JP2015017988A - 焦電型検出器、焦電型検出装置及び電子機器 - Google Patents

焦電型検出器、焦電型検出装置及び電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】熱が散逸することを抑制して高い検出特性を実現できる焦電型検出器を提供する。【解決手段】焦電型検出素子は、キャパシター230を覆う層間絶縁膜260と、層間絶縁膜に形成されて第1電極の第2領域233Bに通ずる第1コンタクトホール252と、第1コンタクトホールに埋め込まれた第1プラグ226と、層間絶縁膜に形成されて第2電極236に通ずる第2コンタクトホール254と、第2コンタクトホールに埋め込まれた第2プラグ228と、第1プラグに接続される第1電極配線層222と、第2プラグに接続される第2電極配線層224とを含む。第2電極配線層を形成する材料の熱伝導率は、第2プラグと接続される部分の第2電極を形成する材料の熱伝導率よりも低いことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、焦電型検出器、焦電型検出装置及び電子機器等に関する。
焦電型検出装置として、焦電型またはボロメーター型の赤外線検出装置が知られている。赤外線検出装置は、受光した赤外線の光量(温度)によって焦電体材料の自発分極量が変化すること(焦電効果またはパイロ電子効果)を利用して焦電体の両端に起電力(分極による電荷)を生じさせるか(焦電型)、または温度によって抵抗値を変化させて(ボロメーター型)、赤外線を検出している。焦電型赤外線検出装置は、ボロメーター型赤外線検出装置と比較して、製造工程が複雑である反面、検出感度が優れるという利点がある。
焦電型赤外線検出装置のセルは、上部電極と下部電極とに接続された焦電体から成るキャパシターを含む赤外線検出素子を有し、電極や焦電体の材料や電極配線構造に関して、各種の提案がなされている(特許文献1,2)。
また、上部電極と下部電極とに接続された強誘電体を含むキャパシターは強誘電体メモリに用いられており、強誘電体メモリに適した電極や強誘電体の材料に関しても、各種の提案がなされている(特許文献3,4)。
特開平10−104062号公報 特開2008−232896号公報 特開2009−71242号公報 特開2009−129972号公報
特許文献1は、下部電極自体が引き回されて下部電極配線として兼用され、かつ、上部電極自体が引き回されて上部電極配線層として兼用されている。キャパシターの下部電極及び上部電極は、求められる電気的特性上から電気抵抗が低い材料(例えばPtまたはIr等)が用いられ、熱伝導率性も高い(Ptは71.6W/mK、Irは147W/mK)。よって、特許文献1の技術では、赤外線検出素子の熱が下部電極配線または上部電極配線を介して外部に伝熱されてしまう。よって、温度に基づいて焦電体材料の分極量が変化する検出原理の焦電型赤外線検出器として高い特性を担保できない。
特許文献1の技術の変形として、下部電極の下面に下部電極配線層を接続し、上部電極の上面に上部電極配線したスタック型は、強誘電体メモリに用いられている。
特許文献2は、特許文献1とは異なるプレーナー型のキャパシターを開示している。特許文献2は、単結晶半導体基板(4)上に形成される結晶性を有するAl薄膜(6)上に下部金属薄膜である下部プラチナ膜(8)を形成し、下部金属薄膜(8)の上面の一部分上のみに強誘電体薄膜(10)を積層し、強誘電体薄膜(8)の上面の一部分上のみに上部金属薄膜である上部プラチナ膜(12)を積層している(図2,3及び請求項1)。下部金属薄膜(8)及び上部金属薄膜(12)の上面には、絶縁膜(14)に覆われない露出部に、金属薄膜にて形成される配線(16)が接続されている(段落0033)。
しかし、特許文献2は下部金属薄膜(8)、強誘電体薄膜(10)及び上部金属薄膜(129の結晶性に専ら関心があり、配線(16)からの熱の散逸については無関心である。
本発明の幾つかの態様によれば、温度に基づいて焦電体材料の分極量が変化する検出原理に鑑み、焦電型検出素子から配線を辿って熱が散逸することを抑制して高い検出特性を実現できる焦電型検出器、焦電型検出装置及び電子機器を提供することができる。
本発明の一態様に係る焦電型検出器は、
焦電型検出素子と、
第1面と、前記第1面に対向する第2面とを含み、前記第2面が空洞部に臨んで配置され、前記第1面に前記焦電型検出素子を搭載した支持部材と、
前記支持部材の一部を支持する支持部と、
を有し、
前記焦電型検出素子は、
前記支持部材に搭載される第1電極と、第2電極と、前記第1,第2電極間に配置された焦電材料とを含み、前記第1電極が、前記焦電材料が積層形成される第1領域と、前記第1領域より延在形成された第2領域とを含み、温度に基づいて分極量が変化するキャパシターと、
前記キャパシターの表面を覆う層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に形成され、前記第1電極の前記第2領域に通ずる第1コンタクトホールと、
前記第1コンタクトホールに埋め込まれた第1プラグと、
前記層間絶縁膜に形成され、前記第2電極に通ずる第2コンタクトホールと、
前記第2コンタクトホールに埋め込まれた第2プラグと、
前記層間絶縁膜及び前記支持部材の上に形成され、前記第1プラグに接続される第1電極配線層と、
前記層間絶縁膜及び前記支持部材の上に形成され、前記第2プラグに接続される第2電極配線層と、
を含み、
前記第2電極配線層を形成する材料の熱伝導率は、前記第2プラグと接続される部分の前記第2電極を形成する材料の熱伝導率よりも低いことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、プレーナー型キャパシター構造とすることで、スタック型キャパシター構造の問題を解消してセンサー特性を向上させることができる。また、焦電材料と第2プラグ及び第2電極を介して接続される第2電極配線層は、キャパシターの駆動に不可欠ではあるが、その第2電極配線は同時に放熱路としても機能する。本発明の一態様では、第2電極配線層の熱伝導率を第2電極よりも下げることで、焦電体から熱が放熱されることを抑制でき、赤外線検出素子の熱分離性が向上する。
本発明の一態様では、前記第1電極配線層を形成する材料の熱伝導率は、前記第1プラグと接続される部分の前記第1電極を形成する材料の熱伝導率よりも低くすることができる。
焦電材料と第1プラグ及び第1電極を介して接続される第1電極配線層もまた、キャパシターの駆動に不可欠ではあるが、その第1電極配線は同時に放熱路としても機能する。本発明の一態様では、第1電極配線層の熱伝導率を第1電極よりも下げることで、焦電体から熱が放熱されることを抑制でき、赤外線検出素子の熱分離性が向上する。
本発明の一態様では、前記第1電極配線層及び前記第2電極配線層の少なくとも一方は、窒化チタンまたはチタン・アルミ・ナイトライドにて形成することができる。
窒化チタンまたはチタン・アルミ・ナイトライドは、第1,第2電極材料として好適な金属例えばプラチナやイリジウムの熱伝導率よりも充分に小さい。
本発明の一態様では、前記第2電極の熱コンダクタンスを前記第1電極の熱コンダクタンスよりも大きくすることができる。第1電極は支持部材と直接接触して固体伝導により熱拡散するので、第1電極の熱コンダクタンスは低いほうが良い。一方、第2電極は支持部材等と直接接触しないので、第2電極の熱コンダクタンスは第1電極よりも大きくしても構わない。この場合でも、第2電極配線層の熱伝導率を低くしておけば、第2電極側からの熱の散逸を抑制できる。
本発明の一態様では、前記焦電型検出素子は光入射方向にて前記第2電極及び前記第2電極配線層よりも上流側となる領域に形成された光吸収部材をさらに含むことができる。
このように、キャパシターよりも光入射方向の上流側に光吸収部材が配置されると、光照射による熱は、光吸収部材から焦電体に伝達される。この熱伝達経路に第2電極が存在するため、その第2電極に接続される第2電極配線層からの放熱を抑制することは、光吸収部材から焦電材料への伝熱効率を高めることに寄与する。よって、第2電極配線層の熱伝達率を第2電極よりも低くするだけでも、赤外線検出素子の熱分離性を向上させることができる。
本発明の一態様では、前記光吸収部材は、前記光入射方向から見た平面視で前記第2電極の全面を覆って形成され、前記第2電極は、前記焦電材料が前記第1電極と接する面と対向する面の全面を覆って形成することができる。
こうすると、第2電極の全面を光反射面とすることができ、光吸収部材を透過した光を光吸収部材に戻すことで、光吸収効率が改善される。
本発明の一態様では、前記光吸収部材は、平面視で、前記第1電極の前記第1領域と、前記第1電極の前記第2領域の少なくとも一部と、それぞれ重なる位置に形成することができる。
こうすると、光吸収部材の体積が増大して光吸収量が増大することに加え、第1電極も光反射面とすることができ、光吸収部材を透過した光を光吸収部材に戻すことで、光吸収効率がさらに改善される。
