JP2014529359A - 投与および治療の方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法に関し、その方法は、そのヒトからのサンプルにおいてニューロフィブロミン−2(NF2)遺伝子の遺伝子産物の検出可能な量の有無を判定すること、および遺伝子産物またはアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、そのヒトに、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。本発明はまた、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法に関し、その方法は、そのヒトからのサンプルにおいてNF2遺伝子の機能的アイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片の検出可能な量の有無を判定すること、および遺伝子産物またはアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、そのヒトに、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。

Description

本発明は癌を治療する方法に関する。
接着斑キナーゼ(本明細書ではFAK)は、接着斑においてシグナル伝達機能および足場機能の両方を有する非受容体型タンパク質チロシンキナーゼである。FAKは、細胞接着、移動および生存の主要なレギュレーターである。従って、FAK阻害は、複数の癌の治療への重要な手段を提供する。治療において、FAK阻害剤に応答しない患者から応答する患者を同定することが重要であり、その結果、不応者には代替治療が提供され得る。
図1は、ウエスタンブロッティングによる様々な細胞株におけるNF2の遺伝子産物(タンパク質)のウエスタンブロット検出についての画像を示す。図1Aは複数のNF2アイソフォームを示し、図1BにNF2のアイソフォーム1だけを示している。 図2は、ヒト細胞株NCI−H2052(merlinアイソフォーム1が検出されないNF2変異株)およびヒト細胞株MSTO−211H(merlinアイソフォーム1が検出される野生型NF2)におけるFAK[図3A]およびリン酸化されたFAK(pFAK)[図3B]のタンパク質レベルのウエスタンブロット検出についての画像を示す。 図3は、5種の中皮腫細胞株および1種の肺細胞株におけるNF2のアイソフォーム1のタンパク質遺伝子産物(merlinアイソフォーム1)の免疫組織化学的検出についての画像を示す(merlinアイソフォーム1が検出されない細胞、左のパネル;merlinアイソフォーム1が検出される細胞、右のパネル)。 図4は、merlinアイソフォーム1の状態による、化合物Aでの治療を受けた患者のカプラン・メイヤー法による無増悪生存期間を示すグラフである。 図5は、化合物Aでの治療を受けた患者の治療期間についての棒グラフであり、このグラフにmerlinアイソフォーム1の状態を示している。 図6は、RECIST規準により判定した、化合物Aでの治療を受けた患者の最良効果時における腫瘍測定値(治験責任医師による評価)の、ベースラインからの変化率についての棒グラフであり、このグラフにmerlinアイソフォーム1の状態を示している。
本発明は、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法に関し、その方法は、該ヒトからのサンプルにおいてニューロフィブロミン−2(NF2)遺伝子の遺伝子産物の検出可能な量の有無を判定すること、および遺伝子産物またはアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、該ヒトに、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。本発明はまた、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法に関し、その方法は、該ヒトからのサンプルにおいてNF2遺伝子の機能的アイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片の検出可能な量の有無を判定すること、および遺伝子産物またはアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、該ヒトに、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。
発明の詳細な説明
細胞外マトリックス(ECM)は、体の組織および臓器の細胞構成のための状況と枠組みを提供する。組織のECMと細胞との間の相互作用は、発生、ホメオスタシス、細胞増殖および細胞生存の制御において重要な役割を有する。細胞とECMとの間の相互作用または細胞−細胞間相互作用の異常は、構造変化、細胞移動促進、浸潤および増殖性をもたらし、最終的にはヒト疾患発生に至る可能性がある。癌は、無秩序な細胞移動と増殖を伴うヒト疾患の典型的な例であり、浸潤性および転移性疾患へと進展する。
ECMとの細胞の相互作用は、ECMの成分による細胞受容体の関与を通じた細胞接着を必要とする。ECM結合、またはより具体的には、膜貫通型インテグリンファミリーのタンパク質とのフィブロネクチン結合により、接着斑複合体(または焦点接触)と一般的に呼ばれるこのECM−細胞界面でタンパク質の動的クラスターを形成する。これらの複合体はECMを細胞骨格と結びつける。この界面での、構造に関連しかつシグナル伝達する複合体の形成は、細胞にとって重要な調節的役割を有する。足場特性およびシグナル伝達特性を有する複数のタンパク質が接着斑に局在することは記載されている。非受容体型タンパク質チロシンキナーゼである接着斑キナーゼ(FAK)は、PKT2またはタンパク質チロシンキナーゼ2としても知られており、接着斑においてシグナル伝達機能と足場機能の両方を有し、複雑な、細胞接着、移動および生存の中心的なレギュレーターとして示されている[1〜3]。
FAKは、インテグリン依存性細胞接着の制御を理解し、足場依存性細胞増殖、および腫瘍細胞の場合の、足場非依存性細胞増殖に対して洞察を得るために取り組んでいる研究者により単独で発見された[4、5]。他の研究者はv−src癌遺伝子のトランスフォーメーション機構を理解するためにその基質を追求している。FAKが接着斑におけるsrcの基質および結合相手として発見されることにより、足場非依存性細胞増殖およびアノイキスからの保護についての機構を理解するための最初の洞察が得られた[6、7]。その後、数多くの研究によってFAK発現レベルおよび/または活性化状態は癌発生および進行と関連づけられた。FAKの活性化は、リン酸化されたFAKまたはphosphor−FAK(pFAK)のレベル、より具体的には、チロシン397(srcの結合部位でもあるFAKの自己リン酸化部位)がリン酸化されたpFAKの量により推定されることが多い。pFAKレベルの高まりは癌の初期のより進行した段階、重要なことには、転移性疾患への移行と関係していた[3、8、9]。
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド(以下、「化合物A」)またはその薬学上許容される塩は、その薬学上許容される塩とともに、国際出願日2009年10月27日の国際出願第PCT/US2009/062163号(国際公開第WO2010/062578号、国際公開日2010年6月3日)に、特に癌の治療においてFAK活性の阻害剤として有用であることが開示および特許請求されており、この国際出願の開示は総て引用することにより本明細書の一部とされ、この国際出願における化合物Aは実施例41aの化合物である。
FAK活性の阻害剤として有用である他の化合物は、国際出願日2008年3月10日の国際出願第PCT/US/2008003235号(国際公開第WO2008/115369号、国際公開日2008年9月25日)に記載されており、この国際出願の開示は総て引用することにより本明細書の一部とされる。
化合物Aは、新規な癌治療としてヒトにおいて試験中である。FAK阻害剤、例えば、化合物Aに反応する可能性が高い遺伝子型および表現型を同定することが望ましい。
神経繊維腫症2型(NF2)は、NF2(ニューロフィブロミン−2またはマーリン(merlin))遺伝子の遺伝性生殖細胞突然変異によって起こる遺伝性癌症候群である。NF2遺伝子は腫瘍サプレッサーであり、NF2症候群では腫瘍サプレッサー機能の異常または不在が認められる。NF2症候群は、シュワン腫、髄膜腫および上衣腫を含む神経系の腫瘍を発症する患者を特徴とする。腫瘍は、残りの対立遺伝子の体細胞での不活性化により発生する。NF2遺伝子の突然変異は大多数の散発性神経系腫瘍でも見出され、中枢神経系癌におけるこの腫瘍サプレッサーの重要性が強調される[10]。さらに、NF2の同系接合型突然変異は、悪性中皮腫(50%)、甲状腺(17%)、膀胱(11%)、皮膚(5%)、胃(5%)、骨(3%)、腎臓(2%)、乳房(2%)および腸(2%)を含む他の腫瘍タイプでも確認された[11]。そして最後に、NF2遺伝子のタンパク質産物(マーリンと呼ばれることが多い)は、ErbB2とのsrcの結合を調節し、src−FAK経路に影響を及ぼすことすることにより、グリア細胞増殖の重要なレギュレーターとして関係していた[12]。これらの観察結果は、マーリンが膠芽腫に関与する可能性があることを示唆している。
NF2遺伝子のタンパク質産物は、最も一般的には、マーリンと呼ばれるが、ニューロフィブロミン−2タンパク質としても知られている。マーリンの複数のアイソフォームが記載されており、アイソフォーム1およびアイソフォーム2が最も一般的である[13]。アイソフォーム1は、NF2の腫瘍サプレッサー活性を有することが報告されており、エキソン16およびエキソン17の選択的スプライシングにより異なるカルボキシル末端のタンパク質がもたらされることがアイソフォーム2と異なっている。多くの研究により、マーリンと相互作用する膜貫通タンパク質および細胞内タンパク質が確認され、一部のタンパク質は3つの分葉をもつアミノ末端の4.1、エズリン(Ezrin)、ラドキシン(Radixin)、モエシン(Moesin)(FERM)ドメインを含む保存されたドメインを介して相互作用した。これらの相互作用は、細胞骨格制御、細胞運動性および細胞浸潤に重要である。Merlinは、HIPPOシグナル伝達経路(哺乳類では保存されるがキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)ではまだ解明されていない経路)に近位のタンパク質とも相互作用する[14]。HIPPO経路は、細胞増殖、細胞生存および臓器サイズに関与する。これらの細胞活性のHIPPO経路制御は、マーリンが癌細胞増殖および進行に影響を及ぼすことを可能にする[13]。
悪性中皮腫は高悪性度の致死性疾患であり、多くの場合、アスベストへの曝露と関連している[15]。中皮腫の腫瘍は浸潤性が高いと特徴付けられており、症例のおよそ40〜50%において、NF2遺伝子は染色体22q12での染色体改変により変異しているかまたは欠失している。NF2について欠失している中皮腫細胞におけるマーリンの強制発現は細胞移動性および浸潤性を阻害することが示された。Merlin再発現は、FAKリン酸化を減少させ、srcおよびp85(ホスホイノシチド3−キナーゼの調節サブユニット)との結合を破壊することも示されている。これらの研究は、マーリンの不活性化はFAK活性化をもたらし、中皮腫発症の重要な段階であり得ることを示唆している[16]。
本開示は、特定のNF2変異癌細胞またはマーリン陰性癌細胞はそれらの野生型対応物よりもFAK阻害剤に対する感受性がずっと高いという発見に関するものである;従って、FAK阻害剤の有効性は、それらのNF2突然変異状態またはマーリンアイソフォーム1発現状態に基づいて、例えば、NF2の遺伝子産物、例えば、マーリンアイソフォーム1タンパク質、の有無に基づいて患者を前もって選択することにより改善することができる。
NF2遺伝子およびNF2遺伝子突然変異
本開示は、癌を治療する方法に関し、その方法は、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を、薬学上許容される組成物で、1以上のNF2突然変異を有する癌に罹患しているヒトに投与することを含む。本開示はまた、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法に関し、その方法は、治療を必要とするヒトに、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなり、この場合、該ヒトは、少なくとも1つのニューロフィブロミン2(NF2)突然変異、またはNF2遺伝子の遺伝子産物、例えば、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在をもたらす任意の突然変異、またはNF2遺伝子の機能的遺伝子産物、例えば、機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質もしくはその断片の検出可能な量の不在をもたらす任意の突然変異を有する癌に罹患していると判定されたヒトである。少なくとも1つのニューロフィブロミン2(NF2)突然変異、またはNF2遺伝子の遺伝子産物、例えば、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在をもたらす任意の突然変異、またはNF2遺伝子の機能的遺伝子産物、例えば、機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質もしくはその断片の検出可能な量の不在をもたらす任意の突然変異を有する癌に罹患しているヒトへのFAK阻害剤の投与は、そのような突然変異のないヒトと比べて、1以上の症状の増強をもたらす。
野生型NF2遺伝子(NM_000268および遺伝子ID:4771)の発現は、複数の遺伝子産物、すなわち、複数のアイソフォームの発現をもたらす。例えば、野生型NF2遺伝子の発現は、少なくとも、NF2遺伝子のアイソフォーム1およびアイソフォーム2の発現をもたらす。野生型ではないNF2遺伝子の発現は、その遺伝子が1以上の突然変異を有するため、NF2遺伝子の1以上のアイソフォームの遺伝子産物の発現の欠如をもたらし得る。ある特定の実施形態では、NF2遺伝子における突然変異、すなわち、NF2突然変異は、1以上の遺伝子産物またはそれらの断片をもたらすが、それらはmRNAまたはタンパク質へと発現されない。ある特定の実施形態では、癌治療を必要とするヒトから得られたサンプルは、NF2突然変異を有する細胞を含み、この場合、その突然変異は検出可能なmRNA転写物をもたらすが、それらはタンパク質へと翻訳されず、そのような突然変異は未熟な停止コドンをもたらす。他の実施形態では、NF2突然変異はmRNAおよび翻訳されたタンパク質の発現の欠如をもたらすが、例えば、これは、NF2突然変異が染色体欠損または他のNF2遺伝子欠失によるものであったためである。他の実施形態では、NF2突然変異は、例えば、染色体欠損、NF2遺伝子欠失、または未熟停止コドンをもたらす突然変異のため、NF2のアイソフォーム1の、発現の欠如または検出可能な量の不在をもたらす。
さらなる実施形態では、NF2突然変異は、NF2遺伝子によって発現されるタンパク質の発現の欠如をもたらし、この場合、そのタンパク質は腫瘍サプレッサーアイソフォームである。別の実施形態では、発現されない腫瘍サプレッサーアイソフォームはNF2のアイソフォーム1である。別の実施形態では、NF2遺伝子における突然変異は、NF2のアイソフォーム1遺伝子産物の発現の欠如をもたらす。さらなる実施形態では、変異NF2遺伝子のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物は発現されない。別の実施形態では、変異NF2遺伝子のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物は検出可能な量で存在しない。さらなる実施形態では、NF2のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物の機能的断片、すなわち、in vivoまたはin vitroで測定した場合に腫瘍サプレッサー活性を保持する断片は、検出可能な量で存在しない。
他の実施形態では、NF2遺伝子の遺伝子産物は発現され得る、すなわち、検出可能な量で存在し得るが、その遺伝子産物は機能を果たさない可能性がある。遺伝子産物の機能喪失は様々な方法で起こり得るが、それには突然変異が含まれる。従って、本発明はまた、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法に関し、その方法は、該ヒトからのサンプルにおいてNF2遺伝子の機能的アイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片の検出可能な量の有無を判定すること、および遺伝子産物またはアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、該ヒトに、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。
ヒトから得られた癌においてNF2突然変異が検出される場合のいくつかの実施形態では、FAK阻害剤が投与される。腫瘍サプレッサーアイソフォームの発現の欠如、例えば、NF2のアイソフォーム1の発現の欠如が存在する場合の本明細書における方法では、その方法は、癌を有するヒトに、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩を投与することを含んでなる。一実施形態は、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法であり、その方法は、該癌においてNF2遺伝子の1以上のアイソフォームの発現を検出すること、および腫瘍サプレッサーアイソフォームの検出可能な発現がなされない場合に、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。本明細書における別の実施形態は、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法であり、その方法は、該癌の1種以上の細胞のサンプルを得ること、該サンプルにおいてNF2のアイソフォーム1の発現を検出すること、および該NF2アイソフォーム1が検出されない場合に、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。NF2のアイソフォーム1が検出されない場合のさらなる実施形態では、前記検出はNF2遺伝子のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物の検出である。本明細書におけるさらに別の実施形態は、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法であり、その方法は、該癌の1種以上の細胞のサンプルを得ること、該サンプルにおいてNF2のアイソフォーム1および1つ以上の追加アイソフォームの有無を検出すること、およびアイソフォーム1が検出されない場合に、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。
他の実施形態では、野生型NF2のアイソフォーム1は、癌治療を必要とするヒトからの腫瘍またはそのサンプルにおいて発現される。さらなる実施形態では、野生型NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物が検出可能な量で存在する。さらに別の実施形態では、野生型NF2のアイソフォーム1の断片が検出可能な量で存在する。さらなる実施形態では、NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物の断片は機能的断片であり、この場合、NF2のアイソフォーム1遺伝子産物の断片はin vitroまたはin vivoあるいはその両方で腫瘍サプレッサー活性を保持する。NF2のアイソフォーム1遺伝子産物がタンパク質またはその機能的断片であり、そのアイソフォーム1タンパク質がヒトサンプルにおいて検出可能な量で存在する場合の特定実施形態では、該ヒトは、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドまたはその薬学上許容される塩により治療され、前記方法は、前記癌のモニタリングの強化をさらに含む。NF2のアイソフォーム1遺伝子産物がタンパク質またはその機能的断片であり、そのアイソフォーム1タンパク質がヒトサンプルにおいて検出可能な量で存在する場合の特定実施形態では、該ヒトは、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドと他の抗癌剤との併用により治療され、前記方法は、前記癌のモニタリングの強化をさらに含む。
代替実施形態では、癌治療を必要とするヒトから得られたサンプルにおけるNF2のアイソフォーム1遺伝子産物の検出可能な量の有無がバイオマーカーとして使用され、この場合、該サンプルにおけるNF2のアイソフォーム1の検出可能な量の不在は、該ヒトがFAK阻害剤による治療に適していることを示す。さらなる実施形態では、癌治療を必要とするヒトから得られたサンプルにおけるNF2のアイソフォーム1遺伝子産物の検出可能な量の有無がバイオマーカーとして使用され、この場合、該遺伝子産物はタンパク質であり、該サンプルにおけるニューロフィブロミン2アイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在は、該ヒトがFAK阻害剤による治療に適していることを示す。さらなる実施形態では、癌治療を必要とするヒトから得られたサンプルにおけるNF2のアイソフォーム1遺伝子産物、例えば、ニューロフィブロミン2アイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の有無がバイオマーカーとして使用され、この場合、該サンプルにおけるニューロフィブロミン2アイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在は、該ヒトがFAK阻害剤による治療に適していることを示し、この場合、該FAK阻害剤は、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドであり、該癌治療は中皮腫に対するものである。
Merlinアイソフォーム1
NF2遺伝子のタンパク質遺伝子産物はマーリン(UniProt番号P35240)と呼ばれることが多く、ニューロフィブロミン−2としても知られている。従って、当業者ならば、マーリンアイソフォーム1タンパク質がニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質およびNF2アイソフォーム1タンパク質と同じであることが分かるであろう。NF2のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物、またはマーリンアイソフォーム1タンパク質は、当技術分野において腫瘍サプレッサー機能を有することが知られている。マーリンアイソフォーム1タンパク質は、略して、マーリンと呼ばれることもある;マーリンがマーリンアイソフォーム1を意味するかまたは複数のアイソフォームを意味するかは文脈から明らかになるはずである。本明細書において、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない細胞(例えば、腫瘍細胞)は「マーリン陰性」と呼ばれる。本明細書において、癌は、その癌もしくは腫瘍において、またはその癌細胞の少なくとも一部、例えば、癌治療を必要とするヒトからのサンプルとして得られた癌細胞の一部において、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない場合には、「マーリン陰性癌」である。本明細書において、機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない細胞(例えば、腫瘍細胞)も同じようにマーリン陰性と呼ばれる。本明細書において、癌は、その癌もしくは腫瘍において、またはその癌細胞の少なくとも一部、例えば、癌治療を必要とするヒトからのサンプルとして得られた癌細胞の一部において、機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない場合も、マーリン陰性癌である。
マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在は、上記のように、NF2遺伝子における突然変異によって起こり得る。マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在は、異常な転写もしくは翻訳によって、または正常および異常な、様々な転写後もしくは翻訳後プロセスによって起こり得る。マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在は、マーリンアイソフォーム1 mRNAの転写に必要なプロモーターまたは他の調節配列における突然変異によって起こり得る。さらに、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在は、様々な後成的現象に起因しているかもしれない;例えば、マーリンアイソフォーム1タンパク質は後成的機構によって抑制され得る。マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在は、NF2遺伝子ではないが、マーリン発現(例えば、マーリンアイソフォーム1 mRNAまたはタンパク質発現)に必要な1種以上の他の遺伝子(限定されるものではないが、転写、スプライシング、翻訳またはタンパク質安定性に必要な因子を含む)における遺伝子修飾(限定されるものではないが、改変、突然変異、欠失、挿入などを含む)の結果かもしれない。
