JP2015021181A - 水酸化ニッケルの製造方法 - Google Patents

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弘樹 関塚
Hiroki Sekizuka
弘樹 関塚
奈織美 鈴木
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奈織美 鈴木
勇樹 村山
Yuuki Murayama
勇樹 村山
法道 米里
Kazumichi Yonesato
法道 米里
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Abstract

【課題】金属ニッケルをアノードとした電解法によって、ナトリウム、イオウ、塩素などの不純物が極めて少なく生成でき、その水酸化ニッケルを焙焼することで高純度な酸化ニッケルを得ることができる水酸化ニッケルの製造方法を提供。【解決手段】電解槽内にアノードの金属ニッケルとカソードを設置し、電解液として硝酸アンモニウムとハロゲン化アンモニウムの混合水溶液を用いて電解し、ニッケルアンミン錯体を生成させ、飽和したニッケルアンミン錯体を粒子状の水酸化ニッケルとして析出させる水酸化ニッケルの製造方法であって、前記ハロゲン化アンモニウムの濃度を0.04mol/l以上0.1mol/l以下とし、電解液温度を50℃以上80℃以下とすることにより、塩素の含有量を低減させることを特徴とする水酸化ニッケルの製造方法によって提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、水酸化ニッケルの製造方法に関し、より詳しくは、金属ニッケルをアノードとした電解法によって、ナトリウム、イオウ、塩素などの不純物が極めて少なく生成でき、その水酸化ニッケルを焙焼することで、燃料電池電極材料などに用いる高純度な酸化ニッケルが効率的に得られる水酸化ニッケルの製造方法に関する。
水酸化ニッケルおよび酸化ニッケルは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池用正極材の原料や、固体酸化物形燃料電池の電極材料などとして広く用いられている。今後もハイブリッドカーや電気自動車の普及が見込まれ、さらに、原子力発電に変わる新たな発電システムとして、火力発電と燃料電池を組み合わせた複合発電システムの実用化の検討が進められている。それにより、今後、水酸化ニッケルや酸化ニッケルの需要はますます増加していくものと予想される。このような用途において水酸化ニッケルや酸化ニッケルは、高純度なものが求められている。
一般に、水酸化ニッケルは、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケルなどのニッケル塩を含む溶液に、水酸化ナトリウムなどを添加してアルカリ性として、沈殿させて製造している。(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1によれば、ニッケル塩を含む水溶液に、アンモニアを加え、ニッケル−アンモニウム錯塩を形成し、これに苛性アルカリを作用させて、水酸化ニッケルを沈殿させるとしている。
このような水酸化ニッケルを得る方法では、その原理は簡単であるが、実施には多くの工程を要し、反応液をアルカリ性にするために水酸化ナトリウムを用いることから、ナトリウム、硫黄、塩素などが残留不純物となるため、洗浄工程で多量の水洗廃液が発生するだけでなく、反応後のナトリウムの硝酸塩や硫酸塩などを含む廃液などを処理する必要がある。
ところで、酸化ニッケルは、上記水酸化ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケルまたは硝酸ニッケルなどを酸化雰囲気で焙焼することにより得られる。
例えば、特許文献2では、横型回転式製造炉を用いて、強制的に空気を導入しながら、最高温度を900〜1250℃として硫酸ニッケルを焙焼する方法が提案されている。この方法によれば硫黄品位が500質量ppm以下の酸化ニッケル粉末が得られるとしている。
また、特許文献3では、硫酸ニッケル水溶液をアルカリで中和し、得られた水酸化ニッケルを所定の条件で熱処理することで、硫黄品位が400質量ppm以下に制御され、不純物品位、特に塩素品位が低い微細な酸化ニッケル微粉末を得る方法が提案されている。
一方、上記のような水酸化ニッケルを化学的に沈澱させて作製する方法以外に、金属ニッケルから電解により水酸化ニッケルを作製する方法もある。
