮像装置100は、分解能良く周波数情報を取得できる。固体撮像素子102およびカラーフィルタアレイの詳細については後述する。
制御部103は、CPUやDSPとプログラムを格納したメモリから構成され、被写体像の取得や、カラーフィルタの特性変化などの制御を行う。なお、制御部104はASICにより実装されても良い。制御部103は、カラーフィルタアレイへの印加電圧を変化させつつ画像信号を取得することにより、広い周波数帯域における分光情報を取得する。
<固体撮像素子の構成>
図2(a)は、固体撮像素子102の平面図であり、図2(b)は固体撮像素子102の断面図である。固体撮像素子102は、2種類の画素110、111を有する。画素110と画素111は、カラーフィルタの透過周波数特性が異なり、すなわち検出する光の周波数帯域が異なる。各々の画素は、光の入射側より、マイクロレンズ112、カラーフ
ィルタ120または121、基板113を有している。マイクロレンズ112は、検出する周波数帯域で透明な材料であるSiOなどで形成されており、基板113は、検出する波長帯域で吸収を有するSiなどの材料で形成されている。そして、基板113内には、光電変換部114が形成されている。光電変換部114は、基板113に対してボロンなどのイオンを打ち込むことで形成する。また、画素110及び111には図示しない配線が設けられており、光電変換部で発生した電荷は配線によって信号処理回路に転送される。発生した電荷の転送方式は任意であってよい。すなわち、固体撮像素子103は、CCD(Charge Coupled Device: 電荷結合素子)であってもよいし、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor: 相補型MOS)であってもよい。
画素110、111は、中心周波数の異なるカラーフィルタ120、121を、マイクロレンズ112と基板113の間に有している。また、カラーフィルタ120、121にまたがる第一の共通電極123および第2の共通電極122が、カラーフィルタの上下方向(Z方向)に対向して設けられている。共通電極122,123は、複数のカラーフィルタにまたがって形成されている。
共通電極122,123は、検出する波長帯域で透明な導電性材料であるITO等によって形成すればよい。また、50nm以下程度の金属薄膜によって形成しても良い。検出する波長帯域で不透明な金属材料であっても、膜厚が薄ければ、共通電極による光の吸収を抑えることができる。
固体撮像素子102はさらに、共通電極122および123に対して電圧を印加するための電圧印加回路(電圧印加部)124が接続されている。回路124の印加電圧によって各カラーフィルタ120、121の中心周波数を同時に変化させることができるようになっている。
カラーフィルタ120、121及び共通電極122、123、そして電圧印加回路124で形成された部分をカラーフィルタアレイ125と呼ぶ。カラーフィルタアレイ125側から見れば、カラーフィルタアレイ中のカラーフィルタ120、121は固体撮像素子の画素110、111に対応して配置されている。
画素110(と対応するカラーフィルタ120)と画素111(と対応するカラーフィルタ121)の配置は図2(a)に示すように互い違いに配置されていなくても良い。画素の配置は任意であって良い。但し、中心周波数の異なるカラーフィルタ120、121が隣接して配置されている方が、得られる分光画像の空間分解能が面内で均一になるため、好ましい。また、ここでは固体撮像素子102が2種類の画素を有するものとして説明しているが、固体撮像素子102が3種類以上の画素を有しても良い。
このように、本実施例では、中心周波数の異なる複数のカラーフィルタに対して共通の電極を用い、同時に中心周波数を変化させている。これにより、カラーフィルタ毎に電圧印加用の回路を用いた場合に比べ、電圧印加用の回路の数を少なくすることが出来るため、カラーフィルタアレイ125の透過率が向上し、コストが低減する。
<カラーフィルタ>
図3は、カラーフィルタ120、121内の金属構造を示した図である。図3(a)はカラーフィルタ120の平面図であり、図3(b)はカラーフィルタ120の断面図である。図3(c)はカラーフィルタ121の平面図であり、図3(d)はカラーフィルタ121の断面図である。
カラーフィルタ120は、絶縁体膜132中に金属構造130が設けられた構造であり
、カラーフィルタ121は、絶縁体膜132中に金属構造131が設けられた構造である。金属構造130、131はその大きさに応じたプラズモン共鳴を生じるため、カラーフィルタ120、121の透過スペクトルは、プラズモン共鳴を生じる周波数に対して透過スペクトルのディップを有する。実施例1のように、カラーフィルタの透過スペクトルがディップを有する反射型のフィルタの場合、ディップの周波数をカラーフィルタの中心周波数と呼ぶ。
実施例1では、金属構造130の形状は、XY面内(共通電極122、123と平行な面)において一辺20nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。金属構造131の形状は、XY面内において一辺50nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。金属構造130、131はいずれも、正方格子状に周期的に配列される。その周期(金属構造の中心間の距離)は、金属構造130において40nmであり、金属構造131において100nmである。各金属構造は第1の共通電極123に接し、第2の共通電極122とは絶縁体膜132を介して5nm隔てられている。金属材料はAuであり、絶縁体材料はHfOである。
