印刷システムを例に、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
[印刷システムの構成]
印刷システム1は、図1に示すように、プリンター5と、印刷材としてのインクを収容する収容容器の一例であるカートリッジ7と、を有している。なお、図1には、相互に直交する座標軸であるXYZ軸が付されている。これ以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸が付されている。図1では、プリンター5は、X軸方向とY軸方向とによって規定される水平な平面に配置されている。Z軸方向は、水平な平面に直交する方向であり、Z軸負方向が鉛直下方向となる。
プリンター5は、副走査送り機構と、主走査送り機構と、ヘッド駆動機構を有している。副走査送り機構は、図示しない紙送りモーターを動力とする紙送りローラー11を用いて印刷用紙Pを副走査方向に搬送する。主走査送り機構は、キャリッジモーター13の動力を用いて、駆動ベルト15に接続されたキャリッジ17を主走査方向に往復動させる。プリンター5の主走査方向はY軸方向であり、副走査方向はX軸方向である。ヘッド駆動機構は、キャリッジ17に備えられた印刷ヘッド19を駆動してインクの吐出及びドット形成を実行する。プリンター5は、さらに、上述した各機構を制御するための制御部21を備えている。印刷ヘッド19は、フレキシブルケーブル23を介して制御部21に接続されている。
キャリッジ17は、ホルダー25と、印刷ヘッド19とを備えている。ホルダー25は、複数のカートリッジ7を装着可能に構成されており、印刷ヘッド19の上側に配置されている。本実施形態では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、ライトマゼンタ、及びライトシアンの6種類のカートリッジ7が、ホルダー25に1つずつ装着される。6つのカートリッジ7は、それぞれ、ホルダー25に対して着脱可能に構成されている。なお、カートリッジ7の種類は、上記の6種類に限定されず、他の任意の種類も採用することができる。また、ホルダー25に装着可能なカートリッジ7の個数は、6つに限定されず、1つ以上の任意の個数を採用することができる。印刷ヘッド19は、インクを吐出することによりインクを噴射する。
ホルダー25は、図2に示すように、凹部31を有している。カートリッジ7は、ホルダー25の凹部31内に装着される。本実施形態では、凹部31内に6つのカートリッジ7を収容することができる。本実施形態では、凹部31内に装着される6つのカートリッジ7は、相互に隙間をあけた状態で凹部31内に収容される。凹部31内には、凹部31内に装着される6つのカートリッジ7のそれぞれに対応する装着位置が規定されている。6つの装着位置は、凹部31内において、Y軸方向に並んでいる。つまり、6つのカートリッジ7は、Y軸方向に並んだ状態で凹部31内に収容される。
凹部31内には、ホルダー25の底部25Aに、6つの導入部33が設けられている。6つの導入部33は、それぞれ、装着位置ごとに設けられている。つまり、6つの導入部33は、それぞれ、凹部31内に装着される6つのカートリッジ7のそれぞれに対応して設けられている。このため、6つの導入部33は、凹部31内において、Y軸方向に並んでいる。そして、ホルダー25に装着される6つのカートリッジ7は、凹部31内において、Y軸方向に沿って並ぶ。なお、図2では、ホルダー25に1つのカートリッジ7が装着された状態が示されている。
また、ホルダー25には、6つのレバー35と、6つの係合穴37と、が設けられている。本実施形態では、カートリッジ7の装着位置ごとに、1つのレバー35と、1つの係合穴37と、が設けられている。6つのレバー35は、Y軸方向に並んでいる。6つの係合穴37も、Y軸方向に並んでいる。
レバー35は、導入部33の−X軸方向側に設けられている。ホルダー25では、導入部33を挟んでレバー35の反対側(+X軸方向側)に、側壁41が設けられている。また、導入部33を挟んでY軸方向に対峙するそれぞれの位置に、側壁43と側壁45とが設けられている。側壁43は、底部25Aの+Y軸方向側に位置している。側壁45は、底部25Aの−Y軸方向側に位置している。また、Y軸方向にレバー35を挟んで側壁41に対峙する位置には、側壁47が設けられている。側壁41と、側壁43と、側壁45と、側壁47とは、それぞれ、底部25Aから+Z軸方向に突出している。底部25Aは、側壁41と、側壁43と、側壁45と、側壁47とによって囲まれている。これにより、凹部31が区画されている。
レバー35は、図2中のA−A線における断面図である図3に示すように、側壁47と側壁41との間に設けられている。なお、図3は、ホルダー25を、導入部33を貫通するXZ平面で切断したときの断面図に相当する。レバー35は、側壁47と導入部33との間に設けられている。レバー35は、ホルダー25に装着されるカートリッジ7を固定する。作業者は、レバー35によるカートリッジ7の固定を解除することによって、カートリッジ7をホルダー25から外すことができる。係合穴37は、側壁41に設けられている。係合穴37は、側壁41を貫通している。
導入部33は、レバー35と側壁41との間において、底部25Aに設けられている。導入部33は、流路51と、突出部53と、フィルター55と、パッキン57と、を含む。流路51は、カートリッジ7から供給されたインクの通路であり、底部25Aを貫通する開口として設けられている。突出部53は、底部25Aに設けられており、底部25Aから+Z軸方向に向かって凸となる向きに突出している。突出部53は、凹部31の内側において、流路51を囲んでいる。フィルター55は、突出部53に被せられており、流路51の凹部31の内側における開口を突出部53側から覆っている。パッキン57は、底部25Aに設けられており、凹部31の内側において、突出部53を囲んでいる。パッキン57は、例えば、ゴムやエラストマーなどの弾性を有する材料で構成されている。
[カートリッジの構成]
カートリッジ7は、図4に示すように、ケース61を有している。ケース61は、カートリッジ7の外殻を構成している。ケース61は、第1ケース62と、第2ケース63と、を含む。本実施形態では、第1ケース62と第2ケース63とによってカートリッジ7の外殻が構成される。第1ケース62は、図5に示すように、第1壁71と、第2壁72と、第3壁73と、第4壁74と、第5壁75と、第6壁76と、第7壁77と、を有している。第2壁72〜第7壁77は、それぞれ、第1壁71に交差している。第2壁72〜第7壁77は、それぞれ、第1壁71から−Y軸方向側に向かって、すなわち第1壁71から第2ケース63側に向かって突出している。
第2壁72と第3壁73とは、第1壁71をZ軸方向に挟んで互いに対峙する位置に設けられている。第4壁74と第5壁75とは、第1壁71をX軸方向に挟んで互いに対峙する位置に設けられている。第4壁74及び第5壁75は、それぞれ、第3壁73に交差している。また、第4壁74は、第3壁73側とは反対側において、第2壁72に交差している。
第6壁76は、Z軸方向における第5壁75の第2壁72側、すなわち第5壁75の第3壁73側とは反対側において、第5壁75に交差している。第7壁77は、第6壁76の第5壁75側とは反対側において、第6壁76に交差している。また、第7壁77は、第2壁72の第4壁74側とは反対側において、第2壁72に交差している。第6壁76は、第5壁75及び第2壁72のそれぞれに対して傾斜している。第6壁76は、第3壁73側から第2壁72側に近づくにつれて第4壁74に近づく向きに傾斜している。
上記の構成により、第1壁71は、第2壁72〜第7壁77によって囲まれている。第2壁72〜第7壁77は、第1壁71から−Y軸方向に向かって突出している。このため、第1ケース62は、第1壁71を底部(底面)として、第2壁72〜第7壁77によって凹状に構成されている。第1壁71〜第7壁77によって、凹部65が構成されている。凹部65は、+Y軸方向に向かって凹となる向きに構成されている。凹部65は、−Y軸方向に向かって、すなわち第2ケース63側に向かって開口している。凹部65は、後述するシート部材107によって塞がれる。そして、シート部材107によって塞がれた凹部65内にインクが収容される。凹部65とシート部材107とによって囲まれた領域は、インクの収容部109として機能する。なお、以下において、凹部65の内側の面は、内面67と表記されることがある。
第1ケース62には、図6に示すように、凹部65の輪郭に沿ったシート接合部81が設けられている。シート接合部81は、第2壁72〜第7壁77に沿って設けられている。また、第1ケース62には、凹部65を第1凹部65Aと第2凹部65Bとに仕切る仕切壁83が設けられている。シート接合部81は、仕切壁83にも設けられている。なお、図6では、構成をわかりやすく示すため、シート接合部81にハッチングが施されている。凹部65のうち、第3壁73と、第5壁75と、第7壁77と、第2壁72の一部と、仕切壁83と、第4壁74の一部と、によって囲まれた領域が第1凹部65Aである。また、凹部65のうち、第2壁72の他部と、仕切壁83と、第4壁74の他部と、によって囲まれた領域、すなわち凹部65から第1凹部65Aを除いた領域が第2凹部65Bである。
また、第2壁72には、供給口85が設けられている。収容部109内に収容されたインクは、供給口85からカートリッジ7の外に排出される。供給口85は、図7(a)に示すように、第2壁72に設けられた周壁86を備える。周壁86は、第2壁72の凹部65側とは反対側、すなわち第2壁72の外側に設けられている。また、周壁86は、第2壁72から第3壁73側とは反対側(−Z軸方向側)に向かって突出している。また、第2壁72には、収容部109と供給口85とを連通させる連通孔85Aが設けられている。収容部109内に収容されたインクは、この連通孔85Aを介して、供給口85へ送出される。
また、供給口85は、図5に示すように、板ばね131と、フォーム133と、フィルター135と、を有している。図8に示すように、第1ケース62には、周壁86によって囲まれた領域内に、凹部137が設けられている。そして、板ばね131及びフォーム133は、図9に示すように、凹部137内に収められている。また、フィルター135は、周壁86によって囲まれた領域内に設けられており、凹部137を第2壁72の外側から覆っている。フィルター135としては、例えば、プレス加工などでフィルム材に貫通孔をあけたものや、PALL社製のMMM膜などの非対称膜、例えば織布のような対称膜などを採用することができる。フォーム133およびフィルター135は、それぞれ、多孔部材である。供給口85には、複数の部材が設けられている。後述するカートリッジ7の製造方法では、これらの部材のうち、供給口85の最も先端側に位置する多孔部材であるフィルター135の全面が、インクの再充填が完了した後にインクで濡れた状態になるように、インクが再充填される。
第4壁74には、突起部87が設けられている。突起部87は、第4壁74から第5壁75側とは反対側(+X軸方向側)に向かって突出している。突起部87は、Z軸方向において、第2壁72と第3壁73との間に位置している。突起部87は、カートリッジ7がホルダー25に装着された状態において、図3に示す係合穴37に嵌合する。また、図7(b)に示すように、第5壁75には、突起部88が設けられている。突起部88は、第5壁75から第4壁74側とは反対側(−X軸方向側)に向かって突出している。突起部88は、カートリッジ7がホルダー25に装着された状態において、図3に示すレバー35によって係止される。これにより、カートリッジ7がホルダー25に固定することができる。第2壁72において、周壁86によって囲まれた領域内で且つ供給口85のフィルター135の外側の領域に、連通孔91が設けられている。連通孔91は、凹部65の内側と第1ケース62の外側との間を貫通している。
また、カートリッジ7は、図5に示すように、弁ユニット101と、コイルばね103と、受圧部としての受圧板105と、可撓部としてのシート部材107と、を有している。シート部材107は、合成樹脂(例えば、ナイロンや、ポリプロピレン等)により形成され、可撓性を有する。シート部材107は、第2ケース63の第1ケース62側に設けられている。シート部材107は、第1ケース62のシート接合部81に接合されている。本実施形態では、シート部材107は、溶着によってシート接合部81に接合されている。これにより、第1ケース62の凹部65が、シート部材107によって塞がれている。凹部65とシート部材107とによって囲まれた領域は、収容部109と呼ばれる。そして、シート部材107によって塞がれた凹部65内、すなわち収容部109内にインクが収容される。このため、本実施形態では、シート部材107が収容部109の壁の一部を構成している。