例えば、特許文献4では、ニッケル電極をアノードとして溶解することにより球状の水酸化ニッケルを沈殿させる方法が提案されている。この方法では、電解液に電解塩水を用いるため不純物として硫黄を含まないが、塩素やナトリウムが高い濃度で含まれている。さらに、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物でpH調整しているため、この方法で作製された水酸化ニッケルを焙焼して得られる酸化ニッケル中には、ナトリウムや塩素が残留することが懸念される。また、酸化ニッケルに焙焼する際に発生する排ガス中には塩素が含まれるため腐食性が高く、周辺の環境への影響が大きい。そのため、除害設備が必要となるなどコスト面の問題も生じる。
このため、金属ニッケルから電解法により、効率的に水酸化ニッケルを製造でき、焙焼して酸化ニッケルにする際に塩素を含む排ガスの発生が少なく、ナトリウムや塩素などの残留不純物が極めて少ない高純度の酸化ニッケルを得るための水酸化ニッケルの製造方法が必要とされていた。
特開昭56−143671号公報 特開2004−189530号公報 特開2011−225395号公報 特表2002−544382号公報
本発明の目的は、金属ニッケルをアノードとした電解法によって、ナトリウム、硫黄、塩素などの不純物が極めて少ない水酸化ニッケルを生成し、その水酸化ニッケルを焙焼することで高純度な酸化ニッケルを効率的に得ることができる水酸化ニッケルの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を進めた結果、金属ニッケルをアノードとし、電解液として硝酸アンモニウムとハロゲン化アンモニウムの混合水溶液を用いて電解し、ハロゲン化アンモニウムが特定濃度であり、電解槽内が特定の温度に制御されると、不純物として塩素が極めて少ない水酸化ニッケルが効率的に生成することを見出した。そして、この水酸化ニッケルは焙焼する際に塩素ガスの発生が極めて少なく、高純度で結晶性の高い酸化ニッケルを効率的に製造できることを確認して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、電解槽内にアノードの金属ニッケルとカソードを設置し、電解液として硝酸アンモニウムとハロゲン化アンモニウムの混合水溶液を用いて電解し、ニッケルアンミン錯体から粒子状の水酸化ニッケルを析出させる水酸化ニッケルの製造方法であって、
前記ハロゲン化アンモニウムの濃度を0.04mol/l以上0.1mol/l以下とし、電解液温度を50℃以上80℃以下とすることにより、塩素の含有量を低減させることを特徴とする水酸化ニッケルの製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記カソードとして、チタン、ニッケル、ステンレス、白金、チタンに白金めっきしたもの、チタンと白金をクラッドしたものから選ばれるいずれか一つ以上を用いることを特徴とする水酸化ニッケルの製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記ハロゲン化アンモニウムが塩化アンモニウムであることを特徴とする水酸化ニッケルの製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記アノードの電流密度が、3〜20A/dmであることを特徴とする水酸化ニッケルの製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、前記電解液のpHが、7.5〜8.5であることを特徴とする水酸化ニッケルの製造方法が提供される。
本発明によれば、金属ニッケルをアノードとし、電解液として硝酸アンモニウムと低濃度のハロゲン化アンモニウムとを溶解した混合水溶液を用いて、電解液温度を比較的高温に制御しながら電解すると、ニッケルアンミン錯体を生成し、飽和した錯体からアルカリ金属、硫黄、塩素が極めて少ない高純度な水酸化ニッケルを得ることができる。この製造方法により生成された水酸化ニッケルは、焙焼する際に塩素ガスの発生が極めて少ないため排ガスによる周囲環境の悪化を招かない。また、設備の腐食が抑えられるので耐久性向上にも寄与する。
本発明により水酸化ニッケルを製造し、さらに酸化ニッケルを製造する工程図の一例である。 本発明により得られた水酸化ニッケルのX線回折結果を示すチャートである。 本発明により得られた酸化ニッケルのX線回折結果を示すチャートである。
本発明の水酸化ニッケルの製造方法について、図面に沿って説明する。
1.水酸化ニッケルの製造方法
本発明の水酸化ニッケルの製造方法は、電解槽内にアノードの金属ニッケルとカソードを設置し、電解液として硝酸アンモニウムとハロゲン化アンモニウムの混合水溶液を用いて電解し、ニッケルアンミン錯体を生成させ、飽和したニッケルアンミン錯体から粒子状の水酸化ニッケルを析出させる水酸化ニッケルの製造方法であって、
