JP2015011733A - 情報記録媒体用ガラス基板の製造方法 - Google Patents

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大士 梶田
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Abstract

【課題】主表面の平滑な領域をより広く確保する。
【解決手段】600Gbit/平方インチ以上の記録密度を有し磁気ヘッドの浮上量が5nm以下に設定される情報記録媒体の作製に用いられる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、結晶化ガラスを用いて作製されたガラス素板を準備する工程S10と、ガラス素板に粗研磨処理を施す工程S60と、粗研磨処理が施されたガラス素板に、主表面から0.1μm以上30μm未満の深さを有する圧縮応力層を形成する工程S70と、を備える。
【選択図】図8

Description

本発明は、ガラス基板の製造方法に関し、特に、ハードディスクドライブなどの情報記録装置に情報記録媒体の一部として備えられる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法に関する。
情報記録装置は、コンピューター等のさまざまな機器に内蔵されている。このような情報記録装置には、円盤状の情報記録媒体(磁気ディスクともいう)が搭載される。情報記録媒体は、ガラス基板と、ガラス基板の主表面上に形成された磁気記録層とを含んでいる。近年、スマートフォンおよびタブレット機器が普及している。情報記録装置には、より大きな記憶容量を有するものが求められ、情報記録媒体としては、より高い記録密度(たとえば600Gbit/平方インチ以上の記録密度)を有するものが求められている。
このような要求に応えるためには、たとえば、1枚の磁気ディスクが持つ記録可能な領域(磁気記録層)の面積を可能な限り大きくすることが必要となる。これを実現するためには、ガラス基板の外周端部のより近くにまで記録可能な領域を形成することが必要となる。しかしながら、ガラス基板の外周端部の付近は、主表面に対して面が盛り上がる隆起(スキージャンプ)や、主表面に対して面が下がる面だれが形成されやすいという実情がある。
記録密度を高くすることに加えて、ハードディスクドライブとしての耐衝撃性を向上させることも求められている。特許第4293389号(特許文献1)、特開2004−265582号公報(特許文献2)、および特開平05−089459号公報(特許文献3)に開示されているように、一般的に、ガラス基板の表層には圧縮応力層が形成される。
特許第4293389号 特開2004−265582号公報 特開平05−089459号公報
本出願の発明者らは、従来の製造方法を使用して32.5mmの半径を有する磁気ディスク(情報記録媒体)を作製した。この従来の製造方法は、ガラス素板に粗研磨処理を施した後に、そのガラス素板に化学強化処理を施すというものである。磁気ディスクをハードディスクに組み込みリード/ライト試験を実施したところ、磁気記録層のうちの半径が31.5mm以下の領域においては電磁変換特性に大きな問題はなかったが、31.5mmよりも外側の領域においてはリード/ライトエラーが多発し、記録領域として使用することは困難であることが分かった。
すなわち、ガラス基板の外周端部の付近にスキージャンプ等が形成される原因の一つには、ガラス基板に粗研磨処理を施した後に圧縮応力層を形成することが挙げられるものと考えられる。スキージャンプ等が形成されると、磁気ヘッドが飛行時に傾いたり、磁気ヘッドの飛行が不安定になったりする。したがって、ガラス基板の製造時には、スキージャンプ等の発生を抑制し、ガラス基板の主表面の平滑な領域をできるだけ広く確保することが求められる。
本発明は、主表面の平滑な領域を従来に比して広く確保することが可能な情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に基づく情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、600Gbit/平方インチ以上の記録密度を有し磁気ヘッドの浮上量が5nm以下に設定される情報記録媒体の作製に用いられる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、結晶化ガラスを用いて作製されたガラス素板を準備する工程と、上記ガラス素板に粗研磨処理を施す工程と、上記粗研磨処理が施された上記ガラス素板に、主表面から0.1μm以上30μm未満の深さを有する圧縮応力層を形成する工程と、を備える。
好ましくは、上記圧縮応力層は、上記ガラス素板の表層にイオン交換層を形成する工程によって形成され、形成された上記圧縮応力層は、表面が平滑になるように研磨する精密研磨工程の研磨量によって、その厚みが変化する。好ましくは、上記精密研磨工程では、上記イオン交換層が形成された上記ガラス素板の取り代が両面で計5μm以下である。
好ましくは、上記情報記録媒体用ガラス基板の回転中心軸が延びる方向における長さ寸法を高さという場合において、上記情報記録媒体用ガラス基板の半径をR(mm)とし、径方向における位置がR−4.5mmとなる点と上記径方向における位置がR−2.5mmとなる点とを結ぶことにより得られる直線を基準高さとすると、上記情報記録媒体用ガラス基板のうちの半径位置がR−1.0mmとなる円よりも径方向外側に位置する領域の高さの最大値と上記基準高さとの差が300nm以下である。
好ましくは、上記ガラス素板を準備する工程においては、直径が20nm以下のナノ結晶を含む結晶化ガラスを用いて作製された上記ガラス素板が準備される。
好ましくは、上記ガラス素板を準備する工程においては、スピネル系のナノ結晶を含む結晶化ガラスを用いて作製された上記ガラス素板が準備される。
好ましくは、上記情報記録媒体用ガラス基板は、0.650mm以下の厚さを有している。
