JP2015009227A - フッ素樹脂製微小孔径膜、その製造方法、及び多孔質フッ素樹脂膜複合体 - Google Patents

フッ素樹脂製微小孔径膜、その製造方法、及び多孔質フッ素樹脂膜複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】限外濾過膜等として使用可能な微細な孔径を有しかつ高い透過性を有するフッ素樹脂製微小孔径膜及びその製造方法、並びにそのフッ素樹脂製微小孔径膜とその支持体を組合せてなる多孔質フッ素樹脂膜複合体を提供する。【解決手段】平滑な箔上に、平均粒子径が220nm以下のフッ素樹脂粒子を分散媒中に分散してなるフッ素樹脂ディスパージョンを塗布し、その後、乾燥、焼結により無孔質フッ素樹脂膜を成膜し、前記無孔質フッ素樹脂膜を、フッ素樹脂の融点より20℃低い温度とその融点間の温度に8時間以上保ちフッ素樹脂を再結晶化して、前記平滑な箔を除去し、その除去後、前記無孔質フッ素樹脂膜を延伸して多孔質膜とする方法により、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜を製造する。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂からなる多孔質膜であって、精密濾過膜や限外濾過膜としても使用可能な微小孔径を有するフッ素樹脂製微小孔径膜に関する。本発明は、又、このフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法、及びこのフッ素樹脂製微小孔径膜とその支持体を組合せてなる多孔質フッ素樹脂膜複合体に関する。
耐薬品性、耐熱性が優れるPTFE等のフッ素樹脂からなる微小孔径膜(多孔質膜)は、微細な粒子を濾過する濾過膜等に用いられている。このような微小孔径膜は、無孔質のPTFE膜を作製しそれを延伸して多孔質化する方法により製造することができる。無孔質のPTFE膜の作製方法としては、例えば、特開平5−32810号公報(特許文献1)等に開示されているキャスティング法が知られている。キャスティング法とは、PTFE微粒子を液体に分散させたディスパージョンを基体にコーティングして膜状とした後、液体を除去するとともに融点以上に加熱して樹脂を焼結して成膜する方法である。
濾過膜に用いるフッ素樹脂製微小孔径膜には、微細な粒子の濾過分別を可能とする微細な孔径が求められる。さらに、大きな濾過流量を可能にし濾過の処理効率(生産性)を上げるために、高い透過性も求められる。
高い透過性は、無孔質のフッ素樹脂膜を延伸して多孔質化する際の延伸比を上げて多孔質膜の気孔率を増大させることにより得ることができる。しかし、一般に、延伸比を増大させると気孔径も増大し微細な粒子の濾過分別ができなくなる。このような問題を解決し、微細な粒子の濾過分別を可能とする微小孔径を有するとともにより高い透過性を得るための方法が、特公表2009−501632号公報(特許文献2)や特開2011−52175号公報(特許文献3)等において種々提案されている。
特開平5−32810号公報 特公表2009−501632号公報(段落0012) 特開2011−52175号公報
しかし、特許文献2に開示されているPTFE多孔質膜(フッ素樹脂製微小孔径膜)の最も小さな平均径は50nm(0.050μm)程度である(図6)。近年は、より微細な孔径を有するPTFE多孔質膜、例えば分子量50000程度のポリエチレングリコールの除去を可能にするような限外濾過膜が望まれているが、特許文献2に開示されているPTFE多孔質膜ではこの目的の使用は困難であり、孔径がより小さい膜が望まれる。又、特許文献3には、平均径15nm以下の多孔質フッ素樹脂複合体(フッ素樹脂製微小孔径膜とその支持体との組合せ)が開示されているが、その複合体を構成するフッ素樹脂製微小孔径膜(フッ素樹脂薄膜)の膜厚は約1μmでありながらその複合体のガーレー秒は378秒以上(膜厚を2μmとしたときは1500秒以上と考えられる)であり透過性は充分ではないことが示されている。このように、未だ、前記のような限外濾過膜等として充分使用可能な微細な孔径を有しかつ高い透過性を有するフッ素樹脂製微小孔径膜は得られていなかった。
