JP2015001452A - 周波数走査レーザーの周波数調整方法および装置 - Google Patents

周波数走査レーザーの周波数調整方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 個別周波数制御走査レーザーの各周波数を高精度で設定する方法と装置。【解決手段】 個別周波数制御走査レーザーを走査させたままで制御電流を変更できる機構を持っている走査制御回路を用いて、個別周波数制御走査レーザーを連続走査し、光干渉計の干渉信号を干渉信号検出器により計測することによって、前記個別周波数制御走査レーザーの光周波数を高感度で測定し、走査した状態で走査制御回路により個別周波数制御走査レーザーの各周波数を高精度で設定できる。【選択図】図1

Description

本発明は、周波数走査レーザーの各走査周波数を精密に設定する装置および方法に関するものである。
オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー(英語はOptical coherence tomographyで、以降、OCTと略称する)は、赤外光線を被検体に照射し、後方反射または後方散乱された(以降、後方反射に後方散乱も含めるものとする)信号光を、参照光と干渉させて、照射光線に沿って、後方反射光強度の被検体内での奥行方向の距離依存性を測定し、さらに、照射光線を横方向に走査することにより、被検体の2次元や3次元断層画像を撮像する方法である。OCTは、プローブを被検体に接触させる必要がないので非接触であり、赤外線はX線とは異なり被験者の被爆が無く、規格内の照射強度で使用すれば被検体に影響を残さず無侵襲である。X線CT(コンピューテッド・トモグラフィー)、MRI(磁気共鳴映像法)、超音波に比べてより高分解能で高速の測定ができる。OCTは、眼科、冠状動脈内壁、皮膚などの診断装置として既に臨床応用されており、歯科や内臓の癌などの診断装置や、工業生産品の検査装置等の実用化も進められていて、産業上の幅広い応用が期待される断層画像撮像方法である。
OCTの方法には、時間領域(英語はTime domainで、以降、TDと略称する)OCT、スペクトル領域(英語はSpectral domainで、以降、SDと略称する)OCT、周波数走査(英語はSwept sourceで、以降、SSと略称する)OCTの3つの方法がある。3つのOCTの方法を比べると、同じ計測時間であれば、SD−OCTやSS−OCTの方がTD−OCTに比べて感度が高い。また、SD−OCTとSS−OCTを比べると、SS−OCTの方が計測可能距離を長くできる。したがって、SS−OCTが多くの応用分野で用いられるようになってきている。
SS−OCTの構成図の一例を図3(A)に示す。周波数走査光源501は、出力光を光ファイバ503に出力し、サンプル開始トリガー電気信号541とサンプリングクロック電気信号542をコンピュータ518に接続されたA/D変換器517に出力する。周波数走査光源501には、通常、周波数走査レーザーが用いられる。
周波数走査光源501からの出力光はOCT干渉計502に導かれる。図3(A)にはマッハ・ツェンダー干渉計を用いたOCT干渉計が例示されているが、マイケルソン干渉計を用いる場合も多い。OCT干渉計502に導かれた周波数走査光源からの出力光は、分波カプラ505に導かれ、分割され、参照光路531と試料光路530に導かれる。両光路とも、分波カプラ505から始まり、合波カプラ511で終了する。参照光路の光はサーキュレータ512に入力ポート1から入力し、入出力ポート2から出力してコリメータ513とレンズ514を用いて参照ミラー515に照射され、参照ミラー515により反射された光は照射光路を逆に進み、サーキュレータ512の入出力ポート2に入力し出力ポート3に出力される。サーキュレータ512の出力ポート3から出力された光は、合波カプラ511に導かれる。
分波カプラ505から試料光路に導かれた光は、サーキュレータ506の入力ポート1に導かれ、サーキュレータ506の入出力ポート2から出力し、コリメータ507、ガルバノミラー508、レンズ509を介して試料510に照射される。試料510から後方反射または後方散乱された光(以降、後方反射に両方を含める)は、照射光路を逆に進み、サーキュレータ506の入出力ポート2に入力し、出力ポート3から出力して合波カプラ511に導かれる。ガルバノミラー508によって、試料への光の照射位置を移動し、2次元や3次元の断層画像を構成するため必要とされるデータを得る。
合波カプラ511に導かれた参照光路からの光と試料光路からの光は干渉し、干渉信号を出力する。出力された干渉信号は差動光検出器516で検出され電気信号に変換される。差動光検出器516で検出された電気信号はA/D変換器517でデジタル信号に変換され、コンピュータ518に収録される。コンピュータは、取り込まれた信号からOCT断層画像519を構成し、表示器520に表示する。
測定された干渉信号からOCT画像を構成する方法について説明する。周波数走査光源501は、図3(B)に示すように周波数走査を繰り返し、各周波数走査開始時にサンプル開始トリガー信号を出力し、等周波数間隔δfで周波数f1からfNまで走査される。走査する各周波数に同期してサンプリングリングができるように、サンプリングクロック信号を出力する。このような走査を連続して繰り返す。図3(A)において、コンピュータ518に接続されたA/D変換器517は、サンプル開始トリガー信号に同期して一連のサンプリングを開始し、サンプリングクロック信号に同期して各周波数における干渉信号をサンプリングする。1つのサンプル開始トリガー信号に続く一連の周波数f1からfNまでのサンプリングで、1つの奥行方向を走査する信号が得られる。この一つの奥行方向の走査をA走査と呼ぶ。
図3(A)において、差動光検出器516で信号を検出すると、直流成分は差し引かれ、i番目の周波数fiおいて、次の式で与えられる干渉信号Siが検出される。
ここで、Cは定数、r(z)は照射光線に沿った位置zにおける試料の後方反射率、cは光速である。試料が、位置z0にある反射率r0の鏡だけの場合は、r(z)はδ関数を用いてr(z)=r0δ(z−z0)と表せる。この場合、数1式をzについて積分すると、次式のように単一の正弦波が得られる。
jは純虚数であり、j2=−1である。数2式に、次式のように離散的フーリエ変換を施す。
このフーリエ変換Di(Z)において、右辺括弧内の第一項の指数関数はZ=z0のとき1となり、加算するとNCr0/2になる。このとき、右辺第二項は、fiの変化ととともに激しく変わるプラスとマイナスの値をとり、加算したものは小さな値になる。従って、Di(Z)はZ=z0のとき実質的に値NCr0/2をとる。同様に、Di(Z)はZ=−z0でも値NCr0/2になる。その他のZの値では、加算される指数関数がプラスの値とマイナスの値の間で激しく変化するので、加算した値はNCr0/2に比べて非常に小さな値になる。このように、Di(Z)はZ=z0とZ=−z0でピークを持ち、2つピークから離れると急激に小さな値になる。この結果は、観測された数2式の干渉信号に、位置Zを変数として数3式のフーリエ変換を繰り返して行い、その結果をZの関数としてプロットすれば、位置Z=z0に反射率r0の反射面があるということが分かることを示している。(通常、Z>0の位置に試料を置く。)複数の反射率r0、 r1、 ・・・rMの反射面が、それぞれ試料内の位置z0、 z1、 ・・・zMにあれば、干渉信号SiはCrmcos(4πfizm/c)の形の式の和になり、フーリエ変換 Di(Z)は、Z=z0、 z1、・・・zMでそれぞれ反射率r0、 r1、 ・・・rMに比例した振幅のピークを持つ。つまり、図3(A)に示すようなSS−OCT装置で観測される干渉信号にフーリエ変換を行えば、試料内のどの位置にどのような反射率の面があるかが分かることになる。生体のように連続的に反射面があれば、試料の奥行方向の位置の関数として、反射率がZの関数として連続的に求められることになる。