前記ハロゲン化アンモニウムの濃度を0.04mol/l以上0.1mol/l以下とし、電解液温度を50℃以上80℃以下とすることにより、塩素の含有量を低減させることを特徴とする。その後、得られた水酸化ニッケルをろ過、洗浄を繰り返すことにより不可避成分以外の不純物金属、硫黄、塩素が極めて少ない水酸化ニッケルを得ることができる。
図1は、本発明における水酸化ニッケル製造の工程の一例を示している。まず、アノード2とカソード3からなる電極および特定の電解液4が装入された電解槽1で水酸化ニッケルを生成し、次に電解液と水酸化ニッケルをろ過分離し、得られた水酸化ニッケルを水洗しろ過を行う。ろ過後の電解液や水洗水は数回繰り返し使用した後、電解槽に戻すことで比較的シンプルながらクローズな装置構成ができる。
(1)電極
アノードは高純度の金属ニッケルとする。
カソードは、チタン、ニッケル、ステンレス、白金、チタンに白金めっきしたもの、チタンと白金をクラッドしたものなどの電気が流れる金属であれば良いが、例えば、白金、チタンに白金めっきしたもの、チタンと白金をクラッドしたもののような水素過電圧の小さな金属電極を用いることが好ましい。水素過電圧の低い金属を用いることで、電極表面でのニッケルの析出を抑制することができる。一方、コストの面でカソードは、ステンレスを用いるのが好ましく、アノードとカソードの面積比は、1:1〜1:2程度が好ましいが特に限定されない。
(2)電解液
本発明では電解液の選定が重要であり、硝酸アンモニウムとハロゲン化アンモニウムを電解質として併用する。
電解液として硝酸アンモニウムを用いるのは電解反応後に生成した水酸化ニッケル中に残留する硝酸根を、酸化ニッケルに焙焼する際に比較的低温で除去できるためである。その濃度は特に限定するものではないが、0.1〜5.0mol/lとすることができる。濃度が0.1mol/lより低いと、生成する水酸化ニッケルの二次粒子が小さく、ろ過回収に時間がかかり、また5.0mol/lを超えると水酸化ニッケルの晶析開始までに時間がかかり効率的でない。好ましい濃度は、0.2〜3.0mol/lであり、より好ましい濃度は、0.4〜1.0mol/lである。
本発明では、ハロゲン化アンモニウムを併用するが、その目的は、ハロゲンイオンの働きにより金属ニッケルを溶解しやすくするためである。ハロゲン化アンモニウムは、種類によって特に制限されるわけではないが、塩化アンモニウムや臭化アンモニウムが例示でき、塩化アンモニウムが安価なためより好ましい。なお、不純物として塩素の混入を避けたい場合は、臭化アンモニウムを用いることが好ましい。
ハロゲン化アンモニウムの濃度は、0.04mol/l以上0.1mol/l以下の範囲とする。0.04mol/lより低い濃度では、金属ニッケルの溶解性が低下し水酸化ニッケルの生産性が低下する。また、濃度が0.1mol/lを超えると水酸化ニッケルに含まれる不純物ハロゲンの濃度が高くなるため好ましくない。好ましい濃度は、0.04〜0.08mol/l、より好ましい濃度は、0.04〜0.06mol/lである。
(3)電解条件
本発明において電解により水酸化ニッケルが生成する反応式を、下記の式(1)〜(4)に示す。電解槽に電極を設置し、槽内に電解液を入れた後、電極間に電流を流すと、アノードであるニッケルが溶解し(式(1))、カソード付近で発生したアンモニアでアンミン錯体が生成(式(3))する。ニッケルの溶解が進み、やがてニッケルアンミン錯体が飽和すると、水酸化ニッケルの粒子が生成して(式(4))沈殿する。
[化1]
Ni → Ni2+ + 2e (アノード) 式(1)
[化2]
2HO + 2e → H + 2OH (カソード) 式(2)
[化3]
Ni2+ +6NH → [Ni(NH2+ 式(3)
[化4]
[Ni(NH2+ +2OH → Ni(OH) +6NH 式(4)
このとき、電解液のpHは6.0以上とし、7.5〜8.5であることが好ましい。pHが7.5より低いと、水酸化ニッケルの析出に時間がかかるためであり、一方、8.5より高くなると、電解液中のアンモニアが蒸発しやすくなるため作業環境が悪化することがある。
また、電解液の温度は、50〜80℃とすることが重要である。50℃より低い温度では水酸化ニッケルに含有する塩素量が増加する。また、80℃より高い温度では電解液が蒸発しやすくなるからである。理由は定かではないが、電解液の温度が上昇するに伴い、生成される水酸化ニッケル中に含まれる不純物ハロゲン濃度が下がるため、水酸化ニッケルの純度が高くなり、電解液から持ち出されるハロゲンが少なくなるため電解液成分維持のためのコストも下がる。また、電解液の温度があがると電解液の電導度が上がり、電解での消費電力が小さくなることで、コストの低減が図れる。液温は、50〜70℃の範囲がより好ましい。
