JP2015020408A - 画像記録方法 - Google Patents

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朗 栗山
Akira Kuriyama
朗 栗山
大久保 武利
Taketoshi Okubo
武利 大久保
小池 祥司
Shoji Koike
祥司 小池
中澤 郁郎
Ikuo Nakazawa
郁郎 中澤
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Abstract

【課題】塗工層を有する印刷用紙上に、ビーディングを抑え、滑らかな階調表現を実現した高画質な画像を記録すること。
【解決手段】記録媒体上に同一色及び同一液滴量の第1のインク及び第2のインクを付与して画像を形成する画像記録方法であって、記録媒体は塗工層を有する印刷用紙であり、第1および第2のインクは、水と顔料とを含み、表面張力が34mN/m以下であり、第1および第2のインクの付与時に記録媒体上に形成される第1のインクのドット径が記録媒体上に形成される第2のインクのドット径と異なるように第1および第2のインクを付与し、第2のインクのドット径に対して第1のインクのドット径が1/2〜2/1の大きさであることを特徴とする画像記録方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、画像記録方法に関する。
インクジェット記録技術は、専用紙に対するフォト画像の形成や、コピー紙に代表される普通紙に対するオフィスや家庭で利用する画像の形成を中心に発展してきた。最近では、デジタル商業印刷分野への展開も進みつつあり、塗工層を有する印刷用紙に高速で記録できるため、オフセット印刷と同等の高画質が求められている。高画質化に対しては、濃淡インクの採用、インク滴の微小化による高解像度化の推進、液滴容量の可変によるドット形成の多値化等の取り組みがなされ、粒状性の低減、連続的な階調表現の向上が図られている。一般には、インク液滴量を定量として微小液滴にする高画質化については、多ノズル化が容易なサーマルインクジェット方式が好適であり、液滴量を可変とする多値化による高画質化については、ピエゾ方式が有利とされている。
特許文献1には、自己分散顔料を含有し、表面張力が20mN/m以上35mN/m以下の物性を持ったインクを用い、塗工層を有する印刷用紙に記録する方法が開示されている。特許文献1の方法では、この印刷用紙上にインクを2pL吐出し、ドット内の単位面積当たりのインク付与量を0.09以上0.26μL/cm2とした上で80℃の温風乾燥を行う。
特許文献2には、サーマルジェットヘッドを有するインクジェット記録装置を用い、吐出液滴量を変化させて多値化を達成する方法が開示されている。
特許文献3には、インクの吐出量は同じだが吐出速度を高めるモードを有しており、着弾時の衝撃でインク液滴が着弾後に周辺に飛び散り、結果的に粒状性を低減させる方法が開示されている。
特開2009−226715号公報 特開平9−131900号公報 特開2003−231257号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法は多値化には言及していない。特許文献1の方法では、塗工層を有する印刷用紙に対する高画質化に対してある程度、改善しているものの、連続的な階調表現においては画像品位の向上が不十分であった。
特許文献2は、サーマルインクジェット方式での吐出液滴量の制御による多値化を達成している。しかしながら、特許文献2の方法では、インク液滴が定量でなく、一般的なサーマルインクジェット方式より複雑なヘッド構造を使用する。このため、サーマルインクジェット方式の利点である多ノズル化とノズル密度の向上を生かしきれていなかった。
特許文献3の方法では、同一液滴量でのドット形状の制御を検討しており、吐出速度を大きくした場合、着弾時の衝撃により粒状性の低減が達成できるとしている。しかし、この方法ではドット径の精密制御を行わないため、スプラッシュの発生等により、画像の先鋭性に問題があり、高画質化の検討が十分ではなかった。
従って、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、塗工層を有する印刷用紙上に、ビーディング防止、滑らかな階調表現を実現することによって高画質化を達成させた画像を記録可能な画像記録方法を提供することを目的とする。
一実施形態は、
記録媒体上に、同一色及び同一液滴量の第1のインク及び第2のインクを付与して画像を形成する画像記録方法であって、
前記記録媒体は、塗工層を有する印刷用紙であり、
前記第1および第2のインクは、水と顔料とを含み、表面張力が34mN/m以下であり、
前記第1および第2のインクの付与時に、前記記録媒体上に形成される第1のインクのドット径が、前記記録媒体上に形成される第2のインクのドット径と異なるように前記第1および第2のインクを付与し、
前記第2のインクのドット径に対して前記第1のインクのドット径が1/2〜2/1の大きさであることを特徴とする画像記録方法に関する。
塗工層を有する印刷用紙上に、ビーディングを抑え、滑らかな階調表現を実現した高画質な画像を記録することができる。
本発明の一実施形態に適用可能なシリアル型のインクジェット記録装置の概略を示す図である。 本発明の一実施形態の画像記録方法に適用可能な記録ヘッドの構成を表す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
一実施形態の画像記録方法は、記録媒体上に、同一色及び同一液滴量の第1のインク及び第2のインクを付与して画像を形成する。記録媒体は塗工層を有する印刷用紙であり、第1および第2のインクは、水と顔料とを含み、表面張力が34mN/m以下である。第1および第2のインクの付与時に、記録媒体上に形成される第1のインクのドット径が、記録媒体上に形成される第2のインクのドット径と異なるように第1および第2のインクを付与する。また、第2のインクのドット径に対して第1のインクのドット径が1/2〜2/1の大きさである。
画像記録方法に用いる二種のインクである第1および第2のインクは、同一色となっている。ここで、「同一色」とは、印字した後の色を、JIS Z 8721準拠の標準色票(マンセルの色表)と照らし合わせて、同一の色相に分類された色を指すものとする。JIS−Z−8721準拠の標準色票とは、色見本により対象物の色を判定するための方法で、色相を、R、YR、Y、GY、G、BG、B、PB、P及びPRの10通りに分類している。また、第1および第2のインクは濃淡インクの組み合わせではなく、明度的にも同レベルのものである。具体的には二種のインクの色差ΔE=√(a*2+b*2+L*2)が10以下である。
また、第1および第2のインクが同一液滴量であるとは、第1および第2のインクを付与する装置の構成が同じであることを意味する。例えば、インクジェット記録装置を用いて第1および第2のインクを付与する場合、装置の記録ヘッドを構成する第1および第2のインク用のノズルの構造が実質的に同一となる。すなわち、第1および第2のインク用のノズルについて、各々のインクの吐出量を変化させるための特別な設定をしない状態で各インクを吐出することで、各インクの液滴量を同一にすることを意味する。本明細書では、このように第1および第2のインクを付与する装置の構成が同じ状態であれば、装置の製造誤差等による僅かなインク吐出のばらつきがあっても、付与される第1と第2のインクは同一液滴量であると判定する。
第1および第2のインクを同一液滴量で付与することにより、画像の均一性を良好にすることができる。また、記録ヘッドや駆動回路インク付与装置を簡易化でき、記録装置全体の製造コストや維持管理コストを低減することも可能となる。
第1および第2のインクの表面張力を34mN/m以下にすることにより、インク液滴が着弾時にある程度広がり、その表面積及び塗工層を有する印刷用紙の表面との接触面積が大きくなる。この結果、インク液滴の吸収、蒸発に有利となり、ビーディングを抑制することができる。