通常は、数3式の絶対値の2乗をとったスペクトル強度をOCT画像表示に用いる。奥行方向Zの関数としてこのスペクトル強度を表したものをA走査信号として用いる。図3(A)のガルバノミラー508を用い、試料上で光を横に走査してA走査を繰り返す走査をB走査と呼ぶ。B走査により得られたA走査信号を集め、2次元上に試料の奥行方向の位置と横走査方向の位置の関数としてスペクトル強度を明るさの濃淡に対応させて表した図が2次元OCT断層画像である。さらに、ガルバノミラー508を用いてB走査の位置を移動させながら取得した2次元断層画像を集めて画像処理を行えば、3次元OCT断層画像が構成できる。
SS−OCTの性能は光源に用いる周波数走査レーザーの性能に大きく依存するため、より高性能のSS−OCTを実現するための周波数走査レーザーの開発が進められてきた。OCTの性能には、高速で高分解能で深い計測が求められる。超周期回折格子分布反射型レーザー(英語はSuper-structure grating distributed Bragg reflector laser、以降、SSG−DBRレーザーとよぶ略称する)がSS−OCTの周波数走査レーザー光源に利用できるという発明がなされた(特許文献1、特許文献2)。このレーザーは、数ナノ秒で周波数をスイッチでき、高速走査が可能である。また、複数のレーザーを組み合わせて走査することによって周波数走査幅を広くでき、高分解能が実現できる。更に、瞬間的なコヒーレンス長は数mにでき、深いOCT計測が可能である。このレーザーは、走査する各周波数を、それぞれ個別に制御電流を用いて設定でき、周波数を図3(B)に示す通りに、時間の関数としてステップ状(階段状)に周波数等間隔で走査できるという他の周波数走査レーザーにはない長所を持っている。等間隔の時間で正確に周波数が走査できるので、図3(A)において、サンプリングクロックを用いずに、A/D変換器の内部クロックでも各データをサンプリングすることもできる
SSG−DBRレーザーの概略図を図4(A)に示す(非特許文献1)。このレーザーは、前方SSG−DBR領域203と後方SSG−DBR領域200の2つの反射体を向かい合わせたファブリ・ペロー干渉計のキャビティ構造をしている。SSG−DBRは、注入する制御電流に依存して、複数の光周波数において選択的に高い反射率を示す。前方と後方のSSG−DBRが反射する光の周波数が一致した周波数でレーザーは発振する。レーザーの出力周波数は、前方SSG−DBR領域203への制御電流(以降、前方SSG−DBR電流と呼ぶ)と後方SSG−DBR領域への制御電流(以降、後方SSG−DBR電流と呼ぶ)の2つの制御電流で粗調整し、位相領域201への制御電流(以降、位相電流と呼ぶ)で微調整する。ゲイン領域202に流す制御電流(以降、ゲイン電流と呼ぶ)を増加すると、レーザー出力が増加する。半導体光増幅器(英語はSemiconductor optical amplifier で、以降、略してSOAと呼ぶ)領域204によって、外部に取り出す光の強度を増加させるとともに、SOA領域の制御電流(以降、SOA電流と呼ぶ)によって、周波数によらずに出力強度を一定にすることができる。
SSG−DBRレーザーと類似のレーザーとして、図4(B)〜(E)に示す4種類が報告されている。図4(B)は、Sampled Grating (SG) DBRレーザーで、SG−DBRがSSG−DBRに対応し、SSG−DBRレーザーと類似の動作をする(非特許文献2)。図4(C)は、Digital Supermode (DS) DBRレーザーで、前方DBR領域223が複数の部分に分けられ、独立した複数の制御電流で制御されている(非特許文献3)。DS−DBRレーザーの後方DBR領域220と前方DBR領域223が、それぞれ、SSG−DBRレーザーの後方SSG−DBR領域200と前方SSG−DBR領域203に対応し、DS−DBRレーザーの動作原理は、SSG−DBRレーザーと類似である。図4(D)は、英語名はVertical Grating Assisted Co-directional Coupler with Sampled Grating Reflector Laserで、略してGCSRレーザーと呼ばれる(非特許文献4)。構造は、前方ミラーにDBRを用いずに、回折格子カプラ232を用い、後方ミラーにStructured(S)DBRを用いている。回折格子カプラ232は反射器ではなくて、周波数を選択的に透過する役割をする。ゲイン領域233の出力部にレーザーの前方ミラーの処理が施されている。しかし、制御方法は、GCSRレーザーの回折格子カプラ232の制御電流と後方S−DBRの制御電流を、それぞれ、SSG−DBRレーザーの前方SSG−DBR電流と後方SSG−DBR電流に対応させれば、SSG−DBRレーザーと類似である。図4(E)は、Modulated Grating Y-branch (MGY) レーザーの概略図である(非特許文献5)。このレーザーは、2つの特性の異なるDBR−Aミラー240とDBR−Bミラー241をマルチモード干渉計カプラ242で結合した構造をしている。ゲイン領域244に前方ミラーの処理が施されている。MGYレーザーの制御方法は、DBR−Aの制御電流とDBR−Bの制御電流を、それぞれ、SSG−DBRレーザーの前方SSG−DBR電流と後方SSG−DBR電流に対応させれば、SSG−DBRレーザーと類似である。
SSG−DBRレーザーにおいて、後方SSG−DBRと前方SSG−DBRが反射する光の周波数の電流依存性は異なっており、ノギスにおいて目盛間隔の異なる主尺と副尺(バーニア:Vernier)の一致した位置で正確に長い距離の測定を可能にするように、周波数の電流依存性の異なる2つのSSG−DBRの組み合わせで、幅広い周波数範囲の発振を可能にしている。これはバーニア効果と呼ばれる。図4に示す5つのレーザーは、どれも2つ以上の制御電流を用い、バーニア効果を利用してレーザーの発振周波数を粗調整で広帯域に走査し、位相電流を用いて発振周波数の微調整を行うことによって、正確な広帯域の周波数走査を可能にしているという共通点がある。SS−OCTの観点からすると、これらのレーザーは、SS−OCTに用いられている他の周波数走査レーザーと異なり、制御電流を用いて走査する各周波数を個別にそれぞれ制御するという点に特徴があるので、この発明では、図4に示す5つのレーザーを「個別周波数制御走査レーザー」と総称することにする。現状報告されているこの種のレーザーは図4に示す5種であるが、今後、これら以外のレーザーも同じ技術的思想に基づいて開発される可能性があるが、それらも個別周波数制御走査レーザーに含まれるものとする。個別周波数制御走査レーザーは、複数の制御電流を用いて、走査する周波数を個別にすべて制御しなければならないという複雑さがあるが、精密な周波数制御方法を開発することによって、個別の周波数をすべて正確に設定できるという利点を有する。
個別周波数制御走査レーザーのOCT撮像への有効性は、SSG−DBRレーザーを用いて実証された(非特許文献6、非特許文献7)。24mmの深さのOCT計測が可能であることも実証された(非特許文献8)。しかし、従来技術では、SSG−DBRレーザーを用いたSS−OCT撮像の画像の濃淡のダイナミックレンジが実際には悪く、高画質の撮像ができていないという問題があった。
