JP2015000905A - ポリオレフィン系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】押出し成形の際に目ヤニ発生を防止することが可能であるポリオレフィン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂と充填剤を含み、押出成形に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物において、目ヤニ防止剤として親水性シリカを組成物全体の0.05〜2.5質量%の範囲内で含有させて組成物を構成した。
【選択図】なし

Description

本発明は、押出し成形に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物、該組成物を用いた管状製品、電線保護材、該電線保護材を用いたワイヤーハーネス等に関するものである。
従来、自動車電線の保護材として、ポリオレフィンに難燃剤等を配合してなるポリオレフィン系樹脂組成物を管状に押出成形して形成されたコルゲートチューブが公知である(例えば特許文献1参照)。上記難燃剤としては、金属水酸化物、金属酸化物、臭素系難燃剤等の各種の充填剤が用いられている。
ポリオレフィン系樹脂組成物をチューブ状に押出し成形する場合、ダイス口から多量の析出物が発生するという問題がある。この析出物は、目ヤニと呼ばれ、成形品に付着して外観不良となったり、更には成形品の機械的強度の低下を招く等の問題を引き起こす。
上記の目ヤニを防止するための添加剤として、ステアリン酸カルシウム等の外部滑剤を使用することが公知である。また、特許文献2には、目ヤニ防止剤として、特定の高級脂肪酸モノアミド化合物、及びモノエステル化合物とシリコーンオイルとを併用すること等が記載されている。
特開平7−186293号公報 特開2009−120717号公報
しかしながら、自動車用コルゲートチューブの押出し成形の際に、上記従来の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に、公知の目ヤニ防止剤を添加したところ、目ヤニを防止することができなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、ポリオレフィン系樹脂組成物の押出し成形の際に目ヤニ発生を防止することが可能であるポリオレフィン系樹脂組成物を提供することにある。また本発明の課題は、目ヤニを抑制して量産成形性が良好で、外観、機械的特性に優れた管状製品、電線保護材、及びワイヤーハーネスを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るポリオレフィン系樹脂組成物は、
ポリオレフィン系樹脂と充填剤を含み、押出成形に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物において、
目ヤニ防止剤として親水性シリカを組成物全体の0.05〜2.5質量%の範囲内で含有していることを要旨とするものである。
上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、前記親水性シリカの比表面積が、100m/g以上であることが好ましい。
上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、前記親水性シリカの含有量が、組成物全体の0.05〜2質量%の範囲内であることが好ましい。
上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、前記充填剤として難燃剤を含み、難燃性樹脂組成物であることが好ましい。
本発明に係る管状製品は、上記のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて押出成形して得られたことを要旨とするものである。
本発明に係る電線保護材は、上記のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて電線を保護可能な形状に形成されていることを要旨とするものである。
本発明に係るワイヤーハーネスは、上記の電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されていることを要旨とするものである。
本発明に係るポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と充填剤を含み、押出成形に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物において、目ヤニ防止剤として親水性シリカを組成物全体の0.05〜2.5質量%の範囲内で含有しているものであるから、充填内が添加されているポリオレフィン樹脂組成物の押出し成形の際に目ヤニ発生を良好に抑制することが可能である。押出し成形の際に目ヤニが発生しないと、成形品の外願不良や機械的強度の低下を防止できる。更に、成形の際の目ヤニを取り除く作業等が不要となって、量産成形性が良好であるといった効果がられる。
本発明の管状製品は、上記のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて押出成形して得られたものであるから、目ヤニを抑制して量産成形性が良好で、外観、機械的特性に優れた製品が得られる。
本発明の電線保護材は、ポリオレフィン系樹脂組成物を用いて電線を保護可能な形状に形成されているものであるから、目ヤニを抑制して量産成形性が良好で、外観、機械的特性に優れた電線保護材が得られる。