但し、ここで示した構造は一例であり、本発明はこの構造に限定される訳ではない。分光画像情報を取得したい周波数帯域によって、金属構造のXY面内の大きさ(面積)やZ方向の厚み、周期を選択すれば良い。なお、一般に、XY面内における大きさ(面積)が大きいほど中心周波数が低くなる。金属構造は必ずしも周期的に配列されている必要はないが、周期的に配列されていた方が、各々の金属構造で生じるプラズモン共鳴同士が強めあうため、好ましい。周期を短くするほど、共鳴度合いは強くなり、スペクトルディップが急峻となる。金属構造は直方体でなくても良く、円柱や楕円柱、多角形柱などを用いても良い。
金属構造の材料としてはAu以外にも、Ag、Pt、Al等を使用しても良い。但し、化学的な安定性からAuを用いることが好ましい。絶縁体膜132の材料としてはHfO以外にも、SiO、SiN、Ta、La、TiO等を使用しても良い。但し、HfOは、絶縁破壊電圧が大きく、高い電圧を印加することが可能であるため好ましい。
回路124によって共通電極122及び123を通じて電圧が印加されることにより、第2の共通電極122と金属構造の間に電位差が生じる。そのため、金属構造130、131の、絶縁体膜132側(+Z側)の表面近傍の電荷密度が変化する。金属構造130、131の金属表面層140、141の誘電率が変化してプラズモン共鳴の状態が変化することで、カラーフィルタ120、121の中心周波数が変化する。
このように、本発明では電圧印加によって金属表面層の電荷密度変化を生じさせ、電荷密度変化によって生じる誘電率変化を用いてカラーフィルタの中心周波数を可変としている。
<透過スペクトル>
図4(a)(b)は、それぞれカラーフィルタ120および121の透過スペクトルを示したものである。実線401、411は、共通電極間に電圧を印加しなかったときの透過スペクトルである。破線402、412は共通電極123に、共通電極122に対して+12Vの電圧(+2.4V/nmの電界に相当)を印加した時の透過スペクトルである。点線403、413は共通電極123に、共通電極122に対して−12Vの電圧(−2.4V/nmの電界に相当)を印加した時の透過スペクトルを示す。
印加する電圧を+12Vから−12Vに変えることで、カラーフィルタ120の透過ス
ペクトルのディップは周波数0.393PHz〜周波数0.436PHzまで変化する。一方、カラーフィルタ121の透過スペクトルのディップは周波数0.282PHz〜周波数0.312PHzまで変化する。なお、PHzはペタヘルツ(1015Hz)である。
<本実施例の効果>
このように、金属構造130と金属構造131のXY面内での大きさ(面積)は異なっているため、カラーフィルタアレイ125は異なる周波数の分光情報を同時に取得することができる。具体的には、カラーフィルタアレイ125において、単一の回路124により共通電極122、123間に印加する電圧を変えつつ、画像情報を取得すればよい。その結果、周波数0.282PHz〜周波数0.312PHzおよび、周波数0.393PHz〜周波数0.436PHzの分光画像情報を同時に取得することができる。
特許文献1に開示されている従来のカラーフィルタアレイは、各々のカラーフィルタに対して電圧を印加するための回路を独立に設けていたため、カラーフィルタの数だけ回路が必要であった。それに対し、本実施例にかかるカラーフィルタアレイは、単一の回路によって、複数の中心周波数の異なるカラーフィルタの中心周波数を同時に変えることができるため、従来に比べて透過率の向上、コスト低減が実現できる。
<分光情報の取得方法>
実施例1に示すカラーフィルタ120及びカラーフィルタ121は透過率にディップを有するフィルタであるため、得られる分光情報は、全周波数の分光情報から特定の周波数の分光情報が抜けたものになる。逆に、特定の周波数の分光情報のみを得たい場合には、全周波数の分光画像信号を加算した値から、特定の周波数の分光画像信号の値を減算して求めればよい。また、カラーフィルタを設けない画素を設けておき、その画素で取得した全周波数成分の分光画像信号から、カラーフィルタを設けた画素で取得した分光画像信号を減算して求めても良い。
<カラーフィルタの製造方法>
カラーフィルタを構成する金属構造は、フォトリソグラフィやEBリソグラフィなどで、金属構造の平面視の反転パターンをレジストで作成し、EB蒸着やスパッタ等によって金属を成膜した後、リフトオフを行うことで製造できる。または、先に金属構造を形成する金属薄膜を成膜してから、リソグラフィによって金属構造の平面視パターンをレジストで形成し、ドライエッチイングによって製造しても良い。
[実施例2]
本実施例は、実施例1と比較して固体撮像素子におけるカラーフィルタアレイの構成が異なる。実施例に係るカラーフィルタアレイ225を構成するカラーフィルタの透過スペクトルは二つのディップを有する。すなわち、各カラーフィルタは、2つのディップの中間にピークを有する透過型のカラーフィルタである。カラーフィルタアレイは、このような複数の透過型のカラーフィルタから構成されているものである。
実施例2のように、透過スペクトルがディップの中間にピークを有する透過型のフィルタ(図6参照)の場合、ピークの周波数をカラーフィルタの中心周波数と呼ぶ。カラーフィルタアレイ225は、実施例1に示すカラーフィルタアレイ125に対し、カラーフィルタを構成する金属構造のみが異なる。
<カラーフィルタ>
図5は、カラーフィルタアレイ225を構成するカラーフィルタ220、221内の金属構造を示した図である。図5(a)はカラーフィルタ220の平面図であり、図3(b
)はカラーフィルタ220の断面図である。図5(c)はカラーフィルタ221の平面図であり、図5(d)はカラーフィルタ221の断面図である。
カラーフィルタ220は、XY面内の大きさが異なる複数種類の金属構造230、231から構成されており、カラーフィルタ221は、XY面内の大きさが異なる複数種類の金属構造232、233から構成されている。金属構造230、231、232、233は、その大きさに応じたプラズモン共鳴を生じさせる。したがって、カラーフィルタ220は、金属構造230、231によって生じるプラズモン共鳴周波数に対応する2つの透過スペクトルのディップを有する。同様に、カラーフィルタ221は、金属構造232、233のプラズモン共鳴周波数に対応する2つの透過スペクトルのディップを有する。そのため、カラーフィルタ220及び221の透過スペクトルは、2つの共鳴ディップの中間にピークを有する透過スペクトルとなる。