本発明によれば、主表面の平滑な領域を従来に比して広く確保することが可能な情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を得ることができる。
実施の形態における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を使用することによって製造されたガラス基板を備える情報記録装置を示す斜視図である。 実施の形態における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を使用することによって製造されたガラス基板を示す平面図である。 図2中のIII−III線に沿った矢視断面図である。 図3中のIV線で囲まれた領域を拡大して示す断面図である。 実施の形態における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を使用することによって製造されたガラス基板のうちの外周端面の近傍を拡大して示す断面図である。 実施の形態における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を使用することによって製造されたガラス基板のうちの主表面と外周端面とを拡大して示す断面図である。 実施の形態における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を使用することによって製造されたガラス基板を用いて作製された情報記録媒体を示す断面図である。 実施の形態における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。 実施の形態の第1変形例における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。 実施の形態の第2変形例における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。 実施の形態の第3変形例における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。 実験例に関する実験条件および実験結果を示す図である。 実験例に関する実験条件(ガラス基板の組成)を示す図である。
本発明に基づいた実施の形態および各実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態および各実施例の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態および各実施例の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
[実施の形態]
(情報記録装置30)
図1を参照して、まず、情報記録装置30について説明する。図1は、情報記録装置30を示す斜視図である。情報記録装置30は、情報記録媒体10などを備えている。情報記録媒体10は、情報記録媒体用ガラス基板1(以下、ガラス基板1という)に磁気記録層が形成されることによって作製されたものである。ガラス基板1は、本実施の形態における情報記録媒体用ガラス基板の製造方法(詳細は図8を参照して後述する)によって製造されたものである。
具体的には、情報記録装置30は、情報記録媒体10、筐体20、ヘッドスライダー21、サスペンション22、アーム23、垂直軸24、ボイスコイル25、ボイスコイルモーター26、クランプ27、および固定ネジ28を備える。筐体20の上面上には、スピンドルモーター(図示せず)が設置される。
情報記録媒体10は、クランプ27および固定ネジ28によって、上記のスピンドルモーターに回転可能に固定される。情報記録媒体10は、このスピンドルモーターによって、たとえば4200rpm〜15000rpmの回転数で回転駆動される。詳細は図5を参照して後述されるが、情報記録媒体10は、ガラス基板1の両面に磁気記録層14,15(図5参照)がそれぞれ形成されることによって製造される。
アーム23は、垂直軸24の回りに揺動可能に取り付けられる。アーム23の先端には、板バネ(片持ち梁)状の一対のサスペンション22が取り付けられる。サスペンション22の先端には、ヘッドスライダー21が設けられる。一対のヘッドスライダー21は、情報記録媒体10をその両面から挟み込むように配置される。
アーム23のヘッドスライダー21が位置している側の反対側には、ボイスコイル25が取り付けられる。ボイスコイル25は、筐体20上に設けられたマグネット(図示せず)によって挟持される。ボイスコイル25およびこのマグネットにより、ボイスコイルモーター26が構成される。ボイスコイル25に供給される電流と上記マグネットの磁場とにより電磁力が発生し、アーム23は、この電磁力の作用によって垂直軸24の回りに揺動することができる。
アーム23の揺動によって、サスペンション22およびヘッドスライダー21も矢印AR1方向に揺動する。上下一対のヘッドスライダー21は、情報記録媒体10の表面上および裏面上を、情報記録媒体10の半径方向に往復移動する。ヘッドスライダー21に設けられた磁気ヘッド(図示せず)はシーク動作を行なう。
当該シーク動作が行なわれる一方で、磁気ヘッドは、情報記録媒体10の回転に伴って発生する空気流により浮揚力を受ける。当該浮揚力とサスペンション22の弾性力(押圧力)とのバランスによって、磁気ヘッドは情報記録媒体10の表面に対して5nm以下の浮上量で飛行(走行)する。当該飛行によって、ヘッドスライダー21に設けられた磁気ヘッドは、情報記録媒体10内の所定のトラックに対して情報(データ)の記録および再生を行なうことが可能となる。情報記録装置30は、以上のように構成される。
(ガラス基板1)