本発明のワイヤーハーネスは、上記の電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されている構成を採用したことにより、目ヤニを抑制して量産成形性が良好で、外観、機械的特性に優れたワイヤーハーネスが得られる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態のポリオレフィン系樹脂組成物は、難燃剤が添加された自動車用コルゲートチューブの成形に用いられる電線保護材用の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の例である。難燃性ポリプロピレン樹脂組成物は、例えば、下記の(A)〜(C)成分から構成することができる。
(A)ポリプロピレン系樹脂
(B)充填剤
(B−1)臭素系難燃剤
(B−2)三酸化アンチモン
(B−3)水酸化マグネシウム
(B−4)フェノール系酸化防止剤
(B−5)リン系酸化防止剤
(B−6)金属不活性剤
(C)目ヤニ防止剤
本発明は、親水性シリカを(C)目ヤニ防止剤として用いた点に大きな特徴がある。親水性シリカは、表面処理されていない未処理のシリカ微粒子が用いられる。シリカ微粒子は、天然品、合成品のいずれでもよい。未処理のシリカは、粒子表面が水酸基で覆われているため、親水性を有する。これに対し、表面をシラン等で疎水化処理した表面処理シリカは、目ヤニ防止効果が得られない。
本発明の組成物が、充填剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物に親水性シリカを添加することで、押出し成形の際の目ヤニ発生を抑制できる理由として、詳細は不明であるが、以下の理由が推察される。目ヤニの成分を分析すると、難燃剤等を多量に含んでいることが判明した。このことから、チューブ状に押出し成形を行う場合、組成物は、比重の大きい無機物等の充填剤が樹脂吐出口外側に押し出され易くなって、目ヤニが発生するものと考えられる。これに対し、組成物に親水性シリカを添加すると、組成物全体の溶融粘度を上昇させる。組成物の溶融粘度が上昇すると、押し出される際に充填剤が樹脂成分から分離し難くなる。その結果、押出し口の外側に比重の大きい充填剤が押し出され難くなって、目ヤニの発生が抑制されるものと考えられる。
親水性シリカは、BET比表面積が100m/g以上であると、更に組成物全体の溶融粘度を上昇させる効果が大きくなることから、目ヤニ抑制効果を向上させて、成形性が更に良好となる点から好ましい。親水性シリカは、粒子径は特に限定されないが、0.1〜20μm程度が好ましい。
組成物における親水性シリカの含有量の上限は、組成物全体の2.5質量%以下含有している。親水性シリカの含有量が2.5質量%を超えると、全体の粘度が高くりすぎて、成形不能となる虞がある。更に好ましい親水性シリカの含有量の上限は、組成物全体の2.0質量%以下である。また組成物中の親水性シリカの含有量の下限は、確実に目ヤニ防止効果を発揮するために、組成物全体の0.05質量%以上である。更に好ましい組成物中の親水性シリカの含有量の下限は、組成物全体の0.1質量%以上である。
以下、組成物の他の成分について説明する。上記(A)ポリプロピレン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂の中でも耐熱性が優れる為好ましい。ポリプロピレンは、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンのいずれでも良い。またポリプロピレンは、その分子構造は、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンのいずれでも良い。
ポリプロピレンは、230℃のMFR(メルトフローレイト)が0.5〜5g/10分であることが好ましい。ポリプロピレンのMFRが上記範囲内であると、成形性及び耐老化性が優れた成形体が得られる。
本発明に係る管状製品には耐加熱変形性が求められることが多く、ポリプロピレンの融点が150℃以上であるのが好ましく、更に好ましくは融点が160℃以上である。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物では、ポリプロピレン以外のポリオレフィン系樹脂を用いてもよい。具体的には、ポリエチレン、その他のオレフィンの単独重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体などのエチレン系共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−アクリル酸エステル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エステル共重合体などのプロピレン系共重合体などを例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、併用してもよい。
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、メタロセン超低密度ポリエチレンなどを例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、併用しても良い。
ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンをベースとするエラストマーを用いてもよく、例えばエチレン系エラストマー(PEエラストマー)、プロピレン系エラストマー(PPエラストマー)などを例示することができる。これらは、単独で用いても良いし、併用してもよい。