本明細書におけるいくつかの実施形態では、マーリンアイソフォーム1タンパク質が検出可能な量で存在するかもしれないが、そのマーリンアイソフォーム1タンパク質は機能を果たさない。機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在は、突然変異、異常な転写もしくは翻訳、または異常な転写後もしくは翻訳後プロセッシングなどの様々な理由で起こり得る。マーリンアイソフォーム1タンパク質の機能喪失を示す癌細胞は、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の不在を示す癌細胞と同じ表現型を示すであろう;この表現型は、そのような癌細胞を有するヒトにおいて、例えば、機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質を有する癌に罹患しているヒトと比べて、本明細書において開示されるFAK阻害剤またはその薬学上許容される塩による治療改善を可能にするであろう。この表現型にpFAK発現レベルの上昇も含まれることがある。
マーリンアイソフォーム1タンパク質の機能喪失の確認は、当業者の技術の範囲内であり、限定されるものではないが、マーリンタンパク質により下流シグナル伝達を測定することを含む。そのような下流シグナル伝達経路の1つは、転写因子YAP/TAZを調節するMST1/2キナーゼおよびLATS1/2キナーゼを含む古典的経路である。下流シグナル伝達の測定は、所望により、キナーゼ(例えば、MST1/2および/またはLAT1/2)の標的のリン酸化状態および/またはリン酸化レベル(phosophorylation level)を決定することを含む。下流シグナル伝達の測定は、所望により、YAP/TAZ転写複合体の標的遺伝子の発現レベルを測定することを含む。マーリンが関与するキナーゼ経路の下流シグナル伝達の測定は当業者の技術の範囲内である。
本明細書における一実施形態は、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法であり、その方法は、該ヒトからの腫瘍サンプルからマーリンアイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片の検出可能な量の有無を判定すること、およびマーリンアイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片が検出されない場合に、該ヒトに、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドまたはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含む。
別の実施形態は治療を必要とするヒトにおいてマーリン陰性癌を治療する方法であり、その方法は、該ヒトに、FAK阻害剤の治療上有効な量を投与することを含む。ヒトにおいてマーリン陰性癌を治療する方法のさらなる実施形態では、FAK阻害剤は、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドまたはその薬学上許容される塩である。
別の実施形態では、癌治療を必要とするヒトから得られたサンプルにおけるマーリンアイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片の検出可能な量の有無がバイオマーカーとして使用され、この場合、該サンプルにおけるマーリンアイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片の検出可能な量の不在は、該ヒトがFAK阻害剤による治療に適していることを示す。さらなる実施形態では、癌治療を必要とするヒトから得られたサンプルにおけるマーリンアイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片の検出可能な量の有無がバイオマーカーとして使用され、この場合、該サンプルにおけるマーリンアイソフォーム1タンパク質またはその機能的断片の検出可能な量の不在は、該ヒトがFAK阻害剤による治療に適していることを示し、この場合、該FAK阻害剤は、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドであり、該癌治療は中皮腫に対するものである。
pFAK
リン酸化されたFAKまたはpFAKは、1以上のNF2突然変異を有する細胞、例えば、腫瘍細胞において過剰発現され得る。例えば、pFAKは、NF2遺伝子において突然変異を有する一部の腫瘍細胞において過剰発現され、この場合、NF2遺伝子における突然変異はF2遺伝子のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物の発現の欠如をもたらす。従って、いくつかの実施形態では、pFAKは、ニューロフィブロミン2アイソフォーム1タンパク質またはマーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない腫瘍細胞ではより多量で存在する。(ニューロフィブロミン2アイソフォーム1タンパク質とは、マーリンアイソフォーム1タンパク質のものと同じアミノ酸配列を意味し、各々は、とりわけ、当技術分野で公知であり、本明細書において記載されるように、NF2アイソフォーム1タンパク質と呼ばれる)。
本明細書における癌治療方法の一実施形態では、その方法は、治療を必要とするヒトからのサンプルにおいてpFAKのレベルを決定すること、および対照サンプルと比べて、pFAKのレベルの上昇が見出された場合に、該ヒトに、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる。さらなる実施形態では、該対照サンプルは正常患者組織から準備される。別の実施形態では、該対照サンプルは、野生型NF2遺伝子を含んでなる細胞から準備される。さらに別の実施形態では、複数の対照サンプルが使用される。
本明細書における癌治療方法の別の実施形態では、NF2のアイソフォーム1の検出可能な量の有無が判定され、pFAKのレベルが決定される。さらなる実施形態では、pFAKの上昇およびNF2のアイソフォーム1の検出可能な量の不在が認められる場合には、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩が投与される。pFAKレベルの決定を含んでなる癌治療方法のさらなる実施形態では、癌は中皮腫であり、FAK阻害剤が投与される場合には、それは式IのFAK阻害剤、好適には、化合物Aである。
遺伝子産物の検出可能な量の有無
NF2の遺伝子産物(例えば、アイソフォーム1)の有無の検出とは、遺伝子産物(例えば、NF2アイソフォーム1タンパク質、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質、またはマーリンアイソフォーム1タンパク質)がサンプルにおいて発現される可能性が高く、例えば、検出に用いられる任意の特定アッセイによりバックグラウンドノイズを上回るレベルで検出され得ることの確認を意味する。当業者ならば、遺伝子産物が発現されるかまたは存在することを示す陽性シグナルと低シグナルまたはバックグラウンドシグナルとの判別についてよく知っている。陽性シグナルからバックグラウンドまたはノイズを確認するために、陽性対照および陰性対照を実施することができる。例えば、「カットオフ」は、目的の遺伝子産物を発現しない陰性対照においてバックグラウンドノイズ(例えば、染色または他の測定シグナル)のレベルを決定することにより確認することができる。従って、遺伝子産物の存在とは、組織において、例えば、組織内の1種以上の細胞または細胞の一部において、その遺伝子産物がバックグラウンドレベルを上回って検出されることを意味し得る。逆に、遺伝子産物の不在とは、組織において、例えば、組織内の1種以上の細胞または細胞の一部において、その遺伝子産物がバックグラウンドレベルより上で測定不能であることを意味する。
タンパク質である遺伝子産物の検出可能な量の有無は、当技術分野で周知の様々な方法により達成することができる。これらの方法としては、限定されるものではないが、以下:質量分析、2D、電気泳動、HPLC、タンパク質配列決定および様々な免疫学的検出方法のうちの1つ以上が挙げられる。免疫学的検出方法としては、限定されるものではないが、免疫親和性アッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫細胞化学アッセイ、ELISA、固相サンドイッチアッセイ、免疫ブロット法、ハイスループット免疫ブロット法、免疫組織化学またはこれらの技術の組合せが挙げられる。
免疫組織化学
好適には、本明細書における一実施形態では、NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物の検出可能な量の有無はタンパク質を検出することにより判定される。タンパク質が検出される場合のさらなる実施形態では、該タンパク質はニューロフィブロミン−2アイソフォーム1である。癌治療のさらなる実施形態では、この場合、タンパク質が検出され、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の有無は免疫組織化学(IHC)により判定される。
IHCは、腫瘍生検材料などの組織サンプルにおいて、タンパク質を、該タンパク質に対して特異的な1以上の抗体を用いて検出する方法である。(この意味において、抗体が特異的に検出するタンパク質を抗原と呼ぶことが多い。)タンパク質との抗体の結合は染色および顕微鏡によって分析される。IHCは当技術分野で周知である。
一般には、組織サンプルを得たら、そのサンプルを迅速に保存し、細胞タンパク質および組織構造の破壊を防ぐ必要がある。多くの場合、保存前に組織を血液で灌流しまたは洗い流す。IHC用の組織サンプルの準備も当技術分野で周知であり、準備には、限定されるものではないが、パラフィン包理、急速冷凍、ホルマリン固定およびホルムアルデヒド固定が含まれる。
準備した組織、例えば、パラフィン包理組織を、一般に、マイクロトームで4〜5μmほどの薄さの薄片に切る。次に、これらの切片を、接着剤でコーティングされたガラススライド上に載せる。この接着剤は、一般的に、ガラススライドを3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)またはポリ−L−リジンで表面処理することにより施される。あるいは、ゼラチン、卵アルブミンまたは市販の膠を含む他の好適な接着剤でスライドをコーティングしてもよい。スライド上に載せた後、それらの切片を乾燥させる。脱パラフィン化のために、パラフィン包理スライドを炉またはマイクロ波で乾燥させてよい。
凍結切片は、予冷したクリオスタットを用いて準備することができ、それらを接着性ガラススライドに載せる。これらの切片は、多くの場合、室温で一晩乾燥させ、予冷した(−20℃)アセトンに浸漬することにより固定するが、検出対象の組織およびタンパク質に基づき、当業者の判断で乾燥工程を省いてよい。
サンプルにおけるタンパク質の有無の染色および検出の前に、組織サンプルを「脱マスキングし」、抗体がタンパク質へと接近できるようにする。このプロセスは、多くの場合、抗原回復と呼ばれ、当技術分野で公知の様々な手段、例えば、加熱手段または酵素的手段(トリプシン、ペプシンまたは他のプロテアーゼの使用を含む)によって達成することができる。
サンプル中のタンパク質と抗体との結合は、当技術分野で周知の様々な溶液またはバッファー中での抗体とのインキュベーションにより達成される。バッファーは、組織と抗体との非特異的結合を阻止するブロッキング剤を含んでいてよい;ブロッキングは、抗体との組織サンプルスライドのインキュベーションの前またはその間に達成することができる。その方法に使用される抗体の量は後に顕微鏡により分析されるシグナルのレベルに影響を及ぼし得るが、当業者ならば、例えば、抗体の希釈度を調べることにより、任意の特定IHCアッセイに使用する抗体の量が決定および最適化されることが分かるであろう。
一般には、IHCに使用される抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得る。ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1の検出の場合、抗体は、他のアイソフォームが存在する可能性がある組織においてアイソフォーム1タンパク質の有無を検出することできるものでなければならない。そのため、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1特異的抗体を使用しなければならない。その特異的抗体は、多くの場合、モノクローナル抗体である;しかしながら、当業者ならば、サンプルにおけるNF2のアイソフォーム1の有無の検出に好適なポリクローナル抗体調製物を特定することができる。好適には、本明細書における実施形態では、NF2遺伝子のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物の有無の検出は、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1に対するモノクローナル抗体とサンプルを接触させることを含み、この場合、そのような抗体はニューロフィブロミン−2アイソフォーム1と検出可能に結合することができるが、他のニューロフィブロミン−2アイソフォームと検出可能に結合しない。さらなる実施形態では、抗ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1モノクローナル抗体はアイソフォーム2タンパク質遺伝子産物NF2と検出可能に結合しない。別の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体調製物であり、この場合、ポリクローナル抗体はニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質と結合することができるが、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム2タンパク質とは結合することができない。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体はニューロフィブロミン−2アイソフォーム1と検出可能に結合するが、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム2とは検出可能に結合しない場合のさらなる実施形態では、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、アイソフォーム1以外の他のアイソフォームとも検出可能に結合しない。
タンパク質との抗体結合の検出は、当技術分野で周知の複数の方法、例えば、フルオロフォア(fluorofore)でタグ付けした抗体の免疫蛍光検出(immunoflourescent detection)または免疫ペルオキシダーゼ酵素とコンジュゲートした抗体の免疫ペルオキシダーゼ染色により達成することができる。当技術分野で周知の他の検出方法としては、発色検出、放射能、化学発光、ならびに他の生物学的および酵素的タグまたは標識が挙げられる。間接的な検出も採用することができ、有利であることがあり、例えば、ビオチン/アビジン系システムおよび他の二次検出系は当技術分野の知識および技術の範囲内である。
また、当業者ならば、対比染色を採用して、細胞または細胞コンパートメント、例えば、核を可視化することができる。
遺伝学的検出
また、NF2遺伝子突然変異は遺伝子レベルにおいても決定することもでき、単独でも、遺伝子産物、例えば、タンパク質の有無の判定と組み合わせてもよい。そのような遺伝学的検査は、限定されるものではないが、配列決定、RT−PCR、およびin situハイブリダイゼーション、例えば、蛍光に基づくin situハイブリダイゼーション(FISH)を含む当技術分野で周知の様々な手段によって達成することができる。
本開示による一実施形態では、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法は、該ヒトからのサンプルにおいてNF2遺伝子における突然変異を検出すること、NF2遺伝子における該突然変異がNF2のアイソフォーム1の発現の欠如をもたらすかどうかを判定すること、および該突然変異がNF2のアイソフォーム1の発現の欠如をもたらす場合には、該ヒトに、FAK阻害剤、例えば、本明細書における化合物A、またはその薬学上許容される塩の治療上有効な量を投与することを含んでなる。さらなる実施形態では、NF2遺伝子における該突然変異がNF2のアイソフォーム1の発現の欠如をもたらすかどうかの判定は、以下:配列決定、RT−PCRおよびFISHから選択される方法を行うことを含んでなる。別の実施形態では、NF2遺伝子における該突然変異がNF2のアイソフォーム1の発現の欠如をもたらすかどうかの判定は、以下:配列決定、RT−PCRおよびFISHから選択される方法を行うことを含んでなる。配列決定、RT−PCRおよびFISHは、当業者による、NF2遺伝子産物、特に、アイソフォーム1タンパク質の発現の欠如をもたらすと思われる染色体欠損またはNF2遺伝子の他の欠失の確認を可能にするものである。配列決定およびRT−PCRは、当業者による、未熟停止コドンをもたらし、NF2遺伝子産物、特に、アイソフォーム1タンパク質の発現の欠如をもたらすと思われる点突然変異、挿入または欠失の確認を可能にするものである。
本発明による他の実施形態では、患者が、特定の遺伝子においてFAK阻害剤に反応すると思われる特定の突然変異を有するかどうかの判定は、
a.被験者の腫瘍からの生体サンプルにおいて遺伝子型決定手法を行い、該患者がNF2変異体の少なくとも1つのアイソフォームを有する腫瘍を有するかどうかを判定すること;
b.該突然変異が検出されなかった場合の可能性と比べて、FAK阻害剤、所望により、式IのFAK阻害剤、所望により、化合物A、が投与されたときに、有効率の上昇、無増悪生存期間の延長または全生存期間の延長のうちの1以上を受ける可能性の増大と、該突然変異の検出を相関させること
を含んでなる。
FAK阻害剤
癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出され得ないマーリン陰性癌を治療するための、本明細書における方法のいずれにおいても、FAK阻害剤は、式(I):
[式中、
は、ハロ、CF、C−C−アルキル、イソプロペニル、(C−C−アルキレン)C−C−シクロアルキル、C−C−アルコキシまたはシアノであり;
において、pが0でない場合、各Rは、独立に、F、Cl、CF、メチル、メトキシ、CHCF、−(X)−C−C−アルキレン−R、−(X−C−C−アルキレン)−NR−C(O)−R、−(X−C−C−アルキレン)−(NR−SO−R、−(X−C−C−アルキレン)−Y−N(R;5員〜6員のヘテロシクロアルキル−(R基または5員〜6員のヘテロアリール−(R10基であり;
は、独立に、H、C−C−シクロアルキル、C−C−アルキル、C−Cアルコキシ、C−C−アルキレン−R、O−C−C−アルキレン−Rであるか、または、R基は、Zとともに、場合によりメチル、C−C−アルキレン−RもしくはC−C−シクロアルキルで置換されていてもよい5員〜6員の環を形成し;
は、H、−(Q)−N(R、OH、SH、C−C−アルコキシ、C−C−チオアルキルまたは5員〜6員のヘテロシクロアルキル−(R基であり;
は、HまたはC−C−アルキルであり;
は、H、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、N(Rまたは5員〜6員のヘテロアリール−(R10基であり;
は、C−C−アルキル、フェニル−(Rまたは5員〜6員のヘテロアリール−(R10であり;
は、独立に、H、C−C−アルキル、−O−C−C−アルキルであるか、または、それらが結合している窒素原子とともに、5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル基を形成し;
は、H、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、−(Q)−N(R、−Q−C−C−アルキル、−C−CアルキルRまたは5員〜6員のヘテロシクロアルキルであり;
10は、H、C−C−アルキル、C−C−アルコキシまたは−Q−C−C−アルキルであり;
11は、C−C−アルキル、CF、−CHCF、−(Q)−C−C−アルキレン−R、−Q−N(R、フェニル−(R、5員〜6員のヘテロシクロアルキル(R基または5員〜6員のヘテロアリール−(R10基であり;
12は、H、C−C−アルキル、F、Cl、CF3、OH、CN、ニトロ、COOH、−COO−C−C−アルキル、−Y−N(R、C−C−シクロアルキル−R14、−(X)−C−C−アルキレン−R、−(X−C−C−アルキレン)−NR−C(O)−R、−(X−C−C−アルキレン)−(NR−SO−R、−(X−C−C−アルキレン)−Y−N(R、ヘテロシクロアルキル−(R、ヘテロアリール−(R10またはフェニル−(R15であり;
13は、H、F、Cl、C−C−アルキルもしくはC−C−シクロアルキルであり;またはR12およびR13は、それらが結合している炭素原子とともに、縮合した5員もしくは6員のカルボシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル(heterocycloralkyl)基を形成し;
14は、独立に、H、C−C−アルキル、−NR−SO−R −Y−N(Rまたは−(X)−C−C−アルキレン−Rであり;
15は、独立に、F、Cl、CF、C−C−アルキルまたはC−C−アルコキシであり;
pは、0、1、2または3であり;
qは、0または1であり;
rは、0、1または2であり;
sは、0、1、2または3であり;
xは、1または2であり;
Qは、−C(O)−、−S(O)−または−SO−であり;
Xは、NR、O、S、−S(O)−または−SO−であり;
Yは、結合、SOまたはC(O)であり;
Zは、NまたはCRである]
の化合物またはその塩であり得る。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、QがC(O)であり、ZがNである、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、RがCl、CFまたはCNである、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、RがFである、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、一方のRはメチルであり、もう一方のRはHである、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出され得ないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、一方のRはメトキシであり、もう一方のRはHである、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、R11がC−C−アルキルである、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、R12がC−C−アルキル、ヒドロキシメチルまたはシクロプロピルである、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、R13がHである、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が式(I)の化合物であり、式中、pが0または1である、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドまたはその薬学上許容される塩である、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出され得ないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド塩酸塩である、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出され得ないマーリン陰性癌を治療する方法であって、FAK阻害剤が薬学上許容される組成物中の2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドまたはその薬学上許容される塩である、方法に関する。
本発明はまた、特定の癌、例えば、ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質が検出できないマーリン陰性癌を治療する方法であって、WO2008/115369に記載されている例示された化合物のいずれか1つを投与することを含み、該癌が少なくとも1つのNF2突然変異を有する、方法に関する。
本発明の一実施形態は、癌にNF2遺伝子の遺伝子産物の検出可能な量が存在しない場合の、ヒトにおける癌の治療のための式Iの化合物である。本発明の別の実施形態は、癌にNF2遺伝子のアイソフォーム1の検出可能な量が存在しない場合の、ヒトにおける癌の治療のための式Iの化合物である。本発明の別の実施形態は、癌にマーリンタンパク質の検出可能な量が存在しない場合の、ヒトにおける癌の治療のための式Iの化合物である。本発明のさらに別の実施形態は、癌にマーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない場合の、ヒトにおける癌の治療のための式Iの化合物である。この段落における本発明のさらなる実施形態では、前記癌は中皮腫であり、式Iの化合物は本明細書において記載される化合物Aである。
本発明は、該治療に適していると確認されたヒトにおける癌の治療のための医薬の製造におけるFAK阻害剤の使用に関し、その場合、該癌におけるNF2のアイソフォーム1遺伝子産物(ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質またはマーリンアイソフォーム1タンパク質など)の検出可能な量の不在によって該ヒトは該治療に適していると確認される。本発明のさらなる実施形態は、FAK阻害剤が化合物Aであり、前記癌が中皮腫である場合の、前述の使用に関する。