SS−OCT画像の濃淡のダイナミックレンジが悪くなる原因について説明する。一枚のミラーを試料の位置に置いたときの離散的フーリエ変換のスペクトル(数3式)の絶対値の二乗をとったスペクトル強度は、ポイント・スプレッド・ファンクション(英語はPoint Spread Functionで、以降PSFと略称する)と呼ばれる。SS−OCTの画像の濃淡のダイナミックレンジは、PSFのダイナミックレンジで評価できる。PSFのダイナミックレンジは、PSFのピークの強度とノイズフロアのレベルとの比をdBで表したもので定義される。数3式に関係する個別周波数制御走査レーザーの因子は、各出力における強度と周波数である。これら因子の理想値からのずれが、PSFのダイナミックレンジを劣化させる。これらの影響を、数値計算でシミュレーションする。SS−OCTでは、PSFのダイナミックレンジを向上させるために、通常、数3式に窓関数を用いて離散的フーリエ変換が行われる。代表的な窓関数は以下に示すハニング窓である。
SS−OCTの数値処理では、他の窓関数も用いられるが、この発明の有効性は窓関数には依存しない。数値計算シミュレーションでは、数4式の窓関数を用い、以下に示す離散的フーリエ変換を行った。
個別周波数制御走査レーザーの出力強度は、出力周波数に依存しないようにSOA電流を変化させて一定化できるが、制御回路の性能の限界により、0.1%〜0.5%程度の変動は避けられない。レーザー強度の変動の影響は、数1式の係数Cが出力番号iに依存し、Ci=Ca(1+δci)と変動するものとして表せる。ここで、Caは平均値、δciは変動の割合である。周波数の変動はないものとして、δciの標準偏差が、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005のときのPSFを、数5式を用いて数値計算し、ダイナミックレンジを求めると、それぞれ、87dB、80dB、78dB、75dB、73dBになる。このダイナミックレンジは深さZに依存しない。現状の技術によれば、強度の変動δciの標準偏差を0.005(0.5%)以下に抑えるのは可能であり、周波数の変動がなければ、70dB以上のダイナミックレンジの実現が可能になるはずである。
個別周波数制御走査レーザー用いた場合、出力する各周波数に誤差があると、どのようにPSFのダイナミックレンジが劣化するかを、数値計算シミュレーションで評価する。出力周波数に誤差が無い時のi番目の周波数fiを次式で表す。
この式は、誤差がない理想的な場合は、初期周波数f1=f0+δfから最終の周波数fN=f0+Nδfまで、等周波数間隔δfで走査されることを示している。しかし、実際に走査されるi番目の周波数Fiには誤差Δiがあり、正確な周波数fiからずれている。この場合、実際に走査される周波数Fiは次式で表される。
図5に、i=1から5までの場合について、Fi、fi、Δiの関係を例示する。tsは、隣接する周波数走査の時間間隔である。干渉信号の数2式は、次式で表される。
数8式において、4πΔiz0/cは余弦関数の位相の一部であるが、これがランダムに変動するので、余弦関数は乱れたものになる。深さが深く、z0が大きいほど、位相の変動が大きくなり、余弦関数の乱れも大きくなる。余弦関数の乱れが大きくなると、PSFのダイナミックレンジは小さくなる。
具体例として、周波数走査の開始周波数f1=182.50 THz、終了周波数fN=192.20
THz、周波数間隔δf=6.25 GHzの場合について、PSFを数値計算する。走査する周波数の数はN=1552とする。この例の周波数走査の中心波長は1.6μmで、光通信の波長帯に含まれていて、光計測の検査機器がそろっているとともに、OCT計測に適した波長帯の一つである。数5式の離散的フーリエ変換の指数関数の周期性から、計測可能距離Δzは次式で与えられる。
周波数間隔をδf = 6.25GHzとすると、計測可能距離はΔz = 12mmになる。
周波数の誤差Δiがガウス分布でランダムに変動するようにし、その標準偏差σfの値を変えて、3つのミラーの位置(z0=0.5mm、z0=6mm、z0=11.5mm)について計算したPSFを図6に示す。標準偏差σfが大きいほど、周波数の設定精度が悪いことを意味する。周波数変動の影響を見るために、強度変動はないものとした。各グラフの横軸に示す測定位置の両端に対応する位置z0=0mmとz0=12mmでは、ピークが半分欠けるので、代表値として用いるのを避けた。各グラフの縦軸のスペクトル強度はdB(デシベル)で表し、z0=0mmでのスペクトル強度を0dBとして規格化した。図6(D)に例示するように、PSFはピーク強度とノイズフロア(図6中では記号NFで示す)で特徴づけられる。図6(D)の場合、ピークは0dBでノイズフロアは−100dBである。それらの差の100dBが、PSFのダイナミックレンジ(図6中では記号DRで示す)を表す。図6に示すように、PSFのダイナミックレンジは、個別周波数制御走査レーザーの設定周波数の精度に大きく依存する。OCT計測の場合、ダイナミックレンジは、どの深さにおいても40dB以上が望ましく、画質はダイナミックレンジが大きくなるとともに向上するので、さらにより大きなダイナミックレンジが望ましい。周波数の誤差の標準偏差σfが0の場合は、図6(A)〜(C)に示すように、奥行方向の位置z0が0.5から11.5mmの範囲のどの位置においても、ダイナミックレンジは160dB以上である。周波数の誤差の標準偏差がσf =0.01GHzとσf =0.05GHzの場合、それぞれ図6(D)〜(F)と図6(G)〜(I)に示すように、奥行方向の位置z0が0.5から11.5mmの範囲のどの位置においても、ダイナミックレンジは60dB以上である。これに対し、周波数の誤差の標準偏差がσf =0.5GHzまで劣化すると、図6(J)〜(L)に示すようにノイズフロアの増加が大きく、ダイナミックレンジも、z0=6mm以上では50dBよりも悪くなり、画質の劣化が起きる。周波数の誤差の標準偏差がさらに劣化し、σf =5GHzになると、図6(M)〜(O)に示すように、z0=0.5mm以上では、ダインミックレンジは50dB以下であり、z0=6mmでは21dB、z0=11.5mmでは4dBしかなく、OCT画像の劣化は著しく、z0の大きい深い位置では、OCT撮像そのものが困難になる。以上のように、光源の周波数を走査するSS−OCTにおいては、設定する周波数の精度が極めて重要である。
図7に、3つの深さ位置における、ダイナミックレンジ(DR)と周波数の誤差の標準偏差σfの関係をまとめて示す。図7の中の曲線(A)、(B)、(C)は、それぞれ、深さ位置z0=3mm、z0=6mm、z0=12mmにおける関係である。必要なダイナミックレンジを60dBとすると、ダイナミックレンジが60dBの値で引いた点線と各曲線との交点から実現しなければならない周波数の誤差の標準偏差が求まる。深さ位置3mm、6mm、12mmでDR>60dBを実現するためには、周波数の誤差の標準偏差σfは、それぞれσf<0.24GHz、σf<0.12GHz、σf<0.06GHzでなければならない。必要なダイナミックレンジを50dB以上とすると、必要な周波数の誤差の標準偏差σfは、深さ位置3mm、6mm、12mmに対し、σf<0.78GHz、σf<0.38GHz、σf<0.18GHzでなければならない。必要なダイナミックレンジを40dB以上とすると、必要な周波数の誤差の標準偏差σfは、深さ位置3mm、6mm、12mmに対し、σf<2.5GHz、σf<1.2GHz、σf<0.59GHzでなければならない。