本発明の一態様では、前記第1電極配線層は、前記第1プラグに接続される第1接続部と、前記第1接続部から引き出され、前記第1接続部よりも細幅の第1引き出し配線部と、を含み、前記第2電極配線層は、前記第2プラグに接続される第2接続部と、前記第2接続部から引き出され、前記第2接続部よりも細幅の第2引き出し配線部と、を含み、前記第2引き出し配線部の幅を、前記第2コンタクトホールの横断面の最大長さよりも狭くすることができる。
こうすると、第2引き出し配線部の熱抵抗が増大して焦電型検出素子の熱分離特性が向上する上、第2引き出し配線部での光反射量を低減して第2電極での光反射量を多くすることもでき、光吸収効率が高まる。
本発明の一態様では、前記第1引き出し配線部の幅を、前記第1コンタクトホールの横断面の最大長さよりも狭くすることができる。
こうすると、第1引き出し配線部の熱抵抗が増大して焦電型検出素子の熱分離特性が向上する上、第1引き出し配線部での光反射量を低減して第1電極での光反射量を多くすることもでき、光吸収効率が高まる。
本発明の一態様では、前記層間絶縁膜と前記キャパシターとの間に、還元ガスバリア膜をさらに有することができる。
キャパシターは製造時または実使用時に還元ガスによる酸素欠損が生ずると特性が劣化するので、還元ガスバリア層によりキャパシターを保護できる。
本発明の他の態様に係る焦電型検出装置は、上述した焦電型検出器が二軸方向に沿って二次元配置して構成される。この焦電型検出装置は、各セルの焦電型検出器にて検出感度が高められるので、明瞭な光(温度)分布画像を提供できる。
本発明のさらに他の態様に係る電子機器は、上述した焦電型検出器または焦電型検出装置を有し、1セル分または複数セルの焦電型検出器をセンサーとして用いることで、光(温度)分布画像を出力するサーモグラフィー、車載用ナイトビジョンまたは監視カメラの他、物体の物理情報の解析(測定)を行う物体の解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などに最適である。また、焦電型検出器または焦電型検出装置、あるいはそれらを有する電子機器は、例えば、供給する熱量と流体が奪う熱量とが均衡する条件下にて流体の流量を検出するフローセンサーなどにも適用できる。このフローセンサーに設けられる熱伝対などに代えて本発明の焦電型検出器または焦電型検出装置を設けることができ、光以外を検出対象とすることができる。
本発明の実施形態に係るプレーナー型キャパシターの概略断面図である。 本発明の実施形態に係る焦電型赤外線検出装置の概略平面図である。 本発明の実施形態に係る焦電型赤外線検出装置の1セル分の焦電型検出器の概略断面図である。 犠牲層上に形成される支持部材及び赤外線検出素子を示す製造工程の概略断面図である。 配線プラグ付近の還元ガスバリア性を強化した変形例を示す概略断面図である。 焦電型赤外線検出器のキャパシター構造を説明するための概略断面図である。 赤外線吸収膜の配置領域を変更した焦電型赤外線検出器の概略断面図である。 焦電型検出器または焦電型検出装置を含む電子機器のブロック図である。 図9(A)、図9(B)は焦電型検出器を二次元配置した焦電型検出装置の構成例を示す図である。 比較例であるスタック型キャパシターの一例を示す断面図である。 比較例であるスタック型キャパシターの他の一例を示す断面図である。
1.焦電型赤外線検出装置
図1に示す支持部材210及びそれに搭載される焦電型検出素子220を各セルがそれぞれ備えた複数セルの焦電型赤外線検出器200が、二軸方向例えば直交二軸方向に配列された焦電型赤外線検出装置(広義には焦電型検出装置)を、図2に示す。なお、1セル分のみの焦電型赤外線検出器にて焦電型赤外線検出装置が構成されても良い。図2において、基部(固定部ともいう)100から複数のポスト104が立設され、例えば2本のポスト(支持部)104に支持された1セル分の焦電型赤外線検出器200が、直交二軸方向に配列されている。1セル分の焦電型赤外線検出器200が占める領域は、例えば30×30μmである。
図2に示すように、焦電型赤外線検出器200は、2本のポスト(支持部)104に連結された支持部材(メンブレン)210と、赤外線検出素子(広義には焦電型検出素子)220と、を含んでいる。1セル分の焦電型赤外線検出素子220が占める領域は、例えば10×10μmである。
1セル分の焦電型赤外線検出器200は、2本のポスト104と接続される以外は非接触とされ、焦電型赤外線検出器200の下方には空洞部102(図2参照)が形成され、平面視で焦電型赤外線検出器200の周囲には、空洞部102に連通する開口部102Aが配置される。これにより、1セル分の焦電型赤外線検出器200は、基部100や他のセルの焦電型赤外線検出器200から熱的に分離されている。
支持部材210は、赤外線検出素子220を搭載して支持する搭載部210Aと、搭載部210Aに連結された2本のアーム210Bとを有し、2本のアーム210Bの自由端部がポスト104に連結されている。2本のアーム210Bは、赤外線検出素子220を熱分離するために、細幅でかつ冗長に延在形成される。
図2は、上部電極に接続される配線層より上方の部材を省略した平面図であり、図2には赤外線検出素子220に接続された第1電極(下部電極)配線層222及び第2電極(上部電極)配線層224が示されている。第1,第2電極配線層222,224の各々は、アーム210Bに沿って延在され、ポスト104を介して基部100内の回路に接続される。第1,第2電極配線層222,224も、赤外線検出素子220を熱分離するために、細幅でかつ冗長に延在形成される。
2.プレーナー型とスタック型
2.1.プレーナー型
図1は、本実施形態の焦電型赤外線検出器に採用されたプレーナー型のキャパシター2340を示している。比較例として、図10及び図11にスタック型のキャパシターを示す。
図1において、焦電型赤外線検出器は、焦電型赤外線検出素子220と、第1面211Aと、第1面211Aに対向する第2面211Bとを含み、第1面211Aに焦電型赤外線検出素子220を搭載した支持部材210と、を有している。支持部材210の第2面211Bが空洞部102に臨んで配置され、支持部材210の一部が図2に示すポスト(支持部)104に支持されている。
焦電型赤外線検出素子220は、第1電極(下部電極)234と、第2電極(上部電極)236と、第1,第2電極234,236間に配置された焦電材料232を含み、温度に基づいて分極量が変化するキャパシター230を有する。第1電極234は、焦電材料232が積層形成される第1領域233Aと、第1領域233Aより延在形成された第2領域233Bとを含む。キャパシター230は、第1電極234が支持部材210に搭載されることで支持されている。
キャパシター230の表面を覆って層間絶縁膜260が形成されている。層間絶縁膜260には、第1電極234の第2領域233Bに通ずる第1コンタクトホール252と、第2電極236に通ずる第2コンタクトホール254とが形成されている。
第1コンタクトホール252には第1プラグ226が埋め込み形成される。層間絶縁層260及び支持部材210の上には、第1プラグ226に接続される第1電極配線層222が形成されている。同様に、第2コンタクトホール254には第2プラグ228が埋め込み形成される。層間絶縁層260及び支持部材210上には、第2プラグ228に接続される第2電極配線層224が形成されている。
2.2.スタック型
本実施形態のプレーナー型と対比されるスタック型キャパシターを図10及び図11に示す。図10及び図11に示すスタック型キャパシターは、第1電極(下部電極)234に対する配線構造が、図1に示すプレーナー型キャパシターと異なる。
図10では、支持部材210の第1面211Aに開口するコンタクトホール600が形成され、第1電極配線層602が支持部材210の層内に形成され、コンタクトホール600に充填されたプラグ604により第1電極234と第1電極配線層602とが接続される。
この場合、支持部材210の下面に形成されるエッチング保護膜606(図1では省略している)上に第1電極配線層602を形成し、次いで支持部材210を積層する。エッチング保護膜606は、詳細を後述する通り、犠牲層上に積層される支持部材210等を形成した後に犠牲層を等方性エッチングして空洞部102を形成する際に、支持部材210をエッチャントから保護するための膜である。
ここで、エッチング保護膜606上に第1電極配線層602を形成した後に、第1電極配線層602はパターニングのためにエッチンングされる。その際、図10のB部拡大図に示すように、第1電極配線層602と共にエッチング保護膜606もエッチングされて、膜厚が薄い部分が生ずる。エッチング保護膜606が薄くなると、保護膜性能の低下を招く。薄膜現象を加味してエッチング保護膜606を予め厚く形成しておくと、赤外線検出素子220からの熱がエッチング保護膜606を介して拡散しやすくなり、赤外線検出素子220の熱分離特性が劣化してしまう。