本発明の課題は、先ず、前記の限外濾過膜等として充分使用可能な微細な孔径を有し、かつ高い透過性を有するフッ素樹脂製微小孔径膜、具体的には、孔径の微細さを示す指標である平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒(JIS−P8117)が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜及びその製造方法を提供することにある。なお、ガーレー秒は透気性を表す指標であるが、透気性と液体の透過性は高い相関があると考えられ、小さなガーレー秒は液体の大きな透過性を示すと言える。
本発明は、又、前記のフッ素樹脂製微小孔径膜とその支持体を組合せてなる多孔質フッ素樹脂膜複合体を提供することを課題とする。
本発明の第1の態様は、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜である。
本発明の第2の態様は、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法であって、
平滑な箔上に、平均粒子径が220nm以下のフッ素樹脂粒子を分散媒中に分散してなるフッ素樹脂ディスパージョンを塗布する工程、
前記塗布後、前記分散媒を乾燥しその後フッ素樹脂粒子を焼結して無孔質フッ素樹脂膜を成膜する工程、
前記無孔質フッ素樹脂膜を、前記フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の融点より20℃低い温度とその融点間の温度に8時間以上保ちフッ素樹脂を再結晶化する工程、
前記成膜後、前記平滑な箔を除去する工程、及び、
前記平滑な箔の除去後、前記無孔質フッ素樹脂膜を延伸し平均径が15nm以下の多孔質膜とする工程、
を含むフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法である。
本発明の第3の態様は、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜、及び前記フッ素樹脂製微小孔径膜に接着固定され平均径が50nmより大きい多孔質の支持体層を含む多孔質フッ素樹脂膜複合体である。
本発明の第1の態様のフッ素樹脂製微小孔径膜は、限外濾過等の濾過膜として使用可能な微細な孔を有する多孔質膜であるとともに、高い透過性を有し、濾過膜として使用したときは高い処理効率を得ることができる。
本発明の第2の態様のフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法によれば、平均径が15nm以下の微細孔径を有し、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下であり高い透過性を有するフッ素樹脂製微小孔径膜を得ることができる。
本発明の第3の態様の多孔質フッ素樹脂膜複合体は、前記フッ素樹脂製微小孔径膜の優れた特性を有するとともに、機械的強度等にも優れ、ハンドリングが容易なものである。
次に、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。なお、本発明は以下に示す具体的な形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り他の形態へ変更することができる。
本発明者は、上記課題を達成するべく鋭意検討の結果、平均粒子径が220nmより小さいフッ素樹脂粒子のディスパージョンを用いて前記のキャスティング法により無孔質フッ素樹脂膜を形成し、その無孔質フッ素樹脂膜を延伸してフッ素樹脂製微小孔径膜を作製するとともに、その無孔質フッ素樹脂膜を所定の温度に所定時間保持してフッ素樹脂を再結晶化(アニール)することにより、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜が得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
本発明はその第1の態様として、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜を提供する。
このフッ素樹脂製微小孔径膜は、平均径が15nm以下であるので、液体中の非常に微細な粒子の濾過を可能にする濾過膜とすることができ、例えば、分子量50000程度のポリエチレングリコールの除去を可能にする限外濾過膜として充分用いることができる。又、膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下であり、液体の透過性も高いことが示されているので、限外濾過膜等の濾過膜として用いるとき、操作圧力を下げることができ、又は濾過流量を上げて処理効率を向上することができる。さらに、この膜は、フッ素樹脂製の膜であるので耐薬品性、耐熱性等に優れている。