以上のように、例えばPSFのダイナミックレンジが少なくとも50dB以上の、濃淡の画質の比較的に良いOCT画像を、深さ位置12mmまで撮像するためには、周波数の誤差の標準偏差が0.2GHz以下になるように周波数調整がなされなければならないが、個別周波数制御走査レーザーの従来技術では、このような精度の周波数調整はできていなかった。従来技術によって実現された周波数の誤差の標準偏差についてSSG−DBRを例として説明する。発振周波数は、前後の2つのSSG−DBR電流で粗調整され、位相電流で連続的に微調整される。図4(A)に示すSSG−DBRレーザーで、まず位相電流を零にし、ゲイン電流とSOA電流を一定値に設定し、前方SSG−DBR御電流と後方SSG−DBR電流を変化させ、各値でのレーザーの発振周波数を光スペクトルメーターで測定する。横軸に前方SSG−DBR電流の値、縦軸に後方SSG−DBR電流の値を取って、レーザー発振周波数の等高線を描くと、図8に細い実線で示す等高線マップが得られる。この等高線マップの数値の詳細は、素子によって異なるが、ここで議論する一般的な振る舞いは、素子に依存しない。図8において、斜め左下から右上に向かって発振周波数は増加する。太い実線は、レーザーの発振モードが異なる領域の境界を示す。各領域の白黒の濃淡は、濃い領域ほど低い周波数に対応している。太い実線の境界で、周波数の等高線は不連続になっているので、破線で示すような、同一モード領域内の線に沿って前方SSG−DBR電流および後方SSG−DBR電流を対で変化させて、周波数を走査する。領域内での破線の位置は、位相電流を調整してスペクトル純度が高くなるように設定する。レーザーの発振は、主スペクトルに対してサイドモードが弱い方がスペクトルの純度が高い。このスペクトル純度は、サイドモード・サプレッション・レシオ(英語はSide Mode Suppression Ratioで、以降、SMSRと略称する)で判定される。SMSRが極大になるところを、位相電流をわずかずつ変化させて求める。図8の破線はこの手順で決められた。この破線に沿って3つの電流を走査すれば、一つのモード領域内では、モードの飛びが無い走査が得られる。幅広い走査をするためには、1から8までの番号を付した破線に沿って制御電流値を順次走査する。このようにして、SSG−DBRレーザーを走査するための制御電流は決定されてきた。これらの手順は、例えば非特許文献9や非特許文献10で説明されている。
上述の手順で決められた制御電流で個別周波数制御走査レーザーを走査した場合、濃淡のダイナミックレンジが大きいOCT画像を撮影する為に必要な大きさのPSFのダイナミックレンジは得られなかった(例えば非特許文献10のFigure9)。この主たる原因は、図6や図7の数値シミュレーションで示された結果から必要とされる周波数の精度が実現できていなかったためである。図8の特性は、レーザーを一定周波数で連続発振し、熱平衡状態にあるレーザーについて測定したものである。DBRの光の反射特性は、温度に依存することが知られている。このため、SSG−DBRレーザー全体は、一箇所に取り付けられた温度計で温度を測定し、その温度が一定になるように制御されている。しかし、レーザーを走査すると、周波数毎に各領域に注入する制御電流値が変化し、その領域に生じるジュール熱が変化し、その領域の温度が局所的に変化する。この局所的な温度変化が、レーザー全体に伝わって熱平衡値に達するには数ミリ秒かかることが知られている。SS−OCTの場合、A走査の繰り返し周波数はkHz程度以上必要で、1500の周波数を走査するためには、一周波数あたり約100ナノ秒程度で走査しなければならない。この時間は、レーザー全体の熱平衡への緩和時間である数ミリ秒よりはるかに短い。従って、制御電流値が変化した領域の温度は、局所的には制御電流の増減に従ってレーザー全体の熱平衡値とは異なった温度になったまま、レーザーの周波数は次々と走査される。つまり、レーザーは熱平衡状態で計測された図8に基づいた制御電流値から期待される周波数とは異なる周波数で発振することになる。
この問題を解決するために、藤原等は、図4(A)に示すSSG−DBRレーザーにおいて、周波数走査に伴って変化する制御電流注入領域毎に熱補償ヒーターを導入した(特許文献3、非特許文献11)。各制御電流を注入する領域において、制御電流が発生するジュール熱と熱補償ヒーターが発生するジュール熱の和が一定になるように計算値を求め、制御電流の変化に合わせて同時に熱補償ヒーターの発生する熱量を調整すれば、各領域への制御電流の変化によるレーザーの温度変化を補償して抑えることができると考えた。この改良の結果、1周波数当たり500nsの速度で走査したときの、周波数の誤差の標準偏差σfを5GHz程度に抑えることが出来た。それ以前の周波数設定比べて大幅に改良されたが、標準偏差で5GHzばらつくと、図7示すように、計測深さ3mmにおいても、PSFのダイナミックレンジは40dBよりも小さく、悪い画質のOCT画像しか得られないという問題点が残った。熱補償ヒーターを用いた方法により、個別周波数制御走査レーザーの各周波数の設定精度は大幅に改良されたけれども、画像の濃淡のダイナミックレンジが大きい高画質のOCT撮像はできなかった。
特許第3796550号
US 7,564,565 B2
WO 2008/108475 A1
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個別周波数制御走査レーザーの各周波数を高精度で設定するという課題を本発明は解決する。
個別周波数制御走査レーザーを計測に使用時と同じ条件で走査させた状態で各制御電流を変更することを可能にする走査制御回路と、個別周波数制御走査レーザーからの出力光を導き干渉信号を発生する光干渉計と、前記干渉信号を測定する干渉信号検出器を用いて前記干渉信号を測定し、個別周波数制御走査レーザーを走査させた状態で干渉信号が所望の形になるように各制御電流を設定する装置と方法。
図9は、当該発明の図1に示す周波数調整装置を用いて周波数調整した個別周波数制御走査レーザーを光源として用い、図3(A)に示すSS−OCT装置で撮像した人の眼の前眼部のOCT画像である。周波数調整が不十分で、PSFのダイナミックレンジが約40dB以下の場合に撮像したところ、図9(A)に示すOCT画像が得られた。前眼部は全体として明瞭に撮像できているが、虹彩や強膜の強い後方反射光に伴うノイズフロアが画面の上下に走り、濃淡のダイナミックレンジを大きく出来ず、画質が比較的悪い画像になっている。これに対し、当該発明の方法で周波数調整の精度を上げてPSFのダイナミックレンジを55dB以上にしたところ、図9(B)に示す画像が撮像された。この画像では、虹彩や強膜の強い後方反射光に伴うノイズフロアは図9(A)の画像と比べて格段に弱くなり、濃淡のダイナミックレンジが大きく取れ、画像が鮮明になった。このように、周波数調整の精度を高めPSFのダイナミックレンジを大きくすることにより、濃淡のダイナミックレンジが大きく画質の良いOCT撮像画像を可能にできることが当該発明のSS−OCT計測における効果である。実現された55dBのダイナミックレンジは当該発明の原理的な限界ではなく、現状では図1における走査制御回路102が発生する電気的ノイズで決められていて、電気回路のノイズ低減によってPSFの更なる向上ができ、発明の効果を高めることができる。(なお、図9(B)画像の左右の中心付近にみられる正面反射によるノイズフロアは、角膜の表面に垂直にプローブ光が入射し、正面反射した光の強度が強すぎて、差動光検出器の測定可能範囲を信号が超えてしまい、そのフーリエ変換のノイズフロアが強く観測されていることによるものである。これを避ける方法は、プローブ光の位置を正面反射が起こらないようにずらせばよく、当該発明で解決するノイズフロアの課題とは別である。)