前述したように、第1ケース62では、図6に示すように、凹部65が仕切壁83によって第1凹部65Aと第2凹部65Bとに仕切られている。このため、シート部材107がシート接合部81に接合されると、収容部109が第1収容部109Aと第2収容部109Bとに仕切られる。第1収容部109Aが第1凹部65Aに対応する。第2収容部109Bが第2凹部65Bに対応する。上述したように、シート部材107は、可撓性を有している。このため、第1収容部109Aの容積を変化させることができる。シート部材107は、第1収容部109Aの容積の変化に追従し易いよう、あらかじめ凹部65の内面67に沿って押し伸ばされた状態で第1ケース62に接合されている。
コイルばね103は、図5に示すように、シート部材107の第1ケース62側に設けられており、凹部65内に収容されている。コイルばね103は、円錐台形状に巻かれている。なお、図5では、コイルばね103が簡略化されている。受圧板105は、コイルばね103のシート部材107側に設けられている。つまり、受圧板105は、コイルばね103とシート部材107との間に介在している。受圧板105は、第2ケース63に対向しており、シート部材107に接している。コイルばね103の下底部分は、第1壁71に当接している。コイルばね103の上底部分は、受圧板105のシート部材107側の面とは反対側の面に当接している。また、コイルばね103の上底部分は、受圧板105の略中央部分に当接する。なお、受圧板105は、ポリプロピレン等の合成樹脂や、ステンレスなどの金属により形成される。受圧板105と、シート部材107のうちの受圧板105に接する部分とは、直接的あるいは間接的にコイルばね103から圧力を受ける部材であるため、これらをまとめて「受圧部」と捉えることが可能である。
コイルばね103は、受圧板105をシート部材107側(第2ケース63側)に向かって付勢する。言い換えると、コイルばね103は、Y軸負方向に受圧板105を付勢する。すなわち、コイルばね103は、収容部109の容積を拡大する方向に受圧板105を付勢する付勢部材としての機能を有する。第2ケース63は、シート部材107の受圧板105側とは反対側に設けられている。第2ケース63は、シート部材107を覆うように第1ケース62に取り付けられている。これにより、シート部材107が外部から保護される。
弁ユニット101は、凹部65の内側に設けられている。シート部材107は、凹部65を弁ユニット101ごと覆っている。シート部材107の弁ユニット101に重なる部位には、通気孔111が形成されている。また、第2ケース63には、大気連通孔113が設けられている。そして、シート部材107と第2ケース63との間の空間は、大気連通孔113を介してカートリッジ7の外側と連通している。このため、シート部材107と第2ケース63との間の空間には、大気が介在している。
なお、シート部材107と第2ケース63との間の空間は、大気室115と呼ばれる。大気連通孔113は、大気室115に通じている。本実施形態では、連通孔91が大気室115に通じている。つまり、本実施形態では、周壁86によって囲まれた空間は、連通孔91から大気室115を介して大気連通孔113に通じている。
また、カートリッジ7は、図5に示すように、プリズムユニット121と、シート部材123と、を有している。ここで、第1ケース62の第2壁72には、図8に示すように、開口部125が設けられている。開口部125は、プリズムユニット121によって第1ケース62の外側から塞がれている。そして、プリズムユニット121は、図9に示すように、開口部125を介して第1ケース62の外部から第1ケース62の内部に突出するプリズム122を備えている。
プリズム122は、光学的にインクを検出するための検出部として機能する。プリズム122は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂により形成された光透過性を有する部材である。プリズム122を構成する部材は、適度な光透過性を持っていれば、透明でなくても良い。収容部109内のインクは、例えば次のように検出される。プリンター5に、発光素子と受光素子を備えた光学センサーが設けられている。発光素子から、プリズム122に向けて光が射出される。インクがプリズム122の周辺に存在する場合は、ほとんどの光はプリズム122を透過して、収容部109内へ向う。一方、インクがプリズム122の周辺に存在しない場合は、発光素子から射出された光の大部分はプリズム122の2つの反射面によって反射され、受光素子に到達する。受光素子に光が到達したかどうかに基づいて、収容部109内のインクが残りわずかであること、または、収容部109内にインクがないことをプリンター5が判定する。なお、この判定は、プリンター5の制御部21によって行われる。
また、第1ケース62の第2壁72には、図8に示すように、凹部126が設けられている。凹部126は、X軸方向において、供給口85とプリズム122との間となる位置に、設けられる。凹部126は、第2壁72の外側から凹部65の方に向かって凹んでいる。第2壁72には、凹部126内から凹部65内に通じる連通孔127と、連通孔128と、が設けられている。連通孔127及び128は、凹部65内に設けられている。凹部126は、シート部材123によって、第1ケース62の外側から塞がれている。
連通孔127は、図9に示すように、第1凹部65A内から凹部126内に通じている。連通孔128は、凹部126内から第2凹部65B内に通じている。つまり、第1凹部65Aと第2凹部65Bとは、連通孔127、凹部126、及び連通孔128を介して互いに通じている。このため、第1収容部109Aと第2収容部109Bとは、連通孔127、凹部126、及び連通孔128を介して互いに通じている。なお、図9では、連通孔127と連通孔128とをXZ平面で切断したときの断面が示されている。
第6壁76の凹部65側とは反対側、すなわち第6壁76の外側には、図8に示すように、回路基板141が設けられている。回路基板141は、第6壁76に沿って延伸している。このため、回路基板141は、第2壁72及び第5壁75のそれぞれに対して傾斜している。回路基板141は、第3壁73側から第2壁72側に近づくにつれて第4壁74に近づく向きに傾斜している。回路基板141の第6壁76側とは反対側の面には、ホルダー25の接点機構27(図3)に接触する複数の端子143が設けられている。回路基板141の第6壁76側には、不揮発性メモリーなどの記憶装置(図示せず)が設けられている。
カートリッジ7がホルダー25に装着された状態において、複数の端子143は、図3に示す接点機構27に電気的に接触する。接点機構27は、フレキシブルケーブル23(図1)を介して制御部21に電気的に接続されている。そして、接点機構27とカートリッジ7の記憶装置とが、回路基板141を介して電気的につながることによって、制御部21とカートリッジ7の記憶装置との間で各種情報の伝達が可能となる。
上記の構成を有するカートリッジ7は、図10に示すように、ホルダー25に装着された状態において、レバー35によって位置が固定される。カートリッジ7がホルダー25に装着されると、周壁86がパッキン57に当接し、周壁86によって囲まれた領域内に突出部53が挿入される。つまり、周壁86は、突出部53よりも外側から流路51を囲む。そして、周壁86によって囲まれた領域内において、フィルター135がフィルター55に接触する。これにより、収容部109内のインクは、供給口85からフォーム133及びフィルター135を経て、フィルター55から流路51に供給することができる。
このとき、周壁86は、突出部53よりも外側から流路51を囲んだ状態で、パッキン57に当接している。これにより、周壁86とパッキン57とによって囲まれた空間の気密性が高められる。このため、インクがカートリッジ7から流路51に供給されるときに、突出部53に囲まれた領域の外側にこぼれたインクがパッキン57と周壁86とによってせき止められる。
本実施形態でのカートリッジ7におけるインクの流れと、大気の流れについて説明する。カートリッジ7において、インク161は、図11(a)に示すように、第1ケース62とシート部材107とによって区画される収容部109に収容されている。収容部109は、仕切壁83によって、第1収容部109Aと第2収容部109Bとに仕切られている。ケース61の内部には、カバーバルブ163と、レバーバルブ165と、ばね部材167と、を含む弁ユニットが設けられている。
カバーバルブ163には、大気導入口171が設けられている。大気導入口171は、カバーバルブ163を貫通している。大気導入口171は、カートリッジ7内において、第1収容部109Aの内部と、収容部109の外部にある大気室115とを連通させる連通路として機能する。すなわち、大気導入口171は、収容部109に大気を導入する際の入口となる。レバーバルブ165は、カバーバルブ163の第2ケース63側とは反対側に設けられている。レバーバルブ165は、弁部173と、レバー部175と、を含む。弁部173は、カバーバルブ163の大気導入口171に重なっている。レバー部175は、弁部173から、受圧板105と第1壁71の内面67との間の領域内に延在している。ばね部材167は、レバーバルブ165のカバーバルブ163側とは反対側に設けられている。ばね部材167は、レバーバルブ165の弁部173をカバーバルブ163側に向かって付勢している。これにより、カバーバルブ163の大気導入口171が、弁部173によって塞がれている。以下において、大気導入口171が弁部173によって塞がれている状態は、大気導入口171が閉状態であると表現される。
収容部109内のインク161が消費されていくと、受圧板105は、図11(b)に示すように、第1壁71の内面67側に向かって変位し、第1収容部109Aの容積が減少する。受圧板105が第1壁71の内面67側に向かって変位すると、受圧板105がレバー部175を第1壁71の内面67側に向かって押す。これにより、弁部173の姿勢が変化し、弁部173とカバーバルブ163との間に隙間が発生する。これにより、大気導入口171と第1収容部109Aとが連通する。以下において、弁部173とカバーバルブ163との間に隙間が発生することによって、大気導入口171と収容部109とが連通する状態は、大気導入口171が開状態であると表現される。大気導入口171が開状態になると、収容部109の外側にある大気室115の大気が大気導入口171を通って第1収容部109Aの内部に流入する。
大気が大気導入口171を通って第1収容部109Aの内部に流入すると、受圧板105は、図11(c)に示すように、第2ケース63側に向かって変位する。つまり、大気が大気導入口171を通って第1収容部109Aの内部に流入することによって、図11(b)に示す状態に比較して、第1収容部109Aの容積が増大する。これにより、収容部109内の負圧が軽減する(大気圧に近づく)。そして、第1収容部109Aにある程度の大気が導入されると、受圧板105がレバー部175から離れる。これにより、弁部173が大気導入口171を塞ぐ。すなわち、大気導入口171が閉状態となる。このように、収容部109のインク161の消費に伴って、収容部109内の負圧が大きくなると一次的に大気導入口171が開状態になることで収容部109内の圧力を適切な圧力範囲に維持することが可能となる。
以上説明したとおり、本実施形態のカートリッジ7は、使用途中で大気導入口171から収容部109内に大気が導入される半密閉タイプのカートリッジである。カートリッジ7は、収容部109内のインクが消費されるのに伴い、前記収容部109の容積が小さくなるとともに負圧が大きくなり、負圧が所定の大きさに達すると、弁部173が大気導入口171を開放して収容部109内に外気が導入され、その後、弁部173が前記大気導入口171を閉じるように、構成される。
本実施形態では、連通孔91は、周壁86によって囲まれた領域内から、第1ケース62の第2壁72を貫通して、大気室115に連通している。つまり、周壁86によって囲まれた領域内と大気室115とが、連通孔91を介して連通している。大気室115は、第2ケース63とシート部材107との間の隙間を介して大気連通孔113に連通している。このため、周壁86によって囲まれた領域内は、ケース61内を通ってケース61の外側に通じている。これにより、周壁86によって囲まれた領域の内部をカートリッジ7の外側から封止したときに、周壁86によって囲まれた領域内の圧力と、ケース61の外部の圧力(大気圧)との差異を軽減することができる。
本実施形態では、カートリッジ7をプリンター5に装着するときに、ホルダー25内において、周壁86によって囲まれた領域が封止された状態になる。そして、周壁86によって囲まれた領域が封止された状態で、周壁86によって囲まれた領域内のフィルター135がプリンター5側のフィルター55(図3)に当接する。これにより、インク161が周壁86によって囲まれた領域内から外に漏出することを抑えることができる。カートリッジ7のプリンター5への装着に際して周壁86によって囲まれた領域が封止されるとき、周壁86によって囲まれた領域内の圧力が高くなることがある。このとき、周壁86によって囲まれた領域内の圧力の上昇によって、周壁86によって囲まれた領域内の大気がフィルター135を通って収容部109内に流入することがある。大気が収容部109内に流入すると、流入した大気が気泡となってプリンター5の印刷ヘッド19に到達することが考えられる。印刷ヘッド19内に気泡が混入すると、気泡によってインク161の吐出性能が低下することがある。