金属構造230の形状は、XY面内において一辺20nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。金属構造231の形状は、XY面内において一辺25nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。また、金属構造232の形状は、XY面内において一辺40nmの正方形であり、厚みが5nmの直方体である。金属構造233の形状は、XY面内において一辺50nmの正方形であり、厚みが5nmの直方体である。カラーフィルタ220において、金属構造230および231は、互い違いに正方格子状に周期的に配置される。同様に、カラーフィルタ221において金属構造232および232は、互い違いに正方格子状に周期的に配置される。また、金属構造230及び金属構造231の周期(隣接する金属構造の中心間距離)は40nmであり、金属構造232及び金属構造233の周期は80nmである。各金属構造は第1の共通電極123に接し、第2の共通電極122とは絶縁体膜132を介して5nm隔てられている。金属材料はAu、絶縁体膜の材料はHfOである。
但し、実施例1と同様、この構造に限るものではなく、分光情報を取得したい波長帯域によって、金属構造の大きさや厚み、周期、金属材料および絶縁体材料を選択すれば良い。また、金属構造230(232)と金属構造231(233)は互い違いに配列されているが、必ずしもこの配列でなくとも良い。但し、金属構造の配置が偏らないように配列した方が、カラーフィルタ全域にわたって透過スペクトルが均一になるため、好ましい。
<透過スペクトル>
図6(a)、(b)は、それぞれカラーフィルタ220及びカラーフィルタ221の透過スペクトルを示す図である。実線601、611は、共通電極に電圧を印加しなかったときの透過スペクトルである。破線602、612は共通電極123に、共通電極122に対して+12Vの電圧(+2.4V/nmの電界に相当)を印加した時の透過スペクトルである。点線603、613は共通電極123に、共通電極122に対して−4Vの電圧(−0.8V/nmの電界に相当)を印加した時の透過スペクトルを示す。
印加する電圧を+12Vから−4Vに変えることで、カラーフィルタ220の透過スペクトルのピークは周波数0.404PHz〜周波数0.422PHzまで変化する。一方、カラーフィルタ221の透過スペクトルのピークは周波数0.318Hz〜周波数0.331Hzまで変化する。従って、カラーフィルタアレイ225は、単一の回路を用いて、周波数0.318Hz〜周波数0.331Hz及び、周波数0.404PHz〜周波数0.422PHzの分光情報を同時に取得できる。具体的には、実施例1と同様に、単一の回路124により共通電極122、123間に印加する電圧を変えつつ画像情報を取得すればよい。
実施例2に示すカラーフィルタアレイ225は透過率がピークを有するカラーフィルタ
を用いているため、実施例1に示すカラーフィルタアレイ125とは異なり、減算処理を行わずに特定の周波数の分光情報を取得できる。
なお、実施例2のように透過率がピークを有するカラーフィルタを用いる場合、顔料などによって形成される吸収フィルタを組み合わせて、各々のカラーフィルタ透過帯域を制限した方が好ましい。以下で理由を説明する。
図6(a)(b)に示すように、カラーフィルタ220および221は、透過スペクトルのピーク付近(0.42PHz付近および0.32PHz付近)の周波数の光だけでなく、透過スペクトルのディップの外側の周波数の光も透過してしまう。その結果、カラーフィルタ220及び221で取得した分光情報に、別の周波数の分光情報が重なり、分光情報の質が低下してしまう。金属構造からなるカラーフィルタに加えて、透過帯域を制限する吸収フィルタを備えるカラーフィルタアレイを用いることで、分光情報の質が向上するため、好ましい。例えば、カラーフィルタ220では図6(c)のように透過帯域を0.393PHz〜0.430PHzに制限し、カラーフィルタ221では図6(d)のように透過帯域を0.307PHz〜0.337PHzに制限するのが好ましい。
<金属構造の数密度>
また、カラーフィルタが大きさの異なる金属構造から形成されている場合、面内方向(XY方向)の大きさが小さい金属構造の数密度の方が、面内方向(XY方向)の大きさが大きい金属構造の数密度よりも大きいことが好ましい。なぜなら、異なる大きさの金属構造を同一の数密度で並べた場合、大きい金属構造の方が強い共鳴を生じるため、共鳴ディップの中間に生じるスペクトルのピーク形状の非対称性が増すためである。透過スペクトルの非対称性が大きいと、分光情報の質の低下を招いてしまう。特に、複数の金属構造の大きさに差があるほど、透過スペクトルは非対称になる。
面内方向の大きさが小さい金属構造の密度を、面内方向の大きさが大きい金属構造よりも大きくした例を示す。図7(a)に示すカラーフィルタ222は、金属構造234と金属構造235からなっており、金属構造234はXY方向の大きさが一辺20nm、金属構造235はXY方向の大きさが一辺60nmであり、厚みは共に5nmである。そして、金属構造234の数密度が、金属構造235の数密度の12倍になるように配置されている。図7(b)には比較のため、金属構造234と金属構造235の数密度が等しいカラーフィルタ223を示した。いずれも、金属材料はAu、絶縁体膜の材料はHfOである。