当該発明は、SS−OCTへの応用を主目的としてなされたが、高速で高分解能の分光計測などにも応用できる効果がある。当該発明によって調整された個別周波数制御走査レーザーを、例えば光吸収などの分光計測に用いれば、分光器を用いずに、計測時間数十マイクロ秒以下の高速で、波数分解能数十メガヘルツ以下の高分解能で、分光計測を行うことができる。従って、当該発明の効果は、SS−OCTに限定されず、周波数設定が高精度なされた個別周波数制御走査レーザーを用いた、光吸収や光散乱計測にも及ぶ。
個別周波数制御走査レーザーの周波数調整装置 (A)個別周波数制御走査レーザーの周波数調整装置、(B)干渉信号の例 (A)周波数走査OCT装置の構成図、(B)周波数走査OCT装置の光源の周波数と時間の関係 個別周波数制御走査レーザーの例:(A)SSG−DBRレーザー、(B)SG−DBRレーザー、(C)DS−DBRレーザー、(D)GCSRレーザー、 (E)MGYレーザー 個別周波数制御走査レーザーの周波数の誤差と時間変化の例示 周波数の誤差の様々な標準偏差(σf )値における、個別周波数制御走査レーザーのPSF PSFのダイナミックレンジ(DR)と、個別周波数制御走査レーザーの周波数の誤差の標準偏差(σf )との関係 個別周波数制御走査レーザーの制御電流と発振周波数のマッピング 人の前眼部のSS−OCT画像:(A)PSFのダイナミックレンジが約40dB以下の場合、(B)PSFのダイナミックレンジが55dB以上の場合 光干渉計と干渉信号の例 所望の形の干渉信号の例 (A)個別周波数制御走査レーザーの出力周波数の間隔がサンプリン周波数間隔よりも短い場合の所望の形の干渉信号、(B)個別周波数制御走査レーザーの出力が、実質的にはアナログ信号とみなせる場合の所望の形の干渉信号 (A)光スペクトル計測装置、(B)光スペクトルの例:SMSRが大きい場合、(C)光スペクトルの例:SMSRが小さい場合 個別周波数制御走査レーザーにおける周波数調整手順の例
[発明の原理]
個別周波数制御走査レーザーをSS−OCT計測に用いる場合と同じ条件で連続走査し、出力光を光干渉計に接続して干渉信号を観測したところ、走査開始後数分で干渉信号は一定になり安定状態を続けることを見出した。この状態で制御電流を変えて周波数調整を行うと、調整された状態を保持したまま、安定に走査を続けることも見出した。上述したように、この条件では各個別の周波数において静的な熱平衡は達成されていない。SSG−DBR領域での発熱の変化がレーザー全体に達し熱平衡になる数ミリ秒に比べると、走査中での各周波数状態での滞在時間は数百ナノ秒以下で、熱平衡に向かって変化する前の断熱的状態の間に、次々と周波数が走査される状態である。しかし、各発振周波数は断熱状態で次の周波数に走査されるが、レーザー全体としては、同じ走査状態が繰り返されているので、熱平衡に達していて安定である。従って、この条件下で繰り返される各周波数は再現性良く安定に動作する。この状態で制御電流を調整して所望の周波数精度が達成できれば、SS−OCT計測時と同じ走査条件で高精度の周波数調整が実現できることになり、高画質のOCT画像が取得できる。走査したままの個別周波数制御走査レーザーを光干渉計に接続し、干渉信号検出器で干渉信号を計測し、個別周波数制御走査レーザーの各周波数が正確に設定された場合に期待される所望の形の干渉信号が得られるように制御電流を調整すれば、正確な周波数調整が実現できる。SS−OCT計測に用いるときと同じ走査条件の状態で正確な周波数調整ができるので、このように調整された個別周波数制御走査レーザーをSS−OCTに用いれば、濃淡のダイナミックレンジが大きい高画質のOCT画像が撮像できる。これが当該発明の基本的な原理である。
図1に第一の実施の形態を示す。個別周波数制御走査レーザー101は、走査制御回路102で制御されている。走査制御回路102は、個別周波数制御走査レーザー101を繰り返し走査させた状態で制御電流値を変更し、その変更された制御電流値に従って個別周波数制御走査レーザー101を継続して繰り返し走査させることができる機構を持っている。個別周波数制御走査レーザー101の出力光は光干渉計105に接続されている。光干渉計105の出力は、個別周波数制御走査レーザー101の出力する光の周波数の変化に従って時間変化し、光の干渉信号を出力する。光の干渉信号は、干渉信号検出器106により電気信号に変換される。干渉信号検出器106には、干渉信号を表示する機能を持たせることができ、その表示された干渉信号と所望の形の干渉信号との差を人が測定し、差が無くなるように手動で走査制御回路102を設定することもできる。あるいは、干渉信号検出器106に所望の形の干渉信号を参照値として入力しておいて、それと、光干渉計105から取得された干渉信号との差を自動で検出し、差が無くなるように計算された制御電流値を、信号経路103を介し走査制御回路102に転送するようにすることもできる。
光干渉計105が出力する「所望の形の干渉信号」について説明する。「所望の形の干渉信号」とは、数7式で表される個別周波数制御走査レーザーが実際に走査する各周波数Fiの誤差Δiが十分小さい条件で精度よく設定できたため、数6式に従って正確に周波数設定された個別周波数制御走査レーザーが走査されたときに期待できる干渉信号の形に近似的に一致する形の干渉信号を意味する。この時、誤差Δiが小さければ小さいほど、より望ましい「所望の形の干渉信号」になる。
図10(A)にファブリ・ペロー干渉計を示す。この干渉計は、間隔d離れて平行に置かれたミラーA801とミラーB802で構成されている。この平行ミラーに強度一定の入力光を入射すると、光の干渉によって、光の透過率は図10(D)に示すように、周波数の関数として周期的に鋭い透過率のピーク示す。透過率のピークの周波数間隔は、fFP=c/2dで与えられ、周波数によらず一定である。個別周波数制御走査レーザーの周波数間隔がδf=fFPになるように間隔dを設定すれば、レーザーの各設定周波数fi=f0+iδfで干渉信号光は極大値を示すようにできる。δfとfFPの関係はδf=mfFP(m:1以上の整数)であれば、干渉信号を極大値に合わせることによって、所望の形の干渉信号が得られる。
図10(B)はマイケルソン干渉計を示す。入力光をハーフミラー805で反射光と透過光に分割する。反射光はミラーC803で反射されて、光路C806を往復する。透過光はミラーD804で反射されて、光路D807を往復する。それぞれの光路を往復した光は、ハーフミラーで干渉し、光干渉信号を生成する。光干渉信号の変動部分は、入力光の周波数fに依存して次式で与えられる正弦波形に比例した変化を示す。
この関係を図10(E)に示す。Δlは、光路C806と光路D807の往復の光路長の差である。数10式は、光周波数fMZ=c/Δlの周期で変動する。図10(C)は光ファイバで接続されたマッハ・ツェンダー干渉計を示す。入力光は分波器810で光路E813と光路F814に分波される。光路F814との光路差がΔlになるように、光路E813には光ディレイ811が挿入されている。光路E813と光路F814は、分波器810から始まり合波器812で終わる。これら2つの光路を通った光は合波器812に導かれ干渉する。合波器812からは、位相がπ異なる2つの干渉信号光+と干渉信号光−が出力される。これら干渉信号の変動部分は、数10式に比例し、位相が互いにπだけ異なる。干渉信号光+と干渉信号光−を差動検出すると、数10式に比例する信号を検出できる。