このようなことに対して、本実施形態では、周壁86によって囲まれた領域の内部が、連通孔91、大気室115、及び大気連通孔113を介して第1ケース62の外側に通じている。このため、カートリッジ7のプリンター5への装着に際して周壁86によって囲まれた領域が封止されるとき、周壁86によって囲まれた領域内の圧力が高くなっても、周壁86によって囲まれた領域内の大気を連通孔91、大気室115、及び大気連通孔113を介して第1ケース62の外側に逃がすことができる。また、例えば、温度変化による大気の膨張などによって、周壁86によって囲まれた空間の圧力が上昇したときに、周壁86によって囲まれた空間の大気をカートリッジ7の外側に逃がすことができる。これにより、周壁86によって囲まれた領域内の圧力と、第1ケース62の外部の圧力(大気圧)との差異を軽減することができる。この結果、印刷ヘッド19におけるインクの吐出性能を高く維持しやすい。
[再充填カートリッジの製造方法]
カートリッジ7の製造方法について説明する。本実施形態では、インクが消費され、インク残量が所定値以下になった使用後のカートリッジに対し、インクを再び注入すること(再充填処理)によってカートリッジ7を製造する方法を説明する。以下では、使用後のカートリッジ7に対してインクを再び注入することによって製造されたカートリッジ7のことを、「再充填カートリッジ」という。再充填カートリッジは、「リサイクルカートリッジ」とも呼ばれる。
本実施形態における再充填カートリッジの製造方法は、図12に示すように、カートリッジ7を準備する準備工程S10と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する排出工程S20と、収容部109にインクを再充填する注入工程S30と、情報更新工程S40と、を含む。
準備工程S10では、インクが消費され、インク残量が所定値以下になった使用後のカートリッジを準備する。
排出工程S20は、準備工程S10で準備したカートリッジ7の収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する工程である。例えば、使用後のカートリッジの場合、収容部109に空気や古いインクが残存していることが多い。このような場合に排出工程S20を実施すると、新たに注入するインクIKに混入する古いインクや空気を少なくすることができる。排出工程S20は、省略することも可能である。
注入工程S30では、収容部109にインクを再充填する。排出工程S20と注入工程S30は、様々な方法で実施することができる。排出工程S20と注入工程S30の詳細については、後に、実施例を挙げて詳述する。
情報更新工程S40は、カートリッジ7の回路基板141に設けられたメモリーのインク消費量に関する情報を使用可能値に書き換える工程である。インクが使用され、カートリッジ7のインク残量が所定値以下になった場合、メモリーに所定値以下となったインク残量を表す情報が記憶されている場合がある。この場合、プリンター5は、カートリッジ7にインクが入っていないと判断し、正常な印刷動作に移行しない場合がある。本実施形態では、情報更新工程S40において、メモリーのインク消費量に関する情報をインクが所定値以上入っていることを示す使用可能値に更新する。これにより、カートリッジ7をプリンター5に装着したときに、プリンター5が正常に印刷動作に移行する。インクを再充填するだけで良い場合は、工程S40は不要である。また、工程S40は、記憶装置の情報を書き換える以外にも、回路基板141を交換するなど、他の方法によっても実施できる。
[実施例1]
実施例1では、再充填工程S30の実施例として、収容部109に直接通じる注入口181を設け、この注入口181からインクを再充填する例を説明する。図13では、注入口181を、第1ケース62の第3壁73に形成している。注入口181を形成する位置は、収容部109に直接通じる位置であれば良く、図13の位置には限られない。第1ケース62の第3壁73の他の位置に形成しても良い。また、注入口181は、収容部109に直接通じる位置であれば、第3壁73以外の壁、すなわち、第1壁71、第2壁72、および第4壁74から第7壁77までのいずれかに形成しても構わない。さらに、プリズムユニット121(図8)や、シート部材123(図8)のように、第1ケース62の一部とみなすことができる場所に、注入口181を形成しても構わない。
そして、図13に示すように、注入口181からインクIKを再充填する。実施例1において、プリズムユニット121に注入口181を形成した場合、プリズムユニット121が光透過性を有しているので、インクIKの注入量を視認しやすい。
インクIKを再充填した後、図14に示すように、注入口181を封止部材185で封止する。図14では、実施例1に対して、板材で構成された封止部材185を接着剤で第1ケース62に接合することによって注入口181を封止する例が示されている。封止部材185としては、樹脂やゴムなどからなる板材やシート材、接着剤、樹脂やゴムなどによる栓などが挙げられる。注入口181を封止する方法は、板材の接着には限られない。たとえば、再充填工程S30を実施する前に、自己封止機能を持つ封止部材185で注入口181を塞ぎ、封止部材185に注入針を突き刺して、注入針を介してインクIKを再充填した後、注入針を抜けば、封止部材185の自己封止機能によって、自動的に注入口181を封止することが可能である。このように、自己封止機能を有する封止部材185を利用すれば、注入針229を抜き取るときに、注入口181から大気が収容部109内に流入することを防ぎやすい。
[実施例2]
実施例2では、再充填工程S30の第2の実施例として、収容部109に直接通じる注入口181を設け、この注入口181からインクを再充填するもう1つの例を説明する。実施例1では、注入口181を第1ケース62に形成したのに対し、実施例2では、注入口181をシート部材107に形成している。実施例2は、注入口181を形成する位置が実施例1と異なるが、それ以外は、効果や変形例も含め、実施例1と同様である。
実施例2では、図15に示すように、第2ケース63に設けた開口部183を介してシート部材107に注入口181を形成する。そして、注入口181からインクを再充填した後、図16に示すように、注入口181を封止する。
開口部183は、第2ケース63の一部を除去することによって形成することができる。また、シート部材107における注入口181の位置は、収容部109に直接通じる位置であれば良く、特に限定されない。シート部材107における注入口181の位置としては、受圧板105に重なる位置であっても、受圧板105に重なる領域の外側であってもよい。開口部183は、第2ケース63ではなく、第1ケース62に形成しても良い。つまり、開口部183は、ケース61の一部を除去することによって形成することができる。
開口部183の大きさや形状は、任意であり、図15に示したような比較的小さな円形状には限定されない。キリのような工具で第2ケース63とシート部材107とを同時に貫くことで、開口部183と注入口181を同時に形成しても良い。この場合、開口部183は、注入口181とほぼ同じ大きさでほぼ同じ形状となる。
また、第2ケース63に開口部183を形成する代わりに、第2ケース63をすべて除去してしまっても良い。
ここで、第2ケース63を除去した状態や、第2ケース63が接合されていない状態を、「第2ケース63が無い状態」という。また、「第2ケース63が無い状態」も、ケースの61の一部を除去することに含まれるものとする。
第2ケース63が無い状態にすれば、収容部109が露出し、収容部109の内部が視認しやすくなる。よって、カートリッジ製造の作業、特にインクの再充填を、効率良く実施することが可能となる。なお、実施例1では、第2ケース63が無い状態で、再充填工程S30(図12)を実施する必然性は無い。しかし、実施例1においても、このような状態でインクの再充填工程を実施すれば、カートリッジ製造の作業、特にインクの再充填を、効率良く実施することが可能となる。
また、実施例2では、注入口181の形成及び封止に関して、実施例1で説明したような方法以外に、次のような方法も採用できる。まず、ケース61の一部を除去した後、注入口181を形成する前に、シート部材107の一部に自己封止機能を持つ封止部材185を接着などで取付ける。次に、封止部材185の上からシート部材107を貫通するように注入針を突き刺すことで、注入口181を形成する。最後に、注入針を介してインクIKを再充填した後、注入針を抜けば、封止部材185の自己封止機能によって、自動的に注入口181を封止することが可能である。このように、自己封止機能を有する封止部材185を利用すれば、注入針229を抜き取るときに、注入口181から大気が収容部109内に流入することを防ぎやすい。
[実施例3]
実施例3では、第1ケース62に、注入口181に加え排出口187を形成し、排出工程S20や再充填工程S30において、排出口187を利用する例を説明する。実施例3では、図17に示すように、実施例1(図13,図14)の注入口181に加え、第1ケース62に排出口187を形成する。排出口187は、第1ケース62の外側から収容部109内に通じている。排出口187を利用する点以外は、効果や変形例も含め、実施例1と同様である。
実施例3によれば、注入口181からインクIKを再充填するときに、収容部109内の大気を排出口187から収容部109の外側に逃がすことができる。つまり、収容部109内の大気を排出口187から収容部109の外側に逃がしながら、インクIKを収容部109内に再充填することができる。これにより、インクIKを収容部109内に導入しやすいので、再充填にかかる時間を短縮することができる。
また、実施例3によれば、インクIKを再充填する前に、排出工程S20を実施することも可能である。例えば、注入口181から洗浄液を注入し、排出口187から洗浄液を排出することで、収容部109の内部を洗浄すればよい。または、排出口187から洗浄液を注入し、注入口181から排出するようにしても良い。収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを、洗浄によって排出した後に、インクIKを再充填することで、より品質の高いカートリッジを得ることが可能となる。
また実施例3では、インクの再充填が終わった後に、注入口181と排出口187とを封止する。排出口187の封止方法については、注入口181の封止方法と同様の方法を採用することができる。注入口181の封止と、排出口187の封止とは、どちらか一方を先に実施しても、同じタイミングで実施してもよい。
なお、排出口187を形成する場所は、収容部109に直接通じる位置であればよく、先に説明した注入口181と同様、第1ケース62上の様々な位置に形成することができる。
また、排出工程S20は、先に説明した洗浄以外にも、次のような方法によって実施可能である。収容部109を実質的に密閉した状態で(排出口187のみにおいて収容部109を外部に開放した状態で)、排出口187から収容部109内を吸引する。または、ケース61の一部を除去し、収容部109を実質的に密閉した状態で(排出口187のみにおいて収容部109を外部に開放した状態で)、シート部材107を収容部109の容積が減少する向きに押圧する。いずれの場合も、排出口187から、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出することができる。また、排出工程S20において、注入口181から収容部109内に空気を送り込み、その圧力で排出口187から収容部109内のインクやゴミなどを排出するようにしても良い。
[実施例4]
実施例4では、シート部材107に、注入口181に加え排出口187を形成し、排出工程S20や再充填工程S30において、排出口187を利用する例を説明する。実施例3では、図18に示すように、実施例2(図15、図16)の注入口181に加え、シート部材107に排出口187を形成する。排出口187は、排出工程S20や再充填工程S30において、実施例3の排出口187と同じように利用されることで、実施例3で説明したのと同様の効果をもたらす。
実施例4では、インクの再充填が終わった後に、注入口181と排出口187とを封止する。排出口187は、先に説明した実施例2の注入口181の封止方法と同様の方法で封止することができる。注入口181の封止と、排出口187の封止とは、どちらかを先に実施しても、両方を同じタイミングで実施してもよい。