一方、図11に示すスタック型キャパシターでは、支持部材210の最上層に、第1電極234と接触する第1電極配線層608が形成される。その際、支持部材210の全面上に第1電極配線層608を形成した後、第1電極配線層608をパターニングする。この状態だと段差が生ずるので、さらに支持部材210を追加積層した後に、第1電極配線層608と面一になるように支持部材210の表層を平坦化する。その後、第1電極234、焦電体232及び第2電極236を積層した後にキャパシター230の形状になるようにパターニングされる。そのキャパシター230のパターニングの際に、図11のC部拡大図に示すように、第1電極234の直下領域以外の領域の第1電極配線層608がエッチングされて薄膜化され、あるいは断線が生じてしまう。この現象を加味して、第1電極配線層608を厚く形成したとしても、エッチングによって第1電極配線層608の膜厚がばらつき、熱分離特性もばらつくので、センサー特性を劣化させる。
2.3.熱分離された焦電型検出器の課題とその対策
以上の通り、熱分離された赤外線検出素子のセンサー特性上の観点から言えば、プレーナー型キャパシターはスタック型キャパシターよりも優れている。ただし、プレーナー型キャパシター及びスタック型キャパシターの共通の課題として、第1,第2電極配線層が熱伝導路として機能してしまう課題がある。
つまり、焦電型キャパシター230を駆動するには第1,第2電極配線層222,224は不可欠である一方で、キャパシター230の熱が第1,第2電極配線層222,224から放熱されてしまう。
そこで、本実施形態では、第1,第2電極配線層222,224を形成する材料の熱伝導率を、第1,第2プラグ226,228と接続される部分の第1,第2電極234,236を形成する材料(単層であればその単層電極材料であり、複数層であれば最上層の電極材料)の熱伝導率よりも低くしている。
第1,第2電極234,236の材料の熱伝導率は、例えばプラチナ(Pt)は71.6W/mKであり、イリジウム(Ir)は147W/mKである。一方、一般の配線材料であるアルミニウム(Al)は237W/mK、銅(Cu)は403W/mKと、熱伝導率が第1,第2電極234,236高くなるのが通常である。
本実施形態では、第1,第2電極234,236の電極材料として好適な金属材料、例えばプラチナ(Pt)やイリジウム(Ir)よりも熱伝導率の低い材料として、例えば窒化チタン(TiN)またはチタン・アルミ・ナイトライド(TiAlN)により、第1,第2電極配線層222,224を形成している。例えば窒化チタン(TiN)の熱伝導率は29W/mKであり、チタン・アルミ・ナイトライド(TiAlN)の熱伝導率は5〜10W/mKであり、第1,第2電極234,236の電極材料として好適な金属材料である例えばプラチナ(Pt)やイリジウム(Ir)よりも熱伝導率が充分に低い。
こうすると、キャパシター230の駆動に不可欠な第1,第2電極配線222,224を介して、焦電体232の熱が放熱されることを抑制でき、赤外線検出素子220の熱分離性が向上する。
なお、後述する通り、キャパシター230の上方には赤外線吸収体が配置され、赤外線照射による熱は、赤外線吸収体から焦電体232に伝達される。この熱伝達経路に第2電極(上部電極)236が存在するため、その第2電極236に接続される第2電極配線層224からの放熱を抑制することは、赤外線吸収体から焦電体232への伝熱効率を高めることに寄与する。よって、第2電極配線層224の熱伝達率を第2電極236よりも低くするだけでも、赤外線検出素子220の熱分離性を向上させることができる。
特に、後述する通り、赤外線吸収体から焦電体232への伝熱効率を高めるために、第2電極(上部電極)236の熱コンダクタンスを第1電極(下部電極)234の熱コンダクタンスよりも大きくする場合には、第2電極配線層224の熱伝達率を第2電極236よりも低くするだけでも、効果的に赤外線検出素子220の熱分離性を向上させることができる。ただし、加えて第1電極配線層222の熱伝達率を第1電極234よりも低くすることで、焦電体232の熱が第1電極234及び第1電極配線層222を介して放熱されることがさらに低減されるので、赤外線検出素子220は熱分離性がより向上する。
ここで、第1電極配線層222は、図1及び図2に示すように、第1プラグ226に接続される第1接続部222Aと、第1接続部222Aから引き出され、第1接続部222Aよりも細幅の第1引き出し配線部222Bとを含むことができる。同様に、第2電極配線層224は、第2プラグ228に接続される第2接続部224Aと、第2接続部224Aから引き出され、第2接続部224Aよりも細幅の第2引き出し配線部224Bとを含むことができる。
そして、本実施形態では、図2に示すように、第2引き出し配線部224Bの幅W22は、第2コンタクトホール254の横断面の最大長さW21よりも狭くしている。第2コンタクトホール254の横断面の最大長さW21とは、コンタクトホールの外形が矩形であれば対角線長さであり、円形であれば直径である。本実施形態では、特許文献2とは異なり、第2コンタクトホール254内に赤外線吸収膜を配置する必要は無いので、第2コンタクトホール254の大きさを設計上で最小値に設定できる。第2引き出し配線部224Bの幅W22は第2コンタクトホール254の横断面での最大長さW21よりも狭いので、断面積に比例させて熱伝達特性を悪化させることができる。これによっても赤外線検出素子220の熱分離性を向上させることができる。
上記構成に追加して、図2に示すように、第1引き出し配線部222Bの幅W12は、第1コンタクトホール252の横断面の最大長さW11よりも狭くすることができる。こうすると、第1引き出し配線部222Bの熱伝達特性も悪化するので、赤外線検出素子220の熱分離性をさらに向上させることができる。
第1,第2引き出し配線部222B,224Bの幅W12,W22を狭くする他の技術的意義は、赤外線吸収膜での吸収効率を向上させる点にあるが、この点については後述する。
3.焦電型赤外線検出器の概要
図3は、図12に示す焦電型赤外線検出器200の全体を示す断面図である。また、図4は、製造工程途中の焦電型赤外線検出器200の部分断面図である。図4では、図3の空洞部102が犠牲層150により埋め込まれている。この犠牲層150は、支持部材210及び焦電型赤外線検出素子220の形成工程前から形成工程後まで存在しており、焦電型赤外線検出素子220の形成工程後に等方性エッチングにより除去されるものである。
図3に示すように、基部100は、基板例えばシリコン基板110と、シリコン基板110上の絶縁膜(例えばSiO)にて形成されるスペーサー層120とを含んでいる。ポスト(支持部)104は、スペーサー層120をエッチングすることで形成され、例えばSiOにて形成されている。ポスト(支持部)104には、第1,第2電極配線層222,224の一方に接続されるプラグ106を配置することができる。このプラグ106は、シリコン基板110上に設けられる行選択回路(行ドライバー)か、または列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路に接続される。空洞部102は、スペーサー層120をエッチングすることで、ポスト104と同時に形成される。図2に示す開口部102Aは、支持部材210をパターンエッチングすることで形成される。
支持部材210の第1面211A上に搭載される赤外線検出素子220は、キャパシター230を含んでいる。キャパシター230は、焦電体232と、焦電体232の下面に接続される第1電極(下部電極)234と、焦電体232の上面に接続される第2電極(上部電極)236とを含んでいる。第1電極234は、支持部材210の第1層部材(例えばSiO支持層)212(図4参照)との密着性を高める密着層234Dを含むことができる。
キャパシター230は、キャパシター230の形成後の工程で還元ガス(水素、水蒸気、OH基、メチル基など)がキャパシター230に侵入することを抑制する還元ガスバリア層240に覆われている。キャパシター230の焦電体(例えばPZT等)232は酸化物であり、酸化物が還元されると酸素欠損を生じて、焦電効果が損なわれるからである。
還元ガスバリア層240は、図4に示すように、第1バリア層242と第2バリア層244とを含む。第1バリア層242は、例えば酸化アルミニウムAlをスパッタ法により成膜して形成することができる。スパッタ法では還元ガスが用いられないので、キャパシター230が還元されることはない。第2水素バリア層244は、例えば酸化アルミニウムAlを例えば原子層化学気相成長(ALCVD:Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法により成膜して形成すことができる。通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法は還元ガスを用いるが、第1層バリア層242によりキャパシター230は還元ガスから隔離される。