図2は、本実施の形態に基づく情報記録媒体用ガラス基板の製造方法(図8)によって製造されるガラス基板1を示す平面図である。図3は、図2中のIII−III線に沿った矢視断面図である。図2および図3に示すように、ガラス基板1(情報記録媒体用ガラス基板)は、主表面2,3、内周端面4、孔5、外周端面6、および面取部7,8を含む、主表面2,3、内周端面4、外周端面6および面取部7,8の表層には、その全体にわたって圧縮応力層12(図3参照)が形成されている。
孔5は、一方の主表面2から他方の主表面3に向かって貫通するように設けられる。面取部7は、主表面2と内周端面4との間、および、主表面3と内周端面4との間にそれぞれ形成される。面取部8(チャンファー部)は、主表面2と外周端面6との間、および、主表面3と外周端面6との間にそれぞれ形成される。
ガラス基板1の大きさは、たとえば0.8インチ、1.0インチ、1.8インチ、2.5インチ、または3.5インチである。ガラス基板1の厚さTH(図3)は、たとえば0.30mm〜2.20mmであり、好ましくは0.650mm以下である。ガラス基板1の厚さTHとは、ガラス基板1の主表面2,3上の点対象となる任意の複数の点で測定した厚さの平均によって算出される値である。
図4は、図3中のIV線で囲まれた領域を拡大して示す断面図である。ガラス基板1の主表面2の側に形成された圧縮応力層12は、ガラス基板1のうち、主表面2と図4中の一点鎖線L12との間の領域に形成された部分であり、ガラス基板1の内部において11kg/mm以上の応力値を有している。圧縮応力層12は、主表面2から0.1μm以上30μm未満の深さD(深さともいう)で形成されている。
ここで言う圧縮応力層12の深さDとは、ガラス基板1から1.5mmの長さを有する短冊形状のサンプルを切り出し、神港精機株式会社製のポーラリメーターを用いてサンプルを断面方向より観察および測定したときに得られる値である。測定原理はセナルモン法に基づくものである。なお、圧縮応力層の深さは、偏光顕微鏡等を用いて測定することもできる。
圧縮応力層12を形成してガラス基板1を得るためには、ガラス素板の表層に含まれるリチウムイオンまたはナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンを、これらのイオンに比べて大きなイオン半径を有するカリウムイオン等のアルカリ金属イオンに置換する。当該置換によって、主表面2の側の表層(主表面2と図4中の二点鎖線L11との間の領域)にイオン交換層11が形成される。
イオン半径の違いによって発生する歪みより、イオン交換層11として形成された部分は圧縮応力が発生する。イオン交換層11の存在によって主表面2の側の表層には内部圧縮応力が残留し、化学的に強化されることになる。イオン交換層11の形成によって、ガラス基板1の内部において11kg/mm以上の応力値を有し、且つ、主表面2から0.1μm以上30μm未満の深さDを有する圧縮応力層12が形成される。
図5は、ガラス基板1のうちの外周端面6の近傍を拡大して示す断面図である。詳細は図7を参照して後述されるが、ガラス基板1の主表面2,3に磁気記録層14,15(図7)をそれぞれ形成することによって、情報記録媒体10が得られる。情報記録媒体10が情報記録装置30(図1)に搭載され数千rpmの回転数で回転駆動されたとき、情報記録媒体10の一部であるガラス基板1は、図5中の回転中心軸CLを中心として回転する。
ここで、回転中心軸CLが延びる方向(およびそれに平行な方向)における長さ寸法を、「高さ」とし、ガラス基板1の半径をR(mm)とする。半径Rは、たとえば32.5mmである。径方向における位置がR−4.5mmとなる主表面2上の点B1と径方向における位置がR−2.5mmとなる主表面2上の点B2とを結ぶことにより、直線BL(図6参照)が仮想的に描かれる。
図6は、ガラス基板1の主表面2と面取部8とを拡大して示す断面図である。主表面2と面取部8との間には、スキージャンプSJが形成されている。ガラス基板1のうちの半径位置がR−1.0mmとなる円よりも径方向外側に位置する領域RR(図5)の中では、スキージャンプSJの頂部が高さの最大値Hを有している。本実施の形態のガラス基板1においては、直線BLが基準高さを示す線であるとすると、この最大値Hと基準高さ(直線BL)との差は、300nm以下とされていることが好ましい。
(情報記録媒体10)
図7は、ガラス基板1を用いて作製された情報記録媒体10を示す断面図である。図7に示すように、情報記録媒体10は、ガラス基板1と、ガラス基板1の主表面2上に形成された磁気記録層14と、ガラス基板1の主表面3上に形成された磁気記録層15とを含む。孔5を利用して、情報記録媒体10は筐体20(図1参照)上に設けられたスピンドルモーター(図示せず)に固定される。
磁気記録層14は、ガラス基板1の主表面2上の所定の領域を覆うように形成され、磁気記録層15は、ガラス基板1の主表面3上の所定の領域を覆うように形成される。磁気記録層14,15は、いずれも600Gbit/平方インチ以上の記録密度を有している。本実施の形態の情報記録媒体10は、主表面2,3上にそれぞれ形成された磁気記録層14,15を有しているが、情報記録媒体10は、主表面2上の磁気記録層14のみを有していてもよく、主表面3上の磁気記録層15のみを有していてもよい。
磁気記録層14,15は、磁性粒子を分散させた熱硬化性樹脂をガラス基板1の主表面2,3上にスピンコートすることによって形成される(スピンコート法)。磁気記録層14,15は、ガラス基板1の主表面2,3に対して実施されるスパッタリング法または無電解めっき法等により形成されてもよい。
磁気記録層14,15の膜厚は、たとえば、スピンコート法の場合は約0.3μm〜約1.2μm、スパッタリング法の場合は約0.04μm〜約0.08μm、無電解めっき法の場合は約0.05μm〜約0.1μmである。薄膜化および高密度化の観点からは、磁気記録層14,15はスパッタリング法または無電解めっき法によって形成されるとよい。