排出口187を形成する位置は、収容部109に直接通じる位置であれば良く、先に説明した実施例2の注入口181と同様、シート部材107上の様々な位置に形成することが可能である。また、図18に示すように、実施例4において、注入口181と排出口187は、開口部183を介して形成されている。この開口部183は、実施例2の開口部183と同様の位置、大きさ、形状で形成することができる。図18では、注入口181と排出口187が、共通の開口部183を介して形成されている。しかし、これらを別々の開口部を介して形成するようにしても良い。このような別々の開口部も、実施例2の開口部183と同様の方法によって形成することができる。また、キリのような工具で第2ケース63とシート部材107とを2箇所貫くことで、第1の開口部と注入口181とを同時に形成し、第2の開口部と排出口187とを同時に形成するようにしても良い。また、実施例2と同様、第2ケース63に開口部183を形成する代わりに、第2ケース63が無い状態にしても良い。第2ケース63が無い状態にすれば、カートリッジ製造の作業、特にインクの再充填を、効率よく実施することが可能となる。
要するに、実施例4の注入口181と排出口187は、いずれもケース61の一部を除去することによって形成することが可能であり、除去する部分は、注入口181と排出口187とで共通の位置であっても良いし、異なる位置であっても良い。
[実施例5]
実施例5では、第1ケース62に注入口181を形成し、シート部材107に排出口187を形成し、排出工程S20や再充填工程S30において、排出口187を利用する例を説明する。実施例5では、図19に示すように、実施例1(図13、図14)に示したカートリッジの注入口181に加え、シート部材107に排出口187を形成する。この排出口187は、実施例2の注入口181と同様、様々な方法で、様々な位置に、形成することができる。図19では、一例として、第2ケース63に設けた開口部183を介してシート部材107に排出口187を形成した様子を示している。この排出口187は、実施例3の排出口と同じように利用されることで、実施例3で説明したのと同様の効果をもたらす。
実施例5では、インクの再充填が終わった後に、注入口181と排出口187とを封止する。排出口187は、先に説明した実施例2の注入口181の封止方法と同様の方法で封止することができる。また、注入口181の封止と、排出口187の封止とは、どちらかを先に実施しても、両方を同じタイミングで実施してもよい。
[実施例6]
実施例6では、シート部材107に注入口181を形成し、第1ケース62に排出口187を形成し、排出工程S20や再充填工程S30において、排出口187を利用する例を説明する。実施例6では、図20に示すように、実施例2(図15、図16)に示したカートリッジの注入口181に加え、第1ケース62に排出口187を形成する。この排出口187は、実施例1の注入口181と同様、様々な方法で、様々な位置に、形成することができる。図20では、一例として、第3壁73の中央付近に排出口187を形成した様子を示している。この排出口187は、実施例3の排出口と同じように利用されることで、実施例3で説明したのと同様の効果をもたらす。
実施例6では、インクの再充填が終わった後に、注入口181と排出口187とを封止する。排出口187は、先に説明した実施例1の注入口181と同様の方法で封止することができる。また、注入口181の封止と、排出口187の封止とは、どちらかを先に実施しても、両方を同じタイミングで実施してもよい。
[実施例7]
実施例3〜実施例6の排出口187を設ける代わりに、大気導入口171を開状態として、これを排出口として利用することが可能である。大気導入口171を排出口として利用することで、実施例3〜実施例6と同様の効果を得ることができる。この方法によれば、排出口187を省略することができる。排出工程S20や注入工程S30において、排出口を利用する具体的な方法については、実施例3で述べたとおりであるため、詳細な説明を省略する。大気導入口171を開状態にするには、図21に示すように、例えば、弁部173に図中の矢印方向に外力を作用させれば良い。すなわち、弁部173を押すことで、大気導入口171を強制的に開放すれば良い。
図22には、上記実施例1に対して、大気導入口171を排出口として利用する例を示している。また、図23には、上記実施例2に対して、大気導入口171を排出口として利用する例を示している。いずれも、第2ケース63に開口部191を形成している。開口部191は、第2ケース63をY軸方向に平面視したときに大気導入口171に重なる領域に形成される。開口部191によって、大気導入口171を露出させることができる。そして、開口部191を介して弁部173に外力を作用させることによって、大気導入口171を開状態にすることができる。
開口部191を形成する位置は、大気導入口171を露出させることができる位置であれば良く、図21〜図23の位置には限られない。開口部191の大きさや形状は、任意であり、図21〜図23に示したような比較的小さな円形状には限定されない。キリのような工具で第2ケース63を貫くのと同時に弁部173を押圧するようにしても良い。また、第2ケース63に開口部191を形成する代わりに、第2ケース63が無い状態にしても良い。第2ケース63が無い状態にすれば、カートリッジの製造、特にインクの再充填を、効率良く実施することが可能となる。
要するに、大気導入口171は、ケース61の一部を除去することによって露出させることが可能である。
実施例3〜6では、インクの再充填が終わった後に、排出口187を封止していた。実施例7では、大気導入口171を閉状態とすることで、排出口187としての大気導入口171を封止することが可能である。具体的には、弁部173に作用させていた外力(図21の矢印方向の力)を取り除くことで、大気導入口171を閉じる。また、もし、大気導入口171を強制的に開放する過程で、弁部173を破壊してしまった場合は、実施例3〜6と同様の方法で、大気導入口を封止すれば良い。注入口181の封止と、排出口としての大気導入口171の封止(大気導入口171を閉状態とする作業)は、どちらかを先に実施しても、両方を同じタイミングで実施してもよい。
実施例7によれば、排出口187を省略することができるため、実施例3〜6よりも簡単に、カートリッジを製造することが可能となる。
[実施例8]
実施例3〜実施例6の排出口187を設ける代わりに、供給口85を排出口として利用することが可能である。供給口85を排出口として利用することで、実施例3〜実施例6と同様の効果を得ることができる。排出工程S20や注入工程S30において、排出口を利用する具体的な方法については、実施例3で述べたとおりであるため、詳細な説明を省略する。この方法によれば、排出口187を省略することができる。
図24には、上記実施例1に対して、供給口85を排出口として利用する例を示している。また、図25には、上記実施例2に対して、供給口85を排出口として利用する例を示している。
実施例8によれば、排出口187を省略することができるため、実施例3〜6よりも簡単に、カートリッジを製造することが可能となる。また、大気導入口171を露出したり強制的に開放したりする必要が無いため、実施例7よりも簡単に、カートリッジを製造することが可能となる。
[実施例9]
上記実施例1や実施例2では、カートリッジ7に注入口181を形成し、この注入口181から収容部109内にインクIKを再充填していた。しかしながら、注入口181を形成することなく、供給口85から収容部109内にインクIKを再充填することも可能である。注入口181を形成することなく、供給口85から収容部109内にインクIKを再充填する例を、実施例9とする。実施例9では、図26に示すように、フィルター135を介して供給口85からインクIKを再充填する。図26に示した例では、カートリッジ7を供給口85が上となるような姿勢にした状態で、インクIKを上方から滴下して再充填するようにしている。インクIKを上方から滴下することで、インクに圧力を作用させることができる。実施例9によれば、実施例1や実施例2のように、注入口181を形成したり封止したりする必要がないので、実施例1や実施例2の方法よりも簡単に、カートリッジを製造することができる。
[実施例10]
上記実施例9に対して、実施例3〜実施例6と同様に、排出口187を形成し、排出工程S20や再充填工程S30において、排出口187を利用するようにしても良い。図27には、第1ケース62の第1壁71に排出口187を形成した例を示す。
図27に示した例において、排出口187を形成する位置は、実施例3及び実施例6と同様、収容部109に直接通じる位置であれば良く、第1ケース62の第1壁71には限定されない。
さらに、図28には、シート部材107に排出口187を形成した例を示す。図28に示した例において、排出口187を形成する位置は、実施例4及び5と同様、収容部109に直接通じる位置であれば良く、図28に示したような位置には限定されない。
これらの排出口187は、実施例3〜実施例6の排出口187と同じように利用されることで、実施例3〜実施例6で説明したのと同様の効果をもたらす。なお、排出口187の位置や形状、排出口187を形成する方法、排出口187を封止する方法については、先に実施例3〜実施例6で説明したとおりであるため、その詳細な説明を省略する。
[実施例11]
上記実施例9に対して、実施例10の排出口187を設ける代わりに、大気導入口171を開状態として、これを排出口として利用することで、実施例10と同様の効果を得ることができる。また、この方法によれば、排出口187を省略することができるので、実施例7と同様の効果を得ることができる。大気導入口171を開状態にする方法や、インクの再充填が終わった後に排出口としての大気導入口171を封止する方法は、変形例を含め、先に実施例7で説明したとおりであるため、詳細な説明を省略する。
図29には、上記実施例9に対して、大気導入口171を排出口として利用する例を示している。実施例11では、第2ケース63に開口部191を形成し、そこから大気導入口171を押し開ける。開口部191は、実施例7で説明した開口部191と同じような位置、大きさ、形状、及び方法で形成することができる。
実施例11によれば、排出口187を省略することができるため、実施例10よりも簡単に、カートリッジを製造することが可能となる。
[実施例12]
上記実施例9に対して、収容部109を圧縮させる力を付与することで、排出工程S20を実施することが可能である。また、収容部109の容積を拡張させる力を付与することで、再充填工程S30を実施することが可能である。このような力は、収容部109の外側の空間を加圧したり減圧したりすることによって、付与することが可能である。
図30及び図32には、実施例9に対して、収容部109の外側の空間、すなわち大気室115を加圧することで、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを供給口85から排出する例を示している。
また、図31及び図33には、実施例9に対して、収容部109の外側の空間、すなわち大気室115を減圧することで、収容部109にインクIKを再充填する例を示している。
図30に示した例では、連通孔91からインクや大気が流入しないように、連通孔91を栓93などで塞ぐ。そして、供給口85をインク漕95に浸す。その後、加減圧装置97を大気連通孔113に取り付け、図30中に矢印で示したように、大気連通孔113を介してカートリッジ内部を加圧する。すると、大気室115が加圧され、収容部109が圧縮される。この力によって収容部109内の物質、たとえばインクや空気などが供給口85から排出される。次に、加減圧装置97によってカートリッジ内部を減圧する。具体的には、図30の状態から加圧を解除して、大気室115を大気圧に戻す。すると、図31中に矢印で示したように、大気室115が減圧され、シート部材107が収容部109の容積を拡張する向きに引っ張られる。そして、この力によって、インクIKがフィルター135を介して供給口85から収容部109内に引き込まれる。
一方、図32に示した例では、大気連通孔113を栓93などで塞ぎ、加減圧装置98を連通孔91に取り付ける。そして、図32中に矢印で示したように、連通孔91を介してカートリッジ内部を加圧する。すると、大気室115が加圧され、収容部109が圧縮される。この力によって収容部109内の物質、たとえばインクや空気などが供給口85から排出される。次に、加減圧装置98によってカートリッジ内部を減圧する。具体的には、図32の状態から加圧を解除して、大気室115を大気圧に戻す。すると、図33中に矢印で示したように、大気室115が減圧され、シート部材107が収容部109の容積を拡張する向きに引っ張られる。そして、この力によって、インクIKがフィルター135を介して供給口85から収容部109内に引き込まれる。