ここで、還元ガスバリア層240のトータル膜厚は50〜70nm、例えば60nmとする。このとき、CVD法で形成される第1バリア層242の膜厚は原子層化学気相成長(ALCVD)法により形成される第2バリア層244よりも厚く、薄くても35〜65nm例えば40nmとなる。これに対して、原子層化学気相成長(ALCVD)法により形成される第2バリア層244の膜厚は薄くでき、例えば酸化アルミニウムAlを5〜30nm例えば20nmで成膜して形成される。原子層化学気相成長(ALCVD)法は、スパッタ法等と比較して、優れた埋め込み特性を有するため、微細化に対応することが可能となり、第1,第2バリア層242,244にて還元ガスバリア性を高めることができる。また、スパッタ法で成膜される第1バリア層242は第2バリア層244に比べて緻密ではないが、それが効を奏して伝熱率を下げる要因となるので、キャパシター230からの熱の散逸を防止できる。
還元ガスバリア層240上には層間絶縁膜250が形成されている。一般に、層間絶縁膜250の原料ガス(TEOS)が化学反応する際には、水素ガスや水蒸気等の還元ガスが発生する。キャパシター230の周囲に設けた還元ガスバリア層240は、この層間絶縁膜250の形成中に発生する還元ガスからキャパシター230を保護するものである。
層間絶縁膜250上に、図1及び図2にも示した第1電極(下部電極)配線層222と第2電極(上部電極)配線層224とが配置される。層間絶縁膜250には、電極配線形成前に予め、第1コンタクトホール252と第2コンタクトホール254が形成される。その際、還元ガスバリア層240にも同様にコンタクトホールが形成される。第1コンタクトホール252に埋め込まれた第1プラグ226により、第1電極(下部電極)234と第1電極配線層222とが導通される。同様に第2コンタクトホール254に埋め込まれた第2プラグ228により、第2電極(上部電極)236と第2電極配線層224とが導通される。
ここで、層間絶縁膜250が存在しないと、第1電極(下部電極)配線層222と第2電極(上部電極)配線層224をパターンエッチングする際に、その下層の還元ガスバリア層240の第2バリア層244がエッチングされて、バリア性が低下してしまう。層間絶縁膜250は、還元ガスバリア層240のバリア性を担保する上で必要である。
ここで、層間絶縁膜250は水素含有率が低いことが好ましい。そこで、層間絶縁膜250はアニーリングにより脱ガス処理される。こうして、層間絶縁膜250の水素含有率は、第1,第2電極配線層222,224を覆うパッシベーション膜260よりも低くされる。
なお、キャパシター230の天面の還元ガスバリア層240は、層間絶縁膜250の形成時にはコンタクトホールがなく閉じているので、層間絶縁膜250の形成中の還元ガスがキャパシター230に侵入することはない。しかし、還元ガスバリア層240にコンタクトホールが形成された後は、バリア性が劣化する。これを防止する一例として、例えば図4に示すように第1,第2プラグ226,228を複数層228A,228B(図4では第2プラグ228のみ図示)とし、その第1層228Aにバリアメタル層を採用している。第1層228Aのバリアメタルにより還元ガスバリア性が担保される。第1層228Aのバリアメタルは、チタンTiのように拡散性の高いものは好ましくなく、拡散性が少なくかつ還元ガスバリア性の高いチタン・アルミ・ナイトライドTiAlNを採用できる。なお、コンタクトホールからの還元ガスの侵入を絶つ方法として、図5に示すように、少なくとも第2プラグ228を包囲して還元性ガスバリア層290を増設しても良い。この還元性ガスバリア層290は、第2プラグ228のバリアメタル228Aを併用しても良いし、バリアメタル228Aを排除しても良い。なお、還元性ガスバリア層290は、第1プラグ226を被覆しても良い。
第1,第2電極配線層222,224を覆って、SiOまたはSiNのパッシベーション膜260が設けられている。少なくともキャパシター230の上方には、パッシベーション膜260上に赤外線吸収体(広義には光吸収部材)270が設けられている。パッシベーション膜260もSiOまたはSiNにて形成されるが、赤外線吸収体270のパターンエッチングの必要上、下層のパッシベーション膜260とはエッチング選択比が大きい異種材料とすることが好ましい。この赤外線吸収体270に赤外線が図3の矢印方向から入射され、赤外線吸収体270は吸収した赤外線量に応じて発熱する。その熱が焦電体232に伝熱されることで、キャパシター230の自発分極量が熱によって変化し、自発分極による電荷を検出することで赤外線を検出できる。
パッシベーション膜260や赤外線吸収体270のCVD形成時に還元ガスが発生しても、キャパシター230は還元ガスバリア層240及び第1,第2プラグ226,228中のバリアメタルにより保護される。
この赤外線吸収体270を含む赤外線検出器200の外表面を覆って、還元ガスバリア層280が設けられている。この還元ガスバリア層280は、赤外線吸収体270に入射する赤外線(波長帯域は8〜14μm)の透過率を高くするために、例えば還元ガスバリア層240よりも薄肉に形成される必要がある。このために、原子の大きさレベルで膜厚が調整できる原子層化学気相成長(ALCVD)法が採用される。通常のCVD法では厚すぎて赤外線透過率が悪化してしまうからである。本実施形態では、例えば酸化アルミニウムAlを10〜50nm、例えば20nmの厚さで成膜して形成される。上述の通り、原子層化学気相成長(ALCVD)法は、スパッタ法等と比較して、優れた埋め込み特性を有するため、微細化に対応して原子レベルで緻密な膜を形成することが可能となり、薄くても還元ガスバリア性を高めることができる。
また、基部100側では、空洞部102を規定する壁部、つまり空洞部102を規定する底壁110Aと側壁104Aには、焦電型赤外線検出器200を製造する過程で空洞部102に埋め込まれていた犠牲層150(図4参照)を等方性エッチングする時のエッチングストップ膜130が形成されている。同様に、支持部材210の下面(犠牲層150の上面)にもエッチングストップ膜140が形成されている。本実施形態では、エッチングストップ膜130,140と同一材料により還元ガスバリア膜280を形成している。つまり、エッチングストップ膜130,140も還元ガスバリア性を有することになる。このエッチングストップ膜130,140も、酸化アルミニウムAlが原子層化学気相成長(ALCVD)法により膜厚20〜50nmで成膜されて形成される。
エッチングストップ膜130が還元ガスバリア性を有することで、犠牲層150をフッ酸により還元雰囲気で等方性エッチングしたとき、支持部材210を透過してキャパシター230に還元ガスが侵入することを抑制できる。また、基部100を覆うエッチングストップ膜140が還元ガスバリア性を有することで、基部100内に配置される回路のトランジスタや配線が還元されて劣化することを抑制できる。
4.支持部材の構造
図3に示すように、下層から上層に向う第1方向D1に沿って、基部100上に、支持部104、支持部材210及び焦電型赤外線検出素子220が積層されている。支持部材210は、第1面211A側に密着層234Dを介して焦電型赤外線検出素子220を搭載し、第2面211B側は空洞部102に面している。なお、密着層234Dは、焦電型赤外線検出素子220の一部(最下層)である。
支持部材210は、図5に示すように、少なくとも密着層234Dと接する第1面側の第1層部材212を絶縁層例えばSiO支持層としている。このSiO支持層(第1層部材)212は、図3に示す第1方向D1とは逆方向を第2方向D2としたとき、SiO支持層(第1層部材)212よりも第2方向D2に位置する他のSiO層である例えばポスト(支持部)104より水素含有率が小さい。これはCVD膜成膜時にO流量を通常の層間絶縁膜CVD時よりも多くして水素や水分の膜中含有量を低減することにより得られる。こうして、SiO支持層(第1層部材)212は、水素含有率が他のSiO層である例えばポスト(支持部)104よりも低い低水分膜となる。
密着層234Dと接する支持部材210の最上層のSiO支持層(第1層部材)212の含水量が少ないと、焦電体232の形成後に熱処理により高温に晒されても、SiO支持層(第1層部材)212自体から還元ガス(水素、水蒸気)が発生することを抑制できる。こうして、キャパシター230中の焦電体232に対して、そのキャパシター230の直下の下方(支持部材210側)から侵入する還元種を抑制することができ、焦電体232が酸素欠損することを抑制できる。