また、塗工層を有する印刷用紙上に形成される第1のインクのドット径は、第2のインクのドット径に対して、第1のインクのドット径が1/2〜2/1の大きさとなっている。第1のインクのドット径は、第2のインクのドット径と異なり、第2のインクのドット径に対して、第1のインクのドット径が1/2以上1/1未満、または1/1より大きく2/1以下の大きさが好ましい。このようなドット径の範囲にすることにより、第1および第2のインクのドットの大きさの差を小さくすることで、巨視的には滑らかな階調表現を実現した画像を得ることができる。また、微視的には第1のインクと第2のインクのドット内の単位面積当たりの平均インク付与量の比および絶対値を一定範囲に収めることにより第1および第2のインクのドットの濃淡の差を目立たなくすることができる。
ここで、「ドット径」とは、塗工層を有する印刷用紙にインク液滴が着弾した後、溶媒成分が蒸発、浸透した後に、色材が円状に拡がってできたドットの直径を意味する。なお、塗工層表面の平滑性が低い場合、ドットは真円とはならず楕円形となることがある。この場合のドット径は、長径と短径の平均値となる。また、このドット径は、記録ヘッドの性能、ノズルの寸法精度、吐出速度により、ある程度のばらつきが生じる。従って、平滑性が低い塗工層を有する印刷用紙上に付与されたインクのドット径は、光学顕微鏡を用いてまず、独立しており比較的円形に近く、かつサテライト(主滴から外れた小液滴)の少ないインクドットを20個以上、選択する。次に、選択したインクドットの長径と短径を測定し、これらを平均化することによりドット径を測定する。
なお、画像記録装置の特性、要求される画質、塗工層を有する印刷用紙の特性および印字速度のスペック等を元に適宜、第1および第2のインクのにじみ率を調節することによって、第1および第2のインクのドット径を所望の値に制御できる。ここでいう、「にじみ率」とは、インク滴を球体とした場合の直径をその体積から換算し、その直径に対して塗工層を有する印刷用紙上でのドット径がどの程度の倍率となって広がるかを表す倍率のことである。にじみ率が高くドット径が大きいインクは、単位面積あたりの色材量が減少して、色が薄くなる可能性があるため、色材の濃度を高めにすることで、ドットの明度を同じにしておくことが好ましい。なお、にじみ率を制御するための具体的な方法については、後述する。
本実施形態では少なくとも同色および同一液滴量の2種類のインクを使用するが、同色および同一液滴量の3種類以上のインクを使用しても良い。この場合、3種類以上のインクの中から任意に選択した2種類のインクが上記のドット径の関係(ドット径の比が1/2〜2/1、好ましくは2種類のインクのドット径が異なりドット径が1/2以上1/1未満または1/1より大きく2/1以下)を満たせば良い。
また、本実施形態では、塗工層を有する印刷用紙に対して、画像を形成する。塗工層を有する印刷用紙はインク吸収能が低くビーディングが起こりやすいという特性を有する。しかし、上記のように、塗工層を有する印刷用紙に対して本実施形態の画像記録方法を適用することにより、ビーディングを抑制して滑らかな階調表現を実現した高画質な画像を記録することができる。
(ドット内平均インク付与量)
第1および第2のインクによりそれぞれ、形成されるドット内の単位面積当たりの平均インク付与量(以下、ドット内平均インク付与量)は特に限定されないが、0.09μL/cm2以上0.3μL/cm2以下であることが好ましい。0.09μL/cm2未満の場合、ドット内の色材の量が少なくなり、ドット内の色材濃度にムラを生じ、印刷用紙の塗工層の色を色材の色によって十分に隠蔽することができずに、画質が低下する場合がある。また、ドット内平均付与量が0.3μL/cm2を超える場合、インクの溶媒成分の絶対量が増加し、速乾性に支障をきたし、結果として液滴同士が結合するビーディングを起こして画質が低下することがある。また、顔料の凝集及び析出に時間がかかり、にじみ率制御によるドットサイズの打ち分けが困難になる場合がある。さらに、顔料が局所的に偏在した状態で固定され、結果的にドット内の色材の濃度ムラを発生させて画質が低下し、更に塗工層表面に析出した色材により形成されるドットの高さも高くなるため擦過性が低下する場合がある。
(液滴量)
第1および第2のインクの液滴量は特に限定されないが、それぞれ、0.6pL以上3.0pL以下が好ましい。より好ましくは1.0pL以上2.0pL以下である。0.6pL未満の場合は、特に高速記録において、着弾精度が悪化し、画像が乱れる場合がある。一方、3.0pLを越えると、インクの定着性に課題が生じる場合がある。
(ドット径)
なお、第1および第2のインクのドット径の具体的な値は特に限定されない。しかし、第1および第2のインクのドット径のうち、小さい方のドット径が20μm以上30μm未満であり、大きい方のドット径が30μm以上であることが好ましい。第1および第2のインクのドット径が上記範囲内にあることにより、より滑らかな階調表現の画像を記録することが可能となる。また、小さい方のドット径が20μm未満になると、例えば、インクジェット記録方式で一ノズルから一回に付与されるインク滴の量、つまり吐出量が小さくなる。この結果、インクジェット記録装置の印刷速度、搬送精度にもよるが、インク滴の着弾精度が低下し、高解像度の記録が困難な場合がある。
(インク総付与量)
第1および第2およびその他のインクの総付与量は特に限定されないが、1種類当たりのインクの総付与量が0.7μL/cm2以下であることが好ましい。0.7μL/cm2を超える場合には、溶剤成分の蒸発と浸透に時間がかかり、速乾性が低下する場合がある。また、形成されるドットの高さも高くなるために、擦過性が低下することがある。また、全インクの総付与量の合計、即ち、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクを用いる場合では、これら4色のインクの総付与量の合計は1.5μL/cm2以下が好ましい。全ての色のインクの総付与量の合計が1.5μL/cm2を越える部分を有する画像を形成する場合は、鮮明な画像が得られず、速乾性が低下する場合がある。
(付与時間差)
第1と第2のインクを付与する時間差は特に限定されないが、第1と第2のインクを付与する時間差を1msec以上、200msec以下とすることが好ましい。このようにインクを付与することにより、本発明の効果をより顕著にすることができる。1msec未満の場合、第1および第2のインク由来の液滴が結合し、小ドットが大ドットに吸収されるため小ドットが見えなくなる場合がある。また、200msecを超えると、デジタル商業印刷で要求される印刷速度を満たすことができない場合がある。
次に、以下では、第1および第2のインクについて同一液滴量を付与すると共にこれらのインクのドット径を制御するための水性インク、インクジェット記録装置、塗工層を有する印刷用紙の構成に関して具体的に説明する。
<水性インク>
(色材、顔料)
本実施形態の画像記録方法で使用する水性インクでは、色材として顔料を使用する。本実施形態では、複数色のインクを用いて画像を記録する場合も含まれており、インクのセットとしては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローが基本となるが、レッド、ブルー、グリーン、グレー、淡シアン、淡マゼンタ等を追加してもよい。これらの色のインクの全てについてそれぞれ、本実施形態の第1および第2のインクの条件を満たすように付与しても良い。また、これらの色インクのうち、一部の色のインクだけ本実施形態の第1および第2のインクの条件を満たすようにしても付与しても良い。
これらの水性インクに含まれる顔料は特に限定されず、水系インク中に分散できるものであれば樹脂分散、自己分散の何れの形態も好適に使用できる。分散安定化する前の顔料としては、例えばWO2009/014242号公報に列挙されているような、従来公知の様々な顔料を用いることができる。