また、電解液の温度が上昇すると電解液のpH、電導度が安定し、電解液成分の維持が容易になる。加熱手段としては、例えば、テフロンヒーターを採用し、温度センサーを付設することができる。しかし電解での消費電力によって電解液の温度が上昇するため、電解槽の大きさと通電する電流を適当に選択すれば、ヒーターなどの加温手段が不要となるか、あるいは最小限の加温手段で電解液温度を調整することが可能である。ただし、電解液の温度が高すぎると電解液の蒸発量が大きくなるため電解液成分の濃度調整、維持が困難になる。
アノードの電流密度は、ニッケルの溶解量に比例する。そのため、電流密度が3A/dmより低いと水酸化ニッケルの生成量が少なくなり、20A/dmより高くすると水酸化ニッケルの生成量は増加するが、その中の残留不純物量も増加する。また、アノードが不働態化を起こしたり、電源も大きくなり不経済である。そのため、電流密度は、3〜20A/dmとし、4〜15A/dmとすることが望ましい。
なお、電解液のアンモニア源に起因して電解液からアンモニアが発生するが、希硝酸を用い吸収して電解槽中に還流でき無害化される。
(4)水酸化ニッケルの回収
上記の電解条件で電解後、生成した水酸化ニッケルは電解液をろ過で分離し、水洗後、水酸化ニッケルを回収する。ろ過分離の方法や水洗の条件は特に制限されないが、一般に行われている遠心ろ過分離、フィルタープレスあるいは吸引ろ過分離などを用いれば良い。また、水酸化ニッケルの洗浄は、ろ過洗浄を2〜5回繰り返すことが好ましい。
前述の通り、本発明では、硝酸アンモニウム濃度の下限値が0.4mol/l以上になると、生成する水酸化ニッケルの一次粒子が凝集しあって細孔を有する大きな二次粒子が形成されるため、沈降性が良く、ろ過洗浄が容易となる。このことは、作業効率を高められ、経済的に水酸化ニッケルが回収できるということである。
ろ過分離後の電解液及び水酸化ニッケルの洗浄液は、電解液に由来する成分以外に不純物を含まないため、電解槽に戻して再利用することができる。これにより無駄な排水や廃棄物がなくなりクローズドな工程となる。
乾燥条件は、水分が蒸発できれば特に制限されないが、80℃以上、好ましくは100℃以上に加熱することが効率的である。また、乾燥雰囲気は、大気中での乾燥が容易で経済的であるが、不活性ガス雰囲気や真空雰囲気でもよい。
2.得られる水酸化ニッケル
このようにして得られた水酸化ニッケルは、水酸化ニッケルの一次粒子が多数凝集しあって、水酸化ニッケルの二次粒子となる。
水酸化ニッケルの一次粒子は、球状や角柱状の形状をしたものもあるが、特に一定していない。二次粒子の粒径は、3〜200μmと大きく、比表面積は10〜200m/gとなる。しかも、電解液の成分に由来してナトリウムなどの不純物金属や硫黄、塩素などを含まず、高純度である。本発明では、二次粒子の粒径が、5〜100μm、比表面積が20〜180m/gのものが好ましい。
3.酸化ニッケルの製造
得られた水酸化ニッケルは、乾燥後、酸化性雰囲気下、焙焼し酸化ニッケルにすることができる。図1には、水洗が終わった水酸化ニッケルを、次の工程で高温焙焼し、酸化ニッケルにした後、焙焼して得られた酸化ニッケルが任意の大きさに解砕分級されて製品となることを示している。
焙焼時の温度条件は、600℃〜1100℃であり、800℃以上で水酸化ニッケルを焙焼すると、高純度な酸化ニッケルを得やすい。800℃未満では結晶性も低くなることがある。より好ましいのは850〜950℃である。また、焙焼時間は、特に限定されないが、1〜5時間とすることができ、1〜3時間とすることが好ましい。
このようにして得られた酸化ニッケルを分析すると、結晶性が高く、不純物金属や硫黄を含まず、残留塩素も50ppm以下となる。これは、例えば固体酸化物燃料電池(SOFC)など燃料電池用の電極材料として好ましく使用できる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は実施例によってのみ限定されるものではない。
<実施例1>
アノードに純度3Nのニッケル板(50×50×2mm)、カソードにチタン板(50×50×1mm)を電解槽に取り付け、表1に示すように、硝酸アンモニウム(0.6mol/l)と塩化アンモニウム(0.10mol/l)を混合し、pH値を8.0に調整した電解液1000mlを装入した。次に60℃にて電流密度4A/dmで4時間電解し、水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.39wt%であった。
得られた水酸化ニッケル粉末は、不純物量を発光分光分析すると、表2に示すように、ニッケル以外の金属は検出下限以下、硫黄は10ppm以下であった。また、水酸化ニッケル粉末のX線回折測定(XRD)をしたところ、図2のように、チャートにはNi(OH)のピークが確認された。