図8に、カラーフィルタ222、223の透過スペクトルを示す。実線801はカラーフィルタ222の透過スペクトルであり、点線802はカラーフィルタ(比較例)223の透過スペクトルである。図8よりわかるように、金属構造の数密度が等しいカラーフィルタ223では、金属構造234の共鳴によって生じる高周波数側のディップが、金属構造235の共鳴によって生じる低周波数側のディップに比べて弱い。そのため、透過スペクトルの形状が非対称になっている。一方、面内大きさが小さい金属構造234の数密度を、面内大きさが大きい金属構造235の数密度よりも大きくしたカラーフィルタ222では、透過スペクトルの形状の対称性が向上している。これは、相対的に共鳴が弱い金属構造234の密度を、相対的に共鳴が強い金属構造235の数密度よりも高くすることで、高周波数側の共鳴ディップを、低周波数側の共鳴ディップと同程度まで強くしたためである。その結果、透過スペクトルの対称性が向上し、分光情報の質が向上する。この時、金属構造の面内大きさ(面積)と金属構造の数密度の積が等しくなるようにすると、透過スペクトルの形状が対称に近付くため、更に好ましい。
<ホール型>
なお、図5に示すカラーフィルタ220、221では、大きさが異なる直方体の二つの異なる金属構造を絶縁膜内に設けることによって透過スペクトルがピークを持つカラーフィルタを実現している。しかしながら、カラーフィルタの金属構造は、金属膜から一部が抜けている構造であってもよい。この構成をホール型と称する。図9(a)(c)は、それぞれホール型のカラーフィルタ226、227の平面図であり、図9(b)(d)はその断面図である。図9において、網掛けして示した部分(238)が金属膜であり、白抜き部分(236、237)が空孔である。図9に示すカラーフィルタ226、227は、金属膜238中に離散的な空孔236、237を設け、空孔を絶縁体132で充填した構造である。空孔236の形状はXY面内において一辺20nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。空孔237の形状はXY面内において一辺15nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。空孔236は周期40nmで、空孔237は周期30nmで周期的にXY方向に配列されている。金属膜238は第1の共通電極123に接し、第2の共通電極122とは絶縁体膜132を介して5nm隔てられている。金属材料はAuであり、絶縁体材料はHfOである。
図10(a)(b)はそれぞれ、カラーフィルタ226及びカラーフィルタ227の透過スペクトルである。実線1001、1011は、共通電極に電圧を印加しなかったときの透過スペクトルである。破線1002、1012は共通電極123に、共通電極122に対して+4Vの電圧(+0.8V/nmの電界に相当)を印加した時の透過スペクトルである。点線1003、1013は共通電極123に、共通電極122に対して−4Vの電圧(−0.8V/nmの電界に相当)を印加した時の透過スペクトルを示す。
印加する電圧を+4Vから−4Vに変えることで、カラーフィルタ226の透過スペクトルのピークは周波数0.557PHz〜周波数0.592PHzまで変化する。一方、カラーフィルタ227の透過スペクトルのピークは周波数0.589Hz〜周波数0.637Hzまで変化する。従って、図10に示すカラーフィルタアレイは、単一の回路を用いて、周波数0.557PHz〜〜周波数0.637PHzの分光情報を取得できる。
[実施例3]
本実施例は、実施例1、2と比較して固体撮像素子におけるカラーフィルタアレイの構成が異なる。実施例3に係るカラーフィルタアレイは、必要な分光情報の周波数分解能に応じて、各々のカラーフィルタの構造を変更(調整)したものである。
撮像装置は、その用途に応じて、必要な周波数分解能が決まる。幅広い用途に使用する一般的な撮像装置の場合、広帯域な周波数範囲において、必要な周波数分解能は均一である。一方、医療用などの撮像装置で特定の周波数情報が重要となる場合、必要な周波数分解能は周波数帯域によって異なる。
本実施例にかかるカラーフィルタアレイ中の複数のカラーフィルタには共通電極によって同一の電圧が印加される。従って、特許文献1のように、カラーフィルタ毎に印加電圧を変えることで、必要な周波数分解能を得られるようにすることができない。本実施例におけるカラーフィルタアレイでは、複数のカラーフィルタ間において、電圧に対する中心周波数シフト量の敏感度(ΔFc/ΔV)を変えることで、必要な周波数分解能(ΔF)に応じたカラーフィルタアレイ325が実現している。
具体的には、必要な周波数分解能ΔFが細かいカラーフィルタほど、電圧に対する中心周波数シフトの敏感度(ΔFc/ΔV)が小さくなるような構造とすればよい。中心周波数とは、実施例1のように透過スペクトルがディップを有するカラーフィルタを用いる場合にはディップの周波数を指す。一方、実施例2のように透過スペクトルがピークを有するカラーフィルタを用いる場合にはピークの周波数を指す。また、電圧に対する中心周波
数シフト敏感度とは、一定電圧を加えたときのカラーフィルタの中心周波数のシフト量である。
<敏感度の制御方法>
以下で、電圧に対する敏感度を制御する方法について説明する。共通電極間に電圧ΔVを印加した際、電圧変化ΔVに応じた電荷密度変化ΔQが金属構造表面に誘起される。そして、その電荷密度変化ΔQに応じて、中心周波数FcのシフトΔFcが生じる。従って、電圧に対する敏感度ΔFc/ΔVの値を制御するには、ΔQ/ΔVを制御するか、ΔFc/ΔQを制御すればよい。
(1.金属層の膜厚)
まず、ΔFc/ΔQを制御する方法について説明する。表1は、金属表面層の誘電率変化が等しい場合(即ち、電荷密度変化が等しい場合)の、ΔFc/Fcの金属構造の厚みに対する依存性を示したものである。表1では、電圧+12V印加時と電圧−12V印加時の中心周波数のシフト量をΔFcとした(即ち、ΔVは24Vである)。表1よりわかるように、金属構造の面内方向の大きさや周期によらず、金属構造の厚みが厚いほど、ΔFc/Fcは大きくなる。
Figure 2015022279