実施例12によれば、インクIKを再充填する前に、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出することで、より品質の高いカートリッジを製造することが可能となる。また、インクIKを再充填する際に、収容部109の外側を減圧することによって、インクIKを収容部109内に引き込むような力を付与することで、再充填にかかる時間を短縮することができる。また、本実施例によれば、カートリッジに孔を開けたり傷をつけたりすることなく、排出工程や再充填工程を実施できるため、実施例10や実施例11よりも簡単に、カートリッジを製造することができる。さらに、図30と図31に示した例では、大気連通孔113を利用して、大気室115の加圧と減圧を行っている。また、図32と図33に示した例では、連通孔91を利用して、大気室115の加圧と減圧を行っている。このように、実施例12では、排出工程と再充填工程を、同じ孔を利用して連続的に実施することが可能であるため、効率よくカートリッジを製造することができる。
[実施例13]
実施例12では、収容部109を圧縮させたり拡張させたりする力を付与するために、大気連通孔113や連通孔91を利用して、大気室115を減圧していた。その代わりに、第2ケース63が無い状態で、収容部109の外側の空間を加圧・減圧することも可能である。図34には、実施例9に対して、第2ケースが無い状態で、収容部109の容積を圧縮させる力を付与する例を示している。また、図35には、実施例9に対して、第2ケースが無い状態で、収容部109の容積を拡張させる力を付与する例を示している。
実施例13では、まず、第2ケース63を除去する。また、第2ケースが無い状態で、連通孔91からインクや大気が流入しないように、連通孔91を栓93などで塞ぐ。そして、供給口85をインク漕95に浸す。その後、図34に示すように、シート部材107の収容部109とは反対側に、加減圧装置99を取り付ける。これによって、収容部109と対応する領域をシールする。このとき、加減圧装置99によって収容部109の外側に形成された気密な空間197が、実施例12の大気室115に対応する空間となる。その状態で、図34中に矢印で示したように、空間197を加圧すると、収容部109が圧縮される。この力によって収容部109内の物質、たとえばインクや空気などが供給口85から排出される。次に、加減圧装置99によって空間197を減圧する。具体的には、図34の状態から加圧を解除して、空間197を大気圧に戻す。すると、図35中に矢印で示すように、空間197が減圧され、シート部材107が収容部109の容積を拡張する向きに引っ張られる。そして、この力によって、インクIKがフィルター135を介して供給口85から収容部109内に引き込まれる。
実施例13によれば、インクIKを再充填する前に、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出することで、より品質の高いカートリッジを製造することが可能となる。また、インクIKを再充填する際に、収容部109の外側を減圧することによって、インクIKを収容部109内に引き込むような力を付与することで、再充填にかかる時間を短縮することができる。また、本実施例によれば、排出工程と再充填工程を、同じ空間197を利用して連続的に実施することが可能であるため、効率良くカートリッジを製造することができる。
[実施例14]
実施例12や実施例13では、収容部109を圧縮させる力や拡張させる力を収容部の外側から付与していた。その代わりに、供給口85から収容部109を減圧することで、このような力を付与することが可能である。
図36には、実施例9に対して、供給口85から収容部109を減圧することで、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出し、その後、供給口85からインクIKを再充填する例を示している。実施例14では、まず、連通孔91から大気が流出しないように、連通孔91を栓93などで塞ぐ。次に、供給口85を減圧注入装置100で覆う。具体的には、供給口85の内部が気密状態となるようにする。その状態で、供給口85を介して収容部109を減圧する。具体的には、図36中に矢印で示したように、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを吸引することで、外部に排出する。このとき、収容部109は圧縮される。
次に、減圧注入装置100によって、供給口85から収容部109へインクを送出する。具体的には、図37中に矢印で示したように、供給口85へインクを送出する。先に収容部109が減圧されて圧縮されているため、収容部109内の圧力と、収容部109の外側の大気圧との差は大きくなっている。よって、供給口85へ送出されたインクは、収容部109内外の圧力差によって生じる力を利用して、円滑に収容部109内に引き込まれる。
実施例14によれば、インクIKを再充填する前に、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出することで、より品質の高いカートリッジを製造することが可能となる。また、インクIKを再充填する際に、収容部109を減圧することによって、インクIKを収容部内に引き込むような力を付与することで、再充填にかかる時間を短縮することができる。また、実施例14によれば、カートリッジに孔を開けたり傷をつけたりすることなく、排出工程や再充填工程を実施できるため、実施例10や実施例11よりも簡単に、カートリッジを製造することができる。さらに、実施例14では、排出工程と再充填工程を、同じインク供給口85を利用して連続的に実施することが可能であるため、効率よくカートリッジを製造することができる。
[実施例15]
供給口85から収容部109内にインクIKを再充填する際には、収容部109内の負圧を利用することが可能である。本実施形態のカートリッジ7では、付勢部材としてのコイルばね103によって、収容部109の容積を拡張する向きにシート部材107が付勢されている。よって、収容部109がある程度圧縮された状態であれば、収容部109内に負圧が発生する。例えば、使用終了直後のカートリッジであれば、インクが消費されたことで、収容部109が圧縮されている。すなわち、収容部109が減圧された状態となっている。このとき大気連通孔113は閉状態となっているため、大気連通孔113から収容部109に空気が流入することはない。また、供給口85のフィルター135がインクで濡れている限り、供給口85から収容部109に空気が流入することもない。また、仮にフィルター135が乾いて収容部109に空気が流入していた場合でも、ケース61の一部を除去するなどして、シート部材107の外側から収容部109を押圧することで、収容部109を圧縮する、すなわち収容部109を減圧することが可能である。
このように、本実施形態のカートリッジ7では、収容部109内に負圧が発生した状態を容易に作り出すことができる。収容部109内に負圧が発生した状態であれば、図38に示したように、供給口85をインク漕95に浸すだけで、供給口85から収容部109にインクが引き込まれていく。
すなわち、図38に示したように、収容部109内に負圧が発生した状態のカートリッジの供給口85をインク漕95に浸して、収容部109内に発生した負圧を利用することで、供給口85から収容部109にインクを再充填するようにしても良い。このようにすれば、実施例12〜実施例14で説明したような加圧や減圧を行うことなく、簡単にインクを再充填することが可能である。
[実施例16]
収容部109を圧縮させたり拡張させたりする力を付与するのに、減圧雰囲気を利用しても良い。実施例16では、このように、減圧雰囲気を利用することで、収容部109を圧縮させたり拡張させたりする力を付与する例を説明する。
まず、図39に示すように、大気圧雰囲気で連通孔91と大気連通孔113とを塞ぐ。つまり、大気室115を密閉空間にする。そして、インク供給口85をインク漕95に浸す。次に、図39の状態を維持したまま、カートリッジを減圧雰囲気に置く。たとえば、図40に示すように、連通孔91及び大気連通孔113を塞ぎ、インク供給口85をインク漕95に浸した状態のカートリッジを減圧容器199に収容してから、減圧容器199内を減圧する。減圧容器199は、減圧環境に耐え得る強度を有する容器である。このとき、大気室115は密閉されているため、大気圧のまま維持される。一方、収容部109はインク供給口85を通じて外部雰囲気と連通している。よって、収容部109は減圧され、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などが、インク供給口85を介して外部へ排出される。
最後に、図41に示すように、図40の状態を維持したまま、カートリッジを大気圧雰囲気に戻す。図39に示した工程で、収容部109は減圧されて圧縮されているのに対し、大気室115は大気圧のままである。よって、収容部109内の圧力と、大気室115の大気圧との差は大きくなっている。インクIKは、収容部109の内外の圧力差によって生じる力を利用して、円滑に収容部109内に引き込まれる。
実施例16によれば、インクIKを再充填する前に、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出することで、より品質の高いカートリッジを製造することが可能となる。また、インクIKを再充填する際に、収容部109が減圧されていることによって、インクIKを収容部109内に引き込むような力が生じているので、再充填にかかる時間を短縮することができる。また、実施例16によれば、カートリッジに孔を開けたり傷をつけたりすることなく、排出工程や再充填工程を実施できるため、実施例10や実施例11よりも簡単に、カートリッジを製造することができる。さらに、実施例16では、排出工程と再充填工程を、同じインク供給口85を利用して連続的に実施することが可能であるため、効率よくカートリッジを製造することができる。
[製造装置1]
次に、カートリッジ7の製造装置の例について説明する。第1の製造装置211は、図42に示すように、ドリル装置213と、注入装置215と、封止部材形成装置217と、ドリル駆動回路219と、注入駆動回路221と、塗布駆動回路223と、制御部225と、を有している。この製造装置211は、実施例1及び実施例2で説明した再充填カートリッジの製造方法に適用することができる。
ドリル装置213は、第1ケース62やシート部材107に注入口181を形成する装置であり、孔開け部材227を有している。ドリル装置213は、孔開け部材227を回転駆動することによって、第1ケース62やシート部材107に注入口181を形成する。ドリル駆動回路219は、制御部225からの指令に基づいて、ドリル装置213の駆動を制御する。
注入装置215は、注入口181からインクIKを注入する装置であり、注入部材としての注入針229を有している。注入装置215は、注入口181に挿入された注入針229から収容部109内にインクIKを注入する。注入駆動回路221は、制御部225からの指令に基づいて、注入装置215の駆動を制御する。
封止部材形成装置217は、注入口181を封止するための装置であり、封止部材185(図14、図16)を形成するための封止材231を、注入口181に塗布する。封止材231は、液状を呈している。塗布された封止材231が固化すると、封止部材185(図14、図16)が形成され、注入口181が封止される。封止部材形成装置217は、封止材231を塗布するための塗布針233を有している。塗布駆動回路223は、制御部225からの指令に基づいて、封止部材形成装置217の駆動を制御する。
製造装置211において、ドリル装置213を省略し、注入装置215の注入針229をケース61に直接的に突き刺すことによって注入口181を形成することも可能である。すなわち、注入針229を、穴あけ部材として利用することが可能である。また、この場合に、先に実施例1及び実施例2で説明したように、注入針229をケース61に直接的に突き刺す前に、封止材231によってケース61に自己封止機能を有する封止部材185(図14、図16)を形成し、封止部材185に注入針229を突き刺してインクIKを注入した後、注入針229を抜けば、封止部材185の自己封止機能によって、自動的に注入口181を封止することが可能でなる。このように、自己封止機能を有する封止部材185を利用すれば、注入針229を抜き取るときに、注入口181から大気が収容部109内に流入することを防ぎやすい。
また、自己封止機能を持つ封止部材185としては、ゴム栓のようなものも考えられる。この場合は、封止材231を塗布する代わりに、注入口181をゴム栓によって封止すれば良い。
この製造装置211を、実施例3〜6で説明した再充填カートリッジの製造方法に適用する場合は、排出口187を形成する手段と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出するための排出手段と、排出口187を封止する手段が必要である。実施例3〜実施例6の場合、排出口187を形成する手段は、図42に点線で示したように、ドリル装置213によって実現することが可能である。排出口を封止する手段は、封止部材形成装置217によって実現することが可能である。排出手段は、例えば、図42に点線で示したように、ポンプ駆動回路235と、吸引ポンプ237と、排出口187(図17〜図20)とポンプ237とを接続する排出路239とによって構成することができる。