第1の態様の好ましい態様としては、平均径が10nm以下であるフッ素樹脂製微小孔径膜を挙げることができる。この膜は、より小さい孔径を有するので、タンパク質等の高分子化合物の除去を可能にする限外濾過膜として用いることができる。
第1の態様の好ましい態様としては、膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1000秒以下であるフッ素樹脂製微小孔径膜も挙げることができる。この膜は、液体の透過性がより高いので、限外濾過膜等の濾過膜として用いた場合、操作圧力をより下げることができ、又は濾過流量をより大きくでき処理効率をさらに向上させることができる。
第1の態様のフッ素樹脂製微小孔径膜を形成するフッ素樹脂としては、PTFEを挙げることができ、さらにテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキル・ビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロ・トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、及びポリビニルフルオライド等の熱可塑性フッ素樹脂を挙げることができる。これらの中では、耐薬品性、耐熱性、機械的強度の観点からPTFEが好ましい。そこで、第1の態様の好ましい態様として、PTFE製であるフッ素樹脂製微小孔径膜を挙げることができる。
本発明はその第2の態様として、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法であって、
平滑な箔上に、平均粒子径が220nm以下のフッ素樹脂粒子を分散媒中に分散してなるフッ素樹脂ディスパージョンを塗布する工程、
前記塗布後、前記分散媒を乾燥し、その後フッ素樹脂粒子を焼結して無孔質フッ素樹脂膜を成膜する工程、
前記無孔質フッ素樹脂膜を、前記フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の融点より20℃低い温度とその融点間の温度に8時間以上保ちフッ素樹脂を再結晶化する工程(アニール)、
前記成膜後、前記平滑な箔を除去する工程、及び、
前記平滑な箔の除去後、前記無孔質フッ素樹脂膜を延伸し平均径が15nm以下の多孔質膜とする工程、
を含むフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法を提供する。
この製造方法は、キャスティング法に使用するフッ素樹脂ディスパージョンとして、平均粒子径が220nm以下のフッ素樹脂粒子を分散するものを使用することを特徴とする。さらにこの製造方法は、無孔質フッ素樹脂膜の成膜後、前記フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の融点より20℃低い温度とその融点との間の温度に8時間以上保ちフッ素樹脂を再結晶化(アニール)することも特徴とする。
平均粒子径が220nm以下のフッ素樹脂粒子のディスパージョンを用い、かつフッ素樹脂の前記再結晶化の工程を有することにより、平均径が15nm以下であって、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂微小孔径膜を製造することができ、高い透過性を有し優れた処理効率を達成できる濾過膜を製造することができる。一方、平均粒子径が220nmを超えるフッ素樹脂粒子のディスパージョンを用いた場合、平均径が15nm以下となるように延伸したときは、膜厚を2μmとしたときのガーレー秒を1200秒以下とすることができず、優れた処理効率を達成できる濾過膜は得られない。
又、前記アニールの工程を設けない場合や再結晶化の時間が8時間未満の場合又は再結晶化のための温度が前記範囲以下若しくは前記範囲を超える場合も、同様に、平均径が15nm以下となるように延伸したときは、優れた処理効率を達成できる高い透過性を有する濾過膜は得られない。