本発明はまた、本明細書において記載されるFAK阻害剤に応答する癌を同定する方法に関する。一実施形態では、式IのFAK阻害剤に応答する癌を同定する方法は、該癌のサンプルにおいてNF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物の有無を検出することを含んでなり、それによって、該サンプルにおいてNF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、式IのFAK阻害剤に応答する癌が同定される。別の実施形態では、式IのFAK阻害剤に応答する癌を同定する方法は:
a)治療を必要とするヒトから該癌のサンプルを得ること;
b)該サンプルにおいてNF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物の有無を検出すること;および
c)該サンプルにおいてNF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、該癌が式IのFAK阻害剤の有効量により治療可能であることを決定すること
を含んでなる。
サンプル
本明細書において記載される方法では、NF2のアイソフォーム1遺伝子産物の検出可能な量の有無が、癌に対する治療を必要とするヒトからのサンプルを用いて判定される。本明細書において記載される他の方法では、機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の有無が、癌に対する治療を必要とするヒトからのサンプルを用いて判定される。該サンプルは、上および下により詳細に記載されるように、1種以上の疑わしい腫瘍細胞を含んでなり、例えば、腫瘍サンプルと呼ばれる。ある特定の実施形態では、該サンプルは疑わしい腫瘍細胞の生検材料である。ある特定の実施形態では、該サンプルは組織生検材料であり得る。他の実施形態では、該サンプルは、癌の検査かまたは腫瘍もしくは癌としての増殖状態を確認する他の手段に基づいて、癌性である、例えば、腫瘍であることが分かっている細胞の生検材料である。癌治療を必要とするヒトから得られ得る他のサンプルとしては、限定されるものではないが、一群のタンパク質、ヌクレオチド、細胞ブレブまたは成分、血清、細胞、血液、血液成分、例えば、循環腫瘍DNA、尿および唾液が挙げられる。
例えば、NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物の検出可能な量の有無の判定のため、または機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量の有無の判定のための、前記サンプルの取り扱い、保存および保管は、使用される特定のアッセイによって異なるであろう。例えば、本明細書において一般的に記載される、IHCのための処理は、ある特定の調製条件および保存条件が必要であるが、これらの条件は当技術分野で公知である。

NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物、例えば、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない癌、または機能的マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない癌を有するヒトは、本明細書におけるFAK阻害剤による治療に対する反応の改善を示す。ある特定の実施形態では、該癌は、シュワン腫、髄膜腫、上衣腫.中皮腫、膠芽腫、黒色腫 甲状腺癌、膀胱癌、皮膚癌、胃癌、骨癌、腎癌、乳癌および腸癌からなる群から選択される。他の実施形態では、該皮膚癌は黒色腫である。好適な実施形態では、該癌は中皮腫である。
キット
別の実施形態では、本発明は、癌、例えば、中皮腫の治療のためのキットを提供し、そのキットは、サンプルにおいてNF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物の有無を検出するためのキットを含んでなり、そのキットは、(a)NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物、例えば、マーリンアイソフォーム1タンパク質またはニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質を検出する手段を含んでなる。別の実施形態では、NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物を検出する手段は、NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物と検出可能に結合する抗体であり、所望により、該アイソフォーム1遺伝子産物はマーリンアイソフォーム1タンパク質またはニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質である。さらなる実施形態では、NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物(例えば、マーリンアイソフォーム1タンパク質)と検出可能に結合する抗体は、他の遺伝子産物アイソフォーム、例えば、NF2遺伝子のアイソフォーム2遺伝子産物(例えば、マーリンアイソフォーム2タンパク質)と検出可能に結合しない。
定義
当技術分野において理解されている用語「野生型」とは、遺伝子修飾のない天然集団またはある特定の遺伝子座について二倍性の状態(2n)において見られるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を意味する。患者がある遺伝子の3以上のコピーを有する場合の二倍体からの逸脱は「増幅」と考えられている。また、当技術分野において理解されているように、「変種」(variant)は、野生型ポリペプチドまたはポリヌクレオチドそれぞれにおいて見られる対応するアミノ酸または核酸と比べて、アミノ酸または核酸に対して少なくとも1つの修飾を有するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を包含する。変種という用語には、一塩基変異多型(SNP)(この場合、最も一般的に見られる(野生型)核酸鎖と比べて、核酸鎖の配列において一塩基対の違いがある)が包含される。本明細書において「遺伝子修飾」または「遺伝子修飾された」とは、限定されるものではないが、1または複数のDNA配列に対する1以上の塩基の任意の抑制、置換、増幅、欠失および/または挿入を意味する。また、本明細書において「遺伝子修飾された」とは、核酸またはアミノ酸それぞれの少なくとも1つの欠失、置換または抑制を有するポリペプチドまたはポリペプチドをコードする遺伝子を意味し得る。選択的スプライシング(または示差的スプライシング)は、遺伝子の転写により産生されたRNA(一次遺伝子転写物またはプレmRNA)のエキソンがRNAスプライシングの間に複数の方法により再連結されるプロセスである。生じた異なるmRNAは異なるタンパク質アイソフォームに翻訳され、従って、単一遺伝子が複数のタンパク質をコードし得る。スプライシング変種は、選択的スプライシングから生じる活性なmRNAである。
遺伝的変種および/またはSNPは、既知の方法により同定することができる。例えば、野生型またはSNPは、DNA増幅および配列決定技術、DNAおよびRNA検出技術(限定されるものではないが、それぞれ、ノーザンブロットおよびサザンブロットを含む)ならびに/または様々なバイオチップおよびアレイ技術により同定することができる。WTおよび変異ポリペプチドは、様々な技術により検出することができ、それらの技術としては、限定されるものではないが、免疫診断技術、例えば、ELISAおよびウエスタンブロットが挙げられる。腫瘍細胞におけるDNA増幅は、定量的DNA検出技術、例えば、PCRベースの方法により同定することができる。さらに、DNA増幅を測定するために、マイクロアレイベースの方法を用いることもできる。これらの方法としては、マイクロアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション(Greshock, J., et al. 2004. Genome Res 14: 179-87.)およびDNA「SNPチップ」(Bignell, G. R., et al. 2004 Genome Res 14: 287-95)が挙げられる。
本明細書において、対立遺伝子または多型の検出方法は、限定されるものではないが、血清学的方法および遺伝学的方法を含む。検出される対立遺伝子または多型は個々の表現型への影響に機能的に関連し得るし、あるいはそれは機能的多型/対立遺伝子と連鎖不平衡状態にある対立遺伝子または多型であり得る。多型/対立遺伝子は被験者のゲノムDNAにおいて明示されるが、当業者には明らかなように、この領域から転写または翻訳されたRNA、cDNAまたはタンパク質配列からも検出可能であり得る。
周知の遺伝学として、同じ遺伝子について異なる起源から得られたヌクレオチドおよび関連アミノ酸配列は、付番方式および正確な順序の両方において異なることがある。そのような違いは、付番方式、遺伝子内での固有の配列変化、および/または配列決定の誤りに起因している可能性がある。従って、本明細書における番号による特定の多型性部位への言及は、それらを記載するために異なる付番/命名方式が用いられた場合でも遺伝子内での順序および位置において対応する多型性部位を含むことは当業者ならば分かるであろう。
本明細書において、少なくとも1つのポリペプチドまたは少なくとも1つのポリペプチドをコードする遺伝子における1または複数の遺伝子の多型対立遺伝子または突然変異についての被験者(またはDNAもしくは他の生体サンプル)の「遺伝子型決定」とは、被験者(またはサンプル)においてどの変異形態、対立遺伝子形態または多型性形態(1または複数)の遺伝子(1または複数)または遺伝子発現産物(例えば、hnRNA、mRNAまたはタンパク質)が存在するかまたは存在しないかを検出することを意味する。そのような遺伝子から発現された関連RNAまたはタンパク質もまた、突然変異または多型バリエーションを検出するために用いられ得る。当技術分野で周知の通り、個体は特定の対立遺伝子についてのヘテロ接合体または同系接合体である。2つを超える対立遺伝子形態が存在し得ることから、3つを超える遺伝子型が存在する可能性がある。本明細書において、対立遺伝子は、可能性ある他の対立遺伝子変種が除外された場合に「検出され」得る;例えば、特定の核酸位置がアデニン(A)でもチミン(T)でもシトシン(C)でもないことが判明している場合、その位置にグアニン(G)が存在する(すなわち、被験者においてGが「検出され」またはGと「診断される」)と結論づけることができる。配列バリエーションは、直接(例えば、配列決定により)または間接的に(例えば、制限断片長多型解析、または既知配列のプローブのハイブリダイゼーション検出、または参照鎖コンホメーション多型(reference strand conformation polymorphism)により)検出され得るし、あるいは他の公知の方法を用いることによっても検出され得る。
本明細書において、集団の「遺伝的サブセット」は、特定の遺伝子型または少なくとも1つの体細胞突然変異を有する腫瘍を有する集団のメンバーからなる。二対立遺伝子多型の場合、集団は3つのサブセット:対立遺伝子1についての同系接合体(1,1)、ヘテロ接合体(1,2)、および対立遺伝子2についての同系接合体(2,2)に分類される可能性がある。被験者の「集団」は、例えば、化合物Aでの治療を受けている個体または癌を有する個体というように様々な基準を用いて定義され得る。場合によっては、集団の遺伝的サブセットは、別の遺伝的サブセットと比べて治療に対して高い反応可能性を有し得る。もう1つの例として、特定の遺伝子型を有する患者は、特定表現型応答の危険性の増加または危険性の減少を示すことがある。本明細書における方法のいくつかの実施形態では、NF2遺伝子の総てまたは一部が欠失している癌患者のサブセットは、化合物Aによる治療に対してより良い応答を示す(例えば、これは、化合物Aに反応する腫瘍においても欠失が認められるためであるが、この場合、腫瘍細胞、または腫瘍細胞の一部は、NF2遺伝子の総てまたは一部の欠失が原因でニューロフィブロミン−2アイソフォーム1の検出可能な量を含んでいない)。
本明細書において、遺伝子型決定に基づいて特定の表現型応答の「素因がある」または「リスクが高い」被験者は、1または複数の標的多型遺伝子座に異なる遺伝子型を有する個体よりもその表現型を示す可能性が高い。表現型応答が複対立遺伝子多型に基づいているか、または2つ以上の遺伝子の遺伝子型決定に基づいている場合には、考えられる複数の遺伝子型の間で相対的危険性が異なっている可能性がある。
本明細書において、治療に対する「応答」およびその文法上の変形は、限定されるものではないが、患者が薬剤を受けた後の患者の臨床症状の改善を包含する。応答とは、治療開始により患者の状態が悪化しないことも意味し得る。応答は、疾患または障害の特定の徴候の測定により定義することができる。癌に関しては、応答とは、限定されるものではないが、患者における腫瘍および/または腫瘍細胞のサイズまたは数の減少を意味し得る。また、応答は、他のエンドポイント、例えば、患者における前腫瘍性細胞数の減少もしくは減弱、または疾患進行がないこと(多くの場合、「安定」または「疾患の無増悪期間」と呼ばれる)によっても定義することができる。
本明細書における「遺伝学的検査」(遺伝学的スクリーニングとも呼ばれる)とは、被験者からの生体サンプルを、その被験者の遺伝子型を決定するために検査することを意味し;その被験者の遺伝子型が、特定の表現型を引き起こすかまたはそれに対する感受性を高める(あるいはその表現型を引き起こすまたはそれに対する感受性を高める1または複数の対立遺伝子と連鎖不平衡状態にある)対立遺伝子を含んでなるかどうかを判定するために使用され得る。
1以上の突然変異を検査するための生体サンプルは、癌または正常組織から選択され得るが、それらのサンプルには、限定されるものではないが、一群のタンパク質、ヌクレオチド、細胞ブレブまたは成分、血清、細胞、血液、血液成分、例えば、循環腫瘍DNA、尿および唾液が含まれる。サンプルは組織生検材料であってよい。突然変異の検査は、当技術分野で公知でありかつ/または本明細書において記載されるいくつかの技術によって行われ得る。
遺伝子またはPCR産物あるいはその断片または一部を含む任意の核酸の配列は、当技術分野で公知の任意の方法(例えば、化学的配列決定または酵素的配列決定)により配列決定を行うことができる。DNAの「化学的配列決定」は、Maxam and Gilbert (1977)の方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:560)などの方法を表す場合があり、その方法では、各塩基に特異的な反応を用いてDNAが無作為に切断される。DNAの「酵素的配列決定」は、Sangerの方法(Sanger, et al., (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463)などの方法を表す場合がある。
配列決定技術を含む分子生物学、微生物学および組換えDNAの従来技術は当業者の間では周知である。そのような技術は文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(本明細書では「Sambrook, et al., 1989」); DNA Cloning: A Practical Approach, 第I巻および第II巻 (D. N. Glover編 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins編 (1985)); Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins, 編 (1984)); Animal Cell Culture (R. I. Freshney, 編 (1986)); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, (1986)); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); F. M. Ausubel, et al. (編), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)を参照。
ペプチド核酸(PNA)親和性アッセイは従来のハイブリダイゼーションアッセイの派生的方法である(Nielsen et al., Science 254:1497-1500 (1991); Egholm et al., J. Am. Chem. Soc. 114:1895-1897 (1992); James et al., Protein Science 3:1347-1350 (1994))。PNAは、ワトソン−クリック塩基対形成ルールに従う構造DNA模倣体であり、標準的なDNAハイブリダイゼーションアッセイに用いられる。PNAはハイブリダイゼーションアッセイにおいてより高い特異性を示すが、これは、PNA/DNAミスマッチがDNA/DNAミスマッチより不安定であり、相補PNA/DNA鎖は相補DNA/DNA鎖より強い結合を形成するためである。
遺伝的変種、多型および細胞遺伝学的変化(例えば、DNA増幅および欠失)を検出するためにDNAマイクロアレイが開発された(Taton et al., Science 289:1757-60, 2000; Lockhart et al., Nature 405:827-836 (2000); Gerhold et al., Trends in Biochemical Sciences 24:168-73 (1999); Wallace, R. W., Molecular Medicine Today 3:384-89 (1997); Blanchard and Hood, Nature Biotechnology 149:1649 (1996); (Greshock, J., et al. 2004. Genome Res 14: 179-87; Bignell, G. R., et al. 2004 Genome Res 14: 287-95).)。DNAマイクロアレイは高速ロボティクスによりガラスまたはナイロン基板上に製作され、DNAマイクロアレイには既知同定DNA断片(「プローブ」)が含められる。DNAマイクロアレイは、従来の塩基対合ルールに基づいた既知DNA断片および未知DNA断片(「標的」)のマッチングに用いられる。
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いられ、本明細書においてはポリペプチド配列の天然タンパク質、断片、ペプチドまたは類似体を意味する一般用語として用いられる。従って、天然タンパク質、断片および類似体はポリペプチド類の種類である。
ポリペプチド配列における突然変異に関連した用語「X#Y」は当技術分野で認められており、この場合、「#」は、ポリペプチドのアミノ酸番号上での突然変異の位置を示し、「X」は、野生型アミノ酸配列中のその位置において見出されるアミノ酸を示し、「Y」は、その位置にある変異アミノ酸を示す。例えば、K−rasポリペプチドに関する「G12S」という表記は、野生型K−ras配列のアミノ酸番号12にグリシンが存在し、変異K−ras配列ではグリシンがセリンで置換されていることを示す。
ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする遺伝子における「少なくとも1つの突然変異」という用語またはその類似用語およびその文法上の変形は、1以上の対立遺伝子変種、スプライス変種、誘導体変種、置換変種、欠失変種および/または挿入変種、融合ポリペプチド、オーソログ、ならびに/または種間相同体を有するポリペプチドまたはポリペプチドをコードする遺伝子を意味する。例として、NF2の少なくとも1つの突然変異は、ポリペプチド(例えば、マーリンアイソフォーム1タンパク質)またはそのポリペプチドをコードする遺伝子の配列の一部または総てが存在しないかまたは細胞において産生されたマーリンアイソフォーム1タンパク質の少なくとも1つについてその細胞において発現されないNF2を含む。例えば、NF2タンパク質遺伝子産物(マーリンアイソフォーム1タンパク質を含むマーリンタンパク質)は細胞により末端切断型で産生され得、その末端切断型の配列は末端切断体の配列に関して野生型であり得る。欠失とは、遺伝子または遺伝子によってコードされるタンパク質の総てまたは一部が存在しないことを意味し得る。さらに、細胞で発現されるまたは細胞によりコードされるタンパク質のいくつかは変異されていることがあるが、同じ細胞で産生された同じタンパク質の他のコピーは野生型であり得る。患者の癌が少なくとも1つの形態の特定突然変異を有する場合、一般にヒトの癌はその突然変異を有すると考えられる。さらに、本明細書において用いられるように、NF2突然変異は、欠失、部分的染色体欠損または染色体欠損によるものを含む、マーリンアイソフォーム、例えば、マーリンアイソフォーム1をコードする全遺伝子および遺伝子の一部の完全欠損を含む。あるいは、NF2突然変異は、NF2遺伝子の翻訳または転写に必要な任意の調節エレメントにおける突然変異または欠失を含み、結果として、その突然変異または欠失はNF2遺伝子の転写または翻訳の欠如をもたらす。従って、NF2突然変異は、NF2遺伝子の翻訳または転写に必要な任意の調節エレメントにおける突然変異または欠失を含み、結果として、その突然変異または欠失は細胞、例えば、腫瘍細胞におけるアイソフォーム1の発現の欠如をもたらす。さらに、突然変異は、細胞におけるNF2遺伝子産物、例えば、マーリンアイソフォーム1の発現を破壊し得る遺伝物質の任意の挿入を含む。
本明細書において「遺伝学的異常」とは、被験者の細胞の正常な天然核酸内容物と比べての、欠失、置換、付加、転座、増幅などを意味する。用語「変異NF2」とは、少なくとも1つの突然変異を有するNF2遺伝子を意味する。特定の例示的なNF2変異ポリペプチドとしては、限定されるものではないが、対立遺伝子変種、スプライス変種、誘導体変種、置換変種、欠失変種および/または挿入変種、融合ポリペプチド、オーソログ、ならびに種間相同体が挙げられる。ある特定の実施形態では、変異NF2ポリペプチドは、C末端またはN末端に追加の残基、例えば、限定されるものではないが、リーダー配列残基、標的残基、アミノ末端メチオニン残基、リジン残基、タグ残基および/または融合タンパク質残基を含む。
本明細書において言及される用語「ポリヌクレオチド」とは、少なくとも10塩基長の、ヌクレオチド、すなわち、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれかまたはいずれかのタイプの修飾型ヌクレオチドの多量体型を意味する。その用語は一本および二本鎖のDNAを包含する。
本明細書において言及される用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在するオリゴヌクレオチド結合および天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合によりともに連結された天然ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドを包含する。オリゴヌクレオチドは、一般的に、200塩基以下の長さを含むポリヌクレオチドサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、10〜60塩基長、最も好ましくは、12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、通常、例えば、プローブの場合、一本鎖であるが、オリゴヌクレオチドは、例えば、遺伝子変異体の構築用に、二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかであり得る。
オリゴヌクレオチドプローブ、またはプローブは、一般に、サイズが、約8ヌクレオチド長から数百ヌクレオチド長までに及ぶ核酸分子である。そのような分子は、一般に、サンプル中の標的核酸配列を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそのような標的核酸配列とハイブリダイズすることにより、同定するために用いられる。ハイブリダイゼーション条件は上に詳細に記載した。
PCRプライマーも核酸配列であるが、PCRプライマーは、一般に、長さがかなり短いオリゴヌクレオチドであり、ポリメラーゼ連鎖反応に用いられる。PCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブは、当業者ならば、標的配列の配列情報を用いて、容易に開発および製造を行うことができる。(例えば、Sambrook et al.、前掲またはGlick et al.、前掲を参照)。
本明細書において、用語「増幅」およびその文法上の変形は、染色体組中に1以上の余分な遺伝子コピーが存在することを意味する。ある特定の実施形態では、Rasタンパク質をコードする遺伝子を細胞において増幅することができる。HER2遺伝子の増幅は特定のタイプの癌と相関していた。HER2遺伝子の増幅は、ヒト唾液腺および胃腫瘍由来細胞株、胃および結腸腺癌、ならびに乳腺腺癌において見出された。Semba et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:6497-6501 (1985); Yokota et al., Oncogene, 2:283-287 (1988); Zhou et al., Cancer Res., 47:6123-6125 (1987); King et al., Science, 229:974-976 (1985); Kraus et al., EMBO J., 6:605-610 (1987); van de Vijver et al., Mol. Cell. Biol., 7:2019-2023 (1987); Yamamoto et al., Nature, 319:230-234 (1986).