干渉信号が数10式で与えられるときの所望の形の干渉信号の例を図11に示す。図11(A)は、光周波数が連続的に変化した場合、数10式で与えられる信号は正弦波形で変化し、その周期がfMZであることを示している。走査させた個別周波数制御走査レーザーからの出力光を図10(B)や図10(C)に示す干渉計の入力光として用いると、出力される光の周波数は離散的であるので、図11(A)に破線で示すような連続的変化は示さない。図11(B)の太い実線は、個別周波数制御走査レーザーの出力する周波数間隔δfが周期fMZに等しく(δf = fMZ)、かつ周波数f0がf0Δl=(m−1/4)c(mは正の整数)になるようにレーザーの各周波数を調整した場合の干渉信号である。この実線は、値が0なので、横軸の時間軸に沿っている。これが、この場合の所望の形の干渉信号である。正弦波が零レベルになる光周波数は、正弦波の変化が激しいところなので、零レベルからのずれの検出の感度が良い。周波数f0は、f0Δl=(m+1/4)c(mは正の整数)に設定してもよい。
図11(C)は、δf = fMZであるが、周波数f0がf0Δl=mc(mは正の整数)になるようにレーザーの各周波数を調整した場合の所望の形の干渉信号で、干渉信号が極大値をとる周波数にレーザーの各出力周波数を合わせた場合である。同様に、周波数f0をf0Δl=(m+1/2)c(mは正の整数)に調整し、所望の形の干渉信号が極大値の替りに極小値をとるように調整してもよい。極大や極小を用いた調整は、零レベルに合わせて調整する場合よりも、設定周波数の検出感度が悪い。
図11(D)は、fMZ=2δfで、かつ周波数f0がf0Δl=(m−1/4)c(mは正の整数)になるように調整した場合の所望の形の干渉信号で、レーザーのどの周波数でも干渉信号が零になる。図11(E)もfMZ=2δfで、かつ周波数f0がf0Δl=mc(mは正の整数)になるようにレーザーの周波数を調整した場合の所望の形の干渉信号で、干渉信号は交互に極大と極小をとる。所望の形の干渉信号は、矩形波になる。図11(F)に示す所望の形の干渉信号は、fMZ=4δfの場合で、順次、極大→零→極小→零→極大と繰り返す。
個別周波数制御走査レーザーの周波数間隔δfと、干渉計の周波数周期fMZが整数の比である必要はない。期待される所望の形の干渉信号は、周波数周期fMZが決まっていれば、設定したい周波数間隔δfに対し計算で求めることができる。その計算値と観測される干渉信号が一致するように、レーザーの各周波数を調整すればよい。調整した結果の所望の形の干渉信号を太線で示すと、図11(G)に示すような図が得られる。
個別周波数制御走査レーザーの全出力周波数数をNとして、fMZ>2Nδfに設定した周波数周期fMZの光干渉計を用いると、走査周波数の全領域で単調増加または単調減少する一価関数の干渉信号を所望の形の干渉信号にすることができ、自動調整が容易になる。また、図11に示す干渉信号は、δfがfMZよりも小さい場合の例が示してあるが、mを2以上の正の整数として、fMZ=δf/mの条件を満たす光干渉計も利用できる。この場合、干渉信号が零レベルを通過するときの微分変化が、fMZ=δfのときより大きいので、零レベルの検出感度がより良い周波数調整が可能になる。この時の検出感度を計算する。数10式は、cos(2πf/fMZ)と書ける。周波数fがΔf変動した時の信号の変化量は、この式の微分にΔfを乗じたものになり、fMZ=δf/mの条件を代入すると、−sin(2πf/fMZ)(2π/fMZ)Δf=−(2πm/δf)Δfが得られる。(ここで、周波数が調整できた時の条件sin(2πf/ fMZ)=1を用いた。)通常の電子回路はフルスケールの0.1%程度の精度で電圧を測定することは可能であり、干渉信号の振幅を1に規格化すれば10-4の信号の検出が、干渉信号検出器を用いて可能である。(2πm/δf)Δf =10-4とおいてΔfを求めると、周波数測定の感度の程度として、次式が得られる。
例として、数値シミュレーションで用いた周波数の周期δf = 6.25GHzの場合、m=1でΔf=99kHz、m=2でΔf=50kHz、m=3でΔf=33kHzになる。このように、光干渉計を用いた周波数の検出感度は極めて高く、図6(D)、(E)、(F)で例示した標準偏差σf=0.01GHz=10MHzの精度の周波数調整の実現は、原理的に可能である。
これまでは、個別周波数制御走査レーザーが出力する周波数間隔とデータをサンプリングする周波数間隔δfは同じ場合について説明した。制御電流をステップ状(階段状)に変化(スイッチ)すると、電気回路やレーザー発振の応答の速さが有限であるために、レーザー発振の周波数は完全にはステップ状に変化せず、遷移現象を伴って変化する。この遷移の時間内では周波数が誤差を持つことになる。遷移現象の振幅は、制御電流のステップ状の変化が小さいほど小さい。そこで、複数回に分けてスイッチすれば、各スイッチでの遷移現象の振幅は小さくできる。図12(A)は、3回に分けてスイッチし、3つステップ毎に一つのデータをサンプリングする例を示す。太い実線がサンプルする周波数のデータであり、点線で示したデータは、サンプルしないデータである。図1に示す方法を用いた周波数調整では、図12(A)において点線で表したデータも含めて行い、所望の形の干渉信号は実線のデータと点線のデータを含めたものである。制御電流のスイッチ間隔を小さくすればするほど、遷移現象の振幅は小さくなる。スイッチ間隔の時間を、電気回路やレーザー発振の応答時間と同等またはそれ以下にすると、レーザーの出力は実質的には図12(B)に実線で示すようにアナログ出力になる。電気回路やレーザー発振の応答の時間だけ、点線で示す制御電流の変化よりも遅れて出力される。このような場合でも、個別周波数制御走査レーザーの制御電流は各ステップ変化毎に設定しなければならず、所望の形の干渉信号が図12(B)に示す実線の様に実質的にはアナログ信号になるという条件で、図1に示した周波数調整法が適用できる。
図1に示す個別周波数制御走査レーザー101を制御する「走査制御回路」102について説明する。個別周波数制御走査レーザー101は、必要な制御電流が供給されると、それに従って発振する。走査制御回路102が一定の制御電流を定常的に供給すれば、個別周波数制御走査レーザー101は定常的に連続発振(CW発振)する。走査制御回路102が供給する制御電流の値を変えると、個別周波数制御走査レーザー101はそれに従って発振状態を変える。短時間の間隔で次々と供給電流を変化させれば、個別周波数制御走査レーザー101は走査されることになる。このような走査は、通常はあらかじめ走査制御回路102内のメモリに書き込まれた制御電流のテーブル(一連のデータ)に従って行われ、走査の仕方を変える場合は、走査を止めて制御電流のテーブルを書き換えてから走査を開始するという手順が、従来技術では行われていた。当該発明では、走査制御回路102は、個別周波数制御走査レーザー101を走査させた状態で制御電流を変更することができる機構を持っているものとするが、その機構は通常よく知られている電子回路技術を用いて容易に実現できる。方法の一例について説明する。走査制御回路は、メモリの中に全ての制御電流の値を記憶していて、順次メモリのアドレスを走査の速度で変化させ、各アドレスで出力されるデジタルの制御電流の値をデジタル・アナログ変換して個別周波数制御走査レーザーの各制御電流を供給する。このとき、例えば制御電流値のメモリとして、走査メモリと入力メモリの2つを持ち、走査メモリは走査する目的に用い、入力メモリは制御電流変更値を入力する目的に用い、図3(B)において、最終周波数fNまで走査メモリに従って走査した直後に最初の周波数f1を出力する前に、走査中に変更された入力メモリの内容を走査メモリに短時間で転送して走査を続ければ、走査を乱すことなく、制御電流の値を変更することができる。また別の方法としては、走査メモリの読み出しと書き込みの機能を持たせ、制御電流変更値103を直接走査メモリに必要な時点で短時間内に書き込み、走査を続けるという機構も可能である。この場合、書き込みの瞬間だけ干渉信号が乱れるが、周波数調整時であれば支障はない。