第2の態様の製造方法は、平滑な箔上に、フッ素樹脂ディスパージョンを塗布した後、乾燥、焼結して無孔質フッ素樹脂膜を成膜する、所謂キャスティング法によることを特徴とする。この特徴により、ボイドやクラック等の欠陥が少ない平滑なフッ素樹脂薄膜が得られる。そして、このフッ素樹脂薄膜を延伸することにより、平均径が15nm以下でありかつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下であって、ボイドやクラック等の欠陥が少ない濾過膜等として優れたフッ素樹脂製微小孔径膜が得られる。
ディスパージョンを構成するフッ素樹脂粒子としては、平均粒子径が180nm以下の粒子が好ましい。平均粒子径が180nm以下とすることにより、平均径が15nm以下であるとともに膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1000秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜を得ることができる。そこで、第2の態様の好ましい態様として、前記フッ素樹脂ディスパージョンが、平均粒子径が180nm以下のフッ素樹脂粒子を分散してなるものであるフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法を挙げることができる。
第2の態様の製造方法に用いられる平滑な箔とは、この製造方法においてフッ素樹脂ディスパージョンと接する側の表面に孔や凹凸が観測されないフィルムである。平滑な箔の厚さの範囲は特に限定されないが、フッ素樹脂ディスパージョンの塗布や後述する支持体との接着の操作が容易に行われるような柔軟性を有する厚さであって、かつ除去が困難とならない厚さが望ましい。
フッ素樹脂ディスパージョンの分散媒としては、通常、水等の水性媒体が用いられる。フッ素樹脂がPTFEの場合、水等の水性媒体中にPTFE(フッ素樹脂)微粒子を分散させてなるディスパージョンは、テトラフルオロエチレンの乳化重合により得ることができる。乳化重合の条件を調整(相溶化剤の添加、高エネルギー線の照射等)することによりディスパージョン中のフッ素樹脂粒子の平均粒子径を調整することができ、例えば、平均粒子径220nm以下、180nm以下のフッ素樹脂粒子を分散したディスパージョンを得ることができる。
フッ素樹脂ディスパージョンには、高濃度条件でゲル化する水溶性ポリマーを添加することが好ましい。水溶性ポリマーを添加することにより、無孔質のフッ素樹脂膜のボイドやクラック等の欠陥をさらに低減することができる。この水溶性ポリマーとしては、ノニオン性のものが好ましく、又分子量は1万以上が好ましい。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、デンプン、アガロース等を挙げることができる。又、フッ素樹脂ディスパージョンに陰イオン性界面活性剤を加えると、無孔質のフッ素樹脂膜の表面凹凸やピンホールなどの欠陥の発生を抑制することができるので好ましい。
平滑な箔上に塗布されたフッ素樹脂ディスパージョンの分散媒の乾燥は、分散媒の沸点に近い温度又は沸点以上に加熱することにより行うことができる。乾燥によりフッ素樹脂微粒子からなる皮膜が形成されるが、この皮膜をフッ素樹脂の融点以上に加熱して焼結することにより無孔質のフッ素樹脂膜を得ることができる。乾燥と焼結の加熱を同一工程で行ってもよい。
前記成膜後、前記フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の融点より20℃低い温度とその融点間の温度に8時間以上保つことによりフッ素樹脂の再結晶化(再結晶化前の融解熱量:−20J/g、再結晶化後の融解熱量:−24J/g)が行われる。PTFEの融点は327℃であるので、フッ素樹脂がPTFEの場合は、再結晶化のための温度は、307℃以上、327℃以下である。
前記のようにして平滑な箔上に無孔質のフッ素樹脂膜が形成された後、平滑な箔の除去が行われる。後述のように、平滑な箔の除去は、無孔質のフッ素樹脂膜にその支持体である多孔質膜を接着した後に行ってもよい。
平滑な箔の除去の方法としては、平滑な箔が金属箔の場合は酸等により溶解除去する方法が例示される。金属箔は、適度な柔軟性を有し薄膜の形成後酸等による溶解除去が容易であるので、平滑な箔として好ましい。金属箔の中でもアルミ箔は、柔軟性及び溶解除去の容易さ、入手の容易さの点で特に好適である。