磁気記録層14,15に用いる磁性材料としては、高い保持力を得る目的で結晶異方性の高いCoを主成分とし、残留磁束密度を調整する目的でNiまたはCrを加えたCo系合金などを付加的に用いることが好適である。磁気ヘッドの滑りをよくするために、磁気記録層14,15の表面に潤滑剤を薄くコーティングしてもよい。潤滑剤としては、たとえば液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈したものが挙げられる。
磁気記録層14,15には、必要に応じて下地層または保護層を設けてもよい。下地層は、磁性膜の種類に応じて選択される。下地層の材料としては、たとえば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、およびNiなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料が挙げられる。下地層は、単層に限らず、同一または異種の層を積層した複数層構造としても構わない。たとえば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、または、NiAl/CrV等の多層下地層としてもよい。
磁気記録層14,15の摩耗および腐食を防止する保護層としては、たとえば、Cr層、Cr合金層、カーボン層、水素化カーボン層、ジルコニア層、またはシリカ層が挙げられる。これらの保護層は、下地層および磁性膜など共にインライン型スパッタ装置で連続して形成されることができる。これらの保護層は、単層としてもよく、または、同一若しくは異種の層からなる多層構成としてもよい。
上記保護層上に、あるいは上記保護層に代えて、他の保護層を形成してもよい。たとえば、上記保護層に代えて、Cr層の上にテトラアルコキシランをアルコール系の溶媒で希釈した中にコロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO)層を形成してもよい。
(ガラス基板の製造方法S1)
次に、図8に示すフローチャート図を用いて、本実施の形態におけるガラス基板(情報記録媒体用ガラス基板)の製造方法S1について説明する。ガラス基板の製造方法S1は、ガラス素板準備工程S10、切り出し成形工程S20、ブラスト工程S30、ラッピング工程S40、端面研磨工程S50、粗研磨工程S60、圧縮応力層形成工程S70、および洗浄工程S80を備える。
洗浄工程S80を経ることによって得られたガラス基板1(図2および図3)に対して、磁気記録層形成工程S2が実施される。磁気記録層形成工程S2を経ることによって、情報記録媒体10(図5参照)が得られる。以下、ガラス基板の製造方法S1を構成する各工程S10〜S80の詳細について順に説明する。
(ガラス素板準備工程S10)
まず、ガラス素板準備工程S10においては、結晶化ガラスを用いて作製されたガラス素板を準備する。当該準備工程は、結晶化されたガラス素板のそのものを購入(調達)することにより準備するという工程であってもよく、結晶化されていないガラス素板に熱処理(結晶化処理)を施して結晶化ガラス(表面に略均質に結晶粒子が析出したガラス)を得るという工程であってもよい。
結晶化ガラスを得るためには、たとえば、ガラス素材を溶融し、溶融したガラスを平面形状の金型に流し込む。金型で溶融ガラスを挟むことによりプレス成形し、円盤状のガラス母材(前躯体)を作製する。プレス成形の後、アモルファスガラス基板(ブランクス材)をセラミック製の板で挟んで熱処理して結晶化させることにより、結晶化されたガラス素板を得ることができる。
準備する結晶化ガラスの材料としては、直径(結晶の直径)が20nm以下のナノ結晶を含んでいることが好ましい。ここで言う結晶粒径とは、たとえば、日本電子株式会社製の透過電子顕微鏡JEM−2000FXを用いて結晶化ガラスの結晶粒径を測定したときの値(測定数n=50の平均値)である。準備する結晶化ガラスの材料としては、スピネル系のナノ結晶を含んでいることも好ましい。
(切り出し成形工程S20)
切り出し成形工程S20においては、円筒状のダイヤモンドドリルを用いてガラス素板の中心部に内孔を形成する(コアリング)。円環状のガラス素板が得られる。その後、ダイヤモンド砥石を用いてガラス素板の内周端面および外周端面を研削し、所定の面取り加工を施す(フォーミング、チャンファリング)。
(ブラスト工程S30)
ブラスト工程S30においては、ガラス素板の両主表面に粒子(砥粒)を吹き付ける。ガラス素板の両主表面が研削される。研削後のガラス素板の両主表面の表面粗さの平均Raは、たとえば2.0μm程度とされる。
(ラッピング工程S40)
ラッピング工程S40においては、両面研磨機を用いてガラス素板の両主表面にラッピング処理を施す。ガラス素板の両主表面はさらに研削される。
(端面研磨工程S50)
端面研磨工程S50においては、螺旋状のブラシ毛材を有する研磨ブラシを用いて、ガラス素板の内周端面および外周端面を研磨する。研磨ブラシとガラス素板の各端面との間に研磨スラリーを供給しつつ、研磨ブラシを各端面に当接させた状態で回転させる。この方法に限られず、ガラス素板を研磨液の中に浸漬した状態で、研磨ブラシを各端面に当接させた状態で回転させてもよい。
(粗研磨工程S60)
粗研磨工程S60においては、内周端面および外周端面が研磨されたガラス素板の両主表面を、複数回に分けて粗く研磨する。たとえば、第1および第2粗研磨工程の2回が実施される。徐々にガラス素板の仕上がり精度を高めることにより、平滑性および平坦性の高い主表面を有するガラス素板を得ることができる。2回に分けて粗研磨を行なう場合、第1粗研磨工程は、前述のラッピング工程において両主表面に残留したキズおよび歪みを除去することを主たる目的とし、第2粗研磨工程は、両主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。粗研磨後、洗浄液を用いてガラス素板が洗浄される。粗研磨に用いられていた研磨スラリーは、この洗浄処理によりガラス素板の表面から除去される。
(圧縮応力層形成工程S70)