このとき、ドリル装置213を省略し、排出路235を針のようなもので構成し、これをケース61に直接的に突き刺すことによって排出口187を形成することも可能である。すなわち、排出路235を、穴あけ部材として利用することが可能である。また、この場合に、上述の注入口181と同様、自己封止機能を有する封止部材を利用すれば、排出口187から大気が収容部109内に流入することを防ぎやすい。
さらに、この製造装置211を、実施例7で説明した再充填カートリッジの製造方法に適用する場合は、大気導入口171(図21〜図23)を開状態にする手段と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出するための排出手段が必要である。例えば、図42に点線で示した排出路239を針のようなもので構成し、これをケース61に直接的に突き刺すことによって、大気導入口171を開状態にするとともに、大気導入口171と吸引ポンプ237とを接続するようにすれば良い。
さらに、この製造装置211を、実施例8で説明した再充填カートリッジの製造方法に適用する場合は、排出路239によって、ポンプ237と、排出口としての供給口85とを接続すれば良い。
以上の説明をまとめると、実施例1及び実施例2で説明した再充填カートリッジの製造方法を実現するための製造装置211は、注入口181を形成する機構と、インクIKを注入する機構と、注入口181を封止する機構とを備えていれば良い。そして、注入口181を形成する機構とインクIKを注入する機構は、1つの手段で実現することが可能である。
また、実施例3〜実施例6で説明した再充填カートリッジの製造方法を実現するための製造装置は、上記の製造装置211に加え、排出口187を形成する機構と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する機構と、排出口187を封止する機構とを備えていれば良い。そして、排出口187を形成する機構と収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する機構は、1つの手段で実現することが可能である。
さらに、実施例7で説明した再充填カートリッジの製造方法を実現するための製造装置は、上記の製造装置211に加え、大気導入口171を開状態にする機構と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する機構と、を備えていれば良い。これらの機構は、1つの手段で実現することが可能である。
さらに、実施例8で説明した再充填カートリッジの製造方法を実現するための製造装置は、上記の製造装置211に加え、供給口85から収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する機構を備えていれば良い。
なお、注入口181や排出口187の形成、インクIKの注入、封止部材185の形成などを、人の手で行うことも可能である。例えば、穴あけ部材と、注入部材と、封止部材とをセットにした製造キットを利用すれば、注入口181や排出口187の形成、インクIKの注入、封止部材185の形成を、手動で行うことが可能となる。なお、注入部材に、穴あけ部材の機能を持たせることも可能である。すなわち、実施例1〜実施例8で説明した再充填カートリッジの製造方法は、上記の各機構に対応する道具をセットにした製造キットにより、実現することが可能である。このような製造キットも、本発明の製造装置に含まれる。
[製造装置2]
カートリッジ7の製造装置の第2の例について説明する。第2の製造装置241は、図43に示すように、注入装置243と、注入駆動回路245と、制御部247と、を有している。注入装置243は、供給口85からインクIKを注入する装置であり、注入部材としての注入器249を有している。また、注入装置243は、キャップ251と、チューブ253と、栓255とを有している。栓255は、連通孔91を塞ぐ。キャップ251は、供給口85をフィルター135ごとカートリッジ7の外側から覆う。供給口85の開口がキャップ251に塞がれ、連通孔91が栓255によって塞がれることによって、供給口85の内部の空間が閉空間CSとなる。チューブ253は、この閉空間CSと注入器249とをつないでいる。この製造装置241は、実施例9で説明した再充填カートリッジの製造方法に適用することができる。
注入器249から吐出されたインクIKは、チューブ253を介してキャップ251の内部に注入される。つまり、注入器249は、キャップ251越しにインクIKを供給口85から収容部109内に注入する。注入駆動回路245は、制御部247からの指令に基づいて、注入器249の駆動を制御する。連通孔91は栓255で塞がれているため、インクIKが勢いよく注入されてフィルター135の外側に溢れた場合でも、連通孔91から収容部109の外側に侵入することを防ぐことができる。また、供給口85の内部の空間が閉空間CSとなっているため、インクIKが勢いよく注入されてフィルター135の外側に溢れた場合でも、供給口85の外へ溢れ出るのを防ぐことができる。
この製造装置241を、実施例10で説明した再充填カートリッジの製造方法に適用する場合は、排出口187(図27、図28)を形成する手段と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出するための排出手段と、排出口187を封止する手段が必要である。排出口187を形成する手段は、第1の製造装置211(図42)で説明したようなドリル装置213によって、実現することが可能である。排出口187を封止する手段は、第1の製造装置211(図42)で説明したような封止手段形成装置217によって、実現することが可能である。排出手段は、第1の製造装置211(図42)で説明したような、ポンプ駆動回路235と、吸引ポンプ237と、排出口187とポンプ237とを接続する排出路239とによって構成することができる。
このとき、ドリル装置213を省略し、排出路235を針のようなもので構成し、これをケース61に直接的に突き刺すことによって、排出口187を形成することも可能である。すなわち、排出路235を、穴あけ部材として利用することが可能である。また、この場合に、第1の製造装置に関して説明したとおり、自己封止機能を有する封止部材を利用すれば、排出口187から大気が収容部109内に流入することを防ぎやすい。
さらに、この製造装置241を、実施例11で説明した再充填カートリッジの製造方法に適用する場合は、大気導入口171(図29)を開状態にする手段と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出するための排出手段が必要である。例えば、図42に点線で示した排出路239を針のようなもので構成し、これをケース61に直接的に突き刺すことによって、大気導入口171を開状態にするとともに、大気導入口171と吸引ポンプ237とを接続するようにすれば良い。
以上の説明をまとめると、実施例9で説明した再充填カートリッジの製造方法を実現するための製造装置241は、供給口85にインクを供給する機構を備えていればよい。また、この製造装置241は、インクが溢れて供給口85から外へ溢れ出るのを防ぐために、供給口85内部の空間を閉空間CSとするための機構を備えていることが好ましい。また、この製造装置241は、インクが連通孔91から収容部109の外側に侵入することを防ぐために、連通孔91を防ぐ機構を備えていることが好ましい。
また、実施例10で説明した再充填カートリッジの製造方法を実現するための製造装置241は、上記の製造装置241に加え、排出口187を形成する機構と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する機構と、排出口187を封止する機構とを備えていれば良い。そして、排出口187を形成する機構と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する機構は、1つの手段で実現することが可能である。
さらに、実施例11で説明した再充填カートリッジの製造方法を実現するための製造装置は、上記の製造装置241に加え、大気導入口171を開状態にする機構と、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する機構と、を備えていれば良い。そして、これらの機構は、1つの手段で実現することが可能である。
なお、実施例9〜実施例11で説明した再充填カートリッジの製造方法は、人の手によって実施することも可能である。例えば、実施例9で説明した再充填カートリッジの製造方法を実施するには、図44に示すように、注入器263と、キャップ251と、チューブ253と、栓255と、を有する製造キット(製造装置)261を利用すればよい。注入器263は、供給口85からインクIKを収容部109内に注入する器具である。図44では、注入器263の一例として注射器が示されている。キャップ251及びチューブ253は、それぞれ、製造装置241の構成と同一であるので、詳細な説明を省略する。
このように、実施例9〜実施例11で説明した再充填カートリッジの製造方法は、上記の各機構に対応する道具をセットにした製造キットにより、実現することが可能である。このような製造キットも、本発明の製造装置に含まれる。
[製造装置3]
再充填カートリッジの製造装置の第3の例について説明する。第3の製造装置271は、図45に示すように、注入装置243と、注入駆動回路245と、吸引装置273と、ポンプ駆動回路275と、制御部277と、を有している。注入装置243及び注入駆動回路245は、第2の製造装置241(図43)における注入装置243及び注入駆動回路245の構成と同一であるので詳細な説明を省略する。吸引装置273は、吸引ポンプ278と、チューブ279と、を有している。チューブ279は、キャップ251に接続されており、キャップ251の内部と吸引ポンプ278とをつないでいる。ポンプ駆動回路275は、制御部277からの指令に基づいて、吸引ポンプ278の駆動を制御する。また、注入装置243は、連通孔91を塞ぐ栓255を備える。キャップ251は、供給口85をフィルター135ごとカートリッジ7の外側から覆う。供給口85の開口がキャップ251に塞がれ、連通孔91が栓255に塞がれることによって、供給口85の内部の空間が閉空間CSとなる。この製造装置271は、実施例14で説明した再充填カートリッジの製造方法に適用することができる。
制御部277は、まず、吸引ポンプ278を駆動して、供給口85の内部の閉空間CSを吸引する。連通孔91は栓255で塞がれているため、吸引ポンプ278の吸引力は収容部109に作用し、収容部109内を減圧する。このとき、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などの少なくとも一部を供給口85からカートリッジ7の外側に排出することができる。その後、制御部277は、注入器249を駆動させて、インクIKを供給口85から収容部109内に注入する。このとき、連通孔91は栓255で塞がれているため、インクIKが勢いよく注入されてフィルター135の外側に溢れた場合でも、連通孔91から収容部109の外側に侵入することを防ぐことができる。また、このようにして溢れたインクIKが、供給口85の外へ漏れ出すことも防ぐことができる。
実施例14で説明した再充填カートリッジの製造方法を実現するための製造装置271は、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを供給口85から排出させる機構と、供給口85の内部を閉空間CSにする機構と、供給口85にインクを供給する機構とを備えていれば良い。
さらに、実施例14で説明したカートリッジ7の製造方法は、上記の各機構に対応する道具をセットにした製造キットにより、実現することが可能である。例えば、図46に示すように、注入器263と、キャップ251と、チューブ253と、バルブ293と、吸引器295と、チューブ297と、バルブ299と、栓255と、を有する製造キット(製造装置)291を利用すればよい。注入器263、キャップ251、及びチューブ253は、それぞれ、先に説明した製造キット261(図44)における構成と同一であるので、詳細な説明を省略する。バルブ293は、チューブ253に設けられており、注入器263とキャップ251との間の流路を開閉する。
吸引器295は、供給口85から収容部109内の物質、たとえばインクや空気などをカートリッジ7の外側に吸引する器具である。図46では、吸引器295の一例として注射器が示されている。チューブ297は、キャップ251に接続されており、キャップ251の内部と吸引器295とをつないでいる。バルブ299は、チューブ297に設けられており、吸引器295とキャップ251との間の流路を開閉する。吸引器295は、供給口85の内部の閉空間CSを吸引することによって、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などをカートリッジ7の外側に排出させる。