平滑な箔の除去後、前記無孔質フッ素樹脂膜は延伸され多孔質化されフッ素樹脂製微小孔径膜が得られる。後述のように、無孔質のフッ素樹脂膜にその支持体である多孔質層が接着される場合は、無孔質フッ素樹脂膜と支持体である多孔質層が接着されている状態で延伸が行われる。延伸は、フッ素樹脂製の膜の延伸・多孔質化に使用されている従来公知の方法と同様にして行うことができるが、延伸の程度(延伸率)及び延伸温度等の条件は、平均径が15nm以下となるように調整される。平均径が10nm以下のフッ素樹脂製微小孔径膜は、延伸の程度及び延伸温度等の条件を調整することにより得ることができる。
延伸温度が低い程、延伸して得られるフッ素樹脂製微小孔径膜の平均径が小さくなる。そこで、30℃未満の温度で延伸することが好ましい。後述する、無孔質フッ素樹脂膜を延伸により均質に伸びる特性を有する支持体に接着して延伸する方法により、30℃未満でも延伸は可能であり破断やピンホール等の発生は抑制される。
本発明はその第3の態様として、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜、及び前記フッ素樹脂製微小孔径膜に接着固定され平均径が50nmより大きい多孔質層からなる支持体を含む多孔質フッ素樹脂膜複合体を提供する。
フッ素樹脂製微小孔径膜を濾過膜として用いる場合、より優れた濾過処理能力(高い処理効率)を得るためには薄い方が好ましい。従って延伸前の無孔質フッ素樹脂も薄い方が好ましいが、薄い場合は機械的強度に問題があり又取扱いが困難である。そこで、大きな機械的強度や良い取扱い性を得るために、フッ素樹脂製微小孔径膜を多孔質層である支持体に接着固定してフッ素樹脂複合体を形成し、この複合体を濾過膜等として用いることが好ましい。
多孔質の支持体には、フッ素樹脂製微小孔径膜に大きな機械的強度を与えるとともに、濾過処理能力を低下させないことが望まれる。従って、多孔質の支持体としては、大きな機械的強度を有するとともに、平均径が15nmよりはるかに大きいもの、通常は平均径が50nmより大きいもの、好ましくは100nmより大きいものが採用される。優れた濾過処理効率を得る観点からは平均孔径及び気孔率は大きい方が好ましい。
通常、フッ素樹脂製微小孔径膜の膜厚は、0.5〜5μm程度であり、多孔質の支持体の膜厚は、大きな機械的強度を与えるために10〜100μm程度であるが、支持体が厚い場合は濾過処理効率を阻害しないためより大きな平均径、気孔率のものが好ましい。
多孔質の支持体を構成する材質としては、延伸により均質に伸びる特性を有し、無孔質フッ素樹脂膜を接着固定できるものが用いられる。又、機械的強度が大きいものが好ましい。具体的には、ゴムやその他のエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、PTFE、PFA等のフッ素系樹脂等からなるフィルムを挙げることができる。フッ素系樹脂からなるフィルムを使用すれば、フッ素樹脂の素材そのものの耐熱性や耐薬品性を生かせる用途に使用できるので好ましい。
前記無孔質フィルムを前記支持体に固定する方法としては、接着剤や粘着剤を使用して接着する方法、加熱により融着する方法等を挙げることができる。接着剤や粘着剤として、溶剤可溶性あるいは熱可塑性のフッ素樹脂、フッ素ゴムを使用すれば、フッ素樹脂の素材そのものの耐熱性や耐薬品性を生かせる用途に使用できるので好ましい。
本発明の多孔質フッ素樹脂膜複合体において、多孔質の支持体は1枚であってもよいが2枚以上であってもよい。例えば、多孔質体の支持体2枚の間にフッ素樹脂製微小孔径膜を挟む多孔質フッ素樹脂膜複合体であってもよい。
第3の態様の多孔質フッ素樹脂膜複合体は、前記第2の態様のフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法において、平滑な箔上に無孔質フッ素樹脂膜を成膜した後、延伸前に、その無孔質フッ素樹脂膜上に多孔質の支持体となる多孔質フィルムを接着し、平滑な箔を除去した後、無孔質フッ素樹脂膜と多孔質フィルムが接着した状態で延伸することにより得ることができる。延伸により無孔質フッ素樹脂膜は、多孔質のフッ素樹脂製微小孔径膜となり、多孔質フィルムは多孔質の支持体となる。
先ず、実施例、参考例において示されている各物性値の測定方法を以下に示す。
[平均径の測定方法]