本明細書において、タンパク質またはポリペプチドについての「過剰発現され」および「過剰発現」およびその文法上の変形は、特定の細胞が生産する特定のタンパク質の数が正常細胞と比べて増加していることを意味する。例として、あるタンパク質は、非腫瘍細胞と比べて、腫瘍細胞により過剰発現され得る。さらに、ある変異タンパク質は、細胞において野生型タンパク質と比べて過剰発現され得る。当技術分野において理解されているように、細胞におけるポリペプチドの発現レベルは、アクチンなどのハウスキーピング遺伝子に対して正規化することができる。場合によっては、特定のポリペプチドは、非腫瘍細胞と比べて、腫瘍細胞において過少発現されることもある。
本明細書において、「少なくとも1つの遺伝子産物の発現に必要な核酸」とは、遺伝子の任意の部分をコードしかつ/または遺伝子産物をコードする核酸に作動可能に連結されるが必ずしもコード配列を含んでいない核酸配列を意味する。例として、少なくとも1つの遺伝子産物の発現に必要な核酸配列としては、限定されるものではないが、エンハンサー、プロモーター、調節配列、開始コドン、停止コドン、ポリアデニル化配列および/またはコード配列が含まれる。特定の細胞におけるポリペプチドの発現レベルは、限定されるものではないが、細胞ゲノムにおける様々な調節エレメントおよび/または非コード配列の突然変異、欠失および/または置換によってもたらされ得る。
本明細書において、「治療」とは、障害に関連する1以上の症状が有益に改変される任意の方法を意味する。従って、その用語は、障害の症状または副作用の治癒あるいは軽減または障害の進行の減速を包含する。治療はまた、例えば、未治療のヒトの無増悪生存期間と比べての、無増悪生存期間の延長も包含する。治療はまた、FAK阻害剤による治療を受けた、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量を有する腫瘍を有するヒトと比べての、FAK阻害剤による治療を受けた、マーリンアイソフォーム1タンパク質の検出可能な量が存在しない腫瘍を有するヒトにおける無増悪生存期間の延長も包含する。本明細書における癌治療方法の特定実施形態では、治療は、1以上の症状において臨床的に有意な改善を得ることを意味し、その改善は、所望により、RECIST規準により測定することができる。他の実施形態では、治療は、1以上の症状において統計的に有意な改善を得ることを意味し、その改善は、所望により、RECIST規準により測定することができる。本明細書における癌治療方法の特定実施形態では、この場合、1以上の症状における改善がRECIST規準により測定され、RECIST規準はRECIST 1.1規準である。
本明細書において、用語「癌」、「新生物」および「腫瘍」は互換的に、単数形または複数形で用いられ、悪性転換を受けた細胞を意味し、悪性転換によりそれらの細胞は宿主生物にとって病的なものとなる。原発性癌細胞(すなわち、悪性転換部位近くから得られた細胞)は、確立された技術、特に、組織学的検査により非癌性細胞と容易に識別することができる。本明細書における癌細胞の定義には、原発性癌細胞だけでなく癌細胞原種由来の任意の細胞もまた包含される。これには、転移性癌細胞、ならびに癌細胞由来のin vitro培養物および細胞株も含まれる。固形腫瘍として通常現れる癌のタイプに関しては、「臨床的に検出可能な」腫瘍は、腫瘍塊に基づいて、例えば、CATスキャン、MRイメージング、X線、超音波または触診などの手法により、検出可能であり、かつ/または患者から得ることが可能なサンプルにおける1以上の癌特異的抗原の発現によって検出可能であるものである。腫瘍は、造血器腫瘍、例えば、血液細胞などの腫瘍であり得る。そのような腫瘍に基づく臨床症状の具体的な例としては、白血病、例えば、慢性骨髄性白血病または急性骨髄性白血病;骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫;リンパ腫などが挙げられる。
当技術分野において理解されているように、用語「完全緩解」、「完全奏効」および「完全退縮」は、治療に応答した、癌の総ての検出可能な徴候および/または症状の消失を意味する。また、当技術分野において理解されているように、癌の検出可能な徴候または症状は、治療を受けている癌のタイプおよび病期に基づいて定義することができる。例として、HCCに罹患している被験者における治療に対する「完全奏効」は、X線またはCTスキャンを用いた観察で見える肝腫瘍が存在しないことと定義することができる。場合によっては、臨床的効果は、下に簡潔に記載するRECIST 1.1規準(Eisenhauer EA, Therasse P, Bogaerts J, et al. New response evaluation criteria in solid tumours: Revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer 2009;45:228-247)によって定義することができる:
RECIST 1.1規準
標的病変の評価
標的病変に対する効果の評価についての定義は次の通りである:
完全奏効(CR):総ての標的病変の消失。総ての病的リンパ節は短径で<10mmでなければならない。
部分奏効(PR):ベースライン径和に比して、標的病変の径和が少なくとも30%減少(例えば、ベースラインからの変化率)。
安定:PRに相当する縮小がなく進行に相当する増大がない。
進行(PD):治療開始から記録した最小の径和に比して、標的病変の径和が少なくとも20%増加(例えば、最小値からの変化率、この場合、最小値は治療開始から記録した最小の径和と定義される)。さらに、径和が絶対値でも最小値から5mm増加していなければならない。
該当なし(NA):ベースラインにおいて標的病変なし。
評価不能(NE):5つの前の定義の1つに分類することができない。
非標的病変の評価
非標的病変に対する効果の評価についての定義は次の通りである:
完全奏効(CR):総ての非標的病変の消失。ベースラインにおいて疾患部位として同定された総てのリンパ節が病的とみなされないサイズとならなければならない(例えば、短径<10mm)。
非CR/非PD:1つ以上の非標的病変の残存またはベースラインにおいて疾患部位として同定されたリンパ節の短径≧10mm。
進行(PD):既存の非標的病変の明らかな増悪。
該当なし(NA):ベースラインにおいて非標的病変なし。
評価不能(NE):4つの前の定義の1つに分類することができない。
新病変
疾患の増悪を示す新たな悪性腫瘍は明らかなものでなければならない。ベースラインにおいてスキャンしていない解剖学的部位で経過観察により同定された病変は新病変とみなされる。明確ではない新病変は追跡を続ける必要がある。治験責任医師の判断により次の定期検査まで治療は継続される。次の検査で新病変が明らかであるとみなされた場合、増悪と記録すべきである。
総合効果の評価
下の表は、ベースラインにおいて測定可能疾患を有する被験者に対する新病変出現の有無を含む標的病変および非標的病変の腫瘍応答の考えられる総ての組合せについての各時点での総合効果を示す。
RECIST 1.0規準
測定可能疾患および測定不能疾患の定義
測定可能疾患:少なくとも1つの測定可能病変の存在。
測定可能病変:少なくとも1方向で正確に測定することができる病変であり、最大径(LD)が以下である:
・従来技術(医学的写真[皮膚または口腔病変]、触診、単純X線、CTまたはMRI)により≧20mm、
または
・スパイラルCTスキャンにより≧10mm。
測定不能病変:小さすぎて測定不能とみなされた病変を含む他の総ての病変(最大径は、従来技術の場合<20mmまたはスパイラルCTスキャンの場合<10mm)であり、骨病変、軟膜疾患、腹水、胸水もしくは心嚢水、皮膚/肺のリンパ管炎、イメージング技術では確認および追跡されない腹部腫瘤、嚢胞性病変、または間接証拠でのみ(例えば、検査値により)報告されている疾患が含まれる。
測定方法
従来のCTおよびMRI:病変サイズの最小値は再構成間隔の2倍する。画像が10mm以上で連続して再構築される場合には、ベースライン病変の最小サイズは20mmであってよい。MRIが好ましく、使用する場合は、病変を、後の検査でも同じイメージング配列を用いて同じ解剖学的面で測定する必要がある。可能な限り、同じスキャナーを使用すべきである。
スパイラルCT:画像が5mm間隔で連続して再構築される場合には、ベースライン病変の最小サイズは10mmであってよい。この明細事項は胸部、腹部および骨盤の腫瘍にも当てはまる。
胸部X線:胸部X線による病変は、それらが明確に定められ、肺実質(aerated lung)に囲まれている場合に、測定可能病変として認められる。しかしながら、MRIが好ましい。
臨床検査:臨床的に検出される病変は、それらが表在性(例えば、皮膚結節および触診可能なリンパ節)である場合にのみ、RECIST規準により測定可能であるとみなされる。皮膚病変の場合、カラー写真による記録(病変のサイズを予測するために視野内に定規と患者試験番号を含めたもの)が必要である。
標的病変および非標的病変のベースライン記録
総ての関連臓器の代表とする全測定可能病変(各臓器につき最大5個の病変まで、合計10個の病変)をベースラインにおいて標的病変として同定し、記録し、測定する必要がある。
標的病変は、それらのサイズ(LDを有する病変)および正確な反復測定(臨床的またはイメージング技術による)に対するそれらの適性に基づいて選択すべきである。
総ての標的病変のLDの合計を計算し、ベースラインLD和として記録する。ベースラインLD和を客観的な腫瘍縮小効果の評価の規準として用いる。
他の総ての病変(または疾患の部位)を非標的病変と同定すべきであり、また、ベースラインにおいて記録すべきである。これらの病変の測定は必要ではないが、それぞれの有無は経過観察を通して記すべきである。
指標病変の記録には、評価日、病変部位の記載、寸法および病変の追跡に用いた診断検査の種類を含めるべきである。
総ての測定は、定規またはカリパスを使用し、メートル法による表記で実施および記録すべきである。
効果基準
疾患評価は、治療開始後6週間ごとに実施する必要がある。しかしながら、部分または完全奏効を受けた被験者は少なくとも28日後に確定のための疾患評価を受けなければならない。評価は28日後に近い(スケジュール調整可能な限り)、28日以降の日に実施すべきである。
標的病変に対する効果の評価についての定義は次の通りである:
標的病変の評価
完全奏効(CR)−総ての標的病変の消失。
部分奏効(PR)−ベースラインLD和に比して、標的病変のLD和が少なくとも30%減少。
安定(SD)−治療開始以降の最小のLD和に比して、PRに相当する縮小がなく進行(PD)に相当する増大がない。治療開始から記録した最小のLD和に比して、病変、または1つ以上の新病変の出現。
非標的病変の評価
非標的病変に対する客観的な腫瘍縮小効果の判定に使用した規準の定義は次の通りである:
完全奏効−総ての非標的病変の消失。
不完全奏効/安定−1つ以上の非標的病変の残存。
進行−1つ以上の新病変の出現および/または既存の非標的病変の明らかな増悪。
RECISTに基づく効果についての総合効果の評価
総合効果は治療開始から疾患の増悪/再発が報告されるまで記録した最良効果である。一般的には、被験者の最良効果の割り当ては測定および確定基準の両方の実現によって決まる。
下の表は、新病変出現の有無を含む標的病変および非標的病変の腫瘍縮小効果の考えられる総ての組合せについての最良総合効果の評価を示す。
組合せ
FAK阻害剤、例えば、限定されるものではないが、化合物Aが癌の治療のために投与される場合、本明細書において、用語「併用投与」およびその派生語は、本明細書において記載されるFAK阻害化合物と、化学療法および放射線治療を含め、癌の治療に有用であることが知られているさらなる有効成分の同時投与または任意の様式の個別逐次投与のいずれかを意味する。本明細書において、さらなる有効成分という用語には、癌に対する治療を必要とする患者に投与した際に有利な特性を示すことが知られている、または有利な特性を示すいずれの化合物または治療薬も含まれる。投与が同時でなければ、化合物は互いに近接した時点で投与される。さらに、これらの化合物を同じ投与形で投与するかどうかは問題ではなく、例えば、一方の化合物を局所投与し、他の化合物を経口投与してもよい。
一般に、治療される感受性腫瘍に対して活性を有するいずれの抗新生物薬も、本発明の癌治療において併用投与することができる。このような薬剤の例は、Cancer Principles and Practice f Oncology by V.T. Devita and S. Hellman (編), 第6版(2001年2月15日), Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見出すことができる。当業者ならば、関与する薬物および癌の特定の特徴に基づき、どの薬剤組合せが有用であるかを認識することができる。本発明で有用な一般的な抗新生物薬としては、限定されるものではないが、微小管阻害剤、例えば、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイド;白金配位錯体;アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、オキサザホスホリン、アルキルスルホン酸、ニトロソ尿素およびトリアゼン;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシン;トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、エピポドフィロトキシン;代謝拮抗物質、例えば、プリンおよびピリミジン類似体ならびに葉酸拮抗化合物;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、カンプトテシン;ホルモンおよびホルモン類似体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体型チロシンキナーゼ血管新生阻害剤;免疫治療薬;アポトーシス促進剤;および細胞周期シグナル伝達阻害剤が挙げられる。
本FAK阻害化合物と組み合わせて使用するための、または併用投与されるさらなる有効成分の例は、化学療法薬である。
微小管阻害剤または有糸分裂阻害剤は、細胞周期のM期、すなわち有糸分裂期の間に腫瘍細胞の微小管に対して活性である細胞期特異的な薬剤である。微小管阻害剤の例としては、限定されるものではないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられる。
ジテルペノイドは、天然源に由来し、細胞周期のG/M期に作用する細胞期特異的な抗癌剤である。ジテルペノイドは、微小管のβ−チューブリンサブユニットと結合することによりこのタンパク質を安定化させると考えられている。その後、タンパク質の分解が阻害され、有糸分裂が停止し、細胞死をたどると思われる。ジテルペノイドの例としては、限定されるものではないが、パクリタキセルおよびその類似体であるドセタキセルが挙げられる。
パクリタキセル、5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサ−ヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4,10−ジアセタート2−ベンゾアートの(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとの13−エステルは、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)から単離された天然ジテルペン産物であり、注射液タキソール(商標)として市販されている。パクリタキセルは、タキサン系テルペン類のメンバーである。パクリタキセルは、1971年にWaniら(J. Am. Chem, Soc., 93:2325. 1971)によって初めて単離され、彼が化学法およびX線結晶学的方法によってその構造を同定した。その活性の1つの機構は、パクリタキセルの、チューブリンと結合し、それにより癌細胞増殖を阻害する能力に関連している。Schiff et al., Proc. Natl, Acad, Sci. USA, 77:1561-1565 (1980); Schiff et al., Nature, 277:665-667 (1979); Kumar, J. Biol, Chem, 256: 10435-10441 (1981)。いくつかのパクリタキセル誘導体の合成および抗癌活性に関する総説としては、D. G. I. Kingston et al., Studies in Organic Chemistry vol. 26, “New trends in Natural Products Chemistry 1986”, Attaur-Rahman, P.W. Le Quesne編(Elsevier, Amsterdam, 1986) pp 219-235を参照。
パクリタキセルは、米国における難治性卵巣癌の治療における臨床使用(Markman et al., Yale Journal of Biology and Medicine, 64:583, 1991; McGuire et al., Ann. lntem, Med., 111:273,1989)および乳癌の治療(Holmes et al., J. Nat. Cancer Inst., 83:1797,1991)に承認されている。パクリタキセルは、皮膚における新生物(Einzig et. al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 20:46)および頭頸部癌(Forastire et. al., Sem. Oncol., 20:56, 1990)の治療のための有望な候補である。またこの化合物は、多発性嚢胞腎疾患(Woo et. al., Nature, 368:750. 1994)、肺癌およびマラリアの治療にも可能性を示している。パクリタキセルで患者を治療すると、閾値濃度(50nM)を超える投与の期間に関連して(Kearns, C.M. et. al., Seminars in Oncology, 3(6) p.16-23, 1995)、骨髄抑制が起こる(複数の細胞系譜、Ignoff, R.J. et. al, Cancer Chemotherapy Pocket Guide, 1998)。
ドセタキセル、(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステルの5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4−アセタート2−ベンゾアートとの13−エステルの三水和物は、注射液としてタキソテール(商標)として市販されている。ドセタキセルは、乳癌の治療に適応される。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの針葉から抽出された天然の前駆物質10−デアセチル−バッカチンIIIを使用して製造された、パクリタキセル(参照のこと)の半合成誘導体である。ドセタキセルの用量制限毒性は好中球減少である。
ビンカアルカロイドは、ニチニチソウ植物由来の細胞期特異的抗新生物薬である。ビンカアルカロイドは、チューブリンと特異的に結合することによって細胞周期のM期(有糸分裂)に作用する。その結果、結合されたチューブリン分子は、重合して微小管になることができない。有糸分裂は中期で停止し、細胞死をたどると考えられている。ビンカアルカロイドの例としては、限定されるものではないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンが挙げられる。
ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチン硫酸塩は、注射液としてベルバン(商標)として市販されている。ビンブラスチンは、種々の固形腫瘍の第二選択療法として適応される可能性があるが、精巣癌、ならびにホジキン病、リンパ球性および組織球性リンパ腫を含む種々のリンパ腫の治療に主として適応されている。骨髄抑制がビンブラスチンの用量制限副作用である。
ビンクリスチン、ビンカロイコブラスチンの22−オキソ−硫酸塩は、注射液としてオンコビン(商標)として市販されている。ビンクリスチンは、急性白血病の治療に適応されており、ホジキンおよび非ホジキン悪性リンパ腫の治療計画の中でも使用が見出されている。脱毛および神経学的作用がビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、程度は低いが、骨髄抑制(myelosupression)および胃腸粘膜炎作用が生じる。
ビノレルビン酒石酸塩の注射液(ナベルビン(商標))として市販されているビノレルビン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−C’−ノルビンカロイコブラスチン[R−(R,R)−2,3−ジヒドロキシブタン二酸(1:2)(塩)]は、半合成ビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、単剤として、またはシスプラチンなどの他の化学療法薬と組み合わせて、種々の固形腫瘍、特に、非小細胞肺癌、進行性乳癌およびホルモン不応性前立腺癌の治療に適応されている。骨髄抑制がビノレルビンの最も一般的な用量制限副作用である。
白金配位錯体は、非細胞期特異的抗癌剤であり、DNAと相互作用する。白金錯体は、腫瘍細胞に侵入し、アクア化を受け、DNAとの鎖内架橋および鎖間架橋を形成し、腫瘍に対して有害な生物学的作用を引き起こす。白金配位錯体の例としては、限定されるものではないが、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられる。
シスプラチン、cis−ジアンミンジクロロ白金は、注射液としてプラチノール(商標)として市販されている。シスプラチンは、主として転移性の精巣癌および卵巣癌ならびに進行性膀胱癌の治療に適応されている。シスプラチンの主な用量制限副作用は、腎毒性(水分補給と利尿により管理可能)、および耳毒性である。
カルボプラチン、ジアンミン[1,1−シクロブタン−ジカルボキシラート(2−)−O,O’]白金は、注射液としてパラプラチン(商標)として市販されている。カルボプラチンは、主として進行性卵巣癌の第一選択および第二選択治療に適応されている。骨髄抑制がカルボプラチンの用量制限毒性である。
