JP2015009343A - 砥粒電着液,固定砥粒型ソーワイヤの製造方法,及び固定砥粒型ソーワイヤ - Google Patents
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Description
脱イオン水,純水,超純水等のイオンが除去された水10000質量部に,酸化チタン,酸化ジルコニウム等の粒径6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部と,砥粒50〜700質量部を添加すると共に,電気伝導度が500μS/cm以下となるようにアクリル酸エステルを0.5〜25質量部の範囲で添加して電着液を得る工程と,
前記電着液を使用した電着により,ワイヤの表面に砥粒を付着させる砥粒付着工程と,
前記砥粒付着工程で砥粒が付着されたワイヤの表面に,電気めっきにより金属めっき層を形成する砥粒固定工程を含むことを特徴とする(請求項2)。
ワイヤの外周面に砥粒が固定された固定砥粒ソーワイヤにおいて,
前記砥粒が,アクリル酸エステル,及びアクリル酸エステルで被覆された粒径6〜40nmの酸化物粉末を表面に付着させた状態で,前記ワイヤの表面に形成されたNiめっき等の金属めっき層に一部露出した状態で埋設されることにより前記ワイヤの表面に固定されていることを特徴とする(請求項3)。
本発明の固定砥粒型ソーワイヤは,図1に示すように,所定の組成を有する砥粒電着液を使用してワイヤの表面に砥粒を付着させる砥粒付着工程と,この砥粒付着工程によって砥粒の付着が行われた後のワイヤ表面に対し,Niめっき等の金属めっきを行うことで,砥粒をワイヤの表面に固定する,砥粒固定工程の二工程を経て製造される。
母材となるワイヤとしては,固定砥粒型ソーワイヤの芯線として一般的に使用されているピアノ線や硬鋼線等の鋼線を使用することができるが,砥粒の電着時,及び後述する電気めっきに際し,ワイヤは電極として機能するものであることから,少なくともその表面が導電性を有することが必要である。
脱脂等の処理により表面に付着した汚れが除去された前述のワイヤは,本発明の砥粒電着液に浸漬されて,砥粒の電着が行われる。
ここで使用する砥粒電着液は,脱イオン水,純水,超純水等のイオンが除去された水を溶媒とし,この水10000質量部に6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部と,砥粒50〜700質量部,及び,出来上がりの砥粒電着液の電気伝導度が30〜500μS/cmとなるようにアクリル酸エステルを0.5〜25質量部の範囲で添加したものであり,このような配合により,コロイド粒子である酸化物粉末が所定の極性に帯電して安定した分散状態を有すると共に,中性あるいは略中性である砥粒電着液が得られる。
本発明の砥粒電着液では,溶媒としてイオンが除去された水を使用する。このような水は,一例として不純物を濾過した水道水中のイオンを,更にイオン交換樹脂によって除去して得た脱イオン水,あるいは純水,脱イオン水や純水では除去対象としない有機物や微粒子,気体などについても更に除去して得た超純水等はいずれも使用可能であり,前述したように水道水より精製して得る他,市販されている脱イオン水,純水(精製水),超純水を購入して使用しても良い。本実施形態にあっては,水道水よりイオン交換樹脂を用いて生成した脱イオン水を使用した。
ナノレベルの粒径を有する酸化物粉末としては,酸化チタンや,酸化ジルコニウムの粉末を使用することができる。
砥粒電着液に添加する砥粒としては,ソーワイヤの用途に応じて各種の材質の砥粒を使用することができ,ダイヤモンド砥粒(Ni被覆,Ti被覆その他の金属被覆も含む),cBN(立方晶窒化硼素)砥粒等の超硬質砥粒の他,切断対象とするワークの材質に対応し,Al2O3,SiC等のセラミック系砥粒を使用することも可能であり,本実施形態にあっては,ダイヤモンド砥粒を使用している。
アクリル酸エステルには,代表的なものとしてアクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸2-エチルヘキシル,アクリル酸2-ジメチルアミノエチル,アクリル酸2-ヒドロキシエチルがあるが,これらは全て,本発明における分散剤として使用可能であると共に,その他のアクリル酸エステルについても使用可能である。
以上のようにして得られた砥粒電着液を入れた電着層内にワイヤを浸漬すると共に,ワイヤと電着層内の電極間に電圧,一例として5〜50Vを印加することで,ワイヤの表面に対する砥粒の付着が行われる。
以上のようにしてワイヤ表面に付着した砥粒は,アクリル酸エステルの粘着力によってワイヤ表面に付着されているとは言え,大きな力を加えれば,ワイヤの表面より脱落してしまう。
(1)前処理工程
ブラスめっきが施された直径0.12mmのワイヤを,市販の電解脱脂剤(株式会社ムラタ製「RCS−21」)に常温で6秒間浸漬した後,水洗して脱脂を行った。
脱脂後のワイヤを,砥粒を含んだ電着液がそれぞれ入った電着槽に浸漬し,砥粒の付着を行った。
実施例1〜8,及び比較例1,2の方法で砥粒の付着を行ったワイヤに対し,スルファミン酸Niめっき浴により,実施例1〜5では5μm,実施例6〜7では10μm,実施例8では25μm厚のNiめっきを施すことにより,砥粒をワイヤの表面に固着して,固定砥粒型ソーワイヤを得た。
以上のようにして得られた実施例1〜8及び比較例1〜3の固定砥粒型ソーワイヤについて,以下の点を評価した。評価結果を,表3に示す。
砥粒電着液毎の砥粒の析出速度を評価するため,各ソーワイヤ毎の砥粒の付着密度(1mm2あたりの砥粒の付着数)を測定した。
実施例1〜5及び比較例1〜3のソーワイヤ50cmを一定の張力を付与した状態で切断機に取り付けると共に単結晶シリコン及び多結晶シリコンのインゴットに押し当て,1往復/1秒のペースで30分間往復させて,各ソーワイヤにおける「砥粒の固着強度」と,「切断性能」を評価した。
(1)砥粒電着液の性能
本発明の砥粒電着液を使用した実施例1〜5では,いずれも,1秒以下という短い処理時間で250個/mm2以上という高い付着密度で砥粒を付着させることができた。
比較例1〜3のソーワイヤでは,いずれも砥粒残存率95%以上を達成できたものが存在しなかった。
Claims (3)
- イオンが除去された水10000質量部と,6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部,アクリル酸エステル0.5〜25質量部,及び,砥粒50〜700質量部を含み,電気伝導度が500μS/cm以下であることを特徴とする砥粒電着液。
- イオンが除去された水10000質量部に,6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部と,砥粒50〜700質量部を添加すると共に,電気伝導度が500μS/cm以下となるようにアクリル酸エステルを0.5〜25質量部の範囲で添加して電着液を得る工程と,
前記電着液を使用した電着により,ワイヤの表面に砥粒を付着させる砥粒付着工程と,
前記砥粒付着工程で砥粒が付着されたワイヤの表面に,電気めっきにより金属めっき層を形成する砥粒固定工程を含むことを特徴とする固定砥粒ソーワイヤの製造方法。 - ワイヤの外周面に砥粒が固定された固定砥粒ソーワイヤにおいて,
前記砥粒が,アクリル酸エステル,及びアクリル酸エステルで被覆された粒径6〜40nmの酸化物を表面に付着させた状態で,前記ワイヤの表面に形成された金属めっき層に一部露出した状態で埋設されることにより前記ワイヤの表面に固定されていることを特徴とする,固定砥粒型ソーワイヤ。
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