上記炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1テトラデセンなどが挙げられる。また、上記非共役ポリエンとしては、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
(B)充填剤としては、特に限定されないが、難燃剤、耐熱寿命改善剤等が挙げられる。難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの併用、水酸化マグネシウム等を用いることができる。
臭素系難燃剤は、例えば、エチレンビス(ペンタブロモベンゼン)〔別名:ビス(ペンタブロモフェニル)エタン〕、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、テトラブロモビスフェノールS(TBBPS)、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、TBBA−カーボネイト・オリゴマー、TBBA−エポキシ・オリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBBA−ビス(ジブロモプロピルエーテル)、ポリ(ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモベンゼン(HBB)等が挙げられる。
三酸化アンチモンは、例えば、鉱物として産出される三酸化アンチモンを粉砕処理して微粒化したものを用いることができる。三酸化アンチモンを臭素系難燃剤と併用することで、臭素系難燃剤の使用量を減らすことができる。
臭素系難燃剤と三酸化アンチモンを併用する場合、難燃剤の配合量は、ポリプロピレン100質量部に対し、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの合計量で、1.5〜15質量部の範囲内であることが好ましい。難燃性付与剤の配合量が、1.5質量部未満では難燃性が不十分となる虞があり、15質量部を超えると耐熱老化性が低下する虞がある。また臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの配合比は、質量比で、臭素系難燃剤:三酸化アンチモン=1:1〜4:1の範囲内であるのが、添加効率の点から好ましい。
また難燃剤として用いる水酸化マグネシウムは、海水から結晶成長法で合成するもの、塩化マグネシウムと水酸化カルシウムの反応で合成するもの等の合成水酸化マグネシウム、或いは天然に産出する鉱物を粉砕した天然水酸化マグネシウム等を用いることができる。水酸化マグネシウムは、表面処理が施されていてもよい。前記表面処理剤としては、例えば、パラフィン系樹脂、オレフィン系樹脂等の炭化水素系樹脂が挙げられる。水酸化マグネシウムの平均粒径は、0.1〜20μmの範囲内であることが好ましい。
難燃剤としての水酸化マグネシウムの配合量は、難燃性、耐熱性等の点から、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、5〜100質量部の範囲内であるのが好ましい。
耐熱寿命改善剤として用いられるフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、金属不活性剤等の配合量は、特に限定されないが、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、それぞれ0.1〜3質量部の範囲内であるのが好ましい。
上記フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることができる。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、3,3’,3”,5,5’5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピノキ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもいずれでも良い。
またフェノール系酸化防止剤としては、上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外に、モノフェノール系、ジフェノール系、トリフェノール系、及びポリフェノール系酸化防止剤等を用いることができる。
上記リン系酸化防止剤としては、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
上記金属不活性剤としては、金属との接触によるポリオレフィン系樹脂の劣化を防止して、耐熱老化特性を更に向上させることができ る。金属不活性剤としては、例えば、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2’,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジド、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂組成物は、特に比重の大きな充填剤を用いた場合に目ヤニが発生し易くなっている。本発明の組成物は、このような組成物の目ヤニ防止に効果的である。このような比重の大きな充填剤は、金属酸化物、金属水酸化物、金属微粒子等の無機系フィラーが挙げられる。このような充填剤として、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ゼオライト等の二酸化ケイ素塩類等が挙げられる。前記充填剤は、要求される特性に応じて適宜、配合することができる。