アルキル化剤は、細胞周期非特異的抗癌剤(non-phase anti-cancer specific agents)であり、かつ、強力な求電子試薬である。一般に、アルキル化剤は、アルキル化によって、リン酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、およびイミダゾール基などのDNA分子の求核部分を介してDNAと共有結合を形成する。このようなアルキル化によって核酸機能が破壊され細胞死に至る。アルキル化剤の例としては、限定されるものではないが、シクロホスファミド、メルファランおよびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ブスルファンなどのアルキルスルホン酸;カルムスチンなどのニトロソ尿素;ならびにダカルバジンなどのトリアゼンが挙げられる。
シクロホスファミド、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキシアザホスホリン2−オキシド一水和物は、注射液または錠剤としてシトキサン(商標)として市販されている。シクロホスファミドは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫および白血病の治療に適応されている。脱毛、悪心、嘔吐および白血球減少がシクロホスファミドの最も一般的な用量制限副作用である。
メルファラン、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンは、注射液または錠剤としてアルケラン(商標)として市販されている。メルファランは、多発性骨髄腫および切除不能な卵巣上皮癌の待期療法に適応されている。骨髄抑制がメルファランの最も一般的な用量制限副作用である。
クロラムブシル、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、リューケラン(商標)錠剤として市販されている。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病、ならびにリンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫およびホジキン病などの悪性リンパ腫の待期療法に適応されている。骨髄抑制がクロラムブシルの最も一般的な用量制限副作用である。
ブスルファン、1,4−ブタンジオールジメタンスルホナートは、ミレラン(MYLERAN)(商標)錠剤として市販されている。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の待期療法に適応されている。骨髄抑制がブスルファンの最も一般的な用量制限副作用である。
カルムスチン、1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素は、ビーアイシーエヌユー(BiCNU)(商標)として凍結乾燥物質の単一バイアルとして市販されている。カルムスチンは、脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫用に、単剤として、または他の薬剤と組み合わせて、待期療法に適応されている。遅発性骨髄抑制がカルムスチンの最も一般的な用量制限副作用である。
ダカルバジン、5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドは、単一バイアルとしてDTIC−Dome(商標)として市販されている。ダカルバジンは、転移性悪性黒色腫の治療、および他の薬剤と組み合わせてホジキン病の第二選択治療に適応されている。悪心、嘔吐、および食欲不振症がダカルバジンの最も一般的な用量制限副作用である。
抗生物質系抗新生物薬は、細胞周期非特異的薬剤であり、DNAと結合するかまたはDNAにインターカレートする。一般に、このような作用によって安定なDNA複合体かまたは鎖の切断が生じ、それにより核酸の通常機能が乱れ、細胞死に至る。抗生物質系抗新生物薬の例としては、限定されるものではないが、ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン;ダウノルビシンおよびドキソルビシンなどのアントラサイクリン;ならびにブレオマイシンが挙げられる。
ダクチノマイシンは、アクチノマイシンDとしても知られ、注射液の形態でコスメゲン(商標)として市販されている。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍および横紋筋肉腫の治療に適応されている。悪心、嘔吐および食欲不振症がダクチノマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
ダウノルビシン、(8S−シス−)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、リポソーム注射液の形態でダウノキソーム(商標)として、または注射液としてセルビジン(商標)として市販されている。ダウノルビシンは、急性非リンパ球性白血病および進行性HIV関連カポジ肉腫の治療における寛解導入に適応されている。骨髄抑制がダウノルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
ドキソルビシン、(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、注射液の形態としてルベックス(商標)またはアドリアマイシンRDF(商標)として市販されている。ドキソルビシンは、主として急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病の治療に適応されているが、いくつかの固形腫瘍およびリンパ腫の治療における有用成分でもある。骨髄抑制がドキソルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
ブレオマイシン、ストレプトミセス・ヴェルチシルス(Streptomyces verticillus)の株から単離された細胞傷害性グリコペプチド系抗生物質の混合物は、ブレノキサン(商標)として市販されている。ブレオマイシンは、単剤として、または他の薬剤と組み合わせて、扁平上皮癌、リンパ腫、および精巣癌の待期療法に適応されている。肺毒性および皮膚毒性がブレオマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
トポイソメラーゼII阻害剤としては、限定されるものではないが、エピポドフィロトキシンが挙げられる。
エピポドフィロトキシンは、マンドレイク植物由来の細胞周期特異的抗新生物薬である。エピポドフィロトキシンは、一般に、トポイソメラーゼIIおよびDNAと三元複合体を形成してDNA鎖の切断を引き起こすことによって、細胞周期のS期およびG期において細胞に影響を及ぼす。この鎖切断が蓄積し、細胞死をたどる。エピポドフィロトキシンの例としては、限定されるものではないが、エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。
エトポシド、4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射液またはカプセル剤としてベプシド(商標)として市販されており、一般にVP−16として知られている。エトポシドは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、精巣癌および非小細胞肺癌の治療に適応されている。骨髄抑制がエトポシドの最も一般的な副作用である。白血球減少の発生率の方が、血小板減少よりも重大となる傾向がある。
テニポシド、4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射液としてブモン(商標)として市販されており、一般にVM−26として知られている。テニポシドは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、小児における急性白血病の治療に適応されている。骨髄抑制がテニポシドの最も一般的な用量制限副作用である。テニポシドは、白血球減少および血小板減少の双方を誘導し得る。
代謝拮抗性新生物薬は、DNA合成を阻害することによって、またはプリンもしくはピリミジン塩基の合成を阻害し、それによりDNA合成を制限することによって細胞周期のS期(DNA合成)に作用する、細胞期特異的抗新生物薬である。その結果、S期は進行せず、細胞死をたどる。代謝拮抗性抗新生物薬の例としては、限定されるものではないが、フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メカプトプリン、チオグアニンおよびゲムシタビンが挙げられる。
5−フルオロウラシル、5−フルオロ−2,4−(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして市販されている。5−フルオロウラシルを投与すると、チミジル酸の合成が阻害され、またRNAおよびDNAの両方に組み込まれる。その結果は一般に細胞死である。5−フルオロウラシルは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、乳癌、結腸癌、直腸癌、胃癌、および膵癌の治療に適応されている。骨髄抑制および粘膜炎が5−フルオロウラシルの用量制限副作用である。他のフルオロピリミジン類似体としては、5−フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)および5−フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
シタラビン、4−アミノ−1−β−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノンは、シトサール−U(商標)として市販されており、一般にAra−Cとして知られている。シタラビンは、成長中のDNA鎖へのシタラビンの末端組み込みによってDNA鎖の伸長を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示すと考えられている。シタラビンは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、急性白血病の治療に適応されている。他のシチジン類似体としては、5−アザシチジンおよび2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。シタラビンは、白血球減少、血小板減少および粘膜炎を誘発する。
メルカプトプリン、1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン一水和物は、PURINETHOL(商標)として市販されている。メルカプトプリンは、現時点でまだ特定されていないメカニズムによってDNA合成を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示す。メルカプトプリンは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、急性白血病の治療に適応されている。骨髄抑制および胃腸粘膜炎が、高用量のメルカプトプリンで予想される副作用である。有用なメルカプトプリン類似体はアザチオプリンである。
チオグアニン、2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、タブロイド(商標)として市販されている。チオグアニンは、現時点でまだ特定されていないメカニズムによってDNA合成を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示す。チオグアニンは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、急性白血病の治療に適応されている。白血球減少、血小板減少および貧血を含む骨髄抑制がチオグアニン投与の最も一般的な用量制限副作用である。しかしながら、胃腸副作用も起こり、用量制限となり得る。他のプリン類似体としては、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、フルダラビンリン酸エステルおよびクラドリビンが挙げられる。
ゲムシタビン、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−異性体)は、ゲムザール(商標)として市販されている。ゲムシタビンは、S期にて、またG1/S境界を通る細胞の進行を遮断することによって、細胞期特異性を示す。ゲムシタビンは、シスプラチンと組み合わせて局所進行性非小細胞肺癌の治療に適応され、また単独で局所進行性膵癌の治療に適応されている。白血球減少、血小板減少および貧血を含む骨髄抑制が、ゲムシタビン投与の最も一般的な用量制限副作用である。
メトトレキサート、N−[4[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、メトトレキサートナトリウムとして市販されている。メトトレキサートは、プリンヌクレオチドおよびチミジル酸の合成に必要とされるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を介して、DNAの合成、修復、および/または複製を阻害することによって、特にS期に細胞期作用を示す。メトトレキサートは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫、ならびに乳癌、頭部癌、頸部癌、卵巣癌および膀胱癌の治療に適応されている。骨髄抑制(白血球減少、血小板減少および貧血)および粘膜炎が、メトトレキサート投与の予想される副作用である。
カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含むカンプトテシン類は、トポイソメラーゼI阻害剤として入手可能または開発中である。カンプトテシン細胞傷害活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性に関連すると考えられている。カンプトテシンの例としては、限定されるものではないが、イリノテカン、トポテカン、および下記の7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20−カンプトテシンの種々の光学的形態が挙げられる。
イリノテカンHCl、(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)−ジオン塩酸塩は、注射液カンプトサール(商標)として市販されている。
イリノテカンは、その活性代謝物SN−38とともにトポイソメラーゼI−DNA複合体と結合する、カンプトテシンの誘導体である。細胞傷害性は、トポイソメラーゼI:DNA:イリンテカンまたはSN−38の三元複合体と複製酵素との相互作用により引き起こされる回復不能な二本鎖切断の結果として生じると考えられている。イリノテカンは、結腸または直腸の転移性癌の治療に適応されている。イリノテカンHClの用量制限副作用は、好中球減少を含む骨髄抑制、および下痢を含むGI作用である。
トポテカンHCl、(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン一塩酸塩は、注射液ハイカムチン(商標)として市販されている。トポテカンは、トポイソメラーゼI−DNA複合体と結合して、DNA分子のねじれ歪みに応答してトポイソメラーゼIにより引き起こされる一本鎖切断の再連結を妨げるカンプトテシンの誘導体である。トポテカンは、転移性の卵巣癌および小細胞肺癌の第二選択治療に適応されている。トポテカンHClの用量制限副作用は、骨髄抑制、主に好中球減少である。
また、現在開発中の、下式A:
の、化学名「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R,S)−カンプトテシン(ラセミ混合物)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R)カンプトテシン(R鏡像異性体)または「7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン(S鏡像異性体)で知られるラセミ混合物(R、S)型ならびにRおよびS鏡像異性体を含むカンプトテシン誘導体も着目される。このような化合物ならびに関連化合物は、製造方法を含め、米国特許第6,063,923号;同第5,342,947号;同第5,559,235号;同第5,491,237号および1997年11月24日に出願された係属中の米国特許出願第08/977,217号に記載されている。
ホルモンおよびホルモン類似体は、ホルモンと癌の増殖および/または増殖の欠如との間に関係がある癌を治療するのに有用な化合物である。癌治療で有用なホルモンおよびホルモン類似体の例としては、限定されるものではないが、小児の悪性リンパ腫および急性白血病の治療に有用なプレドニゾンおよびプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド;アミノグルテチミドおよび他のアロマターゼ阻害剤、例えば、副腎皮質癌およびエストロゲン受容体を含むホルモン依存性乳癌の治療に有用なアナストロゾール、レトラゾール(letrazole)、ボラゾール(vorazole)およびエキセメスタン;プロゲストリン(progestrins)、例えば、ホルモン依存性乳癌および子宮内膜癌の治療に有用な酢酸メゲストロール;エストロゲン、アンドロゲンおよび抗アンドロゲン、例えば、前立腺癌および良性前立腺肥大の治療に有用なフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、シプロテロン酢酸塩および5α−レダクターゼ、例えば、フィナステリドおよびデュタステライド;抗エストロゲン、例えば、ホルモン依存性乳癌および他の感受性癌の治療に有用なタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、ならびに選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMS)、例えば、米国特許第5,681,835号、同第5,877,219号および同第6,207,716号に記載のもの;ならびに前立腺癌の治療のための黄体形成ホルモン(LH)および/または卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびその類似体、例えば、LHRH作動薬および拮抗薬、例えば、ゴセレリン酢酸塩およびルプロリド(luprolide)が挙げられる。
レトロゾール(商品名フェマーラ)は、術後のホルモン反応性乳癌の治療のための経口非ステロイド系アロマターゼ阻害剤である。エストロゲンは、アロマターゼ酵素の活性を介したアンドロゲンの変換によって産生される。その後、エストロゲンはエストロゲン受容体と結合し、それにより、細胞を分裂させる。レトロゾールは、アロマターゼのシトクロムP450ユニットのヘムとの競合的可逆的結合により、アロマターゼによるエストロゲンの産生を妨げる。その作用は特異的であり、レトロゾールは、鉱質−またはコルチコステロイドの産生を減少させない。
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内変化を引き起こす化学プロセスを遮断または阻害する阻害剤である。本明細書において、この変化は細胞増殖または分化である。本発明で有用なシグナル伝達阻害剤としては、受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、SH2/SH3ドメイン遮断剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ阻害剤、ミオイノシトールシグナル伝達阻害剤およびRas癌遺伝子阻害剤が含まれる。
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与する様々なタンパク質の特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。このようなタンパク質チロシンキナーゼは、受容体型または非受容体型キナーゼとして大別することができる。
受容体型チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメインおよびチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体型チロシンキナーゼは細胞増殖の調節に関与し、一般に増殖因子受容体と呼ばれている。例えば、過剰発現または突然変異による、これらのキナーゼの多くの不適当または無制御な活性化、すなわち、異常なキナーゼ増殖因子受容体活性は、無制御な細胞増殖をもたらすことが示されている。従って、このようなキナーゼの異常な活性は、悪性組織増殖と関連づけられている。結果として、このようなキナーゼの阻害剤は、癌治療法を提供し得る。増殖因子受容体としては、例えば、上皮増殖因子受容体(EGFr)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮増殖因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様ドメインおよび上皮増殖因子相同ドメインを含むチロシンキナーゼ(TIE−2)、インスリン増殖因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkBおよびTrkC)、エフリン(eph)受容体ならびにRET癌原遺伝子が挙げられる。増殖受容体のいくつかの阻害剤が開発中であり、リガンド拮抗薬、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。増殖因子受容体および増殖因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えば、Kath, John C., Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(6):803-818;Shawver et al DDT Vol 2, No. 2 1997年2月;およびLofts, F. J et al, "Growth factor receptors as targets", New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Workman, Paul and Kerr, David編, CRC press 1994, Londonに記載されている。
増殖因子受容体キナーゼでないチロシンキナーゼは、非受容体型チロシンキナーゼと呼ばれる。抗癌剤の標的または潜在的標的となる、本発明で有用な非受容体型チロシンキナーゼには、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(接着斑キナーゼ)、ブルトン型チロシンキナーゼおよびBcr−Ablが挙げられる。このような非受容体型キナーゼおよび非受容体型チロシンキナーゼ機能を阻害する薬剤は、Sinh, S. and Corey, S.J., (1999) Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8 (5): 465-80;およびBolen, J.B., Brugge, J.S., (1997) Annual review of Immunology. 15: 371-404に記載されている。