本実施形態において、インクのにじみ率を制御する具体的な方法として、塗工層表面での凝集性が異なる顔料を用いる方法がある。すなわち、複数種類の顔料を凝集力の違いで分類し、それらの中から希望のにじみ率を実現できる顔料を選択し、これらの顔料を含有する形で第1及び第2のインクを調整すれば良い。これらの顔料の中でも、自己分散顔料を用いると、顔料表面を修飾する官能基の違いにより、にじみ率を制御することが比較的、容易であるため好ましい。自己分散顔料の中でも、アニオン性官能基を有するアニオン性自己分散顔料がより好ましい。アニオン性自己分散顔料は、同じくアニオン性の樹脂分散型の顔料と比較して、顔料に直接結合した官能基が印刷用紙の塗工層との相互作用を生じやすいため、にじみ率を低めに設定する際に有利である。ここでアニオン性官能基とは、pH7.0において半数以上の水素イオンが解離する官能基である。具体的にはカルボキシル基、スルホン基、又はホスホン酸基等が挙げられる。
官能基の違いによって自己分散顔料の凝集性が変わる理由は以下のように考えられる。塗工層を有する印刷用紙の表面に着弾した液滴は、普通紙やインクジェット専用紙に比べて遅い速度で塗工層を有する印刷用紙に吸収される。このため、インク液滴が完全に消滅するまでに、インク液滴のにじみ(拡大)は相対的に大きくなる。しかし、自己分散顔料のようにその凝集が早い場合、顔料自身は広がらずに着弾した塗工層表面付近に定着し、結果的にインク液滴の液成分は広がるものの色材自身の拡大が抑制される。なお、この凝集の速さは、インクの化学的性質/塗工層から溶出した化学物質などを同様の条件とした場合、自己分散顔料の官能基の種類によって制御することができる。また、自己分散顔料が同じ官能基で修飾されている場合であっても、自己分散顔料に導入した官能基量の違いにより、凝集能力を制御することができる。
顔料の表面にアニオン性官能基を導入する製造方法としては、例えばカーボンブラックを酸化処理する方法が挙げられる。ここで酸化処理の方法の例としては次亜塩素酸塩、オゾン水、過酸化水素、亜塩素酸塩、硝酸等による方法を挙げることができる。中でも画像内のムラ抑制の点から、次亜塩素酸ナトリウムを使用した表面処理方法で得られる自己分散カーボンブラックが好ましい。他の酸化処理の方法として、例えば、特許第3808504号明細書、特表2009−515007号公報、又は特表2009−506196号公報に記載されているようなジアゾニウム塩を使用した表面処理方法が挙げられる。
表面に親水性の官能基が導入された市販の顔料としては、例えばCW−1、CW−2、CW−3(オリヱント社製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300、CAB−O−JET400(キャボット社製)等が挙げられる。尚、上記したCW−2、CAB−O−JET300はアニオン性官能基として一定以上の割合で電離したカルボキシル基を有し、対イオンとしてナトリウムイオンを有する自己分散カーボンブラックである。即ち、−COONaを有するカーボンブラックである。
その他、アニオン性自己分散顔料の表面処理官能基としては、−SO3H、−SO2H、−P(=O)(OH)2等を挙げることができる。これらの官能基は水媒体中で一定以上の割合で電離しているため、電荷の反発作用により顔料粒子が安定的に分散している。対イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、或いはメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、2−ヒドロキシエチルアミン、ジ(2−ヒドロキシエチル)アミン又はトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン等のアミン類に由来するイオンを挙げることができる。好ましい対イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオンである。より好ましい対イオンは、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオンである。
自己分散顔料の対イオンをこれらのイオンに変換する手段としては、自己分散顔料のアニオン性官能基量を超える量のこれらのイオン原子を含有する塩を添加する方法を挙げることができる。また、特許第4001922号明細書又は特開平11−222573号公報に記載のように、自己分散顔料に対して目的のイオンを含有する水溶液の添加と脱塩を繰り返すことにより、対イオンを交換して得る方法(イオン交換法)を挙げることができる。
自己分散顔料の平均粒子径は、液中での動的光散乱法により求めることができ、好ましくは40nm以上であり、より好ましくは60nm以上、さらに好ましくは70nm以上である。また、好ましくは140nm以下であり、より好ましくは130nm以下、さらに好ましくは120nm以下である。具体的な平均粒子径の測定方法としては、レーザ光の散乱を利用した、FPAR−1000(大塚電子社製、キュムラント法解析)、ナノトラックUPA 150EX(日機装社製、50%の積算値の値とする)等を使用して測定できる。尚、本明細書では、平均粒子径は、散乱平均粒子径として定義する。
顔料は必要に応じて2種類以上を組み合わせて同一インク中に用いることができる。以上の自己分散顔料のインク中への添加量は、十分な発色性を得るためにはインク全量に対して0.5質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。また、画像の光沢性を向上させるためにはドットの高さを抑制することが好ましく、大量の顔料を含有するインクは光沢性が得られにくい場合がある。そのため、好ましい顔料濃度は8質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
(無機酸、有機酸、これらの塩)
第1および第2のインクはそれぞれ、有機酸、無機酸、およびこれらの塩からなる群から選択された少なくとも一種の物質を含有することが好ましい。これらの成分により、インクのにじみ率を制御することができる。第1および第2のインク中には、上記物質の中で、凝集力の違いにより希望のにじみ率を実現できるものを選択して添加すれば良い。上記物質は、第1および第2のインクのpH以下のpKaを有することがより好ましい。
有機酸としては、例えば、クエン酸、コハク酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フタル酸、シュウ酸、酒石酸、グルコン酸、タルトロン酸、マレイン酸、マロン酸、アジピン酸等の有機カルボン酸等を挙げることができる。中でも酢酸、フタル酸、安息香酸が好ましい。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等を挙げることができる。
有機酸等が塩の形の場合、塩となる対イオンとしては、自己分散顔料の対イオンの場合と同様に、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウム等を利用できる。
対イオンとしてのアルカリ金属の具体例としては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCs等を挙げることができる。また、有機アンモニウムの具体例としては、次のものを挙げることができる。例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノヒドロキシメチル(エチル)アンモニウム、ジヒドロキシメチル(エチル)アンモニウム、トリヒドロキシメチル(エチル)アンモニウム、トリエタノールアンモニウム等である。中でもアンモニウムが特に好ましい。
上記有機酸、無機酸、およびこれらの塩等の物質のインク中への添加量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
第1および第2のインクは、水を含有する。インク中の水の含有量は、インク全質量に対して、30質量%以上であることが好ましい。また、95質量%以下であることが好ましい。