図4に示す個別周波数制御走査レーザーの出力周波数は、3つの制御電流によって決定される。図1に示す周波数調整方法において、これら3つの制御電流を同時に変化させて調整すると手順が複雑になる。変化させるパラメータ(制御電流値)は一つであることが望ましい。位相領域に注入する制御電流だけを単一パラメータとして図1の周波数調整方法を可能にする手順について説明する。個別周波数制御走査レーザーが定常状態で連続発振する状態でのレーザー出力の光スペクトル測定を、制御電流を逐次変えながら繰り返し、制御電流の関数として一連のスペクトルデータを計測する装置を図13(A)に示す。走査制御回路102にコンピュータ300から各制御電流設定命令を送り、個別周波数制御走査レーザー101を、各制御電流が一定の条件で連続発振(CW発振)させる。この出力光のスペクトルを、コンピュータからの光スペクトル取得命令に従って、光周波数の関数として光スぺクトラムアナライザ302で計測する。計測された光スペクトルデータをコンピュータに転送し、記憶する。この操作を、プログラムによって自動的に制御電流を変えながら繰り返し、一セットのデータをコンピュータのメモリ内に取得する。
具体例として、図4(A)に示すSSG−DBRレーザーの場合について説明する。ゲイン電流とSOA電流は100mAの一定値に設定した。位相電流も、走査時の平均値に近い一定値6mAに設定した。後方SSG-DBR電流と前方SSG-DBR電流を、0.2mAの間隔で、0.2mAから50mAまで網羅的に変化させて、各制御電流での連続発振のスペクトルを計測した。計測されたスペクトルの例を図13(B)と図13(C)に示す。スペクトルが単一モードであるためには、最強のスペクトルの強度が、他のサイドモードよりも圧倒的な強い必要がある。最強のスペクトル強度と次に強いスペクトル強度との比であるSMSRが大きいほど、スペクトルの純度が高い。図13(B)のSMSRは49.6dB 、図13(C)のSMSRは28.7dBである。図13(C)は、スペクトル純度が悪い場合である。レーザー発振の純度が比較的悪いSMSRが35dB以下のデータを除外し、スペクトルのピークの光周波数を横軸にとり、縦軸に前方SSG−DBR電流をプロットした図を図14(A)に示す。丸印で示したデータ点は、7本の特性曲線にそって狭い範囲に分布する。これらの特性曲線に沿ったデータ分布は狭く、最少二乗法によって各特性曲線の最適値を決定することを可能にする。7つのそれぞれの曲線を、3次関数を用いて最少二乗法で最適化した結果を実線で示す。後方SSG−DBRについても同様に特性曲線の最適値が得られる。従来技術として図8に示した前方SSG−DBR電流と後方SSG−DBR電流の2次元上に発振周波数をマッピングする方法に比べると、この当該発明者が見出した図14(A)に示したプロットから最適特性曲線を得る手順に従えば、遥かに簡単なデータ処理で、各光周波数を発振するための前方SSG−DBR電流と後方SSG−DBR電流の最適値が得られる。
上記のデータ処理で得られた最適の特性曲線を、前方SSG-DBR電流については細い実線で、後方SSG−DBR電流については細い破線で、図14(B)に示す。所望の光周波数の値で縦軸に平行に引いた直線と各最適特性曲線との交点から、所望の光周波数を出力するための前方SSG−DBR電流と後方SSG−DBR電流の対の値が得られる。一つの前方(または後方)SSG−DBR電流に対して2つの後方(または前方)SSG−DBR電流の値が可能の場合があるが、どちらを選択してもよい。電流の変化量が同じなら、前方SSG−DBR電流(実線)の方が、後方SSG−DBR電流(点線)よりも幅広い周波数領域をカバーするようになっている、つまり制御電流で設定する周波数の目盛の間隔が前方と後方のSSG−DBRで異なっている。これが前述のバーニア効果である。このバーニア効果により、前方SSG−DBR電流と後方SSG−DBR電流の一つの対により、幅広い光周波数の領域で一義的に出力周波数が決められるようになっている。図14(B)において、太線は周波数範囲187.2815THzから192.2041THzまで6.25GHzの周波数間隔で走査するために最適化曲線にそって選択した各SSG−DBR電流の一例である。実線が前方SSG−DBR電流、破線が後方SSG−DBR電流である。このように各SSG−DBR電流を設定すると、記号sで示した光周波数の値で、片方または両方のSSG−DBR電流を大きな値から小さな値に急激にスイッチしなければならない。この時、電流の不連続変化が大きいことと、レーザーの発振モードが飛ぶために、レーザーの発振が不安定になり、干渉信号の乱れが発生する。この乱れは従来技術では除去不可能とされていた。従来技術は非特許文献10のFig.7や非特許文献11のFig.7とFig.8で、この乱れ(ノイズ)が議論されている。この問題を解決するために、当該発明者は、電流をスイッチした後の電流設定値のままで繰り返し走査を続けると、やがて出力周波数は安定することを確認した。安定した後に次の周波数への走査を開始し、全体のデータをサンプリングしたあとで安定のために余分に挿入したデータをデータ解析からは取り除けば、急激な電流値のスイッチによるノイズが含まれたデータを取り除けることを見出した。
図14(C)は、図14(B)に示す太線で示した制御電流値に従ってレーザーを走査し、fMZ=351GHzのマッハ・ツェンダー干渉計を通して測定した信号である。記号sで記した制御電流の飛びの後は、同じ制御電流値を5回繰り返して干渉信号が安定するまで待つようにした。このため、横軸は光周波数ではなく、出力番号である。一見すると、図14(C)の干渉信号には沢山の飛びがあり、所望の正弦波形の干渉信号から大きくずれているように見えるが、位相電流の調整によって、所望の正弦波形に容易に合わせることができる。図14(D)の細線は、図14(C)において破線で囲まれたデータの部分を、横軸を拡大して記したものである。太線は、fMZ=351GHzのマッハ・ツェンダー干渉計から期待させる所望の形の干渉波形である。観測された細線が周波数の低い方に太線からずれている場合は位相電流を一致するまで増加し、反対に周波数の高い方にずれている場合は位相電流を一致するまで減少することによって、所望の正弦波形に容易に合わせることができる。位相電流の初期値は、どの出力番号でも6mA に設定したが、調整の結果は図14(E)に示すように6mAの上下を規則的に変化する値になる。このように、図1で示した方法による周波数の調整は、単一パラメータである位相電流を調整することのみで達成できる。
位相電流を調整した後の干渉信号を図14(F)に示す。記号sで示す制御電流の急激な飛びの後に、乱れが見られる。これらの出力番号値では、制御電流の急激な飛びによって、所望の干渉信号の値に制御できない。上述のように、所望の干渉信号の値が得られるまで同じ制御電流値を繰り返した。この図の場合は、飛びの後に5回同じ制御電流値を繰り返した。従って、各制御電流の飛びの後の4つのデータは、最終データとしては不要で、解析から取除いた。その結果、図14(G)に示すようにノイズのない所望の形の干渉信号が得られた。横軸は、余分なデータを取り除いた後の選択されたデータの番号である。
なお、各制御電流を増減すると、その領域の光吸収の増減が起き、レーザーの出力強度が変わる。出力強度が変動すると干渉信号の振幅が変わるので、振幅で合わせる操作に誤差が生じる。従って、図14(C)の測定の前には、レーザーの出力がどの出力番号でも一定なるようにSOA電流を調整する必要がある。また、位相電流のわずかな調整でも、レーザーの出力強度はわずかに変わるので、図14(G)に示す最終データ取得前にも、レーザー強度一定化の調整をすべきである。レーザー強度一定化の調整は、容易に自動化で行える。