ナノメーター細孔径分布測定器(ナノパームポロメータ:Porous Materials,Inc製)により、凝集ガスとしてヘキサン、非凝集ガスとして窒素を用いて測定した。具体的には、次のようにして求められる。凝集ガスがKelvinの毛管凝縮式に従い細孔内に凝集するならば、凝集半径以下の細孔は全て凝集ガスにより閉塞され、非凝集ガスの透過速度は減少する。次の式により、平均径を求める。
平均径d[m]=−ν・2σcosθ/RTln(P/Ps)
ここで、Pは供給ガス中の凝集ガスの蒸気圧[Pa]、Psは凝集ガスの飽和蒸気圧[Pa]、Rは気体定数で8.314[J/mol・K]、Tは温度[K]、νは凝集物のモル体積[m/mol]、σは凝集ガスと非凝集ガス間の表面張力[Pa・m]、θは接触角[°]である。
[ガーレー秒の測定方法]
ガーレー秒とは、100mlの空気を、膜有効面積6.42cmで、差圧1.22kPaで透過させるのに要する時間(秒)として定義される値で、膜の気体の通りやすさを示す指標である。JIS−P8117に準拠して、王研式試験機にて測定した。
実施例1
[フッ素樹脂ディスパージョンの調整]
融解熱量が69J/gのPTFEの粒子の水分散液であって、PTFE粒子の平均粒径が170nmであるPTFEディスパージョン及びPFAディスパージョン920HP(三井デュポンフロロケミカル社製)を用いて、PFA/(PTFE+PFA)(体積比)が0.02であるディスパージョンを調整した。このディスパージョンに分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度3mg/mlとなるように添加してフッ素樹脂ディスパージョンを調整した。
[試験体の作製]
厚さ50μmのアルミ箔をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、前記フッ素樹脂ディスパージョンを滴下した後、日本ベアリング社製のステンレス鋼製のスライドシャフト(商品名:ステンレスファインシャフトSNSF型、外径20mm)を滑らすようにしてフッ素樹脂ディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるように伸ばした。
この箔を、80℃で1時間乾燥、250℃で1時間加熱、340℃で1時間加熱の各工程を経た後、自然冷却し、アルミ箔上に固定されたフッ素樹脂膜(PTFEを主体とする無孔質フッ素樹脂膜)を形成させた。フッ素樹脂膜が形成される前後のアルミ箔の単位面積当たりの重量差とフッ素樹脂の真比重(2.25g/cm)より算出したフッ素樹脂薄膜の平均厚さは約2.5μmであった。
次に、920HPを蒸留水で4倍の容積に薄めたPFAディスパージョンに、更に分子量200万のポリエチレンオキサイドを濃度3mg/mlを10mg/mlとなるように添加し、4倍希釈のPFAディスパージョンを調整した。
アルミ箔上に固定されたフッ素樹脂薄膜をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、この4倍希釈のPFAディスパージョンを滴下した後、前記と同じ日本ベアリング社製のステンレス鋼製のスライドシャフトを滑らすようにして4倍希釈のPFAディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるように伸ばしながら、水分が乾燥しない間に、孔径0.45μm、厚さ80μmの延伸PTFE多孔質体(住友電工ファインポリマー社製、商品名:ボアフロンFP−045−80)を被せた。その後、80℃で1時間乾燥、250℃で1時間加熱、320℃で1時間加熱、317.5℃で8時間加熱の各工程を経た後、自然冷却して、延伸PTFE多孔質体(支持体)上に、PTFEよりも融点の低い熱可塑性のPFAにより、PTFEを主体とする無孔質フッ素樹脂膜が接着され、更にその上にアルミ箔が固定された複合体を得た。
得られた複合体を320℃で12時間加熱して、フッ素樹脂の再結晶化(アニール)を行った。次いで、アルミ箔を塩酸によって溶解除去して、試験体(無孔質PTFE膜の積層体)を得た。
この試験体のガーレー秒は5000秒以上でPTFE薄膜側から室温でエタノールを接触させてみたが浸透するような穴はなく、この試験体は、エタノールが浸透しない無孔質PTFE膜(PTFEを主体とする無孔質フッ素樹脂膜)を含む積層体であることが示された。
[延伸]