SH2/SH3ドメイン遮断剤は、PI3−K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)およびRas−GAPを含む様々な酵素またはアダプタータンパク質におけるSH2またはSH3ドメイン結合を乱す薬剤である。抗癌剤の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall, T.E. (1995), Journal of Pharmacological and Toxicological Methods 34(3) 125-32に述べられている。
Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(Mitogen or Extracellular Regulated Kinase)(MEK)および細胞外調節キナーゼ(Extracellular Regulated Kinase)(ERK)の遮断剤を含むMAPキナーゼカスケード遮断剤;ならびにPKC(アルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、ミュー、ラムダ、イオタ、ゼータ)の遮断剤を含むプロテインキナーゼCファミリーメンバー遮断剤を含む、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、AKTキナーゼファミリーメンバーおよびTGFβ受容体キナーゼ。このようなセリン/トレオニンキナーゼおよびそれらの阻害剤は、Yamamoto, T., Taya, S., Kaibuchi, K., (1999), Journal of Biochemistry. 126 (5) 799-803; Brodt, P, Samani, A., and Navab, R. (2000), Biochemical Pharmacology, 60. 1101-1107; Massague, J., Weis-Garcia, F. (1996) Cancer Surveys. 27:41-64; Philip, P.A., and Harris, A.L. (1995), Cancer Treatment and Research. 78: 3-27, Lackey, K. et al Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, (10), 2000, 223-226; 米国特許第6,268,391号;およびMartinez-Iacaci, L., et al, Int. J. Cancer (2000), 88(1), 44-52に記載されている。
PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PKおよびKuの遮断剤を含むホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(Phosphotidyl inositol-3 Kinase)ファミリーメンバーの阻害剤もまた本発明において有用であり得る。このようなキナーゼは、Abraham, R.T. (1996), Current Opinion in Immunology. 8 (3) 412-8; Canman, C.E., Lim, D.S. (1998), Oncogene 17 (25) 3301-3308; Jackson, S.P. (1997), International Journal of Biochemistry and Cell Biology. 29 (7):935-8;およびZhong, H. et al, Cancer res, (2000) 60(6), 1541-1545に記載されている。
また、本発明では、ミオイノシトールシグナル伝達阻害剤、例えば、ホスホリパーゼC遮断剤およびミオイノシトール類似体も有用である。このようなシグナル伝達阻害剤は、Powis, G., and Kozikowski A., (1994) New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Paul Workman and David Kerr編, CRC press 1994, Londonに記載されている。
シグナル伝達経路阻害剤の別の群は、Ras癌遺伝子の阻害剤である。このような阻害剤には、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼおよびCAAXプロテアーゼの阻害剤ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムおよび免疫療法が含まれる。このような阻害剤は、野生型変異体rasを含む細胞においてrasの活性化を阻止し、それにより抗増殖薬として作用することが示されている。Ras癌遺伝子の阻害は、Scharovsky, O.G., Rozados, V.R., Gervasoni, S.I. Matar, P. (2000), Journal of Biomedical Science. 7(4) 292-8;Ashby, M.N. (1998), Current Opinion in Lipidology. 9 (2) 99-102;およびBennett, C.F. and Cowsert, L.M. BioChim. Biophys. Acta, (1999) 1489(1):19-30に記載されている。
上述のように、受容体型キナーゼリガンド結合に対する抗体拮抗薬もまた、シグナル伝達阻害剤として機能し得る。この群のシグナル伝達経路阻害剤は、受容体型チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体の使用を含む。例えば、Imclone C225 EGFR特異的抗体(Green, M.C. et al, Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors, Cancer Treat. Rev., (2000), 26(4), 269-286参照);ハーセプチン(商標)erbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kniases, Breast cancer Res., 2000, 2(3), 176-183参照);ならびに2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken, R.A. et al, Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti-VEGF antibody blocks tumor growth in mice, Cancer Res. (2000) 60, 5117-5124参照)。
非受容体型キナーゼ血管新生阻害剤もまた、本発明において使用が見出され得る。血管新生関連VEGFRおよびTIE2の阻害剤は、シグナル伝達阻害剤について上述されている(両受容体とも、受容体型チロシンキナーゼである)。erbB2およびEGFRの阻害剤は血管新生、主にVEGF発現を阻害することが示されているので、血管新生は一般にerbB2/EGFRシグナル伝達と関連する。よって、erbB2/EGFR阻害剤と血管新生の阻害剤との組合せは理にかなっている。従って、非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤は、本発明のEGFR/erbB2阻害剤と組み合わせて使用することができる。例えば、VEGFR(受容体型チロシンキナーゼ)を認識しないが、リガンドと結合する抗VEGF抗体;血管新生を阻害するインテグリン(αβ)の低分子阻害剤;エンドスタチンおよびアンジオスタチン(非RTK)も、開示されたerbファミリー阻害剤との組合せにおいて有用であるとわかる(Bruns CJ et al (2000), Cancer Res., 60: 2926-2935; Schreiber AB, Winkler MEおよびDerynck R. (1986), Science, 232: 1250-1253;Yen L et al. (2000), Oncogene 19: 3460-3469を参照)。
ヴォトリエント(商標)として市販されているパゾパニブは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。パゾパニブは、塩酸塩として提供され、化学名は5−[[4−[(2,3−ジメチル−2H−インダゾール−6−イル)メチルアミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−2−メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸塩である。パゾポニブは、進行性腎細胞癌患者の治療に承認されている。
アバスチン(商標)として市販されているベバシスマブは、VEGF−Aを阻害するヒト化モノクローナル抗体である。アバスチン(商標)は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、腎癌および膠芽腫を含む様々な癌の治療に承認されている。
mTOR阻害剤としては、限定されるものではないが、ラパマイシン(FK506)およびラパログ(rapalogs)、RAD001またはエベロリムス(アフィニトール)、CCI−779またはテムシロリムス、AP23573、AZD8055、WYE−354、WYE−600、WYE−687およびPp121が挙げられる。
エベロリムスは、Novartis社によりアフィニトール(商標)として販売されており、シロリムスの40−O−(2−ヒドロキシエチル)誘導体であり、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin))阻害剤としてシロリムスと同様に働く。現在、臓器移植の拒絶反応を防ぐ免疫抑制薬および腎細胞癌の治療薬として使用されている。また、複数の癌で使用するためにエベロリムスおよび他のmTOR阻害剤に対して多くの研究が行われている。エベロリムスは、下記化学構造(式II)および化学名を有する:
ジヒドロキシ−12−[(2R)−1−[(1S,3R,4R)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシシクロヘキシル]プロパン−2−イル]−19,30−ジメトキシ−15,17,21,23,29,35−ヘキサメチル−11,36−ジオキサ−4−アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ−16,24,26,28−テトラエン−2,3,10,14,20−ペントン。
ベキサロテンは、タルグレチン(Targretin)(商標)として販売されており、レチノイドX受容体(RXR)を選択的に活性化するレチノイドのサブクラスのメンバーである。これらのレチノイド受容体は、レチノイン酸受容体(RAR)のものとは異なる生物活性を有する。化学名は4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)エテニル]安息香酸である。ベキサロテンは、少なくとも1種の他の薬剤では疾患が上手く治療できなかった人々において皮膚T細胞リンパ腫(CTCL、皮膚癌の一種)を治療するために使用される。
ネクサバール(商標)として市場に出ているソラフェニブは、多標的キナーゼ阻害剤と呼ばれる薬剤クラスに分類される。その化学名は4−[4−[[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]−N−メチル−ピリジン−2−カルボキサミドである。ソラフェニブは、進行性腎細胞癌(腎臓で始まる癌の一種)を治療するために使用される。ソラフェニブはまた、切除不能な肝細胞癌(手術では治療できない肝臓癌の一種)を治療するためにも使用される。
免疫療法計画に用いられる薬剤もまた、式(I)の化合物との組合せにおいて有用であり得る。erbB2またはEGFRに対する免疫応答を生じさせるには、複数の免疫学的戦略が存在する。これらの戦略は一般に腫瘍ワクチン接種の範囲にある。免疫学的アプローチの有効性は、低分子阻害剤を用いたerbB2/EGFRシグナル伝達経路の組合せ阻害を通じて大きく増強され得る。erbB2/EGFRに対する免疫学的/腫瘍ワクチンアプローチに関する考察は、Reilly RT et al. (2000), Cancer Res. 60: 3569-3576;およびChen Y, Hu D, Eling DJ, Robbins J, and Kipps TJ. (1998), Cancer Res. 58: 1965-1971に見出せる。
erbB阻害剤の例としては、ラパチニブ、エルロチニブおよびゲフィチニブが挙げられる。ラパチニブ、N−(3−クロロ−4−{[(3−フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)−6−[5−({[2−(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)−2−フラニル]−4−キナゾリンアミン(式Iにより表され、図示の通りである)は、HER2陽性転移性乳癌の治療にカペシタビンとの併用において承認されている、強力な、経口用、低分子のerbB−1およびerbB−2(EGFRおよびHER2)チロシンキナーゼの二重阻害剤である。
式(I)の化合物の遊離塩基、HCl塩およびジトシラート塩は、1999年7月15日公開の第WO99/35146号;および2002年1月10日公開の第WO02/02552号に開示されている手順に従って製造することができる。
エルロチニブ、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス{[2−(メチルオキシ)エチル]オキシ}−4−キナゾリンアミン(タルセバという商品名で市販されている)は、式IIにより表され、図示の通りである:
エルロチニブの遊離塩基およびHCl塩は、例えば、米国特許第5,747,498号、実施例20に従って製造することができる。
ゲフィチニブ、4−キナゾリンアミン,N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−[3−4−モルホリン]プロポキシ]は、式IIIにより表され、図示の通りである:
ゲフィチニブは、イレッサ(商標)(アストラゼネカ社)という商品名で市販されており、白金製剤を含む化学療法およびドセタキセル化学療法のどちらにも失敗した後の局所進行性または転移性非小細胞肺癌患者の治療のための単剤療法として適応されているerbB−1阻害剤である。ゲフィチニブの遊離塩基、HCl塩および二HCl塩は、1996年4月23日に出願され、1996年10月31日に第WO96/33980号として公開された国際出願第PCT/GB96/00961号の手順に従って製造することができる。
トラスツズマブ(ハーセプチン(商標))は、HER2受容体と結合するヒト化モノクローナル抗体である。その最初の適応症はHER2陽性乳癌である。
セツキシマブ(アービタックス(商標))は、上皮増殖因子受容体(EGFR)を阻害するマウス・ヒトキメラ抗体である。
ペルツズマブ(2C4とも呼ばれる、商品名オムニターグ(Omnitarg))はモノクローナル抗体である。「HER二量体化阻害剤」と呼ばれる薬剤系統に属するそのクラスの最初のもの。ペルツズマブは、HER2との結合により、HER2と他のHER受容体との二量体化を阻害し、その結果として腫瘍増殖の低下がもたらされると仮定される。ペルツズマブは、2001年1月4日公開の第WO01/00245号に記載されている。
リツキシマブは、リツキサン(商標)およびマブテラ(MABTHERA(商標))として販売されているキメラモノクローナル抗体である。リツキシマブは、B細胞上のCD20と結合し、細胞アポトーシスを引き起こす。リツキシマブは静脈内に投与され、関節リウマチおよびB細胞非ホジキンリンパ腫の治療に承認されている。
オファツムマブは、アルゼラ(ARZERRA(商標))として販売されている完全ヒトモノクローナル抗体である。オファツムマブは、B細胞上のCD20と結合し、フルダラビン(フルダラ)およびアレムツズマブ(キャンパス)による治療に対して抵抗性の成人において慢性リンパ性白血病(CLL;白血球の癌の一種)を治療するために使用される。
アポトーシス誘導療法で用いられる薬剤(例えば、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)もまた、本発明の組合せにおいて使用可能である。Bcl−2ファミリータンパク質のメンバーは、アポトーシスを阻止する。そのため、bcl−2のアップレギュレーションは、化学的抵抗と関連づけられている。研究によれば、上皮増殖因子(EGF)がbcl−2ファミリーの抗アポトーシスメンバー(すなわち、mcl−1)を刺激することが示された。従って、腫瘍においてbcl−2の発現をダウンレギュレートするように設計された戦略は、臨床的利益が実証され、現在第II/III相治験の段階である(すなわち、Genta社のG3139 bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)。bcl−2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド戦略を用いるこのようなアポトーシス誘導戦略は、Water JS et al. (2000), J. Clin. Oncol. 18: 1812-1823;およびKitada S et al. (1994), Antisense Res. Dev. 4: 71-79に述べられている。
細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるプロテインキナーゼファミリー、およびサイクリンと呼ばれるタンパク質ファミリーとのそれらの相互作用は、真核生物の細胞周期の進行を制御する。細胞周期の正常な進行には、異なるサイクリン/CDK複合体の協調的活性化および不活性化が必要である。細胞周期シグナル伝達のいくつかの阻害剤が開発中である。例えば、CDK2、CDK4およびCDK6を含むサイクリン依存性キナーゼ、およびそれらの阻害剤の例は、例えばRosania et al, Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(2):215-230に記載されている。
一実施形態では、特許請求された発明の癌治療法は、前記ヒトからのサンプルにおいてニューロフィブロミン−2(NF2)遺伝子の遺伝子産物の検出可能な量の有無を判定すること、および遺伝子産物またはアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、前記ヒトに、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与すること、ならびに該FAK阻害剤とともに少なくとも1種の抗新生物薬を併用投与することを含んでなる。例として、本発明は、治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法を提供し、その方法は、該ヒトからの腫瘍サンプルからマーリンまたはその機能的断片の検出可能な量の有無を判定すること、およびマーリンまたはその機能的断片が検出されない場合に、該ヒトに、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドまたはその薬学上許容される塩の有効量と、少なくとも1種の抗新生物薬、例えば、微小管阻害剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫治療薬、アポトーシス促進剤および細胞周期シグナル伝達阻害剤からなる群から選択されるものとを投与することを含んでなる。
医薬組成物
式(I)の化合物、ならびにその薬学上許容される塩および溶媒和物を、化学原料として投与することが可能であるが、有効成分を医薬組成物として与えることも可能である。従って、本発明の実施形態は、治療上有効な量の化合物Aと1種以上の薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物をさらに提供する。担体、希釈剤または賦形剤は、処方物の他の成分と適合性があり、その受容者に有害でないという意味において許容されるものでなくてはならない。本発明の別の態様に従って、化合物Aを1種以上の薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合することを含む、医薬製剤の製造のための方法も提供される。
医薬製剤は、単位用量あたり所定量の有効成分を含む単位用量形態で与えることができる。このような単位は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、体重および状態によって、例えば、0.5mg〜3.5g、好ましくは、1mg〜1500mg、1日1〜3回、の式(I)の化合物を含んでよい。好ましい単位投与処方物は、本明細書において上に説明した、有効成分の1日量または部分用量、またはその適当な分割用量を含むものである。さらに、このような医薬製剤は、製薬分野において周知の方法のいずれによっても製造することができる。一実施形態では、FAK阻害剤は約80mg〜約1500mgの間で1日2回(BID)ヒトに投与される。別の実施形態では、FAK阻害剤は約300mg〜約1500mgの間で1日2回(BID)ヒトに投与される。別の実施形態では、FAK阻害剤は約300mg〜約1000mgの間で1日2回(BID)ヒトに投与される。別の実施形態では、FAK阻害剤は50、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450または1500mgで1日2回(BID)ヒトに投与される。
医薬製剤は、任意の適当な経路による、例えば、経口(口内もしくは舌下を含む)経路、直腸経路、鼻腔経路、局所(口内、舌下もしくは経皮を含む)経路、膣経路または非経口(皮下、筋肉内、静脈内もしくは皮内を含む)経路による投与に適合させることができる。このような処方物は、製薬分野において公知の任意の方法により、例えば、有効成分を担体または賦形剤と混合することにより製造することができる。