SiO支持層(第1層部材)212よりも第2方向D2に位置する他のSiO層である例えばポスト(支持部)104の水分も還元種となり得るが、キャパシター230から離れているので、SiO支持層(第1層部材)212よりも影響度は少ない。ただし、ポスト(支持部)104の水分も還元種となり得るので、SiO支持層(第1層部材)212よりも第2方向D2に位置する支持部材210中に、還元ガスバリア性のある膜を形成しておくことが好ましい。この点も含め、支持部材210のより具体的構造について以下に説明する。
支持部材210は、図3に示す第2方向D2に沿って、図4に示すように、上述したSiO支持層(第1層部材)212と、中間層(第2層部材)214と、他のSiO層(第3層部材)216とを積層して形成することができる。
つまり、本実施形態では、単一材料では反りが生じてしまう支持部材210を、複数の異種材料を積層することで形成している。具体的には、第1,第3層部材212,216を酸化膜(SiO)とし、中間層である第2層部材214を窒化膜(例えばSi)で形成することができる。
例えば第1層部材212及び第3層部材216に生ずる例えば圧縮残留応力と、第2層部材214に生ずる引張残留応力とを互いに相殺する方向に作用させる。これにより、支持部材210全体としての残留応力をさらに低減するか消滅させることができる。特に、第2層部材214の窒化膜が有する強い残留応力を、上下2層の酸化膜である第1,第3層部材212,216の逆向きの残留応力にて相殺するように作用させて、支持部材210に反りを生じさせる応力を低減できる。支持部材210を、密着層234Dと接する酸化膜(SiO)と、窒化膜(例えばSi)との二層で形成しても、反りを抑制する効果がある。なお、支持部材210を、例えば特願2010−109035号に開示された方法により形成すれば反りの発生を防止できるので、支持部材210は必ずしも積層構造でなくてもよく、SiO層の単層にて形成しても良い。
ここで、第2層部材214を形成する窒化膜(例えばSi)は、還元ガスバリア性を有する。これにより、キャパシター230の焦電体232に支持部材210側から侵入する還元性阻害要因をブロックする機能を、支持部材210自体に持たせることができる。このため、第2層部材214よりも、図3の第2方向D2に位置する第3層部材216が、SiO支持層(第1層部材)212よりも含水量が多い他のSiO層であっても、第3層部材216中の還元種(水素、水蒸気)が焦電体232に侵入することを、還元ガスバリア性を有する第2層部材214により抑制することができる。
5.キャパシターの構造
5.1.熱コンダクタンス
図6は、本実施形態の要部を説明するための概略断面図である。上述した通り、キャパシター230は、第1電極(下部電極)234と第2電極(上部電極)236との間に焦電体232を含む。このキャパシター230は、入射された赤外線の光量(温度)によって焦電体232の自発分極量が変化すること(焦電効果またはパイロ電子効果)を利用して赤外線を検出できる。本実施形態では、入射された赤外線が赤外線吸収体270にて吸収されて赤外線吸収体270が発熱し、赤外線吸収体270と焦電体232との間にある固体熱伝導路を介して、赤外線吸収体270の発熱が伝達される。
本実施形態のキャパシター230では、支持部材210と接する第1電極(下部電極)234の熱コンダクタンスG1を、第2電極(上部電極)236の熱コンダクタンスG2よりも小さくしている。こうすると、キャパシター230は、赤外線に起因した熱が第2電極(上部電極)236を介して焦電体232に伝達されやすく、しかも、焦電体232の熱が第1電極(下部電極)234を介して支持部材210に逃げ難くなり、赤外線検出素子220の信号感度が向上する。しかも、第2電極236に電気的に接続される第2電極配線層224の熱伝導率も上述のように低いので、焦電型赤外線検出器200の熱分離特性は向上する。
上述した特性を有するキャパシター230の構造を、図6を参照してさらに詳細に説明する。先ず、第1電極(下部電極)234の厚さT1は、第2電極(上部電極)236よりも厚い(T1>T2)である。第1電極(下部電極)234の熱伝導率をλ1とすると、第1電極(下部電極)234の熱コンダクタンスG1は、G1=λ1/T1となる。第2電極(上部電極)236の熱伝導率をλ2としたとき、第2電極(上部電極)236の熱コンダクタンスG2は、G2=λ2/T2となる。
熱コンダクタンスの関係をG1<G2とするためには、例えば第1,第2電極234,236の材質を例えば共に白金PtまたはイリジウムIr等の同一の単一材料とすれば、λ1=λ2となり、図6からT1>T2であるのでG1<G2の関係を満足できる。
そこで先ず、第1,第2電極234,236の各々を、それぞれ同一材料にて形成することについて考察する。キャパシター230は、焦電体232の結晶方向を揃えるために、焦電体232が形成される下層の第1電極234との界面の結晶格子レベルを整合させる必要がある。つまり、第1電極234は結晶のシード層としての機能を有するが、白金Ptは自己配向性が強いので、第1電極234として好ましい。イリジウムIrもシード層材料として好適である。
また、第2電極(上部電極)236は、焦電体232の結晶性を崩さずに、第1電極234、焦電体232から第2電極236に至るまで結晶配向が連続的につながることが好ましい。そのため、第2電極236は第1電極234と同一材料にて形成することが好ましい。
このように、第2電極236を第1電極234と同一材料例えばPtまたはIr等の金属にて形成すると、第2電極236の上面を反射面とすることができる。この場合、図6に示すように、赤外線吸収体270の頂面から第2電極236の頂面までの距離Lをλ/4(λは赤外線の検出波長)とすると良い。こうすると、赤外線吸収体270の頂面と第2電極236の頂面との間で、検出波長λの赤外線が多重反射されるので、検出波長λの赤外線を赤外線吸収体270にて効率よく吸収できる。
5.2.電極多層構造
次に、図6に示す本実施形態のキャパシター230の構造について説明する。図6に示すキャパシター230は、焦電体232、第1電極234及び第2電極236の結晶配向は、その優先配向方位が例えば(111)面方位で揃えられている。(111)面方位に優先配向されることで、他の面方位に(111)配向の配向率が例えば90%以上に制御される。焦電係数を大きくするには(111)配向よりもむしろ(100)配向などが好ましいが、印加電界方向に対して分極を制御しやくするために(111)配向としている。ただし、優先配向方位はこれに限定されない。
第1電極234は、支持部材210から順に、第1電極234を例えば(111)面に優先配向するように配向制御する配向制御層(例えばIr)234Aと、第1還元ガスバリア層(例えばIrOx)234Bと、優先配向のシード層(例えばPt)234Cとを含むことができる。
第2電極236は、焦電体232側から順に、焦電体232と結晶配向が整合する配向整合層(例えばPt)236Aと、第2還元ガスバリア層(例えばIrOx)236Bと、第2電極236に接続される第2プラグ228との接合面を低抵抗化する低抵抗化層(例えばIr)236Cとを含むことができる。
本実施形態にてキャパシター230の第1,第2電極234,236を多層構造とした理由は、熱容量の小さい赤外線検出素子220でありながら、能力を低めずに低ダメージで加工して界面での結晶格子レベルを整合させ、しかも、キャパシター230の周囲が製造時または使用時に還元雰囲気となっても焦電体(酸化物)232を還元ガスから隔離することにある。
焦電体232は例えばPZT(Pb(Zr,Ti)Oの総称:チタン酸ジルコン酸鉛)またはPZTN(PZTにNbを添加したものの総称)等を例えば(111)方位で優先配向させて結晶成長させている。PZTNを用いると、薄膜になっても還元されにくく酸化欠損を抑制できる点で好ましい。焦電体232を配向結晶化させるために、焦電体232の下層の第1電極234の形成段階から配向結晶化させている。
このために、下部電極234には配向制御層として機能するIr層234Aがスパッタ法で形成される。なお、図6に示すように、配向制御層234Aの下に密着層234Dとしてたとえばチタン・アルミ・ナイトライド(TiAlN)層または窒化チタン(TiN)層を形成すると良い。支持部材210の最上層であるSiO支持層(第1層部材9212のSiOとの密着性を確保できるからである。この種の密着層234Dとしてチタン(Ti)も適用可能であるが、チタン(Ti)のように拡散性の高いものは好ましくなく、拡散性が少なくかつ還元ガスバリア性の高いチタン・アルミ・ナイトライド(TiAlN)または窒化チタン(TiN)の方が好ましい。
また、密着層234Dの下層に位置する支持部材210の第1層部材212をSiOで形成するとき、該SiO層の前記第1電極と接する密着層側の表面ラフネスRaは30nm未満とすることが好ましい。こうすると、支持部材210がキャパシター230を搭載する表面の平坦性を確保できるからである。もし、配向制御層234Aが形成される面が粗面であれば、結晶成長中に粗面の凹凸が反映されてしまうから好ましくない。