ポリオレフィン系樹脂組成物は、充填剤として、上記の難燃剤、耐熱寿命改善剤以外に、各種安定剤、耐候剤、銅害防止剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、核剤等を、本発明の効果を損なわない範囲であれば添加してもよい。上記添加剤は、この種のポリオレフィン系樹脂組成物に添加される公知の材料が使用できる。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を調製するには、上記の各成分を公知の混合方法で混合すればよい。混合の際の配合順序、混合方法などは特に限定されない。具体的な混合方法としては、例えば、タンブラー式ブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、押出機(単軸、二軸)、バンバリミキサー、加圧ニーダー、ロールなどの通常用いられる混練機を用いて混合する方法等が挙げられる。
本発明の管状部材は、上記ポリオレフィン系樹脂組成物を用いて押出し成形して得られたものである。押出し成形は、ポリオレフィン系樹脂組成物を、180〜250℃程度で溶融させて、成形ノズルのダイス口からチューブ状に連続的に押出す。本発明のポリオレフィン樹脂組成物を用いることで、樹脂組成物がダイス口から押し出される際に、目ヤニの発生を抑制することができる。
本発明の電線保護材は、上記のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなるものである。具体的な電線保護材の形状は、特に限定されず、電線、或いは電線束を保護可能な形状であればよい。電線保護材の形状としては、電線束の外周を覆い、内部の電線束を外部環境等から保護する役割を有するものである。
具体的な電線保護材の形状としてコルゲートチューブが挙げられる。コルゲートチューブの製造は、例えばポリオレフィン系樹脂組成物をチューブ状の管状製品として押し出した後、金型により蛇腹状のコルゲートチューブに成形することができる。
本発明のワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されているものである。
ワイヤーハーネスに用いられる電線束は、絶縁電線のみがひとまとまりに束ねられた単独電線束、あるいは、絶縁電線と他の絶縁電線とが混在状態でひとまとまりに束ねられた混在電線束等を用いることができる。単独電線束及び混在電線束に含まれる電線本数は、特に限定されるものではない。
上記形態の樹脂組成物を用いた電線保護材及びワイヤーハーネスは、耐熱性、難燃性が要求される、自動車用電線保護材及び自動車用ワイヤーハーネスとして好適に利用することが可能である。
以下、本発明の実施例、比較例を示す。尚、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
[供試材料及び製造元等]
実施例及び比較例において使用した供試材料を製造元、商品名等とともに示す。ポリプロピレンについては、MFR、融点、引張り強さ、等を表1、表2中に示した。
(A)ポリプロピレン
(A−1)ブロックPP1:日本ポリプロ社製、商品名「EC9」
(A−2)ブロックPP2:プライムポリマー社製、商品名「J356HP」
(A−3)ブロックPP3:プライムポリマー社製、商品名「J704UG」
(B)充填剤
(B−1)臭素系難燃剤:アルベマール社製、商品名「SAYTEX8010」
(B−2)三酸化アンチモン:鈴裕化学社製、商品名「AT−3CNLP」
(B−3)水酸化マグネシウム:協和化学工業社製、商品名「キスマ5A」
(B−4)フェノール系酸化防止剤:BASF社製、商品名「IRGANOX1010」
(B−5)リン系酸化防止剤:BASF社製、商品名「IRGAFOS168」
(B−6)金属不活性剤:ADEKA社製、商品名「CDA-1」
(C)目ヤニ防止剤(親水性シリカ)
(C−1)シリカ表面処理なし1(BET比表面積61m/g):オリエンタルシリカ社製、商品名「トクシール732」
(C−2)シリカ表面処理なし2(BET比表面積91m/g):オリエンタルシリカ社製、商品名「トクシール532」
(C−3)シリカ表面処理なし3(BET比表面積121m/g):オリエンタルシリカ社製、商品名「トクシールGU」
(C−4)シリカ表面処理なし4(BET比表面積175m/g):オリエンタルシリカ社製、商品名「トクシールU」
(C−5)シリカ表面処理なし5(BET比表面積262m/g):オリエンタルシリカ社製、商品名「ファインシールX35」
以下の(D)〜(F)は、実施例の目ヤニ防止剤の代わりに比較例で用いた添加剤である。
(D)表面処理シリカ
(D−1)シリカ表面処理1(BET比表面積120m/g);白石カルシウム社製、商品名「DM−10」
(D−2)シリカ表面処理2(BET比表面積230m/g);白石カルシウム社製、商品名「DM−30S」
(E)外部滑剤
(E−1)高分子アクリル系:三菱レーヨン社製、商品名「メタブレンL1000」
(E−2)フッ素系:住友スリーエム社製、商品名「ダイナマーFX6313」
(E−3)高級脂肪酸ポリアミド:共栄社化学社製、商品名「WH215]
(F)内部滑剤
(F−1)変性SEBS:旭化成社製、商品名「タフテックM1913」
(F−2)反応性ポリオレフィン:三井化学社製、商品名「アドマーHE810」
以下、実施例、比較例の評価試験方法について説明する。
(1)成形性試験
(1−1)量産機連続成形性