経口投与に適した医薬製剤は、カプセル剤もしくは錠剤などの個別単位;散剤もしくは顆粒剤;水性もしくは非水性液中の溶液もしくは懸濁液;可食性フォーム剤もしくはホイップ剤;または水中油型液体エマルションもしくは油中水型液体エマルションとして与えることができる。
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与では、有効薬物成分を、経口用の、毒性のない、薬学上許容される不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。粉末は、化合物を好適な微細径に粉砕し、同じように粉砕した医薬担体、例えば、可食性炭水化物(例えば、デンプンまたはマンニトール)と混合することにより調製される。香味剤、防腐剤、分散剤および着色剤も含んでいてよい。
カプセル剤は、上記のように、粉末混合物を調製し、成形ゼラチン剤皮に充填することより作製される。充填作業の前に、コロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体ポリエチレングリコールなどの流動促進剤および滑沢剤を粉末混合物に加えることができる。カプセルが摂取された時の医薬のアベイラビリティーを高めるために、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤も加えることができる。
さらに、所望によりまたは必要に応じて、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤も混合物に組み込むことができる。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えば、グルコースまたはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味剤、天然および合成ガム(例えば、アラビアガム、トラガカントガムまたはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの投与形に使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定されるものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、造粒またはスラッギングを行い、滑沢剤および崩壊剤を加え、錠剤に圧縮することにより調剤される。粉末混合物は、適当に粉砕された化合物を、上記の希釈剤または基剤と、所望により、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート(aliginate)、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、吸収促進剤(例えば、第四級塩)および/または吸収剤(例えば、ベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウム)とともに混合することにより調製される。粉末混合物は、結合剤(例えば、糖蜜、デンプンペースト、アラビアゴム粘液(acadia mucilage)またはセルロース系材料もしくはポリマー材料の溶液)で湿潤させ、篩を通して押し出すことにより造粒することができる。造粒に代わる方法として、粉末混合物を錠剤機に通してもよく、その結果として形成不完全なスラグを得、スラグは顆粒となる。顆粒は、錠剤成形ダイへの付着を防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油の添加によって滑沢にすることができる。次に、滑沢になった混合物は錠剤に圧縮される。本発明の化合物は、自由流動性不活性担体と合わせ、造粒工程またはスラッギング工程を経ずに直接錠剤に圧縮することもできる。セラックのシーリング皮膜からなる透明または不透明な保護コーティング、糖またはポリマー材料のコーティング、ワックスの艶出しコーティングを提供することができる。異なる単位用量を識別するために、これらのコーティングに色素を添加することができる。
液剤、シロップ剤およびエリキシル剤などの経口流体は、一定量が所定量の化合物を含有するように投与単位形態で調製することができる。シロップ剤は、適当に香味付けした水溶液に化合物を溶解させることにより調製することができ、一方、エリキシル剤は、非毒性アルコール含有媒体を使用することにより調製される。懸濁液は、非毒性媒体中に化合物を分散させることにより調剤することができる。可溶化剤および乳化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル)、防腐剤、香味添加剤(例えば、ペパーミント油)あるいは天然甘味剤またはサッカリンもしくは他の人工甘味剤なども加えることができる。
必要に応じて、経口投与用の投与単位処方物をマイクロカプセル化することができる。放出を延長または持続させるために、例えば、粒状材料をポリマー、ワックスなどによりコーティングまたは包理することによるように、処方物を調製することもできる。
投与単位形態は、リポソーム送達系、例えば、小型単層小胞、大型単層小胞および多層小胞の形態であってもよい。リポソームは、様々なリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンから形成することができる。
当然のことながら、上に特記した成分の他、処方物には、該当する処方物のタイプを考慮して当技術分野で慣用される他の薬剤が含まれ得る。例えば、経口投与に好適な処方物には、香味剤が含まれ得る。
式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩もしくは溶媒和物の治療上有効な量は、例えば、動物の齢および体重、治療を必要とする正確な病状およびその重篤度、処方物の性質、ならびに投与経路を含む複数の因子によって異なり、最終的には、担当の医師または獣医の判断による。しかしながら、癌性状態(例えば、本明細書に記載のもの)の治療のための、式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物の有効量は、一般的に、1日あたり受容者(哺乳類)の体重1kgあたり0.1〜100mgの範囲であり、より一般的には、1日あたり体重1kgあたり1〜50mgの範囲であろう。よって、70kgの成体哺乳類では、1日あたりの実際の量は通常7〜3500mgとなるが、この量を1日に1回の投与で与えてよいし、あるいは、より一般的には、1日あたりの総量が同じであるように、1日に複数回(例えば、2回、3回、4回、5回または6回)の部分用量で与えてもよい。本化合物の塩または溶媒和物の有効量は、式(I)の化合物そのものの有効量の比率として決定することができる。上述の他の疾患の治療に対しても同様の用量が適していると考えられる。
本発明のこれらの態様による投与または処方される化合物の量は、例えば、患者の年齢および体重、治療を必要とする正確な病態、その病態の重篤度、併発病態、肝機能または腎機能、処方物の性質、ならびに投与経路を含む複数の因子によって異なる。最終的には、その量は、担当の医師の判断による。
以下の実施例は単に例示を目的としており、本発明の範囲を限定するものではない。実施例において引用する各参考文献は総て引用することにより本明細書の一部とされる。
実施例1:化合物Aの製造
化合物Aは、国際公開第WO2010/062578号の開示に従って、下に示す方法により製造することができる。
化合物Aの小規模製造
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド
2−[(2,5−ジクロロ−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド(70mg、0.224ミリモル)、{3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−アミン(70mg、0.503ミリモル)および炭酸セシウム(230mg、0.706ミリモル)をマイクロ波管に入れた。反応混合物を窒素で10分間脱気した。同時に、BINAP(50mg、0.080ミリモル)および酢酸パラジウム(II)(10mg、0.045ミリモル)を加えた。反応混合物を、マイクロ波により160℃で40分間加熱した。粗物質を、0.1%ギ酸を含有するCHCN/HOで溶出させる逆相HPLC(Gilson)により精製し、標題化合物(15mg、15%)を得た;MS: M(C20H23ClN6O2) = 414.89, (M+H)+ = 415,416; 1H NMR (400 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 9.42 (br. s., 1 H) 8.71 (br. s., 1 H) 8.02 (s, 1 H) 7.54 (br. s., 1H) 7.06 (t, J=7.5 Hz, 1 H) 6.48 (s, 1 H) 6.32 (br. s., 1 H) 5.86 (s, 1 H) 4.47 (dt, J=13.4, 6.7 Hz, 1 H) 3.92 (s, 3 H) 2.26 (s, 3 H) 1.41 - 1.43 (d, J = 6.6 Hz, 2H)。
化合物Aの大規模製造
中間体1
2−[(2,5−ジクロロ−4−ピリジニル)アミノ]ベンゾニトリル
2,5−ジクロロ−4−ヨードピリジン(100g、365ミリモル)、2−アミノベンゾニトリル(43.1g、365ミリモル)および三リン酸カリウム(233g、1095ミリモル)の1,4−ジオキサン(2.5L)溶液をN流により脱気した。この溶液に、DPEPhos(15.73g、29.2ミリモル)および酢酸パラジウム(3.28g、14.60ミリモル)を加えた。反応混合物を還流させながら18時間攪拌した。その溶液を0.5インチのセライトおよび0.2インチのシリカに通して濾過した。その溶液を蒸発させた。固体をジエチルエーテル中に懸濁し、濾過した。ジエチルエーテルを濃縮し、得られた固体を濾過した。2−[(2,5−ジクロロ−4−ピリジニル)アミノ]ベンゾニトリル(80g、288ミリモル、収率79%)を橙色固体として単離した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 6.49 (s, 1 H) 7.50 (td, J=7.58, 1.01 Hz, 1 H) 7.56 (d, J=7.58 Hz, 1 H) 7.80 (td, J=7.83, 1.77 Hz, 1 H) 7.95 (dd, J=7.83, 1.52 Hz, 1 H) 8.26 (s, 1 H) 9.05 (brs, 1 H); HPLC Rt=2.88分, MS (ESI): 263.9, 265.9 [M+H]+
中間体2
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]ベンゾニトリル
2−[(2,5−ジクロロ−4−ピリジニル)アミノ]ベンゾニトリル(110g、396ミリモル)、3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−アミン(55.1g、396ミリモル)および炭酸セシウム(387g、1187ミリモル)の1,4−ジオキサン(2.5L)溶液をN2流により脱気し、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)(19.71g、31.7ミリモル)、続いて、酢酸パラジウム(3.55g、15.83ミリモル)を加えた。反応混合物をN下で一晩加熱還流した。反応混合物を濾過し、その液体を濃縮した。酢酸エチル(1500mL)、続いて、1M HCl(1000mL)を加えた。層に分けた。HPLCにより生成物が観察されなくなるまで酢酸エチルを1M HClで洗浄した(合計1000mL、1×)。HCl相を合わせ、HCL層において生成物ピークが比較的単一になるまで、酢酸エチル(3×1000mL)で逆洗浄した。次に、HCl層をNaOH(50w/w、その後、1M)でph約4に塩基性化すると、濁った溶液が生じた。酢酸エチル(2000mL)を加え、層を分離させた。酢酸エチルをブラインで洗浄し、蒸発させた。中和後−酢酸エチルの添加後−反応混合物を濾過し、何らかの生成物を得た。また、蒸発の間の生成物の単離は、母液から生じる白色固体の濾過により行うことができる。総ての固体および蒸発生成物を合わせた。2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]ベンゾニトリル(80g、207ミリモル、収率52.4%)を黄色固体として単離した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.24 (d, J=6.57 Hz, 6 H) 2.08 (s, 3 H) 4.34 (quin, J=6.57 Hz, 1 H) 5.87 (s, 1 H) 5.97 (s, 1 H) 7.41 (td, J=7.58, 1.01 Hz, 1 H) 7.47 (d, J=8.08 Hz, 1 H) 7.75 (td, J=7.83, 1.52 Hz, 1 H) 7.90 (dd, J=7.83, 1.52 Hz, 1 H) 7.94 (s, 1 H) 8.42 (d, J=17.43 Hz, 2 H); HPLC Rt=2.36分, MS (ESI): [M+H]+ = 367.1, 368.1。
中間体3
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]安息香酸
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]ベンゾニトリル(80g、218ミリモル)を1,4−ジオキサン(1.5L)に溶かし、1M NaOH(1500mL、1500ミリモル)を加えた。その懸濁液を一晩還流した。RTに冷却した後、酢酸エチル(1L)を加え、層に分けた。水層を1Lの酢酸エチルで洗浄した。両有機層を合わせ、有機層中に生成物が観察されなくなるまで0.1M NaOH(1L)で逆洗浄した。その後、有機層を廃棄した。次に、合わせた水層を1Lの酢酸エチルで洗浄した。次に、水層を酢酸で酸性化した(非常にゆっくりとph約7にした)。固体を濾過し、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]安息香酸(67g、165ミリモル、収率76%)を黄色固体として単離した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.28 (d, J=6.57 Hz, 6 H) 2.11 (s, 3 H) 4.41 (quin, J=6.57 Hz, 1 H) 5.96 (s, 1 H) 6.83 (s, 1 H) 7.09 (ddd, J=8.02, 5.12, 3.03 Hz, 1 H) 7.40 (1 H) 7.52 - 7.61 (m, 2 H) 7.91 - 8.16 (m, 2 H) 8.55 (s, 1 H) 10.17 (brs, 1 H) 13.64 (brs, 1 H); HPLC Rt = 2.35分, MS (ESI): [M+H]+ = 386.1。
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]安息香酸(67g、174ミリモル)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(29.3g、191ミリモル)のN,N−ジメチルホルムアミド(700mL)溶液に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(36.6g、191ミリモル)を加え、その溶液を30分間攪拌した。O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(15.95g、191ミリモル)を加え、その溶液をさらに15分間攪拌し、0℃に冷却し、ジイソプロピルエトリアミン(91mL、521ミリモル)を滴下した。反応混合物を室温で一晩攪拌した。水(4000mL)を加え、溶液を酢酸(20mL)で酸性化した。その溶液を2×2Lの酢酸エチルで抽出した。有機層を水(1L)、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド(74g、164ミリモル、収率94%、純度92%)を黄色泡沫物質として単離した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.27 (d, J=6.57 Hz, 6 H) 2.10 (s, 3 H) 3.71 (s, 3 H) 4.39 (quin, J=6.51 Hz, 1 H) 5.93 (s, 1 H) 6.66 (s, 1 H) 7.08 - 7.19 (m, 1 H) 7.49 - 7.64 (m, 3 H) 7.98 (s, 1 H) 8.50 (s, 1 H) 9.50 (s, 1 H) 11.93 (s, 1 H); HPLC Rt=2.13分, MS (ESI): [M+H]+ = 415.1。
実施例1生成物の精製
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド(173.3g、63.5%w/w、265.2ミリモル)を酢酸エチル(3.50L、20容量)に溶かし、約50℃に加熱した。この溶液に、Si−チオール(官能性シリカゲル)(87g、50%ローディング)を加えた。その混合物を約50℃に16〜20時間保った。次に、Si−チオールシリカゲルを濾去した。濾過ケーキを酢酸エチル(2×各200mL)ですすぎ、濾液を合わせた。次に、合わせた濾液をpH9.4の1ギ酸アンモニウム水溶液(5×各1L)で洗浄し、水、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥させたEtOACを濾過し、揮散させ乾固し、黄色泡沫物質を得た。それを50〜55℃で約2時間乾燥させ、一定の重量160gとした。この物質を塩化メチレン(800mL、5容量)でスラリーにし、加熱還流して溶液を得、濾過した。その溶液を20〜25℃に冷却した。冷却により生成物が結晶化した。約2時間後、濾過により生成物を集め、塩化メチレンですすいだ。白色固体を50〜55℃で14〜16時間乾燥させ、一定の重量とした。2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド(85.0g、204.9ミリモル、全収率77%)を白色固体として単離した。1H■NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.27 (d, J=6.57 Hz, 6 H) 2.10 (s, 3 H) 3.70 (s, 3 H) 4.39 (quin, J=6.57 Hz, 1 H) 5.92 (s, 1 H) 6.66 (s, 1 H) 7.02-7.24 (m, 1 H) 7.45-7.68 (m, 3 H) 7.98 (s, 1 H) 8.48 (s, 1 H) 9.49 (br. s, 1 H) 11.91 (s, 1 H)。C18 HPLC RT = 6.2分 (純度99.0%)。 MS (ESI): 415.0 [M+H]+
2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド(総重量235.2g、分析含量228.0g、549.5ミリモル)を酢酸エチル(7.1L、30容量)でスラリーにした。その混合物を約50〜55℃に加熱し、濁った溶液を得た。濁った溶液を濾過した。濾過した溶液に2.0 HClのジエチルエーテル溶液(210g、281mL、1.02当量)を15〜20分かけて加えた。HClの添加により、白色スラリーが観察された。それを室温で約16〜20時間攪拌した。濾過により生成物を集め、酢酸エチル(2×各500mL)ですすいだ。湿ったケーキを50〜55℃/<5mmHgで16〜20時間乾燥させ、一定の重量とした。2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミド、一塩酸塩、(245.9g、544.7ミリモル、収率96%)を白色固体として単離した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.32 (d, J=6.57 Hz, 6 H) 2.18 (s, 3 H) 3.70 (s, 3 H) 4.35-4.62 (m, 1 H) 6.12 (br. s, 1 H) 6.60 (br. s, 1 H) 7.19-7.41 (m, 1 H) 7.48-7.75 (m, 3 H) 8.09 (s, 1 H) 9.59-9.99 (m, 2 H) 11.98 (br. s, 1 H)。C18 HPLC RT = 6.1分 (純度99.6%)。MS (ESI): 414.8 [M+H]+
生物学的データ:
実施例2:ウエスタンブロットに使用した抗体
ウエスタンブロッティングのための標準的な手法を使用し、これらの研究についての具体的な抗体は:抗FAK(Millipore製品番号05−537)、抗pFAK(InVitrogen製品番号44−624G)、抗マーリン(Santa Cruzカタログ番号28247)、抗マーリンアイソフォーム1(Santa Cruzカタログ番号332)であった。結果を図1に示す。
実施例3:ヒト細胞株
これらの研究では、ATCCから入手可能な5種のヒト中皮腫細胞株および2種の追加のヒト肺癌細胞株を使用した。細胞は、標準的な細胞培養条件下で、10%FBS、1%L−グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウムを含有するRPMI1640培地で増殖させた。中皮腫細胞株:NCI−H2052、MSTO−211H、NCI−H28、NCI−H226、NCI−H2452および追加の肺系:A549およびSW−1573。さらに3種の中皮腫細胞株、Mero−41、Mero−82およびMero−14を同一条件下で増殖させた。
実施例4:足場非依存性増殖−細胞死アッセイ
化合物Aに対する細胞応答を足場非依存性細胞増殖アッセイにより評価した。このアッセイでは細胞増殖阻害の程度と細胞集団における純変化を定量した。アッセイは、384ウェルブラックプレート(透明底、未処理)(Greiner製品番号781096)で実施した。アッセイの間に細胞がプレートに接着しないように非組織培養処理プレートまたは低接着プレートのいずれかを使用することが重要である。簡単に述べると、下記の通りにアッセイを実施した。
1%(重量/体積)メチルセルロースストック溶液を、5gの滅菌メチルセルロース(Sigma製品番号M0512)を495mLの細胞培養培地に溶解することにより調製した。ここでは、ガラス容器に入れ、オートクレーブ処理して滅菌しておいた冷却メチルセルロースに、10%FBS、1%L−グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウムを含有するRPMI1640培地を加えた。細胞が増殖に異なる細胞培養培地を必要とする場合には培地を置き換えてよい。溶解には、多くの場合、無菌状態を維持しながら4℃で激しく攪拌することにより1日かかった。