得られた水酸化ニッケルを、大気中、880℃で2時間焙焼して粉砕し、酸化ニッケルを得た。得られた酸化ニッケル中の塩素量は、表2に示すように、50ppm未満であった。また、酸化ニッケル粉末のX線回折測定(XRD)をしたところ、図3のように、チャートにはNiOのピークのみが確認された。
<実施例2>
実施例1で得られた水酸化ニッケルの焙焼温度を変え、850℃とした以外は同様にして焙焼して粉砕し、酸化ニッケルを得た。得られた酸化ニッケル中の塩素量は、表2に示すように、50ppm未満であった。
<実施例3>
実施例1で得られた水酸化ニッケルの焙焼温度を変え、950℃とした以外は同様にして焙焼して粉砕し、酸化ニッケルを得た。得られた酸化ニッケル中の塩素量は、表2に示すように、50ppm未満であった。
<実施例4>
電解温度を80℃にした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.40wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下であり、高純度のものが得られた。
<実施例5>
硝酸アンモニウム濃度を0.4mol/l、塩化アンモニウム濃度を0.06mol/l、電流密度を10A/dmにした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.24wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下であり、と高純度のものが得られた。
<実施例6>
硝酸アンモニウム濃度を1.0mol/l、塩化アンモニウム濃度を0.06mol/l、電流密度を10A/dmにした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.24wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下と、高純度のものが得られた。
<実施例7>
塩化アンモニウム濃度を0.04mol/l、電流密度を10A/dmにした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.24wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下と、高純度のものが得られた。
<実施例8>
塩化アンモニウム濃度を0.06mol/l、電流密度を15A/dmにした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.24wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下と、高純度のものが得られた。
<実施例9>
塩化アンモニウム濃度を0.06mol/l、電流密度を10A/dm、電解液のpH値を7.5にした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.24wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下と、高純度のものが得られた。
<実施例10>
塩化アンモニウム濃度を0.06mol/l、電流密度を10A/dm、電解液のpH値を8.5にした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.24wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下と、高純度のものが得られた。
<実施例11>
塩化アンモニウム濃度を0.06mol/l、電流密度を10A/dm、電解液温度を50℃にした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.32wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下と、高純度のものが得られた。
<実施例12>
塩化アンモニウム濃度を0.08mol/l、電流密度を10A/dmにした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.32wt%であった。
不純物分析の結果を表2に示すが、実施例1と同様に、得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケルの塩素濃度は分析検出限界以下と、高純度のものが得られた。
<比較例1>
電解温度を25℃にした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.95wt%であった。
得られた水酸化ニッケル及び焙焼後の酸化ニッケルの不純物量を、表2に示すが、880℃の焙焼で得られた酸化ニッケル中の塩素量は、137ppmであった。
<比較例2>