この密着層234Dは、還元ガスバリア性を有することができる。チタン・アルミ・ナイトライド(TiAlN)または窒化チタン(TiN)は、還元ガスバリア性を有する。よって、支持部材のSiO支持層から還元性ガスが漏れたとしても、還元ガスバリア性の密着層234Dによって還元性ガスがキャパシター230に侵入することを阻止できる。
密着層234Dの熱伝導率は第1電極234を形成する金属材料の熱伝導率よりも小さくすることができる。こうすると、キャパシター230の熱が密着層234Dを介して支持部材210側に逃げにくくなり、焦電体232での温度変化に基づく信号精度を高めることができる。上述の通り、SiO支持層212との密着性が良好な密着層234Dはチタン(Ti)系とすることができ、チタン(Ti)の熱伝導率は21.9(W/mK)と、第1電極234に好適な金属例えば白金(Pt)の熱伝導率71.6(W/m・K)やイリジウム(Ir)の熱伝達率147(W/m・K)よりも格段に小さく、チタンの窒化物であるチタン・アルミ・ナイトライド(TiAlN)または窒化チタン(TiN)の熱伝導率は、窒素/チタンの混合率に応じてさらに低くなる。
密着層234Dの水分触媒活性度は、第1電極234の他の材料の水分触媒活性度よりも低いことが好ましい。密着層234Dが、水分と反応して水素を発生させる水分触媒活性度が低ければ、下層の層間絶縁膜中や表面のOH基や吸着水との反応によって還元ガスが発生することを抑制できる。
第1電極234中にて還元ガスバリア層として機能するIrOx層234Bは、キャパシター230の下方からの還元性の阻害因子から焦電体232を隔離するために、還元ガスバリア性を呈する支持部材210の第2層部材(例えばSi)及び支持部材210のエッチングストップ膜(例えばAl)140と共に用いられる。例えば焦電体(セラミック)232の焼成時や他のアニール工程での基部100からの脱ガスや、犠牲層150の等方性エッチング工程に用いる還元ガスが、還元性阻害因子となる。
なお、焦電体232の焼成工程中など、高温処理時にはキャパシター230内部で蒸発気体が生成されることがあるが、その蒸発気体の逃げ道が、支持部材210の第1層部材212にて確保される。つまり、キャパシター230内部で発生する蒸発気体を逃がすには、第1層部材212にはガスバリア性を備えず、第2層部材214にガスバリア性を備える方が良い。
また、IrOx層234Bは、それ自体の結晶性は少ないが、Ir層234Aとは金属−金属酸化物の関係となって相性が良いので、Ir層234Aと同一の優先配向方位を持つことができる。
第1電極234中にてシード層として機能するPt層234Cが、焦電体232の優先配向のシード層となり、(111)配向される。本実施形態では、Pt層234Cは二層構造となっている。第1層目のPt層で(111)配向の基礎をつくり、第2層目のPt層で表面にマイクロラフネスを形成して、焦電体232の優先配向のシード層として機能させる。焦電体232は、シード層234Cにならつて(111)配向される。
第2電極236では、スパッタ法で成膜されるとは物理的に界面が荒れ、トラップサイトが生じて特性が劣化する虞があるので、第1電極234、焦電体232、第2電極236の結晶配向が連続的につながるように、結晶レベル格子整合の再構築を行なっている。
第2電極236中のPt層236Aはスパッタ法で形成されるが、スパッタ直後で界面の結晶方向は不連続となる。そこで、その後にアニール処理してPt層236Aを再結晶化させている。つまり、Pt層236Aは、焦電体232と結晶配向が整合する配向整合層として機能する。
第2電極236中のIrOx層236Bは、キャパシター230の上方からの還元性劣化因子のバリアとして機能する。また、第2電極236中のIr層236Cは、IrOx層236Bの抵抗値が大きいので、第2プラグ228との間の抵抗値を低抵抗化させるために用いられる。Ir層236Cは、IrOx層236Bと金属酸化物−金属の関係で相性がよく、IrOx層236Bと同一の優先配向方位を持つことができる。
このように、本実施形態では、第1,第2電極234,236は、焦電体232側から順に、Pt、IrOx、Irと多層に配置され、焦電体232を中心として、形成材料が対称配置されている。
ただし、第1,第2電極234,236を形成する多層構造の各層の厚さは、焦電体232を中心として非対称となっている。先ず、第1電極234のトータル厚さT1と、第2電極236のトータル厚さT2とは、上述したよりも関係(T1>T2)を満足している。ここで、第1電極234のIr層234A、IrOx層234B、Pt層234Cの各熱伝導率をλ1、λ2、λ3とし、各厚さをT11、T12、T13とする。第2電極のIr層236C、IrOx層236B、Pt層236Aの各熱伝導率は第1電極234と同じくλ1、λ2、λ3となり、その各厚さをT21、T22、T23とする。
また、第1電極234のIr層234A、IrOx層234B、Pt層234Cの各熱コンダクタンスをG11、G12、G13とすると、G11=λ1/T11、G12=λ2/T12、G13=λ3/C13となる。第2電極236のIr層236C、IrOx層236B、Pt層236Aの各熱コンダクタンスをG21、G22、G23とすると、G21=λ1/T21、G22=λ2/T22、G13=λ3/T23となる。
第1電極234のトータル熱コンダクタンスG1は、1/G1=(1/G11)+(1/G12)+(1/G13)で表わされるので、
G1=(G11×G12×G13)/(G11+G12+G13)…(1)
同様に、第2電極236のトータル熱コンダクタンスG2は、1/G2=(1/G21)+(1/G22)+(1/G23)で表わされるので、
G2=(G21×G22×G23)/(G21+G22+G23)…(2)
となる。
次に、第1,第2電極234,236を形成する多層構造の各層の厚さは、T11+T12+T13=T1>T2=T21+T22+T23を満たす条件下でほぼ次の通りの関係である。
Ir層234A,236C T11:T21=1:0.7
IrOx層234B,236B T12:T22=0.3:1
Pt層234C,236A T13:T23=3:1
このような膜厚関係とした理由は以下の通りである。まず、Ir層234A,236Cについて言えば、第1電極234中のIr層234Aは配向制御層として機能するから、配向性を有するには所定の膜厚が必要であるのに対して、第2電極236CのIr層の目的は低抵抗化にあり、薄くするほど低抵抗化を実現できる。
次に、IrOx層234B,236Bについて言えば、キャパシター230の下方及び上方からの還元性阻害因子のバリア性は他のバリア膜(第2層部材214、還元性ガスバリア層240、エッチングストップ膜兼還元性ガスバリア層140,280)を併用しており、第1電極234のIrOx層234Bは薄くしているが、第2電極236のIrOx層236Bは第2プラグ228でのバリア性が低いことに備えて厚くしている。
最後に、Pt層234C,236Aに関して言えば、第1電極234中のPt層234Cは焦電体232の優先配向を決定付けるシード層として機能するから所定の膜厚が必要であるのに対して、第2電極236のPt層236Aの目的は焦電体232の配向と整合する配向整合層として機能するので、第1電極234中のPt層234Cよりも薄く形成しても良い。
また、第1電極234のIr層234A、IrOx層234B、Pt層234Cの肉厚比は、例えばT11:T12:T13=10:3:15とし、第2電極236のIr層236C、IrOx層236B、Pt層236Aの肉厚比は、例えばT21:T22:T23=7:10:5とした。
ここで、Ptの熱伝達率λ3=71.6(W/m・K)であり、Irの熱伝達率λ1は、λ1=147(W/m・K)とPtの熱伝達率λ3のほぼ2倍である。IrOxの熱伝導率λ2は熱度や酸素/金属比(O/M)によって変化するが、Irの熱伝達率λ1を超えることはない。上述した膜厚の関係と熱伝達率の関係を式(1)(2)に代入してG1,G2の大小関係を求めると、G1<G2が成立することが分かる。このように、本実施形態のように第1,第2電極234,236を多層構造にしても、熱伝達率と膜厚の関係からG1<G2が満足される。
また、上述した通り、第1電極234が支持部材210との接合面に密着層234Dを有する場合には、第1電極234の熱コンダクタンスC1はより小さくなるので、G1<G2の関係を満足し易くなる。
なお、キャパシター230のエッチングマスクはエッチングの進行に従い劣化するので、多層構造とするほどキャパシター230の側壁は、図6に示すように上側ほど狭く下側ほど広いテーパ形状となる。しかし、水平面に対するテーパ角は80度程なので、キャパシター230の全高がナノメートルオーダーであることを考慮すれば、第2電極236に対する第1電極234の面積拡大は小さい。よって、第1,第2電極234,236の熱コンダクタンスの関係から、第1電極234での熱伝達量を第2電極236での熱伝達量よりも小さくできる。