圧縮応力層形成工程S70は、化学強化工程S71および精密研磨工程S72を含む。本実施の形態においては、化学強化工程S71が先に行なわれ、精密研磨工程S72がその後に行なわれる。
(化学強化工程S71)
具体的には、粗研磨および洗浄が完了したガラス素板を、300℃〜480℃に予熱する。その後、ガラス素板を化学強化液中に3時間〜4時間浸漬する。化学強化液としては、たとえば硝酸カリウム(50wt%)と硫酸ナトリウム(50wt%)との混合液を用いることができる。
ガラス素板を化学強化液中に浸漬することによって、ガラス素板の表層に含まれるリチウムイオンまたはナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンは、これらのイオンに比べて大きなイオン半径を有するカリウムイオン等のアルカリ金属イオンに置換される。当該置換によって、ガラス素板の表層にはイオン交換層が形成される。イオン交換層の形成に伴い、たとえば100μm以下の深さを有する圧縮応力層が形成される。
(精密研磨工程S72)
化学強化工程S71の後、上述の粗研磨工程S60で使用したものと同様な両面研磨機を用いて、ガラス素板の両主表面に精密研磨処理を施す。ガラス素板の両主表面は鏡面状に仕上げられる。このとき、上下面の取り代は同等にし、上下面の圧縮応力のバランスが崩れることはできるだけ避ける必要がある。
精密研磨工程S72と上記の粗研磨工程S60とでは、使用される研磨液(スラリー)に含有される研磨砥粒、および、使用される研磨パッドの組成が異なる。精密研磨工程S72では、粗研磨工程S60よりも、ガラス素板の両主表面に供給される研磨液中の研磨砥粒の粒径を小さくし、且つ、研磨パッドの硬さを柔らかくする。精密研磨工程S72に用いられる研磨パッドとしては、たとえば軟質発泡樹脂ポリッシャーが挙げられる。
精密研磨工程S72においては、イオン交換層が形成されたガラス素板に、取り代が両面で計5μm以下となる精密研磨処理を施すことが好ましい。精密研磨処理を経たガラス素板は、圧縮応力層の主表面からの深さが、片面で0.1μm以上30μm未満となる。ガラス素材を化学強化液中に浸漬させる時間、および精密研磨工程における取り代を調整することで、片面で0.1μm以上30μm未満の深さを有する圧縮応力層をガラス素板に形成することができる。圧縮応力層が形成されることによって、ガラス素板は良好な耐衝撃性を有することになる。
(洗浄工程S80)
精密研磨工程S72の後、ガラス素板にスクラブ洗浄処理が実施される。具体的には、精密研磨工程S72で使用した研磨パッドからガラス素板を取り外した後、ガラス素板の表面に洗浄液を供給しつつ、ガラス素板の表面に対してスクラブ洗浄装置を用いてスクラブ洗浄を行なう。洗浄液としては、洗剤または純水等が用いられる。スクラブ洗浄としては、洗剤によるスクラブ洗浄と純水によるスクラブ洗浄との双方を行なってもよい。
スクラブ洗浄を行なった後に、ガラス素板に対して超音波洗浄をさらに行なってもよい。洗剤および純水によるスクラブ洗浄を行なった後に、硫酸水溶液等の薬液による超音波洗浄、純水による超音波洗浄、洗剤による超音波洗浄、IPAによる超音波洗浄、およびまたは、IPAによる蒸気乾燥等をさらに行なってもよい。
実施の形態におけるガラス基板の製造方法S1は、以上のように構成される。以上のような各工程を備えるガラス基板の製造方法S1を使用することによって、図2および図3に示すガラス基板1を得ることができる。
(磁気記録層形成工程S2)
ガラス基板1の主表面2,3(または主表面2,3のいずれか一方)上に、磁気記録層が形成される。磁気記録層は、たとえば、Cr合金からなる密着層、CoFeZr合金からなる軟磁性層、Ruからなる配向制御下地層、CoCrPt合金からなる垂直磁気記録層、C系からなる保護層、およびF系からなる潤滑層が順次成膜されることによって形成される。磁気記録層の形成によって、図5に示す情報記録媒体10を得ることができる。
(作用および効果)
上述のとおり、本実施の形態におけるガラス基板の製造方法S1では、結晶化ガラス製のガラス素板を用いてガラス基板1が作製される。結晶化ガラスは、アモルファスガラスに比べて硬く、且つ歪も少ない。結晶化ガラスは、アモルファスガラスに比べて耐衝撃性や耐振動性に優れるという特性を有している。仮に、アモルファスガラス製のガラス素板を用いてガラス基板を作製した場合、所定の強度を得るためには、結晶化ガラスを用いる場合に比べて厚さの厚い圧縮応力層を形成する必要がある。
冒頭で述べたとおり、ガラス基板の外周端部の付近にスキージャンプ等が形成される原因の一つには、ガラス基板に粗研磨処理を施した後に圧縮応力層を形成することが挙げられるものと考えられる。したがって、アモルファスガラス製のガラス素板を用いる場合、より厚さの厚い圧縮応力層を形成する必要があるため、結晶化ガラスを用いる場合に比べてスキージャンプも形成されやすくなると考えられる。
本実施の形態の製造方法S1を使用して製造されたガラス基板1の圧縮応力層12は、主表面2から0.1μm以上30μm未満の厚さで形成されている。圧縮応力層の厚さが30μm以上となる場合にはスキージャンプが発生しやすくなるところ、本実施の形態の場合、イオン交換時に基板表層が膨張することは適度に抑制されており、スキージャンプの発生を抑制できる。また、圧縮応力層の厚さを0.1μm以上とすることにより、ガラス基板1の表層の強度を確保することが可能となる。
したがって本実施の形態のように、ガラス素板を結晶化ガラス製とし、圧縮応力層12の厚さを主表面2から0.1μm以上30μm未満とすることにより、耐衝撃性および耐振動性に優れ、スキージャンプの発生を抑制して主表面の平滑な領域を広く確保することが可能なガラス基板1を得ることができる。特に、磁気記録層14,15(図7)が600Gbit/平方インチ以上の記録密度を有しており且つ磁気ヘッドの浮上量が5nm以下に設定される場合には、スキージャンプの存在は、リード/ライトの良否結果により大きく影響することになる。スキージャンプの発生を抑制できることは、リード/ライトエラーの発生を抑制できることにもつながるものである。