これは、金属構造の厚みによらず金属表面層の厚さはほぼ一定であり、金属構造全体に対する金属表面層の体積充填率は、金属構造の厚みが厚いほど小さいためである。金属構造の厚みが厚いほど、金属表面層の誘電率変化が金属構造全体の誘電率変化に与える影響が小さい。そのため、金属構造の厚みが厚いほどカラーフィルタの中心周波数シフトは小さくなり、ΔFc/Fcが小さくなっている。表1より、ΔFc/Fcは、金属構造の厚みhにほぼ反比例する(ΔFc/Fc〜1/h)ことが分かる。金属構造の厚みをXY方向長さで除した値が大きくなるにつれて反比例から外れてくるが、これは金属構造の側面の影響が無視できなくなるためである。
以上から、所定の電荷密度変化ΔQが誘起された場合の、中心周波数のシフト量ΔFcは、中心周波数Fcに比例し、金属構造の厚みhにほぼ反比例することが分かる(ΔFc/ΔQ〜Fc/h)。したがって、必要な周波数分解能ΔFを得るためには、カラーフィルタの中心周波数Fcと金属構造の厚みhとの比をΔFに応じて制御すればよい。例えば、同一の周波数分解能を得るためには、中心周波数の高いカラーフィルタほど、金属構造の厚みを厚くすればよい。
また、以上で述べた理由により、金属構造の厚みhが薄いほど、同一の電圧を印加した際のカラーフィルタの中心周波数シフト(ΔFc/ΔV)が大きいため、好ましい。金属構造に電圧を印加した際に形成される金属表面層の厚みは0.5nm程度であるため、金属構造の厚みは20nm以下であると好ましい。一方、金属構造の厚みが薄すぎると製造が困難になる。そのため、金属構造の厚みは1nm以上、20nm以下であると好ましい。
(2.静電容量)
次に、ΔQ/ΔVを制御する方法について説明する。共通電極間に電圧ΔVを印加した場合、金属表面層に誘起される電荷密度変化ΔQは、金属構造と第2の共通電極間に形成されるキャパシタの静電容量Cと、ΔVの積によって決定される(ΔQ〜C×ΔV)。静電容量Cは、絶縁体の誘電率εに比例し、金属構造と第2の共通電極の間の距離dに反比例するため、ΔQ/ΔVは誘電率εに比例し距離dに反比例する(ΔQ/ΔV〜ε/d)。したがって、ΔQ/ΔVを小さくするためには、Cを小さくする、すなわち、絶縁体の誘電率εを小さくするか、金属構造と第2の共通電極の間の距離dを離せばよい。
所定の電荷密度変化ΔQが誘起された場合の、中心周波数のシフト量ΔFcは、中心周波数Fcに比例する(ΔFc/ΔQ〜Fc)。したがって、単位電圧を印加した場合の中心周波数のシフト量ΔFc/ΔVは、絶縁体の誘電率εに比例し、金属構造と第2の共通電極の間の距離dに反比例する(ΔFc/ΔV〜(ΔFc/ΔQ)×(ΔQ/ΔV)〜(Fc/h)×(ε/d))。金属構造の厚みhを一定とした場合は、必要な周波数分解能ΔFを得るためには、カラーフィルタの中心周波数Fcと絶縁体の誘電率εと金属構造と第2の共通電極の間の距離dを、ΔFに応じて制御すればよい。例えば、絶縁体の誘電率εのみによって制御するのであれば、必要な周波数分解能ΔFをカラーフィルタの中心周波数Fcで除した値が小さいほど、絶縁体の誘電率εを小さくすればよい。あるいは、金属構造と第2の共通電極の間の距離dのみによって制御するのであれば、必要な周波数分解能ΔFをカラーフィルタの中心周波数Fcで除した値が小さいほど、距離dを大きくすればよい。
また、以上で述べた理由により、金属構造と第2の共通電極の間の距離が小さいほど同一の電圧を印加した際のカラーフィルタの中心周波数シフトが大きいため、好ましい。一方、金属構造と第2の共通電極の間の距離が小さすぎると製造が困難になる。そのため、金属構造と第2の共通電極の間の距離は1nm以上、20nm以下であることが好ましい。
以上で述べたように、必要な周波数分解能ΔFが細かいカラーフィルタを中心周波数Fcで除した値が小さいほど、金属構造の厚みhを薄くするか、絶縁体の誘電率εを小さくするか、金属構造と第2の共通電極の間の距離dを大きくすればよい。なお、これら3つの条件のうちの2つ以上を組み合わせて変更してもよい。上述のように、ΔFc/ΔV〜(Fc/h)×(ε/d)なので、必要な周波数分解能ΔFに応じて、(Fc/h)×(ε/d)の値を適宜調整すればよい。このように、必要な周波数分解能に応じて、電圧に対する敏感度ΔFc/ΔVを制御することで、分光情報の質が向上する。
<A.周波数分解能一定の場合>
以下で、具体例を示す。まず、必要な周波数分解能ΔFが、周波数によらず一定の場合を示す。電圧に対する中心周波数シフトの敏感度(ΔFc/ΔV)を一定とするためには、具体的には、中心周波数Fcが大きいカラーフィルタほど、金属構造の厚みを薄くするか、絶縁体の誘電率を小さくするか、金属構造と第2の共通電極の間の距離を大きくすればよい。全てのカラーフィルタにおいて、中心周波数Fcと、h×d/εとの比を一定とすれば、単位電圧あたりの中心周波数のシフト量を同一にすることができる。
(A−1.金属構造の厚みで制御)
図11は、金属構造の厚みhを変えたカラーフィルタアレイ301の例を示す。図11(a)はカラーフィルタアレイ301の平面図であり、図11(b)は断面図である。カラーフィルタ320を構成する金属構造330の形状は、XY面内において一辺20nmの正方形であり、Z方向の厚みが10nmの直方体である。金属構造330は、周期40nmで正方格子状に配置されている。また、カラーフィルタ321を構成する金属構造331の形状は、XY面内において一辺65nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。金属構造331は、周期130nmで正方格子状に配置されている。各金属構造は第1の共通電極123に接し、第2の共通電極122とは絶縁体膜132を介して5nm隔てられている。金属材料はAuであり、絶縁体材料はHfOである。
表2には、電圧+12Vと電圧−12Vを印加した際のカラーフィルタ320、カラーフィルタ321の中心周波数シフトを示した。なお、比較のため、金属構造330とXY面内の形状が等しく、厚みが金属構造331と等しい金属構造を用いた比較例の中心周波数シフトも示してある。表2より分かるように、比較例の中心周波数シフトは0.043PHzであるのに対し、カラーフィルタ320、321の中心周波数シフトは共に0.027PHzである。このように、中心周波数が大きいカラーフィルタの金属構造ほど膜厚を厚くすることにより、カラーフィルタの中心周波数によらず、同一の周波数分解能が実現できている。