(樹脂微粒子)
第1および第2のインクのにじみ率を制御する別の方法として、インク中の樹脂微粒子の添加量を変える方法や、異なるガラス転移温度の樹脂微粒子を添加する方法がある。複数種類の樹脂微粒子をにじみ率の違いで分類し、これらの中から所望のにじみ率を実現できる樹脂微粒子を選択して第1および第2のインク中に添加すれば良い。
樹脂微粒子の添加量やガラス転移温度によって、インクのにじみ率が変わる理由は以下のように考えられる。塗工層を有する印刷用紙の表面に着弾したインク液滴は、普通紙やインクジェット専用紙に比べて遅い速度で塗工層を有する印刷用紙に吸収される。このため、インク液滴が完全に消滅するまでの時間内での水(蒸発成分)の蒸発量が無視できなくなる。このことは、インク液滴が完全消滅するまでに、インク液滴内の固形分(顔料、樹脂微粒子等)の濃度上昇による粘度等の上昇が顕著になることを意味する。ここで、インク中に樹脂微粒子が存在すると着弾後の液滴の広がりを抑制することができる。また、樹脂微粒子のガラス転移温度が低いほど液滴の広がり抑制をより顕著にすることができる。
第1および第2のインク中に添加する樹脂微粒子は、水系媒体に良好に分散するものであれば何れも好適に用いることができる。中でも、親水性アクリル系樹脂微粒子及び親水性ウレタン系樹脂微粒子であることが好ましい。ここで、「アクリル系樹脂」とは、アクリル酸エステル系樹脂を主体としたものであり、アクリルモノマーをベースにした共重合体である。アクリルモノマーとしては、例えば、下記のモノマーを挙げることができる。
不飽和カルボン酸モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等を挙げることができる。
不飽和スルホン酸モノマーの例としては、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
アクリル酸エステルモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類を挙げることができる。
メタクリル酸エステルモノマーの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート等を挙げることができる。
重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性アクリル系モノマーの例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。
また、アクリルモノマーと共重合可能なモノマーの例を下記に示す。
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、ブタジエン、クロロプレン等のジエン類、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニル単量体類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体類、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸モノマー類等を挙げることができる。
以上のモノマーを常法により重合させて、樹脂微粒子を得ることができる。
樹脂の重量平均分子量は、吐出特性、印字濃度、擦過性の観点から10万以上5千万以下が好ましい。また、20万以上がより好ましく、25万以上がさらに好ましい。また、1千万以下がより好ましく、8百万以下がさらに好ましい。分子量が10万より小さくなると、擦過性が低下することがあり、また5千万より大きいと、吐出特性が損なわれる場合がある。
樹脂微粒子を含有する樹脂エマルションの、インク中の含有量は、0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましい。また、0.5質量%以上が好ましく、5.0質量%以下が好ましい。樹脂エマルションの含有量が0.1質量%未満となると、印字物の定着性が十分とならず、10.0質量%を超えると、分散安定性が崩れる場合がある。また、インク中の顔料と樹脂微粒子の固形分の質量比率(P/B比)はより良好な定着性を得るためには、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.0以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。
(水性媒体)
第1および第2のインクは水を含有するが、各インク中の水の含有量は、各インク全質量に対して、30質量%以上であることが好ましい。また、95質量%以下であることが好ましい。さらに、水に加えて、水溶性化合物を併用して、水性媒体とするのが好ましい。この水溶性化合物とは、20質量%濃度とした水との混合液で水と相分離せずに混ざり合う、親水性の高いものである。さらに目詰まり防止の点から蒸発しやすいものは好ましくなく、20℃での蒸気圧が0.04mmHg以下の物質が好ましい。
さらに水溶性化合物として、下記式(A)で定義される親疎水度係数が0.26以上のものが好ましい。塗工層を有する印刷用紙の種類によっては、式(A)で定義される親疎水度係数が0.26以上0.37未満の水溶性化合物と、0.37以上の水溶性化合物を併有するインクが好ましい。このような疎水性の水溶性化合物を併用するインク組成にすることで、印刷用紙着弾後の画像内のムラが抑制され、水の蒸発が促進されることで擦過性にも有利になる。
Figure 2015020408
なお、式中の水分活性値とは、水分活性値=(水溶液の水蒸気圧)/(純水の水蒸気圧)で示されるものである。水分活性値の測定方法は、様々な方法があり何れの方法にも限定されないが、中でもチルドミラー露点測定法は、本実施形態で使用する材料測定に好適である。本明細書での値は、この測定法によるアクアラブCX−3TE(DECAGON社製)を用いて、各水溶性化合物の20質量%水溶液を25℃で測定したものである。
ラウールの法則に従えば、希薄溶液の蒸気圧の降下率は溶質のモル分率に等しく、溶媒及び溶質の種類に無関係であるため、水溶液中の水のモル分率と水分活性値は等しくなる。しかし、各種水溶性化合物の水溶液の水分活性値を測定すると水分活性値は、水のモル分率と一致しないものも多い。水溶液の水分活性値が水のモル分率より低い場合は、水溶液の水蒸気圧が理論計算値より小さいこととなり、水の蒸発が溶質の存在によって抑制されていることを示している。このことから、溶質は水和力の大きい物質であることが分かる。逆に、水溶液の水分活性値が水のモル分率より高い場合は、溶質が水和力の小さい物質と考えられる。
本発明者らは、インクに含有される水溶性化合物の親水性、あるいは疎水性の程度が、自己分散顔料と水性媒体との固液分離の推進、さらに、各種インク性能に及ぼす影響が大きいことに着眼した。このことから、式(A)に示す親疎水度係数という係数を定義した。水分活性値は、20質量%の一律の濃度で各種水溶性化合物の水溶液を測定している。式(A)に換算することによって、溶質の分子量が異なって水のモル分率が違っても、各種溶質の親水性、あるいは疎水性の程度の相対比較が可能である。また、水溶液の水分活性値が1を越えることはないため、親疎水度係数の最大値は1である。水溶性化合物の、式(A)によって得られた親疎水度係数を表1に示す。ただし、本実施形態の水溶性化合物は、これらにのみ限定されるものではない。
Figure 2015020408
第1および第2のインク中での水溶性化合物の含有量は、合計で好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
(界面活性剤)