細胞を384ウェルプレートに入れ、アッセイ条件は0.65%メチルセルロース(終濃度)、各ウェルあたり1000細胞、最終容量48μLとした。これは、培養物から回収し、増殖培地に再懸濁した細胞を、1%メチルセルロースで希釈することによって達成された(2.0833×10細胞/mLに希釈する)。細胞は、均一に分布するように転倒させて混合し、気泡を消失させ、ポジティブディスプレイスメント方式のピペットでプレートウェルに48μLを入れた。プレートを37℃の5%COを含有する細胞培養インキュベーターに入れた。
384ウェルプレート内でDMSOによる化合物の連続希釈を行い、最初の列を20μLの化合物ストック溶液とし、他のプレートウェルに10μLのDMSOを入れて開始した。化合物のプレートウェルから10μLを、DMSOが入っているプレートのウェルに移し、混合し、プレート間で10μLを移すことにより連続希釈を続けた。次に、このDMSO希釈化合物の4μLを、105μLの適当な増殖培地が入っている新たな384ウェルプレートのウェルに加えた。この「化合物プレート」を使用して、細胞のメチルセルロース溶液が入っているアッセイプレートに投与した。
アッセイを開始するために、「化合物プレート」の各ウェルから2μLを、各ウェルに48μLの細胞メチルセルロース溶液が入っている「アッセイプレート」の個々のウェルに加えた。これらのアッセイプレートを細胞培養インキュベーターに6日間入れた。1つのプレートを無作為に選択し、化合物の添加時にCellTiter Glo(CTG)を用いて発光させ、ゼロ時(T0)のプレートを表した、すなわち、化合物添加時の細胞数を表した。
第6日目に、アッセイを止め、プレートを発光させることとし、各プレートの底に黒色ステッカーを貼って光を遮断し、25μLのCTGを加え、プレートを室温で20分間インキュベートした。EnVision(Perkin−Elmer)において発光プロトコールを用い、プレートをスキャニングした。
結果をT0値に対する百分率として表し、化合物濃度に対してプロットした。総ての値に対して「無細胞」バックグラウンドの減算を行い、T0値を100%に正規化し、化合物添加時の細胞数を表した。4−パラメーター曲線フィット式を用いて濃度応答曲線の当てはめを行い、増殖を50%阻害した濃度(gIC50)を決定することにより細胞応答を決定した。gIC50値は増殖ウインドウ(T0〜DMSO対照の増殖の間)の中間点である。細胞集団の純変化の程度は、濃度応答曲線のフィットから決定されたYmin値(%)からT0値(100%)を減算することにより決定されるYmin−T0値により定量した。
実施例6:NF2腫瘍サプレッサー遺伝子(NF2遺伝子のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物(ニューロフィブロミン−2アイソフォーム1タンパク質、マーリンアイソフォーム1タンパク質とも呼ばれている))の発現
NF2遺伝子の腫瘍サプレッサーアイソフォームの発現を中皮腫細胞株において、全細胞溶解物のウエスタンブロッティングにより評価した。NF2遺伝子は、2つの主要な遺伝子産物、595個のアミノ酸からなるマーリンアイソフォーム1タンパク質および590個のアミノ酸からなるマーリンアイソフォーム2タンパク質を生成する。アイソフォーム1およびアイソフォーム2の両方を検出する抗体を使用し、分析した7種の細胞のうち4種において、推定分子量75キロダルトン(KD)弱の2つの顕著なバンドが検出された(図1A)。3種の細胞株、NCI−H226、NCI−H2052およびSW1573には二重バンドの上方のものが存在せず、長い方の(移動性が低い方の)アイソフォーム1が発現されないことが示唆された。この見解についてはマーリンのアイソフォーム1を特異的に検出する抗体により確認された(図1B)。さらなる細胞株の分析の結果を表3に示す。
実施例7:免疫組織化学
4種の中皮腫細胞株および1種の肺細胞株を免疫組織化学(IHC)により評価し、図3に示す通りであった。マーリンアイソフォーム1のIHC染色パターンは、ウエスタンブロットで見られたものと同じであった(図1のウエスタンブロットを参照)。3種の細胞株(NCI−H226、NCI−H2052およびSW−1573)はマーリンアイソフォーム1染色について陰性であり(左のパネル)、3種の細胞株(NCI−H28、NCI−2452およびMSTO−211H)はマーリンアイソフォーム1染色について陽性であった(右のパネル)。
実施例8:細胞株における、NF2遺伝子を含むゲノムDNAの評価およびNF2遺伝子のアイソフォーム1のmRNA発現の評価
細胞株からゲノムDNA(gDNA)およびmRNA(cDNA)を配列決定することによりNF2遺伝子状態のさらなる確認を行った。遺伝子の発現形態であるcDNAの配列決定結果は、表1に示す通り、gDNAと一致した。さらに、発現されたmRNAの配列決定によりアイソフォーム1およびアイソフォーム2の状態の独立した確認が可能であった。cDNAおよびgDNAの両方の配列決定からの結果は、ウエスタンブロットおよびIHC分析からの結果と一致した。これらの異なる分析方法によりマーリン状態に関し、細胞株について同じ分類に至った。
実施例9:NF2変異細胞およびNF2野生型細胞におけるFAKおよびpFAKのレベルの比較
マーリンアイソフォーム1発現、FAK発現、FAKリン酸化状態、およびFAK阻害に対する応答の関連性をさらに調査するため、評価のために2種の細胞株を選択した。NF2変異細胞株として、マーリンアイソフォーム1タンパク質の発現を欠くNCI−H2052を選択し、NF2野生型細胞株として、マーリンアイソフォーム1タンパク質の発現を示すMSTO−211Hを選択した。メチルセルロース足場非依存性条件で増殖させた細胞から得た全細胞溶解物を用いたウエスタンブロットにより、FAKおよびpFAK(Y397)発現のレベルを特徴付け、図2に示す通りであった。ウエスタンブロットは、NF2変異細胞株において、NF2野生型株と比べて少し高いレベルの総FAKタンパク質を示す(図2A)。より著しくは、NCI−H2052 NF2変異細胞株において、pFAKのレベルが、MSTO−211H NF2野生型細胞株と比べて大きく上昇した(図2B)。タンパク質濃度により決定されるサンプルについて同じ量のタンパク質をゲルにロードした。抗アクチン抗体によるウエスタンブロットで検出されたアクチンの量(示していない)は、ブロッティング膜への同等の転写を実証した。上述のように、変異NF2を有する中皮腫細胞株において総FAKタンパク質レベルの小さな増加が見られたが、リン酸化された、恐らくは活性化されたと思われるFAKのレベルはNF2変異細胞株において実質的に増加した。
実施例10:FAK阻害剤である化合物Aによる細胞増殖阻害の評価
FAK阻害剤である化合物Aの増殖阻害活性を、足場非依存性メチルセルロースアッセイで増殖させた2種の中皮腫細胞株において評価し(表2)、これら2種の細胞株に追加の4種の細胞株を加えてさらに再試験した(表3)。
最初の足場非依存性アッセイでは、両細胞株はgIC50値により定量された増殖阻害応答を示したが、2種の細胞株の感受性には大きな違いが存在した(表2)。NF2変異株(すなわち、NF2遺伝子のアイソフォーム1タンパク質を発現せず、そのため、マーリン陰性と呼ばれる)であるNCI−H2052中皮腫細胞株は、増殖の50%阻害を誘導するために、NF2野生型(NF2のアイソフォーム1タンパク質を発現し、マーリン陽性と呼ばれる)であるMSTO−211H細胞のおよそ19分の1の化合物と反応した。さらに、NF2野生型MSTO−211H細胞は、化合物Aが最大濃度(約30μM)で存在する場合でも、6日間のアッセイの間に細胞集団の増加を示した。これはYmin−T0値が343%(アッセイ開始時の100%からの増加)であることから気づいた。それに対し、NF2変異細胞株であるNCI−H2052は、アッセイ終了時に開始時と同じ細胞数を有し、Ymin−T0値は本質的に0(−3%)であった。細胞数に変化がないことは、化合物AがNF2変異細胞株においてアッセイ期間中の細胞増殖および増殖を競合的に阻止することができたことを示唆する。
次の足場非依存性アッセイでは、NF2のアイソフォーム1タンパク質遺伝子産物(すなわち、マーリンアイソフォーム1タンパク質、または略してマーリンタンパク質)をウエスタンブロットにより決定した。5種総てのマーリン陰性細胞株は強力な増殖阻害を受けた(gIC50値<250nM)が、マーリン陽性細胞株では50%増殖阻害に約10μMの化合物Aが必要であった。アッセイの間、マーリン陰性細胞株では細胞集団は増加しなかったが、一部の細胞株は純細胞死滅を示した(負のYmin−T0値)。[Ymin−T0値0%はアッセイの間に細胞数の変化がないことを示すということに留意する。]マーリン陽性MSTO−211H細胞株は化合物Aの存在下で正のYmin−T0値によって示されるように細胞集団の純増加を示した。これらの結果を表3に示す。
実施例11:臨床試験デザイン
進行性固形腫瘍を有する患者における化合物Aの最大耐量(MTD)、安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)および抗腫瘍活性を決定するために、複数パートからなる第I相試験を設計した。本試験のパート1では増量法を用いてMTDを同定した。パート1は本明細書において記載している。パート2〜3は現在進行中である。パート2ではMTD以下の化合物Aの安全性および忍容性をさらに調査し、パート3ではMTD以下の用量で化合物Aの薬力学を評価する。パート4は、この要約の時点では患者発生に対して開始されていなかった。パート4では再発性多形性膠芽腫を有する患者において化合物Aの安全性、忍容性、薬物動態および臨床活性を調査する。パート5は、この要約の時点では患者発生に対して開始されていなかった。パート5では数週間の投与を通して化合物Aの薬物動態を調査する。中皮腫を有する患者は、本試験の、例えば、パート1に参加する資格があった。中皮腫を有する患者は、下のデータを収集した時点において、本試験のパート1〜3に参加する資格があった。
組入れ/除外基準:進行性固形腫瘍を有する18歳以上の患者で、組織学的または細胞学的に確定された固形腫瘍の診断が悪性腫瘍であり、その腫瘍が一般に認められている標準的療法に反応しなかったか、あるいはそれに対して標準的または治癒的療法が存在しない患者を適格とした。総ての患者がインフォームド・コンセントに署名した。患者には、経口薬を嚥下および保持し、妊娠の可能性がある男女の場合にはプロトコールで規定された避妊方法を厳守し、十分な臓器系機能を示し、プロトコールに規定された記録保存用腫瘍検体を提供する能力を有することが義務づけられた。本試験のパート2〜3では、FAKを過剰発現することが文献で報告されている腫瘍を有する患者で、それらの腫瘍が一般に認められている標準的療法に反応しないか、あるいはそれらに対して標準的または治癒的療法が存在しなかった患者を組み入れた。パート3での被験者には、生検に適している固形腫瘍を有することも義務づけられた。
以前の療法から28日または5半減期以内に最低10日継続して試験中の抗癌剤を受けたか、あるいはこの3週間(以前マイトマイシンCまたはニトロソ尿素(nitrosureas)を受けた場合は6週間)の間に化学療法を受けたか、あるいはこの4週間の間に大手術、放射線療法または免疫療法を受けた患者は除外した。薬物動態を妨げることが知られている活動性胃腸疾患を有するか、または以前に小腸切除を受けた患者は不適格であった。他の除外基準には、過去の抗癌療法によるグレード1を超える毒性が消失していない患者(脱毛症を除く)、QTcF間隔が男性の場合には450msec(女性の場合には470msec)を超える患者または先天性QT延長症候群の患者、急性冠動脈症候群の病歴のある患者、ニューヨーク心臓協会(the New York Heart Association)により定められたクラスII〜IV心不全の患者、症候性脳転移または未治療の脳転移の患者、中枢神経系の原発性悪性腫瘍(パート1〜3の場合)の患者、授乳中の女性患者、プロトコールで規定された食事由来物質または禁止薬剤の摂取を受けている患者、あるいは重篤かつ/もしくは不安定な既存の医学的状態、精神医学的状態、または被験者の安全性もしくはインフォームド・コンセントの取得を妨げ得る他の状態の患者が含まれた。
安全性および有効性の評価:安全性を評価するための測定には、体重、心拍数、血圧、体温、臨床検査、12−鉛 ECG、ならびに神経学的および身体的診察が含まれた。有害事象は、本試験期間を通じてCTCAE v4.0(有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)(CTCAE)バージョン4.0、米国保健福祉省(United States Department of Health and Human Services)、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)、2009年5月)を用いて評価した。
疾患評価は、スクリーニング時と投薬開始後6週間ごとに実施した。効果は、RECISTバージョン1.1に従い、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、または進行(PD)として報告した。
実施例12:本臨床試験に登録された患者の生検材料におけるMerlin状態の免疫組織化学的判定:
現在の第I相中皮腫集団におけるマーリンの欠損が化合物Aに対する応答の予測となるかどうかを判定するために、免疫組織化学(IHC)によるスクリーニング時に採取した記録保存用組織(FFPE)においてマーリンレベルを評価し、その結果は無増悪生存期間(PFS)中央値の臨床エンドポイントと相関があった。
カスタムIHCアッセイはMosaic laboratories, Incにより開発され、ウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc、カタログ番号SC332)を使用し、1:1600希釈を用いた。抗体シグナルをEnvision+ウサギHRP(DAKO)検出キットにより評価し、染色強度(グレード0〜3+)を用いて、試験した臨床サンプルのマーリン状態を分類した(マーリン陽性=野生型またはマーリン陰性=マーリンの欠損)。
判定の閾値である固定Hスコア(a fixed H-score)(10または>グレード2+染色=Merlin陽性およびグレード2+で<10=Merlin陰性)は、異なるマーリン発現を示す6種の細胞株(ATCCから入手したSW1573、NCI−2052、NCI−H226、NCI−H28、NCI−2452およびMSTO−211H)を含む中皮腫細胞株確認パネルを用いて得た。シグナルの細胞内局在性(すなわち、核、細胞質および細胞膜)を記録したが、閾値の決定には用いなかった。判定閾値は、アッセイの技術的検証の間に、アッセイの日間および日内変動に対応する精度および精密試験によってさらに最適化した。アッセイ検証に使用した同じ細胞株におけるマーリンの有無は、ウエスタンブロッティングとcDNAおよびゲノムDNAのSanger配列決定により独立に確認した。
試験した細胞株におけるマーリンの欠損は3つの観察に起因した:NCI−H226の開始コドンをコードするエキソン1の欠損、SW−1573のエキソン1〜4の欠損、およびNCI−2052のエキソン11における停止コドン(Arg 341)の存在。臨床相関では、29の利用可能な中皮腫サンプルのうち24のサンプルを、カスタムGSK NF2−1 IHCアッセイを使用し、マーリンについて試験した。マーリン状態はPFSの中央値と相関があった(有効性解析を参照されたい)。得られた結果は、マーリンを、再発性中皮腫を有する患者における化合物Aの臨床活性の潜在的予測バイオマーカーとして示している。
統計分析:
人口統計学的、臨床検査的、疾患特性の分析には記述統計を用いた。無増悪生存期間は、カプラン・メイヤー法を用いて決定した。この方法は当技術分野で周知であり、Kaplan EL and Meier P, 1958), “Non-parametric estimation from Incomplete Observations JASA 53: 457-481およびLee ET, Statistical Methods for Survival Data Analysis, 第2版, John Wiley and Sons, New York, 1992に記載されており、これらの各文献は総て引用することにより本明細書の一部とされる。
結果:
全患者および中皮腫患者集団の人口学的特性を表4に示す。
Merlin状態の評価:患者から得られた生検材料サンプルのIHCにより測定した場合(実施例12に記載の通りである)、中皮腫を有する患者29名のうち、14名はマーリン陰性であり、9名はマーリン陽性であり、6名は不明であった。
有効性解析:中皮腫を有する患者において、26名は療法開始後放射線学的評価を受けた。放射線学的評価の前に3名の患者を本試験から排除した。治療に対する最良の効果として、14名の患者はSDを示し、3名の患者は非CR/非PDを示し、9名の患者はPDを示した。最良効果時における腫瘍量の、ベースラインからの変化率を図6に示す。ベースラインにおいて測定可能疾患を有し、ベースライン後スキャンを受けた患者だけをこのグラフに含めた。PRまたはCRが得られた患者は存在しなかったが、中皮腫を有する数名の患者で少し効果が認められた(例えば、腫瘍の縮小であるがPRに要求されるレベルではなかった)。全無増悪生存期間(PFS)の中央値は17.7週間(95%CI 9.7、24.1)であった。マーリン陰性被験者およびマーリン陽性被験者におけるPFSの中央値はそれぞれ、24.1(n=14;95%CI 6.0,29.3)および11.4(n=9;95%CI 7.3、未確定)であった(図4)。各患者の治療期間を図5に示し、Merlin陰性患者とMerlin陽性患者を比較した。14名のMerlin陰性患者のうち7名が4ヶ月を超えて試験に残ったが、これに対し、Merlin陽性患者では9名のうち3名であった。受けた用量をグラフの左側の欄に示す。
本発明の好ましい実施形態を上記により示すが、本発明は本明細書に開示される厳密な説明に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲内に入る総ての修飾に対して権利が保持されると理解すべきである。
参照文献

Claims (16)

  1. 治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法であって、該ヒトからのサンプルにおいてニューロフィブロミン−2(NF2)遺伝子の遺伝子産物の検出可能な量の有無を判定すること、および遺伝子産物またはアイソフォーム1遺伝子産物が検出されない場合に、該ヒトに、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる、方法。
  2. リン酸化されたFAK(p−FAK)を検出することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
  3. NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物が存在する場合に、NF2のアイソフォーム1遺伝子産物の機能喪失を検出することをさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
  4. NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物の検出可能な量が存在し、NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物の機能喪失が検出される場合に、該ヒトに、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩の有効量を投与することをさらに含んでなる、請求項3に記載の方法。
  5. NF2遺伝子の遺伝子産物またはアイソフォーム1遺伝子産物の有無が免疫組織化学(IHC)を用いて判定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. IHCが、NF2遺伝子のアイソフォーム1遺伝子産物と結合するがNF2遺伝子の他のアイソフォーム遺伝子産物と結合しない抗体を使用することを含んでなる、請求項5に記載の方法。
  7. FAK阻害剤による前記治療が無増悪生存(PFS)期間の延長をもたらす、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. PFS期間の延長が臨床的に意味がある、請求項7に記載の方法。
  9. PFS期間の延長が統計的に有意である、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記サンプルが1種以上の腫瘍細胞を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  11. NF2遺伝子の遺伝子産物がタンパク質またはその機能的断片である、請求項1〜11に記載の方法。
  12. 治療を必要とするヒトにおいて癌を治療する方法であって、該ヒトからの腫瘍サンプルからマーリン(merlin)またはその機能的断片の検出可能な量の有無を判定すること、およびマーリンまたはその機能的断片が検出されない場合に、該ヒトに、2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドまたはその薬学上許容される塩の有効量を投与することを含んでなる、方法。
  13. 治療を必要とするヒトにおいてマーリン陰性癌を治療する方法であって、該ヒトに、FAK阻害剤またはその薬学上許容される塩の治療上有効な量を投与することを含んでなる、方法
  14. 前記FAK阻害剤が2−[(5−クロロ−2−{[3−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ピラゾール−5−イル]アミノ}−4−ピリジニル)アミノ]−N−(メチルオキシ)ベンズアミドまたはその薬学上許容される塩である、請求項1〜13に記載の方法。
  15. 前記癌がシュワン腫、髄膜腫、上衣腫、中皮腫、膠芽腫、黒色腫 甲状腺癌、膀胱癌、皮膚癌、胃癌、骨癌、腎癌、乳癌および腸癌からなる群から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記癌が中皮腫である、請求項17に記載の方法。
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