Figure 2015022279
なお、金属構造のXY面内での大きさが小さいほど、カラーフィルタの中心周波数は大きくなる。したがって、中心周波数が大きいカラーフィルタの金属構造の膜厚を大きくするということは、XY面内での大きさが小さい金属構造ほど、その厚みを大きくすることと同等である。
(A−2.金属構造と第2の電極の間の距離で制御)
図12は、金属構造と第2の共通電極の間の距離dを変えたカラーフィルタアレイ302の例を示す。図12(a)はカラーフィルタアレイ302の平面図であり、図12(b)は断面図である。カラーフィルタ322、323を構成する金属構造332、333のXY方向の構造は、図11と同じである。但し、金属構造332及び333のZ方向の厚みは5nmで等しく、金属構造332と第2の共通電極122間の距離は8nm、金属構造333と第2の共通電極122間の距離は5nmである。すなわち、カラーフィルタ322とカラーフィルタ323は、Fc/dの値がほぼ同一に構成される。
表3には、電圧+12Vと電圧−12Vを印加した際のカラーフィルタ322、カラーフィルタ323の中心周波数シフトを示した。なお、比較のため、金属構造330と共通電極122間の距離が5nmの場合の比較例の中心周波数シフトも示してある。比較例のFc/dの値は、カラーフィルタ322,323よりも大きく設定されている。表3より分かるように、比較例の中心周波数シフトは0.043PHzであるのに対し、カラーフィルタ322、323の中心周波数シフトは共に0.027PHzである。このように、中心周波数が大きいカラーフィルタほど、金属構造と第2の共通電極の間の距離を大きく
することにより、カラーフィルタの中心周波数によらず、同一の周波数分解能が実現できている。
Figure 2015022279
なお、金属構造のXY面内での大きさが小さいほど、カラーフィルタの中心周波数は大きくなる。したがって、中心周波数が大きいカラーフィルタほど金属構造と第2の共通電極の間の距離を大きくするということは、金属構造のXY面内での大きさが小さいカラーフィルタほど、金属構造と第2の電極との距離を大きくすることと同等である。
(A−3.絶縁体の誘電率で制御)
また、前述したように、カラーフィルタ320中の絶縁体と、カラーフィルタ321中の絶縁体の誘電率を変えても良い。即ち、中心周波数が大きいカラーフィルタほど、カラーフィルタを構成する絶縁体の誘電率を小さくすればよい。例えばカラーフィルタ320ではSiOを使用し、カラーフィルタ321ではHfOを使用すればよい。
なお、金属構造のXY面内での大きさが小さいほど、カラーフィルタの中心周波数は大きくなる。したがって、中心周波数が大きいカラーフィルタの絶縁体の誘電率を小さくするということは、金属構造のXY面内での大きさが小さいカラーフィルタほど、絶縁体の誘電率を小さくすることと同等である。
<B.周波数分解能が異なる場合>
次に、必要な周波数分解能が、周波数によって異なる場合を示す。分光情報を取得する目的に応じて、周波数帯に応じて必要な周波数分解能が異なる場合がある。例えば、所定の周波数範囲ではより細かい周波数分解能が要求されるのに対し、それ以外の周波数範囲ではより粗い周波数分解能で十分な場合がある。以下では、必要な周波数分解能が、周波数0.54PHz付近で細かい場合を示す。周波数0.54PHz付近は、ポルフィリンとコラーゲンの特徴的な吸収ピークがある周波数帯域であり、医療用の撮像装置(分光画像取得装置)等で必要とされる。
上述のように、単位電圧あたりの中心周波数のシフト量ΔFc/ΔVは、中心周波数Fc、金属構造の厚みh、絶縁体層の誘電率ε、金属構造と第2の電極の間の距離dに基づ
いて、ΔFc/ΔV〜(Fc/h)×(ε/d)となる。そこで、より細かい周波数分解能が要求される周波数範囲内(ここでは、0.54PHz付近)に中心周波数があるカラーフィルタは、それ以外のカラーフィルタと比較して、(Fc/h)×(ε/d)の値が小さくなるように構成される。具体的には、中心周波数Fcと比較して、金属構造の厚みhを大きく(厚く)するか、絶縁体の誘電率εを小さくするか、金属構造と第2の共通電極の間の距離dを大きくすればよい。このようにすれば、中心周波数が所定の範囲内にあるカラーフィルタの単位電圧あたりの中心周波数のシフト量を、それ以外のカラーフィルタと比較して、小さくすることができる。
図13は、金属構造の厚みhを変えたカラーフィルタアレイ303の例である。図13
(a)はカラーフィルタアレイ303の平面図であり、図13(b)は断面図である。カラーフィルタ326、327を構成する金属構造336、337のXY方向の構造は、図11と同じである。但し、金属構造336のZ方向の厚みは20nm、金属構造337のZ方向の厚みは5nmである。すなわち、カラーフィルタ326の方が、カラーフィルタ327よりも、Fc/hが小さくなるように構成されている。
表4に、カラーフィルタ326、327に、電圧+12Vと電圧−12Vを印加した際の、中心周波数シフトを示す。表4より、中心周波数が0.54PHz付近であるカラーフィルタ326において、カラーフィルタ327よりも細かい周波数分解能が得られていることが分かる。図13には、金属構造の厚みを変えた例を示したが、前述したように、絶縁体の誘電率や金属構造と第2の共通電極の間の距離を変えて制御しても良い。具体的には、中心周波数が0.54PHz付近であるカラーフィルタほど、絶縁体の誘電率を小さくするか、金属構造と第2の共通電極の間の距離を大きくすればよい。
Figure 2015022279
このように必要な周波数分解能が周波数によって異なる場合でも、必要な周波数分解能に応じて、電圧に対する中心周波数シフトの敏感度を制御することで、分光情報の質を向上させることができる。