第1および第2のインクは、よりバランスのよい吐出安定性を得るために、インク中に界面活性剤を含有することが好ましい。中でもノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。ノニオン系界面活性剤の中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。これらのノニオン系界面活性剤のHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)は、10以上である。こうして併用される界面活性剤の含有量は、好ましくはインク中に0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
(その他の添加剤)
第1および第2のインクは、所望の物性値を有するインクとするために、上記した成分の他に必要に応じて、添加剤として、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、浸透剤等を添加することができる。
(表面張力)
第1および第2のインクの表面張力は、34mN/m以下である。このインクの表面張力は、33mN/m以下であることがより好ましく、32mN/m以下であることがさらに好ましい。また、20mN/m以上であることが好ましく、23mN/m以上であることがより好ましく、26mN/m以上であることがさらに好ましい。インクの表面張力をこの範囲に制御することで、本発明のインクの効果が最大限に発揮される。表面張力が34mN/mを越えると、塗工層へのインクの浸透が遅くなり、インク中の顔料が着弾してから消滅するまでの時間が長くなり、結果として液滴同士が結合するビーディングを起こし画質が低下してしまう。上記表面張力は、垂直平板法によって測定された値であり、具体的な測定装置としては、CBVP−Z(協和界面科学社製)等が挙げられる。
(粘度)
第1および第2のインクの粘度は、以下で記載されるインクジェット記録装置などに適した値なら特に限定されない。例えば、熱エネルギーの利用によりインクジェット記録する装置を使用する場合、第1および第2のインクの粘度は14mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは10mPa・s以下であり、さらに好ましくは6mPa・s以下である。粘度をこれらの範囲に設定することで、インクジェットプリンターのヘッドから高周波数での液滴の吐出が容易となり、本実施形態の画像記録方法の高速印刷への適用が容易になる。
<インクジェット記録装置>
次に、本実施形態の画像記録方法に使用するインクジェット記録装置について説明する。
好適な装置としては、インクを塗工層を有する印刷用紙に付与する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置である。記録ヘッドは、インクを何らかの方法で突出させるものであれば特に限定されない。吐出方法としては、ポンプまたは流路内に設けた圧電素子の変形でインクに圧力を加えて吐出させる方法、インクに熱エネルギーを与えて気泡を発生させる方式、インクを帯電させその静電吸引力を利用する静電吸引方式などがある。本実施形態では、どの方法でも使用できるが、特に熱エネルギーを与える方式が好適である。
また、インクをどのタイミングで吐出させるかに関して、コンティニュアス方式と、オンデマンド方式に分けられる。コンティニュアス方式とは常にインクを吐出させ不要なものは塗工層を有する印刷用紙に着弾する前に回収する方式であり、オンデマンド方式とは塗工層を有する印刷用紙に着弾させたいときのみインクを吐出する方式である。本実施形態では、何れの方式も好適である。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示す正面図である。キャリッジ20には、インクジェット方式の複数の記録ヘッド211〜215が搭載されている。また、記録ヘッド211〜215にはインクを吐出するためのインク吐出口が複数配列されている。1パスでインクを付与する構成の一態様では、211、212、213、214及び215は、夫々、ブラック1(K1)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック2(K2)のインクを吐出する。この態様では、互いに組成や物性が異なる2種類のブラックインクK1とK2が第1および第2のインクとなる。
インクカートリッジ221〜225は、記録ヘッド211〜215、及びこれらにインクを供給するためのインクタンクとから構成されている。40は、濃度センサである。濃度センサ40は反射型の濃度センサであり、キャリッジ20の側面に設置された状態で、塗工層を有する印刷用紙24に記録されたテストパターンの濃度を検出できる構成となっている。
記録ヘッド211〜215への制御信号等は、図示しないフレキシブルケーブルを介して転送される。塗工層を有する印刷用紙24は、図示しない搬送ローラを経て排紙ローラ25に挟持され、搬送モータ26の駆動に伴い矢印方向(副走査方向)に搬送される。ガイドシャフト27、及びリニアエンコーダ28により、キャリッジ20は案内支持されている。キャリッジ20は、キャリッジモータ30の駆動により、駆動ベルト29を介して、ガイドシャフト27に沿って主走査方向に往復運動される。記録ヘッド211〜215のインク吐出口の内部(液路)には、インク吐出用の熱エネルギーを発生する発熱素子(電気・熱エネルギー変換体)が設けられている。リニアエンコーダ28の読みとりタイミングに伴い、上記発熱素子を記録信号に基づいて駆動し、塗工層を有する印刷用紙24上にインク滴を吐出し、付着させることで画像を形成する。
記録領域外に配置されたキャリッジ20のホームポジションには、キャップ部311〜315を持つ回復ユニットが設置されている。記録を行なわないときには、キャリッジ20をホームポジションに移動させて、記録ヘッド211〜215のインク吐出口面をそれぞれが対応するキャップ311〜315によって密閉する。これにより、インク溶剤の蒸発に起因するインクの固着あるいは塵埃等の異物の付着等による目詰まりを防止することができる。また、キャップ部のキャッピング機能は、記録頻度の低いインク吐出口の吐出不良や目詰まりを解消するために利用される。具体的には、キャップ部は、インク吐出口から離れた状態にあるキャップ部へインクを吐出させる吐出不良防止のための空吐出に利用される。更に、キャップ部は、キャップした状態で図示しないポンプによりインク吐出口からインクを吸引して、吐出不良を起こした吐出口の吐出回復に利用される。
図示しないインク受け部は、記録ヘッド211〜215が記録動作直前に上部を通過する時に、予備的に吐出されたインク滴を受容する役割を果たす。また、キャップ部に隣接した位置に図示しないブレード、拭き部材を配置することにより、記録ヘッド211〜215のインク吐出口形成面をクリーニングすることが可能でとなっている。
以上、説明したように、記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは、記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段等がある。また、記録とは別の吐出を行なう予備吐出モードを備えることも安定した記録を行なうために有効である。加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いても良い。さらに、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いても良い。
図2は、記録ヘッド211〜215の構成図である。図において、記録ヘッド211〜215の記録走査方向は、図の矢印で示した方向とする。各記録ヘッド211〜215には、記録走査方向と直交する方向に配列した複数のノズルの吐出口が配備されている。記録ヘッドは、図2の記録走査方向へ移動走査しながら、各吐出口より所定のタイミングでインク滴を吐出する。これにより、塗工層を有する印刷用紙には、ノズルの配列密度に応じた記録解像度で画像が形成される。この際、記録ヘッドは、記録走査方向のどちらの方向で記録動作を行っても良い。また、往復のどちらで記録動作を行っても良い。各記録ヘッド211〜215は同一の構造を有し、記録ヘッド211〜215からは同一液滴量のインクが吐出される。これらの記録ヘッド211〜215にそれぞれ接続したインクカートリッジ221〜225のうち少なくとも2つのカートリッジには、上述のにじみ率の異なる第1および第2のインクを充填して吐出させる。これにより、塗工層を有する印刷用紙に付与された第1および第2のインクのドット径を互いに異なるものとすることができる。なお、第1および第2のインクの何れをどのタイミングで吐出させるかは、印字時に要求される画質と印字速度、ハイライト部分かベタ画像部分か等に応じて予め決めた上で、プリンタ制御プログラムに入力すれば良い。