図13と図14に示した手順に従って、数多くのSSG−DBRレーザーを図1に示す調整装置を用いて調整したところ、わずかな例ではあるが、前方SSG−DBR電流や後方SSG−DBR電流を、図14(A)と図14(B)に示した手順で求めた値からわずか変化させた方がより安定な出力が得られるという場合もあった。位相電流のみを用いた単一パラメータを用いた調整が基本ではあるが、当該発明はそれに限定されるものではなく、前方SSG−DBR電流および後方SSG−DBR電流および位相電流のうちの、2つまたは3つを用いて調整する場合も含む。
図14(C)から(G)で説明した例では、分かり易いように、所望の正弦波の波形が図11(G)に示すように正弦波である場合を示した。周波数調整のための位相電流の変化は、図14(E)に示すように規則的であるので、所望の干渉信号の変化が正弦波形の変化が顕在化する図11(G)の場合だけでなく、図11(B)から(F)に示すような場合でも、図14で説明した周波数調整手順は可能である。また、図1において、光干渉計105を順次変えて、図11に示した複数の種類の所望の干渉信号が観測できるようにして、調整を繰り返し、周波数調整の精度を向上してもよい。
正弦波が零になるところでは、正弦波の変数による微分は最大になり、変数の変化に対してもっとも敏感である。従って、図11に示す干渉信号の中では、周波数の所望の設定値からのずれの検出感度が最も高いのは図11(B)の場合である。しかし、この場合、全ての周波数で零に合わせるので、周波数間隔δfの整数倍異なった周波数に誤って調整しても、信号の形としての乱れは観測されない。このとき、図11(G)に示すようなゆっくり変化する信号では乱れが生じるので、その乱れから調整の誤りが判断できる。このように、異なる周波数間隔の光干渉計を用いれば、周波数調整の誤りを複数の光干渉計の信号の比較から検出でき、周波数調整の誤りをなくすことができる。
図2(A)は、周波数間隔が互いに異なる3つの光干渉計を同時に用いる周波数調整器の例である。個別周波数制御走査レーザー101の出力光を、光分波器110で4分割し、互いに周波数間隔の異なる3つの光干渉計と強度測定のための強度信号検出器114に導く。光干渉計A111、光干渉計B112、光干渉計C113の出力信号は、それぞれ、光信号検出器A115、光信号検出器B116、光信号検出器C117で検出される。各検出器で検出された信号は、そのままオシロスコープなどで表示してもよいし、コンピュータにデータを取り込みながら、コンピュータのディスプレイに表示してもよい。
図14に示す調整手順で説明したように、周波数調整の前に、レーザーの出力を出力番号によらずに一定することが望ましい。走査制御回路102は、入力された制御電流値に従って個別周波数制御走査レーザーを走査させる機能を持っていて、SOA電流についても適用できる。強度信号検出器114で検出する強度が一定になるように、信号経路103を介して、走査制御回路102でSOA電流を設定し、個別周波数制御走査レーザー101の出力強度を一定にする。
個別周波数制御走査レーザー101の設定したい周波数間隔をδfとする。光干渉計A111の周波数周期fMZAをδfに等しくすると、調整されたとき所望の形の干渉信号は図2(B)の干渉信号Aようにいつも零の信号である。光干渉計B112の周波数周期fMZBを、fMZB=4δfになるようにすると、図11(F)に示すような信号が所望の形の干渉信号になり、一部の不完全部分を除いて、図2(B)に示す干渉信号Bになる。光干渉計C113の周波数周期fMZCを、fMZC=60δfになるようにすると、ゆっくり変動する正弦波形が所望の形の干渉信号になり、一部の不完全部分を除いて、図2(B)に示す干渉信号Cになる。図2(B)では、4番目の出力番号のデータが誤って3番目の出力番号の周波数と同じに設定された場合が示されており、干渉信号Aでは誤りは分からず、干渉信号Cでも信号の変化が小さいところで誤りが不明瞭であるが、干渉信号Bを見れば、−1となるべきデータが0になっており、誤りがすぐに分かる。出力番号16のデータは、誤って出力番号12と同じ周波数に設定されている。この場合、干渉信号Aにも干渉信号Bにも異常は見られないが、干渉信号Cでは、はっきりと異常が検出できる。このように、一つの光干渉計だけでは検出できない設定の誤りも、複数の周波数周期の異なる光干渉計を同時または順次に用いることにより検出できる。図2に示す光干渉計の数や組み合わせ一例であって、他にも様々な組み合わせが可能である。
実施例2で説明した同時に複数の光干渉計を用いる方法は、実施例1の方法の一つの例であり、図1に示す方法には、複数の光干渉計を用いる場合も含まれる。
101 個別周波数制御走査レーザー
102 走査制御回路
103 制御電流値の信号経路
105 光干渉計
106 干渉信号検出器
110 光分波器
111 光干渉計A
112 光干渉計B
113 光干渉計C
114 強度信号検出器
115 干渉信号検出器A
116 干渉信号検出器B
117 干渉信号検出器C
118 コンピュータ
200 後方SSG−DBR領域
201 位相領域
202 ゲイン領域
203 前方SSG−DBR領域
204 SOA領域
210 後方SG−DBR領域
211 位相領域
212 ゲイン領域
213 前方SG−DBR領域
214 SOA領域
220 後方DBR領域
221 位相領域
222 ゲイン領域
223 前方DBR領域
224 SOA領域
230 後方S−DBR領域
231 位相領域
232 回折格子カプラ領域
233 ゲイン領域
234 SOA領域
240 DBR−A領域
241 DBR−B領域
242 マルチモード干渉計カプラ領域
243 位相領域
244 ゲイン領域
245 SOA領域
300 コンピュータ
302 光スペクトラムアナライザ
501 周波数走査光源
502 OCT干渉計
503 光ファイバ
505 分波カプラ
506 サーキュレータ
507 コリメータ
508 ガルバノミラー
509 レンズ
510 試料
511 合波カプラ
512 サーキュレータ
513 コリメータ
514 レンズ
515 参照ミラー
516 差動光検出器
517 A/D変換器
518 コンピュータ
519 OCT断層画像
520 表示器
530 試料光路
531 参照光路
541 サンプル開始トリガー
542 サンプリングクロック
801 ミラーA
802 ミラーB
803 ミラーC
804 ミラーD
805 ハーフミラー
806 光路C
807 光路D
810 分波器
811 光ディレイ
812 合波器
813 光路E
814 光路F

Claims (2)

  1. 走査制御回路によって走査が制御されている個別周波数制御走査レーザーの出力光が入力される光干渉計と、前記光干渉計が出力する干渉信号を検出する干渉信号検出器とからなるシステムにおいて、前記個別周波数制御走査レーザーを走査させた状態で前記干渉信号検出器が検出する信号が所望の形の干渉信号になるように前記走査制御回路を用いて前記個別周波数制御走査レーザーの制御電流の設定を可能にする方法。
  2. 走査制御回路によって走査が制御されている個別周波数制御走査レーザーの出力光が入力される光干渉計と、前記光干渉計が出力する干渉信号を検出する干渉信号検出器とから構成されていて、前記個別周波数制御走査レーザーを走査させた状態で前記干渉信号検出器が検出する信号が所望の形の干渉信号になるように前記走査制御回路を用いて前記個別周波数制御走査レーザーの制御電流の設定を可能にする装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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