5.3.キャパシター構造の変形例
以上の通り、キャパシター230の第1,第2電極234,236の各々について、単層構造及び多層構造を説明したが、キャパシター230の機能を維持しながら、熱コンダクタンスの関係をG1<G2とする他の種々の組み合わせが考えられる。
先ず、第2電極236のIr層236Cを削除することができる。この場合、第2プラグ228の材料に例えばIrを用いれば、同様に低抵抗化の目的は達成されるからである。こうすると、第2電極236の熱コンダクタンスG2は図6の場合よりも大きくなるので、G1<G2の関係を満足させ易くなる。また、この場合には、図6に示すL=λ/4を規定する反射面は、第2電極236のPt層236Aに代わるが、同様に多重反射面を担保できる。
次に、図6の第2電極236中のIrOx層236Bの厚さを、第1電極234中のIrOx層234Bと同一厚さ以下とすることができる。上述の通り、キャパシター230の下方及び上方からの還元性阻害因子のバリア性は他のバリア膜(第2層部材214、還元性ガスバリア層240、エッチングストップ膜兼還元性ガスバリア層140,280)を併用しているからで、第2プラグ228での還元ガスバリア性が例えば図5のようにして高められれば、第2電極236中のIrOx層236Bの厚さを第1電極234中のIrOx層234Bより厚くする必要はない。こうすると、第2電極236の熱コンダクタンスG2はより大きくなり、よりG1<G2の関係を成立がし易くなる。
次に、図6の第1電極234中のIrOx層234Bを削除することができる。IrOx層234Bを削除しても、Ir層234AとPt層234Cとの結晶の連続性は妨げられないので、結晶配向に関して何ら問題はない。IrOx層234Bを削除することで、キャパシター230はその下方からの還元性阻害因子に対してバリア膜を持たないことになる。ただし、キャパシター230を支持する支持部材210にて第2層部材214が、支持部材210の下面にはエッチングストップ膜140が、それぞれ存在し、第2層部材214及びエッチングストップ膜140が還元ガスバリア性を有する膜で形成されれば、キャパシター230はその下方からの還元性阻害因子に対するバリア性を担保できる。
ここで、第1電極234中のIrOx層234Bを削除すると、第1電極234の熱コンダクタンスG1は大きくなる。よって、G1<G2の関係を成立させるには、第2電極236の熱コンダクタンスG2も大きくする必要が生ずるかもしれない。その場合、例えば第2電極236中のIrOx層236Bを削除することが考えられる。IrOx層236Bを削除できれば、Ir層236Cもまた不要となる。Ir層236Cに代えてPt層236Aが低抵抗層として機能するからである。キャパシター230の上方からの還元性阻害因子についてのバリア性は、上述した還元性ガスバリア膜240や、図4に示すバリアメタル228Aや、あるいは図5の還元性ガスバリア層290により担保できる。
図6の第2電極234は上述した通りPt層236Aのみで形成したとき、第1電極234は、Pt層234Cの単層か、Ir層234A及びPt層234Cの二層か、あるいは図6の通りIr層234A、IrOx層234B及びPt層234Cの三層とすることができる。これらの場合のいずれでも、例えば第1電極234のPt層234Cの厚さT13を第2電極236のPt層236Aの厚さT23よりも厚くすれば(T13>T23)、G1<G2の関係を容易に成立させることができる。
以上の通り、本実施形態では、第1,第2プラグ226,228と接続される部分の第1,第2電極234,236を形成する材料(単層であればその単層電極材料であり、複数層であれば最上層の電極材料)として、プラチナ(Pt)またはイリジウム(Ir)を採用している。いずれの場合であって、第1,第2電極配線層222,224として例えば窒化チタン(TiN)またはチタン・アルミ・ナイトライド(TiAlN)を用いることで、第1,第2電極配線層222,224の熱伝導率を第1,第2電極234,236の熱伝導率の低くでき、焦電型赤外線検出器200の熱分離特性を改善できる。
6.電極面での反射による赤外線吸収効率の向上
図7は、図3の赤外線吸収膜270の配置領域を拡大した変形例の断面図である。図7を用いて、図3及び図7の各実施形態において、電極面での反射による赤外線吸収効率の向上について説明する。
図7の矢印方向から入射された赤外線の一部は赤外線吸収膜270にて吸収されて熱に変換され、他の一部は透過する。この際、図3及び図7の各実施形態において、透過赤外線は第2電極(上部電極)236の面上にて反射されて赤外線吸収膜270の中心側にモ戻される(図7のR1)。こうして、透過赤外線は反射により再度、赤外線吸収膜270にて吸収される機会が付与されるので、赤外線吸収効率は高まる。
ここで、赤外線の反射は、第2電極(上部)電極236上ばかりでなく、第2電極配線層224上でも生ずる(図7のR1’)。しかし、第2電極(上部)電極236上で反射された赤外線と、第2電極配線層224上で反射された赤外線とは、赤外線吸収膜270の層内での吸収極大となる高さポイントが異なる。そのため、赤外線吸収効率は低下する。第2電極配線層224が存在しなければ、第2電極(上部)電極236上で反射された赤外線の吸収極大となる高さポイントは一定となるが、第2電極配線層224必要である。
そこで、上述した通り第2電極配線層224の幅W22を狭くすることで、赤外線吸収効率の低下を抑制することができる。
図7の実施形態では、第1電極(下部電極)364が拡大された第2領域233Bと対向する位置にも、赤外線吸収膜270が配置されている。こうすると、赤外線吸収膜270の体積が増大するので吸収される熱量が多くなるばかりか、第1電極(下部電極)234上でも赤外線を反射することができるので(図7のR2)、赤外線吸収膜270での吸収熱量はより増大される。
なお、第1電極(下部電極)234上での赤外線の反射と同時に、第1電極配線層222(図7では省略)でも反射され、第2電極と同様な問題が生ずるが、上述した通り第1電極配線層222の幅W12を狭くすることで、赤外線吸収効率の低下を抑制することができる。
7.電子機器
図8に本実施形態の焦電型検出器または焦電型検出装置を含む電子機器の構成例を示す。この電子機器は、光学系400、センサーデバイス(焦電型検出装置)410、画像処理部420、処理部430、記憶部440、操作部450、表示部460を含む。なお本実施形態の電子機器は図8の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
光学系400は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の焦電型検出器200を二次元配列させて構成され、複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。
処理部430は、電子機器の全体の制御を行ったり、電子機器内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザが電子機器を操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
このように、1セル分の焦電型検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の焦電型検出器を二軸方向例えば直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
もちろん、1セル分または複数セルの焦電型検出器をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することもできる。
図9(A)に図8のセンサーデバイス410の構成例を示す。このセンサーデバイスは、センサーアレイ500と、行選択回路(行ドライバー)510と、読み出し回路520を含む。またA/D変換部530、制御回路550を含むことができる。このセンサーデバイスを用いることで、例えばナイトビジョン機器などに用いられる赤外線カメラなどを実現できる。
センサーアレイ500には、例えば図2に示すように二軸方向に複数のセンサーセルが配列(配置)される。また複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。なお行線及び列線の一方の本数が1本であってもよい。例えば行線が1本である場合には、図9(A)において行線に沿った方向(横方向)に複数のセンサーセルが配列される。一方、列線が1本である場合には、列線に沿った方向(縦方向)に複数のセンサーセルが配列される。