また、以上の実施形態は記録ヘッドを走査して記録を行なうシリアルタイプの記録装置であるが、塗工層を有する印刷用紙の幅に対応した長さを有する記録ヘッドを用いたフルラインタイプの記録装置であっても良い。フルラインタイプの記録ヘッドとしては、シリアルタイプの記録ヘッドを千鳥状や並列に配列させて、長尺化し、目的の長さとする構成がある。あるいは、当初より長尺化したノズル列を有するように、一体的に形成された1個の記録ヘッドとした構成でも良い。
上記のシリアルタイプやラインタイプの記録装置は、独立化あるいは一体的に形成された4色インク(Y,M,C,K)を用いて、ブラックインクのみを2分割して第1および第2のインクとして付与する。このため、ブラックインク211ノズルと215ノズルそれぞれに設けた5吐出口列(またはノズル列)構成のヘッドを搭載した例である。また、4吐出口列数(またはノズル列数)を用いて分割回数を2〜12程度にする際の好適な態様としては、下記の態様を挙げることができる。すなわち、4色インク(Y,M,C,K)の少なくとも1種については、同色のインクを第1および第2のインクとして複数の吐出口列(またはノズル列)に重複して搭載する形式も好ましい。例えば、4吐出口列数(またはノズル列)のヘッドを2個ないし3個重ねてつなげた8吐出口列(またはノズル列)構成や12吐出口列(またはノズル列)構成等も挙げることができる。
<塗工層を有する印刷用紙>
次に、本実施形態で用いる塗工層を有する印刷用紙について説明する。塗工層を有する印刷用紙は、主にオフセット印刷、グラビア印刷等に用いられる塗工層を有する印刷用紙である。「塗工層」とは、紙の表面の美感や平滑さを高める為に、上質紙または中質紙の表面及び/または裏面に塗布された塗料の層、または抄紙時に形成された塗料の層である。好ましくは、塗工層は、表面及び裏面のうち少なくとも一方の面に無機材料を含有する層を有する。
経済産業省の「工業調査統計」や日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」の「紙・板紙の品種分類表」によると、塗工層を有する印刷用紙は「印刷・情報用紙」の中の塗工層を有する印刷用紙および微塗工印刷用紙に分類される。前者は塗工層が表面に1m2当り両面で12g以上40g以下の塗料を塗布されたもので、後者は1m2当り12g未満の塗料を塗布されたものである。更に微塗工印刷用紙は、塗料の塗布量や塗布後の表面処理の方法等で、アート紙、コート紙、軽量コート紙、その他(キャストコート紙、エンボス紙)等に分類される。また、表面の光沢感の違いで、グロス系、マット系、ダル系などに分類されることもある。本実施形態では、これら塗工層を有する印刷用紙すべてが対象である。
特に好ましい塗工層を有する印刷用紙は、印刷用紙全体をXRF(蛍光X線分析)法により測定したとき、炭素及び酸素以外の元素の含有率が10.0質量%以上であり、炭素及び酸素以外の元素の含有率に占めるカルシウムの比率が5.0質量%以上である。このような塗工層を有する印刷用紙を使用することで、第1および第2のインクと塗工層を有する印刷用紙の相互作用によって顔料の凝集速度が向上し、線画像内のムラが低減すると考えられる。
なお、上述のXRF法は、膜厚100μm程度の塗工層を有する印刷用紙なら試料を試料台に固定してX線を照射するだけで、再現性良く各種元素の存在量を測定できる。XRFはその測定原理から、水素・ヘリウム・リチウムとウラン以上の超重元素は検出できないが、塗工層を有する印刷用紙にヘリウム・リチウムとウラン以上の超重元素が無視できない比率で存在することはほぼあり得ない。従って、塗工層を有する印刷用紙をXRFで分析して得られた元素比率は、実質的には塗工層を有する印刷用紙を構成する全元素から水素を除いたものに占める割合といって良い。
現在の印刷の主流が油系インキによるオフセット印刷であるため、塗工層はインキに含まれる色材や液成分とりわけ親水系液成分が内部に浸透しにくい構造になっている。その為、塗工層の物理的特徴としては、平均細孔直径は0.1μm以下、細孔容積は0.3mL/g以下のものが好ましい。
塗工層を有する印刷用紙としては特に限定されるわけではないが、具体的に以下の商品名の紙を挙げることができる。
アート紙;OKウルトラアクアサテン、OK金藤、SA金藤、サテン金藤(以上、王子製紙社製)、ハイパーピレーヌ、シルバーダイア(以上、日本製紙社製)。グリーンユトリロ(以上、大王製紙社製)。パールコート、ニューVマット(以上、三菱製紙社製)。雷鳥スーパーアート(以上、中越パルプ社製)。ハイマッキンレー(以上、五條製紙社製)。
コート紙;OKトップコート、OKトップコート+、OKトップコートダル、OKトップコートマット、OKトリニティ、OKカサブランカ(以上、王子製紙社製)。オーロラコート、シルバーダイア、しらおいマット(以上、日本製紙社製)。グリーンユトリロ(以上、大王製紙社製)。パールコート、ニューVマット(以上、三菱製紙社製)。
軽量コート紙;OKコートL(以上、王子製紙社製)。オーロラL、イースターDX、ペガサス(以上、日本製紙社製)。ユトリロコートL(以上、大王製紙社製)。パールコートL(以上、三菱製紙社製)。スーパーエミネ(以上、中越パルプ社製)。ドリームコート(以上、丸住製紙社製)。
その他(キャストコート紙等);ミラーコートプラチナ、OKクローム(以上、王子製紙社製)。エスプリコート(以上、日本製紙社製)。ピカソコート(以上、大王製紙社製)。
微塗工印刷用紙;OKエバーライト、OKクリスタル、OKプラナスホワイト(以上、王子製紙社製)。ピレーヌDX、オーロラS(以上、日本製紙社製)。
以下では、実施例、比較例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
(顔料A)
市販の自己分散顔料分散液(商品名;CAB−O−JET400、キャボット社製)に含有される顔料を、顔料Aとして用いた。この顔料の表面に付与されている官能基は未開示であるが、塗工層を有する印刷用紙上で高い凝集性能を示す。
(顔料B)
市販の自己分散顔料分散液(商品名;CAB−O−JET200、キャボット社製)に含有される顔料を、顔料Bとして用いた。この顔料は、表面がスルホン基で修飾されている。
(顔料C)
市販の自己分散顔料分散液(商品名;CW−1S、オリヱント社製)に含有される顔料を、顔料Cとして用いた。この顔料は、自己分散の為に表面がラクトン基及びカルボキシル基で修飾されている。
(顔料D)
比表面積が320m2/gで、DBP吸油量が110mL/100gのカーボンブラック10gを、重量平均分子量10000のスチレンアクリル酸共重合体(スチレン/アクリル酸=3/1(wt/wt))10gと、THF200mL中で攪拌しながら分散させた。この溶液中に、0.2NのKOH水溶液を400mL滴下し、徐々にアクリル酸を解離させながら転相させた。次いで、限外ろ過を用いて水で過剰なKOHを除去しながら、濃縮することで、固形分量7.5質量%の樹脂分散型の顔料を得、これを顔料Dとして用いた。
<親水性の樹脂微粒子分散体A>