上述のとおり、精密研磨工程S72(図8)においては、イオン交換層が形成されたガラス素板に、取り代が両面で計5μm以下となる精密研磨処理を施すことが好ましい。取り代が両面で計5μm以下となる精密研磨処理を施し、精密研磨後の圧縮応力層の厚さを0.1μm以上30μm未満とする場合には、精密研磨の実施によってスキージャンプが発達することはほとんどない。
具体的には、精密研磨処理は、両面研磨機を用いて行なわれるものであり、主として主表面2,3が研磨され、面取部8が研磨されることはほとんどない。ガラス素板の表層のうち、主表面2,3の側のイオン交換層が形成されている部分は研磨され、面取部8の側のイオン交換層が形成されている部分はほとんど研磨されない。その結果、主表面2,3の側の圧縮応力層の応力分布と、面取部8の側の圧縮応力層内の応力分布との間に差が生じやすくなる。
主表面2,3の側と面取部8の側とで圧縮応力層の応力のバランスが崩れ、ガラス素材は主表面2,3の側に向かう引張力を受けて、スキージャンプが発生しやすくなる。したがって精密研磨工程S72(図8)においては、イオン交換層が形成されたガラス素板に、取り代が両面で計5μm以下となる精密研磨処理を施すことが好ましい。但し、取り代を両面で計5μm以下とすることは、結晶化ガラスが用いられる上に、さらに、最終的な圧縮応力層の厚さが0.1μm以上30μm未満とされることに鑑みれば、本実施の形態においては必須の要件ではない。
なお仮に、精密研磨前の状態において30μm以上の厚さを有する圧縮応力層が形成されていたとする。この場合、精密研磨前の状態において、一定程度の高さを有するスキージャンプが形成されている可能性がある。しかしながら、精密研磨の実施によって精密研磨後の圧縮応力層の厚さを最終的には30μm未満とするため、精密研磨の際に基板表層の応力が緩和され、応力緩和とともに基板表層の膨張も緩和される。すなわち、仮に精密研磨前の状態において一定程度の高さを有するスキージャンプが形成されていたとしても、精密研磨の実施によってスキージャンプを抑制することが可能となる。
上述のとおり、本実施の形態の製造方法S1を使用して作製されたガラス基板1は、スキージャンプSJ(図6参照)の高さの最大値Hと基準高さ(直線BL)との差が300nm以下とされていることが好ましい。ガラス素材を化学強化液中に浸漬させる時間、および精密研磨工程における取り代などを調整することで、当該構成を実現できる。当該構成によれば、磁気記録層14,15の表面形状に対して磁気ヘッドは十分に追従することができ、磁気ヘッドの浮上量も安定し、リード/ライトエラーの発生をより一層抑制することが可能となる。
上述のとおり、ガラス素板準備工程S10において準備する結晶化ガラスの材料としては、直径(結晶粒径)が20nm以下のナノ結晶を含んでいることが好ましい。より平滑な表面粗さを有する主表面2,3を得ることが可能となる。20nm以下のナノ結晶を含んでいることが好ましい理由は、ガラス部分と結晶部分との耐久性および強度の違いにより、ガラス部分と結晶部分との間で研磨レートに差が生じることに起因しているものと考えられる。
上述のとおり、ガラス素板準備工程S10において準備する結晶化ガラスの材料としては、スピネル系のナノ結晶を含んでいることも好ましい。スピネル系のナノ結晶は、スキージャンプの発生をより抑制することに作用する。このことは、スピネル系のナノ結晶を含む材料は高い融点を有しているため、化学強化層を形成する際にガラスの熱膨張を抑制できることに起因しているものと考えられる。さらに、スピネル系のナノ結晶を含む材料は、結晶粒径も小さいため、より平滑な表面粗さを有する主表面2,3を得ることも可能となる。
上述のとおり、本実施の形態の製造方法S1を使用して作製されたガラス基板1の厚さTH(図3)は、0.650mm以下であることが好ましい。板厚が0.650mm以下の場合には、軽量化および小型化を図ることができる。回転時にはフラッターの影響を受けやすくなるものの、本実施の形態で例示した上記の各種構成を採用することによって、リード/ライトエラーの発生を抑制できる。
(第1変形例)
図9を参照して、上述の実施の形態の第1変形例として、ガラス基板の製造方法S1Aについて説明する。ガラス基板の製造方法S1Aは、圧縮応力層形成工程S70Aを備える。圧縮応力層形成工程S70Aは、化学強化工程S71、第1精密研磨工程S72aおよび第2精密研磨工程S72bを含む。化学強化工程S71、第1精密研磨工程S72aおよび第2精密研磨工程S72bは、この順で実施される。
第1精密研磨工程S72aにおいては、たとえばCeを主成分とする砥粒で精密研磨処理が行なわれる。第2精密研磨工程S72bにおいては、たとえばSiを主成分とする砥粒で精密研磨処理が行なわれる。第1精密研磨工程S72aおよび第2精密研磨工程S72bは、第1精密研磨工程S72aでの取り代および第2精密研磨工程S72bの取り代の合計値が両面で計5μm以下となるようにするとよい。その他の各工程は、上記の実施の形態におけるガラス基板の製造方法S1と同様に構成される。当該構成によっても、上記の実施の形態と略同様の作用および効果を得ることができる。
(第2変形例)
図10を参照して、上述の実施の形態の第2変形例として、ガラス基板の製造方法S1Bについて説明する。ガラス基板の製造方法S1Bは、圧縮応力層形成工程S70Bを備える。本変形例においては、精密研磨工程S72が先に行なわれ、化学強化工程S71がその後に行なわれる。その他の各工程は、上記の実施の形態におけるガラス基板の製造方法S1と同様に構成される。当該構成によっても、上記の実施の形態と略同様の作用および効果を得ることができる。
(第3変形例)