図9(B)に示すように、センサーアレイ500の各センサーセルは、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置(形成)される。例えば図9(B)のセンサーセルは、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に配置されている。他のセンサーセルも同様である。 行選択回路510は、1又は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。例えば図9(B)のようなQVGA(320×240画素)のセンサーアレイ500(焦点面アレイ)を例にとれば、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択(走査)する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号(ワード選択信号)をセンサーアレイ500に出力する。
読み出し回路520は、1又は複数の列線に接続される。そして各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ500を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。
A/D変換部530は、読み出し回路520において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部530には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路520により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。なお、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。
制御回路550(タイミング生成回路)は、各種の制御信号を生成して、行選択回路510、読み出し回路520、A/D変換部530に出力する。例えば充電や放電(リセット)の制御信号を生成して出力する。或いは、各回路のタイミングを制御する信号を生成して出力する。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
本発明は、種々の焦電型検出器(例えば、熱伝対型素子(サーモパイル)、焦電型素子、ボロメーター等)に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。また、焦電型検出器または焦電型検出装置、あるいはそれらを有する電子機器は、例えば、供給する熱量と流体が奪う熱量とが均衡する条件下にて流体の流量を検出するフローセンサーなどにも適用できる。このフローセンサーに設けられる熱伝対などに代えて本発明の焦電型検出器または焦電型検出装置を設けることができる。このフローセンサーに設けられる熱伝対などに代えて本発明の焦電型検出器または焦電型検出装置を設けることができ、光以外を検出対象とすることができる。
100 基部(固定部)、102 空洞部、104 支持部(ポスト)、130,140 還元ガスバリア層(エッチングストップ膜)、200 焦電型検出器、210 支持部材、211A 第1面、211B 第2面、212 第1層部材、214 第2層部材、216 第3層部材、220 赤外線検出素子(焦電型検出素子)、222,224 第1,第2電極配線層、222A,224A 第1,第2接続部、222B,224B 第1,第2引き出し配線部、226,228 第1,第2プラグ、228A バリアメタル、230 キャパシター、232 焦電体、234 第1電極、234A 配向制御層、234B 第1還元ガスバリア層、234C シード層、234D 密着層、236 第2電極、236A 配向整合層、236B 第2還元ガスバリア層、236C 低抵抗化層、240 還元ガスバリア層、250 層間絶縁膜、260 パッシベーション膜、270 光吸収部材(赤外線吸収体)、280 還元ガスバリア層(エッチングストップ膜)、290 還元ガスバリア層、D1 第1方向、D2 第2方向
第1,第2電極配線層222,224を覆って、SiOまたはSiNのパッシベーション膜260が設けられている。少なくともキャパシター230の上方には、パッシベーション膜260上に赤外線吸収体(広義には光吸収部材)270が設けられている。赤外線吸収体270もSiOまたはSiNにて形成されるが、赤外線吸収体270のパターンエッチングの必要上、下層のパッシベーション膜260とはエッチング選択比が大きい異種材料とすることが好ましい。この赤外線吸収体270に赤外線が図3の矢印方向から入射され、赤外線吸収体270は吸収した赤外線量に応じて発熱する。その熱が焦電体232に伝熱されることで、キャパシター230の自発分極量が熱によって変化し、自発分極による電荷を検出することで赤外線を検出できる。

Claims (13)

  1. 焦電型検出素子と、
    第1面と、前記第1面に対向する第2面とを含み、前記第2面が空洞部に臨んで配置され、前記第1面に前記焦電型検出素子を搭載した支持部材と、
    前記支持部材の一部を支持する支持部と、
    を有し、
    前記焦電型検出素子は、
    前記支持部材に搭載される第1電極と、第2電極と、前記第1,第2電極間に配置された焦電材料とを含み、前記第1電極が、前記焦電材料が積層形成される第1領域と、前記第1領域より延在形成された第2領域とを含み、温度に基づいて分極量が変化するキャパシターと、
    前記キャパシターの表面を覆う層間絶縁膜と、
    前記層間絶縁膜に形成され、前記第1電極の前記第2領域に通ずる第1コンタクトホールと、
    前記第1コンタクトホールに埋め込まれた第1プラグと、
    前記層間絶縁膜に形成され、前記第2電極に通ずる第2コンタクトホールと、
    前記第2コンタクトホールに埋め込まれた第2プラグと、
    前記層間絶縁膜及び前記支持部材の上に形成され、前記第1プラグに接続される第1電極配線層と、
    前記層間絶縁膜及び前記支持部材の上に形成され、前記第2プラグに接続される第2電極配線層と、
    を含み、
    前記第2電極配線層を形成する材料の熱伝導率は、前記第2プラグと接続される部分の前記第2電極を形成する材料の熱伝導率よりも低いことを特徴とする焦電型検出器。
  2. 請求項1において、
    前記第1電極配線層を形成する材料の熱伝導率は、前記第1プラグと接続される部分の前記第1電極を形成する材料の熱伝導率よりも低いことを特徴とする焦電型検出器。
  3. 請求項1または2において、
    前記第1電極配線層及び前記第2電極配線層の少なくとも一方は、窒化チタンまたはチタン・アルミ・ナイトライドにて形成されていることを特徴とする焦電型検出器。
  4. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、
    前記第2電極の熱コンダクタンスが前記第1電極の熱コンダクタンスよりも大きいことを特徴とする焦電型検出器。
  5. 請求項1乃至4のいずれかにおいて、
    前記焦電型検出素子は、光入射方向にて前記第2電極及び前記第2電極配線層よりも上流側となる領域に形成された光吸収部材をさらに含むことを特徴とする焦電型検出器。
  6. 請求項5において、
    前記光吸収部材は、前記光入射方向から見た平面視で前記第2電極の全面を覆って形成され、
    前記第2電極は、前記焦電材料が前記第1電極と接する面と対向する面の全面を覆って形成されていることを特徴とする焦電型検出器。
  7. 請求項5または6において、
    前記光吸収部材は、平面視で、前記第1電極の前記第1領域と、前記第1電極の前記第2領域の少なくとも一部と、それぞれ重なる位置に形成されていることを特徴とする焦電型検出器。
  8. 請求項5乃至7のいずれかにおいて、
    前記第1電極配線層は、前記第1プラグに接続される第1接続部と、前記第1接続部から引き出され、前記第1接続部よりも細幅の第1引き出し配線部と、を含み、
    前記第2電極配線層は、前記第2プラグに接続される第2接続部と、前記第2接続部から引き出され、前記第2接続部よりも細幅の第2引き出し配線部と、を含み、
    前記第2引き出し配線部の幅は、前記第2コンタクトホールの横断面の最大長さよりも狭いことを特徴とする焦電型検出器。
  9. 請求項8において、
    前記第1引き出し配線部の幅は、前記第1コンタクトホールの横断面の最大長さよりも狭いことを特徴とする焦電型検出器。
  10. 請求項1乃至9のいずれかにおいて、
    前記層間絶縁膜と前記キャパシターとの間に、還元ガスバリア膜をさらに有することを特徴とする焦電型赤外線検出器。
  11. 請求項1乃至10のいずれかに記載の焦電型検出器を二軸方向に沿って二次元配置したことを特徴とする焦電型検出装置。
  12. 請求項1乃至10のいずれかに記載の焦電型検出器を有することを特徴とする電子機器。
  13. 請求項11に記載の焦電型検出装置を有することを特徴とする電子機器。
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