常法に従い、所定のモノマーとしてスチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸を3.0/6.0/1.5(質量比)と、ドデシル硫酸ナトリウムを0.25(質量比)と、開始剤としてKPS(Sigma−Aldrich社製)を用いて重合を行った。重合後、KOH水溶液で中和し、精製・濃縮することで、樹脂微粒子の固形分濃度10質量%の樹脂微粒子分散体Aを得た。pHは8.5に調整した。樹脂微粒子の平均粒子径(D50)は122nmで、酸価は101mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は−3℃であった。
<親水性の樹脂微粒子分散体B>
常法に従い、所定のモノマーとしてスチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸を7.0/2.0/1.5(質量比)と、ドデシル硫酸ナトリウム0.25(質量比)と、開始剤としてKPS(Sigma−Aldrich社製)を用いて重合を行った。重合後、KOH水溶液で中和し、精製・濃縮することで、樹脂微粒子の固形分濃度10質量%の樹脂微粒子分散体Bを得た。pHは8.5に調整した。樹脂微粒子の平均粒子径(D50)は130nmで、酸価は100mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は58℃であった。
(インクの調製)
まず、表2に従って、インクを構成する全成分(合計で100部)を混合した後、1時間攪拌した。但し、表2の樹脂微粒子分散体A、Bについては、固形分の量を示している。最後に、孔径2.5μmのフィルターを用いて、ろ過し、インクを得た。尚、表中、「水」とあるのはイオン交換水、「アセチレノールEH」とあるのは、ノニオン界面活性剤(川研ファインケミカル社製)である。また、pHは「pH調整」が○になっているもののみ、塩酸を添加して所定のpHになるように調整した。なお、表2のink1〜11はすべて同一色(黒)である。ink1〜10まではにじみ率の違いがそれほど大きくない為、顔料の添加量はすべて同じ2部だが、ink11はにじみ率が他と比べて大きい為、顔料の添加量を2倍の4部にした。この為、インク液滴で見比べるとink11は他と比べて2倍の濃度だが、印字後のドットパターンを見比べると、ドット径が大きくなり、結果的に同一条件で印字した他のインクのドットパターンとほぼ同様の濃さの色相であった。
Figure 2015020408
<画像記録方法>
(インクジェット記録装置)
下記記録装置A〜Cの何れかを使用した。なお、記録装置Aの各ノズルは同一構造を有するため、各ノズルから吐出されるインクの液滴量は同一(1.0pL)となる。同様に、記録装置BおよびCの各ノズルから吐出されるインクの液滴量も同一(記録装置Bは2.0pL、記録装置Cは4.0pL)となる。
記録装置A:PIXUS iP480(キヤノン社製、記録ヘッド:9吐出口列、各512ノズル、インクの液滴量1.0pL(定量)、解像度最高9600dpi(横)×2400dpi(縦))。
記録装置B:BJF950(キヤノン社製、記録ヘッド;6吐出口列、各512ノズル、インクの液滴量2.0pL(定量)、記録密度2400dpi(横)×1200dpi(縦))。
記録装置C:BJF900(キヤノン社製、記録ヘッド;6吐出口列、各512ノズル、インクの液滴量4.0pL(定量)、記録密度1200dpi(横)×1200dpi(縦))。
(印字方法)
2種類または3種類のインクをプリンタのインクヘッド部の別々のカートリッジに充填して印刷した。、第1のインクによるDuty10%、20%のドットパターン部分、第2のインクによるDuty10%、20%のドットパターン部分、第3のインクが有る場合は更に、第3のインクによるDuty10%、20%のドットパターン部分がそれぞれ2cm×2cmになるようにした。この4種(第1および第2のインクを使用する場合)または6種(第1〜第3のインクを使用する場合)のドットパターンを互いに接するように連続して形成し、市松模様になるようにした。
この4種または6種のドットパターンの組み合わせ画像からなる印字物を、1パス、2パス、4パスで印字した。なお、1パスは一度のヘッド移動走査で分割付与せずに全画像を印字する方法、2パスは二度のヘッドの移動走査で分割付与して全画像を印字する方法、4パスは四度のヘッド移動走査で分割付与して全画像を印字する方法である。隣り合うドット同士の液滴着弾時の付与時間差は、記録装置及びDutyによっても多少異なるが、1パスで1msec以上200msec以下、2パスで最低でも500msec程度、4パスで5sec程度とした。
(塗工層を有する印刷用紙)
塗工層を有する印刷用紙であるOKトップコート+(王子製紙社製)を用いた。室温20〜25℃、湿度30〜60%の一般的な環境に保管した塗工層を有する印刷用紙を、前処理等を施すことなくそのままインクジェット記録装置に装填して印字した。なお、この塗工層を有する印刷用紙に関して、断面を走査型電子顕微鏡(SEM、S5500、日立ハイテクフィールディング社製)で観察したところ塗工層の平均厚みは15μmであった。また、塗工層を有する印刷用紙に含まれる水素・ヘリウム・リチウムとウラン以上の超重元素を除く全元素に対する炭素及び酸素以外の元素の含有率及びそのうちのカルシウム元素の比率を分析した。この分析には、蛍光X線分析装置(XRF、ZSX100e、リガク社製)を使用し、得られた値から、算出したところ、それぞれ27.6質量%、14.3質量%であった。また、塗工層部分の平均細孔径及び累積細孔容積を水銀圧入法(PoreMaster60−GT、カンタクローム社製)で分析したところそれぞれ0.02μm、0.06mL/gであった。
<画像評価方法>
(ドット径の測定)
印字物のドット径の測定方法としては、上述のインクジェット記録装置、画像記録方法で作成したDuty10%のドットパターン部分を光学顕微鏡で観察した。そして、独立しており、比較的円形に近くかつ、サテライト(主滴から外れた小液滴)の少ないドットを20個選択して、ドットの長径と短径を測定し平均値を求めた。ビーディングを起こしている試料の場合も、ドット同士の融合のないものや、インク液滴が融合する前のドットの形状の痕跡(濃い顔料が円状に残った部分)があるものを20個選択して、上述の方法で測定した。 (ビーディングの評価)
印字物のビーディングの評価方法としては、上述のインクジェット記録装置、画像形成方法で作成したDuty20%のドットパターン部分を光学顕微鏡及び目視で観察し、以下の評価基準で判定した。
A:顕微鏡下では、隣と重なったドットがそれぞれ単独のドットと同様の形状を維持している。また、目視では、印字部分は均一な薄灰色でムラが見られない。
B:顕微鏡下では、隣と重なったドットが融合したドットになっている。目視では、印字部分は黒い部分と薄灰色の部分が存在しムラが見られる。
(滑らかな階調表現の評価)
印刷物の階調表現が滑らかかどうかの評価方法は、以下の通りである。評価には、上述のインクジェット記録装置、4パスによる画像記録方法で作成した第1のインクのDuty10%のドットパターン部分と第2のインクのDuty10%のドットパターン部分を用いた。これらのドットパターン部分について、隣同士になっている部分を目視で観察し、以下の評価基準で判定した。
A:パターン全体を見た際には両者に違いが見られるが、第1のインクと第2のインクの境界がめだたず、連続的に変化しているように見える。
B:パターン全体を見た際には両者に違いが見られ、第1のインクと第2のインクの境界がはっきりしている。
<実施例 比較例>
上述の水性インクの2または3種を別々のカートリッジに充填し、上述の画像記録方法で印字し、上述の画像評価を行った。その結果を表3に示す。
ink1〜11は、顔料官能基の違い、顔料種の違い、インク中の塩の有無、インクのpHの違い、インク中の樹脂微粒子の有無、樹脂微粒子のTgの違い、等により、にじみ率を制御した。実施例1〜6・比較例1、2はこれらのインクのドットパターンが表3の「使用インク」の記載のような組み合わせになるように印字し、印字物を評価した。