なお、周波数分解能(単位電圧あたりの中心周波数のシフト量)を細かく設定する範囲(所定の範囲)は、1つの連続区間である必要は無く、互いに分離した2つ以上の区間であっても構わない。また、これら複数の区間について周波数分解能を同一とする必要は無く、異なる周波数分解能となるようにしてもよい。
<本実施例の効果>
特許文献1に開示されている従来のカラーフィルタアレイにおいては、各々のカラーフィルタに対して設けられた回路に対し、印加電圧を独立に制御して、各々のカラーフィルタの周波数分解能を制御していた。本実施例では、中心周波数が異なる複数のカラーフィルタの中心周波数を、単一回路によって制御している。そのため、従来のカラーフィルタアレイと同一の手法では、周波数分解能の制御が困難である。本実施例のように、カラーフィルタの構造を周波数分解能に応じて変更すれば、単一回路を使用しつつ、周波数分解能が制御できるため、実施例1、2よりも更に好ましいカラーフィルタアレイが実現できる。
<カラーフィルタの製造方法>
実施例3に示すカラーフィルタアレイのように、金属構造や、金属構造と第2の共通電極の間の距離を、カラーフィルタ毎に変えるには、カラーフィルタ毎にリソグラフィと金属や絶縁体の成膜を行えばよい。
具体的には、以下のような手順で製造できる。例として、図11に示すカラーフィルタアレイ301を製造する手順を、図14を参照しつつ説明する。まず、共通電極123上で、カラーフィルタ321を形成する部分を犠牲層360で覆う(図14(a))。次に、カラーフィルタ320を、リソグラフィとリフトオフまたはエッチングにより作製する(図14(b)。)続いて、犠牲層360をウェットエッチング等によって除去する(図
14(c))。その後、カラーフィルタ320を再度犠牲層で覆い、カラーフィルタ321を同様の手順で作製する(図14(d))。最後に、共通電極122を成膜し、回路124に接続することでカラーフィルタアレイ301が完成する(図14(e))。
[実施例4]
本実施例は、実施例1−3と比較して固体撮像素子におけるカラーフィルタアレイの構成が異なる。実施例4に係るカラーフィルタアレイ425は、各カラーフィルタが取得する分光情報の周波数帯域の間の、漏れや重なりをなくしたものである。漏れや重なりをなくすことで、効率良く分光情報が取得できるため、好ましい。
図15は、実施例4に係るカラーフィルタアレイ425中のカラーフィルタ420、421の構造を示した図である。図15(a)はカラーフィルタアレイ425の平面図であり、図15(b)はカラーフィルタアレイ425の断面図である。カラーフィルタ420を構成する金属構造430の形状は、XY面内において一辺20nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。金属構造430は周期40nmで正方格子状に配列されている。また、カラーフィルタ421を構成する金属構造431の形状は、XY面内において一辺25nmの正方形であり、Z方向の厚みが5nmの直方体である。金属構造431は周期50nmで正方格子状に配列されている。各金属構造は第1の共通電極123に接し、第2の共通電極122とは絶縁体膜132を介して5nm隔てられている。金属材料はAuであり、絶縁体材料はHfOである。
図16(a)(b)は、それぞれカラーフィルタ420及びカラーフィルタ421の透過スペクトルを示した図である。実線1601,1611は、共通電極に電圧を印加しなかったときの透過スペクトルである。破線1602,1612は共通電極123に、共通電極122に対して+12Vの電圧(+2.4V/nmの電界に相当)を印加した時の透過スペクトルである。点線1603,1613は共通電極123に、共通電極122に対して−12Vの電圧(−2.4V/nmの電界に相当)を印加した時の透過スペクトルを示す。
印加する電圧を+12Vから−12Vに変えることで、カラーフィルタ420は周波数0.393PHz〜周波数0.436PHzの分光情報を取得でき、カラーフィルタ421は周波数0.360PHz〜周波数0.393Hzの範囲の分光情報が取得できる。従って、カラーフィルタアレイ125は、単一の回路124により共通電極122、123に電圧を印加することで、周波数0.360PHz〜周波数0.436PHzの範囲の分光情報を漏れ、重なりなく取得することができる。
<中心周波数と周波数間隔の関係>
特に、金属構造の厚み、金属構造と第2の共通電極の間の距離、絶縁体の誘電率が全て等しいカラーフィルタからなるカラーフィルタアレイを考える。すなわち、それぞれのカラーフィルタにおいて金属構造のXY面内での大きさが異なるカラーフィルタを考える。このようなカラーフィルタアレイは、カラーフィルタ毎にリソグラフィと成膜を行う必要が無いため製造が容易になり、好ましい。
この時、表1に示したように、電圧に対する中心周波数シフトの敏感度ΔFcをカラーフィルタの中心周波数Fcで除した値はカラーフィルタの中心周波数によらず、等しい。従って、カラーフィルタの中心周波数が大きいほど、広い周波数帯域で分光情報を取得することができる。そのため、中心周波数が大きいカラーフィルタほど、そのカラーフィルタから最も近い中心周波数を有するカラーフィルタの中心周波数との間の周波数間隔を、広くすることが好ましい。図17は、4つの異なる中心周波数1701〜1704の透過スペクトルを表す図である。周波数間隔1711は、中心周波数1702と中心周波数1
701との差であり、周波数間隔1712,1713も同様である。図に示すように、中心周波数が大きいほど、中心周波数が隣接するカラーフィルタ同士の周波数間隔を大きくすることが好ましい。すなわち、周波数間隔1711<周波数間隔1712<周波数間隔1713となるように構成することが好ましい。このようにすることで、製造が容易で、分光情報を広帯域にわたって効率良く取得可能なカラーフィルタアレイが実現できる。
[その他]