この製造キット291の利用方法は、次のとおりである。まず、カートリッジ7に、図46に示すような状態で製造キット291を取り付ける。そして、バルブ293を閉じることによって、注入器263とキャップ251との間の流路を閉じる。また、バルブ299を開くことによって、吸引器295とキャップ251との間の流路を開く。そして、吸引器295により、供給口85内部の閉空間CSを吸引することによって、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などをカートリッジ7の外側に排出する。
次に、バルブ299を閉じることによって、吸引器295とキャップ251との間の流路を閉じる。また、バルブ293を開くことによって、注入器263とキャップ251との間の流路を開く。そして、注入器263によって、インクIKを供給口85から収容部109内に注入する。
このように、実施例14で説明した再充填カートリッジの製造方法は、上記の各機構に対応する道具をセットにした製造キットにより、実現することが可能である。このような製造キットも、本発明の製造装置に含まれる。
[その他の製造装置]
以上、実施例1〜実施例8、実施例9〜実施例11、および実施例14の製造方法を実現するための製造装置1〜3について説明してきたが、これら以外の実施例の方法についても、これらの方法に含まれる各工程を実施できる機能を備えた製造装置や製造キットとして実現可能であることは言うまでもない。
[再充填後の収容部内の状態]
前述の各実施例に記載した再充填カートリッジの製造方法では、インクの再充填が完了した後に収容部109内に所定量の空気が存在するように、収容部109内にインクを再充填することが好ましい。例えば、インクの再充填時に、弁部173を破壊してしまい、カートリッジ7の使用時に、弁部173を通じて収容部109内に大気を導入できなくなっても、インクの再充填後に収容部109内に所定量の空気が存在していれば、インクが消費された後には、収容部109内に予め存在する空気がプリズム122に接触し、正常にインクの検出を行うことができる。そのため、インクの再充填が完了した後に収容部109内に所定量の空気が存在していれば、弁部173の破損等によって再充填カートリッジに大気が正常に導入できない不具合が生じた場合であっても、再充填カートリッジを正常に使用することができる。
また、インクの再充填後に収容部109内に所定量の空気が存在していれば、収容部109内の空気がクッションとなり、可撓性のシート部材107が破損しにくくなる。
また、インクの再充填後に収容部109内に所定量の空気が存在していれば、再充填するインクの種類によっては、収容部109内のインクが固まりにくくなる。例えば、ラジカル重合タイプのUVインク(光硬化型インク)は、空気が存在すると、酸素によって重合の進行が阻害され、固まりにくくなる。
インクの再充填後に収容部109内に存在させる空気の量は、インクの再充填が完了した後に、再充填カートリッジを、プリズム122(プリズムユニット121)が重力方向上側となる姿勢にした場合に、プリズム122(好ましくはプリズム122の表面全体)が空気と接触する量であることが好ましい。このような空気の量が収容部109内に存在していれば、インクが消費された際に、光学的に確実にインクの残存状態を検出することができる。プリズム122が重力方向上側となる姿勢とは、例えば、図26や図33に示した姿勢である。プリズム122が空気と接触するか否かは、図26や図33に示した姿勢において、プリズム122に光を射出し、その光がプリズム122の2つの反射面によって反射されたか否かを検出することで判断することができる。前述のように、プリズム122が空気と接触していれば、プリズム122によって、光が反射されるからである。もちろん、プリズム122が空気と接触しているか否かは、目視によって判断してもよい。
インクの再充填後に収容部109内に存在させる空気の量(所定量)は、より具体的には、収容部109の最大容積に対して、10%以上、32%以下となる量が好ましい。つまり、例えば、収容部109の最大容積が14.0mlであれば、空気の量は、1.5〜4.5mlとなる。空気の量が収容部109の容積に対して10%未満であれば、プリズム122によってインクを検出することが困難になる。また、32%を超える量であれば、再充填されるインクの量が少量となり、実用的な再充填カートリッジを得ることができない。
次に、インクの再充填が完了した後に収容部109内に所定量の空気が存在するように、インクを再充填する方法を説明する。このような方法としては、例えば、以下の3つの方法がある。
図47は、図12に示した再充填カートリッジの製造方法において、空気を収容部内に存在させるための第1の方法を説明する図である。図47以降に示す図において、図12に示した工程と同じ内容の工程については、図12と同じ工程番号を付している。また、図12に示した工程と同じ内容の工程については詳細な説明を省略する。この第1の方法では、インクを収容部109に再充填する再充填工程S30aにおいて、注入口181からインクと一緒に空気を注入する。インクと一緒に空気を注入するには、例えば、予め、気泡を混入させたインクを用意して、そのインクを注入すればよい。このような第1の方法であれば、図12に示した製造方法に対して大きな変更を加えることなく、空気を収容部109内に存在させることができるので、再充填カートリッジの製造を効率よく行うことができる。この方法は、上述した全ての実施例1〜16に対して適用可能である。
図48は、図12に示した再充填カートリッジの製造方法において、空気を収容部内に存在させるための第2の方法を説明する図である。この第2の方法では、インクを収容部109に再充填する再充填工程S30bにおいて、インクを収容部109に再充填した後に、注入口181あるいは排出口187を通じて、空気を収容部109に注入する。注入口181や排出口187は、収容部109に空気を注入した後に封止する。このような第2の方法によっても、図12に示した製造方法に対して大きな変更を加えることなく、空気を収容部109内に存在させることができるので、再充填カートリッジの製造を効率よく行うことができる。この第2の方法も、上述した全ての実施例1〜16に対して適用可能である。
図49は、図12に示した再充填カートリッジの製造方法において、空気を収容部内に存在させるための第3の方法を説明する図である。この第3の方法では、インクを収容部109に再充填する再充填工程S30cにおいて、インクを収容部109に再充填する前に、注入口181あるいは排出口187を通じて、空気を収容部109に注入する。このような第3の方法によっても、図12に示した製造方法に対して大きな変更を加えることなく、空気を収容部109内に存在させることができるので、再充填カートリッジの製造を効率よく行うことができる。この第3の方法も、上述した全ての実施例1〜16に対して適用可能である。
注入口181あるいは排出口187を通じて、空気を収容部109に注入するには、注入針229(図42)のような針を用意し、その針を注入口181あるいは排出口187に突き刺して、その針の穴を通じて空気を収容部109内に注入すればよい。もちろん、インクを注入するための注入針299をそのまま用いて、空気を注入してもよい。
上述した第3の方法では、インクを収容部109に再充填する前に、空気を収容部109に注入している。つまり、第3の方法では、空気を収容部109に存在させた状態で、インクの再充填を開始している。空気を収容部109に存在させた状態で、インクの再充填を開始するには、例えば、以下の方法を採用することも可能である。
図50は、空気を収容部109に存在させた状態で、インクの再充填を開始するための第1の方法を説明する図である。この方法では、図12に示した再充填カートリッジの製造方法から、単純に、排出工程S20を省略している。準備工程S10では、インクが消費され、インク残量が所定値以下になった使用後のカートリッジ7が準備される。こうして準備されるカートリッジ7は、プリズム122の周囲に空気が存在することによって、インク残量が所定値以下と判定されたカートリッジ7であるため、収容部109内に空気が存在している可能性が高い。そのため、図12に示した再充填カートリッジの製造方法から、排出工程S20を単純に省略することでも、空気を収容部109に存在させた状態で、インクの再充填を開始させることが可能である。このような方法によれば、図12に示した方法よりも工程を少なくすることができるので、再充填カートリッジの製造を効率的に行うことが可能になる。この方法は、排出工程S20が実施されない実施例1,2,9,15に対して適用することが可能である。
図51は、空気を収容部109に存在させた状態で、インクの再充填を開始するための第2の方法を説明する図である。この方法では、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などを排出する排出工程S20aにおいて、最終的に、所定量の空気を残すように収容部109からインクや空気の排出を行う。このような方法によれば、空気を注入する工程を追加する必要がないため、効率よく再充填カートリッジを製造することができる。この方法は、排出工程S20が実施される実施例3〜8,10〜14,16に対して適用することが可能である。
図52は、空気を収容部109に存在させた状態で、インクの再充填を開始するための第3の方法を説明する図である。この方法では、排出工程S20や再充填工程S30に先立ち、工程S15において、注入口181や排出口187を形成し、それと同時に収容部109に所定量の空気を注入する。このような方法によれば、空気を注入するための工程を別途追加する必要がないため、効率よく再充填カートリッジを製造することができる。この方法は、注入口181あるいは排出口187が形成される実施例1〜8,10に対して適用することが可能である。注入口181や排出口187を形成するのと同時に収容部109に所定量の空気を注入するには、例えば、注入針229(図42)のような針を穴あけ部材として用いて注入口181や排出口187を形成し、その針を通じて空気を収容部109内に注入すればよい。
図53は、空気を収容部109に存在させた状態で、インクの再充填を開始させるための第4の方法を説明する図である。この方法では、排出工程S20や再充填工程S30に先立ち、工程S16において、大気導入口171を開状態にし、それと同時に、大気導入口171を通じて収容部109に所定量の空気を注入する。このような方法によれば、空気を注入するための工程を別途追加する必要がないため、効率よく再充填カートリッジを製造することができる。この方法は、再充填カートリッジの製造時に大気導入口171が開状態にされる実施例7,11に適用することが可能である。なお、この第4の方法では、大気導入口171から空気を注入することから、実施例7,11のように、大気導入口171を通じて、収容部109内のインクや空気を排出する排出工程S20を省略してもよい。
以上で説明したような方法によって、インクの再充填開始時において、予め収容部109内に所定量の空気を存在させれば、プリズム122が重力方向上側となる姿勢においてインクの再充填を行うことにより、光学的にインク量の検出を行いながらインクを再充填することができる。収容部109内に予め空気が存在していれば、インクの再充填が進行するに連れ、その空気が徐々に重力方向上側に移動し、プリズム122に接触することになるからである。よって、過度にインクを充填してしまうことを抑制することができる。
また、インクの再充填開始時において、予め収容部109内に所定量の空気が存在していれば、収容部109内の空気が存在している部分をめがけてインクを注入することにより、インクをスムーズに収容部109内に充填することができる。つまり、収容部109内にインクを再充填するための流路を確保しやすくなる。
図47〜53に示した方法は、それぞれ組み合わせることが可能である。例えば、図47に示した方法によって空気を注入した後に、図48に示した方法によって空気を補充してもよい。また、図50〜53に示した方法によって、空気を収容部109に存在させた後に、図47〜49に示した方法によって、空気を補充してもよい。つまり、一度の注入によって、上述した所定量の空気を収容部109に存在させるのではなく、複数回の注入によって、上述した所定量の空気を収容部109に存在させてもよい。
[再充填後の受圧板の状態]
前述の各実施例における再充填カートリッジの製造方法では、インクを再充填した後に、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、第2ケース63と接触しないことが好ましい。