電解温度を40℃にした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.78wt%であった。
得られた水酸化ニッケル及び焙焼後の酸化ニッケルの不純物量を、表2に示すが、880℃の焙焼で得られた酸化ニッケル中の塩素量は、100ppmであった。
<比較例3>
塩化アンモニア濃度を0.03mol/l、電流密度を10A/dmにした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.16wt%であったが、水酸化ニッケルの生産効率が0.78g/AHと低下した。
得られた水酸化ニッケルの不純物金属、硫黄濃度及び焙焼後の酸化ニッケル中の塩素濃度は、表2に示すとおり、分析検出限界以下と高純度のものが得られたが、生産効率の面で好ましくない。
<比較例4>
塩化アンモニア濃度を0.11mol/l、電流密度を10A/dmにした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は0.73wt%であった。
得られた水酸化ニッケル及び焙焼後の酸化ニッケルの不純物量を、表2に示すが、880℃の焙焼で得られた酸化ニッケル中の塩素量は、96ppmであった。
<比較例5>
塩化アンモニア濃度を0.06mol/l、電流密度を10A/dm、電解液温度を85℃にした以外は実施例1と同じ条件で水酸化ニッケルを生成させた。得られた水酸化ニッケル中の残留塩素濃度は、表2に示すとおり0.63wt%と高くなった。焙焼後に得られる酸化ニッケルの塩素濃度は表2に示すが検出されなかった。これは、水酸化ニッケルからの焙焼時に大気中に排ガスとして塩素を放出していると考えられ、好ましくない。
Figure 2015021181
Figure 2015021181
「評価」
上記結果を示す表1,2から、次のことが分かる。
実施例では本発明によりハロゲン化アンモニウムを低濃度とし電解液温度を比較的高温に制御しながら電解したので、水酸化ニッケル中の残留塩素濃度が0.5wt%未満となり、高純度で生産性も高い水酸化ニッケルの製造方法といえる。実施例では得られた水酸化ニッケル粉末を酸化性雰囲気で焙焼すると、結晶性が高い酸化ニッケル粉となった。このような酸化ニッケル粉は、燃料電池の電極材料などとして十分な電気特性を期待できる。
これに対して比較例1,2、4では、電解液温度が比較的低温で電解するか、ハロゲン化アンモニウム濃度が本発明より高かったので、水酸化ニッケル中の残留塩素濃度が高くなり、比較例3では、ハロゲン化アンモニウム濃度が本発明より低かったので、アノードが不働態化したため水酸化ニッケルの生産性が低下した。また、比較例5では、電解液温度が本発明より高かったので、水酸化ニッケル中の残留塩素濃度が高くなり、コストが高くなり、電解液成分の濃度管理が困難になる。
本発明によって得られる水酸化ニッケルは、焙焼することで高純度の酸化ニッケルとなり、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池用正極材の原料や、固体酸化物形燃料電池の電極材料などとして広く用いることができる。また、ハイブリッドカーや電気自動車、さらには原子力発電に代わる新たな発電システムの構成材料としても利用でき、その工業的価値は極めて大きい。
1 電解槽
2 アノード
3 カソード
4 電解液
5 ヒーター

Claims (5)

  1. 電解槽内にアノードの金属ニッケルとカソードを設置し、電解液として硝酸アンモニウムとハロゲン化アンモニウムの混合水溶液を用いて電解し、ニッケルアンミン錯体から粒子状の水酸化ニッケルを析出させる水酸化ニッケルの製造方法であって、
    前記ハロゲン化アンモニウムの濃度を0.04mol/l以上0.1mol/l以下とし、電解液温度を50℃以上80℃以下とすることにより、水酸化ニッケル中の塩素の含有量を低減させることを特徴とする水酸化ニッケルの製造方法。
  2. 前記カソードとしてチタン、ニッケル、ステンレス、白金、チタンに白金めっきしたもの、チタンと白金をクラッドしたものから選ばれるいずれか一つ以上を用いることを特徴とする請求項1に記載の水酸化ニッケルの製造方法。
  3. 前記ハロゲン化アンモニウムが、塩化アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の水酸化ニッケルの製造方法。
  4. 前記アノードの電流密度が、3〜20A/dmであることを特徴とする請求項1に記載の水酸化ニッケルの製造方法。
  5. 前記電解液のpHが、7.5〜8.5であることを特徴とする請求項1に記載の水酸化ニッケルの製造方法。
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