次に、この試験体を、引張試験機を用いて温度15℃、チャック間55mm、ストローク83mm(延伸率150%)で幅方向に延伸し、厚み68μmの多孔質フッ素樹脂膜複合体を得た。この多孔質フッ素樹脂膜複合体について、前記の方法でガーレー秒及び平均径を測定したところガーレー秒は790秒であり、平均径は13.8nmであった。この結果より、試験体を構成する無孔質フッ素樹脂膜は、延伸により、多孔質のフッ素樹脂製微小孔径膜となったことが示されている。又、前記延伸率及び延伸前後の多孔質フッ素樹脂膜複合体の厚みより、このフッ素樹脂製微小孔径膜の厚みは2μmと推定される。
実施例2
実施例1で使用した融解熱量が69J/gのPTFEの粒子の水分散液であってPTFE粒子の平均粒径が170nmであるPTFEディスパージョンの代わりに、融解熱量が67J/gのPTFEの粒子の水分散液であってPTFE粒子の平均粒径が200nmであるPTFEディスパージョンを用いた以外は、実施例1と同様な条件、手順にて、厚み68μmの多孔質フッ素樹脂膜複合体を得た。この多孔質フッ素樹脂膜複合体について、前記の方法でガーレー秒及び平均径を測定したところガーレー秒は1117秒であり、平均径は9.2nmであった。この結果より、試験体を構成する無孔質フッ素樹脂膜は、延伸により、多孔質のフッ素樹脂製微小孔径膜となったことが示されている。
実施例1及び2の結果より、平均粒子径が220nm以下のフッ素樹脂粒子を分散してなるフッ素樹脂ディスパージョンを用いて無孔質フッ素樹脂膜を作製し、延伸してフッ素樹脂製微小孔径膜を作製するとともに、フッ素樹脂の融点に近い温度で8時間以上保温することによるフッ素樹脂の再結晶化を行えば、平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜が得られることが示されている。又、実施例2の結果より、フッ素樹脂ディスパージョンのフッ素樹脂粒子を平均粒子径が180nm以下のものとすれば、膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1000秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜が得られることが示されている。

Claims (7)

  1. 平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜。
  2. 平均径が10nm以下である請求項1に記載のフッ素樹脂製微小孔径膜。
  3. 膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1000秒以下である請求項1又は請求項2に記載のフッ素樹脂製微小孔径膜。
  4. ポリテトラフルオロエチレン製である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂製微小孔径膜。
  5. 平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法であって、
    平滑な箔上に、平均粒子径が220nm以下のフッ素樹脂粒子を分散媒中に分散してなるフッ素樹脂ディスパージョンを塗布する工程、
    前記塗布後、前記分散媒を乾燥し、その後フッ素樹脂粒子を焼結して無孔質フッ素樹脂膜を成膜する工程、
    前記無孔質フッ素樹脂膜を、前記フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の融点より20℃低い温度とその融点間の温度に8時間以上保ちフッ素樹脂を再結晶化する工程、
    前記成膜後、前記平滑な箔を除去する工程、及び、
    前記平滑な箔の除去後、前記無孔質フッ素樹脂膜を延伸し平均径が15nm以下の多孔質膜とする工程、
    を含むフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法。
  6. 前記フッ素樹脂ディスパージョンが、平均粒子径が180nm以下のフッ素樹脂粒子を分散してなるものである請求項5に記載のフッ素樹脂製微小孔径膜の製造方法。
  7. 平均径が15nm以下であり、かつ膜厚を2μmとしたときのガーレー秒が1200秒以下のフッ素樹脂製微小孔径膜、及び前記フッ素樹脂製微小孔径膜に接着固定され平均径が50nmより大きい多孔質層からなる支持体を含む多孔質フッ素樹脂膜複合体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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