図54は、受圧板105と第2ケース63の接触状態の種々の例を示す図である。図54(a)には、受圧板105のコイルばね103を挟んだ部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63に全く接触していない状態を示している。図54(b)には、受圧板105のコイルばね103を挟んだ部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63に1箇所だけ接触している状態を示している。図54(c)には、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63に接触している状態を示している。受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63と接触しない状態とは、これらの図のうち、図54(a)または図54(b)に示した状態のことを指す。なお、「受圧板105が第2ケース63に接触する」とは、受圧板105が第2ケース63に直接的に接触することと、間接的に接触することとの両方を含む。そのため、受圧板105がシート部材107を介して間接的に第2ケース63に接触していることも、「受圧板105が第2ケース63に接触する」ことに含まれる。また、受圧板105の第2ケース63側の面全体が、第2ケース63に接触することも、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、第2ケース63と接触することに含まれる。
例えば、図54(c)に示すように、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、第2ケース63に接触するまでインクを収容部109内に再充填してしまうと、受圧板105が収容部109の容積を拡大する方向に移動することが、第2ケース63によって規制されてしまう。そのため、収容部109内の負圧を適正に維持することができなくなる。よって、収容部109内のインクが、供給口85から漏れ出してしまう場合がある。しかし、図54(a)または図54(b)に示したように、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63と接触しないように、インクを再充填すれば、第2ケース63によって、受圧板105の移動が規制されないため、収容部109内の負圧を適正に維持することが可能になる。よって、インクが供給口85から漏れにくくなり、品質の高い再充填カートリッジを製造することができる。よって、再充填カートリッジの輸送時や販売時にインクが漏れだしてパッケージの内部を汚してしまう可能性を低減できる。また、顧客がパッケージを開封したとたんに、供給口85からインクが漏れだして、顧客の手や衣服、あるいは机や床などを汚してしまう可能性を低減できる。
受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63と接触しないようにインクを再充填する方法には、例えば、以下の2つの方法がある。
図55は、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63と接触しないように、インクを再充填する第1の方法の流れを示す図である。この図55に示した処理は、図12に示した再充填工程S30の中で実施される処理である。この第1の方法では、図55に示すように、収容部109へのインクの再充填を開始した後(工程S31a)、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、第2ケース63と接触する前に、インクの再充填を止める(工程S32a)。このような方法であれば、インクの再充填後に、収容部109内のインク量を調整する必要がないため、インクを無駄にすることがない。
図55に示した方法において、「第2ケース63が無い状態」でインクを再充填すれば、収容部109を構成するシート部材107の位置が目視で確認できるため、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63と接触するか否かを確認しながらインクの再充填を行うことができる。「第2ケース63が無い状態」でなくても、例えば、第1ケース62や第2ケース63が光透過性の材料で作られている場合や、第1ケース62や第2ケース63に、観測用の窓が形成されている場合には、外部からシート部材107の位置を確認することが可能である。また、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63と接触しないことになるインクの量を予め定めておき、その量のインクを再充填すれば、シート部材107の位置を確認せずとも、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63と接触しない状態にすることが可能である。
図56は、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、インクの再充填が完了した後に第2ケース63と接触しないように、インクを再充填する第2の方法の流れを示す図である。この図56に示した処理は、図12に示した再充填工程S30の中で実施される処理である。この第2の方法では、図56に示すように、収容部109への印刷材の再充填が終了した後(工程S31b)、受圧板105のコイルばね103を挟んで2箇所以上の部分が、第2ケース63と接触しなくなるまで、収容部109からインクを排出する(工程S32b)。このような方法であれば、インクの再充填中にシート部材107の位置を観測する必要がない。また、再充填するインク量を予め定めておく必要がない。よって、再充填カートリッジを容易に製造することが可能である。
図56に示した方法では、例えば、インクの再充填後に、注入口181または供給口85からインクを吸引することで、収容部109からインクを排出することができる。この場合、注入口181は、インクの吸引後に封止する。また、図56に示した方法において、「第2ケース63が無い状態」でインクを再充填した場合には、例えば、インクの再充填後に、収容部109を押圧することで、注入口181または供給口85を通じて収容部109からインクを排出することができる。この場合、注入口181は、インクの排出後に封止する。
上述した各実施例において、インクを再充填した後の収容部109内の負圧の絶対値は、収容部109内に空気を存在させるか否かにかかわらず、100Pa以上4000Pa以下であることが好ましい。収容部109内の負圧の絶対値がこの範囲であれば、プリンター5に対して正常にインクを供給することができる。よって、プリンター5は、再充填カートリッジを用いて、正常にインクを吐出することができる。
上述した各実施例において、収容部109に再充填を行うインクの量は、収容部109内に空気を存在させるか否かにかかわらず、1.0g以上100.0g以下、または1.0ml以上100.0ml以下であることが好ましい。再充填を行うインクの量が100.0gを超える場合や、100.0mlを超える場合には、オンキャリッジタイプのプリンター5に再充填カートリッジを搭載した場合に、キャリッジ17に負担がかかり、正常に印刷を行うことができない可能性がある。また、再充填を行うインクの量が1.0g未満または1.0ml未満では、使用できるインクが少なすぎて実用的な再充填カートリッジを得ることができない。
上述した各実施例において、収容部109にインクを再充填した後には、供給口85に層状に設けられたフォーム133およびフィルター135のうち、最も先端側に位置する位置するフィルター135の全面が、インクで濡れた状態になることが好ましい。このようにインクが再充填されれば、フィルター135の全面にメニスカスが形成されるため、収容部109内に所定量以上の空気が流入してしまうことを抑制することができる。収容部109内に所定量以上の空気が流入してしまうと、収容部109内の負圧が適正な範囲内に維持できなくなり、インクをプリンター5に供給できなくなる可能性があるが、上記のように、フィルター135の全面がインクで濡れた状態になれば、このような問題が解消される。また、再充填後にフィルター135の全面がインクで濡れた状態を維持するために、供給口85にキャップ(図示省略)を取り付けておくとよい。このようなキャップは、例えば特開2012−35489号公報に開示されている。
[変形例1]
実施例2や実施例4など、いくつかの実施例において、第2ケース63が無い状態で再充填カートリッジを製造する方法を説明したが、これら以外の実施例(実施例12を除く)の製造方法も、第2ケース63が無い状態で実施することが可能である。第2ケース63が無い状態で排出工程S20や再充填工程S30を実施すれば、収容部109内の物質、たとえばインクや空気などの排出状況、収容部109の減圧の状況、収容部109内へのインクIKの注入状況など、各工程における収容部109の状況を把握しやすい。また、第2ケース63が無い状態で排出工程S20や再充填工程S30を実施すれば、これらの工程における種々の作業が実施しやすくなる。なお、第2ケース63が無い状態で排出工程S20や再充填工程S30を実施した後に、第2ケース63を第1ケース62に接合することは必須ではない。第2ケース63が無い状態のままでもカートリッジとしての機能は失われないので、そのままの状態としておいても良い。もちろん、取り外した第2ケース63を再度第1ケース62に接合するようにしても良いし、第2ケース63を取り外すことで露出した第1ケース62の開口を別の部品で覆うようにしても良い。
[変形例2]
また、実施例3〜実施例6では、それぞれ、注入口181と排出口187とを別々に形成していたが、実施例14で供給口85を注入口と排出口の両方の機能として利用していたように、注入口181に排出口187としての機能を持たせること可能である。この場合は、実施例14と同様、注入口181を介して収容部109を減圧した後、注入口181を介してインクを再充填することになる。
[変形例3]
変形例2と同様に、実施例7において、大気導入口171を注入口と排出口の両方の機能として利用することが可能である。この場合は、実施例14と同様、大気導入口171を介して収容部109を減圧した後、大気導入口171を介してインクを注入することになる。
[変形例4]
実施例1〜6および実施例8において、注入口181を形成する代わりに、大気導入口171を注入口として利用することが可能である。この場合は、注入口181を形成する代わりに、実施例7で説明したような方法で大気導入口171を開放し、そこからインクを注入することになる。
[変形例5]
上記各実施例では、使用途中で大気導入口171から収容部109内に大気が導入される半密閉タイプの再充填カートリッジを製造する方法について説明した。これに対して、実施例7,11を除く各実施例は、大気導入口171や弁部173を備えず、使用途中で収容部109内に大気が導入されない密閉タイプの再充填カートリッジを製造する方法にも適用可能である。
[変形例6]
上記カートリッジ7では、コイルばね103が、受圧板105と第1ケース62との間に設けられているが、コイルばね103は、受圧板105(シート部材107)と第2ケース63との間に設けられていてもよい。この場合、コイルばね103は、受圧板105を第2ケース63側に引っ張ることにより、収容部109内を負圧にすることができる。
[変形例7]
本発明は、インクジェットプリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の印刷材を噴射する任意の印刷装置及びそのカートリッジにも適用することができる。例えば、以下のような各種の印刷装置及びそのカートリッジに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射する印刷装置。(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材を噴射する印刷装置。(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む印刷材を噴射する印刷装置。(5)精密ピペットとしての試料印刷装置。(6)潤滑油の印刷装置。(7)樹脂液の印刷装置。(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する印刷装置。(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する印刷装置。(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する印刷装置。(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させるヘッドを備える印刷装置。
なお、「液滴」とは、印刷装置から吐出される印刷材の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、「印刷材」とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「印刷材」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「印刷材」に含まれる。上記のような「印刷材」を、「液体」あるいは「液状体」とも表現することができる。液体や液状体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。