表1、表2に示す実施例、比較例の各成分を、二軸混練機を用いて、混練温度220℃にて混合した後、ペレタイザーにてペレット状に成形して実施例、比較例に係る各組成物のペレットを得た。次いで得られた各ペレットを用い、内径25mmのコルゲートチューブを、樹脂温度220℃、線速10mm/minで7時間連続押出成形を行った。この成形の際に、コルゲートチューブに対する目ヤニ付着の有無を画像検査器で確認した。7時間後までに目ヤニがコルゲートチューブに付着しない場合を良好(○)とし、目ヤニが付着した場合を不良(×)と評価した。このとき成形した実施例、比較例のコルゲートチューブは、適宜の長さに切断して、後述する製品評価用試験片として用いた。
〔シート評価用試験片の作製〕
上記の実施例、比較例の組成物の各ペレットを用いて、220℃で加熱圧縮して、140mm×140mm×厚さ1mmのシートを成形した。このシートをJIS 3号ダンベル型で打抜いてシート評価用試験片を作製した。
上記のシート評価用試験片とコルゲートチューブ製品を用いて、シート評価及び製品評価を行った。評価結果を表1〜2に合わせて示した。評価方法の詳細は下記の通りである。
(2)シート評価
(2−1)難燃性試験
JIS K−7201に準拠し、25mm×200mm×厚さ1mmの短冊試験片に点火してから180秒以内に消炎する最大酸素濃度を測定した。判定基準は、最大酸素濃度22以上を合格とし、それ以外を不合格とした。
(2−2)引張り強さ、(2−3)破断伸び
厚さ1mmのJIS 3号ダンベル試験片を用い、引張速度50mm/minで引張り試験を行い、引張強さ、破断伸びを測定した。引張強さは、目ヤニ防止剤を配合しない状態の試験片の物性(引張り強さ、伸び)に対し、保持率95%以上を合格とし、それ以外を不合格とした。すなわち実施例1〜13は比較例1、実施例14は比較例2、実施例15は比較例3を基準として、それに対する保持率で判定した。
(2−4)耐熱老化性1
厚さ1mmのJIS 3号ダンベル試験片を用いて、150℃で熱老化試験を実施し、破断時伸びが50%になる耐熱寿命を求めた。耐熱寿命が1200時間以上の場合を合格(○)とし、耐熱寿命が1200時間未満の場合を不合格(×)とした。
(3)製品評価
(3−1)耐熱老化性2
芯線の断面積が20mmの架橋オレフィン電線(長さ35cm)を3本纏め、この電線の周囲を断面積が14mmの編組シールド(錫めっき銅線)したものを、上記の製品評価用に作成した内径25mmのコルゲートチューブに収め、チューブ中央及び両端の3箇所をポリ塩化ビニルテープでテープ゜巻きしてワイヤーハーネスの試験体を作製した。この試験体を用いて120℃で熱老化試験を実施し、目視での割れ・欠けを観察した。120℃1500時間以上で、割れ・欠けが発生しなかった場合を合格とし、120℃1500時間未満で、割れ、欠けが発生した場合を不合格とした。
(3−2)耐摩耗性試験
上記の製品評価用に作成した内径25mmのコルゲートチューブを長さ100mmに切断したものを金属棒に通し試験片とし、規定された研磨布粗さ150番の摩耗テープに接するように試験片を固定し、荷重450gf、テープ速度1500mm/minで移動させ、金属棒とテープが接するまでのテープ長さを読み取った。摩耗テープ距離10000mm以上の場合を合格とし、それ以外を不合格とした。
Figure 2015000905
Figure 2015000905
表1に示すように、実施例1〜15は、連続成形性試験の評価が良好であり、目ヤニ防止効果が優れていた。これに対し目ヤニ防止剤を添加しなかった比較例1〜3、表面処理シリカを添加した比較例6、7、外部滑剤や内部滑剤を添加した比較例8〜12等は、表2に示すように連続成形性試験の評価が不良であった。また目ヤニ防止剤として親水性シリカを組成物全体の3質量%含有させた比較例4、5は、親水性シリカの含有量が2.5質量%を超えているため、組成物の粘度が高くなりすぎて、製品を成形することができなかった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

Claims (7)

  1. ポリオレフィン系樹脂と充填剤を含み、押出成形に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物において、
    目ヤニ防止剤として親水性シリカを組成物全体の0.05〜2.5質量%の範囲内で含有していることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
  2. 前記親水性シリカの比表面積が、100m/g以上であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. 前記親水性シリカの含有量が、組成物全体の0.1〜2質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  4. 前記充填剤として難燃剤を含み、難燃性樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて押出成形して得られたことを特徴とする管状製品。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて電線を保護可能な形状に形成されていることを特徴とする電線保護材。
  7. 請求項6記載の電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
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