図11を参照して、上述の実施の形態の第3変形例として、ガラス基板の製造方法S1Cについて説明する。ガラス基板の製造方法S1Cは、圧縮応力層形成工程S70Cを備える。本変形例においては、第1精密研磨工程S72a、化学強化工程S71、および第2精密研磨工程S72bが、この順で実施される。本変形例でも、第1精密研磨工程S72aおよび第2精密研磨工程S72bは、第1精密研磨工程S72aでの取り代および第2精密研磨工程S72bの取り代の合計値が両面で計5μm以下となるようにするとよい。当該構成によっても、上記の実施の形態と略同様の作用および効果を得ることができる。
[実験例]
図12および図13を参照して、上述の実施の形態および各変形例に関して行なった実験例およびその結果について説明する。当該実験例は、実施例1〜6および比較例1〜7を含む。
実施例1〜6および比較例1〜7のそれぞれの構成は、次の点で異なっている。すなわち図12に示すように、全体的な製造工程、ガラス素板準備工程S10で準備した結晶化ガラスの組成(図13参照、値はいずれもmol%)、結晶種、結晶直径(nm)、化学強化工程S71の後に実施した精密研磨工程S72の取り代(μm)、圧縮応力層の深さ(μm)、ガラス基板の厚さ(mm)、スキージャンプの高さ(nm)、および、ガラス基板の主表面のうちの1μmの測定範囲における表面粗さRa(Å)が異なっている。
これらの構成のうち、製造工程については、上述の実施の形態(図8)および各変形例(図9〜図11)で説明した構成のうちのいずれを採用したかを図12中に記載している。結晶種については、Rigaku社製のXRD装置(X線回折装置)「Ultima IV」を用いて、回折強度のピークから結晶化処理で発生させた結晶種を確認したものである。結晶直径については、日本電子株式会社製の透過電子顕微鏡JEM−2000FXを用いて結晶化ガラスの結晶直径を測定することにより得られた値(測定数n=10の平均値)である。
化学強化工程S71の後に実施した精密研磨工程S72の取り代(μm)については、研磨処理前後のガラス基板の板厚をミツトヨ社製のマイクロメーター「MDC−25MJ」で測定することにより得られた値である。圧縮応力層深さ(μm)については、ガラス基板から1.5mmの長さを有する短冊形状のサンプルを切り出し、神港精機株式会社製のポーラリメーター「SF−IIC」を用いてサンプルを断面方向より観察および測定したときに得られた値である。このときの測定原理はセナルモン法に基づくものである。
スキージャンプ高さ(nm)については、株式会社ミツトヨ製の小形表面粗さ測定機サーフテスト「SJ−301」で測定することにより得られた値(測定数n=10の平均値)である。1μmの測定範囲における表面粗さRa(Å)については、Veeco社製のAFMを用いて1μm×1μmの範囲における基板表面の算術平均粗さRaを測定することにより得られた値(測定数n=10の平均値)である。
実施例1〜6および比較例1〜7のそれぞれの構成に基づく製造方法を使用してガラス基板を作製し、ガラス基板にCo−Cr合金で磁気記録層を成膜して情報記録媒体を作製し、情報記録装置(磁気ディスク)に組み込んだ後、HDDテストおよび落下試験を行なった。
HDDテストでは、情報記録装置を15000rpmで動作させ、読み取りエラーが発生した回数で評価した。各実施例および各比較例のそれぞれについてサンプル数nを100枚としてエラー発生回数の平均値を算出し、平均値に基づき評価した。エラー発生回数の平均値が0〜2回の場合には評価Sとし、3〜5回の場合には評価Aとし、6回〜10回の場合には評価Bとし、11回以上の場合には評価Cとした。
落下試験では、情報記録装置を落下させて情報記録装置に1200Gの衝撃を加え、情報記録装置から情報記録媒体を取りだした際に、ガラス基板に割れや欠損がないかで判断した。各実施例および各比較例のそれぞれについてn=100回の落下試験での評価を行ない、ガラス基板に割れや欠損がない場合を合格とし、各実施例および各比較例のそれぞれについて合格率を算出した。なお、落下試験n=100回の途中に基板が割れた場合は、磁気ディスクを新品に交換して試験を続行した。落下衝撃の合格基準は90%以上とした。
(実施例1〜6)
実施例1〜6のそれぞれのガラス基板の製造方法は、次のとおりである。製造工程については、実施例1〜3,5,6では上述の第2変形例(図10中のガラス基板の製造方法S1B)で説明した構成を採用し、実施例4では上述の実施の形態(図8中のガラス基板の製造方法S1)で説明した構成を採用した。
ガラス素板準備工程S10で準備した結晶化ガラスの組成については、実施例1〜6のいずれも図13中に示すものとし、結晶種についてはいずれも図12中に示すようにスピネル系のMgAl(図12参照)とした。結晶粒径については、実施例1〜4,6では10nmとし、実施例5では18nmとした。実施例4では、化学強化工程S71の後に精密研磨工程S72を実施しており、取り代は両面で計3μmとした。
実施例1〜6の各製造方法を使用して得られたガラス基板1は、図12中に示す圧縮応力層深さ(μm)と、図12中に示すガラス基板の厚さ(mm)と、図12中に示すスキージャンプ高さ(nm)と、表面粗さRa(Å)とをそれぞれ有するものであった。
HDDテストの結果としては、実施例1,2では評価Sが得られ、実施例3〜6では評価Aが得られた。落下試験の結果としては、実施例1〜6のいずれもが合格基準である90%以上を満足することができた。
(比較例1〜7)
比較例1〜7のそれぞれのガラス基板の製造方法は、次のとおりである。製造工程については、比較例1,2,4〜6では上述の第2変形例(図10中のガラス基板の製造方法S1B)で説明した構成を採用し、比較例3,7では上述の実施の形態(図8中のガラス基板の製造方法S1)で説明した構成を採用した。
ガラス素板準備工程S10で準備した結晶化ガラスの組成については、比較例1〜7のいずれも図13中に示すものとし、比較例1〜5,7は上述の実施例1〜6と同様であり、比較例6についてはこれらと異なるものとした。結晶種については比較例1〜5,7のいずれもスピネル系のMgAl(図12参照)とし、比較例6についてはLiSiOとした。結晶粒径については、比較例1〜3,7では10nmとし、比較例4では23nmとし、比較例6では35nmとした。なお、比較例6では結晶化ガラスを用いていない。比較例3,7では、化学強化工程S71の後に精密研磨工程S72を実施しており、取り代は両面で計6μmとした。