なお、下記表3の「各インクのドット径/ドット内平均インク付与量」欄に記載の数値は、左から順に第2のインク、第1のインク、第3のインク(使用する場合)に関するものである。「各インクのドット径/ドット内平均インク付与量」欄に記載の数値は左から順に、それぞれ「使用インク」欄に記載のインクに対応する。ドット径の単位はμm、ドット内平均インク付与量の単位はμL/cm2である。また「ドット径の比」の数値は、第1と第2のインクのドット径の比のみを記載した。より具体的には、実施例1〜6および比較例2では、「ドット径の比」は(第1のインクのドット径)/(第2のインクのドット径)を表す。比較例1では、「ドット径の比」は(第2のインクのドット径)/(第1のインクのドット径)を表す。
Figure 2015020408
印字物を目視観察したところ、実施例1〜6のすべての印字物において同様に、4種または6種のドットパターン部分の間で色の濃さの差を認識できた。実施例1〜6では、記録装置Aを用い1pLのインクを吐出する限り、何れのパスでもビーディングは見られず、ドットパターンの境目も目立たず滑らかな階調表現が実現できることが解った。また、4パスにしてインクを分割付与すればいずれのインク液滴量でもビーディング・階調表現共に良好であった。これらより、にじみ率の制御方法の違いに関係なくドットサイズを打ち分け多値化でき、同等の画質の印字物を得ることが可能なことを確認できた。
一方、比較例1では、第1のインク(ink10)のDuty20%のドットパターン部分が激しいビーディングを起こし、目視でも濃度のムラが認められた。Duty10%のドットパターン部分でも20%に比べれば軽微だがビーディングが発生した。この為、階調表現の滑らかさの評価はできなかった。
比較例2では、4パスにするとビーディングは見られなかったものの、ドットパターン部分の境目が目視ではっきり認識でき、階調表現が滑らかではないことが解った。
ドット径に関しては、実施例1〜6・比較例1のすべての印字物において、第1のインク、第2のインク、第3のインク(使用する場合)の比が1/2〜2/1の関係になっていた。一方、比較例2では第1のインク(ink11)のドット径が第2のインクの2倍以上あり、比が1/2〜2/1の関係にならなかった。
ドットを更に詳細に観察したところ、実施例1〜6で記録装置A(吐出量1pL)を使用した場合、第2のインクのドット径が20μm以上30μm未満であり、第1のインクのドット径が30μm以上という関係も満たしていることが分かった。なお、実施例4〜6では、記録装置Aで印字したink8、ink9(第1または第3のインク)のドット径が40μm以上になり、ドット内平均インク付与量が0.09μL/cm2を下回った。これらは目視では特に画質低下は認められなかったが、顕微鏡観察では若干ドット内に濃度にムラが発生した。これはドット内平均インク付与量が少なく、ドット内で色材が不足した為だと考えられる。また、比較例2のink11では顔料を他の2倍添加した濃いインクではあるものの、にじみ率が大きい為、ドット全体の濃さは他のインクのものと大差なかった。しかし、ドット内で色材の偏在に起因する濃淡ムラが若干見られた。これは、ドット内平均インク付与量が0.09μL/cm2を大きく下回っている為に、液(蒸発)成分が短時間で蒸発してしまい、色材がドット内に均一に拡散する余裕がなかったためだと考えられる。
ビーディングに関しては、実施例1〜6の4パスによる印字物においてすべて評価はAであったが、パス数が減るに従って、吐出量が多い記録装置で印字したものほど評価がBになる傾向が認められた。これは、インク液滴量が多いためにドット内インク付与量が0.3μL/cm2を上回り、1パスや2パスの場合の付与時間差では液滴が完全に吸収または蒸発によって消滅しなかったためだと考えられる。一方、比較例1では、ink10の表面張力が46mN/mと高く塗工層表面に広がりにくい為に、ドット滴が小さくなりやすいものの浸透及び蒸発に関して不利になったためと考えられる。その為、4パス印字して十分にインク付与時間差が与えられたとしても液滴が消滅する前に次の液滴が着弾して液同士の融合が起こったためだと考えられる。
滑らかな階調表現に関しては、実施例1〜6では、第1のインク、第2のインク、第3のインク(使用する場合)の比が1/2〜2/1の関係になっていた。従って、印物全体を見た際には各インクのドットパターン部分に違いが見られるものの両者の境界が目立たず連続的に変化しているように見える、と考えられる。一方、比較例2では、ink11はにじみ率が大きいものの顔料が2倍添加されている。従って、個々のドットの濃さではink1と大差なかったものの、ドット径の比が2.04と大きい為に、両者のドットパターン全体の目視での濃さが大きく異なり、階調が大きく変化している印象を与えたものと考えられる。
20 キャリッジ
24 塗工層を有する印刷用紙
25 排紙ローラ
26 搬送モータ
27 ガイドシャフト
28 リニアエンコーダ
29 駆動ベルト
30 キャリッジモータ
40 濃度センサ
211〜215 インク吐出口
221〜225 インクカートリッジ
311〜315 キャップ

Claims (9)

  1. 記録媒体上に、同一色及び同一液滴量の第1のインク及び第2のインクを付与して画像を形成する画像記録方法であって、
    前記記録媒体は、塗工層を有する印刷用紙であり、
    前記第1および第2のインクは、水と顔料とを含み、表面張力が34mN/m以下であり、
    前記第1および第2のインクの付与時に、前記記録媒体上に形成される第1のインクのドット径が、前記記録媒体上に形成される第2のインクのドット径と異なるように前記第1および第2のインクを付与し、
    前記第2のインクのドット径に対して前記第1のインクのドット径が1/2〜2/1の大きさであることを特徴とする画像記録方法。
  2. 前記第1および第2のインクによりそれぞれ、形成されるドット内の単位面積当たりの平均インク付与量が0.09μL/cm2以上0.3μL/cm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
  3. 前記第1および第2のインクの液滴量がそれぞれ、0.6pL以上3.0pL以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録方法。
  4. 前記第1および第2のインクのドット径のうち、小さい方のドット径が20μm以上30μm未満であり、大きい方のドット径が30μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
  5. 付与するインクの1種類当たりの総付与量が0.7μL/cm2以下であり、且つ全インクの総付与量の合計が1.5μL/cm2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像記録方法。
  6. 前記第1と第2のインクを付与する時間差が、1msec以上、200msec以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像記録方法。
  7. 前記第1および第2のインクは、有機酸、無機酸、およびこれらの塩からなる群から選択された少なくとも一種の物質を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
  8. 前記記録媒体は、表面及び裏面のうち少なくとも一方の面に無機材料を含有する層を有し、
    XRF(蛍光X線分析)法により測定した炭素及び酸素以外の元素の含有率が10.0質量%以上であり、かつ炭素及び酸素以外の元素の含有率に占めるカルシウムの比率が5.0質量%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像記録方法。
  9. 前記第1および第2のインクに熱エネルギーを付与することにより、前記第1および第2のインクを記録媒体に付与することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像記録方法。
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