以上の実施例1〜4において、2種類の中心周波数の異なるカラーフィルタを用いたカラーフィルタアレイを示したが、3種類以上のカラーフィルタを使用しても良い。カラーフィルタアレイに使用するカラーフィルタの種類を増やすほど、広帯域で周波数分解能の高い分光情報が得られる。一方で、同一の中心周波数を有するカラーフィルタ間の距離が広がるため、取得できる画像の分解能は低下する。従って、必要な周波数分解能と画像分解能によって、カラーフィルタの数を決定すればよい。
上記の説明では種々の実施例およびその変形例を説明したが、これらの内容はいずれも可能な限り組み合わせて本発明を構成することが可能である。
120、121:カラーフィルタ
122:第2の共通電極
123:第1の共通電極
124:電圧印加回路
125:カラーフィルタアレイ
130、131:金属構造
132:絶縁体

Claims (19)

  1. 金属構造と絶縁体とから構成され、中心周波数が異なる複数のカラーフィルタと、
    前記複数のカラーフィルタにまたがって形成された第1の共通電極と、
    前記第1の共通電極と対向し、前記複数のカラーフィルタの前記金属構造から前記絶縁体によって隔てられており、前記複数のカラーフィルタにまたがって形成された第2の共通電極と、
    前記第1の共通電極および前記第2の共通電極の間に電圧を印加して、前記複数のカラーフィルタの中心周波数を同時に変化させる電圧印加部と、
    を備える、カラーフィルタアレイ。
  2. 前記複数のカラーフィルタのそれぞれに含まれる前記金属構造の大きさが互いに異なる、
    請求項1に記載のカラーフィルタアレイ。
  3. 前記複数のカラーフィルタのそれぞれに含まれる前記金属構造の前記第1および第2の共通電極と平行な面における面積が互いに異なる、
    請求項2に記載のカラーフィルタアレイ。
  4. 前記金属構造の厚みが1nm以上、20nm以下である、
    請求項1から3のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  5. 前記金属構造と前記第2の共通電極との間の距離が1nm以上、20nm以下である、
    請求項1から4のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  6. 前記第1および第2の共通電極に電圧を印加したときに、前記複数のカラーフィルタにおいて、単位電圧あたりの中心周波数のシフト量が同一となるように構成されている、
    請求項1から5のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  7. 中心周波数が高いカラーフィルタほど、前記金属構造の厚みが厚い、
    請求項6に記載のカラーフィルタアレイ。
  8. 中心周波数が高いカラーフィルタほど、前記金属構造と前記第2の共通電極の間の距離が大きい、
    請求項6または7に記載のカラーフィルタアレイ。
  9. 中心周波数が高いカラーフィルタほど、前記絶縁体の誘電率が小さい、
    請求項6から8のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  10. 前記第1および第2の共通電極に電圧を印加したときに、前記複数のカラーフィルタのうち中心周波数が所定の範囲にあるカラーフィルタは、それ以外のカラーフィルタと比較して、単位電圧あたりの中心周波数のシフト量が小さくなるように構成されている、
    請求項1から5のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  11. 前記第1および第2の共通電極に電圧を印加したときに、前記複数のカラーフィルタのうち中心周波数が所定の範囲にあるカラーフィルタは、それ以外のカラーフィルタと比較して、中心周波数と誘電率の積を、金属構造の厚みと金属構造と第2の共通電極の間の距離との積で除した値が小さくなるように構成されている、
    請求項1から5のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  12. 中心周波数が前記所定の範囲にあるカラーフィルタは、それ以外のカラーフィルタと比較して、中心周波数に対する前記金属構造の厚みの比が大きい、
    請求項10または11に記載のカラーフィルタアレイ。
  13. 中心周波数が前記所定の範囲にあるカラーフィルタは、それ以外のカラーフィルタと比較して、中心周波数に対する前記金属構造と前記第2の共通電極の間の距離の比が大きい、
    請求項10から12のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  14. 中心周波数が前記所定の範囲にあるカラーフィルタは、それ以外のカラーフィルタと比較して、中心周波数と前記絶縁体の誘電率の積が小さい、
    請求項10から13のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  15. 前記複数のカラーフィルタはそれぞれ、前記第1および第2の共通電極と平行な断面における面積が異なる複数種類の金属構造を有している、
    請求項1から14のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイ。
  16. 前記複数のカラーフィルタはそれぞれ、透過する光の周波数帯域を制限する吸収フィルタを更に備える、
    請求項15に記載のカラーフィルタアレイ。
  17. 前記第1および第2の共通電極と平行な断面における面積が小さな金属構造ほど、数密度が高く配置されている、
    請求項15または16に記載のカラーフィルタアレイ。
  18. 請求項1から17のいずれか1項に記載のカラーフィルタアレイと、
    当該カラーフィルタアレイの前記複数のカラーフィルタに対応する画素と、
    を備える、固体撮像素子。
  19. 結像光学系と、
    請求項18に記載の固体撮像素子と、
    を備える、撮像装置。
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