比較例1〜7の各製造方法を使用して得られたガラス基板1は、図12中に示す圧縮応力層深さ(μm)と、図12中に示すガラス基板の厚さ(mm)と、図12中に示すスキージャンプ高さ(nm)と、表面粗さRa(Å)とをそれぞれ有するものであった。なお、比較例1においてはガラス基板に圧縮応力層が形成されていないため、0μmとしている。
HDDテストの結果としては、比較例1では評価Aが得られ、比較例2〜6では評価Bが得られ、比較例7では評価Cが得られた。落下試験の結果としては、比較例1は合格基準である90%以上を満足することができず、比較例2〜7は合格基準である90%以上を満足することができた。
比較例1では、ガラス基板の表層に圧縮応力が形成されていないため、落下強度を確保することができなかったものと考えられる。比較例2では、圧縮応力層が30μmよりも厚いため、スキージャンプ高さが高くなり、HDDテストでエラーが多発したものと考えられる。比較例3では、化学強化工程後の精密研磨の取り代が大きすぎたため、スキージャンプが大きくなり、HDDテストでエラーが多発したものと考えられる。
比較例4では、結晶の直径が大きすぎたため、表面粗さが粗くなり、HDDテストでエラーが多発したものと考えられる。比較例5では、結晶化ガラスが用いられていないため、スキージャンプ高さが高くなり、HDDテストでエラーが多発したものと考えられる。比較例6では、結晶種を変更したが、スキージャンプが大きくなり、表面粗さも粗くなり、HDDテストでエラーが多発したものと考えられる。比較例7では、比較例3と同条件でサンプルを作製したものの、板厚が0.635mmと薄いため、HDDテストでエラーが多発したものと考えられる。
以上、本発明に基づいた実施の形態および各実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 情報記録媒体用ガラス基板(ガラス基板)、2,3 主表面、4 内周端面、5 孔、6 外周端面、7,8 面取部、10 情報記録媒体、11 イオン交換層、12 圧縮応力層、14,15 磁気記録層、20 筐体、21 ヘッドスライダー、22 サスペンション、23 アーム、24 垂直軸、25 ボイスコイル、26 ボイスコイルモーター、27 クランプ、28 固定ネジ、30 情報記録装置、CL 回転中心軸、H 最大値(最大高さ)、R 半径、RR 領域、Ra 平均、S1,S1A,S1B,S1C 製造方法、S2 磁気記録層形成工程、S10 ガラス素板準備工程、S20 成形工程、S30 ブラスト工程、S40 ラッピング工程、S50 端面研磨工程、S60 粗研磨工程、S70,S70A,S70B,S70C 圧縮応力層形成工程、S71 化学強化工程、S72a 第1精密研磨工程、S72b 第2精密研磨工程、S72 精密研磨工程、S80 洗浄工程、SJ スキージャンプ、TH 厚さ。

Claims (7)

  1. 600Gbit/平方インチ以上の記録密度を有し磁気ヘッドの浮上量が5nm以下に設定される情報記録媒体の作製に用いられる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
    結晶化ガラスを用いて作製されたガラス素板を準備する工程と、
    前記ガラス素板に粗研磨処理を施す工程と、
    前記粗研磨処理が施された前記ガラス素板に、主表面から0.1μm以上30μm未満の深さを有する圧縮応力層を形成する工程と、を備える、
    情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記圧縮応力層は、前記ガラス素板の表層にイオン交換層を形成する工程によって形成され、形成された前記圧縮応力層は、表面が平滑になるように研磨する精密研磨工程の研磨量によって、その厚みが変化する、
    請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記精密研磨工程では、前記イオン交換層が形成された前記ガラス素板の取り代が両面で計5μm以下である、
    請求項2に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記情報記録媒体用ガラス基板の回転中心軸が延びる方向における長さ寸法を高さという場合において、前記情報記録媒体用ガラス基板の半径をR(mm)とし、径方向における位置がR−4.5mmとなる点と前記径方向における位置がR−2.5mmとなる点とを結ぶことにより得られる直線を基準高さとすると、前記情報記録媒体用ガラス基板のうちの半径位置がR−1.0mmとなる円よりも径方向外側に位置する領域の高さの最大値と前記基準高さとの差が300nm以下である、
    請求項1から3のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記ガラス素板を準備する工程においては、直径が20nm以下のナノ結晶を含む結晶化ガラスを用いて作製された前記ガラス素板が準備される、
    請求項1から4のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記ガラス素板を準備する工程においては、スピネル系のナノ結晶を含む結晶化ガラスを用いて作製された前記ガラス素板が準備される、
    請求項1から5のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  7. 前記情報記録媒体用ガラス基板は、0.650mm以下の厚さを有している、
    請求項1から6のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
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